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特表2024-525006多段ポリオレフィン製造における膨張剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】多段ポリオレフィン製造における膨張剤の使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20240702BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C08F2/00 A
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579416
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022067173
(87)【国際公開番号】W WO2022268951
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181472.8
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ホフ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ケトナー,ジョアナ エルヴィラ
(72)【発明者】
【氏名】カネロプロス,ヴァシレイオス
(72)【発明者】
【氏名】スメリン,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】アホ,ヤニ
(72)【発明者】
【氏名】クラリス,アポストロス
(72)【発明者】
【氏名】カリオ,カッレ
(72)【発明者】
【氏名】サイード,イルファン
(72)【発明者】
【氏名】フロヴァイニオ,エルノ
【テーマコード(参考)】
4J011
4J128
【Fターム(参考)】
4J011AA02
4J011AA03
4J011AC03
4J011BB01
4J011DA04
4J011DA06
4J011DB01
4J011DB13
4J011HA03
4J011HB21
4J011MA01
4J011MA12
4J011MB02
4J011MB03
4J011MB04
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00B
4J128BA01A
4J128BB00B
4J128BB01A
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB05
4J128EC02
4J128GB01
(57)【要約】
本開示は、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法であって、該方法は、a)第1の重合工程において、第1のオレフィンモノマーを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、b)第2の重合工程において、第2のオレフィンモノマーを、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)及び誘発膨張剤の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成することを含み、ここで、前記第1のポリマー成分(A)及び前記第2のポリマー成分(B)は、前記第1のポリマー成分(A)に対する前記第2のポリマー成分(B)の所定の目標重量比を満たす生産速度で生成され、前記方法は、i)前記第2の重合工程における、前記第1のポリマー成分(A)に対する第2のポリマー成分(B)の第1の重量比を決定すること、及び、ii)前記決定された第1の重量比が前記所定の目標重量比よりも小さい場合に、前記第2の重合工程において前記誘発膨張剤の前記濃度を増加させること、又は、iii)前記決定された第1の重量比が前記所定の目標重量比よりも大きい場合に、前記第2の重合工程において前記誘発膨張剤の前記濃度を減少させること、又は、iv)前記決定された第1の重量比が前記所定の目標重量比に等しい場合に、前記第2の重合工程において前記誘発膨張剤の前記濃度を維持すること
を含む、前記方法に関する。本開示は、多段オレフィン重合プロセスにおける気相生成スプリットを改善する為の、気相重合工程における誘発膨張剤の使用方法に更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、第1のオレフィンモノマーを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、
b)第2の重合工程において、第2のオレフィンモノマーを、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)及び誘発膨張剤の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、前記第1のポリマー成分(A)及び前記第2のポリマー成分(B)は、前記第1のポリマー成分(A)に対する前記第2のポリマー成分(B)の所定の目標重量比を満たす生産速度で生成され、前記方法は、
i)前記第2の重合工程における、前記第1のポリマー成分(A)に対する第2のポリマー成分(B)の第1の重量比を決定すること、及び、
ii)前記決定された第1の重量比が前記所定の目標重量比よりも小さい場合に、前記第2の重合工程において前記誘発膨張剤の前記濃度を増加させること、又は、
iii)前記決定された第1の重量比が前記所定の目標重量比よりも大きい場合に、前記第2の重合工程において前記誘発膨張剤の前記濃度を減少させること、又は、
iv)前記決定された第1の重量比が前記所定の目標重量比に等しい場合に、前記第2の重合工程において前記誘発膨張剤の前記濃度を維持すること
を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記誘発膨張剤が、不活性C4~10アルカン及び/又はC5~10コモノマーであり、好ましくは、ブタン、ペンタン、ヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の重合工程において、圧力が3~30バールであり、及び滞留時間が少なくとも1.5時間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記重合触媒が、シングルサイト触媒であり、好ましくはメタロセン触媒である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合触媒が、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の重合工程におけるオリゴマー、すなわちC6~14成分、の総濃度が、反応混合物の総量に対して、50~1200ppmの範囲、好ましくは600ppm未満、より好ましくは500ppm未満、最も好ましくは400ppm未満、である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の目標重量比(B)/(A)が、0.65~2.5、好ましくは0.8~2.3、より好ましくは0.92~1.9、最も好ましくは1.0~1.65、である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
