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特表2024-525078MARC1遺伝子を標的にするRNAi製剤及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】MARC1遺伝子を標的にするRNAi製剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20240702BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240702BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240702BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240702BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240702BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K31/7125
A61K31/712
A61P1/16
A61P43/00 105
A61K48/00
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500173
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2022009984
(87)【国際公開番号】W WO2023282704
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089864
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518028055
【氏名又は名称】オリックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソン ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チョン ヨン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、MARC1(mitochondrial amidoxime reducing component 1)遺伝子を標的にするRNAi製剤及びその用途に係り、さらに詳細には、MARC1 mRNA配列に対して配列相補性を有するアンチセンスストランド、及び該アンチセンスストランドに対して配列相補性を有するセンスストランドを含むRNAi製剤、及びRNAi製剤を含む非アルコール性脂肪肝疾患のような肝疾患の予防用または治療用の薬学組成物に関する。
【選択図】図29
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MARC1(mitochondrial amidoxime reducing component 1)mRNA配列に対して配列相補性を有する、長さが19ないし21ntであるヌクレオチド(nt)であるアンチセンスストランド、及び前記アンチセンスストランドに対して配列相補性を有する、長さが15ないし17ntであるセンスストランドを含むRNAi製剤であり、
前記アンチセンスストランド5’末端及び前記センスストランド3’末端は、平滑末端(blunt end)を形成する、RNAi製剤。
【請求項2】
前記センスストランドは、表1、表10、表11、表12、表13及び表14に列挙されたアンチセンスストランド配列のうちから選択された配列を有する、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項3】
前記センスストランドは、配列番号149、配列番号159、配列番号177、配列番号179、配列番号183、配列番号197、配列番号199、配列番号227、配列番号247、配列番号251、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号273、配列番号285、配列番号287、配列番号331、配列番号353、配列番号387、配列番号391、配列番号399、配列番号423、配列番号429、配列番号431、配列番号435、配列番号439、配列番号443、配列番号445、配列番号447及び配列番号527によってなる群のうちから選択されるいずれか一つのものである、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項4】
前記センスストランドは、配列番号61、配列番号149、配列番号183、配列番号227、配列番号423、配列番号431、配列番号435、配列番号439、配列番号447、配列番号527及び配列番号551によってなる群のうちから選択されるいずれか一つのものである、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項5】
前記アンチセンスストランドは、表1、表10、表11、表12、表13及び表14に列挙されたセンスストランド配列のうちから選択された配列を有する、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項6】
前記アンチセンスストランドは、配列番号150、配列番号160、配列番号178、配列番号180、配列番号184、配列番号198、配列番号200、配列番号228、配列番号248、配列番号252、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号274、配列番号286、配列番号288、配列番号332、配列番号354、配列番号388、配列番号392、配列番号400、配列番号424、配列番号430、配列番号432、配列番号436、配列番号440、配列番号444、配列番号446、配列番号448及び配列番号528によってなる群のうちから選択されるいずれか一つのものである、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項7】
前記アンチセンスストランドは、配列番号62、配列番号150、配列番号184、配列番号228、配列番号424、配列番号432、配列番号436、配列番号440、配列番号448、配列番号528及び配列番号552によってなる群のうちから選択されるいずれか一つのものである、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項8】
前記RNAi製剤は、MARC1の発現を抑制する、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項9】
前記センスストランドは、3’末端にN-アセチルガラクトサミン(GalNAc:N-acetylgalactosamine)誘導体と結合されている、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項10】
前記センスストランドまたは前記アンチセンスストランドは、1以上の化学的変形(chemical modification)を含む、請求項1に記載のRNAi製剤。
【請求項11】
前記センスストランドは、下記のところから選択された1以上の化学的変形を含む、請求項10に記載のRNAi製剤:
5’末端から隣接した2ないし4個のヌクレオチド結合を、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ボラノホスフェート(boranophosphate)、またはメチルホスホネート(methylphosphonate)で変形;
1個以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置において、-OH基が、-CH3(methyl)、-OCH3(methoxy)、-NH2、-F、-O-2-メトキシエチル-O-プロピル、-O-2-メチルチオエチル(methylthioethyl)、-O-3-アミノプロピルまたは-O-3-ジメチルアミノプロピルで置換;及び
3’末端における、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc:N-acetylgalactosamine)誘導体または細胞浸透ペプチドとの結合。
【請求項12】
前記アンチセンスストランドは、下記のところから選択された1以上の化学的変形を含む、請求項10に記載のRNAi製剤:
3’末端または5’末端から隣接した2個ないし7個のヌクレオチド結合を、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ボラノホスフェート(boranophosphate)またはメチルホスホネート(methylphosphonate)で変形;
1個以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置において、-OH基が、-CH3(methyl)、-OCH3(methoxy)、-NH2、-F、-O-2-メトキシエチル-O-プロピル、-O-2-メチルチオエチル(methylthioethyl)、-O-3-アミノプロピルまたは-O-3-ジメチルアミノプロピルで置換されること;及び
5’末端における、リン酸基(phosphate group)、E-ビニルホスホネート(E-vinylphosphonate)または細胞浸透ペプチドとの結合。
【請求項13】
前記RNAi製剤は、
センスストランドまたはアンチセンスストランドにおいて、3’末端または5’末端から隣接した2個ないし7個のヌクレオチド結合をし、
ホスホロチオエート(phosphorothioate)で変形されること;
センスストランドまたはアンチセンスストランドのうち1個以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置において、-OH基が-OCH3(methoxy)または-Fで置換される変形;
センスストランド3’末端における、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc:N-acetylgalactosamine)誘導体との結合;及び
アンチセンスストランド5’末端における、リン酸基(phosphate group)またはE-ビニルホスホネート(E-vinylphosphonate)との結合;によって構成された群のうちから選択された1以上の変形を含む、請求項10に記載のRNAi製剤。
【請求項14】
前記センスストランドは、表2、表15、表16及び表17に列挙されたアンチセンスストランド配列のうちから選択された配列を有する、請求項10に記載のRNAi製剤。
【請求項15】
前記アンチセンスストランドは、表2、表15、表16及び表17に列挙されたアンチセンスストランド配列のうちから選択された配列を有する、請求項10に記載のRNAi製剤。
【請求項16】
請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載のRNAi製剤を有効成分として含む、肝疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項17】
前記肝疾患は、脂肪肝、肝線維症または肝硬変である、請求項16に記載の肝疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項18】
前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease)である、請求項17に記載の肝疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項19】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、単純脂肪肝症(simple steatosis)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)である、請求項18に記載の肝疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載のRNAi製剤を個体に投与する段階を含む、肝疾患を予防または治療する方法。
