(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240702BHJP
B60H 1/08 20060101ALI20240702BHJP
B60H 1/03 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
B60H1/08 611D
B60H1/03 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500131
(86)(22)【出願日】2023-04-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2023059734
(87)【国際公開番号】W WO2023198863
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022067206
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】上野 生太
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA51
3L211DA10
(57)【要約】
バタフライタイプのミックスドア(60)は、下流側延出ドア(81)と、下流側ヒンジ(82)を介して接続された下流側従動ドア(83)を備える。下流側ドア径(R2)は、ミックスドア(60)がフルホット位置のときよりもフルクール位置のときに短い。下流側従動ドア(83)は、ミックスドア(60)がフルクール位置のとき、下流側延出ドア(81)に対して温風通路(50)の上流側へ折れ曲がっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を空気が流れるケース(20)と、前記ケース(20)を流れる空気を冷却可能な冷却用熱交換器(13)と、前記冷却用熱交換器(13)から流出した空気を加熱可能な第1ヒータ(31)と、前記第1ヒータ(31)から流出した空気を加熱可能な第2ヒータ(36)と、前記第1ヒータ(31)又は前記第2ヒータ(36)から流出した空気が流れる温風通路(50)と、前記冷却用熱交換器(13)から流出した空気が前記第1ヒータ(31)に加熱されずに流れる冷風通路(40)と、前記温風通路(50)を流れる空気と前記冷風通路(40)を流れる空気との比率を調整可能なミックスドア(60)と、前記温風通路(50)を流れた空気と前記冷風通路(40)を流れた空気が合流するミックス空間(27)と、を備えた車両用空調装置(10)であって、
前記ミックスドア(60)は、前記冷風通路(40)を流れる空気を基準として、略直交するよう設けられた回転軸(62)と、前記回転軸(62)から延出し前記回転軸(62)よりも上流側を移動可能な上流側延出ドア(71)と、前記回転軸(62)から前記上流側延出ドア(71)が延出している方向とは略反対方向へ延出している下流側延出ドア(81)を有するバタフライドア部(61)を含み、
前記ミックスドア(60)は、
前記回転軸(62)を中心に前記上流側延出ドア(71)及び前記下流側延出ドア(81)がスイングするとともに、
前記温風通路(50)を流れる空気の比率を最小とするフルクール位置、
前記温風通路(50)を流れる空気の比率を最大とするフルホット位置、および、
前記温風通路(50)を流れる空気の比率および前記冷風通路(40)を流れる空気の比率のいずれも最大としない温度調和位置、に位置することが可能とされており、
前記下流側延出ドア(81)には、延出した先端に下流側ヒンジ(82)を介して板状の下流側従動ドア(83)が接続されており、
前記回転軸(62)から前記下流側従動ドア(83)の先端までの下流側ドア径(R2)が変化可能であり、
前記下流側ドア径(R2)は、前記ミックスドア(60)が前記フルホット位置のときよりも前記フルクール位置のときに短く、
前記下流側従動ドア(83)は、前記ミックスドア(60)が前記フルクール位置のとき、前記下流側延出ドア(81)に対して前記温風通路(50)の上流側へ折れ曲がっている、ことを特徴とする車両用空調装置(10)。
【請求項2】
前記温風通路(50)は、前記第1ヒータ(31)から流出した空気が前記第2ヒータ(36)を迂回して流れることが可能な第2ヒータ迂回路(52)を含み、
前記下流側従動ドア(83)は、前記ミックスドア(60)が前記フルホット位置のとき、前記下流側延出ドア(81)に対して前記下流側ドア径(R2)が長くなるように開くと共に、前記第2ヒータ迂回路(52)を流れる空気の比率を最小とする、請求項1に記載の車両用空調装置(10)。
