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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】毛細血管血の採血装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61B5/151 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580642
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022034638
(87)【国際公開番号】W WO2023278230
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/216,268
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ブイ.トリス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ピーター アルトホフ
(72)【発明者】
【氏名】キショア ケー.ボッカ スリニヴァサ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】スコット ウェンゼル
(72)【発明者】
【氏名】ヴラッド ヤクニッシュ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038TA02
4C038UE03
4C038UE04
4C038UE07
(57)【要約】
血液試料を得るための装置は、試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、を含むことができ、ランセットは、ホルダに形成されたポートを介してホルダに接続され、ポートによって画定された開口は、ランセットによって突刺された患者の指が確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れるような寸法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料を得るための装置であって、
試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、
前記ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、
を備え、
前記ランセットは、前記ホルダに形成されたポートを介して前記ホルダに接続され、
前記ポートによって画定された開口は、前記ランセットによって突刺された患者の指において確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れる寸法である、装置。
【請求項2】
前記ランセットの突刺端部が、前記ポートによって画定される前記開口の径よりも小さい径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポートと前記ランセットが、前記ランセットを前記ポートに挿入するための適切な向きを使用者に視覚的に確認させる、対応する構造特徴を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記対応する構造特徴が、前記ポートと前記ランセットの突刺端部とに配置された対応するリブを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記対応する構造特徴は、前記ポートと前記ランセットの突刺端部とに用いられる、同じ色を有した材料を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記ポートによって画定される開口は、前記ランセットが患者の指を穿刺するのに十分な距離で前記ポートに確実に挿入される寸法とされる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ポートによって画定される開口の径と、前記ランセットの突刺端部の径とが実質的に略同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
血液試料を得るための装置であって、
試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、
前記ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、
前記ホルダに取り外し可能に接続される収集容器と、
を備え、
前記ランセットは、ホルダに形成されたポートを介してホルダに接続され、
前記ポートによって画定された開口は、前記ランセットによって突刺された患者の指において確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れる寸法である、装置。
【請求項9】
前記ランセットの突刺端部が、前記ポートによって画定される開口の径よりも小さい径を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ポートと前記ランセットが、前記ランセットを前記ポートに挿入するための適切な向きを使用者に視覚的に確認させる、対応する構造特徴を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記対応する構造特徴は、前記ポートと前記ランセットの突刺端部とに配置された対応するリブを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記対応する構造特徴は、前記ポートと前記ランセットの穿刺端部とに用いられる、同じ色を有した材料を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
ポートによって画定される開口は、ランセットが患者の指を穿刺するのに十分な距離でポートに確実に挿入される寸法とされる、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記ポートによって画定される開口の径と、前記ランセットの突刺端部の径とが実質的に同じである、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、“毛細血管血の採血装置”の名称で2021年6月29日に出願された米国仮出願第63/216,268号の優先権を主張し、その開示全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、生体試料を得るための装置に関する。より具体的には、本開示は、制御された方法で指を突刺して絞り、血液試料を、収集し、安定化し、および分配することができる、統合された指ベースの毛細血管血の採血装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液試料などの生体試料を取得および収集するための装置は、医療産業で一般的に用いられている。医療分野で一般的に行われる採血の1つのタイプは、検査のための血液試料を収集するためにしばしば行われる毛細血管血の採血である。糖尿病などの特定の疾患では、例えば、患者の血糖値を監視するために、患者の血液を定期的に検査する必要がある。さらに、コレステロール検査キットなどの検査キットは、多くの場合、分析のために血液試料を必要とする。採血では、通常、血液試料を得るために指または他の適切な身体部分を刺すことを伴う。典型的には、そのような検査に必要な血液の量は比較的少なく、小さな刺創ないし切り口によって、通常、これらの検査に十分な量の血液がもたらされる。患者の皮膚を穿刺して患者から毛細血管の血液試料を得るために用いられる様々なタイプのランセット装置が開発されている。
