(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】不飽和ヒドロキサム酸誘導体及びアンモニア関連疾患若しくは障害の治療及び予防のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/16 20060101AFI20240702BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K31/16
A61K45/00
A61P3/00
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580608
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 IB2022056066
(87)【国際公開番号】W WO2023275790
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523487977
【氏名又は名称】フェルサンティス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-クリストフ・ルロー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・イリエフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ディアナ・エフスタフェヴァ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA56
4C084MA60
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZC211
4C084ZC212
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA76
4C206MA80
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZC21
(57)【要約】
本開示は、(A)式I、(I)[式中、R1が、C1~C3アルキルであり、Xが、-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-又は-C≡C-であり、式中、R2、R3、R4、及びR5が、各々独立して、H又はメチルであり、Yが、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2、-CH2-C≡C-、又は-C(R7)(R8)-C(R9)(R10)-C(R11)(R12)-であり、式中、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12が、各々独立して、H又はメチルであり、但し、(1)Xが-C≡C-である場合、Yは-C(R7)(R8)-C(R9)(R10)-C(R11)(R12)-であり、(2)Yが-C(R7)(R8)-C(R9)(R10)-C(R11)(R12)-でない場合、Xは-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-であることを条件とし、R6が、H又はCH3である]の化合物、又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物と、(B)(a)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、又は(b)少なくとも1つの他の治療剤、又は(c)(a)及び(b)の組み合わせと、を含む経腸又は尿路薬学的製剤、並びにアンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療又は予防のためのその使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式I
【化1】
[式中、R
1が、C1~C3アルキルであり、
Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-又は-C≡C-であり、
式中、R
2、R
3、R
4、及びR
5が、各々独立して、H又はメチルであり、
Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2、-CH
2-C≡C-、又は-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-であり、
式中、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12が、各々独立して、H又はメチルであり、
但し、(1)Xが-C≡C-である場合、Yは-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-であり、(2)Yが-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-でない場合、Xは-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-であることを条件とし、
R
6が、H又はCH
3である]の化合物、
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物と、
(B)(a)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、(b)少なくとも1つの他の治療剤、又は(c)(a)及び(b)の組み合わせと、を含む経腸又は尿路、好ましくは経腸薬学的製剤。
【請求項2】
R
1が、エチルである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
(i)Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-である、
(ii)R
1が、エチルである、
(iii)R
2が、Hである、
(iv)R
3が、Hである、
(v)R
4が、Hである、
(vi)R
5が、Hである、
(vii)R
6が、Hである、
(viii)Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2-、若しくは-CH
2-C≡C-である、又は
(ix)(i)~(viii)のうちの少なくとも2つの組み合わせである、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
(i)Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-であり、
(ii)R
1が、エチルであり、
(iii)R
2が、Hであり、
(iv)R
3が、Hであり、
(v)R
4が、Hであり、
(vi)R
5が、Hであり、
(vii)R
6が、Hであり、
(viii)Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2-、又は-CH
2-C≡C-である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記化合物が、式Ia:
【化2】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、請求項1~4のいずれか一項に定義される通りであり、Yが、請求項3又は4に定義される通りである]の化合物、
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
Yが、CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-又は-CH
2-C≡C-であり、好ましくは、Yが、CH=CH-CH
2-、又は-CH
2-C≡C-である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
Yが、-CH
2-C≡C-である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記化合物が、
【化3】
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記化合物が、
【化4】
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
経腸又は尿路投与、好ましくは経腸投与、及び最も好ましくは遅延放出製剤による、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
回腸又は結腸内に送達するための、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
腸溶性コーティングを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う際に使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤。
【請求項14】
前記アンモニア関連疾患又は障害が高アンモニア血症であり、前記治療又は予防を必要とする対象が、好ましくは、肝性脳症又は尿素サイクル異常症を有する、請求項13に記載の使用のための化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤。
【請求項15】
経腸又は尿路投与、好ましくは経腸投与のための、及び最も好ましくは、前記経腸投与が、回腸又は結腸への投与である、請求項13又は14に記載の使用のための化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2022年6月29日に出願され、PCT第21条(2)に基づいて英語で公開されたPCT出願第IB2022\*号であり、2021年6月29日に出願された欧州出願第21182587.2号の利益を主張する。上記の全ての文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究又は開発に関する声明
適用不可
本開示は、不飽和ヒドロキサム酸(HA)誘導体、及びアンモニア関連疾患若しくは障害(例えば、高アンモニア血症)の治療及び予防のためのそれらの使用に関する。より具体的には、本開示は、例えば、肝性脳症(HE)又は尿素サイクル異常症(UCD)に罹患している対象におけるアンモニア関連疾患若しくは障害(例えば、高アンモニア血症)を治療又は予防するための不飽和HA誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
尿素サイクル異常症(UCD)及び肝性脳症(HE)は、一部にはアンモニアレベルの上昇を特徴とする疾患である(Haeberle,2013)。UCDは、尿素サイクル酵素及びオルニチントランスカルバミラーゼ、カルバミルリン酸合成酵素1などのトランスポーターの遺伝的欠損によって引き起こされる(Haeberle,2013、Walker,2014)。重度の脳損傷及びしばしば致命的な高アンモニア血性昏睡を含む深刻な健康被害を引き起こす可能性がある。HEは、軽度の精神運動障害から昏睡に至るまでの広範囲の神経精神異常を特徴とする、肝機能障害の合併症である(Swaminathan et al,2018、Vilstrup et al,2014)。HEの発現は、肝機能障害の重症度、追加の疾患(例えば、糖尿病、腎不全)の存在、患者の年齢、高アンモニア血症の程度、酸化ストレス及び炎症の重症度、並びに他の因子に依存する(Rose et al.,2020)。
【0004】
HEの病因は、アンモニアが重要な役割を果たすと考えられる複雑なプロセスである(Rose et al.,2020)。人体内のほとんどのアンモニアは、ウレアーゼ産生細菌によるアミノ酸異化又は尿素の加水分解の産物として腸内で産生される(Walker,2014)。健康な人では、アンモニアは主に肝細胞の尿素サイクルを通して解毒され、腎臓を介して尿素として排泄される。また、脳、筋肉、腎臓などの他の器官は、グルタミンの合成においてアンモニアを利用することによって解毒プロセスに関与する。HE病因の主な仮説は、機能不全の肝臓が、全身循環におけるアンモニアの蓄積につながるアンモニアを効率的に除去することができないことを示唆している。血中アンモニアレベルが50μmol/Lを超える状態は、高アンモニア血症として定義される(Haeberle,2013)。アンモニアは脳に特に有害であり、通常、星状細胞内のグルタミンの合成によって除去される。しかし、過剰なアンモニアは、星状細胞におけるグルタミンの蓄積を誘導し、脳の恒常性を妨げ、星状細胞の腫脹及び脳浮腫を引き起こす。更に、アンモニアは、ニューロン及び星状細胞の両方において、酸化ストレス、ミトコンドリア機能障害、細胞エネルギー代謝の破壊、及び膜電位の変化を引き起こすことが知られている(Braissant et al.,2013、Bosoi et al.,2009)。血中アンモニアが正常レベルに戻ると、HEの症状は大部分可逆的である(Braissant et al.,2013)。
【0005】
アンモニア関連疾患若しくは障害(例えば、高アンモニア血症)の代替又は改善された治療に対する必要性が存在する。
【0006】
本記載には、いくつかの文献を参照し、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状(例えば、HE及びUCD)の治療のためのヒドロキサム酸(HA)の不飽和誘導体を提示する。これらの化合物は、ウレアーゼ阻害活性を有する。具体的には、本開示の化合物の有効性は、ラットの盲腸内容物におけるアンモニアの産生の減少(実施例6及び10)、並びに胆管結紮ラット(慢性肝硬変に関連する肝性脳症(HE)のモデル)(実施例7)及びN-ニトロソジエチルアミン誘発性肝疾患を有するラット(急性肝疾患のモデル)(実施例11)における血中アンモニアレベルの減少を示すことによって実証され、大部分が細胞傷害性ではなく(実施例8)、1mMまで変異原性ではないことが示された(実施例9)。ヒドロキサメートは、一般に、変異原性活性を示すことが知られている(Shen et al.,2016)。現在の仮説は、ヒドロキサム酸がロッセン転位によって変異原性になることを示唆している。中性及び塩基性条件では、予め形成されたO-活性化ヒドロキサム酸誘導体は、アミド基のプロトンを失い、DNAと反応する対応するイソシアネートに急速に変換する(Shen et al.,2016)。本明細書に提示されるデータは、ほぼ中性のpHを有する緩衝溶液中の2-オクチノHAが、そのヒドロキサメート基を失い、5-ペンチルイソオキサゾール-3-オール(実施例12)に変換することを更に示唆する。この変換は、インタクトな2-オクチノHAの吸収及びヒドロキサメートへの全身曝露を低減させ、それによって、この基に関連する変異原性リスクを減少させる。2-オクチノHAの経口生物学的利用能は、コーティングされていないカプセルの経口投与後は非常に低く(実施例13)、結腸カプセルを介した送達後は0%に近かった(実施例13)。提案された送達システムは、更に、低い全身曝露を確実にし、したがって、2-オクチノHAの変異原性及び細胞傷害能に関連する可能性のある副作用を低減する。
【0008】
より具体的には、本開示に従って、以下の項目が提供される。
1.(A)式I
【化1】
[式中、R
1が、C1~C3アルキルであり、
Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-又は-C≡C-であり、
式中、R
2、R
3、R
4、及びR
5が、各々独立して、H又はメチルであり、
Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2、-CH
2-C≡C-、又は-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-であり、
式中、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12が、各々独立して、H又はメチルであり、
但し、(1)Xが-C≡C-である場合、Yは-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-であり、(2)Yが-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-でない場合、Xは-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-であることを条件とし、
R
6が、H又はCH
3である]の化合物、
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物と、
(B)(a)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、(b)少なくとも1つの他の治療剤、又は(c)(a)及び(b)の組み合わせと、を含む経腸又は尿路、好ましくは経腸薬学的製剤。好ましくは、腸溶性コーティングを含むか、又は滅菌液体製剤である製剤。
2.R
1が、エチルである、項目1に記載の製剤。
3.
