(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】筋電図及び加速度計信号からのスニフの検出及びアーティファクトの区別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240702BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20240702BHJP
A61B 5/397 20210101ALI20240702BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/113
A61B5/397
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580768
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022067521
(87)【国際公開番号】W WO2023274931
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ラール ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ミュールステフ ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】デッカー マリアン
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038SS08
4C038ST00
4C038SX04
4C038SX07
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB33
4C038VC20
4C127AA04
4C127GG09
4C127GG13
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
呼吸筋努力(RME)(又は呼吸努力、呼吸仕事量)を定量化するための非侵襲的なシステム及び方法が提供される。該システム及び方法は同時に測定されるEMG信号及び加速度計信号を利用する。測定されたEMG信号は前処理されて、通常の呼吸活動を強調する信号及びスニフ活動(深く鋭い吸気)を強調する信号の両方を生成する。候補となるスニフの時間間隔は、前処理されたEMG信号から決定される。測定された加速度計信号は前処理されて、上側又は下側周波数帯域の活動を強調する複数の信号を生成する。候補スニフの時間間隔に対応する前処理されたEMG及び加速度計信号の特徴が分析され、該候補スニフが実際のスニフを構成するか又はアーティファクトを構成するかを決定する。次いで、最大のスニフ努力が識別された後、RMEが最大のスニフ努力の値に対する通常呼吸活動の最大値の平均の比により定量化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸間隔の間における患者の呼吸努力を定量化する方法であって、
前記患者の呼吸筋活動を複数の筋電図(EMG)電極を用いて測定するステップと、
前記患者の胸部の複数の軸における加速度を、加速度計を用いて測定するステップと、
コントローラを用いて、前記EMG電極により測定された生のEMG信号及び前記加速度計により測定された生の加速度計信号を受信するステップと、
前記コントローラを用いて前記生のEMG信号を前処理することにより複数の前処理されたEMG信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて前記生の加速度計信号を前処理することにより複数の前処理された加速度計信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記複数の前処理されたEMG信号の一部を候補スニフとして識別するステップと、
前記コントローラを用いて、前記候補スニフの時間間隔に関連する前記複数の前処理されたEMG信号から複数のEMG由来特徴を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記候補スニフの時間間隔に関連する前記複数の前処理された加速度計信号から複数の加速度計信号特徴を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記複数のEMG由来特徴及び加速度計信号特徴を複数のスニフ検出閾値と比較するステップと、
前記コントローラを用いて、前記候補スニフを、前記比較に基づいて、確認されたスニフ又は信号アーティファクトの何れかとして分類するステップと、
前記コントローラを用いて、前記患者の呼吸筋努力を、前記複数の前処理されたEMG信号の複数の属性を前記確認されたスニフの複数の属性と比較することにより定量化するステップと
を有する、患者の呼吸努力を定量化する方法。
【請求項2】
前記コントローラを用いて、前記複数の前処理されたEMG信号における通常の呼吸に関連する局所的な通常呼吸EMG最大値を識別するステップと、
前記コントローラを用いて、前記局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記確認されたスニフに関連する前記複数の前処理されたEMG信号における最大スニフ値を識別するステップと
を更に有し、
前記呼吸筋努力を定量化するステップが、前記局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を前記最大スニフ値と比較するステップを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラを用いて、前記生のEMG信号を該生のEMG信号における通常の呼吸活動を強調すると共にアーティファクトを最小化するように前処理することによって通常呼吸EMG信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記生のEMG信号を該生のEMG信号におけるスニフ活動を強調するように前処理することによりスニフEMG信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記通常呼吸EMG信号における前記局所的な通常呼吸EMG最大値を識別するステップと、
前記コントローラを用いて、前記通常呼吸EMG信号における局所的な通常呼吸EMG最小値を識別するステップと、
前記コントローラを用いて、前記スニフEMG信号における前記最大スニフ値を識別するステップと
を更に有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の呼吸筋努力を定量化するステップが、前記最大スニフ値に対する前記局所的なEMG最大値の平均の比を見付けるステップを有する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記コントローラを用いて、各候補スニフについて、その内部の前記スニフEMG信号の全ての値が所定の閾値スニフ値以上であるような前記候補スニフのバンプを識別するステップと、
前記コントローラを用いて、各バンプにおける中間点を識別するステップであって、該中間点が当該バンプの左半分の曲線の下の面積が該バンプの右半分の曲線の下の面積と等しくなるような中央値である、ステップと、
前記コントローラを用いて、各バンプの前記中間点において、当該バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間を線形に補間することによりオフセット値を計算するステップと、
前記コントローラを用いて、前記バンプの振幅を、該バンプ内の最大スニフEMG値と前記オフセット値との間の差を見付けることにより決定するステップと、
複数の所定の振幅条件がアーティファクト活動を示す場合、前記候補スニフをアーティファクトとして分類するステップと
を更に有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記コントローラを用いて、前記振幅に対する前記バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との平均の比を見付けることにより前記バンプの第1の非対称特徴を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と前記バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間の第1の差を見付け、前記バンプ内の最大スニフ値と前記バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値との間の第2の差を見付け、前記バンプ内の最大スニフ値と前記バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間の第3の差を見付け、並びに前記第2の差及び前記第3の差の小さい方に対する前記第1の差の比を見付けることにより前記バンプの第2の非対称特徴を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記バンプの歪度を決定することにより前記バンプの第3の非対称特徴を決定するステップと、
複数の所定の非対称性条件がアーティファクト活動を示す場合、前記候補スニフをアーティファクトとして分類するステップと
を更に有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コントローラを用いて、前記生の加速度計信号をローパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、下側周波数帯域電源信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、上側周波数帯域電源信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記下側周波数帯域電源信号及び前記上側周波数帯域電源信号を合計して、合計された周波数帯域電源信号を生成するステップと、
前記候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において、前記加速度計の第1の軸に関し、前記合計された周波数帯域電源信号に対する前記上側周波数帯域電源信号の第1の比を決定するステップと、
前記候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において、前記加速度計の第2の軸に関し、前記合計された周波数帯域電源信号に対する前記上側周波数帯域電源信号の第2の比を決定するステップと、
前記コントローラにより前記第1の比及び前記第2の比を所定の周波数帯域比と比較するステップと、
前記第1の比及び前記第2の比が前記所定の周波数帯域比を超える何れの前記候補スニフもアーティファクトとして認定するステップと