【0004】
多くの異なるタイプのランセット装置が、病院、診療所、医局など、ならびに個々の消費者に市販されている。そのような装置は、典型的には、針などの先の尖った部材、または刃などの鋭利な縁部材を含み、これは、血液のわずかな流出をもたらすように、患者の皮膚に迅速な刺創または切り口を生成するために用いられる。多くの人にとって、手で持った針や刃で自分の指を刺すことは、しばしば生理的にも心理的にも困難である。結果として、ランセット装置は、始動機構を作動させることによって患者の皮膚を穿刺または切断する自動の装置に発展しつつある。装置によっては、針または刃は、患者から血液を採取することを担当する医療専門家、または患者自身によって起動されるまで待機位置に維持される。起動すると、針または刃は、患者の、例えば指の皮膚を穿刺または切開する。多くの場合、患者の皮膚を穿刺または切開するために必要な“自動”的な力を与えるために、ばねが装置に組み込まれる。
【0005】
穿刺要素または切開要素を装置から自動的に突出させまたは装置内に後退させることを特徴とする接触作動式ランセット装置の一種は、本出願の譲受人であるBecton,Dickinson and companyが所有する米国特許第9,380,975号に記載されている。このランセット装置は、ハウジングと、穿刺要素を有するランセット機構とを含む。ランセット機構は、ハウジング内に配置され、穿刺要素がハウジング内に保持される、保持位置または作動前位置と、穿刺要素がハウジングの前端を通って延在する穿刺位置との間で移動するようにされている。ランセット装置は、ランセット機構を穿刺位置に向けて付勢するためにハウジング内に配置された駆動ばねと、駆動ばねの付勢に対して後退位置にランセット機構を保持する保持ハブとを含む。保持ハブは、ランセット機構と接触係合する旋回レバーを含む。ハウジング内のアクチュエータは、レバーを旋回させ、それによって、ランセット機構をハウジングの後端に向かって移動させて、駆動ばねを少なくとも部分的に圧縮し、レバーをランセット機構との接触係合から解放する。次いで、受け取った血液試料を収集および/または検査する。この検査は、診療現場(POC)の検査装置によって実行することができ、または収集したものを検査施設に送ることによって実行することができる。
【0006】
現在、毛細血管の採血作業は、高い技能レベルを必要とする複雑な多段階作業である。この作業の多段階性によって、溶血、不十分な試料安定化、また、血餅などの試料品質の問題を引き起こすかもしれないいくつかのばらつきがもたらされる。血液試料を得るためのランセット装置を用いることは、以下には限定されないが、検査中にランセットを保持し続けること、穿刺部位から十分な血流を得ること、血液を適切に収集すること、凝固を防止することなどを含む、毛細血管の血液試料の収集に影響を与えるいくつかのばらつきをもたらし得る。作業ばらつきの最も一般的な原因には、(1)汚染された試料をもたらす可能性のある、穿刺部位の不十分な洗浄や最初の滴除去、(2)不十分な量の試料や大分の間質液をもたらす可能性のある、一貫性のない穿刺の位置および深さ、(3)溶血試料をもたらす可能性がある、血液抽出(例えば、血液搾り)を促進する際の、一貫性のない絞り技術や穿刺部位付近の過度の圧力、(4)溶血または汚染された試料をもたらす可能性のある、移送接触面や収集技術のばらつき、ならびに(5)血餅をもたらす可能性のある、不十分な試料と抗凝固剤との混合、がある。
【0007】
毛細血管の採血は、通常、医療従事者によって、その指を用いて穿刺部位の周りの組織を手動で絞るか、または真空圧力を用いて穿刺部位から血液を引き出す装置によって行われる。
【0008】
採取部位を手動で絞ることは、技術に高度に依存する作業であり、成功率や(溶血-血液細胞破裂によって測定される)試料品質に非常に大きなばらつきをもたらす。医療従事者は通常、患者による血流の違いを補うように、搾る際の圧力と速度を調整する。より強く絞ると、血液の流れが速くなるが、溶血も増すことになる。絞りの位置も、個人の好み、経験、手の疲労に応じて、医療従事者間で異なる。作業者によっては、指による“搾り”と呼ばれる作業を実行することさえあり、この作業では、指の根元から圧力を加え、それを指の先端に向かってスライドさせて行く。この作業は、試料品質の低下につながるため、国内外の保健機関では推奨していない。
【0009】
真空駆動の装置は、血流の圧力および技術を標準化するが、通常、全体的な血流の不良に悩まされる。印加できる最大圧力は、大気圧と絶対真空の差(~14psi)で制限され、装置は絶対真空のほんの一部でのみ動作する。参考のために、男性および女性の握力は平均で50~100ポンドの範囲であり、手動方法が、むしろ血流ではなく溶血の影響を受ける理由を示している。真空法はまた、一貫した圧力を作用して、組織がそれを血液で満たす能力を制限する。
【0010】
日常的な毛細血管の採血は、管理されていない作業であり、訓練を受けた医療従事者が手動で実施しなければならない。作業者は穿刺部位を自由に選択でき、このため骨に当たるリスクがより高くなる部位である指先の中央で刺す、不適切なものとなることがある。作業者はまた、自由に、刺す間に任意の力を加え得る。力が少なすぎると、浅く、有効でない切開を生じたり、または接触作動するランセットを起動できなかったりすることさえある。力が大きすぎると、軟い組織が圧迫され、切開傷が深すぎたり、骨のような敏感な組織に当たったりする危険性さえある。通常の毛細血管の採血中、ランセットは常に皮膚表面に完全に垂直に配向されるとは限らない。これは、ランセットがある角度で皮膚に入る“かすめる打撃”につながり得る。この種の突刺は、浅くて広い切開傷を生じさせ、血液産生には効果がなく、患者には痛みを伴うものとなり得る。
【0011】