(i)Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-である、
(ii)R
1が、エチルである、
(iii)R
2が、Hである、
(iv)R
3が、Hである、
(v)R
4が、Hである、
(vi)R
5が、Hである、
(vii)R
6が、Hである、
(viii)Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2-、若しくは-CH
2-C≡C-である、又は
(ix)(i)~(viii)のうちの少なくとも2つの組み合わせである、項目1に記載の製剤。少なくとも3、4、5、6、7、又は8つの(i)~(viii)の全てが好ましい。
4.
(i)Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-であり、
(ii)R
1が、エチルであり、
(iii)R
2が、Hであり、
(iv)R
3が、Hであり、
(v)R
4が、Hであり、
(vi)R
5が、Hであり、
(vii)R
6が、Hであり、
(viii)Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2-、又は-CH
2-C≡C-である、項目1に記載の製剤。好ましくは、Yは、-CH
2-C≡C-、-CH=CH-CH
2-、又は-CH
2-CH=CH-であり、より好ましくは、Yは、CH
2-C≡C-又は-CH
2-CH=CH-であり、最も好ましくは、Yは、CH
2-C≡C-である。
5.化合物が、式Ia:
【化2】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、項目1~4のいずれか1つに定義される通りであり、Yが、項目3又は4に定義される通りである]の化合物、
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である、項目1~4のいずれか1つに記載の製剤。
6.Yが、CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-又は-CH
2-C≡C-であり、好ましくは、Yが、CH=CH-CH
2-、又は-CH
2-C≡C-である、項目1~5のいずれか1つに記載の製剤。好ましくは、R
1は、エチルであり、かつ/又はR
2~R
5のうちの1つ以上は、Hであり、又はより好ましくは、R
2~R
5は、各々Hであり、最終的には、R
1は、エチルである。最も好ましくは、R
6は、Hである。
7.Yが、-CH
2-C≡C-である、項目1~5のいずれか1つに記載の製剤。好ましくは、R
1は、エチルであり、かつ/又はR
2~R
5のうちの1つ以上は、Hであり、又はより好ましくは、R
2~R
5は、各々Hであり、最終的には、R
1は、エチルである。最も好ましくは、R
6は、Hである。
8.化合物が、
【化3】
好ましくは、化合物が、
【化4】
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である、項目1に記載の製剤。
9.化合物が、
【化5】
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である、項目1に記載の製剤。
10.腸内又は尿路投与、好ましくは腸内投与のための、遅延放出製剤を介した、項目1~9のいずれか1つに記載の製剤。
11.回腸又は結腸内に送達するための、項目10に記載の製剤。
12.腸溶性コーティング若しくは製剤を含むか、又は製剤が、滅菌液体製剤であり、好ましくは、製剤が、腸溶性コーティングを含む、項目1~11のいずれか1つに記載の製剤。特定の実施形態では、製剤は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、若しくはアスコルビン酸などの酸、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、結腸製剤中)を更に含む。
13.アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う際に使用するための、項目1~12のいずれか1つに記載の化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤。
14.アンモニア関連疾患又は障害が高アンモニア血症であり、治療又は予防を必要とする対象が、好ましくは、肝性脳症又は尿素サイクル異常症を有する、項目13に記載の使用のための化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤。
15.経腸又は尿路投与、好ましくは経腸投与のための、及び最も好ましくは、経腸投与が、回腸又は結腸への投与である、項目13又は14に記載の使用のための化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤。
16.アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うための、項目1~12のいずれか1つに記載の化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤の使用。
17.アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うための薬剤の製造における、項目1~12のいずれか1つに記載の化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物又は製剤の使用。
18.アンモニア関連疾患又は障害が高アンモニア血症であり、治療又は予防を必要とする対象が、好ましくは、肝性脳症又は尿素サイクル異常症を有する、項目16又は17に記載の使用。
19.化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物、又は製剤が、経腸投与のためのものであり、好ましくは、経腸投与が、回腸又は結腸に送達される、項目16又は17に記載の使用。
20.アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、治療有効量の、項目1~12のいずれか1つに記載の化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物、又は製剤を投与することを含む、方法。
21.アンモニア関連疾患又は障害が高アンモニア血症であり、治療又は予防を必要とする対象が、好ましくは、肝性脳症又は尿素サイクル異常症を有する、項目20に記載の方法。
22.化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル、溶媒和物、又は製剤が、経腸的に、好ましくは回腸又は結腸に投与されるためのものである、項目20に記載の方法。
【0009】
本開示の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して実施例としてのみ与えられる、その特定の実施形態の以下の非制限的な説明を読めばより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面において、
【
図1A】アセトヒドロキサム酸(AHA)及びオクタノヒドロキサム酸(OHA)のウレアーゼ阻害活性(
図1A)の比較。平均値±SD(N=3~6)。
【
図1B】2-オクチノヒドロキサム酸(2-オクチノHA)のウレアーゼ阻害活性(
図1B)。平均値±SD(N=3~6)。
【
図2】Caco-2細胞の生存率に対するAHA、OHA、及び2-オクチノHAの効果である。統計的有意性は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001のテューキーの比較検定を用いた二元配置分散分析(ANOVA)によって計算した。平均値±SD(N=6)。
【
図3A】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA98)中の2-オクチノHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図3B】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA100)中の2-オクチノHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図3C】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA1535)中の2-オクチノHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図3D】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA1537)中の2-オクチノHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図3E】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、E.coli株の混合物(wp2[pKM101]及びwp2 uvrA)中の2-オクチノHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図4A】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA98)中のOHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図4B】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA100)中のOHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図4C】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA1535)中のOHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図4D】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA1537)中のOHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図4E】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、E.coli株の混合物(wp2[pKM101]及びwp2 uvrA)中のOHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図5A】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA98)中のAHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図5B】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA100)中のAHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図5C】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA1535)中のAHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図5D】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、S.typhimurium株(TA1537)中のAHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図5E】代謝活性化の存在下(+S9)又は非存在下(-S9)における、E.coli株の混合物(wp2[pKM101]及びwp2 uvrA)中のAHAの変異原性評価である。ベースラインは、溶媒対照の陽性ウェルの平均数に1標準偏差を加えることによって得られる。一点鎖線(-S9)及び破線(+S9)によって示されるように、ベースラインにわたって誘導された復帰変異体の数が2倍を超える試験試料は、変異原性であるとみなされ、それらはアスタリスクでマークされる。PCは陽性対照を表す。平均値±SD(N=3)。
【
図6】8個の炭素原子からなる不飽和アルキル化HA誘導体のウレアーゼ阻害活性の比較である。平均値±SD(N=3)。
【
図7】ラットにおけるN-ニトロソジエチルアミン誘発性肝疾患における2-オクチノHAのインビボ有効性である。平均値±SD(N=10)。統計的有意性は、*p<0.05のテューキーの多重比較検定を用いた二元配置分散分析(ANOVA)によって計算した。
【
図8A】37℃で一晩インキュベートした後の超純水中の2-オクチノHA 0.5mg/mLの溶液のUHPLC-UVクロマトグラムである。
【
図8B】37℃で一晩インキュベートした後のHEPES 15mMを補充したHBSS(pH7.4)中の2-オクチノHA 0.5mg/mLの溶液のUHPLC-UVクロマトグラムである。
【
図8C】37℃で一晩インキュベートした後のKH
2PO
