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2024-525010オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20240702BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579420
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022067181
(87)【国際公開番号】W WO2022268957
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181487.6
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】カストロ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルステン,ニコ
(72)【発明者】
【氏名】カルトトーネン,アンティ ユハニ
(72)【発明者】
【氏名】レズニチェンコ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ホンゲル,アヌ-レーナ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルペイネン,タルジャ-トゥーリッキ
(72)【発明者】
【氏名】ヨエンヴオ,エリカ
(72)【発明者】
【氏名】カネロプロス,ヴァシレイオス
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD11
4J128AD19
4J128AE15
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128BC25B
4J128CA28A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB09
4J128GB01
(57)【要約】
本開示は、オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する方法であって、オレフィン重合触媒の粒子を微小圧縮試験に付して、前記オレフィン重合触媒の前記粒子の破砕強度データを得て、前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定することを含む、上記の方法に関する。本開示は、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法であって、前記オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定すること、及び、前記オレフィン重合触媒の前記圧縮強度の決定から得られた情報から、前記オレフィン重合触媒の品質を評価することを含む、上記の方法に更に関する。本開示は、オレフィン重合プロセスにおけるオレフィン重合触媒の性能を、その圧縮強度記述子から予測する方法であって、前記オレフィン重合触媒の圧縮特性が、開示されているようにして決定されることを特徴とする上記の方法になお更に関する。その上、本開示は、オレフィン重合触媒であって、2超のワイブル係数を有する前記オレフィン重合触媒に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する方法であって、オレフィン重合触媒の粒子を微小圧縮試験に付して、前記オレフィン重合触媒の前記粒子の破砕強度データを得て、前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記オレフィン重合触媒の圧縮強度を得る為に、測定値の平均値を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定する為に、前記オレフィン重合触媒のワイブルパラメータが、破砕強度データのワイブル分布分析を実行することによって得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定する為に、
(a)前記オレフィン重合触媒のサンプル集団内の少なくとも10個の無作為に選択された個々の粒子の破砕強度を微小圧縮試験機で測定し、そして、その平均値を前記オレフィン重合触媒の圧縮強度として計算すること;及び、
(b)工程(a)において測定された前記破砕強度データから、ワイブル分布のスケールパラメータ及び前記ワイブル分布のワイブル係数を導出すること
オレフィン重合触媒の圧縮特性を測定すること
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記破砕強度が、圧縮試験機、好ましくは微小圧縮試験機、より好ましくは不活性条件下で操作される微小圧縮試験機、によって測定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィン重合触媒が、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含み、好ましくは支持体を含み、ここで、該支持体物質が、粘土及び無機酸化物、好ましくは層状化されたイオン交換シリケート、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ及び酸化チタンからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
オレフィン重合触媒の品質を評価する方法であって、
(o)請求項1~6のいずれか一項に記載のオレフィン重合触媒の圧縮特性を決定すること、及び、
(p)前記オレフィン重合触媒の前記圧縮強度の決定から得られた情報から、前記オレフィン重合触媒の品質を評価すること
を含む、前記方法。
【請求項8】
(p1)前記オレフィン重合触媒のサンプル集団内の少なくとも10個の無作為に選択された個々の粒子の個々の破砕強度を、微小圧縮試験機を用いて測定し、そして、得られた破砕強度データのワイブル分布分析を行うことによって、前記オレフィン重合触媒についてのワイブル係数及びワイブルスケールパラメータを導出すること;並びに、
(p2)ワイブル係数及び/又はワイブルスケールパラメータを、所定の個々の目標値と比較して、前記オレフィン重合触媒の品質を評価すること
を含む、請求項7に記載の、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法。
【請求項9】
(q)前記オレフィン触媒の粒子内の構造欠陥の粒子間分布をワイブル分布分析から見積もること
を含む、請求項7又は8に記載の、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法。
【請求項10】
(r)分析された前記重合触媒の1以上の圧縮強度記述子、例えば圧縮強度又は前記ワイブル分析の1以上のパラメータ、及び1以上の重合性能指標、好ましくは重合活性における変動、の間の関係を確立すること;又は、
(s)分析された前記重合触媒の1以上の圧縮強度記述子、例えば圧縮強度又は前記ワイブル分析の1以上のパラメータと、分析された前記重合触媒を用いてオレフィンモノマーを重合することによって得られるポリマー粉末の1以上の特性との間の関係を確立すること
を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法。
【請求項11】
前記圧縮強度記述子がワイブル係数である、請求項10又は11に記載の、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法。
【請求項12】
オレフィン重合プロセスにおけるオレフィン重合触媒の性能を、その圧縮強度記述子から予測する方法であって、前記オレフィン重合触媒の圧縮特性が、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によって決定されることを特徴とする前記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の、重合反応におけるオレフィン重合触媒の性能を予測する方法であって、