を更に有する、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コントローラを用いて、前記生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、上側高周波帯域電源信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において前記上側高周波帯域電源信号が所定の閾値と交差する回数を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記候補スニフに関連する時間間隔の間において前記上側周波数帯域電源信号が前記所定の閾値と交差する回数が所定の交差回数を超える何れの前記候補スニフもアーティファクトとして認定するステップと
を更に有する、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コントローラを用いて、前記生の加速度計信号をローパスフィルタ処理して下側周波数帯域信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理して上側周波数帯域信号を生成するステップと、
前記コントローラを用いて、前記下側周波数帯域信号及び前記上側周波数帯域信号の標準偏差を決定するステップと、
前記コントローラを用いて、前記標準偏差が所定の値を超える何れの前記候補スニフもアーティファクトとして認定するステップと
を更に有する、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
呼吸間隔の間における患者の呼吸努力を定量化するためのシステムであって、
患者の呼吸筋活動を測定する複数の筋電図(EMG)電極と、
前記患者の胸部の複数の軸における加速度を測定する加速度計と、
コントローラと
を有し、
前記コントローラは、前記EMG電極により測定された生のEMG信号及び前記加速度計により測定された生の加速度計信号を受信し、
前記コントローラは、前記生のEMG信号を前処理することにより複数の前処理されたEMG信号を生成し、
前記コントローラは、前記生の加速度計信号を前処理することにより複数の前処理された加速度計信号を生成し;
前記コントローラは、前記複数の前処理されたEMG信号の一部を候補スニフとして識別し、
前記コントローラは、前記候補スニフの時間間隔に関連する前記複数の前処理されたEMG信号から複数のEMG由来特徴を決定し、
前記コントローラは、前記候補スニフの時間間隔に関連する前記複数の前処理された加速度計信号から複数の加速度計信号特徴を決定し、
前記コントローラは、前記複数のEMG由来特徴及び加速度計信号特徴を複数のスニフ検出閾値と比較し、
前記コントローラは、前記候補スニフを、前記複数のEMG由来特徴及び加速度計信号特徴の前記複数のスニフ検出閾値との比較に基づいて、確認されたスニフ又は信号アーティファクトとして分類し、
前記コントローラが、前記患者の呼吸筋努力を、前記複数の前処理されたEMG信号の複数の属性を前記確認されたスニフの複数の属性と比較することにより定量化する、
システム。
【請求項11】
前記コントローラが更に、
前記複数の前処理されたEMG信号における通常の呼吸に関連する局所的な通常呼吸EMG最大値を識別し、
前記局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を決定し、
前記確認されたスニフに関連する前記複数の前処理されたEMG信号における最大スニフ値を識別し、
前記呼吸筋努力を、前記局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を前記最大スニフ値と比較することにより定量化する、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラが更に、
前記生のEMG信号を該EMG信号における通常の呼吸活動を強調すると共にアーティファクトを最小化するように前処理することによって通常呼吸EMG信号を生成し;
前記生のEMG信号を該EMG信号におけるスニフ活動を強調するように前処理することによりスニフEMG信号を生成し;
前記通常呼吸EMG信号における局所的な通常呼吸EMG最大値を識別し;及び
前記スニフEMG信号における最大スニフ値を識別し;
前記局所的な通常呼吸EMG最大値の平均の前記最大スニフ値との比較は、前記最大スニフ値に対する前記局所的な通常呼吸EMG最大値の平均の比を見付けることを含む;
請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラが更に、
各候補スニフについて、その内部の前記スニフEMG信号の全ての値が所定の閾値スニフ値以上であるような前記候補スニフのバンプを識別し、
各バンプにおける中間点を識別し、ここで、該中間点は当該バンプの左半分の曲線の下の面積が該バンプの右半分の曲線の下の面積と等しくなるような中央値であり、
各バンプの前記中間点において、当該バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間を線形に補間することによりオフセット値を決定し、
前記バンプの振幅を、該バンプ内の最大スニフEMG値と前記オフセット値との間の差を見付けることにより決定し、
複数の所定の振幅条件がアーティファクト活動を示す場合、前記候補スニフをアーティファクトとして分類する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが更に、
前記生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、上側高周波帯域電源信号を生成し、
前記候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において前記上側高周波帯域電源信号が所定の閾値と交差する回数を決定し、
前記候補スニフに関連する時間間隔の間において前記上側周波数帯域電源信号が前記所定の閾値と交差する回数が所定の交差回数を超える何れの前記候補スニフもアーティファクトとして認定する、
請求項10から13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラが更に、
前記生の加速度計信号をローパスフィルタ処理して下側周波数帯域信号を生成し、
前記生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理して上側周波数帯域信号を生成し、
前記下側周波数帯域信号及び前記上側周波数帯域信号の標準偏差を決定し、
前記標準偏差が所定の値を超える前記候補スニフの何れもアーティファクトとして認定する、
請求項10から13の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 開示される概念は、患者の呼吸努力(すなわち、呼吸筋努力、又は「呼吸仕事量」)を定量化するための方法及びシステムに関し、特に、EMG信号アーティファクトからスニフ動作(すなわち、深く鋭い吸気)努力を示す筋電図(EMG)信号を区別するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 筋電図法(EMG)は、胸骨の両側部の肋間腔(胸骨傍)又は横隔膜に近い腹部領域等の、呼吸に関与する筋肉の活動を推定することにより患者の呼吸状態を評価するために使用できる。呼吸数は非侵襲的に容易に測定できるが、呼吸数単独では患者が呼吸中になす努力を示すことはない。比較すると、吸気筋のEMG測定値は、呼吸筋の負荷と呼吸筋の能力との間のバランスの指標となる。EMG信号は、呼吸努力の客観的尺度を得るための非侵襲的方法を提供する。特に、吸息の間に測定される呼吸EMG活動は、脳が呼吸筋に出力する信号であって呼吸筋負荷と呼吸筋能力との間のバランスの指標となる神経呼吸ドライブ(駆動)を表す。
【0003】
[0003] EMG信号から導出される呼吸筋活動の客観的測定は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つ入院患者等の患者の呼吸状態を監視するために重要であると考えられる。患者がリラックスしているときに自然に起こる通常の呼吸活動のEMG測定値に加えて、スニフのEMG測定値も患者の呼吸状態を評価する上で非常に有益である。スニフは、深く鋭い吸息(最大努力動作)である。しかしながら、EMG信号におけるスニフ活動を分離することは容易ではない。非呼吸活動による信号アーティファクトが、EMG信号にスニフ活動に類似した強い活動を生じさせるからである。このような信号アーティファクトは、例えば、患者の動き又は接続された配線への圧力による電極の妨害に起因し得る。
【0004】
[0004] スニフを高信頼度で検出すると共にスニフをアーティファクトから区別する能力は、EMG信号からの呼吸筋活動の推定及び患者の呼吸状態の推定に直接影響を与える。鼻カニューレ又は食道電極等の装置による呼吸活動の独立した測定は、EMG波形上の信号アーティファクトからスニフを区別するための、EMG信号と比較できる追加の呼吸データを提供する。しかしながら、鼻カニューレ、食道電極及び他の同様の装置は、高度に侵襲的であり、患者にとって面倒であり負担にさえなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] したがって、EMG信号においてスニフを他の活動から区別するために使用される方法及びシステムには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] したがって、本発明の目的は、一実施形態において、呼吸間隔の間における患者の呼吸筋努力(すなわち、呼吸活動、呼吸仕事量)を定量化するための方法を提供することであり、該方法は:患者の呼吸筋活動を複数のEMG電極を用いて測定するステップ;加速度計を用いて呼吸活動と同時に患者の胸部の複数の面における加速度を測定するステップ;コントローラを用いてEMG電極により測定された生のEMG信号及び加速度計により測定された生の加速度計信号を受信するステップ;コントローラで生のEMG信号を前処理することにより複数の前処理されたEMG信号を生成するステップ;コントローラで生の加速度計信号を前処理することにより複数の前処理された加速度計信号を生成するステップ;コントローラを用いて、複数の前処理されたEMG信号の一部を候補スニフとして識別するステップ;コントローラを用いて、候補スニフの時間間隔に関連する複数の前処理されたEMG信号から複数のEMG由来特徴を決定するステップ;コントローラを用いて、候補スニフの時間間隔に関連する複数の前処理された加速度計信号から複数の加速度計信号特徴を決定するステップ;コントローラを用いて、複数のEMG由来特徴及び加速度計信号特徴を複数のスニフ検出閾値と比較するステップ;コントローラを用いて、上記比較の結果がスニフ活動を示す場合に、候補スニフを確認されたスニフとして分類するステップ;及びコントローラを用いて、患者の呼吸筋努力を、複数の前処理されたEMG信号の複数の属性を上記確認されたスニフの複数の属性と比較することにより定量化するステップ;を含む。
【0007】
