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特表2024-524990局所麻酔薬を含む架橋ヒアルロン酸組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】局所麻酔薬を含む架橋ヒアルロン酸組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240702BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240702BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240702BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 8/96 20060101ALI20240702BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K47/36
A61P23/02
A61K9/06
A61P19/02
A61K45/00
A61K47/34
A61K8/73
A61K8/86
A61K8/96
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023579167
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022068056
(87)【国際公開番号】W WO2023275241
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21183109.4
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522122798
【氏名又は名称】バイオポリメリ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ベネディクティス,ヴィンセンゾ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス,ピエラ アンジェラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC01
4C076EE23P
4C076EE37P
4C076FF02
4C076FF04
4C076FF35
4C076FF68
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD331
4C083AD332
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
4C084AA17
4C084AA27
4C084MA28
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA11
4C084ZA032
(57)【要約】
本発明は、局所麻酔剤を含有するポリグリセロールポリグリシジルエーテルと架橋したヒアルロン酸、その調製方法ならびに治療、化粧品におけるおよび担体としてのその使用に言及する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
A)式(I)
【化1】

(I)、
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
式(II)
【化2】

(II)
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物
からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
B)式(III)
【化3】

(III)、
の1つ以上のポリグリセロール、
式(IV)
【化4】

(IV)、
の1つ以上のポリグリセロール、
および式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセリンとの混合物
からなる群から選択される1つ以上のポリグリセロール、
C)1つ以上の局所麻酔剤またはその塩、ならびに
D)必要に応じて、1つ以上の許容可能な賦形剤または担体
を含み、
各Rが、R2、3、およびRからなる群から独立して選択され、


であり、


であり、


であり、


であり、
各Rが、RおよびRからなる群から独立して選択され、
bが、1~70からなる群から選択される整数であり、
cが、0~70からなる群から選択される整数であり、
dが、0~70からなる群から選択される整数であり、
eが、1~50からなる群から選択される整数であり、
fが、0~50からなる群から選択される整数であり、
gが、0~50からなる群から選択される整数であり、
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸が、式1:
【数1】

(式.1)
[式中、
MWrep.unitが、ヒアルロン酸モノマー繰り返し単位の分子量である401Daであり、
が、以下の式2:
【数2】

(式2)
(G´が、回転式レオメータを使用するレオロジー測定によって実験的に得られ、
R・Tが、熱エネルギーであり、
cが、ヒアルロン酸濃度であり、
が、ヒアルロン酸の数平均分子量である)
の逆式を使用して数学的に計算される]
によって測定して、0.030~0.900%の架橋パーセンテージ(C.D.)を有し、
式(III)または式(IV)の前記ポリグリセロールが、UV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー
(SEC/UV/MS)によって測定して、240から3.700Daの重量平均分子量(M)を有し、
但し、
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸において、少なくとも1つのRがRであり、
式(III)または式(IV)の前記ポリグリセロールにおいて、R1が存在する場合、RがR以外である、組成物。
【請求項2】
式(I)、もしくは式(II)の前記架橋ヒアルロン酸、またはそれらの混合物が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15000Daの重量平均分子量およびHClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7000g/eqのエポキシ当量を有するPPEを架橋剤として使用して得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(III)または式(IV)の前記ポリグリセロールの分子量が、UV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)による方法によって測定して、240から3700Daである、請求項1から2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の式(III)もしくは式(IV)の前記ポリグリセロールまたはそれらの混合物の濃度が0.45~25mg/mLである、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
式(III)または式(IV)の前記1つ以上のポリグリセロールが、
式(1)の化合物、
【化5】

(1)、
式(2)の化合物、
【化6】

(2)、
式(3)の化合物、
【化7】

(3)、
式(4)の化合物、
【化8】

(4)、
式(5)の化合物、
【化9】

(5)、
式(6)の化合物、
【化10】

(6)、
およびそれらの混合物、
からなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸中のヒアルロン酸の濃度が1~50mg/mlである、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸のヒアルロン酸の分子量が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法で測定して、100~3000kDaである、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記局所麻酔剤が、アムブカイン、アモラノン、アミロカイン、アルケイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタンニカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチルイソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジシクロミン、エクゴニジン、エクゴニン、エチドカイン、ベータ-エウカイン、ユープロシン、フェナルコミン、ファルモカイン、フロモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p-アミノ安息香酸イソブチル、メシル酸ロイシノシル、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、ミルテカイン、ナエカイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセタジン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、プソイドカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を式(V)の化合物
【化11】

(V)、
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
と架橋させる工程と、
(ii)(A)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii)必要に応じて、工程(ii)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv)必要に応じて、工程(iii)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を式(VI)の化合物
【化12】

(VI)、
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、


であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
と架橋させる工程と、
(ii´)(A)式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´)必要に応じて、工程(ii´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´)必要に応じて、工程(iii´)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
i´´)ヒアルロン酸を式(V)、
【化13】

(V)、
および式(VI)
【化14】

(VI)、
の化合物
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、
は、

であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
を含む混合物と架橋させる工程と、
(ii´´)(A)式(I)および式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、ならびに(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(I´´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´´)必要に応じて、工程(ii´´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´´)必要に応じて、工程(iii´´)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができる、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(VI)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
i´´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物および式(VI)の化合物を含む混合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii)の後に、あるいは工程(iii)の後に、あるいは工程(iv)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v)を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii´)の後に、あるいは工程(iii´)の後に、あるいは工程(iv´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´)を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、工程(ii´´)の後に、あるいは工程(iii´´)の後に、あるいは工程(iv´´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´´)を含む方法によって得ることができる、請求項9または10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(i)の後に追加の洗浄工程(vi)をさらに含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(i´)の後に追加の洗浄工程(vi´)をさらに含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、工程(i´´)の後に追加の洗浄工程(vi´´)をさらに含む方法によって得ることができる、請求項9から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
注射可能な組成物の形態である、請求項1から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
式(I)、式(II)の前記1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはそれらの混合物の治療有効量、
式(III)もしくは式(IV)の前記1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の治療有効量、
1つ以上の麻酔剤の治療有効量、および
必要に応じて、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を、治療において使用するために含む医薬組成物である、請求項1から13のいずれかにおいて定義される医薬組成物、
あるいは、
式(I)、式(II)の前記1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはその混合物の化粧品的に有効な量、
式(III)もしくは式(IV)の前記1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の化粧品的に有効な量、
1つ以上の麻酔剤の化粧品的に有効な量、および
必要に応じて、1つ以上の化粧品的に許容される賦形剤または担体を、スキンケア剤として、特に皮膚充填剤として含む化粧品組成物である、請求項1から13のいずれかにおいて定義される組成物の使用。
【請求項15】
担体としての、特に薬物送達系としての、請求項1から13に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月1日に出願された欧州特許出願第21183109.4号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ヒアルロン酸組成物の技術に属し、特に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルと架橋したヒアルロン酸および局所麻酔剤を含有する組成物に属する。
【背景技術】
【0003】
局所麻酔薬(LA)は、全身麻酔薬とは対照的に、意識を失うことなく身体の特定の位置で痛覚の欠如を引き起こす医薬である。特に、LAは、ナトリウムイオンの流入(取り込み)を阻害することによって神経伝導を遮断する。ほとんどの場合には、これは神経膜を通って軸索原形質に拡散し、そこでこれらはナトリウムチャネルに入り、それらが活性状態または開放状態をとるのを防ぐ。
【0004】
局所麻酔剤は、親油性基(芳香環)、親水性基(第三級アミン)および中間連結基(エステルまたはアミド)によって形成される。これらの各基(構成成分)は、脂質および水への溶解性に関して麻酔分子に別個の特性を付与することが知られており、これは、効率的な作用持続時間および短い開始時間を有するために重要である(すなわち、全局所麻酔薬投与の終了と完全な感覚または運動ブロックとの間の時間間隔)。一方で、芳香環はLAの脂溶性を改善すると考えられており、これは、アミン基上の脂肪族置換によってさらに増強され得る。より大きい脂溶性は、神経鞘、および神経幹を含む個々の軸索の神経膜を介して拡散を増強する。この特性は、投与された用量のより大きな生物学的に利用可能な部分がニューロンに入ることができるため、有効成分の麻酔効力と相関している。さらに、他方では、アミン基は、中性の(イオン化されていない)第三級アミンとして、または正に帯電した(イオン化された)第四級塩として存在し得る。イオン化されていない第三級アミンを有する局所麻酔薬の中性形態は、脂溶性であり、したがって生物学的に利用可能な形態(したがって、活性形態)である。代わりに、正に帯電した形態(第四級アンモニウム塩を有する)は水溶性であり、したがって生物学的に利用可能ではない(すなわち、非活性)。しかしながら、正に帯電した形態(生物学的に利用可能な活性形態でなくても)は、麻酔薬の作用機序に積極的に関与する可能性があり、受容体部位に位置するタンパク質に麻酔薬カチオンをより強固に結合させることができ、局所麻酔作用の持続時間が長くなると思われる。
【0005】
典型的には、局所麻酔薬は、LAの塩(塩酸塩など)および架橋多糖(ヒアルロン酸など)で構成されるヒドロゲルを含有する滅菌注射可能な剤形の形態で投与される。局所麻酔塩を含有するこれらのヒドロゲルは、特にそれらが審美的目的または変形性関節症の処置のための充填剤として使用される場合、細い針を通して投与される。
【0006】
残念ながら、これらの注射可能な剤形にはいくつかの欠点がある。一方で、ヒドロゲルに含有される局所麻酔薬の(塩酸塩)塩は、主にその水溶性の正に荷電した形態(すなわち、局所麻酔薬の非活性形態)であり、したがってヒドロゲルの生理学的pH(すなわち、局所麻酔薬の活性形態)での脂溶性形態の沈殿を回避し、LAの望ましくない開始時間を増加させ、LAのニューロンへの浸透能力を低下させることによって局所麻酔薬の有効性を損なう。さらに、他方では、架橋度の高い架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)は、不適切な乏しい流動性を示す。実際、架橋のパーセンテージは、ヒドロゲルの弾性および粘度に正に寄与するが、微細針による押出性特性を損ない、痛みおよび組織への機械的損傷に対する応答としての炎症反応も引き起こす(注射中の針の貫通および粘弾性ヒドロゲルが周囲の組織に及ぼす力によって引き起こされる)。さらに、(架橋)ヒアルロン酸(HA)は、活性酸素種(ROS)によって生物において自然に分解され、さらなる一過性の炎症反応をもたらす可能性もある。上記のすべての理由から、架橋ヒドロゲルは、それらの組成物に局所麻酔薬を組み込んで製剤化され、最も重要なことに、局所麻酔薬はヒドロゲルの注射後短時間で作用するはずである。
【0007】
したがって、本明細書で上記に開示されているように、多くの要因が麻酔薬の中性形態の安定性を変化させ、麻酔薬の治療効果、特に治療効果の開始時間および持続時間に寄与し得る。これらの要因は、局所麻酔薬の特性(その化学構造など)またはヒアルロン酸ヒドロゲルの特性(化学組成、架橋度およびさらなる溶解化合物の存在、重量オスモル濃度および/またはイオン強度)、局所麻酔薬が溶解された媒体の重量オスモル濃度および/またはイオン強度(すなわち、架橋ヒドロゲル)、ならびにその投与に使用される滅菌方法のいずれかに関連し得る。
【0008】
麻酔剤を含有する架橋ヒアルロン酸ヒドロゲルの安定なヒドロゲルを開発するためのいくつかの戦略が最新技術で開示されている。特に、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)と架橋したヒアルロン酸およびレオロジー特性(物理的特性)が改善された麻酔剤のヒドロゲルが、最新技術で開示されている。実際、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)と架橋したヒアルロン酸および麻酔剤、ならびにグリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトールおよびラクチトールから選択される1つ以上のポリオールを含有するヒドロゲルの注射可能な水性組成物は、in vivoでのヒアルロン酸ベースのゲルの分解に対して安定性の改善を示し(ヒアルロニダーゼによる酵素分解、フリーラジカル分解、37℃での熱分解)、ヒドロゲルの貯蔵寿命を改善する。しかしながら、ヒドロゲル中に含有される麻酔剤の治療効果においてヒドロゲル内部の麻酔薬の活性形態の量を増加させる効果を有するヒドロゲル(遊離ポリグリセロール)の組成物、およびそれからの有効成分(すなわち、局所麻酔薬)の放出およびその後の麻酔剤の開始時間に対する効果がさらに低いことについては、すべての文献に記載されていない。
【0009】
あるいは、有効性を高め、特に局所麻酔剤の開始時間を短縮するためのいくつかの戦略が、最新技術において開示されている。それらの方法のいくつかは、局所麻酔剤の塩の変更(重炭酸対アニオンの塩酸塩の変更)および/または8を超えるpHの使用に基づいていた。残念なことに、これらの方法は、ヒアルロン酸を含有する永久的または半永久的な注射可能な医療機器の調製にはあまり適用できない。他の戦略は、神経のリポタンパク質バリアを通るLAの透過性を増加させる界面活性剤またはマンニトールなどの物質の添加に焦点を当てた(すなわち、神経透過促進剤)。しかしながら、これらの神経透過促進剤の使用に関連する副作用も当技術分野で開示されている。特に、マンニトールの使用の主な欠点は、マンニトールが、注射部位における水または流体のリコールに起因する重篤な有害作用(浮腫のような)を引き起こし得る高浸透圧溶液の形態で使用されることである。したがって、高浸透圧マンニトール溶液の使用は、長期適用では示されておらず、骨関節、皮内または眼内適用のための高浸透圧溶液の形態では推奨されていない(許容できない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、当技術分野で知られていることから、バイオアベイラビリティが改善された、特に、開始時間の短縮によって引き起こされる治療効果の向上を伴う1つ以上の麻酔剤を含有する適切な安定性およびレオロジー特性を有する架橋ヒアルロン酸を提供する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、安全で安定な架橋ヒアルロン酸局所麻酔剤含有組成物であって、それに含有される局所麻酔剤の活性形態の放出を促進し、速い治療効果(作用開始時間の短縮)をもたらす組成物を提供した。局所麻酔薬の非活性形態が主にヒドロゲルから放出される最新技術とは対照的である。特に、特定の濃度の遊離ポリグリセロール、ならびに機械的特性、低い酵素/酸化分解速度、およびその投与、特にその注射可能な適用に関連する望ましくない副作用を引き起こすことなくin vivo適用で使用するのに適当な生体適合性を有するPPE架橋ヒアルロン酸を含む架橋ヒアルロン酸組成物。特に、本発明者らは、麻酔剤の開始の短縮が達成されるので、ポリグリセロールジグリシジルエーテル(PPE)と架橋したヒアルロン酸と、本発明で開示される特定濃度の遊離ポリグリセロールとの組合せが、HA組成物の投与に関連する疼痛および炎症性の望ましくない副作用を軽減し得ることを見出した。この短い開始は、ヒアルロン酸の機械的特性を損なうことなく、局所麻酔活性形態のバイオアベイラビリティの増加によって引き起こされる局所麻酔薬の最も速い作用に関連する。
【0012】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、局所麻酔薬のバイオアベイラビリティの増加(局所麻酔薬の活性形態の割合を増加させる)が、遊離ポリグリセロールの制御された濃度、それらの分子量と、ヒドロゲルから周囲組織への局所麻酔薬の動的放出にも正の影響を及ぼす架橋剤PPEの構造との組合せに起因すると考える。さらに、架橋剤の構造と、HAとPPEとの間の(共有結合および非共有結合による)相互作用に由来するその凝集特性との組合せ効果に対する、PPE架橋ヒアルロン酸の機械的特性および耐分解性。特に、PPEとHAとの相互作用は、ヒドロゲルマトリックスを無傷で保持し、低い架橋度であってもインプラントに浸透して3Dネットワークを分解する酵素の能力を制限する緻密な3次元HAネットワークを作り出す。
【0013】
実験のセクションで実証されているように、本発明の組成物は、3D-HAネットワーク内の局所麻酔薬のpKa値が生理学的pHにより近付くことを可能にし、3D-HAネットワーク内で、局所麻酔薬が、所与の生理学的に許容されるpHでヘンダーソン・ハッセルバルヒの式(Henderson-Hasselbalch equation)によって予測される理論濃度よりも高い濃度の局所麻酔薬の活性形態(すなわち、生理学的pHでの脂溶性形態)を有することになる。内部での局所麻酔薬のこのような増加量が、次いで、発症時間の短縮をもたらす。実際、本発明の3D-HA組成物の内部に位置する局所麻酔薬の実験によるpKa値は、理論的なpKa値よりも低いことが示されている。
【0014】
さらに、本発明者らは、特定の濃度の遊離ポリグリセロールの存在とともに、3D-HAネットワークにより、このin vivoでの迅速な開始と本発明に開示された麻酔薬の有効性との間の強い相関関係も実証した。
【0015】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の組成物、特にPPE架橋剤と遊離ポリグリセロールとの組合せの相乗効果は、ヒドロゲル内部の局所麻酔薬のバイオアベイラビリティの変化およびヒドロゲルからの薬物の急速な拡散を与えると思われる。
【0016】
特に、架橋剤として使用されるPPEの両親媒性特性、その分子量および架橋度は、未反応PPE架橋剤の加水分解性エポキシ環開環およびヒアルロン酸鎖結合架橋剤の天然加水分解に由来する遊離ポリグリセロールの両親媒性特性と組み合わせて、マトリックス内部の麻酔薬の活性形態の予想外の安定化を与えると考えられる。これにより、麻酔剤の生物学的に利用可能な形態(形態B)のパーセンテージが、熱力学的方程式によって予測され、最新技術で知られている製品(すなわち、熱力学的pKa値は、その予測値の2.5%~10%に低下する)に見られるパーセンテージと比較して、定量的に増加し、同時に、架橋HAの三次元構造は、HAの3D架橋マトリックスからの麻酔剤の最も速い動的放出に寄与し、薬物の活性形態の急速な拡散をもたらす(その開始を短縮する)。
【0017】
最後に、PPE架橋HA、特定濃度の遊離ポリグリセロールおよび麻酔剤を含む本発明の組成物は、良好な流動特性を示す。さらに、上述のように、本発明の組成物の注射は、その適用中および適用後に患者による炎症および疼痛の知覚を低下させるかまたはそれをなくす。
【0018】
要約すると、本発明の組成物は、(a)超分岐PPE架橋剤のこのような両親媒性特性、(b)このような特定濃度の遊離超分岐ポリオール断片、および(c)それらの組合せが組成物内部の局所麻酔薬の脂溶性活性形態を増加させることを可能にするこのような遊離超分岐ポリオールの分子量を有する(すなわち、Handerson-Hasselbachの式に従って予想されるモル濃度よりも高い局所麻酔薬の形態を有する)。次に、本発明のヒドロゲル組成物の架橋3Dマトリックス(すなわち、物理的特性)は、局所麻酔薬のより多量の脂溶性活性形態のより速い動的放出を提供し、局所麻酔薬の迅速な開始をもたらす。よって、本発明の第1の態様は、
【0019】
A)式(I)、
【化1】