(x)前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定すること;及び、
(y)前記オレフィン重合触媒の圧縮特性の決定から得られた情報を評価することによって、前記オレフィン重合触媒の性能を予測すること
含む、前記方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の、重合反応におけるオレフィン重合触媒の性能を予測する方法であって、前記方法が、前記オレフィン重合触媒を用いてオレフィンモノマーを重合することによって得られるポリマー粉末の特性を予測する為に使用される、前記方法。
【請求項15】
(y1)前記触媒圧縮強度記述子、例えば圧縮強度又はワイブルパラメータ、と、前記重合触媒の物理的特性及び/又は機械的特性のうちの1以上の特性との間の関係を確立すること;並びに、前記関係から得られた情報を評価することによって、前記オレフィン重合触媒の性能を予測すること
を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法。
【請求項16】
(y2)請求項7~11のいずれか1項に記載のオレフィン重合触媒の品質を評価し、そして、前記オレフィン重合触媒の品質を評価することから得られた情報に基づいて、前記オレフィン重合触媒の性能を予測すること
を含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法。
【請求項17】
(y3)前記圧壊強度データのワイブル分布分析を行うこと;並びに、前記ワイブル分布の1以上のパラメータ又はそれらの任意の組み合わせを所定の目標値と比較して、前記オレフィン重合触媒の性能を予測すること
を含む、請求項12~16のいずれか1項に記載の、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法。
【請求項18】
オレフィン重合触媒であって、発明の詳細な説明の「ワイブル分布分析」において記載されている通りに決定された、2超、好ましくは2.5超、より好ましくは3超、典型的には2~10、好ましくは2.5~8.5、更に好ましくは3~8、のワイブル係数を有する前記オレフィン重合触媒。
【請求項19】
発明の詳細な説明の「ワイブル分布分析」において記載されている通りに決定された、6MPa超、好ましくは7MPa超、より好ましくは8MPa超、典型的には6~20MPa、好ましくは7~18MPa、より好ましくは8~15Mpa、のワイブルスケールパラメータを有する、請求項18に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項20】
微圧縮試験機で測定された場合に、少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは7~15MPa、の圧縮強度を有する、請求項18又は19に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項21】
前記オレフィン重合触媒が、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び(iii)支持体、好ましくはシリカ支持体、を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項22】
前記助触媒(ii)が、下記の式(ii-I)のアルミニウム含有化合物である、すなわち、式(ii)は式(ii-I)である、
【化1】
ここで、nは6~20であり、及びRは、C1~C10アルキル、好ましくはC1~C5アルキル、又はC3~C10シクロアルキル、C7~C12アリールアルキル若しくはアルキルアリール、及び/又はフェニル又はナフチルであり、
好ましくは、MAOであり;及び/又は、
前記遷移金属錯体(i)が、下記の式(i-II)を有する、
【化2】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族であり;
Lは-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であり;
各nは、1~2であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~1である、
請求項21に記載のオレフィン重合触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィン重合触媒粒子の特性決定に、より特には、オレフィン重合触媒の機械的特性を決定する為の主要な記述子を包含するところの、オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定すること、オレフィン重合触媒の品質の決定、及びオレフィン重合プロセスにおけるオレフィン重合触媒の性能を予測すること、に関する。本開示は、特定の圧縮強度記述子を有する重合触媒に更に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合触媒の重要な観点は、触媒を調製する為に使用される支持体物質(support material)の機械的特性からなる。特には、出発支持体物質の粘弾性特性は、重合プロセスにおける触媒の初期フラグメンテーション挙動並びに内部形態展開を決定し、ひいては重合反応の結果に影響するであろう。担体物質(carrier material)がもろすぎると、重合条件下での破砕速度が速すぎ、初期粒子のフラグメンテーションが制御できない故に微粉(fines)及び綿毛(fluff)が生じるであろう。該担体物質の強度が強すぎる場合には、重合条件下で容易に破断することができず、活性部位にアクセスすることができないこと、並びに反応物質内部の物質移動が制限されることが主に原因で、低い重合活性をもたらす。事実、初期に製剤化された触媒/ポリマーマクロ粒子は不規則な形状を示し、従って、外部からの物質移動と熱移動とに大きな制約を生じ、更には流動性にも大きな問題を生じる為に、重合反応器の貧弱な性能をもたらす。圧縮試験は、粉末サンプルからの個々の粒子の機械的挙動、例えば粘弾性特性又は破壊挙動を包含する上記の機械的挙動、を測定する為に一般的に使用される(例えば、Antonyuk等、Chemical Engineering Science 60 (2005) 4031~4044を参照)。具体的には、微小圧縮試験は、微小サイズの物体、例えば微小多孔質球状粒子を包含する上記の微小サイズの物体、の機械的強度を測定する為に、物質科学において広範に使用されている(例えば、Paul等、Advanced Powder Technology 25 (2014) 136~153を参照)。より具体的には、微小圧縮技術は、オレフィン重合触媒の開発において、例えばジアルコキシマグネシウム顆粒(米国特許第US8632882B2号明細書)、層状化されたイオン交換シリケート(日本国特許第JP2019172958号明細書、欧州特許第EP0874006B1号明細書、米国特許第US6353063号明細書又は欧州特許第EP1241188B1号明細書)又はシリカ(日本国特許公開公報第JP2017071741A号明細書)を用いて、オレフィン重合触媒の為の支持体として使用されるべき所与の担体材料についての適合性を評価する為に利用されてきている。しかしながら、前述された研究は、初期担体物質の機械的強度を、サンプル集団に対する一連の測定の平均値として決定することに限定されている。これは、最終的な触媒の実際の機械的強度を必ずしも反映するものでなく、且つ重合プロセスにおける最終的な性能及び操作性についてほとんど示唆を与えるものでない。
【0003】
一方、触媒粒子内部及び触媒粒子集団内の構造欠陥及び重合活性部位の分散が、オレフィン重合プロセス反応の間の重合反応器における触媒の最終性能に影響を及ぼすことは、科学文献及び特許文献において周知である。より具体的には、重合部位である触媒活性部位が触媒粒子内に均等に分散していると、新生ポリマーによって展開される応力が該粒子内に均等に分散される故に、触媒の均質なフラグメンテーションを結果として生じるであろう。その結果、触媒/ポリマー粒子の個々の粒子成長が均一となり、従って、該プロセスにおける狭い粒度分布の展開を生じる(小さなサイズの粒子と大きなサイズの粒子が存在しない)。
