(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】X線画像処理のための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20240702BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240702BHJP
G16H 30/20 20180101ALI20240702BHJP
【FI】
A61B6/50 500C
A61B6/00 560
A61B6/00 550C
A61B6/00 550B
G16H30/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580767
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022066641
(87)【国際公開番号】W WO2023274756
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン ベルグ ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー トーマス
【テーマコード(参考)】
4C093
5L099
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093AA22
4C093CA13
4C093DA03
4C093FF09
4C093FF16
4C093FF22
4C093FF23
4C093FF24
4C093FF28
5L099AA26
(57)【要約】
暗視野X線(DAX)信号と、呼吸状態と、呼吸器疾患進行度との間の関係を表すためのDAXモデルを生成するための概念、並びに、DAXモデルを使用するための概念が提案される。特に、これらの変数間の関係がモデル化される際、基準呼吸状態における対象者のDAX信号と呼吸状態における対象者のDAX信号との間の差が評価される。したがって、DAX撮像の診断精度が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗視野X線(DAX)信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すためのDAXモデルを生成するコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
複数の既知の呼吸状態における対象者の複数のトレーニングDAX画像を、複数の既知の呼吸器疾患進行度とともに前記DAXモデルに入力するステップと、
前記DAXモデルから、複数の予測される呼吸状態及び予測される呼吸器疾患進行度を受信するステップと、
前記複数の既知の呼吸状態と複数の予測される前記呼吸状態との間の差に基づいて、さらに、前記複数の既知の呼吸器疾患進行度と複数の予測される前記呼吸器疾患進行度との間の差に基づいて、前記DAXモデルのパラメータ値を決定するステップと
を有する、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記DAXモデルが、前記DAX信号と、前記呼吸器疾患進行度と、前記呼吸状態との間の前記関係を表すために統計的方法を使用する、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記DAXモデルが、さらに、前記DAX信号と、前記呼吸器疾患進行度と、前記呼吸状態と、1つ又は複数の試験対象者固有変数との間の関係を表し、
前記複数のトレーニングDAX画像が、前記1つ又は複数の試験対象者固有変数をもつ対象者のトレーニングDAX画像をさらに含み、
前記DAXモデルが、前記DAX信号と、前記呼吸器疾患進行度と、前記呼吸状態と、前記1つ又は複数の試験対象者固有変数との間の前記関係を表すために統計的方法を使用する、請求項1又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の試験対象者固有変数が、性別、身体サイズ、肥満度指数、肺機能試験結果、呼吸器疾患評価、既往症、又は喫煙歴を含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記DAX信号が、DAX画像の全肺野にわたる集積された信号、又は前記DAX画像の前記全肺野の一部にわたる集積された信号のいずれかである、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
対象者の暗視野X線(DAX)信号を処理するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
請求項1から5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法のDAXモデルを生成するステップと、
DAX画像に対応する前記対象者の前記DAX信号を取得するステップ
と、
前記DAX画像に基づいて前記対象者の呼吸状態を決定するステップと、
前記DAX信号と、決定された前記呼吸状態とを、生成された前記DAXモデルに入力することに基づいて、基準呼吸状態における前記対象者の変更されたDAX信号を収集するステップと
を有する、コンピュータ実装方法。
【請求項7】
暗視野X線(DAX)信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すためのDAXモデルを使用して対象者のDAX信号を処理するための方法であって、前記方法は、
DAX画像に対応する前記対象者の前記DAX信号を取得するステップと、
前記DAX信号に基づいて前記対象者の呼吸状態を決定するステップと、