(I)
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
式(II)、
【化2】

(II)
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸
および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物
からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
B)式(III)、
【化3】


(III)
の1つ以上のポリグリセロール、
式(IV)
【化4】
(IV)
の1つ以上のポリグリセロール、
および式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセロールとの混合物
からなる群から選択される1つ以上のポリグリセロール、
C)1つ以上の局所麻酔剤またはその塩、および
D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体
を含む組成物であって、
式中、
各Rは、R、R、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

は、

は、

は、

ここで、各Rは、RおよびRからなるから独立して選択され、bは、1~70からなる群から選択される整数であり、cは、0~70からなる群から選択される整数であり、dは、0~70からなる群から選択される整数であり、eは、1~50からなる群から選択される整数であり、
fは、0~50からなる群から選択される整数であり、gは、0~50からなる群から選択される整数であり、式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸が、0.030~0.900%の架橋パーセンテージを有し、式(III)または式(IV)のポリグリセロールは、UV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)によって測定して、240~3.700Daの重量平均分子量(M)を有し、但し、式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸において、少なくとも1つのRはRであり、式(III)または式(IV)のポリグリセロールにおいて、R1が存在する場合、RはR以外である。
【0020】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の調製方法に関する。
【0021】
本発明の第3の態様は、治療に使用するための本発明の第1の態様の組成物に関する。
【0022】
本発明の第4の態様は、化粧品における、特に皮膚充填剤としての本発明の第1の態様の組成物の使用に関する。
【0023】
本発明の第5の態様は、担体としての、特に薬物送達系としての本発明の第1の態様の組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本出願において本明細書で使用されるすべての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される他のより具体的な定義の用語は、以下に記載されており、特に明示的に記載された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲全体にわたって均一に適用されることを意図する。
【0025】
本発明の目的のために、与えられた任意の範囲は、範囲の上限値と下限値の両方を含む。所与の範囲、例えば、温度、時間、重量などは、特に明記しない限り、近似値とみなされるべきである。本明細書で使用される「約」または「およそ」という用語は、特定の値の±10%の範囲の値を指す。例えば、「約0.5」または「およそ0.5」という表現は、0.5の±10%、すなわち0.45~0.55を含む。
【0026】
「重量パーセント(%)」という用語は、組成物の総重量に対する各成分のパーセンテージを指す。
【0027】
上に開示されているように、本発明の第1の態様は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物を含む。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含む。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含む。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物を含む。
【0028】
本発明の目的のために、「ヒアルロン酸」、「ヒアルロナン」という用語、および略語「HA」は同じ意味を有し、互換的に使用される。それらは、交互のβ-(1→4)およびβ-(1→3)グリコシド結合を介して連結された、D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンの反復モノマーからなる直鎖高分子量多糖を有するアニオン性非硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)を指す。その化学構造は、以下の式に対応する:
【化5】
【0029】
本発明の目的のために、「ヒアルロン酸」という用語は、ヒアルロン酸の薬学的または化粧品的に許容される塩などのその生理学的に許容される塩も包含する。一実施形態では、本発明の架橋多糖は、多糖がヒアルロン酸の薬学的または化粧品的に許容される塩であるものである。治療目的または美容目的で使用される場合、薬学的または化粧品的に許容される限り、使用され得るヒアルロン酸塩の種類に制限はない。ヒアルロン酸およびその塩は、一部の物理的特性が異なっていてもよいが、それらは本発明の目的のために同等であり、ヒアルロン酸の皮膚に優しい特性は、薬学的または化粧品的に許容される塩、特にそのナトリウム塩(またはヒアルロン酸ナトリウム)およびカリウム塩(ヒアルロン酸カリウム)に拡張可能である。「生理学的に許容される塩」という用語は、患者(ヒトを含む哺乳動物など)によって生理学的に許容的な塩を指す。特に、「薬学的に許容される塩」という用語は、医学的使用のために組成物を調製するための薬学的技術における使用に適切な塩を指し、本明細書で互換的に使用される「化粧品的に許容される塩」または「皮膚科学的に許容される塩」という用語は、とりわけ、毒性、不適合性、不安定性、不適切なアレルギー反応なしにヒト皮膚接触での使用に適切な塩を指す。特に、「薬学的または化粧品的に許容される塩」という用語は、一般的に使用される塩、例えばアルカリ金属塩などを包含する。ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩の調製は、当該技術において公知の方法によって行うことができる。本発明に適切なヒアルロン酸の薬学的または化粧品的に許容される塩の非限定的な例としては、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸亜鉛およびヒアルロン酸コバルトなどの無機塩、ならびにヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩が挙げられる。一実施形態では、ヒアルロン酸の薬学的または化粧品的に許容される塩は、ナトリウム塩(CAS番号9067-32-7)またはカリウム塩(CAS番号31799-91-4)の選択されたアルカリ金属の塩である。
【0030】
一実施形態では、本発明の組成物は、式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸中のヒアルロン酸の濃度が1~50mg/ml、特に10~30mg/mlである組成物である。本発明の目的のために、溶液の密度は1に近いので(1mL=1g)、したがって、mg/mLとして表される濃度はmg/gと互換的である。ヒアルロン酸の濃度は、最新技術に開示されている任意の適切な方法によって測定することができる。本発明において、ヒアルロン酸の濃度は、105℃の換気オーブン中で適切な時間ヒドロゲルを脱水した後に得られた乾燥残留物の重量測定によって測定される。
【0031】
一実施形態では、本発明の組成物は、式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸のヒアルロン酸の分子量がサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定して100~3000kDa、特に250~2000kDaである組成物である。
【0032】
本発明のヒアルロン酸は、「架橋された」ヒアルロン酸である。「架橋された」という用語は、1つ以上の架橋剤によって崩壊した出発ヒアルロン酸によってネットワークが形成される三次元架橋ネットワークを有するヒアルロン酸を指す。「架橋」という用語は、ポリマー科学分野において、ポリマー(ヒアルロン酸)の物理的特性の差を促進するための架橋の使用を指す。「架橋」という用語は、ヒアルロン酸のヒドロキシル基による本発明の架橋剤のエポキシド環の開環によって形成される結合を指す。本明細書で互換的に使用される「架橋剤(crosslinker)」または「架橋剤(crosslinking agent)」という用語は、1つ以上のヒアルロン酸鎖を架橋する能力を有する化合物を指す。
【0033】
「架橋パーセンテージ」、「架橋の割合(%)」、「架橋度」および略語「C.D.」という用語は同じ意味を有し、これらは互換的に使用される。それらは、架橋され、修飾されたヒアルロン酸モノマー単位と修飾されていないヒアルロン酸モノマー単位との比率をパーセンテージで示す。一般に、材料の架橋度(C.D.)の測定は、最新技術で周知の異なる方法を使用して評価することができる。いくつかの方法は、酵素消化後のポリマー断片のH NMRまたは定量的GPC分析など直接的である。他の方法は、レオロジー測定、圧縮または振動試験により間接的である。通常、これらの方法はすべて比較的であり、同じポリマーのファミリー内の異なる架橋度を区別することができる。本発明において、架橋度の値は、下記式1:
【数1】

