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特表2024-525007多段ポリオレフィン製造における1-ヘキセンの利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】多段ポリオレフィン製造における1-ヘキセンの利用
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20240702BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579417
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022067184
(87)【国際公開番号】W WO2022268960
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181475.1
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】スメリン,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】カネロプロス,ヴァシレイオス
(72)【発明者】
【氏名】アホ,ヤニ
(72)【発明者】
【氏名】ホフ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ケトナー,ジョアナ エルヴィラ
(72)【発明者】
【氏名】サイード,イルファン
(72)【発明者】
【氏名】カリオ,カッレ
(72)【発明者】
【氏名】クラリス,アポストロス
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA12
4J100DA14
4J100DA16
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4J100FA06
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4J128AC28
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4J128AE15
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4J128BB01B
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4J128BC25B
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4J128EE04
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4J128EF01
4J128EF03
4J128EF04
4J128EF05
4J128EF06
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4J128FA04
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA08
4J128GA09
(57)【要約】
本開示は、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法であって、該方法は、a)第1の重合工程において、エチレンを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、b)第2の重合工程において、エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成することを含み、ここで、本方法によって製造される多峰性ポリエチレンポリマーは、1-ヘキセンコモノマー及び少なくとも1つの更なるC4~10コモノマーを含み、並びに、ここで、前記エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物が、前記第2重合工程へと、該第2重合工程のスタートアップ時から供給される、上記の方法に関する。本開示は、多段オレフィン共重合プロセスにおいてシングルサイト重合触媒の性能を向上させる為に、気相オレフィン重合工程において1-ヘキセンを使用する方法に更に関する。本開示は、多段オレフィン重合においてシングルサイト重合触媒の性能を向上させる方法であって、エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を、前記気相重合工程へと、気相重合工程のスタートアップ時から供給することを含む、上記の方法になお更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、
b)第2の重合工程において、エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、本方法によって製造される多峰性ポリエチレンポリマーは、1-ヘキセンコモノマー及び少なくとも1つの更なるC4~10コモノマーを含み、並びに、
ここで、前記エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物が、前記第2重合工程へと、該第2重合工程のスタートアップ時から供給される、
前記方法。
【請求項2】
前記重合触媒が、シングルサイト触媒であり、好ましくはメタロセン触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合触媒が、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の重合工程におけるエチレンに対する1-ヘキセンのモル比が、7モル/キロモル~80モル/キロモル、好ましくは8.0モル/キロモル~60.0モル/キロモル、特には9.0~50.0モル/キロモル、の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
気相重合における温度が典型的には、40~120℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは65~90℃、である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
気相重合における圧力が、5~40バール、好ましくは10~35バール、より好ましくは15~30バール、である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記気相重合における前記滞留時間が1.0時間~4.0時間、好ましくは1.5時間~4.0時間、特には2.0時間~3.5時間、である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
多段オレフィン共重合プロセスにおいてシングルサイト重合触媒の性能を向上させる為に、気相オレフィン重合工程において1-ヘキセンを使用する方法。
【請求項9】
エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物が、前記気相重合工程へと、該気相重合工程のスタートアップ時から供給される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記気相オレフィン重合工程におけるエチレンに対する1-ヘキセンのモル比が、7モル/キロモル~40モル/キロモル、好ましくは8.0モル/キロモル~30.0モル/キロモル、特には9.0~25.0モル/キロモル、の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の1-ヘキセン/エチレン混合物の供給比が、70kg/トン~400kg/トン、好ましくは75kg/トン~350kg/トン、より好ましくは80kg/トン~280kg/トン、である、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
多段オレフィン重合においてシングルサイト重合触媒の性能を向上させる方法であって、エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を、前記気相重合工程へと、気相重合工程のスタートアップ時から供給することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記第2の重合工程におけるエチレンに対する1-ヘキセンのモル比が典型的には、7モル/キロモル~40モル/キロモル、好ましくは8.0モル/キロモル~30.0モル/キロモル、特には9.0~25.0モル/キロモル、の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の1-ヘキセン/エチレン混合物の供給比が、70kg/トン~400kg/トン、好ましくは75kg/トン~350kg/トン、より好ましくは80kg/トン~280kg/トン、である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記シングルサイト触媒が、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィンの共重合に関し、より特には、エチレン/1-ブテン/1-ヘキセンターポリマー(terpolymer)を製造する為の多段ポリオレフィン製造プロセスに関する。本開示は更に、多段オレフィン共重合プロセスにおけるシングルサイト触媒の性能を向上させる為の、気相重合段階における1-ヘキセンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多段ポリオレフィン製造プロセス(例えば、Borstar PE、PP及びSpheripol PP)は、所望の機械的特性を有する樹脂を加工することを容易に達成する為の多峰性能力を与える為の多段反応器構成(multi-stage reactor configurations)からなる。そのようなプロセスにおいて、あらゆる種類のポリオレフィングレード(polyolefin grades)を製造する為に、複数のスラリーループ反応器を直列に組み合わせ、続いて気相反応器を組み合わせることが採用されている。
【0003】
多段オレフィン重合プロセスにおける重要な特徴の1つは、多段重合プロセスの全ての段階において適切な触媒性能を保証することであり、より特には、GPRにおいて円滑な操作性を結果としてもたらす気相反応器操作条件を適切に選択することである。第1世代のシングルサイト触媒と比較して優れたコモノマー導入能力を有するシングルサイト触媒では、これは困難でありうる。流動化ガスによって巻き込まれる傾向のある小さなサイズの粒子(ストック(Stocke)の粒子としてまた知られる:気-固流動化環境においては浮力が重力よりも大きい粒子)が存在することにより、反応器のファウリング(反応器壁上へのポリマーコーティング)、シーティング及びチャンキング(chunking)並びに循環ガス圧縮機及び熱交換器ユニットのファウリングに関する問題を引き起こしうる。この文脈において、GPR中の小粒径粒子の集団を排除するという観点から触媒性能を最適化することが最も重要であり、多段エチレン共重合プロセスにおいて触媒を成功裡に実装する為の重要な観点を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、上記の不利点を克服する為に、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法を提供することである。
【0005】
本開示の目的は、独立請求項において記載される構成によって特徴付けられる方法によって達成される。本開示の好ましい実施態様は、従属請求項において開示されている。
【0006】
本開示は、気相反応器への気相のスタートアップ(start up)以来、1-ヘキセンを注入するという考えに基づく。これにより、多段重合プロセスの全段階において適切な触媒性能が保証され、より特には、GPRにおける円滑な操作性を結果として生じる気相反応器操作条件の適切な選択が保証される。
【0007】
より特には、本開示は、触媒の性能を向上させることを目的としたコモノマーの適切な注入という観点から、該気相反応器のスタートアップ方針を確立し、その結果、高められた反応器の操作性及びプロセス性能を結果として生じ、一方、要求の厳しい製品(例えば、低密度低MFR)が製造されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、
b)第2の重合工程において、エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、本方法によって製造される多峰性ポリエチレンポリマーは、1-ヘキセンコモノマー及び少なくとも1つの更なるC4~10コモノマーを含み、並びに、
ここで、前記エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物が、前記第2重合工程へと、該第2重合工程のスタートアップ時から供給される、
上記の方法に関する。
【0009】
エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を気相反応器に導入することにより、気相プロセス操作の開始時から該第2の重合工程において、小サイズ粒子(80μm未満)の個体数が減少し、従って、気相反応器操作の間の触媒性能が向上する。
【0010】
気相反応の初期段階の間に小サイズポリマー粒子の個体数を減少させるように、個々のポリマー粒子の初期粒子成長速度に有利なスタートアップ方針を選択することによって、該気相反応器における適切な操作条件を保証することは、良好な触媒性能、ひいては円滑なGPR操作性及び反応器性能に向けた重要な観点であり、ひいては所望の生成物ターゲット(product targets)を生成する為の適切な重合条件を確立することになる。
【発明の効果】
【0011】
従って、本方法は、主に小さなサイズのポリマー粒子(微細(fines))の存在によって生じるシーティング(sheeting)、チャンキング(chunking)及び反応器のファウリングによるプロセスの制限を経験すること無しに、スムーズな触媒性能を達成しながら、多量のコモノマーを取り込むことができるところのシングルサイト触媒(高コモノマー感応性触媒)の利用を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
プロセス
【0013】
本開示は、重合触媒を使用する多段重合プロセスであって、前記プロセスは、任意であるが好ましい予備重合工程と、それに続く第1の重合工程と第2の重合工程とを含む。
【0014】