【請求項21】
肝疾患を予防または治療するための医薬の製造のための請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載のRNAi製剤の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MARC1(mitochondrial amidoxime reducing component 1)遺伝子を標的にするRNAi製剤及びその用途に係り、さらに詳細には、MARC1 mRNA配列に対して配列相補性を有するアンチセンスストランド、及び前記アンチセンスストランドに対して配列相補性を有するセンスストランドを含むRNAi製剤、及び前記RNAi製剤を含む非アルコール性脂肪肝疾患のような肝疾患の予防用または治療用の薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近になり、肥満人口増加による代謝症侯群の有病率上昇と共に、非アルコール性脂肪肝疾患の有病率も上昇勢にある。脂肪肝は、肝細胞内に中性脂肪が蓄積される疾患であり、肥満の合併症として誘発されるか、あるいはその他多様な原因、例えば、アルコール、糖尿、栄養不良症、薬物の濫用などによって誘発されると報告されているが、大きく見て、過多なアルコール摂取によるアルコール性脂肪肝疾患と、アルコール摂取とかかわらず、肝内に中性脂肪が蓄積される非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease)とに区分され、該非アルコール性脂肪肝疾患には、単純脂肪肝症(simple steatosis)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)とが含まれる。
【0003】
単純脂肪肝症は、比較的予後が良好であるが、脂肪の蓄積がはなはだしくなれば、炎症、すなわち、脂肪肝炎(steatohepatitis)に進行し、広範囲な脂肪肝炎を伴う肝臓においては、肝細胞の壊死が示され、また星状細胞(stellate cell)が活性化されて繊維化が起こることになるが、特に肝静脈ではないという部位において、洞様欠陥周辺線維化(perisinusoidal fibrosis)がはなはだしく示される。従って、脂肪肝炎を放置すれば、肝繊維化または肝硬変に発展し、予後が不良になる。非アルコール性脂肪肝炎患者の15~50%において、肝臓の繊維化または硬変が示され、繊維化患者の30%においては、10年後に肝硬変が示される。
【0004】
非アルコール性脂肪肝疾患は、肥満、心臓疾患、糖尿病のような多様な代謝症侯群と密接に関連しており、そのような側面において、インスリン抵抗性改善剤、抗酸化剤、高脂血症治療剤、肝庇護薬、アンジオテンシンII受容体の拮抗剤のような、代謝症侯群に対する抑制効果がある薬剤が臨床的に試みされた。しかしながら、これまでのところ、非アルコール性脂肪肝疾患治療のための臨床的証拠を有する薬物の開発がなされていない実情であり、現在使用中の薬物は、いずれも次善策として選択されうる適応外(off-label)薬物だけが存在するのみであるが、そのような既存の適応外(off-label)薬物は、臨床的根拠が不足しており、安全性問題などにより、使用が制限的であるという限界がある。例えば、インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾン(pioglitazone)は、非アルコール性脂肪肝炎治療剤として有望であったが、臨床において、肝線維化に対する実在的な改善効果が示されなかっただけではなく、骨折リスク、体重増加、心不全の悪化及び発症のような副作用問題点により、治療剤としての判定基準を明確に満足させることができなかった。そのように、非アルコール性脂肪肝疾患に対して承認された治療剤が全くない状況において、最近、米国食品医薬局(FDA)は、非アルコール性脂肪肝炎の臨床指標として、炎症低減、肝繊維化低減、非アルコール性脂肪肝炎症状の緩和などを提示していた。
【0005】
なお、RNA干渉(RNA interference)現象を利用した疾病の治療は、mRNAをターゲットにし、遺伝子発現を翻訳レベル(translational level)で調節する短い干渉RNA(siRNA:small interfering RNA)を利用するために、さらに安全に疾病を治療する治療剤として注目されている。
【0006】
それにより、本発明者らは、非アルコール性脂肪肝炎の臨床指標に対する改善効果を示す新たな安全な薬物を開発するために、鋭意研究努力した結果、RNA干渉技術を利用したRNA製剤を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、MARC1の発現を特異的に抑制するRNAi製剤を提供するところにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記RNAi製剤を含む、肝疾患の予防用または治療用の薬学組成物、または肝疾患の予防方法または治療方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、一態様は、MARC1(mitochondrial amidoxime reducing component 1)mRNA配列に対して配列相補性を有する、長さが19ないし21ntであるヌクレオチド(nt)であるアンチセンスストランド、及び前記アンチセンスストランドに対して配列相補性を有する、長さが15ないし17ntであるセンスストランドを含むRNAi製剤であり、前記アンチセンスストランド5’末端及び前記センスストランド3’末端は、平滑末端(blunt end)を形成するRNAi製剤を提供する。
【0010】
他の態様は、前記RNAi製剤を有効成分として含む、肝疾患の予防用または治療用の薬学組成物を提供する。
【0011】
さらに他の態様は、前記RNAi製剤を個体に投与する段階を含む、肝疾患の予防方法または治療方法を提供する。
【0012】
さらに他の態様は、肝疾患を予防または治療するための医薬の製造のための前記RNAi製剤の用途を提供する。
【発明の効果】
【0013】
一態様によるRNAi製剤は、非特異的免疫反応、オフターゲット効果のような副作用を緩和させながら、MARC1をエンコーディングするmRNAに結合し、それを分解することにより、前記タンパク質の発現を抑制することができる。
【0014】
また、一態様によるRNAi製剤は、肝細胞表面受容体をターゲッティングし、肝組織内脂肪の蓄積緩和、炎症低減、肝繊維化低減、非アルコール性脂肪肝炎症状の緩和のような効果を示すので、非アルコール性脂肪肝疾患、肝線維症、肝硬変などを含む肝疾患の標的治療剤として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一様相によるMARC1 asiRNA 50種を、それぞれ10nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図2】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 23種を、それぞれ200nMの濃度で、C57BL/6マウスに由来する一次肝細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図3】一様相による、OLX-003-1またはOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#3-1、#31-1)、MARC1 mRNA及びMARC2 mRNAの発現レベルを確認したものであり、Aは、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果であり、Bは、MARC2 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図4】一様相による、OLX-003-1またはOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#3-1、#31-1)、肝臓の外観を肉眼で確認した結果である。
図5】一様相による、OLX-003-1またはOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#3-1、#31-1)、肝実質内の脂肪液胞のレベルを、H&E染色法を介して確認した結果である。
図6】一様相による、OLX-003-1またはOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#3-1、#31-1)、肝実質内の脂肪液胞のレベルをオイルレッドO染色法を介して確認した結果である。
図7】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#031-1)、MARC1 mRNA及びMARC2 mRNAの発現レベルを確認したものであり、Aは、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果であり、Bは、MARC2 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図8】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#031-1)、肝臓の外観を肉眼で確認した結果である。
図9】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#031-1)、肝実質内の脂肪液胞のレベルを、H&E染色法を介して確認した結果である。
図10】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#31-1)、肝実質内の脂肪液胞及びコラーゲン沈着のレベルを、ピクロシリウスレッド染色法を介して確認した結果である。
図11】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#031-1)、肝繊維化関連因子の発現レベルを評価したものであり、Aは、α-SMA mRNAの発現レベルを確認した結果であり、Bは、Col1α1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図12】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#031-1)、肝組織内の中性脂肪のレベルを確認した結果である。
図13】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#031-1)、肝損傷指標因子の変化を確認したものであり、Aは、血清内ASTレベルを確認した結果であり、Bは、血清内ALTレベルを確認した結果であり、Cは、血清内AST/ALTの比率を算出した結果である。
図14】一様相によるOLX-031-1を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(#31-1)、血清内脂質指標物質の変化を確認したものであり、Aは、コレステロールのレベルを確認した結果であり、Bは、中性脂肪のレベルを確認した結果であり、Cは、低密度脂質タンパク質のレベルを確認した結果であり、Dは、高密度脂質タンパク質のレベルを確認した結果である。
図15】一様相によるOLX-031-2を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)、肝実質内の脂肪液胞及び炎症巣のレベルを、H&E染色法を介して確認した結果である。
図16】一様相によるOLX-031-2を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)、肝実質内の脂肪液胞及びコラーゲン沈着のレベルを、ピクロシリウスレッド染色法を介して確認した結果である。
