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特表2024-525009ポリエチレンポリマーを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ポリエチレンポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20240702BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08F10/02
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579419
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022067176
(87)【国際公開番号】W WO2022268953
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181482.7
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】カストロ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】カネロプロス,ヴァシレイオス
(72)【発明者】
【氏名】キピアニ,ジョージー
(72)【発明者】
【氏名】ムストネン,マルヤ
(72)【発明者】
【氏名】サイード,イルファン
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA22
4J100FA43
4J100FA47
4J128AA01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD07
4J128AD11
4J128AD19
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128DA01
4J128DA03
4J128DA09
4J128EA03
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB05
4J128EC01
4J128EC02
4J128ED01
4J128ED03
4J128ED09
4J128EE01
4J128EE04
4J128EE09
4J128EF01
4J128EF03
4J128EF05
4J128EF06
4J128FA02
4J128FA03
4J128FA09
4J128GA05
4J128GA08
4J128GA09
4J128GA24
(57)【要約】
本開示は、オレフィンを重合する方法であって、エチレンを、シングルサイト重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、重合させて、ポリマー成分、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを製造することを含み、ここで、前記シングルサイト重合触媒が、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含み、並びに、40MPa以上の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって実験の部において記載されている通りに決定される、上記の方法に関する。本開示は、シングルサイト重合触媒であって、(i)遷移金属錯体;(ii)助触媒;及び、任意的に、(iii)支持体、好ましくは、シリカ支持体を含み、ここで、前記シングルサイト重合触媒が、40Mpa以上の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって実験の部において記載されている通りに決定される、上記の前記シングルサイト重合触媒に更に関する。本開示は、ポリエチレンポリマー成分、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーの調製における、前記シングルサイト重合触媒の使用方法に更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを重合する方法であって、
エチレンを、シングルサイト重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマーの存在下で、重合させて、ポリマー成分、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを製造すること
を含み、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、
(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含み、並びに、
40MPa以上の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって実験の部において記載されている通りに決定される、
前記方法。
【請求項2】
多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合して、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを生産する方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、とシングルサイト重合触媒との存在下、好ましくはスラリー相中で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること;並びに、
b)第2の重合工程において、オレフィンモノマーを、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、の存在下で、任意的に気相中で、重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、
(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含み、並びに、
40MPa以上の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって実験の部において記載されている通りに決定される、
前記方法。
【請求項3】
前記遷移金属錯体(i)に対する前記助触媒(ii)の比が、50モル/モル超、好ましくは60~200モル/モル、より好ましくは100~160モル/モル、である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属錯体が、下記の式(I)のメタロセン錯体である、
【化1】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式又は多環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンドを連結し;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、ベンジル基、O-ベンジル基、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいO-フェニル基であり;及び/又は、
2つの隣接するR1基は、それらが結合されている原子と一緒になって、例えばCp環と共にインデニル環を形成するように更なる環を形成し、ここで、該更なる環は4までのR3基によって置換されていてもよい;
各R3は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタロセン錯体が、下記の式(X)のものである、
【化2】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(RaRbRc)基であり;
Raは、C1~6アルキルであり;
Rbは、C1~6アルキルであり;
Rcは、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;及び、
各pは、1~3である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記メタロセン錯体(i)が、下記の式(XII’)である
【化3】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、(RdRe)Si基であり;
Rdは、C1~10アルキル基であり;
Reは、C2~10アルケニル基であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、少なくとも2つのスラリー反応器内で実行される、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)が、少なくとも3つのスラリー反応器、例えば正確には3つのスラリー反応器、内で実行される、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
シングルサイト重合触媒であって、該シングルサイト重合触媒が、
(i)遷移金属錯体;
(ii)助触媒;及び、
任意的に、(iii)支持体、好ましくは、シリカ支持体
を含み、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、40Mpa以上の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって実験の部において記載されている通りに決定される、
前記シングルサイト重合触媒。
【請求項10】
前記遷移金属錯体(i)に対する前記助触媒(ii)の比が、50モル/モル超、好ましくは60~200モル/モル、より好ましくは100~160モル/モル、である、請求項9に記載のシングルサイト重合触媒。
【請求項11】
前記助触媒(ii)が、下記の式(ii-I)のものである、
【化4】
ここで、nは6~20であり、及びRは、C1~C10アルキル、好ましくはC1~C5アルキル、又はC3~C10シクロアルキル、C7~C12アリールアルキル若しくはアルキルアリール、及び/又はフェニル又はナフチルであり;
好ましくは、前記助触媒(ii)がMAOである、
請求項9又は10に記載のシングルサイト重合触媒。
【請求項12】
前記遷移金属錯体が、下記の式(I)のメタロセン錯体である、
【化5】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式又は多環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンドを連結し;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、ベンジル基、O-ベンジル基、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいO-フェニル基であり;及び/又は、
2つの隣接するR1基は、それらが結合されている原子と一緒になって、例えばCp環と共にインデニル環を形成するように更なる環を形成し、ここで、該更なる環は4までのR3基によって置換されていてもよい;
各R3は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である、
請求項9~11のいずれか1項に記載のシングルサイト重合触媒。
【請求項13】
前記遷移金属錯体が、下記の式(X)のメタロセン錯体である、
【化6】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(RaRbRc)基であり;
Raは、C1~6アルキルであり;
Rbは、C1~6アルキルであり;
Rcは、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、1~3である、
請求項9~11のいずれか1項に記載のシングルサイト重合触媒。
【請求項14】
前記メタロセン錯体(i)が、下記の式(XII’)のものである、
【化7】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、(RdRe)Si基であり;
Rdは、C1~10アルキル基であり;
Reは、C2~10アルケニル基であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である、
請求項12に記載のシングルサイト重合触媒。
【請求項15】
ポリエチレンポリマー成分、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーの調製における、請求項9~14のいずれか1項に記載のシングルサイト重合触媒の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シングルサイト重合触媒を使用して、ポリエチレンポリマー及びコポリマーを製造する為のオレフィンを重合するプロセスに関する。特には、本開示は、狭い粒度分布を有するところの、ポリエチレンポリマー又はコポリマーを製造する為に、特には多段重合プロセス構成でオレフィンを重合することに関する。本開示は、シングルサイト重合触媒に更に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属ハロゲン化物に比べ、メタロセン化合物は高価な材料である。それ故に、最小限の触媒供給量で重合プラントの処理能力を最大化する為には、生産性の高い重合触媒が非常に望ましい。触媒生産性が低すぎると、プロセスは経済的に実行不可能になる。
【0003】
