(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車椅子推進システム
(51)【国際特許分類】
A61G 5/04 20130101AFI20240702BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61G5/04 710
B60K7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580591
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 CA2022051027
(87)【国際公開番号】W WO2023272380
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523487863
【氏名又は名称】ゲーム チェンジャー テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GAME CHANGER TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ニメック、ブレント シー.
(72)【発明者】
【氏名】スコット、ジェフリー アール.
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA22
3D235BB18
3D235BB19
3D235CC42
3D235FF35
3D235GA59
3D235GA69
3D235HH32
(57)【要約】
車椅子用の電動車椅子推進システム。推進システムは、車椅子の第1及び第2の駆動輪に回転可能にそれぞれ取り付けられた第1及び第2のトルク伝達ハブと、第1のハブと第2のハブとの間に配置された長尺状の車軸管とを有する。第1及び第2のモータは、車軸管内に配置され、車軸管の両端から延在している。第1及び第2の駆動車軸は、第1及び第2のハブのボアの中にそれぞれ挿入可能であり、第1及び第2のモータに対して動作可能にそれぞれ接続される。モータの作動を制御するために、手段が提供されている。モータを作動させることによって、モータの回転が駆動され、トルクが駆動車軸に伝達される。次に、駆動車軸はトルクをハブに伝達し、それによって駆動輪を回転させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子推進システム(10)であって、
車椅子(16)の第1の車輪(14a)に取り付けるための回転可能な第1のハブ(26)及び前記車椅子(16)の第2の車輪(14b)に取り付けるための回転可能な第2のハブ(28)と、
前記第1のハブと前記第2のハブとの間に配置された長尺状の車軸管(12)と、
前記車軸管内に配置され、前記車軸管の両端(18,20)から延在している第1のモータ(22)及び第2のモータ(24)と、
回転可能な前記第1のハブのボア(34)の中に挿入可能であり、前記第1のモータに動作可能に接続された第1の駆動車軸(38)であって、前記第1のモータを作動させることによって、トルクが前記第1の駆動車軸及び前記第1のハブに伝達され、それによって前記第1の車輪を回転させる、第1の駆動車軸(38)と、回転可能な前記第2のハブのボア(36)の中に挿入可能であり、前記第2のモータに動作可能に接続された第2の駆動車軸(40)であって、前記第2のモータを作動させることによって、トルクが前記第2の駆動車軸及び前記第2のハブに伝達され、それによって前記第2の車輪を回転させる、第2の駆動車軸(40)と、
を備える車椅子推進システム。
【請求項2】
前記第1の駆動車軸及び前記第2の駆動車軸は、第1の連結具(42)及び第2の連結具(44)によって、前記第1のモータ及び前記第2のモータに対して動作可能に接続され、前記第1の連結具は、前記第1の駆動車軸を前記第1のモータに接続するように構成され、前記第2の連結具は、前記第2の駆動車軸を前記第2のモータに接続するように構成されている、請求項1に記載の車椅子推進システム。
【請求項3】
前記第1のモータは、第1のトルク伝達形状(150)を備え、前記第2のモータは、第2のトルク伝達形状(152)を備え、前記第1の駆動車軸を前記第1のモータに、前記第2の駆動車軸を前記第2のモータに動作可能に接続するべく、前記第1のトルク伝達形状は、前記第1の駆動車軸と係合するように構成され、前記第2のトルク伝達形状は、前記第2の駆動車軸と係合するように構成されている、請求項1に記載の車椅子推進システム。