[0007] 当該方法は、更に、コントローラを使用して:複数の前処理されたEMG信号における通常の呼吸に関連する局所的な通常呼吸EMG最大値を識別するステップ;局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を決定するステップ;及び確認されたスニフに関連する複数の前処理されたEMG信号における最大スニフ値を識別するステップ;を有し得る。前記呼吸筋努力を定量化するステップは、局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を最大スニフ値と比較するステップを有し得る。当該方法は、更に、コントローラを使用して:生のEMG信号を該生のEMG信号における通常の呼吸活動を強調すると共にアーティファクトを最小化するように前処理することによって通常呼吸EMG信号を生成するステップ;生のEMG信号を該生のEMG信号におけるスニフ活動を強調するように前処理することによりスニフEMG信号を生成するステップ;通常呼吸EMG信号における局所的な通常呼吸EMG最大値を識別するステップ;通常呼吸EMG信号における局所的な通常呼吸EMG最小値を識別するステップ;及びスニフEMG信号における最大スニフ値を識別するステップ;を有し得る。前記患者の呼吸筋努力を定量化するステップは、最大スニフ値に対する局所的なEMG最大値の平均の比を見付けるステップを有し得る。
【0008】
[0008] 当該方法は、更に、コントローラを使用して:各候補スニフについて、その内部のスニフEMG信号の全ての値が所定の閾値スニフ値以上であるような候補スニフのバンプを識別するステップ;各バンプにおける中間点を識別するステップであって、該中間点が当該バンプの左半分の曲線の下の面積が該バンプの右半分の曲線の下の面積と等しくなるような中央値であるステップ;バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間を線形に補間することによりオフセット値を計算するステップ;バンプの振幅を、該バンプ内の最大スニフEMG値とオフセット値との間の差を見付けることにより決定するステップ;及び複数の所定の振幅条件がアーティファクト活動を示す場合に、候補スニフをアーティファクトとして分類するステップ;を有し得る。当該方法は、更に、コントローラを使用して:前記振幅に対する当該バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との平均の比を見付けることによりバンプの第1の非対称特徴を決定するステップ;当該バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間の第1の差を見付け、当該バンプ内の最大スニフ値と該バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値との間の第2の差を見付け、当該バンプ内の最大スニフ値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間の第3の差を見付け、並びに第2の差及び第3の差の小さい方に対する第1の差の比を見付けることにより当該バンプの第2の非対称特徴を決定するステップ;当該バンプの歪度を決定することにより該バンプの第3の非対称特徴を決定するステップ;及び複数の所定の非対称性条件がアーティファクト活動を示す場合、候補スニフをアーティファクトとして分類するステップ;を有し得る。
【0009】
[0009] 当該方法は、更に、コントローラを使用して:生の加速度計信号をローパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、下側(低側)周波数帯域電源信号を生成するステップ;生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、上側(高側)周波数帯域電源信号を生成するステップ;下側周波数帯域電源信号及び上側周波数帯域電源信号を合計して、合計された周波数帯域電源信号を生成するステップ;候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において、加速度計の第1の軸に関し、合計された周波数帯域電源信号に対する上側周波数帯域電源信号の第1の比を決定するステップ;候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において、加速度計の第2の軸に関し、合計された周波数帯域電源信号に対する上側周波数帯域電源信号の第2の比を決定するステップ;第1の比及び第2の比を所定の周波数帯域比と比較するステップ;及び第1の比及び第2の比が所定の周波数帯域比を超える候補スニフの何れもアーティファクトとして認定するステップ;を有し得る。
【0010】
[0010] 当該方法は、更に、コントローラを使用して:生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、上側高周波帯域電源信号を生成するステップ;候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において上側高周波帯域電源信号が所定の閾値と交差する回数を決定するステップ;及び候補スニフに関連する時間間隔の間において上側周波数帯域電源信号が所定の閾値と交差する回数が所定の交差回数を超える何れの候補スニフもアーティファクトとして認定するステップ;を有し得る。当該方法は、更に、コントローラを使用して:生の加速度計信号をローパスフィルタ処理して下側周波数帯域信号を生成するステップ;生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理して上側周波数帯域信号を生成するステップ;下側周波数帯域信号及び上側周波数帯域信号の標準偏差を決定するステップ;及び標準偏差が所定の値を超える何れの候補スニフもアーティファクトとして認定するステップ;を有し得る。
【0011】
[0011] 他の実施形態において、呼吸間隔の間における患者の呼吸努力を定量化するためのシステムは:患者の呼吸筋活動を測定するよう構成された複数のEMG電極;患者の胸部の複数の軸の加速度を測定するように構成された加速度計;及びコントローラ;を含む。該コントローラは、EMG電極により測定された生のEMG信号及び加速度計により測定された生の加速度計信号を受信し;生のEMG信号を前処理することにより複数の前処理されたEMG信号を生成し;生の加速度計信号を前処理することにより複数の前処理された加速度計信号を生成し;複数の前処理されたEMG信号の一部を候補スニフとして識別し;候補スニフの時間間隔に関連する複数の前処理されたEMG信号から複数のEMG由来特徴を決定し;候補スニフの時間間隔に関連する複数の前処理された加速度計信号から複数の加速度計信号特徴を決定し;複数のEMG由来特徴及び加速度計信号特徴を複数のスニフ検出閾値と比較し;候補スニフを、複数のEMG由来特徴及び加速度計信号特徴の複数のスニフ検出閾値との比較に基づいて、確認されたスニフ又は信号アーティファクトとして分類し;及び患者の呼吸筋努力を、複数の前処理されたEMG信号の複数の属性を確認されたスニフの複数の属性と比較することにより定量化する;ように構成される。
【0012】
[0012] 当該システムのコントローラは、更に、複数の前処理されたEMG信号における通常の呼吸に関連する局所的な通常呼吸EMG最大値を識別し;局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を決定し;確認されたスニフに関連する複数の前処理されたEMG信号における最大スニフ値を識別し;及び呼吸筋努力を、局所的な通常呼吸EMG最大値の平均を最大スニフ値と比較することにより定量化する;ように構成され得る。当該システムのコントローラは、更に、生のEMG信号を該EMG信号における通常の呼吸活動を強調すると共にアーティファクトを最小化するように前処理することによって通常呼吸EMG信号を生成し;生のEMG信号を該EMG信号におけるスニフ活動を強調するように前処理することによりスニフEMG信号を生成し;通常呼吸EMG信号における局所的な通常呼吸EMG最大値を識別し;及びスニフEMG信号における最大スニフ値を識別する;ように構成され得る。局所的なEMG最大値の平均の最大スニフ値との比較は、最大スニフ値に対する局所的なEMG最大値の平均の比を見付けることを含み得る。
【0013】
[0013] 当該システムのコントローラは、更に、各候補スニフについて、その内部のスニフEMG信号の全ての値が所定の閾値スニフ値以上であるような候補スニフのバンプを識別し;各バンプにおける中間点を識別し、ここで、該中間点は当該バンプの左半分の曲線の下の面積が該バンプの右半分の曲線の下の面積と等しくなるような中央値であり;各バンプの中間点において、当該バンプの直前の局所的なスニフEMG最小値と該バンプの直後の局所的なスニフEMG最小値との間を線形に補間することによりオフセット値を決定し;当該バンプの振幅を、該バンプ内の最大スニフEMG値とオフセット値との間の差を見付けることにより決定し;及び複数の所定の振幅条件がアーティファクト活動を示す場合、候補スニフをアーティファクトとして分類する;ように構成され得る。
【0014】
[0014] 当該システムのコントローラは、更に、生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理、整流及び平滑化して、上側高周波帯域電源信号を生成し;候補スニフの各々に関連する時間間隔の間において上側高周波帯域電源信号が所定の閾値と交差する回数を決定し;及び候補スニフに関連する時間間隔の間において上側周波数帯域電源信号が所定の閾値と交差する回数が所定の交差回数を超える何れの候補スニフもアーティファクトとして認定する;よう構成され得る。当該システムのコントローラは、更に、生の加速度計信号をローパスフィルタ処理して下側周波数帯域信号を生成し;生の加速度計信号をハイパスフィルタ処理して上側周波数帯域信号を生成し;下側周波数帯域信号及び上側周波数帯域信号の標準偏差を決定し;及び標準偏差が所定の値を超える何れの候補スニフもアーティファクトとして認定する;ように構成され得る。
【0015】
[0015] 本発明の上記及び他の目的、フィーチャ及び特徴、ならびに関連する構成要素の動作方法及び機能、部品及び製造の経済性の組み合わせは、添付図面を参照して下記の説明及び添付請求項を考慮すれば一層明らかになるであろう。これら図面の全ては本明細書の一部を形成するものであり、種々の図において同様の参照番号は対応する部分を示している。しかしながら、図面は図示及び説明のみを目的としており、本発明の制限を定義するものではないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】[0016]
図1Aは、本発明の例示的な実施形態による複数のEMG電極及び加速度計が胴体に取り付けられた患者の胴体の前側の透視図であり、胴体に対して定義された加速度計のx軸及びy軸を示す。
【
図1B】[0017]
図1Bは、本発明の例示的な実施形態による
図1Aに示される患者の右側部の斜視図であり、重力ベクトルが略xz面内に位置するようにして胴体に対し定義されたxz面を示す。
