(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】生体試料を識別するためのシステムおよび生体試料を識別するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20240702BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240702BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N21/17 Z
G01N33/483 C
G01N21/03 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579155
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022067155
(87)【国際公開番号】W WO2022268944
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514222743
【氏名又は名称】クリアストリーム・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ノリス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ダンパルワー,プラタメシュ・シャラッド
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ,ルーク・バーナード・アンソニー
【テーマコード(参考)】
2G045
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G045CB01
2G045FA13
2G045FA14
2G045GC10
2G045JA03
2G057AA01
2G057AB02
2G057BA01
2G057DA04
2G057DC06
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG09
2G059HH01
2G059LL04
2G059MM01
2G059MM12
2G059NN01
(57)【要約】
試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステム。このシステムは、試料ホルダに向けて実質的に単色の光を放射するための光源と、生体試料によって反射または透過された光の量を検知するための光センサであって、検知された光の量を指示する測定値を出力するように構成された光センサと、光センサの出力測定値に基づいて生体試料を識別するように構成されて光センサに接続されたコントローラとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステムであって、
前記試料ホルダに向けて実質的に単色の光を放射するための光源と、
前記生体試料によって反射または透過された光の量を検知するための光センサであって、前記検知された光の量を指示する測定値を出力するように構成された光センサと、
前記光センサの前記出力測定値に基づいて前記生体試料を識別するように構成されて前記光センサに接続されたコントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
前記試料ホルダを保持するための遮光構造体であって、前記遮光構造体が前記試料ホルダを保持するときには、いかなる周囲光も前記試料に到達するのを阻止するように構成された遮光構造体をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遮光構造体が不透明である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記遮光構造体が前記試料ホルダを収容するための内腔を備える、請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記内腔が単一の開口部を有する、請求項2、3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記内腔は、前記内腔が広い第1の部分と、前記内腔が狭い第2の部分とを備える、請求項4または5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の部分が前記内腔の前記開口部から遠位に配設される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の部分が、前記試料ホルダの側面と係合して前記試料ホルダを所定位置に保持するように構成される、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記内腔が長方形の断面を有する、請求項4から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記光源が、前記実質的に単色の光を前記内腔に放射するように構成されて前記内腔の前記開口部に配設されている、請求項4から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
光検知器が、前記内腔の中の前記生体試料によって反射または透過された前記実質的に単色の光を検知するように構成されて前記内腔の前記開口部に配設されている、請求項4から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記周囲光が前記試料ホルダに到達するのを阻止するように、前記遮光構造体が、前記内腔の前記開口部、前記光源および/または前記光検知器を密閉するための蓋をさらに備える、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記遮光構造体が3D印刷された構造体である、請求項2から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが前記試料ホルダを備える、請求項1から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記試料ホルダがキュベットである、請求項1から14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記キュベットが、複数の真っすぐで透明な側面を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記光源がレーザダイオードを備え、前記実質的に単色の光がレーザ光である、請求項1から16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記光源がチューナブルレーザを備える、請求項1から17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記光源がLEDを備える、請求項1から18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記光源が赤外LEDを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記光源によって放射される前記実質的に単色の光が、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nmの範囲の波長においてピーク強度を有する、請求項1から20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記光源によって放射される前記実質的に単色の光が、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満のスペクトル帯域幅を有する、請求項1から21のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記光検知器が光ダイオードを備える、請求項1から22のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