前記DAX信号と、決定された前記呼吸状態とを、前記DAXモデルに入力することに基づいて、基準呼吸状態における前記対象者の変更されたDAX信号を収集するステップと
を有する、方法。
【請求項8】
前記対象者の呼吸器疾患進行度を取得するステップをさらに有し、
前記基準呼吸状態における前記対象者の変更された前記DAX信号を収集するステップが、さらに、取得された前記呼吸器疾患進行度を前記DAXモデルに入力することに基づく、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記DAXモデルが、さらに、前記DAX信号と、前記呼吸器疾患進行度と、前記呼吸状態と、1つ又は複数の対象者固有変数との間の関係を表し、前記方法は、さらに、前記対象者の対象者固有変数値を取得するステップを有し、
前記基準呼吸状態における前記対象者の変更された前記DAX信号を収集するステップが、さらに、取得された前記対象者固有変数値を前記DAXモデルに入力することに基づく、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DAX信号と、決定された前記呼吸状態とを、前記DAXモデルを入力することに基づいて、前記対象者の予測される呼吸器疾患進行度を収集するステップ
をさらに有する、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基準呼吸状態が全吸気状態又は全呼気状態のいずれかである、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象者の前記呼吸状態を決定するステップが、
前記DAX画像中の前記対象者の肋骨に対する、前記DAX画像中の前記対象者の横隔膜のロケーションを推定するステップを有し、
前記対象者の前記呼吸状態を決定するステップが、前記横隔膜の推定された前記ロケーションに基づく、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象者の前記呼吸状態を決定するステップが、
前記DAX画像の肺野に基づいて前記対象者の胸部中の空気のボリュームを推定するステップと、
前記対象者の前記胸部中の空気の推定された前記ボリュームに基づいて前記対象者の前記呼吸状態を決定するステップと
を有する、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
変更された前記DAX信号に基づいて前記DAX画像を変更するステップをさらに有する、請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象者の暗視野X線(DAX)信号を処理するためのシステムであって、前記システムは、
DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すためのDAXモデルを生成するためのモデル化ユニットと、
DAX画像に対応する前記対象者の前記DAX信号を収集するためのX線画像収集ユニットと、
前記DAX画像に基づいて前記対象者の呼吸状態を決定するための呼吸状態ユニットと、
前記DAX信号と、決定された前記呼吸状態とを、生成された前記DAXモデルに入力することに基づいて、基準呼吸状態における前記対象者の変更されたDAX信号を収集するための信号変更ユニットと
を備える、システム。
【請求項16】
少なくとも1つの処理ユニットによって実行されたときに、前記処理ユニットに請求項1から14のいずれか一項に記載のいずれかの方法のステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラムを記憶した、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視野X線撮像の分野に関し、より詳細には、暗視野X線画像を処理することの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像の従来の技法では、対象物の透過画像を取得するために対象物がX線に暴露される。しかしながら、吸収がほとんどない血管、軟骨、肺、及び乳房組織を含む軟組織の場合、これが与える減衰コントラストは骨画像と比較して不十分である。この制限を克服するために、近年、X線を使用して暗視野X線(DAX)画像を取得するための大きな進展があった。
【0003】
DAXと従来のX線との間の主要な差異のうちの1つはX線エネルギーにある。人間の患者の通常の透過画像では、肋骨は、高いkVpに対してより小さいコントラストを有するので、約125kVpのX線エネルギーが使用される。しかしながら、DAX撮像は、X線エネルギーが低いほど敏感になるので、約70kVpのX線エネルギーが使用される。
【0004】
DAX撮像は、最近、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、肺炎及び肺がんなど、肺障害の診断及びステージングについての診断精度が改善することを証明した。これは、DAX信号が、さもなければ従来のX線撮像(例えば、X線及びX線コンピュータ断層撮影)からではアクセス不可能である、肺実質(lung parenchyma)中の微細構造特性に関する補足情報を与えるからである。例として、DAX撮像は、X線透過を捉えることが可能であるだけでなく、健康な肺実質中では起こるが気腫肺領域中では起こらない小角散乱(small angle scatter)をも捉えることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、最近、患者の吸気状態がDAX信号強度に影響を及ぼすことが発見された。これは、例えば、呼吸中の、肺胞のサイズ及び/又は密度の変化、或いは肺胞壁の厚さの変化によるものである可能性がある。胸部X線は、一般に、対象者が全吸気状態又は全呼気状態のいずれかにおいて息を止めている間に撮られる。しかしながら、呼吸器疾患、特に、例えばCOPD及び気腫に罹患している患者は、しばしば、標準的な収集プロシージャのために要求されるように呼吸することが不可能である。これにより、DAX撮像を使用した肺障害の正確な診断及び進行度評価(grading)に大きな問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0007】