4 200mM(pH6.8)中の2-オクチノHA 10mMの溶液のUHPLC-UVクロマトグラムである。
【
図9】I.V.投与後のイヌ血漿中の2-オクチノHAの濃度プロファイル(PK1)である。平均値±SD(n=3)。
【
図10】コーティングされていないゼラチンカプセルにおける経口投与後のイヌ血漿中の2-オクチノHAの濃度プロファイル(PK2)である。平均値±SD(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示を記載する文脈(特に、次の特許請求の範囲の文脈において)における、「a」、「an」及び「the」という用語並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0012】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0013】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。範囲内の値の全てのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0014】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0015】
本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に本開示をよりよく示すことを意図しており、別段の記載がない限り、本開示の範囲の限定を提示するものではない。
【0016】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を本開示の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0017】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。実施形態では、これは、適格な数値の±10%を意味し得る。
【0018】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
化合物
本開示の化合物は、細菌ウレアーゼ阻害活性を有するヒドロキサム酸(HA)の不飽和誘導体である。HAの作用機構は、ウレアーゼの活性部位にニッケル原子を配位し、それによって尿素のアンモニア及びカルバメートへの加水分解を防止するそれらの能力に基づいている(Muri and Barros、2013)。特定の実施形態では、それらは、アセトヒドロキサム酸(AHA)(IUPAC:N-ヒドロキシアセトアミド、CAS登録番号:546-88-3)及び/又はオクタノヒドロキサム酸(OHA)(IUPAC:N-ヒドロキシオクタンアミド、CAS登録番号:7377-03-9)の活性よりも高い細菌ウレアーゼ阻害活性(及び/又は細菌ウレアーゼ活性に対する低いIC50)を有する。他の特定の実施形態では、本開示の化合物は、例えば、OHAよりもCaco-2細胞に対する低い細胞傷害性を有する。細胞傷害性は、例えば、本開示の化合物の存在下でのCaco-2細胞の生存率と、例えば、OHAの存在下でのCaco-2細胞の生存率とを対比することによって測定することができる。
【0020】
そのように限定されるものではないが、本開示の化合物は、式I又はIa:
【化6】
[式中、R
1が、C1~C3アルキルであり、
Xが、-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-又は-C≡C-であり、
式中、R
2、R
3、R
4、及びR
5が、各々独立して、H又はメチルであり、
Yが、-CH=CH-CH
2-、-CH
2-CH=CH-、-C≡C-CH
2、-CH
2-C≡C-、又は-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-であり、
式中、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12が、各々独立して、H又はメチルであり、
但し、(1)Xが-C≡C-である場合、Yは-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-であり、(2)Yが-C(R
7)(R
8)-C(R
9)(R
10)-C(R
11)(R
12)-でない場合、Xは-C(R
2)(R
3)-C(R
4)(R
5)-であることを条件とし、
R
6が、H又はCH
3である]の化合物、
又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である。
【0021】
【化7】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記で定義された通りであり、Yは、上記で定義された通りである]、又はその立体異性体若しくは混合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル若しくは溶媒和物である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「C1~C3アルキル」という用語は、メチル、エチル又はプロピルを指す。
【0023】
そのように限定されるものではないが、本開示の化合物には、以下が含まれる:
【化8】
【0024】
また、式I又はIaの化合物の立体異性体、その混合物、薬学的に許容される塩、エステル及び溶媒和物、好ましくは立体異性体、その混合物、薬学的に許容される塩、及びその溶媒和物も包含される。
【0025】
異性体、互変異性体、及び多形体
本明細書で使用される場合、「異性体」という用語は、ジアステレオマー、並びに他の既知のタイプの異性体を含む立体異性体を指す。
【0026】
本開示のヒドロキサム酸は、C-N結合の周りの回転によるZ/E異性体(ジアステレオマー)を呈する。Z異性体及びE異性体は溶液中で共存し、Z異性体はウレアーゼに対する活性を示す。更に、本開示は、本開示の化合物の全ての幾何異性体を包含する。例えば、二重結合又は三重結合を組み込む本開示の化合物において、シス及びトランス形態の両方、並びに混合物が、本開示の範囲内に包含される。
【0027】
二重結合を含む本開示の化合物は、シス又はトランス配置であり得る。
【0028】
本開示内では、本開示の化合物は互変異性の現象を呈し得、本明細書内の式図面は、可能な互変異性形態のうちの1つのみを表すことができることを理解されたい。本開示は、任意の互変異性形態を包含し、単に式図面内で利用される任意の1つの互変異性形態に限定されるべきではないことを理解されたい。
【0029】
本開示の特定の化合物が多形性を呈する場合があり、本開示がそのような全ての形態を包含することも理解されたい。
【0030】
塩
本開示は、本明細書で定義される本開示の化合物並びにその塩に関する。本明細書で使用される場合、用語「塩(複数可)」は、無機及び/又は有機塩基で形成された塩基性塩を示す。薬学的組成物/製剤で使用するための塩は、薬学的に許容される塩であるが、他の塩は、本開示の化合物の製造に有用であり得る。用語「薬学的に許容される塩」は、薬理学的に許容され、それらが投与される対象に実質的に無毒である本開示の化合物の塩を指す。より具体的には、これらの塩は本開示の化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、好適な非毒性の有機又は無機の酸又は塩基から形成される。
【0031】
例えば、本開示の化合物が十分に酸性である場合、本開示の塩は、無機又は有機塩基で形成された塩基塩を含む。そのような塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、及びコバルト塩などの金属塩;例えば、トリメチルアンモニウム塩などの無機アミン塩又は置換アンモニウム塩;並びにクロロプロカイン塩、ジベンジルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン塩、エチルアミン塩(ジエチルアミン塩及びトリエチルアミン塩を含む)、エチレンジアミン塩、グルコサミン塩、グアニジン塩、メチルアミン塩(ジメチルアミン塩及びトリメチルアミン塩を含む)、モルホリン塩、モルホリン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、N-メチルグルカミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩、プロカイン塩、t-ブチルアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、t-オクチルアミン塩、トリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン塩、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩などの有機塩基(例えば、有機アミン)との塩が挙げられる。好ましい塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムで形成されたものが挙げられる。
【0032】
そのような塩は、当業者であれば標準的な技術を使って日常的に形成することができる。実際、薬学的化合物(すなわち、薬物)を塩に化学修飾することは、薬理学者によく知られた技術である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、H.Ansel et.al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)at pp.196 and 1456-1457を参照されたい)。本開示の化合物の塩は、例えば、本開示の化合物を等量などの量の塩基と、塩が沈殿するような媒体中又は水性媒体中で反応させてから乾燥することによって形成することができる。
【0033】
エステル
本開示は、本開示の化合物並びにそのヒドロキサメートエステルに関する。本明細書で使用される「エステル(複数可)」という用語は、ヒドロキシ基がカルボニル基含有試薬及びカップリング試薬を使用して対応するエステルに変換された本開示の化合物又はその塩を指す。そのようなヒドロキサメートエステルは、プロドラッグとして使用され得る。薬学的組成物/製剤で使用するためのエステルは、薬学的に許容されるエステルであるが、他のエステルは、本開示の化合物の製造に有用であり得る。
【0034】
「薬学的に許容されるエステル」という用語は、薬理学的に許容され、それらが投与される対象に実質的に無毒である本開示の化合物のエステルを指す。より具体的には、これらのエステルは、加水分解後に本開示の化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、温血動物の胃腸管に送達されると、親化合物を産生するような方法で切断するプロドラッグとして作用することができる。
【0035】
本開示の化合物のエステルには、エステル化によって得られるヒドロキサム酸エステルが含まれ、エステル基の非ヒドロキサム酸部分は、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えば、エチル、n-プロピル、t-ブチル、n-ブチル、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、又はペンチル)、n-ヘキシル、アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル、アセトキシメチル、及び2,2-ジメチルプロピオニルオキシメチル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル)、アリール(例えば、ハロゲン、C1~4アルキル、又はC1~4アルコキシ、又はアミノで任意に置換された例えば、フェニル)から選択される。
【0036】
本開示の化合物のエステルは、塩を形成し得る。この場合、これは、上記のような従来の技術によって達成される。
【0037】
溶媒和物
本開示の化合物は、非溶媒和形態、並びに水、エタノールなどの溶媒との溶媒和形態で存在し得、本開示は、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。
【0038】
「溶媒和物」とは、本開示の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には、水素結合を含む、様々な程度のイオン結合及び共有結合が関与する。ある特定の例では、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている場合、溶媒和物は単離可能である。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。薬学的組成物/製剤において使用するための溶媒は、薬学的に許容される溶媒であるが、他の溶媒は、本開示の化合物の製造において有用であり得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、薬理学的に許容され、それらが投与される対象に実質的に無毒である、本開示の化合物の溶媒和物を意味する。より具体的には、これらの溶媒和物は、本開示の化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、好適な非毒性溶媒から形成される。
