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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】プライマー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20240702BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240702BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20240702BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20240702BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240702BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6806 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500197
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022069276
(87)【国際公開番号】W WO2023281117
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184877.5
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2205105.6
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521520739
【氏名又は名称】フブロ セラピューティクス エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリクセン ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】エリクセン ヨン アムンド
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ43
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出のためのプライマーであって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較して、マイクロサテライトのフレームシフトである。プライマーに、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~4つ、又は1つ~3つのヌクレオチドが含まれることを除いて、プライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するDNA分子のアンチセンス又はセンス鎖のターゲット配列に相補的である少なくとも10のヌクレオチドの領域を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出のためのプライマーであって、該突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較して、該マイクロサテライトのフレームシフトであり、該プライマーに、該マイクロサテライト中に該突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた、該野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~4つ、又は1つ~3つのヌクレオチドが含まれることを除いて、該プライマーが、フレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトを含有する該DNA分子のアンチセンス鎖又はセンス鎖の該ターゲット配列に相補的である少なくとも10のヌクレオチドの領域を含み、該プライマーが、フレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトの長さに亘ってアニーリングし、かつフレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチド、又は少なくとも2つのヌクレオチド、及びフレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトの3’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される、プライマー。
【請求項2】
前記プライマーが16~30のヌクレオチドのみからなる、請求項1に記載のプライマー。
【請求項3】
少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドが、前記マイクロサテライトの3’下流又は前記マイクロサテライト内にアニーリングするように設定される前記プライマーの位置に位置し、好ましくは、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドが、該マイクロサテライトの3’端の5’上流又は3’下流の4ヌクレオチド以内にある、請求項1又は2に記載のプライマー。
【請求項4】
二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出のためのキットであって、該突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較した際、該マイクロサテライトのフレームシフトであり、該キットが、請求項1~3のいずれか一項に記載の第一のプライマー、及び第二のプライマーを含み、該第二のプライマーが、該DNA分子の、該第一のプライマーがアニーリングするように設定される鎖と反対の鎖上の該マイクロサテライトの3’下流の該ターゲット配列にアニーリングするように設定される、キット。
【請求項5】
前記キットが更に、
前記第二のプライマーがアニーリングする領域の5’上流にアニーリングするように設定され、かつ前記第一のプライマーと同じ鎖及び該第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第三のプライマー、又は、
別の対照プライマー対であって、好ましくは前記野生型マイクロサテライトを含有する配列が、配列番号19又は配列番号32に定義されるような配列からなり、好ましくは該第三のプライマーが、配列番号1、配列番号11又は配列番号38によって定義される配列を含む、対照プライマー対、
を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号15、配列番号31、配列番号39、配列番号40又は配列番号41のいずれか1つによって定義される配列を含む、DNA増幅のためのプライマー。
【請求項7】
二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異を検出する方法であって、該突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較した際、該マイクロサテライトのフレームシフトであり、該方法が、
a)ヒトDNAを含む試料の第一のアリコートを準備することと、
b)該第一のアリコートに、DNA増幅のために必要な構成要素、第一のプライマー及び第二のプライマーであって、
該第一のプライマーが二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出に適しており、フレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトを含有する該ターゲット配列にミスマッチであり、かつまた該野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~4つ、又は1つ~3つのヌクレオチドを除いて、フレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトを含有する該ターゲット配列に相補的なヌクレオチドの領域を含み、かつ該第一のプライマーが、フレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトの長さに亘ってアニーリングし、かつフレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトの3’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチド、及びフレームシフト突然変異を有する該マイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチド、又は少なくとも2つのヌクレオチドにアニーリングするように設定され、
該第二のプライマーが該マイクロサテライトの3’下流の該ターゲット配列にアニーリングするように設定される、
第一のプライマー及び第二のプライマーを添加して、第一の反応混合物を形成することと、
なお、該第一のプライマーが該DNA分子のセンス鎖にアニーリングするように設定され、該第二のプライマーが該DNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングするように設定されるか、又は該第一のプライマーが該DNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングするように設定され、該第二のプライマーが該DNA分子のセンス鎖にアニーリングするように設定される;
c)該第一の反応混合物に対してDNA増幅を実行することと、
d)増幅産物が、該第一の反応混合物のDNA増幅から産生された際に、該試料中の該フレームシフト突然変異の存在を検出することと、
を含む、方法。
【請求項8】
a)前記方法の工程b)で、前記第一のアリコートに、
I)第二のプライマー及び第三のプライマーであって、該第三のプライマーが、該第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、該第三のプライマーが、前記第一のプライマーと同じ鎖及び該第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第二のプライマー及び第三のプライマー、若しくは、
II)対照プライマー対、
のいずれかを更に添加して、前記第一の反応混合物を形成し、
該第二のプライマー及び第三のプライマー若しくは該対照プライマー対を用いて、該DNA増幅から増幅産物が産生された際、DNA増幅が成功裡に実行されていることを検出すること、又は、
b)ヒトDNAを含む該試料の第二のアリコートを準備し、該第二のアリコートに、DNA増幅に必要な構成要素、及び、
I)第二のプライマー及び第三のプライマーであって、該第三のプライマーが、該第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、該第三のプライマーが、前記第一のプライマーと同じ鎖及び該第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第二のプライマー及び前記第三のプライマー、若しくは、
II)対照プライマー対、
のいずれかを添加して、第二の反応混合物を形成することと、
該第二の反応混合物に対してDNA増幅を実行し、該第二の反応混合物の該DNA増幅から増幅産物が産生された際、DNA増幅が成功裡に行われていることを検出することと、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
DNA増幅がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、該PCRが複数のサイクルの変性、アニーリング及び伸長を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
工程d)が、ゲル上で前記PCR反応の産物を泳動し、バンドを視覚化して、DNA増幅が成功していることを確認することを更に含み、好ましくは前記方法が、DNA配列決定のため、該バンドを切り出す工程f)を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フレームシフト突然変異が、TGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、前記ターゲット配列が、配列番号19の残基270~残基278に記載の配列を含み、前記第一のプライマーが、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7若しくは配列番号39のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は前記第二のプライマーが、配列番号2によって定義される配列を含むか、又は、