【0004】
例えば、国特許第US7754834B2号明細書は、重合反応器内に存在する触媒にオレフィンモノマーを連続的に暴露することによってポリマー粒子が形成されることを教示し、ここで、該ポリマー粒子は、触媒粒子の活性部位における「マイクロ粒子クラスター」(micro-particle clusters)の初期形成から成長する。これらの微粒子クラスターが成長するにつれて、成長する一次ポリマー粒子間に空隙が生成され、それは最終的にポリマー粒子体積の10~25%を占める。最終ポリマー粒子中にこのような空隙が存在することにより、ポリマー粉末の嵩密度の低下を生じる。ポリマー粉末の嵩密度の低下により一般的に、重合プラントでの生成スループットが低下すること、操作性の問題、例えば、微粉の形成、材料の流動性の低下、過度のキャリーオーバ、につながり、一般的に重合反応器のシーティング(sheeting)及びチャンキング(chunking)をもたらす物質移動と熱移動との制限に関連付けられる。
【0005】
操作の間の重合反応器におけるシーティング及び/又はチャンキングを低減する為の試みにおいて、国際公開公報第WO28212852A1号パンフレットは、300~1500Åの範囲における孔径及び/又は700m2/g未満のBET比表面積を有するところの孔の10~80体積%を有する支持体から調製されたオレフィン重合触媒組成物が、支持体物質全体によって均一に分散された触媒成分を示すことを開示する。しかしながら、該支持体物質内の触媒成分の分散は、XPSによる触媒の表面と内部との間のアルミニウム含有量の差として評価されるだけであり、それは、該粒子内の触媒的に活性な成分の実際の分散を評価する為の定性的な方法である。この開示を裏付ける為の、該支持体全体のアルミニウム分散の実測値は報告されていない。
【0006】
同様に、国際公開公報第WO2016176135A1号パンフレットは、重合反応器の操作性の貧弱さはしばしば、支持体孔ネットワーク内の触媒活性サイトの不均一な分散に起因することを教示する。本発明者等は、1.23mL/gまでのマクロ孔容積を有する支持された触媒組成物を使用することにより、良好な触媒流動性を示し、且つ反応器の高められた操作性を提供することを主張する。しかしながら、重合における触媒性能と実際の操作性の向上を確認することを可能にする重合データは開示されていない。
【0007】
操作の間の重合反応器におけるシーティング及び/又はチャンキングを低減する為の同等の試みにおいて、国際公開公報第WO2018175071A1号パンフレットは、0.15~0.50mL/gの範囲のマクロ孔率を有する支持体から調製されたオレフィン触媒組成物が、支持体物質上及び/又は支持体物質中での触媒成分の堆積の増加を結果としてもたらすことを開示する。本発明者等は、そのような支持体を使用することにより、重合の間の重合反応器内でのシーティング及び/又はチャンキングが減少することを主張する。しかしながら、触媒活性又は結果として得られるポリマー粉末の嵩密度の改善が提供されることについては示されていない。
【0008】
米国特許第US7244785B2号明細書は、固体ポリマー化合物、例えばアルミノキサン、が活性剤として使用される場合に、触媒調製の間の活性剤の担持量(loading)が触媒の生産性と得られるポリマー粉末の嵩密度に直接影響すること:該触媒調製におけるアルミノキサン活性剤の担持量が高いほど、生産性と嵩密度とが高くなること、を開示する。しかしながら、本発明者等の報告によると、アルミノキサン担持量が6.40モルMAO/gシリカを超えると、反応媒体中への活性種の溶出の故に、重合反応器壁面上にファウリング(fouling)が発生し始めるであろう。より高いアルミノキサン担持量でのこのファウリング現象は、本発明者等が触媒系の潜在能力を最大限に活用してポリマー粉末の高い嵩密度で最大の触媒生産性を達成することを妨げる。
【0009】
オレフィン重合における触媒の性能に対する粒子の機械的強度の影響に関する研究は、これまでのところ、周囲条件下での担体物質の機械的強度の測定に限られている。しかしながら、所定の材料、例えばシリカ又はアルミナ、からなる球状粒子内部の孔及び空隙のネットワークからなる多孔質粒子の機械的強度は、構造欠陥(孔径分布、孔の連結性によって並びに孔の蛇行性によってまた特徴付けられる)の存在(Kanellopoulos等,2007「Evaluation of the Internal Particle Morphology in Catalytic Gas-Phase Olefin Polymerisation Reactors」,Ind.Eng.Chem.Res.2007,46,1928~1937を参照)、構造欠陥の性質及び大きさ、並びに球状粒子内部の分散に大きく依存することは、当技術分野において周知である。
【0010】
結論的に言えば、粒子内部の構造欠陥とそれらの分布は、孔構造(開孔、閉孔、チャネル又は空洞)、孔径(ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔)、並びに孔径分布の観点から記述されることができる。有機金属遷移金属錯体、オリゴマーアルミノキサン活性剤、及び無機酸化物微小球状多孔質支持体から調製されるシングルサイト触媒の具体的な場合に、最終的な触媒粒子の孔構造は、出発担体材料の孔構造、担体表面に担持される化学物質の性質と量、及び触媒調製時に使用される操作条件によって規定される。
【0011】
例えば、国際公開公報第WO2016176135A1号パンフレットは、メチルアルミノキサンが活性化剤として使用される場合に、最終的な触媒の孔率は出発支持体物質の孔率とは異なり、及び触媒調製の間に適用される条件によ依存して変化することを示す。それ故に、有機金属遷移金属錯体、オリゴマーアルミノキサン活性剤及び無機酸化物微小球状多孔質担体から調製されるシングルサイト触媒粒子内部の構造欠陥及びそれらの分布は、該支持体の表面上に装填される化学物質の性質及び量、並びに触媒調製の間に使用される操作条件によって規定されるであろうと推測するのが妥当である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示の目的は、マイクロサイズの粒子状オレフィン重合触媒を特性評価すること、そして、上記の制限を克服するように、本発明の方法によって導出されるオレフィン重合条件下でオレフィン重合触媒としてのその性能を予測することを可能にすることである。
【0013】
本開示の目的は、オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する方法、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法、及びオレフィン重合触媒によって達成され、これらの方法は、独立請求項において記載されている構成によって特徴付けられる。本開示の好ましい実施態様は、従属請求項において開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、微小圧縮試験によってオレフィン重合触媒粒子の圧縮特性を決定するという考えに基づく。また、得られた圧縮強度データのワイブル分布分析によって、触媒粒子内の構造欠陥の粒子間分布が見積もられることができ、ひいては、粒子の集団内の触媒成分の分布の均一性を評価する為の効率的な方法であることが判った。更に、微小圧縮試験から得られた情報は、重合性能指標(polymerisation performance indicators)、例えば、所与の触媒についての重合活性における変動、と相関させることができることが判った。
【0015】
以下において、添付図面を参照しながら、好ましい実施態様によって本開示がより詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、1群のオレフィン重合触媒についてのワイブル分布分析を示す。
図2図2は、1群のオレフィン重合触媒についてのワイブルスケールとMAO装填量(loading)との関係を示す。
図3図3は、1群のオレフィン重合触媒についてのワイブル係数とMAO装填量との関係を示す。