【請求項3】
前記ミックスドア(60)が前記フルホット位置から前記フルクール位置へ移動するにつれて、前記下流側従動ドア(83)は、前記下流側延出ドア(81)に対して、前記温風通路(50)の上流側へスイングする、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置(10)。
【請求項4】
前記上流側延出ドア(71)は、延出した先端に上流側ヒンジ(72)を介して板状の上流側従動ドア(73)が接続されており、
前記回転軸(62)から前記上流側従動ドア(73)の先端までの上流側ドア径(R1)は変化可能であり、
前記上流側ドア径(R1)は、前記ミックスドア(60)が前記フルクール位置のときよりも前記フルホット位置のときに短く、
前記上流側従動ドア(73)は、前記ミックスドア(60)が前記フルホット位置のとき、前記上流側延出ドア(71)に対して前記第1ヒータ(31)へ近づく方向へ折れ曲がっている、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライタイプのミックスドアを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用自動車等の車両の多くは、外気や内気を車室に取り込んで温度を調和するための、車両用空調装置を備えている。車両用空調装置に関する関連技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、内部を空気が流れるケースと、ケースを流れる空気を冷却可能な冷却用熱交換器と、冷却用熱交換器から流出した空気を加熱可能なヒータと、備えている。
【0004】
さらに、ケースの内部には、第1ヒータ又は第2ヒータから流出した空気が流れる温風通路と、冷却用熱交換器から流出した空気が第1ヒータに加熱されずに流れる冷風通路と、温風通路を流れる空気と冷風通路を流れる空気との比率を調整可能なミックスドアと、温風通路を流れた空気と冷風通路を流れた空気が合流するミックス空間と、が設けられている。
【0005】
ミックスドアは、いわゆるバタフライタイプであり、回転軸と、回転軸から互いに略反対方向に延出した上流側延出ドア及び下流側延出ドアと、を備えている。回転軸が回転すると、下流側延出ドア及び上流側延出ドアの位置が変化し、ミックス空間へ流れ込む温風通路の空気と、冷風通路の空気の割合が変化し、ミックス空間にて調和される調和空気の温度を変化させることができる。調和空気はダクト等を通じて車室に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術の車両用空調装置のヒータは、空気の流れ方向に沿って配置された第1ヒータ及び第2ヒータを含んでいる。第1ヒータから流出した温風は、第2ヒータを通過して温風をさらに加熱することができ、寒冷地での使用に適した製品となる。
【0008】
ただし、単体のヒータを備えた車両用空調装置と比較すると、ケースには2つのヒータが設けられているため、第1ヒータ及び第2ヒータ付近の空気の流れ方向の寸法について、車両用空調装置の大型化につながりやすい。
【0009】
本発明は、複数のヒータ及びバタフライタイプのミックスドアを備えた車両用空調装置が大型化することを抑制できる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明によれば、内部を空気が流れるケース(20)と、前記ケース(20)を流れる空気を冷却可能な冷却用熱交換器(13)と、前記冷却用熱交換器(13)から流出した空気を加熱可能な第1ヒータ(31)と、前記第1ヒータ(31)から流出した空気を加熱可能な第2ヒータ(36)と、前記第1ヒータ(31)又は前記第2ヒータ(36)から流出した空気が流れる温風通路(50)と、前記冷却用熱交換器(13)から流出した空気が前記第1ヒータ(31)に加熱されずに流れる冷風通路(40)と、前記温風通路(50)を流れる空気と前記冷風通路(40)を流れる空気との比率を調整可能なミックスドア(60)と、前記温風通路(50)を流れた空気と前記冷風通路(40)を流れた空気が合流するミックス空間(27)と、を備えた車両用空調装置(10)であって、
前記ミックスドア(60)は、前記冷風通路(40)を流れる空気を基準として、略直交するよう設けられた回転軸(62)と、前記回転軸(62)から延出し前記回転軸(62)よりも上流側を移動可能な上流側延出ドア(71)と、前記回転軸(62)から前記上流側延出ドア(71)が延出している方向とは略反対方向へ延出している下流側延出ドア(81)を有するバタフライドア部(61)を含み、