従って、この技術分野では、指を突刺して絞り、試料を収集し、試料を安定させ、その後、制御された方法で試料を分配する能力を有する装置が必要となる。また、この技術分野では、典型的には、溶血や血餅を含む、低い試料品質に関係する、作業ばらつきを排除することによって、毛細血管の採血を簡素化及び合理化する装置が必要となる。当技術分野では、血液曝露および装置再使用を排除する、収集および移送のための閉じられたシステムのさらなるニーズが依然としてある。(1)毛細血管血の採血および移送のための異なる容器を収容する場合に柔軟性をもたらし、(2)高品質の均一に混合/安定化された毛細血管血液試料を生成する能力を有し、(3)毛細血管の血漿試料から装置搭載状態で血漿を生成する能力を有し、(4)痛みを軽減しながら大分の毛細血管血液試料(50~500マイクロリットルより多い)を収集する能力を有し、(5)収集時に患者情報と組合された独自の試料識別子を含み、(6)毛細血管血液を収集し、装置搭載状態での診断を実行する能力を有し、および(7)同じまたは異なる抗凝固剤を有する異なる容器に血液試料を収集するための複数の収集口を有する、装置に対するさらなるニーズが当技術分野において依然として存在する。当技術分野では、作用する圧力が標準化されかつ制御された位置、適切な血流のために十分に高いが溶血閾値未満の作用圧力、血液が指に補充されることを可能にするための、一貫した圧力ではなく規定されたリズミカルな圧力の作用、平均血流速度の増加、および操作者による最大作用圧力の低下による使用者の疲労軽減、を含む毛細血管採血装置がさらに必要とされる。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、上述のニーズを満たし、指に刺して指を突刺し絞り、試料を収集し、試料を安定化させ、その後、制御された方法で試料を分配することができる、毛細血管血の採血装置のような、生体試料を取得するための装置に関する。この装置はまた、溶血や微小血餅を含むような、試料の低品質に通常は関連する作業のばらつきを排除することによって、毛細血管の採血を簡素化し、合理化する。
【0013】
本開示には、自己完結型で完全に一体化された、指に配置される、細血管の採血装置が含まれ、この装置は、突刺し、収集し、大容量の、例えば最大500マイクロリットル以上の毛細血管の血液試料を安定化させる能力を有する。本装置は、溶血、微小血餅、患者の不快感など、一般的に試料の質の低下に関連した作業の手順やばらつきを排除することにより、大量の毛細血管の採血を簡素化し、合理化する。本装置は、指を突刺することのできる引き込み式穿刺機構と、刺した指の部位から収集容器への毛細血管の血液の接続と移送を確実にする、関連した血液流路を備える。この装置にはまた、指から血流を刺激、すなわち送り出すために周期的に絞ることができるホルダと、採取した試料を安定させるために流路または収集容器に置かれる抗凝固剤も含まれる。
【0014】
1つの構造によれば、装置は、ホルダ、ランセット、および、収集容器のような個別の構成要素を含むことができる。別の構造によれば、ランセットと収集容器は、1つの装置に統合することができ、ホルダとともに使用される。さらに別の構造によれば、ホルダ、ランセット、および収集容器は、単一のシステムに統合することができる。これらの構造のいずれかは、痛み軽減制御のために、自立型の使い捨て装置として、および/または、外部電源と組み合わせて使用されることが想定される。毛細血管血の採血装置は、小さなチューブから毛細血管ディスペンサまでの様々な毛細血管収集容器、ならびに装置搭載状態の血漿分離モジュールのためのプラットフォームとして機能することができる。この機能により、医療現場(POC)のカートリッジや、遠心分離機や分析装置で使用可能な小さな採血移送管への分配を含む、さまざまな用途に製品の柔軟性が広がる。
【0015】
本開示の一実施形態では、血液試料を得るための装置は、試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、を含むことができ、ランセットは、ホルダに形成されたポートを介してホルダに接続され、ポートによって画定された開口は、ランセットによって突刺された患者の指が確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れるような寸法である。
【0016】
本開示の一実施形態では、ランセットの突刺端部は、ポートによって画定される開口の径よりも小さい径を有することができる。ポートおよびランセットは、ランセットをポートに挿入するための適切な向きを使用者に視覚的に確認させる、対応する構造特徴を有することができる。対応する構造特徴は、ポートとランセットの突刺端部に配置された対応するリブを含むことができる。対応する構造特徴は、ポートとランセットの突刺端部に用いられる、同じ色を有した材料を含むことができる。ポートによって画定される開口は、ランセットが患者の指を穿刺するのに十分な距離で確実にポートに挿入される寸法とすることができる。ポートによって画定される開口の径とランセットの突刺端部の径は、ほぼ同じとすることができる。
【0017】
本開示の一実施形態では、血液試料を得るための装置は、試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、ホルダに取り外し可能に接続される収集容器と、を含むことができ、ランセットは、ホルダに形成されたポートを介してホルダに接続され、ポートによって画定された開口は、ランセットによって突刺された患者の指が確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れるような寸法である。
【0018】
本開示の一実施形態では、ランセットの突刺端部は、ポートによって画定される開口の径よりも小さい径を有することができる。ポートおよびランセットは、ランセットをポートに挿入するための適切な向きを使用者に視覚的に確認させる、対応する構造特徴を有することができる。対応する構造特徴は、ポートとランセットの突刺端部に配置された対応するリブを含むことができる。対応する構造特徴は、ポートとランセットの突刺端部に用いられる、同じ色を有した材料を含むことができる。ポートによって画定された開口は、ランセットが患者の指を穿刺するのに十分な距離で確実にポートに挿入される寸法とすることができる。ポートによって画定される開口の径とランセットの突刺端部の径は、ほぼ同じとすることができる。
【0019】
本発明はまた、以下の条項にも記載される。
【0020】
条項1:血液試料を得るための装置であって、試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、を備え、ランセットは、ホルダに形成されたポートを介してホルダに接続され、ポートによって画定された開口は、ランセットによって突刺された患者の指において確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れる寸法である、装置。
【0021】
条項2:ランセットの突刺端部が、ポートによって画定される開口の径よりも小さい径を有する、条項1に記載の装置。
【0022】
条項3:ポートとランセットが、ランセットをポートに挿入するための適切な向きを使用者に視覚的に確認させる、対応する構造特徴を有する、条項1または2に記載の装置。
【0023】
条項4:対応する構造特徴が、ポートとランセットの突刺端部とに配置された対応するリブを含む、条項3に記載の装置。
