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特表2024-525029超音波測定セル及び管内の液体の体積流量の測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】超音波測定セル及び管内の液体の体積流量の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/667 20220101AFI20240702BHJP
   G01F 1/66 20220101ALI20240702BHJP
【FI】
G01F1/667 A
G01F1/66 B
G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580666
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022068144
(87)【国際公開番号】W WO2023275290
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/068358
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322005404
【氏名又は名称】ソノテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マイク クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ベニー ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐ヨアヒム ミュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ガンター ワイゼンボーン
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA04
2F035DA08
2F035DA09
2F035DA14
(57)【要約】
流体輸送管及び少なくとも6つの超音波トランスデューサを受容する連続した中央凹部を備える、該管内を流れる流体の体積流量を測定するための超音波測定セル。第1及び第2の超音波トランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、且つ第3及び第4の超音波トランスデューサは、該中央凹部の第2の反対側に配置され、これらは、流れ方向に対して斜めに測定信号を放射するように配置されている。第1及び第2のインレー領域がそれぞれ、中央凹部と対応する超音波トランスデューサの対との間の、該中央凹部の第1の側及び第2の側に配置されている。第5及び第6の超音波トランスデューサは、中央凹部に平行に、且つ互いに対向して配置されている。測定セルは、第1のインレー領域及び/又は第2のインレー領域中の超音波信号の伝播時間を測定するように構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管(20)内を流れる流体の体積流量を測定するための超音波測定セル(100)であって、
・連続した中央凹部が該流体輸送管(20)を受容できるように、長手方向に拡張された該中央凹部;
・少なくとも6つの超音波トランスデューサ(11~18);
・少なくとも2つのインレー領域(30、40);
・任意の、少なくとも2つの超音波遮断領域(90、91)を備え;
少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサ(11、12)が、該中央凹部の第1の側(70)に配置され、少なくとも第3及び第4の超音波トランスデューサ(13、14)が、該中央凹部の第2の側(80)に配置され、該中央凹部の該第1の側と該第2の側が互いに反対側にあり;
該第1及び該第2の超音波トランスデューサ(11、12)が、測定信号を該管(20)内の該流体の流れ方向に対して斜めに、該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサ(13、14)に放射することができ、且つ該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサ(13、14)によって該管(20)内の該流体の流れに対して斜めに放射される測定信号を受信できるように、該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサが配置され;
超音波カップリングゲル又はグリースが、該流体輸送管(20)と該超音波測定セル(100)との間に存在せず;
特徴として、
該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサ(11、12)によって受信又は放射される超音波信号が、第1のインレー領域(30)を少なくとも部分的に通過するように、該第1のインレー領域(30)が、該中央凹部と該第1及び該第2の超音波トランスデューサ(11、12)との間の該中央凹部の該第1の側(70)に配置され;
該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサ(13、14)によって受信又は放射される超音波信号が、第2のインレー領域(40)を少なくとも部分的に通過するように、該第2のインレー領域(40)が、該中央凹部と該第3及び該第4の超音波トランスデューサ(13、14)との間の該中央凹部の該第2の側(80)に配置され;
第5の超音波トランスデューサ(15)が、該中央凹部の第1の側(70)に配置され、該第1のインレー領域(30)が、該第5の超音波トランスデューサ(15)と該中央凹部との間に位置し;
第6の超音波トランスデューサ(16)が、該中央凹部の該第2の側(80)に配置され、該第2のインレー領域(40)が、該第6の超音波トランスデューサ(16)と該中央凹部との間に位置し;
該第5及び該第6の超音波トランスデューサ(15、16)が、該中央凹部と平行に、且つ互いに対向して配置され;
該第5及び該第6の超音波トランスデューサ(15、16)が、0.5MHz~5MHzの固有共振周波数範囲、及び6.5×106Ns/m3~30×106Ns/m3のインピーダンス範囲を有し;且つ
該超音波測定セル(100)が、該第1のインレー領域(30)及び/又は該第2のインレー領域(40)中の超音波信号の伝播時間を測定するように構成されている、前記超音波測定セル(100)。
【請求項2】
前記第1及び前記第2の超音波トランスデューサ(11、12)が、該第1の超音波トランスデューサ(11)が前記第1のインレー領域(30)と管壁(21)との間の界面及び該管壁(21)と前記管(20)内の前記流体との間の界面で反射される測定信号を放射できるように、前記中央凹部に対して角度δ’で配置され、該反射される信号が、該第2の超音波トランスデューサ(12)によって受信され、
且つ/又は
該第2の超音波トランスデューサ(12)が、該第1のインレー領域(30)と管壁(21)との間の界面及び該管壁(21)と該管(20)内の該流体との間の界面で反射される測定信号を放射することができ、該反射される信号が、該第1の超音波トランスデューサ(11)によって受信され;
且つ/又は
前記第3及び前記第4の超音波トランスデューサ(13、14)が、該第3の超音波トランスデューサ(13)が前記第2のインレー領域(40)と管壁(22)との間の界面及び該管壁(22)と該管(20)内の該流体との界面で反射される測定信号を放射できるように、該中央凹部に対して角度δ’で配置され、該反射される信号が、該第4の超音波トランスデューサ(14)によって受信され、
且つ/又は
該第4の超音波トランスデューサ(14)が、該第2のインレー領域(40)と管壁(22)との間の界面及び該管壁(22)と該管(20)内の該流体との間の界面で反射される測定信号を放射することができ;該反射される信号が、該第3の超音波トランスデューサ(13)によって受信されることを特徴とする、請求項1記載の超音波測定セル(100)。
【請求項3】
前記第1~前記第4の超音波トランスデューサ(11~14)が、前記中央凹部に対して角度δ’で配置され、δ’が、55°~75°、好ましくは60°~70°、最も好ましくは65°であることを特徴とする、請求項1又は2記載の超音波測定セル(100)。
【請求項4】
前記第5の超音波トランスデューサ(15)と前記中央凹部との間の前記第1のインレー領域(30)の拡張が、4~12mm、好ましくは4~8mm、より好ましくは5~6mmであり、且つ前記第6の超音波トランスデューサ(16)と該中央凹部との間の前記第2のインレー領域(40)の拡張が等しいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項5】
少なくとも1つの超音波遮断領域(90、91)を備え、該超音波遮断領域(90、91)が、前記第1の超音波トランスデューサ(11)と前記第2の超音波トランスデューサ(12)との間の前記中央凹部の前記第1の側(70)、又は前記第3の超音波トランスデューサ(13)と前記第4の超音波トランスデューサ(14)との間の前記中央凹部の前記第2の側(80)のいずれかに配置され;前記遮断領域(90、91)が、前記第1又は前記第2の超音波送信器(11、12)によって放射され、該中央凹部内の前記第1のインレー領域(30)と管壁(21)との間の界面で反射される超音波信号が、遮断領域(90)によって減衰することなく該第2又は該第1のトランスデューサ(12、13)に伝播するように配置されるか、又は該第3又は第4の超音波送信器(13、14)によって放射され、該中央凹部内の前記第2のインレー領域(40)と管壁(22)との間の界面で反射される超音波信号が、遮断領域(91)によって減衰することなく該第4又は該第3のトランスデューサ(13、14)に伝播するように配置されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項6】
2つの超音波遮断領域(90、91)を備え、第1の超音波遮断領域(90)が、前記第1の超音波トランスデューサ(11)と前記第2の超音波トランスデューサ(12)との間の前記中央凹部の前記第1の側(70)に配置され、第2の超音波遮断領域(91)が、前記第3の超音波トランスデューサ(13)と前記第4の超音波トランスデューサ(14)との間の該中央凹部の前記第2の側(80)に配置され;
該第1の遮断領域(90)が、該第1又は該第2の超音波送信器(11、12)によって放射され、該中央凹部内の前記第1のインレー領域(30)と管壁(21)との間の界面で反射される超音波信号が、該第1の遮断領域(91)によって減衰することなく該第2又は該第1のトランスデューサ(11、12)に伝播するように配置され;且つ
該第2の遮断領域(91)が、該第3又は該第4の超音波送信器(13、14)によって放射され、該中央凹部内の前記第2のインレー領域(40)と管壁(22)との間の界面で反射される超音波信号が、該第2の遮断領域(91)によって減衰することなく該第4又は該第3のトランスデューサ(13、14)に伝播するように配置されることを特徴とする、請求項5記載の超音波測定セル(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの超音波遮断領域(90、91)が、空気、コルク、及び金属を含む群の材料を含むことを特徴とする、請求項5又は6記載の超音波測定セル(100)。