好ましくは、同じ重合触媒が各工程において使用され、理想的には、それは、予備重合から後続の重合工程へ周知の様式で順次移される。1つの好ましいプロセス構成は、Borstar登録商標型カスケード、特にはBorstar登録商標2G型カスケード、好ましくはBorstar登録商標3G型カスケード、に基づく。
【0015】
従って、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する方法は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること、及び、
b)第2の重合工程において、エチレンと1-ヘキセンとを含む所定のモノマー混合物を、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、気相中で重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、本方法によって製造される多峰性ポリエチレンポリマーは、1-ヘキセンコモノマー及び少なくとも1つの更なるC4~10コモノマーを含む。
【0016】
予備重合工程
【0017】
重合工程の前に予備重合工程が設けられてもよい。該予備重合の目的は、低温及び/又は低モノマー濃度で、少量のポリマーを触媒上に重合させることである。予備重合によって、スラリー中の該触媒の性能を向上させること及び/又は最終ポリマーの特性を変更することが可能である。該予備重合工程は好ましくは、スラリー中で実施され、任意の予備重合工程にいおいて成されるポリマーの量は、エチレンポリマー成分(A)の量(重量%)にカウントされる。
【0018】
予備重合工程が存在する場合、触媒成分は好ましくは、該予備重合工程に全て導入される。次に、好ましくは、該予備重合工程の反応生成物は、該第1の重合工程に導入される。
【0019】
しかしながら、固体触媒成分と助触媒とが別々に供給されることができる場合には、該助触媒の一部のみが該予備重合段階へと導入され、そして、残りの一部を後続の重合段階へと導入することが可能である。また、そのような場合には、十分な重合反応が得られるだけの量の助触媒を該予備重合段階へと導入する必要がある。
【0020】
本発明の範囲内において、該予備重合において生成されるポリマーの量は、最終的な多峰性(コ)ポリマーに対して1~7重量%の範囲内にあると理解される。このことは、第1の重合工程a)において生成された第1のポリマー成分(A)の一部としてカウントされることができる。
【0021】
第1の重合工程a)
【0022】
本方法において、該第1の重合工程a)は、エチレンモノマー、及び任意的に、少なくとも1つのオレフィンコモノマーを重合させることを含む。
【0023】
1つの実施態様において、該第1の重合工程は、エチレンを重合させてエチレンホモポリマーを生成することを含む。
【0024】
別の実施態様において、該第1の重合工程は、エチレンと少なくとも1つのオレフィンコモノマーとを重合させてエチレンコポリマーを生成することを含む。
【0025】
該第1の重合工程は、適切な任意の1つの反応器内又は一連の反応器内で行われうる。該第1の重合工程は、1以上のスラリー重合反応器内で行われる。好ましくは、該第1の重合工程は、1以上のスラリー重合反応器内、より好ましくは、少なくとも3つのスラリー相反応器内、で行われ、該スラリー重合反応器は、予備重合を実行する為のスラリー相反応器を包含する。
【0026】
該第1の重合ゾーンでの重合は好ましくは、スラリー中で行われる。次に、該重合で形成されたポリマー粒子が、該粒子内にフラグメント化され(fragmented)、そして分散された触媒と共に、流体炭化水素中に懸濁させる。該スラリーは、該流体から該粒子への反応物の移動を可能にする為にかき混ぜられる。
【0027】
該スラリー重合は通常、不活性希釈剤、典型的には、炭化水素希釈剤中、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、又はそれらの混合物中、で行われる。好ましくは、該希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の組み合わせである。特に好ましい希釈剤はプロパンであり、場合によっては、少量のメタン、エタン及び/又はブタンを含む。
【0028】
該スラリーの流動相中のエチレン含有量は、2~約50モル%、好ましくは約3~約20モル%、特には約5~約15モル%、である。高いエチレン濃度を有することの利点は、該触媒の生産性が向上することであるが、欠点は、該濃度が低い場合よりも多くのエチレンがリサイクルされる必要があることである。
【0029】
該スラリー重合における温度は典型的には、50~115℃、好ましくは60~110℃、特には70~100℃、である。圧力は、1~150バール、好ましくは10~100バール、である。
【0030】
該第1の重合工程における圧力は典型的には、35~80バール、好ましくは40~75バール、特には45~70バール、である。
【0031】
該第1の重合段階における滞留時間は典型的には、0.15時間~3.0時間、好ましくは0.20時間~2.0時間、特には0.30時間~1.5時間、である。
【0032】
流体混合物の臨界温度と臨界圧力とを超えて該スラリー重合を行うことが有利な場合がある。そのような操作は、米国特許第US-A-5391654号明細書において記載されている。そのような操作において、該温度は典型的には、85~110℃、好ましくは90~105℃、であり、圧力は、40~150バール、好ましくは50~100バール、である。
【0033】
該スラリー重合は、スラリー重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、連続攪拌槽反応器(continuous stirred tank reactor)及びループ反応器を包含する。該重合がループ反応器内で行われることが特に好ましい。ループ反応器において、該スラリーは、循環ポンプを使用することによって、閉じた管(closed pipe)に沿って高速で循環される。ループ反応器は一般的に、当技術分野において知られており、例えば、米国特許第US-A-4582816号明細書、米国特許第US-A-3405109号明細書、米国特許第US-A-3324093号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-479186号明細書及び米国特許第US-A-5391654号明細書において例が与えられている。
【0034】
該スラリーは、連続的に又は断続的に該反応器から引き抜かれることができる。断続的な引き抜きの好ましい方法は、該反応器から該濃縮されたスラリーのバッチを引き抜く前に該スラリーが濃縮されるところの沈降脚(settling legs)の使用である。沈降脚の使用は、とりわけ、米国特許第US-A-3374211号明細書、米国特許第US-A-3242150号明細書、及び欧州特許出願公開第EP-A-1310295号明細書において開示されている。連続取り出しは、とりわけ、欧州特許出願公開第EP-A-899990号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1415999号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1591460号明細書、及び国際公報第WO-A-2007/025640号パンフレットにおいて開示されている。該連続的な抜き取りは、欧州特許出願公開第EP-A-1310295号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1591460号明細書、及び欧州特許第EP3178853B1明細書において開示されているように、適切な濃縮方法と有利に組み合わせられる。