前記ミックスドア(60)は、
前記回転軸(62)を中心に前記上流側延出ドア(71)及び前記下流側延出ドア(81)がスイングするとともに、
前記温風通路(50)を流れる空気の比率を最小とするフルクール位置、
前記温風通路(50)を流れる空気の比率を最大とするフルホット位置、および、
前記温風通路(50)を流れる空気の比率および前記冷風通路(40)を流れる空気の比率のいずれも最大としない温度調和位置、に位置することが可能とされており、
前記下流側延出ドア(81)には、延出した先端に下流側ヒンジ(82)を介して板状の下流側従動ドア(83)が接続されており、
前記回転軸(62)から前記下流側従動ドア(83)の先端までの下流側ドア径(R2)が変化可能であり、
前記下流側ドア径(R2)は、前記ミックスドア(60)が前記フルホット位置のときよりも前記フルクール位置のときに短く、
前記下流側従動ドア(83)は、前記ミックスドア(60)が前記フルクール位置のとき、前記下流側延出ドア(81)に対して前記温風通路(50)の上流側へ折れ曲がっている、ことを特徴とする車両用空調装置(10)が提供される。
【発明の効果】
【0012】
フルクール位置での下流側ドア径(R2)は、フルホット位置での下流側ドア径(R2)よりも短い。さらに、フルクール位置にて、下流側従動ドア(83)は、下流側延出ドア(81)に対して温風通路(50)の上流側へ折れ曲がっている。ミックスドア(60)が移動する際に、下流側延出ドア(81)の通過領域が小さくなるため、温風通路(50)の壁面をミックスドア(60)の回転軸(62)に近づけることができ、ケース20のなかの温風通路(50)を縮小して、車両用空調装置(10)の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示された車両用空調装置の概略断面図である。
【
図3】温度調和位置のミックスドアの構成と空気の流れを説明する図(
図2の3の線で囲われた部位)である。
【
図4A】フルクール位置でのミックスドアを説明する図である。
【
図4B】温度調和位置でのミックスドアを説明する図である。
【
図4C】フルホット位置でのミックスドアを説明する図である。
【
図5】フルホット位置でのミックスドアの構成と空気の流れを説明する図である。
【
図6】フルクール位置でのミックスドアの構成と空気の流れを説明する図である。
【
図7A】関連技術による比較例の車両用空調装置の模式図である。
【
図7B】実施例による車両用空調装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例を添付図に基づいて以下に説明する。図中Frは前、Rrは後、Lは車室内の乗員を基準として左、Rは車室内の乗員を基準として右、Upは上、Dnは下を示している。さらに、以下の説明文のなかの"上流側"、"下流側"とは、空気の流れ方向を基準とする。
【0015】
<実施例>
図1には、外気や内気を車室に取り込んで温度を調節する車両用空調装置10が示されている。車両用空調装置10は、例えば乗用車に搭載され、車室内の前方にて、左右方向に延びるよう配置されている。
【0016】
車両用空調装置10は、吸い込んだ空気を送風する送風装置11と、送風装置11から送風された空気の温度調節を行い車室内に調和空気を吹き出す温調装置12と、を有して構成されている。
【0017】
送風装置11は、電動モータと、電動モータにより駆動されるインペラと、を内部に備えている。インペラが回転すると、車室内、及び/又は、車室外の空気が、送風装置11内に吸い込まれる。
【0018】
温調装置12は、送風装置11から送られた空気が内部を流れるケース20を備えている。ケース20には、調和空気を吹き出すために開口している開口部21~23が形成されている。
【0019】
開口部21~23は、フロントガラスに向かって調和空気を送風しフロントガラス曇りを除去するデフロスタ開口部21と、前席の乗員の上半身に向かって調和空気を送風するベント開口部22と、前席の乗員の脚部に向かって調和空気を送風するフット開口部23,23と、を含んでいる。
【0020】
図2には、温調装置12の断面図が示されている。
図1と
図2を併せて参照する。デフロスタ開口部21は開閉部材17により開閉可能である。ベント開口部22は開閉部材18により開閉可能である。フット開口部23,23は開閉部材19,19により開閉可能である。
【0021】
温調装置12のケース20は、送風装置11から送られた風をケース20内に取り込むために開口している取り込み部24を有している。
【0022】