前記フレームシフト突然変異が、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、前記ターゲット配列が、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含み、前記第一のプライマーが、配列番号15、配列番号31、配列番号40若しくは配列番号41によって定義される配列を含み、及び/又は前記第二のプライマーが、配列番号10によって定義される配列を含む、
請求項4若しくは5に記載のキット、又は請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロサテライトが、TGFBR2遺伝子中にあり、前記野生型マイクロサテライトを含む配列が、配列番号19に記載の配列を含み、前記第三のプライマーが、配列番号1によって定義される配列を含むか、又は、
前記マイクロサテライトが、ASTE1遺伝子中にあり、前記野生型マイクロサテライトを含む配列が、配列番号32に記載の配列を含み、前記第三のプライマーが、配列番号11又は配列番号38によって定義される配列を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異と関連する疾患を診断する方法であって、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法を実行することを含む、方法。
【請求項14】
患者由来の試料において、フレームシフト突然変異が工程d)で検出された場合、該フレームシフト突然変異と関連する疾患又は障害を患う患者が、前記フレームシフト突然変異をターゲットとする治療に適していると決定することを更に含み、好ましくは、フレームシフト突然変異に関連する該疾患又は障害が癌であり、より好ましくは、該癌が結腸直腸癌若しくは胃癌であり、該フレームシフト突然変異をターゲットとする治療がFMPV-1であり、該フレームシフト突然変異がTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、かつ配列番号19の残基270~残基278に記載の配列を含むか、又は該癌が子宮内膜癌若しくは胃癌であり、該フレームシフト突然変異をターゲットとする治療がFMPV-2であり、該フレームシフト突然変異がASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、かつ配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記マイクロサテライトが、TGFBR2遺伝子中にあり、前記野生型マイクロサテライトを含む配列が、配列番号19に記載の配列を含み、前記第三のプライマーが、配列番号1によって定義される配列を含み、好ましくは前記第一のプライマーが、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7若しくは配列番号39のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は前記第二のプライマーが、配列番号2によって定義される配列を含むか、又は、
前記マイクロサテライトが、ASTE1遺伝子中にあり、前記野生型マイクロサテライトを含む配列が、配列番号32に記載の配列を含み、前記第三のプライマーが、配列番号11若しくは配列番号38によって定義される配列を含み、好ましくは前記第一のプライマーが、配列番号15、配列番号31、配列番号40若しくは配列番号41によって定義される配列を含み、及び/又は前記第二のプライマーが、配列番号10によって定義される配列を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、セルフリーDNAを含む液体生検であり、好ましくは該液体生検が血漿である、請求項7~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記DNA増幅がPCRであり、該PCRが高ストリンジェンシー条件で実行され、任意選択で、該高ストリンジェンシー条件が、
a)前記反応の推奨されるアニーリング温度より、少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10℃高い温度で、PCRのアニーリング工程を実行すること、
b)サイクルあたり、わずか30秒間、好ましくは15秒間、PCRのアニーリング工程を実行すること、
c)0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×又は0.75×未満での緩衝剤濃度で、DNA増幅を実行すること、
d)アンモニウムイオンを含む緩衝剤中でDNA増幅を実行すること、
e)30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下のサイクルのPCRを実行すること、
の少なくとも1つを含む、請求項7~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー、より具体的には、ポリヌクレオチド配列中の突然変異を検出するためのプライマーに関する。本発明はまた、該プライマーを含むキット及びマイクロサテライト配列における突然変異を検出する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フレームシフト突然変異は、正常なタンパク質翻訳を攪乱することによって疾患を引き起こし得る。他の病理の中でも、フレームシフト突然変異は癌、特にマイクロサテライト不安定性に関連する癌と関連付けられている。マイクロサテライト不安定性(MSI)は、DNAミスマッチ修復(MMR)の損傷によって引き起こされる細胞の超突然変異状態である。言い換えると、MSIによって影響を受ける細胞は、適切に機能する修復機構を持たず、したがって、DNA複製中に自然突然変異を生じさせ、これがフレームシフト突然変異を引き起こし得る。これらのエラーは特に、DNAの反復配列(最も一般的にはヌクレオチドC及びAのジヌクレオチド反復)であるマイクロサテライト中に集積する。したがって、MSIは、マイクロサテライトと称されるこれらの反復配列において、挿入及び欠失突然変異を生じる。
【0003】
MSIは、結腸癌、胃癌、子宮内膜癌、卵巣癌、肝胆管癌、尿道癌、脳腫瘍及び皮膚癌(非特許文献1)を含む多くの癌に関連付けられる。フレームシフト突然変異は、ASTE1、TAF1B、KIAA2018及びSLC22A9で見られている。特に、TGFBR2のフレームシフト突然変異は、マイクロサテライト不安定性(MSI)によって引き起こされる多数の結腸直腸癌(CRC)及び胃癌(GC)に存在する。TGFBR2のフレームシフト突然変異はまた、リンチ症候群と関連することも知られている。MSIは、ゲノム全体の短いタンデムDNA反復(マイクロサテライト)に渡る、挿入及び欠失突然変異からなる。CRCにおけるフレームシフト突然変異の95%より多くが、単一ヌクレオチド欠失であると報告されている(非特許文献2)。
【0004】
上記に関連して、フレームシフト突然変異は、多くの癌を含む、こうした突然変異と関連する疾患の治療の療法的ターゲットを提供する。しかし、こうした疾患を有するすべての患者がこの突然変異を有するわけではなく、特に疾患が非常に不均一であることが知られている癌患者ではそうである。したがって、フレームシフト突然変異をターゲットとする療法に反応するであろう患者を発見するため、フレームシフト突然変異を有する疾患集団内の患者サブセットを検出可能であることが重要である。
【0005】
例えば、突然変異体免疫原性ペプチドからなる癌ワクチンFMPV-1は、特許文献1に記載されるように、フレームシフト突然変異体TGFBR2をターゲットとする。MSI-CRC(およそ75%)及びMSI-GC(およそ80%)を有する患者のすべてがフレームシフト突然変異TGFBR2を有するわけではない。FMPV-1での臨床研究に適格な患者のみの採用を確実にするため、こうした突然変異体TGFBR2の検出のために患者をスクリーニングし、こうした療法から利益を受けるであろう患者を見出すことが非常に有用であろう。言い換えると、フレームシフト突然変異の検出は、この突然変異が存在することも又はしないこともある疾患に関する個別化医療アプローチを提供することの助けとなり得る。さらに、こうした突然変異の検出は、こうしたフレームシフト突然変異をターゲットとする療法を試験するための臨床試験に適切な候補を採用することを補助し得る。
【0006】
このスクリーニング及び個別化医療アプローチはまた、ASTE1遺伝子中の単一ヌクレオチド欠失を持つ患者にも有用であろう。特に、癌ワクチンFMPV-2(「fsp8」とも称される)は、特許文献2に記載されるような、フレームシフト突然変異体ASTE1をターゲットとする突然変異体免疫原性ペプチドである。この遺伝子における単一ヌクレオチド欠失は、最も優勢なフレームシフト突然変異であるが、すべてのMSI-H癌では起こらない。したがって、こうした突然変異体ASTE1の検出のため、患者をスクリーニングして、TGFβR2に関して上述されるように、こうした療法から利益を得るであろう患者を見出すことが有用であろう。
【0007】
現在、患者のTGFBR2及びASTE1状態を理解するため、患者のゲノムを配列決定するか、又はDNA増幅に頼った後、配列決定して、フレームシフト突然変異の有無を検出するかのいずれかが必要である。これらの配列決定法は、完了までにおよそ2日間を要し、病院は一般的にこうした配列決定を実行するために利用可能な装置を持たないため、通常外部実験室によって行わなければならない。そのため、試料をこうした試験実験室に輸送する必要がある。このことから、特に個別化医療の目的のためには、フレームシフト突然変異の特異的検出のためのより容易なアッセイを提供する必要性がある。
【0008】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA配列を分析するための十分に確立された技術である。PCR試験のDNA特異性は、ターゲットDNA配列と相互作用するように設計されたプライマーによって決定される。しかし、PCRプライマーは、通常、5以上のヌクレオチド反復を持つ領域をターゲットとすることができず、これはつまり、マイクロサテライト領域中の変化を検出するのにプライマーを使用することは容易なことではないことを意味する。
【0009】
したがって、疾患において、特にTGFBR2及びASTE1において、適切であり得る、フレームシフト突然変異の腫瘍生検中の特異的検出のための技術を開発する必要性がある。腫瘍は不均一である傾向があり、かつ固形腫瘍生検は、生検を採取した腫瘍の一部のみであるため、固形腫瘍生検は、腫瘍全体を表すものではない。対照的に、液体生検は、癌全体をはるかによりよく表すものであり、研究がより容易である。したがって、この技術が液体生検(例えば血漿)中のセルフリーDNA(cfDNA)の検出に適していることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2020239937号
【特許文献2】国際公開第2021/239980号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Cortes-Ciriano et al. 2017
【非特許文献2】Maby et al. 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、フレームシフト突然変異を持つマイクロサテライトと、フレームシフト突然変異を持たないマイクロサテライト(すなわち野生型マイクロサテライト)とを区別可能である、プライマーの設計、及びこうしたプライマーを用いたDNA増幅アッセイを通じて、上記の必要性及び目的を解決する。特に、これらのプライマーは、PCRを使用して、例えば最適以下の条件下でPCRを行うことによって、単一ヌクレオチドのみのようにわずかにしか異ならない場合であっても、フレームシフト突然変異と野生型マイクロサテライトとを区別することを可能にする。これらの最適以下の条件は、フレームシフト突然変異体と野生型マイクロサテライトとの間の増幅効率の相違が増大されるように、反応のストリンジェンシーを増加させて、フレームシフト突然変異体マイクロサテライトに関するより高感度な試験を提供する。これらの最適以下の条件は、多くの異なる方法で達成され得る。したがって、これは、フレームシフト突然変異の検出、MSI関連疾患の診断、及び/又はこうしたフレームシフト突然変異に対する治療の適切性に関して被験体をスクリーニングする際に有用な発明である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様において、二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出のためのプライマーであって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較して、マイクロサテライトのフレームシフトであり、プライマーに、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~4つ、又は1つ~3つのヌクレオチドが含まれることを除いて、プライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するDNA分子のアンチセンス鎖又はセンス鎖のターゲット配列に相補的である少なくとも10個のヌクレオチドの領域を含む、プライマーが提供される。いくつかの実施の形態において、プライマーには、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~3つのヌクレオチドが含まれる。