【請求項8】
第7及び/又は第8の超音波トランスデューサ(17、18)をさらに備え、
該第7の超音波トランスデューサ(17)が、前記中央凹部の前記第1の側(70)に配置され、前記第1のインレー領域(30)が、該第7の超音波トランスデューサ(17)と該中央凹部との間にあり;且つ
該第8の超音波トランスデューサ(18)が、該中央凹部の前記第2の側(80)に配置され、前記第2のインレー領域(40)が、該第8の超音波トランスデューサ(18)と該中央凹部との間にあり;且つ
該第7及び該第8の超音波トランスデューサ(17、18)が、0.5MHz~5MHzの固有共振周波数範囲、及び6.5×106Ns/m3~30×106Ns/m3のインピーダンス範囲を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項9】
第7及び第8の超音波トランスデューサ(17、18)をさらに備え、該第7及び該第8の超音波トランスデューサ(17、18)が、前記中央凹部に平行に、且つ互いに対向して配置されていることを特徴とする、請求項8記載の超音波測定セル(100)。
【請求項10】
少なくとも1つの温度センサをさらに備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項11】
前記温度センサが、PT100、PT1000、及び熱電対を含む群から選択されることを特徴とする、請求項10記載の超音波測定セル(100)。
【請求項12】
カップリングパッドが、前記流体輸送管と前記第1のインレー領域との間、及び該流体輸送管(20)と前記第2のインレー領域(40)との間に位置することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項13】
前記超音波トランスデューサ(11~18)が、2MHz~4MHzの周波数のバースト信号を放射することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項14】
前記少なくとも2つのインレー領域(30、40)が、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-コポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスチロール(PS)、及びポリ塩化ビニル(PVC)を含む群の材料を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項記載の超音波測定セル(100)の特性パラメータを決定するための方法であって、流体輸送管(20)が該超音波測定セル(100)内に配置され、
・前記第1のインレー領域(30)と隣接する管壁(21)との界面での超音波信号の反射及び該第1のインレー領域(30)に隣接する該管壁(21)の内面と該管(20)内の前記流体の反射、並びに関連する伝播時間を測定するステップ;
・該第1のインレー領域(30)の音速1cinlay、該第1のインレー領域(30)中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t2、及び該第1のインレー領域(30)に隣接する該管壁(21)中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t4を計算するステップ;
・前記第2のインレー領域(40)と隣接する管壁(22)との界面での超音波信号の反射及び該第2のインレー領域(40)に隣接する該管壁(22)の内面と該管(20)内の該流体の反射、並びに関連する伝播時間を測定するステップ;
・該第2のインレー領域(40)中の音速2cinlay、該第2のインレー領域(40)中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t3、及び該第2のインレー領域(40)に隣接する該管壁(22)中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t5を計算するステップ;
・該第1のインレー領域(30)、該第1のインレー領域(30)に隣接する該管壁(21)、該管(20)内の該流体、該第2のインレー領域(40)に隣接する該管壁(22)、及び該第2のインレー領域(40)中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t1を測定するステップ;
・該管(20)内の該流体中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t6=t1-t2-t3-t4-t5を計算するステップ;
・該流体中の音速cfl及び/又は該流体への音波の進入角βを計算するステップを含む、前記方法。
【請求項16】
前記管(20)内の前記流体への超音波信号の入射角β’を計算するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
・前記第1の超音波トランスデューサ(11)によって放射され、前記管(20)内の流体を通過して前記第4の超音波トランスデューサ(14)に到達する超音波信号の伝播時間tFWD 1→4、及び該第4の超音波トランスデューサ(14)によって放射され、該管(20)内の流体を通過して該第1の超音波トランスデューサ(11)に到達する超音波信号の伝播時間tBWD 4→1、並びに/又は前記第2の超音波トランスデューサ(12)によって放射され、該管(20)内の流体を通過して前記第3の超音波トランスデューサ(13)に到達する超音波信号の伝播時間tFWD 3→2、及び該第3の超音波トランスデューサ(13)によって放射され、該管(20)内の流体を通過して該第2の超音波トランスデューサ(12)に到達する超音波信号の伝播時間tBWD 2→3を測定するステップ;
・該管(20)内の流体の体積流量Qを計算するステップ、をさらに含むことを特徴とする、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記第1のインレー領域(30)と隣接する前記管壁(21)との界面及び該第1のインレー領域(30)に隣接する該管壁(21)の内面と該管(20)内の流体との界面での超音波信号の反射、並びに関連する伝播時間を前記中央凹部に平行な超音波トランスデューサによって測定し;且つ前記第2のインレー領域(40)と隣接する該管壁(22)との界面及び該第2のインレー領域(40)に隣接する該管壁(22)の内面と該管(20)内の流体との界面での超音波信号の反射、並びに関連する伝播時間を該中央凹部に平行なさらなる超音波トランスデューサによって測定し、該中央凹部に平行な超音波トランスデューサ及び該中央凹部に平行なさらなる超音波トランスデューサが、好ましくは前記第5及び前記第6の超音波トランスデューサであることを特徴とする、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記第1のインレー領域(30)と隣接する前記管壁(21)との界面及び該第1のインレー領域(30)に隣接する該管壁(21)の内面と前記管(20)内の流体との界面での超音波信号の反射、並びに関連する伝播時間を前記第1及び前記第2の超音波トランスデューサ(11、12)を用いて測定し、前記第2のインレー領域(40)と隣接する前記管壁(22)との界面及び該第2のインレー領域(40)に隣接する該管壁(22)の内面と該管(20)内の流体との界面での超音波信号の反射、並びに関連する伝播時間を、前記第3及び前記第4の超音波トランスデューサ(13、14)を用いて測定することを特徴とする、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
・前記管(20)内の流体の温度を測定するステップ、をさらに含む、請求項15~19のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、管内を流れる流体の体積流量を測定するための超音波測定セルを提供し、該超音波測定セルは、流体輸送管を受容できるように、長手方向に拡張された、連続した中央凹部;少なくとも6つの超音波トランスデューサ;少なくとも2つのインレー領域、及び任意の少なくとも2つの超音波遮断領域を備える。少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサが、中央凹部の第1の側に配置され、少なくとも第3及び第4の超音波トランスデューサが、該中央凹部の第2の側に配置され、該第1の側と該第2の側は互いに反対側であり;且つ該第1及び該第2の超音波トランスデューサは、該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサが、測定信号を該管内の流体の流れ方向に対して斜めに、該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサに放射することができ、且つ該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサによって該管内の流体の流れに対して斜めに放射される測定信号を受信できるように配置されている。第1のインレー領域が、第1及び/又は第2の超音波トランスデューサによって受信又は放射される超音波信号が少なくとも部分的に該第1のインレー領域を通過するように、中央凹部と該第1及び該第2の超音波トランスデューサとの間の該中央凹部の第1の側に配置されている。さらに、第2のインレー領域が、第3及び/又は第4の超音波トランスデューサによって受信又は放射される超音波信号が少なくとも部分的に該第2のインレー領域を通過するように、中央凹部と該第3及び該第4の超音波トランスデューサとの間の該中央凹部の第2の側に配置されている。第5の超音波トランスデューサが、中央凹部の第1の側に配置され、第1のインレー領域は、該第5の超音波トランスデューサと該中央凹部との間に位置し、第6の超音波トランスデューサが、該中央凹部の第2の側に配置され、該第2のインレー領域は、該第6の超音波トランスデューサと中央凹部との間に位置する。第5及び第6の超音波トランスデューサは、中央凹部に平行に、且つ互いに対向して配置されている。測定セルは、第1のインレー領域及び/又は第2のインレー領域中の超音波信号の伝播時間を測定するように構成されている。この目的のために、本発明は、適切な方法をさらに提供する。
【0002】
超音波測定装置は、とりわけ、管内の体積流量を測定するために使用される。公知の装置では、この目的のために、移動する流体の方向における超音波の移動時間tFWD、及び正反対方向における第2の超音波の移動時間tBWDが一般的に決定される。液体の音速と液体の流速のベクトル加算によって説明される引き込み効果により、それぞれの移動時間は増加又は減少する。移動時間の差Δtは、次の式で決定することができる:
【数1】
【0003】
第1と第2の超音波の移動時間の差Δtから、管内の液体の体積流量Qを、いわゆるGeo factorを乗じることによって決定することができる。
【数2】
式中、
A 内管の断面
l 音波が管内壁間を移動する距離
din 管内壁間の距離
Cfl 流体中の音速