【
図2】[0018]
図2は、本発明の例示的な実施形態による、2つの異なる形式の前処理を受けた後の
図1に示される電極等のEMG電極により測定された生の信号を表す2つの例示的な波形を示す。
【
図3】[0019]
図3は、本発明の例示的な実施形態による、呼吸筋努力を定量化するための方法50のフローチャートである。
【
図4】[0020]
図4は、本発明の例示的な実施形態による、通常呼吸の前処理されたEMG信号及びスニフの前処理されたEMG信号の呼吸サイクルc中に候補スニフが発生した可能性がある間隔を定義するための処理100のフローチャートである。
【
図5】[0021]
図5は、本発明の例示的な実施形態による、処理100で決定されたEMG信号の最大値に基づくデータ点及び時間間隔を用いて、処理100の間に定義された候補スニフの主要バンプの幾つかの特徴を定義するための処理200のフローチャートである。
【
図6】[0022]
図6は、本発明の例示的な実施形態による、処理100で決定されたEMG信号の最小値に基づくデータ点及び時間間隔を用いて、処理100の間に定義された候補スニフの主要バンプの追加の特徴を定義するための処理300のフローチャートである。
【
図7】[0023]
図7は、本発明の例示的な実施形態による、
図1A及び
図1Bに示されるEMG電極及び加速度計等のEMG電極及び加速度計により測定された信号を表す例示的波形を集めて示したもので、これらの例示的波形は
図4~
図6及び
図8~
図10に示される処理100~600による種々のレベルの前処理を受けている。
【
図8】[0024]
図8は、本発明の例示的な実施形態による、患者が呼吸する際の
図1A及び
図1Bに示される加速度計の角度の変化を大まかに表す信号を構築するための処理400のフローチャートである。
【
図9】[0025]
図9は、本発明の例示的な実施形態による、
図8で参照した加速度計により測定された生の加速度計信号から上側及び下側周波数帯域信号を構築するための処理500のフローチャートである。
【
図10】[0026]
図10は、本発明の例示的な実施形態による、処理100~300の間に識別された候補スニフをスニフ又は信号アーティファクトのいずれかとして分類するために
図8及び
図9で参照した生の加速度計信号の特徴を定義するための処理600のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0027] 本明細書で使用される場合、単数形は文脈が明確にそうでないと示さない限り複数を含む。
【0018】
[0028] 本明細書で使用される場合、2以上の部分又は構成要素が「結合される」という記述は、これらの部分が直接的に又は間接的に、すなわちリンクが生じる限りにおいて1以上の中間部分又は構成要素を介して、結合され又は一緒に動作することを意味するものとする。
【0019】
[0029] 本明細書で使用される場合、「アーティファクト」という用語は、限定されるものではないが非呼吸筋の活性化を含む非呼吸活動による(例えば、身体の動き、電極皮膚間インピーダンスの変化、又はEMG信号を感知する電極に接続されたケーブルとの干渉による)筋電図(EMG)信号波形上の歪みを意味するものとする。
【0020】
[0030] 本明細書で使用される場合、「コントローラ」という用語は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)、プログラマブルシステムオンチップ(PSOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ、又は何らかの他の適切な処理デバイス若しくは装置を限定無しで含む、データ(例えば、ソフトウェアルーチン及び/又は斯様なソフトウェアルーチンにより使用される情報)を記憶、検索、実行及び処理できる複数のプログラム可能なアナログ及び/又はデジタルデバイス(関連するメモリ部品又は部分を含む)を意味するものとする。該メモリ部分は、データ及びプログラムコードの記憶のための記憶レジスタ、すなわち非一時的なマシン可読媒体をコンピュータの内部記憶領域の態様等で提供すると共に、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであり得る、限定されるものではないが、RAM、ROM、EPROM、EEPROM(登録商標)及びFLASH等の種々のタイプの内部及び/又は外部記憶媒体の何れか1以上であり得る。
【0021】
[0031] 本明細書で使用される「機械学習モデル」という用語は、そのようにするように明示的にプログラムされることなく予測又は決定を行うために「トレーニングデータ」として知られるサンプルデータに基づいて数学的モデルを開発及び構築するソフトウェアシステムを意味するものであり、このようなソフトウェアシステムは、限定するものではないが、一連のトレーニングデータからパターンを認識するようにトレーニングされたものを開発し、その後、他のデータセット内のトレーニングデータセットからパターンを認識するアルゴリズムを開発するコンピュータソフトウェアシステムを含む。
【0022】
[0032] 本明細書で使用される場合、「数」という用語は、1又は1より大きい整数(すなわち、複数)を意味するものとする。
【0023】
[0033] 例えば限定するものではないが、上、下、左、右、上側、下側、前、後及びそれらの派生語等の、本明細書で使用される方向的語句は、図面に示される要素の向きに関係するものであり、明示的に記載されていない限り請求項を限定するものではない。
【0024】
[0034] 本発明は、本明細書において種々の特定の例示的実施形態に関連して詳細に説明されるように、呼吸筋努力(RME)とも呼ばれる患者の呼吸努力を非侵襲的に客観的に定量化するための方法及びシステムを提供する。本明細書で更に詳細に説明されるように、スニフはRMEの正確な決定のために重要であるが、スニフ及び信号アーティファクトは、しばしば、EMG信号波形上に類似して現れる。スニフをEMG波形上の信号アーティファクトから区別するためにEMG信号と比較できる追加の呼吸信号を生成するために鼻カニューレ又は食道電極等の装置を使用することもできるが、鼻カニューレは患者にとり不快であり得る一方、食道電極は侵襲的である。本発明の方法及びシステムは、2つの主要な方法で、すなわち、EMG信号波形におけるスニフを信号アーティファクトから一層良好に区別するために、EMG信号に加えて加速度計信号を利用することにより、及びRMEデータの収集の間における患者の快適さを最大限にするために非侵襲性装置、すなわちEMG電極及び加速度計のみを使用することにより、RMEを客観的に定量化する方法を改良する。
【0025】
[0035]
図1A及び
図1Bは、複数のEMG電極2、二軸又は三軸加速度計4及びコントローラ6から構成される呼吸努力定量化システム1の簡略化された概略図を示す。本発明の例示的な実施形態によれば、EMG電極2は患者Pに取り付けられて該患者Pの呼吸筋活動を監視する一方、加速度計4は患者Pに取り付けられて、呼吸活動と同時に発生する該加速度計4が取り付けられた身体表面(すなわち、胸部)の複数の軸(すなわち、x軸、y軸及び/又はz軸)の加速度を測定する。特に、加速度計4は呼吸活動とは全く関係のないアーティファクトによる加速度も測定する。本明細書において
図8に示される処理400に関して更に詳細に説明されるように、加速度計4により測定された加速度信号は該加速度計4が取り付けられた身体表面の向きの変化を大まかに表す信号を構築するために使用される。したがって、加速度計4は動き及び向きの信号を直接的に又は間接的に生成すると考えることができる。
【0026】
[0036] 例示的実施形態において、EMG電極2は第2肋間腔に配置される。基準電極の配置は変更することができ、
図1Aは基準電極配置の2つの例示的な実施形態を示す。或る例示的実施形態において、基準電極2´は鎖骨上に配置され、他の例示的実施形態において、基準電極2”は電極2の僅かに上の胸骨上に配置される。加速度計4は患者Pの胸骨に、z軸が患者の身体の外部を指す、すなわち身体表面に直交する一方、x軸が患者Pの頭部を指す状態でx及びy軸が身体表面に接する平面内に位置するように取り付けられる。したがって、xz平面は地表面に対して略垂直であり、重力ベクトルは略xz平面内に位置する。EMG電極2及び加速度計4はコントローラ6と電気的に通信するように示されており、該コントローラ6はEMG電極2及び加速度計4により測定された信号を受信及び記憶するように構成される。
【0027】
[0037] 幾つかのタイプのコントローラ、例えば種々のタイプのコンピュータが、EMG電極2及び加速度計4等の装置により検出された信号情報を受信及び記憶することができることが理解されるであろう。したがって、任意のタイプのコントローラ6及び任意の数(すなわち、1又は2以上)のコントローラ6を、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、EMG電極2及び加速度計4により送信される情報を受信及び記憶するために使用できる。更に、例示的な実施形態では、
図1に示すように、機械学習モデル7を含むソフトウェアがコントローラ6に統合され、本発明の方法及び処理が自動化され得るようにする。
【0028】
[0038]
図2は、第1の前処理されたEMG信号10及び第2の前処理されたEMG信号11の例を示し、各信号は複数の呼吸サイクルを示し、各呼吸サイクルはEMG信号10又はEMG信号11の1つの有意な振動からなっている。EMG信号10及びEMG信号11は、
図1Aに示すEMG電極2等の電極により測定された生のEMG信号に対して2つの異なるレベルの前処理を使用することから生じるものである。具体的には、EMG信号10は生のEMG信号(すなわち、
図1AのEMG電極2等の複数の電極により検出されたEMG信号)を重度にローパスフィルタ処理した結果である一方、EMG信号11はEMG信号10に対してベースライン除去及び遅延補償を実行した結果である。
【0029】
[0039]
図2のEMG信号10及び11は、異なる呼吸サイクルの属性をより良く強調するために、生の形態ではなく前処理されたものとして示されている。本発明の方法及びシステムは、可能な限り多くの信号アーティファクトを除去する一方、信号内の通常の呼吸及びスニフ活動(「通常の呼吸」及び「スニフ」という用語は、本明細書において後に更に詳細に説明される)を分離及び保存するために、前処理されたEMG信号を利用する。本明細書では、このような信号前処理についての高いレベルでの詳細が提供されるが、本発明はそのような前処理の断片的細部を対象とするものではない。以下、開示を簡潔にするために、EMG信号の属性の言及はEMG信号10を参照するが、EMG信号10の時間的属性についての如何なる説明もEMG信号11にも当てはまり、またその逆も同様であることが理解されるであろう。両信号は同一の生のEMG信号から派生したものであり、同一の時間間隔にまたがるものであるからである。
【0030】
[0040] EMG信号10は、