(式1)
[式中、
MWrep.unitは、ヒアルロン酸モノマー繰り返し単位の分子量である401Daであり、
は、以下の式2:
【数2】

(式2)
(式中、
G´は、回転式レオメータを使用するレオロジー測定によって実験的に得られ、
R・Tは熱エネルギーであり、
cはヒアルロン酸濃度、Mはヒアルロン酸の数平均分子量である
)の逆式を使用して数学的に計算される。]
を使用して、レオロジー測定により得られたG´の値から数学的に算出される(S.C.De Smedt,et al.´´Viscoelastic and transient network properties of hyaluronic acid as a function of the concentration,´´Biorheology,1993.vol.30(1),pp.31-41を参照されたい)。
【0034】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、A)式(I)、あるいは式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含み、0.03%~0.9%、特に0.045~0.077%の架橋パーセンテージを有する。本出願の目的のために、架橋パーセンテージは、上記で定義された式1を使用してレオロジー測定によって得られたG´の値から測定される。
【0035】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物を含む。式(I)あるいは式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含む組成物について上述したすべての実施形態は、式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物を含む組成物にも適用される。
【0036】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含み、式(I)または式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸は、1つ以上のポリグリセロールジグリシジルエーテル(PPE)架橋剤を使用することによって得られる。
【0037】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して100~7.000g/eq、特に100~600g/eqの平均EEWを有する架橋剤PPEを使用することによって得られる式(I)あるいは式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含む。「エポキシ当量」、「平均EEW」という用語、および略語「EEW」は同じ意味を有し、これらは互換的に使用される。EEWは、1グラム当量のエポキシを含有する架橋剤の重量(グラム)である。EEWは、本発明で開示される架橋剤1グラム中に存在するエポキシ基の含有量を指し、g/eqで表される。最新技術(He,Z.,et al.,´´Ultrasonication-assisted rapid determination of epoxide values in polymer mixtures containing epoxy resin´´.Analytical Methods,2014,vol.6(12),pp.4257-4261を参照されたい)に開示されているエポキシドの迅速な決定のために、HClを用いる定量的超音波支援滴定を使用してEEWを実験的に測定した。
【0038】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定して、204~15.000Da、特に204から3.500DaのMwを有する架橋剤PPEを使用することによって得られる、式(I)の、または代替では式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含む。「分子量」、「重量平均分子量」、「重量平均モル質量」、「質量平均モル質量」、「平均Mw」および略語「M」という用語は同じ意味を有し、これらは互換的に使用される。質量平均モル質量は、以下の式:
【数3】

(式中、Niは分子質量Miの分子数である)
によって計算される。質量平均分子質量は、静的光散乱、小角中性子散乱、X線散乱、および沈降速度によって決定することができる。本出願において、Mwはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
【0039】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含み、式(I)または式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸は、架橋剤として、204~15.000g/モルのMw、および100~7.000g/eqのEEWを有するポリグリセロールジグリシジルエーテル(PPE)を使用することによって得られる。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含み、式(I)または式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸は、架橋剤として、204~3.500g/モルのMw、および100~600g/eqのEEWを有するポリグリセロールジグリシジルエーテル(PPE)を使用することによって得られる。
【0040】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の、あるいは式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸が、0.03%~0.9%の架橋パーセンテージを有し、204~15.000g/モルのMw、および100~7.000g/eqのEEWを有する架橋剤PPEを使用することによって得られる。
【0041】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の、あるいは式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸が、0.045%~0.077%の架橋パーセンテージを有し、204~3.500g/モルのMw、および100~600g/eqのEEWを有する架橋剤PPEを使用することによって得られる。
【0042】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、a)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸を含み、Rの量は、式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の総重量に対して2ppm未満である。He,Z.,et al.,´´Ultrasonication-assisted rapid determination of epoxide values in polymer mixtures containing epoxy resin´´.Analytical Methods,2014,vol.6(12),pp.4257-4261に開示されているエポキシドの迅速な決定のために、HClを用いる定量的超音波支援滴定を使用して、Rの量を実験的に測定する。
【0043】
上に開示されているように、本発明の第1の態様は、B)式(III)の1つ以上のポリグリセロール、式(IV)の1つ以上のポリグリセロール、および式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセロールとの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリグリセロールを含む組成物を指す。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、B)式(III)の1つ以上のポリグリセロールを含む。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、B)式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む。
【0044】
本発明の目的のために、式(III)のポリグリセロールまたは式(IV)のポリグリセロールは、それぞれ式(III)の「遊離」ポリグリセロールまたは式(IV)の「遊離」ポリグリセロールと命名することもできる。
【0045】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、B)UV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)によって測定して、240~3.700Da、特に314~1129Daの重量平均分子量(M)を有する1つ以上のポリグリセロールジグリシジルエーテル(PPE)架橋剤を使用することによって得られる式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む。
【0046】
一実施形態では、本発明の組成物は、0.45~25mg/mL、特に2~20mg/mLの組成物中の式(III)または式(IV)のポリグリセロールの濃度を有する組成物である。式(III)または式(IV)のポリグリセロールの濃度は、最新技術に開示されている任意の適切な方法によって測定することができる。本発明において、式(III)または式(IV)のポリグリセロールの濃度は、UV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)によって測定される。
【0047】
一実施形態では、本発明の組成物は、式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールが、
式(1)の化合物、
【化6】

(1)、
式(2)の化合物、
【化7】

(2)、
式(3)の化合物、
【化8】

(3)、
式(4)の化合物、
【化9】

(4)、
式(5)の化合物、
【化10】

(5)、
式(6)の化合物、
【化11】

(6)、
およびそれらの混合物
からなる群から選択される組成物である。
【0048】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、B)式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセロールとの混合物を含む。B)式(III)の1つ以上のポリグリセロール、あるいは式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む組成物について上述したすべての実施形態は、式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセロールとの混合物を含む組成物にも適用される。
【0049】
上に開示されているように、本発明の第1の態様は、C)有効量の1つ以上の局所麻酔剤またはその塩を含む組成物を指す。「麻酔剤」という用語は、意識消失の有無にかかわらず、ヒトまたは他の哺乳動物において感覚喪失を引き起こす薬剤を指す。より詳細には、「局所麻酔剤」という用語は、末梢神経の興奮および/または伝導を可逆的に阻害することによって局所麻酔を誘導する麻酔剤を指す。本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、上述の麻酔効果、例えば、感覚の部分的もしくは全体的な喪失、感覚知覚の阻害、または運動機能の阻害をもたらす1つ以上の局所麻酔剤の量を指す。
【0050】
本発明で使用するのに好適な局所麻酔薬としては、以下に限定されないが、アムブカイン、アモラノン、アミロカイン、アルチカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタニカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジシクロミン、エクゴニジン、エクゴニン、エチドカイン、ベータ-エウカイン、ユープロシン、フェナルコミン、ファーモカイン、ホモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブチルp-アミノベンゾアート、ロイシノカインメシラート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、ミルテカイン、ナエピン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、プソドコカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの親油性部分および親水性部分を含むこれらの麻酔剤またはその塩が挙げられる。
【0051】
一実施形態では、本発明の組成物は、局所麻酔剤またはその塩が、リドカイン、メピバカイン、アルチカインまたはそれらの混合物などのアミド系局所麻酔薬からなる群から選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、局所麻酔剤またはその塩がリドカインまたはその塩である組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、局所麻酔剤またはその塩がメピバカインまたはその塩である組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、局所麻酔剤またはその塩がアルチカインまたはその塩である組成物である。
【0052】
局所麻酔薬の塩は、無機酸または有機酸を含む許容される非毒性酸から形成される塩を包含する。それらは、それぞれ薬学的または化粧品的な目的で使用される場合、治療的または化粧品的に許容されなければならないことを除いて、塩に関する制限はない。許容される塩のほとんどは市販されている。そうでない場合、これらの塩は、無機酸および有機酸を含む許容される非毒性酸から出発することを含む、最新技術に開示されている方法に従って調製され得る。このような酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸および塩酸塩が挙げられる。例えば、これらは、従来の化学的方法によって、塩基性部分を含有する親化合物から調製することができる。一般に、このような塩は、例えば、この化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な許容される酸と水もしくは有機溶媒中またはそれらの混合物中で反応させることによって調製される。本発明の目的のために、本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、上記で定義された薬学的に許容される非毒性酸から形成される任意の塩を包含する。本明細書で使用される「化粧品として許容される塩」という用語は、上記で定義された化粧品として許容される非毒性の酸から形成される任意の塩を包含する。
【0053】
一実施形態では、本発明の組成物は、局所麻酔剤が塩の形態である組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、リドカイン塩酸塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、メピバカイン塩酸塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、アルチカイン塩酸塩を含む。
【0054】
一実施形態では、本発明の組成物は、C)ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によって計算された予測される熱力学的pKa値よりも2.5~10%低いヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によって計算された実験的pKa値を有する有効量の1つ以上の局所麻酔剤またはその塩を含む。
【0055】
本発明の目的のために、「熱力学的pKa値」(pKaTと略す)という用語は、最新技術(Rene.Levy et al.´´Determination of thermodynamic dissociation constants of local anaesthetic amines:influence of ionic strength´´ J.Pharm.Pharmac.,1972,vol.24,pp.841-847を参照されたい)で表にされたpKa値であり、摂動平衡剤の非存在下で、弱酸の解離平衡定数から計算される(Rene.Levy et al.を参照されたい)。
【0056】
「実験的pKa値」(pKaSと略す)という用語は、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を使用して、それぞれpH計を使用し、摂動平衡剤(すなわち、遊離ポリグリセロールおよびPPE架橋ヒアルロン酸)の存在下でUV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)によって実験的に測定されたpH、[B]および[BH+]値から出発して、実験的に計算されたpKaである。
【0057】
本発明の目的のために、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式は以下通りである:
【数4】