【請求項4】
前記第1のハブ内に取り付けられた第1のトルク受け部材(62)と、前記第2のハブ内に取り付けられた第2のトルク受け部材(64)と、をさらに備え、前記第1のトルク受け部材は、前記第1の駆動車軸と係合するように形状決定されており、前記第2のトルク受け部材は、前記第2の駆動車軸と係合するように形状決定されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項5】
前記第1のトルク受け部材は、前記第1のハブ内に一体的に形成され、前記第2のトルク受け部材は、前記第2のハブ内に一体的に形成されている、請求項4に記載の車椅子推進システム。
【請求項6】
前記第1のトルク受け部材は、第1のトルクブッシュ(63)を含み、前記第2のトルク受け部材は、第2のトルクブッシュ(65)を含む、請求項4に記載の車椅子推進システム。
【請求項7】
前記第1の駆動車軸及び前記第2の駆動車軸は、前記第1のトルク受け部材及び前記第2のトルク受け部材と係合するように形状決定されている第1及び第2のトルク伝達部材(86,88)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項8】
前記第1の連結具及び前記第2の連結具を、前記車軸管の長手方向軸に、前記第1の駆動車軸及び前記第2の駆動車軸と係合する位置と脱係合する位置との間において移動させるための手段(103)をさらに備える、請求項2及び4~7のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項9】
第1端(49,51)及び対向する第2端(53,57)を各々有する第1の車軸ハウジング(46)及び第2の車軸ハウジング(48)をさらに備え、それら第1端は、前記車軸管の両端とそれぞれ係合し、それら第2端は、前記第1のハブ及び前記第2のハブとそれぞれ係合し、前記第1及び第2の車軸は、前記第1のハブ及び前記第2のハブの前記ボアの中へそれぞれ挿入可能であり、また、前記第1の車軸ハウジング及び前記第2の車軸ハウジングの長さの少なくとも一部の中まで挿入可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項10】
前記第1の車軸ハウジングに取り付けられた第1の取付ブラケット(94)と、前記第2の車軸ハウジングに取り付けられた第2の取付ブラケット(96)と、をさらに備え、前記第1の取付ブラケット(94)及び前記第2の取付ブラケット(96)は、前記車軸管を前記車椅子のフレームに固定するように構成されている、請求項9に記載の車椅子推進システム。
【請求項11】
前記第1の取付ブラケットは、前記第1の車軸ハウジングを受容するように形状決定された開口(97a)を備え、前記第2の取付ブラケットは、前記第2の車軸ハウジングを受容するように形状決定された開口(97b)を備える、請求項10に記載の車椅子推進システム。
【請求項12】
前記第1の取付ブラケット及び前記第2の取付ブラケットの前記開口並びに前記第1の車軸ハウジング及び前記第2の車軸ハウジングの断面形状が円形である、請求項11に記載の車椅子推進システム。
【請求項13】
前記第1の取付ブラケット及び前記第2の取付ブラケットの前記開口並びに前記第1の車軸ハウジング及び前記第2の車軸ハウジングの断面形状が多角形である、請求項11に記載の車椅子推進システム。
【請求項14】
前記第1のモータ及び前記第2のモータの作動を制御するための手段(100,102)をさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項15】
前記第1のモータ及び前記第2のモータの前記作動を制御するための前記手段は、入力装置(100)から信号を受信するために前記入力装置(100)に接続され、前記信号を前記第1のモータ及び前記第2のモータに送信するために前記第1のモータ及び前記第2のモータに接続されたコントローラ(102)を備える、請求項14に記載の車椅子推進システム。
【請求項16】
前記第1のモータ及び前記第2のモータは、遊星モータ又はダイレクトドライブモータを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項17】