【0024】
条項5:対応する構造特徴は、ポートとランセットの突刺端部とに用いられる、同じ色を有した材料を含む、条項3または4に記載の装置。
条項6:ポートによって画定される開口は、ランセットが患者の指を穿刺するのに十分な距離でポートに確実に挿入される寸法とされる、条項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【0025】
条項7:ポートによって画定される開口の径と、ランセットの突刺端部の径とが略同じである、条項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【0026】
条項8:血液試料を得るための装置であって、試料源を受け入れるためのホルダであって、作動部およびポートを有するホルダと、ホルダに取り外し可能に接続されたランセットと、ホルダに取り外し可能に接続される収集容器と、を備え、ランセットは、ホルダに形成されたポートを介してホルダに接続され、ポートによって画定された開口は、ランセットによって突刺された患者の指において確実に所望の穿刺となる、所定の位置および向きのうちの少なくとも1つでランセットを受け入れるような寸法である、装置。
【0027】
条項9:ランセットの突刺端部が、ポートによって画定される開口の径よりも小さい径を有する、条項8に記載の装置。
【0028】
条項10:ポートとランセットが、ランセットをポートに挿入するための適切な向きを使用者に視覚的に確認させる、対応する構造特徴を有する、条項8または9に記載の装置。
【0029】
条項11:対応する構造特徴は、ポートとランセットの突刺端部とに配置された対応するリブを含む、条項10に記載の装置。
【0030】
条項12:対応する構造特徴は、ポートとランセットの穿刺端部とに用いられる、同じ色を有した材料を含む、条項10または11に記載の装置。
【0031】
条項13:ポートによって画定される開口は、ランセットが患者の指を穿刺するのに十分な距離でポートに確実に挿入される寸法とされる、条項8~12のいずれか1項に記載の装置。
【0032】
条項14:ポートによって画定される開口の径と、ランセットの突刺端部の径とが略同じである、条項8~13のいずれか1項に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態によるホルダの斜視図である。
図2図2は、本開示の別の実施形態による、患者の指から血液試料を得るための装置、ランセットおよび収集容器の斜視図である。
図3図3は、本開示の一実施形態による、ホルダのためのポートの大きな開口を示す概略図である。
図4図4は、本開示の一実施形態による、ホルダのための所望のポートの開口を示す概略図である。
図5図5は、本開示の一実施形態による、ホルダのためのポートの小さい開口を示す概略図である。
図6図6は、本開示の一実施形態による最適化されたランセット移動を示すグラフである。
図7図7は、本開示の別の実施形態による、患者の指から血液試料を得るための装置およびランセットの断面図である。
図8図8は、本開示の別の実施形態による、患者の指から血液試料を得るための装置および試料収集容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は、本発明を実施するために意図された、記載の実施形態を当業者が製造および使用することを可能にするために与えられる。しかしながら、様々な修正、等価物、変形、および代替物は、当業者に容易に明らかなことである。任意の、および総てのそのような修正、変形、等価物、および代替物は、本発明の主旨および範囲の中に入ることが意図されたものである。
【0035】
以下、説明の目的のために、“上部”、“下部”、“右”、“左”、“垂直”、“水平”、“最上部”、“最下部”、“横”、“縦”、およびそれらの派生語は、図面における向きそのままで本発明に関するものとする。しかしながら、本発明は、それとは反対に明示的に特定されない限り、代替的な変形を前提としてもよいことは理解されよう。また、添付の図面に示され、および以下の明細書に記載される具体的な装置および作業は、単に本発明の例示的な実施形態であることも理解されるべきである。そのため、本明細書に開示される実施形態に関連する具体的な寸法、および他の物理的な特徴は、限定的であるとしてみなされるべきではない。
【0036】
本開示は、上述したニーズを満たし、指に突刺して指を絞り、試料を収集し、試料を安定化させ、その後、制御された方法で試料を分配することができる、毛細血管血液の採血装置のような、生体試料を取得するための装置に関する。この装置はまた、溶血や微小血餅を含むような、試料の低品質に通常は関連する作業の流れのばらつきを排除することによって、毛細血管の採血を簡素化し、合理化する。装置は、医師や看護師を含む医療専門家、ならびに装置を自己適用するように使用する患者によって用いられ得る。
【0037】
採血は、圧力駆動流によって基本的に行われる。装置または技法によれば、血管外の圧力(真空駆動流)を低下させるか、または血管内の圧力を増加させるかのいずれかである。両方のアプローチによれば、血管圧力と外圧との間の差が増加し、血管内から収集容器が存在する外側への流速が増加する。軟組織(例えば、脂肪、皮膚、および筋肉組織)は血液で灌流される一方、硬組織や関節は灌流が不十分であるか、または機械的に安定しすぎるため、患者の痛みなしに圧迫するには、絞りの位置も重要であり得る。
【0038】
赤血球(RBC)は、採取中に溶血を起こしやすい。溶血(赤血球破壊)は、試料の血清中に流出させることと、ヘモグロビンによって血清を赤く着色し比色反応を妨害すること、の両方によって診断分析用の試料を汚染する。採血中の溶血量は、流速および流路に起因したせん断による細胞破壊と、組織および血管の物理的圧縮が細胞を損傷する、圧力溶血によって決定される。従って、溶血は、絞られる指の任意の位置において、加えられる圧力および流量が大きすぎないようにすることで制御できる。
【0039】
本開示には、自己完結型で完全に一体化された指ベースの毛細血管の採血装置が含まれ、この装置は、突刺し、大容量の毛細血管の血液試料、例えば、最大500マイクロリットル以上を、採血し、安定化させることができる。本装置は、溶血、微小血餅、患者の不快感など、一般的に試料の質の低下に関連した作業流れの手順やばらつきを排除することにより、大量の毛細血管の採血を簡素化し、合理化する。本装置は、指を突刺することのできる引き込み式突刺機構と、刺した指の部位から収集容器への毛細血管の血液を確実に連結しおよび移送する、関連した血液流路と、を備える。本装置にはまた、指から血流を刺激、すなわち送り出すために周期的に絞ることができるホルダと、収集した試料を安定させるために流路または収集容器に配置された抗凝血剤も含まれる。
【0040】