図2の波形において実線及び鎖線を使用して示すように、2つの部分INS及びOUTに分割される。EMG信号10における呼吸サイクルの主ピーク12の最大値を含む部分はEMG信号10のINS部分14と呼ばれ、EMG信号10のうちの該ラベル付けされたINS部分14と同じ鎖線で描かれた全ての部分もEMG信号10のINS部分14を示すことが理解されるであろう。EMG信号10のうちのINS部分14でない部分はOUT部分16と呼ばれ、EMG信号10のうちの該ラベル付けされたOUT部分16と同じ実線で描かれた全ての部分もEMG信号10のOUT部分16を示すことが理解されるであろう。所与の呼吸サイクルcのINS部分14はI[c]としても示され、所与の呼吸サイクルcのOUT部分はO[c]としても示され得る。
【0031】
[0041] 本発明の方法及びシステムの場合、各INS部分14及びOUT部分16の正確な開始時点及び終了時点は厳格に定められる必要はない。所与の呼吸サイクルを定める特徴は、INS部分に呼吸サイクルの最大値を含むことであるからである。
図2では、EMG信号10における或る呼吸サイクルの主ピークの1つの斯様な最大値12のみがラベル付けされているが、
図2に示される呼吸サイクルの間に発生する全ての極大も主ピークの最大値12であることが理解されるであろう。呼吸サイクルの主ピークの最大値12が発生する時点は、本明細書ではt
rbg
max[c]と称される。
図2を参照すると、OUT部分16の各々が各呼吸サイクルの最小値18を含むことが理解されるであろう。
図2では、EMG信号10における或る呼吸サイクルの1つの斯様な最小値18のみがラベル付けされているが、
図2に示される呼吸サイクルの間に発生する全ての極小も最小値18であることが理解されるであろう。呼吸サイクルの最小値18が生じる時点は、本明細書ではt
rbg
min[c]と呼ぶ。一般的に、EMG信号10における呼吸サイクルのINS部分14は吸息に対応する。呼吸筋活動は吸息中に最大となるからである。しかしながら、一部の患者では、呼吸筋活動は代わりに呼息中に最大となり、そのような患者では、EMG信号における呼吸サイクルのINS部分14が呼息に対応することが理解されるであろう。
【0032】
[0042] 本明細書において所与の呼吸サイクルが呼吸サイクルcと呼ばれる場合、サイクルcの直前の呼吸サイクルはサイクル[c-1]であり、サイクルcの直後のサイクルは[c+1]であると理解されるべきである。呼吸サイクルは、アルゴリズム呼吸サイクル又は自然呼吸サイクルの何れかとして定義され得る。アルゴリズム呼吸サイクルは、ABC[c]と示され、ABC[c]=(O[c],I[c])のように、直後のINS部分14が後続する呼吸サイクルのOUT部分16を含む。自然呼吸サイクルは、NBC[c]と示され、NBC[c]=(I[c],O[c+1])のように、直後のOUTが後続する呼吸サイクルのINSを含む。アルゴリズム呼吸サイクルは、呼吸サイクルを(I[c],O[c+1])よりも(O[c],I[c])と定義する方がリアルタイムアルゴリズムによるアーティファクト検出の助けになる故に、そのように呼ばれる。
【0033】
[0043] 本発明の例示的実施形態の詳細な説明に進む前に、参照を容易にするために、幾つかの頭字語及び変数名(上述した変数を含む)並びにそれらの意味を以下に列挙する。以下のリストのエントリの幾つかは未だ紹介されていないが、これら頭字語及び変数が本開示全体を通して使用されているので該リストが参照され得る。
【0034】
[頭字語及び変数のリスト]
i.BC:「呼吸サイクル」の略で、EMG信号における連続する吸息及び呼息の組み合わせ又はアーティファクトによる大きなバンプ(隆起)のいずれかに対応すると予想される1つの大きな振動からなる一部である。
ii.INS:呼吸サイクルにおける該呼吸サイクルの主ピークの最大値を含む部分を示す。
iii.OUT:呼吸サイクルにおけるINS部分ではない部分を示す。
iv.I[c]:呼吸サイクルcのINS部分を示す。
v.O[c]:呼吸サイクルcのOUT部分を示す。
vi.c:整数の連続呼吸サイクルインデックスを示す。
vii.ABC[c]:本発明で使用されるアーティファクト検出アルゴリズムを意味のあるものにさせると共にリアルタイム処理を容易にするために定義される「アルゴリズム呼吸サイクル」を表し、各ABC[c]は、ABC[c]=(O[c],I[c])のように、直後のINSが後続する呼吸サイクルのOUTを含む。
viii.NBC[c]:「自然の呼吸サイクル」を表し、各NBC[c]は、NBC[c]=(I[c],O[c+1])のように、直後のOUTが後続する呼吸サイクルのINSを含む。
ix.s[n]:通常の呼吸パラメータで前処理されたEMG信号を示し、
図2に示されるEMG信号10及び11は通常の呼吸パラメータで前処理された2つの斯様なEMG信号s[n]を示す。
x.v[n]:スニフパラメータで前処理されたEMG信号を示す。
xi.t
rbg
max[c]:I[c]の間におけるs[n]の最大値に関連付けられた時点であり、
図2を参照すると、点12はs[n]における呼吸サイクルcの極大値を表し、該ラベル付けされた点12に関連付けられた時点が当該呼吸サイクルcのt
rbg
max[c]である。
xii.t
rbg
min[c]:O[c]の間におけるs[n]の最小値に関連付けられた時点であり、
図2を参照すると、点18はs[n]における呼吸サイクルcの極小値を表し、該ラベル付けされた点18に関連付けられた時点が当該呼吸サイクルcのt
rbg
min[c]である。
xiii.t
snf
min[c]:O[c]の間におけるv[n]の最小値に関連付けられた時点である。
xiv.t
snf
max[c]:I[c]の間におけるv[n]の最大値に関連付けられた時点である。
xv.E
rbg
abs:通常の呼吸に対するアーティファクト検出によりアーティファクト無しとみなされた呼吸サイクルの絶対EMG活動の極大の平均を示す。
xvi.E
snf
abs:EMG信号の特徴と同時に加速度計信号の特徴を使用してEMG信号においてスニフが識別された後の、これらスニフの間に測定された最大の呼吸筋活動を示す。
xvii.E
rel:E
rbg
absのE
snf
absに対する比を表し、呼吸筋努力(RME)の相対測定値を構成する。
【0035】
[0044] 前述したように、本発明の方法及びシステムは、信号アーティファクトを可能な限り多く低減するように前処理されたEMG信号を利用し、このことは通常の呼吸及びスニフ活動が生のEMG信号から分離されることを可能にする。「通常の」呼吸は、患者がリラックスしていて自然に又は自発的に呼吸していると想定される場合に発生すると考えられる。これと比較して、「スニフ」は通常の呼吸よりもはるかに鋭く、強く、短い。スニフの固有の性質(すなわち、通常の呼吸の吸息と比較して鋭く、強く、短い性質)及びスニフの通常の呼吸と比較して相対的に低頻度の発生は、通常の呼吸活動の間における呼吸サイクル及びアーティファクトを検出するように設計されたアルゴリズムによるスニフの自然な検出に即座に役立つわけではないことに注意されたい。
【0036】
[0045] したがって、通常の呼吸活動を検出するように設計された一連の通常呼吸パラメータが、所与の生のEMG信号を前処理して、
図2のEMG信号10及び11等の通常呼吸信号s[n]を生成するために使用され(このような前処理は、以下では「通常呼吸前処理」と称され得る)、スニフ活動を検出すると共にスニフの主要な特徴を保存するように設計された他の一連のスニフパラメータが、所与のEMG信号を前処理してスニフ信号v[n]を生成するために使用される(このような前処理は、以下「スニフ前処理」と称され得る)。したがって、本発明の例示的な実施形態によれば、所与の生のEMG信号に対して、通常呼吸前処理された信号s[n]及びスニフ前処理された信号v[n]の両方が生成され、信号s[n]におけるデータ点により表される各時点に対して、信号v[n]には対応するデータ点が存在し、その逆も成り立つようにする。
【0037】
[0046] 通常呼吸信号s[n]及びスニフ前処理信号v[n]を生成するためのEMG信号の前処理は同じステップの幾つかに従い、通常呼吸前処理とスニフ前処理との間の主な差違は、スニフ前処理がEMG信号の大幅に少ない正味の平滑化処理を含むことである。通常呼吸前処理及びスニフ前処理の両者は、スパイク除去、スケーリング、第1のラウンドのハイパスフィルタ処理、オプションの電源線干渉低減、整流、ダウンサンプリング、メディアンフィルタ処理、及び軽ローパスフィルタ処理を含む。通常呼吸処理は、更に、他のラウンドのローパスフィルタ処理、ベースライン除去のための他のラウンドのハイパスフィルタ処理、並びに呼吸サイクル部分及びアーティファクトの検出のための補助信号の構築を含む。
【0038】
[0047] スパイク除去は、例えば限定するものではないがペースメーカ及び鋭いアーティファクト等による生のEMG信号における非常に短い大きなスパイクを除去する。スケーリングとは、単に、ボルトで測定された信号をマイクロボルト(又は他の便利な単位)に変換することを指す。第1のラウンドのハイパスフィルタ処理は、低周波数のモーションアーティファクト、緊張性活動、心電図(ECG)活動、電源線干渉、及びセンサノイズを低減する。第1ラウンドのハイパスフィルタ処理の後に残留電源線干渉が存在する場合、該電源線干渉を更に低減するために基本電源線周波数及びその高調波にノッチを持つコムフィルタを使用できる。整流は、代用呼吸信号を構築するために高周波EMG信号の低周波エンベロープ(包絡線)を計算するための最初の動作である。メモリ及び処理要件を低減するために、整流にはダウンサンプリングが後続する。上記エンベロープ信号に存在する周波数は、生の信号における周波数よりもはるかに低いからである。特にECGによる残留スパイクを更に低減するために、メディアンフィルタ処理が適用される。軽ローパスフィルタ処理は、エンベロープ信号を更に平滑化し、代用呼吸筋活動信号を得るために使用される。軽ローパスフィルタ処理による更なる平滑化は、前処理されたEMG信号における極小及び極大の計算を容易にする。
【0039】
[0048] ここで
図3を参照すると、RMEを定量化するための方法50を表すフローチャートが示されている。方法50のステップはRMEの定量化に関与するステップの一般的な概要を提供し、方法50のステップの殆どはそれ自体で幾つかのステップを含む処理であることに留意されたい。したがって、方法50の各ステップの更に具体的な詳細は、
図4~
図6及び
図8、
図9に示される処理100、200、300、400、500及び600に関して本明細書で提供される。方法50のステップ51では、
図1A及び
図1Bを参照して前述したように、生のEMG信号及び加速度計信号を生成するために、呼吸筋活動がEMG電極2により測定される一方、呼吸活動と同時の胸部のx軸、y軸及び/又はz軸の加速度が加速度計4により測定される。ステップ52において、EMG電極2により測定された生のEMG信号は、通常呼吸パラメータで前処理されて通常呼吸信号s[n]を生成し、スニフパラメータで前処理されてスニフ信号v[n]を生成する。本開示全体を通して、前処理されたEMG信号s[n]又はv[n]のうちの潜在的なスニフを表す一部は「候補スニフ」と呼ばれ得る。ステップ53では、候補スニフが発生した時間間隔を識別するために、通常呼吸信号s[n]及びスニフ信号v[n]の種々の属性が使用される。方法50のステップ51~53に関する更なる詳細は、本明細書では