図17】一様相によるOLX-031-2を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)、PSR染色領域(%)を比較し、肝実質内のコラーゲン成分の含量を比較した結果である。
図18】一様相によるOLX-031-2を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)、肝繊維化関連因子の発現レベルを評価したものであり、Aは、Col1α1 mRNAの発現レベルを確認した結果であり、Bは、α-SMA mRNAの発現レベルを確認した結果であり、Cは、TIMP1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図19】一様相によるOLX-031-2を、高脂肪食餌が提供された動物モデルに投与した後(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図20A】一様相によるMARC1 asiRNA 134種のうち一部を、それぞれ1nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図20B】一様相によるMARC1 asiRNA 134種のうち一部を、それぞれ1nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図20C】一様相によるMARC1 asiRNA 134種のうち一部を、それぞれ1nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図21】一様相によるMARC1 asiRNA 41種を、それぞれ0.1nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図22】一様相によるMARC1 asiRNA 30種を、それぞれ1nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1タンパク質の発現レベルを確認した結果である。
図23】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 41種を、それぞれ100nMの濃度で、Huh7細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図24】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 41種を、それぞれ500nMの濃度で、ヒト由来の一次肝細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図25】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 41種を、それぞれ20nMまたは100nMの濃度で、ヒト由来の一次肝細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図26】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 17種を、それぞれ10nMまたは100nMの濃度で、ヒト由来の一次肝細胞に処理した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図27】一様相による、OLX-031-2またはOLX-075-2を、それぞれ2.5mpk、5mpkまたは10mpkの濃度でサルに投与した後、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図28】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 9種を、pSELECT-mSEAP-hMARC1によって形質感染された動物モデルに投与した後、SEAPレポーター蛍光のレベルを介し、ヒトMARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
図29】一様相によるMARC1 GalNAc-asiRNA 10種をpsiCHECK-2-hMARC1によって形質感染された動物モデルに投与した後、ルシフェラーゼレポーター蛍光のレベルを介し、ヒトMARC1 mRNAの発現レベルを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用されうる。すなわち、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、下記のところで記述された具体的な敍述により、本出願の範疇が制限されるとすることはない。
【0017】
一様相は、MARC1(mitochondrial amidoxime reducing component 1)mRNA配列に対して配列相補性を有する、長さが19ないし21ntであるヌクレオチド(nt)であるアンチセンスストランド、及び前記アンチセンスストランドに対して配列相補性を有する、長さが15ないし17ntであるセンスストランドを含むRNAi製剤であり、前記アンチセンスストランド5’末端及び前記センスストランド3’末端は、平滑末端(blunt end)を形成するRNAi製剤を提供する。
RNAi製剤
【0018】
本明細書において用語「RNA干渉(RNAi:RNA interference)」は、目的遺伝子のmRNAと相同である配列を有するストランドと、それと相補的な配列を有するストランドとによって構成される二本鎖RNA(dsRNA)を細胞などに導入し、目的遺伝子mRNAの分解を誘導することにより、目的遺伝子の発現を抑制するメカニズムを意味する。
【0019】
本明細書において用語「RNAi製剤(RNAi agents)」または「RNAi誘導用核酸分子(nucleic acid molecules inducing RNAi)」は、配列特異的方式でもって、前記RNA干渉を媒介することにより、遺伝子発現またはウイルス複製を抑制または下向き調節することができる任意の製剤または核酸分子を指称する。前述の用語は、個別核酸分子、複数の前記核酸分子、または前記核酸分子のプール(pool)のいずれをも称しうる。一具体例において、前記RNAi製剤は、siRNAでもある。
【0020】
本明細書において用語「短い干渉RNA(siRNA:small interfering RNA)」は、配列特異的に効率的な遺伝子発現抑制(gene silencing)を媒介する短い二本鎖RNA(dsRNA)を意味する。
【0021】
本明細書において用語「遺伝子」とは、最広義の意味と見なされなければならならず、構造タンパク質または調節タンパク質を暗号化することができる。このとき、該調節タンパク質は転写因子、熱衝撃タンパク質、またはDNA/RNA複製、転写及び/または翻訳に関与するタンパク質を含む。本発明において、発現抑制の対象になる目的遺伝子は、ウイルスゲノムに内在したものであり、動物遺伝子に統合されるか、あるいは染色体外構成要素として存在しうる。
【0022】
本明細書において用語「アンチセンスストランド(antisense strand)」は、関心ある目的核酸(target nucleic acid)に対し、実質的または100%相補的なポリヌクレオチドであり、例えば、mRNA(messenger RNA)、mRNAではないRNA配列(例:microRNA、piwiRNA、tRNA、rRNA及びhnRNA)、あるいはコーディングDNA配列または非コーディングDNA配列と全体として、または一部として相補的でもある。
【0023】
本明細書において用語「センスストランド(sense strand)」は、目的核酸と同一の核酸配列を有するポリヌクレオチドであり、mRNA(messenger RNA)、mRNAではないRNA配列(例:microRNA、piwiRNA、tRNA、rRNA及びhnRNA)、あるいはコーディングDNA配列または非コーディングDNA配列と全体として、または一部として同一のポリヌクレオチドを言う。
【0024】
本明細書において用語「相補性(complementarity)」または「相補的な(complementary)」は、当業界で一般的に許容される意味を称する。前記用語は、一般的に、伝統的なワトソン・クリック(Watson-Crick)、または本明細書に記述された他の非伝統的類型の結合により、1つの核酸配列と、他の核酸配列との水素結合の形成または存在を称しうる。完璧な相補性は、核酸配列の全ての隣接残基が、第2核酸配列において、同一数の隣接残基と水素結合するということを意味しうる。部分相補性は、核酸分子内において、多様なミスマッチ(mismatch)または非塩基対ヌクレオチド(non-based paired nucleotides)(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上のミスマッチ、例えば、1個ないし3個のミスマッチ、非ヌクレオチドリンカ(non-nucleotide linker)、または非塩基対ヌクレオチド)を含むものでもある。前記部分相補性は、核酸分子のセンスストランドとアンチセンスストランドとの間において、または核酸分子のアンチセンスストランドと、それと相応する標的核酸分子との間において、バルジ(bulges)、ループ(loops)、突出(overhang)または平滑末端(blunt end)をもたらしうる。
【0025】
本明細書において用語―平滑末端(blunt end)」は、当業界において一般的に許容される意味を称する。本明細書のRNAi製剤または核酸分子と係わり、前記用語は、突出ヌクレオチドがない、二本鎖siRNA分子の末端を称しうる。本明細書に記載されたsiRNA分子は、アンチセンスストランド5’末端及びセンスストランド3’末端は、平滑末端(blunt end)を形成するものでもある。
MARC1の発現を抑制するためのRNAi製剤
【0026】
「MARC1(mitochondrial amidoxime reducing component 1)は、哺乳動物のモリブデン(molybdenum)含有酵素であり、MTARC1またはMOSC1とも称され、MARC1酵素の欠乏は、低い血中コレステロール数値・血中肝酵素数値、肝脂肪低減、及び肝硬変発病危険低減と関連があり、肝疾患に対する潜在的な治療標的にもなると知られている。前記MARC1タンパク質は、天然に存在する野生型MARC1、及びその機能的変異体を含むとも解釈され、前述のMARC1タンパク質、またはそれをコーディングする遺伝子の配列は、米国国立保健院のGenBankのような公知のデータベースから得ることができる。
【0027】
本明細書において用語「発現(expression)」は、当業界において一般的に許容される意味を称する。前記用語は、一般的に、遺伝子が窮極的に、タンパク質を生成する過程を意味しうる。前記発現は、転写、スプライシング、転写後変形または翻訳を含むが、それらに制限されるものではない。本明細書で使用されているように、発現レベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルの検出によって決定されうるか、あるいはモニタリングされうる。
【0028】
個体におけるMARC1遺伝子発現と係わって使用された用語「抑制」または「低減」は、非処理群または正常対照群に対比し、統計的に有意な低減を称する。前記低減は、例えば、最小30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、60%、65%、70%、70%、80%、85%、90%または95%以上でもあるが、それは、検出方法または測定方法により、検出レベル以下でもある。
【0029】
siRNAは、短い干渉RNA(small interfering RNA)であり、RNAi(RNA interference)作用に関与する。RNAiは、1998年、カエノラブディティス・エレガンスで最初に発見された細胞内遺伝子調節メカニズムであり、その作用メカニズムは、細胞内に投入されたRNA二本鎖において、アンチセンスストランドが標的遺伝子のmRNAに相補的に結合することにより、標的遺伝子分解を誘導すると知られており、最近、最も注目されている新薬開発候補技術である。
【0030】