その上、連続重合プロセス、例えば、スラリープロセス若しくは気相プロセス、又はそれらの両方の組み合わせ、を操作する場合に、操作の中断を最小限に抑える為に反応器のファウリングを避けることが重要である。反応器ファウリングの主な原因は、非常に微細なポリマー粒子の存在であり、それは、静電気によりプロセス表面に付着し、反応器壁にファウリングを形成し始める傾向がある。その上、それらの粒子は気相反応器内に巻き込まれる傾向があり、従って、シーティング(sheeting)による深刻な操作上の問題を引き起こしたり、又はそれらは、周辺ユニット、例えば熱交換器又はコンプレッサー、の操作を悪化させたりする。特には、重合プロセスにおいて使用される触媒が非常に脆い粒子で構成されている場合に、それが重合条件下で急速にフラグメント化しすぎて、制御できない初期粒子のフラグメント化の故に触媒又はポリマーの微粉を発生する危険性がある。同様に、触媒系の活性成分が触媒粒子内に不均一に分散されている場合に、該ポリマー粒子内に空隙が生じる危険性があり、結果として得られるポリマー粉末の低い嵩密度を結果として生じ、該重合プロセスにおける低い操作性の危険性が内在する。
【0004】
それ故に、重合プロセス全体にわたって粒子の完全性を維持し、微粉の形成を回避し且つ高い嵩密度を有するポリマー粉末の製造を保証する為に、重合プロセスにおける高い生産性と最適な粒子強度とを組み合わせることによって、上述された制限に対処するところのメタロセン触媒を発明することは非常に有益であろう。加えて、該支持体内に活性種を均一に分布させて、重合反応をよりよく制御し、該ポリマー粒子内の空隙の形成を最小限に抑え、高い嵩密度のポリマー粉末の製造と向上した操作性を可能にする、先に述べられた要件を特徴とする触媒を発明することは非常に有益であろう。
【0005】
米国特許第US7754834B2号明細書は、重合反応器内に存在する触媒にオレフィンモノマーを連続的に暴露することによってポリマー粒子が形成されることを教示し、ここで、該ポリマー粒子は、触媒粒子の活性部位における「マイクロ粒子クラスター」(micro-particle clusters)の初期形成から成長する。これらの微粒子クラスターが成長するにつれて、成長する一次ポリマー粒子間に空隙が生成され、それは最終的にポリマー粒子体積の10~25%を占める。最終ポリマー粒子中にこのような空隙が存在することにより、ポリマー粉末の嵩密度の低下を生じる。ポリマー粉末の嵩密度の低下により一般的に、重合プラントでの生成スループットが低下すること、操作性の問題、例えば、微粉の形成、材料の流動性の低下、過度のキャリーオーバ、につながり、一般的に重合反応器のシーティング(sheeting)及びチャンキング(chunking)をもたらす物質移動と熱移動との制限に関連付けられる。
【0006】
操作の間の重合反応器におけるシーティング及び/又はチャンキングを低減する為の試みにおいて、国際公開公報第WO28212852A1号パンフレットは、300~1500Åの範囲における孔径及び/又は700m2/g未満のBET比表面積を有するところの孔の10~80体積%を有する支持体から調製されたオレフィン重合触媒組成物が、支持体物質全体によって均一に分散された触媒成分を示すことを開示する。しかしながら、該支持体物質内の触媒成分の分散は、XPSによる触媒の表面と内部との間のアルミニウム含有量の差として評価されるだけであり、それは、該粒子内の触媒的に活性な成分の実際の分散を評価する為の定性的な方法である。この主張を裏付ける為の、該支持体全体のアルミニウム分散の実測値は報告されていない。本発明者はまた、本発明の触媒を使用することにより、重合の速度論がよりよく制御され、生産性が向上し、中空ポリマー粒子の形成が減少し、及び該ポリマー粉末の嵩密度が増加することを主張する。しかしながら、単段ベンチスケール気相重合実験のみが本発明の特徴を例示する為に提供されており、それは、スラリー反応器又は多段反応器セットアップに組み合わされた一連のスラリー反応器と気相反応器との組み合わせにおける本発明の適用可能性を必ずしも支持していない。
【0007】
同様に、国際公開公報第WO2016176135A1号パンフレットは、重合反応器の操作性の貧弱さはしばしば、支持体孔ネットワーク内の触媒活性サイトの不均一な分散に起因することを教示する。本発明者等は、1.23mL/gまでのマクロ孔容積を有する支持された触媒組成物を使用することにより、良好な触媒流動性を示し、且つ反応器の高められた操作性を提供することを主張する。しかしながら、重合における触媒性能と実際の操作性の向上を確認することを可能にする重合データは開示されていない。
【0008】
操作の間の重合反応器におけるシーティング及び/又はチャンキングを低減する為の同等の試みにおいて、国際公開公報第WO2018175071A1号パンフレットは、0.15~0.50mL/gの範囲のマクロ孔率を有する支持体から調製されたオレフィン触媒組成物が、支持体物質上及び/又は支持体物質中での触媒成分の堆積の増加を結果としてもたらすことを開示する。本発明者等は、そのような支持体を使用することにより、重合の間の重合反応器内でのシーティング及び/又はチャンキングが減少することを主張する。しかしながら、触媒活性又は結果として得られるポリマー粉末の嵩密度の改善が提供されることについては示されていない。
【0009】
米国特許第US7244785B2号明細書は、固体ポリマー化合物、例えばアルミノキサン、が活性剤として使用される場合に、触媒調製の間の活性剤の担持量(loading)が触媒の生産性と得られるポリマー粉末の嵩密度に直接影響すること:該触媒調製におけるアルミノキサン活性剤の担持量が高いほど、生産性と嵩密度とが高くなること、を開示する。しかしながら、本発明者等の報告によると、アルミノキサン担持量が6.40モルMAO/gシリカを超えると、反応媒体中への活性種の溶出の故に、重合反応器壁面上にファウリング(fouling)が発生し始めるであろう。より高いアルミノキサン担持量でのこのファウリング現象は、本発明者等が触媒系の潜在能力を最大限に活用してポリマー粉末の高い嵩密度で最大の触媒生産性を達成することを妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、上記の欠点を緩和するように、エチレン重合プロセス、典型的には直列に接続された複数の反応器からなるエチレン重合プロセス、特には多段重合プロセス、及び前記プロセスにおいて使用する為の特定の触媒系を提供することである。
【0011】
本開示の目的は、特定のシングルサイト重合触媒、前記触媒の使用;オレフィンの重合プロセス、及びポリエチレン(コ)ポリマーによって達成され、それらは、独立請求項において記載されている構成によって特徴付けられる。本開示の好ましい実施態様は、従属請求項において開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、球状形態及び狭い粒度分布を有し、従って高い嵩密度を有するところのポリマー粒子を結果として生じる複製パターンに従うことができる触媒粒子を提供するという考えに基づく。このことは、重合反応器の効率的な操作性、及び気相反応器及び/又はスラリーループ反応器における両方でより高い生産速度を達成する為に非常に重要である。それ故に、該重合プロセスにおける触媒フラグメンターション(catalyst fragmentation)を制御し、成長する触媒/ポリマー粒子が円滑且つ制御可能な初期の触媒フラグメンターションを受け、ひいては高いポリマー嵩密度を有するポリエチレンポリマーを結果として得ることを可能にするところのメタロセン触媒系を提供することが極めて重要である。触媒粒子のフラグメンテーションキネティクス(catalyst particles fragmentation kinetics)を制御する手段は、重合プロセス条件を最適に選択することにつながり、ひいてはプロセス操作ウィンドウ(process-operating window)を拡大し、そして、形態の悪いポリマー粒子(例えば、小粒径粒子、不規則な形状等)を生成するリスクを低減しながら重合反応器を操作する柔軟性を提供する。
【0013】
これは、(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積が40MPa以上であり、及び(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比が0.50MPa-1以下であることによって特徴付けられるシングルサイト重合触媒を提供することによって達成され、ここで、該ワイブル係数及び該スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル解析によって決定される。
【0014】
本開示は、オレフィン重合の方法であって、該方法は、エチレンを、シングルサイト重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、の存在下で、好ましくは多段重合プロセス構成において、重合させて、ポリマー成分、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを製造することを含み、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、
(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含み、並びに、
40MPa以上の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって実験の部において記載されている通りに決定される、
上記の方法を提供する。
【0015】
該ワイブル分布は、サンプル集団内の脆性材料の破壊機械的強度におけるばらつきを記述する為に、材料科学において一般的に使用されている。圧縮試験におけるワイブル分析の2つの特徴的なパラメータは、ワイブル係数及び圧縮強度である。該ワイブル係数は無次元のパラメータであり、それは、サンプル集団の単一粒子間の測定された圧縮強度の分布におけるばらつきを記述する。該ワイブル係数は、該ワイブル分布の形状パラメータに相当する。圧縮試験において、該ワイブル分布のスケールパラメータは、該サンプル集団の代表的な単一粒子の圧縮強度を記述し、且つMPa単位で表される。低いワイブル係数は、該サンプル集団内において、測定された機械的強度における大きいばらつきに対応し、及び材料中の欠陥の不均一な分布を示し、結果として、応力下での不均一な破壊挙動を生じる。一方、高いワイブル係数は、該材料中の欠陥の分布が均一に分布していることを示し、結果として、応力下での均一な破断挙動を生じる。高いスケールパラメータは、粒子強度が高いサンプルに対応する。低いスケールパラメータは、粒子強度が低いサンプルに対応する。該ワイブル分布の両パラメータは、研究材料の最終的な特性を記述する為に関連し、ここで、オレフィン重合触媒粒子の場合には、両パラメータが重合挙動と最終ポリマー粉末の特性に影響を与えるだろう。
【0016】
本発明のシングルサイト重合触媒が、40MPa以上、好ましくは41MPa以上、特には42~75MPa、の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下、好ましくは0.49MPa-1以下、特には0.25~0.49MPa-1、の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比を示し、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって決定され、該ワイブル係数及び該スケールパラメータは、ループ反応器だけでなくその後の気相反応器におけるポリマー粉末の高い嵩密度、並びに該ループ反応器及び該重合プロセス全体における高い生産性を可能にする。
【0017】
本開示は特には、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合して、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを生産する方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、とシングルサイト重合触媒との存在下、好ましくはスラリー相中で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること;並びに、
b)第2の重合工程において、オレフィンモノマーを、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、の存在下で、任意的に気相中で、重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、
(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含み、並びに、
40MPa-1以上、好ましくは41MPa以上、特には42~75MPa、の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下、好ましくは0.49MPa-1以下、特には0.25~0.49MPa-1、の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって決定される、
上記の方法に関する。
【0018】
本開示は特には、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを製造する為の、オレフィン重合の方法であって、該方法は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、とシングルサイト重合触媒との存在下、好ましくはスラリー相中で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること;並びに、
b)第2の重合工程において、オレフィンモノマーを、工程a)の前記第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、の存在下で、任意的に気相中で、重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含み、
(i)前記シングルサイト重合触媒が、下記の式(I)のメタロセン錯体
【化1】
ここで、式(I)は本明細書において定義されたとおりである、
(ii)下記の式(ii-I)のアルミノキサン助触媒を含む助触媒
【化2】