図4図4は、1群のオレフィン重合触媒についての触媒活性とMAO装填量との関係を示す。
図5図5は、MAO装填量に対する触媒活性の標準偏差を示す。
図6図6は、1群のオレフィン重合触媒についてのワイブル係数に対する触媒活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定すること、及び前記オレフィン重合触媒の品質を評価する際に得られた情報を利用すること、そして、前記オレフィン重合プロセスにおいてその性能を予測することに関する。
【0018】
本明細書において使用される場合に、語「圧縮特性」(compressive character)は、物質に施与される圧縮応力に対する耐性に関連し、この特性を測定することによって得られる1以上のパラメータ、すなわち圧縮強度記述子(compressive strength descriptors)、における該物質の機械的強度の表現を云う。
【0019】
本明細書において使用される場合に、語「破砕強度」(crushing strength)は、脆性固体が破壊すること無しに耐えることができるところの最大の圧縮応力を云う。本開示の文脈内で使用される場合に、それは特には、本明細書において論じられているような不活性雰囲気下での微小圧縮試験において、本発明のオレフィン重合触媒の個々の粒子に付される応力に対して該本発明のオレフィン重合触媒の個々の粒子が耐えることができる能力を云う。
【0020】
本明細書において且つ本明細書の以下において使用される場合に、語「圧縮強度」(compressive strength)は、物質の特性としての機械的強度の特徴を云う。本出願の文脈内で使用される場合に、それは、本明細において論じられているように、本発明のオレフィン重合触媒の多数の粒子の測定された破砕強度(crushing strength)の平均を云う。
【0021】
本開示は、オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する方法であって、オレフィン重合触媒の粒子を微小圧縮試験に付して、前記オレフィン重合触媒の前記粒子の破砕強度データを得て、前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定することを含む、上記の方法に関する。
【0022】
圧縮特性、例えば、本明細書及び本明細書の以降において説明されるオレフィン重合触媒の圧縮強度及びワイブルパラメータを包含する上記の圧縮特性、を決定する本発明の方法は、オレフィン重合触媒における品質を評価する為の且つオレフィン重合プロセスにおけるその性能を予測する為の非常に効率的な特性評価方法である。
【0023】
破砕強度(Crushing strength
【0024】
本開示の方法は、分析されたオレフィン重合触媒の粒子の破砕強度を決定することに依拠する。
【0025】
該破砕強度は、任意の10個以上の粒子、例えば正確に10個の粒子、の個々の破砕強度を測定して破砕強度データを得ることによって決定されうる。
【0026】
該オレフィン重合触媒粒子の破砕強度の決定は、不活性雰囲気下、圧縮試験、例えば微小圧縮試験、によって、効率的に行われることができる。
【0027】
例示的な実施態様において、任意の10個以上の粒子の個々の破砕強度は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機MCT-510を用いて測定される。
【0028】
圧縮強度(Compressive strength)
【0029】
次に、個々のオレフィン重合触媒粒子から得られた破砕強度データは、分測定値の平均値を計算して、分析されたオレフィン重合触媒の圧縮強度を提供する為に使用されることができる。該測定値の該平均値は、好ましくは統計的外れ値を除去した後に算出される。
【0030】
ワイブル分布分析
【0031】
好ましくは、本発明の方法において、該圧縮特性は、分析された重合触媒の粒子の破砕強度データのワイブル分布分析を導出することによって決定される。該圧縮強度データのワイブル分析は、標準的な統計分析ソフトウェア、例えばMinitab、Excel又はOrigin、を使用して行われうる。
【0032】
該ワイブル分布は、サンプル集団内の脆性材料の破壊機械的強度におけるばらつきを記述する為に、材料科学において一般的に使用されている。圧縮試験におけるワイブル分析の2つの特徴的なパラメータは、ワイブル係数及び圧縮強度である。該ワイブル係数は無次元のパラメータであり、それは、サンプル集団の単一粒子内の測定された圧縮強度の分布におけるばらつきを記述する。該ワイブル係数は、該ワイブル分布の形状パラメータに相当する。
【0033】
圧縮試験において、該ワイブル分布のスケールパラメータは、該サンプル集団の代表的な単一粒子の圧縮強度を記述し、且つMPa単位で表される。
【0034】
低いワイブル係数は、該サンプル集団内において、測定された機械的強度における大きいばらつきに対応し、及び材料中の構造的欠陥の不均一な分布を示し、結果として、応力下での不均一な破壊挙動を生じる。一方、高いワイブル係数は、該材料中の欠陥の分布が均一に分布していることを示し、結果として、応力下での均一な破断挙動を生じる。高いスケールパラメータは、粒子強度が高いサンプルに対応する。低いスケールパラメータは、粒子強度が低いサンプルに対応する。
【0035】
該ワイブル分布の両パラメータの使用は、研究材料の最終的な特性を記述する為に本発明の方法において好ましく、ここで、オレフィン重合触媒粒子の場合には、両パラメータが重合挙動と最終ポリマー粉末の特性に影響を与えるだろう。
【0036】
従って、本発明の方法の1つの実施態様において、本方法は、オレフィン重合触媒の圧縮特性を決定する為に、オレフィン重合触媒のワイブル分布のスケールパラメータ及びワイブル係数を破砕強度データから導出することを含む。
【0037】
オレフィン重合触媒の品質の評価
【0038】
本開示は、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法であって、
(o)本明細書において論じられているオレフィン重合触媒の圧縮特性を決定すること、及び、
(p)前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性の決定から得られた情報から、前記オレフィン重合触媒の品質を評価すること
を含む、上記の方法を提供する。
【0039】
明細書及び本明細書の以降において使用される場合に、語「品質」は、本発明のオレフィン重合触媒によって有される1以上の特徴及び/又は特性、特にはオレフィン重合プロセスにおいて許容されるその性能を発揮する能力に関連して本発明のオレフィン重合触媒によって有される1以上の特徴及び/又は特性、を云う。特には、所望の品質は、その機械的特性によって定義される円滑なフラグメンテーションに対するオレフィン重合触媒の感受性を包含する。品質を評価する為の方法の結果は、オレフィン重合プロセスのオレフィン重合及び/又はプロセス操作条件の選択を決定する為に、特には予備重合工程の間に、好ましくは前記プロセス内の制御可能なフラグメンテーション工程を保証する為に、使用されうる。
【0040】
典型的には、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法は、オレフィン重合触媒のサンプル集団内の少なくとも10個の無作為に選択された個々の粒子の個々の破砕強度を微小圧縮試験機を用いて測定し、そして、得られた破砕強度データのワイブル分布分析を、好ましくは統計的外れ値を除去した後に、行うことによって、該オレフィン重合触媒についてのワイブル係数及びワイブルスケールパラメータを導出することによって達成される。
【0041】
特定の実施例において、支持化された重合触媒(supported polymerization catalyst)の品質を評価する方法は、ワイブル分布分析の1以上のパラメータを所定の目標値と比較することを含む。具体例において、本方法は、オレフィン重合触媒の品質を評価する為に、ワイブル係数及び/又はワイブルスケールパラメータを個々の所定の目標値と比較することを含む。
【0042】