前記光ダイオードが、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nmの範囲の波長において最大感度を有する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記光源と前記光検知器とが単一の集積回路パッケージで提供される、請求項1から24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記光源および前記光検知器を保持するための基礎支持部をさらに備える、請求項1から25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
前記コントローラが、
前記放射された光と前記検知された光との比に基づいて吸収値を計算するか、または前記光センサの前記出力測定値と前記光センサの最大出力との比に基づいて吸収値を計算し、
前記吸収値に基づいて前記生体試料を識別するように構成される、請求項1から26のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
前記コントローラが、前記計算された吸収値に基づいて、既知の生体組織のルックアップテーブルから前記生体組織を識別する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記コントローラが、前記光センサを使用して複数の測定を行い、平均吸収値を計算するように構成される、請求項27または28に記載のシステム。
【請求項30】
前記識別された生体試料をユーザに示すための、前記コントローラに接続可能な表示器をさらに備える、請求項1から29のいずれかに記載のシステム。
【請求項31】
前記コントローラが、前記光センサによって取得された前記測定値を前記表示器に示すようにさらに構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項32】
前記表示器と前記コントローラとに接続可能な入力装置をさらに備え、前記コントローラが、ユーザが、前記試料の前記測定値を採取し始めること、および/または以前に取得された測定値を解析のためにロードすること、および/または前記測定値を種々のプログラムにエクスポートすること、および/または前記測定値を消去することを可能にする、請求項30または31に記載のシステム。
【請求項33】
組織の生体試料を取得するための生検装置であって、
生検針と、
前記生体試料を保持するための試料ホルダと、
前記試料ホルダの中の前記生体試料を識別するための、請求項1から3のいずれかに記載のシステムと
を備える、生検装置。
【請求項34】
前記光源がレーザダイオードを備え、前記実質的に単色の光がレーザ光である、請求項33に記載の生検装置。
【請求項35】
前記光源によって放射される前記実質的に単色の光が、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nmの範囲の波長においてピーク強度を有する、請求項33または34に記載の生検装置。
【請求項36】
前記光源によって放射される前記実質的に単色の光が、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満のスペクトル帯域幅を有する、請求項33から35のいずれかに記載の生検装置。
【請求項37】
光検知器が光ダイオードを備える、請求項33から36のいずれかに記載の生検装置。
【請求項38】
前記光ダイオードが、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nmの範囲の波長において最大感度を有する、請求項37に記載の生検装置。
【請求項39】
前記光源と前記光検知器とが前記試料ホルダの同じ側に配置される、請求項33から38のいずれかに記載の生検装置。
【請求項40】
前記光源と前記光検知器とが単一の集積回路パッケージで提供される、請求項33から39のいずれかに記載の生検装置。
【請求項41】
前記コントローラが、
前記放射された光と前記検知された光との比に基づいて吸収値を計算するか、または前記光センサの前記出力測定値と前記光センサの最大出力との比に基づいて吸収値を計算し、
前記吸収値に基づいて前記生体試料を識別するように構成される、請求項33から40のいずれかに記載の生検装置。
【請求項42】
前記コントローラが、前記計算された吸収値に基づいて、既知の生体組織のルックアップテーブルから前記生体組織を識別する、請求項41に記載の生検装置。
【請求項43】
前記コントローラが、前記光センサを使用して複数の測定を行い、平均吸収値を計算するように構成される、請求項41または42に記載の生検装置。
【請求項44】
光源、光検知器、およびコントローラを有するシステムを使用して、試料ホルダの中の生体試料を識別するための方法であって、
前記光源から前記試料ホルダ内の試料に光を放射するステップと、
前記生体試料によって反射または透過された光の量を、前記光検知器を用いて検知するステップと、
前記光検知器からの、検知された前記光の量を指示する測定値を前記コントローラに出力するステップと、
前記コントローラを使用して、前記光センサの出力信号に基づいて前記生体試料を識別するステップと
を含む、方法。
【請求項45】
遮光構造体を使用して、いかなる周囲光も前記試料に到達するのを阻止するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
生体試料を識別するステップが、
前記放射された光と前記検知されたものとの比に基づいて吸収値を計算するステップ、または前記光センサの前記出力測定値と前記光センサの最大出力との比に基づいて吸収値を計算するステップと、
前記吸収値に基づいて前記生体試料を識別するステップと