ここで、式(ii-I)は本明細書において定義されたとおりである、
及び任意的に、第13族元素の化合物を含む更なる助触媒;並びに、任意的に
(iii)支持体、
を含む、上記の方法を提供する。
【0019】
本開示はまた、シングルサイト重合触媒であって、該シングルサイト重合触媒が、
(i)遷移金属錯体;
(ii)助触媒;及び、
任意的に、(iii)支持体、好ましくは、シリカ支持体
を含み、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、40Mpa以上、好ましくは41MPa以上、特には42~75MPa、の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下、好ましくは0.49MPa-1以下、特には0.25~0.49MPa-1、の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって決定される、
上記のシングルサイト重合触媒に関する。
【0020】
本開示は特には、シングルサイト重合触媒であって、該シングルサイト重合触媒が、
(i)下記の式(I)のメタロセン錯体
【化3】
ここで、式(I)は本明細書において定義されたとおりである、
(ii)助触媒;及び、
(iii)支持体
を含み、並びに、
ここで、前記シングルサイト重合触媒が、40Mpa以上、好ましくは41MPa以上、特には42~75MPa、の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積、及び0.50MPa-1以下、好ましくは0.49MPa-1以下、特には0.25~0.49MPa-1、の(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比によって特徴付けられ、ここで、前記ワイブル係数及び前記スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル分析によって決定される、
上記のシングルサイト重合触媒に関する。
【0021】
プロセス
【0022】
本開示は、オレフィンを重合して、ポリエチレンポリマー又はポリエチレンコポリマーを製造する方法であって、該方法は、エチレンを、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、の存在下で、重合させることを含む。該方法は典型的には、任意であるが好ましい予備重合工程と、それに続く第1の重合工程と第2の重合工程とを含む。
【0023】
好ましくは、同じ重合触媒が各工程において使用され、理想的には、それは、予備重合から後続の重合工程へ周知の様式で順次移される。
【0024】
一般的に、使用されるシングルサイト重合触媒の量は、触媒の性質、反応器の種類及び条件、並びにポリマー生成物に望まれる特性に依存するであろう。当業者に周知であるように、水素はいずれの反応器においても該ポリマーの分子量を制御する為に使用されることができる。
【0025】
従って、多段重合プロセス構成においてオレフィンを重合する為の本発明は、
a)第1の重合工程において、エチレンを、シングルサイト重合触媒の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、と重合触媒との存在下で、好ましくはスラリー相中で、重合させて、第1のポリマー成分(A)を形成すること;並びに、
b)第2の重合工程において、オレフィンモノマーを、工程a)の該第1のポリマー成分(A)の存在下、任意的に少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、の存在下で、好ましくは気相中で、重合させて、第2のポリマー成分(B)を形成すること
を含む。
【0026】
1つの好ましいプロセス構成は、Borstar登録商標型カスケード、特にはBorstar登録商標2G型カスケード、特にはBorstar登録商標3G型カスケード、に基づく。
【0027】
予備重合工程
【0028】
重合工程の前に予備重合工程が設けられてもよい。該予備重合の目的は、低温及び/又は低モノマー濃度で、少量のポリマーを触媒上に重合させることである。予備重合によって、スラリー中の該触媒の性能を向上させること及び/又は最終ポリマーの特性を変更することが可能である。
【0029】
該予備重合工程は、スラリー中で又は気相中で実施されることができる。好ましくは、予備重合はスラリー中で、好ましくはループ反応器中で、実施される。
【0030】
次に、該予備重合は好ましくは、不活性希釈剤中で実施され、好ましくは、該希釈剤は、1~6個の炭素原子を有する低沸点炭化水素又はそのような炭化水素の組み合わせである。該予備重合工程における温度は典型的には、0~90℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは25~70℃、である。圧力は重要ではなく、典型的には1~150バール、好ましくは10~100バール、である。
【0031】
任意の予備重合工程において生成されるポリマーの量は、エチレンポリマー成分(A)の量(重量%)にカウントされる。
【0032】
予備重合工程が存在する場合、該シングルサイト重合触媒は、該予備重合工程に導入される。次に、好ましくは、該予備重合工程の反応生成物は、該第1の反応器に導入される。
【0033】
本発明の範囲内において、該予備重合において生成されるポリマーの量は、最終的な多峰性(コ)ポリマーに対して1~7重量%の範囲内にあると理解される。このことは、第1の重合工程a)において生成された第1のポリマー成分(A)の一部としてカウントされることができる。
【0034】
第1の重合工程a)
【0035】
本方法において、該第1の重合工程a)は、エチレンモノマー、及び任意的に、少なくとも1つのオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、を重合させることを含む。
【0036】
1つの実施態様において、該第1の重合工程は、エチレンを重合させてエチレンホモポリマーを生成することを含む。
【0037】
別の実施態様において、該第1の重合工程は、エチレンと少なくとも1つのオレフィンコモノマーとを重合させてエチレンコポリマーを生成することを含む。
【0038】
第1の重合工程a)における重合は、以下において詳述されているように、シングルサイト重合触媒の存在下で行われる。
【0039】
該第1の重合工程は、適切な任意の1つの反応器内又は一連の反応器内で行われうる。該第1の重合工程は、1以上のスラリー重合反応器内で行われる。好ましくは、該第1の重合工程は、1以上のスラリー重合反応器内、より好ましくは、少なくとも3つのスラリー相反応器内、例えば、3つの正確なスラリー相反応器内、で行われ、該スラリー重合反応器は、予備重合を実行する為のスラリー相反応器を包含する。
【0040】
該第1の重合ゾーンでの重合は好ましくは、スラリー中で行われる。次に、該重合で形成されたポリマー粒子が、該粒子内にフラグメント化され(fragmented)、そして分散された触媒と共に、流体炭化水素中に懸濁させる。該スラリーは、該流体から該粒子への反応物の移動を可能にする為にかき混ぜられる。
【0041】
該スラリー重合は通常、不活性希釈剤、典型的には、炭化水素希釈剤中、例えば、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、又はそれらの混合物中、で行われる。好ましくは、該希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の組み合わせである。特に好ましい希釈剤はプロパンであり、場合によっては、少量のメタン、エタン及び/又はブタンを含む。
【0042】
該スラリーの流動相中のエチレン含有量は、2~約50モル%、好ましくは約3~約20モル%、特には約5~約15モル%、である。高いエチレン濃度を有することの利点は、該触媒の生産性が向上することであるが、欠点は、該濃度が低い場合よりも多くのエチレンがリサイクルされる必要があることである。
【0043】
該スラリー重合における温度は典型的には、50~115℃、好ましくは60~110℃、特には70~100℃、である。圧力は、1~150バール、好ましくは10~100バール、である。
【0044】
該第1の重合工程における圧力は典型的には、35~80バール、好ましくは40~75バール、特には45~70バール、である。
【0045】
該第1の重合段階における滞留時間は典型的には、0.15時間~3.0時間、好ましくは0.20時間~2.0時間、特には0.30時間~1.5時間、である。
【0046】
流体混合物の臨界温度と臨界圧力とを超えて該スラリー重合を行うことが有利な場合がある。そのような操作は、米国特許第US-A-5391654号明細書において記載されている。そのような操作において、該温度は典型的には、85~110℃、好ましくは90~105℃、であり、圧力は、40~150バール、好ましくは50~100バール、である。
【0047】
該スラリー重合は、スラリー重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、連続攪拌槽反応器(continuous stirred tank reactor)及びループ反応器を包含する。該重合がループ反応器内で行われることが特に好ましい。ループ反応器において、該スラリーは、循環ポンプを使用することによって、閉じた管(closed pipe)に沿って高速で循環される。ループ反応器は一般的に、当技術分野において知られており、例えば、米国特許第US-A-4582816号明細書、米国特許第US-A-3405109号明細書、米国特許第US-A-3324093号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-479186号明細書及び米国特許第US-A-5391654号明細書において例が与えられている。
【0048】
該スラリーは、連続的に又は断続的に該反応器から引き抜かれることができる。断続的な引き抜きの好ましい方法は、該反応器から該濃縮されたスラリーのバッチを引き抜く前に該スラリーが濃縮されるところの沈降脚(settling legs)の使用である。沈降脚の使用は、とりわけ、米国特許第US-A-3374211号明細書、米国特許第US-A-3242150号明細書、及び欧州特許出願公開第EP-A-1310295号明細書において開示されている。連続取り出しは、とりわけ、欧州特許出願公開第EP-A-899990号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1415999号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1591460号明細書、及び国際公報第WO-A-2007/025640号パンフレットにおいて開示されている。該連続的な抜き取りは、欧州特許出願公開第EP-A-1310295号明細書、欧州特許出願公開第EP-A-1591460号明細書、及び欧州特許第EP3178853B1明細書において開示されているように、適切な濃縮方法と有利に組み合わせられる。
【0049】
当技術分野において知られているように、ポリマーの分子量を制御する為に水素が該反応器内に供給されうる。その上、該ポリマー生成物の密度を制御する為に、1以上のアルファーオレフィンコモノマーが該反応器内に添加されうる。そのような水素及びコモノマーの実際の供給量は、使用される触媒及び結果として得られるポリマーの所望のメルトインデックス(melt index)(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含量)に依存する。
【0050】
第2の重合工程
【0051】
該第1の重合工程から、該第1のポリマー成分が該第2の重合工程に移される。
【0052】
該第1の重合工程b)における重合は、以下において詳述されているように、シングルサイト重合触媒の存在下で行われる。
【0053】
本方法において、該第2の重合工程b)は、エチレンモノマー及び任意的に、少なくとも1つの他のアルファーオレフィンコモノマー、好ましくはC4~C10アルファーオレフィンコモノマー、を重合化させることを含む。
【0054】
1つの実施態様において、該第2の重合工程は、エチレン及び1-ヘキセン並び任意的に、少なくとも1つのオレフィンコモノマーを重合させて、ポリエチレンコポリマー又はエチレンターポリマーを夫々製造することを含む。
【0055】
該第2の重合工程は好ましくは、1以上の気相重合反応器内で行われる。
【0056】
該気相重合は典型的には、気相反応器(GPR:gas phase reactor)としてまた知られるガス固流動床(gas-solids fluidized bed)で行われる。ガス固体(Gas solids)のオレフィン重合反応器は、ポリマーの設計及び様々な触媒系の使用において相対的に高い柔軟性を可能にする為に、アルファーオレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、の重合の為に一般的に使用されている。一般的なガス固体のオレフィン重合反応器の変形は流動床反応器である。
【0057】
ガス固体のオレフィン重合反応器は、1以上のガス状オレフィンモノマーをポリオレフィン粉末粒子へと異相重合する為の重合反応器であり、それは下記の3つのゾーンを備えている:ボトムゾーン(bottom zone)において、流動化ガス(fluidization gas)が該反応器内に導入される;ミドルゾーン(middle zone)において、それは通常、概ね円筒形状を有し、該流動化ガス中に存在する1以上のオレフィンモノマーが重合されてポリマー粒子を形成する;トップゾーン(top zone)において、該流動化ガスが該反応器から引き抜かれる。或る種のガス固体オレフィン重合反応器において、流動化グリッド(fluidization grid)(ディストリビューションプレート(distribution plate)とまた名付けられている)が該ボトムゾーンを該ミドルゾーンから分離する。或る種のガス固体オレフィン重合反応器において、該トップゾーンは、その延在する直径が該ミドルゾーンに比べて拡大する故に該流動化ガスが膨張し、そして該ガスがポリオレフィン粉末から離脱するところの離脱ゾーン(disengaging zone)又は巻き込みゾーン(entrainment zone)を形成する。