【0040】
好適な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート、メタノレートなど、並びに溶媒分子が水である溶媒和物である水和物が挙げられる。
【0041】
溶媒和物の調製は、一般的に知られている。したがって、例えば、参照により本明細書に組み込まれるCaira,2004は、水からだけでなく、酢酸エチル中の抗真菌性フルコナゾールの溶媒和物の調製を記載する。溶媒和物、半溶媒和物、水和物などの同様の調製物は、van Tonder,2004、Bingham,2001に記載され、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
溶媒和物を調製するための典型的な非限定的なプロセスは、本発明の化合物を所望の量の所望の溶媒(有機物又は水若しくはそれらの混合物)に周囲温度よりも高い温度で溶解させ、次に標準的な方法によって単離される結晶を形成するのに十分な速度で溶液を冷却することを含む。例えば、赤外分光法などの分析技術を使用して、結晶中の溶媒(又は水)が溶媒和物(又は水和物)として存在することを示すことができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「AHA及び/又はOHAの活性よりも高い細菌ウレアーゼ阻害活性」の文脈における「より高い」という用語は、それぞれ、AHA及び/又はOHAで得られた対応する細菌ウレアーゼ阻害活性よりも少なくとも2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%高いなどの本開示の化合物で得られた細菌ウレアーゼ阻害活性を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「AHA及び/又はOHAのIC50よりも低い細菌ウレアーゼ阻害活性に対するIC50」又は「OHAの細胞傷害性よりも低い、例えばCaco-2細胞に対する細胞傷害性」の文脈における「より低い」という用語は、それぞれ、AHA及び/又はOHAでそれぞれ得られた対応するIC50又は細胞傷害性よりも少なくとも2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%低い、それぞれ細菌ウレアーゼ活性に対する本開示の化合物のIC50又は例えば、Caco-2細胞に対する本開示の化合物の細胞傷害性を指す。
【0045】
例えば、ラクツロース及びリファキシミンと比較して、本開示の化合物(例えば、2-オクチノHA)は、ウレアーゼに特異的に作用し、抗生物質耐性を誘導するリスクを負わず、高いウレアーゼ阻害活性のため、アンモニア濃度の有意な低減を達成するために比較的低用量で使用され得、したがって、他のアンチウレアーゼ化合物よりも有害作用を発現するリスクが低い場合がある。アンモニア産生を低減する有効性が初期の研究で示された既存のHA(AHA、OHA)と比較して、2-オクチノHAのIC50は、インビトロアッセイで約10倍低いことがわかった(実施例6)。
【0046】
経路
本開示の化合物は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の予防又は治療のために、胃腸管を介して、すなわち、経腸的(すなわち、経口的、又は直腸/大腸内)に、又は尿路を介して(例えば、膀胱内注入を介して)投与され得る。例えば、本開示の化合物は、結腸製剤に製剤化されて、遠位腸セグメントでそれらの放出を可能にし、それによって全身吸収を最小限に抑え、副作用を生じるリスクを更に低減することができる。アンモニア関連疾患又は障害が尿路感染症である場合、化合物は、経口又は尿路を介して投与され得る(例えば、膀胱内注入)。
【0047】
組成物/製剤
本開示はまた、薬剤(組成物/製剤)の調製における化合物の使用に関する。
【0048】
本開示はまた、化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物/製剤に関する。
【0049】
本開示は、経腸投与用、すなわち、経口又は直腸/結腸内投与用の薬学的製剤に関する。本開示は、経腸薬学的製剤に関する。
【0050】
本開示は、尿路を介して(例えば、膀胱内注入を介して)投与するための薬学的製剤にも関する。
【0051】
例えば、経口経路を使用する場合、本明細書に記載の化合物は、固形物、例えば、錠剤(コーティング錠若しくは素錠)、硬質又は軟質カプセル剤(コーティングカプセル剤若しくは非コーティングカプセル剤)、坐剤、又は液体、例えば、溶液、懸濁液、又はエマルジョンの形態であり得る経口製剤である。
【0052】
例えば、直腸/結腸内経路を使用する場合、本明細書に記載される化合物は、例えば、坐剤又は液体(例えば、溶液、懸濁液、又はエマルジョン)の形態であり得る直腸製剤又は結腸内製剤である。
【0053】
例えば、尿路経路を(例えば、膀胱内注入を介して)使用する場合、本明細書に記載される化合物は、例えば、無菌液体(例えば、溶液又は懸濁液(約10マイクロメートル未満の粒子直径を有する粒子の大部分を含む))の形態で使用することができる尿路製剤である。
【0054】
経腸製剤は、胃腸管の特定の位置で本開示の化合物の制御された(例えば、遅延された)放出を達成するために調製され得る。例えば、結腸送達は、例えば、腸溶コーティングされた経口製剤で達成することができる。
【0055】
液体製剤の調製のために、本開示の組成物/製剤は、水性又は非水性担体を含むが、これらに限定されない、少なくとも1つの薬学的に許容される液体担体を含み得る。非水性担体の例としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリグリセリドなどが挙げられるが、これらに限定されない。水性担体の例としては、水、生理食塩水などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
担体は、例えば、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)などのシクロデキストリンの溶液又は緩衝溶液を生成するための少なくとも1つの追加の賦形剤を更に含み得る。より具体的には、担体は、本開示の化合物の生物学的利用能、水溶性、又は安定性を増加させる少なくとも1つの賦形剤のうちの1つ以上を含んでもよい。そのように限定されるものではないが、そのような少なくとも1つの賦形剤は、少なくとも1つの溶媒(例えば、DMSO)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)などの少なくとも1つの分散助剤、少なくとも1つの糖((2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)などのシクロデキストリン、糖、転化糖、及びグルコース)などの本開示の化合物の水溶性を増加させるための少なくとも1つの賦形剤、少なくとも1つのpH調節剤(例えば、少なくとも1つの塩、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、及び/又はアスコルビン酸などの少なくとも1つの酸)などの少なくとも1つの安定化剤、及び/又は少なくとも1つの酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)を含んでもよい。尿路液体製剤は、例えば、1つ以上の溶媒(例えば、DMSO)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)又はシクロデキストリン、及び最終的には少なくとも1つのpH調節剤(例えば、塩、クエン酸)を含む滅菌水性液体(例えば、溶液又は懸濁液(粒子直径が約10マイクロメートル未満の大部分の粒子を含む))である。
【0057】
固形製剤(例えば、錠剤(コーティング錠若しくは素錠)、カプセル剤(コーティングカプセル剤若しくは非コーティングカプセル剤)、又は坐剤)の調製のために、本開示の化合物は、任意の既知の薬学的に不活性な、無機若しくは有機の賦形剤及び/又は担体と混合され得る。好適な賦形剤/担体の例としては、ラクトース、少なくとも1つの糖(シクロデキストリン、例えば、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)、セルロース及びその誘導体、ショ糖、転化糖及びグルコース、トウモロコシデンプン又はそれらの誘導体)、タルク若しくはステアリン酸又はその塩、安定化剤、少なくとも1つのpH調節剤(例えば、少なくとも1つの塩、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、及びアスコルビン酸などの少なくとも1つの酸)、並びに/又は少なくとも1つの酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)のうちの1つ以上が挙げられる。そのように限定されるものではないが、本開示の化合物が腸の遠位部分(結腸など)に送達することを意図している場合、回腸及び/又は結腸内で分解又は溶解するコーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー(例えば、Eudragit(商標)S100))で、又は回腸及び/又は結腸内で分解されるポリマーマトリックスを使用して、錠剤又はカプセルをコーティングする。結腸送達を達成する別の方法は、Philip et al,2010に記載されている。特定の実施形態では、製剤は、クリーム、ローション、又は軟膏ではない。
【0058】
好ましい実施形態では、本開示の組成物/製剤(例えば、腸溶性カプセル剤、錠剤)中の本開示の化合物(例えば、2-オクチノHA)の化学的安定性は、それを酸(すなわち、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、又はアスコルビン酸)と組み合わせることによって増加される。
【0059】
エマルジョンの調製のために、本開示の化合物は、任意の既知の薬学的に不活性な、無機若しくは有機の賦形剤及び/又は担体と混合されてもよい。好適な賦形剤/担体の例としては、水、界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、油(例えば、鉱物油又は植物油)が挙げられる。
【0060】
本開示の組成物/製剤は、抗摩擦剤、崩壊剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、甘味剤、着色剤、臭気剤、塩、緩衝剤、及び酸化防止剤のうちの少なくとも1つを含み得る。それらは、他の治療活性剤も含有し得る。
【0061】
本開示の組成物/製剤の製造に使用される全ての賦形剤が無毒であり、より一般的には薬学的に許容可能であることが前提条件である。本明細書で使用される場合、薬学的に許容される担体、賦形剤などの「薬学的に許容される」とは、薬理学的に許容され、本開示の特定の組成物/製剤が投与される対象に実質的に無毒であることを意味する。
【0062】
併用療法
本開示の化合物及び/又はその組成物/製剤は、併用療法、すなわち、同時又は連続投与のための少なくとも1つの他の治療剤又は療法と組み合わせて投与されてもよい。併用療法は、少なくとも1つの他の治療剤又は療法と組み合わせた本開示の化合物又は組成物/製剤を含み得る。そのような他の治療剤又は療法は、アンモニア関連疾患又はその障害若しくは症状の予防又は治療のための、又は基礎疾患若しくは状態の別の症状の予防又は治療のための薬剤又は療法であり得る。
【0063】
例えば、併用療法は、アンモニア関連疾患若しくは障害の予防又は治療に使用される少なくとも1つの他の薬物若しくは療法と組み合わせた、又はアンモニア関連疾患若しくは障害(基礎疾患若しくは障害)を有する対象の疾患若しくは障害の少なくとも1つの他の症状の予防又は治療に使用される薬物又は療法と組み合わせた、本開示の化合物若しくは組成物/製剤を含むことができる。この文脈において、本開示の化合物若しくは組成物/製剤と組み合わせて(同時に又は連続的に)投与され得る治療剤又は治療法の例としては、本開示の別の化合物若しくは組成物/製剤及び/又は少なくとも1つの他の治療剤又は療法が挙げられる。高アンモニア血症の治療に使用される場合、少なくとも1つの他の治療剤又は療法は、ラクツロース又はラクチロール、リファキシミン、分岐鎖アミノ酸、ネオマイシン、メトロニダゾール、プロバイオティクス(例えば、限定されないが、VSL#3(Rivera-Flores 2020))、グルタミナーゼ阻害剤、L-オルニチン-L-アスパラギン酸塩、血液透析、腹膜透析、フェニル酪酸ナトリウム(例えば、Buphenyl(登録商標))、フェニル酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム/安息香酸ナトリウムの組み合わせ(例えば、Ammonul(登録商標)、Ucephan(登録商標))、フェニル酪酸グリセロール(例えば、Ravicti(登録商標))、又はカルグルミン酸などの非吸収性二糖のうちの少なくとも1つであり得る。尿路感染症を治療するために使用される場合、少なくとも1つの他の治療剤は、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(Bactrim、Septra、他)、ホスホマイシン(Monurol)、ニトロフラントイン(Macrodantin、Macrobid)、セファレキシン(Keflex)、セフトリアキソン、シプロフロキサシン(Cipro)、レボフロキサシンなどのフルオロキノロンなどの抗生物質であり得る。潰瘍を治療するために使用される場合、少なくとも1つの他の治療剤は、アモキシシリン(Amoxil)、クラリスロマイシン(Biaxin)、メトロニダゾール(Flagyl)、チニダゾール(Tindamax)、テトラサイクリン及びレボフロキサシンなどの抗生物質;オメプラゾール(Prilosec)、ランソプラゾール(Prevacid)、ラベプラゾール(Aciphex)、エソメプラゾール(Nexium)及びパントプラゾール(Protonix)などのプロトンポンプ阻害剤;ファモチジン(Pepcid AC)、シメチジン(Tagamet HB)及びニザチジン(Axid AR)などの酸遮断薬、胃酸を中和する制酸剤;並びに/又はスクラルフェート(Carafate)及びミソプロストール(Cytotec)などの細胞保護剤であり得る。
