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特表2024-525039MRIにおけるカメラベースの患者モニタリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】MRIにおけるカメラベースの患者モニタリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580772
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022067032
(87)【国際公開番号】W WO2023274812
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21183383.5
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウエルベルン ジャン ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】リュースラ クリストフ ギュンター
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AD19
4C096DA17
4C096FC09
(57)【要約】
本発明は、磁気共鳴イメージングシステムの検査ゾーン11に位置決めされている状態で検査を受けている際に被検者をモニタリングするための赤外線カメラシステムを含む磁気共鳴イメージングシステム1に関する。赤外線カメラシステムは赤外線カメラ21を含む。磁気共鳴イメージングシステムは更に、磁気共鳴イメージングシステムを収容する部屋の少なくとも1つの壁上、検査ゾーン周辺の磁石アセンブリ10の内壁上、及び/又は検査ゾーン内での使用のための磁気共鳴システムの補助機器上のコーティング2を含み、コーティングは、スプリアス反射を回避するか、及び/若しくは拡散補助照明を提供するように、赤外光を吸収及び/又は拡散反射する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングシステムの検査ゾーンに位置決めされている状態で検査を受けている際に被検者をモニタリングするための、赤外線カメラを含む赤外線カメラシステムと、
前記磁気共鳴イメージングシステムを収容する部屋の少なくとも1つの壁上、前記検査ゾーン周辺の磁石アセンブリの内壁上、及び/又は前記検査ゾーン内での使用のための前記磁気共鳴イメージングシステムの補助機器上のコーティングと、
を含む、当該磁気共鳴イメージングシステムであって、
前記コーティングは、前記赤外線カメラの視野内への赤外光のスプリアス反射を回避するか、及び/又は拡散補助照明を提供するように、赤外光を吸収及び/又は拡散反射し、
前記赤外線カメラは、前記コーティングが赤外光を吸収及び/又は拡散反射する範囲に相当する、又は実質的に前記範囲に重複する赤外線波長範囲で動作する、磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項2】
前記補助機器は、高周波トランスミッタ/レシーバコイル及び/又は患者台を含む、請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項3】
前記コーティングは、800nmを上回るスペクトル範囲の赤外光を少なくとも30%吸収する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項4】
前記コーティングは、800nmを上回るスペクトル範囲の入射赤外光の少なくとも30%を拡散反射する、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項5】
前記コーティングは、可視スペクトルの入射光の少なくとも50%を反射及び/又は透過する、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項6】
前記コーティングは、前記部屋の前記少なくとも1つの壁、前記内壁、及び/又は前記補助機器の表面の少なくとも10cmの領域を覆う、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項7】
前記赤外線カメラシステムは、赤外光を前記検査ゾーンの中に向ける赤外光源を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項8】
前記赤外線カメラシステムは、前記検査ゾーンの外側に設置され、前記磁石アセンブリの前記内壁のフランジ上に位置決めされているか又はその中に組み込まれている、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項9】
収集した1つ以上のカメラ画像から前記被検者に関する情報を得る画像プロセッサを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項10】
前記情報は、前記被検者のバイタルサイン、動き、及び/又は気分を示す値を含む、請求項9に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項11】
前記磁気共鳴イメージングシステムにより収集された磁気共鳴信号から磁気共鳴画像を再構成する再構成器を含み、前記画像プロセッサによって特定された前記情報は、呼吸位相及び/又は心位相情報を含み、前記再構成器は、動きについて、収集した前記信号及び/又は再構成された前記磁気共鳴画像を補正するために、前記呼吸位相及び/又は心位相情報を考慮に入れる、請求項9又は10に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項12】
前記磁気共鳴イメージングシステムは、前記赤外線カメラシステムで観察する必要のない前記検査ゾーンにおける前記被検者の身体及び/又は別の物体の一部を覆うための布シート又はブランケットを含み、前記布シート又はブランケットは、赤外光を吸収、減衰、及び/又は拡散反射する、請求項1から11のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項13】
前記被検者の身体部位からの赤外光を前記赤外線カメラに反射する、及び/又は前記赤外光源からの光を前記身体部位に反射するために、前記検査ゾーンに配置された少なくとも1つのミラー又は反射面を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項14】
磁気共鳴イメージングシステムを適応させる方法であって、前記方法は、
磁気共鳴イメージングシステムを取得するステップであって、前記磁気共鳴イメージングシステムは、前記磁気共鳴イメージングシステムによってイメージングされる被検者を検査ゾーン内部に位置決めするための当該検査ゾーンを有し、前記磁気共鳴イメージングシステムは、検査を受けている状態の前記被検者をモニタリングするための赤外線カメラシステムを含み、前記赤外線カメラシステムは、赤外線カメラを含む、前記取得するステップと、
前記磁気共鳴イメージングシステムを収容する部屋の少なくとも1つの壁上、前記磁気共鳴イメージングシステムの磁石アセンブリの内壁上、及び/又び前記検査ゾーン内での使用のための前記磁気共鳴イメージングシステムの補助機器上にコーティングを塗布するステップであって、前記コーティングは、前記赤外線カメラの視野内への赤外光のスプリアス反射を回避するか、及び/又は拡散補助照明を提供するように、赤外光を吸収及び/又は拡散反射する、前記塗布するステップと、
を含み、
前記赤外線カメラが、前記コーティングが赤外光を吸収及び/又は拡散反射する範囲に相当する又は前記範囲に実質的に重複する赤外線波長範囲で動作する、方法。
【請求項15】