β 流体への音波の進入角。
【0004】
Geo factorは、使用される測定セル及び流体の特性に依存し、通常は、正確に定義された条件下で、測定セルの較正スタンドで決定される。較正された測定セルを用いるその後のすべての測定では、Geo factorは一定であると見なされる。
【0005】
しかしながら、一般的には、Geo factorは一定ではない。管の断面A、管内壁間の距離din、及び音波が内壁間を移動する距離lは一定量であるが、流体中の音速Cfl及び角度βは、測定セルの構成要素の温度に依存する。
【0006】
体積流量を測定するための超音波測定セルは、一般に、クランプオン測定セルとして使用され、該クランプオン測定セルの中央に流体輸送管が固定される。少なくとも1つの超音波トランスデューサが、管の第1の側に配置され、少なくとも1つの第2の超音波トランスデューサが、該管の第2の側に配置される。超音波トランスデューサは、測定セルのハウジングに固定される。次いで、移動時間の測定中に、超音波信号が、第1の超音波トランスデューサによって放射され、ハウジングの一部(第1の超音波トランスデューサから管までの距離)、管壁、管内の流体、管壁、ハウジングの一部(管から第2の超音波トランスデューサまでの距離)を通過し、第2の超音波トランスデューサによって受信される。超音波信号が流体を通過する物理的な角度βは、流体の音速だけではなく、ハウジング中の音速にも依存する。
【0007】
実際の測定条件が、測定セルの較正、従って一定のGeo factorの決定が行われた測定条件から離れるほど、該測定セルの測定結果の測定精度が悪くなる。このような測定装置の測定の精度と柔軟性に対する要求がますます高まっていることを考慮すると、Geo factorに与える温度の影響、及び流体の変化による流体の音速の変化の影響を考慮して、それを一定と見なさないことが望ましい。
【0008】
このためには、使用する測定セルの特性を知る必要がある。測定セルの特性は、測定に使用する音波が通過する構成要素中の音速であり、この音速は、該構成要素における一般的な温度の関数である。特に、ハウジング及び管内の流体中の音速は、温度の関数として知られる必要がある。しかしながら、従来技術で知られている測定セル及び測定方法は、各測定セルの特性を全く考慮しないか、又は不十分にしか考慮しない。
【0009】
欧州特許第3489634 A1号明細書は、流体中の音速を測定し、管壁の影響を考慮する超音波測定装置を開示している。この装置は、十字状に取り付けられた4つの超音波トランスデューサを備え、2つの超音波トランスデューサが、流体輸送管の第1の側に配置され、さらなる2つの超音波トランスデューサが、該流体輸送管の第2の側に配置されている。超音波トランスデューサはそれぞれ、管内の流体の流れ方向に対して角度をつけて配置され、移動時間の差(Δt)の測定のために設けられている。
【0010】
管壁の影響は、第1の超音波トランスデューサによって放射され、管壁内で反射され、第2の超音波トランスデューサによって受信される超音波信号によって決定される。任意に、超音波が第1の超音波トランスデューサから第2の超音波トランスデューサに直接移動するのを防止する減衰要素を超音波トランスデューサ間に配置することができる。別法では、管壁の影響は、流体の流れ方向に対して垂直に配置された超音波トランスデューサによって決定することができる。媒体中の音速は、流れ方向に対して垂直に配置された一対の超音波トランスデューサによって測定される。
【0011】
4つの超音波トランスデューサは、流体の流れ方向に対して角度をつけてハウジング内に配置されているため、流体輸送管に直接隣接していない。従って、放射された超音波は、管及び流体に衝当する前に、必然的にハウジングの一部を通過する。従って、ハウジング及び該ハウジング中の一般的な音速は、Geo factorに影響を与える。しかしながら、欧州特許第3489634 A1号明細書は、ハウジングのこの影響を考慮していないため、多くの測定作業に対して十分に高い測定精度を提供することができない。これは、測定装置が限られた範囲でしか使用できないことを意味する。
【0012】
米国特許出願公開第2006/0174717 A1号明細書は、流管の両側にある取り付けベースの内部の超音波の伝播速度の測定を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、最先端の技術に基づくと、本発明の課題は、特に流体輸送管内の体積流量を測定するための超音波測定装置、及びすべての外部測定条件(流体の異なる温度、異なる周囲温度)下で高い測定精度を実現する方法を提供することである。これは、高い測定精度を維持しながら、超音波測定装置の適用範囲を広げることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、管内を流れる流体の体積流量を測定するための超音波測定セルが提供され、該超音波測定セルは、
・連続した中央凹部が該流体輸送管を受容できるように、長手方向に拡張された該中央凹部;
・少なくとも6つの超音波トランスデューサ;
・少なくとも2つのインレー領域;
・任意の、少なくとも2つの超音波遮断領域を備え;
少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサが、該中央凹部の第1の側に配置され、少なくとも第3及び第4の超音波トランスデューサが、該中央凹部の第2の側に配置され、該中央凹部の該第1の側と該第2の側が互いに反対側にあり;
該第1及び該第2の超音波トランスデューサが、測定信号を該管内の該流体の流れ方向に対して斜めに、該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサに放射することができ、且つ該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサによって該管内の該流体の流れに対して斜めに放射される測定信号を受信できるように、該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサが配置され;
超音波カップリングゲル又はグリースが、該流体輸送管と該超音波測定セルとの間に存在せず;
特徴として、
該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサによって受信又は放射される超音波信号が、第1のインレー領域を少なくとも部分的に通過するように、該第1のインレー領域が、該中央凹部と該第1及び該第2の超音波トランスデューサとの間の該中央凹部の該第1の側に配置され;
該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサによって受信又は放射される超音波信号が、第2のインレー領域を少なくとも部分的に通過するように、該第2のインレー領域が、該中央凹部と該第3及び該第4の超音波トランスデューサとの間の該中央凹部の該第2の側に配置され;
第5の超音波トランスデューサが、該中央凹部の第1の側に配置され、該第1のインレー領域が、該第5の超音波トランスデューサと該中央凹部との間に位置し;
第6の超音波トランスデューサが、該中央凹部の該第2の側に配置され、該第2のインレー領域が、該第6の超音波トランスデューサと該中央凹部との間に位置し;
該第5及び該第6の超音波トランスデューサが、該中央凹部と平行に、且つ互いに対向して配置され;
該第5及び該第6の超音波トランスデューサが、0.5MHz~5MHzの固有共振周波数範囲、及び6.5×106Ns/m3~30×106Ns/m3のインピーダンス範囲を有し;且つ
該超音波測定セルが、該第1のインレー領域及び/又は該第2のインレー領域中の超音波信号の伝播時間を測定するように構成されている。
【0015】
さらに、本発明による超音波測定セルの特性パラメータを決定するための方法が提供され、流体輸送管が、該超音波測定セル内に配置され、該方法は、
・第1のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第1のインレー領域に隣接する該管壁の内面と該管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間を測定するステップ;
・該第1のインレー領域の音速1cinlay、該第1のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t2、及び該第1のインレー領域に隣接する該管壁中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t4を計算するステップ;
・第2のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第2のインレー領域に隣接する該管壁の内面と該管内の該流体の反射、並びに関連する伝播時間を測定するステップ;
・該第2のインレー領域中の音速2cinlay、該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t3、及び該第2のインレー領域に隣接する該管壁中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t5を計算するステップ;
・該第1のインレー領域、該第1のインレー領域に隣接する該管壁、該管内の該流体、該第2のインレー領域に隣接する該管壁、及び該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t1を測定するステップ;
・該管内の該流体中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t6=t1-t2-t3-t4-t5を計算するステップ;
・該流体中の音速cfl及び/又は該流体への音波の進入角βを計算するステップを含む。
【0016】
詳細な説明
測定セル
本発明による超音波測定セルは、中央凹部が流体輸送管を受容できるように、長手方向に拡張された、連続した該中央凹部を備える。当該技術分野で公知の超音波測定セルによると、本発明による測定セルは、クランプオン型セルであり、これは、可撓管が測定セルの中央凹部にクランプされることを意味する。流体輸送管と超音波測定セルとの間の接触力が強いため、高品質の音響カップリングが達成され、管と超音波測定セル(特にインレー領域と該管)との間に追加の超音波カップリングゲル又はグリースを使用する必要がない。従って、流体輸送管と超音波測定セルとの間、特に該管と第1及び第2のインレー領域との間には、超音波カップリングゲル又はグリースが存在しない。さらに、管は、好ましくは、以下の典型的な特性を有するプラスチック管である:
ショア硬度範囲:ショアA20~ショアA95;
音速範囲:700m/s~3000m/s;
密度:0.9~2.5g/cm3
減衰値:0.05~5dB/mm/MHz;
管の外径:3~66mm。
【0017】
本発明の一実施態様では、管は、シリコン管、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)管、及びTYGON管を含む群から選択される。TYGON管は、様々な材料からなる可撓性ポリマー管の系列を表す。
【0018】