ケース20は、取り込み部24から流出した空気を冷却可能な冷却用熱交換器13を収納している。冷却用熱交換器13とケース20との隙間はシール材14,14で埋められていることが好ましい。
【0023】
ケース20は、冷却用熱交換器13から流出した空気を加熱可能な第1ヒータ31を収納している。ケース20の内部には、第1ヒータ31の上端部を支持している第1支持部25が設けられている。第1支持部25と第1ヒータ31の上端部との隙間はシール材で埋められていることが好ましい。第1ヒータ31の下端部とケース20との隙間はシール材で埋められていることが好ましい。
【0024】
ケース20は、第1ヒータ31の下流側に配されていることにより第1ヒータ31から流出した空気の少なくとも一部を加熱可能な第2ヒータ36を収納している。第1ヒータ31と第2ヒータ36とは、互いの高さが異なり、段差状に配されている。
【0025】
第2ヒータ36の上端部を支持している第2支持部26が設けられている。第2支持部26と第2ヒータ36の上端部との隙間はシール材で埋められていることが好ましい。第2ヒータ36の下端部とケース20との隙間はシール材で埋められていることが好ましい。第1ヒータ31及び第2ヒータ36は、電力により発熱するもの、温水が通流されるもの、高温の冷媒が通流されるものの、いずれであってもよい。また、第1ヒータ31と第2ヒータ36の熱源は、異なるものであってもよい。
【0026】
[温風通路、冷風通路、ミックス空間]
ケース20の内部には、第1ヒータ31又は第2ヒータ36から流出した空気が流れる温風通路50と、冷却用熱交換器13から流出した空気が第1ヒータ31にも第2ヒータ36にも加熱されずに冷風の状態で流れる冷風通路40と、温風通路50を流れた空気と冷風通路40を流れた空気が合流するミックス空間27(メインミックス空間27)と、が設けられている。
【0027】
[ミックスドア]
図3を参照する。ケース20の内部には、温風通路50を流れる空気と冷風通路40を流れる空気との比率を調整可能なミックスドア60が設けられている。
【0028】
[バタフライドア部]
ミックスドア60は、回転軸62を中心にスイング可能な2つの板状のドア71,81を有するバタフライドア部61を含む。
【0029】
[回転軸、上流側延出ドア、下流側延出ドア]
詳細には、バタフライドア部61は、冷風通路40を流れる空気を基準として、略直交する方向に軸線が延びている回転軸62と、回転軸62から延出し回転軸62よりも上流側を移動可能な上流側延出ドア71と、回転軸62から前記上流側延出ドア71が延出している方向とは略反対方向へ延出している下流側延出ドア81と、を有する。
【0030】
[上流側ヒンジ、上流側従動ドア]
上流側延出ドア71には、上流側ヒンジ72を介して板状の上流側従動ドア73が接続されている。上流側従動ドア73は、上流側延出ドア71の延出した先端、又は、その近傍に設けることが好ましい。
【0031】
[上流側シール部材]
各々のドアは矩形状を呈している。上流側延出ドア71の縁には、上流側中間シール部材77が設けられている。上流側従動ドア73の縁には、上流側先端シール部材78が設けられている。
【0032】
[上流側ドア径、上流側ドア角度]
上流側従動ドア73は、上流側延出ドア71に対して、上流側ヒンジ72を中心にスイング可能である。ケース20の側壁面90,90(
図1も参照)には、上流側従動ドア73のスイングをガイド可能な上流側溝91が形成されている。上流側従動ドア73の先端の近傍には、上流側溝91に対してスライド可能な上流側ピン74が取り付けられている。上流側溝91の形状・位置を適宜変更することにより、上流側従動ドア73の軌跡を適宜変更することができる。
【0033】
回転軸62が回転すると、回転軸62から上流側従動ドア73の上流側先端シール部材78までの上流側ドア径R1が変化する。上流側従動ドア73と上流側延出ドア71とがなす上流側ドア角度θ1も変化可能である。上流側ドア角度θ1は、常に180度以下になっている。以下、上流側延出ドア71、上流側ヒンジ72、及び、上流側従動ドア73を、全体として上流側ドア70とする。
【0034】
[下流側ヒンジ、下流側従動ドア]
下流側延出ドア81には、下流側ヒンジ82を介して板状の下流側従動ドア83が接続されている。なお、下流側従動ドア83は、下流側延出ドア81の延出した先端、又は、その近傍に設けることが好ましい。
【0035】
[下流側シール部材]
下流側延出ドア81の縁には、下流側中間シール部材87が設けられている。下流側従動ドア83の縁には、下流側先端シール部材88が設けられている。下流側従動ドア83の基端83a(回転軸62に近い側の端部)には、下流側第2中間シール部材89が設けられている。なお、下流側第2中間シール部材89は下流側従動ドア83の基端83aに設けられているが、ここに代えて後述する第1支持部25の角25aに設けてもよい。