【0058】
濃厚相は、該ポリマー粒子の形成の故に、増加した嵩密度を有するガス固体オレフィン重合反応器の中間ゾーン内の領域を示す。或る種のガス固体オレフィン重合反応器、すなわち流動床反応器、において、該濃厚相は流動床によって形成される。
【0059】
該気相重合における温度は典型的には、40~120℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは65~90℃、である。
【0060】
該気相重合における圧力は典型的には、3~40バール、好ましくは5~35バール、より好ましくは10~32バール、更に好ましくは15~30バール、である。
【0061】
該気相重合における滞留時間は、1.0時間~4.5時間、好ましくは1.5時間~4.0時間、特には2.0時間~3.5時間、である。
【0062】
該気相反応器におけるポリマー生産速度は、10tn/時間~65tn/時間、好ましくは12tn/時間~58tn/時間、特には13tn/時間~52.0tn/時間、であり、従って気相反応器からの全ポリマー取出速度は、15tn/時間~100tn/時間、好ましくは18tn/時間~90tn/時間、特には20tn/時間~80.0tn/時間、である。
【0063】
生成スプリット(第2のポリマー成分(B)%/第1のポリマー成分(A)%)は、0.65~2.5、好ましくは0.8~2.3、最も好ましくは1.0~1.65、であってもよい。
【0064】
該気相重合は、気相重合の為に使用される既知の任意の反応器内で実施されうる。そのような反応器は、流動床反応器(fluidized bed reactor)、高速流動床反応器(fast fluidized bed reactor)若しくは沈降床反応器(settled bed reactor)、又はこれらの任意の組み合わせを包含する。複数の反応器の組み合わせが使用される場合に、該ポリマーは1つの重合反応器から別の重合反応器に移される。その上、重合段階からのポリマーの一部又は全部が前の重合段階に戻されてもよい。
【0065】
後続の重合段階に反応物を導入する前に、先行する重合段階の該反応物を該ポリマーから除去することが好ましい場合が多い。このことは好ましくは、該ポリマーを或る重合段階から別の重合段階に移すときに行われる。
【0066】
シングルサイト重合触媒
【0067】
本方法において利用される重合触媒は、シングルサイト重合触媒である。シングルサイト重合触媒は典型的には、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む。
【0068】
好ましくは、該第1の重合工程と該第2の重合工程とは、好ましくは同じシングルサイト重合触媒を用いて、すなわちメタロセン触媒の存在下で、行われる。
【0069】
該触媒は、当技術分野において既知の任意の手段によって該第1反応器内へと移されうる。例えば、該触媒が希釈剤中に懸濁され、そして、それをスラリーとして維持すること、該触媒をグリースと油との粘性混合物と混合し、そして、結果として得られたペーストを重合ゾーン内へと供給すること、又は触媒を沈降させ、そして、このようにして得られた触媒泥(catalyst mud)の一部を該重合内へと導入することが可能である。
【0070】
本方法は好ましくは、シングルサイト触媒を利用する。シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレンコポリマーは、チーグラー・ナッタ(Ziegler Natta)触媒とは対照的に、それらをチーグラー・ナッタ材料と区別されることを可能にするところの特性を有する。特には、コモノマー分布がより均一である。これは、TREF技術又はCrystaf技術を用いて示されることができる。触媒残渣はまた、使用された触媒を示してもよい。チーグラー・ナッタ触媒は、例えばZr又はHfの(IV)族金属を含まない。
【0071】
本発明のシングルサイト触媒は、40MPa以上、好ましくは41MPa以上、特には42~75MPa、の(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積と、0.50MPa-1以下、好ましくは0.49MPa-1以下、特には0.25~0.49MPa-1、であり、ここで、該ワイブル係数及び該スケールパラメータは、触媒粒子の圧縮強度のワイブル解析によって決定される。
【0072】
本発明のシングルサイト重合触媒は好ましくは、少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも5.5MPa、特に好ましくは6~25MPa、より好ましくは7~20MPa、更に好ましくは7~15MPa、の圧縮強度(compressive strength)を有する。
【0073】
該圧縮強度は、典型的には不活性雰囲気下で、圧縮試験機によって、任意の10個以上の粒子、例えば正確に10個の粒子、の個々の破砕強度を測定し、そして、測定値の平均値を重合触媒の圧縮強度として算出することによって決定されうる。測定値の平均値は、好ましくは統計的異常値を除去した後に算出される。破砕強度(crushing strength)は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機MCT-510によって測定されうる。
【0074】
本発明のシングルサイト重合触媒は好ましくは、遷移金属錯体(i)に対する助触媒(ii)の比が50モル/モル超、好ましくは60~200モル/モル、より好ましくは100~160モル/モル、である。
【0075】
遷移金属錯体(i)
【0076】
該遷移金属錯体は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族の遷移金属(M)、又はアクチニド若しくはランタニドの遷移金属(M)を含む。
【0077】
本発明に従う場合に、語「遷移金属錯体」は、遷移金属の任意のメタロセン又は非メタロセン化合物を包含し、それは、少なくとも1つの有機(配位(coordination))リガンドを有し且つ単独で又は助触媒と共に触媒活性を有する。該遷移金属化合物は当技術分野において周知であり、及び本発明は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族、例えば第3族~第7族、又は第3族~第6族、例えば第4族~第6族、並びにランタニド又はアクチニドからの金属の化合物をカバーする。
【0078】
最も好ましくは、遷移金属錯体(i)は、メタロセン錯体であり、それは上記で定義されているような遷移金属化合物を含む。
【0079】
本発明のメタロセン錯体は、下記の式(I)の構造を有しうる:
【化4】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式又は多環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンドを連結し;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、ベンジル基、O-ベンジル基、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいO-フェニル基であり;及び/又は、
2つの隣接するR1基は、それらが結合されている原子と一緒になって、例えばCp環と共にインデニル環を形成するように更なる環を形成し、ここで、該更なる環は4までのR3基によって置換されていてもよい;
各R3は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である。
【0080】
下記の好ましい選択肢は、本明細書における全ての一般式に適用される。
【0081】
Mは好ましくは、Zr又はHfであり、より好ましくはZrである。
【0082】
各Xは独立してシグマドナーリガンドである。従って、各Xは同一であってもよく又は異なっていてもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状、環状若しくは非環状の、C1~20アルキル基又はC1~20アルコキシ基、C6~20アリール基、C7~20アルキルアリール基又はC7~20アリールアルキル基である。
【0083】
1つの実施態様において、X基は、トリヒドロカルビルシリル、C1~10アルコキシ基、C1~10アルコキシ基-C1~10アルキル基、又はアミド基であってもよい。
【0084】
語「ハロゲン」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基を包含し、好ましくはクロロ基である。
【0085】
関心のあるアミド基は、-NH2、-NHC1~6アルキル、又は-N(C1~6アルキル)2である。
【0086】
より好ましくは、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基である。
【0087】
更により好ましくは、各Xは独立して、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐状の、C1~4アルキル又はC1~4アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基である。
【0088】
最も好ましくは、各Xは独立して、クロロ基、ベンジル基、シクロヘキシル基、又はメチル基である。
【0089】
好ましくは、両方のX基は同じである。
【0090】
両方のX基についての最も好ましい選択肢は、2つのクロロ基、2つのメチル基又は2つのベンジル基である。
【0091】
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする架橋である。2つのリガンド間には1~2個の骨格結合原子があり、例えば、リガンド-C-リガンド(1つの骨格原子)又はリガンド-Si-Si-リガンド(2つの骨格原子)のような構造である。
【0092】
該架橋原子は、他の基を担持することができる。例えば、好適な架橋化リガンドLは、-R'2C-、-R'2C-CR'2-、-R'2Si-、-R'2Si-SiR'2-、-R'2Ge-から選択され、ここで、各R'は独立して、水素原子、又は任意的に周期表第14~第16族の1以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20ヒドロカルビル基であるか、又は任意的に2つのR'基が一緒になって環を形成する。1つの実施態様において、R’は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシで置換されていてもよいアルキルであることができる。
【0093】
語「ヘテロ原子」は、周期表の第14~第16族に属する場合に、例えばSi原子、N原子、O原子又はS原子を包含する。
【0094】
好ましくは、Lは、-R'2Si-、エチレン又はメチレンである。
【0095】
式-R'2Si-において、各R'は独立して、好ましくはC1~C20ヒドロカルビル基である。それ故に、語「C1~20ヒドロカルビル基」は、C1~20アルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20アルキニル基、C3~20シクロアルキル基、C3~20シクロアルケニル基、C6~20アリール基、C7~20アルキルアリール基若しくはC7~20アリールアルキル基、又はこれらの基の組み合わせ、例えば、アルキルによって置換されたシクロアルキル、を包含する。特に断らない限り、好ましいC1~20ヒドロカルビル基は、C1~20アルキル、C2~20アルケニル、C4~20シクロアルキル、C5~20シクロアルキルアルキル基、C7~20アルキルアリール基、C7~20アリールアルキル基、又はC6~20アリール基である。
【0096】
1つの実施態様において、式-R'2Si-は、シラシクロアルカンジイル、例えば、シラシクロブタン、シラシクロペンタン、又は9-シラフルオレンを表す。
【0097】
好ましくは、両方のR'基は同じである。R'は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~C10ヒドロカルビル又はアルキルである。好ましいR’基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、C2~10アルケニル基、C3~8シクロアルキル基、シクロヘキシルメチル基、フェニル基又はベンジル基であり、より好ましくは、各R'は独立して、C1~C6アルキル、C2~10アルケニル、C5~6シクロアルキル基又はフェニル基であり、最も好ましくは、両方のR'がメチルであるか、又は一方がメチルであり且つ他方がシクロヘキシルである。最も好ましくは、該架橋は、-Si(CH3)2-である。
【0098】
該Het基は同一であってもよく又は異なっていてもよく、好ましくは同一である。該Het基は、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式又は多環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基である。Nが環中に存在する場合、該環の構造に依存して、それはH原子又はC1~6アルキル基を有しうる。
【0099】
好ましくは、該Het基は単環式である。好ましくは、該Het基はヘテロ芳香族である。好ましくは、該Het基は単環式のヘテロ芳香族基である。好ましくは、該Het基は、5員又は6員のヘテロ芳香族環構造又はヘテロ環構造である。
【0100】
好ましいHet基は、フラニル、テトラヒドロフラニル、チオフェニル、ピリジル、ピペリジニル、又はピロールを包含する。
【0101】