図4に示される処理100に関連して提供される。
【0040】
[0049] 続けて
図3を参照すると、方法50のステップ54において、加速度計4により測定された生の加速度計信号は、異なる周波数帯域の複数の信号を生成するように前処理される。ステップ54に関する更なる詳細は、本明細書では
図9に示される処理500に関して提供される。ステップ55では、ステップ52~54で見付かった前処理されたEMG信号及び前処理された加速度計信号の属性が使用され、候補スニフと一致する前処理された加速度計信号の属性を分析することにより、候補スニフを実際のスニフとして確認するか又は拒否する。方法50のステップ55に関する更なる詳細は、本明細書では
図6及び
図10に各々示される処理300及び600に関して提供される。
【0041】
[0050] 方法50の最終ステップ56はRMEを定量化する際の最後のステップであり、
図4に示される処理100(方法50のステップ51~53に対応する)の間に決定される通常呼吸属性E
rbg
abs、方法50のステップ51~55を実行することにより決定されるスニフ属性E
snf
abs及び
図4~
図6及び
図8~
図10に示される対応する処理100~600を使用すると共に、E
rbg
abs及びE
snf
absを使用して値E
relを決定することを要する。E
rbg
absはアーティファクト無しとみなされる通常の呼吸活動の最大値の平均を表す一方、E
snf
absは検出されたスニフ活動の最大値を示す。方法50のステップ56では、属性E
relは、
【数1】
のように、通常の呼吸値E
rbg
absをスニフ値E
snf
absに対して正規化することにより決定され、したがって、E
rbg
absはE
snf
absの分数又はパーセンテージとして表され得る。方法50のステップ56は、E
relがRMEの最も予測的な尺度の1つであることを実験結果が示す故に実行される。
【0042】
[0051]
図4~
図6及び
図8~
図10は、EMG信号及び加速度計信号の両方を使用してEMG信号から通常呼吸の及びスニフの特徴を抽出するために使用される種々の処理100~600の個々のステップを詳述するフローチャートである。処理100~600は、所与の信号波形における全ての呼吸サイクルcに対して実行されることを目的とし、古典的な特徴抽出アプローチを使用して開発された。例えば、限定するものではないが、所与の呼吸サイクルc内の信号波形の最小値又は最大値を見つけることが参照される場合、上記呼吸サイクルc及び該呼吸サイクルc内の信号波形の上記最小値又は最大値は、トレーニングされた機械学習モデル7により識別され、手動で正しさがチェックされることに注意すべきである。したがって、処理100~600の詳細な説明で参照されるEMG及び加速度計の波形は、患者により命令で実行される又は自発的に実行されるスニフのいずれか又は両方を、医師がそのようなスニフのタイミングを記録できると共に、該タイミングの知識を使用して処理100~600の有効性を検証できる限りにおいて、含み得ることにも留意すべきである。
【0043】
[0052]
図4は、本発明の例示的な実施形態による、通常呼吸前処理されたEMG信号s[n]及び対応するスニフ前処理されたEMG信号v[n]の所与の呼吸サイクルcの間にスニフ候補が発生した可能性がある間隔を定義するための処理100のステップを詳細に示すフローチャートである。前述したように、I[c]の間におけるs[n]の最大値に関連する時点はt
rbg
max[c]であり、O[c]の間におけるs[n]の最小値に関連する時点はt
rbg
min[c]である。処理100において、時点t
rbg
max[c]は各呼吸サイクルcにおける初期シード点として使用され、v[n]における幾つかの基準点を識別する。時点t
rbg
min[c]も、本明細書において
図6に示す処理300に関して後述されるように、v[n]における追加の基準点を識別するために初期シード点として同様に使用される。
【0044】
[0053] 処理100のステップ101においては、時点t
rbg
max[c]を中心とする時間間隔T
rbg
max[c]が、
【数2】
のように定義され、ここで、T
maxは事前に指定された持続時間であり、該持続時間は例示的な実施形態では典型的に0.8秒に設定される。したがって、T
rbg
max[c]は、s[n]におけるI[c]の最大値に関連付けられた時点t
rbg
max[c]を中心とする継続時間2T
maxの間隔である。ステップ102では、ステップ101で定義された時間間隔T
rbg
max[c]内で、最大のEMG活動v
max[c]が生じる信号v[n]における時点t
snf
max[c]が識別される。ステップ103では、v[n]におけるt
snf
max[c]の左側(すなわち直前)の時間間隔T
L
max[c]が
【数3】
と定義され、ここで、T
L
max[c]は予め指定された値であり、例示的な実施形態では、通常1.2秒に設定される。同様に、ステップ104では、v[n]におけるt
snf
max[c]の右側(すなわち直後)の時間間隔T
R
max[c]が
【数4】
と定義され、ここで、T
R
maxは事前に指定された値であり、例示的な実施形態では、通常1.6秒に設定される。
【0045】
[0054] ステップ105においては、スニフ信号v[n]における呼吸サイクルcに関して閾値スニフ値v
η[c]が
【数5】
と定義され、ここで、ηは予め指定されたスニフ係数であり、例示的な実施形態では、典型的に0.5に設定され、スニフ信号v[n]における呼吸サイクルcに対する閾スニフ値v
η[c]が当該特定の呼吸サイクルcに関するv[n]の最大値v
max[c]の0.5倍に等しくなるようにする。ステップ106では、
【数6】
及びv
L
η[c]<v
η[c]となる最後の点[t
L
n[c],v
L
η[c]]が識別される。この点[t
L
n[c],v
L
η[c]]は、t
snf
max[c]から最大でT
L
max秒離れており、v[n]の値が最大値から遡って最初に閾値v
η[c]を下回る、最大値t
snf
max[c]の左側(すなわち前)の最後の時点である。ステップ107では、左の時間間隔T
L
n[c]が、ステップ106で見付かった時点t
L
η[c]を使用して、
【数7】
と定義される。同様に、ステップ108では、
【数8】
及びv
R
η[c]<v
η[c]となる最初の点[t
R
η[c],[v
R
η[c]]が識別される。この点は、t
snf
max[c]から最大でT
R
max数秒離れており、v[n]の値が最大値から順方向に見て最初に閾値v
η[c]を下回る、最大値t
snf
max[c]の右側(すなわち後)の最初の時点である。ステップ109では、右の時間間隔T
R
n[c]が、ステップ108で見付かった時点t
R
η[c]を使用して、
【数9】
と定義される。
【0046】
[0055] ステップ110では、閾値スニフ値v
η[c]により定義され、時点t
snf
max[c]の周辺に位置する間隔が、
【数10】
と定義される。間隔T
η[c]は、閾スニフ値v
η[c]に関連して候補スニフの主要部分を定義し、該間隔T
η[c]は、以下では、前処理されたEMG信号v[n]における「バンプ(隆起)」又は「バンプ間隔」と称され得る。間隔T
η[c]の境界は、ステップ106で識別された時間間隔T
L
η[c]の左側の境界及びステップ108で識別された時間間隔T
R
η[c]の右側の境界を含むことが理解されるであろう。
【0047】
[0056]
図5は、候補スニフの主バンプの幾つかの特徴を、前処理されたEMG信号s[n]及びv[n]並びに処理100で決定されたデータ点及び時間間隔を使用して定義するための処理200のステップを詳細に示すフローチャートである。ステップ201では、処理100のステップ110で定義されたバンプ間隔Tη[c]の継続時間D[c]が、
【数11】
と定義される。この持続時間D[c]は、最小値D
minと最大値D
maxとの間に位置することを要する。本発明の例示的な実施形態において、D
minは通常0.15秒となるように選択され、D
maxは通常1.0秒となるように選択される。ステップ202においては、バンプ間隔T
η[c]の中間点t
M
η[c]が、バンプ間隔Tη[c]におけるv[n]の曲線の下の面積の半分がt
L
η[c]とt
M
η[c]との間(すなわち、t
M
η[c]の左側)に位置し、第2の半部がt
M
η[c]とt
R
η[c]との間(すなわち、t
M
η[c]の右側)に位置するように特定される。したがって、中間点t
M
η[c]はバンプ間隔T
η[c]の中央値とも称され得る。中間点t
M
η[c]は、v
max[c]がバンプ間隔T
η[c]内に存在し得る小さな局所極値に対して一層敏感であり得るので、該中間点の方がt
snf
max[c]よりも良い重心を表す故に特定される。ステップ203では、バンプ間隔T
η[c]における波形の非対称性を定量化するために、非対称比γ
1が下記のように定義される。
【数12】
直感できるように、経験的データはスニフが、典型的に、減衰するよりも速く上昇することを示している。したがって、当該非対称比は、通常、理想的には1より大きく、0.8より大幅に小さくはないであろう。本発明の例示的な実施形態において、γ
1の最小許容値として選択される典型的な閾値は、0.85である。
【0048】
[0057] ステップ204では、バンプ間隔Tη[c]内の波形の非対称性の第2の尺度を得るために、tL
η[c]とtR
η[c]との間(すなわち、バンプ間隔Tη[c]にわたる)v[n]の歪度が決定される。ここでも、スニフは、通常、減衰するよりも速く上昇するので、バンプ間隔Tη[c]の歪度は正である(すなわち、右側に歪んでいる)ことが予想される。本発明の例示的な実施形態において、バンプ間隔Tη[c]にわたる歪度に対する典型的な閾値はゼロである。
【0049】
[0058] 直観的に、適切に実行されるスニフは過度に近接して発生し得るものではない。したがって、T
η[c]の直前又は直後に発生するv[n]の大きなバンプは、アーティファクトによる可能性が非常に高く、候補スニフに影響を与え得るものである。このようなバンプを検出するために、ステップ205及び206では、t
L
η[c]の左側の間隔T
LL
η[c](すなわち、バンプ間隔T
η[c]の開始に先行する間隔)及びt
R
η[c]の右側の間隔T
RR
η[c](すなわち、バンプ間隔T
η[c]の終了に後続する間隔)が、
【数13】
と定義され、ここで、T
bumpは、事前に指定された継続時間であり、例示的な実施形態では、0.5秒の典型的な値に設定される。各間隔T
LL
η[c]及びT
RR
η[c]内の離散時間インデックスの対応する組は、各々、N
LL
η[c]及びN
RR
η[c]として示される。ステップ207及び208では、N
LL