【0036】
[下流側ドア径、下流側ドア角度]
下流側従動ドア83は、下流側延出ドア81に対して、下流側ヒンジ82を中心にスイング可能である。ケース20の側壁面90,90には、下流側従動ドア83のスイングをガイド可能な下流側溝92が形成されている。下流側従動ドア83の先端の近傍には、下流側溝92に対してスライド可能な下流側ピン84が取り付けられている。下流側溝92の形状・位置を適宜変更することにより、下流側従動ドア83の軌跡を適宜変更することができる。
【0037】
回転軸62が回転すると、回転軸62から下流側従動ドア83の下流側先端シール部材88までの下流側ドア径R2が変化する。下流側従動ドア83と下流側延出ドア81とがなす下流側ドア角度θ2も変化可能である。下流側ドア角度θ2は、常に180度以下になっている。以下、下流側延出ドア81、下流側ヒンジ82、及び、下流側従動ドア83を、全体として下流側ドア80とする。
【0038】
[冷風通路の詳細]
冷風通路40は、冷却用熱交換器13と上流側ドア70のスイング範囲との間の上流側冷風通路41と、上流側冷風通路41から流れてきた冷風が上流側ドア70により分岐してメインミックス空間27へ向かうメインミックス空間側冷風通路42と、上流側冷風通路41から流れてきた冷風が上流側ドア70により分岐して第1ヒータ31へ向かうヒータ側冷風通路43と、ヒータ側冷風通路43から流れてきた冷風が第1ヒータ31を迂回して流れる第1ヒータ迂回路44と、を含む。第1ヒータ迂回路44は、第1ヒータ31と回転軸62との間の領域を含む通路である。
【0039】
[温風通路の詳細]
温風通路50は、第1ヒータ31から流出して第2ヒータ36へ向かう温風が流れるヒータ間温風通路51と、第1ヒータ31から流出した温風が第2ヒータ36を迂回して流れる第2ヒータ迂回路52と、第2ヒータ迂回路52を通過した温風又は第2ヒータ36から流出した温風が流れる下流側温風通路53と、を含む。
【0040】
[第1ヒータと第2ヒータの配置]
第1ヒータ31は、冷風が流入する第1流入面32と、第1流入面32から流入した冷風が第1ヒータ31の内部で加熱されて温風を流出する第1流出面33と、を有する。第2ヒータ36は、第1流出面33から流出した温風が流入する第2流入面37と、第2流入面37から流入した温風が第2ヒータ36の内部で加熱されて温風が流出する第2流出面38と、を有する。
【0041】
第2ヒータ36の第2流出面38は、第1ヒータ31の第1流入面32よりも小さい。第1流出面33を、第2流入面37に対向している対向面33aと、第2流入面37に対向していない非対向面33bと、に区画する。ヒータ間温風通路51は、第1ヒータ31の対向面33aと第2ヒータ36の第2流入面37との間の通路ともいえる。第2ヒータ迂回路52は、第1ヒータ31の非対向面33bよりも下流側の通路ともいえる。
【0042】
なお、第1ヒータ31の第1流出面33と第2ヒータ36の第2流入面37とは、互いに平行である例を図示したが、ケース20内に第2ヒータ迂回路52が設けられる限り、第1ヒータ31に対する第2ヒータ36の位置は非平行としてもよい。
【0043】
[ミックスドアの位置]
回転軸62を回転させると、回転軸62を中心に上流側ドア70及び下流側ドア80がスイングすることにより、ミックスドア60の位置が変化する。
【0044】
[フルクール位置]
図4Aには、温風通路50を流れる空気の比率を最小とするフルクール位置に位置するミックスドア60が示されている。
【0045】
[温度調和位置]
図4Bには、温風通路50を流れる空気の比率および冷風通路40を流れる空気の比率のいずれも最大としない温度調和位置に位置するミックスドア60が示されている。
【0046】
[フルホット位置]
図4Cには、温風通路50を流れる空気の比率を最大とするフルホット位置に位置するミックスドア60が示されている。
【0047】
[下流側従動ドアのスイング]
図3及び
図4A~
図4Cを参照する。ミックスドア60がフルホット位置からフルクール位置へ移動するにつれて、下流側ドア角度θ2及び下流側ドア径R2は共に小さくなる。換言すると、ミックスドア60がフルホット位置からフルクール位置へ移動するにつれて、下流側従動ドア83は、下流側延出ドア81に対して、下流側温風通路53の上流側(第1ヒータ31に近づく方)へスイングする(下流側ドア角度θ2が徐々に小さくなる)。
【0048】
[上流側従動ドアのスイング]