本発明のさらなる実施態様では、管と測定セルとの間にカップリングパッドが使用され、該カップリングパッドは、固体材料から形成されている。好ましくは、カップリングパッドは、流体輸送管と第1のインレー領域との間、及び該流体輸送管と第2のインレー領域との間に位置する。これにより、ショア硬度の高い硬質プラスチック管を、このような硬質プラスチックでなければ十分な音波の伝達には小さすぎたであろうインレー領域との接触面積を有する、記載の測定セルで使用することが可能となる。接触力が強いため、カップリングパッドは、管と該カップリングパッドとの間又は該カップリングパッドと超音波測定セルとの間、特に第1及び第2のインレー領域と該カップリングパッドとの間に超音波カップリングゲル又はグリースを必要とせずに、管の周りに配置される。適切なカップリングパッドは、以下の音響特性を有する:
ショア硬度範囲:ショアA20~ショアA95;
音速範囲:700m/s~2500m/s;
密度:0.9~2.0g/cm3
減衰値:0.05~5dB/mm/MHz;
厚さ:0.2~15mm。
【0019】
本発明の文脈において、硬質プラスチック管は、以下の特性を有するプラスチック管である:
ショア硬度範囲:ショアA95以上;
音速範囲:700m/s~3000m/s;
密度:0.9~2.5g/cm3
減衰値:0.05~5dB/mm/MHz;
管の外径:3~66mm。
【0020】
硬質プラスチック管の例としては、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)管、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)管、及びPE(ポリエチレン)管が挙げられる。
【0021】
ここで、厚さは、管壁と各インレー領域との間のカップリングパッドの寸法を表す。好ましくは、カップリングパッドは、管の両側に使用される。
【0022】
測定セルは、少なくとも6つの超音波トランスデューサを備える。この少なくとも6つの超音波トランスデューサは、均質なゼロギャップボンディング法を用いて、接着剤によって第1又は第2のインレー領域に取り付けられる。これにより、音響信号の波長の1倍以下の厚さの接着層が可能となる。従って、接着層は、音響に影響しない。少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、少なくとも第3及び第4の超音波トランスデューサは、該中央凹部の第2の側に配置され、該中央凹部の第1の側と第2の側は、互いに反対側にある。さらに、第1及び第2の超音波トランスデューサは、該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサが、測定信号を管内の流体の流れ方向に対して斜めに、第3及び/又は第4の超音波トランスデューサに放射することができ、且つ該第3及び/又は該第4の超音波トランスデューサによって該管内の流体の流れに対して斜めに放射される測定信号を受信できるように配置される。
【0023】
好ましくは、第1の超音波トランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、第4の超音波トランスデューサは、該中央凹部の第2の側に配置され、両方の超音波トランスデューサは、該第1の超音波トランスデューサによって放射される超音波信号を該第4の超音波トランスデューサによって受信することができ、その逆も同様であるように配置される。さらに、第2の超音波トランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、第3の超音波トランスデューサは、該中央凹部の第2の側に配置され、両方の超音波トランスデューサは、該第2の超音波トランスデューサによって放射される超音波信号を該第3の超音波トランスデューサによって受信することができ、その逆も同様であるように配置される。従って、第1~第4の超音波トランスデューサは、十字状の配置をとり、中央凹部に対して斜め、従って管内の流体の流れ方向に対して斜めに配置される。
【0024】
測定セルは、少なくとも2つのインレー領域をさらに備える。第1のインレー領域は、第1及び/又は第2の超音波トランスデューサによって受信又は放射される超音波信号が、該第1のインレー領域を少なくとも部分的に通過するように、中央凹部と該第1及び該第2の超音波トランスデューサとの間の該中央凹部の第1の側に配置されている。第2のインレー領域は、第3及び/又は第4の超音波トランスデューサによって受信又は放射される超音波信号が、該第2のインレー領域を少なくとも部分的に通過するように、中央凹部と該第3及び該第4の超音波トランスデューサとの間の該中央凹部の第2の側に配置されている。
【0025】
好ましくは、少なくとも2つのインレー領域は、次の音響特性を有する:
音速範囲:1500~3000m/s;
音響インピーダンス範囲:1×106~5×106Ns/m3
密度:0.9~2.0g/cm3
減衰値:0.05~5dB/mm/MHz。
【0026】
本発明の一実施態様によると、少なくとも2つのインレー領域は、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-コポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスチロール(PS)、及びポリ塩化ビニル(PVC)を含む群の材料を含む。
【0027】
第5の超音波トランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、第1のインレー領域は、該第5の超音波トランスデューサと該中央凹部との間に位置し、第6の超音波トランスデューサは、該中央凹部の第2の側に配置され、第2のインレー領域は、該第6の超音波トランスデューサと該中央凹部との間に位置する。
【0028】
第5及び第6の超音波トランスデューサは、中央凹部と平行に、且つ互いに対向して配置されている。つまり、第5又は第6の超音波トランスデューサによって放射される超音波信号は、第1のインレー領域、流体を含む管、及び第2のインレー領域を通過し、該第5又は該第6の超音波トランスデューサとは反対側にある超音波トランスデューサによって受信される。さらに、第5及び第6の超音波トランスデューサは、超音波信号を放射し、反射される超音波信号又はある超音波トランスデューサによって放射される信号のいずれかの超音波信号を受信するように構成されている。
【0029】
好ましくは、第5の超音波トランスデューサは、第1と第2の超音波トランスデューサとの間に配置され、第6の超音波トランスデューサは、第3と第4の超音波トランスデューサとの間に配置される。
【0030】
本発明によると、第5及び第6の超音波トランスデューサは、0.5MHz~5MHzの固有共振周波数範囲及び6.5×106Ns/m3~30×106Ns/m3のインピーダンス範囲を有する。好ましい実施態様では、第5及び第6の超音波トランスデューサは、圧電複合材料を含む。本発明による超音波を使用することにより、第5及び第6の超音波トランスデューサは、短いバースト信号を放射することができる。1~2のバーストの場合、これは、対応するトランスデューサ周波数の周期の1~2倍、即ち0.3~1μs(3~2MHzの範囲)に相当する。本発明の好ましい実施態様では、バースト信号は、1~2.5μsの長さを有する。短いバースト信号は、超音波トランスデューサが信号を放射し、このため超音波信号を受信できない時間枠が相応に短くなるという利点を有する。最先端の技術では、圧電セラミックを含む超音波トランスデューサ測定セルが使用されている。標準的な圧電セラミックでは、波が完全に減衰するまでの信号長は、説明した超音波トランスデューサと比較して約2倍長である。
【0031】
本発明の好ましい実施態様では、超音波送信器は、1MHz~4MHzの周波数のバースト信号を放射する。本発明による超音波トランスデューサを使用することにより、バースト信号を放射したすぐ後に、超音波信号を超音波トランスデューサによって受信することができる。これにより、圧電セラミックを含む超音波トランスデューサに比べて短いランタイムで、反射されるエコー信号を超音波トランスデューサで受信及び検出できることが可能となる。
【0032】
本発明の一実施態様では、第5の超音波トランスデューサと中央凹部との間の第1のインレー領域の拡張は、4~12mm、好ましくは4~8mm、より好ましくは5~6mmであり、第6の超音波トランスデューサと該中央凹部との間の第2のインレー領域の拡張は等しい。第1及び第2のインレー領域の拡張は、超音波トランスデューサの励起信号が減衰し、従って同じ超音波トランスデューサが妨害されていないエコーを受信できるように選択される。
【0033】
測定セルの設計により、第5及び/又は第6の超音波送信器を使用して、管内壁及び管外壁で反射される超音波信号を測定することができる。これにより、管内壁は、管壁と管内の流体との界面として定義され、管外壁は、インレー領域と中央凹部内の管との界面として定義される。
【0034】
本発明の一実施態様では、超音波信号は、第5の超音波トランスデューサによって放射される。超音波信号は、管外壁及び管内壁で反射され、反射された超音波信号は、第5の超音波トランスデューサで受信される。これにより、管壁内及び第1のインレー領域内の超音波信号のランタイムを検出することができる。本発明によると、測定セルのすべての寸法は既知である。従って、管壁内及び第1のインレー領域内の超音波の音速を計算することができる。
【0035】
本発明のさらなる実施態様では、超音波信号は、第6の超音波トランスデューサによって放射される。この超音波信号は、管外壁及び管内壁で反射され、反射された超音波信号は、第6の超音波トランスデューサで受信される。これにより、管壁内及び第2のインレー領域内の超音波信号のランタイムを検出することができる。従って、管壁中及び第2のインレー領域中の音速を計算することができる。
【0036】
これらの超音波エコーの測定は、一方で、本発明による超音波トランスデューサ、例えば、短いバースト信号を可能にする圧電複合材料が使用され、他方で、インレー領域が、第5と第6の超音波トランスデューサとの間に位置し、超音波信号が中央凹部内の管に入る前に該超音波信号の明確に定義された予移動距離を提供する場合にのみ可能である。従って、受信した反射超音波信号を、放射されたバースト信号から分離することができる。
【0037】
さらに、第5と第6の超音波トランスデューサの対を使用して、該第5又は該第6の超音波トランスデューサのいずれかによって放射され、第1のインレー領域を通り、流体を含む管を通り、第2のインレー領域を通り、そして該第6又は該第5の超音波トランスデューサのいずれかによって受信される超音波信号を測定することができる。一実施態様では、超音波信号は、第5の超音波トランスデューサによって放射され、第6の超音波トランスデューサによって受信される。さらなる実施態様では、超音波信号は、第6の超音波トランスデューサによって放射され、第5の超音波トランスデューサによって受信される。この測定経路により、管内の流体に対して垂直に伝播するため、流体の流れの影響を受けない超音波のランタイムの検出が可能となる。
【0038】
第1及び第2の超音波トランスデューサは、好ましくは、該第1の超音波トランスデューサが、第1のインレー領域と管壁との間の界面及び該管壁と管内の流体との間の界面で反射される測定信号を放射できるように、中央凹部に対して角度δ’で配置され、該反射される信号は、該第2の超音波トランスデューサによって受信され、