前記第1の駆動車軸及び前記第2の駆動車軸は各々、前記第1の駆動車軸及び前記第2の駆動車軸をそれぞれ前記第1のモータ及び前記第2のモータから選択的に脱係合させるように動作可能なクイックリリース機構を備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の車椅子推進システム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の車椅子推進システムが動作可能に取り付けられている車椅子。
【請求項19】
車椅子(16)の車輪(14a,14b)に取り付けるためのハブ(26,28)であって、前記ハブは、前記ハブ内に取り付けられたトルク受け部材(62,64)を備え、前記トルク受け部材は、駆動車軸(38,40)と係合するように形状決定されている、ハブ。
【請求項20】
前記トルク受け部材は、トルクブッシュ(63,65)を含む、請求項19に記載のハブ。
【請求項21】
前記トルク受け部材は、前記ハブ内に一体的に形成されている、請求項19に記載のハブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子推進システムに関し、特に、ユーザが前方及び後方の両方向に推進することを可能にする2つのモータを有する電動車椅子推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子用の電気推進システムは、当技術分野で知られている。そうした電気推進システムによって、ユーザが電動モータの作動を制御することによって車椅子を電気的に推進させることが可能になる。車椅子用の既存の電気推進システムは、重く、機械的に複雑であり、それによって製造および修理のコストが増加する。車椅子産業において、車椅子を推進する電力を提供するためのより単純な機構を有する軽量推進システムが必要とされている。本発明は、車椅子用の改良された推進システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】本発明の一実施形態による車椅子推進システムの正面断面図。
【
図3】車椅子の一対の駆動輪の間に設置された
図1の推進システムの正面断面図。
【
図4】車椅子に設置された
図1の推進システムを示す車椅子の正面図。
【
図5】
図1の推進システムの駆動車軸、回転可能なトルク伝達ハブ、及びトルク受け部材の分解図。
【
図6】トルク伝達ハブ内に一体的に形成されたトルク受け部材を示している、
図1の推進システムの駆動車軸及び回転可能なトルク伝達ハブの分解断面図。
【
図8】
図1の推進システムの車軸ハウジング及び取付ブラケットの一例の斜視図。
【
図9】連結具と係合された駆動車軸を示している、
図1の推進システムの切断装置の一例の正面断面図。
【
図10】連結具から脱係合した駆動車軸を示している、
図9の切断装置の正面断面図。
【
図11】別の実施形態例による、モータ、車軸ハウジング、及び駆動車軸の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明によって、車椅子推進システムが提供される。推進システムは、車椅子の第1及び第2の駆動輪に対して回転可能にそれぞれ取り付けられた第1及び第2のトルク伝達ハブと、第1のハブと第2のハブとの間に配置された長尺状の車軸管とを有する。第1及び第2のモータが、車軸管内に配置され、車軸管の両端から延在している。第1及び第2の駆動車軸が、第1及び第2のハブのボアの中にそれぞれ挿入可能であり、第1及び第2のモータに対して動作可能にそれぞれ接続されている。第1及び第2のモータは、第1及び第2の駆動輪の動きをそれぞれ制御する。モータの作動を制御するために、手段が提供されている。モータを作動させることによって、モータの回転が駆動され、トルクが駆動車軸に伝達される。次に、駆動車軸はトルクをハブに伝達し、それによって駆動輪を回転させる。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の駆動車軸は、第1及び第2の連結具によって第1及び第2のモータに対して動作可能に接続される。第1の連結具は、第1の駆動車軸を第1のモータに接続するように構成され、第2の連結具は、第2の駆動車軸を第2のモータに接続するように構成される。駆動車軸は、連結具と係合することによって車軸管内の位置にロックされ、連結具及びモータとの適切な位置合わせを確実にする。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の駆動車軸は、第1及び第2の連結具なしで第1及び第2のモータに対して動作可能に接続される。そうした実施形態では、第1及び第2のトルク伝達形状(プロファイル)が、第1及び第2のモータの一端の表面上にそれぞれ配置されている。第1及び第2のトルク伝達形状は第1及び第2の駆動車軸とそれぞれ係合するように形状決定されており、第1のモータを第1の駆動車軸に、第2のモータを第2の駆動車軸に動作可能に接続する。