多段オレフィン重合プロセスにおける気相生成スプリットを改善する為の、気相重合工程における誘発膨張剤の使用方法。
【請求項9】
前記誘発膨張剤が不活性C4~10アルカンであり、好ましくは、ブタン、ペンタン、ヘプタン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の使用方法。
【請求項10】
前記気相重合工程におけるオリゴマー、すなわちC6~10成分、の総濃度が、反応混合物の総量に対して、50~1200ppmの範囲、好ましくは600ppm未満、より好ましくは500ppm未満、最も好ましくは400ppm未満、である、請求項8又は9に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィンの重合に関し、より特には、多段ポリオレフィン製造方法に関する。本開示は、多段オレフィン重合プロセスにおける気相反応器生成スプリット(gas-phase reactor production split)を改善する為の、気相重合工程における誘発膨張剤の使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
多段ポリオレフィン製造プロセス(例えば、Borstar PE、PP及びSpheripol PP)は、所望の機械的特性を有する樹脂を加工することを容易に達成する為の多峰性能力を与える為の多段反応器構成(multi-stage reactor configurations)からなる。そのようなプロセスにおいて、あらゆる種類のポリオレフィンを製造する為に、複数のスラリーループ反応器を直列に組み合わせ、続いて気相反応器を組み合わせることが採用されている。
【0003】
多段オレフィン重合プロセスにおいて製造される前述された材料の主な特徴は、所望の生成スループット(production throughput)を犠牲にすること無しに、製品ポートフォリオの要件を満たす為に、所望の生成スプリット(production split)を達成することである。一般的に、GPRの生成スプリットが所与の生成スループットに対して増やすことができれば、該製品ポートフォリオ(product portfolio)が大幅に拡大/高められることができる。
【0004】
他のプロセスパラメータ及び操作手順の中でも、該GPRの生成スプリットは触媒の速度論的プロファイルに大きく依存する。例えば、速い減衰活性を示す(すなわち、ループ反応器において高い初期活性を示し且つ気相反応器において減衰活性を示す)触媒系は、所望の生成スプリットを達成する為に多くの課題をもたらす。その上、減衰活性の遅い触媒(すなわち、相対的に平坦な触媒活性プロファイル)においても、多段反応器構成においてGPRの生成スプリットを増加させる手段又は方法がまた望まれている。
【0005】
近年、シングルサイト触媒が使用されたときに、ターゲットのループ/GPRスプリットを達成する際に多くの課題が観察されている。気相流動床反応器(gas phase fluidized bed reactor)における触媒活性の低下と、相対的に低い粒子成長速度との組み合わせにより、所望のスプリットを達成して、ターゲットとされた製品群を生産することが困難になっていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の目的は、上記の問題を克服する為に、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法を提供することである。
【0007】
本開示の目的は、独立請求項において記載されている構成によって特徴付けられる方法及び使用方法によって達成される。本開示の好ましい実施態様は、従属請求項において開示されている。
【0008】
本開示は、第2の重合段階において誘発膨張剤(induced swelling agent)の濃度を、生産速度を制御すること及び第1のポリマーに対する第2のポリマーの所定の目標重量比を満たすことを可能にする所望のレベルに調整するという考えに基づく。これにより、該第2の重合工程における触媒の生産性が向上し、該第2の重合工程における生成スプリットが更に改善され、そして、全体的な滞留時間が長い多段重合プロセスの製品ウィンドウ(product window)が広がる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、第1のオレフィンモノマーを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、
b)第2の重合工程において、第2のオレフィンモノマーを、工程a)の該第1のポリマー成分(A)及び誘発膨張剤の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、該第1のポリマー成分(A)及び該第2のポリマー成分(B)は、該第1のポリマー成分(A)に対する該第2のポリマー成分(B)の所定の目標重量比を満たす生産速度で生成され、該方法は、
i)該第2の重合工程における、該第1のポリマー成分(A)に対する第2のポリマー成分(B)の第1の重量比を決定すること、及び、
ii)該決定された第1の重量比が該所定の目標重量比よりも小さい場合に、該第2の重合工程において該誘発膨張剤の該濃度を増加させること、又は、
iii)該決定された第1の重量比が該所定の目標重量比よりも大きい場合に、該第2の重合工程において該誘発膨張剤の該濃度を減少させること、又は、
iv)該決定された第1の重量比が該所定の目標重量比に等しい場合に、該第2の重合工程において該誘発膨張剤の該濃度を維持すること
を含む、
該方法に関する。
【0010】
本開示は、多段オレフィン重合プロセスにおける気相生成スプリットを改善する為の、気相重合工程における誘発膨張剤の使用方法に関する。本開示の実施態様に従うと、該誘発膨張剤は、不活性C4~10アルカン及び/又はC5~10コモノマーであり、好ましくは、ブタン、ペンタン、ヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、特には、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、該誘発膨張剤は、不活性C4~10アルカンであり、より好ましくは、ブタン、ペンタン、ヘプタン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