且つ/又は
該第2の超音波トランスデューサは、該第1のインレー領域と管壁との間の界面及び該管壁と該管内の流体との間の界面で反射される測定信号を放射することができ、該反射される信号は、該第1の超音波トランスデューサによって受信され、
且つ/又は
第3及び第4の超音波トランスデューサは、該第3の超音波トランスデューサが、第2のインレー領域と管壁との間の界面及び該管壁と該管内の流体との間の界面で反射される測定信号を放射できるように、該中央凹部に対して角度δ’で配置され、該反射される信号は、該第4の超音波トランスデューサによって受信され、
且つ/又は
該第4の超音波トランスデューサは、該第2のインレー領域と管壁との間の界面及び該管壁と該管内の流体との間の界面で反射される測定信号を放射することができ、該反射される信号は、該第3の超音波トランスデューサによって受信される。
【0039】
さらに、第1~第4の超音波トランスデューサは、中央凹部に対して角度δ’で配置され、δ’は、55°~75°、好ましくは60°~70°、最も好ましくは65°である。
【0040】
この組立により、中央凹部の管内壁で反射される超音波信号のランタイム、及び中該央凹部の管外壁で反射される超音波信号のランタイムを測定することが可能である。これらのランタイム中に超音波が移動する距離が分かっているため、インレー中及び管壁中の音速を計算することができる。音速が分かっている場合、インレー中及び/又は管壁中の超音波のランタイムを任意の距離で計算することができる。
【0041】
第1及び第2の超音波送信器を利用することにより、第1のインレー領域中の音速及び管壁中の音速を測定することができる。第3及び第4の超音波送信器を利用することにより、第2のインレー領域中の音速及び管壁中の音速を測定することができる。
【0042】
超音波測定セルの設計により、該測定セルは、第1のインレー領域及び/又は第2のインレー領域中の超音波信号の伝播時間を測定するように構成されている。これは、中央凹部に平行に配置された超音波トランスデューサのうちの少なくとも1つを利用することによって、又は第1及び第2の超音波トランスデューサ若しくは第3及び第4の超音波トランスデューサを利用することによって行うことができる。
【0043】
超音波測定セルが、管と第1のインレー領域との間及び該管と第2のインレー領域との間にカップリングパッドを備える場合、カップリングパッド中の超音波信号の伝播時間も測定することができる。これは、中央凹部に平行に配置された超音波トランスデューサのうちの少なくとも1つを利用することによって、又は第1及び第2の超音波トランスデューサ若しくは第3及び第4の超音波トランスデューサを利用することによって行うことができる。
【0044】
一実施態様では、超音波測定セルは、少なくとも1つの超音波遮断領域をさらに備え、該超音波遮断領域は、第1と第2の超音波トランスデューサの間の中央凹部の第1の側、又は第3と第4の超音波トランスデューサの間の該中央凹部の第2の側のいずれかに配置され;該遮断領域は、該第1若しくは第2の超音波送信器によって放射され、第1のインレー領域と該中央凹部内の管壁との間の界面で反射される超音波信号が、遮断領域によって減衰することなく該第2若しくは該第1のトランスデューサに伝播するように配置されるか、又は該第3若しくは該第4の超音波送信器によって放射され、第2のインレー領域と該中央凹部内の該管壁との間の界面で反射される超音波信号が、遮断領域によって減衰することなく該第4又は該第3のトランスデューサに伝播するように配置される。
【0045】
本発明のさらなる一実施態様では、測定セルは、2つの超音波遮断領域を備え、第1の超音波遮断領域は、第1と第2の超音波トランスデューサとの間の中央凹部の第1の側に配置され、第2の超音波遮断領域は、第3と第4の超音波トランスデューサとの間の中央凹部の第2の側に配置される。第1の遮断領域は、第1又は第2の超音波送信器によって放射され、第1のインレー領域と中央凹部内の管壁との間の界面で反射される超音波信号が、該第1の遮断領域によって減衰することなく、該第2又は該第1のトランスデューサに伝播するように配置され;第2の遮断領域は、第3又は第4の超音波送信器によって放射され、第2のインレー領域と該中央凹部内の管壁との間の界面で反射される超音波信号が、該第2の遮断領域によって減衰することなく、該第4又は該第3のトランスデューサに伝播するように配置される。
【0046】
従って、反射される超音波信号は、超音波遮断領域によって減衰されない。しかしながら、有利なことに、遮断領域は、インレー領域と管壁との間の界面で反射されない超音波信号が、中央凹部の同じ側にある超音波送信器によって受信されることを防止する。これは、超音波信号が第1の超音波トランスデューサから第2の超音波トランスデューサ又はその逆に直接送信されないし、第3の超音波送信器から第4の超音波送信器又はその逆にも送信されないことを意味する。この機能により、信号品質が向上し、放射する超音波送信器から直接来る信号と反射された信号との不所望の重なりが排除される。
【0047】
少なくとも1つの超音波遮断領域は、空気、コルク、及び金属を含む群の材料を含む。原則として、音響特性インピーダンスがインレー領域の材料の音響特性インピーダンスと大きく異なる、又は特に高い音響減衰を有するすべての材料が適している。
【0048】
本発明によると、第1~第4の超音波送信器は、0.5MHz~5MHzの固有共振周波数範囲及び6.5×106Ns/m3~30×106Ns/m3のインピーダンス範囲を有する圧電複合材料、圧電セラミック、又は超音波トランスデューサを含み、好ましくは、該第1~第4の超音波送信器は、圧電複合材料を含む。適切な圧電複合材料については既に説明した。本発明の好ましい実施態様では、超音波送信器は、1MHz~4MHzの周波数、最も好ましくは3MHzの周波数でバースト信号を放射する。
【0049】
本発明のさらなる実施態様では、超音波測定セルは、第7及び/又は第8の超音波トランスデューサをさらに備え、該第7のトランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、第1のインレー領域は、該第7のトランスデューサと該中央凹部との間にあり、該第8のトランスデューサは、該中央凹部の第2の側に配置され、第2のインレー領域は、該第8のトランスデューサと該中央凹部との間にある。第7及び第8のトランスデューサは、0.5MHz~5MHzの固有共振周波数範囲及び6.5×106Ns/m3~30×106Ns/m3のインピーダンス範囲を有する。好ましい実施態様では、第5及び第6の超音波トランスデューサは、圧電複合材料を含む。
【0050】
本発明のさらなる実施態様では、超音波測定セルは、第7及び第8の超音波トランスデューサをさらに備え、該第7のトランスデューサは、中央凹部の第1の側に配置され、第1のインレー領域は、該第7のトランスデューサと該中央凹部との間にあり、該第8のトランスデューサは、該中央凹部の第2の側に配置され、第2のインレー領域は、該第8のトランスデューサと該中央凹部との間にある。第7及び第8のトランスデューサは、中央凹部と平行に、且つ互いに対向して配置される。
【0051】
好ましくは、第7の超音波トランスデューサは、第1と第2の超音波トランスデューサの間に配置され、第8の超音波トランスデューサは、第3と第4の超音波トランスデューサの間に配置される。
【0052】
第7及び第8の超音波トランスデューサの機能は、第5及び第6の超音波トランスデューサの機能に相当する。従って、第5及び第6の超音波トランスデューサについて説明したすべての特徴は、第7及び第8の超音波トランスデューサにも適用される。中央凹部に平行に配置されたさらなる超音波トランスデューサにより、超音波測定セルのさらなる位置での既に説明した反射エコーの測定が可能になる。これにより、インレー領域中及び管壁中の音速を、超音波測定セル内の2つの異なる位置で決定することができる。これにより、例えば近接する電子部品によって生じる測定セル内の温度勾配を考慮することができる。
【0053】
本発明の一実施態様では、超音波測定セルは、第5と第7の超音波トランスデューサとの間に配置された少なくとも1つの超音波遮断領域を備える。本発明のさらなる実施態様では、超音波測定セルは、第6と第8の超音波トランスデューサとの間に配置された少なくとも1つの超音波遮断領域を備える。
【0054】
本発明のさらなる実施態様では、超音波測定セルは、少なくとも1つの温度センサをさらに備える。温度センサは、管内の流体の温度を測定するように構成されている。従って、温度センサは、好ましくは、第1又は第2のインレー領域と中央凹部との界面に配置される。好ましくは、温度センサは、超音波測定セルのどの超音波トランスデューサによって放射される超音波信号の伝播経路にも存在しない。適切な温度センサは、例えば、PT100、PT1000、及び熱電対である。温度センサは、-20~100℃の温度範囲に対応する必要がある。
【0055】
超音波測定セルは、電子式小型センサをさらに備える。この電子式小型センサは、超音波信号のポスト増幅を可能にする、信号の増幅及び伝播時間の測定の手段を備える。さらに、電子式小型センサは、パルスエコー測定を可能にするためのスイッチを備える。
【0056】
好ましい実施態様では、電子式小型センサは、測定データをさらに処理するように適合されている。特に、電子式小型センサは、本発明の方法に従って計算を実行するように設定されている。これは、本発明による超音波測定セルが、管内の流体の流れを測定するための小型装置を提供し、それによって外部測定条件の補正が行われるという点で有利である。有利なことに、この実施態様では、例えば外部計算装置上でのさらなるデータ処理は必要ない。さらに、一実施態様では、超音波測定セルは、電流出力及び/又はデジタル出力を備え、測定及び/又は計算データを、該電流出力及び/又は該デジタル出力を介して出力することができる。
【0057】
本発明のさらなる実施態様では、超音波測定セルは、外部計算装置との少なくとも1つのインターフェイスを備える。適切な外部計算装置は、例えば、PC、タブレット、又はスマートフォンであり得る。外部計算装置は、超音波測定セルによって測定されたデータをさらに処理するように適合されている。特に、外部計算装置は、本発明の方法に従って計算を実行するように設定されている。外部計算装置は、測定及び/又は計算データを視覚化するためのディスプレイを備えることができる。
【0058】
方法
本発明は、本発明による測定セルの特性パラメータを決定するための方法をさらに含み、流体輸送管が、測定セル内に配置され、この方法は、
・第1のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第1のインレー領域に隣接する該管壁の内面と該管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間を測定するステップ;
・該第1のインレー領域の音速1cinlay、該第1のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t2、及び該第1のインレー領域に隣接する該管壁中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t4を計算するステップ;