η[c]にわたるv[n]の平均及びN
RR
η[c]にわたるv[n]の平均を各々表す値μ
LL
η(v)[c]及びμ
RR
η(v)[c]が計算され、ここで、μ
LL
η(v)[c]及びμ
RR
η(v)[c]は、
【数14】
と定義される。
【0050】
[0059] 両平均値μ
LL
η(v)[c]及びμ
RR
η(v)[c]は処理100のステップ105で計算された閾値v
η[c]未満であることが必要とされ、μ
LL
η(v)[c]<v
η[c]及びμ
RR
η(v)[c]<v
η[c]となるようにする。可能性のあるスニフの近くで発生する望ましくないバンプがない場合(バンプは、スニフの分離及び識別を複雑にするため「望ましくない」)、値μ
LL
η(v)[c]及びμ
RR
η(v)[c]を、候補スニフの非対称性を定量化するための追加の数値として使用できる。ここでも、スニフは減衰するよりも速く上昇すると予想されるので、下記の基準が課される。
【数15】
【0051】
[0060]
図4及び
図5に示される処理100及び200は、EMG信号の最大値から導出されるs[n]及びv[n]の基準点に関連する値及びタイムスタンプを使用する。しかしながら、EMG信号の最小値もRMEの定量化に非常に関連する。したがって、
図6は、処理100及び200で決定されたデータ点及び時間間隔を使用して、前処理されたEMG信号s[n]及びv[n]の最小値に基づいて候補スニフの追加の特徴を定義するための処理300のステップを詳細に示すフローチャートである。具体的に言うと、処理300は、スニフ活動と非スニフ活動(例えばアーティファクト)とを区別するために使用できるEMG由来の特徴及び属性を決定するために使用される。前述したように、O[c]の間におけるs[n]の最小値に関連する時点はt
rbg
min[c]であり、処理300において、時点t
rbg
min[c]はv[n]における幾つかの基準点 を識別するために各呼吸サイクルcにおける初期シード点として使用され。
【0052】
[0061] 処理300のステップ301では、所与の呼吸サイクルcに関するs[n]における時間間隔T
rbg
min[c]が、
【数16】
と定義され、ここで、T
minは事前に指定された継続時間であり、例示的な実施形態では、典型的に0.8秒に設定される。したがって、T
rbg
min[c]は、O[c]の最小値に関連付けられた時点t
rbg
min[c]を中心とする継続時間2T
minのs[n]における間隔である。ステップ302では、ステップ301で定義された時間間隔T
rbg
min[c]内で、最小値v
min[c]が発生する信号v[n]における時点t
snf
min[c]が識別される。ステップ303においては、c番目の呼吸サイクルのオフセット値v
M
offs[c]が、先ずc番目の呼吸サイクルの最小値(t
snf
min[c],v
min[c])と(c+1)番目の呼吸サイクルの最小値(t
snf
min[c+1],v
min[c+1])との間でv(n)を線形に補間し、次いで中間点t
M
η[c]の位置における補間された関数の値を見つけることにより、見付けられる。次いで、ステップ304では、c番目の呼吸サイクルの振幅が、v
max[c]とv
M
offs[c]との間の差:
【数17】
として定義され、ここでは、A
low≦A[c]≦A
uppなる基準が振幅に対して課される。例示的な実施形態において、下側閾値A
low及び上側閾値A
uppの典型的な値は、各々、3μV及び40μVである。
【0053】
[0062] ステップ305では、最大値(t
max[c],v
max[c])に先行及び後続する最小値の平均が、対応する呼吸サイクルの振幅A[c]に対して値が低いことが好ましいという事実を定量化するために、第1の非対称特徴γ
rel
minが定義される。かくして、γ
rel
minは、
【数18】
と定義され、ここで、γ
rel
minは事前に指定された閾値未満であることが必要であり、例示的な実施形態において、該閾値は約0.3となるように選択される。ステップ306では、一方における連続する谷の最小値v
min[c]とv
min[c+1]との間の差、及び他方における谷の最小値の間のピークの最大値v
max[c]と谷の最小値(v
min[c]及びv
min[c+1])の各々との間の差の小さい方の相対的な大きさを定量化するために、第2の非対称特徴γ
2[c]が定義される。したがって、γ
2[c]は、
【数19】
と定義され、ここで、γ
rel
minは事前に指定された上側閾値未満であることが必要であり、該上側閾値は、例示的な実施形態では、約0.2となるように選択される。最後に、ステップ307では、スニフピークの左側非対称性を定量化するために、第3の非対称特徴γ
3[c]が、
【数20】
と定義され、ここで、γ
3[c]は事前に指定された上側閾値未満となることが必要であり、該上側閾値は、例示的な実施形態では、約0.25となるように選択される。開示された概念の例示的な実施形態において、候補スニフがステップ304~307に関して上述した振幅及び非対称性条件の全てを満たさない場合、該候補スニフはスニフではなくアーティファクトとして分類される。
【0054】
[0063]
図7は、開示された概念の例示的な実施形態による、種々のレベルの前処理を受けた加速度計信号の複数の波形73、74、75及び76と位置合わせされた、種々のレベルの前処理を受けたEMG信号の複数の波形71、72及び77の集まりを示すもので、これらEMG信号及び加速度計信号は
図1A及び
図1BのEMG電極2及び加速度計4により示されるように同時に測定されている。
図7に示された波形は、例示のみを目的として使用されており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。波形71~77は、同一の時間間隔からの生の又は処理されたEMG信号又は加速度計信号を示しているが、各波形は呼吸筋活動又は身体表面の向きの変化の異なる側面を強調している。
【0055】
[0064] 続けて
図7を参照すると、波形71は生のEMG信号を示し、波形72は前処理のハイパスフィルタ処理を受けた後の波形71を示す。波形72を波形71と比較すると、生のEMG信号の前処理が信号アーティファクトを減少させながら呼吸筋活動を強調することが理解できる。本明細書において
図8に示す処理400に関して説明されるように、角度の変化が呼吸活動によるものか又は非呼吸活動によるものかに拘わらず、経時的な加速度計4の角度の変化を大まかに表す生の加速度計信号から構築された前処理された加速度計信号を示す。波形74は加速度計4のx軸の下側周波数帯域信号及び上側周波数帯域信号の両方(
図7における波形74A及び74Bの各々)を示す前処理された加速度計信号(生の加速度計信号から構築された)であり、波形75は加速度計4のz軸の下側及び上側周波数帯域信号の両方(
図7における75A及び75Bの各々)を表す前処理された加速度計信号(これも、生の加速度計信号から構築される)である。波形74、75の構築は、本明細書において
図10に示される処理600を参照して説明する。
【0056】
[0065] 続けて
図7を参照すると、波形76は加速度計4のxチャネル及びzチャネルの両方についての上側周波数帯域信号と下側周波数帯域信号との比を表す。具体的には、本明細書において
図9に示される処理500に関して説明されるように、整流され平滑化された下側周波数帯域信号acc_lpf_smが処理500のステップ504で見付けられ(acc_lpf_sm_xがxチャネルについて見付けられ、acc_lpf_sm_zがzチャネルについて見付けられる)、整流及び平滑化された上側周波数帯域信号acc_hpf_smが処理500のステップ505で見付けられる(acc_hpf_sm_xがxチャネルについて見付けられ、acc_hpf_sm_zがzチャネルについて見付けられる)。
図7において、波形76Aはデシベルで表された比(acc_hpf_sm_x)/(acc_lpf_sm_x+acc_hpf_sm_x)であり、波形76Bはデシベルで表された比(acc_hpf_sm_z)/(acc_lpf_sm_z+acc_hpf_sm_z)である。最後に、波形77はスニフ処理されたEMG信号v[n]を表しており、該信号において、前処理されたEMGにおいて識別された呼吸サイクルの各々に対して方法50及び処理100~600のステップが実行された後に、複数のスニフ80が正しく識別されている。
【0057】
[0066]
図1A及び
図1Bにちょっと戻ると、前述したように、加速度計4はz軸が患者Pの身体の外部を指すと共に身体表面に直交する一方、x軸及びy軸が、x軸が患者Pの頭を指すようにして身体表面に接する面内に位置するようにして、患者Pの胸骨に取り付けられる。このようにして、x-z平面が地表面に対して略垂直となり、重力ベクトルが略x-z平面内に位置するようにする。ここで
図8を参照すると、処理400は時間の経過に伴う加速度計4の角度の変化を大まかに表す加速度計信号を構築するために使用され、このような角度の変化は呼吸活動と非呼吸活動との何らかの組み合わせによるものである。最初のステップ401においては、四次バターワースアンチエイリアシングローパスフィルタが生の加速度計信号に適用され、例示的な実施形態では20Hzのカットオフ周波数が使用される。ステップ402では、結果として得られる信号がデシメーション(間引き)される。本発明の例示的な実施形態において、当該信号は16の係数でデシメーションされる。ステップ403では、加速度計信号の高周波ノイズ及びアーティファクトを更に低減するために二次バターワースローパスフィルタが適用され、その結果得られる信号は以下ではacc_lpf_403と称される。例示的な実施形態においては、10Hzのカットオフ周波数が適用される。
【0058】
[0067] ステップ404では、線形位相有限インパルス応答移動平均フィルタが適用される。本発明の例示的な実施形態では、前記線形位相有限インパルス応答移動平均フィルタは2秒のサポートで適用される。ステップ404は、ベクトルの第1要素及び第2要素として各々x成分及びz成分を含むベクトルμ[n]を生成する。ステップ405では、ステップ403で生成された信号acc_lpf_403が、ベクトルμ[n]と位置合わせするためにフィルタの群遅延で遅延され、ベクトルa[n]を生成する。ステップ406では、加速度計4が取り付けられた身体表面(すなわち、
図1Aに示されるx-y面)の向きの変化から生じる角度を大まかに表す傾斜角θ[n]が、下記の式を用いて、μ[n]とa[n]とのベクトル積のy成分(すなわち、μ[n]とa[n]との間の角度の正弦)を重力ベクトルが略x-z面内に位置するという先に確立された仮定に基づいて見付けると共に、該ベクトル積をベクトルa[n]及びa
-[n]の大きさの積により正規化することにより、推定される。
【数21】
傾斜角θ[n]は、y軸が
図1Aに示されるように、y軸の周りの回転を示すことに留意されたい。更に、バンプ間隔T
η[c]の間において傾斜角θ[n]にはθ
L< max(|θ[n]|)<θ
Uなる条件が課せられる。例示的な実施形態において、θ