式中、
pHは-log([H+])であり、
pKaは、弱酸の解離平衡定数の-logであり、[B]([塩基])は、局所麻酔薬のコンジュゲート塩基形態の濃度であり、
[BH+]([酸])は、局所麻酔薬のコンジュゲート酸性形態である。
【0058】
以下の平衡から[B]および[BH+]の値を導出する。
【数5】
【0059】
pKaの値は、上記で定義された最新技術で集計された各局所麻酔薬の熱力学的pKa値に対応する(Rene.Levy et al.´´Determination of thermodynamic dissociation constants of local anaesthetic amines:influence of ionic strength´´ J.Pharm.Pharmac.,1972,vol.24,pp.841-847を参照されたい)。
【0060】
一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のリドカインまたはその塩であって、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によって計算して、7.2~7.8の実験pKa値を有するリドカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤として有効量のメピバカインまたはその塩であって、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によって計算して、7.1~7.7の実験pKa値を有するメピバカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のアルチカインまたはその塩であって、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によって計算して、7.0~7.5の実験pKa値を有するアルチカインまたはその塩を含む。
【0061】
一実施形態では、本発明の組成物は、C)GC/MSによって決定された局所麻酔薬の中性形態Bのパーセンテージが、本発明に開示されるヘンダーソン・ハッセルバルヒの式によって計算された予測値より40%~160%高い、有効量の1つ以上の局所麻酔剤またはその塩を含む。
【0062】
一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のリドカインまたはその塩であって、約pH7.4でのGC/MSによって決定して、25%~63%のパーセンテージの中性形態Bのリドカインまたはその塩を有するリドカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のリドカインまたはその塩であって、約pH7.2でのGC/MSによって決定した17%~34%のパーセンテージの中性形態Bのリドカインまたはその塩を有するリドカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のリドカインまたはその塩であって、約pH7.0でのGC/MSによって決定した12%~25%のパーセンテージの中性形態Bのリドカインまたはその塩を有するリドカインまたはその塩を含む。
【0063】
一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のメピバカインまたはその塩であって、約pH7.4でのGC/MSによって決定して、29%~65%のパーセンテージの中性形態Bのメピバカインまたはその塩を有するメピバカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のメピバカインまたはその塩であって、約pH7.2でのGC/MSによって決定して、21%~40%のパーセンテージの中性形態Bのメピバカインまたはその塩を有するメピバカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のメピバカインまたはその塩であって、約pH7.0でのGC/MSによって決定して、15%~26%のパーセンテージの中性形態Bのメピバカインまたはその塩を有するメピバカインまたはその塩を含む。
【0064】
一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のアルチカインまたはその塩であって、約pH7.4でのGC/MSによって決定して、41%~70%のパーセンテージの中性形態Bのアルチカインまたはその塩を有するアルチカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のアルチカインまたはその塩であって、約pH7.2でのGC/MSによって決定して、29%~50%のパーセンテージの中性形態Bのアルチカインまたはその塩を有するアルチカインまたはその塩を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、C)1つ以上の局所麻酔剤としての有効量のアルチカインまたはその塩であって、約pH7.0でのGC/MSによって決定して、21%~40%のパーセンテージの中性形態Bのアルチカインまたはその塩を有するアルチカインまたはその塩を含む。
【0065】
上述のように、本発明の組成物は、必要に応じて、D)1つ以上の許容される賦形剤または担体を含む。一実施形態では、組成物は、D)1つ以上の許容される賦形剤または担体を含む。適切な賦形剤および/または担体、それらの量ならびにそれらの調製のための実験的プロセス条件は、調製される製剤の技術分野および種類に従って当業者によって容易に決定され得る。
【0066】
一実施形態では、本発明の組成物は、式(I)、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはその混合物の治療有効量、式(III)もしくは式(IV)の1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の治療有効量、1つ以上の麻酔剤、および
必要に応じて、1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤または担体の治療有効量を含む「医薬組成物」である。「医薬組成物」という用語は、医学的使用を伴う医薬技術における使用に好適な組成物を指す。「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、投与された場合に、対処される疾患の症状の1つ以上の発症を防止するか、または処置するか、治癒するか、またはある程度緩和するのに十分な、架橋ヒアルロン酸、ポリグリセロール、および麻酔剤の量を指す。本発明に従って投与される架橋ヒアルロン酸、ポリグリセロール、および麻酔剤の治療有効量の用量は、投与される化合物、投与経路、処置される特定の状態、および同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状況によって当然決定される。本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を含むことができる。「薬学的に許容される賦形剤または担体」という用語は、医薬用途で組成物を調製するための医薬技術における使用に好適な賦形剤または担体を指す。
【0067】
一実施形態では、組成物は、式(I)、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはその混合物の化粧品的に有効な量、式(III)もしくは式(IV)の1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の化粧品的に有効な量、1つ以上の麻酔剤、および
必要に応じて、1つ以上の化粧品的に許容される賦形剤または担体の化粧品的に有効な量を含む化粧品組成物である。本発明の化粧品組成物は、その外観を改善するため、または皮膚、爪もしくは毛髪を美化する、保つ、コンディショニングする、クレンジングする、着色するかもしくは保護するために適切な量(「化粧品的に有効な量」)を身体に適用するように設計される。Academic press Dictionary of Science and Technology,1992,pp.531;A terminological Dictionary of the Pharmaceutical Sciences.2007,pp.190を参照されたい)。したがって、上記化粧品組成物は、非医療用途に形容詞的に使用される。本明細書で互換的に使用される「化粧品的に許容される」または「皮膚科学的に許容される」という用語は、とりわけ、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応なしにヒトの皮膚と接触して使用するのに好適な賦形剤または担体を指す。
【0068】
上記で定義された局所医薬組成物または局所化粧品組成物は、皮膚バリア機能改善剤、水和剤、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、保湿剤、pH調節剤、抗酸化剤、保存剤、ビヒクル、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、薬学的または化粧品的に許容される賦形剤であり得る局所投与用の適切な賦形剤または担体を含む。使用される賦形剤または担体は、皮膚に対して親和性を有し、忍容性がよく、安定であり、所望の稠度を与え、適用を容易にするのに十分な量で使用される。さらに、本発明の組成物は、香料、着色剤、および局所製剤に使用するための最新技術で公知の他の成分などの他の成分を含有してもよい。本発明の局所組成物は、溶液、エアロゾルおよび非エアロゾルスプレー、クリーム、粉末、ムース、ローション、ゲル、スティック、軟膏、ペースト、シャンプー、シャワーゲル、ボディーウォッシュまたは洗顔料およびエマルジョンを含むがこれらに限定されないいくつかの形態で製剤化することができる。
【0069】
一実施形態では、医薬組成物または化粧品組成物は注射可能な組成物である。一実施形態では、医薬組成物または化粧品組成物は、筋肉内、皮下、または静脈内投与からなる群から選択される注射可能な組成物である。一実施形態では、本発明の医薬組成物または化粧品組成物は、体内への注射、注入、または移植に好適な非経口組成物の形態である。上記で定義された非経口組成物は、滅菌され、発熱物質を含まず、それらは、溶液、エマルジョン、もしくは懸濁液などの液体の形態であってもよく、または使用前に公的に希釈された単回用量もしくは複数回用量の容器のいずれかにパッケージングされた固体形態であってもよい。非経口組成物は、非経口投与のための適切な賦形剤または担体を含むことができ、非経口投与のための適切な賦形剤または担体は、溶媒、懸濁化剤、緩衝剤、調製物を血液と等張にする物質、安定剤、または抗菌性保存剤を含むがこれらに限定されない薬学的または化粧品賦形剤であり得る。賦形剤の添加は最小限に保たれるべきである。賦形剤が使用される場合、それらは、ポリマーおよび/もしくは活性剤の安定性、生物学的利用能、安全性、もしくは有効性に悪影響を及ぼすべきではなく、または毒性もしくは過度の局所刺激を引き起こすべきではない。剤形の成分のいずれかの間にいかなる不適合性も存在すべきではない。
【0070】
実験のセクションで実証されているように、本発明の組成物は、物理的特性(レオロジー)および化学的特性(遊離ポリグリセロールおよびPPE架橋ヒドロゲルの濃度)が向上して、本発明のヒドロゲルマトリックス組成物からの脂溶性(活性)形態の局所麻酔薬の量およびそのより速い放出が予想外に改善され、局所麻酔薬の開始の低減をもたらす。
【0071】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、10~1500Pa、特に、1.0Hzで測定して30~700Paの貯蔵弾性率G´を有する組成物である。
【0072】
本発明の第1の態様の調製方法も本発明の一部である。
【0073】
一実施形態では、本発明の組成物の調製方法は、
-組成物が(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を式(V)の化合物
【化12】

(V)
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
と架橋させる工程と、
(ii)(A)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii)必要に応じて、工程(ii)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv)必要に応じて、工程(iii)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を式(VI)の化合物
【化13】

(VI)
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
と架橋させる工程と、
(ii´)(A)式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´)必要に応じて、工程(II´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´)必要に応じて、工程(iii´)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
i´´)ヒアルロン酸を式(V)
【化14】

(V)
および式(VI)
【化15】

(VI)
の化合物
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、
は、

であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
を含む混合物と架橋させる工程と、
(ii´´)(A)式(I)および式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、ならびに(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(I´´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´´)必要に応じて、工程(ii´´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´´)必要に応じて、工程(iii´´)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができる組成物を含む。
【0074】
一実施形態では、本発明の組成物の調製方法は、
-組成物が(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(v)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(VI)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
I´´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物および式(VI)の化合物を含む混合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができる組成物を含む。
【0075】
一実施形態では、本発明の組成物の調製方法は、
-組成物が(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii)の後に、あるいは工程(iii)の後に、あるいは工程(iv)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v)を含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii´)の後に、あるいは工程(iii´)の後に、あるいは工程(iv´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´)を含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、工程(ii´´)の後に、あるいは工程(iii´´)の後に、あるいは工程(iv´´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´´)を含む方法によって得ることができる組成物を含む。
【0076】
一実施形態では、本発明の組成物の調製方法は、
組成物が、(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含み、本方法がi)ヒアルロン酸を式(V)の化合物と架橋させる工程を含む場合、式(V)の化合物が、
a)1,3-グリセロールジグリシジルエーテルを含有するアルカリ溶液を準備する工程と、
b)工程a)で得られた溶液を10~80℃の温度で1分~30日間維持する工程とを含む方法によって得られるか、
あるいは、
組成物が(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含み、本方法がI´)ヒアルロン酸を式(VI)の化合物と架橋させる工程を含む場合、式(VI)の化合物が、
c)1,2-グリセロールジグリシジルエーテルを含有するアルカリ溶液を準備する工程と、
d)工程c)で得られた溶液を10~80℃の温度で1分~30日間維持する工程とを含む方法によって得られるか、
あるいは、
組成物が(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含み、本方法がi´´)ヒアルロン酸を式(V)の化合物および式(VI)の化合物を含む混合物と架橋させる工程を含む場合、式(V)の化合物が、
a)1,3-グリセロールジグリシジルエーテルを含有するアルカリ溶液を準備する工程と、
b)工程a)で得られた溶液を10~80℃の温度で1分~30日間維持する工程とを含む方法によって得られ、
式(VI)の化合物が、
c)1,2-グリセロールジグリシジルエーテルを含有するアルカリ溶液を準備する工程と、
d)工程c)で得られた溶液を10~80℃の温度で1分~30日間維持する工程とを含み、
特に、
工程a)において、アルカリ溶液が、1~50重量パーセントの1,3-グリセロールジグリシジルエーテルを含み、
工程c)において、アルカリ溶液が、1~50重量パーセントの1,2-グリセロールジグリシジルエーテルを含む方法によって得られる、方法である。
【0077】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物の調製方法は:-組成物が(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(i)の後に追加の洗浄工程(vi)をさらに含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(i´)の後に追加の洗浄工程(vi´)をさらに含む方法によって得ることができる組成物、
あるいは、
-組成物が(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、工程(i´´)の後に追加の洗浄工程(vi´´)をさらに含む方法によって得ることができる組成物を含む。
【0078】
一実施形態では、工程(vi)、あるいは工程(vi´)、あるいは工程(vi´´)は、6.5~7.4のpHを得るためにこのような適切量の酸性水溶液を添加することによって実施され、組成物中の式(III)もしくは式(IV)のポリグリセロールまたはそれらの混合物の濃度は0.45~25mg/mLである。適切な酸性水溶液の例には、以下に限定されないが、塩酸、硫酸、オルトリン酸、ホウ酸、硝酸などの強および弱無機(鉱)酸、および酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸、またはそれらの混合物などの強および弱有機酸が含まれる。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物の調製方法の上記および下記のすべての実施形態は、追加の工程(vi)、あるいは追加の工程(vi´)、あるいは工程(vi´´)をさらに含む。
【0079】
一実施形態では、工程i)、あるいは工程i´)、あるいは工程i´´)は、10~50℃、特に約30℃の温度で実施される。一実施形態では、工程i)、あるいは工程i´)、あるいは工程i´´)は、1~48時間、特に約8時間実施される。
【0080】
一実施形態では、工程ii)、あるいは工程ii´)、あるいは工程ii´´)は、10~50℃の温度、特に約25℃で実施される。一実施形態では、工程ii)、あるいは工程ii´)、あるいは工程ii´´)は、1~8時間、特に約2時間実施される。
【0081】
一実施形態では、1つ以上の賦形剤または担体(D)の場合、方法は、工程iii)、あるいは工程iii´)、あるいは工程iii´´)を含む。一実施形態では、1つ以上の賦形剤または担体(D)の場合、方法は、1~8時間、特に約2時間実施される工程iii)、あるいは工程iii´)、あるいは工程iii´´)を含む。
【0082】
一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、120~135℃、特に121~130℃の温度で実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、121~126℃の温度で実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、1分~20分間、特に3分~15分間実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、10分~15分間実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、a121℃で15分間実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、a126℃で10分間実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。一実施形態では、本方法は、134℃で3分間実施される滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)を含む。
【0083】
滅菌工程は、最新技術で周知の方法に従って実施することができる。一実施形態では、滅菌工程は、濾過、オートクレーブ、加熱、照射、およびそれらの組合せからなる群から選択される方法によって実施され、好ましくは、滅菌工程は、オートクレーブ内で滅菌された蒸気によって実施され、特に、EN ISO 17665-1(Sterilization of health care products-Moist heat Part 1:requirements for the development,validation and routine control of the sterilization process for medical device(例えば、121℃で15分)に報告されている薬局方で認可された手順に従う。一実施形態では、本方法は、組成物をコンディショニングすること、特に、本発明の組成物をシリンジに充填することを含む、滅菌工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)の前に以前の工程をさらに含む。このようにして工程iv)、あるいは工程iv´)、あるいは工程iv´´)の後に得られる滅菌組成物は、すぐに使用できる滅菌注射可能な組成物であるので有利である。
【0084】
一実施形態では、本方法は、工程v)、あるいは工程v´)、あるいは工程v´´)を含む。
【0085】
一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、生理学的に許容されるアルカリ金属またはアンモニウムの水酸化物(Na、K)、アルカリ土類金属の水酸化物(Mg、Ca、Sr)、生理学的に許容される重金属の水酸化物(Fe、Al、Co、Cu、Se、Zn、Cr、Ni)、生理学的に許容される第四級アンモニウムカチオンの水酸化物、生理学的に許容される重金属または炭酸水素アンモニウム(NH、Fe、Al、Co、Cu、Se、Zn、Cr、Ni)およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基を含む。
【0086】
「生理学的に許容される」という用語は、細胞、細胞培養物、組織または生物などの生物系と適合する非毒性物質を指す。好ましくは、生体系は、哺乳動物、特にヒトなどの生物である。
【0087】
一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属またはアンモニウムの水酸化物、特に水酸化ナトリウムを含む。
【0088】
一実施形態では、工程a)または代替的に工程c)のアルカリ溶液は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ土類金属の水酸化物を含む。
【0089】
一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、水酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化コバルト、水酸化セレン、水酸化スズ、水酸化クロム、水酸化ニッケルおよびそれらの混合物からなる群から選択される重金属の水酸化物を含む。
【0090】
一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、式HONRの第四級アンモニウム水酸化物を含み、式中、R、R、R、およびRのうちの各1つは、(C~C)アルキルからなる群から独立して選択され、あるいはR、R、RおよびRのうちの2つは(C~C)シクロアルキル環を形成する。
【0091】
一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、炭酸水素鉄、炭酸水素アルミニウム、炭酸水素コバルト、炭酸水素銅、炭酸水素セレン、炭酸水素亜鉛、炭酸水素クロム、炭酸水素ニッケル、炭酸水素アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される重金属またはアンモニウムの炭酸水素塩、特に炭酸水素ナトリウムを含む。
【0092】
一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、1~50重量パーセントの1,3-GDEあるいは1,2-GDEを含む。一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、アルカリ水酸化物を含み、1~50重量パーセントの1,3-GDEあるいは1,2-GDEを含む。一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ水酸化物を含み、1~50重量パーセントの1,3-GDEあるいは1,2-GDEを含む。一実施形態では、工程a)あるいは工程c)のアルカリ溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)を含み、1~50重量パーセントの1,3-GDEあるいは1,2-GDEを含む。1,3-GDEおよび1,2-GDEは、最新技術で以前に開示されており、市販されている(実験セクションを参照されたい)。
【0093】
一実施形態では、本発明の方法の工程a)あるいは工程c)は室温で実施される。「室温」という用語は、約25~35℃の温度を指す。一実施形態では、本発明の方法の工程a)あるいは工程c)は溶媒の存在下で実施される。一実施形態では、本発明の方法の工程a)あるいは工程c)は、水、(C~C)アルキル-OH、(C~C)アルキル-CO-(C~C)アルキル、(C~C)アルキル-CO-O-(C~C)アルキル、(C~C)アルキル-CN、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で実施される。一実施形態では、本発明の方法の工程a)あるいは工程c)は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチルおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で実施され、特に、溶媒は水である。
【0094】
「アルキル」という用語は、明細書または特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含有する飽和直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルの基が挙げられる。
【0095】
一実施形態では、工程b)あるいは工程d)は、1,3-GDEあるいは1,2-GDEを、10~80℃の温度にGDEの自己重合が起こる1分~30日間供することによって実施される。
【0096】
一実施形態では、工程b)あるいは工程d)は、1,3-GDEあるいは1,2-GDEを、50~80℃の範囲の温度に1分~500分間供することによって実施される。一実施形態では、工程b)あるいは工程d)は、1,3-GDEあるいは1,2-GDEを、50~80℃の範囲の温度に5分~60分間供することによって実施される。
【0097】
一実施形態では、工程b)あるいは工程d)は、1,3-GDEあるいは1,2-GDEを、10~40℃の範囲の温度に1日~30日間供することによって実施される。一実施形態では、工程b)あるいは工程d)は、1,3-GDEあるいは1,2-GDEを、10~40℃の範囲の温度に2日~7日間供することによって実施される。
【0098】
上記で定義された方法によって得ることができる本発明の第1の態様の組成物も本発明の一部である。本発明の目的のために、「得ることができる」、「得られた」という表現および同等の表現は互換的に使用され、いずれの場合も、「得ることができる」という表現は「得られた」という表現を包含する。調製方法および組成物自体について上に開示されているすべての実施形態は、本発明の方法によって得ることができる組成物にも適用される。
【0099】
本発明の第1の態様の組成物の使用も本発明の一部である。
【0100】
本発明の第1の態様の組成物は、医薬分野で使用することができる。一実施形態では、本発明の組成物は、治療に使用するための上記で定義された医薬組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、ヒアルロン酸の欠乏および/または欠損を伴う疾患または状態の処置に使用するための上記で定義された医薬組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、変形性関節症、顔面および身体の低体積、顔面および身体の非対称性などの関節および骨の疾患からなる群から選択されるヒアルロン酸の欠乏および/または欠損を伴う疾患または状態;創傷治癒、網膜剥離または他の眼の損傷、組織および粘膜の炎症、耳および副鼻腔の感染症、ならびに組織および粘膜の菲薄化に伴って生じる灼熱感、かゆみ、および痛みの処置に使用するための上記で定義された医薬組成物である。
【0101】
この態様は、医薬を調製するための上記で定義された本発明の第1の態様の医薬組成物の使用として製剤化することもできる。本発明はまた、ヒアルロン酸の欠乏および/または欠損を伴う疾患または状態、例えば上述のものに罹患しているかまたは罹患しやすい哺乳動物の処置方法に関する。この態様は、ヒアルロン酸の欠乏および/または欠損を伴う疾患または状態、例えば上述のものの処置用医薬を調製するための本発明の医薬組成物の使用として製剤化することもできる。
【0102】
本発明の第1の態様の組成物は、化粧品分野で使用することができる。一実施形態では、本発明の組成物は、スキンケア剤として有用な上記で定義された化粧品組成物である。「スキンケア剤」という用語は、以下の症状:粗さ、はがれ、脱水、引き締まり、ひび割れ、および弾性の欠如のうちの少なくとも1つを改善することができる薬剤を包含する一実施形態では、本発明の組成物は、スキンケア剤として皮膚充填剤(軟組織増強剤としても知られる)として有用な上記で定義された化粧品組成物である。
【0103】
担体としての本発明の第1の態様の組成物の使用も本発明の一部である。一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は薬物送達系、特に、薬学的有効成分、診断剤、化粧品化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、ワクチン、ポリヌクレオチド、ビタミン、抗酸化剤、および遺伝子の送達系である。
【0104】
本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という語およびこの語の変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分または工程を排除することを意図しない。さらに、「含む(comprise)」という語は、「からなる(consisting of)」の場合を包含する。本発明のさらなる目的、利点および特徴は、説明を検討すると当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。以下の実施例は例示として提供され、それらは本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態のすべての可能な組合せを網羅する。
【実施例
【0105】
略語のリスト
HA:ヒアルロン酸
GAG:グリコサミノグリカン
C.D.:架橋度
GlcA:D-グルクロン酸
GlcNAc:N-アセチル-D-グルコサミン
ECM:細胞外マトリックス
HYAL:ヒアルロニダーゼ酵素
IA:炎症性関節炎
BDDE:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル
GDE:1,3-グリセロールジグリシジルエーテル
PPE:ポリグリセロールジグリシジルエーテル
FDA:食品医薬品局
EEW:エポキシ当量
GC/MS:質量検出器と連結したガスクロマトグラフィー
SEC/UV/MS:紫外線および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー
UV-Vis:紫外可視分光法
PBS:リン酸緩衝液
IPN:相互浸透ネットワーク
Mw:重量平均分子量;
Mn:数平均分子量;
LA:局所麻酔薬;
Gly:グリセロール
Mann:マンニトール
LIDO:塩酸リドカイン;
ARTI:塩酸アルチカイン;
MEPI:塩酸メピバカイン
【0106】
材料
Altergon ItalyからのSHYALT超純粋ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)。
【0107】
1,3-ビス(2-オキシラニルメトキシ)-2-プロパノールは、以下の名称、商品名、同義語および略語:1,3-ビス(オキシラン-2-イルメトキシ)プロパン-2-オール;2-プロパノール、1,3-ビス(オキシラニルメトキシ);グリセロール1,3-ジグリシジルエーテル;Denacol EX-313、MW=204Da、EEW=141g/eq(Nagase Chemtex);1,3-グリセロールジグリシジルエーテル、MW=204Da(Merck);および1,3-GDEでも知られており、以下の構造:
【化16】