【0064】
そのような組み合わせで使用される場合、本開示の化合物又は組成物/製剤は、低用量の他の薬物又は療法(例えば、ラクツロースなどの抗高アンモニア血症薬物)の投与を可能にし、それによって、下痢、吐き気、膨満感、及び鼓腸などのそのような薬物又は療法に関連する副作用を低減することができる。
【0065】
予防又は治療の方法
本開示は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の治療若しくは予防を必要とする対象においてそれを行う際に使用するための、本開示の化合物、立体異性体、混合物、塩、エステル若しくは溶媒和物、又は製剤に向けられる。特定の実施形態では、アンモニア関連疾患又は障害は、高アンモニア血症である。別の特定の実施形態では、治療又は予防を必要とする対象は、肝性脳症又は尿素サイクル異常症を有する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状」には、血液(すなわち、高アンモニア血症)、尿路(例えば、膀胱)及び胃などの体液及び組織、並びにそれに関連する基礎疾患又は状態における病理学的に高いレベルのアンモニアが含まれる。特定の実施形態では、「アンモニア関連疾患又は障害」とは、高アンモニア血症(例えば、肝機能障害、薬物誘発性高アンモニア血症、肝アンモニア代謝における先天性欠乏(原発性高アンモニア血症)、中間性肝アンモニア代謝に影響を及ぼす先天性欠乏(二次性高アンモニア血症)、及び高アンモニア血症に関連する基礎疾患又は障害によって誘発されるが、これらに限定されない、肝性脳症(HE)、肝硬変、急性肝不全、急性慢性肝不全、門脈体性バイパス/シャント、及び尿素サイクル異常症(UCD)、又はそれらの症状を含む)を指す。他の特定の実施形態では、「アンモニア関連疾患又は障害」は、例えば、プロテウス、クレブシエラ、シュードモナス及び/又はブドウ球菌種(すなわち、尿素分裂尿路感染症)によって引き起こされる尿路感染症を指す。それらは、病理学的に高いレベルのアンモニアを尿路に示す。他の特定の実施形態では、「アンモニア関連疾患又は障害」は、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter Pylori)感染に関連する潰瘍を指す。それらは、病理学的に高いレベルのアンモニアを胃に示す。
【0067】
アンモニア関連疾患又は障害に関して本明細書で使用される場合、「その症状」という用語は、前述の疾患及び障害の任意の症状を含む。例えば、疾患又は障害が高アンモニア血症である場合、症状には認知障害が含まれる。
【0068】
UCDは、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、アルギニノコハク酸合成酵素(シトルリン血症1型)(ASS)、アルギナーゼ1(ARG1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(アルギニノコハク酸尿症)(ASL)、カルバモイルリン酸合成酵素1(CPS1)、及びN-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)などの尿素サイクル酵素及びトランスポーターの遺伝的欠損によって引き起こされる。UCDは、欠損又は欠陥のある酵素の頭文字に基づいて命名される。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「予防する(prevent)/予防すること(preventing)/予防(prevention)」又は「治療する(treat)/治療すること(treating)/治療(treatment)」は、それぞれ、対象における所望の生物学的応答、すなわち、予防効果及び治療効果を誘発することを指す。本開示によれば、治療効果は、治療前の対象におけるその重症度、強度及び/又は持続時間と比較した場合、又は高レベルのアンモニア(例えば、高アンモニア血症)又はその症状を有する非治療対象におけるその重症度、強度及び/又は持続時間と比較した場合、本開示の化合物(又は組成物/製剤)の投与後の高レベルのアンモニア(例えば、高アンモニア血症)又はその症状の重症度、強度及び/又は持続時間の重症度、強度及び/又は持続時間の減少/又は減少のうちの1つ以上を含む。本開示によれば、予防効果は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状を将来的に経験する危険性がある無症候性の対象におけるアンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の発症の遅延;あるいは本開示の化合物(若しくは組成物/製剤)の投与後に生じるアンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の重症度、強度及び/又は持続時間の、非治療対照対象(すなわち、アンモニア関連疾患若しくは障害を経験する危険性がある無症候性の対象)におけるそれらの発症又はそれらの重症度、強度及び/若しくは持続時間、又はその症状のタイミングと比較した場合の、減少/低減;並びに/あるいは本開示の化合物(若しくは組成物/製剤)の投与後の対象における任意の既存のアンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の進行の、そのような既存のアンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状を有する非治療の対照対象におけるアンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の進行と比較した場合の、減少/低減を含み得る。本明細書で使用される場合、治療処置において、本開示の化合物(又は組成物/製剤)は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の発症後に投与される。本明細書で使用される場合、予防治療において、本開示の化合物(又は組成物/製剤)は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の前に、又はその発症後にその進行の前に投与される。
【0070】
本開示の特定の化合物(又はその組成物/製剤)の「治療有効量」又は「有効量」又は「治療有効投薬量」は、対象におけるウレアーゼ活性の阻害をもたらし得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物などの動物を指す。具体的な実施形態では、対象は、ヒトである。また、ペットや他の動物(ネコ、イヌ、ウマなどのペット、ウシ、ブタ、家禽など)を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という用語は、有効量の本開示の化合物又は組成物/製剤を受けることから利益を得る対象を指す。特定の実施形態では、対象は、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状に罹患している。特定の実施形態では、対象は、HE又はUCDに罹患している。
【0073】
キット
また、本開示の少なくとも1つの種類の化合物又は組成物/製剤と、例えば、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の予防若しくは治療のための、それらの使用説明書と、を含むキットも本開示の範囲内である。キットは、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の予防若しくは治療のための、又は基礎となる疾患若しくは障害の別の症状の予防若しくは治療のための、少なくとも1つの他の薬剤、あるいは本開示の1つ以上の追加の化合物を更に含むことができる。キットは、典型的には、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。用語ラベルは、キット上又はキットと共に供給される、又はそうでなければキットに付随する任意の書面、又は記録された材料を含む。キットは、1つ以上の容器、試薬、投与デバイスを更に含み得る。
【0074】
投薬量
本開示の化合物又はその組成物/製剤が投与される用量は、年齢、対象によって(例えば、他の疾患又は状態のために)服用される他の薬物、及び他の臨床的に関連する因子を含む多くの因子に依存する。典型的には、単回投与の範囲内に含まれる本開示の化合物又はその組成物/製剤の量は、有意な毒性を誘導することなく、アンモニア関連疾患又は障害又はその症状(例えば、高アンモニア血症、HE又はUCD)を効果的に治療する量である。
【0075】
本開示の化合物又はその組成物/製剤の有効量もまた、直接測定され得る。有効量は、毎日又は毎週、又はその一部で与えられ得る。典型的には、本開示の化合物の用量は、約1mg~約500mg/kg体重/日(例えば、1mg、10mg、50mg、100mg、又は250mg/kg体重/日)の範囲である。投薬量は、単回投与レジメン又は複数回投与レジメンのいずれかで提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、有効量は、約250mg~約500mg/日、約500mg~約1000mg/日、約1グラム/日、約2~12グラム/日、約14g~約86グラム/週の組成物/製剤などの範囲であり得る。
【0076】
スクリーニング方法
本開示の別の態様によれば、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状の予防若しくは治療のための化合物を同定する方法が提供され、当該方法は、細菌ウレアーゼ(又はそれを発現する細胞)を候補化合物と接触させ、細菌ウレアーゼ活性に対する当該候補化合物の効果(例えば、尿素のアンモニアへの変換)を決定することを含み、当該候補化合物の非存在下と比較して、存在下でのウレアーゼの活性の減少は、当該候補化合物が、例えば、HE及び/又はUCD若しくはその症状における、アンモニア関連疾患若しくは障害、又はその症状を予防若しくは治療し得るという指標である。
【0077】
本開示の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して実施例としてのみ与えられる、その特定の実施形態の以下の非制限的な説明を読めばより明らかになるだろう。
【0078】
本開示は、以下の非限定的な例によって更に詳細に例示される。
【0079】
実施例1:2-オクチノヒドロキサム酸の合成
【化9】
KOH(742.2mg、13mmol)及びヒドロキシルアミン塩酸塩(900mg、13mmol)を、それぞれ、3mL及び6mLのメタノール(MeOH)中で溶解させた。KOH溶液を、氷上の不活性雰囲気下で撹拌しながらヒドロキシルアミン塩酸塩溶液に添加し、そこで白色沈殿物(KCl)を観察した。全てのKOHが添加された後、得られた混合物を、KClの完全な沈殿を確実にするために、20分間撹拌させた。混合物を真空下で濾過し、2-オクチン酸メチル(1g、6.5mmol)を濾液に添加した。反応混合物を、室温で24時間撹拌し、次いで、20mLのジクロロメタン(DCM)でクエンチし、ブライン(20mL)で洗浄した。粗製物をセライトと混合し、固体充填カートリッジに充填し、CombiFlash(商標)中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)システム(DCM/MeOH)によって精製して、39mgの桃色がかった白色の2-オクチノヒドロキサム酸(2-オクチノHA)を得た(収率:4%)。重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)に溶解した2-オクチノHAについて、
1H NMR及び
13C NMRスペクトルを記録した。
【0080】
1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ 10.97(s,1H),9.09(s,1H),2.33(t,J=8.0 Hz,2H),1.52-1.45(m,2H),1.40-1.22(m,4H),0.88(t,J=8.0 Hz,3H).