【0035】
サイクロンは、巻き込まれた粒子(entrained particles)を回収する為に(粒子がキャリーオーバすると見積もられる)、並びに小サイズ粒子がガス圧縮機と熱交換器とを通過するのを防ぐ為に、離脱ゾーン(disengagement zone)(再循環ガス管)の出口に配置されうる。
【0036】
当技術分野において知られているように、ポリマーの分子量を制御する為に水素が該反応器内に供給されうる。その上、該ポリマー生成物の密度を制御する為に、1以上のアルファーオレフィンコモノマーが該反応器内に添加されうる。そのような水素及びコモノマーの実際の供給量は、使用される触媒及び結果として得られるポリマーの所望のメルトインデックス(melt index)(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含量)に依存する。
【0037】
第2の重合工程b)
【0038】
該第1の重合工程から、該第1のポリマー成分(A)が該第2の重合工程に移される。
【0039】
本方法において、該第2の重合工程b)は、エチレンモノマー及び1-ヘキセンコモノマー、並びに任意的に、少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーを重合化させることを含む。
【0040】
1つの実施態様において、該第2の重合工程は、エチレン及び1-ヘキセン並びに少なくとも1つのオレフィンコモノマーを重合させて、エチレンターポリマーを製造することを含む。
【0041】
別の実施態様において、前記第2の重合工程は、エチレン及び1-ヘキセン並びに1-ブテンを重合させて、エチレン/1-ブテン/1-ヘキセンターポリマーを製造する。
【0042】
該第2の重合工程は、1以上の気相重合反応器内で行われる。
【0043】
該気相重合は、気相重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、流動床反応器(fluidized bed reactor)、高速流動床反応器(fast fluidized bed reactor)若しくは沈降床反応器(settled bed reactor)、又はこれらの任意の組み合わせを包含する。複数の反応器の組み合わせが使用される場合に、該ポリマーは1つの重合反応器から別の重合反応器に移される。その上、重合段階からのポリマーの一部又は全部が前の重合段階に戻されてもよい。
【0044】
該気相重合は典型的には、気相反応器(GPR:gas phase reactor)としてまた知られるガス固流動床(gas-solids fluidized bed)で行われる。ガス固体(Gas solids)のオレフィン重合反応器は、ポリマーの設計及び様々な触媒系の使用において相対的に高い柔軟性を可能にする為に、アルファーオレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、の重合の為に一般的に使用されている。一般的なガス固体のオレフィン重合反応器の変形は流動床反応器である。
【0045】
ガス固体のオレフィン重合反応器は、1以上のガス状オレフィンモノマーをポリオレフィン粉末粒子へと異相重合する為の重合反応器であり、それは下記の3つのゾーンを備えている:ボトムゾーン(bottom zone)において、流動化ガス(fluidization gas)が該反応器内に導入される;ミドルゾーン(middle zone)において、それは通常、概ね円筒形状を有し、該流動化ガス中に存在する1以上のオレフィンモノマーが重合されてポリマー粒子を形成する;トップゾーン(top zone)において、該流動化ガスが該反応器から引き抜かれる。或る種のガス固体オレフィン重合反応器において、流動化グリッド(fluidization grid)(ディストリビューションプレート(distribution plate)とまた名付けられている)が該ボトムゾーンを該ミドルゾーンから分離する。或る種のガス固体オレフィン重合反応器において、該トップゾーンは、その延在する直径が該ミドルゾーンに比べて拡大する故に該流動化ガスが膨張し、そして該ガスがポリオレフィン粉末から離脱するところの離脱ゾーン(disengaging zone)又は巻き込みゾーン(entrainment zone)を形成する。
【0046】
濃厚相は、該ポリマー粒子の形成の故に、増加した嵩密度を有するガス固体オレフィン重合反応器の中間ゾーン内の領域を示す。或る種のガス固体オレフィン重合反応器、すなわち流動床反応器、において、該濃厚相は流動床によって形成される。
【0047】
該気相重合における温度は典型的には、40~120℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは65~90℃、である。
【0048】
該気相重合における圧力は典型的には、5~40バール、好ましくは10~35バール、より好ましくは15~30バール、である。
【0049】
該気相重合における滞留時間は典型的には、1.0時間~4.5時間、好ましくは1.5時間~4.0時間、特には2.0時間~3.5時間、である。
【0050】
反応物のモル比は下記の通りに調整されうる:C6/C2比が0.0001~0.1モル/モル、H2/C2比が0~0.1モル/モル。
【0051】
該気相反応器におけるポリマー生産速度は、10tn/時間~65tn/時間、好ましくは12tn/時間~58tn/時間、特には13tn/時間~52.0tn/時間、であり、従って気相反応器からの全ポリマー取出速度は、15tn/時間~100tn/時間、好ましくは18tn/時間~90tn/時間、特には20tn/時間~80.0tn/時間、である。
【0052】
生成スプリット(第2のポリマー成分(B)%/第1のポリマー成分(A)%)は、0.65~2.5、好ましくは0.8~2.3、最も好ましくは1.0~1.65、であってもよい。
【0053】
本方法は、気相反応のスアートアップの開始時から1-ヘキセンが第2の重合工程b)に、すなわち第1の気相反応器に、導入されることを必要とする。
【0054】
このことは、エチレン及び1-ヘキセンの所定のモノマー混合物を該第2の重合工程に導入することによって達成されることができる。
【0055】
該第2の重合工程におけるエチレンに対する1-ヘキセンのモル比は典型的には、7モル/キロモル~80モル/キロモル、好ましくは8.0モル/キロモル~60.0モル/キロモル、特には9.0~50.0モル/キロモル、の範囲である。
【0056】
所定の1-ヘキセン/エチレン混合物の供給比は、70kg/トン~400kg/トン、好ましくは75kg/トン~350kg/トン、より好ましくは80kg/トン~280kg/トン、である。
【0057】
1-ヘキセンは、例えば冷却器の下流に設置されたコモノマー新鮮注入ラインを介して反応容器内に導入されてもよく、そして、それは、再循環ガス流と混合され、ひいては該気相反応器内に導入される。従って、1-ヘキセンは好ましくはエチレンと同時に導入され、特には1-ヘキセンとエチレンとの別個の混合物としては導入されない。
【0058】