前記磁気共鳴イメージングシステムを取得するステップは、前記赤外線カメラシステムを設置することにより、設置済みの磁気共鳴イメージングシステムを変更するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージングの分野に関し、より具体的には、本発明は、カメラ観察に基づく、患者のバイタルサイン及び/又は動きなどのパラメータのカメラベースの患者観察及び/又はモニタリングのための磁気共鳴イメージング(MRI)システム、並びにそのような磁気共鳴イメージングシステムを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴検査システムの検査領域をカメラを用いてモニタリングするモニタリングシステムは当技術分野で一般的に知られている。例えば、磁気共鳴イメージング検査中に患者をイメージングするカメラが、MRIシステムのボアの外側に、例えば、システムの保護カバー上又はそれに隣接して取り付けられる。この概念の多くのバリエーション及び拡張も同様に知られている。例えば、ミラーがMRIシステムのボア内に設置される。これにより、直接の見通し線が利用可能ではない又は実現することが難しい場合でも、カメラが、患者(患者の顔など)を観察できる。多くの構成では、カメラシステムは、観測される領域から比較的離れた位置に取り付けられ、カメラの光軸は、概して、磁石ボアの長手方向軸の方向に沿って向けられるか、その方向に主要な成分を有する。患者は通常、又は少なくとも非常に頻繁に、身体の長手方向軸がボアの長手方向軸に実質的に整列した状態で検査されるので、このようなミラーを使用することは、カメラシステムにより良い視界を提供する上で特に有利である。
【0003】
例えば、不安の兆候を検出するために、患者が起きていることを確実にするために、又は(例えば、脳の機能的イメージングにおいて)イメージングプロトコルの順守を評価するために、オペレータが患者を観察できるようにすることに加えて、カメラシステムはまた、例えば、動き、呼吸、心拍数、若しくは他の心臓パラメータ、及び/又は一般的に患者の状態を示す他のバイタルサイン及び/若しくはパラメータを検出並びに/又は定量化するために、画像解析システムを併用して、有用なパラメータを決定することもできる。例えば、動きが検出されると、MRIシステムによって同時に収集されたデータには、廃棄するものか、又は検出された動きを補償するなどの補正を行うものとしてラベルが付けられる。
【0004】
カメラシステムは、(人間の)視覚範囲で反応するカメラを含み得るが、赤外線カメラを使用することも当技術分野で知られている。赤外線範囲の使用にはいくつかの利点がある。例えば、特開2004-041411号には、MRIシステムにおいて視覚刺激を提示する方法が開示されている。ダイクロイックミラーを使用して、プロジェクタ及びスクリーンから視覚刺激を提示するように、光路が実質的に正面方向から患者の目に向けられる。更に、赤外線ランプで照らされた眼球が、ダイクロイックミラーを介して赤外線カメラによってモニタリングされる。したがって、光学(即ち、視覚的)波長スペクトルの視覚刺激は、ダイクロイックミラーによって反射される一方で、目を照らしてモニタリングするための赤外光は通過する。
【0005】
SONGXIANG他の「Pattern independent deformation estimation illustrated by MRI」(Nuclear Science Symposium Conference Record、NSS ’08、5285~5291頁)、TREMBLAY他の「Retrospective coregistration of functional magnetic resonance imaging data using external monitoring」(MR in Medicine 53(1)、141~149頁)、及び特開2004-201977号には、様々なMRIシステム及び赤外線カメラシステムが開示されている。これらのシステムでは、赤外線マーカを使用して、カメラシステムを使用してマーカの位置を検出して、例えば、患者の動きや変形を推定したり、スキャナシステムに対して患者を整列させることを支援したりできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、赤外線カメラシステムを使用して磁気共鳴イメージングシステムにおける被検者をモニタリングし、及び/又は赤外線カメラシステムの出力に基づいて、バイタルサイン、動き、及び/又は被検者を示す他の関心パラメータを定量化するための優れた且つ効率的な手段及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態には、例えば、カメラによって提供される画像内の領域の露出不足及び/又は露出過多を回避して、例えば、カメラの視野(又は、視野内の少なくとも主要な関心領域)のより均一な照明を提供するように、照明条件を改善できるという利点がある。
【0008】
本発明の実施形態には、例えば、カメラシステムによって観察されるシーンを照らすために1つ以上の赤外光源によって放出される赤外光のスプリアス反射を回避又は低減でき、例えば、それにより、カメラ画像の一部の露出過多を回避できるという利点がある。例えば、磁石ボアの保護カバー、検査室の壁、及び/又は補助機器からのカメラの視野内の反射(又は更なる反射がある場合は、視野の外側の反射)を低減及び/又は回避できる。
【0009】
本発明の実施形態には、例えば、カメラのダイナミックレンジのより良い利用及び/又は適用されたアルゴリズムを混乱させる可能性のあるスプリアス反射の回避(又は低減)により、カメラシステムの出力に適用される画像処理の品質及び/又は堅牢性を改善できるという利点がある。したがって、例えば、MRI検査を受けている被検者の状態に関連するバイタルサイン、動き、及び/又は他の関心パラメータを確実且つ正確に検出及び/又は定量化できる。
【0010】
また、このような反射や迷光の悪影響は必ずしも容易に予測できるものではないことに留意されたい。例えば、アルゴリズムは原則として、位置及び影響が静的で予測可能な場合に、そのような妨害要因を補償するように調整できる。しかし、補助コイル、追加の患者固定具、支持枕などの補助機器を使用する場合、これらは通常、正確で、確定的で、再現可能には位置決めされない及び/又は方向付けされない。当然ながら、検査ごとの被検者やその位置及び向きの変動が、照明条件に影響を与える可能性がある。また、光源からの光がカメラに衝突する前に複数回反射すると、様々な照明条件によるこのような問題が更に予測不可能になる可能性があると考える必要がある。
【0011】
本発明の実施形態によるシステム及び方法は、上記の目的を達成する。
【0012】
第1の態様では、本発明は、検査ゾーンを有し、且つ磁気共鳴イメージングシステムの検査ゾーンに位置決めされている状態で検査を受けている際に被検者をモニタリングするための赤外線カメラシステムを含む、磁気共鳴イメージングシステムに関する。赤外線カメラシステムは、赤外線カメラ、即ち、赤外放射線(ただし、スペクトル範囲は、いくつかの実施形態では、可視範囲まで拡張してもよい。スペクトル範囲が実質的に赤外線範囲又はその一部に限定される実施形態は必ずしも実施形態において除外されない)に反応する赤外線カメラを含む。磁気共鳴イメージングシステムは更に、磁気共鳴イメージングシステムを収容する部屋の少なくとも1つの壁上、検査ゾーン周辺の磁石アセンブリの内壁上、及び/又は検査ゾーン内での使用のための磁気共鳴システムの補助機器上のコーティングを含み、例えば、磁石ボア、検査室の壁、及び/又は磁気共鳴イメージングシステムの補助機器(補助コイルアセンブリ(ヘッドコイルなど)、患者台若しくはマットレス、及び/又は検査ゾーン内で使用するための他の補助アイテム)の少なくとも1つの表面に塗布される。このコーティングは更に、赤外光を吸収及び/又は拡散する。
【0013】
したがって、赤外線カメラシステムは、カメラによって収集された画像(一枚の画像フレームによってであろうと、ダイナミック画像によってであろうと)に基づいて、検査ゾーンを監視するように機能する。カメラは、そこからカメラが画像情報を取得する、カメラが反応する(ボリュメトリック)範囲又は視野を有する。コーティングは、例えば、カメラで観測されることを意図していない表面で赤外光を吸収することによって、カメラの視野内への赤外光のスプリアス反射を回避するか、及び/又は拡散補助照明、即ち、周囲(赤外)照明を提供するように機能する。反射光を拡散するコーティングは、影やハイライトなどのシャープな(意図しない)コントラストのない検査ゾーンの均一な照明を提供するために特に有利である。特に、このような赤外光拡散コーティングを使用することで、たとえ1つの光源が点状であっても(又は比較的小さくても)、1つの光源でも、わずかな赤外光源でもイメージングされたシーンの優れた照明を実現できる。ただし、複数の光源を使用することも、必ずしも除外されない。