を有する。
2,3-ビス(2-オキシラニルメトキシ)-1-プロパノールは、以下の名称、商品名、同義語および略語2,3-ビス(オキシラン-2-イルメトキシ)プロパン-1-オール:1-プロパノール、1,2-ビス(オキシラニルメトキシ);グリセロール1,2-ジグリシジルエーテル;1,2-グリセロールジグリシジルエーテル、MW=204Da(Merck);1,2-GDEでも知られており、以下の構造:
【化17】

を有する。
1,3-GDEと1,2-GDEとの混合物も、以下の商標名:Denacol EX-314、MW=260Da、EEW=144g/eq(Nagase Chemtex)でも市販されている。
【0108】
以下の化合物をMerckから購入した:ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、MW=202Da;水酸化ナトリウムペレット(NaOH);塩酸37%(HCl);塩化ナトリウム粉末(NaCl);塩化カリウム粉末(KCl);リン酸85%(H3PO4);リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ペレット;蒸留水(HO);グリセロール;マンニトール;塩酸リドカイン(LIDO);塩酸アルチカイン(ARTI);塩酸メピバカイン(MEPI)。
【0109】
分析方法
中性画分および局所麻酔薬の総量を決定するための定量方法を、UV-Vis分光光度計によって評価した。半揮発性化合物の測定のための定量的方法を、局所麻酔薬の中性画分についてGC/MSクロマトグラフィー機器によって評価した。LCは、使用されるカラムまたは移動相(水性または有機)の化学的性質に応じて、歴史的に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などの異なる頭字語を使用して呼ばれる液体クロマトグラフィー技術を含む方法を指す。国際純正応用化学連合(IUPAC)は、この種の実験にはSECという用語を使用することを好む。検出および定量される分析物の化学的性質に応じて、カラムと連結したUltra Violet(UV)、UV可視(UV-vis)、質量(MS)、屈折率(RI)、光散乱(LS)などの異なる検出器の組み合わせも可能である。不揮発性化合物の測定のための定量的方法を、局所麻酔薬の総量についてUV可視および質量検出器SEC/UV/MSクロマトグラフィー機器と連結したサイズ排除クロマトグラフィーによって評価した。平均重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および多分散性(Mw/Mn)の測定のための定量的方法を、光散乱検出器SEC/LSと連結したサイズ排除クロマトグラフィーによって評価した。エポキシ当量(EEW)の測定のための定量的方法は、超音波支援滴定によって評価した。pHを測定するための定量的方法は、ヒドロゲルに直接浸漬した電極を備えたpH計の直接読み取りによって計算した。浸透圧を測定するための定量的方法は、ヒドロゲルに直接浸漬したプローブを備えた浸透圧計の直接読み取りによって計算した。
【0110】
要約すると、液体クロマトグラフィーによる測定方法を特定するために、国際純正応用化学連合(IUPAC)の命名法が使用されている。したがって、本発明の目的のために、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)という用語は同等であると見なされ、明確化のためにそれらのすべてをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)と呼んでいる。
1.局所麻酔薬およびポリグリセロールポリグリシジルエーテル(PPE)架橋ヒアルロン酸コンジュゲート
1.1.ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(PPE)
1.1.出発物質として1,3-GDEを使用
【0111】
以下に述べる調製プロセスは、1,3-GDEの供給源としてNagaseから市販されているDenacol(登録商標)EX-313を使用することによっても実施され得る。それにもかかわらず、これらの方法は、Merckから市販されている1,3-グリセロールジグリシジルエーテルを使用することによって、またはDenacol(登録商標)EX-313の代わりに1,3-DGEを含有する混合物である商標Denacol(登録商標)EX-314を用いても実施され得る。
1.1.1.PPEの調製方法
【0112】
水酸化ナトリウムペレット(NaOH)を水に溶解させて、総溶液重量に基づいて4パーセントのNaOH(1M)を含有するアルカリ溶液(溶液A)を形成した。
【0113】
1,3-GDE(Denacol(登録商標)EX-313)を溶液Aの一部に室温で溶解させて、総溶液重量に基づいて1~50重量パーセントの1,3-GDEを含有するアルカリ溶液(溶液C1)を形成した。
【0114】
次いで、溶液C1を、1,3-GDEの自己重合が起こる1分~30日間、10~80℃の範囲の制御された温度で反応させて、表1に開示されているポリグリセロールポリグリシジルエーテルを得た(実施例1~5)。
1.1.2.PPEの特徴付け
【0115】
出発GDEのEEWのパーセンテージとして表されるエポキシ当量として測定して、上記で定義された方法に従って得られたPPEの重量平均分子量(Mw)および得られたPPEのエポキシ含有量を、それぞれ前述のように光散乱検出器およびHClによる定量滴定を備えたGPC機器を使用して、経時的に分析的にモニターした。各分析の前に、1Mの塩酸溶液およびPBSを添加してアルカリ触媒を中和し、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル溶液のpHを7.0に戻すことによってGDEの自己重合反応を停止した。
【0116】
温度と時間の各組み合わせについて得られたポリグリセロールポリグリシジルエーテル(PPE)の平均分子量(MW)およびEEWの値を表1に報告する。
【0117】
【表1】
【0118】
1.2.局所麻酔薬とPPE架橋ヒアルロン酸とのコンジュゲート
1.2.1.非滅菌コンジュゲート
1.2.1.1.調製方法
1.2.1.1.1.PPE架橋ヒアルロン酸の調製方法
【0119】
以下に定義する方法に従って、PPE架橋ヒアルロン酸を調製した:
工程A.上に開示された方法に従うPPE 1~5の調製。
工程B:架橋ヒアルロン酸の調製
【0120】
代替案B1:ヒアルロン酸(HA)乾燥粉末を溶液Aの一部に室温(25℃)で穏やかに溶解させて(または溶液C3に直接添加して)、総溶液重量に基づいて5~15重量パーセントの水和HAを含有するアルカリ溶液(溶液B)を形成した。
【0121】
次いで、溶液C3を溶液Bに添加して、最終溶液中の水酸化物濃度が0.25~0.75Mの範囲であり、HAとPPEの比が2~12.5%w/w(PPE対乾燥多糖の重量比として表される)のアルカリ溶液を得る。
【0122】
代替案B2:次いで、溶液C3を溶液Bに添加して、最終溶液中の水酸化物濃度が0.25~0.75Mの範囲であり、最終溶液中のHAの濃度が総重量に対して8~10重量%の範囲であり、最終溶液中のPPEの濃度が総重量に対して0.2~1重量%の範囲であるアルカリ溶液を得る。乾燥多糖に対するPPEの重量比として表される比は、乾燥多糖に対するPPEの重量比として表される2~40%w/wである。
【0123】
次いで、ヒアルロン酸(HA)、PPEおよびNaOHからなる得られたアルカリ溶液を室温で完全に混合する。次いで、均質溶液を20~50℃の間の範囲の制御された温度で1~48時間の期間反応させた。
工程C:架橋多糖の精製および単離
【0124】
次いで、PPE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)を酸性水溶液(1Mの塩酸およびPBS)で48~120時間洗浄し、未反応の物質および副生成物を除去し、アルカリ触媒を中和し、PPE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)のpHをイオン交換によって6.5~7.4に戻し、以下の表に示すように、PPE架橋ヒアルロン酸ヒドロゲル中のHAの所望の最終濃度が1~50mg/mLに達するようにした。
【0125】
固定したチェックポイント(すなわち、12、24、36、48時間)で、ヒドロゲルの一部(1グラム)を取り出し、以下の表2~15に報告する最終生成物のパラメーターの決定に使用したのと同じ技術を使用して分析した。特に、PPE架橋HA中の遊離ポリグリセロールの濃度をmg/mLで表し、それらの化学構造をSEC/UV/MSによって評価した。
1.2.1.1.2.PPE架橋ヒアルロン酸への局所麻酔薬の添加
【0126】
塩酸塩乾燥粉末としての1つ以上の局所麻酔剤を、リン酸緩衝生理食塩水の一部に室温(25℃)で穏やかに溶解させて、許容される生理学的pHを有する総溶液重量に対して1~20重量%の局所麻酔薬を含有する局所麻酔溶液(溶液D)を形成した。
【0127】
次いで、溶液Dを前のセクションで得られた洗浄したPPE架橋ヒアルロン酸ヒドロゲルに添加して混合し、PPE架橋ヒアルロン酸ヒドロゲル中のHAおよび局所麻酔薬(LA)の所望の最終濃度として、それぞれ、HAについては1~50mg/mLおよび局所麻酔薬については0.1~10mg/mLに達するようにする。
【0128】
局所麻酔薬を含有するPPE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)は、必要に応じて、30℃、真空下で脱水させるか、または凍結乾燥(フリーズドライ)させ、その後の使用または分析のために保存することができる。
1.2.2.滅菌コンジュゲート
1.2.2.1.調製方法
【0129】
局所麻酔薬を含有する前のセクションで得られたPPE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)をシリンジに充填し、EN ISO 17665-1,Sterilization of health care products-Moist heat Part 1:requirements for the development,validation,and routine control of a sterilization process for medical device(例えば、121℃で15分)に報告された薬局方で認可された手順に従って、オートクレーブで蒸気滅菌した。
【0130】
局所麻酔薬を含有するPPE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)は、必要に応じて、30℃、真空下で脱水させるか、または凍結乾燥(フリーズドライ)させ、その後の使用または分析のために保存することができる。
1.2.2.2.PPE架橋ヒアルロン酸の実施例1~70の特徴付け
【0131】
(上記で調製したPPE架橋ヒアルロン酸および局所麻酔薬(リドカイン、メピバカイン、およびアルチカイン)との滅菌および非滅菌コンジュゲートの化学組成を表2~7に開示する。
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】
【0138】
(a)PPE架橋HAコンジュゲート中のHAの濃度をmg/mLとして表した。
(b)PPE架橋HA中の遊離ポリグリセロールの濃度をmg/mLで表し、それらの化学構造をSEC/UV/MSによって評価した。
(c)GC/MSおよびSEC/UV/MSによって評価した、PPE架橋HA中の(局所麻酔薬)LAの濃度(mg/mL)。
(d)非滅菌および121℃で15分間滅菌のいずれかで、PPE架橋HAおよび局所麻酔薬を含有するコンジュゲート中の局所麻酔薬B+BH(SEC/UV/MSを使用して決定)の総量に対する局所麻酔薬の中性形態B(GC/MSを使用して決定)のパーセンテージを計算した。
【0139】
要約すると、本発明のPPE架橋HAコンジュゲートは、表1に報告されるように、異なるMWおよびEEWでPPEを使用して得られた。PPE架橋HAコンジュゲートは、15~30mg/mLの架橋ヒアルロン酸濃度の範囲であり、これは、上の対応する表に開示される異なる架橋度を示すことを意味する。上述のように、PPE架橋HAコンジュゲートは、MWおよび濃度がSEC/UV/MSによって測定されたポリグリセロールを含有する。さらに、本発明のPPE架橋HAコンジュゲートは、例えばpH7.4において、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式からの予測される熱力学的値よりもはるかに高いパーセンテージの中性形態Bの局所麻酔薬を含有する。したがって、BおよびBHの実験濃度を使用してヘンダーソン・ハッセルバルヒ方程式によって計算された固定pH値での局所麻酔薬について実験的に計算されたpKaは、熱力学的pKaよりもはるかに低い。
予測されたBの%と比較したBの%の実験データを以下の表に要約する。
【表8】
【0140】
調査したすべての局所審美性について、それらの化学構造に制限はないが、予想外にも、PPE架橋ヒアルロン酸ヒドロゲル中の生物学的に利用可能な中性形態Bは、いくつかの要因によるこの形態の安定化のために、予測よりもはるかに高いパーセンテージを示す。実際、本明細書の上記の実験データ(表2~7参照)に示されているように、熱力学的pKa値(比B/BH+から計算)は、その予測値の2.5%~10%低下する。換言すれば、本発明のヒドロゲルに含有される各局所麻酔薬について、その実験pKaは、それぞれ予測された熱力学的pKaよりも2.5%~10%低い。局所麻酔剤の中性の生物学的に利用可能な形態の観点から、B形態は、最新技術で知られているその値(予測される熱力学的pKa値)の40%~160%増加する。
【0141】
したがって、いかなる理論にも基づかないが、中性形態Bの安定化は、架橋剤として使用される超分岐PPEの両親媒性特性、その分子量および架橋度、天然加水分解に由来する遊離ポリグリセロールの濃度および分子量と、これらの因子間の相乗効果による複雑な関係で相関しているようである。
2.1.3.局所麻酔剤とBDDE架橋ヒアルロン酸との比較コンジュゲート(比較例71~150)
【0142】
比較コンジュゲートBDDE架橋ヒアルロン酸および局所麻酔薬は、PPEの代わりにBDDEから調製され、こうして得られたコンジュゲートにグリセロールまたはマンニトールをさらに添加したものである。
2.1.3.1.調製方法
【0143】
水酸化ナトリウムペレット(NaOH)を水に溶解させて、総溶液重量に基づいて4パーセントのNaOH(1M)を含有するアルカリ溶液(溶液A)を形成した。ヒアルロン酸を溶液Aの一部に室温(25℃)で穏やかに溶解させて、総溶液重量に基づいて5~15重量パーセントの水和HAを含有するアルカリ溶液(溶液B)を形成した。
【0144】
BDDEを蒸留水に室温で溶解させて、総溶液重量に対して0.2~2重量パーセントのBDDEを含有する中性溶液(溶液C1)を形成した。必要に応じて、BDDEを溶液Aの一部に室温で溶解させて、総溶液重量に対して1~10重量パーセントのBDDEを含有するアルカリ溶液(溶液C2)を形成した。次いで、溶液C(C1中性またはC2アルカリ性)を溶液Bに添加して、最終溶液中の水酸化物濃度が0.25~0.75Mの範囲であり、所望の比率のHAおよびBDDEを有するアルカリ性溶液を得る。次いで、得られたHA、BDDEおよびNaOHからなるアルカリ溶液を室温で完全に混合する。次いで、均質溶液を20~50℃の範囲の制御された温度で30分~48時間の期間反応させた。
【0145】
次いで、比較BDDE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)を酸性水溶液(1Mの酸およびPBS)で48から120時間洗浄し、未反応の物質および複製生物を除去し、アルカリ触媒を中和し、ヒドロゲルのpHをイオン交換によって6.5~7.4に戻し、比較BDDE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)中のHAの濃度が1~50mg/mL達するようにした。このようにして得られた洗浄した比較BDDE架橋ヒアルロン酸に対して、グリセロールあるいはマンニトールを洗浄したヒドロゲルに直接添加した。
【0146】
塩酸塩乾燥粉末としての1つ以上の局所麻酔剤を、リン酸緩衝生理食塩水の一部に室温(25℃)で穏やかに溶解させて、許容される生理学的pHを有する総溶液重量に対して1~20重量%の局所麻酔薬を含有する局所麻酔溶液(溶液D)を形成した。次いで、溶液Dを前のセクションで得られたグリセロールまたはマンニトールをさらに含有する洗浄したBDDE架橋ヒアルロン酸ヒドロゲルに添加して混合し、HAの所望の最終濃度(1~50mg/mL)として、グリセロールまたはマンニトール(1~50mg/mL)および局所麻酔薬(LA)(0.1~10mg/mL)に達するようにする。