【0014】
いくつかの実施の形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’に隣接する少なくとも1つのヌクレオチド若しくは少なくとも2つのヌクレオチド、及び/又は3’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される。いくつかの実施の形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’に隣接する少なくとも2つのヌクレオチド及び/又は3’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される。
【0015】
いくつかの実施の形態において、プライマーは、16~30のヌクレオチドのみからなる。
【0016】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、マイクロサテライトの3’下流又はマイクロサテライト内にアニーリングするように設定されるプライマーの位置に位置する。
【0017】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、マイクロサテライトの3’端の5’上流又は3’下流の3ヌクレオチド又は4ヌクレオチド以内にある。
【0018】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、チミン(T)のアデニン(A)での置換、アデニン(A)のグアニン(G)での置換、チミン(T)のシトシン(C)での置換、又はシトシン(C)のグアニン(G)での置換である。
【0019】
本発明の別の態様において、二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出のためのキットであって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較した際、マイクロサテライトのフレームシフトであり、キットが、本発明の第一のプライマー、及び第二のプライマーを含み、第二のプライマーが、DNA分子の、第一のプライマーがアニーリングするように設定される鎖と反対の鎖上のマイクロサテライトの3’下流のターゲット配列にアニーリングするように設定される、キットが提供される。
【0020】
「3’下流」と言及される場合、これは、(第一の)プライマーに関し、すなわち、(第一の)プライマーのDNAポリメラーゼ伸長方向であると理解されるものとする。言い換えると、用語「3’下流」は、プライマー中の3’位を指し、これはテンプレート配列中の5’位に対応する。例えば、「少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドが、マイクロサテライトの3’下流にアニーリングするように設定されたプライマーの位置に位置する」という表現は、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドが、プライマーにおいて、マイクロサテライトの3’下流にあり、すなわちテンプレート配列ではマイクロサテライトの5’上流にあることを意味する。同様に、「フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端」に言及する場合、これは、(第一の)プライマーに関すると理解されるものとする。言い換えると、用語「3’端」は、プライマー中の3’端を指し、これはテンプレート配列中の5’端に対応する。
【0021】
同様に、「5’上流」と言及される場合、これは、(第一の)プライマーに関すると理解されるものとする。例えば、「プライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’に隣接する少なくとも2つのヌクレオチド及び/又は3’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される」という表現は、プライマーが、プライマーに関して、マイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチドに、すなわちテンプレートに関して、マイクロサテライトの3’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチドにアニーリングし得ることを意味する。同様に、「フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端」に言及する場合、これは、(第一の)プライマーに関すると理解されるものとする。言い換えると、用語「5’端」は、プライマー中の5’端を指し、これはテンプレート配列中の3’端に対応する。
【0022】
いくつかの実施の形態において、フレームシフト突然変異は、TGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号7のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号2によって定義される配列を含む。
【0023】
いくつかの実施の形態において、フレームシフト突然変異は、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号32の残基328~残基337に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号15又は配列番号31によって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号10によって定義される配列を含む。
【0024】
いくつかの実施の形態において、キットは、
第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、かつ第一のプライマーと同じ鎖及び第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第三のプライマー、又は別の対照プライマー対、
を更に含む。
【0025】
いくつかの実施の形態において、野生型マイクロサテライトを含有する配列は、配列番号19に定義される配列を含み、好ましくは、第三のプライマーは、配列番号1によって定義される配列を含む。
【0026】
いくつかの実施の形態において、野生型マイクロサテライトを含有する配列は、配列番号32に定義される配列を含み、好ましくは、第三のプライマーは、配列番号11又は配列番号38に定義される配列を含む。
【0027】
いくつかの実施の形態において、キットは、DNA増幅を実行するための構成要素を更に含み、好ましくは、該構成要素は、緩衝剤、dNTP、及びTaqポリメラーゼの少なくとも1つを含む。
【0028】
本発明の別の態様において、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号15、配列番号31、配列番号39、配列番号40又は配列番号41のいずれか1つ、好ましくは配列番号3、配列番号15、配列番号31、配列番号39、配列番号40又は配列番号41の1つ、より好ましくは配列番号3、配列番号15及び配列番号31の1つによって定義される配列を含む、DNA増幅のためのプライマーが提供される。
【0029】
本発明の別の態様において、二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異を検出する方法であって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較した際、マイクロサテライトのフレームシフトであり、上記方法が、
a)ヒトDNAを含む試料の第一のアリコートを準備することと、
b)第一のアリコートに、DNA増幅のために必要な構成要素、第一のプライマー及び第二のプライマーであって、
第一のプライマーが二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出に適しており、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列にミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~4つの、又は1つ~3つのヌクレオチドを除いて、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列に相補的なヌクレオチドの領域を含み、かつ第一のプライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘ってアニーリングし、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチド、及びフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチドにアニーリングするように設定され、
第二のプライマーがマイクロサテライトの3’下流のターゲット配列にアニーリングするように設定される、
第一のプライマー及び第二のプライマーを添加して、第一の反応混合物を形成することと、
なお、第一のプライマーがDNA分子のセンス鎖にアニーリングするように設定され、第二のプライマーがDNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングするように設定されるか、又は第一のプライマーがDNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングするように設定され、第二のプライマーがDNA分子のセンス鎖にアニーリングするように設定される;
c)第一の反応混合物に対してDNA増幅を実行することと、
d)増幅産物が、第一の反応混合物のDNA増幅から産生された際に、試料中のフレームシフト突然変異の存在を検出することと、
を含む、方法が提供される。いくつかの実施の形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列にミスマッチし、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチする、1つ~3つのヌクレオチドを含む。
【0030】
いくつかの実施の形態において、本方法は、
a)第一のアリコートに、
I)第二のプライマー及び第三のプライマーであって、第三のプライマーが、第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、第三のプライマーが、第一のプライマーと同じ鎖及び第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第二のプライマー及び第三のプライマー、若しくは、
II)対照プライマー対、
のいずれかを更に添加して、第一の反応混合物を形成すること、又は、
b)ヒトDNAを含む試料の第二のアリコートを準備し、第二のアリコートに、DNA増幅に必要な構成要素、及び、
I)第二のプライマー及び第三のプライマーであって、第三のプライマーが、第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、第三のプライマーが、第一のプライマーと同じ鎖及び第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第二のプライマー及び第三のプライマー、若しくは、
II)対照プライマー対、
のいずれかを添加して、第二の反応混合物を形成することと、
反応混合物に対してDNA増幅を実行し、第二の反応混合物のDNA増幅から増幅産物が産生された際、DNA増幅が成功裡に行われていることを検出することと、
を更に含む。
【0031】
いくつかの実施の形態において、DNA増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、PCRが複数のサイクルの変性、アニーリング及び伸長を含む。
【0032】
いくつかの実施の形態において、反応混合物(複数の場合もある)は、1×又は0.5×緩衝剤、0.4mM dNTP、0.2μM順方向プライマー、及び0.2μM逆方向プライマーを含む。いくつかの実施の形態において、反応混合物(複数の場合もある)は、200μMのdNTP最終濃度を含む。いくつかの実施の形態において、反応混合物(複数の場合もある)は、最終濃度として、1×又は0.5×緩衝剤、200μM dNTP、0.2μM順方向プライマー及び0.2μM逆方向プライマーを含む。