【0081】
13C NMR(100 MHz,DMSO-d6)δ 150.84,88.32,74.39,30.82,27.49,22.05,18.17,14.28.
【0082】
実施例2:トランス-2-オクテノヒドロキサム酸の合成
【化10】
ヒドロキシルアミン塩酸塩(1.33g、19.2mmol)及びKOH(2.15g、38.4mmol)の2つの分離された溶液をMeOH中で調製し、氷の上に置いた。KOHの溶液をヒドロキシルアミン塩酸塩溶液に添加し、得られた混合物を20分間撹拌させた。次いで、MeOH中のトランス-2-オクテン酸メチル(0.3g、1.92mmol)の溶液を混合物に添加し、次いで、これを氷上で5分間撹拌し、除去し、室温で24時間再び撹拌した。溶液を2MのHCl水溶液で酸性化し、DCM(3×50mL)で抽出し、MgSO
4上で乾燥させた。生成物をCombiFlash(商標)MPLCシステム(DCM/MeOH)によって精製し、99.6mgのトランス-2-オクテノヒドロキサム酸(2-オクテノHA)を得た(収率:33%)。DMSO-d6に溶解した2-オクテノHAについて、
1H-NMR及び
13C NMRスペクトルを記録した。
【0083】
1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ 10.51(s,1H),8.83(s,1H),6.63(m,1H),5.73(d,J=16 Hz,1H),2.12(m,2H),1.46-1.19(m,6H),0.87(t,J=8.0 Hz,3H).
【0084】
13C NMR(100 MHz,DMSO-d6)δ 163.18,142.70,121.70,31.69,31.22,27.96,22.36,14.34.
【0085】
実施例3:トランス-3-オクテノヒドロキサム酸の合成
【化11】
1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(855mg、5.27mmol)を、5mLの乾燥テトラヒドロフラン(THF)中のトランス-3-オクテン酸(500mg、3.52mmol)の溶液に添加し、1時間撹拌した。次いで、ヒドロキシルアミン塩酸塩(500mg、7.25mmol)を混合物に添加し、放置して一晩撹拌した。反応物を、5%のKHSO
4水溶液(30ml)でクエンチし、ジクロロメタン(2×30ml)で抽出した。合わせた有機相をブライン(30ml)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。抽出物を濾過し、真空中で濃縮し、CombiFlash(商標)MPLCシステムを使用して精製して、205.22mgのトランス-3-オクテノヒドロキサム酸(3-オクテノHA)を黄色がかった結晶として得た(収率:37%)。DMSO-d6に溶解した3-オクテノHAについて、
1H-NMR及び
13C NMRスペクトルを記録した。
【0086】
1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ 10.37(s,1H),8.70(s,1H),5.56-5.36(m,2H),2.67(d,J=4 Hz,2H),1.94-1.99(m,2H),1.34-1.21(m,4H),0.90-0.82(t,J=8.0 Hz,3H).
【0087】
13C NMR(100 MHz,DMSO-d6)δ 167.84,133.40,124.12,36.96,32.00,31.36,22.07,14.25.
【0088】
実施例4:3-オクチノヒドロキサム酸の合成
【化12】
塩化オキサリル(COCl)
2(0.3mL、3.57mmol)を、4.2mLの乾燥DCM中の3-オクチン酸(204.6mg、1.43mmol)の溶液に添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。3mLのMeOH中のヒドロキシルアミン塩酸塩(205mg、2.86mmol)、3mLのMeOH中のKOH(208mg、2.86mmol)、及び200μLのヒドロキシルアミン(水中の50%溶液)の溶液を、蒸発させた混合物に添加した。反応物を室温で1時間撹拌し、その際、白色沈殿物を観察した。次いで、反応混合物を0.1MのHClで酸性化し、DCM(3×10mL)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣を、CombiFlash(商標)MPLCシステムを使用して精製して、29.7mgの3-オクチノヒドロキサム酸(3-オクチノHA)をオレンジ色の油状物として得た(収率:13.4%)。DMSO-d6に溶解した3-オクチノHAについて、
1H-NMR及び
13C NMRスペクトルを記録した。
【0089】
1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ 10.48(s,1H),8.89(s,1H),2.92(t,J=4 Hz,2H),2.17- 2.13(m,2H),1.46- 1.29(m,4H),0.87(t,J=8.0 Hz,3H).
【0090】
13C NMR(100 MHz,DMSO-d6)δ 164.41,82.60,74.49,30.81,24.49,21.80,18.21,13.93.
【0091】
実施例5:7-オクチノヒドロキサム酸の合成
【化13】
【化14】
7-オクチノヒドロキサム酸(7-オクチノHA)を、Li-アセチリド及び6-ブロモヘキサン酸を使用してSN
2型アルキル化反応を介して生成した7-オクチン酸から合成した。フレーム乾燥フラスコ中で、リチウムアセチリドジアミン錯体(245.85mg、7.69mmol)を無水DMSO中に溶解させ、0℃まで冷却した。次いで、6-ブロモヘキサン酸(1g、5.13mmol)を添加し、反応混合物を3時間撹拌させた。反応物を、ブラインで氷上でクエンチし、2MのHClで酸性化し、DCM(3×50ml)で抽出した。合わせた有機相をMgSO
4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて7-オクチン酸の無色の油状物を得、これを更に精製することなく次の反応に使用した。
【0092】
前のステップで得られた7-オクチン酸(900mg、6.42mmol)をTHF中に溶解させた。次に、CDI(3.12g、19.26mmol)を溶液に添加し、混合物を1時間激しく撹拌した。その後、ヒドロキシルアミン塩酸塩(2.23g、32.1mmol)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌させた。20時間後、反応物を30mlのKHSO4でクエンチし、DCM(3×50ml)で抽出した。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させ、真空中で濃縮し、黄色がかった油状物を得た。粗製物を、DCM/MeOH(98/2~90/10、v/v)を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。7-オクチノHAを、白色結晶(0.4g、収率40%)として得た。DMSO-d6に溶解した7-オクチノHAについて、1H-NMR及び13C NMRスペクトルを記録した。
【0093】
1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ 10.33(s,1H),8.66(s,1H),2.74(t,J=4 Hz,1H),2.12-2.16(m,2H),1.94(t,J=8.0 Hz,2H),1.40-1.53(m,4H),1.37-1.28(m,2H).
【0094】
13C NMR(100 MHz,DMSO-d6)δ 168.91,84.40,71.11,54.83,32.07,27.61,24.54,17.53.