【0007】
本発明の一態様によって、車椅子の車輪に取り付けるためのハブが提供される。ハブは、ハブ内に取り付けられたトルク受け部材を備える。トルク受け部材は、駆動車軸、特に駆動車軸上のトルク伝達部材と係合するように形状決定されている。トルク受け部材は、ハブ内に嵌合されたトルクブッシュを備えてよいか、ハブ内に一体的に形成されていてよい。
【0008】
本発明のさらなる態様及び本発明の特定の実施形態の特徴を以下に記載する。
実施形態例を図面の参照図において示す。本明細書に開示された実施形態及び図面は、限定ではなく例示とみなされるべきであることが意図されている。
【0009】
図1~
図4を参照すると、一実施形態では、本発明の装置は車椅子推進システム10である。推進システム10は、手動式車椅子16に電力を供給することによって手動式車椅子16の推進を補助する。本発明の装置は、ユーザが手動又は電動で車椅子16を推進し、2つのモード間をシームレスに移行することを可能にする。推進システム10は、従来の手動式車椅子16に後付けすることができる。
【0010】
推進システム10は、車椅子16の座席18の下において一対の駆動輪14a,14bの間に配置されるように寸法決めされた長尺状の中空の車軸管12を有する。第1及び第2のモータ22,24は、車軸管12内に配置される。第1のモータ22は、車軸管12の第1端18から車軸管12内の第1の点19まで延在し、第1の駆動輪14aを回転させる。第2のモータ24は、車軸管12の対向する第2端20から車軸管12内の第2の点21まで延在し、第2の駆動輪14bを回転させる。モータ22,24は、例えばブラシ付き又はブラシレス遊星ギアモータと、ブラシ付き又はブラシレスダイレクトドライブモータとを含む、任意の適当な電動モータであってよい。
【0011】
モータ22,24の作動を制御するための手段が提供されている。
図7に概略的に示すように、そうした手段は、入力装置100から信号を受信するために入力装置100に接続されており、入力装置100から受信した入力信号に応答してモータ22,24に信号を送信するためにモータ22,24に接続されているコントローラ102を備えてよい。入力装置100、コントローラ102及びモータ22,24は、無線接続されていてよい。コントローラ102及びモータ22,24に電力を供給するために、充電式バッテリなどの電源104を接続してよい。入力装置100、コントローラ102及び電源104は、車椅子16上において任意の適当な場所に配置されてよい。例えば、コントローラ102及び電源104は、座席18の下に取り付けられてよく、入力装置100は車椅子16のアームレストに取り付けられてよい。
【0012】
入力デバイス100は、例えば、ジョイスティック、加速度計、リモートコントロール、及び/又はコントローラ102に有線で又は無線で接続する(例えば、Bluetooth(登録商標)又はWi-Fi(登録商標)接続によって)ことが可能である携帯電話アプリケーションの形態などのマン・マシン・インターフェース(MMI)であるか、コントローラ102にコマンドを送信するためにユーザの脳内に埋め込まれたコンピュータチップの形態で提供されるブレイン・マシン・インターフェース(BMI)であってよい。
【0013】
第1及び第2の回転可能なトルク伝達ハブ26,28は、駆動輪14a,14bの各々のセンターボア30,32内に取り付けられている。第1及び第2のトルク伝達ハブ26,28は各々、中心ボア34,36を通って第1及び第2の駆動車軸38,40をそれぞれ受容するために中心ボア34,36を有する。第1及び第2の駆動車軸38,40は、駆動車軸38,40の第1端45,47において第1及び第2の連結具42,44とそれぞれ係合するために、中心ボア34,36を通って挿入可能である。第1及び第2の連結具42,44は、一端54,56において第1及び第2のモータ22,24とそれぞれ係合し、それらの反対端58,60において第1及び第2の駆動車軸38,40の第1端45,47とそれぞれ係合し、それによって車軸管12を第1及び第2のトルク伝達ハブ26,28に接続する。