【0033】
いくつかの実施の形態において、工程d)は、ゲル上でPCR反応の産物を泳動し、バンドを視覚化して、DNA増幅が成功していることを確認することを更に含む。
【0034】
いくつかの実施の形態において、方法は、DNA配列決定のため、バンドを切り出す工程f)を更に含む。
【0035】
いくつかの実施の形態において、フレームシフト突然変異は、TGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、ターゲット配列は、配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7若しくは配列番号39のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号2によって定義される配列を含むか、又はフレームシフト突然変異は、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、ターゲット配列は、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号15、配列番号31、配列番号40若しくは配列番号41によって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号10によって定義される配列を含む。
【0036】
いくつかの実施の形態において、マイクロサテライトは、TGFBR2遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号19に記載の配列からなり、第三のプライマーは、配列番号1によって定義される配列を含むか、又はマイクロサテライトは、ASTE1遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号32に記載の配列を含み、第三のプライマーは、配列番号11若しくは配列番号38によって定義される配列を含む。
【0037】
本発明の別の態様において、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異と関連する疾患を診断する方法であって、本発明に記載のマイクロサテライト中の突然変異を検出する方法を実行することを含む、方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施の形態において、方法は、フレームシフト突然変異と関連する疾患又は障害を患う患者が、該患者由来の試料において、工程d)でフレームシフト突然変異が検出されたならば、上記フレームシフト突然変異をターゲットとする治療に適していると決定することを更に含む。
【0039】
いくつかの実施の形態において、フレームシフト突然変異と関連する疾患又は障害は癌である。
【0040】
いくつかの実施の形態において、疾患若しくは障害は結腸直腸癌若しくは胃癌であり、フレームシフト突然変異をターゲットとする治療はFMPV-1であり、ここでフレームシフト突然変異はTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含むか、又は疾患若しくは障害は子宮内膜癌若しくは胃癌であり、フレームシフト突然変異をターゲットとする治療はFMPV-2であり、フレームシフト突然変異はASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含む。
【0041】
いくつかの実施の形態において、方法は、FMPV-1又はFMPV-2で、患者を治療する工程e)を更に含む。
【0042】
いくつかの実施の形態において、マイクロサテライトは、TGFBR2遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号19に記載の配列を含み、第三のプライマーは、配列番号1によって定義される配列を含む。
【0043】
いくつかの実施の形態において、マイクロサテライトは、ASTE1遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号32に記載の配列を含み、第三のプライマーは、配列番号11又は配列番号38によって定義される配列を含む。
【0044】
いくつかの実施の形態において、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7若しくは配列番号39のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号2によって定義される配列を含み、又は第一のプライマーは、配列番号15、配列番号31、配列番号40若しくは配列番号41によって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号10によって定義される配列を含む。
【0045】
いくつかの実施の形態において、試料は、セルフリーDNAを含む液体生検であり、好ましくは、液体生検は血漿である。
【0046】
いくつかの実施の形態において、DNA増幅はPCRであり、PCRは高ストリンジェンシー条件で実行され、任意選択で、高ストリンジェンシー条件は、
a)反応の推奨されるアニーリング温度より、少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10℃高い温度で、PCRのアニーリング工程を実行すること、
b)サイクルあたり、わずか30秒間、好ましくは15秒間、PCRのアニーリング工程を実行すること、
c)0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×又は0.75×未満での緩衝剤濃度で、DNA増幅を実行すること、
d)アンモニウムイオンを含む緩衝剤中でDNA増幅を実行すること、及び、
e)25、20、15、若しくは10のサイクルのPCR又は25未満、20未満、15未満、若しくは10未満のサイクルのPCRを実行すること、
の少なくとも1つを含む。
【0047】
いくつかの実施の形態において、緩衝剤には、アンモニウム(NH )イオンが含まれる。
【0048】
いくつかの実施の形態において、緩衝剤には、アンモニウム(NH )イオンが含まれ、1×の濃度である。
【0049】
いくつかの実施の形態において、緩衝剤は1×Key緩衝剤である。
【0050】
定義
本明細書において、以下の用語は、以下のように理解され得る:
【0051】
用語「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、及び「核酸分子」は、本明細書において交換可能に用いられ、多数のヌクレオチドのポリマーを指す。核酸分子は、天然存在核酸(すなわちDNA又はRNA)を含んでもよく、又は人工核酸、例えばペプチド核酸、モルホリン及びロックド核酸並びにグリコール核酸及びトレオース核酸を含んでもよい。
【0052】
用語「ヌクレオチド」は、本明細書で用いられる際、天然存在ヌクレオチド及び細胞酵素によって認識される合成ヌクレオチド類似体を指す。
【0053】
語句「高ストリンジェンシー条件」は、ターゲット配列に対する非常に高いレベルのマッチングがある場合にのみ、DNA増幅成功を可能にする条件を意味する。言い換えると、ターゲット配列に対するより低い配列マッチングを持つプライマーはアニーリング不能であるため、条件は、DNA増幅に関して最適以下である。こうした最適以下の条件は、温度、サイクル数、イオン強度及び核酸配列の対形成を可能にする或る特定の有機溶媒の存在の1つ以上を改変することによって生じ得る。高ストリンジェンシー条件に関する更なる詳細を以下に提供する。特に、高ストリンジェンシー条件には、PCRのアニーリング工程が、反応の推奨されるアニーリング温度よりも少なくとも2%、5%、又は10%高い温度で実行される場合が含まれ得る。代替的には、PCRのアニーリング工程は、反応の推奨されるアニーリング温度より、少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10℃高い温度で実行される。いくつかの実施の形態において、PCRのアニーリング工程は、反応の推奨されるアニーリング温度よりも4℃高い温度で実行される。例えば、アニーリング工程は、以下に更に詳述するように、44℃~61℃又は62℃で実行されてもよい。アニーリング工程は、付加的には又は代替的には、反応に関して推奨されるよりもより短い期間で実行されてもよく、例えばアニーリング工程は、45秒間から30秒間又は15秒間に減少されてもよい。付加的には又は代替的には、高ストリンジェンシー条件には、反応に関して推奨される濃度よりもより低い緩衝剤濃度、例えば、反応中の緩衝剤の推奨される濃度の10%、20%、30%、40%、50%、60%又は75%を用いることが含まれてもよく、特に、緩衝剤濃度は、0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×又は0.75×未満であってもよい。付加的には又は代替的には、高ストリンジェンシー条件には、反応中で、よりストリンジェントな緩衝剤、例えばアンモニウムイオン(NH )を含む緩衝剤、例えばKey緩衝剤を用いることが含まれてもよい。よりストリンジェントな緩衝剤は、1×濃度で用いられてもよい。いくつかの実施の形態において、1×Key緩衝剤を用いる。付加的には又は代替的には、高ストリンジェンシー条件には、PCRのサイクル数を減少させることが含まれてもよく、例えば、30サイクル、35サイクル又は40サイクルと比較して、25サイクル、20サイクル、15サイクル又は更に10サイクルを実行してもよい。いくつかの実施の形態において、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下のサイクルのPCRを実行する。上記条件の任意の1つ以上を用いてもよい。
【0054】
用語「フレームシフト」は、配列中でシフトを引き起こすDNA配列中の欠失又は挿入によって引き起こされる遺伝子突然変異を意味し、ヌクレオチドが、異なる一連のコドンにグループ分けされ、この配列から翻訳される異なるタンパク質を生じることを意味する。多くの場合、フレームシフトは、タンパク質配列中に未成熟停止コドンを引き起こし、切除(truncated)タンパク質配列を生じ得る。例えば、TGFBR2中の1つのこうしたフレームシフト突然変異は、単一アデニンの欠失であり、これは、10個のアデニン(a10;これはマイクロサテライトである)の配列が、9つのアデニン(a9)に減少することを意味する。野生型TGFBR2の配列は、配列番号34に示され、a9 TGFBR2の配列は、配列番号35に示される。別のこうしたフレームシフトは、ASTE1中の単一アデニンの欠失であり、これは、11個のアデニン(a11;これはマイクロサテライトである)の配列が、10個のアデニン(a10)に減少することを意味する。野生型ASTE1の配列は、配列番号36に示され、a10 ASTE1の配列は、配列番号37に示される。
【0055】
用語「マイクロサテライト」は、配列が、典型的には5回~50回反復される、DNAの領域を意味する。マイクロサテライトはまた、突然変異に特に脆弱であり得る。マイクロサテライトはまた、「短いタンデム反復(STR)」としても知られ得る。マイクロサテライトは、単一ヌクレオチド、例えばA、G、C若しくはTの反復シリーズであってもよいし、又はより長いモチーフ、例えばTA(ジヌクレオチド反復)若しくはGTC(トリヌクレオチド反復)の反復シリーズであってもよい。
【0056】
分子生物学において既知であるように、グアニン(G)及びシトシン(C)、並びにアデニン(A)及びチミン(T)は、相補的ヌクレオチドであり、したがって、例えばDNA複製中に対形成するであろう。本発明において、「ミスマッチ」又は「ミスマッチした」ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドの欠失、ヌクレオチドの付加、又は相補的ヌクレオチドの非相補的(すなわちミスマッチ)ヌクレオチドでの置換であってもよい。例えば、ターゲットグアニン(G)に対するミスマッチは、アデニン(A)、チミン(T)又は別のグアニン(G)であってもよいが、シトシン(C)であってはならない。特に、フレームシフト突然変異が、マイクロサテライト長の増加を引き起こす場合、ヌクレオチドの付加は、野生型マイクロサテライトからフレームシフト突然変異マイクロサテライトを区別するために特に有用である。対照的に、フレームシフト突然変異がマイクロサテライト長の減少を引き起こす場合、ヌクレオチドの欠失は、野生型マイクロサテライトからフレームシフト突然変異マイクロサテライトを区別するために特に有用である。一例において、この欠失は、マイクロサテライト配列からの単一ヌクレオチドの欠失である。
【0057】