【0014】
したがって、カメラの視野内にある患者以外の要素(壁、機器、…)が、過度の迷光(IR)(又はより均一に拡散した光)を回避し、カメラで観察される患者の関心領域を十分に露出できるようにすることが利点である。壁及び/又は補助機器は、例えば、適切なコーティングによって処理される。追加的に、患者の身体の一部を覆うために、観察される対象物の近くの無関係な表面を覆うために、適切なスペクトル特性(前述のコーティングを参照)を有する布シート又はブランケットを使用できる。
【0015】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、補助機器は、高周波トランスミッタ/レシーバコイル、患者台、及び/又は被検者をイメージングする間に検査ゾーン内で使用する他の機器を含み得る。
【0016】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムは、検査ゾーンの壁(例えば、システムの磁石ボアのハウジングの内壁)、検査室(例えば、MRIシステム、特にその磁石ボアが設置されている場所)の壁、及び/又は補助機器を含む。上記の壁及び/又は補助機器の少なくとも一部(特にカメラの視野内にある一部)は、赤外線スペクトルの入射光を吸収(又は減衰)及び/又は拡散反射する。
【0017】
赤外線イメージングを使用することにより、被検者を(可視スペクトル内の)低い周囲照明条件下でモニタリングすることが可能になる。例えば、少なくとも一部の患者が低い照明や完全な暗闇をより快適であると知覚することが観察されている。しかし、このような条件は、実施形態によるシステムを使用したカメラ観察のための赤外線範囲での十分な照明を妨げない。
【0018】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、コーティングは、例えば、以下で詳述する赤外線カメラシステムの動作範囲にわたる、例えば800nmを上回るスペクトル範囲、例えば800nm~900nmの範囲、例えば830nm~870nmの範囲、例えば840nm~860nmの範囲の赤外光を吸収できる。例えば、コーティングは、上記の赤外線範囲における、その上に入射する光の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%を吸収する。
【0019】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、コーティングは、例えば、以下で詳述する赤外線カメラシステムの動作範囲にわたる赤外光を拡散反射できる。例えば、コーティングは、上記の赤外線範囲における、その上に入射する光の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%を反射する。更に、光は比較的広い角度にわたって拡散される。例えば少なくとも10°、例えば少なくとも20°、例えば少なくとも30°、又はそれ以上、例えば少なくとも45°、例えば少なくとも60°の角度にわたって単向性のビームを拡散させる(当然ながら、コーティングは必ずしも単向性ビームのみを拡散反射するわけではない)。
【0020】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、コーティングは、可視スペクトルの入射光の少なくとも50%を反射及び/又は透過できる。例えば、コーティングは、赤外線スペクトル範囲におけるその特性に加えて、視覚スペクトルの光を反射する、好ましくは、拡散反射して、鏡のような表面からの反射による注意散漫及び/又は不快感を回避できる。コーティングはまた、下にある材料の色効果(及び/又は他の光学特性)がコーティングによって(ほぼ)影響を受けないように、可視スペクトルにおいて実質的に透過的であってもよい。例えば、コーティングは、可視スペクトル(例えば350nm~800nmの範囲)の光の少なくとも50%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%を反射又は透過する。
【0021】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、コーティングは、部屋の少なくとも1つの壁(の表面)、磁石の内壁、及び/又は補助機器の、少なくとも10cm、例えば少なくとも20cm、例えば少なくとも50cmの、例えば少なくとも1つの連続的な領域である、ある領域を覆うことができる。例えば、コーティングは、部屋の少なくとも1つの壁、磁石の内壁、及び/又は補助機器(の1つのアイテム、複数のアイテム、及び/又は全てのアイテム)のある領域(例えば、カメラの視野内の少なくともその一部)の実質的に全体の領域、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%を覆うことができる。
【0022】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、赤外線カメラは、上記のコーティングが赤外光を吸収及び/又は拡散反射する範囲に相当する、又は実質的に重複する赤外線波長範囲で動作できる。
【0023】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、赤外線カメラシステムは、赤外光を検査ゾーンの中に向ける赤外光源を含み得る。
【0024】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、1つの赤外線カメラ(又は複数のカメラ)は、(例えば狭い)赤外線波長範囲及び可視波長範囲外で動作できる(例えば、実質的に排他的に反応する)。これは、赤外光源にも同様に当てはまる。つまり、赤外光源は、上記の赤外線波長範囲、又はカメラの上記の波長範囲と実質的に重複する別の範囲でのみ光を放出する(ただし、これに限定されない)。例えば、赤外線カメラシステムは、例えば、800nmよりも大きい赤外線波長、例えば約850nm±-20nmの波長で動作する。
【0025】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、赤外線カメラシステムは、検査ゾーンの外側に設置され、磁石アセンブリの内壁のフランジ上に位置決めされているか又はその中に組み込まれている。例えば、光源及びカメラは検査ゾーンの外側に設置される。円筒ボアシステムでは、カメラと光源の両方は、ボアの一端でボアエンクロージャのフランジに設置され、これにより、他端が実質的にフリーになり、システムによってイメージングされている間の被検者の潜在的な閉所恐怖症の影響を軽減できる。
【0026】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムは、収集した1つ以上のカメラ画像から被検者に関する情報を得る画像プロセッサを含む。赤外線イメージングを使用することにより、特定の用途に特に利点がある場合がある、及び/又は代替手段の欠点を克服する場合がある。例えば、比較的明るい照明を患者やスタッフに不快感を与えることなく使用できる。画像プロセッサは、カメラシステムによって収集された画像情報を処理して、例えば、静的又は動的画像解析を実行して、患者のバイタルサイン、患者の動き、患者の不安の徴候(又はより一般的には患者の気分検出)などの情報を患者から取得できる。この画像プロセッサは、フォトプレチスモグラフィ(PPG)測定及び/又はビデオベースの会話の検出(又は発話、例えば、単純な言葉や顔の特徴に基づく指示の認識)を実行できる。患者の動きに関する情報には、例えば、呼吸周期及び/又は心周期の位相を示す呼吸の動き及び/又は心臓の動きなどが含まれる。例えば、患者の動きに関する情報は、患者の身体の外側の画像情報から得られる。