該第2の重合反応器中の該誘発膨張剤の該濃度を所望のレベルに調整することにより、触媒の生産性が向上し、及びGPRの生成スプリットが更に改善され、及び、全体的な滞留時間が長い多段重合プロセスの製品ウィンドウが広がる。
【0012】
プロセス
【0013】
本開示は、重合触媒を使用する多段重合プロセスに関し、該プロセスは、任意であるが好ましい予備重合工程と、それに続く第1の重合工程と第2の重合工程とを含む。
【0014】
好ましくは、同じ触媒が各工程において使用され、理想的には、それは、予備重合から後続の重合工程へ、周知の様式で順次に移動させる。
【0015】
従って、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法は、
a)第1の重合工程において、第1のオレフィンモノマーを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、
b)第2の重合工程において、第2のオレフィンモノマーを、工程a)の該第1のポリマー成分(A)及び誘発膨張剤の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含む。
【0016】
予備重合工程
【0017】
重合工程の前に予備重合工程が設けられてもよい。該予備重合の目的は、低温及び/又は低モノマー濃度で、少量のポリマーを触媒上に重合させることである。予備重合によって、スラリー中の該触媒の性能を向上させること及び/又は最終ポリマーの特性を変更することが可能である。該予備重合工程は好ましくは、スラリー中で実施され、任意の予備重合工程で生成されるポリマーの量は、エチレンポリマー成分(A)の量(重量%)にカウントされる。
【0018】
予備重合工程が存在する場合、触媒成分は好ましくは、該予備重合工程に全て導入される。次に、好ましくは、該予備重合工程の反応生成物は、該第1の重合工程に導入される。
【0019】
しかしながら、固体触媒成分と助触媒とが別々に供給されることができる場合には、該助触媒の一部のみが該予備重合段階へと導入され、そして、残りの一部を後続の重合段階へと導入することが可能である。また、そのような場合には、十分な重合反応が得られるだけの量の助触媒を該予備重合段階へと導入する必要がある。
【0020】
本発明の範囲内において、該予備重合で生成されるポリマーの量は、最終的な多峰性(コ)ポリマーに対して1~7重量%の範囲内にあると理解される。このことは、第1の重合工程a)において生成された第1のエチレンポリマー成分(A)の一部としてカウントされることができる。
【0021】
第1の重合工程a)
【0022】
本方法において、該第1の重合工程a)は、オレフィンモノマー、及び任意的に、少なくとも1つのオレフィンコモノマーを重合させることを含む。
【0023】
1つの実施態様において、該第1の重合工程は、エチレンを重合させてエチレンホモポリマーを生成することを含む。
【0024】
別の実施態様において、該第1の重合工程は、エチレンと少なくとも1つのオレフィンコモノマーとを重合させてエチレンコポリマーを生成することを含む。
【0025】
該第1の重合工程は、適切な任意の1つの反応器内又は一連の反応器内で行われうる。該第1の重合工程は、1以上のスラリー重合反応器内、1つの気相重合反応器内、又はそれらの組み合わせ内で行われる。好ましくは、該第1の重合工程は、1以上のスラリー重合反応器内、より好ましくは、少なくとも3つ(例えば、正確に3つ)のスラリー相反応器内、例えば、予備重合を実行する為のスラリー相反応器を包含する上記のスラリー相反応器内、で行われる。
【0026】
該第1の重合ゾーンでの重合は好ましくは、スラリー中で行われる。次に、該重合で形成されたポリマー粒子が、該粒子内にフラグメント化され(fragmented)、そして分散された触媒と共に、流体炭化水素中に懸濁させる。該スラリーは、該流体から該粒子への反応物の移動を可能にする為にかき混ぜられる。
【0027】
スラリー重合は通常、不活性希釈剤、典型的には、炭化水素希釈剤中、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、又はそれらの混合物中、で行われる。好ましくは、該希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の組み合わせである。特に好ましい希釈剤はプロパンであり、場合によっては、少量のメタン、エタン及び/又はブタンを含む。
【0028】
該スラリーの流動相中のエチレン含有量は、2~約50モル%、好ましくは約3~約20モル%、特には約5~約15モル%、である。高いエチレン濃度を有することの利点は、該触媒の生産性が向上することであるが、欠点は、該濃度が低い場合よりも多くのエチレンがリサイクルされる必要があることである。
【0029】
該スラリー重合における温度は典型的には、50~115℃、好ましくは60~110℃、特には70~100℃、である。圧力は、1~150バール、好ましくは10~100バール、である。
【0030】
該第1の重合工程における圧力は典型的には、35~80バール、好ましくは40~75バール、特には45~70バール、である。
【0031】
該第1の重合段階における滞留時間は典型的には、0.15時間~3.0時間、好ましくは0.20時間~2.0時間、特には0.30時間~1.5時間、である。
【0032】
流体混合物の臨界温度と臨界圧力とを超えて該スラリー重合を行うことが有利な場合がある。そのような操作は、米国特許第US-A-5391654号明細書において記載されている。そのような操作において、該温度は典型的には、85~110℃、好ましくは90~105℃、であり、圧力は、40~150バール、好ましくは50~100バール、である。
【0033】
該スラリー重合は、スラリー重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、連続攪拌槽反応器(continuous stirred tank reactor)及びループ反応器を包含する。該重合がループ反応器内で行われることが特に好ましい。そのような反応器において、該スラリーは、循環ポンプを使用することによって、閉じた管(closed pipe)に沿って高速で循環される。ループ反応器は一般的に、当技術分野において知られており、例えば、米国特許第US-A-4582816号明細書、米国特許第US-A-3405109号明細書、米国特許第US-A-3324093号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-479186号明細書及び米国特許第US-A-5391654号明細書において例が与えられている。