【0147】
遊離グリセロールまたはマンニトールおよび局所麻酔薬を含有する比較BDDE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)をシリンジに充填し、EN ISO 17665-1、Sterilization of health care products-Moist heat Part 1:requirements for the development,validation,and routine control of sterilization process for medical device(例えば、121℃で15分)に報告された薬局方で認可された手順に従ってオートクレーブで蒸気滅菌した。
【0148】
遊離グリセロールまたはマンニトールおよび局所麻酔薬を含有する比較BDDE架橋ヒアルロン酸(ヒドロゲル)は、必要に応じて、30℃で真空下で脱水するか、または凍結乾燥(フリーズドライ)させ、その後の使用または分析のために保存することができる。
2.1.3.2.BDDE架橋ヒアルロン酸、局所麻酔薬および遊離グリセロールまたはマンニトールの比較コンジュゲートの特徴付け
【0149】
局所麻酔剤を含有する比較BDDE架橋ヒアルロン酸コンジュゲートの化学組成を表8~15に開示する。
【0150】
【表9】
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
【0153】
【表12】
【0154】
【表13】
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
【0157】
【表16】
【0158】
(a)mg/mLとして表される比較BDDE架橋HA中のHAの濃度
(b)mg/mLとして表される比較BDDE架橋HA中の遊離グリセロールの濃度、およびその化学構造をSEC/UV/MSによって測定した。
(c)GC/MSおよびSEC/UV/MSによって測定した、mg/mLとして表される、比較BDDE架橋HA中の局所麻酔薬(LA)の濃度。
(d)mg/mL(SEC/UV/MSによって測定)として表される、比較BDDE架橋HA中の遊離マンニトールの濃度。
【0159】
要約すると、本発明の範囲外にある比較BDDE架橋HAコンジュゲートは、異なる量のBDDEを使用して得られた。比較BDDE架橋HAコンジュゲートは、15~30mg/mLの架橋ヒアルロン酸濃度の範囲であり、これは、上の対応する表に開示される異なる架橋度を示すことを意味する。上述のように、比較BDDE架橋HAコンジュゲートは、0.5~25mg/mLの範囲の遊離ポリオール(グリセロールまたはマンニトール)を含有する。
【0160】
さらに、比較BDDE架橋HAコンジュゲートは、例えばpH7.4において、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式からの予測される熱力学的値に匹敵するパーセンテージの中性形態Bの局所麻酔薬を含有する。したがって、BおよびBHの実験濃度を使用してヘンダーソン・ハッセルバルヒ方程式によって計算された固定pH値での局所麻酔薬について実験的に計算されたpKaは、熱力学的pKaと統計的に異ならない。
2.1.4.分析活性
2.1.4.1.試料溶液の調製およびデータの精緻化
【0161】
定量分析は、各製品の3つの異なるバッチで三連で行い、結果は平均値±標準偏差として報告した。分析される生成物のアリコートを水で50倍希釈し、「試料溶液」を得た。
【0162】
クロマトグラフィー分析技法(GC/MSおよびSEC/UV/MS)については、試料溶液中のピーク面積が機器ソフトウェアのパラメーターとして課されたシグナル/ノイズ比の3倍大きい場合にのみ化合物を考慮した。定量は、試料溶液中のピーク面積とブランク溶液のピーク面積との差として性能評価した。
【0163】
質量検出器を使用する技法については、トータルイオンクロマトグラム(TIC)からの質量シグナルの存在量により各化合物の濃度を算出し、UV-Vis検出器を使用する技法については、数種の純粋な化合物の濃度から得られる検量線から導かれる式を使用して各化合物の濃度を算出した。
【0164】
GC/MSおよびSEC/UV/MS分析方法が試料からの化合物の検出に適していることを評価するために、最も一般的な局所麻酔剤の中から参照標準を選択し、さらに分析した。
2.1.4.2.局所麻酔薬の中性画分に関するGC/MSクロマトグラフィー機器を使用した半揮発性化合物の測定のための定量方法。
【0165】
試料調製
「試料溶液」のアリコートをCHClにより1:1で抽出し、有機相を分析した。
データ分析
【0166】
試料溶液分析から得たクロマトグラムを評価し、3を超えるシグナル/ノイズで検出されたすべてのピークを報告し、MSライブラリーを使用して同定を試みた(2021年6月28日にウェブサイトhttps://webbook.nist.gov/chemistry/で入手可能なWiley Registry 11th Edition/NIST 2017 Mass Spectral Library)。フェナントレン-d10溶液(QL=1μg/mL)を化合物の定量のための内部標準として使用した。
結果
【0167】
本発明の比較BDDE架橋ヒアルロン酸およびPPE架橋ヒアルロン酸の分析方法の定量結果を、上に開示した表にまとめた。
【0168】
局所麻酔薬Bの中性形態の濃度を、SEC/UV/MSを使用して見出されたイオン化形態BHの濃度と組み合わせて、全LA(B+BH)に対するBのパーセンテージ、Bのパーセンテージおよび上に開示した表で報告した実験pKaを得た。
【0169】
2.1.4.3 局所麻酔薬ならびに遊離グリセロール、ポリグリセロールおよびマンニトール断片の総量およびそれらの化学構造についてSEC/UV/MSクロマトグラフィー機器を使用して不揮発性化合物を測定するための定量方法。
試料調製
【0170】
「試料溶液」のアリコートを、さらなる処理を行わずにSEC/UV/MSによって分析した。
データ分析
【0171】
試料溶液分析から得たクロマトグラムを評価し、3を超えるシグナル/ノイズで検出されたすべてのピークを報告し、MSライブラリー(Wiley Registry 11 th Edition/NIST 2017 Mass Spectral Library)を使用して同定を試みた。レセルピン溶液(QL=1μg/mL)を化合物の定量のための内部標準として使用した。
【0172】
SECの検出器として質量分析を使用して、遊離グリセロール、ポリグリセロールおよびマンニトール断片の化学構造を評価し、検出されたすべてのピークの質量スペクトルを、MSライブラリー(Wiley Registry 11 th Edition/NIST 2017 Mass Spectral Library)を使用して参照と比較した。
結果
【0173】
本発明の比較BDDE架橋ヒアルロン酸、およびPPE架橋ヒアルロン酸の分析方法の定量結果を上記表にまとめた。
【0174】
遊離ポリグリセリンの濃度をmg/mLで表し、イオン化形態の局所麻酔薬BHの濃度を、GC/MSを使用して見い出された中性形態Bの濃度と組み合わせて、全LA(B+BH)に対するBのパーセンテージ、Bのパーセンテージおよび上の表に報告された実験pKaを得た。
【0175】
2.1.4.4 動的放出のためにUV-Vis分光光度計を使用して、中性画分および局所麻酔薬の総量を決定するための定量的方法。
試料調製
【0176】
「試料溶液」のアリコートを、局所麻酔薬(B+BH)の総量を決定するためのさらなる処理なしでUV-Vis分光光度計によって分析した。
【0177】
「試料溶液」のアリコートをCHClにより1:1で抽出し、有機相をUV-Vis分光光度計で分析して、局所麻酔薬(B)の中性画分を決定した。
データ分析
【0178】
各化合物の濃度は、純粋な化合物のいくつかの濃度で得られた検量線から導かれる式を使用して算出した。
2.1.5 局所麻酔薬の動的放出
【0179】
本発明のPPE架橋ヒアルロン酸、比較BDDE架橋ヒアルロン酸および水溶液(対照として)からの局所麻酔剤の動的放出を以下に要約した。
試料:
【0180】
対照として、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に室温で粉末局所麻酔薬を溶解させて局所麻酔薬を含有する溶液を調製して、総溶液重量に対して0.1~10重量パーセントの局所麻酔薬を含有する局所麻酔薬リン酸緩衝生理食塩水を形成し、NaOH 0.2MおよびHCl 0.2Mを使用して溶液のpHを7.4に調整した。
【0181】
非滅菌および滅菌PPEヒアルロン酸(実施例3および実施例18)および局所麻酔薬を含有する比較の滅菌および滅菌BDDE架橋ヒアルロン酸(比較例85および比較例75)を、さらなる処理をせずに使用した。
方法:
【0182】
局所麻酔薬を含有する各試料(対照、PPEおよび比較BDDE架橋HA)5mlを、5mLのサイズおよび20kDのMWCOのSpectraPor(登録商標)Float-A-Lyzer透析デバイスに入れ、閉じた。透析チューブを245mLのリン酸緩衝生理食塩水(50倍希釈)を含有するスクリューキャップ付きガラス瓶に浸した。全麻酔薬が完全に放出され、局所麻酔薬濃度が試料と外部PBS溶液との間で平衡状態になるまで、溶液を37℃の恒温槽内で穏やかに攪拌した。
【0183】
一定期間、試料溶液を外部リン酸緩衝生理食塩水から取り出し、UV-Vis分光光度計を使用して全局所麻酔薬放出の総量について分析した。
【0184】
放出された局所麻酔薬の濃度は、純粋な局所麻酔薬のいくつかの濃度によって得られた検量線から導出された式を使用して計算した。1cm光路の石英セルを使用するUV-Vis分光光度計により、局所麻酔標準液(3.0μg/ml~45μg/ml)の検量線を得た。200÷300nmの範囲で吸収スペクトルを取得した。
【0185】
120時間後、外部リン酸緩衝生理食塩水のアリコートをCHClにより1:1で抽出し、セクション2.1.4.2に記載したGC/MSクロマトグラフィー機器を使用して有機相を分析し、外部リン酸緩衝生理食塩水のアリコートを、セクション2.1.4.3に記載したSEC/UV/MSクロマトグラフィー機器を使用して、さらなる処理なしでSEC/UV/MSによって分析した。
結果:
【0186】
緩衝生理食塩水対照、非滅菌および滅菌PPE(実施例3および18)ならびに同等の架橋度を有する比較非滅菌および滅菌BDDE(比較例85および例75)架橋ヒアルロン酸からの3mg/mLの局所麻酔リドカインの総量のパーセンテージ。
【0187】
PBS、ならびに非滅菌PPE(実施例3)および比較の非滅菌BDDE(比較例85)架橋ヒアルロン酸からの水中放出の1、2、48および120時間後のリドカインの総量のパーセンテージを以下の表16に要約する。
【表17】
【0188】
滅菌PPE(実施例18)および比較滅菌BDDE(比較例75)架橋ヒアルロン酸からの、PBSからの水中放出の1、2、48および120時間後のリドカインの総量のパーセンテージを以下の表17に要約する。
【表18】
【0189】
さらに、非滅菌および滅菌PPE架橋および比較BDDE架橋ヒアルロン酸からのリン酸緩衝生理食塩水中での120時間の放出(全放出)後のリドカインの総量(B+BH)に対する中性形態Bの分布を以下の表に開示する。
【表19】
【0190】
ここでも、リン酸緩衝生理食塩水中で120時間放出(全放出)後のリドカインの総量(B+BH)に対する中性形態Bの分布は、対照(PBS)ならびに非滅菌および滅菌比較BDDE架橋HAから、放出されたリドカインの中性形態Bがヘンダーソン・ハッセルバルヒの式から予測される熱力学値と非常に類似しており、その結果、見かけのpKaが熱力学的pKaと統計学的に異ならないことを示した(pKa=7.9)。代わりに、本発明の非滅菌および滅菌PPE架橋HAから、放出されたリドカインの中性形態Bは、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式から予測される熱力学的値よりはるかに高く、その結果、見かけのpKaは熱力学的pKaよりはるかに低く、上記の表に報告された結果を裏付けている。
【0191】
したがって、上述のすべての結果に関して、局所麻酔薬の開始はそのpKaに依存すると結論付けることができ、7.4の生理学的pH値では、その最も短い開始を有する局所麻酔薬は、そのpKaが7.4に最も近いものであり、その理由は、その脂溶性および生物学的に利用可能な形態は、神経上膜および神経細胞膜を貫通するものであり、その後、有効成分分子がナトリウムチャネルをブロックするためにより迅速に利用可能になるからである。言い換えれば、開始は、注射の瞬間の比B/BH(または%B)およびBH+からBへの変換率に依存し、これらは多くの因子によってin vivoで影響され得る。各麻酔薬に固有のイオン化定数(pKa)は、これらの状態のそれぞれに存在する分子の割合を予測する。したがって、麻酔水溶液のpHおよび局所麻酔薬のpKaは、局所麻酔薬の開始に影響を及ぼす最も重要な因子である。
【0192】
よって、実験データ(表2~7を参照されたい)に示されているように、ヒドロゲルの実施例1、実施例2および実施例3は、それぞれpH7.24、pH7.38および7.50でリドカインの最も速い開始を有する。一方、最新技術で知られている比較のヒドロゲル(表8~15を参照されたい)では、最も速い開始は、それぞれリドカインではpH7.9、メピバカインでは7.8、およびアルチカインでは7.6である。したがって、すべての比較ヒドロゲルは、注射可能なヒアルロン酸ヒドロゲルにとって生理学的であるとは考えられない7.4を超えるpHで最も早く開始する(6.9~7.4)。
結果
【0193】
局所麻酔薬(リドカイン-LA)を、各試験試料から異なる比率で外部PBS溶液に放出した。表16~17に示されているように、非滅菌および滅菌PBS対照中のリドカイン溶液が最も速い放出を示し、120時間以内に100%のリドカインが放出された。しかしながら、本発明の非滅菌および滅菌PPE架橋ヒアルロン酸からのリドカイン放出は、それぞれ、比較の非滅菌および滅菌BDDE架橋ヒアルロン酸よりも速かった。本発明の滅菌PPE架橋HAが、非滅菌のPPE架橋HAよりもリドカインの動的放出がわずかに高いことが注目される(おそらく、滅菌プロセスにおける熱分解により非滅菌のものの架橋度が低いためである)。
【0194】
したがって、上記実験データは、局所麻酔薬とのPPE架橋ヒアルロン酸コンジュゲートが局所麻酔薬の開始時間を短縮させ、よって、麻酔作用の持続時間を延長することを実証し、これは、局所麻酔薬のin vivoでの急速な開始および有効性を意味する。
先行技術文献
【0195】
1.He,Z.,et al.,´´Ultrasonication-assisted rapid determination of epoxide values in polymer mixtures containing epoxy resin´´.Analytical Methods,2014,vol.6(12),pp.4257-4261.
2.cf.Academic press Dictionary of Science and Technology,1992,pp.531;
3.A terminological Dictionary of the Pharmaceutical Sciences.2007,pp.190.
4.Rene.Levy et al.´´Determination of thermodynamic dissociation constants of local anaesthetic amines:influence of ionic strength´´ J.Pharm.Pharmac.,1972,vol.24,pp.841-847
5.Wiley Registry 11th Edition / NIST 2017 Mass Spectral Library
6.S.C.De Smedt,et al.´´Viscoelastic and transient network properties of hyaluronic acid as a function of the concentration,´´ Biorheology,1993.vol.30(1),pp.31-41).
【0196】
完全を期すために、本発明の様々な態様は、以下の番号付けされた項に記載されている。
条項1.組成物であって、
A)式(I)
【化18】