本発明の一態様による例によれば、暗視野X線(DAX)信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すためのDAXモデルを生成するコンピュータ実装方法が提供される。本方法は、複数の既知の呼吸状態における対象者の複数のトレーニングDAX画像を、複数の既知の呼吸器疾患進行度とともにDAXモデルに入力するステップと、DAXモデルから、複数の予測される呼吸状態及び複数の予測される呼吸器疾患進行度を受信するステップと、複数の既知の呼吸状態と複数の予測される呼吸状態との間の差に基づいて、さらに、複数の既知の呼吸器疾患進行度と複数の予測される呼吸器疾患進行度との間の差に基づいて、DAXモデルのパラメータ値を決定するステップとを有する。
【0008】
このようにして、提案する実施形態は、呼吸状態に応じてDAX信号の変化を計算又は予測するDAXモデルを提供する。したがって、望ましい呼吸状態から逸脱した呼吸状態における対象者から収集されたDAX信号の変化が補償される。言い換えれば、DAX信号に対する呼吸状態の影響が、(モデルによって与えられた1つ又は複数の予測に基づいて)評価され、考慮される。
【0009】
さらに、実施形態は、DAX信号に対する呼吸器疾患進行度の影響を表すDAXモデルを提供する。したがって、呼吸器疾患進行度は、呼吸状態の変化によって引き起こされるDAX信号の差に影響を及ぼすので、より正確なモデルが得られる。
【0010】
DAXモデルは、いくつかのDAXトレーニング画像を使用してトレーニングされる。これは、モデルによって決定された呼吸状態と、DAX画像に対応する実際の呼吸状態との間の差を比較することによって達成される。次いで、モデルのパラメータ値がこの差によって決定される。さらに、モデルによって決定された呼吸器疾患進行度と、DAX画像に対応する実際の呼吸器疾患進行度との間の差が決定され得、それがパラメータ値をさらに精緻化する。
【0011】
DAXモデルを多数のDAXトレーニング画像に基づかせることによって、パラメータ値は、不可視のDAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の相互作用のより正確な表現を与える。
【0012】
いくつかの実施形態では、DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すために統計的方法を使用する。
【0013】
いくつかの実施形態では、DAXモデルは、さらに、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、1つ又は複数の試験対象者固有変数との間の関係を表す。この場合、複数のトレーニングDAX画像は、1つ又は複数の試験対象者固有変数をもつ対象者のトレーニングDAX画像をさらに含む。DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、1つ又は複数の試験対象者固有変数との間の関係を表すために統計的方法を採用し得る。
【0014】
性別又は年齢など、対象者固有変数も、DAX信号と呼吸状態との間の関係に影響を及ぼすことが分かっている。これらの関係を表すためにもモデルを適応させることによって、関係のより正確なモデルが与えられる。例として、1つ又は複数の試験対象者固有変数は、性別、身体サイズ、肥満度指数、肺機能試験結果、呼吸器疾患評価、既往症、又は喫煙歴を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、DAX信号は、DAX画像の全肺野にわたる集積された信号、又はDAX画像の全肺野の一部にわたる集積された信号のいずれかである。
【0016】
本発明の別の態様によれば、対象者の暗視野X線(DAX)信号を処理するためのコンピュータ実装方法が提供される。本方法は、本発明の一態様によるDAXモデルを生成するステップと、DAX画像に対応する対象者のDAX信号を取得するステップと、DAX画像に基づいて対象者の呼吸状態を決定するステップと、DAX信号と、決定された呼吸状態とを、生成されたDAXモデルに入力することに基づいて、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するステップとを有する。
【0017】
このようにして、提案する実施形態によるDAXモデルは、変更されたDAX信号を収集するために使用される。呼吸状態が決定され得、それによって、DAXモデルは、基準呼吸状態に対応する変更されたDAX信号を出力する。言い換えれば、収集中の呼吸状態における対象者のDAX信号と、基準呼吸状態における対象者のDAX信号との間の差が決定される。したがって、呼吸器疾患進行度の診断及び決定の精度の改善が達成される。
【0018】
本発明のまた別の態様によれば、暗視野X線(DAX)信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すためのDAXモデルを使用して対象者のDAX信号を処理するための方法が提供される。本方法は、DAX画像に対応する対象者のDAX信号を取得するステップと、DAX信号に基づいて対象者の呼吸状態を決定するステップと、DAX信号と、決定された呼吸状態とを、DAXモデルに入力することに基づいて、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するステップとを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、暗視野X線(DAX)信号を処理するための方法は、対象者の呼吸器疾患進行度を取得するステップをさらに有し、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するステップは、さらに、取得された呼吸器疾患進行度をDAXモデルに入力することに基づく。