ただし、そのような可能性とは反対に、siRNAの副作用及び短所が続けて報告されている。RNAi基盤治療剤の開発がなされるためには、1)効果的な伝達システムの不在、2)オフターゲット効果、3)免疫反応誘導、4)細胞内RNAi機構飽和のような障壁を克服しなければならない必要性がある。siRNAが、標的遺伝子の発現を直接調節することができる効果的な方法にもかかわらず、そのような問題により、治療剤開発に困難を経験している。それにかかわり、非対称siRNA(asiRNA:asymmetric shorter duplex siRNA)は、従来のsiRNAが有する(19+2)構造に比べ、短い二重螺旋長を有する非対称RNAi誘導構造である。既存のsiRNA構造技術において確認されるオフターゲット効果、RNAiメカニズムの飽和、TLR3による免疫反応のような問題点を克服した技術であり、それにより、副作用が低いRNAi新薬開発が可能である。
【0031】
それを基に、本実施例において、センスストランド、及び前記センスストランドと相補的なアンチセンスストランドを含む非対称siRNAを提示し、一実施例によるsiRNAは、オフターゲット効果、RNAiメカニズムの飽和のような問題を起こさ図、安定して高い伝達効率を維持しながら、目的とする程度に、有効にMARC1遺伝子に対する発現を抑制することができる。
【0032】
一実施例においては、MARC1を標的にする非対称siRNA(asiRNA:asymmetric siRNA)をデザインして作製し、MARC1を発現する細胞に、前記asiRNAをトランスフェクション(transfection)させた後、ノックダウン効率(knockdown efficiency)にすぐれるRNAi誘導用核酸分子、すなわち、MARC1 asiRNAを選別した。
【0033】
一具体例において、前記RNAi製剤は、前記センスストランドは、15ないし17ntの長さを有し、前記アンチセンスストランドは、19ないし21ntの長さを有することを特徴とするのである。さらに望ましくは、前記センスストランド長は、16ntであり、それと相補的なアンチセンスストランド長は、19nt、20ntまたは21ntであることを特徴とするのでもあるが、それに制限されるものではない。
【0034】
前記アンチセンスストランド5’末端及び前記センスストランド3’末端は、平滑末端(blunt end)を形成するものでもある。該アンチセンスストランド3’末端は、例えば、2ないし6ntのオーバーハング(overhang)を含むものでもある。
【0035】
一具体例において、前記センスストランドは、表1、表10、表11、表12、表13及び表14に列挙されたアンチセンスストランド配列のうちから選択された配列でもあり、前記アンチセンスストランドは、表1、表10、表11、表12、表13及び表14に列挙されたセンスストランド配列のうちから選択された配列を含むものでもある。
【0036】
一具体例において、前記センスストランドは、例えば、配列番号149、配列番号159、配列番号177、配列番号179、配列番号183、配列番号197、配列番号199、配列番号227、配列番号247、配列番号251、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号273、配列番号285、配列番号287、配列番号331、配列番号353、配列番号387、配列番号391、配列番号399、配列番号423、配列番号429、配列番号431、配列番号435、配列番号439、配列番号443、配列番号445、配列番号447及び配列番号527によってなる群のうちから選択されるいずれか一つでもあり、例えば、配列番号61、配列番号149、配列番号183、配列番号227、配列番号423、配列番号431、配列番号435、配列番号439、配列番号447、配列番号527及び配列番号551によってなる群のうちから選択されるいずれか一つでもある。
【0037】
一具体例において、前記アンチセンスストランドは、例えば、配列番号150、配列番号160、配列番号178、配列番号180、配列番号184、配列番号198、配列番号200、配列番号228、配列番号248、配列番号252、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号274、配列番号286、配列番号288、配列番号332、配列番号354、配列番号388、配列番号392、配列番号400、配列番号424、配列番号430、配列番号432、配列番号436、配列番号440、配列番号444、配列番号446、配列番号448及び配列番号528によってなる群のうちから選択されるいずれか一つでもあり、例えば、配列番号62、配列番号150、配列番号184、配列番号228、配列番号424、配列番号432、配列番号436、配列番号440、配列番号448、配列番号528及び配列番号552によってなる群のうちから選択されるいずれか一つでもある。
【0038】
化学的な変形が導入されたRNAi製剤
前記RNAi製剤において、前記センスストランドまたは前記アンチセンスストランドは、1以上の化学的変形(chemical modification)を含むものでもある。
【0039】
一般的なsiRNAは、ホスフェートバックボーン構造による高い負電荷、及び高い分子量などの理由により、細胞膜を通過することができ図、血液において、早く分解されて除去され、実際の標的部位に、RNAi誘導のための十分な量を伝達するのに困難が伴う。現在、インビトロ伝達の場合、陽イオン性脂質(cationic lipids)と陽イオンポリマー(cationic polymers)とを利用した高効率の伝達(delivery)方法が多く開発されているが、インビボの場合には、インビトロほどの高効率でsiRNAを伝達し難く、生体内に存在する多様なタンパク質との相互作用により、siRNA伝達効率が低減する問題点がある。
【0040】
それにより、本実施例においては、非対称siRNA構造に化学的変形を導入し、向上された肝細胞標的伝達能(hepatocyte targeted delivery ability)を有するRNAi製剤を提示し、さらに具体的には、別途の伝達体なしに、効果的に肝細胞内伝達がなされうる非対称siRNA構造体(GalNAc-asiRNA:GalNAc asymmetric siRNA)を提示する。
【0041】
本発明において、前記センスストランドまたは前記アンチセンスストランドにおいて、化学的変形は、以下に構成された群のうちから選択された1以上を含むものでもある:N-アセチルガラクトサミン(GalNAc:N-acetylgalactosamine)誘導体との結合;ヌクレオチド結合を、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ボラノホスフェート(boranophosphate)またはメチルホスホネート(methylphosphonate)で変形;ヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置における-OH基が、-CH(methyl)、-OCH(methoxy)、-NH、-F、-O-2-メトキシエチル-O-プロピル、-O-2-メチルチオエチル(methylthioethyl)、-O-3-アミノプロピルまたは-O-3-ジメチルアミノプロピルで置換されること;リン酸基(phosphate group)、E-ビニルホスホネート(E-vinylphosphonate)または細胞浸透ペプチドの結合。
【0042】
一具体例において、前記N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体は、下記化学式1の構造を有するものでもある。N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体は、肝細胞表面のASGPR(asialoglycoprotien receptor)を認識し、RNAi製剤が肝細胞内に流入されるように一助となる役割を行うこと、すなわち、ASGPRターゲッティングモイエティとして作用するので、前記N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体が末端に結合されたRNAi製剤は、肝細胞への伝達性が向上され、肝疾患に対して効果的な標的治療を提供するものでもある。
【化1】
【0043】
一具体例において、前記センスストランドは、下記のところから選択された1以上の化学的変形を含むものでもある:5’末端から隣接した2ないし4個のヌクレオチド結合を、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ボラノホスフェート(boranophosphate)またはメチルホスホネート(methylphosphonate)で変形;1個以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置において、-OH基が、-CH(methyl)、-OCH(methoxy)、-NH、-F、-O-2-メトキシエチル-O-プロピル、-O-2-メチルチオエチル(methylthioethyl)、-O-3-アミノプロピルまたは-O-3-ジメチルアミノプロピルで置換されること;及び3’末端における、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc:N-acetylgalactosamine)誘導体または細胞浸透ペプチドとの結合。
【0044】
一具体例において、前記アンチセンスストランドは、下記のところから選択されるいずれか1以上の化学的変形を含むものでもある:3’末端または5’末端から隣接した2ないし7個のヌクレオチド結合を、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ボラノホスフェート(boranophosphate)またはメチルホスホネート(methylphosphonate)で変形;1個以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置において、-OH基が、-CH(methyl)、-OCH3(methoxy)、-NH、-F、-O-2-メトキシエチル-O-プロピル、-O-2-メチルチオエチル(methylthioethyl)、-O-3-アミノプロピルまたは-O-3-ジメチルアミノプロピルで置換;及び5’末端における、リン酸基(phosphate group)、E-ビニルホスホネート(E-vinylphosphonate)または細胞浸透ペプチドとの結合。
【0045】
他の具体例において、前記RNAi製剤は、センスストランドまたはアンチセンスストランドにおいて、3’末端または5’末端から隣接した2ないし7個のヌクレオチド結合を、ホスホロチオエート(phosphorothioate)で変形;センスストランドまたはアンチセンスストランドのうち1個以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置において、-OH基が-OCH3(methoxy)または-Fで置換される変形;及びセンスストランド3’末端における、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc:N-acetylgalactosamine)誘導体との結合;及びアンチセンスストランド5’末端における、リン酸基(phosphate group)またはE-ビニルホスホネート(E-vinylphosphonate)結合;によって構成された群のうちから選択された1以上の変形を含むものでもある。
【0046】
一具体例において、前記センスストランドは、表2、表15、表16及び表17に列挙されたアンチセンスストランド配列のうちから選択された配列でもあり、前記アンチセンスストランドは、表2、表15、表16及び表17に列挙されたセンスストランド配列のうちから選択された配列を含むものでもある。
【0047】
一具体例において、前記センスストランドは、下記表の(A)ないし(O)によって構成された群のうちから選択されたいずれか一つであり、前記アンチセンスストランドは、下記表の(a)ないし(q)で構成された群のうちから選択されたいずれか一つであることを特徴とする。