該Het環中に1つのヘテロ原子があることが好ましい。そのヘテロ原子がO原子又はS原子、好ましくはO原子、である場合が好ましい。Hetがフラニルである場合が最も好ましい。該Het基からシクロペンタジエニル環への連結が、ヘテロ原子に隣接する炭素原子上にある場合が好ましい。Cp基から該Het環への連結が、リンカーLに隣接する炭素原子上にある場合が好ましい。
【0102】
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、ベンジル基、O-ベンジル基(すなわち、OBz)、C6~10アリール、OC6~10アリール、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいO-Ph基であり;
及び/又は、
2つの隣接するR1基は、それらが結合されている原子と一緒になって、例えばCp環と共にインデニル環を形成するように更なる環を形成し、ここで、該更なる環は4までのR3基によって置換されていてもよい。
【0103】
しかしながら、縮合環が存在せず、従って、該リガンドが2つのシクロペンタジエニル環を含む場合が好ましい。
【0104】
各R1は好ましくは、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、ベンジル基、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である。
【0105】
より好ましくは、R1は、C1~6アルキル基、例えば、メチル基、エチル基又はtert-ブチル基、である。
【0106】
添え字「n」は好ましくは1又は2であり、すなわち、該環が置換されている場合が好ましい。nが2である場合、R1がメチルであることが好ましい。nが1である場合、R1がt-Buであることが好ましい。
【0107】
nが1以上の場合、R1基が同じC原子に結合していないことが好ましい。
【0108】
n=2である場合、R1基は好ましくは隣接している。n=2である場合、R1基は好ましくは、架橋Lと次の炭素原子とに隣接する炭素原子に付着している。
【0109】
n=1である場合、R1基は好ましくは、リンカーL又は該Het基に隣接しない。
【0110】
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基又は-Si(R)3基である。R2が-Si(R)3基であることが好ましい。
【0111】
各Rは独立して、C1~6アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である。従って、各R基は、同一であってもよく又は異なっていてもよい。
【0112】
R基は好ましくは、フェニル又はC1~4アルキル、特にはメチル又はフェニル、である。1つの実施態様において、1つのRはフェニルであり且つ他のR基はC1~4 アルキル、例えばメチル、である。別の実施態様において、全てのR基がC1~4アルキル基である。-SiPhMe2又はSiMe3の使用が好ましい。
【0113】
pは0又は1であることが好ましく、より好ましくはp=1である。
【0114】
pが0以外の場合、R2置換基は好ましくは、ヘテロ原子に隣接する炭素原子上にある。R2基は、Cp環への連結と同じ炭素原子に結合しないことが好ましい。該Het基がフラニルである場合、該Het環がO原子に隣接する2つの炭素原子を介して該Cp環及び該Het基(存在する場合)に連結していることが好ましい。
【0115】
本発明において使用する錯体は好ましくは、下記の式(II)のものである:
【化5】
ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式又は多環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、-R'2C-、又は-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、ベンジル基、O-ベンジル基、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいO-フェニル基であり;及び/又は、
2つの隣接するR1基は、それらが結合されている原子と一緒になって、例えばCp環と共にインデニル環を形成するように更なる環を形成し、ここで、該更なる環は4までのR3基によって置換されていてもよい;
各R3は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である。
【0116】
本発明のメタロセン錯体は好ましくは、下記の式(III)のものである:
【化6】
ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式又は多環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、-R'2C-、又は-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基、C1~10アルコキシ基、ベンジル基、O-ベンジル基、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいO-フェニル基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~6アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である。
【0117】
本発明のメタロセン錯体は好ましくは、下記の式(IV)のものである:
【化7】
ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式のヘテロ芳香族基であり;
Lは、-R'2C-、又は-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、又はC1~6アルコキシ基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは独立して、C1~6アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である。
【0118】
本発明のメタロセン錯体は好ましくは、下記の式(V)のものである:
【化8】
ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であり;
各nは、1~2であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~1である。
【0119】
本発明において使用される錯体は好ましくは、下記の式(VI)のものである:
【化9】
ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
Lは、-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、C1~10アルキル、C3~8シクロアルキル又はC2~10アルケニルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基であり;
各nは、1~2であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~1である。
【0120】
本発明のメタロセン錯体は好ましくは、下記の式(VII)のものである:
【化10】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基であり;
各nは、0~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3である。
【0121】
本発明のメタロセン錯体は好ましくは、下記の式(VIII)のものである:
【化11】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基であり;
各nは、1~2であり;
R2は、-Si(R)3アルキル基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各pは1である。
【0122】
本発明のメタロセン錯体は好ましくは、下記の式(IX)のものであり:
【化12】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、Me2Si-又は(Me) C2~10アルケニルSiであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、例えば、メチル又はt-Bu、であり;
各nは、1~2であり;
R2は、-Si(R)3アルキル基であり;
各Rは、C1~6アルキル基又はフェニル基であり;
各pは1であり;
例えば、下記の式(IX’)のものである
【化13】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、Me2Si-又は(Me)C2~10アルケニルSiであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、例えば、メチル又はt-Bu、であり;
各nは、1~2であり;
R2は、-Si(R)3アルキル基であり;
各Rは、C1~6アルキル基又はフェニル基である。
【0123】
本発明のメタロセン錯体は特には、下記の式(X)のものであり:
【化14】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式のヘテロ芳香族基又はヘテロ環式基であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(RaRbRc)基であり;
Raは、C1~6アルキルであり;
Rbは、C1~6アルキルであり;
Rcは is 1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;及び、
各pは、1~3である;
例えば、下記の式(X’)のものである:
【化15】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(RaRbRc)基であり;
Raは、C1~6アルキルであり;
Rbは、C1~6アルキルであり;
Rcは、1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である。
【0124】
より好ましい錯体は、下記の式(XI)のものである:
【化16】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式のヘテロ芳香族基であり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、分岐のC3~10アルキル基であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは1である、
例えば、下記の式(XI’)のものである:
【化17】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子をベースとする2価の橋であり、ここで、1つ又は2つの骨格原子は該リガンド、例えば-R'2Si-、を連結し、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、分岐のC3~10アルキル基であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である。
【0125】
更により好ましいメタロセン錯体は、下記の式(XII)のものである:
【化18】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子、N原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式のヘテロ芳香族基であり;
Lは、(RdRe)Si基であり;
Rdは、C1~10アルキル基であり;
Reは、C2~10アルケニル基であり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~3であり、
例えば、下記の式(XII’)のものである:
【化19】
ここで、各Xは、シグマドナーリガンドであり、例えば、ここで、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、アミド基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、(RdRe)Si基であり;
Rdは、C1~10アルキル基であり;
Reは、C2~10アルケニル基であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~10アルキル基であり;
各nは、1~3であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基である。
【0126】
非常に好ましい錯体は、下記の通りである:
【化20】
【0127】
助触媒(ii)
【0128】
活性な触媒種を形成する為に、当技術分野において周知である助触媒を使用する必要が通常ある。
【0129】
本発明に従うと、第13族元素を含む助触媒、例えば、ホウ素含有助触媒又はAl含有助触媒、が必要である。上記で定義されたメタロセン触媒錯体と組み合わせてアルミノキサン助触媒を使用することが最も好ましい。
【0130】
該アルモキサン助触媒は、下記の式(ii-I)のものであることができる:
【化21】
ここで、nは6~20であり、及びRは下記の意味を有する。
【0131】
アルミノキサンは、例えば、有機アルミニウム化合物の部分的加水分解、例えば式AlR3、AlR2Y及びAl2R3Y3の部分的加水分解、によって形成され、ここで、Rは例えば、H、C1~C10アルキル、好ましくはC1~C5アルキル、又はC3~10-シクロアルキル、C7~C12アリールアルキル若しくはアルキルアリール、及び/又はフェニル若しくはナフチルであることができ、ここで、Yは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子又は臭素原子、又はC1~C10アルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ、である。結果として得られる酸素含有アルミノキサンは、一般的に純粋な化合物でなく、該式(ii-I)のオリゴマーの組み合わせである。