を含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記吸収値が、前記光センサによる複数の測定に基づく平均吸収値である、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステムおよび試料ホルダの中の生体試料を識別するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病変組織の検知および識別は、近代医療において非常に重要である。癌は、依然として世界中の主要な死因の1つであり、腫瘍を、より早く、より簡単に検知して識別することができれば、無数の命を救う可能性がある。
【0003】
癌は、多くの場合生検を使用して識別され、生検では医療手順において、患者から体内組織の小さな試料が採取され、顕微鏡下で検査され得る。組織試料が顕微鏡下で検査されると、異常細胞が識別されることがあり、腫瘍などの特定の症状を診断するのに役立ち得る。これらの手順には、遅く、高価であり、組織を検査して組織が病変であるかどうかを判定するのに、特別に訓練された医療従事者を必要とするという問題がある。
【0004】
本発明は、種々の組織の間、および健全な組織と悪性組織との間の吸収スペクトルの差を利用して、組織を識別し、組織が病変であるかどうかを判定することを提案するものである。
【0005】
当技術には、波長の範囲にわたって試料の吸収スペクトルを測定するための分光光度計が存在する。しかしながら、これらの装置は、複雑で、高価であり、生体試料を自動的に識別して生体試料が病変組織に関するものであるかどうかを示すわけではない。
【0006】
それ故に、当技術には、生体試料を正確および迅速に識別して、生体試料が病変組織を含むかどうかを判定する、簡単な自動システムが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様では、試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステムが提供される。システムは、試料ホルダに向けて実質的に単色の光を放射するための光源と、生体試料によって反射または透過された光の量を検知するための光センサであって、検知した光の量を指示する測定値を出力するように構成された光センサとを備える。システムは、光センサの出力測定値に基づいて生体試料を識別するように構成されて光センサに接続されたコントローラをさらに備える。
【0008】
本開示の全体にわたって、「実質的に単色の」光は、所定の波長および狭いスペクトル帯域幅においてピーク強度を有する光を指す。スペクトル帯域幅は、200nm未満でよく、好ましくは100nm、より好ましくは50nmでよい。「実質的に単色の」光は、たとえばレーザダイオードまたはLEDによって放射され得る。
【0009】
本開示の全体にわたって、「生体試料を識別する」という用語は、たとえば乳房組織といった組織のタイプを識別すること、ならびに、たとえば乳房組織が健全な乳房組織であるか、または悪性の乳房組織であるかを識別するなど、組織のタイプが健全であるか病変であるかを特徴づけることの両方を意味する。
【0010】
いくつかの実施形態では、これは、安価で簡単で、正確なやり方で、生体試料を自動的に識別することができるシステムをもたらし得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、これによって、迅速で簡単で、正確なやり方の、病変生体組織の自動判定も可能になり得る。
【0012】
システムは、試料ホルダを保持するための遮光構造体をさらに備え得る。遮光構造体は、遮光構造体が試料ホルダを保持するとき、いかなる周囲光も試料に到達するのを阻止するように構成され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、これは、光の測定における周囲光ノイズを低減することによって、生体試料のより正確な識別をもたらし得る。
【0014】
遮光構造体は不透明でよい。
本開示の全体にわたって、「不透明」という用語は、可視スペクトルの光および/または赤外スペクトルの光が遮断されることを意味する。
【0015】
いくつかの実施形態では、これは、周囲光ノイズのさらなる低減と、生体試料のより正確な識別とをもたらし得る。
【0016】
遮光構造体は、試料ホルダを収容するための内腔を備え得る。
いくつかの実施形態では、これは、周囲光ノイズのさらなる低減と、生体試料のより正確な識別とをもたらし得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、これによって、試料ホルダを遮光構造体内に固定することも可能になり、結果の再現性および精度が高まり得る。
【0018】
内腔は単一の開口部を有し得る。
内腔は、内腔が広い第1の部分と、内腔が狭い第2の部分とを備え得る。
【0019】
第2の部分は、内腔の開口部から遠位に配設され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、試料ホルダの遮光構造体への挿入および取外しが、より容易で迅速になり得る。
【0020】
第2の部分は、試料ホルダの側面と係合して、試料ホルダを所定位置に保持するように構成され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、試料ホルダを遮光構造体内に固定することが可能になり、結果の再現性および精度が高まり得る。
【0021】
内腔は長方形の断面を有し得る。
いくつかの実施形態では、これによって、試料ホルダとして、標準的な長方形のキュベットを使用することが可能になり得る。
【0022】
光源は、実質的に単色の光を内腔に放射するように構成され、内腔の開口部に配設され得る。
内腔の開口部に光検知器が配設され得る。光検知器は、内腔の中の生体試料によって反射または透過された実質的に単色の光を検知するように構成され得る。
いくつかの実施形態では、これは、簡単で、頑健なセットアップをもたらし得、測定の再現性および精度を生じさせ得る。
【0023】
遮光構造体は、内腔の開口部を密閉するための蓋をさらに備え得る。周囲光が試料ホルダに到達することを阻止するように、蓋は光源を密閉し得る、および/または蓋は光検知器を密閉し得る。
【0024】
光のいくらかまたはすべてが、試料ホルダに到達することが阻止され得る。いくつかの実施形態では、これは、周囲光ノイズのさらなる低減と、生体試料のより正確な識別とをもたらし得る。
【0025】
遮光構造体は、3D印刷された構造でよい。
いくつかの実施形態では、これは、周囲光ノイズの簡単で安価な低減をもたらし得る。
【0026】
システムは試料ホルダを備え得る。
試料ホルダはキュベットでよい。
【0027】
キュベットは、複数の真っすぐで透明な側面を備え得る。
いくつかの実施形態では、これは、屈折による測定誤差を低減して、生体組織のより正確な識別をもたらし得る。
【0028】
光源はLEDを備え得る。
いくつかの実施形態では、これは、生体試料を識別するとき、より正確な結果をもたらす、狭いスペクトル帯域幅を有する光を放射するための安価で簡単なやり方をもたらし得る。
【0029】
光源は赤外LEDを備え得る。
いくつかの実施形態では、赤外光が生体組織からの吸収値を高める結果となり得、種々の生体試料を区別することがより容易になる。
【0030】
光源はレーザダイオードを備え得る。実質的に単色の光はレーザ光でよい。