【0020】
対象者の呼吸器疾患進行度を確認することによって、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号がDAXモデルからより正確に出力される。
【0021】
いくつかの実施形態では、DAXモデルは、さらに、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、1つ又は複数の対象者固有変数との間の関係を表す。また、本方法は、対象者の対象者固有変数値を取得するステップをさらに有し、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するステップは、さらに、取得された対象者固有変数値をDAXモデルに入力することに基づく。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法は、DAX信号と、決定された呼吸状態とを、DAXモデルに入力することに基づいて、対象者の予測される呼吸器疾患進行度を収集するステップをさらに有する。したがって、DAXモデルは、対象者の呼吸器疾患進行度の予測を実行するために利用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、基準呼吸状態は全吸気状態又は全呼気状態のいずれかである。
【0024】
いくつかの実施形態では、対象者の呼吸状態を決定するステップは、DAX画像中の対象者の肋骨に対する、DAX画像中の対象者の横隔膜のロケーションを推定するステップを有し、対象者の呼吸状態を決定するステップは、横隔膜の推定されたロケーションに基づく。収集されたDAX画像によって対象者の呼吸状態を決定することによって、追加の監視装置の必要がなくなる。
【0025】
いくつかの実施形態では、対象者の呼吸状態を決定するステップは、DAX画像の肺野に基づいて対象者の胸部中の空気のボリュームを推定するステップと、対象者の胸部中の空気の推定されたボリュームに基づいて対象者の呼吸状態を決定するステップとを有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、変更されたDAX信号に基づいてDAX画像を変更するステップをさらに有する。
【0027】
本発明の別の態様では、少なくとも1つの処理ユニットによって実行されたときに、その処理ユニットに前に説明したいずれかの方法のステップを実行させるためのコンピュータプログラム要素が提供される。
【0028】
別の態様では、プログラム要素を記憶したコンピュータ可読媒体が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、対象者の暗視野X線(DAX)信号を処理するためのシステムが提供される。本システムは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すためのDAXモデルを生成するためのモデル化ユニットと、DAX画像に対応する対象者のDAX信号を収集するためのX線画像収集ユニットと、DAX画像に基づいて対象者の呼吸状態を決定するための呼吸状態ユニットと、DAX信号と、決定された呼吸状態とを、生成されたDAXモデルに入力することに基づいて、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するための信号変更ユニットとを備える。
【0030】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下で説明する実施形態から明らかになり、それらの実施形態を参照すれば解明されよう。
【0031】
本発明のより良い理解のために、及び本発明がどのように実施されるかをより明らかに示すために、次に、単に例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】DAXモデルを生成する方法の流れ図である。
【
図2】DAXモデルを生成するステップを有する、対象者のDAX信号を処理する方法の流れ図である。
【
図3】一実施形態による、DAXモデルを使用することによって対象者のDAX信号を処理する方法の流れ図である。
【
図4】DAXモデルと追加のデータとを使用することによって対象者のDAX信号を処理する方法の流れ図である。
【
図5A】対象者の呼吸状態を決定する方法の流れ図である。
【
図5B】対象者の呼吸状態を決定する代替の方法の流れ図である。
【
図6】対象者のDAX信号を処理するためのシステムを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図を参照しながら本発明について説明する。
【0034】
発明を実施するための形態及び具体例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示の目的のためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されよう。図は概略にすぎず、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、図全体にわたって同じ又は同様の部分を示すために同じ参照番号が使用されることを理解されたい。
【0035】