【0132】
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。助触媒として本発明に従って使用されるアルミノキサンは、その調製様式により純粋な化合物ではない故に、本明細書の以下において、アルミノキサン溶液のモル比はそれらのアルミニウム含有量に基づく。
【0133】
ホウ素含有助触媒がまた使用されてもよく、任意的にアルミノキサン助触媒と組み合わせて使用されてもよい。
【0134】
関心のあるホウ素含有助触媒は、下記の式(ii-II)のものを包含する。
BY3 (ii-II)
ここで、Yは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、水素原子、1~約20個の炭素原子のアルキル基;6~約15個の炭素原子のアリール基;アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル又はハロアリール、ここで、これらの各々は、アルキルラジカル中に1~10個の炭素原子を有し、及び該アリールラジカル中に6~20個の炭素原子を有する;又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子である。Yの好ましい例は、フッ素原子、トリフルオロメチル、芳香族フッ素化基、例えばp-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0135】
特に好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0136】
しかしながら、ホウ酸塩、すなわちホウ酸塩を含む化合物、を使用することが好ましい。
【0137】
これらの化合物は一般的に、下記の式(ii-III)のアニオンを含む:
(Z)4B- (ii-III)
ここで、Zは、置換されていてもよいフェニル誘導体であり、ここで、該置換基はハロ-C1~6アルキル又はハロ基である。好ましい選択肢は、フルオロ又はトリフルオロメチルである。最も好ましくは、該フェニル基が、パーフッ素化されている。
【0138】
そのようなイオン性助触媒は好ましくは、弱く配位するアニオン(weakly-coordinating anion)、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はテトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、である。
【0139】
好適なカチオン性対イオンは、トリフェニルカルベニウムを包含し、且つプロトン化されたアミン又はアニリンの誘導体、例えば、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム、又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムである。
【0140】
本発明に従って使用されうる好ましいイオン性化化合物は、下記を包含する:
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0141】
好ましくは、下記が与えられる:
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0142】
本発明において使用する好ましいボレートは、トリチル、すなわちトリフェニルカルベニウムイオン、を含む。それ故に、Ph3CB(PhF5)4及びそれらの類似体の使用が特に好まれる。
【0143】
助触媒の適切な量は、当業者にとって周知であろう。
【0144】
支持体(iii)
【0145】
本発明の重合触媒は、国際公開第WO03/051934号パンフレットのプロトコールに従って、固体であるが非支持形態で使用することが可能である。本発明の重合触媒は好ましくは、固体支持形態で使用される。使用される粒子支持体物質は、無機多孔質支持体、例えば、シリカ、アルミナ、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、特にはシリカ、であってもよい。
【0146】
シリカ支持体の使用が好ましい。
【0147】
特には好ましくは、該支持体は多孔質材であり、従って、例えば、国際公開第WO94/14856号パンフレット、国際公開第WO95/12622号パンフレット、国際公開第WO2006/097497号パンフレット及び欧州特許第EP1828266明細書において記載されているような類似のプロセスを用いて、錯体が該粒子支持体の孔内に担持されうる。
【0148】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均粒径は典型的には、10~100μmであることができる。好ましくは、シリカ支持体の平均粒径は10~40μm、好ましくは15~35μm、である。平均粒径(すなわちメジアン粒径,D50)は、レーザー回折式粒径分析器Malvern Mastersizer 3000を用いて決定されうる(サンプル分散物:乾燥粉末)。
【0149】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均孔径は10~100nmの範囲であることができ、孔容積は1~3mL/gであることができる。
【0150】
好適な支持体物質の例は、例えば、PQ Corporationによって製造販売されているES757、Graceによって製造販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Coによって製造販売されているSUNSPERA DM-L-303シリカがある。支持体は、最適なシラノール基含量に達する為に、触媒調製において使用する前に任意に焼成されることができる。
【0151】
該触媒は、支持体の1g当たり5~500μmol、例えば10~100μmol、の遷移金属錯体(i)、及び支持体(iii)、例えばシリカ、の1g当たり3~15mmolの助触媒(ii)、例えばMAO、を含むことができる。
【0152】
ポリエチレンポリマー
【0153】
本開示は、ポリエチレンポリマー、特に多峰性エチレンホモポリマー又はコポリマーの調製に関する。多峰性エチレンホモポリマー又はコポリマーの密度は、900~980kg/m3でありうる。
【0154】
本方法により直接的に提供されるポリエチレンポリマーは、ポリマー粉末の形態である。
【0155】
該多峰性ポリエチレンポリマーがコポリマーであることが好ましい。より好ましくは、該多峰性エチレンポリマーはLLDPEである。それは、905~940kg/m3、好ましくは910~935kg/m3、より好ましくは915~930kg/m3、特には916~928kg/m3、の密度を有しうる。1つの実施態様において、910~928kg/m3の範囲が好ましい。本明細書において使用される場合に、「LLDPE」は、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene)を云う。LLDPEは好ましくは多峰性である。
【0156】
語「多峰性」は、MFRに関して多峰性であるポリマーを包含し、それ故に、バイモーダルポリマーを包含する。語「多峰性」はまた、「コモノマー分布」に関する多峰性(multimodality)を意味しうる。
【0157】
通常、少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリマーは、異なる重合化条件下で製造され、画分の(重量平均)分子量及び分子量分布が異なることから、「多峰性」(multimodal)と云われる。接頭語の「多」(multi)は、ポリマー中に存在する異なるポリマー画分の数に関する。従って、例えば、語「多峰性ポリマー」は、2つの画分からなる所謂「二峰性」(bimodal)ポリマーを包含する。多峰性ポリマー、例えばLLDPE、の分子量分布曲線、すなわち分子量の関数としてのポリマー重量画分のグラフの外観、は、個々の画分についての曲線と比較して、2以上の極大を示すか、又は少なくとも明確に広がっていることがある。最終的なMWD曲線は、幅が広く(broad)、串刺しになっていたり(skewered)、又はショルダー(shoulder)を示したりすることがしばしばある。
【0158】
理想的には、本発明の多峰性ポリマーの分子量分布曲線は、2つの別個の極大を示すであろう。代替的には、該ポリマー画分は、同様のMFRを有し、並びにコモノマー含有量において二峰性である。少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリマーは、異なる重合化条件下で製造され、結果として、画分の異なるコモノマー含有量が、「多峰性」としてまた言及される。
【0159】
例えば、ポリマーが、直列に連結された反応器を使用し並びに各反応器において異なる条件を使用して、逐次の多段方法において製造される場合、異なる反応器において製造されたポリマー画分は、それら独自の分子量分布及び重量平均分子量を有する。そのようなポリマーの分子量分布曲線が記録される場合、これらの画分の個別の曲線は、結果として得られるポリマー製品全体の為の分子量分布曲線に重ね合わされ、通常、2以上の個別の極大値を有する曲線が与えられる。
【0160】
在りうる多峰性ポリマーにおいて、低分子量成分(lower molecular weight component)(LMW)及び高分子量成分(higher molecular weight component)(HMW)が存在しうる。LMW成分は、高分子量成分よりも低い分子量を有する。この差は好ましくは、少なくとも5000g/モルである。
【0161】
本発明において使用する多峰性ポリエチレンポリマーは好ましくは、少なくとも1つのC4~10コモノマーを含む。コモノマーは、HMW成分(すなわち、第2の成分)若しくはLMW成分(すなわち、第1の成分)又はその両方に存在しうる。本明細書の以降において、語「LMW/HMW成分」が使用されるが、記載された実施態様は、第1の成分及び第2の成分夫々に適用される。
【0162】
HMW成分が少なくとも1つのC4~10コモノマーを含む場合が好ましい。次に、LMW成分は、エチレンホモポリマーであってもよく、又は少なくとも1つのC4~10コモノマーを含んでいてもよい。1つの実施態様において、多峰性ポリエチレンポリマーは単一のコモノマーを含む。好ましい実施態様において、該多峰性ポリエチレンポリマーは、少なくとも2つの、例えば正確に2つの、C4~10コモノマーを含む。
【0163】
1つの実施態様において、該多峰性ポリエチレンポリマーはターポリマーであり、並びに少なくとも2つのC4~10コモノマーを含む。そのシナリオでは、HMW成分はコポリマー成分又はターポリマー成分であってもよく、及び低分子量(LMW)成分はエチレンホモポリマー成分又はコポリマー成分であることができる。代替的には、LMW成分及びHMW成分の両方は、少なくとも2つのC4~10コモノマーが存在するようなコポリマーであることができる。
【0164】
それ故に、該多峰性ポリエチレンポリマーは、HMW成分が、エチレンと、少なくとも2つの他のC4~10アルファーオレフィンモノマー、例えば1-ブテン、と、1つのC6~10アルファーオレフィンモノマーとに由来する繰り返し単位を含むものでありうる。エチレンは好ましくは、LMW又はHMW成分の大部分を形成する。最も好ましい実施態様において、LMW成分はエチレン1-ブテンコポリマーを含んでいてもよく、及びHMW成分はエチレン1-ヘキセンコポリマーを含んでいてもよい。
【0165】
多峰性ポリエチレンポリマー中の全体のコモノマー含有量は、例えば0.2~14.0モル%、好ましくは0.3~12モル%、より好ましくは0.5~10.0モル%、最も好ましくは0.6~8.5モル%、でありうる。
【0166】
1-ブテンは、0.05~6.0モル%、例えば0.1~5モル%、より好ましくは0.15~4.5モル%、最も好ましくは0.2~4モル%、の量で存在しうる。
【0167】
C6~C10アルファーオレフィンは、0.2~6モル%、好ましくは0.3~5.5モル%、より好ましくは0.4~4.5モル%、の量で存在しうる。
【0168】
好ましくは、LMW成分はHMW成分よりも低いコモノマー量(モル%)を有し、例えば、LMW成分中のコモノマー、好ましくは1-ブテン、の量は0.05~0.9モル%、より好ましくは0.1~0.8モル%であり、一方、HMW成分(B)中のコモノマー、好ましくは1-ヘキセン、の量は、1.0~8.0モル%、より好ましくは1.2~7.5モル%、である。
【0169】
必要に応じて、HMW成分中のコモノマー含有量(モル%)=(最終製品中のコモノマー含有量(モル%)-LMW成分の重量分率×LMW成分中のコモノマー含有量(モル%))/(HMW成分の重量分率)。
【0170】
それ故に、該多峰性ポリエチレンコポリマーは、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンのうちの少なくとも1つと共に、エチレンとから形成されうる。該多峰性ポリエチレンポリマーは、エチレンブテンヘキセンターポリマーであってもよく、例えば、HMW成分がエチレンブテンヘキセンターポリマーであり、及びLMWがエチレンホモポリマー成分である。エチレンと1-オクテン及び1-ヘキセンコモノマーとのターポリマーの使用がまた想定される。
【0171】
更なる実施態様において、該多峰性ポリエチレンコポリマーは、2つのポリエチレンコポリマー、例えば、2つのエチレンブテンコポリマー又はエチレンブテンコポリマー(例えば、LMW成分として)及びエチレンヘキセンコポリマー(例えば、HMW成分として)を含みうる。ポリエチレンコポリマー成分とエチレンターポリマー成分、例えばエチレンブテンコポリマー(例えば、LMW成分として)及びエチレンブテンヘキセンターポリマー(例えば、HMW成分として)を組み合わせることがまた可能であろう。