【0048】
【0049】
前記配列において、*は、ホスホロチオエート結合(phosphorothioated bond)を意味し、mは、2’-O-メチル(methyl)を意味し、fは、2’-フルオロ(fluoro)を意味し、GalNAcは、化学式1の三価(trivalent)GalNAc誘導体を意味し、Pは、5’-リン酸基(phosphate group)を意味し、EVPは、5’-E-ビニルホスホネート(E-vinylphosphonate)結合を意味する。
【0050】
【0051】
具体的には、前記RNAi製剤のセンスストランド及びアンチセンスストランドは、前記表で選択される下記のセンスストランド配列及びアンチセンスストランド配列でもある。
【0052】
他の態様は、前記RNAi製剤を有効成分として含む、肝疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0053】
さらに他の態様は、肝疾患を予防または治療するための医薬の製造のための前記RNAi製剤の用途を提供する。
【0054】
前記薬学的組成物は、前述のRNAi製剤をそのまま含むか、あるいはそれを利用するために、その二者間に共通する内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0055】
肝疾患
前記薬剤学的組成物は、MARC1遺伝子発現を抑制することにより、肝疾患の予防または治療のための薬剤学的組成物の有効成分にも活用される。
【0056】
前述の肝疾患は、脂肪肝、肝線維症または肝硬変を含み、ここで、「脂肪肝」は、正常細胞内には存在しない中性脂肪が肝細胞内に異常に沈着されたように見える現象が示されたところを意味する。正常の肝臓は、約5%が脂肪組織で構成されており、中性脂肪、脂肪酸、リン脂質、コレステロール及びコレステロールエステルが脂肪の主要成分であるが、いったん脂肪肝が発生すれば、ほとんどの成分が中性脂肪に代替され、中性脂肪の量が肝重量の5%以上であるならば、脂肪肝と診断される。前記脂肪肝は「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease)」でもあり、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease)」は、飲酒とかかわらず、肝臓内に中性脂肪が蓄積される疾患であり、脂肪酸が中性脂肪の形態でもって、肝臓の実質細胞内に5%以上蓄積された場合と定義されうる。前記非アルコール性脂肪肝疾患は、単純脂肪肝症(simple steatosis)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)でもある。該非アルコール性脂肪肝疾患は、病理学的に、単純脂肪肝症(simple steatosis)と炎症とを伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)に分類されるが、NASHは、NAFLD重度型の一形態であると言うことができる。脂肪蓄積がはなはだしい脂肪肝症は、炎症、すなわち、脂肪肝炎に進行し、長期間の放置時、肝炎、肝線維症、肝硬変のような深刻な肝疾患に移行されうる。単純脂肪肝症の発病率は、正常体重を有する人においては、10~15%であるが、過体重を有する人においては、80%に大きく上昇するので、非アルコール性脂肪肝炎が効果的に治療されるためには、肝臓における中性脂肪蓄積を効果的に低減させ、非アルコール性脂肪肝症が脂肪肝炎に進行することを抑制しながら、脂肪肝炎の炎症を改善させることにより、次の段階への進行を抑制することが重要でもある。
【0057】
薬学的組成物
本明細書において用語「有効成分(effective ingredient)」は、有益であるか、あるいは望ましい臨床的または生化学的な結果に影響を与える適切な有効量の成分を意味する。具体的には、有効量の製剤、活性剤またはRNAi製剤を意味しうる。
【0058】
前記有効量は、1回またはそれ以上投与され、疾病を予防するか、あるいは疾病状態を、非制限的に、症状の緩和、疾病範囲の低減、疾病状態の安定化(すなわち、悪化しないということ)、疾病進行の遅延または速度の低減、あるいは疾病状態の改善、または一時的緩和及び軽減(部分的であるか全体的に)のための適切な量でもある。
【0059】
本明細書において用語「予防(prevention)」は、疾患の発生を事前に遮断するか、疾患を抑制するか、あるいは進行を遅延させる全ての行為を意味する。例えば、前記肝疾患、またはその特徴的な特性の発生を防ぐか、発生を妨害するか、あるいは前記肝疾患、またはその特徴的な特性の発生から防御または保護することを称する。
【0060】
本明細書において用語「治療(treatment)」は、治療学的治療、及び予防的または予防措置的な方法いずれをも意味する。また、疾患の症状が好転、あるいは良好に変更される全ての行為を意味する。例えば、前記肝疾患、またはその特徴的な特性を、予防、低減または改善させるか、あるいは個体から前述の肝疾患、またはその特徴的な特性の進行を遅延(弱化)させるものである。
【0061】
本明細書において用語「有効量(effective amount)」は、当業界において一般的に許容される意味を称する。前記用語は、一般的に、研究者、獣医、医師、またはその他臨床医師らが追求する細胞、組織、システム、動物またはヒトの意図された生物学的反応(例:有益な反応)を導き出す分子、化合物または構成物の量を意味しうる。具体的には、「治療学的有効量(therapeutically effective amount)」は、例えば、疾病や障害と係わる測定可能なパラメータにおいて、治療的に関連する変化があり、特定臨床的治療が効果的であると見なされうるほどの望ましい医学的反応を導き出すことができる分子、化合物または構成物の量を意味しうる。前記疾病または前記障害の治療のための薬物の治療学的有効量は、前記パラメータで治療的に関連する変化をもたらすのに必要な量でもある。
【0062】
前記薬学組成物の投与方法は、通常の患者の症侯と、疾病の深刻度に基づき、本技術分野の通常の専門家が決定することができる。また、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、軟膏剤、シロップ剤のような多様な形態に製剤化され、単位投与量容器または多投与量容器、例えば、密封されたアンプル及びビンなどによっても提供される。
【0063】
本発明の薬学組成物は、経口投与または非経口投与が可能である。本発明による組成物の投与経路は、以下のところに限定されるものではないが、例えば、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、腸管、舌下または局所への投与が可能である。本発明による組成物の投与量は、患者の体重・年齢・性別・健康状態、食餌、投与時間、方法、排泄率、または疾病の重症度などにより、その範囲が多様であり、本技術分野の通常の専門家が容易に決定することができる。また、臨床投与のために、公知の技術を利用し、本発明の組成物を適する剤形に製剤化することができる。
【0064】
さらに他の態様は、前記RNAi製剤を個体に投与する段階を含む肝疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0065】
前述の肝疾患を治療する方法は、前述のRNAi製剤または薬学的組成物をそのまま含むか、あるいはそれらを利用するために、それら間に共通する内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0066】
本明細書において用語「個体」は、疾病、具体的には、肝疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、犬、猫、馬、牛、羊、豚、山羊、ラクダ、ヤギのような哺乳類をいずれも含むものでもある。
【0067】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1:RNAi誘導用核酸分子のスクリーニング及び治療効能の評価
1-1.50種のasiRNAデザイン、及びMARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
本実施例においては、MARC1を標的にする高効率のRNAi干渉を誘導する二本鎖核酸分子を確保するために、MARC1遺伝子に対する標的配列選定後、それに係わるasiRNA(MARC1 asymmetric siRNA)をデザインした(センスストランド(16-mer)、アンチセンスストランド(19-mer))。具体的には、NCBIデータベース検索を介し、MARC1遺伝子情報を獲得した後、動物実験を考慮し、マウスと共通標的を有する塩基配列基準でもって、一定レベルの相同性を示す塩基配列を選抜し、総50種のasiRNAをデザインし、それをIDT Korea, Inc.において、10nmoleスケールに合成した。その後、合成されたasiRNAは、95℃ 5分間、37℃ 25分間、インキュベーション過程を介してアニーリングし、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)後、ChemiDoc UV transilluminator(Biorad)を介し、QC(quality control)を行った。
【0069】
前述の方法によってデザインされたMARC1 asiRNAの配列情報は、下記表1に示されている通りである。
【0070】
【表1】
【0071】
その後、mRNAレベルにおける発現抑制効率を確認するために、前記MARC1 asiRNAをHuh7細胞に形質感染させた後、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、前記Huh7細胞は、96ウェルプレートに、8×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、MARC1 asiRNA(10nM(OliX Inc.))とRNAiMax(2μl/ml(Invitrogen Inc. 13778150))とを添加した後、Invitrogenから提供されたプロトコルによって形質感染を行った。その後、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen 74136)を使用して全てのRNAを抽出し、そこに含まれたmRNAをテンプレートにする逆転写過程を介してcDNAを合成した。その後、TB Green(Takara RR820A)を使用してPCR混合物を準備し、製造社の指針により、StepOne Real-Time PCRシステムで定量的PCRを遂行した。なお、本実施例において対照群は、形質感染試薬のみを添加した群(NT)を使用した。
その結果、図1に示されているように、MARC1 asiRNA 50種の処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認した。
1-2.23種のGalNAc-asiRNAデザイン及びMARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
【0072】
本実施例においては、前記実施例1で製造されたMARC1 asiRNAのうち、23種のMARC1 asiRNAを対象に、GalNAcリガンド及び化学的変形が導入された非対称siRNAをデザインした。具体的には、多様な化学的変形(2’OMe、PS、Fluoroなど)を導入し、前記センスストランド3’末端に、「三価(trivalent)GalNAc」と表記された誘導体を結合させ、MARC1 GalNAc-asiRNAを製造した。
【0073】
【表2】
【0074】
具体的には、前記表2において、「*」、「m」、「f」、「P」、「GalNAc」と表記された化学的変形は、下記表3に示されている通りである。
【0075】
【表3】
【0076】