いくつかの実施形態では、これは、生体試料をより正確に識別する高度に単色の光源をもたらし得る。
【0031】
光源はチューナブルレーザを備え得る。
いくつかの実施形態では、これによって、生体試料の吸収値が波長の範囲にわたって判定され得るように、放射された光の波長が変化され、生体試料が、より正確に識別され得る。
【0032】
光源によって放射される実質的に単色の光は、300nm~5000nmの範囲の波長にピーク強度を有し得る。
【0033】
好ましくは、光源によって放射される実質的に単色の光は、500nm~2000nmの範囲の波長にピーク強度を有し得る。
【0034】
より好ましくは、光源によって放射される実質的に単色の光は、800nm~1000nmの範囲の波長にピーク強度を有し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、波長のこの範囲が生体組織からの吸収値を高める結果となり得、種々の生体試料を識別することがより容易になる。
【0036】
光源によって放射される実質的に単色の光は、200nm未満のスペクトル帯域幅を有し得る。
【0037】
好ましくは、光源によって放射される実質的に単色の光は、100nm未満のスペクトル帯域幅を有し得る。
【0038】
より好ましくは、光源によって放射される実質的に単色の光は、50nm未満のスペクトル帯域幅を有し得る。
いくつかの実施形態では、これによって測定の精度および再現性が高まり得る。
【0039】
光検知器は光ダイオードを備え得る。
いくつかの実施形態では、これによって、生体試料によって反射または透過された光の量を検知するための、安価で正確なやり方がもたらされ得る。
【0040】
光ダイオードは、300nm~5000nmの範囲の波長において最大感度を有し得る。
【0041】
好ましくは、光ダイオードは、500nm~2000nmの範囲の波長において最大感度を有し得る。
【0042】
より好ましくは、光ダイオードは、800nm~1000nmの範囲の波長において最大感度を有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、これによって、光ダイオードの最大感度が光放射体のピーク強度と一致し得、測定がより正確になる。
【0044】
光源と光検知器とが、単一の集積回路パッケージで提供され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、簡単で安価な既製のセンサパッケージを使用することが可能になり得る。
【0045】
システムは、光源および光検知器を保持するための基礎支持部をさらに備え得る。
いくつかの実施形態では、これによって、光源および光検知器が所定位置にしっかりと保持され得、測定の再現性および精度が高まり得る。
【0046】
コントローラは、放射された光と検知された光との比に基づいて吸収値を計算し、吸収値に基づいて生体試料を識別するように構成され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、これは、生体試料を識別する簡単で正確なやり方を提供する。
【0048】
コントローラは、光センサの出力測定値に基づいて吸収値を計算するように構成され得る。
【0049】
コントローラは、光センサの出力測定値と光センサの最大出力との比に基づいて吸収値を計算するように構成され得る。
【0050】
コントローラは、計算された吸収値に基づいて、既知の生体組織のルックアップテーブルから生体組織を識別し得る。
【0051】
コントローラは、光センサを使用して複数の測定を行い、平均吸収値を計算するように構成され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、吸収値がより正確に判定され得る。
【0052】
システムは、識別された生体試料をユーザに示すための、コントローラに接続可能な表示器をさらに備え得る。
いくつかの実施形態では、これによって、ユーザは、生体試料の迅速で簡単な識別を行うことが可能になり得る。
【0053】
コントローラは、光センサによって取得された測定値を表示器に示すようにさらに構成され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、ユーザは、測定値の精度を検査することが可能になり得る。
【0054】
システムは、表示器とコントローラとに接続可能な入力装置をさらに備えてよく、ユーザが、試料の測定値を採取し始めること、および/または以前に取得された測定値を解析のためにロードすること、および/または測定値を種々のプログラムにエクスポートすること、および/または測定値を消去することを可能にする。
【0055】
いくつかの実施形態では、これは、ユーザに、システムを制御し、測定データをさらに処理するための簡単なやり方を提供し得る。
【0056】
生体試料を識別するステップは、生体試料が、健全な組織または病変組織もしくは悪性組織に関連するかどうかを識別するステップを含み得る。
【0057】
本開示の第2の態様では、組織の生体試料を取得するための生検装置が提供される。生検装置は、生検針と、生体試料を保持するための試料ホルダと、試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステムとを備える。システムは、試料ホルダに向けて実質的に単色の光を放射するための光源と、生体試料によって反射または透過された光の量を検知するための光センサであって、検知した光の量を指示する測定値を出力するように構成された光センサとを備える。システムは、光センサの出力測定値に基づいて生体試料を識別するように構成されて光センサに接続されたコントローラをさらに備える。
【0058】
いくつかの実施形態では、これによって、外科医は、生検装置を用いて取得した生体試料を迅速に初期識別して、より効果的な生検手順を実行することが可能になり得る。
【0059】
システムは、試料ホルダを保持するための遮光構造体をさらに備え得る。遮光構造体は、遮光構造体が試料ホルダを保持するとき、いかなる周囲光も試料に到達するのを阻止するように構成され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、これは、光の測定における周囲光ノイズを低減することによって、生体試料のより正確な識別をもたらし得る。
【0061】
遮光構造体は不透明でよい。
いくつかの実施形態では、これは、周囲光ノイズのさらなる低減と、生体試料のより正確な識別とをもたらし得る。
【0062】
光源はレーザダイオードを備えてよく、実質的に単色の光はレーザ光でよい。
いくつかの実施形態では、これは、生体試料をより正確に識別する、高度に単色の光源をもたらし得る。
【0063】
光源によって放射される実質的に単色の光は、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nmの範囲の波長にあるピーク強度を有し得る。
いくつかの実施形態では、波長のこの範囲が生体組織からの吸収値を高める結果となり得、種々の生体試料を識別することがより容易になる。
【0064】