個々のポリマー粒子の粒子成長速度は、重合速度(すなわち、触媒活性)に比例し、及び粒子サイズと粒子ポリマー相の密度とに逆比例する。従って、GPR操作の開始時(GPRスタートアップ)からの1-ヘキセンの存在は、粒子成長に関して下記の肯定的な効果を結果として生じる:i)それは、共溶解性効果(すなわち、高分子量オレフィンが低分子量オレフィンに対する溶媒として作用する)の故に、気相反応器中の小さな浸透剤(すなわち、エチレン)の溶解度を増加させ、従って、局所的な重合速度が増加し、ii)それは、膨潤効果の故に、粒子のポリマー相密度を減少させ、iii)それは、結晶化度が低下する故に、ポリマー全体の密度を低下させ、それ故に、該ポリマー粒子中のポリマー相の非晶率は、反応器内にコモノマーを含まない場合と比較して高くなり、反応物の収着量がさらに増加し、その結果、局所重合速度が増加し、粒子成長速度が増加させ、並びにiv))それは、ポリマー粒子内での1-ヘキセンの収着プロセスの為に必要な時間を提供し、それにより、該ポリマー粒子内での1-ヘキセンが収着された濃度の均一な分布(粒子レベルでの反応物質の均一性の向上)を結果として生じる。
【0059】
重合触媒
【0060】
本方法において利用される重合触媒は、メタロセン触媒である。該重合触媒は典型的には、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む。
【0061】
好ましくは、該第1の重合工程と該第2の重合工程とは、同じメタロセン触媒を用いて、すなわち同じメタロセン触媒の存在下で、行われる。
【0062】
本方法は好ましくは、シングルサイト触媒を利用する。シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレンコポリマーは、チーグラー・ナッタ(Ziegler Natta)触媒とは対照的に、それらをチーグラー・ナッタ材料と区別されることを可能にするところの特性を有する。特には、コモノマー分布がより均一である。これは、TREF技術又はCrystaf技術を用いて示されることができる。触媒残渣はまた、使用された触媒を示してもよい。チーグラー・ナッタ触媒は、例えばZr又はHfの(IV)族金属を含まない。
【0063】
遷移金属錯体(i)
【0064】
該遷移金属錯体は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族の遷移金属(M)、又はアクチニド若しくはランタニドの遷移金属(M)を含む。
【0065】
本発明に従う場合に、語「遷移金属錯体」は、遷移金属の任意のメタロセン又は非メタロセン化合物を包含し、それは、少なくとも1つの有機(配位(coordination))リガンドを有し且つ単独で又は助触媒と共に触媒活性を有する。該遷移金属化合物は当技術分野において周知であり、及び本発明は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族、例えば第3族~第7族、又は第3族~第6族、例えば第4族~第6族、並びにランタニド又はアクチニドからの金属の化合物をカバーする。
【0066】
1つの実施態様において、該遷移金属錯体(i)は下記の式(i-I)を有するものである:
(L)mRnMXq (i-I)
ここで、
「M」は周期表(IUPAC 2007)の第3~第10族の遷移金属(M)であり、
各「X」は独立して、モノアニオン性リガンド、例えばσ-リガンド、であり、
各「L」は独立して、遷移金属「M」に配位する有機リガンドであり、
「R」は、複数の該有機リガンド(L)を連結する架橋基であり、
「m」は、1、2又は3であり、好ましくは2であり、
「n」は、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、
「q」は、1、2又は3であり、好ましくは2であり、及び、
m+qは、該遷移金属(M)の原子価に等しい。
【0067】
「M」は好ましくは、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、又はチタン(Ti)からなる群より選択され、より好ましくはジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)からなる群より選択される。
【0068】
「X」は好ましくはハロゲンであり、最も好ましくはClである。
【0069】
最も好ましくは、遷移金属錯体(i)は、メタロセン錯体であり、それは上記で定義されているような遷移金属化合物を含み、それは、置換基「L」としてシクロペンタジエニルリガンド、インデニルリガンド又はフルオレニルリガンドを含む、更に、該リガンド「L」は、1以上の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基又は他のヘテロ原子基等、を有していてもよい。好適なメタロセン触媒は当技術分野において知られており、とりわけ、国際公開第WO-A-95/12622、国際公開第WO-A-96/32423号パンフレット、国際公開第WO-A-97/28170号パンフレット、国際公開第WO-A-98/32776号パンフレット、国際公開第WO-A-99/61489号パンフレット、国際公開第WO-A-03/010208号パンフレット、国際公開第WO-A-03/051934号パンフレット、国際公開第WO-A-03/051514号パンフレット、国際公開第WO-A-2004/085499号パンフレット、欧州特許出願公開第EP-A-1752462号明細書及び欧州特許出願公開第EP-A-1739103号明細書において開示されている。
【0070】
本発明の1つの実施態様において、該メタロセン錯体は、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)クロリドである。
【0071】
別の実施態様において、該遷移金属錯体(i)は、下記の式(i-II)を有するものである:
【化1】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族であり;
Lは、-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であり;
各nは、1~2であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~1である。
【0072】
好ましくは、式(i-II)の化合物は、下記の構造(i-III)を有するものである:
【化2】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、Me2Si-であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、例えば、メチル又はt-Bu、であり;
各nは、1~2であり;
R2は、-Si(R)3アルキル基であり;
各pは1であり;
各Rは、C1~6アルキル基又はフェニル基である。
【0073】
式(i-III)のより好ましい遷移金属錯体は、下記の通りである:
【化3】
【0074】
助触媒(ii)
【0075】
重合触媒を形成する為に、当技術分野において周知であるように、活性化剤としてまた知られている助触媒が使用される。Al又はBを含む助触媒は周知であり、本明細書において使用されることができる。アルミノキサン(例えばMAO)又はホウ素ベースの助触媒(例えばホウ酸塩)の使用が好ましい。
【0076】
適切な助触媒は、金属アルキル化合物、特には当技術分野において既知のアルミニウムアルキル化合物、である。メタロセン触媒と共に使用される特に好適な活性化剤は、アルキルアルミニウムオキシ化合物、例えば、メチルアルモキサン(MAO)、テトライソブチルアルモキサン(TIBAO)又はヘキサイソブチルアルモキサン(HIBAO)、である。