(I)
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
式(II)
【化19】

(II)
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸
および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物
からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
B)式(III)
【化20】

(III)
の1つ以上のポリグリセロール、
式(IV)
【化21】

(IV)
の1つ以上のポリグリセロール、
および式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセロールとの混合物
からなる群から選択される1つ以上のポリグリセロール、
C)1つ以上の局所麻酔剤またはその塩、および
D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体
を含み、
式中、
各Rが、R2、3、およびRからなる群から独立して選択され、






であり、


であり、


であり、
各Rが、RおよびRからなる群から独立して選択され、
bが、1~70からなる群から選択される整数であり、
cが、0~70からなる群から選択される整数であり、
dが、0~70からなる群から選択される整数であり、
eが、1~50からなる群から選択される整数であり、
fが、0~50からなる群から選択される整数であり、
gが、0~50からなる群から選択される整数であり、
式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸が、0.030~0.900%の架橋パーセンテージを有し、
式(III)または式(IV)のポリグリセロールが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)によって測定して、240~3.700Daの重量平均分子量(M)を有し、
但し、
式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸において、少なくとも1つのRがRであり、
式(III)または式(IV)のポリグリセロールにおいて、R1が存在する場合、RがR以外である、組成物。
【0197】
条項2.
式(I)、もしくは式(II)の架橋ヒアルロン酸、またはそれらの混合物が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15000Daの重量平均分子量およびHClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7000g/eqのエポキシ当量を有するPPEを架橋剤として使用して得られる、条項1に記載の組成物。
【0198】
条項3.
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式:
【数6】