【0027】
呼吸位相及び/又は心位相情報をMRIシステムの(収集した磁気共鳴信号から断層画像を再構成する)再構成器に適用して、動きについて、収集した磁気共鳴信号を補正したり、再構成された磁気共鳴画像に動き補正を適用したりできる。例えば、心臓トリガー信号は、カメラからのビデオ信号に基づいて決定される。更に、他のタイプの動きも検出(例えば、定量化)されて、この情報が考慮されるように再構成器に提供されてもよい。生理学的に誘発されたものではない及び/又はあまり予測することができない、系統的及び/又は規則的な他の動き源の例としては、咳、くしゃみ、震え、及び/又は、一般的に、イメージングされた被検者の随意運動が挙げられる。
【0028】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムは、磁気共鳴システムにより収集された磁気共鳴信号から磁気共鳴画像を再構成する再構成器を含み、画像プロセッサによって特定された上記の情報は、呼吸位相及び/又は心位相情報を含み、再構成器は、動きについて、収集した信号及び/又は再構成された磁気共鳴画像を補正するために、この呼吸位相及び/又は心位相情報を考慮に入れる。
【0029】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムは、赤外線カメラシステムで観察する必要のない検査ゾーンにおける被検者の身体及び/又は別の物体の一部を覆うために布シート又はブランケットを含み、布シート又はブランケットは、赤外光を吸収、減衰、及び/又は拡散反射する。
【0030】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムは、検査ゾーン内に配置されて、顔やその一部(例えば、目、眼球、額の領域、…)などの被検者の身体部位から赤外光を赤外線カメラ上に反射する、及び/又は赤外光源からの光を上記の身体部位上に反射するミラー(非金属ミラーなど)又は反射面を含む。
【0031】
好ましくは、ミラー又は反射面は、磁気共鳴イメージングシステムの高周波動作に干渉しない、及び/又はMRIシステムの磁場及びRFダイナミック透過磁場に摂動を与えない。非金属製ミラーは、この利点を達成するために特に適している。例えば、非金属ミラーは誘電体ミラーである。
【0032】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、ミラー又は反射面は、特に、好ましくは、カメラのイメージング平面上に身体部位の赤外線画像を形成できるように、光を反射する。任意選択で、ミラー又は反射面はまた(人間の)視覚範囲の光に対して透過的又は半透過的であってもよい。
【0033】
したがって、ミラー又は反射面は、検査ゾーンの一部とカメラとの間に光路を配置し、これにより、カメラは、この一部から画像情報を取得できる。ミラー又は反射面は、例えば、磁石ボアエンクロージャの内壁に取り付けることによって、検査ゾーン内に位置付けられてもよい。追加的に又は代替的に、ミラー又は反射面はまた、患者台上に位置付けられた局所高周波(RF)コイル上など、検査ゾーン内の補助機器上に配置されてもよい。例えば、ミラー/リフレクタをRFヘッドコイルに取り付けることが実用的である。また、少なくとも1つのミラー又は反射面を、代替的に又は追加的に、検査ゾーンの外側(例えば、磁石ボアの外側)の位置に設けてもよい。
【0034】
第2の態様では、本発明は、磁気共鳴イメージングシステムを適応させる方法に関する。実施形態による方法は、(例えば、設置済みの)磁気共鳴イメージングシステムをレトロフィットするための方法であるか、又は磁気共鳴イメージングシステムを製造するための製造プロセスに組み込まれてもよい。
【0035】
方法は、磁気共鳴イメージングシステムによってイメージングされる被検者を内部に位置決めするための検査ゾーンを有する磁気共鳴イメージングシステムを取得するステップを含む。磁気共鳴イメージングシステムは、検査を受けている間に被検者をモニタリングするための、赤外線カメラを含む赤外線カメラシステムを含む。
【0036】
方法はまた、磁気共鳴イメージングシステムを収容する部屋の少なくとも1つの壁上、磁気共鳴イメージングシステムの磁石アセンブリの内壁上、及び/又び検査ゾーン内での使用のための磁気共鳴イメージングシステムの補助機器上にコーティングを塗布するステップを含む。コーティングは、赤外光を吸収及び/又は拡散反射する。特に、コーティングは、赤外線カメラの視野内に入る1つ以上の表面に塗布される(ただし、これに限定されない)。
【0037】
本発明の実施形態による方法では、磁気共鳴システムを取得するステップは、(例えば、上記のコーティングを塗布することに加えて)上記の赤外線カメラシステムを設置することによって、設置済みの磁気共鳴イメージングシステムを変更するステップを含む。代替的に、システムは、赤外線カメラシステムが設置済みのものとして取得されてもよい。
【0038】
独立請求項及び従属請求項に、本発明の具体的且つ好ましい特徴を説明している。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴や他の従属請求項の特徴と適宜組み合わせることができ、必ずしも請求項に明示的に記載されているものだけではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムを示す。
図2図2は、本発明の実施形態による例示的な磁気共鳴イメージングシステムの磁石ボアのフランジ端の写真を示す。
図3図3は、反射によって露出が不所望に高い領域が観察される、従来の磁気共鳴イメージングシステムによって取得可能なボア内カメラ画像を示す。
図4図4は、本発明の実施形態による方法を示す。
【0040】
図面は、概略的であり、限定的ではない。図面内の要素は、必ずしも縮尺どおりに提示されているわけではない。本発明は、必ずしも図面に示す本発明の具体的な実施形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
例示的な実施形態を以下に説明するが、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。添付の特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に組み込まれており、特許請求の範囲において、各請求項、及び請求項によって定義された依存関係構造によって許容される請求項の各組み合わせは、本発明の別個の実施形態を形成する。
【0042】
特許請求の範囲で使用される場合、単語「含む」は、以降に説明する特徴、要素、又はステップに限定されず、また、追加の特徴、要素、又はステップを排除するものではない。したがって、これにより、1つ以上の特徴の更なる存在又は追加を排除せずに、前述の特徴の存在が規定される。
【0043】
この詳細な説明では、様々な具体的な詳細が提示される。本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施できる。更に、本開示の明瞭さ及び簡潔さのために、よく知られている特徴、要素、及び/又はステップについては必ずしも詳細に説明するわけではない。
【0044】
第1の態様では、本発明は、検査ゾーンを有し、且つ検査ゾーンに位置決めされている状態で検査を受けている際に被検者をモニタリングするための赤外線カメラシステムを含む、磁気共鳴イメージングシステムに関する。
【0045】
図1は、本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステム1を概略的に示す。磁気共鳴検査システムは、検査ゾーン11を画定する一次磁石アセンブリ10を含む。例えば、検査ゾーンは、磁石アセンブリによって実質的に作成及び制御される磁場条件が磁気共鳴イメージングに適適しているボリュームによって形成される。したがって、検査ゾーンは、システムの磁石ボアに囲まれたボリューム(の少なくとも使用可能な部分)に対応する(これに限定されない。例えば、本発明の原理は、オープンボアシステムや、他のあまり頻繁には使用されていない磁石アセンブリ構成にも等しく適用される)。
【0046】