【0077】
好ましくは、該助触媒はメチルアルモキサン(MAO)である。
【0078】
支持体(iii)
【0079】
本発明の重合触媒は、国際公開第WO03/051934号パンフレットのプロトコールに従って、固体であるが非支持形態で使用することができる。本発明の重合触媒は好ましくは、固体支持形態で使用される。使用される粒子支持体物質は、無機多孔質支持体、例えば、シリカ、アルミナ、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、特にはシリカ、であってもよい。
【0080】
シリカ支持体の使用が好ましい。
【0081】
特には、該支持体は多孔質材料であり、従って、例えば、国際公開第WO94/14856号パンフレット、国際公開第WO95/12622号パンフレット、国際公開第WO2006/097497号パンフレット、及び欧州特許第EP1828266号明細書において記載されているような類似のプロセスを用いて、錯体が粒子支持体の孔内に担持されうる。
【0082】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均粒径は典型的には、10~100μmであることができる。平均粒径(すなわちメジアン粒径,D50)は、レーザー回折式粒径分析器Malvern Mastersizer 3000を用いて決定されうる(サンプル分散物:乾燥粉末)。
【0083】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均孔径は10~100nmの範囲であることができ、孔容積は1~3mL/gであることができる。
【0084】
好適な支持体物質の例は、例えば、PQ Corporationによって製造販売されているES757、Graceによって製造販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Coによって製造販売されているSUNSPERA DM-L-303シリカがある。支持体は、最適なシラノール基含量に達する為に、触媒調製において使用する前に任意に焼成されることができる。
【0085】
該触媒は、支持体、例えばシリカ、の1g当たり5~500μmol、例えば10~100μmol、の遷移金属、及び支持体、例えばシリカ、の1g当たり3~15mmolのAlを含むことができる。
【0086】
多峰性ポリエチレンポリマー
【0087】
本発明は、多峰性ポリエチレンコポリマーの調製に関する。該多峰性ポリエチレンコポリマーの密度は、900~980kg/m3、好ましくは905~940kg/m3、特には910~935kg/m3、でありうる。
【0088】
該多峰性ポリエチレンポリマーがコポリマーであることが好ましい。より好ましくは、該多峰性ポリエチレンコポリマーはLLDPEである。それは、905~940kg/m3、好ましくは910~935kg/m3、より好ましくは915~930kg/m3、特には916~928kg/m3、の密度を有しうる。1つの実施態様において、910~928kg/m3の範囲が好ましい。本明細書において使用される場合に、「LLDPE」は、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene)を云う。LLDPEは好ましくは多峰性である。
【0089】
語「多峰性」は、MFRに関して多峰性であるポリマーを包含し、それ故に、バイモーダルポリマーを包含する。語「多峰性」はまた、「コモノマー分布」に関する多峰性(multimodality)を意味しうる。
【0090】
通常、少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリマーは、異なる重合化条件下で製造され、画分の(重量平均)分子量及び分子量分布が異なることから、「多峰性」(multimodal)と云われる。接頭語の「多」(multi)は、ポリマー中に存在する異なるポリマー画分の数に関する。従って、例えば、語「多峰性ポリマー」は、2つの画分からなる所謂「二峰性」(bimodal)ポリマーを包含する。多峰性ポリマー、例えばLLDPE、の分子量分布曲線、すなわち分子量の関数としてのポリマー重量画分のグラフの外観、は、個々の画分についての曲線と比較して、2以上の極大を示すか、又は少なくとも明確に広がっていることがある。最終的なMWD曲線は、幅が広く(broad)、串刺しになっていたり(skewered)、又はショルダー(shoulder)を示したりすることがしばしばある。
【0091】
理想的には、本発明の多峰性ポリマーの分子量分布曲線は、2つの別個の極大を示すであろう。代替的には、該ポリマー画分は、同様のMFRを有し、並びにコモノマー含有量において二峰性である。少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリマーは、異なる重合化条件下で製造され、結果として、画分の異なるコモノマー含有量が、「多峰性」としてまた言及される。
【0092】
例えば、ポリマーが、直列に連結された反応器を使用し並びに各反応器において異なる条件を使用して、逐次の多段方法において製造される場合、異なる反応器において製造されたポリマー画分は、それら独自の分子量分布及び重量平均分子量を有する。そのようなポリマーの分子量分布曲線が記録される場合、これらの画分の個別の曲線は、結果として得られるポリマー製品全体の為の分子量分布曲線に重ね合わされ、通常、2以上の個別の極大値を有する曲線が与えられる。
【0093】
在りうる多峰性ポリマーにおいて、低分子量成分(lower molecular weight component)(LMW)及び高分子量成分(higher molecular weight component)(HMW)が存在しうる。LMW成分は、高分子量成分よりも低い分子量を有する。この差は好ましくは、少なくとも5000g/モルである。
【0094】
本方法によって製造される多峰性ポリエチレンポリマーは、1-ヘキセンコモノマー及び少なくとも1つの更なるC4~10コモノマーを含む。1-ヘキセンコモノマーは該第2のポリマー成分(B)中に存在する。更なるコモノマーは、HMW成分(すなわち、第2の成分(B),該第2の重合工程において製造される)若しくはLMW成分(すなわち、第1の成分(A),該第1の重合工程において製造される)又はその両方に存在しうる。本明細書の以降において、語「LMW/HMW成分」が使用されるが、記載された実施態様は、第1の成分及び第2の成分夫々に適用される。
【0095】
HMW成分が少なくとも1つのC4~10コモノマーを含むことが好ましい。次に、LMW成分は、エチレンホモポリマーであってもよく、又は少なくとも1つのC4~10コモノマーを含んでいてもよい。好ましい実施態様において、該多峰性ポリエチレンポリマーは、少なくとも2つの、例えば正確に2つの、C4~10コモノマーを含む。
【0096】
1つの実施態様において、該多峰性ポリエチレンポリマーはターポリマーであり、並びにヘキセンコモノマー及び少なくとも1つのC4~10コモノマーを含む。そのシナリオでは、HMW成分はターポリマー成分であってもよく、及び低分子量(LMW)成分はエチレンホモポリマー成分又はコポリマー成分であることができる。代替的には、LMW成分及びHMW成分の両方は、少なくとも2つのC4~10コモノマーが存在するようなコポリマーであることができる。