開示される実施形態の変形形態は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求される発明を実施する際に、当業者によって理解され、実施され得る。特許請求の範囲において、「備える/有する」という単語は他の要素又はステップを除外せず、単数形の要素は複数を除外しない。「ように適応される/た」という用語が特許請求の範囲又は明細書において使用される場合、「ように適応される/た」という用語は「ように構成される/た」という用語と等価であるものとすることに留意されたい。
【0036】
図は概略にすぎず、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、図全体にわたって同じ又は同様の部分を示すために同じ参照番号が使用されることを理解されたい。
【0037】
本開示による実装形態は、暗視野X線(DAX)信号と、呼吸状態と、呼吸器疾患進行度との間の関係を表すDAXモデルに関する様々な技法、方法、方式及び/又はソリューションに関する。呼吸器疾患のいくつかの例は、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、肺炎、COVID-19、及び肺がんである。提案する概念によれば、いくつかの可能なソリューションが別個に又は一緒に実施される。すなわち、これらの可能なソリューションについて以下では別個に説明するが、これらの可能なソリューションのうちの2つ以上が何らかの組合せで実施され得る。
【0038】
本発明の実施形態は、DAX信号と、呼吸状態と、呼吸器疾患進行度との間の関係を表すことが可能なDAXモデルを提供することを目的とする。このようにして、呼吸状態の逸脱によるDAX信号の変化が確認される。さらに、呼吸状態の逸脱によるDAX信号の変化に対する呼吸器疾患進行度の影響が理解される。
【0039】
そのようなDAXモデルは、いくつかの実施形態では、変更されたDAX信号が基準呼吸状態における対象者に対応するように、対象者のDAX信号を変更するために使用される。したがって、実施形態は対象者の肺障害の診断の精度を改善する。
【0040】
説明として、DAXは、従来のX線コンピュータ断層撮影(CT)など、他の医療撮像技法よりも気腫検出に対して敏感になることが見込まれる。これは、DAXが、X線透過を捉えることが可能であるだけでなく、健康な肺実質中では起こるが気腫肺領域中では起こらない小角散乱をも捉えることが可能であるからである。しかしながら、撮像される対象者の吸気状態がDAX信号強度に影響を及ぼす。
【0041】
呼吸器障害の進行度をステージングするためには、DAX信号強度を定義するすべての他の要因を制御することが有益であり、呼吸状態は最も影響が大きい要因のうちの1つであることを提案する。
【0042】
したがって、肺のX線は、通常、対象者が全吸気状態又は全呼気状態のいずれかにおいて息を止めている間に収集される。例えば、呼吸器疾患に罹患している患者、並びに、特に幼齢又は高齢である人々は、標準的な収集プロシージャのために必要とされるように呼吸しない(又はできない)場合が多い。
【0043】
画像収集中の対象者の実際の呼吸ステータスを推定することは、収集中の望ましいプロトコル呼吸状態と比較してそれが及ぼす影響を補償することを助けることを提案する。
【0044】
特に、提案する実施形態は以下を行う。
(i)DAX信号強度に対する呼吸状態の影響のモデル化、
(ii)収集されたDAX信号の呼吸状態の推定、及び
(iii)DAX信号上の基準状態からの呼吸状態の逸脱の影響の補償。
【0045】
変更された測定値を与える実施形態によって、呼吸器疾患の定量化及び評価についてのDAX撮像の診断潜在力が改善される。そのような変更された測定値は、長期的検討における、対象者間の比較可能性、また対象者内の比較可能性の改善が可能である。さらに、いくつかの実施形態によれば、定量的測定値が補正され、人間の読取り者に与えられる画像が、変更された測定値をより良く反映するように変更される。
【0046】
次に
図1を参照すると、DAXモデルを生成するコンピュータ実装方法100の例示的な一実施形態の流れ図が示されている。特に、この実施形態のDAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表す。
【0047】
ステップ102において、複数の既知の呼吸状態における対象者の複数のトレーニングDAX画像が、複数の既知の呼吸器疾患進行度とともにDAXモデルに入力される。トレーニング画像は、複数の呼吸状態の各々に対応するトレーニングDAX画像を含み、さらに、複数の呼吸状態の各々についての複数の呼吸器疾患進行度に対応するトレーニングDAX画像を含む。一般に、DAXモデルに入力されるトレーニングDAX画像の数が多いほど、モデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すことにおいてより正確になる。
【0048】
いくつかの実施形態では、DAX信号は、DAX画像の全肺野にわたる集積された信号である。代替的に、DAX信号は、左肺、右肺、肺尖(lung apex)、さらには肺野の単一のピクセルなど、DAX画像の全肺野の一部にわたる集積された信号である。
【0049】
さらに、トレーニングDAX画像は、複数の対象者のDAX画像の既知のデータベースから収集されることもあり、複数の対象者から直接収集されることもある。トレーニングDAX画像の収集中の対象者の呼吸状態は外部モニタリングシステムにより知られ得る。対象者の呼吸器疾患は、医療記録によって知られていることもあり、対象者によって報告されることもある。トレーニングDAX画像は複数の対象者の胸部のDAX画像であり得る。
【0050】