{式中、
pHは、-log([H])であり、
pKaは、弱酸の解離平衡定数の-logであり、
[B]([塩基])は、局所麻酔薬のコンジュゲート塩基形態の濃度であり、
[BH+]([酸])は、局所麻酔薬のコンジュゲート酸性形態である}
によって計算された予測値よりも40%~160%高い、質量検出器と連結したガスクロマトグラフィーによって決定される局所麻酔剤の中性形態Bのパーセンテージを有する1つ以上の局所麻酔剤またはその塩を含む、条項1または2のいずれかに記載の組成物。
【0199】
条項4.
式(III)または式(IV)のポリグリセロールの分子量が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、240~3700Daである、条項1から3のいずれかに記載の組成物。
【0200】
条項5.
組成物中の式(III)もしくは式(IV)のポリグリセロールまたはそれらの混合物の濃度が0.45~25mg/mLである、条項1から4のいずれかに記載の組成物。
【0201】
条項6.
式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールが、
式(1)の化合物、
【化22】

(1)、
式(2)の化合物、
【化23】

(2)、
式(3)の化合物、
【化24】

(3)、
式(4)の化合物、
【化25】

(4)、
式(5)の化合物、
【化26】

(5)、
式(6)の化合物、
【化27】

(6)、
およびそれらの混合物、
からなる群から選択される、条項1から5のいずれかに記載の組成物。
【0202】
条項7.
式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸中のヒアルロン酸の濃度が1~50mg/mlである、条項1から6のいずれかに記載の組成物。
【0203】
条項8.
式(I)または式(II)の架橋ヒアルロン酸のヒアルロン酸の分子量が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法で測定して、100~3000kDaである、条項1から7のいずれかに記載の組成物。
【0204】
条項9.
局所麻酔剤が、アムブカイン、アモラノン、アミロカイン、アルケイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタンニカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチルイソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジシクロミン、エクゴニジン、エクゴニン、エチドカイン、ベータ-エウカイン、ユープロシン、フェナルコミン、ファルモカイン、フロモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p-アミノ安息香酸イソブチル、メシル酸ロイシノシル、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、ミルテカイン、ナエカイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセタジン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、プソイドカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、条項1から8のいずれかに記載の組成物。
【0205】
条項10.
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を式(V)の化合物
【化28】

(V)
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
と架橋させる工程と、
(ii)(A)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii)必要に応じて、工程(ii)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv)必要に応じて、工程(iii)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を式(VI)の化合物
【化29】

(VI)、
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、
は、

であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
と架橋させる工程と、
(ii´)(A)式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´)必要に応じて、工程(ii´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´)必要に応じて、工程(iii´)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
I´´)ヒアルロン酸を式(V)
【化30】

(V)、
および式(VI)の化合物
【化31】

(VI)
(式中、
各Rは、RおよびRからなる群から独立して選択され、
は、

であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である)
を含む混合物と架橋させる工程と、
(ii´´)(A)式(I)および式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、ならびに(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(I´´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´´)必要に応じて、工程(ii´´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´´)必要に応じて、工程(iii´´)で得られた混合物を滅菌する工程
とを含む方法によって得ることができる、条項1から9のいずれかに記載の組成物。
【0206】
条項11.
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(VI)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
I´´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物および式(VI)の化合物を含む混合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができる、条項10に記載の組成物。
【0207】
条項12.
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii)の後に、あるいは工程(iii)の後に、あるいは工程(iv)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v)を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii´)の後に、あるいは工程(iii´)の後に、あるいは工程(iv´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´)を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、工程(ii´´)の後に、あるいは工程(iii´´)の後に、あるいは工程(iv´´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´´)を含む方法によって得ることができる、条項10または11のいずれかに記載の組成物。
【0208】
条項13.
注射可能な組成物の形態である、条項1から12のいずれかに記載の組成物。
【0209】
条項14
式(I)、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはそれらの混合物の治療有効量、
式(III)もしくは式(IV)の1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の治療有効量、
1つ以上の麻酔剤の治療有効量、および
必要に応じて、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を、治療において使用するために含む、条項1から13のいずれかにおいて定義される組成物、
あるいは、
式(I)、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはその混合物の化粧品的に有効な量、
式(III)もしくは式(IV)の1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の化粧品的に有効な量、1つ以上の麻酔剤の化粧品的に有効な量、および
必要に応じて、1つ以上の化粧品的に許容される賦形剤または担体を、スキンケア剤として、特に皮膚充填剤として含む化粧品組成物である、条項1から13のいずれかにおいて定義される組成物の使用。
【0210】
条項15.
担体としての、特に薬物送達系としての条項1~13のいずれかに記載の組成物の使用。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
A)式(I)
【化1】

(I)、
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
式(II)
【化2】

(II)
の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
および式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸と式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸との混合物
からなる群から選択される1つ以上の架橋ヒアルロン酸、
B)式(III)
【化3】

(III)、
の1つ以上のポリグリセロール、
式(IV)
【化4】

(IV)、
の1つ以上のポリグリセロール、
および式(III)の1つ以上のポリグリセロールと式(IV)の1つ以上のポリグリセリンとの混合物
からなる群から選択される1つ以上のポリグリセロール、
C)1つ以上の局所麻酔剤またはその塩、ならびに
D)必要に応じて、1つ以上の許容可能な賦形剤または担体
を含み、
各Rが、R およびRからなる群から独立して選択され、


であり、


であり、


であり、
各Rが、 であり、
bが、1~70からなる群から選択される整数であり、
cが、0~70からなる群から選択される整数であり、
dが、0~70からなる群から選択される整数であり、
eが、1~50からなる群から選択される整数であり、
fが、0~50からなる群から選択される整数であり、
gが、0~50からなる群から選択される整数であり、
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸が、本明細書に開示される測定方法によって測定して、0.030~0.900%の架橋パーセンテージ(C.D.)を有し、
式(III)または式(IV)の前記ポリグリセロールが、UV可視および質量検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/UV/MS)によって測定して、240から3.700Daの重量平均分子量(M)を有し、
前記組成物中の式(III)もしくは式(IV)の前記ポリグリセロールまたはそれらの混合物の濃度が0.45~25mg/mLであり、
但し、
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸において、少なくとも2つのRがRであり、
-前記組成物が、(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含むとき、前記組成物は、
i)ヒアルロン酸を式(V)、
【化5】

(V)、
の化合物で架橋させる工程であって、
ここで、各R が、R であり、
は、

であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である、架橋させる工程と、
(ii)(A)式(I)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii)必要に応じて、工程(ii)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv)必要に応じて、工程(iii)で得られた混合物を滅菌する工程と、
を含む方法によって得ることができ、
あるいは、
前記組成物が、(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を式(VI)、
【化6】

(VI)、
の化合物で架橋させる工程であって、
ここで、各R はR であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である、架橋させる工程と、
(ii´)(A)式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、および(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(i´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´)必要に応じて、工程(ii´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´)必要に応じて、工程(iii´)で得られた混合物を滅菌する工程と、
さらに、工程(i´)の後の、追加の洗浄工程(vi´)と、
とを含む方法によって得ることができ、
あるいは、
(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
i´´)ヒアルロン酸を式(V)、
【化7】

(V)、
および式(VI)
【化8】

(VI)、
の化合物で架橋させる工程であって、
ここで、各R はR であり、


であり、
bは、1~70からなる群から選択される整数であり、
cは、0~70からなる群から選択される整数であり、
dは、0~70からなる群から選択される整数である、架橋させる工程と、
(ii´´)(A)式(I)および式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸、ならびに(B)式(III)または式(IV)の1つ以上のポリグリセロールを含む工程(I´´)で得られた混合物を、1つ以上の麻酔剤(C)と接触させる工程と、
(iii´´)必要に応じて、工程(ii´´)で得られた混合物を1つ以上の賦形剤または担体(D)と接触させる工程と、
(iv´´)必要に応じて、工程(iii´´)で得られた混合物を滅菌する工程と、
さらに、工程(i´)の後の、追加の洗浄工程(vi´)と、
とを含む方法によって得ることができ、
工程(vi)、あるいは工程(vi´)、あるいは工程(vi´´)は、6.5~7.4のpHを得るためにこのような適切量の酸性水溶液を添加することによって実施され、
組成物中の式(III)もしくは式(IV)のポリグリセロールまたはそれらの混合物の濃度は0.45~25mg/mLである、組成物。
【請求項2】
式(I)、もしくは式(II)の前記架橋ヒアルロン酸、またはそれらの混合物が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15000Daの重量平均分子量およびHClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7000g/eqのエポキシ当量を有するPPEを架橋剤として使用して得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(III)または式(IV)の前記1つ以上のポリグリセロールが、
式(1)の化合物、
【化9】

(1)、
式(2)の化合物、
【化10】

(2)、
式(3)の化合物、
【化11】

(3)、
式(4)の化合物、
【化12】

(4)、
式(5)の化合物、
【化13】

(5)、
式(6)の化合物、
【化14】

(6)、
およびそれらの混合物、
からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸中のヒアルロン酸の濃度が1~50mg/mlである、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)または式(II)の前記架橋ヒアルロン酸のヒアルロン酸の分子量が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法で測定して、100~3000kDaである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記局所麻酔剤が、アムブカイン、アモラノン、アミロカイン、アルケイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタンニカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチルイソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジシクロミン、エクゴニジン、エクゴニン、エチドカイン、ベータ-エウカイン、ユープロシン、フェナルコミン、ファルモカイン、フロモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p-アミノ安息香酸イソブチル、メシル酸ロイシノシル、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、ミルテカイン、ナエカイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセタジン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、プソイドカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの重量平均分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、
i´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの重量平均分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(VI)の化合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、
i´´)ヒアルロン酸を、
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による方法によって測定して、204~15.000Daの重量平均分子量(M)、および
HClを用いる超音波支援迅速滴定によって測定して、100~7.000g/eqのエポキシ当量
を有する式(V)の化合物および式(VI)の化合物を含む混合物と架橋させる工程を含む方法によって得ることができる、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
-(a)式(I)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii)の後に、あるいは工程(iii)の後に、あるいは工程(iv)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v)を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(II)の架橋ヒアルロン酸を含む場合、工程(ii´)の後に、あるいは工程(iii´)の後に、あるいは工程(iv´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´)を含む方法によって得ることができるか、
あるいは、
-(a)式(I)および式(II)の架橋ヒアルロン酸の混合物を含む場合、工程(ii´´)の後に、あるいは工程(iii´´)の後に、あるいは工程(iv´´)の後に、式(III)の化合物、式(IV)の化合物またはそれらの混合物の添加を含む追加の工程(v´´)を含む方法によって得ることができる、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
注射可能な組成物の形態である、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
式(I)、式(II)の前記1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはそれらの混合物の治療有効量、
式(III)もしくは式(IV)の前記1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の治療有効量、
1つ以上の麻酔剤の治療有効量、および
必要に応じて、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を、治療において使用するために含む医薬組成物である、請求項において定義される医薬組成物。
【請求項11】
担体としての、特に薬物送達系としての、請求項1から10において定義される組成物の使用。
【請求項12】
請求項1において定義される組成物の化粧品分野の使用であって、前記組成物が、
式(I)、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸またはそれらの混合物の化粧品としての有効量、
式(III)もしくは式(IV)の前記1つ以上のポリグリセロールまたはそれらの混合物の化粧品としての有効量、
1つ以上の麻酔剤の美容的な有効量、および
必要に応じて、1つ以上の化粧品として許容される賦形剤または担体、
を含み、ヒアルロン酸の欠乏および/または障害を伴う疾患または状態に罹患していない対象に対するスキンケアのための化粧品組成物。
【請求項13】
(A)式(I)の1種以上の架橋ヒアルロン酸、
(B)式(III)の1種以上のポリグリセロール、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
(A)式(I)の1種以上の架橋ヒアルロン酸、
(B)式(IV)の1種以上のポリグリセロール、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
(A)式(II)の1種以上の架橋ヒアルロン酸、
(B)式(III)の1種以上のポリグリセロール、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
(A)式(II)の1種以上の架橋ヒアルロン酸、
(B)式(IV)の1種以上のポリグリセロール、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
(A)式(I)の1種以上の架橋ヒアルロン酸と、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸の混合物、
(B)式(III)の1種以上のポリグリセロール、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
(A)式(I)の1種以上の架橋ヒアルロン酸と、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸の混合物、
(B)式(IV)の1種以上のポリグリセロール、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
(A)式(I)の1種以上の架橋ヒアルロン酸、
(B)式(III)の1種以上のポリグリセロールと、式(IV)の1種以上のポリグリセロールの混合物、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
(A)式(II)の1種以上の架橋ヒアルロン酸、
(B)式(III)の1種以上のポリグリセロールと、式(IV)の1種以上のポリグリセロールの混合物、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
(A)式(I)の1種以上の架橋ヒアルロン酸と、式(II)の1つ以上の架橋ヒアルロン酸の混合物、
(B)式(III)の1種以上のポリグリセロールと、式(IV)の1種以上のポリグリセロールの混合物、
(C)1種以上の麻酔剤またはその塩、および
(D)必要に応じて、1つ以上の許容される賦形剤または担体、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【国際調査報告】