ミックスドア60がフルクール位置からフルホット位置へ移動するにつれて、上流側ドア角度θ1及び上流側ドア径R1は共に小さくなる。換言すると、ミックスドア60がフルクール位置からフルホット位置へ移動するにつれて、上流側延出ドア71に対して、ヒータ側冷風通路43の下流側(第1ヒータ31に近づく方)へスイングする(上流側ドア角度θ1が徐々に小さくなる)。
【0049】
[温度調和位置でのミックスドアの構成と空気の流れ]
図3を参照する。温度調和位置にて、上流側中間シール部材77は、メインメインミックス空間側冷風通路42の下流端の壁面20aから離れている。即ち、メインミックス空間側冷風通路42の下流端は開いている。メインミックス空間側冷風通路42からミックス空間27へ冷風C1が流れ込み可能である。
【0050】
上流側先端シール部材78は、ヒータ側冷風通路43の上流端の壁面20bから離れている。即ち、ヒータ側冷風通路43の上流端は開いている。上流側冷風通路41からヒータ側冷風通路43へ冷風C2が流れ込み可能である。冷風C2の一部は冷風C3として、第1ヒータ31の第1流入面32から第1ヒータ31の内部へ流れ込み可能である。
【0051】
冷風C3の一部は、温風H1として第1流出面33の対向面33aから流出し、ヒータ間温風通路51を流れ、第2ヒータ36の第2流入面37から第2ヒータ36の内部へ流れ込む。第2ヒータ36の内部へ流れ込んだ温風H1はさらに加熱されて、第2ヒータ36の第2流出面38から温風H2として流出し、下流側温風通路53へ流れ込む。
【0052】
下流側第2中間シール部材89は、第1ヒータ31の第1支持部25の角25a(第1流出面33の上端の近傍)から離れている。即ち、第1ヒータ迂回路44の下流端は開いている。
【0053】
冷風C3の一部は、温風H3として第1流出面33の非対向面33bから流出し、第2ヒータ迂回路52を流れる。温風H3と、第1ヒータ迂回路44を流れる冷風C4は混合し、混合風M1となり、第2ヒータ迂回路52の一部にサブミックス空間28が生じる。
【0054】
下流側先端シール部材88は、第2ヒータ36の第2支持部26の角26a(第2流出面38の上端の近傍)から離れている。即ち、第2ヒータ迂回路52の下流端は開いている。サブミックス空間28の混合風M1は、下流側温風通路53へ流れ込み、温風H2と混合し、温風H4となる。
【0055】
下流側中間シール部材87は、下流側温風通路53の下流端の壁面20cから離れている。即ち、下流側温風通路53の下流端は開いている。温風H4は、下流側温風通路53からメインミックス空間27へ流れ込む。
【0056】
このように、ミックスドア60が温度調和位置にあるとき、冷却用熱交換器13から流出した空気は、一部が冷風C1として冷風通路40を流れ、同時に他の一部が温風H4として温風通路50を流れる。このため、ミックスドア60が温度調和位置にあるとき、温風通路50を流れる空気の比率および冷風通路40を流れる空気の比率のいずれも、最大ではない。
【0057】
[フルホット位置でのミックスドアの構成と空気の流れ]
図5を参照する。フルホット位置では、上流側ドア70は最も折れ曲がった状態となる。上流側ドア径R1(
図3)は最短となり、上流側ドア角度θ1(
図3)は最小となる。
【0058】
上流側中間シール部材77は、メインミックス空間側冷風通路42の下流端の壁面20aに密着している。即ち、メインミックス空間側冷風通路42の下流端は閉じられている。上流側先端シール部材78は、ヒータ側冷風通路43の壁面20bから離れている。即ち、ヒータ側冷風通路43の上流端は開いている。上流側冷風通路41からヒータ側冷風通路43へ冷風C5が流入する。
【0059】
フルホット位置では、下流側ドア80は最も展開された(開いた)状態となる。下流側ドア径R2(
図3)は最長となり、下流側ドア角度θ2(
図3)は最大となる。
【0060】
下流側第2中間シール部材89は、第1ヒータ31の第1支持部25の角25aに密着している。即ち、第1ヒータ迂回路44の下流端は閉じている。なお、フルホット位置にて第1ヒータ迂回路44が下流側ドア80のいずれかの部位により閉じられる限り、下流側第2中間シール部材89は、下流側ドア80のなかのいずれかの部位に適宜設けても良い。例えば、下流側第2中間シール部材89は、下流側延出ドア81に設けてもよい(図示せず)。
【0061】
下流側中間シール部材87は、下流側従動ドア83の基端83aに密着している。下流側延出ドア81と、下流側従動ドア83との隙間を介して、第1ヒータ迂回路44から下流側温風通路53へ冷風が流れることを抑制あるいは防止できる。
【0062】