具体的には、前記表3において、「*」は、既存のホスホジエステル結合が、ホスホロチオエート結合で置換された形態を意味するものであり、「m」は、既存の2’-OHが、2’-O-メチルで置換された形態を意味するものである。また、「f」は、例えば、fGの場合、既存のG(グアニン)の2’-OHが、フルオロで置換された形態を意味するものであり、「P」は、5’末端に、リン酸基が結合された形態(5’末端塩基内の5番炭素に結合された酸素に、リン酸基が結合される)を意味するものである。また、「GalNAc」は、センスストランド3’末端に、下記化学式1の三価(trivalent)GalNAc誘導体が結合された形態を意味するものである。
なお、前記三価(trivalent)GalNAc誘導体構造は、下記化学式1に示されている通りである。
【0077】
【化2】
【0078】
mRNAレベルにおける発現抑制効率を確認するために、前記MARC1 GalNAc-asiRNAを、C57BL/6マウスに由来する一次肝細胞(mouse primary hepatocyte)に形質感染(transfection)させた後、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、前記一次肝細胞は、24ウェルプレートに、7.5×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、MARC1 GalNAc-asiRNA(200nM(OliX US,Inc.))を処理した。そこから、24時間後、SuperPrep(商標)Cell lysis & RT kit for qPCR Kit II(TOYOBO SCQ-401)を使用して細胞ライセート(cell lysate)を準備し、そこに含まれたmRNAをテンプレートにする逆転写過程を介してcDNAを合成した。その後、前記合成されたcDNAをテンプレートにし、定量的PCRを、THUNDERBIRD(登録商標)Probe qPCR Mix(TOYOBO QPS-101)及びProbe(Hs00224227_m1、Hs03928985_g1(Applied Biosystems)を使用して遂行した。その後、CFX Connect Real-Time PCR System(Bio-Rad)を使用し、MARC1 mRNAの発現レベルを確認した。なお、本実施例において対照群は、形質感染を行っていない群(NT)、陰性対照群として、OLX700A-001-8(10nM)とRNAiMAX(2μl/ml(Invitrogen Inc. 13778150))とを添加した後、Invitrogenから提供されたプロトコルによって形質感染を行った群(NC)を使用し、陽性対照群(PC)として、asiMARC1-30(10nM)とRNAiMAX(2μl/ml(Invitrogen Inc. 13778150))とを添加した後、Invitrogenから提供されたプロトコルによって形質感染を行った群(PC)を使用した。前記OLX700A-001-8の配列情報は、表4に示されている通りであり、表4において、「*」、「m」、「f」、「P」及び「GalNAc」と表記された化学的変形は、前記表3に示されている通りである。
【0079】
【表4】
【0080】
その結果、図2に示されているように、MARC1 GalNAc-asiRNA 23種の処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認した。それらのうちでも、OLX-002-1、OLX003-1、OLX-031-1の発現抑制効果は、さらにすぐれている。
【0081】
1-3.動物モデルを利用した治療効能評価
本実施例においては、C57BL/6マウス(雄、n=15)を対象に、前記実施例1-2で発現抑制効果を確認したMARC1 GalNAc-asiRNAを投与した後、それによる治療的効能を評価した。そのために、まず、動物モデルグループを、正常食餌が提供されたグループ(通常チャウ(normal chow))と、高脂肪食餌が提供されたグループ(HFD(high fat diet)(Research Diet D12492))とに分類し、前記グループを、投与される物質により、それぞれ1X PBSを投与した群(VC)、OLX-001-8を投与した群(NC)、OLX-003-1を皮下投与した群(#3-1)、及びOLX-031-1を皮下投与した群(#31-1)に分類した。本実施例において、前記動物モデルグループに係わる具体的な分類は、下記表5に示されている通りである。
【0082】
【表5】
【0083】
なお、高脂肪食餌が提供された時点から16週目に、MARC1 GalNAc-asiRNAを投与し、そこから2週経過後、MARC1 asiRNAを再び投与した。前記2次投与を実施した時点から2週経過後、対象マウスから肝臓を摘出し、そこから、肝組織試料及びその切片を得た。
【0084】
(1)MARC1及びMARC2の発現態様確認
前記マウスから得られた肝組織試料を対象に、前記実施例1-2と同一方式でもって、MARC1 mRNA及びMARC2 mRNAの発現レベルを評価した。
【0085】
その結果、図3に示されているように、一実施例によるOLX-003-1またはOLX-031-1を投与したグループ(#3-1、#31-1)は、高脂肪食餌が提供された他のグループ(VC、NC)と比較し、MARC1 mRNAに対する発現抑制を示している一方、MARC2 mRNAの発現には、影響を及ぼさないということを確認した。
【0086】
(2)肝臓の外観評価
前記マウスから得られた肝臓を肉眼で観察し、肝臓の病変部位の変化を評価した。
【0087】
その結果、図4に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(VC、NC)は、肝臓の縁部、すなわち、病変部位が鋭くなかった一方、一実施例によるOLX-003-1またはOLX-031-1を投与したグループ(#3-1、#31-1)は、正常グループと類似した形態的特性を示すことを確認した。
【0088】
(3)病理組織学的評価
前記マウスから得られた肝組織試料を、10% NBF(neutral buffered formalin)溶液に固定化させ、パラフィン包埋ブロックを製造した後、そこから、4μm厚の組織切片を製造した。その後、前記組織切片を対象に、マイヤーヘマトキシリン(Mayer’s hematoxylin)試薬を使用してH&E染色を実施した。また、OCT包埋剤を使用して得られた4μm厚の凍結切片を対象に、オイルレッドO染色を実施した。
【0089】
その結果、図5及び図6に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(VC、NC)において、肝実質に形成された多数の脂肪液胞(lipid vacuoles)が観察された一方、一実施例によるOLX-003-1またはOLX-031-1を投与したグループ(#3-1、#31-1)においては、脂肪液胞の形成が有意に低減されていることを確認した。
【0090】
実施例2.動物モデルを利用した治療効能評価
本実施例においては、C57BL/6マウスを対象に、前記実施例1で発現抑制効果を確認したasiMARC1-031をテンプレートにし、下記表6のMARC1 GalNAc-asiRNAを皮下投与した後、それによる治療的効能を評価した。
【0091】
【表6】
【0092】
具体的には、前記表6において、「*」、「m」、「f」、「P」、「GalNAc」、「EVP」と表記された化学的変形は、下記表7に示されている通りである。
【0093】
【表7】
【0094】
具体的には、前記表7において、「*」、「m」、「f」、「P」、「GalNAc」は、前述のところと同じである。また、「EVP」は、5’末端に、(E)ビニルホスホネートが結合された形態(5’末端塩基内の5番炭素を含む二重結合を形成)を意味するものであり、例えば、EVP-mUの場合、既存のU(グアニン)の2’-OHが、2’-O-メチルで置換された形態において、5’末端に、(E)ビニルホスホネートが結合された形態を意味するものである。
【0095】
2-1.HFD induced NASHマウスモデル(mouse model)におけるOLX-031-1の治療効能評価
動物モデルグループを、正常食餌が提供されたグループ(通常チャウ(normal chow))と、高脂肪食餌が提供されたグループ(HFD)とに分類し、前記グループを、投与される物質により、それぞれ1X PBSを投与した群(VC)、OLX700A-001-8を投与した群(NC)、OLX-031-1を投与した群(#31-1)に分類した。本実施例において、前記動物モデルグループに係わる具体的な分類は、下記表8に示されている通りである。
【0096】
【表8】
【0097】
なお、高脂肪食餌が提供された時点から28週目に、OLX-031-1を投与し、そこから、1週間間隔で、総3回、OLX-031-1を追加投与した。総4回の投与を終えた時点から1週経過後、対象マウスから肝臓を摘出し、そこから、肝組織試料及びその切片、血清試料を得た。
【0098】
(1)MARC1及びMARC2の発現態様確認
前記マウスから得られた肝組織試料を対象に、前記実施例1-2と同一方式でもって、MARC1 mRNA及びMARC2 mRNAの発現レベルを評価した。
【0099】
その結果、図7に示されているように、一実施例によるOLX-031-1を投与したグループ(#31-1)は、高脂肪食餌が提供された他のグループ(VC、NC)と比較し、MARC1 mRNAに対する発現抑制を示している一方、MARC2 mRNAの発現には、影響を及ぼさないということを確認した。
【0100】
(2)肝臓の外観評価
前記マウスから得られた肝臓を肉眼で観察し、肝臓の病変部位の変化を評価した。
【0101】
その結果、図8に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(HFDVC、HFDNC)は、肝臓の縁部、すなわち、病変部位が鋭くなかった一方、一実施例によるOLX-31-1を投与したグループ(#31-1)は、正常グループと類似した形態的特性を示すことを確認した。
【0102】
(3)病理組織学的評価
前記マウスから得られた肝組織試料を、10% NBF(neutral buffered formalin)溶液に固定化させ、パラフィン包埋ブロックを製造した後、そこから、4μm厚の組織切片を製造した。その後、前記組織切片を対象に、マイヤーヘマトキシリン(Mayer’s hematoxylin)試薬を使用したH&E染色及びピクロシリウスレッドを実施した。
【0103】
その結果、図9及び図10に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(VC、NC)において、肝実質に形成された多数の脂肪液胞と、コラーゲン沈着とが観察された一方、一実施例によるOLX-031-1を投与したグループ(#31-1)は、そのような脂肪液胞の形成と、コラーゲン沈着とが有意に低減されていることを確認した。
【0104】
(4)の肝組織内の繊維化関連因子の発現及び中性脂肪レベル評価
前記マウスから得られた肝組織試料を対象に、肝繊維化関連因子の発現レベル、及び中性脂肪のレベルを評価した。具体的には、肝組織由来の細胞を対象に、Tri-RNA reagent(FAVORGEN FATRR 001)を使用し、総(total)RNAを抽出し、それをテンプレートにする逆転写過程を介してcDNAを合成した(High-capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems 4368814))。その後、前記合成されたcDNAをテンプレートにし、定量的PCRを、TB Green(登録書評)Premix Ex Taq(商標)(Takara RR420A)を使用して遂行した。その後、StepOne(商標)Real-Time PCR System(Applied Biosystems(商標)、及び恒存遺伝子であるRPL32の発現レベルを適用し、α-SMA及びmCol1α1 mRNAの発現レベルを評価した。また、肝組織試料を、均質化器(homogenizer)(100mg/mL、1:10希釈)を使用し、5% NP-40/UPW内で均質化させた。その後、前記均質化された試料を対象に、Triglyceride Assay Kit(Abcam ab65336)を使用し、中性脂肪レベルを測定した。