【0172】
多峰性ポリエチレンポリマーのLMW成分は、0.5~3000g/10分、より好ましくは1.0~1000g/10分、のMFR2を有しうる。幾つかの実施態様において、LMW成分のMFR2は、例えばターゲットがキャストフィルムである場合、50~3000g/10分、より好ましくは100~1000g/10分、でありうる。幾つかの実施態様において、LMW成分のMFR2は、0.5~50g/10分、より好ましくは1.0~10g/10分、好ましくは1.5~9.0、より好ましくは2.0~8.5、であってもよく、例えば、ここで、該ターゲットがブローフィルム(blown film)である。
【0173】
低分子量成分の分子量(Mw)は好ましくは、20,000~180,000、例えば40,000~160,000、であるべきである。
【0174】
低分子量成分は、少なくとも925kg/m3、例えば少なくとも940kg/m3、の密度を有しうる。930~950kg/m3、好ましくは935~945kg/m3、の範囲の密度がありうる。
【0175】
多峰性ポリエチレンポリマーのHMW成分は例えば、1g/10分未満、例えば0.2~0.9g/10分、好ましくは0.3~0.8g/10分、より好ましくは0.4~0.7g/10分、のMFR2を有しうる。HMW成分は、915kg/m3未満、例えば910kg/m3未満、好ましくは905kg/m3未満、の密度を有しうる。高分子量成分のMwは、70,000~1,000,000、好ましくは100,000~500,000、の範囲でありうる。
【0176】
該LMW成分は、30~70重量%、例えば38~62重量%、特には45~55重量%、の多峰性ポリエチレンポリマーでありうる。
【0177】
該HMW成分は、30~70重量%、例えば38~62重量%、特には45~55重量%、の多峰性ポリエチレンポリマーでありうる。
【0178】
1つの実施態様において、40~45重量%のLMW成分及び60~55重量%のHMW成分が存在する。
【0179】
1つの実施態様において、該ポリエチレンポリマーが、HMW成分及びLMW成分を唯一のポリマー成分として構成される。
【0180】
本発明の多峰性ポリエチレンポリマーは、0.01~50g/10分、好ましくは0.05~25g/10分、特には0.1~10g/10分、のMFR2を有しうる。
【0181】
本発明の多峰性ポリエチレンポリマーは、900~960kg/m3、好ましくは905~940kg/m3、特に910~935kg/m3、の密度を有しうる。
【0182】
本発明のポリエチレンターポリマーの分子量分布(MWD,Mw/Mn)は、2.0~15.0の範囲、好ましくは2.2~10.0の範囲、より好ましくは2.4~4.6の範囲、である。
【0183】
多峰性ポリエチレンポリマーは、本明細書において記載されているように製造されうる。好ましくは、該多峰性ポリマーは、例えば、2つのスラリー反応器若しくは2つの気相反応器又はそれらの任意の組合せを用いて、少なくとも2段階重合で製造され、任意の順序で採用されることができる。しかしながら、好ましくは、該多峰性ポリマーは、スラリー重合、例えば直列に接続された2つのループ反応器でのスラリー重合、続いて気相反応器での気相重合を用いて製造される。
【0184】
好ましくは、低分子量ポリマー画分は、直列に接続された連続操作ループ反応器中で製造され、ここで、エチレン及び任意のコモノマーが、上記された重合触媒と連鎖移動剤、例えば水素、の存在下で重合される。該希釈剤は典型的には、不活性脂肪族炭化水素、好ましくはイソブタン又はプロパン、である。
【0185】
次に、高分子量成分が、同じ触媒を使って気相反応器中で形成されることができる。
【0186】
更なる重合工程、例えば更なる気相工程、を用いることがまた可能である。
【0187】
後続の重合段階に反応物を導入する前に、先行する重合段階の該反応物を該ポリマーから除去することが好ましい場合が多い。このことは好ましくは、該ポリマーを或る重合段階から別の重合段階に移すときに行われる。
【0188】
高分子量成分が多段重合で2番目に製造される場合に、その特性を直接的に測定することは不可能である。しかしながら、当業者は、Hagstromの式(Hagstrom,The Polymer Processing Society,Europe/Africa Region Meeting,Gothenburg,Sweden,August 19-21,1997)を用いて、高分子量成分の密度、MFR2等を決定することができる。
【0189】
前記Hagstromに従うと、該式(式3)において、MFR2についてa=5.2及びb=0.7である。その上、wは、より高いMFRを有する他のポリエチレンポリマー成分、例えば成分(A)、の重量分率である。従って、LMW成分が成分1として採用され、及びHMW成分が成分2として採用されることができる。MIbは最終的なポリエチレンのMFR2である。
【0190】
本発明の方法で製造されたポリマーは、様々な用途、例えばフィルム、例えばブローフィルム(blown film)又はキャストフィルム(cast film)、に使用されることができる。該ポリマーはまた、成形用途に有用である。
【0191】
実施例
【0192】
実験例
【0193】
化学物質及び原材料
【0194】
メチルアルミノキサンが、トルエン中の30重量% MAO溶液(Axion CA 1330)としてLanxessから購入された。
【0195】
Rac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)- 4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリドメタロセンが商業的供給源から購入された。
【0196】
比較例1
前処理されたシリカは、PQ Corpから入手された市販の合成非晶質シリカES757である。該前処理は、慣用的なPO触媒技術に従ってシリカを600℃で商業的焼成することを云う。
【0197】
触媒分析及び特性評価
【0198】
ICP-OESによる固体触媒成分中のAl及びZr含有量
【0199】
グローブボックスにおいて、触媒のアリコート(約40mg)が分析天秤を用いてガラス製計量ボート(glass weighing boat)内に秤量される。次に、吸気口を備えたスチール製の第2の容器内にサンプルが入れられ、一晩空気に曝露される。次に、5mLの濃硝酸(65%)がXpress電子レンジ容器(20mL)内に入れられ、ボートの中身を濯ぐ為に使用される。次に、サンプルが、20分以内に150℃まで昇温され、150℃で35分間保持するMARS 6実験室用マイクロ波ユニットを使用して、マイクロ波アシスト酸分解(microwave-assisted acid digestion)に付される。消化されたサンプル(digested sample)は室温まで冷やされ、そして次に、プラスチック製の100mLメスフラスコ内に移される。1000mg/Lのイットリウムを含む標準溶液(0.4mL)が加えられる。次に、フラスコは蒸留水で満たされ、そして、振とうされる。溶液が0.45μmのナイロンシリンジフィルターを通じてろ過され、そして、Thermo iCAP 6300 ICP-OES及びiTEVAソフトウェアを用いて分析に付される。
【0200】
該機器は、ブランク(濃硝酸から調製された5%のHNO3溶液)と、溶液中のAl及びZrの0.005mg/L、0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L及び100mg/Lの6種類の標準物質を使用して、Al及びZrについて較正される。該溶液は、5%のHNO3(濃硝酸)、4mg/LのY標準を蒸留水中に含む。プラスチック製メスフラスコが使用される。曲線フィッティングと1/濃度重み付けが、検量線の為に使用される。分析の直前に、ブランクと、蒸留水中の4mg/LのYと5%の濃硝酸HNO3を含む10mg/LのAlとZrの標準サンプルを用いて、検量線が検証され、そして調整される(機器の再勾配機能(re-slope function))。再勾配を確認する為に、品質管理サンプル(QC:1mg/L Al;2mg/L Zr及び4mg/L Y,蒸留水中の濃硝酸5%のHNO3溶液)について行われる。QCサンプルについて、スケジューリングされた分析セットの最後でまた行われる。
【0201】
Zrの含有量は339.198nmの波長線を用いてモニターされる。Alの含有量は394.401nmの波長線を解してモニターされる。Y 371.030nmが内部標準として使用される。報告された値は、触媒アリコート(catalyst aliquot)の元の質量と希釈量とを用いて、元の触媒サンプルまで遡って計算されたものである。
【0202】
圧縮強度(Compressive strength)
実施例における材料の破砕強度(crushing strength)は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機MCT-510を用いて決定された。該サンプル材料は下部の圧縮プレート上に分散され、そこから分離された粒子が光学顕微鏡を使用して測定の為に選択された。粒子の直径は顕微鏡ソフトウェアツールを用いて測定された。該選択されたサンプル粒子は、粒子が破断するか又は設定された最大力が達成されるまで、荷重を常に増加させながら圧縮された。該物質の破砕強度は、粒子が破砕する時点での最大圧縮荷重と粒子直径とによって決定された。測定は不活性条件下、荷重速度0.4462mN/秒及び最大荷重40mNで行われた。無作為に選択された10個の粒子の破砕強度が測定され、そして、触媒の圧縮強度が、統計的外れ値を除去した後の平均値として報告された。
【0203】
ワイブル分布分析は、市販の統計解析ソフト、例えばMiniTab又はOrigin、を使用することによって、個々の粒子データから行われた。
【0204】
触媒成分粉末の粒度分布
触媒成分の粒度分布は、レーザー回折式粒径分析器Malvern Mastersizer 3000を用いて測定される(サンプル分散物:乾燥粉末)。
【0205】
ポリマー分析及び特性評価
【0206】
嵩密度
ポリマー粉末の嵩密度は、標準的な方法、例えばISO 60:1977又はASTM D1895-17、に従って決定されることができる。
【0207】
MFR
メルトフローレート(MFR:melt flow rate)はISO 1133に従って決定され、g/10分で表される。MFRはポリマーの流動性、ひいては加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2は温度230℃及び荷重2.16kg、ポリエチレンのMFR5は温度190℃及び荷重5kg、並びにポリエチレンのMFR2は温度190℃及び荷重2.16kgで決定される。
【0208】
密度
ポリマーの密度はISO 1183-2/1872-2Bに従って測定される。
【0209】
粒度分布
該ポリマー粉末の粒度分布は、ISO 13320-1に従って、Coulter LS 200粒径解析器を用いて測定された。該機器は0.4~2000μmの粒度分布を測定することができる。該方法はレーザー回折法であり、ここで、レーザービームはフロースルー型キュベット(flow-through cuvette)内を移動するサンプルに向けられる。該ポリマーサンプルはまず、2mm超の粒子をスクリーニングすることによって前処理される。該スクリーニングされたサンプルはイソプロパノールと混合され、そして、該粒子を互いに分離する為に超音波装置内に入れられる。次に、該前処理されたサンプルは、サンプルユニットに入れられ、そして分析される。
【0210】
粒度分布の平均値、中央値(D50)及び最頻値は、標準的な統計分布分析法を用いることによって実験データから算出された。
【0211】
該ポリマー粉末の粒度分布の対数正規尺度と位置パラメータとは、実験分布にモデル対数正規分布を当てはめて、下記の式を用いることによって分布についての確率密度関数を計算することによって決定された:
【数1】
ここで、σは対数正規分布のスケールパラメータであり、及びμは対数正規分の位置パラメータである。μ=0且つσ=1の場合が、標準対数正規分布と呼ばれる。
【0212】
GPC
分子量平均(Mz,Mw及びMn)、分子量分布(molecular weight distribution)(MWD)は、及び多分散性指数(polydispersity index)PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量、及びMwは重量平均分子量)によって表されるその幅(broadness)は、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474-12に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって、下記の式を用いて決定された:
【数2】
【0213】
一定の溶出量間隔ΔVi、ここでAi及びMiは夫々、溶出量Viに関連付けられたクロマトグラムピークスライス面積とポリオレフィン分子量(MW)であり、ここで、Nは複数の積分限界(integration limits)間のクロマトグラムから得られたデータ点の数に等しい。
【0214】
高温GPC装置が使用され、該装置は、赤外線(IR)検出器(PolymerChar社(Valencia,Spain)製のIR4又はIR5)を搭載しており、3xAgilent-PLgel Olexis及び1xAgilent-PLgel Olexis Guardカラムを搭載している。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジtert-ブチル-4-メチルフェノールで安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)が使用された。クロマトグラフィーシステムは160℃、1mL/分の一定流速で操作された。1回の分析につき200μLのサンプル溶液が注入された。データ収集は、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IRコントロールソフトウェアのいずれかを使用して実施された。