光源によって放射される実質的に単色の光は、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満のスペクトル帯域幅を有し得る。
いくつかの実施形態では、これによって測定の精度および再現性が高まり得る。
【0065】
光検知器は光ダイオードを備え得る。
光ダイオードは、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nmの範囲の波長において最大感度を有し得る。
【0066】
光源と光検知器とは、試料ホルダの同じ側に配置され得る。
いくつかの実施形態では、これは、簡単で頑健なセットアップをもたらし得、測定の再現性および精度を生じさせ得る。
【0067】
光源および光検知器は、試料ホルダの内側に配置され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、生体サンプルがより正確に識別され得る。
光源および光検知器は、単一の集積回路パッケージで提供され得る。
【0068】
コントローラは、放射された光と検知された光との比に基づいて吸収値を計算するか、または光センサの出力測定値と光センサの最大出力との比に基づいて吸収値を計算して、吸収値に基づいて生体試料を識別するように構成され得る。
いくつかの実施形態では、これによって、吸収値がより正確に測定され得る。
【0069】
コントローラは、計算された吸収値に基づいて、既知の生体組織のルックアップテーブルから生体組織を識別し得る。
【0070】
コントローラは、光センサを使用して複数の測定を行い、平均吸収値を計算するように構成され得る。
【0071】
本発明の第2の態様では、光源、光検知器、およびコントローラを有するシステムを使用して、試料ホルダの中の生体試料を識別するための方法が提供される。この方法は、光源から試料ホルダ内の試料に光を放射するステップと、生体試料によって反射または透過された光の量を、光検知器を用いて検知するステップと、光検知器からの、検知された光の量を指示する測定値をコントローラに出力するステップと、コントローラを使用して、光センサの出力信号に基づいて生体試料を識別するステップとを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、これは、安価で簡単で、正確なやり方で、生体試料を識別することができる方法をもたらし得る。
【0073】
この方法は、遮光構造体を使用して、いかなる周囲光も試料に到達するのを阻止するステップをさらに含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、これは、光の測定における周囲光ノイズを低減することによって、生体試料のより正確な識別をもたらし得る。
【0075】
生体試料を識別するステップは、放射された光と検知された光との比に基づいて吸収値を計算するステップと、吸収値に基づいて生体試料を識別するステップとを含み得る。
【0076】
生体試料を識別するステップは、光センサの出力測定値と光センサの最大出力との比に基づいて吸収値を計算するステップと、吸収値に基づいて生体試料を識別するステップとを含み得る。
【0077】
吸収値は、光センサによって行われる複数の測定に基づく平均吸収値でよい。
いくつかの実施形態では、これによって、吸収値がより正確に測定され得る。
【0078】
生体試料を識別するステップは、生体試料が、健全な組織または病変組織もしくは悪性組織に関連するかどうかを識別するステップを含み得る。
【0079】
本開示の理解を深めるため、および、本開示がどのように実施され得るかを示すために、次に、例としてのみ、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本開示による、試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステムの一実施形態を示す図である。
【
図4】
図1の遮光構造体、ベース構造体およびセンサパッケージをより詳細に示す図である。
【
図5】
図1のシステムを制御するためのグラフィカルユーザインターフェースのブロック図である。
【
図6】本開示による、試料ホルダの中の生体試料を識別するためのシステムを備える生検針を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、生体試料110を識別するためのシステム100の概略図を示す。
生体試料110は、たとえば生検において人体から取得された組織でよい。本システム100は、組織によって吸収された光の量に基づいて、組織のタイプを識別し、より重要なことに、組織が健全な組織であるか病変組織であるかを識別することができる。
【0082】
種々の組織が、種々の吸収スペクトルを有し、種々の波長において種々の光の量を吸収する。一定の波長の光を生体試料110に照射し、反射または透過されることで、生体試料110によって吸収されない光の量を測定することによって、組織がどのタイプか、および組織が病変かどうかを判定することができる。システム110は、たとえば生検から取得された癌の乳房組織を識別して検知するために使用され得る。930nmの波長において、悪性の乳房組織は、約0.02mm-1の吸収係数を有する健全な乳房組織と比較して、はるかに小さい約0.009mm-1の吸収係数を有する。これは、悪性の乳房組織が吸収する光が少ないことがシステム100によって検知され、悪性の乳房組織を識別して検知するために使用され得ることを意味する。
【0083】
同様に、他のタイプの組織における腫瘍が検知され得、血液の酸素化レベルが判定され得る。
【0084】
生体試料110は、キュベットまたは試験管であり得る試料ホルダ120の中に配置され得る。標準的なキュベットは、真っすぐで透明な側面を伴う正方形または長方形の断面を有し、光がキュベット内部の試料に照射されるときの屈折の影響を軽減するので、キュベットが好ましい。
【0085】
試料ホルダ120は遮光構造体130の内部に配置される。遮光構造体130は本体部分131および蓋133を有し、どちらも不透明であって、いかなる可視スペクトルおよび赤外スペクトルの周囲光も試料110に到達するのを阻止する。本体部分131は、本体部分131の一方の側の開口部から延在する長方形または正方形の内腔132を有する。試料ホルダ120は、遮光構造体130の内腔132内に配置される。
【0086】
内腔132の少なくとも一部は、試料ホルダ120の側面と係合して、試料ホルダ120を、測定中は動かないように所定位置に固定するように寸法設定される。これによって、測定の精度および再現性を高めることができる。
【0087】
遮光構造体130は、暗色の不透明プラスチックまたは金属などの複数の材料から作製され得る。遮光構造体130は、3D印刷されるかまたは成形されてよい。
【0088】
垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などのレーザダイオード141の形態の光源と光ダイオード142の形態の光検知器とを備えるセンサパッケージ140が、本体部分131の頂部における、内腔132の開口部に配設される。センサパッケージ140は、たとえばVishay VCNL36887Sでよく、これは既製のICパッケージであり、光源として垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を使用するものである。これによって、システム100の簡単で安価な構築が可能になる。レーザダイオード141および光ダイオード142は、ベース構造体150によって所定位置に保持され、支持される。ベース構造体150は、プラスチックから作製され得、3D印刷された構造体でよい。いかなる周囲光も試料110に到達するのを阻止されるように、センサパッケージおよび内腔132の開口部の上に遮光構造体130の蓋133が配置される。これによって、測定値を得て生体試料110を識別するとき、周囲光ノイズを低減する。
【0089】
レーザダイオード141は、実質的に単色であり所定の波長においてピーク強度を有する光を放射する。レーザダイオード141によって放射される光は、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nm、より好ましくは930nmの範囲の波長にあるピーク強度を有し得る。
【0090】
皮下脂肪および閉経後の乳房組織などの複数の生体組織が、約930nm付近に吸収ピークを有することが示される。これは、約930nmの波長の光が、人の脂肪または乳房組織の試料を通して放射されると、他の波長の光よりも大きな割合の波長の光が吸収され、異なる組織の間の吸収値におけるわずかな差を評価することが容易になることを意味する。したがって、約930nmの波長の光は、生体試料120によってより多く吸収され、生体試料120のより正確な識別をもたらすことになる。
【0091】
レーザダイオード141によって放射される光は、狭いスペクトル帯域幅を有する。スペクトル帯域幅は、最大強度の半分における放射された光の帯域幅として定義される。狭いスペクトル帯域幅は、より単色な光をもたらすことになり、したがって、単一の波長において、他の波長と比較して、より多くの光を放射することになる。光源によって放射される実質的に単色の光は、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満のスペクトル帯域幅を有し得る。光ダイオード142が他の波長の光による影響を受けるので、これはまた、生体試料のより正確な測定および識別をもたらすことになる。
【0092】
光ダイオード142のピーク感度または最大感度が、レーザダイオード141がピーク強度で放射する波長に近いかまたは同一になるように、光ダイオード142は、好ましくはレーザダイオード141の波長に一致する。
【0093】
したがって、光ダイオード142は、300nm~5000nm、好ましくは500nm~2000nm、より好ましくは800nm~1000nm、より好ましくは930nmの範囲の波長において最大感度を有し得る。
【0094】
レーザダイオード141と光ダイオード142とが、両方ともコントローラ160に接続される。コントローラは、たとえばSTMicroelectronics製のSTM32F407VGT6などのマイクロコントローラでよい。
【0095】
コントローラ160は、光ダイオード142によって取得された測定値をユーザに示すことができる表示器170に接続される。表示器170はまた、ユーザがコントローラ160に命令を提供することを可能にするための入力装置を備える。この入力装置は、たとえばタッチスクリーン、マウスまたはキーボードの形態であり得る。入力装置は、GUIと共に、ユーザが、レーザダイオード141および光ダイオード142を使用して測定を開始することによって生体試料110の分析を始めること、生体試料の以前の測定値をロードすること、測定値をファイルとして外部プログラムもしくは記憶装置にエクスポートすること、または測定値を消去することを可能にする(
図5を参照)。
【0096】
医師は、生体試料を識別して、生体試料110が病変組織かどうかを判定するために、最初に患者から生体試料110を取得する。次いで、生体試料110が試料ホルダ120の中に置かれ、次に、試料ホルダ120が遮光構造体130の本体部分131の内腔132の中に置かれる。内腔132は、試料ホルダ120を、測定中に動かないように、しっかりと保持するように寸法設定される。次いで、内腔132の開口部の上に、レーザダイオード141および光ダイオード142を備えるセンサパッケージ140が配置され、内腔132の中の試料110に周囲光が到達することのないように、センサパッケージ140および開口部の上に蓋133が配置される。
【0097】
ユーザは、入力装置および表示器170を使用して、生体試料110の分析を開始することができる。これによって、コントローラ160がレーザダイオード141をオンにし、レーザダイオード141が、生体試料110に向けて内腔132へと実質的に単色の光を放射する。光が試料に110に当たると、光のうちの一部は試料110によって吸収される一方、光の一部は試料110によって反射されることになる。
【0098】
次いで、試料110によって反射された光の量が光ダイオード142によって検知される。光ダイオード142は、検知された光の量を、電圧または電流の形態であり得る電気信号に変え、次いでこれがコントローラ160に送られる。
【0099】
次いで、コントローラ160は、レーザダイオード141から放射された光と光ダイオード142によって検知された光との既知の強度の比に基づいて生体試料の吸収値を計算することになる。あるいは、コントローラ160は、たとえば光ダイオード142の出力測定値と光ダイオード142の最大出力との比に基づいて吸収値を計算することにより、光ダイオード142の出力測定値のみに基づいて吸収値を計算することになる。
【0100】
光ダイオード142は、所定の時間期間にわたっていくつかの個別の測定値を得て、これらをコントローラに送ってよい。次いで、コントローラは、得られた複数の測定値に基づいて生体試料110の平均吸収値を計算することができる。
【0101】
コントローラ160は、次いで、判定された生体試料110の吸収値およびレーザダイオード141によって放射された光の既知の波長に基づいて、生体試料110を識別することができる。たとえば、コントローラは、生体試料が健全な乳房組織なのか、悪性の乳房組織なのかを判定し得る。これは、たとえば、コントローラ160によって、既知の吸収値および波長のルックアップテーブルを調べる、外部データベースを調べる、または実験データに基づいて吸収値の所定の上限および下限を使用して、行われ得る。
【0102】
次いで、光ダイオード142によって取得された測定値は、計算された吸収値および識別された生体試料110と共に、表示器170に表示される。次いで、ユーザは入力装置を使用して、さらなる処理のための別のプログラムまたは記憶のための外部記憶装置にデータをエクスポートすることができる。あるいは、ユーザは、データを消去して生体試料110の新規の分析を開始するか、または別の生体試料の以前の分析からのデータをロードすることができる。
【0103】