【0014】
第1及び第2の車軸ハウジング46,48は、それらの第1端49,51において車軸管12を接続し、それらの対向する第2端53,57においてトルク伝達ハブ26,28に接続するように構成されてよい。第1及び第2の車軸ハウジング46,48によって、少なくとも第1及び第2の連結具42,44と、第1及び第2の駆動車軸38,40の長さとをそれぞれ受容するための空間が提供されている。第1及び第2の駆動車軸38,40は、第1及び第2の連結具42,44と係合するためにトルク伝達ハブ26,28の中心ボア34,36を通って第1及び第2の車軸ハウジング46,48の中に延在し、第1及び第2の駆動車軸38,40をロック位置に固定する。第1及び第2の駆動車軸38,40をロックすることによって、モータ22,24に対する連結具42,44の適切な位置合わせがそれぞれ確実になり、車軸38,40が回転することが可能になる。
【0015】
機械的軸受50,52及び/又はトルク受け部材62,64を提供して、駆動車軸38,40を回転させ、それによって第1及び第2のトルク伝達ハブ26,28を回転させてよい。機械的軸受50,52は、第1及び第2の車軸ハウジング46,48内に配置されてよい、及び/又は駆動車軸38,40の長さを取り囲むように寸法決定されたトルク伝達ハブ26,28の中心ボア34,36内に配置されてよい。
【0016】
図5に示すように、いくつかの実施形態では、トルク受け部材62,64は各々、トルクブッシュ63,65を含み、トルクブッシュ63,65は、駆動車軸38,40上におけるトルク伝達部材86,88とそれぞれ係合するために第1及び第2のトルク伝達ハブ26,28の中心ボア34,36の外端82,84に対して取り付けられていてよく、駆動車軸38,40の回転からトルク伝達ハブ26,28にトルクを伝達する。
図5は、一実施形態例によるトルクブッシュ63,65と結合状態にある駆動車軸38,40及びトルク伝達ハブ26,28を示す分解図である。
図5を参照すると、駆動車軸38,40の各々は、トルク伝達部材86,88としてナット66,68を備える。ナット66,68は、駆動車軸38,40の第2端70,72に隣接して駆動車軸38,40の長さを取り囲むようにそれぞれ構成されている。ナット66,68の各々は、その外周75上に配置された1つ以上の平坦面74を有し、その外周75は、トルクブッシュ63,65のスロット73a,73b内に受容されるように形状決定されている。トルクブッシュ63,65の各々は、1つ以上の平坦面80を有している内周78によって形成され、ナット66,68の外周75上の1つ以上の平坦面74を補完するように形状決定されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、トルク受け部材62,64は、
図6に示すように、各々のトルク伝達ハブ26,28の中心ボア34,36の外端82,84に一体的に配置されてよい。そうした実施形態では、駆動車軸38,40上のトルク伝達部材86,88を受容するように形状決定された1つ以上の平坦面は、トルク伝達ハブ26,28の中心ボア34,36の外端82,84において輪郭形成されてよく、それによって、トルクブッシュ63,65の必要性を排除する。
【0018】
トルク伝達部材86,88は、駆動車軸38,40の長さに沿った任意の点に配置されてよい。いくつかの実施形態では、トルク伝達部材86,88は、駆動車軸38,40の表面上に一体的に形成されてよい。例えば、駆動車軸38,40の長さは、トルク受け部材62,64と係合するための1つ以上の平坦面を伴って輪郭形成されてよい。この実施形態は、ナット66,68の必要性を省略する。
【0019】
第1及び第2の取付ブラケット94,96は、車椅子推進システム10を車椅子16のフレーム98に固定するように構成されてよい。第1及び第2の取付ブラケット94,96は、車椅子推進システム10上の任意の適当な場所(第1及び第2の車軸ハウジング46,48等)に取り付けられてよい。取付ブラケット94,96は、車椅子16のフレーム98に沿った任意の適当な位置に対して固定されていてよい。
【0020】