1つの構造によれば、装置は、ホルダ、ランセット、および、収集容器のような個別の部品を含むことができる。別の構造によれば、ランセットと収集容器は、1つの装置に統合することができ、ホルダとともに使用される。さらに別の構造によれば、ホルダ、ランセット、および収集容器は、単一のシステムに統合することができる。これらの構造のいずれかは、痛み軽減制御のために、自立型の使い捨て装置として、および/または、外部電源と組み合わせて使用されることが想定される。毛細血管血液の採血装置は、小さなチューブから毛細血管分配器までの様々な毛細血管収集容器、ならびに装置搭載状態での血漿分離モジュールのための基盤として機能することができる。この機能により、医療現場(POC)のカートリッジや、遠心分離機や分析装置で使用できる小さな採血移送管への分配を含む、さまざまな用途に対して製品の柔軟性が広がる。
【0041】
図1図2図7および図8を参照すると、例示的な実施形態では、本開示の装置10は、別個の構成要素、例えば、(図1に示される)ホルダ12、(図2および図7に示される)ランセットハウジングないしランセット14、および(図2および図8に示される)収集容器16を含む。別の例示的な実施形態では、本開示の半統合型装置は、傾いた流れを含むことができ、また、別個のホルダと接続可能な一体型のランセットハウジングおよび収集容器を含むことができる。別の例示的な実施形態では、本開示の半統合型装置は、一直線の流れを有することができ、また、別個のホルダと接続可能な一体型のランセットハウジングおよび収集容器を含むことができる。別の例示的な実施形態では、本開示の一体型装置は、斜めの流れを有することができ、また、一体型のホルダ、ランセットハウジングおよび収集容器を含むことができる。別の例示的な実施形態では、本開示の一体型装置は、一直線の流れを有することができ、また、一体型のホルダ、ランセットハウジングおよび収集容器を含むことができる。
【0042】
図1を参照すると、血液試料18などの生体試料を供給するための試料源、例えば、指19を受けることができる本開示のホルダ12の例示的な実施形態が示され、説明される。本開示のホルダ12は、通常、第1の開口22(図1)を有する指受容部20、作動部分24、第2の開口28を有するポート26、および指先ガード30を含む。一実施形態では、指先ガード30は、ホルダ12内で指19を適切に位置合わせをしおよび固定するための停止部をもたらす。指先ガード30はさらに、患者の指19に加えられた圧力が適切な血流をもたらすように、患者の指19が指受容部20内の適切な位置に確実に配置されることを補助する。
【0043】
指受容部20の第1の開口22は、血液試料18などの生体試料を供給するための試料源、例えば、指19を受容するように構成される。試料源は、第1の開口22内に嵌合することができる身体の他の部分を含むことができることが理解され得る。ポート26は、指受容部20と連通している。例えば、指19がホルダ12内に受容された状態では、ポート26は指19の一部と連通している。本開示のホルダ12は、あらゆる指のサイズに対応できる大きさにすることができる。
【0044】
ポート26の第2の開口28は、以下でより詳細に説明されるように、ランセットハウジング14および収集容器16を受容するように構成されている。一実施形態では、ポート26は、ポート26内にランセットハウジング14や収集容器16を確実に受容するための固定部32を含む。
【0045】
一実施形態では、作動部24は、ホルダ12が第1の径を画定する第1の位置と、ホルダ12が第2の径を画定する第2の位置との間で移行可能であり、ここで、第2の径は第1の径より小さい。一実施形態では、作動部24は、ホルダ12が第1の楕円形状を画定する第1の位置と、ホルダ12が第2の楕円形状を画定する第2の位置との間で移行可能であり、ここで、第1の楕円形状は第2の楕円形状とは異なる。このようにして、ホルダ12が径を縮小した第2の位置にある状態で、ホルダ12の一部が試料源に接触し、ホルダ12の作動部24が、以下でさらに詳細に説明するように、血液18を送り込みおよび/または抽出することができる。
【0046】
図1を参照すると、一実施形態では、作動部24は、接触部材34を含む。作動部24が第1の位置にあるとき接触部材34は解放位置にある。すなわち、接触部材34は、接触部材34がそれと軽く接触し得るように、試料源、例えば、指19に対して第1の位置とされる。作動部24が第2の位置にあるとき、接触部材34は係合位置にある。すなわち、接触部材34が指19に当てられて圧力接触するように、接触部材34は、試料源、例えば、指19に対して、第2の位置とされ、ホルダ12の作動部24は血液18を送り込みおよび/または抽出することができる。例えば、接触部材34が係合位置にあるとき、接触部材34は試料源に圧力を加える。
【0047】
図1を参照すると、一実施形態では、作動部24は、試料源、例えば、指19に圧力を加えるためのポンプ部材36を含む。一実施形態では、ポンプ部材36は、一対の対向するタブまたは翼38を含む。このような実施形態では、各タブ38は接触部材34を含むことができる。一実施形態では、ホルダ12は、一体型ヒンジ部42を含む。一体型ヒンジ部42によって、使用者は、翼38を、第1の位置(受動状態)と第2の位置(能動状態)との間で押し込むことができる。患者の指19から血液18を引き出すためにタブないし翼38を用いることにより、患者の指19からの血液の適切な流れを維持しつつ溶血を最小限に抑えることができる。翼38の静止位置とヒンジは、ホルダ12内に収まることができる最小の患者の指との接触および保持を維持できるとともに、血液閉塞がない状態でホルダ12内に最大の患者の指を収容できるよう屈曲するように設計される。
【0048】
有利には、本開示のホルダ12は、所望の量の血液18が収集容器16に充填されるまで、使用者が、血液18を送りおよび/または指19から血液18を吸い出すために翼38を繰り返し押し狭めたり離したりすることを可能にする。翼38は、ホルダ12で用いられ得る患者の指のサイズの範囲で軽い接触を維持し、ホルダ12を患者の指19上に保持するために、撓むように構成される。
【0049】
有利には、ホルダ12を指19に設置した状態で、ホルダ12は血流を圧縮せずに、突刺および指の絞り位置を画定する。絞りタブないし翼38は、指19全体に一貫して適用される、予め規定された範囲の絞り圧力をもたらす。そうすることで、ホルダ12は、血液抽出を促進し、潜在的な溶血を最小限に抑える、制御された軽い指のマッサージをもたらす。
【0050】
図1を参照すると、一実施形態では、ホルダ12は、安定性延長部40を含む。これによって、ホルダ12を指19に確実に配置するための追加のサポートがもたらされる。一実施形態では、指受容部20は、概してC字形の部材を形成し、ホルダ12を指19に確実に配置するための追加的なグリップおよび支持をもたらすための複数の内側グリップ部材を含む。安定性延長部40は、ホルダ12を使用している間、血液の供給および患者の指19の関節を避けながら、患者の指19との接触を維持するのを補助する。
【0051】
一実施形態では、指受容部20は、可撓性材料で形成される。いくつかの実施形態では、指受容部20およびポート26は可撓性材料で形成される。
【0052】