ステップ104において、DAXモデルからの複数の予測される呼吸状態と予測される呼吸器疾患進行度とがDAXモデルから受信される。言い換えれば、予測される呼吸状態及び予測される呼吸器疾患進行度は、複数のトレーニングDAX画像を入力したことに応答して、DAXモデルによって生成され、各予測される呼吸状態及び予測される呼吸器疾患進行度は複数のトレーニングDAX画像のうちの1つに対応する。
【0051】
ステップ106において、DAXモデルのパラメータ値が、複数の既知の呼吸状態と複数の予測される呼吸状態との間の差に基づいて決定される。パラメータ値は、さらに、複数の既知の呼吸器疾患進行度と複数の予測される呼吸器疾患進行度との間の差に基づいて決定される。このようにして、DAXモデルのパラメータ値は、DAXモデルが、DAX信号と、呼吸状態と、呼吸器疾患進行度との間の関係を正確に表すように設定される。
【0052】
DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すために統計的方法を使用する場合がある。いくつかの実施形態では、統計的方法として、変数の多変量回帰(multivariate regression)など、線形法が使用される。代替実施形態では、異なる種類の相関関係をモデル化することが可能である、サポートベクターマシン又は畳み込みニューラルネットワークなど、非線形法が使用される。変数間に強い非線形の相関関係が存在する実施形態では、マニホルド埋込み(manifold embedding)が使用され得る。このリストは網羅的ではなく、複数の変数間の関係をモデル化することが可能な任意の統計的方法が使用され得ることを理解されたい。
【0053】
いくつかの実施形態では、DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、1つ又は複数の試験対象者固有変数との間の関係を表す。試験対象者変数も、呼吸状態に伴うDAX信号の変化に影響を及ぼし得、したがって、これらの変数をモデル中に含めることによって、より正確なDAXモデルが生成される。その上、DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、1つ又は複数の試験対象者固有変数との間の関係を表すために上記の統計的方法のうちの1つを使用する。
【0054】
この場合、複数のトレーニングDAX画像は、1つ又は複数の試験対象者固有変数をもつ対象者のトレーニングDAX画像をさらに含む。例えば、試験対象者固有変数が性別を含む場合、複数のトレーニングDAX画像は、男性である対象者のDAX画像と、女性である対象者のDAX画像とを含み得る。さらなる例として、試験対象者固有変数が年齢を含む場合、複数のトレーニングDAX画像は、異なる年齢の異なる対象者のDAX画像を含み得る。一般に、DAXモデルに入力するために利用可能であるトレーニングDAX画像が多いほど、より多くのモデルパラメータを使用することができる。
【0055】
1つ又は複数の試験対象者固有変数は、性別、身体サイズ、肥満度指数、肺機能試験結果、呼吸器疾患評価、既往症、又は喫煙歴を含む。このリストは網羅的でなく、DAX信号に影響を及ぼす任意の対象者関係の変数がモデル中に含められ得ることを理解されたい。
【0056】
上記を言い換えると、DAXモデルは、異なる呼吸状態におけるトレーニングDAX画像のセットを使用して、DAX信号を測定する異なる呼吸器疾患進行度の対象者とともに構築される。DAX信号は、全肺野にわたる集積された信号、又は単一のピクセルに到るまでの何らかのより局所的な測度のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、DAX信号に対する呼吸状態の固有の影響を推定するために、多変量回帰が使用される。特に、望ましいプロトコル呼吸状態からの呼吸状態の逸脱によるDAX信号に対する影響がモデル化される。他の変数がDAX信号に対して固有の影響を及ぼし、これらの変数をモデル中に組み込むために利用可能な十分なトレーニングDAX画像があり、トレーニングDAX画像収集の後にそれらの値を決定又は推定することができる限りにおいて、DAXモデル中に他の変数を含めることが有利である。
【0057】
全体として、DAXモデルは、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、任意の他の対象者固有変数とが与えられると、DAX信号の予測を可能にする。いくつかの実施形態では、DAXモデルはまた、DAX信号と、呼吸状態と、任意の他の対象者固有変数とが与えられると、呼吸器疾患進行度のステージングを可能にする。特に、DAXモデルは、(対象者固有変数の値が既知であることを所与として)それぞれ呼吸器疾患進行度又はDAX信号に対する基準呼吸状態からの呼吸状態の逸脱の影響の推定を可能にする。言い換えれば、この情報は、呼吸状態の影響を補償し、所与の収集について、呼吸器疾患進行度又はDAX信号が、観測された呼吸状態ではなく基準呼吸状態にあるように、呼吸器疾患進行度又はDAX信号を推定するために使用される。
【0058】
例示的な一実施形態による、対象者のDAX信号を処理するコンピュータ実装方法200の流れ図が
図2に示されている。
【0059】
ステップ202において、DAXモデルが生成される。DAXモデルは、
図1に関して説明した方法に従って生成される。とはいえ、DAXモデルは、少なくとも、DAX信号と、呼吸状態と、呼吸器疾患進行度との間の関係を表すように適応される。
【0060】
ステップ204において、対象者のDAX信号が取得される。対象者のDAX信号は、収集セッションから直接取得されることもあり、メモリから取得されることもある。いずれの場合も、DAX信号はDAX画像に対応する。当業者に知られている任意の方法によって、DAX画像がDAX信号から取得されるか、又はDAX信号がDAX画像から取得される。
【0061】