【0034】
該スラリーは、連続的に又は断続的に該反応器から引き抜かれることができる。断続的な引き抜きの好ましい方法は、該反応器から該濃縮されたスラリーのバッチを引き抜く前に該スラリーが濃縮されるところの沈降脚(settling legs)の使用である。沈降脚の使用は、とりわけ、米国特許第US-A-3374211号明細書、米国特許第US-A-3242150号明細書、及び欧州特許出願公開第EP-A-1310295号明細書において開示されている。連続取り出しは、とりわけ、欧州特許出願公開第EP-A-899990号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1415999号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1591460号明細書、及び国際公報第WO-A-2007/025640号パンフレットにおいて開示されている。該連続的な抜き取りは、欧州特許出願公開第EP-A-1310295号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1591460号明細書、及び欧州特許第EP3178853B1明細書において開示されているように、適切な濃縮方法と有利に組み合わせられる。
【0035】
当技術分野において知られているように、ポリマーの分子量を制御する為に水素が該反応器内に供給されうる。その上、該ポリマー生成物の密度を制御する為に、1以上のアルファーオレフィンコモノマーが該反応器内に添加されうる。そのような水素及びコモノマーの実際の供給量は、使用される触媒及び結果として得られるポリマーの所望のメルトインデックス(melt index)(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含量)に依存する。
【0036】
第2の重合工程b)
【0037】
該第1の重合工程から、該第1のポリマー成分が該第2の重合工程に移される。
【0038】
本方法において、該第2の重合工程b)は、オレフィンモノマー、及び任意的に、少なくとも1つのオレフィンコモノマーを重合化させることを含む。
【0039】
1つの実施態様において、該第2の重合工程は、エチレン及び任意的に、少なくとも1つのオレフィンコモノマーを重合させて、夫々、エチレンホモポリマー又はエチレンコポリマーを製造する。
【0040】
該第2の重合工程は、1以上の気相重合反応器内で行われる。
【0041】
該気相重合は、気相重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、流動床反応器(fluidized bed reactor)、高速流動床反応器(fast fluidized bed reactor)若しくは沈降床反応器(settled bed reactor)、又はこれらの任意の組み合わせを包含する。複数の反応器の組み合わせが使用される場合に、該ポリマーは1つの重合反応器から別の重合反応器に移される。その上、重合段階からのポリマーの一部又は全部が前の重合段階に戻されてもよい。
【0042】
該気相重合は、気相反応器(GPR:gas phase reactor)としてまた知られるガス固流動床(gas-solids fluidized bed)で行われる。ガス固体(Gas solids)のオレフィン重合反応器は、ポリマーの設計及び様々な触媒系の使用において相対的に高い柔軟性を可能にする為に、アルファーオレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、の重合の為に一般的に使用されている。一般的なガス固体のオレフィン重合反応器の変形は流動床反応器である。
【0043】
ガス固体のオレフィン重合反応器は、1以上のガス状オレフィンモノマーをポリオレフィン粉末粒子へと異相重合する為の重合反応器であり、それは下記の3つのゾーンを備えている:ボトムゾーン(bottom zone)において、流動化ガス(fluidization gas)が該反応器内に導入される;ミドルゾーン(middle zone)において、それは通常、概ね円筒形状を有し、該流動化ガス中に存在する1以上のオレフィンモノマーが重合されてポリマー粒子を形成する;トップゾーン(top zone)において、該流動化ガスが該反応器から引き抜かれる。或る種のガス固体オレフィン重合反応器において、流動化グリッド(fluidization grid)(ディストリビューションプレート(distribution plate)とまた名付けられている)が該ボトムゾーンを該ミドルゾーンから分離する。或る種のガス固体オレフィン重合反応器において、該トップゾーンは、その延在する直径が該ミドルゾーンに比べて拡大する故に該流動化ガスが膨張し、そして該ガスがポリオレフィン粉末から離脱するところの離脱ゾーン(disengaging zone)又は巻き込みゾーン(entrainment zone)を形成する。
【0044】
濃厚相は、該ポリマー粒子の形成の故に、増加した嵩密度を有するガス固体オレフィン重合反応器の中間ゾーン内の領域を示す。或る種のガス固体オレフィン重合反応器、すなわち流動床反応器、において、該濃厚相は流動床によって形成される。
【0045】
該気相重合における温度は典型的には、50~100℃、好ましくは65~90℃、である。
【0046】
該気相重合における圧力は典型的には、5~40バール、好ましくは10~35バール、より好ましくは15~30バール、である。
【0047】
該気相重合における滞留時間は、1.0時間~4.5時間、好ましくは1.5時間~4.0時間、特には2.0時間~3.5時間、である。
【0048】
反応物のモル比は下記の通りに調整される:C6/C2比が0.0001~0.1モル/モル、H2/C2比が0~0.1モル/モル。
【0049】
該気相反応器におけるポリマー生産速度は、10tn/時間~65tn/時間、好ましくは12tn/時間~58tn/時間、特には13tn/時間~52.0tn/時間、であり、従って気相反応器からの全ポリマー取出速度は、15tn/時間~100tn/時間、好ましくは18tn/時間~90tn/時間、特には20tn/時間~80.0tn/時間、である。
【0050】
生成スプリット(production split)(A/B)は、第1のポリマー成分が30%~60%及び第2のポリマー成分が70%~40%、好ましくは第1のポリマー成分が35%~55%、第2のポリマー成分が65%~45%、特に第1のポリマー成分3が8%~50%、第2のポリマー成分が62%~50%、であってもよい。