従って、1つの実施態様において、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法は、
(p1)前記オレフィン重合触媒のサンプル集団内の少なくとも10個の無作為に選択された個々の粒子の個々の破砕強度を、微小圧縮試験機を用いて測定し、そして、得られた破砕強度データのワイブル分布分析を行うことによって、前記オレフィン重合触媒についてのワイブル係数及びワイブルスケールパラメータを導出すること;並びに、
(p2)前記ワイブル係数及び/又は前記ワイブルスケールパラメータを、所定の個々の目標値と比較して、前記オレフィン重合触媒の品質を評価すること
を含む。
【0043】
触媒粒子内の構造欠陥の粒子間分布は、得られた破砕強度データのワイブル分布のワイブル係数によって見積もられることができる。このことは、粒子の集団内の触媒成分分布の均一性を評価する効率的な方法である。その上、微小圧縮試験から得られた情報は、重合性能指標、例えば、所与の触媒の重合活性における変動、と相関させることができる。
【0044】
従って、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法は好ましくは、(q)ワオレフィン重合触媒の粒子における構造欠陥の粒子間分布をワイブル分布分析から見積もることを含む。
【0045】
その上、オレフィン重合触媒の品質を評価するための本発明の方法は好ましくは、(r)分析された前記重合触媒の1以上の圧縮強度記述子、例えば圧縮強度又は前記ワイブル分析の1以上のパラメータ、特にワイブル係数と、1以上の重合性能指標、例えば、重合実験の繰り返し回数についての重合活性及び/又は重合活性における変動、好ましくは重合活性における変動、の間の関係を確立することを含む。
【0046】
本明細書において使用される場合に、語「関係」は、オレフィン重合触媒の言及された特性及び/又は重合性能指標の間の、状況的な及び/又は因果的な、好ましくは因果的な、関連及び/又は相関関係を云う。
【0047】
なお更には、オレフィン重合触媒の品質を評価する方法は、(s)分析された前記重合触媒の1以上の圧縮強度記述子、例えば圧縮強度又は前記ワイブル分析の1以上のパラメータ、特にワイブル係数、と、分析された前記重合触媒を用いてオレフィンモノマーを重合することによって得られるポリマー粉末の1以上の特性との間の関係を確立することを含む。
【0048】
オレフィン重合触媒の予測する性能
【0049】
本明細書は更に、オレフィン重合プロセスにおけるオレフィン重合触媒の性能を予測する方法であって、ここで、該オレフィン重合触媒の圧縮強度が、本明細書において論じられているように決定される、上記の方法を提供する。
【0050】
典型的には、本明細書において論じられている重合反応におけるオレフィン重合触媒の性能を予測する方法は、
(x)前記オレフィン重合触媒の前記圧縮特性を決定すること;及び、
(y)前記オレフィン重合触媒の圧縮特性の決定から得られた情報を評価することによって、前記オレフィン重合触媒の性能を予測すること
を含む。
【0051】
その上、重合反応におけるオレフィン重合触媒の性能を予測する方法は、オレフィン重合触媒を用いてオレフィンモノマーを重合することによって得られるポリマー粉末の特性を予測する為に使用されうる。
【0052】
該方法は特には、例えば、オレフィンモノマー、任意的にオレフィンコモノマーの存在下、重合反応器において、任意的に直列の複数の重合反応器において、粒子状のオレフィン重合触媒の存在下で、オレフィンモノマーを重合することによって得られるポリマー粉末の嵩密度及び/又は粒度分布を予測することを可能にする。該嵩密度はまた、反応器のスループットと操作性とを決定する重要な操作パラメータであるところの流動化された嵩密度を予測する為に利用されうる。
【0053】
1つの実施態様において、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法は、(y1)前記触媒圧縮強度記述子、例えば圧縮強度又はワイブルパラメータ、と、前記重合触媒の物理的特性及び/又は機械的特性のうちの1以上の特性との間の関係を確立すること;並びに、前記関係から得られた情報を評価することによって、前記オレフィン重合触媒の性能を予測することを含む。
【0054】
前記重合触媒の物理的特性及び/又は機械的特性のうちの1以上の特性は、粒径、粒径分布、密度、並びに、微細構造、例えば、結晶質画分及び非晶質画分を包含する上記の微細構造、比表面積、孔率、孔容積、孔径、孔径分布、孔形状、孔ネットワークの屈曲度、並びに孔連結性からなる群から選択されうる。
【0055】
更なる実施態様において、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法は、(y2)本明細書において論じられているように、オレフィン重合触媒の品質を評価し、そして、前記オレフィン重合触媒の品質を評価することから得られた情報に基づいて、該オレフィン重合触媒の性能を予測することを含む。
【0056】
オレフィン重合触媒の性能を予測する方法は好ましくは、(y3)前記圧壊強度データのワイブル分布分析を行うこと;並びに、前記ワイブル分布の1以上のパラメータ又はそれらの任意の組み合わせを所定の目標値と比較して、前記オレフィン重合触媒の性能を予測することを更に含む。
【0057】
特定の例において、オレフィン重合触媒の性能を予測する方法は好ましくは、(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積及び(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比を決定すること;並びに、(ワイブル係数)×(スケールパラメータ)積及び(ワイブル係数)/(スケールパラメータ)比を夫々の所定の目標値と比較して、重合反応の間の該オレフィン重合触媒の性能を予測することを含む。
【0058】
オレフィン重合触媒
【0059】
本開示のオレフィン重合触媒は通常、シングルサイト触媒である。シングルサイト触媒は典型的には、(i)遷移金属錯体、(ii)助触媒、及び任意的に、(iii)支持体を含む。
【0060】
本発明の方法により、2超、好ましくは2.5超、より好ましくは3超、典型的には2~10、好ましくは2.5~8.5、更に好ましくは3~8、のワイブル係数を有するオレフィン重合触媒が、オレフィン重合プロセスにおいて優れた性能を提供することが、驚くべきことに確認された。
【0061】
該オレフィン重合触媒は更に、好ましくは、6MPa超、好ましくは7MPa超、より好ましくは8MPav、典型的には6~20MPa、好ましくは7~18MPa、より好ましくは8~15MPa、のワイブルスケールパラメータを有する。
【0062】
該オレフィン重合触媒の粒子の圧縮強度は、本明細書において論じられているような微小圧縮試験機で測定して少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは7~15MPa、であることが更に好ましい。
【0063】
遷移金属錯体(i)
【0064】
該遷移金属錯体は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族の遷移金属(M)、又はアクチニド若しくはランタニドの遷移金属(M)を含む。
【0065】
本発明に従う場合に、語「遷移金属錯体」は、遷移金属の任意のメタロセン又は非メタロセン化合物を包含し、それは、少なくとも1つの有機(配位(coordination))リガンドを有し且つ単独で又は助触媒と共に触媒活性を有する。該遷移金属化合物は当技術分野において周知であり、及び本発明は、周期律表(IUPAC 2007)の第3族~第10族、例えば第3族~第7族、又は第3族~第6族、例えば第4族~第6族、並びにランタニド又はアクチニドからの金属の化合物をカバーする。
【0066】
1つの実施態様において、該遷移金属錯体(i)は下記の式(i-I)を有するものである:
(L)mRnMXq (i-I)
ここで、
「M」は周期表(IUPAC 2007)の第3~第10族の遷移金属(M)であり、
各「X」は独立して、モノアニオン性リガンド、例えばσ-リガンド、であり、