本開示の、血液試料18を取得するための装置10は、ホルダ12のポート26に取り外し可能に接続可能なランセットハウジングないしランセット14を含む。図7を参照すると、一実施形態では、ランセットハウジング14は、入口ないし開口50、内部52、穿刺要素54、係合部56、引き込み式機構58、および駆動ばね60を含む。一実施形態では、穿刺要素54は、穿刺要素54がランセットハウジング14の内部52内に保持されている作動前位置と、穿刺要素54の少なくとも一部がランセットハウジング14の入口50を通って延在し、指19の一部を突刺する穿刺位置との間で移動することができる。
【0053】
一実施形態では、本開示のランセット14は、接触作動ランセットであり、“接触作動ランセット装置”と題された、2005年5月6日に出願された米国特許出願公開第2006/0052809号に開示され、本出願と共通に割り当てられた特徴に従って構成され得、その開示全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0054】
一実施形態では、ランセットハウジング14は、ホルダ12および収集容器16とは別個の部品とすることができる。いくつかの実施形態では、収集容器16やランセットハウジング14は、ホルダ12のポート26に取り外し可能に接続可能な単一の構成要素を形成する。いくつかの実施形態では、収集容器16、ランセットハウジング14、およびホルダ12は、単一の構成要素を形成する。
【0055】
図7を参照すると、一実施形態では、ホルダ12とランセットハウジング14は別個の構成要素であり、ランセットハウジング14は、ホルダ12のポート26に取り外し可能に接続することができる。そのような実施形態では、ランセットハウジング14は、係合部56を含んでいる。図7を参照すると、一実施形態では、ランセットハウジング14の係合部56が、ホルダ12の固定部32内に固定されるように、ランセットハウジング14がホルダ12のポート26内に押し込まれる。このようにして、ランセットハウジング14は、ランセットハウジング14の穿刺要素54を作動させて試料源、例えば、指19を突刺しまたは穿刺することができるように、ホルダ12にしっかりと接続、固定される。いくつかの実施形態では、ホルダ12のポート26は、ポート26内にランセット14または収集容器16を固定し動かなくするための複数のリブを含む。
【0056】
ランセット14を作動させるには、ランセット14を指19に押し当てて、ランセット14の引き込み式機構58を作動させて指19を突刺する。本開示のランセット14は、正しい突刺深さおよび事前に定められた突刺位置を一貫して与えることから、十分な試料容積が確保される。
【0057】
一実施形態では、ランセット14は、穿刺要素54を穿刺位置に向けて付勢するために、ランセットハウジング14の内部52内に配置された駆動ばね60を含む。穿刺後、穿刺要素54は直ちに引き込まれ、ランセットハウジング14の内部52内に安全に固定される。
【0058】
一実施形態では、本開示のランセット14は、指19の皮膚を突刺するのに用いられ、その後、(図8に示される)血液試料18が、以下でさらに詳細に記載されるように、収集容器16に押し込まれる。
【0059】
一実施形態では、本開示のランセットハウジング14は、突刺経路に沿って指19の皮膚を突刺するのに用いられ、その後、血液試料18は、以下でさらに詳細に記載されるように、突刺経路に対して角度をなした血液流路を流れる。
【0060】
一実施形態では、ランセット14は中空針を含む。このような実施形態では、本開示のランセットハウジング14は、突刺経路に沿って指19の皮膚を突刺するのに用いられ、その後、血液試料18は、中空針を通って平行な血液流路に沿って流れる。
【0061】
図8に示されるように、血液試料18を取得するための本開示の装置10は、ホルダ12のポート26に取り外し可能に接続する収集容器16を含む。収集容器16は、血液試料18を受容するための収集空洞70、容器係合部72、採血器部74、およびキャップないし隔壁76を画定する。所望の量の血液18が容器16内に採血されると、採血された試料18を診断機器および/または検査機器に送るために、採血器部74が採血装置10から切り離される。採血器部74は、採血装置10から取り外されると、キャップないし隔壁76を介して密封され、血液試料18を収集空洞70内に保護的に密封する。
【0062】
一実施形態では、収集容器16は、ホルダ12およびランセットハウジング14とは別個の構成要素とすることができる。いくつかの実施形態では、収集容器16およびランセットハウジング14は、ホルダ12のポート26に取り外し可能に接続する単一の構成要素を形成する。いくつかの実施形態では、収集容器16、ランセットハウジング14、およびホルダ12は、単一の構成要素を形成する。
【0063】
一実施形態では、ホルダ12と収集容器16が別個の構成要素であるとき、容器16はホルダ12のポート26に取り外し可能に接続可能である。そのような実施形態では、容器16は容器係合部72を含む。一実施形態では、容器16の容器係合部72がホルダ12の固定部32内に固定されるように、容器16は、ホルダ12のポート26内に押し込まれる。このようにして、容器16は、血液試料18がホルダ12内の指19から容器16の収集空洞70に安全に流れることができるように、ホルダ12に確実に接続され、固定される。
【0064】
本開示の装置10には、数種類の収集容器16を使用できることが理解されよう。また、収集容器16は、別個の分配ユニットに関連付けることができ、または、収集容器16は、血液18を検査装置に分配するための一体型の分配部を含むことができることが理解され得る。
【0065】
次に、図1を参照して、個別の構成要素、例えば、ホルダ12、ランセットハウジングないしランセット14、および収集容器16を有する本開示の装置10の使用について説明する。
【0066】
図1を参照すると、先ず、所望の指19が洗浄され、所望の指19に対して適切なサイズを有するホルダ12が選択され、指19にしっかりと装着される。次に、図7を参照すると、ランセットハウジング14が、ホルダ12のポート26に接続される。上述したように、ランセットハウジング14の係合部分56が、ホルダ12の固定部32内に固定されるように、ランセットハウジング14が、ホルダ12のポート26内に押し込まれる。このようにして、ランセットハウジング14は、ランセットハウジング14の穿刺要素54(図7)が試料源、例えば、指19を突刺ないし穿刺するべく作動されるように、ホルダ12にしっかりと接続および固定される。ランセット14がホルダ12のポート26に接続された状態で、ランセット14は指19と連結する。
【0067】
指19の皮膚を突刺するのに、ランセット14を作動させたい場合、ランセット14を指19に押し付けてランセット14の引き込み機構58(図7)を作動させ、指19を突刺する。本開示のランセット14は、正確な、突刺深さおよび事前に規定された突刺位置を一貫してもたらし、十分な試料容積を確保する。