【0051】
該気相重合は、気相重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、流動床反応器、高速流動床反応器若しくは沈降床反応器、又はこれらの任意の組み合わせを包含する。複数の反応器の組み合わせが使用される場合に、該ポリマーは1つの重合反応器から別の重合反応器に移される。さらに、重合段階からのポリマーの一部又は全部が前の重合段階に戻されてもよい。
【0052】
所定の目標重量比の制御
【0053】
本方法において、該所定の目標重量比が、該第2の重合工程における誘発膨張剤の量を調整することによって制御される。
【0054】
語「所定の目標重量比」は、該第1の重合工程において生成される第1のポリマー成分(A)に対する該第2の重合工程において生成される第2のポリマー成分(B)の比を意味する。
【0055】
該所定の目標重量比(B)/(A)は典型的には、0.65~2.5、好ましくは0.8~2.3、より好ましくは0.92~1.9、最も好ましくは1.0~1.65、である。
【0056】
該所定の重量比は、
i)該第2の重合反応器における、第1のポリマー成分(A)に対する第2のポリマー成分(B)の重量比を決定すること;
ii)該第2の重合反応器における、該第1のポリマーに対する該第2のポリマー成分(B)の該決定された重量比が、該目標重量比よりも小さい場合に、該第2の重合工程において誘発膨張剤の該濃度を増加させること、又は、
iii)該第2の重合反応器における、該第1のポリマーに対する該第2のポリマー成分(B)の該決定された重量比が、該目標重量比よりも大きい場合に、該第2の重合工程において誘発膨張剤の該濃度を減少させること、又は、
iv)該第2の重合反応器における、該第1のポリマーに対する該第2のポリマー成分(B)の該決定された重量比が、該目標重量比に等しい場合に、該第2の重合工程において誘発膨張剤の該濃度を維持すること
によって制御される。
【0057】
誘発膨張剤
【0058】
本明細書において使用される場合に、語「誘発膨張剤」は、特に質量取り込み(mass uptake)により、ポリマー粒子のシェルに浸透し、そして、コアを膨潤させることができる化合物を云う。従って、該誘発膨張剤は、特には該膨潤剤が使用されるところの特定のプロセスの条件下、該ポリマー粒子及びモノマーの存在下で、該重合プロセスにおいて生成されたポリマー粒子に収着することができる。本明細書において使用される場合に、語「誘導された」は特には、膨潤効果を生じさせる意図的な目的を云い、該膨潤効果は、該プロセスにとってどのようにしても必要な成分の状況的な存在の為に単に引き起こされるのではない。好ましくは、該誘発膨張剤は、可能な限り高い膨潤度を作り出す為に使用される。
【0059】
該誘発膨張剤は、該第2の重合工程において使用されるものと同じコモノマー、及び/又は反応媒体の一部である不活性化合物であってもよい。該誘発膨張剤は高分子量炭化水素であり、好ましくはC4~10アルカン(例えば、n-ヘプタン、n-ブタン、n-ペンタン及びそれらの任意の異性体)及びC5~10コモノマー(例えば、1-ヘキセン)から選択される。好ましくは、該誘発膨張剤は、ブタン、ペンタン、ヘプタン、1-ペンテン若しくは1-ヘキセン、又はそれらの組み合わせであり、より好ましくは、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘプタン、1-ペンテン若しくは1-ヘキセン、又はそれらの組み合わせである。
【0060】
第2の重合工程b)における誘発膨張剤の濃度は、オンラインガスクロマトグラフィーによって測定された気相反応器中のオリゴマー(すなわち、C6~C14成分として表される)の総濃度によって制御される。
【0061】
該第2の重合工程におけるオリゴマー、すなわちC6~14成分、の総濃度は、該反応混合物の総量に対して、典型的には50~1200ppmの範囲、好ましくは600ppmよりも低く、より好ましくは500ppmよりも低く、最も好ましくは400ppmよりも低い。
【0062】
該誘発膨張剤は、該気相反応器の底部に配置された注入ラインを介して該反応器に導入されることができ、それは、再循環ガス流と混合され、ひいては該気相反応器内に導入される。
【0063】
該気相重合工程における誘発膨張剤、例えば高分子量炭化水素、の存在は、驚くべきことに、シングルサイト触媒が関与する場合に、特には該反応器を凝縮されたモードの下で操作する必要無しに、該気相重合における触媒生産性を向上させる重要な因子である。該ポリマー粒子における重質アルカン又はアルケンの収着は、PE気相重合の間の反応物及び連鎖移動剤(chain transfer agent)(例えば、エチレン、水素、高級アルファーオレフィン等)の濃度に大きく影響し、従って、多段多相のPE重合プロセスにおいて、該気相反応器における触媒生産性を高める際に重要な役割を果たす。
【0064】
重合触媒
【0065】
本方法において利用される重合触媒は、メタロセン触媒である。該重合触媒は典型的には、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む。
【0066】
好ましくは、該第1の重合工程と該第2の重合工程とは、同じメタロセン触媒を用いて、すなわち同じメタロセン触媒の存在下で、行われる。
【0067】
本方法は好ましくは、シングルサイト触媒を利用する。シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレンコポリマーは、チーグラー・ナッタ(Ziegler Natta)触媒とは対照的に、それらをチーグラー・ナッタ材料と区別されることを可能にするところの特性を有する。特には、コモノマー分布がより均一である。これは、TREF技術又はCrystaf技術を用いて示されることができる。触媒残渣はまた、使用された触媒を示してもよい。チーグラー・ナッタ触媒は、例えばZr又はHfの(IV)族金属を含まない。
【0068】
遷移金属錯体(i)
【0069】
該遷移金属錯体は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族の遷移金属(M)、又はアクチニド若しくはランタニドの遷移金属(M)を含む。
【0070】
本発明に従う場合に、語「遷移金属錯体」は、遷移金属の任意のメタロセン又は非メタロセン化合物を包含し、それは、少なくとも1つの有機(配位(coordination))リガンドを有し且つ単独で又は助触媒と共に触媒活性を有する。該遷移金属化合物は当技術分野において周知であり、及び本発明は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族、例えば第3族~第7族、又は第3族~第6族、例えば第4族~第6族、並びにランタニド又はアクチニドからの金属の化合物をカバーする。