・第2のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第2のインレー領域に隣接する該管壁の内面と該管内の該流体の反射、並びに関連する伝播時間を測定するステップ;
・該第2のインレー領域中の音速2cinlay、該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t3、及び該第2のインレー領域に隣接する該管壁中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t5を計算するステップ;
・該第1のインレー領域、該第1のインレー領域に隣接する該管壁、該管内の該流体、該第2のインレー領域に隣接する該管壁、及び該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t1を測定するステップ;
・該管内の該流体中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t6=t1-t2-t3-t4-t5を計算するステップ;
・該流体中の音速cfl及び/又は該流体への音波の進入角βを計算するステップを含む。
【0059】
本発明の超音波測定セルについて説明したすべての特徴は、本発明の方法にも適用され、その逆も同様である。
【0060】
本発明によると、第1のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第1のインレー領域に隣接する管壁の内面と管内の流体の反射、並びにこれらに関連する超音波信号の伝播時間が測定される。
【0061】
本発明による測定セルを利用して、以下の測定経路を使用することができる:
(a)第5の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、該第5の超音波トランスデューサによって受信される;
(b)第7の超音波トランスデューサが存在する場合、該第7の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、該第7の超音波トランスデューサによって受信される;
(c)第1の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、第2の超音波トランスデューサによって受信される;
(d)該第2の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、該第1の超音波トランスデューサによって受信される。
【0062】
すべての測定経路は、単独で使用することも、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0063】
さらに、第1のインレー領域中の音速1cinlay、該第1のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t2、及び該第1のインレー領域に隣接する管壁中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t4が計算される。
【0064】
測定経路(a)及び/又は(b)を使用することにより、超音波トランスデューサによって受信されたエコー信号は、伝播時間t2及びt4を直接含む。
【数3】
式中、t2*及びt4*は、反射された超音波信号(エコー信号)の測定された伝播時間である。
【0065】
第1のインレー領域中の音速及び該第1のインレー領域に隣接する管壁中の音速を、関係式v=s/tで計算することができる。第1のインレー領域を通る経路長及び管壁の厚さは、既知のパラメータである。
【0066】
測定経路(c)及び/又は(d)を使用することにより、既に記載したように、検出されたエコー信号を使用して、第1のインレー領域中及び該第1のインレー領域アナログに隣接する管壁中の音速を計算することができ、それにより、次の式が得られる:
【数4】
式中、t7は、第1又は第2の超音波トランスデューサによって放射され、管壁と第1のインレー領域との界面で反射され、該第2又は該第1の超音波トランスデューサによって受信される超音波信号の伝播時間である。t8は、該第1又は該第2の超音波トランスデューサによって放射され、管壁と流体との界面で反射され、該第2又は該第1の超音波トランスデューサによって受信される超音波信号の伝播時間である。関係式v=s/tによって伝播時間t2及びt4を計算することができる。
【0067】
本発明の方法によると、第2のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第2のインレー領域に隣接する管壁の内面と管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間が測定される。
【0068】
本発明による測定セルを利用して、以下の測定経路を使用することができる;
(e)第6の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、該第6の超音波トランスデューサによって受信される;
(f)第8の超音波トランスデューサが存在する場合、該第8の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、該第8の超音波トランスデューサによって受信される;
(g)第3の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、第4の超音波トランスデューサによって受信される;
(h)該第4の超音波トランスデューサが超音波信号を放射し、該超音波信号が反射され、該第3の超音波トランスデューサによって受信される。
【0069】
同様に、すべての測定経路は、単独で使用することも、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0070】
測定された伝播時間を使用することにより、第2のインレー領域中の音速2cinlay、該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t3、及び該第2のインレー領域に隣接する管壁中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t5を計算することができる。これは、パラメータ1cinlay、t2、及びt4の計算で既に説明したように行われる。
【0071】
有利なことに、本発明の方法は、管中の音速ctubeだけではなく、インレー領域中の音速も測定することを可能にし、従って、両方のインレー領域の音速が独立に測定される。従って、インレー領域中の音速に影響を与える、該インレー領域の材料の不均一性又は温度勾配を考慮することができる。
【0072】
本発明の一実施態様では、測定経路(a)、(b)、(e)、及び(g)を使用することができる。この実施態様では、1つのインレー領域内の2つの異なる位置でそのインレー領域中の音速を測定することにより、1つのインレー領域中の温度勾配を考慮することも可能である。
【0073】
従って、本発明の一実施態様では、第1のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第1のインレー領域に隣接する管壁の内面と管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間が、中央凹部に平行な超音波トランスデューサによって測定され;且つ
第2のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第2のインレー領域に隣接する管壁の内面と管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間が、中央凹部に平行なさらなる超音波トランスデューサによって測定される。
【0074】
本発明のさらなる実施態様では、第1のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第1のインレー領域に隣接する管壁の内面と管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間が、第1及び第2の超音波トランスデューサを使用して測定され、且つ第2のインレー領域と隣接する管壁との界面での超音波信号の反射及び該第2のインレー領域に隣接する管壁の内面と管内の流体の反射、並びに関連する伝播時間が、第3及び第4の超音波トランスデューサを用いて測定される。
【0075】
さらに、第1のインレー領域、該第1のインレー領域に隣接する管壁、管内の流体、第2のインレー領域に隣接する管壁、及び該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t1が測定される。
【0076】
本発明による測定セルを利用して、中央凹部に平行に配置された一対の超音波送信器を測定に使用することができる。好ましい実施態様では、第5と第6の超音波トランスデューサは適切な対を形成し、及び/又は第7と第8の超音波トランスデューサは適切な対を形成する。
【0077】
これらの測定値に基づいて、管内の流体中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t6=t1-t2-t3-t4-t5を計算することができる。既知の関係式v=s/tにより、流体中の音速cflを計算することができる。流体を通る経路長は、既知のパラメータである管の内径に一致する。
【0078】
従って、この方法は、流体中の音速cfl、管壁中の音速ctube、並びに第1及び第2のインレー領域の音速1cinlay及び2cinlayの測定を可能にする。
【0079】
本発明の一実施態様では、この方法は、管内の流体への超音波信号の入射角β’を計算するステップをさらに含む。入射角β’及び音波の流体への進入角βの和は90°である。従って、一方の角度を他方の角度から計算することができる。
【0080】

【数5】
により、第1のインレー領域から管に入射する超音波信号の入射角β’1を計算することができ、式
【数6】
により、第2のインレー領域から管に入射する超音波信号の入射角β’2を計算することができる。
【0081】
有利なことに、第1のインレー領域から管に入射する超音波信号の入射角、及び第2のインレー領域から該管に入射する超音波信号の入射角は独立に計算することができる。第1及び第2のインレー領域中の音速が、例えば温度勾配によって異なる場合、本発明の方法では、これが考慮される。これによって測定精度が向上する。
【0082】
従って、この方法では、異なる測定経路を利用した流体中の音速cfl、管壁中の音速ctube、並びに第1及び第2のインレー領域の音速1cinlay及び2cinlayの測定が可能になるため冗長測定が可能となり、これにより測定精度を向上する。
【0083】
本発明の一実施態様では、超音波測定セルは、管と第1のインレー領域との間及び該管と第2のインレー領域との間にカップリングパッドを備える。管と第1のインレー領域との間のカップリングパッド中の音速1cpad及び該管と第2のインレー領域との間のカップリングパッド中の音速2cpadは、既に説明したステップと同様に測定し、計算することができる。