【0068】
指19が突刺されて指19から血液18を流出させた後、ランセット14はホルダ12から取り外され、収集容器16がホルダ12のポート26に押し込まれる。図8を参照すると、容器16の容器係合部72がホルダ12の固定部32内に固定されるように、容器16が、ホルダ12のポート26内に押し込まれる。このようにして、容器16は、血液試料18がホルダ12内の指19から容器16の収集空洞70に安全に流れることができるように、ホルダ12に確実に接続され、固定される。
【0069】
図1を参照すると、血液試料18を収集するために容器16がホルダ12に適切に固定された状態で、使用者は、所望の量の血液18が収集容器16に充填されるまで、ホルダ12の翼38を繰り返し押し狭めたり離したりして、指19から血液18を吸い出しおよび/または抽出することができる。有利には、ホルダ12を指19に配置した状態では、ホルダ12は、血流を制限せず、突刺および指の絞り位置を画定する。絞りタブないし翼38は、指19全体に一貫して適用される、予め規定された範囲の絞り圧力をもたらす。そうすることで、ホルダ12は、血液抽出を促進し、潜在的な溶血を最小限に抑える、軽い制御された指19のマッサージをもたらす。
【0070】
例えば、図1を参照すると、一実施形態では、作動部24は接触部材34を含む。作動部24が第1の位置にあるとき、接触部材34は解放位置にある。すなわち、接触部材34は、試料源、例えば、指19に対して第1の位置にある。作動部24が第2の位置にあるとき、接触部材34は係合位置にある。すなわち、接触部材34は、第2の位置にあって、試料源、例えば、指19と加圧接触しており、ホルダ12の作動部24は、血液18を吸い出すことおよび/または抽出することができる。例えば、接触部材34が係合位置にあるとき、接触部材34は試料源に圧力を加える。
【0071】
所望の量の血液18が容器16内に収集されると、採血された試料18を診断機器および/または検査機器に送るために、採血器部74が採血装置10から取り外される。採血器部74は、採血装置10から取り外されると、キャップないし隔壁76によって密封され、血液試料18が採取空洞70内に保護されるように密封される。
【0072】
本開示の装置は、検査装置が採血現場から離れたところの装置であっても、採血現場の検査装置であっても、あらゆる既知の検査装置と互換性がある。様々な採血現場の検査装置が、当技術分野で知られている。そのような採血現場の検査装置には、試験紙、スライドガラス、診断カートリッジ、または検査および分析のための他の検査装置が含まれる。試験紙、スライドガラス、および診断カートリッジは、血液試料を受け取り、その血液を1つ以上の生理学的および生化学的状態について検査する採血現場の検査機器である。カートリッジベースの構造を採用した採血現場機器は数多くあり、分析のために試料を検査室に送る必要なく、ベッドの傍らでごく少量の血液を分析することができる。これは、長期的には結果を得るための時間を節約できるが、高度にルーチン化された研究室環境とは異なる課題を生み出す。そのような検査用カートリッジの例としては、アボット企業グループのi-STAT(登録商標)検査用カートリッジが含まれる。i-STAT(登録商標)カートリッジのような検査用カートリッジは、化学物質や電解質の存在、血液学、血液ガス濃度、凝固、または心臓マーカーを含むさまざまな状態の検査に使用できる。このようなカートリッジを使用した検査結果は、臨床医に迅速に提供される。
【0073】
収集容器16はまた、血液試料18および/または収集容器16内に配置された血液試料18の成分を安定させるために、例えば、抗凝固剤など、試料安定剤を含むことができる。収集容器16はまた、所定量の試料に対応した少なくとも1つの充填量を示す線(複数可)を含むことができる。収集容器はまた、収集された血液量を表示/測定することができる。
【0074】
本開示の血液試料を得るための装置はいずれも、自立型の使い捨て装置として、および/または疼痛軽減制御のための外部電源と関連して使用することができる。例えば、ホルダ12の一部には、外部疼痛制御モジュールからの信号を受信し、疼痛軽減制御のために温熱、振動、または経皮的電気神経刺激(TENS)の少なくとも1つを与える埋め込み電極を含むことができる。本開示の血液試料を得るための装置は、装置搭載状態で血漿分離するための様々な選択肢を含むこともできる。本開示の血液試料を採取するための装置はまた、収集の際に患者情報と組合され得る固有の試料識別子を含むことができる。本開示の血液試料を採取するための装置は、収集の際に装置搭載状態で行われる診断フィードバックを含むこともできる。本開示の血液試料を取得するための装置は、二重収集、例えば、2つの試料を2つの別個の容器に収集すること、同じ供給源から複数の試料を収集することを可能にする複数の収集ポートを用いること、および抗凝固剤などの異なる試料安定化剤で試料を処理すること、も可能にすることができる。
【0075】
本開示の血液試料を取得するための装置は、ランセットと毛細管を用いた従来の毛細管採取に比べ、指からの大容量の毛細管採取を大幅に簡略化し、高度の技術を必要としないようにする。本開示の装置は、血液曝露をなくし、装置の再使用を防止する。
【0076】
本開示の血液試料を取得するための装置は、収集プロセスを簡素化し、熟練を不要とし、および効率化する。これはすべて、指に装着された後、突刺、血液抽出、安定化、および封じ込めの機能を1つのユニットでもたらす、自己完結型のクローズドシステム装置によって達成される。
【0077】
本開示の血液試料を取得するための装置は、自動化されたポンプ、制御された指絞り、および自動化された試料のラベル付けおよび処理をもたらす、自立ユニットに関連付けることができる。
【0078】
図2図5を参照すると、本開示のいくつかの実施形態によれば、ホルダ12に設けられたポート26がさらに詳細に説明される。ポート26は、安全性、血流、および溶血に関する国際的な安全ガイドラインを満たす、患者の指19に対する突刺位置を定めることができる。ポート26の径および長さは、突刺深さと突刺精度とのトレードオフについて改善され得るものであり、これらは装置10における流れおよび安全性に影響を与えるものである。現在の設計では、ランセット14の位置、角度、および力は、通常、毛細血管血の収集中には制御されない。
【0079】