【0071】
1つの実施態様において、該遷移金属錯体(i)は下記の式(i-I)を有するものである:
(L)mRnMXq (i-I)
ここで、
「M」は周期表(IUPAC 2007)の第3~第10族の遷移金属(M)であり、
各「X」は独立して、モノアニオン性リガンド、例えばσ-リガンド、であり、
各「L」は独立して、遷移金属「M」に配位する有機リガンドであり、
「R」は、複数の該有機リガンド(L)を連結する架橋基であり、
「m」は、1、2又は3であり、好ましくは2であり、
「n」は、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、
「q」は、1、2又は3であり、好ましくは2であり、及び、
m+qは、該遷移金属(M)の原子価に等しい。
【0072】
「M」は好ましくは、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、又はチタン(Ti)からなる群より選択され、より好ましくはジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)からなる群より選択される。
【0073】
「X」は好ましくはハロゲンであり、最も好ましくはClである。
【0074】
最も好ましくは、遷移金属錯体(i)は、メタロセン錯体であり、それは上記で定義されているような遷移金属化合物を含み、それは、置換基「L」としてシクロペンタジエニルリガンド、インデニルリガンド又はフルオレニルリガンドを含む、更に、該リガンド「L」は、1以上の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基又は他のヘテロ原子基等、を有していてもよい。好適なメタロセン触媒は当技術分野において知られており、とりわけ、国際公開第WO-A-95/12622、国際公開第WO-A-96/32423号パンフレット、国際公開第WO-A-97/28170号パンフレット、国際公開第WO-A-98/32776号パンフレット、国際公開第WO-A-99/61489号パンフレット、国際公開第WO-A-03/010208号パンフレット、国際公開第WO-A-03/051934号パンフレット、国際公開第WO-A-03/051514号パンフレット、国際公開第WO-A-2004/085499号パンフレット、欧州特許出願公開第EP-A-1752462号明細書及び欧州特許出願公開第EP-A-1739103号明細書において開示されている。
【0075】
本発明の1つの実施態様において、該メタロセン錯体は、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)クロリドである。
【0076】
別の実施態様において、該遷移金属錯体(i)は、下記の式(i-II)を有するものである:
【化1】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族であり;
Lは-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であり;
各nは、1~2であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~1である。
【0077】
好ましくは、式(i-II)の化合物は、下記の構造(i-III)を有するものである:
【化2】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、Me2Si-であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、例えば、メチル又はt-Bu、であり;
各nは、1~2であり;
R2は、-Si(R)3アルキル基であり;
各pは1であり;
各Rは、C1~6アルキル基又はフェニル基である。
【0078】
式(i-II)のより好ましい遷移金属錯体は、下記の通りである:
【化3】
【0079】
助触媒(ii)
【0080】
重合触媒を形成する為に、当技術分野において周知であるように、活性化剤としてまた知られている助触媒が使用される。Al又はBを含む助触媒は周知であり、本明細書において使用されることができる。アルミノキサン(例えばMAO)又はホウ素ベースの助触媒(例えばホウ酸塩)の使用が好ましい。
【0081】
適切な助触媒は、金属アルキル化合物、特には当技術分野において既知のアルミニウムアルキル化合物、である。メタロセン触媒と共に使用される特に好適な活性化剤は、アルキルアルミニウムオキシ化合物、例えば、メチルアルモキサン(MAO)、テトライソブチルアルモキサン(TIBAO)又はヘキサイソブチルアルモキサン(HIBAO)、である。
【0082】
好ましくは、該助触媒はメチルアルモキサン(MAO)である。
【0083】
支持体(iii)
【0084】
本発明の重合触媒は、国際公開第WO03/051934号パンフレットのプロトコールに従って、固体であるが非支持形態で使用することができる。本発明の重合触媒は好ましくは、固体支持形態で使用される。使用される粒子支持体物質は、無機多孔質支持体、例えば、シリカ、アルミナ、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、特にはシリカ、であってもよい。
【0085】
シリカ支持体の使用が好ましい。
【0086】
特には、該支持体は多孔質材料であり、従って、例えば、国際公開第WO94/14856号パンフレット、国際公開第WO95/12622号パンフレット、国際公開第WO2006/097497号パンフレット、及び欧州特許第EP1828266号明細書において記載されているような類似のプロセスを用いて、錯体が粒子支持体の孔内に担持されうる。
【0087】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均粒径は典型的には、10~100μmであることができる。平均粒径(すなわちメジアン粒径,D50)は、レーザー回折式粒径分析器Malvern Mastersizer 3000を用いて決定されうる(サンプル分散物:乾燥粉末)。
【0088】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均孔径は10~100nmの範囲であることができ、孔容積は1~3mL/gであることができる。
【0089】
好適な支持体物質の例は、例えば、PQ Corporationによって製造販売されているES757、Graceによって製造販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Coによって製造販売されているSUNSPERA DM-L-303シリカがある。支持体は、最適なシラノール基含量に達する為に、触媒調製において使用する前に任意に焼成されることができる。