被検者(患者など)13は、システムを使用する際に、検査ゾーンの患者台14上に置かれる。一次磁石アセンブリは、検査ゾーンに定常均一磁場を発生させるために、同軸(例えば、超電導)巻線などの磁石巻線を含む。検査ゾーンは、これらの磁石巻線で囲まれた円筒形のボリュームである。
【0047】
システムは、使用中のシステムによって収集された磁気共鳴信号から、断層画像MRI画像などの磁気共鳴画像を再構成する再構成器15を含む。再構成された画像は、確認、処理、又は保存のために出力部16を介して提供される。
【0048】
RFのT/Rヘッドコイル12などの補助機器を、使用の際に検査ゾーンに配置して、被検者の頭部から磁気共鳴信号を収集できる。他の補助コイル構成を使用して、他の身体部位から、又は異なる使用事例のために信号を収集する一方で、通常、信号は、一次磁石アセンブリのハウジングに既に組み込まれている受信コイルによっても受信される。
【0049】
システムは、赤外線カメラ21、つまり、赤外線に反応する赤外線カメラを含む赤外線カメラシステムを含む。赤外線カメラシステムは、例えば、バイタルサイン、動き、不安の指標などを取得するために、被検者から情報を取得する。例えば、呼吸の動き及び心臓の動きは、患者の身体の外側の画像情報から得られる。カメラ21は、検査ゾーンの1つの入り口の近くに取り付けられる。例えば、カメラはMRボアのフランジ内に組み込まれるか、フランジに取り付けられる(例えば、これにより、使用可能なフリーボア直径が影響を受けない若しくは最小限にのみ縮小されるか、及び/又はMRシステムの動作への干渉を回避若しくは最小限に抑える)。これは、例えば(オプションの)赤外線照明光源29をこのフランジに組み込んだ様子を示す図2の写真によって示される。
【0050】
また、カメラシステムは、光検出測距システム(LIDAR)を含んでいてもよい。これは、例えばカメラデータの画像処理に考慮され得る、観測されるシーンに関する追加の3次元情報(例えば、3Dのローカライズされた表面点群)を生成するのに有用である。例えば、検査ゾーン内の患者及び/又は機器(の輪郭)の3次元メッシュを生成して、セグメンテーション、特徴認識、信号抽出などの画像処理タスクを支援できる。このようなLIDARデータ収集をサポートするために、又は少なくともそのような収集との干渉を最小限に抑えるために、コーティングが適応され得ることに留意されたい。例えば、典型的なLIDARシステムは、905nm及び/又は1550nmのレーザ光を使用する(ただし、これらに限定されない)。したがって、コーティングは、LIDARシステムが動作する波長での反射を回避するように、又は少なくともこの波長での鏡面反射を回避若しくは低減する。例えば、コーティングは、この波長の光を拡散反射したり吸収したりする。
【0051】
赤外線カメラシステムはまた、カメラ21を制御する、光軸の向き、焦点距離などのパラメータを調整するカメラ制御部25を含む。赤外線カメラシステムは、カメラ21によって収集された検査ゾーン11内の(生か又は適切な処理後の)画像を表示するディスプレイ26を含んでいてもよい。これにより、オペレータは、検査ゾーン内の被検者を視覚的にモニタリングできる。
【0052】
カメラ21によって収集された画像はまた、収集された1つ以上のカメラ画像から被検者に関する情報を得る画像プロセッサ27(例えば、ソフトウェアで実装され得る)に提供される。
【0053】
画像プロセッサ27は、カメラシステムによって収集された画像情報を処理して、例えば、静的又は動的画像解析を実行して、患者のバイタルサイン、患者の動き、患者の不安の徴候(又はより一般的には患者の気分検出)などの情報を患者から取得でき、並びに/又はフォトプレチスモグラフィ(PPG)、及び/若しくはビデオベースの会話の検出(又は発話、例えば、単純な言葉や顔の特徴に基づく指示の認識)を実行できる。患者の動きに関する情報には、例えば、呼吸周期及び/又は心周期の位相を示す呼吸の動き及び/又は心臓の動きなどが含まれ得る。例えば、患者の動きに関する情報は、患者の身体の外側の画像情報から得られる。情報は(例えば、画像ベースの動き検出器による)処理によって、及び/又はオペレータ若しくはスタッフメンバーによるシステムを介した患者の(直接)視覚的モニタリングによって決定される。
【0054】
呼吸位相及び/又は心位相情報を、再構成器15に提供して、収集した磁気共鳴信号を動きについて補正したり、再構成された磁気共鳴画像に動き補正を適用したりできる。例えば、心臓トリガー信号は、カメラからのビデオ信号に基づいて決定される。心臓トリガリングは、明らかな理由から、心臓MRIに特に有用であるが、より一般的に適用されてもよい。例えば、神経イメージングでは、血液や脳脊髄液の脈動流によって引き起こされる頭部及び/又は頸部のスキャンにおけるアーチファクトは、このようなトリガリング技術又は心位相信号に基づく他の補償アプローチによって抑制又は低減される。これはまた、頸動脈の血流の定量的測定にも有用である。更に、額や頬などの被検者の顔などにおける皮膚ピクセルの微妙な強度変化を解析することで、ビデオ信号からPPG信号を抽出できる。実施形態に従ってコーティングを使用すると、露出不足少及び/又は露出過多(又は少なくともカメラの視野内の不均一な照明による強いコントラスト)を回避でき、それにより、画像プロセッサがより優れた、例えば、より正確で信頼性の高い結果を生成できるか、又は、画像プロセッサの設計若しくは構成がより簡単となる(このような不均一な照明を補正する処理を低減又は回避できるため)。
【0055】
磁気共鳴イメージングシステムは更に、磁石ボアの少なくとも1つの表面、検査室の壁、及び/又は磁気共鳴イメージングシステムの補助機器に塗布されたコーティング2を含む。コーティングは赤外光を吸収及び/又は拡散する。補助機器には、RFコイル12、患者台14、又は検査ゾーン11内で使用できる他の機器が挙げられる。特に、コーティングは、システムを使用する際に被検者をイメージングする赤外線カメラの視野内にある1つ以上の表面に塗布される。
【0056】
したがって、赤外線カメラシステムは、赤外線画像に基づいて検査ゾーンを監視する。コーティングは、例えば、カメラで観測されることを意図していない表面で赤外光を吸収することで、カメラの視野内への赤外光のスプリアス反射を回避するか、及び/又は拡散補助照明、つまり、周囲(赤外)照明を提供するように機能する。反射光を拡散するコーティングは、影やハイライトなどのシャープな(意図しない)コントラストのない検査ゾーンの均一な照明を提供するために特に有利である。特に、このような光拡散コーティングを使用することで、たとえ1つの光源が点状であっても(又は比較的小さくても)、1つの光源でも、わずかな赤外光源29でもイメージングされたシーンの優れた(赤外)照明を実現できる。しかし、複数の光源を使用することも必ずしも除外されておらず、また、パッシブIRイメージングが使用される場合も除外されない。
【0057】
したがって、ボア(又は一般的に磁石アセンブリハウジング)の壁(の、例えば、少なくとも一部)、検査室の壁(の一部)、受信コイル、及び/又は検査ゾーン内の患者以外の物体などの検査ゾーンの壁及び/又は補助機器は、特に、カメラの視野にあるときは、赤外スペクトルの光を吸収及び/又は拡散する、例えば、カメラの視野を照らすために使用される赤外光源29によって放出される光を吸収及び/又は拡散できる。1つ以上の壁(又はその一部)には、検査ゾーンの壁、例えば、MRシステムの磁石ボアエンクロージャの内壁が含まれるが、例えば、カメラ21(例えば、ボアのフランジに組み込まれたり、フランジに取り付けたりするのではなく、検査ゾーンから更に離れて位置付けられている)が検査室のより広い全体像を提供する場合、及び/又は部屋の壁からの迷光がカメラによって収集される画像に大きな影響を与える可能性がある場合、MRシステム(特に、ボア及びそれに関連する機器)が設置される部屋の1つ以上の壁も(追加的に又は代替的に)含まれる。検査室は、外部磁場からシステムを保護するために意図的に変更及び/又は構築されている場合がある。例えば、ファラデーケージ又は同様の構造を含む。したがって、検査室、したがってその内壁も、単にシステムが使用される場所ではなく、MRイメージングシステムの不可欠な部分であると合理的に考えられることが理解される(ただし、必ずしもこれに限定されない)。ただし、周囲の検査室の壁からの光の反射は画像に大きな影響を与えないことが多いため、カメラを検査ゾーンの端(公差のある程度の許容範囲を有して)(ボアのフランジなど)に設けると有利であることに留意されたい。