冷風C5は、第1ヒータ迂回路44を流れることなく、ヒータ側冷風通路43を流れて、第1ヒータ31の第1流入面32から第1ヒータ31の内部へ流入する。第1ヒータ31により加熱された冷風C5は、第1ヒータ31の第1流出面33から温風H5として流出する。
【0063】
下流側先端シール部材88は、第2ヒータ36の第2支持部26の角26aに密着している。即ち、第2ヒータ迂回路52の下流端は閉じている。温風H5は、第2ヒータ迂回路52を流れることなく、第2ヒータ36の第2流入面37から第2ヒータ36の内部へ流入する。温風H5は、第2ヒータ36により加熱され、第2ヒータ36の第2流出面38から温風H6として流出する。
【0064】
下流側中間シール部材87は、下流側温風通路53の下流端の壁面20cから離れている。温風H6は、下流側温風通路53からメインミックス空間27へ流れ込む。以上の構成により、上流側冷風通路41からヒータ側冷風通路43へ流れ込む冷風の割合が最大となる。即ち、温風通路50を流れる空気の比率が最大となる。
【0065】
[フルクール位置でのミックスドアの構成と空気の流れ]
フルクール位置では、上流側ドア70は最も展開された状態となる。上流側ドア径R1(
図3)は最長となり、上流側ドア角度θ1(
図3)は最大となる。
【0066】
上流側先端シール部材78は、ヒータ側冷風通路43の上流端の壁面20bに密着している。即ち、ヒータ側冷風通路43の上流端は閉じている。上流側中間シール部材77は、メインミックス空間側冷風通路42の下流端の壁面20aから離れている。即ち、メインミックス空間側冷風通路42の下流端は開いている。
【0067】
なお、上流側中間シール部材77は、上流側延出ドア71の基端71a(回転軸62に近い側の端部)に密着しており、上流側延出ドア71と上流側従動ドア73との隙間を介して、冷風がヒータ側冷風通路43や第1ヒータ迂回路44へ流れ込むことを抑制あるいは防止している。
【0068】
フルクール位置では、下流側ドア80は最も折れ曲がった状態となる。下流側ドア径R2(
図3)は最短となり、下流側ドア角度θ2(
図3)は最小となる。
【0069】
下流側第2中間シール部材89は、第1ヒータ31の第1支持部25の角25aから離れている。即ち、第1ヒータ迂回路44の下流端は開いている。下流側先端シール部材88は、第2ヒータ36の第2支持部26の角26aから離れている。即ち、第2ヒータ迂回路52の下流端は開いている。下流側中間シール部材87は、下流側温風通路53の下流端の壁面20cに密着している。即ち、下流側温風通路53の下流端は閉じている。以上の構成により、上流側冷風通路41からメインミックス空間側冷風通路42へ流れ込む冷風の割合が最大となる。即ち、温風通路50を流れる空気の比率が最小となる。
【0070】
[実施例の効果]
[車両用空調装置の大型化の抑制]
図7Aには、比較例による車両用空調装置100が示されている。この車両用空調装置100のケース120は、冷風を加熱可能な第1ヒータ131及び第2ヒータ136と、ミックスドア110と、を収納している。
【0071】
ミックスドア110は、回転軸101と、回転軸101から上流側へ延出した上流側延出ドア102と、上流側延出ドア102の先端からさらに上流側延出ドア102とは異なる方向へ延びている上流側第2延出ドア103と、上流側延出ドア102の延出方向と略反対に延出した下流側延出ドア104と、下流側延出ドア104の先端からさらに上流側延出ドア102が延びる方向とは異なる方向へ延びている下流側第2延出ドア105と、を有している。
【0072】
ミックスドア110がフルホット位置からフルクール位置へ移動する際に、上流側第2延出ドア103が通過する領域を上流側通過比較領域A1とする。ミックスドア110がフルホット位置からフルクール位置へ移動する際に、下流側第2延出ドア105が通過する領域を下流側通過比較領域A2とする。
【0073】
図7Bには模式的に描かれたミックスドア60が示されている。フルクール位置での下流側ドア径R2は、フルホット位置での下流側ドア径R2よりも短い。さらに、フルクール位置にて、下流側従動ドア83は、下流側延出ドア81に対して下流側温風通路53の上流側へ折れ曲がっている。
【0074】
ミックスドア60がフルホット位置からフルクール位置へ移動する際に、下流側従動ドア83が通過する領域を下流側通過領域S2とする。
図7Aの下流側通過比較領域A2と比較すると、ミックスドア60が移動する際に、下流側通過領域S2が小さくなるため、下流側温風通路53の壁面をミックスドア60に近づけること(温風通路50の壁面をミックスドア60の回転軸62に近づけること)ができ、ケース20のなかの下流側温風通路53の近傍を小型化して、車両用空調装置10の大型化を抑制できる。