【0090】
該触媒は、支持体、例えばシリカ、の1g当たり5~500μmol、例えば10~100μmol、の遷移金属、及び支持体、例えばシリカ、の1g当たり3~15mmolのAlを含むことができる。
【0091】
多峰性ポリエチレンポリマー
【0092】
本発明は、多峰性ポリエチレンホモポリマー又はコポリマーの調製に関する。該多峰性ポリエチレンホモポリマー又はコポリマーの密度は、900~980kg/m3、好ましくは905~940kg/m3、特には910~935kg/m3、でありうる。
【0093】
該多峰性ポリエチレンポリマーがコポリマーであることが好ましい。より好ましくは、該多峰性ポリエチレンコポリマーはLLDPEである。それは、905~940kg/m3、好ましくは910~935kg/m3、より好ましくは915~930kg/m3、特には916~928kg/m3、の密度を有しうる。1つの実施態様において、910~928kg/m3の範囲が好ましい。本明細書において使用される場合に、「LLDPE」は、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene)を云う。LLDPEは好ましくは多峰性である。
【0094】
語「多峰性」は、MFRに関して多峰性であるポリマーを包含し、それ故に、バイモーダルポリマーを包含する。語「多峰性」はまた、「コモノマー分布」に関する多峰性(multimodality)を意味しうる。
【0095】
通常、少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリマーは、異なる重合化条件下で製造され、画分の(重量平均)分子量及び分子量分布が異なることから、「多峰性」(multimodal)と云われる。接頭語の「多」(multi)は、ポリマー中に存在する異なるポリマー画分の数に関する。従って、例えば、語「多峰性ポリマー」は、2つの画分からなる所謂「二峰性」(bimodal)ポリマーを包含する。多峰性ポリマー、例えばLLDPE、の分子量分布曲線、すなわち分子量の関数としてのポリマー重量画分のグラフの外観、は、個々の画分についての曲線と比較して、2以上の極大を示すか、又は少なくとも明確に広がっていることがある。最終的なMWD曲線は、幅が広く(broad)、串刺しになっていたり(skewered)、又はショルダー(shoulder)を示したりすることがしばしばある。
【0096】
理想的には、本発明の多峰性ポリマーの分子量分布曲線は、2つの別個の極大を示すであろう。代替的には、該ポリマー画分は、同様のMFRを有し、並びにコモノマー含有量において二峰性である。少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリマーは、異なる重合化条件下で製造され、結果として、画分の異なるコモノマー含有量が、「多峰性」としてまた言及される。
【0097】
例えば、ポリマーが、直列に連結された反応器を使用し並びに各反応器において異なる条件を使用して、逐次の多段方法において製造される場合、異なる反応器において製造されたポリマー画分は、それら独自の分子量分布及び重量平均分子量を有する。そのようなポリマーの分子量分布曲線が記録される場合、これらの画分の個別の曲線は、結果として得られるポリマー製品全体の為の分子量分布曲線に重ね合わされ、通常、2以上の個別の極大値を有する曲線が与えられる。
【0098】
在りうる多峰性ポリマーにおいて、低分子量成分(lower molecular weight component)(LMW)及び高分子量成分(higher molecular weight component)(HMW)が存在しうる。LMW成分は、高分子量成分よりも低い分子量を有する。この差は好ましくは、少なくとも5000g/モルである。
【0099】
本方法によって製造される多峰性ポリエチレンポリマーは好ましくは、少なくとも1つのC4~10コモノマーを含む。コモノマーは、HMW成分(すなわち、第2の成分(B),該第2の重合工程において製造される)若しくはLMW成分(すなわち、第1の成分(A),該第1の重合工程において製造される)又はその両方に存在しうる。本明細書の以降において、語「LMW/HMW成分」が使用されるが、記載された実施態様は、第1の成分及び第2の成分夫々に適用される。
【0100】
HMW成分が少なくとも1つのC4~10コモノマーを含むことが好ましい。次に、LMW成分は、エチレンホモポリマーであってもよく、又は少なくとも1つのC4~10コモノマーを含んでいてもよい。1つの実施態様において、該多峰性ポリエチレンポリマーは、単一のコモノマーを含む。好ましい実施態様において、該多峰性ポリエチレンポリマーは、少なくとも2つの、例えば正確に2つの、C4~10コモノマーを含む。
【0101】
多峰性ポリエチレンポリマー中の全体のコモノマー含有量は、例えば0.2~14.0モル%、好ましくは0.3~12モル%、より好ましくは0.5~10.0モル%、最も好ましくは0.6~8.5モル%、でありうる。
【0102】
1-ブテンは、0.05~6.0モル%、例えば0.1~5モル%、より好ましくは0.15~4.5モル%、最も好ましくは0.2~4モル%、の量で存在しうる。
【0103】
C6~C10アルファーオレフィンは、0.2~6モル%、好ましくは0.3~5.5モル%、より好ましくは0.4~4.5モル%、の量で存在しうる。
【0104】
好ましくは、LMW成分はHMW成分よりも低いコモノマー量(モル%)を有し、例えば、LMW成分中のコモノマー、好ましくは1-ブテン、の量は0.05~0.9モル%、より好ましくは0.1~0.8モル%であり、一方、HMW成分(B)中のコモノマー、好ましくは1-ヘキセン、の量は、1.0~8.0モル%、より好ましくは1.2~7.5モル%、である。
【0105】
多峰性ポリエチレンポリマーのLMW成分は、0.5~3000g/10分、より好ましくは1.0~1000g/10分、のMFR2を有しうる。幾つかの実施態様において、LMW成分のMFR2は、例えばターゲットがキャストフィルムである場合、50~3000g/10分、より好ましくは100~1000g/10分、でありうる。
【0106】
LMW成分の分子量(Mw)は好ましくは、20,000~180,000、例えば40,000~160,000、であるべきである。LMW成分は、少なくとも925kg/m3、例えば少なくとも940kg/m3、の密度を有しうる。930~950kg/m3、好ましくは935~945kg/m3、の範囲の密度がありうる。
【0107】