また、分子生物学の分野で既知であるように、ヒトにおいて、DNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖の2つの鎖で形成される二本鎖DNAらせんで形成される。したがって、用語「センス鎖」は、コード鎖として、当業者に知られ、5’から3’方向で転写可能ヌクレオチドを所持し、用語「アンチセンス鎖」は、5’から3’方向のコード鎖に対して逆相補配列を有し、mRNA転写のテンプレートである鎖として、当業者に知られるであろう。
【0058】
用語「プライマー」は、ターゲティングDNA増幅を開始するために用いられる、短い一本鎖DNA配列を指す。これは典型的には長さ18塩基~24塩基であるが、いくつかの実施の形態において、この典型的な長さより短いか又は長い。「プライマー対」は、これらの2つのプライマーのアニーリング部位の間にある特異的ターゲット配列のDNA増幅を引き起こす2つのこうしたプライマーである。
【0059】
用語「治療すること(treating)」は、任意の部分的又は完全治療を指し、疾患又は症状を阻害すること、すなわちその発展を抑止すること、及び疾患又は症状を軽減すること、すなわち疾患又は症状の後退を引き起こすことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】異なる量のテンプレートDNAを用い、プライマー対P1及びP2を用いて、10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の2つの電気泳動ゲルを示す図である。図1Aは、ナノグラム(ng)でのテンプレートDNAの量の増加に伴う結果を示し、図1Bは、ピコグラム(pg)でのテンプレートDNAの量の増加に伴う結果を示す。
図2】プライマーP2と組み合わせたプライマーP1及びP4に関して、53℃のアニーリング温度及び減少したサイクル数(25)を用いたよりストリンジェントな条件で、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
図3】プライマー対P4及びP2に関して、55℃のアニーリング温度を用いた更によりストリンジェントな条件で、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
図4】プライマーP2と組み合わせたプライマーP6及びP10に関して、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。特に、アスタリスク()で示したレーンは、低緩衝剤濃度で実行したPCR反応の産物に関するものであった。
図5】プライマーP2と組み合わせたプライマーP4、P6及びP10に関して(並びにプライマーP2と組み合わせたプライマーP1を陽性対照として)、ますますストリンジェントなPCR条件で、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)に対して実行したPCR反応の産物の3つの電気泳動ゲルを示す図である。図5Aにおける反応は、55℃のアニーリング温度で30サイクル実行された。図5Bにおける反応は56℃のアニーリング温度で25サイクル実行された。図5Cにおける反応は、58℃のアニーリング温度で25サイクル実行された。ここでも、アスタリスク()で示したレーンは、低緩衝剤濃度で実行したPCR反応の産物に関するものであった。
図6】プライマーP2と組み合わせたプライマーP1、P6及びP10に関して、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の2つの電気泳動ゲルを示す図である。特に、アスタリスク()で示したレーンは、低緩衝剤濃度で実行したPCR反応の産物に関するものであった。図6Aにおける反応は、プライマー対を用いて実行され、図6Bにおける反応は3つのプライマーを用いて実行された。
図7】プライマーP2と組み合わせたプライマーP1、P4及びP10に関して、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。これには、プライマーP1及びP2の両方並びにプライマーP4又はP10を含む、3プライマー反応が含まれる。
図8】列挙するプライマーの組み合わせの各々に関する、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10a TGFBR2マイクロサテライトテンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図であり、これらのプライマーがすべて機能することを立証する。
図9】プライマーP1、P4.1、P4.2及びP10.1に関して、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)に対して実行したPCR反応の産物の2つの電気泳動ゲルを示す図であり、ここでPCR反応は、標準Taq(KCl)緩衝剤又はKey緩衝剤(アンモニウムイオンNH を含有する)中のいずれかで実行された。図9A中の反応は、56℃のアニーリング温度で実行され、図9B中の反応は、58℃のアニーリング温度で実行された。
図10】プライマーP2と組み合わせたプライマーP4、P4.1、P4.2及びP6に関して、9aマイクロサテライトテンプレートTGFBR2 DNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応のゲル電気泳動を示す図である。図10A中の反応は標準Taq緩衝剤を用いて実行され、図10B中の反応は、Key緩衝剤(アンモニウム、NH を含有する)を用いて実行された。
図11】プライマーP2と組み合わせたプライマーP4、P4.1、P4.2及びP6に関して、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型)に対して実行したPCR反応のゲル電気泳動を示す図である。図11A中の反応は、標準Taq緩衝剤(アンモニウムを含まない)を用いて実行され、図11B中の反応は、Key緩衝剤(アンモニウム、NH を含む)を用いて実行された。
図12】a10/a9マイクロサテライトを含むTGFBR2の断片を定義するプライマーを用いた、MSI-CRC及びマイクロサテライト安定性CRC(MSS-CRC)患者からのTGFBR2 cfDNAの検出結果を示す図である。TGFbR2 a9(突然変異体)マイクロサテライトの検出のために設計されたプライマー;a9及びa10 TGFbR2マイクロサテライトの両方の検出のための対照プライマー。
図13】異なるアニーリング温度で、プライマーP2及びP4を用いた、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体、F1)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型、F2)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
図14】異なるアニーリング温度で、プライマーP2及びP4を用いた、(A)9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体、F1)及び(B)10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型、F2)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
図15】57℃のアニーリング温度を用い、標準Taq(KCl)緩衝剤を用い、プライマーP4を用いて、9aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち突然変異体、F1)及び10aマイクロサテライトTGFBR2テンプレートDNA(すなわち野生型、F2)に対して実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。プライマーP2はすべての反応に関する順方向プライマーであり、プライマーP1は陽性対照逆方向プライマーであった。
図16】或る範囲のアニーリング温度を用い、プライマーP11及びP16を用いて、(A)10aマイクロサテライトASTE1テンプレートDNA(すなわち突然変異体、F3)及び(B)11aマイクロサテライトASTE1テンプレートDNA(すなわち野生型、F4)で実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
図17】或る範囲のアニーリング温度を用い、プライマーP24を用いて、(A)10マイクロサテライトASTE1テンプレートDNA(すなわち突然変異体、F3、ゲル中では「M」と称される)及び(B)11aマイクロサテライトASTE1テンプレートDNA(すなわち野生型、F4、ゲル中では「Wt」と称される)で実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
図18】或る範囲のアニーリング温度を用い、プライマーP12を用いて、(A)10マイクロサテライトASTE1テンプレートDNA(すなわち突然変異体、F3、ゲル中では「M」と称される)及び(B)11aマイクロサテライトASTE1テンプレートDNA(すなわち野生型、F4、ゲル中では「Wt」と称される)で実行したPCR反応の産物の電気泳動ゲルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
上記を考慮して、疾患において関連し得るフレームシフト突然変異、例えばTGFBR2又はASTE1のマイクロサテライト中のフレームシフト突然変異の特異的検出のためのツールを発展させる必要性がある。このツールが液体生検(例えば血漿)中のセルフリーDNA(cfDNA)の検出に適していることが更に必要とされる。
【0062】
したがって、本発明の1つの態様において、二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出のためのプライマーであって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較して、マイクロサテライトのフレームシフトであり、プライマーに、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~4つ、又は1つ~3つのヌクレオチドが含まれることを除いて、プライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するDNA分子のアンチセンス又はセンス鎖のターゲット配列に相補的である少なくとも10個のヌクレオチドの領域を含む、プライマーが提供される。いくつかの実施形態において、プライマーには、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~3つのヌクレオチドが含まれる。
【0063】
本明細書に開示されるように、疾患関連フレームシフト突然変異が生じ得る多くのマイクロサテライトがある。例えば、フレームシフトは、ASTE1、ACVR22、TAF1B、KIAA2018、SLC22A9及びTGFBR2より選択される任意の遺伝子中のマイクロサテライト中にあってもよい。いくつかの実施形態において、フレームシフトは、TGFBR2又はASTE1中のマイクロサテライト中にある。
【0064】
いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつマイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチド、又は少なくとも2つのヌクレオチド及び/又はフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する少なくとも1つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチド及び/又はフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される。プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの一端又は両端に隣接する少なくとも3つ、4つ、又は5つのヌクレオチドにアニーリングしてもよい。
【0065】
「フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘ってアニーリングする」に言及された場合、これは、プライマーが、ターゲット配列(フレームシフト突然変異を有する)中のマイクロサテライトの少なくとも全長に亘って、ターゲット配列にアニーリングすることを意味すると理解されるものとする。例えば、ターゲット配列が、a9 TGFBR2である場合、プライマーはa9マイクロサテライトの全長に関して、ターゲット配列にアニーリングする。ターゲット配列が、a10 ASTE1である場合、プライマーはa10マイクロサテライトの全長に関して、ターゲット配列にアニーリングする。
【0066】