各「L」は独立して、遷移金属「M」に配位する有機リガンドであり、
「R」は、複数の該有機リガンド(L)を連結する架橋基であり、
「m」は、1、2又は3であり、好ましくは2であり、
「n」は、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、
「q」は、1、2又は3であり、好ましくは2であり、及び、
m+qは、該遷移金属(M)の原子価に等しい。
【0067】
「M」は好ましくは、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、又はチタン(Ti)からなる群より選択され、より好ましくはジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)からなる群より選択される。「X」は好ましくはハロゲンであり、最も好ましくはClである。
【0068】
最も好ましくは、遷移金属錯体(i)は、メタロセン錯体であり、それは上記で定義されているような遷移金属化合物を含み、それは、置換基「L」としてシクロペンタジエニルリガンド、インデニルリガンド又はフルオレニルリガンドを含む、更に、該リガンド「L」は、1以上の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基又は他のヘテロ原子基等、を有していてもよい。好適なメタロセン触媒は当技術分野において知られており、とりわけ、国際公開第WO-A-95/12622、国際公開第WO-A-96/32423号パンフレット、国際公開第WO-A-97/28170号パンフレット、国際公開第WO-A-98/32776号パンフレット、国際公開第WO-A-99/61489号パンフレット、国際公開第WO-A-03/010208号パンフレット、国際公開第WO-A-03/051934号パンフレット、国際公開第WO-A-03/051514号パンフレット、国際公開第WO-A-2004/085499号パンフレット、欧州特許出願公開第EP-A-1752462号明細書及び欧州特許出願公開第EP-A-1739103号明細書において開示されている。
【0069】
別の実施態様において、該遷移金属錯体(i)は、下記の式(i-II)を有するものである:
【化1】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
各Hetは独立して、O原子又はS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環式のヘテロ芳香族であり;
Lは、-R'2Si-であり、ここで、各R’は独立して、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい、C1~20ヒドロカルビル又はC1~10アルキルであり;
Mは、Ti、Zr又はHfであり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、又はC1~6アルコキシ基であり;
各nは、1~2であり;
各R2は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又は-Si(R)3基であり;
各Rは、C1~10アルキル基、又は1~3個のC1~6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基であり;並びに、
各pは、0~1である。
【0070】
好ましくは、式(i-II)の化合物は、下記の構造(i-III)を有するものである:
【化2】
ここで、各Xは独立して、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは、Me2Si-であり;
各R1は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、C1~6アルキル基、例えば、メチル又はt-Bu、であり;
各nは、1~2であり;
R2は、-Si(R)3アルキル基であり;
各pは1であり;
各Rは、C1~6アルキル基又はフェニル基である。
【0071】
助触媒(ii)
【0072】
重合触媒を形成する為に、当技術分野において周知であるように、活性化剤としてまた知られている助触媒が使用される。Al又はBを含む助触媒は周知であり、本明細書において使用されることができる。アルミノキサン(例えばMAO)又はホウ素ベースの助触媒(例えばホウ酸塩)の使用が好ましい。
【0073】
本発明に従うと、第13族元素を含む助触媒、例えば、ホウ素含有助触媒又はAl含有助触媒、が必要とされる。上記で定義されたメタロセン触媒錯体と組み合わせてアルミノキサン助触媒を使用することが最も好ましい。
【0074】
該アルモキサン助触媒は、下記の式(ii-I)のものであることができる:
【化3】
ここで、nは6~20であり、及びRは下記の意味を有する。
【0075】
アルミノキサンは、例えば、有機アルミニウム化合物の部分的加水分解、例えば式AlR3、AlR2Y及びAl2R3Y3の部分的加水分解、によって形成され、ここで、Rは例えば、C1~C10アルキル、好ましくはC1~C5アルキル、又はC3~C10シクロアルキル、C7~C12アリールアルキル若しくはアルキルアリール、及び/又はフェニル若しくはナフチルであることができ、ここで、Yは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子又は臭素原子、又はC1~C10アルコキシ基、好ましくはメトキシ又はエトキシ、である。結果として得られる酸素含有アルミノキサンは、一般的に純粋な化合物でなく、該式(ii-I)のオリゴマーの組み合わせである。
【0076】
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。助触媒として本発明に従って使用されるアルミノキサンは、その調製様式により純粋な化合物ではない故に、本明細書の以下において、アルミノキサン溶液のモル比はそれらのアルミニウム含有量に基づく。
【0077】
ホウ素含有助触媒がまた使用されてもよく、任意的にアルミノキサン助触媒と組み合わせて使用されてもよい。
【0078】
関心のあるホウ素含有助触媒は、下記の式(ii-II)のものを包含する。
BY3 (ii-II)
ここで、Yは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、水素原子、1~約20個の炭素原子のアルキル基;6~約15個の炭素原子のアリール基;アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル又はハロアリール、ここで、これらの各々は、アルキルラジカル中に1~10個の炭素原子を有し、及び該アリールラジカル中に6~20個の炭素原子を有する;又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子である。Yの好ましい例は、フッ素原子、トリフルオロメチル、芳香族フッ素化基、例えばp-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0079】
特に好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0080】
しかしながら、ホウ酸塩、すなわちホウ酸塩を含む化合物、を使用することが好ましい。
【0081】
これらの化合物は一般的に、下記の式(ii-III)のアニオンを含む:
(Z)4B- (ii-III)
ここで、Zは、置換されていてもよいフェニル誘導体であり、ここで、該置換基はハロ-C1~6アルキル又はハロ基である。好ましい選択肢は、フルオロ又はトリフルオロメチルである。最も好ましくは、該フェニル基が、パーフッ素化されている。
【0082】
そのようなイオン性助触媒は好ましくは、弱く配位するアニオン(weakly-coordinating anion)、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はテトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、である。
【0083】