【0058】
したがって、カメラの視野内にある患者以外の要素が、過度の迷光(IR)を回避し、カメラで観察される患者の関心領域を十分に露出できるようにすることが利点である。またこれは、カメラ画像に適用された場合に、例えば、動き検出や生理学的パラメータの決定のために画像処理アルゴリズムの性能を向上させることもできる。
【0059】
検査ゾーン(及び/又は部屋)及び/又は他の機器(コイルアセンブリ及び/又は患者台を含むが、これらに限定されない)の壁が、カメラによって収集された画像の大きな部分を構成する場合がある。そのため、迷光によって、カメラ21で観察されることを意図した実際の関心領域の露出が不十分になる可能性がある。露光が悪いと、信号対ノイズ比が低下したり、迷光が画像が過飽和を引き起こす可能性がある。例えば、図3は、関心領域41が過度の迷光42により露出不足になっている例示的なカメラ画像(先行技術システム、特に、本明細書で説明するコーティングを有さないシステムによって取得される)を示している。露出不足は、本発明の実施形態に従って、視野内の装置の壁及び/若しくは外面の材料特性の適切な選択によって、並びに/又は、例えば、コーティングによる可視表面の適切な処理によって克服できる。
【0060】
追加的に、システムは、例えば、カメラシステムで観察する必要のない患者の身体の一部を覆うために、観察される対象物の近くの無関係な表面を覆うために、適切なスペクトル特性(前述のコーティングの特性を参照)を有する布シート又はブランケット43を含み得る。したがって、赤外光の不所望の反射を、吸収又は拡散によって更に回避できる。コーティングのスペクトル特性に関する以下の説明は、布シート又はブランケットの光学特性に同様に該当すると考えることができる。この布シート及び/又はブランケット43は、赤外放射線を吸収、減衰、又は拡散反射し、任意選択で可視スペクトルの光も反射又は透過する。
【0061】
更に、このような布シート又はブランケットを使用することで、有利に、使用中の観測システムの性能のチューニング及び/又は最適化に自由度が追加される。このようなブランケットは、手順のために簡単に追加、再配置、取り外しなどが可能である一方で、これは、通常、壁及び/又は補助機器上に固定されたコーティングでは、コーティングを備えた若しくは備えていない、又は異なる光学特性を有する異なるコーティングを備えた(例えば)ヘッドコイルアセンブリ及び/又は他の機器アイテムの異なるバージョンを提供する費用がかかる可能性の高いオプションを除き、個別的には実現可能ではないことが理解されるであろう。しかし、布シート又はブランケットは柔軟性が高く(比喩的にも、通常は文字通りにも)、構成可能である。
【0062】
これは、品質管理システム(本発明の実施形態は、このようなシステムを含むことができる。また、実施形態による方法の一部として品質管理ステップを含むことができる)の使用と組み合わせることができ、これは、専用のハードウェア、ソフトウェア、又はその両方によって実施できる。例えば、収集したカメラ画像(又はカメラシステムによって収集されたキャリブレーション画像)において観察された光強度を評価できる。例えば(画像の関心領域内などの)最小閾値に照らしてチェックできる。(例えば、ROI内の)最小及び/又は最大画像コントラストや、カメラ画像から生成された信号に課される要件(例えば、収集した画像から得られた信号の信号対ノイズ比)など、他の品質基準も(代替的に又は追加的に)使用できる。このため、品質管理システムが画像/信号の品質が不十分となるカメラの観測設定を検出すると、オペレータは、注意喚起され、例えば1つ以上の上記の布シート及び/又はブランケットを調整及び/又は追加することによって、そのような状況を改善することが促される。このようなオンラインガイダンスは、例えば、患者がスキャナボア内に入れられたとき又はその直後の検査の準備段階において提供される。例えば、対応するソフトウェアルーチンが実行される。品質管理システムは更に、カメラビュー内の問題のある領域を特定したり、画質を改善する手法について提案を生成したりできる。一例として、例えば、特定のイメージングシステム若しくはシステムタイプについての実験若しくはモデリングに合わされた決定ロジック、及び/又はトレーニングされた機械学習アルゴリズムを含む予測アルゴリズムを使用して、可能な介入(異なるブランケット、及び/又はブランケットの異なる位置/構成)を評価し、それに基づいて、画像/信号の品質を向上させる可能性のある1つ以上のオプションを提案する。
【0063】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、コーティング(シート又はブランケット)は、例えば、以下で詳述する赤外線カメラシステムの動作範囲にわたる、例えば800nmを上回るスペクトル範囲、例えば800nm~900nmの範囲、例えば830nm~870nmの範囲、例えば840nm~860nmの範囲の赤外光を吸収する。例えば、コーティングは、上記の赤外線範囲における、その上に入射する光の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば95%~100%の範囲で吸収する。赤外線スペクトル範囲は、好ましくは、赤外線カメラの光感度の範囲と一致するか、又は大きく重複する。
【0064】
同様に、コーティングは、例えば、赤外線カメラシステムの動作範囲にわたって、赤外光を拡散反射してもよい。例えば、コーティングは、上記の赤外線範囲における、その上に入射する光の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%を反射する。赤外光は比較的広い角度にわたって拡散される。例えば少なくとも10°、例えば少なくとも20°、例えば少なくとも30°、又はそれ以上、例えば少なくとも45°、例えば少なくとも60°の(反射光の)角度にわたって単向性の(入射)ビームを拡散させる(当然ながら、コーティングは、必ずしも単向性ビームのみを拡散反射するわけではなく、入射波の焦点特性に関係なく入射光を広げ、拡散する)。
【0065】
したがって、本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムは、検査ゾーンの壁、検査室(例えば、MRIシステム、特にその磁石ボアが設置されている場所)の壁、及び/又は補助機器を含み、上記の壁及び/又は補助機器の少なくとも一部(特にカメラの視野内にある一部)は、赤外線スペクトルの入射光を吸収(又は少なくとも減衰)及び/又は拡散反射する。
【0066】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、コーティングは、赤外線スペクトル範囲におけるその特性に加えて、視覚スペクトルの光を反射して、好ましくは、拡散反射して、鏡のような表面からの反射による注意散漫及び/又は不快感を回避できる。例えば、これにより、部屋やMRIシステムの照明が被検者にとって快適になり、スタッフにとって良好な作業条件となる。視覚範囲の特性は、コーティングされた表面に所定の色を提供するか、又は、例えば、白色の印象を与えるように(当然ながら、それに応じて照らされたときに)広い反射/拡散スペクトル応答を有する。コーティングは、視覚スペクトルの大部分を吸収する(例えば、そのような好みの色をシステムに提供するため)か、更には実質的に視覚スペクトル全体でさえも吸収する。例えば、暗い照明条件及び/又は完全な暗闇が、少なくとも一部の被検者にとってはより快適である場合があり、これは、光を吸収することによって、視覚スペクトルの広い又は実質的に全体の範囲にわたってコーティングすることによって高めることができる。ただし、これはあまり好ましくない。なぜなら、暗い照明/暗闇は、周囲光源を減衰又は消すことで簡単に提供できるからである。一方で、(視覚範囲内の)周囲照明のレベルを下げるためのコーティングは、柔軟性が低く、実質的に静的な性質を有する。例えば、より明るい環境でより快適に感じ被検者に簡単に合わせることができない。