いくつかの実施形態において、プライマーは、対応する野生型マイクロサテライト配列の長さに亘ってアニーリングせず、プライマーの3’端は野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にアニーリングしない。これは、プライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列にアニーリングするが、野生型マイクロサテライトを有する対応する配列にアニーリングしないという利点を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する1~15、好ましくは1~13のヌクレオチドにアニーリングする(すなわち、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含む対応する配列にアニーリングする、プライマーに関してマイクロサテライトの3’の1~15、好ましくは1~13のヌクレオチドを含む)。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する1つ、2つ、3つ、5つ又は13、好ましくは1つ、2つ、又は13のヌクレオチドにアニーリングする(すなわち、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含む対応する配列にアニーリングする、プライマーに関してマイクロサテライトの3’の1つ、2つ、3つ、5つ又は13、好ましくは1つ、2つ、又は13のヌクレオチドを含む)。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する2つ又は3つのヌクレオチドにアニーリングし、いくつかの実施形態において、2つ又は3つのヌクレオチドはGCクランプを形成する。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつプライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’にアニーリングし、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトに隣接するヌクレオチドにアニーリングする、2つ、3つ、5つ又は13、好ましくは1つ、2つ、5つ又は13のヌクレオチドを含むか又はこうしたヌクレオチドのみからなる。これは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列にアニーリングするプライマーが、5’から3’方向に伸長可能であり、それによってフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列の複製を可能にするという利点を提供する。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する、1つ、2つ、3つ又は5つのヌクレオチドにアニーリングし、フレームシフト突然変異はTGFBR2中のマイクロサテライト中にある。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する、2つ、3つ又は13、好ましくは2つ又は13のヌクレオチドにアニーリングし、フレームシフト突然変異はASTE1中のマイクロサテライト中にある。
【0068】
いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11又は12のヌクレオチドにアニーリングする。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する1つ、8つ又は12のヌクレオチドにアニーリングする。プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する任意の上述の数のヌクレオチドにアニーリングすることも可能である。
【0069】
いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも5つ又は少なくとも12のヌクレオチドに、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも13のヌクレオチドにアニーリングするように設定される。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する、1つ、8つ又は12のヌクレオチドに、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも13、好ましくは2つ、3つ、5つ又は13のヌクレオチドにアニーリングするように設定される。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する12のヌクレオチドに、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する2つのヌクレオチドに、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する8つのヌクレオチドに、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する5つのヌクレオチドに、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する12のヌクレオチドに、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する1つのヌクレオチドに、又はフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する1つのヌクレオチドに、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する13のヌクレオチドにアニーリングするように設定される。
【0070】
いくつかの実施形態において、プライマーのヌクレオチドの少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%が、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチドにアニーリングする。言い換えると、プライマーを構成するヌクレオチドの少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%が、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する(すなわち、ターゲット配列に関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する)ヌクレオチドにアニーリングする。いくつかの実施形態において、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチドにアニーリングするプライマーの部分はまた、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもアニーリングする。これは、プライマーが所望のターゲット配列に特異的であるという利点を提供する。いくつかの実施形態において、プライマーのヌクレオチドの少なくとも50%は、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチドにアニーリングする(すなわち、ターゲット配列に関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接するヌクレオチドにアニーリングする)。
【0071】
いくつかの実施形態において、プライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチド(複数の場合もある)にアニーリングするプライマーのヌクレオチド(複数の場合もある)は、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異を有するターゲット配列中の対応するヌクレオチド(複数の場合もある)に100%相補的である。これは、プライマーがターゲット配列に特異的であるという利点を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、プライマーは、16~30のヌクレオチドのみからなる。好ましくは、プライマーは、16~25のヌクレオチド又は16~24のヌクレオチドのみからなる。更に好ましくは、プライマーは、17~24、又は17~23のヌクレオチドのみからなる。
【0073】
いくつかの実施形態において、プライマーは、単離されるか又は組換えである。いくつかの実施形態において、プライマーは、長さ50ヌクレオチド、30ヌクレオチド又は20ヌクレオチド未満である。
【0074】
いくつかの実施形態において、プライマーは、22、23又は24のヌクレオチドのみからなる。
【0075】
いくつかの実施形態において、野生型マイクロサテライト配列は、ヒトゲノムDNA由来の配列である。
【0076】
いくつかの実施形態において、プライマーは、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ、2つ、3つ又は4つのヌクレオチドを含む。これは、プライマーが、1つ~4つのこうしたミスマッチを含有するが、5つ以上のこうしたミスマッチを含有しないことを意味する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、マイクロサテライトの3’下流又はマイクロサテライト内にアニーリングするプライマーの位置中に位置する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’下流にアニーリングするプライマーの位置中に位置し、かつ少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、マイクロサテライト内に位置する。いくつかの実施形態において、プライマーは、マイクロサテライトの3’下流にアニーリングするプライマーの位置中に位置する、1つのみのミスマッチヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、マイクロサテライトの3’下流にアニーリングするプライマーの位置中に位置する1つのミスマッチヌクレオチド、及びマイクロサテライト内に位置する2つのミスマッチヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’下流にアニーリングするプライマーの位置中に位置する1つのミスマッチヌクレオチド、及びマイクロサテライト内に位置する1つのミスマッチヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライト内に位置する3つのミスマッチヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライト内に位置する1つのミスマッチヌクレオチド、及びマイクロサテライトの3’下流にアニーリングするプライマーの位置中に位置する2つのミスマッチヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態において、ミスマッチヌクレオチドはすべて、マイクロサテライトの3’下流又はマイクロサテライト内でアニーリングする、プライマーの位置中に位置する。いくつかの実施形態において、ミスマッチヌクレオチドはすべて、マイクロサテライト内でアニーリングするプライマーの位置中に位置する。
【0077】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、プライマーに関してマイクロサテライトの3’端の5’上流又は3’下流の3ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の5ヌクレオチド以内にある。好ましくは、ミスマッチヌクレオチドはすべて、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の5’上流又は3’下流の3ヌクレオチド以内にある。
【0078】
プライマー中の各ミスマッチは、ターゲット配列及び野生型配列中の対応するヌクレオチドにミスマッチである任意のヌクレオチド(例えばA、T、C又はG)へのヌクレオチド置換であってもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、チミン(T)のアデニン(A)での置換、アデニン(A)のグアニン(G)での置換、チミン(T)のシトシン(C)での置換、又はシトシン(C)のグアニン(G)での置換である。
【0079】
いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドでミスマッチヌクレオチドを有する。ミスマッチは、ターゲット配列及び野生型配列中の対応するヌクレオチドにミスマッチした任意のヌクレオチドへの置換であり、いくつかの実施形態において、ミスマッチヌクレオチドは、G、A又はT、好ましくはGである。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドで、及びマイクロサテライトの3’端の5’上流の最初のヌクレオチドでミスマッチヌクレオチドを有する。これらの実施形態において、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドは、G、A又はT、好ましくはGであってもよく、かつマイクロサテライトの3’端の5’上流の最初のヌクレオチドは、G、C又はA、好ましくはC又はAであってもよい。いくつかの実施形態において、プライマーは、マイクロサテライトに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドで、マイクロサテライトの3’端の5’上流の最初のヌクレオチドで、及びマイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドで、ミスマッチヌクレオチドを有する。これらの実施形態において、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドは、G、A又はT、好ましくはGであってもよく、マイクロサテライトの3’端の5’上流の最初のヌクレオチドは、G、C又はA、好ましくはCであってもよく、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドは、G、C又はA、好ましくはAであってもよい。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドで、及びマイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドで、ミスマッチヌクレオチドを有する。これらの実施形態において、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドは、G、A又はT、好ましくはGであってもよく、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドは、G、C又はA、好ましくはAであってもよい。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドで、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドで、及びマイクロサテライトの3’端の3’下流の4番目のヌクレオチドで、ミスマッチヌクレオチドを有する。これらの実施形態において、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドは、G、A又はT、好ましくはGであってもよく、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドは、G、C又はA、好ましくはAであってもよく、マイクロサテライトの3’端の3’下流の4番目のヌクレオチドは、A、G又はC、好ましくはCであってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドにある1つのみのミスマッチを有し、好ましくはマイクロサテライトの3’端の3’下流の2番目のヌクレオチドはGである。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号39の配列を含むか又は該配列からなり、XはA、G又はTである。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号3の配列を含むか又は該配列のみからなる。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の5’上流の最初の、3番目の及び4番目のヌクレオチドでミスマッチヌクレオチドを有する。ミスマッチは、ターゲット配列及び野生型配列中の対応するヌクレオチドとミスマッチである、任意のヌクレオチドに対する置換である。いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の5’上流の最初の、3番目の及び4番目のヌクレオチドである、3つのみのミスマッチヌクレオチドを有する。これらの実施形態において、マイクロサテライトの3’端の5’上流の最初のヌクレオチドがCであり、マイクロサテライトの3’端の5’上流の3番目のヌクレオチドがAであり、マイクロサテライトの3’端の5’上流の4番目のヌクレオチドがAであることが好ましい。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号40の配列を含むか又は該配列からなり、X、X及びXの各々は、独立に、A、C又はGである。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号15の配列を含むか又は該配列のみからなる。
【0081】
いくつかの実施形態において、プライマーは、プライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドで、かつプライマーに関して、マイクロサテライトの3’端の3’下流の5番目及び12番目のヌクレオチドで、ミスマッチヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態において、プライマーは、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチド、並びにマイクロサテライトの3’端の3’下流の5番目及び12番目のヌクレオチドにある、3つのみのミスマッチヌクレオチドを有する。これらの実施形態において、マイクロサテライトの3’端の5’上流の2番目のヌクレオチドがCであり、マイクロサテライトの3’端の3’下流の5番目のヌクレオチドがGであり、マイクロサテライトの3’端の3’下流の12番目のヌクレオチドがCであることが好ましい。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号41の配列を含むか又は該配列からなり、XはA、C又はGであり、XはA、C又はGであり、XはC、G又はTである。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号31の配列を含むか又は該配列のみからなる。
【0082】
上に説明されるように、プライマーには、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列にミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ、2つ、3つ又は4つのヌクレオチドが含まれる。これは、プライマーに、マイクロサテライト中に突然変異を含有するターゲット配列にミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、少なくとも1つであり4つ以下のヌクレオチドが含まれることを意味する。
【0083】
本明細書に開示されるような、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異の背景での、こうしたプライマーの使用の成功は、本発明者らに驚きとして迎えられた。本発明以前には、ターゲット配列中のマイクロサテライトに亘ってアニーリングするプライマーを使用して、上記マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異を区別することは、これらの領域が非常に反復性の性質を持つため、不可能であろうと考えられていた。フレームシフトマイクロサテライトにアニーリングするように設計されたプライマーは、結合アフィニティがより低くても、野生型配列にもアニーリングすると考えられたため、こうしたプライマーは、フレームシフト突然変異と野生型マイクロサテライト配列とを区別するために用いることは出来ないと考えられていた。
【0084】
このプライマーアプローチは、このプライマーが、野生型ターゲット配列に更にミスマッチを有し、したがって野生型ターゲット配列に対して更に減少したアフィニティを有するため、プライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列に少なくとも1つのミスマッチ(及び最大4つのミスマッチ)を有するとともに、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にミスマッチであることを除いて、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列に相補的であるプライマーを用いることによって、フレームシフト突然変異体と野生型マイクロサテライトとの区別を可能にする。言い換えると、プライマーは、野生型マイクロサテライトを有する対応する配列に対するミスマッチを含むように、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列に対してモデリングされる。プライマーとフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトとの間の更なるミスマッチ(複数の場合もある)は、プライマーと野生型マイクロサテライトを含有する配列との間の更なる不安定性及び反発を生じる。
【0085】
フレームシフトマイクロサテライトと野生型マイクロサテライトとの区別は、例えば、こうしたフレームシフトが疾患駆動因子及び/又はあり得る療法ターゲットであり得る癌において、こうしたフレームシフトを検出することが重要である場合に、非常に有用な検出ツールを提供する。本明細書に開示されるように、疾患関連フレームシフト突然変異が起こり得る多くのマイクロサテライトがある。例えば、フレームシフトは、ASTE1、ACVR22、TAF1B、KIAA2018、SLC22A9及びTGFBR2より選択される任意の遺伝子中のマイクロサテライト中にあってもよい。好ましくは、フレームシフトは、ASTE1又はTGFBR2中のマイクロサテライト中にある。
【0086】
本発明の別の態様において、二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異を検出するためのキットであって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較した際の、マイクロサテライトのフレームシフトであり、キットが本発明の第一のプライマー及び第二のプライマーを含み、第二のプライマーが、第一のプライマーがアニーリングするように設定される鎖に対してDNA分子の反対の鎖上のマイクロサテライトの3’下流のターゲット配列にアニーリングするように設定される、キットが提供される。
【0087】
言い換えると、これは、本発明の検出法のためのプライマー対を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異は、TGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7又は配列番号39のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは配列番号2によって定義される配列を含む。用語「含む(comprises)」の使用にはまた、上に列挙される配列のみからなるプライマーも含まれることが理解されるであろう。本明細書に開示のデータは、これらのプライマーがTGFBR2内のマイクロサテライト中のフレームシフト突然変異(a9とも称され、a10が野生型マイクロサテライトである)の検出に使用するため、本発明の範囲内で特に有用であることを立証する。しかし、代替的には、フレームシフト突然変異は、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあってもよく、第一のプライマーは、配列番号11~配列番号16のいずれか1つによって定義される配列を含んでもよく、及び/又は第二のプライマーは、配列番号10によって定義される配列を含む。いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異は、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号15、配列番号31、配列番号40又は配列番号41によって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号10によって定義される配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、キットは、第三のプライマーを更に含み、第三のプライマーは、第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、かつ第三のプライマーは、第一のプライマーと同じ鎖及び第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定されるか、又はキットは別の対照プライマー対を含む。例えば、フレームシフト突然変異がTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号19の残基270~残基278に記載の配列を含む例では、第三のプライマーは配列番号1に記載の配列を含んでもよい。フレームシフト突然変異がASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にある例では、第三のプライマーは、配列番号11又は配列番号38に記載の配列を含んでもよい。