好適なカチオン性対イオンは、トリフェニルカルベニウムを包含し、且つプロトン化されたアミン又はアニリンの誘導体、例えば、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム、又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムである。
【0084】
本発明に従って使用されうる好ましいイオン性化化合物は、下記を包含する:
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0085】
好ましくは、下記が与えられる:
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0086】
本発明において使用する好ましいボレートは、トリチル、すなわちトリフェニルカルベニウムイオン、を含む。それ故に、Ph3CB(PhF5)4及びそれらの類似体の使用が特に好まれる。
【0087】
助触媒の適切な量は、当業者にとって周知であろう。
【0088】
好ましくは、助触媒の量は定義されたモル比未満になるように選択される。
【0089】
ホウ素含有触媒の場合に、メタロセンホウ素/Mの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)に対するホウ素(B)の供給量のモル比は、0.1:1~10:1モル/モル、好ましくは0.3:1~7:1モル/モル、特には0.3:1~5:1モル/モル、の範囲でありうる。
【0090】
更に好ましくは、メタロセンホウ素/Mの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)に対するホウ素(B)の供給量のモル比は、0.3:1~3:1である。
【0091】
メタロセンAl/Mの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)に対するアルミノキサンからのAlのモル比は、1:1~2000:1モル/モル、好ましくは10:1~1000:1モル/モル、より好ましくは50:1~600:1モル/モル、の範囲であってもよい。
【0092】
支持体(iii)
【0093】
本発明の重合触媒は、国際公開第WO03/051934号パンフレットのプロトコールに従って製造された固体であるが非支持形態の形態であってもよい。本発明の重合触媒は好ましくは、固体支持形態である。使用される粒子支持体物質は、無機多孔質支持体、例えば粘土、例えば層状化されたイオン交換シリケート、又は無機酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ若しくは酸化チタン、であってもよい。好ましくは、該粒子支持体物質は、シリカ、アルミナ、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、特にはシリカ、からなる群から選択される。
【0094】
シリカ担体の使用が好ましい。
【0095】
特には好ましくは、該支持体は多孔質材であり、従って、例えば、国際公開第WO94/14856号パンフレット、国際公開第WO95/12622号パンフレット、国際公開第WO2006/097497号パンフレット及び欧州特許第EP1828266明細書において記載されているような類似のプロセスを用いて、錯体が該粒子支持体の孔内に担持されうる。
【0096】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均粒径は典型的には、10~100μmであることができる。平均粒径(すなわちメジアン粒径,D50)は、レーザー回折式粒径分析器Malvern Mastersizer 3000を用いて決定されうる(サンプル分散物:乾燥粉末)。
【0097】
支持体、例えばシリカ支持体、の平均孔径は10~100nmの範囲であることができ、孔容積は1~3mL/gであることができる。
【0098】
好適な支持体物質の例は、例えば、PQ Corporationによって製造販売されているES757、Graceによって製造販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Coによって製造販売されているSUNSPERA DM-L-303シリカがある。支持体は、最適なシラノール基含量に達する為に、触媒調製において使用する前に任意に焼成されることができる。
【0099】
典型的に、該触媒は、支持体、例えばシリカ、の1g当たり5~500μmol、例えば10~100μmol、の遷移金属、及び支持体、例えばシリカ、の1g当たり3~15mmolのAlを含むことができる。
【0100】
実施例
【0101】
表面積295m2/g、孔容積1.6mL/g、平均孔直径216Å及びメジアン粒子径25μmを有するシリカ担体をベースとする一連のメタロセン触媒が調製され、ここで、rac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリドメタロセン及びメチルアルミノキサン活性化剤の装填量が変化され、触媒調製の間に合成反応器へのメチルアルミノキサンの装填量が変化された。得られた触媒は、ICP-OESによってそれらの元素組成を分析し、そして、それらの機械的強度が微小圧縮試験を用いて触媒粒子の圧縮強度として測定された。
【0102】
化学物質及び原材料
【0103】
メチルアルミノキサン(トルエン中の30重量% MAO溶液,Axion CA 1330)が、Lanxessから購入された。
【0104】
rac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリドメタロセンは、米国特許第US6326493B1号明細書において開示されている既知の手順に従って合成された。
【0105】
比較例1
【0106】
前処理されたシリカは、PQ Corpから入手された市販の合成非晶質シリカES757である。該前処理とは、慣用的なPO触媒技術に従ってシリカを600℃で商業焼成することを云う。
【0107】
触媒の調製(表1A及び表1B並びに表2における実施例1~5)
【0108】
前処理された担体は、PQ Corpから市販品として入手された合成非晶質シリカである。該前処理とは、慣用的な技術に従ってシリカを600℃で商業焼成することを云う。
【0109】
全ての操作は、標準的なシュレンク(Schlenk)技術とグローブボックス(glovebox)技術を用いて、窒素の不活性雰囲気下で行われる。
【0110】
接触前混合物(pre-contact mixture)、すなわち、70μmolのrac-ジメチルシランジイルビス{2-(5-(トリメチルシリル)フラン-2-イル)-4,5-ジメチルシクロペンタジエン-1-イル}ジルコニウムジクロリドメタロセンが、表1において描かれているように、メチルアルミノキサンの目標装填量に一致するように設定された(トルエン中の30重量%MAO溶液として14ミリモルのAl)メチルアルミノキサンの所望の体積で溶解され、そして、総体積2.45mLに達するように追加容量のトルエンが加えられることによって得られる上記の接触前混合物。混合物がガラスバイアル中で1時間撹拌される。次に、得られた溶液が、室温で緩やかな機械的攪拌下、ガラス反応器中で、前処理されたシリカ担体1.0gに5分以内に滴下される。次に、粗触媒が1時間穏やかに更に混合され、更に17時間放置される。次に、該触媒が60℃で30分間真空乾燥される。
【0111】
【表1A】
【0112】
【表1B】
【0113】
触媒分析及び特性評価
【0114】
ICP-OESによる固体触媒成分中のAl及びZr含有量
【0115】
グローブボックスにおいて、触媒のアリコート(約40mg)が分析天秤を用いてガラス製計量ボート(glass weighing boat)内に秤量される。次に、吸気口を備えたスチール製の第2の容器内にサンプルが入れられ、一晩空気に曝露される。次に、5mLの濃硝酸(65%)がXpress電子レンジ容器(20mL)内に入れられ、ボートの中身を濯ぐ為に使用される。次に、20分以内に150℃まで昇温し、150℃で35分間保持するところのMARS 6実験室用マイクロ波ユニットを使用して、サンプルがマイクロ波アシスト酸分解(microwave-assisted acid digestion)に付される。消化されたサンプル(digested sample)は室温まで冷やされ、そして次に、プラスチック製の100mLメスフラスコ内に移される。1000mg/Lのイットリウムを含む標準溶液(0.4mL)が加えられる。次に、フラスコは蒸留水で満たされ、そして、振とうされる。溶液が0.45μmのナイロンシリンジフィルターを通じてろ過され、そして、Thermo iCAP 6300 ICP-OES及びiTEVAソフトウェアを用いて分析に付される。