ステップ206において、対象者の呼吸状態がDAX画像に基づいて決定される。呼吸状態はDAX画像の収集の後に一貫して決定されることが重要である。いくつかの異なる方法がこれを実行し得る。例として、肺活量測定(spirometry)がこの目的で使用され、多くの場合、肺活量測定は、いずれにせよ診断プロトコルの一部である。また、呼吸を追跡するために、光デバイス又は機械式デバイスを含む外部機器がしばしば使用される。しかしながら、対象者にわたる一貫性、並びにコストに関して、最も好適な方法は、DAX画像に基づく呼吸/吸気状態の推定である。対象者の呼吸状態を決定するための方法については、
図5A及び
図5Bを参照しながらより詳細に説明する。
【0062】
最後に、ステップ208において、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号が、DAX信号と決定された呼吸状態とを生成されたDAXモデルに入力することに基づいて収集される。基準呼吸状態は全吸気状態又は全呼気状態であり得る。DAXモデルはDAX信号と呼吸状態との間の関係を表すので、DAX信号がDAXモデルに入力された場合、基準呼吸状態における変更されたDAX信号が収集される。
【0063】
すなわち、決定された呼吸状態と基準呼吸状態との間の差によるDAX信号の差がDAXモデルから収集される。結果として、基準呼吸状態に対応する変更されたDAX信号が収集される。
【0064】
一般に、胸部X線は、対象者が全吸気状態又は全呼気状態において息を止めている間に撮影される。この吸気/呼気状態は基準呼吸状態として知られている。ある対象者は、DAX信号を収集するのにかかる時間の間、息を止めていることができないので、DAX信号が基準呼吸状態に対応していないことがある。これは、DAX信号に影響を及ぼし、したがって不正確な又は完全に間違った診断につながり得ることが示されている。したがって、この方法は、DAX信号が後続の評価のために基準呼吸状態に対して標準化されるようにDAX信号を変更することの利点を与える。
【0065】
代替的に、DAXモデルは生成されないことがある。代わりに、DAXモデルは、メモリに記憶され、本方法が実行されるときに取得される。そのような場合、ステップ202は省略される。しかしながら、DAXモデルは、
図1に関して説明した方法に従って生成されたDAXモデルと同じである。それによって、DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すように適応される。
【0066】
図3は、DAXモデルを使用して対象者のDAX信号を処理する方法300の別の例示的な実施形態の流れ図を示している。
図3のステップ302、304及び306は、それぞれ、
図2のステップ204、206及び208と等価である。したがって、これらのステップの説明は簡明のために省略する。
【0067】
さらに、対象者のDAX信号を処理する方法200、300は、ステップ308とステップ310とをさらに有し得る。ステップ308において、対象者の予測される呼吸器疾患進行度が、DAX信号と決定された呼吸状態とをDAXモデルに入力することに基づいて収集される。結果として、対象者の呼吸器疾患のステージングが自動的に実行されるので、診断プロセスを助ける。DAXモデルは、呼吸状態と、DAX信号と、呼吸器疾患進行度との間の関係を表すので、呼吸状態とDAX信号の両方が呼吸器疾患進行度において考慮される。
【0068】
ステップ310において、対象者のDAX画像が、変更されたDAX信号に基づいて変更される。したがって、基準呼吸状態におけるDAX画像を正確に表す変更されたDAX画像が収集される。
【0069】
ステップ308とステップ310とは、互いに独立して行われることもあり、一緒に行われることもあることに留意されたい。
【0070】
図4は、DAXモデルと追加のデータとを使用することによって対象者のDAX信号を処理する方法350の例示的な一実施形態の流れ図を示している。特に、対象者の変更されたDAX信号を収集するために、対象者固有変数値及び呼吸器疾患値が取得され、使用される。これらの追加のデータは、DAX信号を処理する方法200にも含められる。
図4のステップ352及び354は、それぞれ
図2のステップ204及び206と等価である。したがって、これらのステップの説明は簡明のために省略する。
【0071】
ステップ358において、対象者の対象者固有変数値が取得される。対象者固有変数値は、性別、身体サイズ、肥満度指数、肺機能試験結果、呼吸器疾患評価、既往症、又は喫煙歴を含み得る。しかしながら、任意の対象者関係の変数は、それらがDAX信号に対して固有の影響を及ぼし、これらの変数をモデル中に組み込むために利用可能な十分なトレーニングDAX画像があり、トレーニングDAX画像収集の後にそれらの値を決定又は推定することができる限りにおいて、取得される。この場合、DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態と、1つ又は複数の対象者固有変数との間の関係を表すように適応される。言い換えれば、DAXモデルは、呼吸状態と、呼吸器疾患進行度とが与えられると、DAX信号の変化に対する1つ又は複数の対象者固有変数の影響を予測するようにさらに適応される。
【0072】
したがって、ステップ358が与えられたとき、(ステップ356における)基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するステップは、さらに、取得された対象者固有変数値をDAXモデルに入力すること、並びに対象者の決定された呼吸状態、及びDAX信号に基づく。これにより、変更されたDAX信号の精度が改善される。
【0073】