図8を参照すると、第1及び第2の取付ブラケット94,96は各々、第1及び第2の車軸ハウジング46,48をそれぞれ受容するための開口97A,97Bを有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の車軸ハウジング46,48の外周99A,99Bの断面形状は円形である。そうした実施形態では、第1及び第2の取付ブラケット94,96の開口97A,97Bの断面形状は円形であり、開口97A,97Bは滑らかな内面101A,101Bを有する。他の実施形態では、第1及び第2の車軸ハウジング46,48の外周99A,99Bは、外周99A,99Bの上に輪郭形成されている1つ以上の平坦面105A,105Bによって形成される。そうした実施形態では、第1及び第2の取付ブラケット94,96の開口97A,97Bの内面101A,101Bは、内面101A,101Bの上に輪郭形成されている1つ以上の平坦面107A,107Bによって形成され、平坦面107A,107Bは、車軸ハウジング46,48上に形成された1つ以上の平坦面105A,105Bを補完する。一例では、8つの平坦面101A,101B,105A,105Bは、車軸ハウジング46,48及び開口97A,97Bの断面形状が八角形であるように、車軸ハウジング46,48上に及び取付ブラケット94,96の開口97A,97B内に輪郭形成される。車軸ハウジング46,48、及び取付ブラケット94,96の開口97A,97Bの輪郭形状は、駆動車輪38,40に加えられるトルクを保持するのを補助する。
【0021】
駆動車軸38,40は、解放(リリース)可能機構を備えてよい。例えば、駆動車軸38,40は各々、それらの第2端70,72において押ボタン90,92を備えてよい。押ボタン90,92を作動することにより、駆動車軸38,40が第1及び第2の連結具42,44から係合が外れるように解放され、トルク伝達ハブ26,28が車軸管12及び車軸ハウジング46,48から脱係合することが可能になり、工具を使用せずに駆動輪14a,14bを車椅子16から取り外すことが可能になる。
【0022】
いくつかの実施形態では、トルク伝達ハブ26,28を回転可能に駆動するように連結具42,44が駆動車軸38,40にそれぞれ係合する伸長位置と、トルク伝達ハブ26,28への回転動力源を切断するように連結具42,44が駆動車軸38,40からそれぞれ脱係合する収縮位置との間において、車軸管12の長手方向に連結具42,44を移動させるために、手段が提供される。そうした手段は、電気機械式切断装置などの任意の適当な切断装置を含んでよい。
図9及び
図10は、切断装置としてのソレノイド作動機構の一例を示す。
図9及び
図10の実施形態例に示すように、ソレノイド作動機構103は、連結具42,44を取り囲むように構成されているソレノイド本体106と、ソレノイド本体106を取り囲むように構成されているソレノイド巻線110と、連結具42,44と接触状態にあるように構成されている波形ばね108とを備える。連結具42,44を伸長位置まで移動させて駆動車軸38,40とそれぞれ係合させるには、連結具42,44に磁界を用いてエネルギーを与え、ばね108を駆動車軸38,40に向かって圧縮位置まで移動させる(
図9参照)。連結具42,44を収縮位置に移動させるには、連結具42,44にエネルギーを与えないと、波形ばね108は、その通常の無応力位置に戻り、駆動車軸38,40を連結具42,44との係合から解放する(
図10参照)。
【0023】
推進システム10は、以下の方法に従って動作する。モータ22,24は、ユーザからの入力を入力装置100から受信するコントローラ102の制御下で作動される。モータ22,24を作動させることによって、モータ22,24の回転が駆動され、トルクが駆動車軸38,40にそれぞれ伝達される。駆動車軸38,40は、それぞれトルク伝達ハブ26,28にトルクをそれぞれ伝達して、駆動輪14a,14bをそれぞれ回転させる。駆動輪14a,14bはまた、駆動輪14a,14bの動きを制御することによって、ユーザにより手動で推進されてもよい。
【0024】
車椅子16の機能を強化するために、推進システム10に追加のフィーチャを組み込んでよい。これらのフィーチャは、例えば、回生制動システムなどの制動システム、加速度計、クルーズコントロール、オートパイロット機能、全地球測位システム(GPS)、無線バッテリ充電、回生バッテリ充電、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、音声起動、及びスピーカを含む。