【0097】
それ故に、該多峰性ポリエチレンポリマーは、HMW成分が、エチレンと、少なくとも2つの他のC4~10アルファーオレフィンモノマー、例えば1-ブテン、と、1つのC6~10アルファーオレフィンモノマーとに由来する繰り返し単位を含むものでありうる。エチレンは好ましくは、LMW又はHMW成分の大部分を形成する。最も好ましい実施態様において、LMW成分はエチレン1-ブテンコポリマーを含んでいてもよく、及びHMW成分はエチレン1-ヘキセンコポリマーを含んでいてもよい。
【0098】
多峰性ポリエチレンポリマー中の全体のコモノマー含有量は、例えば0.2~14.0モル%、好ましくは0.3~12モル%、より好ましくは0.5~10.0モル%、最も好ましくは0.6~8.5モル%、でありうる。
【0099】
1-ブテンは、0.05~6.0モル%、例えば0.1~5モル%、より好ましくは0.15~4.5モル%、最も好ましくは0.2~4モル%、の量で存在しうる。
【0100】
C6~C10アルファーオレフィンは、0.2~6モル%、好ましくは0.3~5.5モル%、より好ましくは0.4~4.5モル%、の量で存在しうる。
【0101】
好ましくは、LMW成分はHMW成分よりも低いコモノマー量(モル%)を有し、例えば、LMW成分中のコモノマー、好ましくは1-ブテン、の量は0.05~0.9モル%、より好ましくは0.1~0.8モル%であり、一方、HMW成分(B)中のコモノマー、好ましくは1-ヘキセン、の量は、1.0~8.0モル%、より好ましくは1.2~7.5モル%、である。
【0102】
それ故に、該多峰性ポリエチレンコポリマーは、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンのうちの少なくとも1つと共に、エチレンとから形成されうる。該多峰性ポリエチレンポリマーは、エチレンブテンヘキセンターポリマーであってもよく、例えば、HMW成分がエチレンブテンヘキセンターポリマーであり、及びLMWがエチレンホモポリマー成分である。エチレンと1-オクテン及び1-ヘキセンコモノマーとのターポリマーの使用がまた想定される。
【0103】
更なる実施態様において、該多峰性ポリエチレンコポリマーは、2つのエチレンコポリマー、例えば、2つのエチレンブテンコポリマー又はエチレンブテンコポリマー(例えば、LMW成分として)及びエチレンヘキセンコポリマー(例えば、HMW成分として)を含みうる。エチレンコポリマー成分とエチレンターポリマー成分、例えばエチレンブテンコポリマー(例えば、LMW成分として)及びエチレンブテンヘキセンターポリマー(例えば、HMW成分として)を組み合わせることがまた可能であろう。
【0104】
多峰性ポリエチレンポリマーのLMW成分は、0.5~3000g/10分、より好ましくは1.0~1000g/10分、のMFR2を有しうる。幾つかの実施態様において、LMW成分のMFR2は、例えばターゲットがキャストフィルム(cast film)である場合、50~3000g/10分、より好ましくは100~1000g/10分、でありうる。
【0105】
LMW成分の分子量(Mw)は好ましくは、20,000~180,000、例えば40,000~160,000、であるべきである。LMW成分は、少なくとも925kg/m3、例えば少なくとも940kg/m3、の密度を有しうる。930~950kg/m3、好ましくは935~945kg/m3、の範囲の密度がありうる。
【0106】
多峰性ポリエチレンポリマーのHMW成分は例えば、1g/10分未満、例えば0.2~0.9g/10分、好ましくは0.3~0.8g/10分、より好ましくは0.4~0.7g/10分、のMFR2を有しうる。HMW成分は、915kg/m3未満、例えば910kg/m3未満、好ましくは905kg/m3未満、の密度を有しうる。高分子量成分のMwは、70,000~1,000,000、好ましくは100,000~500,000、の範囲でありうる。
【0107】
該LMW成分は、30~70重量%、例えば35~65重量%、特には38~62重量%、の多峰性ポリエチレンポリマーでありうる。
【0108】
該HMW成分は、30~70重量%、例えば35~65重量%、特には38~62重量%、の多峰性ポリエチレンポリマーでありうる。
【0109】
1つの実施態様において、40~45重量%のLMW成分及び60~55重量%のHMW成分が存在する。
【0110】
1つの実施態様において、該ポリエチレンポリマーが、HMW成分及びLMW成分を唯一のポリマー成分として構成される。
【0111】
本発明の多峰性ポリエチレンポリマーは、0.01~50g/10分、好ましくは0.05~25g/10分、特には0.1~10g/10分、のMFR2を有しうる。
【0112】
本発明のポリエチレンターポリマーの分子量分布(MWD,Mw/Mn)は、2.0~15.0の範囲、好ましくは2.2~10.0の範囲、より好ましくは2.4~4.6の範囲、である。
【0113】
実施例
【0114】
ポリマー分析及び特性評価
【0115】
嵩密度
【0116】
ポリマー粉末の嵩密度は、標準的な方法、例えばISO 60:1977又はASTM D1895-17、に従って決定されることができる。
【0117】
MFR
【0118】
メルトフローレート(MFR:melt flow rate)はISO 1133に従って決定され、g/10分で表される。MFRはポリマーの流動性、ひいては加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2は温度230℃及び荷重2.16kg、ポリエチレンのMFR5は温度190℃及び荷重5kg、並びにポリエチレンのMFR2は温度190℃及び荷重2.16kgで決定される。
【0119】
密度
【0120】
ポリマーの密度はISO 1183-2/1872-2Bに従って測定される。
【0121】
GPC
【0122】
分子量平均(Mz,Mw及びMn)、分子量分布(molecular weight distribution)(MWD)は、及び多分散性指数(polydispersity index)PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量、及びMwは重量平均分子量)によって表されるその幅(broadness)は、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474-12に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって、下記の式を用いて決定された:
【数1】
【0123】
一定の溶出量間隔ΔVi、ここでAi及びMiは夫々、溶出量Viに関連付けられたクロマトグラムピークスライス面積とポリオレフィン分子量(MW)であり、ここで、Nは複数の積分限界(integration limits)間のクロマトグラムから得られたデータ点の数に等しい。
【0124】