【0095】
実施例6:ラット盲腸内容物アッセイにおける2-オクチノヒドロキサム酸の活性
HAの阻害活性を評価するために、発明者らはまず、ラット盲腸内容物を使用したインビトロアッセイを確立した。ウレアーゼ阻害剤の初期スクリーニングのための盲腸内容物試料の使用は、胃腸管内に存在する広範囲の細菌ウレアーゼをカバーする、安定した膜透過性阻害剤を迅速に同定することを可能にした。
【0096】
本明細書で確立されたプロトコルに従って、ETHフェノミクスセンターによって提供されるラット盲腸内容物を、200mMのリン酸カリウム一塩基性緩衝液(pH6.8)中で希釈し、100×gで遠心分離して、大きな粒子を除去した。分散した細菌を含む上清を収集し、尿素と混合し、次いで、一定の振盪で37℃で30分間、増加する範囲の阻害剤濃度でインキュベートした。このセットアップでは、細菌及び尿素の初期濃度を、約1000μMの最終濃度でアンモニアの産生につながる値に調整した。細菌ウレアーゼは、尿素をアンモニアに変換し、これを酵素アッセイ(アンモニアアッセイ、Randox Laboratories,UK)によって定量した。
【0097】
次いで、確立されたアッセイを使用して、市販のHA、並びに本開示の合成HAの効力を評価した。試験されたHAのほとんどが低い水溶性を有するため、シクロデキストリンを使用して化合物の水溶性製剤を調製した。本研究では、アセトヒドロキサム酸(AHA)の原液をDMSO中で調製し、オクタノヒドロキサム酸(OHA)及び2-オクチノヒドロキサム酸(2-オクチノHA)の原液を、それぞれ1:2及び1:4のモル比で2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の水溶液中に溶解することによって調製した。得られた混合物を超音波処理し、完全に溶解するまで37℃で加熱した。
【0098】
結果は、2-オクチノHAがAHA及びOHAよりも強い細菌ウレアーゼ阻害活性を呈することを示す。2-オクチノHAについてのIC
50は、それぞれ、OHA及びAHAについての0.23mM及び7.3mMと比較して、約0.038mMであった。(
図1A~
図1B)。
【化15】
【0099】
実施例7:胆管結紮ラットにおける2-オクチノヒドロキサム酸のインビボ有効性
このインビボ試験は、カナダ、モントリオールのAmplia PharmaTek Inc.によって実施された。
【0100】
2-オクチノHAの有効性は、慢性肝硬変に関連する肝性脳症(HE)の動物モデルとして、国際肝性脳症及び窒素代謝学会(ISHEN)によって推奨される胆管結紮(BDL)ラットモデルにおいて評価された。このモデルは、肝機能障害を引き起こし、それによって高アンモニア血症及び低悪性度HEの発症を引き起こす総胆管の閉塞によって得られる。
【0101】
この研究では、D0血中アンモニアレベル(n=4、27.25±6.18μmol/L)をPocketChem(商標)(Arkray、Japan)を使用して測定し、その後、全てのラットにはBDL手術を受けさせた。手術の直前に、全ての動物に、肩甲骨の間に徐放性ブプレノルフィン(72時間持続)の注射を与えた。次いで、動物を、O2中のイソフルランで麻酔した。麻酔深度は、つま先をつまむことで確認した。更に、正中線切開(2cm)を行い、次いで、総胆管を周囲の組織から単離し、絹縫合糸で2回しっかりと結紮し、2つの結紮糸の間を切断した。筋肉層には、腹部切開部をVicryl(商標)4-0で閉じ、皮膚をステープルで閉じ、Vetbond(商標)組織接着剤を1滴塗布して確実に閉じた。次いで、動物を加熱パッド上に置いて回復させた。手術後の最初の4週間、動物の疼痛レベル、黄疸の程度、体重(BW)及び疾患スコアを監視した。
【0102】
手術の28日後、4匹の雄CD(登録商標)ラット(Charles River Laboratories、Canada)が、HPβCD溶液中に溶解した30mg/kgの2-オクチノHA(HPβCDに対する2-オクチノHAの1:1のモル比)を1日2回受けた。処置を、4mL/kgで強制投与で施した。
【0103】
2-オクチノHAによる処置を開始して3日後、平均アンモニアレベルは、53±30.31μmol/Lから11±5.68μmol/Lに低下した。
【0104】
実施例8:Caco-2細胞におけるヒドロキサム酸の細胞傷害性評価
使用した化合物は、2-オクチノHA、OHA(Tokyo Chemical Industry Co.,Ltd.;Japan)及びAHA(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)であった。
【0105】
ヒト結腸直腸腺癌細胞株Caco-2は、American Type Culture Collectionから入手した。細胞を、10%ウシ胎児血清(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)及び15mM HEPES(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)高グルコース、GlutaMax(商標)、ピルビン酸(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を含有する完全培地中で培養した。細胞を、5%CO2の加湿雰囲気で37℃でインキュベートした。Caco-2細胞を、継代50から60までの実験で使用し、マイコプラズマについて陰性であることを試験した。
【0106】
HAの細胞毒性を、細胞内のデヒドロゲナーゼによってオレンジ色のホルマザンに還元されるテトラゾリウム塩WST-8に基づく比色アッセイである細胞計数キット-8(CCK-8、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を使用して評価した。450nmでのホルマザンの吸光度は、生細胞の数に直接比例する。
【0107】
HAの細胞傷害性を試験するために、Caco-2細胞を、5×103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、1日間増殖させた。次いで、細胞を、増加する範囲の阻害剤の濃度で処理し、37℃、5%CO2で更に24時間インキュベートした。陽性対照及び陰性対照として、それぞれ、10mMの過酸化水素を含む完全培地及び完全培地のみを使用した。インキュベーション後、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)で洗浄し、CCK-8試薬を含有するフェノールレッドを含まないDMEM(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)で処理し、5%のCO2を含む加湿雰囲気中で37℃で更に2時間インキュベートした。450nmでの培地の吸光度は、Tecan Infinite M200 PROプレートリーダーを使用して測定した。Caco-2細胞生存率を培地対照に対する割合として計算した。
【0108】
図2に示されるように、2-オクチノHAは、1mMまでは細胞傷害性ではなかったが、より高い濃度では、10mMの濃度で約6%まで細胞生存率を低下させる細胞傷害効果を有した。OHAは、2-オクチノHAと比較してより強い細胞傷害効果を発現し、10mMで生細胞は観察されなかった。AHAについては、10mMまでの細胞毒性は検出されなかった。過酸化水素10mMの存在下での細胞生存率は、1.79±6%であった。
【0109】
実施例9:ヒドロキサム酸の変異原性評価
使用した化合物は、2-オクチノHA、OHA(Tokyo Chemical Industry Co.,Ltd.;Japan)及びAHA(Sigma-Aldrich Co.,St.Louis,MO)であった。
【0110】
ヒドロキサム酸の変異原性は、試験化合物が様々な細菌株において逆突然変異を誘発する能力を決定する標準的なエームス(Ames)試験を使用して評価した。この実験には、市販のマイクロプレートフォーマット試験キット(Ames MPF(商標)Penta 1、Xenometrix,Switzerland)を使用した。エームス試験で最も一般的に使用された株、ヒスチジンオペロンに点変異を有するS.typhimurium、及びトリプトファンオペロンに変異を有するE.coliをモデル系として利用した。3つのヒドロキサム酸の変異原性を、4つのS.typhimurium株(TA98、TA100、TA1535、TA1537)、及び2つのE.coli株(wp2[pKM101]及びwp2 uvrA)の混合物において、製造業者のプロトコルに従って、代謝活性化(S9分画)の有無にかかわらず調べた。
【0111】
細菌を、S.typhimurium又はE.coliが細胞増殖をサポートするのに十分なヒスチジンを含有する培地中で、6濃度の試験化合物、溶媒対照(DMSO)及び陽性対照物質(以下の表I~IIに列挙される濃度)に90分間曝露した。その後、培養培地を、ヒスチジン又はトリプトファンを欠くpHインジケータ溶液で希釈し、384ウェルプレートの48ウェルに等分した。48時間以内に、アミノ酸プロトロフィーに戻る細胞を含む培地は、細菌代謝が培地のpHを低下させるにつれて黄色になった。復帰コロニーを含有する黄色のウェルの数を、試験化合物の用量ごとにカウントし、溶媒対照と比較した。
【0112】
図3A~
図3Eに示されるように、2-オクチノHAは、代謝活性化の有無にかかわらず、いずれの株においても1mMまで変異原性ではない。同様の結果が、OHAについて観察され(
図4A~
図4E)、試験した株のうちのいずれにおいても変異原性がないことが示された。AHAに関しては、TA98、TA100及びTA1537株において、5mM及び10mMで変異原性を検出した(
図5A~
図5E)。これらのデータは、全ての化合物が低変異原性を表すことを示唆している。