本開示の一実施形態では、ポート26およびランセット14は、使用者を視覚的に、ポート26に対するランセット14の適切な回転および角度に向けるために、同様の設計特性または設計美観を含み得る。一例では、ポート26およびランセット14は、ランセット14をポート26に接続するための正確な位置および向きを使用者に示すために同じ色を有する材料で作製することができる。本開示の一実施形態では、ポート26およびランセット14は、ランセット14をポート26に挿入する向きおよび方向を使用者が視覚的に識別するのに役立つ対応するリブ82、84を有することができる。これらの対応する視覚的特徴を与えることによって、装置10の使い易さが改善される。さらに、ランセット14の向きおよびランセット14におけるランセット刃の向きを制御することによって、血液試料18が取り出される患者の指19の創傷の切り口を制御することができる。一実施形態では、ランセット14は、ポート26内で向き付けられて、血液試料18を穿刺部位で血液を玉のようにする、患者の指19に指紋の渦巻きを横断する切断をし、採血専門の医療従事者が収集容器16内に血液の滴を効率的に収集することを可能にする。患者の指19のこの位置に穴をあけることによって、指先の毛細血管床を標的にすることによる最適な血流および試料品質(溶血)を達成する。穿刺が指紋の渦に対して平行にされた場合、血液は玉状になるのではなく、どちらかといえば血液は指紋の線の間の溝を進んで行くことになる。
【0080】
図3図5を参照すると、ポート26と開口28は、装置10を使用するときに、ランセット14の突刺の深さおよび位置を制御することができる。ポート開口28がランセット14の突刺端部80よりも実質的に大きい、図3に示される一実施形態では、ランセット14は作動することが保証され得るが、突刺位置が大きく変動する。さらに、実質的に大きなポート開口28を用いることによって、使用者は、患者の指19に求めるものより、強く押し付け、また深く突刺することがある。図4を参照すると、本開示の一実施形態では、所望のポート開口28が示されている。この実施形態では、ポート開口28の径は、ランセット14の突刺端部80の径に実質的に対応する。このポート開口28を設けることによって、ランセット14が作動することが保証され、突刺位置の変動が小さくなり、突刺深さはポート26によって制限される。図5を参照すると、本開示の一実施形態では、ポート開口28は、所望のものよりも実質的に小さくすることもできる。この実施形態では、ポート26は、ランセット14が作動される前にランセット14の挿入が停止し、それによって、突刺位置に至らない。図3図5に示されるポート開口28は、総てホルダ12に用いることができるが、図4に示されるポート開口28は、ホルダ12に対して好ましいポート開口28である。
【0081】
図6を参照すると、本開示の一実施形態によれば、ランセット14の突刺移動量が示され、詳細に説明される。ポート26の形状は、患者の指19に対する突刺深さと患者の指19の所望の位置に刺すための突刺精度との兼ね合いのバランスをとるものである。図6のグラフ図に示されるように、ランセット14は、患者の指19を突刺するために、患者の指19の指を圧縮する量よりさらに移動しなければならない。ランセット14の移動は、ポート26の寸法公差、ランセット14の寸法公差、およびランセットの作動力を含む多くの要因に基づいている。ポート26の形状を基にしたランセット14の移動量がより少ない場合、より小さい突刺比率となり、患者に対するより高い精度およびより少ない骨接触リスクが得られる。ポート26の形状を基にしたランセット14の移動量がより多い場合、より高い突刺比率となるがランセット14の精度が低くなり、また、患者の指19の骨に接触するリスクが高くなる。
【0082】
ポート開口28の幅は、ランセット寸法のばらつき、ポート寸法のばらつき、指組織の圧縮性のばらつき、およびランセット14の作動力のばらつきの範囲を制御することによって、突刺の侵入深さを制御するように最適化される。各要因のばらつきは、ポート26内へランセットが移動する量の一因となるものであり、したがって、突刺深さの一因となる。移動が少なすぎると、ランセット14が適切に作動しないことがある。移動量が多すぎると、ランセット14は、深く侵入しすぎるか、または突刺位置のばらつきが大きくなる場合がある。ポート開口28は、すべてのばらつき源を考慮して調整され、ランセット14が、あまりにも深く侵入することなく、すべての患者に対して常に起動されることを確実にする。
【0083】
ポート26は、標準的な人集団の中指および薬指に対して最適化され得る。ポート26は、対象とされる組織の解剖学的構造および圧縮性を考慮することによって、任意の他の突刺位置について調整することができる。
【0084】
設計の基礎は、ランセット14が起動される前に、患者の指19がどのくらい圧縮されなければならないかを理解することである。力で作動されるランセットの場合、患者の指19は、ランセット14が作動力を超えるまで圧縮されなければならない。可能なランセット移動を増すと、突刺される患者の割合が増す(突刺成功率)。指の圧縮のばらつきがわかると、ポート26は、ランセットの移動量を制御するように設計される。突刺深さは、ランセット14とポート26との間の干渉度合を最適化することによって制御される。ランセットの断面は、ランセットの先端から装置の中央まで徐々に増加するため、ポート径を増加させると、ランセット14は、ポート26に接触する前により多く移動することができる。ランセット14が起動することができる前に、ランセット14がポート26に接触する場合、ランセット14は作動せず、突刺は失敗する。従って、突刺の成功を確実にするためには、ポート26は、ランセット14が、ポート26に接触する前に、ほぼすべての患者に対して起動することを可能にするのに十分な大きさでなければならない(“底打ち”)。
【0085】
ランセット14が底打ちに近づく前に十分に作動する場合、そのポート26によって、ランセット14は大きな角度で回転することができる。これによって、突刺の突く位置に大きなばらつきが生じ、極端な場合には、採血には有効でない浅い切り口が生じることがある。使用者の中にはまた、ランセット14の作動力をはるかに超える力で圧迫し、予想以上に組織を圧縮し、不必要に深い切断という危険を冒すことがある。従って、ポート26は、ただ高レベルの突刺成功を可能にするのに十分な大きさだけであって、それより大きなものであってはならない。これによって、突刺の成功が確実になると同時に、突刺の精度を確実にするためのポート26の能力が最大化する。指圧縮のばらつき、ランセット14の寸法公差、およびランセット作動力のばらつき(より大きい力はさらに一層大きい指圧縮を必要とする)の知識を用いて、ポート寸法および寸法公差を設定して、上述の兼ね合い(トレードオフ)を最適化した。モンテカルロ分析は、ランセット移動の分布において、信頼性の高いランセット作動を確実にするためにはやはり可能な限り最小の移動(最大突刺精度)であることを確かにした。
【0086】
毛細管採血装置の一実施形態が添付の図に示され、本明細書で詳細に説明されているが、他の実施形態は、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく、当業者に明らかであり、当業者は容易に製造される。従って、上述した説明は、限定的というよりも例示的であることを意図している。上記に記載された本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の意味および等価の範囲内にある本発明へのすべての変更は、それらの範囲内に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】