Lには0.5°の値が割り当てられ、θ
Uには4.0°の値が割り当てられる。これらの特定の値は、本発明のシステム及び方法を使用して観察されている患者に推奨される例示的な姿勢に対応するからである。分析されている時間間隔内の各時点について角度θ[n]が決定された後、
図7における波形73により表されるもののような信号が生成される。
【0059】
[0068] ここで
図9を参照すると、処理500は、加速度計信号の上側及び下側周波数帯域を構築して生の加速度計信号における測定された呼吸活動及び運動アーティファクトの過渡特徴を識別するために使用される。生の加速度計信号の前処理のために使用される処理400及び処理500は並行して実行されることに留意されたい。処理500のステップ501では、三次バターワースハイパスフィルタを適用することにより加速度計信号からベースラインが除去される。この場合、開示された概念の例示的な実施形態では、0.5Hzのカットオフ周波数が使用される。ステップ502では、三次バターワースローパスフィルタが適用されて、下側周波数帯域信号acc_lpf_502を抽出する。この場合、例示的な実施形態では、50Hzのカットオフ周波数が使用される。同様に、ステップ503では、三次バターワースハイパスフィルタが適用されて、上側周波帯域信号acc_hpf_503を抽出する。この場合、例示的な実施形態では、150Hzのカットオフ周波数が使用される。ステップ504及び505では、下側周波数帯域及び上側周波数帯域から電源ライン信号を各々抽出するために、ステップ502で見付かった下側周波数帯域信号acc_lpf_502及びステップ503で見付かった上側周波数帯域信号acc_hpf_503が既知の信号処理技術を使用して整流され平滑化される。ステップ504で生成される整流され平滑化された下側周波数帯域信号はacc_lpf_sm(acc_lpf_502から生成される)として示され、ステップ505で生成される整流され平滑化された上側周波数帯域信号はacc_hpf_sm(acc_hpf_503から生成される)として示される。
図9に示されるように、ステップ502及び504は、ステップ503及び505と並行して実行され得る。
【0060】
[0069] 処理500のステップは加速度計4のxチャネル及びzチャネルの両方に対して実行され、処理500を使用した加速度計4のxチャネル信号の前処理が、整流され平滑化された下側及び上側周波数帯域信号acc_lpf_sm_x及びacc_hpf_sm_xを生成するようにする一方、処理500を使用した加速度計4のzチャネル信号の前処理が、整流され平滑化された信号acc_lpf_sm_z及びacc_hpf_sm_zを生成するようにすることが理解されるであろう。
図9と併せて
図7を再び参照すると、信号74Aはステップ504で見付かったxチャネルの下側周波数帯域信号の波形であり、信号74Bはステップ505で見付かったxチャネルの上側周波数帯域信号の波形である。同様に、信号75Aはステップ504で見付かったzチャネルの下側周波数帯域信号の波形であり、信号75Bはステップ505で見付かったzチャネルの上側周波数帯域信号の波形である。
【0061】
[0070] ここで
図10を参照すると、処理100~500の間において見付かった種々の前処理された信号に関して加速度計信号の呼吸特徴を定義するための処理600を表したフローチャートが示されている。以下に詳述するように、処理600では処理500の結果が使用され、従って、処理600はxチャネル及びzチャネルの両方に関して処理500の結果に対し実行されることが理解されるであろう。処理600の間に見付かる全ての特徴が、バンプ間隔T
η[c]にわたって定義される。ステップ601では、テップ504で生成された平滑化された下側周波数帯域信号acc_lpf_sm及びステップ505で生成された平滑化された上側周波数帯域信号acc_hpf_smが合計される。ステップ602では、ステップ601で生成された合計信号に対するステップ505で生成された平滑化された上側周波数帯域信号の比が見付けられる。
【0062】
[0071]
図10と併せて
図7を再び参照すると、波形74A(加速度計4のxチャネルの下側周波数帯域信号)及び波形74B(加速度計4のxチャネルの上側周波数帯域信号)がxチャネルに関しステップ601において合計される。同様に、波形75A(加速度計4のzチャネルの下側周波数帯域信号)及び波形75B(加速度計4のzチャネルの上側周波数帯域信号)が、zチャネルに関しステップ601において合計される。波形76Aは、xチャネルについてステップ602を実行することにより得られる。波形76Aは、xチャネルについてステップ601で見付かった波形74A及び74Bの合計に対する波形74Bの比を求めることにより得られるからである。同様に、波形76Bはzチャネルについてステップ602を実行することにより生じる。波形76Bは、zチャネルについてステップ601で見付かった波形75A及び75Bの合計に対する波形75Bの比を求めることにより得られるからである。
【0063】
[0072] 本発明の例示的な実施形態によれば、スニフ候補がアーティファクトではなくスニフとして適格であるためには、スニフ候補の時間間隔に関連してステップ602で算出された比が、所定の値未満でなければならない。この要件は、加速度計データのスペクトグラムが、通常、スニフの主なパワーは低周波数領域で発生するが、アーティファクト活動の間では周波数帯域全体が典型的に強い成分を含むことを示すという観察に基づくものである。このように、ステップ603において、ステップ602で算出された比が確かに所定の値よりも小さい場合、当該候補スニフは候補スニフに留まる。
【0064】
[0073] 実験による観察は、更に、ステップ505で生成された上側周波数帯域信号acc_hpf_smが所定の閾値と候補スニフの時間間隔の間において所定回数より多く交差した場合、EMG信号における対応するバンプ間隔Tη[c]は、通常、アーティファクトによるものであることを示している。上記閾値は、重力加速度(9.8m/s2)の分数で表される。例示的な実施形態において、該閾値は0.1g(すなわち、0.98m/s2)となるように選択され、上記所定の交差回数は7となるように選択される。したがって、ステップ604において、高周波数帯域信号acc_hpf_smが閾値(例えば0.1g)と所定の交差回数(例えば、7)を超えて交差した場合、当該候補スニフはアーティファクトとして認定され、そうでない場合、該候補スニフは候補スニフとしてのステータスを維持する。
【0065】
[0074] 最後に、ステップ605では、処理500の間においてステップ502及び503で各々見付けられたローパスフィルタ処理及びハイパスフィルタ処理された信号acc_lpf_502及びacc_hpf_503の両方の分散又は標準偏差が決定される。ステップ605で見付けられた分散又は標準偏差のいずれかが、所定の値を超える場合、当該候補スニフ活動はスニフではなくアーティファクトに対応すると見なされる。逆に、ステップ605で見付かった分散又は標準偏差が所定の値を下回る場合、該候補スニフは信号アーティファクトではなくスニフであると見なされる。
図7における波形77は、
図7は、処理100~600が実行された後に複数のスニフ80が正しく識別された、スニフ処理されたEMG信号v[n]の一例である。
図3に示された方法50を再び参照すると、E
relを見付けることによりRMEを定量化するための最終ステップ56は、処理100~600がEMG電極2及び加速度計4により記録された所望の数の呼吸サイクルに対して実行され、該呼吸サイクルにおける全てのスニフが識別された後に実行される。
【0066】
[0075] 本発明の例示的な実施形態において、真のスニフは、処理100~300に関して記載されたEMG由来の特徴について前述した基準に加えて、ステップ603、604及び605の3つの全ての基準も満たされるという保証の下でスニフとして適格になることが期待される。しかしながら、候補スニフがステップ603、604及び605の3つ全てではなく、1つ又は2つの基準の下でアーティファクトの傾向を示した場合、処理100~600全体を通して使用される前記所定の値及び閾値を、開示される概念の範囲から逸脱することなく調整することができる。本明細書で言及される全てのいわゆる「閾値」及び「所定の値」は、提案された値であり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。特に、本明細書で前述された方法以外のEMG信号の前処理のための方法が使用される場合、本明細書で提案される閾値及び所定の値の少なくとも幾つかは、本明細書に記載のものと比較した場合の前処理された信号成分の大きさ及び/又は周波数の差を考慮して調整されることが必要となりそうであるが、本明細書に記載の方法及びシステムは閾値及び所定の値に対するそのような調整を行ってもなお適用可能であることが理解されよう。
【0067】
[0076] 前述したように、本明細書に記載の方法及び処理50及び100~600は、古典的な工学及び特徴抽出アプローチを使用して開発された。以前は、非侵襲的スニフ検出の自動化は困難であり、EMG信号内のスニフ及び信号アーティファクトにより示される類似性により、EMG信号内のスニフと信号アーティファクトとの間の不正確な区別が生じる結果となっていた。しかしながら、本発明、特に処理400~600によるEMG信号データ及び特徴に加えての加速度計信号データの使用は、スニフと信号アーティファクトとの間の正確で非侵襲的な区別の自動化を可能にしている。
【0068】
[0077] 請求項において、括弧内の参照符号は当該請求項を限定するものとして解釈してはならない。「有する」又は「含む」という文言は、請求項に記載されているもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙した装置の請求項において、これらの手段の幾つかは、1つの同一のハードウェア品目により具現化することができる。単数形の要素は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。幾つかの手段を列挙した如何なる装置の請求項においても、これらの手段の幾つかは、1つの同一のハードウェア品目により具現化することができる。特定の要素が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの要素を組み合わせて使用できないことを示すものではない。
【0069】
[0078] 本発明を、解説目的で、現在最も実際的で好ましい実施形態であると考えられるものに基づいて詳細に説明したが、そのような詳細は単に解説目的のためのものであって、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付請求項の趣旨及び範囲内にある修正及び等価な構成をカバーすることを意図していると理解されたい。例えば、本発明は、可能な限りにおいて、何れかの実施形態の1以上のフィーチャが、何れかの他の実施形態の1以上のフィーチャと組み合わされ得ることを想定していると理解されたい。
【国際調査報告】