【0067】
しかし、コーティングは、製造済みシステムの変更として塗布されてもよい(ただし、これに限定されない)。この場合、コーティングが塗布される材料は、視覚範囲内で所定の特性を有するように、例えば、被検者及びスタッフへの提示のために選択された色及び/又は輝度を取得するように、既に設計されている。したがって、コーティングはまた、下にある材料の色効果(及び/又は他の光学特性)がコーティングによって(ほぼ)影響を受けないように、可視スペクトルにおいて実質的に透過的であってもよい。例えば、コーティングは、可視スペクトル(例えば350nm~800nmの範囲)の光の少なくとも50%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%を透過する。つまり、コーティングは、人間が知覚できる可視スペクトル領域(例えば380nm~740nmの範囲又はその大部分)の光の25%未満、例えば10%未満を吸収し得る。(例えば、代替的に)このようなコーティングは、上記で説明したように、可視スペクトルの光を反射し得る。この透明又は反射特性には、例えば、患者の快適性を向上させる(例えば、暗い壁や機器は威圧的であったり、恐怖や憂鬱になる可能性がある場合)ために、及び/又は美的配慮のために、(目で直接見たときの)システムの外観に影響を与えないという利点がある。
【0068】
適切なコーティングは、例えば、加熱素子をコーティングするために使用されるように、当技術分野で知られている。加熱素子のコーティングでは、熱伝達と放射率の観点から赤外光の良好な吸収が有利である。加熱素子用のこのようなコーティングもまた、例えば、特に、白色の加熱表面又は明るい色の加熱表面に塗布されるときは、視覚的に透明であるか又は反射性である。当業者によって他の適切なコーティング材料を選択できる。例えば、メタマテリアルフィルムを使用して効率的な全方向性及び広帯域の光吸収(又は反射)を達成すると同時に、赤外線スペクトル(の少なくとも関連部分)の光を吸収又は拡散させるなど、より洗練された材料を使用できる。本開示の目的上、塗料、コーティング、薄膜、又はフォイルを塗布することによる表面処理は同等の手法と考えられるので、一般的な意味での「コーティング」と考えられる。
【0069】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、赤外線カメラシステムはまた、1つ以上の赤外光源29を含み得る。イメージングのためにパッシブ(赤外線)照明に依存する実施形態は必ずしも除外されるわけではないが、当業者は、アクティブ照明を使用すると、照明条件をより適切に管理でき、イメージングがより効果的となることを理解するであろう。
【0070】
赤外光源29は、場合によっては、ミラー又は反射面によって支えられて、検査ゾーン内/上に直接光ビームを向けるように構成されて、位置決めされ得る。複数のミラーを使用することで、被検者の異なる領域を単一の光源で効果的に照らすことができる。本発明の実施形態は更に、(更なる反射によって)直接又は間接的に光を観察ゾーンに反射する、赤外線源によって放出される赤外光の不所望な反射による迷光を回避するのに特に適している。これは、例えば、システムのコーティングされた表面に入射した赤外光を吸収することによって、及び/又はそのコーティングによって光を拡散反射することによって達成できる。アクティブ照明を使用しない場合でも、システムの近くにある熱源又は他の赤外放射線源がパッシブ赤外線観測に干渉する可能性があり、これにより、実施形態によるコーティングは、赤外光源に明示的に依存しない環境でも依然として有利であることに留意されたい。
【0071】
光源及びカメラを検査ゾーンの外側に設置できる。これにより、磁気共鳴イメージングシステムの構成が簡素化され、検査ゾーン内のフリーボア幅が広くなる。例えば、円筒ボアシステムでは、カメラと光源の両方は、ボアの一端でボアエンクロージャのフランジに設置され、これにより、例えば(患者及び/又は補助機器を検査ゾーンに入れるための)検査ゾーンへの妨げられないアクセスを可能にするために他端が実質的にフリーになり、システムによってイメージングされている間の被検者の潜在的な閉所恐怖症の影響、したがって、可能な不快感を軽減できる。
【0072】
光源29をカメラの隣又はその近くに設置できる。例えば、ボアのフランジ端で互いに隣接したり、角度で隔てられたりするが、一般には長手方向において同じフランジ領域に設置できる。例えば、図2を参照されたい。光源とカメラとが比較的近くに位置付けられている場合は、ミラー又は反射面を使用して、例えば、同じミラーが光路において事実上2回使用されるように、光源から放出された赤外光を検査ゾーン(例えば、観察される身体部位)に持って行き、再び観察された検査ゾーンからカメラに戻す。したがって、必要なミラーの数を減らすことができる(ただし、これに限定されない)。光源とカメラとを互いに近接して位置付けることには、利用可能なボア幅(の縮小)への影響を最小限に抑えることや、任意選択で電源及び/又は制御信号用のケーブル又は導管を共有すること(これはまた、RF及び/若しくは磁場干渉を回避又は低減するという点で、システムの設計を簡素化する)など、更なる利点がある。
【0073】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、1つの赤外線カメラ(又は複数のカメラ)は、(例えば、狭い)赤外線波長範囲及び可視波長範囲外で動作する(例えば、実質的に排他的に反応する)。これは、赤外光源にも同様に当てはまる。つまり、赤外光源は、上記の赤外線波長範囲、又は上記のカメラの波長範囲と実質的に重複する別の範囲でのみ光を放出する(ただし、これに限定されない)。例えば、赤外線カメラシステムは、例えば800nmよりも大きい赤外線波長、例えば約850nm±-20nmの波長で動作する。
【0074】
赤外線イメージングを使用することには、血流や心拍の検出など、特定の用途のための利点がある。更に、これにより、被検者を(可視スペクトル内の)低い周囲照明条件下でモニタリングすることも可能になる。例えば、少なくとも一部の患者が低い照明や完全な暗闇をより快適であると知覚することが観察されている。しかし、このような条件は、実施形態によるシステムを使用したカメラ観察のための赤外線範囲での十分な照明を妨げない。
【0075】
磁気共鳴イメージングシステムは、検査ゾーン内に配置されて、顔やその一部(例えば、目、眼球、額の領域、…)などの被検者の身体部位からの(赤外)光をカメラ上に反射する、及び/又は光源からの光を上記の身体部位上に反射する、非金属ミラーなどのミラー22又は反射面を含む。(例えば、非金属)ミラー22を、例えば磁石ボアエンクロージャの検査ゾーンの内壁に取り付けることができる。
【0076】
好ましくは、ミラー又は反射面は、磁気共鳴イメージングシステムの高周波動作に干渉しない、及び/又はMRIシステムの磁場及びRFダイナミック透過磁場に摂動を与えない。非金属ミラーは、この利点を達成するために特に適している。例えば、非金属ミラーは誘電体ミラーであり、例えば、異なる屈折率の層のスタックから構成され、例えば、誘電共振器がスタックによって形成される。また、多層スタックを含むそのような誘電体ミラーは、例えば、赤外線カメラシステムの動作の上記の赤外線波長範囲などの狭い波長範囲の光を、例えば、有利に比較的広い入射角範囲でも反射するという利点がある。
【0077】
本発明の実施形態による磁気共鳴イメージングシステムでは、ミラー又は反射面は、特に、好ましくは、カメラのイメージング平面上に身体部位の赤外線画像を形成できるように、光を反射する。任意選択で、ミラー又は反射面はまた、(人間の)視覚範囲の光に対して透過的又は半透過的であってもよい。
【0078】
したがって、ミラー又は反射面は、検査ゾーンの一部(つまり、被検者が検査を受けている際に身体部位が置かれる場所)とカメラとの間に光路を配置する。
【0079】