【表1】
【表2】
【0113】
実施例10:ラット盲腸内容物アッセイにおける不飽和アルキル化ヒドロキサム酸の活性
2-オクチノHAに加えて、8個の炭素からなる他の不飽和アルキル化HAのウレアーゼ阻害活性を評価した。これらには、2-オクテノヒドロキサム酸(2-オクテノHA)、3-オクテノヒドロキサム酸(3-オクテノHA)、3-オクチノヒドロキサム酸(3-オクチノHA)、及び7-オクチノヒドロキサム酸(7-オクチノHA)が含まれた。ラット盲腸内容物アッセイにおける効力を評価する前に、2-オクテノHA及び3-オクテノHAの原液をHPβCD溶液(HA対HPβCDの1:4モル比)を使用して調製し、3-オクチノHA及び7-オクチノHAの原液を10%DMSO及びHPβCD溶液の混合物を使用して調製した。結果を
図6に示す。7-オクチノHAは、2位又は3位に二重/三重結合を有する不飽和アルキル化HAよりも低い力価を提示した。
【化16】
【0114】
実施例11:ラットにおけるN-ニトロソジエチルアミン誘発性肝疾患における2-オクチノヒドロキサム酸のインビボ有効性
インビボ研究は、中国のWuhan Servicebio Technology Co.によって実施された。
【0115】
急性肝疾患のモデルにおいて、2-オクチノHAの有効性を、雄のSprague Dawleyラット(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd,China)において評価した。肝臓損傷は、1、3、5、及び7日目にN-ニトロソジエチルアミン(DEN)60mg/kgの腹腔内注射を繰り返すことによって誘発された。
【0116】
ラットの4群が含まれた。第1の対照群を、HPβCD270mg/kgの溶液で処置した(n=10)。第2の群を、リファキシミン30mg/kgの懸濁液で処置した(n=10)。第3の群を、リファキシミン60mg/kgの懸濁液で処置した(n=10)。第4の群を、HPβCD溶液(HPβCDに対する2-オクチノHAの1:1のモル比)に溶解させた15mg/kgの2-オクチノHAで処置した(n=10)。全ての群は、3日目から8日目まで1日に2回、強制的に処置を受けた。血液試料を、0日目、6日目及び8日目に舌下で採取した。採取した試料中の血中アンモニアレベルを、PocketChem(商標)(Arkray,Japan)を使用して測定した。
【0117】
2-オクチノHA(20±9.6μM)で処置したラットにおける6日目の血中アンモニアレベルは、HPβCD270mg/kg(44.3±14.7μM)で処置した対照群及びリファキシミン30mg/kg(44±22.4μM)で処置した群と比較して、有意に低かった。
【0118】
実施例12:異なる条件下での2-オクチノHAの安定性
2-オクチノHAの予備的安定性を、HEPES 15mMを補充したHBSS(pH7.4)で評価し、超純水中の分子の安定性と比較した。
【0119】
2-オクチノHAの両方の溶液を、0.5mg/mLの最終濃度まで調製した。2-オクチノHAを、対応する培地に完全に溶解するまで、37℃で約20分間インキュベートした。溶液を調製したら、室温で維持しながら、約1時間以内にUHPLC-UV分析を行った。クロマトグラフィー分離及び分光光度分析のために、各溶液を2μL注射した。クロマトグラフィー分離は、10cmのPolar C18 UHPLCカラムで、水、アセトニトリル、及びギ酸0.1%からなる移動相を用いて行った。200nmでのUV吸光度を監視することによって、ダイオードアレイ検出器上で検出を行った。
【0120】
2-オクチノHAを、200nmで、両方の溶液中でRT=5.36分で検出した。pH7.4の緩衝液中では、2-オクチノHAをRT=6.49分で溶出する生成物に分解した(
図8B)が、水溶液中では分解は観察されなかった(
図8A)。
【0121】
分解の生成物を同定するために、2-オクチノHAの10mMの溶液をリン酸緩衝液(KH
2PO
4 200mM、pH6.8)中で調製し、37℃で一晩インキュベートする。2-オクチノHAの完全な分解が、UHPLC-UV分析によって確認された(
図8C)。次いで、分解生成物をクロロホルムで抽出し、有機相を回収し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過した。溶媒を蒸発させ、得られた物質を
1H NMR分析のために重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)に溶解させた。
【0122】
1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ 10.99(s,1H),5.75(s,1H),2.58(t,J=7.2 Hz,2H),1.61-1.54(m,2H),1.32-1.24(m,4H),0.88-0.85(t,J=7.2 Hz,3H).
【0123】
同定された構造(2-オクチノHAの分解生成物)を以下に示す。これらのデータは、2-オクチノHAが、ほぼ中性のpHを有する緩衝溶液中でインキュベートされると、そのヒドロキサメート基を失うことを示している。
【化17】
【0124】
実施例13:雄ビーグル犬における2-オクチノHAの薬物動態(PK)
3つのPK試験をInstitut national de la recherche scientifique(Laval,QC,Canada)で実施した。
【0125】
実験の主な目的は、HPβCD(1:1モル比)(PK1)を有する2-オクチノHAの溶液のI.V.投与、コーティングされていないゼラチンカプセルサイズ0(PK2)中に製剤化された2-オクチノHAの経口(P.O.)投与、及びコーティングされた(Eudragit S100 15%w/w、クエン酸トリエチル5%w/w、イソプロピルアルコール40%w/w、エタノール40%w/w)結腸送達用ゼラチンカプセルサイズ0(PK3)(表III)中に製剤化された2-オクチノHAの経口投与後の雄ビーグル犬の血漿中の2-オクチノHAのレベルを定量化することであった。研究の各々について、3匹の動物に、対応する処置の単回用量を投与した。血漿試料を所定の時点で採取した(表III)。
【表3】
【0126】
PK1では、分析前に、血漿試料をタンパク質沈殿によって抽出した。要約すると、40μLの血漿を、1%ギ酸を含有するアセトニトリル:メタノール(80:20v/v)からなる有機溶媒溶液2体積(80μL)で沈殿させた。試料を渦流混合し、13,000rpmで遠心分離した。100μLの上清を、0.1%ギ酸(最終希釈係数6倍)を含有する100μLの水で更に希釈した。試料抽出物を、96ウェルプレートに移した。クロマトグラフィー分離及び高分解能/正確な質量分析のために、4μLの血漿抽出物を注射した。5cmのC18 UPLCカラムで分離を行い、正イオンモードの四重極飛行時間(QTof)質量分析計で検出及び定量を行った。
【0127】
PK2及びPK3の両方において、抽出前に、血漿試料(約700μL)を、水中に15μLの50%リン酸を添加することによって酸性化した。次いで、血漿試料(40μL)を、0.2%ギ酸を含むアセトニトリル:メタノール(80:20v/v)からなる有機溶媒溶液2体積(80μL)を添加することにより、タンパク質沈殿により抽出した。試料を渦流混合し、13,000rpmで5分間遠心分離した。100μLの上清を、0.1%のギ酸を含有する100μLの水(最終希釈係数6×)で更に希釈した。試料抽出物を、96ウェルプレートに移した。クロマトグラフィー分離及び更なる質量分析のために、5μLを注射した。10cmのC18 UPLCカラムでクロマトグラフィー分離を行い、正イオンモードの四重極飛行時間(QTof)質量分析計でMS検出及び定量を行った。
【0128】
較正曲線に基づいて、2-オクチノHAの濃度を定量化した。PK1において、2-オクチノHAは、m/z 156.1で、4.12分の保持時間(RT)で検出された。
図9は、投与後4時間までの2-オクチノHAの濃度プロファイルを示す。定量下限(LLOQ)未満の濃度値(すなわち、好適な精度(precision)及び精度(accuracy)で定量的に決定することができる試料中の分析物の最低量)をゼロに等しいとみなした。AUC
0-t(t=4時間)値は、I.V.投与後のノンコンパートメント分析(PK Solver 2.0)を使用して計算し、それは約1781ng/mL*時であった。
【0129】
PK2において、2-オクチノHAは、m/z 156.1で、RT=5.52分で検出された。
図10は、投与後12時間までの2-オクチノHAの濃度プロファイルを示す。LLOQ未満の濃度値は、0に等しいとみなされた。t
maxは0.5時間で観察した。AUC
0-t(t=12時間)値は、血管外投与後のノンコンパートメント分析(PK Solver2.0)を使用して計算し、それは約213ng/mL*時であった。PK1及びPK2における2-オクチノHA濃度プロファイルの用量調整AUC
0-tに基づいて、コーティングされていないゼラチンカプセル中での経口投与後の2-オクチノHAの生物学的利用能は、約4.5%であった。
【0130】
PK3では、2-オクチノHAは、コーティングされていないカプセルの投与後に得られたものよりも低い全身曝露を示す血漿(LLOQ未満)で定量化することができなかった。
【0131】
これらのデータは、結腸カプセルを介した2-オクチノHAの投与が、主な作用部位が結腸であるために望ましい全身曝露を低減させることを示唆している。特許請求の範囲は、実施例に記載の実施形態によって限定されるべきではないが、全体として記載と一致する最も広範囲の解釈が与えられるべきである。
【0132】
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