ステップ360において、対象者の呼吸器疾患進行度が取得される。これは、医療記録、又は対象者の別個の走査から取得されるか、又はユーザによって入力される。したがって、ステップ360が与えられたとき、基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するステップは、さらに、取得された呼吸器疾患進行度をDAXモデルに入力することに基づく。これによりDAXモデルの入力に別の一定の変数値が追加されるので、より正確な変更されたDAX信号が取得される。
【0074】
ステップ360及び358は一緒に実行される必要はなく、これらのステップのうちの1つだけが実行されることもある。
【0075】
図5A及び
図5Bを見ると、対象者の呼吸状態を決定する第1の方法410と第2の方法420とを示す2つのフローチャートが与えられている。
【0076】
前に概説したように、呼吸状態が一貫して決定されることが重要である。多くの場合、これは、肺活量測定、又は、光デバイス若しくは機械式デバイスなどの外部機器によって実行される。しかしながら、対象者にわたる一貫性、並びにコストに関して最も好適な方法は、DAX画像に基づく呼吸状態の推定である。
【0077】
現在のDAX技術は同じ収集から散乱と透過画像の両方を与える。(標準的な胸部ラジオグラフィに非常に似ている)透過画像は、
図5A及び
図5Bを参照しながら説明した両方の方法に適用可能である。
【0078】
ステップ412において、DAX画像中の対象者の肋骨に対する対象者の横隔膜のロケーションが推定される。言い換えれば、対象者のいくつかの個々の肋骨に対する横隔膜のロケーションが決定される。次いで、ステップ414において、横隔膜の推定されたロケーションに基づいて対象者の呼吸状態が決定される。一般に、横隔膜が肋骨と比較して高いことは、対象者が全呼気状態に近いことを示す。反対に、横隔膜が肋骨と比較して低いことは、対象者が全吸気状態に近いことを示す。
【0079】
ステップ422において、DAX画像の肺野に基づいて、対象者の胸部中の空気のボリュームが推定される。これは、対象者の肺についての仮定を行うことによって実行される。具体的には、DAX画像から肋骨の影を取り除いた後に、肺野の境界が基準として取られ、肺野に沿った強度が積分される。この方法はまた、肺野中の所与の画像位置において肺の深さを局所的に推定するために使用される。ステップ424において、胸部中の空気のボリュームが推定されたとき、空気の推定されたボリュームに基づいて対象者の呼吸状態が決定される。
【0080】
いくつかの実施形態では、
図5A及び
図5Bを参照しながら上記で説明した方法のうちの1つのみが実行される。代替的に、他の実施形態では、両方の方法が実行され、対象者の平均の呼吸状態が取られる。したがって、呼吸状態の決定の精度が改善される。
【0081】
本発明の別の例示的な実施形態では、少なくとも1つの処理ユニットによって実行されたときに、処理ユニットに前に説明したいずれかの方法のステップを実行させる、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0082】
本発明のさらなる例示的な一実施形態によれば、CD-ROMなど、コンピュータ可読媒体が提示され、本コンピュータ可読媒体は、それの上に記憶されたコンピュータプログラム要素を有し、そのコンピュータプログラム要素は先行するセクションによって説明されている。
【0083】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体など、好適な媒体上に記憶/配布され得るが、インターネット又は他のワイヤード若しくはワイヤレス電気通信システムを介してなど、他の形態でも配布され得る。
【0084】
図6は、対象者のDAX信号を処理するためのシステム500の簡略ブロック図を示している。本システムは、上記で説明した方法のいずれかを実行するように構成される。
【0085】
特に、システム500は、DAXモデルを生成するように構成されたモデル化ユニット530を備える。DAXモデルは、
図1に関して説明した方法100によって生成される。実際、DAXモデルは、DAX信号と、呼吸器疾患進行度と、呼吸状態との間の関係を表すように適応される。
【0086】
システム500はまた、X線画像収集ユニット510と、呼吸状態ユニット520と、信号変更ユニット540とを備える。X線画像収集ユニット510は、対象者のDAX信号を収集するように構成され、DAX信号はDAX画像に対応する。X線画像収集ユニット510は、(例えばX線又はCT収集セッションから)対象者の画像収集によって直接DAX信号を収集することもあり、データベースからDAX信号を収集することもある。
【0087】
呼吸状態ユニット520は、DAX画像に基づいて対象者の呼吸状態を決定するように構成される。呼吸状態は、
図5A又は
図5Bに関して説明した方法に従って決定されることもあり、別の方法によって決定されることもある。
【0088】
信号変更ユニット540は、DAX信号と決定された呼吸状態とを生成されたDAXモデルに入力することに基づく基準呼吸状態における対象者の変更されたDAX信号を収集するように構成される。信号変更ユニットはまた、対象者の呼吸器疾患進行度、又は(DAXモデルが、さらに、患者固有変数との関係を表すように適応されている場合)複数の患者固有変数値のうちの1つ又は複数を、生成されたDAXモデルに入力するように適応される。
【0089】
単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載されているいくつかの項目の機能を果たし得る。
【0090】
相互に異なる従属請求項においていくつかの手段が具陳されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示さない。
【0091】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【国際調査報告】