多峰性ポリエチレンポリマーのHMW成分は例えば、1g/10分未満、例えば0.2~0.9g/10分、好ましくは0.3~0.8g/10分、より好ましくは0.4~0.7g/10分、のMFR2を有しうる。HMW成分は、915kg/m3未満、例えば910kg/m3未満、好ましくは905kg/m3未満、の密度を有しうる。高分子量成分のMwは、70,000~1,000,000、好ましくは100,000~500,000、の範囲でありうる。
【0108】
該LMW成分は、30~70重量%、例えば35~65重量%、特には38~62重量%、の多峰性ポリエチレンポリマーでありうる。
【0109】
該HMW成分は、30~70重量%、例えば35~65重量%、特には38~62重量%、の多峰性ポリエチレンポリマーでありうる。
【0110】
1つの実施態様において、40~45重量%のLMW成分及び60~55重量%のHMW成分が存在する。
【0111】
1つの実施態様において、該ポリエチレンポリマーが、HMW成分及びLMW成分を唯一のポリマー成分として構成される。
【0112】
本発明の多峰性ポリエチレンポリマーは、0.01~50g/10分、好ましくは0.05~25g/10分、特には0.1~10g/10分、のMFR2を有しうる。
【0113】
実施例
【0114】
触媒
【0115】
SiO2の装填量(loading):
10kgのシリカ(PQ Corporation ES757,600℃で焼成)が供給ドラムから加えられ、そしてO2レベルが2ppm未満になるまで該反応器内で不活性化された。
【0116】
MAO/tol/MCの調製:
トルエン(14.1kg)中の30重量%のMAOが、天秤から別の反応器内へと添加され、続いてトルエン(4.0kg)が25℃(油循環温度)で加えられ、そして、95rpmで攪拌された。トルエン添加後、攪拌速度が95rpmから200rpmに上げられた(攪拌時間30分)。メタロセンRac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリド477gが金属シリンダーから添加された後、トルエン4kgでフラッシングされた(トルエン総量8.0kg)。反応器の攪拌速度がMC供給の為に95rpmに変更され、そして、3時間の反応時間の為に200rpmに戻された。反応時間後、MAO/tol/MC溶液が供給容器に移された。
【0117】
触媒の調製:
反応器温度が、10℃(オイル循環温度)に設定され、そして、MAO/tol/MC添加の為に40rpmで攪拌された。MAO/tol/MC溶液(目標22.5kg、実際22.2kg)が205分以内に添加され、その後60分間撹拌された(油循環温度は25℃に設定された)。攪拌後、「乾燥混合物」が25℃(油循環温度)、攪拌0rpmで12時間安定された。反応器が20°(前後)回転され、そして、攪拌が5rpmで1時間に数ラウンド行われた。
【0118】
安定化後、触媒が60℃(オイル循環温度)で2kg/時間の窒素フロー下で2時間乾燥され、続いて真空下で13時間乾燥された(同じ窒素フロー、攪拌5rpmで)。乾燥した触媒がサンプリングされ、そして、グローブボックス内でSartorius Moisture Analyser(Model MA45)を用いて熱重量法によりHC含有量が測定された。目標HCレベルは、2%未満であった(実測値1.3%)。
【0119】
実験例1(比較例)
【0120】
初期サイズ25ミクロン、スパン(span)(すなわち(d90-d10)/d50)1.6を有するシングルサイト触媒がLLDPEフィルムを製造する為に使用された。該触媒がまず予備重合反応器中でT=50℃、P=65バールgで予備重合された。より具体的には、900kg/時間のエチレン、1tnのエチレン当たり95kgの1-ブテン、1tnのプロパン当たり0.27Kgの水素、及び6.50tnのプロパン/時間(希釈剤)がプレポリ反応器内に供給され、そして、平均滞留時間は30分であった。該生成物は容積80m3を有するスプリットループ反応器に移された。エチレン(C2)、プロパン(希釈剤)、1-ブテン(C4)及び水素(H2)が該反応器に供給され、重合条件はT=85℃、P=64バールg及び平均滞留時間は1.0時間であった。H2/C2及びC4/C2のモル比は夫々2モル/キロモル及び100モル/キロモルであり、該ループ反応器における全体の生産速度は25tn/時間であった(全体の生産性は2.5kg/gcatであった)。次に、材料が高圧セパレーターでフラッシュされ、そして、スラリーから気相プロセスへの移行の間に、異なる濃度でn-ヘプタンが加えられた(実施例2~3)。全ての場合において、気相反応器における重合プロセスは、滞留時間2.5時間(全ての例において)、全圧20バールg、温度75℃、気相組成52.5%モルのプロパン、10%モルの窒素、32.5%モルのエチレン、5%モルのC6、H2/C2=0.5モル/キロモルで継続する。気相反応器のサイズは直径3.5m、流動床の高さは17m、及び表面ガス速度(SGV:superficial gas velocity)は0.5m/秒であった。再循環ガスの全質量流量は520tn/時間であった。最終的な材料特性は、密度914kg/m3、MFI 1.2を有していた。
【0121】
この実験例において、n-ヘプタン(すなわち、誘発膨張剤-ISA)が気相反応に添加されなかった。GPRにおける全体の触媒生産性は3.5kg/gcatであった。生成スプリット値は55%に等しく、それは、GPRにおける生産量30.6tn/時間及び全体のスループット55.6tn/時間に対応する。
【0122】
実験例2(本発明-IE1)
【0123】
実施例1の手順が繰り返され、n-ヘプタンがGPR中に添加された以外は、気相中のヘプタン濃度が0.5モル%になるようにした(気相中の窒素濃度は9.5モル%)。GPRにおける触媒生産性は4.0kg/gcatであった。GPRにおける触媒生産性は4.0kg/gcatであった。生成スプリット値は58%に等しく、それは、GPRにおける生産量34.5tn/時間及び全体のスループット59.5tn/時間に対応する。
【0124】
実験例3(本発明-IE2)
【0125】
気相中のヘプタン濃度が1.0モル%(気相中の窒素濃度は9.0モル%)となるように、n-ヘプタンがGPR中に加えられたこと以外は、実施例1の手順が繰り返された。GPRにおける触媒生産性は4.3kg/gcatであった。GPRにおける触媒生産性は4.3kg/gcatであった。生成スプリット値は60%に等しく、それは、GPRにおける生産量37.5tn/時間及び全体のスループット62.5tn/時間に対応する。
【0126】
表1は、上記の結果をまとめたものである。
【0127】
【表1】
【0128】
該気相反応器内における誘発膨張剤の存在により、触媒生産性の有意な増加を結果としてもたらし、ひいては、最終製品の特性及び該反応器の操作性に影響を与えること無しに、該気相反応器の生産速度が向上し、且つ全体的な処理能力が向上した。
【国際調査報告】