【0075】
同様に、フルホット位置での上流側ドア径R1は、フルクール位置での上流側ドア径R1よりも短い。さらに、フルホット位置にて、上流側従動ドア73は、上流側延出ドア71に対してメインミックス側冷風通路42の上流側(第1ヒータ31に近づく方向)へ折れ曲がっている。
【0076】
ミックスドア60がフルホット位置からフルクール位置へ移動する際に、上流側従動ドア73が通過する領域を上流側通過領域S1とする。
図7Aの上流側通過比較領域A1と比較すると、ミックスドア60が移動する際に、上流側通過領域S1が小さくなるため、メインミックス側冷風通路42の壁面をミックスドア60に近づけること(冷風通路40の壁面をミックスドア60の回転軸62に近づけること)ができ、ケース20のなかのメインミックス側冷風通路42の近傍を小型化して、車両用空調装置10の大型化を抑制できる。
【0077】
[通気抵抗の上昇の抑制]
ミックスドア60がフルホット位置からフルクール位置へ移動するにつれて、下流側従動ドア83は、下流側延出ドア81に対して、下流側温風通路53の上流側へスイングする。即ち、ミックスドア60がフルホット位置からフルクール位置へ移動するにつれて、下流側ドア径R2が徐々に小さくなる。
【0078】
ミックスドア60がフルクール位置へと移動するのに伴って徐々に下流側従動ドア83が折れ曲がっていくため、下流側温風通路53の壁面も、徐々にミックスドア60に近づけることができる。下流側温風通路53の通気抵抗の上昇を抑制しつつケース20を小型化できる。
【0079】
同様に、ミックスドア60がフルクール位置からフルホット位置へ移動するにつれて、上流側従動ドア73は、上流側延出ドア71に対して、メインミックス側冷風通路42の上流側へスイングする。即ち、ミックスドア60がフルクール位置からフルホット位置へ移動するにつれて、上流側ドア径R1が徐々に小さくなる。
【0080】
ミックスドア60がフルホット位置へと移動するのに伴って徐々に上流側従動ドア73が折れ曲がっていくため、冷風通路40の通路を確保しつつ、メインミックス側冷風通路42の壁面も、徐々にミックスドア60に近づけることができる。メインミックス側冷風通路42の通気抵抗の上昇を抑制しつつケース20を小型化できる。
【0081】
[暖房性能の向上]
図5を参照する。フルホット位置にて、第1ヒータ迂回路44の下流端と、第2ヒータ迂回路52の下流端は、共に閉じている。詳細には、下流側従動ドア83は、下流側延出ドア81に対して下流側ドア径R2が長くなるように開くとともに、第2ヒータ迂回路52を流れる空気の比率を最小とする。即ち、上流側冷風通路41からヒータ側冷風通路43へ流れ込んだ冷風C5のうち、第1ヒータ31及び第2ヒータ36の双方に加熱される空気の割合が最大となる。フルホット位置での暖房効率を高めることができる。
【0082】
[中間シール部材の部品点数の減少]
図3を参照する。上流側中間シール部材77は、フルホット位置にてケース20に接触可能なフルホット側シール部77aと、フルクール位置にて上流側延出ドア71の基端71aに接触可能なフルクール側シール部77bと、が一体となり構成されている。フルホット側シール部77aと、フルクール側シール部77bとを別個に設けても良いが、一体化させることにより部品点数を減らすことができる。
【0083】
同様に、下流側中間シール部材87は、フルホット位置にてヒータ支持部29に接触可能なフルホット側シール部87aと、フルクール位置にて下流側従動ドア83の基端83aに接触可能なフルクール側シール部87bと、が一体となり構成されている。フルクール側シール部87aと、フルホット側シール部87bとを別個に設けても良いが、一体化させることにより部品点数を減らすことができる。
【0084】
本発明の作用・効果を奏する限り、本発明は実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の車両用空調装置は、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0086】
10…車両用空調装置
13…冷却用熱交換器
20…ケース
27…メインミックス空間(ミックス空間)
31…第1ヒータ
36…第2ヒータ
40…冷風通路
50…温風通路
60…ミックスドア
61…バタフライドア部
71…上流側延出ドア
72…上流側ヒンジ
73…上流側従動ドア
81…下流側延出ドア
82…下流側ヒンジ
83…下流側従動ドア
R1…上流側ドア径
R2…下流側ドア径
【国際調査報告】