【0215】
カラムセットは、0.5kg/モルから11,500kg/モルの19個の細いMWDポリスチレン(PS)標準物質を用いて、ユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003に準拠)を用いて較正された。PS標準が、室温で数時間かけて溶解された。ポリスチレンピーク分子量をポリオレフィン分子量へ変換すること、下記のマーク・ホーウインク(Mark Houwink)式及び下記のマーク・ホーウインク定数を使用することによって達成される。
【数3】
【0216】
三次多項式フィット(third order polynomial fit)が、較正データをフィットさせる為に使用された。
【0217】
全てのサンプルは0.5~1mg/mLの濃度範囲で調製され、そして、連続的に穏やかに振とうしながら160℃で、PPの場合は2.5時間、PEの場合は3時間かけて溶解された。
【0218】
比較例の触媒の実験例2(CE2)-2段階の製造手順の代表的な記述
SiO2/MAOの調製:
SiO2(5.0kg)が供給ドラムから添加され、そして、O2レベルが2ppm以下になるように反応器内で不活性化された。
【0219】
21.6kgのトルエンが反応器内に加えられた。MAOの供給を開始する前に、混合物が15分間撹拌された(40rpm)。トルエン中の30重量%のMAO(8.53kg)が天秤上の供給容器から85分以内に添加された。MAO供給が終了後に、供給ラインが1kgのトルエンで反応器内へとフラッシュされた。反応混合物が90℃まで加熱された。反応器内温度が85℃に達したときに、温度が95℃に設定された(オイル循環)。135分の加熱の後、120分の反応時間が続いた。次に、スラリーが10分間沈降され、そして、母液が濾過された。残った固体がトルエン(21.6kg)で2回洗浄された。30分間の洗浄の目標温度は、1回目のトルエン洗浄では90℃、2回目のトルエン洗浄では60℃であった。2回目と3回目のトルエンをろ過する前の沈降時間は10分であった。1回目のトルエン洗浄の沈降中に、反応器の60℃への液冷が開始された。最後に、MAOで処理されたSiO2が60℃(油循環温度)で2kg/時間の窒素流下で2時間乾燥され、そして、同じ窒素流下で5rpmの攪拌を行いながら真空下で6時間乾燥された。乾燥したSiO2/MAOがサンプリングされ、そして、グローブボックス内でSartorius Moisture Analyser,(Model MA45)により熱重量法を用いてHC含量が測定された。目標HCレベルは3%未満であった(実際は1.1%)。乾燥後、反応器油循環温度が10℃に設定された。
【0220】
トルエン中のメタロセン溶液の調製:
トルエン(8.85kg)が別の反応器内に加えられ、そして、25℃で20分間撹拌された(油循環温度、撹拌400rpm)。メタロセンRac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリド(0.209g)がビュレットで添加され、その後、トルエン(2L、総トルエン量8.4kg)でフラッシングされた。反応器の攪拌速度が150rpmに変更されてMC投入が行われ、400rpmに戻して反応時間を3時間にした。反応時間後、溶液がSilica-MAOに供給する為の供給容器内へと移された。
【0221】
触媒の調製:
反応器温度が80℃(オイル循環温度)に設定され、そして、メタロセン溶液添加の為に40 rpmで攪拌された。溶液(目標9.06kg,実測8.8kg)がスプレーノズルを介して55分以内に添加され、その後、25℃で60分間攪拌された。結果として得られた触媒は25℃で12時間安定化された。最後に、該触媒が、60℃(油循環温度)で、窒素気流下、2kg/時間で2時間乾燥され、その後、同じ窒素気流下で、5rpmの攪拌を伴いながら真空下、7時間乾燥された。乾燥された触媒がサンプリングされ、そして、グローブボックス内でSartorius Moisture Analyser(Model MA45)で熱重量法を用いてHC含有量が測定された。目標HCレベルは3%未満であった。
【0222】
比較例の触媒の実験例3(CE3)
触媒CE3が、表1に従って原料の初期装填量とプロセスパラメータとを変更した以外は、CE5と同様の方法で調製された。
【0223】
比較例の触媒の実験例4(CE4)
CE4がCE2と同じ手順で調製されたが、表2に従って工程が変更された。
【0224】
比較例の触媒の実験例5(CE5)-1階の製造手順の代表的な記述
SiO2の装填量(loading):
10kgのシリカ(PQ Corporation ES757,600℃で焼成)が供給ドラムから加えられ、そしてO2レベルが2ppm未満になるまで該反応器内で不活性化された。
【0225】
トルエン中のメタロセン/MAO溶液の調製:
トルエン(14.1kg)中の30重量%のMAOが、天秤から別の反応器内へと添加され、続いてトルエン(4.0kg)が25℃(油循環温度)で加えられ、そして、95rpmで攪拌された。トルエン添加後、攪拌速度が95rpmから200rpmに上げられた(攪拌時間30分)。メタロセンRac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリド477gが金属シリンダーから添加された後、トルエン4kgでフラッシングされた(トルエン総量8.0kg)。反応器の攪拌速度がMC供給の為に95rpmに変更され、そして、200rpmに戻して反応時間を3時間にした。反応時間後、MAO/tol/MC溶液が供給容器に移された。
【0226】
触媒の調製:
反応器温度が、10℃(オイル循環温度)に設定され、そして、MAO/tol/MC添加の為に40rpmで攪拌された。MAO/tol/MC溶液(目標22.5kg、実際22.2kg)が205分以内に添加され、その後60分間撹拌された(油循環温度は25℃に設定された)。攪拌後、「乾燥混合物」が25℃(油循環温度)、攪拌0rpmで12時間安定された。反応器が20°(前後)回転され、そして、攪拌が5rpmで1時間に数ラウンド行われた。
【0227】
安定化後、触媒が60℃(オイル循環温度)で2kg/時間の窒素フロー下で2時間乾燥され、続いて真空下で13時間乾燥された(同じ窒素フロー、攪拌5rpmで)。乾燥した触媒がサンプリングされ、そして、グローブボックス内でSartorius Moisture Analyser(Model MA45)を用いて熱重量法によりHC含有量が測定された。目標HCレベルは、2%未満であった(実測値1.3%)。
【0228】
本発明の触媒の実験1(IE1)
触媒IE1が、表1に従って原料の初期装填量とプロセスパラメータとを変更した以外は、CE5と同様の方法で調製された。
【0229】
本発明の触媒の実験2(IE2)
触媒IE2は、表1に従って原料の初期装填量とプロセスパラメータとを変更した以外は、CE5と同様の方法で調製された。
【0230】
本発明の触媒の実験3(IE3)
触媒IE3は、表1に従って原料の初期装填量とプロセスパラメータとを変更した以外は、CE5と同様の方法で調製された。
【0231】
本発明の触媒の実験4(IE4)
触媒IE4は、表1に従って原料の初期装填量とプロセスパラメータとを変更した以外は、CE5と同様の方法で調製された。
【0232】
一般的なベンチスケール重合手順:単峰性共重合
3リットルの反応器中に、ヘプタン中のトリイソブチルアルミニウムの10%溶液1.5mLが窒素加圧下で供給され、続いて、1250mLの液体プロパンが20℃で供給される。該反応器の圧力は8.92バールである。該反応器が、所望の予備重合温度60℃まで350rpmの攪拌速度で加熱される。該反応器内の圧力は21.95バールである。
【0233】
500mLの容器から0.2バールのH2が供給ラインに充填される。圧力差3.70バールに相当するエチレン(32.6g)と1-ヘキセン(5.0mL/3.4g)が、H2を含むラインを通じて反該応器に添加される。該反応器内の圧力は25.65バールに上昇する。
【0234】
必要量の触媒(典型的に、25~35mg)がグローブボックス内の触媒フィーダーに秤量される。該触媒フィーダーが重合反応器に取り付けられ、真空とN2充填を3サイクル繰り返すことによって、ライン内の空気が除去される。該ラインの不活性化後、該触媒が100mLのプロパンを用いて反応器内にフラッシュされ、そして、攪拌速度が550rpmに上げられる。該反応器内の圧力は約25.61バールである。
【0235】
予備重合工程は、流量計を用いてエチレンを供給して圧力を一定に保ちながら、60℃で2~5%のプレポリ材料(おおよそ、それは、2~5gのC2消費量に相当する)が形成されるまで続けられる。典型的に、所望の予備重合度を達成する為に約40分かかる。
【0236】
重合反応器の温度は85℃まで上昇され、結果として、該反応器の圧力は40.4バールとなる。
【0237】
500mLの容器から0.2バールのH2が該ラインに充填される。6.70バールの圧力差に相当するエチレン(62.5g)及び1-ヘキセン(10.0mL/6.7g)が、H2を含む該ラインを通じて該反応器内に添加される。
【0238】
該スラリー重合工程の場合に、該反応器が85℃で60分間撹拌される。圧力は、流量計を通じてエチレンを供給することによって一定に保たれる。重合60分後、撹拌を150rpmに下げ、該反応器を排気し、温度を60℃に下げることによって、反応が停止される。炭化水素残渣を除去する為に(開栓前)、該反応器が1バールの窒素圧で加圧/加圧解除することによって10回フラッシュされる。該反応器は、該反応器の開栓前に20℃まで冷却される。
【0239】
比較例のプロセスの実験例1 (CPE1/CE5)
【0240】
初期サイズ(D50)25μmを有するシングルサイト触媒(CE5)がLLDPEフィルムを製造する為に使用された。該触媒がまず予備重合反応器中でT=50℃、P=65バールgで予備重合された。より具体的には、900kg/時間のエチレン、1tnのエチレン当たり95kgの1-ブテン、1tnのプロパン当たり0.27Kgの水素、及び6.50tnのプロパン/時間(希釈剤)がプレポリ反応器内に供給され、そして、平均滞留時間は30分であった。該生成物は容積80m3を有するスプリットループ反応器構成に移された。エチレン(C2)、プロパン(希釈剤)、1-ブテン(C4)及び水素(H2)が該反応器に供給され、重合条件はT=85℃、P=64バールg及び平均滞留時間は1.0時間であった。H2/C2及びC4/C2のモル比は夫々2モル/キロモル及び100モル/キロモルであり、及び全体の生産性は1.1kg/gcatであった。次に、材料は高圧分離器内でフラッシュアウトされ、その操作圧力は2バールgに等しくなるように選択され、そして、見積もられた滞留時間5分に等しくなった。引き続き、該ポリマー粒子は、全圧が20バールg、温度が75℃で操作される全体容積350m3(離脱ゾーンを含む)を有する気相反応器であって、気相組成が52.5モル%のプロパン、10モル%の窒素、32.5モル%のエチレン、5モル%のC6及びH2/C2=0.5モル/キロモルを有する上記気相反応器へ移される。GPRにおける全体の滞在時間は2時間であった。該気相反応器内のガス表面速度が0.45m/秒に選択された。
【0241】
巻き込まれた粒子を回収する為に(該粒子がキャリーオーバすると見積もられる)並びに小サイズ粒子がガス圧縮機及び熱交換器を通過することを防ぐ為に、該離脱ゾーン(再循環ガス管)の出口にサイクロンが設置される(それを克服することは可能である)。
【0242】
GPRにおける触媒生産性は1.5kg/gcat(3日間平均)であった。生成スプリット値は、58%であった。流動床全体のΔP測定(すなわち、ΔP=rho*g*hbed)に基づき、流動嵩密度は260kg/m3と測定された。使用した触媒粒子は、i)スケールパラメータに対するワイブル係数の比が0.55、及びii)該ワイブル係数と該スケールパラメータとの積の値が22であった。固形分のキャリーオーバは160kg/時間であった。その上、操作開始から7日後、有意な凝集問題が発生し、操作性に深刻な問題を結果として生じた。GPRの操作は、シーティング(sheeting)及びチャンキング(chunking)の問題の故に、操作3日後に中断され、そして、最終的にシャットダウンに至った。
【0243】
本発明のプロセスの実験例1(IPE1/IE2)
25μmの初期サイズd50を有する異なるシングルサイト触媒(IE2)が使用された以外は、実施例1の手順が繰り返された。GPRにおける触媒生産性は1.9kg/gcatであったのに対して、生産性は1.5kg/gcatであった。生成スプリット値は、58%であった。流動床全体のΔP測定に基づき、流動嵩密度は380kg/m3と測定された。使用された触媒粒子は、i)スケールパラメータに対するワイブル係数の比は0.49であり、及びii)ワイブル係数とスケールパラメータとの積の値は47であった。固形分のキャリーオーバは5kg/時間であると測定された。GPRの操作は20日間順調であった。
【0244】
本発明のプロセスの実験例2(IPE2/IE3)
25μmの初期サイズd50を有する異なるシングルサイト触媒(IE3)が使用された以外は、実施例1の手順が繰り返された。GPRにおける触媒生産性は2.1kg/gcatであったのに対して、生産性は1.5kg/gcatであった。生成スプリット値は、58%であった。流動床全体のΔP測定に基づき、流動嵩密度は390kg/m3と測定された。使用された触媒粒子は、i)スケールパラメータに対するワイブル係数の比は0.43であり、及びii)ワイブル係数とスケールパラメータとの積の値は61であった。固形分のキャリーオーバは4.0kg/時間であると測定された。GPRの操作は20日間順調であった。
【0245】
【表1】
【0246】
【表2】
【0247】
【表3A】
【0248】
【表3B】
【0249】
【表4】
【0250】
【表5】
【国際調査報告】