【0105】
その結果、図11に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(VC、NC)において、肝繊維化関連因子であるα-SMA mRNAの発現レベルが上昇した一方、一実施例によるOLX-031-1を投与したグループ(#31-1)においては、そのようなα-SMA及びmCol1α1 mRNAの発現増大が低減されていることを確認した。また、図12に示されているように、肝組織内の中性脂肪のレベルも、一実施例によるOLX-031-1の投与によって低減されることを確認した。
【0106】
(5)血清学的評価
前記マウスから得られた血清試料を対象に、肝損傷の指標因子であるAST(aspartate aminotransferase)及びALT(alanine aminotransferase)、並びに脂質指標物質であるコレステロール(CHOL)、中性脂肪(TG)、低密度脂質タンパク質(LDL)及び高密度脂質タンパク質(HDL)のレベルを確認した。
【0107】
その結果、図13に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(VC、NC)において、ASTレベル及びALTレベルが格段に上昇した一方、一実施例によるOLX-031-1を投与したグループ(#31-1)においては、そのようなASTレベル及びALTレベルの上昇が低減されていることを確認した。また、図14に示されているように、脂質指標物質のレベルも、一実施例によるOLX-031-1を投与したグループ(#31-1)において低減されていることを確認した。
【0108】
2-2.CDHFD induced NASHマウスモデル(mouse model)でOLX-031-2の治療効能評価
動物モデルグループを、食餌の種類と提供期間とにより、12週間、正常食餌が提供されたグループ(NCD 12w)、16週間、正常食餌が提供されたグループ(NCD 16w)、12週間、高脂肪食餌が提供されたグループ(CDHFD 12w)、16週間、高脂肪食餌が提供されたグループ(CDHFD 16w)、12週間、高脂肪食餌が提供され、4週間、正常食餌が提供されたグループ(CDHFD-NCD)に分類し、前記グループを、さらに投与される物質により、それぞれ1X PBSを投与した群(VC)、OLX-031-2を投与した群(#31-2)に分類した。本実施例において、前記動物モデルグループに係わる具体的な分類は、下記表9に示されている通りである。
【0109】
【表9】
【0110】
なお、高脂肪食餌が提供された時点から12週目にOLX-031-2を投与し、そこから、2週経過後、OLX-031-2を再び投与した。前記二次投与を実施した時点から2週経過後、対象マウスから肝臓を摘出し、そこから、肝組織試料及びその切片を得た。なお、前述の動物モデルグループ1及び3においては、高脂肪食餌が提供された時点から12週目にマウスを犠牲にし、前述の試料を得た。
【0111】
(1)病理組織学的評価
前記実施例2-1の(3)と同一方式でもって、組織切片に対する、H&E染色及びピクロシリウスレッドを実施し、肝実質に形成された多数の脂肪液胞やコラーゲン沈着などの変化を確認した。
【0112】
その結果、図15に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(CDHFD 12w、CDHFD 16w)は、肝実質に、多数の脂肪液胞と炎症巣(inflammatory foci)とが観察された一方、一実施例によるOLX-031-2を投与したグループ(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)においては、そのような脂肪液胞と炎症巣とが低減されていることを確認した。また、図16及び図17に示されているように、一実施例によるOLX-031-2を投与したグループ(CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)において、脂質成分及びコラーゲン沈着が有意に低減されていることを確認した。特に、OLX-031-2を投与したグループ6(CDHFD 16w 031-2)は、高脂肪食餌が提供されたグループ3及び4(CDHFD 12w、CDHFD 16w)に比べ、脂肪液胞とコラーゲン沈着レベルとが低減されているが、それは、非アルコール性脂肪肝炎に対する有効な治療効能を示しているものである。
【0113】
(2)肝組織内の繊維化関連因子の発現評価
前記実施例2-1の(4)と同一の方式により、肝繊維化関連因子の発現レベルを評価した。
【0114】
その結果、図18に示されているように、高脂肪食餌が提供されたグループ(CDHFD、CDHFD-NCD)において、肝繊維化関連因子であるα-SMA、mCol1α1及びTIMP1 mRNAの発現レベルが上昇した一方、一実施例によるOLX-031-2を投与したグループ(#CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)においては、そのようなα-SMA、mCol1α1及びTIMP1 mRNAの発現増大が低減されていることを確認した。それもまた、前記実験結果と同様に、OLX-031-2を投与したグループ6(031-2 CDHFD)は、高脂肪食餌が提供されたグループ3及び4(CDHFD 12w、CDHFD16w)と格段な差を示している。
【0115】
(3)MARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
前記マウスから得られた肝組織試料を対象に、前記実施例1-2と同一方式でもって、MARC1 mRNAの発現レベルを評価した。
【0116】
その結果、図19に示されているように、一実施例によるOLX-031-2を投与したグループ(#CDHFD 031-2、CDHFD-NCD 031-2)においては、MARC1 mRNAの発現レベルが、他のグループに比べ、有意に低いということを確認した。
【0117】
実施例3:RNAi誘導用二本鎖核酸分子の二次スクリーニング
3-1.250種のasiRNAのデザイン及び作製
本実施例においては、前記1-2と同一方式でもって、NCBIデータベース検索を介し、MARC1遺伝子情報を獲得した後、ヒト由来及びサル由来のMARC1それぞれにつき、共通標的を有する塩基配列基準において、一定レベルの相同性を示す塩基配列を選抜し、総250種のasiRNAをデザインし(センスストランド(16-mer)、アンチセンスストランド(21-mer))、それを、Bioneerにおいて、10nmoleスケールに合成した。前述の方法によってデザインされたMARC1 asiRNAの配列情報は、下記の表10ないし表14に示されている通りである。
【0118】
【表10】
【0119】
【表11】
【0120】
【表12】
【0121】
【表13】
【0122】
【表14】
【0123】
3-2.MARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
mRNAレベルにおいて、発現抑制効率を確認するために、前記MARC1 asiRNAをHuh7細胞に形質感染させた後、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、前記Huh7細胞は、96ウェルプレートに、8×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、MARC1 asiRNA(10nM(OliX Inc.))とRNAiMax(2μl/ml(Invitrogen Inc. 13778150))とを添加した後、Invitrogenから提供されたプロトコルによって形質感染を行った。そこから、24時間後、SuperPrep(商標)Cell lysis & RT kit for qPCR Kit II(TOYOBO SCQ-401)を使用して細胞ライセート(cell lysate)を準備し、そこに含まれたmRNAをテンプレートにする逆転写過程を介してcDNAを合成した。その後、前記合成されたcDNAをテンプレートにし、定量的PCRを、THUNDERBIRD(登録商標)Probe qPCR Mix(TOYOBO QPS-101)及びProbe(Hs00224227_m1、Hs03928985_g1(Applied Biosystems))を使用して遂行し、mRNA発現抑制レベルを基準に、一次的に、総134種のMARC1 asiRNAを選別した(図示せず)。なお、本実施例における対照群は、形質感染試薬のみを添加した群(Mock)、陽性対照群として、asiMARC1-30を使用し、実施例1-2と同一方式でもって形質感染を行った群(PC1)を使用した。その後、前述のところのように選別された134種のMARC1 asiRNAを対象に、前述のところと同一方式でもって、MARC1 asiRNA処理濃度のみを、1nMまたは0.1nMに順次に変更しながら、MARC1 mRNA発現レベルを評価した。
【0124】
その結果、図20Aないし図20Cに示されているように、MARC1 asiRNA 134種1nM処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認し、それらのうち、MARC1発現抑制効率にすぐれる上位41種のMARC1 asiRNAを選別した(#54、#75、#80、#89、#90、#92、#97、#99、#100、#114、#124、#126、#129、#130、#131、#137、#143、#144、#161、#166、#177、#194、#195、#196、#200、#201、#202、#210、#211、#212、#215、#216、#217、#218、#220、#222、#223、#224、#233、#264、#268)。また、図21に示されているように、前記発現抑制効果を確認したMARC1 asiRNA 41種0.1nM処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認し、それらのうち、さらにMARC1発現抑制効率にすぐれる上位30種のMARC1 asiRNAを選別した(#75、#80、#89、#90、#92、#99、#100、#114、#124、#126、#129、#130、#131、#137、#143、#144、#166、#177、#194、#196、#200、#212、#215、#216、#218、#220、#222、#223、#224、#264)。
【0125】
3-3.MARC1タンパク質の発現抑制効果の評価
タンパク質レベルにおける発現抑制効率を確認するために、前記実施例3-2で選別された30種のMARC1 asiRNAをHuh7細胞に形質感染させた後、ウェスタンブロットを遂行し、MARC1タンパク質の発現レベルを測定した。具体的には、前記Huh7細胞は、12ウェルプレートに、5×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、MARC1 asiRNA(1nM(OliX Inc.)とRNAiMax(2μl/ml(Invitrogen Inc. 13778150))を添加した後、Invitrogenから提供されたプロトコルによって形質感染を行った。そこから、48時間後、前記形質感染された細胞を破砕し、各サンプルごとに、15μgの細胞ライセート(cell lysate)を得た。前記得られた細胞ライセート(cell lysate)を対象に、10% SDS-ポリアクリルアミドゲル、MARC1ウサギ(rabbit)ポリクローナル抗体(3% BSA内における1:1,000希釈(Abcepta AP9754c))及びビンキュリンマウス(vinculin mouse)モノクローナル抗体(3% BSA内における1:1,000希釈(Santa Cruz Biotechnology sc-73614)を使用してウェスタンブロットを遂行し、ChemiDoc XRS+ System(Bio-Rad)でMARC1タンパク質の発現レベルを確認した。なお、本実施例における対照群は、形質感染試薬のみを添加した群(M)、陽性対照群として、asiMARC1-30またはasiMARC1-31を使用し、実施例1-2と同一方式でもって形質感染を行った群(PC1、PC2)を使用した。