【0084】
本発明の一実施態様では、この方法は、
・第1の超音波トランスデューサによって放射され、管内の流体を通過して第4の超音波トランスデューサに到達する超音波信号の伝播時間tFWD 1→4、及び該第4の超音波トランスデューサによって放射され、該管内の流体を通過して該第1の超音波トランスデューサに到達する超音波信号の伝播時間tBWD 4→1、並びに/又は第2の超音波トランスデューサによって放射され、該管内の流体を通過して第3の超音波トランスデューサに到達する超音波信号の伝播時間tFWD 3→2、及び該第3の超音波トランスデューサによって放射され、該管内の流体を通過して該第2の超音波トランスデューサに到達する超音波信号の伝播時間tBWD 2→3を測定するステップ、並びに
・該管内の流体の体積流量Qを計算するステップ、をさらに含む。
【0085】
入射角β’1が入射角β’2と等しい場合、体積流量は式
【数7】
によって計算することができ、
式中、
Geocalは、一定と見なされる測定セルの較正のGeo factorであり;
Δtは、
【数8】
によって計算される伝播時間の差であり;
Cflは、流体の測定された音速であり;
βは、
【数9】
(このβ’は測定された入射角である)であり;
Βcalは、
【数10】
(このβ’calは、超音波測定セルの較正中に測定された入射角である)であり;
Cfl,calは、超音波測定セルの較正中に測定された流体の音速である。
【0086】
Cfl cal及びβcalを、超音波測定セルの較正中に決定した。これは、既知の温度の既知の媒体、例えば水を使用して、明確に定義された条件下で行われる。較正factor Geocalもこれに関連して決定される。
【0087】
従って、本発明の方法により、例えば温度変化によって引き起こされる流体の音速又は入射角の変動を体積流量の計算によって考慮することが可能になる。それにより、計算された体積流量は、最先端の技術による測定セル及び方法によって測定及び計算される体積流量と比較してより正確である。
【0088】
有利なことに、何らかの理由で、入射角β’1が入射角β’2と等しくない場合にも考慮することができる。この場合、体積流量は以下の通り計算される:
【数11】
式中、
【数12】
であり、
且つ
【数13】
は体積流量であり、tFWD及びtBWDは、第1及び第4の超音波トランスデューサによって測定され;
【数14】
は体積流量であり、tFWD及びtBWDは、第2及び第3の超音波トランスデューサによって測定される。
【0089】
β’1,cal及びβ’2,calは、明確に定義された温度の周知の流体を使用した超音波測定セルの較正中に測定された入射角を表す。Geocal1、Geocal2、Geo1,cal、Geo2,cal、β’1,cal、β’2,cal、及びcfl,calは、この較正ステップ中に決定され、従って、これらの値は、本発明の方法において一定と見なされる。
【0090】
本発明の一実施態様では、この方法は、明確に定義された温度の周知の媒体、例えば水で測定セルを較正するステップをさらに含む。この較正中に、Geocal1、Geocal2、Geo1,cal、Geo2,cal、β’1,cal、β’2,cal、及びcfl,calの値が決定される。
【0091】
好ましい実施態様では、本発明による計算は、超音波測定セルの電子式小型センサによって行われる。本発明の一実施態様では、超音波測定セルは、電流出力及び/又はデジタル出力を備える。
【0092】
従って、一実施態様では、本発明の方法は、電流出力及び/又はデジタル出力によって測定及び/又は計算データを出力するステップをさらに含む。
【0093】
さらなる実施態様では、本発明による計算は、外部計算装置によって実行される。適切な外部計算装置は上述した。この実施態様では、本発明による方法は、測定データを外部計算装置に転送するステップをさらに含み、これは、電子式小型センサによって行うことができる。
【0094】
一実施態様では、この方法は、
・管内の流体の温度を測定するステップ、をさらに含む。
【0095】
流体輸送管内の流体の温度を、超音波測定セルの温度センサによって測定することができ、流体の状態に関する追加情報を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
以下、本発明を7枚の図面及び5つの実施例によってさらに説明する。
【0097】
図1図1は、本発明による超音波測定セルの一実施態様を例示する。
図2図2は、本発明による超音波測定セルのさらなる実施態様を例示する。
図3図3は、本発明による超音波測定セルのさらなる実施態様を例示する。
図4図4は、本発明の一実施態様の一部、及び異なる界面での超音波信号の入射角を例示する。
図5図5(A)~図5(C)は、測定セルの超音波トランスデューサによって受信された超音波信号を例示する。
図6図6(a)~図6(f)は、本発明の一例の結果を例示する。
図7図7は、本発明のさらなる例の結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0098】
管内の流体の流れ方向は、以降の図面に矢印で示されている。もちろん、流れ方向は逆でもよい。本発明の方法を同様に適用することができる。tFWD及びtBWDを測定するための測定経路のみを交換する必要がある。簡潔にするために、以下では、1つの流れ方向のみを詳細に説明する。図1図3は、本発明の実施態様を概略的に例示しているが、簡潔にするために、屈折則の影響は、図面では考慮されていない。
【0099】
図1は、本発明による超音波測定セル100の一実施態様を例示する。この測定セルは、6つの超音波トランスデューサ11~16を備え、第1の超音波トランスデューサ11、第2の超音波トランスデューサ12、及び第5の超音波トランスデューサ15は、中央凹部の第1の側70に配置されている。中央凹部内には管20が位置する。第3の超音波トランスデューサ13、第4の超音波トランスデューサ14、及び第6の超音波トランスデューサ16は、中央凹部の第2の側80に配置されている。中央凹部の第1の側70と第2の側80は、互いに反対側にある。
【0100】
第1及び/又は第2の超音波トランスデューサ11、12は、該第1及び/又は該第2の超音波トランスデューサ11、12が、測定信号を管20内の流体の流れ方向に対して斜めに、第3及び/又は第4の超音波トランスデューサ13、14に放射することができ、且つ該管20内の流体の流れに対して斜めに放射された測定信号を該第3及び/又は第4の超音波トランスデューサ13、14が受信できるように配置されている。
【0101】
さらに、第1のインレー領域30は、管20と第1及び第2の超音波トランスデューサ11、12との間の中央凹部の第1の側70に配置されている。第1及び/又は第2の超音波送信器11、12によって放射又は受信される超音波信号は、第1のインレー領域30の少なくとも一部を通過する。第2のインレー領域40は、管20と第3及び第4の超音波トランスデューサ13、14との間の中央凹部の第2の側80に配置されている。第3及び/又は第4の超音波送信器13、14によって放射又は受信される超音波信号は、第2のインレー領域40の少なくとも一部を通過する。
【0102】
第5の超音波トランスデューサ15は、中央凹部の第1の側70に配置され、第1のインレー領域30は、該第5の超音波トランスデューサ15と管20を含む中央凹部との間に位置する。第6の超音波トランスデューサ16は、中央凹部の第2の側80に配置され、第2のインレー領域40は、第6のトランスデューサ16と管20を含む中央凹部との間に位置する。さらに、第5及び第6の超音波トランスデューサ15、16は、中央凹部と平行に、且つ互いに対向して配置されている。
【0103】
参照符号1~9は、測定信号の可能な経路の一部を示す。以下の表は、第6の超音波トランスデューサ16の超音波信号の経路の概要を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
類似信号を、第5の超音波トランスデューサ15を用いて測定することができる。この場合、第1のインレー領域30中の音速を測定及び検出することができる。分かりやすくするために、経路は、図面には例示していない。
【0106】
明確に定義されたインレー領域30、40及び圧電複合材料を含む超音波トランスデューサを使用することにより、超音波信号を放射する超音波トランスデューサによってエコーとして受信される信号(経路2~5)と区別することが可能である。最先端の測定セルでは、これらの信号が少なくとも部分的に互いに重なり合っているため、伝播時間を互いに分離することができず、従って検出することができない。
【0107】
以下の表は、第1~第4の超音波トランスデューサ11~14の超音波信号の経路の概要を示す。
【0108】
【表2】
【0109】
経路6及び7は、第3及び第4の超音波送信器13、14を使用して同様の方法で測定することができる。分かりやすくするために、経路は、図面には例示していない。
【0110】
図2は、本発明のさらなる実施態様を例示する。超音波測定セル100は、図1に例示した超音波セル100の構成要素に加えて、第1の超音波遮断領域90及び第2の超音波遮断領域91を備える。第1の超音波遮断領域90は、第1と第2の超音波トランスデューサ11、12との間の中央凹部の第1の側70に配置され、第2の超音波遮断領域91は、第3と第4の超音波トランスデューサ13、14との間の中央凹部の第2の側80に配置されている。第1の超音波遮断領域90は、第1又は第2の超音波送信器11、12によって放射され、第1のインレー領域30と中央凹部内の管壁21との間の界面で反射される超音波信号が、該第1の遮断領域90によって減衰することなく、該第2又は該第1のトランスデューサ11、12に伝播するように配置されている。さらに、第2の遮断領域91は、第3又は第4の超音波送信器13、14によって放射され、第2のインレー領域40と中央凹部内の管壁22との間の界面で反射される超音波信号が、該第2の遮断領域91によって減衰することなく、該第4又は該第3のトランスデューサ12、14に伝播するように配置されている。
【0111】
図3は、本発明によるさらなる超音波測定セル100を例示する。測定セル100は、第7及び第8の超音波トランスデューサ17、18をさらに備える。第7の超音波トランスデューサは、中央凹部の第1の側70に配置され、第1のインレー領域30は、該第7の超音波トランスデューサ17と該中央凹部との間にある。第8の超音波トランスデューサ18は、中央凹部の第2の側80に配置され、第2のインレー領域40は、該第8の超音波トランスデューサ18と中央凹部との間にある。第7及び第8の超音波トランスデューサ17、18は、圧電複合材料を含み、中央凹部と平行に、且つ互いに対向して配置されている。従って、第7及び第8の超音波トランスデューサ17、18は、第5及び第6の超音波トランスデューサ15、16と同様の測定機能に利用することができる。それにより、有利なことに、第1及び第2のインレー領域30、40の音速を、測定セル内の2つの異なる位置で測定し、計算することができる。従って、入射角β’calは、測定セル内の異なる位置でも計算することができる。好ましくは、図3に示すように、第7の超音波トランスデューサ17は、第1と第2の超音波トランスデューサ11、12との間に配置され、第8の超音波トランスデューサ18は、第3と第4の超音波トランスデューサ13、14の間に配置される。