高温GPC装置が使用され、該装置は、赤外線(IR)検出器(PolymerChar社(Valencia,Spain)製のIR4又はIR5)を搭載しており、3xAgilent-PLgel Olexis及び1xAgilent-PLgel Olexis Guardカラムを搭載している。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジtert-ブチル-4-メチルフェノールで安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)が使用された。クロマトグラフィーシステムは160℃、1mL/分の一定流速で操作された。1回の分析につき200μLのサンプル溶液が注入された。データ収集は、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IRコントロールソフトウェアのいずれかを使用して実施された。
【0125】
カラムセットは、0.5kg/モルから11,500kg/モルの19個の細いMWDポリスチレン(PS)標準物質を用いて、ユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003に準拠)を用いて較正された。PS標準が、室温で数時間かけて溶解された。ポリスチレンピーク分子量をポリオレフィン分子量へ変換すること、下記のマーク・ホーウインク(Mark Houwink)式及び下記のマーク・ホーウインク定数を使用することによって達成される。
【数2】
【0126】
三次多項式フィット(third order polynomial fit)が、較正データをフィットさせる為に使用された。
【0127】
全てのサンプルは0.5~1mg/mLの濃度範囲で調製され、そして、連続的に穏やかに振とうしながら160℃で、PPの場合は2.5時間、PEの場合は3時間かけて溶解した。
【0128】
触媒
【0129】
SiO2の装填量(loading):
10kgのシリカ(PQ Corporation ES757,600℃で焼成)が供給ドラムから加えられ、そしてO2レベルが2ppm未満になるまで該反応器内で不活性化された。
【0130】
MAO/tol/MCの調製:
トルエン(14.1kg)中の30重量%のMAOが、天秤から別の反応器内へと添加され、続いてトルエン(4.0kg)が25℃(油循環温度)で加えられ、そして、95rpmで攪拌された。トルエン添加後、攪拌速度が95rpmから200rpmに上げられた(攪拌時間30分)。メタロセンRac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリド477gが金属シリンダーから添加された後、トルエン4kgでフラッシングされた(トルエン総量8.0kg)。反応器の攪拌速度がMC供給の為に95rpmに変更され、そして、3時間の反応時間の為に200rpmに戻された。反応時間後、MAO/tol/MC溶液が供給容器に移された。
【0131】
触媒の調製:
反応器温度が、10℃(オイル循環温度)に設定され、そして、MAO/tol/MC添加の為に40rpmで攪拌された。MAO/tol/MC溶液(目標22.5kg、実際22.2kg)が205分以内に添加され、その後60分間撹拌された(油循環温度は25℃に設定された)。攪拌後、「乾燥混合物」が25℃(油循環温度)、攪拌0rpmで12時間安定された。反応器が20°(前後)回転され、そして、攪拌が5rpmで1時間に数ラウンド行われた。
【0132】
安定化後、触媒が60℃(オイル循環温度)で2kg/時間の窒素フロー下で2時間乾燥され、続いて真空下で13時間乾燥された(同じ窒素フロー、攪拌5rpmで)。乾燥した触媒がサンプリングされ、そして、グローブボックス内でSartorius Moisture Analyser(Model MA45)を用いて熱重量法によりHC含有量が測定された。目標HCレベルは、2%未満であった(実測値1.3%)。
【0133】
実験例1(比較例)
【0134】
初期サイズ25ミクロン、スパン(span)(すなわち(d90-d10)/d50)1.6を有するシングルサイト触媒がLLDPEフィルム(目標MFR2=1.3、目標密度=912~920kg/m3)を製造する為に使用された。該触媒がまず予備重合反応器中でT=50℃、P=56バールgで予備重合された。より具体的には、40.7g/時間の触媒、4kg/時間のエチレン、85g/時間の1-ブテン、0.03g/時間の水素、及び46kg/時間のプロパン(希釈剤)が予備重合反応器内に供給され、そして、平均滞留時間は23分であった。生成スプリットは3.0重量%であった。
【0135】
生成物はスプリットループ反応器構成に移され、そこでは、第1のループ反応器において、エチレン(C2)、プロパン(C3)、1-ブテン(C4)及び水素(H2)が、T=85℃、P=54バールgの重合条件で該反応器へ供給され、そして、平均滞留時間は0.31時間であった。液相中のC2濃度は3.9モル%、H2/C2及びC4/C2のモル比は夫々0.38モル/キロモル及び35モル/キロモルであった。該スプリットループ構成の該第1のループ反応器における生成スプリットは18.5重量%であり、及び生成された物質はMFR2(g/10分)=4.7及び密度=940.7kg/m3を有していた。
【0136】
続いて生成物がスプリットループ反応器構成の第2のループ反応器に移され、そこでは、重合条件は、T=85℃及びP=52バールgであり、並びに、平均滞留時間は0.60時間であった。液相中のC2濃度は4.3モル%、H2/C2及びC4/C2のモル比は夫々0.76モル/キロモル及び29モル/キロモルであった。該スプリットループ構成の第2のループ反応器における生成スプリットは21.6重量%であり、該第2のループ反応器の後に集められた物質のMFR2(g/10分)=5.8及び密度=940.2kg/m3を有し、並びに該ループ反応器構成プロセスにおける全体の触媒生産性は、1.0kgPE/gcatであった。
【0137】
次に、該物質は高圧セパレーター内でフラッシングされ、そして引き続き、ポリマー粒子は全圧19バールg及び温度75℃で操作されている気相反応器(GPR)に移された。定常状態での成分の供給速度は、H2が0.007kg/時間、C2が103.9kg/時間、C6が3.37kg/時間であり、夫々H2/C2=0.78モル/キロモル及びC6/C2=4.18モル/キロモルであった。GPRにおける全体の滞留時間は2.8時間であり、表面ガス速度(superficial gas velocity)は0.32m/秒に選択された。GPRにおける生成スプリットは56.9重量%であり、GPR後に集められた最終ペレット物質のMFR2(g/10分)=1.1及び密度=932.1kg/m3であり、並びにループとGPR反応器構成プロセスとを含む全体の触媒生産性は2.3kgPE/gcatであった。
【0138】
上記の例において、GPRのスタートアップから数時間後にC6がGPR内に供給された。
【0139】
1-ヘキセンの供給から2日半後、シーティング(sheeting)とチャンキング(chunking)とに関連する深刻な操作性の問題が発生し、GPRがシャットダウンするという結果を生じた。GPRがシャットダウンする直前のGPRスポットサンプルは、0.55g/10分のMFR2、58.7重量%のGPRスプリットで926.8kg/m3の密度であった。GPRへの最高C6/C2供給量比はわずか47.5kg/トンであった。
【0140】
実験例2及び3(本発明)
【0141】
CE1の手順が繰り返されたが、スタートアップの間にC6がGPR内に投入された。
【0142】
この場合、操作性に問題はなく、約10日間にわたりGPRの円滑な操作と良好な性能が観察され、従って、IE1及びIE2において記載されているように、目標とする物質特性が得られた。GPRへの最高C6/C2供給量比は162.8kg/トンであった。
【0143】
【表1】
【国際調査報告】