【0025】
車椅子推進システム10は、構成部品の数を減らすために機械的に簡略化されてよい。これは多くの異なる手法において行うことが可能である。以下は、それらの手法のいくつかの非限定的な例である。
【0026】
いくつかの実施形態では、車軸管12並びに第1及び第2の車軸ハウジング46,48は、一体的に形成されて、ハウジングを形成する。実施形態例では、ハウジングは、第1のハウジングセクションと、第2のハウジングセクションと、を備えている2つの断面部分から形成されている。第1のハウジングセクションは、車軸管12並びに第1及び第2の車軸ハウジング46,48の各々の第1の断面部分を備えてよい。そして、第2のハウジング部分は、車軸管12並びに第1及び第2の車軸ハウジング46,48の各々の第2の断面部分を備えてよい。第1及び第2の断面部分は、同じ形状及び/又はサイズを有するか、異なっていてよい。第1及び第2の断面部分は、第1及び第2のモータ22,24、並びに第1及び第2の連結器42,44並びに/又は機械的軸受50,52(存在する場合)がその中に配置された後に、ハウジングを形成するように互いに接合されてよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の連結器42,44のための別個の構成要素は必要とされない。第1の及び第2の連結器42,44は、第1及び第2のモータ22,24上に一体的にそれぞれ形成されてよい。
図11は、一実施形態例を示す。実施形態例では、第1及び第2のモータ22,24は各々、その一端154,156において表面153A,153B上に配置されたトルク伝達形状150,152を備える。トルク伝達形状150,152は各々、1つ以上の表面を備え、第1及び第2の駆動車軸38,40と係合するように形状決定されていてよい。いくつかの実施形態では、トルク伝達形状150,152は各々、第1及び第2の駆動車軸38,40の第1端45,47とそれぞれ係合するように形状決定されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のモータ22,24は、ねじ等の締結手段によって第1及び第2の車軸ハウジング46,48に対してそれぞれ接続されている。他の実施形態では、第1及び第2のモータ22,24は、締結手段なしで、第1及び第2の車軸ハウジング46,48に対してそれぞれ接続可能である。一実施形態例では、
図11に示すように、第1及び第2のモータ22,24は各々、その一端154,156に配置されたロック形状158,160を備える。第1及び第2の車軸ハウジング46,48のそれぞれの内面162,164は、ロック形状158,160とそれぞれ係合するように輪郭、形状、及びサイズが決定されていてよく、それによって、第1及び第2の車軸ハウジング46,48内において第1及び第2のモータ22,24をそれぞれ連結させる。いくつかの実施形態では、保持リング166,168が、第1及び第2のモータ22,24と、第1及び第2の車軸ハウジング46,48との間にそれぞれ配置されている。保持リング166,168は、モータ22,24の少なくとも一部分をそれぞれ取り囲むように寸法決定されてよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2の車軸ハウジング46,48の内面162,164は、保持リング166,168をそれぞれ受容するようにサイズが決定された第1及び第2の溝170,172をそれぞれ備える。これにより、第1及び第2のモータ22,24が第1及び第2の車軸ハウジング46,48内の位置に固定され、有利には、使用中のモータ22,24の回転トルク及び横方向移動が防止される。
【0029】
対応する同様の部分が同じ参照文字によって識別される前述の説明および図面を通して、当業者に対してより完全な理解を提供するために、特定の詳細が記載されている。しかしながら、周知の要素は、本開示を不必要に不明瞭にすることを回避するために、詳細に又は全く示されていないか、説明されていない場合がある。
【0030】
前述の開示に照らして当業者には明らかであり得るように、本発明の実施において、その範囲から逸脱することなく、多くの変更および修正が可能である。したがって、説明および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味とみなされるべきである。
【国際調査報告】