したがって、本システム100は、生体試料を迅速で、正確なやり方で識別するための自動システムを提供し、試料が病変組織かどうかの判定を可能にするものである。システム100は、使用するのが簡単であり、頑健および安価に作製され、病変生体組織の正確な判定を提供することができる。センサパッケージ140およびコントローラ160は、比較的安価な既製のIC部品であり得る。遮光構造体130およびベース構造体150は、3D印刷の構造体であり得る。したがって、本システムは、分光光度計のコストの数分の1で、顕微鏡を使用する生検および組織分析を実行するために必要な訓練なしで、生体試料の正確で自動的な識別を提供することができる。
【0104】
図2A~
図2Cは、遮光構造体130の本体部分131の別の詳細図を示す。
図2Aは本体部分131の断面側面図であり、
図2Bは、本体部分131の断面正面図を示す。
【0105】
図2Aおよび
図2Bに示されるように、本体部分131は直方体の形状であり、本体部分131を部分的に通って延在する内腔132を備える。内腔132は、本体部分131の一方の側に単一の開口部を有する。内腔の断面は、
図2Cに示されるように正方形または長方形であり、内腔132は第1の部分132Aおよび第2の部分132Bを備える。第1の部分132Aは、開口部から始まり、開口部から遠位にある第2の部分132Bよりも広い。したがって、第1の部分132Aの内腔の対角線の幅は、第2の部分132Bの内腔の対角線の幅よりも大きい。第2の部分132Bは、この場合は標準サイズのキュベットである試料ホルダ120の側面と係合するように寸法設定される。これは、キュベットが、本体部分131の内部に固定されて、試料110の測定中は動かないことを意味する。第1の部分132Aは、キュベットが容易に本体部分132へ挿入される、および本体部分132から取り外されることを可能にするように、より広くなる。
【0106】
本体部分131は、本体部分131の側面から内腔132の開口部に接続された側開口134をさらに備える。側開口134はスリットまたはチャネルの形態でよい。側開口によって、レーザダイオード141および光ダイオード142を含むセンサパッケージ140を、内腔142の開口部の上に配置することが可能になる。センサパッケージ140からのワイヤは、側開口134を通って遮光構造体130に出入りすることができる。
【0107】
本体部分131は、内腔132の開口部と反対側の底部に正方形の窪みも備える。この溝は、任意選択であるが、対応する突起部分と係合して、本体部分131の安定した固定のために使用され得る。
【0108】
図2Cは、本体部分131の上面図を示す。これは、本体部分131の長方形または正方形の断面、ならびに第1の部分132Aおよび第2の部分132Bの正方形の断面を明瞭に示し、第2の部分132Bの対角線の幅が第1の部分132Aよりも小さいことも示す。本体部分131の垂直の側面に内腔132の開口部を接続する側開口134も示される。
【0109】
上述のように、本体部分は、たとえば、プラスチックまたは金属などの不透明な材料から作製され得、3D印刷または成形され得る。
【0110】
図3Aは、遮光構造体の蓋133の上面図を示す。周囲光が生体試料110に到達しないように、蓋は、内腔132の開口部にわたって適合するように寸法設定された不透明な方形の要素であり、レーザダイオード141および光ダイオード142を含むセンサパッケージ140を密閉する。蓋133には記号133Aが備わっていてよい。
図3Bは、蓋133の側面斜視図を示す。
【0111】
図4は、遮光構造体130、センサパッケージ140およびベース構造体150の配置の概略クローズアップを示す。
図1を参照しながら既に言及されたように、生体試料110は、遮光構造体の内腔132内に配置された試料ホルダ120の中に配置される。
図4は、内腔132の第2の部分132Bが試料ホルダ120の底部とどのように係合して、試料ホルダ120を所定位置に保持するかを示す。
【0112】
センサパッケージは、本体部分131の頂部において内腔132の開口部の上に配置され、そのため、レーザダイオード141が、内腔132の中へ光を放射することができ、光ダイオードが、内腔132の中の試料110から反射された光を検知することができる。センサパッケージの一部が、遮光構造体130の外へ側開口134を通って延在し得、ベース構造体に固定されて、センサパッケージ140を所定位置に保持する。あるいは、センサパッケージ140の全体が遮光構造体の内部に配設され得、センサパッケージ140をコントローラ160に接続するワイヤを担持する要素のみが側開口134を通って延在してベース構造体150に固定される。蓋133は、内腔の開口部およびセンサパッケージ140の上に配置され、いかなる周囲光も内腔132に入って試料110に到達するのを阻止する。
【0113】
図5は、システム100を制御するために使用されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)のブロック図を示す。
【0114】
最初に、GUIによって、ユーザは、コントローラ160の通信(COM)ポートを選択することができる。コントローラ160は、種々のセンサパッケージ140に接続され得る複数のCOMポートを有し得る。たとえば、種々の波長の光源を有する複数のセンサパッケージが使用され得、光の種々の波長において試料の測定が行われ得る。
【0115】
次いで、コントローラ160は選択されたCOMポートを開き、GUIがコンボボックスをユーザに提示する。次いで、ユーザは、複数の異なる選択肢からの選択が可能になる。
【0116】
ユーザが、「分析を開始するか?」を選択すると、コントローラ160が、センサパッケージ140に、生体試料110の測定を開始するようにとの命令を送る。表示器170は、光ダイオード142から得られた実況の測定値ならびに識別された生体試料を表示することになる。
【0117】
ユーザが「データをロードする」を選択すると、以前の測定データがロードされ、表示器170にグラフとして表示され得る。
【0118】
ユーザが「データを消去するか?」を選択すると、GUIに存在する測定データが消去され、GUIはユーザを開始へ戻すことになる。
【0119】
ユーザが「.CVSにエクスポートするか?」を選択すると、光ダイオード142およびコントローラ160から取得された測定データが、記憶装置に、.CVSファイルとして保存され得る。次いで、データは再分析のためにプログラムにロードされてよく、またはさらなる分析のために種々のプログラムにおいて使用されてもよい。
【0120】
図6は、生検装置によって取得された生体試料を識別するための統合システムを有する生検装置200の概略図を示す。生検装置200は、患者から組織の生体試料210を取得するための生検針250を備える。この生体試料210は、たとえば乳房組織であり得る。
【0121】