したがって、ミラー又は反射面は、検査ゾーンの一部とカメラとの間に光路を配置し、これにより、カメラは、この一部から画像情報を取得できる。ミラー又は反射面は、例えば、磁石ボアエンクロージャの内壁に取り付けることによって、検査ゾーン内に位置付けられてもよい。追加的に又は代替的に、ミラー又は反射面はまた、患者台上に位置付けられた局所高周波(RF)コイル上など、検査ゾーン内の補助機器上に配置されてもよい。例えば、ミラー/リフレクタをRFヘッドコイルに取り付けることが実用的である。また、少なくとも1つのミラー又は反射面を、代替的に又は追加的に、検査ゾーンの外側(例えば、磁石ボアの外側)の位置に設けてもよい。
【0080】
ミラー/リフレクタを使用することは、観察する関心領域が、カメラから直接見ることができないときに特に有利である。例えば、検査ゾーンへのカメラの直接の見通し線に設置された局所高周波(RF)送信又は受信(T/R)アンテナなどの補助機器などの不透明な物体によって障害物が形成される場合がある。他に考えられる障害物としては、被検者の身体部位が挙げられる。
【0081】
1つ以上のミラーはまた、例えば、ミラーが異なる位置で支持体(ボア壁など)に取り付けられることを可能にすることによって、スライディングレール配置を使用することによって、ミラーが取り付けられたスイベルマウントを使用することによって、及び/又は他のそのような手段によって、変化する(カメラの)イメージング条件を考慮するために、再位置決め及び/又は再方向付けが可能であるようにされる。つまり、ミラー又は反射面は、例えば、向きを調整するためのヒンジ若しくはピボットによって、及び/又は位置を調整するためのスライドレール、可動マウント、若しくは取り外し可能なアタッチメント(特に複数の可能な取り付け点にアタッチ可能である)によって調整可能に取り付けられる。これにより、ミラーの向き及び/又は位置、例えば、検査ゾーンの長手方向軸に対する向き及び/又はこの軸に沿った位置(他の軸に対する調整は除外しない)を変更できる。これにより、検査によって(又は、検査内でさえ)異なり得る検査ゾーン内の障害物を回避する柔軟性が得られる。代替的に、ミラーは、内壁に、例えば、固定の配置で取り付けることもでき、これにより、ミラーが検査ゾーンにおいて占めるスペースはほとんどない。
【0082】
代替的に(又は追加的に)、ミラーは、例えば、頸部、頭蓋、及び/又は神経放射線MR検査に使用する頭部T/Rコイルに取り付けられるか、又はその一部として形成されてもよい。ミラーをヘッドコイル内又は上に組み込むことで、スキャナボアなどの既存の機器のコストのかかる又は複雑な変更を回避できることに留意されたい。例えば、ボアのフランジ上に取り付けられているカメラ間の距離が比較的離れていることにより、例えば、額やその一部のみが示される非常に限られた視野となるが、いくつかの用途では、例えば、ピクセル強度のわずかな変動によって血中脈動をモニタリングするために十分であり得る。
【0083】
第2の態様では、本発明は、磁気共鳴イメージングシステムを適応させる方法に関する。実施形態による方法は、(例えば、設置済みの)磁気共鳴イメージングシステムをレトロフィットするための方法であるか、又は磁気共鳴イメージングシステムを製造するための製造プロセスに組み込まれてもよい。
【0084】
図4は、本発明の実施形態による例示的な方法70を示す。
【0085】
方法は、磁気共鳴イメージングによる検査のために被検者を位置決めするための検査ゾーンを有する磁気共鳴イメージングシステムを取得するステップ71を含む。例えば、検査ゾーンは、システムの磁石アセンブリのボアで囲まれたボリュームによって、又はその大部分(イメージングに使用可能な部分など)によって形成される。
【0086】
磁気共鳴イメージングシステムは、検査ゾーンに位置決めされている状態で検査を受けている際に被検者をモニタリングするための、赤外線カメラを含む赤外線カメラシステムを含む。磁気共鳴システムを取得するステップ71は、赤外線カメラシステムを設置することによって、設置済みの磁気共鳴イメージングシステムを変更するステップを含むか、又は赤外線カメラシステムがシステムに既に設置されていてもよい。事前に設置された又は方法70の一部として設置された赤外線カメラシステムは、検査ゾーンの中に赤外光を向ける1つ以上の赤外光源を含む。例えば、赤外線カメラシステムは、光源からの光を検査ゾーンの中に、例えば、システムの使用中に被検者上に向け、これにより、赤外線カメラの視野内に位置決めされた被検者の身体の光が当てられた一部を赤外線カメラによってイメージングできる。任意選択で、ミラー又はリフレクタを使用して、赤外光を光源からイメージングされる身体部位に、及び/又はイメージングされる身体部位からカメラに誘導できることに留意されたい。また、このようなミラー又はリフレクタは、位置及び/又は向きを調整できるなど、構成可能な手段として提供できることに留意されたい。即ち、被検者のイメージングセッションを準備するためにシステムを使用する場合である。
【0087】
方法70は、磁気共鳴イメージングシステムのハウジングを形成する部屋の少なくとも1つの壁、システムの磁石アセンブリの内壁、及び/又は検査ゾーン内での使用のための磁気共鳴システムの補助機器上にコーティングを塗布するステップ72を含む。このコーティングは更に、赤外光を吸収及び/又は拡散反射する。このような補助機器には、例えば、高周波トランスミッタ/レシーバコイル及び/又は患者台が含まれる。本開示の目的上、「コーティング」は、狭義に解釈されるべきではなく、塗料、フィルム、フォイル、又は他の適切な表面処理を指す場合がある。コーティングは多層化されていてもよく、例えば、複数のスタックされたコーティング、塗料、フィルム、及び/又はフォイル、若しくはそれらの組み合わせが含まれる。
【0088】
特に、コーティングは、システムの使用時に被検者をイメージングする赤外線カメラの視野内にある1つ以上の表面に塗布される。コーティングは、800nmを上回るスペクトル範囲の赤外光を少なくとも30%吸収できる。コーティングは、800nmを上回るスペクトル範囲の入射赤外光の少なくとも30%を拡散反射できる。
【0089】
本発明の実施形態による方法では、コーティングは更に、可視スペクトルの入射光の少なくとも50%を反射及び/又は透過できる。
【0090】
コーティングのスペクトル特性は、赤外線カメラの動作波長範囲に合わせて調整できる。例えば、赤外線カメラは、コーティングが赤外光を吸収する及び/又は拡散反射する範囲に相当する、又は実質的に重複する赤外線波長範囲で動作する。特定の例では、赤外線カメラシステムは、約850nm±-20nmの赤外波長で動作し、コーティングは少なくともこの範囲で赤外光を実質的に吸収及び/又は反射する。
【0091】
画像プロセッサが、方法の一部として提供されても、MRIシステムに既に組み込まれていてもよい。このような画像プロセッサは、通常、カメラ画像又は赤外線カメラシステムによって収集された画像から被検者に関する情報を得ることができる。
【0092】
方法はまた、実施形態による方法によって変更されたシステムを使用する際に、検査ゾーンにおける被検者の身体及び/又は他の物体の一部を覆う布シート又はブランケットを提供するステップも含む。この布シート又はブランケットは、赤外光を吸収、減衰、及び/又は拡散反射し、例えば、上記のコーティングと同様の(光学/スペクトル)特性を有する。したがって、方法によって提供される磁気共鳴システムは、赤外線カメラシステムを有する磁気共鳴イメージングシステムを含む、いくつかの実施形態による部品のキットと見なすことができ、このMRIシステムは、布シート又はブランケットと組み合わせて、上述したとおりに、MRIシステムの表面をコーティングすることによって変更される。したがって、コーティング及び/又はブランケットによって提供される赤外線吸収及び/又は拡散反射により、使用の際に、オペレータが優れた赤外線イメージング品質(及び/又はそこから推測される堅牢なデータ)を取得できる。
【0093】
本発明の第2の態様の実施形態による方法の他の特徴、又は上記の特徴の詳細は、本発明の第1の態様の実施形態によるシステムに関する上記の説明を鑑みて明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】