【0112】
図4は、管壁21、22を有する管20、第1の超音波トランスデューサ11、第2の超音波トランスデューサ12、第5の超音波トランスデューサ15、及び第1のインレー領域30を模式的に例示する。図4は、第1の超音波トランスデューサ11によって放射され、第1のインレー領域30、管壁21、及び管内の流体中を伝播する超音波信号を例示する。界面での屈折角が示されている。さらに、管内壁間の距離din、及び音波が管内壁間を移動する距離lが示されている。また、音波の流体への入射角β’及び進入角βも示している。さらに、σ=δ’である。
【0113】
図5(A)~図5(C)は、測定セルの超音波トランスデューサで受信される超音波信号を例示する。
【0114】
図6及び図7は、実施例4及び5の測定結果を例示し、以下でさらに説明する。
【実施例
【0115】
実施例1
第6の超音波トランスデューサを備える測定セルを利用して、反射された超音波信号を測定した。第5の超音波トランスデューサと中央凹部との間の第1のインレー領域の拡張と、第6の超音波トランスデューサと中央凹部との間の第2のインレー領域の拡張はそれぞれ、6.1mmであった。中央凹部に平行に配置された第6の超音波トランスデューサを使用して、超音波バースト信号を放射した。反射されたエコー信号を、第6の超音波トランスデューサによって受信した。この測定は、
(i)中央凹部が空で、測定セル内に管が存在しない状態で;
(ii)管が空で、流体が該管内を流れていない状態で;
(iii)中央凹部内に管があり、水が該管内を流れている状態で行った。
【0116】
測定した信号を図5(A)に示す。最初にバースト信号が示され、第2のエコーを、第2のインレー領域と管壁との界面での反射に割り当てることができる(図1図3の経路2に対応する)。信号は、測定(ii)及び(iii)の信号と比較して、測定(i)の信号でより顕著であり、測定(ii)及び(iii)の信号は互いに重なり合っている。続くエコーは、管内壁と管内の媒体との界面での反射のエコーによるものである(図1図3の経路3に対応する)。信号は、空の管(ii)で最も顕著であるが、水で満たされた管(iii)でも読み取ることができる。この測定は、本発明による測定セルが、インレー領域と管壁との界面で反射される超音波信号の検出、並びに管内壁と管内の流体とで反射される信号の検出を可能にすることを示し、両方の反射された信号は、検出された信号において互いに分離することができ、且つバースト信号から分離することができる。
【0117】
測定(ii)に基づいて、第2のインレー領域2cinlay中の音速を本発明に従って計算し、2cinlay=第1のインレーの拡張/(t*2/2)である。
【0118】
【表3】
【0119】
第2のエコーは、第2のインターレイ領域に隣接する管内壁と流体との界面での反射に割り当てることができ、従って、管壁中の音速は、以下の通り計算することができる。
【0120】
【表4】
ここで、
【数15】
である。
【0121】
実施例2
水が流れる管を、実施例1による測定セルに挿入した。第1のインレー領域と管壁との界面及び管内壁と管内の流体との界面で反射された超音波信号を、第1及び第2の超音波トランスデューサを用いて測定した。
【0122】
図5(B)は、ポスト増幅された測定信号を例示する。バーストの後に、第1のエコーが見え、これを、第2のインレー領域と管壁との界面で反射される超音波信号に割り当てることができる(図1図3の経路6に対応する)。第2のエコーは、管内壁と管内の水との界面での反射に割り当てることができる(図1図3の経路7に対応する)。第3のエコーは、管内の水と第1のインレー領域に隣接する管壁との界面での超音波信号の反射によるものである。有利なことに、反射信号及びバースト信号は、互いに明確に分離することができる。
【0123】
図5(C)は、時間スケールがシフトした同じ測定信号を例示する。バースト信号は、見えないため、すべての反射された超音波信号が示されている。ここでも、第1のエコーを、第2のインレー領域と管壁との界面で反射される超音波信号に割り当てることができる(図1図3の経路6に対応する)。第2のエコーは、管内壁と管内の水との界面での反射に割り当てることができる(図1図3の経路7に対応する)。第3のエコーは、管内の水と第1のインレー領域に隣接する管壁との界面での超音波信号の反射によるものである。第4のエコーは、管壁と第1のインレー領域との界面での超音波信号の反射によるものである。
【0124】
実施例3
実施例3の設定を使用して、3つの異なる流体の音速を異なる温度で測定した。
(a)19℃のIPA
(b)23℃の水
(c)53℃の水
【0125】
t7は、第1の超音波トランスデューサによって放射され、管壁と第1のインレー領域との界面で反射され、そして第2の超音波トランスデューサによって受信される超音波信号の伝播時間である。第1のインレー領域、該第1のインレー領域に隣接する管壁、管内の流体、第2のインレー領域に隣接する管壁、及び該第2のインレー領域中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間t1を、第5及び第6の超音波トランスデューサによって測定した。インレー及び管の音速は、次の式に従って計算した:
【数16】
【0126】
第1のインレー領域の音速と第2のインレー領域の音速は等しいと仮定した。関係式c=s/tにより、時間t2、t3、t4、及びt5を、次の寸法を使用して計算した:
第1/第2のインレー領域の拡張:6.1mm
管の断面:1.6mm。
【0127】
式t6=t1-t2-t3-t4-t5により、管内の流体中を垂直に伝播する超音波信号の伝播時間を計算し、関係式c=s/tにより、流体の音速cfl,calを、s=6.35mmを用いて計算した。
【0128】
計算結果を文献値(L. Bergmann: Der Ultraschall; 5. Auflage; S. Hirzel Verlag Stuttgart 1949 and http://www.ddbst.com/en/EED/PCP/SOS_C95.php)及び最先端の装置で測定した値と比較すると、本発明の方法が非常に良好なデータ品質を提供することが示された。
【0129】
【表5】
【0130】
実施例4
実施例4の設定を使用して、水の音速を3つの異なる温度で測定した。
(a)35℃の水
(b)45℃の水
(c)60℃の水
【0131】
水の体積流量を、
(i)基準センサとして機能するコリオリ流量センサ;
(ii)本発明による装置であって、
ii. 1体積流量を、「有効化した」Geo factor補正を使用して計算し;且つ
ii. 2体積流量を、「無効化した」Geo factor補正を使用して計算する、該装置によって測定した。
【0132】
「有効化した」Geo factor補正を用いた体積流量の計算(ii.1)では、Geo factorは、説明で示した式に従って使用した。「無効化した」Geo factor補正を用いた体積流量の計算(ii.2)では、
【数17】
をGeo factorに適用する。
【0133】
パルスエコーにより、インレー中の伝播時間を経路2を使用して決定し、この値からインレーの音速(cinlay)を計算した。管の音速(ctube)を、第1のトランスデューサから第2のトランスデューサへのインレーと管との間の界面での反射の伝播時間を測定することによって決定した。このことから、水中での伝播時間、従っての水の音速(cfl)、従って角度βを、垂直音波経路の伝播時間の測定によってリアルタイムで決定した。
【0134】
本発明による装置は、23℃の温度の水で較正した。
【0135】
図6(a)~図6(c)は、すべて異なる水温での測定結果を例示する。コリオリセンサで測定した体積流量に対する本発明の装置による測定に基づいて計算した体積流量の絶対偏差を体積流量に対してこれらの図面にプロットする。結果は、有効化したGeo factor補正と無効化したGeo factor補正を用いた本発明の装置による測定に基づいて計算した体積流量について示し、補正が有効化とは、有効化したGeo factor補正を表し、補正が無効化とは、無効化したGeo factor補正を表す。図6(d)~図6(f)は、同じ測定値を例示するが、相対偏差をプロットしている。
【0136】
補正を有効化しないと、媒体の音速の変化を伴う該媒体の温度上昇によって、コリオリセンサで測定される体積流量からの体積流量の偏差が増加することが分かる。
【0137】
2500ml/minの体積流量では、相対偏差(補正が無効化)は次の通りであった。
【0138】
【表6】
【0139】
補正を有効化すると、本発明による超音波測定セルの体積流量の測定値は、コリオリセンサによる体積流量の測定値とほぼ同一である。
【0140】
2500ml/minの体積流量では、相対偏差(補正が有効化)は次の通りであった。
【0141】
【表7】
【0142】
実施例5
実施例4による設定を使用した。この実施例では、非常に短い時間で連続的に生じる水温の変化に対する流量補正を測定した。水温を数分以内に23℃から60℃に変更した。実施例4と同様に、体積流量の測定値を、有効化及び無効化したGeo factor補正と同時に記録した。コリオリセンサを、基準測定値として同時に作動させる。水温が上昇すると、Geo factor補正を無効化した超音波センサの流量測定値の差は、コリオリセンサで測定した体積流量と比較して増加したが、Geo factor補正を有効化した超音波センサの流量測定値はほぼ同じであった。温度が上昇すると、Geo factor補正を無効化した超音波センサの体積流量の測定値の偏差は、コリオリセンサで測定した体積流量と比較して増加している。媒体温度が目標値の60℃に達した後も、最終的に平衡に達するまでインレー温度が変化し続けたため、偏差が増加した。Geo factor補正を有効化すると、超音波センサとコリオリセンサの体積流量値の最大偏差は、全時間範囲で明確に1%未満であった。
【0143】
測定結果を、
・コリオリ流量センサ、
・Geo factor補正を有効化した(補正が有効化)本発明による装置;及び
・Geo factor補正を無効化した(補正が無効化)本発明による装置、で測定した体積流量についての時間に対する体積流量を例示している図7に例示する。
【0144】
参照符号の一覧
1~9 経路
11 第1の超音波トランスデューサ
12 第2の超音波トランスデューサ
13 第3の超音波トランスデューサ
14 第4の超音波トランスデューサ
15 第5の超音波トランスデューサ
16 第6の超音波トランスデューサ
17 第7の超音波トランスデューサ
18 第8の超音波トランスデューサ
20 管
21、22 管壁
30 第1のインレー領域
40 第2のインレー領域
70 中央凹部の第1の側
80 中央凹部の第2の側
90 第1の超音波遮断領域
91 第2の超音波遮断領域
100 超音波測定セル
l 音波が管内壁間を移動する距離
din 管内壁間の距離
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B-C】
図6a-c】
図6d-f】
図7
【国際調査報告】