生検装置200は、生検針250を用いて取得された生体試料210を保持するための試料ホルダ220をさらに備える。試料ホルダ220は、生検装置200のハンドル270の中に配設され得る。生体試料210は、生検針250から試料ホルダ220へ生体組織210を引き寄せる真空吸引器(図示せず)を用いて、生検針250から試料ホルダ220へ移送され得る。試料ホルダ220は、不透明であり、周囲光が試料ホルダ220および生体試料210に到達するのを阻止する遮光構造体230内に配設される。試料ホルダ220は遮光構造体230から取外し可能であり得る。垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などのレーザダイオード241の形態の光源と光ダイオード242の形態の光検知器とを備えるセンサパッケージ240も、試料ホルダ220の片側において遮光構造体230内に配置される。センサパッケージ240は、
図1~
図4のセンサパッケージ140と同一でよい。
【0122】
センサパッケージ240は、レーザダイオード241によって放射された光が、生体試料210によって吸収または反射される以前に透明な試料ホルダ220を通過するように、遮光構造体230内ではあっても試料ホルダ220の外部に配置され得る。次いで、反射された光は光ダイオード242によって検知される。センサパッケージ240は、遮光構造体230内に固定されて留まり得るが、試料ホルダ220は取外しまたは交換が可能である。
【0123】
生検装置200は、センサパッケージ240のレーザダイオード241と光ダイオード242とに接続されたコントローラ260をさらに備える。コントローラ260は
図1~
図4のコントローラ160と同一でよく、生体試料210の吸収値を計算するように構成され得る。たとえば、この吸収値は、レーザダイオード241からの放射された光の既知の強度と、光ダイオード242によって検知された光との比に基づいて、または、たとえば、光ダイオード242の出力測定値と光ダイオード242の最大出力との比に基づいて吸収値を計算することにより、光ダイオード242の出力測定値のみに基づいて、計算され得る。コントローラ260は、次いで、生体試料210の判定された吸収値、およびレーザダイオード241によって放射された光の既知の波長に基づいて、生体試料210を識別することができる。たとえば、コントローラ260は、生体試料が健全な乳房組織なのか悪性の乳房組織なのかを判定し得る。コントローラ260は、識別された生体組織を外科医に指示することができる外部表示器(図示せず)または組み込まれた表示器(図示せず)に接続され得る。表示器は、ユーザがコントローラ260に命令を提供することを可能にするための入力装置も備え得る。
【0124】
外科医は、患者から生体試料210などの生体組織試料を取得して、たとえば、生体試料210が健全な組織か悪性組織かといった、生体試料210の生体組織のタイプの初期の指標を迅速に得るために、生検装置200を使用し得る。これにより、外科医は、生体試料を分析のために研究所に送って結果を待つ前に、別の生検が必要かどうかについて、より多くの情報に基づく判断を下すことが可能になり得る。したがって、生検装置200は、生検手順を、外科医および患者にとってより効果的かつ効率的にするのに役立ち得る。
【0125】
当業者には様々な変更形態が明白になるはずである。
試料ホルダ120は、キュベット、試験管、または生体試料を保持するのに適した任意の他のタイプの手段でよい。
【0126】
システム100は遮光構造体130を備えなくてもよい。
遮光構造体130は、直方体形状ではなくてもよく、たとえば球状、ピラミッド形など、任意の他の適切な形状でもよい。
【0127】
本体部分131の内腔132は、第1の部分132Aおよび第2の部分132Bを備えなくてよく、むしろ一定の幅を有する単一の内腔でもよい。
【0128】
遮光構造体130、230は、不透明で、周囲の可視光や赤外光を阻止することができ、プラスチックまたは金属に限定されない、任意の材料から作製されてよい。
遮光構造体130は、任意の適切なやり方で作製されてよく、3D印刷または成形に限定されない。
遮光構造体130には窪み135または側開口134がなくてもよい。
【0129】
内腔132は、正方形の断面形状に限定されず、たとえば円形または三角形の断面形状などの他の形状をとってもよい。
遮光構造体は蓋133を備えなくてもよい。
蓋133は、周囲光が内腔132に入るのを阻止することができる限り、いかなる特定の形状にも限定されない。
【0130】
システムはベース構造体150を備えなくてもよい。
ベース構造体150は、任意の適切な材料から作製され得、プラスチックに限定されない。ベース構造体150は、任意の適切な製造法で作製されてもよい。
【0131】
レーザダイオード141、241および光ダイオード142、242は、同一のセンサパッケージ140、240の中に設けられなくてもよく、個々のパッケージで提供される個別の部品でもよい。
【0132】
光源は、レーザダイオード141、241に限定されず、たとえばLEDまたはチューナブルレーザでもよい。
【0133】
光検知器は、光ダイオード142、242に限定されず、光導電セル、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)または他の適切な光検知器などの種々の光検知器であり得る。
【0134】
コントローラ160、260は、マイクロコントローラ、またはたとえばPCなど、データを記憶し、操作することができる、任意の他のタイプの適切なプロセッサでよい。
【0135】
システム100は表示器170を備えなくてもよい。
表示器170は、タッチスクリーンまたは標準的な表示器170でよい。
【0136】
システム100は入力装置を備えなくてもよい。
生検装置200は真空吸引器を備えなくてもよい。生体試料210は、たとえば重力などの他の手段によって、針250から試料ホルダ220に移送され得る。
生検装置200は遮光構造体230を備えなくてもよい。
【0137】
レーザダイオード241から放射された光が試料ホルダ220を通過しないように、センサパッケージ240が試料ホルダ220の内側に配置され得る。
センサパッケージ240は、試料ホルダ220のいずれか一方の側に配置され得る。
レーザダイオード241と光ダイオード242とは、試料ホルダ220の反対側に配置され得る。
【0138】
試料ホルダ220は、生検装置200のハンドル270の中に配置されなくてもよく、別の適切な位置に配置されてもよい。コントローラ260は、ハンドル270の中に配置されなくてもよく、別の適切な位置に配置されてもよい。
【0139】
生検装置200は表示器を備えなくてもよい。むしろ、生検装置200は、ユーザに生体組織のタイプを指示するための、たとえば表示灯の形態の別のタイプの指示器を備え得る。
【0140】
上記のすべてが本開示の範囲内に完全に含まれ、上述の特徴の1つまたは複数の組合せは、上記で開示された特定の組合せに限定されることなく、適用される代替実施形態の基本を形成するものと考えられる。
【0141】
この点を考慮して、本開示の教示を実施する多くの代替形態があるはずである。当業者なら、上記開示を、この技術における自身のよくある一般的な知識に照らして、本開示の範囲内で、上記で開示されるか、または上記から導出可能な、同じ技術的効果のいくつかまたはすべてを保持したまま、それ自体の環境および要件に適合するように変更して適合させることができると予期される。そのような等価物、変更形態または適応物はすべて、本開示の範囲に含まれる。
【国際調査報告】