【0126】
その結果、図22に示されているように、前記実施例3-2で選別された総30種のMARC1 asiRNAは、いずれもMARC1タンパク質の発現を抑制することを確認した。
実施例4:化学的変形が導入されたRNAi誘導用核酸分子の製造
【0127】
4-1.41種のMARC1 GalNAc-asiRNAのデザイン及び作製
本実施例においては、前記実施例1及び3で発現抑制効果を確認したMARC1 asiRNAを対象に、GalNAcリガンド及び化学的変形が導入された非対称siRNA(GalNAc-asiRNA)をデザインした。前記デザインされたGalNAc-asiRNAは、前記asiRNAに比べ、多様な化学的変形(2’OMe、PS、Fluoro、GalNAcリガンドなど)が導入されたものであり、肝細胞内部への伝達が向上された非対称siRNAである。
本実施例で作製された総41種のMARC1 GalNAc-asiRNAの配列情報は、下記表15の通りである。
【0128】
【表15】
【0129】
具体的には、前記表15において、「*」、「m」、「f」、「P」及び「GalNAc」と表記された化学的変形は、前記表7に示された通りである。
【0130】
4-2.MARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
mRNAレベルにおける発現抑制効率を確認するために、前記実施例4-1で作製された総41種のMARC1 GalNAc-asiRNA(100nM)それぞれを、C57BL/6マウス(Koatech)に由来する一次培養されたマウスの肝細胞(PMH:primary cultured mouse hepatocytes)に処理した後(n=3)、実施例1-2と同一方式でもってqRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。なお、本実施例における対照群は、物質を処理していない群(NT)、陰性対照群として、OLX700A-001-8(100nM)を処理した群(NC)、陽性対照群として、OLX-031-1(10nM)を処理した群(PC)を使用した。
【0131】
その結果、図23に示されているように、MARC1 GalNAc-asiRNA 41種の処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認した。それらのうちでも、OLX-031-1、OLX-031-9、OLX-274-1、OLX-231-3、OLX-281-1、OLX-031-8、OLX-031-6、OLX-237-1、OLX-031-4の発現抑制効果は、さらにすぐれている。
【0132】
4-3.ヒト由来の肝細胞に対するMARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
mRNAレベルにおける発現抑制効率を確認するために、前記実施例4-1で作製された総41種のMARC1 GalNAc-asiRNAそれぞれを、ヒトに由来する一次肝細胞(primary human hepatocyte)(F00995-P)に処理した後(n=3)、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、前記一次肝細胞は、96ウェルプレートに、4×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、MARC1 GalNAc-asiRNA(500nM(OliX Inc.)を処理した後、実施例1-2と同一方式でもってqRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。なお、本実施例における対照群は、物質を処理していない群(NT)、陰性対照群として、OLX700A-001-8(500nM)を処理した群(NC)、陽性対照群として、OLX-031-1(10nM)を処理した群(PC)を使用した。
【0133】
また、MARC1 GalNAc-asiRNAの処理濃度によるmRNAレベルにおける発現抑制効率を確認するために、前記ヒトに由来する一次肝細胞は、96ウェルプレートに、3×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、それぞれ20nMまたは100nMのMARC1 GalNAc-asiRNA(OliX Inc.)を処理した(n=2)。その後、実施例1-2と同一方式でもって、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。なお、本実施例における対照群は、物質を処理していない群(NT)、陰性対照群として、OLX700A-001-8(100nM)を処理した群(NC)、陽性対照群として、OLX-075-1またはOLX-218-1(10nM)を処理した群(PC1、及びPC2)を使用した。
【0134】
その結果、図24に示されているように、MARC1 GalNAc-asiRNA 41種の処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認した。また、図25に示されているように、前記41種のMARC1 GalNAc-asiRNAは、濃度依存的にMARC1の発現を抑制させ、特に、前記実施例1で確保されたOLX-031-1よりすぐれた効力を有する総10種のMARC1 GalNAc-asiRNAを選別した(OLX-075-1、OLX-114-1、OLX-212-1、OLX-216-1、OLX-224-1、OLX-218-1、OLX-264-1、OLX-220-1、OLX-31-7、OLX-92-1)。
【0135】
実施例5.ヒトMARC1を標的とするGalNAc-asiRNAの作製、及びMARC1 mRNAの発現抑制効果の評価
本実施例においては、前記実施例4の実験結果を基に、すぐれた効果を示したOLX-075-1を選択し、多様な化学的変形を有するMARC1 GalNAc-asiRNAを作製した。本実施例で作製された総17種のMARC1 GalNAc-asiRNAの配列情報は、下記表16の通りである。
【0136】
【表16】
【0137】
具体的には、前記表16において、「*」、「m」、「f」、「P」、「GalNAc」及び「EVP」と表記された化学的変形は、前記表7に示されている通りである。
【0138】
また、mRNAレベルにおける発現抑制効率を確認するために、前述の作製された総17種のMARC1 GalNAc-asiRNAそれぞれを、ヒトに由来する一次肝細胞(primary human hepatocyte)(F00995-P)に処理した後(n=3)、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、前記一次肝細胞は、96ウェルプレートに、4×10細胞/ウェルにシーディングされ、そこに、MARC1 GalNAc-asiRNA(10nMまたは100nM(OliX Inc.))を処理した後、実施例1-2と同一方式でもって、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。
【0139】
その結果、図26に示されているように、MARC1 GalNAc-asiRNA 17種の処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果を確認した。
【0140】
実施例6.サルモデルを利用したMARC1 mRNAの発現抑制効果評価
サル動物モデルを対象に、多様な濃度(2.5mp、5mpまたは10mp)のOLX-031-2またはOLX-075-2を、1週間ごとに総2回皮下投与した後、前記二次投与を実施した時点から1週経過後、対象サルから肝臓を摘出し、そこから、肝組織試料及びその切片を得た。その後、実施例1-2と同一方式でもって、qRT-PCRを遂行し、MARC1 mRNAの発現レベルを測定した。本実施例において、前記OLX-031-2及び前記OLX-075-2の配列情報は、下記表17のようであり、動物モデルグループに係わる具体的な分類は、下記表18に示されている通りである。
【0141】
【表17】
【0142】
【表18】
【0143】
その結果、図27に示されているように、OLX-075-2投与群において、さらにすぐれたMARC1 mRNA発現抑制効果を確認し、そのような効果は、濃度依存的な傾向性を示している。
【0144】
実施例7.動物モデルを利用したMARC1 mRNAの発現抑制効果評価
7-1.SEAPレポーターを利用した発現抑制効果の評価
6週齢Balb/cマウス(雌)を、ヒトMARC1遺伝子、及びそれと連結されたSEAPレポーターを含むプラスミド(pSELECT-mSEAP-hMARC1)で形質感染させた後、動物モデルグループを、投与される物質により、それぞれ1X PBSを投与した群(VC)、前記実施例5のMARC1 GalNAc-asiRNAを投与した群(OLX-075-2、OLX-075-4、OLX-075-5、OLX-075-6、OLX-075-8、OLX-075-12、OLX-075-16、OLX-075-18)、及び前記実施例6のOLX-031-2を投与した群に分類した。本実施例において、前記動物モデルグループに係わる具体的な分類は、下記表19に示されている通りである。
【0145】
【表19】
【0146】
なお、前記プラスミドで形質感染された時点から4週目に、MARC1 GalNAc-asiRNAを皮下投与し、そこから、1週経過後、血液サンプルを採取し、SEAPレポーター蛍光のレベルを、Phospha-Light(商標)SEAP Reporter Gene Assay System(Invitrogen(商標)T1015)を介して確認し、ヒトMARC1 mRNAの発現抑制レベルを比較した。
【0147】
その結果、図28に示されているように、MARC1 GalNAc-asiRNA 9種の処理によるMARC1 mRNAの発現抑制効果が示され、それらのうちでも、OLX-075-12,OLX-075-16,OLX-075-17,OLX-075-5,OLX-075-8またはOLX-075-2投与群における発現抑制効果がさらにすぐれていた。
【0148】
7-2.二重ルシフェラーゼレポーターを利用した発現抑制効果の評価
6週齢Balb/cマウスを、ヒトMARC1遺伝子を含むプラスミド(psiCHECK-2-hMARC1)で形質感染させた後、3mpkの前記実施例5のMARC1 GalNAc-asiRNAを皮下投与した(OLX-075-2、OLX-075-4、OLX-075-5、OLX-075-6、OLX-075-8、OLX-075-12、OLX-075-16、OLX-075-17、OLX-075-18)。そこから、3日経過後、血液サンプルを採取し、ルシフェラーゼレポーター蛍光のレベルを、Dual-Luciferase(登録商標)Reporter Assay System(Promega E1980)を介して確認し、ヒトMARC1 mRNAの発現抑制レベルを比較した。
【0149】
その結果、図29に示されているように、多様な化学的変形を有する実施例5のMARC1 GalNAc-asiRNA投与群は、いずれもすぐれたMARC1 mRNA発現抑制効果を示し、それらのうちでも、OLX-075-16,OLX-075-17,OLX-075-12,OLX-075-8,OLX-075-8投与群における発現抑制効果がさらにすぐれていた。
【0150】
以上、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者において、そのような具体的技術は、単に望ましい実施例であるのみ、それにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は、明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲と、それらの等価物とによって定義されるものである。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】