【0116】
該機器は、ブランク(濃硝酸から調製された5%のHNO3溶液)と、溶液中のAl及びZrの0.005mg/L、0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L及び100mg/Lの6種類の標準物質を使用して、Al及びZrについて較正される。該溶液は、5%のHNO3(濃硝酸)、4mg/LのY標準を蒸留水中に含む。プラスチック製メスフラスコが使用される。曲線フィッティングと1/濃度重み付けが、検量線の為に使用される。分析の直前に、ブランクと、蒸留水中の4mg/LのYと5%の濃硝酸HNO3を含む10mg/LのAlとZrの標準サンプルを用いて、検量線が検証され、そして調整される(機器の再勾配機能(re-slope function))。再勾配を確認する為に、品質管理サンプル(QC:1mg/L Al;2mg/L Zr及び4mg/L Y,蒸留水中の濃硝酸5%のHNO3溶液)について行われる。QCサンプルについて、スケジューリングされた分析セットの最後でまた行われる。
【0117】
Zrの含有量は339.198nmの波長線を用いてモニターされる。Alの含有量は394.401nmの波長線を解してモニターされる。Y 371.030nmが内部標準として使用される。報告された値は、触媒アリコート(catalyst aliquot)の元の質量と希釈量とを用いて、元の触媒サンプルまで遡って計算されたものである。
【0118】
破砕強度(crushing strength)
実施例における材料の破砕強度(crushing strength)は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機MCT-510を用いて決定された。該サンプル材料は下部の圧縮プレート上に分散され、そこから分離された粒子が光学顕微鏡を使用して測定の為に選択された。粒子の直径は顕微鏡ソフトウェアツールを用いて測定された。該選択されたサンプル粒子は、粒子が破断するか又は設定された最大力が達成されるまで、荷重を常に増加させながら圧縮された。該物質の破砕強度は、粒子が破砕する時点での最大圧縮荷重と粒子直径とによって決定された。測定は不活性条件下、荷重速度0.4462mN/秒及び最大荷重40mNで行われた。無作為に選択された10個の粒子の破砕強度が測定され、そして、平均値が、統計的外れ値を除去した後の圧縮強度(compressive strength)として報告された。
【0119】
ワイブル分布分析は、市販の統計解析ソフト、例えばMiniTab又はOrigin、を使用することによって、個々の粒子データから行われた。
【0120】
パラレル圧力反応器(PPR:Parallel Pressure Reactor)重合実験
PPR反応器は、80psiのエチレンで10回フラッシングすることによって予備調整された。フラッシング後、該反応器は無加圧のまま放置された。
【0121】
5μmolのTIBAがスカベンジャーとして正確な量のコモノマーと共に添加されて、重合工程でC6/C2比が50モル/キロモルに達するようにされた。ヘプタンが総容量4.1mlに達するように反応器に加えられた。溶媒の添加は、約26℃のグローブボックスの周囲温度で行われた。次に、リークの有無を確認する為に、エチレンを用いて反応器が40psiまで加圧された。該リークが修正された後に、該反応器の攪拌が開始され、そして、液相におけるエチレン濃度を安定させる為に反応器圧力が40psiで3分間制御された。
【0122】
反応器温度が重合温度85℃まで上昇され、そして、温度及び圧力が安定化されて定常状態に達された。この後、圧力制御がオンにされ、そして、該反応器が最終重合圧力まで加圧された。該反応器の条件が安定化され、そして、もう一度定常状態に達した後に、触媒がヘプタンと共に反応器内に注入され、総液量が5mlに達するようにされた。
【0123】
該反応器の圧力は運転圧力設定値を考慮して制御され、そして、モノマー取り込み速度が各反応器についてモニターされた。重合工程は、各反応器について60分間継続され、その後、該反応がCO2でクエンチされた。
【0124】
活性は6~8回の重合の平均値として報告されている。標準偏差(StDev:standard deviation)及び変動計数(CoefVar:coefficient of variation)は、下記の表2に報告されているように、標準的な統計解析ソフトウェア、例えばMiniTab又はOrigin、で決定された。
【0125】
【表2】
【0126】
図1において示されているワイブル分布は下記を示す:メチルアルミノキサンの最低の装填量(loading)を有する触媒E1が、好ましくは低圧縮応力の下で破断する傾向を示し、それは1.36の低いワイブル係数によって反映されており、及び構造欠陥の多さと粒子間構造欠陥分布の高い不均一性を示す。
【0127】
図2は、シリカ多孔質担体(CE1)への触媒成分の添加により、触媒粒子の圧縮強度が増加されること、及びメチルアルミノキサンの高い装填量が増加された圧縮強度を結果として生じることを示す(E1~E5)。触媒調製の間、MAOは、国際公開公報第WO198212852A1号パンフレット、国際公開公報第WO2016176135A1号パンフレット又は国際公開公報第WO201875071A1号パンフレットに開示されているように、多孔質シリカ粒子中に存在する空隙を充填する。MAOの含有量が高い触媒組成物では、構造欠陥の密度が低下し、その結果、触媒粒子の機械的強度が向上する。
【0128】
一方、図3は、図1におけるワイブル分布からの最初の観察を確認するものである。メチルアルミノキサンの低い装填量での触媒粒子のワイブル係数は、出発支持体物質のワイブル係数(CE1に対してE1~E3)よりも低い。このことにより、低い装填量では、支持体粒子内の空隙の総量を埋めるだけの十分なメチルアルミノキサンが該反応器内に存在せず、その結果、出発支持体物質の初期の粒子間構造欠陥分布と比較して、最終触媒組成物における構造欠陥の不均一な粒子間分布を結果として生じる。
【0129】
触媒組成物E1~E5が、パラレル圧力反応器(PPR)において、コモノマーとして1-ヘキセンの存在下でエチレンの重合の為に更に使用された。重合活性は、触媒組成物の各々について同じ重合実験の6~8繰り返しの平均として報告されている。図4は、米国特許第US7244785B2号公報の教示に反して、メチルアルミノキサン装填量は必ずしも高い重合活性と相関しないことを示す。
【0130】
一方、図5及び図6は、各触媒組成E1~E5の6~8回の重合繰り返しにわたる活性における変動が、重合活性の標準偏差によって表されるように、メチルアルミノキサンの装填量(図5)、ひいては触媒圧縮強度のワイブル係数(図6)と相関していることを明確に示す。このことから、触媒調製の間にメチルアルミノキサンの装填量を多くすることにより、触媒粒子集団内の構造欠陥のより均一な粒子間分布が促進され、一連の連続重合実験におけるより小さい変動を有するより信頼性の高い重合挙動が提供されることが安全に推測されることができる。
【0131】
触媒粒子の圧縮強度ワイブルパラメータとPPR重合実験から観察された標準偏差との間に構築された相関は、微小圧縮試験による触媒粒子の特性評価方法と、結果として得られたデータのワイブル分析によって提供される可能性を例示するものであり、触媒調製パラメータと重合反応の間のその性能との関係をより良く理解することを目的としている。ポリマー粉末の記述子、例えば粒度分布の嵩密度又は重合反応の速度論的パラメータ、との他の相関関係が構築されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】