【0090】
対照プライマー対は、例えば本発明のプライマーでフレームシフト突然変異が検出されないことが、DNA増幅自体のエラー又は失敗ではなく、試料中にフレームシフトが存在しないことの確認となり得るように、DNA増幅が成功裡に実行されたことを確認するための、キットで実行される任意のDNA増幅に関する陽性対照と理解され得る。対照プライマー対は、試料中に存在することが知られるターゲット配列(例えばフレームシフト突然変異と野生型配列との間の保存配列)を増幅可能な、任意のプライマー対であってもよい。別個の対照プライマー対の代わりに、同じ目的(すなわち陽性対照)のため、本発明の第二のプライマーとともに第三のプライマーを用いてもよい。
【0091】
好ましくは、野生型マイクロサテライトを含有する配列は、配列番号19に定義される配列を含む。上述のように、これは、疾患、例えば胃癌(GC)及び結腸直腸癌(CRC)と関連し得る突然変異が起きている可能性がある、TGFBR2中のマイクロサテライトである。いくつかの実施形態において、野生型マイクロサテライトを含有する配列は、配列番号32に定義される配列を含む。これは、疾患、例えば子宮内膜癌及び胃癌と関連し得る突然変異が起きている可能性がある、ASTE1中のマイクロサテライトである。
【0092】
更に好ましくは、第三のプライマーは、配列番号1によって定義される配列を含む。また、用語「含む」の使用には、この配列のみからなるプライマーも含まれることが理解されるであろう。本明細書に記載されるように、これは、TGFBR2中のa10マイクロサテライトの検出に関する陽性対照プライマー対の一部分として使用可能であり、以下に開示する実験データのように、成功裡に機能することが立証されている、プライマーの適切な例である。いくつかの実施形態において、プライマーは、配列番号11によって定義される配列を含む。これは、ASTE1中のa11マイクロサテライトの検出に関する陽性対照プライマー対の一部分として使用可能であり、図18において、成功裡に機能することが立証されている、プライマーの適切な例である。
【0093】
いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含むターゲット配列は、配列番号19又は配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含む。上述のように、これは、疾患、例えば胃癌(GC)及び結腸直腸癌(CRC)と関連し得る、TGFBR2中のフレームシフトマイクロサテライトである。いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含むターゲット配列は、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含む。上述のように、これは、疾患、例えば胃癌(GC)及び子宮内膜癌と関連し得る、ASTE1中のフレームシフトマイクロサテライトである。
【0094】
好ましくは、キットは、使用のための説明書を更に含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、キットは、DNA増幅を実行するための構成要素を更に含む。こうした構成要素は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ループ仲介性等温増幅(LAMP)、核酸配列に基づく増幅(NASBA又は3SR)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)を含むDNA増幅のための技術に精通している当業者には既知であろう。当業者は、こうした構成要素が別個に提供されてもよいし、又は必要とされる必要な構成要素の「レディミックス」として市販製品として購入されてもよいことを知っているであろう。
【0096】
任意選択で、これらの構成要素には、緩衝剤、dNTP及び/又はTaqポリメラーゼが含まれてもよい。例えば、この緩衝剤は、10×緩衝剤として提供されてもよく、dNTPは10mM濃度で提供されてもよい。いくつかの実施形態において、緩衝剤にはアンモニウム(NH )イオンが含まれ、任意選択で、1×緩衝剤として提供されてもよい。いくつかの実施形態において、緩衝剤はKey緩衝剤であり、任意選択で1×Key緩衝剤である。
【0097】
本発明の別の態様において、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号15、配列番号31、配列番号39、配列番号40又は配列番号41の任意の1つによって定義される配列を含む、DNA増幅用のプライマーが提供される。また、用語「含む」の使用には、上記に列挙される配列のみからなるプライマーも含まれることが理解されるであろう。上述のように、本明細書に開示のデータは、これらのプライマーが、TGFBR2(a9とも称され、a10が野生型マイクロサテライトである)及びASTE1(a10とも称され、a11が野生型マイクロサテライトである)内のマイクロサテライト中のフレームシフト突然変異の検出において使用するため、本発明の範囲内で特に有用であることを立証する。代替的には、プライマーは、配列番号11~配列番号16、配列番号31、配列番号40及び配列番号41のいずれかによって定義される配列を含んでもよい。また、用語「含む」の使用には、上記に列挙される配列のみからなるプライマーも含まれることが理解されるであろう。
【0098】
本発明の更なる態様において、上記に詳述されるプライマーのいずれかを用いて、二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異を検出する方法であって、突然変異が、対応する野生型マイクロサテライト配列と比較した際に、マイクロサテライトのフレームシフトである、方法が提供される。該方法は、
a)ヒトDNAを含む試料の第一のアリコートを準備することと、
b)第一のアリコートにDNA増幅のための必要な構成要素、第一のプライマー及び第二のプライマーであって、
第一のプライマーが二本鎖DNA分子のターゲット配列中に含有されるマイクロサテライト中の突然変異の検出に適しており、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列に対してミスマッチであり、かつまた野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである1つ~4つ、又は1つ~3つのヌクレオチドを除いて、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列に相補的であるヌクレオチド領域を含み、かつ第二のプライマーが、マイクロサテライトの3’下流のターゲット配列にアニーリングするように設定される、
第一のプライマー及び第二のプライマーを添加して、第一の反応混合物を形成することと、
なお、第一のプライマーがDNA分子のセンス鎖にアニーリングするように設定され、かつ第二のプライマーがDNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングするように設定されるか、又は第一のプライマーがDNA分子のアンチセンス鎖にアニーリングするように設定され、かつ第二のプライマーがDNA分子のセンス鎖にアニーリングするように設定される;
c)第一の反応混合物に対してDNA増幅を実行することと、
d)増幅産物が、第一の反応混合物のDNA増幅から産生される場合、試料中のフレームシフト突然変異の存在を検出することと、
を含む。いくつかの実施形態において、プライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有するターゲット配列にミスマッチであり、かつ野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもミスマッチである、1つ~3つのヌクレオチドを含む。
【0099】
上述のように、DNA増幅には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ループ仲介性等温増幅(LAMP)、核酸配列に基づく増幅(NASBA又は3SR)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)が含まれてもよい。しかし、好ましくは、用いられるDNA増幅はPCRである。
【0100】
好ましくは、DNA増幅は、高ストリンジェンシー条件で実行される。上述のように、高ストリンジェンシー条件は、反応が、ターゲット配列に対して非常に高レベルのマッチングがある場合にのみ、DNA増幅成功を可能にするように、増幅が最適以下である条件である。言い換えると、条件は、ターゲット配列により低い配列マッチングを持つプライマーが、アニーリング不能であるように、DNA増幅に関して最適以下である。こうした最適以下の条件は、温度、サイクル数、イオン強度及び核酸配列の対形成を可能にする或る特定の有機溶媒の存在の1つ以上を改変することによって生じ得る。特に、これには、PCRのアニーリング工程が、反応の推奨されるアニーリング温度よりも少なくとも2%、5%、又は10%高い温度で実行される場合が含まれ得る。代替的には、PCRのアニーリング工程は、反応の推奨されるアニーリング温度より、少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10℃高い温度で実行される。いくつかの実施形態において、PCRのアニーリング工程は、反応の推奨されるアニーリング温度より、4℃高い温度で実行される。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、44℃、44.5℃、45℃、45.5℃、46℃、46.5℃、47℃、47.5℃、48℃、48.5℃、49℃、49.5℃、50℃、50.5℃、51℃、51.5℃、52℃、52.5℃、53℃、53.5℃、54℃、54.5℃、55℃、55.5℃、56℃、56.5℃、57℃、57.5℃、58℃、58.5℃、59℃、59.5℃、60℃、60.5℃又は61℃の温度で実行される。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、54℃~61℃、好ましくは56℃~60℃、より好ましくは56℃~59℃又は56℃~58℃の温度で実行され、好ましくは、フレームシフトはTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にある。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、56.0℃、56.1℃、56.2℃、56.3℃、56.4℃、56.5℃、56.7℃、56.8℃、56.9℃、57.0℃、57.1℃、57.2℃、57.3℃、57.4℃、57.5℃、57.6℃、57.7℃、57.8℃、57.9℃又は58.0℃の温度で実行され、好ましくは、フレームシフトはTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にある。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、57℃の温度で実行され、好ましくは、フレームシフトはTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にある。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、44℃~58℃、好ましくは45℃~58℃又は45℃~56℃、より好ましくは45℃~54.5℃の温度で実行され、好ましくは、フレームシフトはASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にある。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、48℃、48.5℃、49℃、49.5℃、50℃、50.5℃、51℃、51.5℃、52℃、52.5℃、53℃、53.5℃、54℃、54.5℃、55℃、55.5℃、56℃、56.5℃、57℃、57.5℃又は58℃で実行され、好ましくは、フレームシフトはASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にある。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、44.5℃、45℃、45.5℃、46℃、46.5℃、47℃、47.5℃、48℃、48.5℃、49℃、49.5℃、50.0℃、50.5℃、51.0℃、51.5℃、52.0℃、52.5℃、53.0℃、53.5℃、54.0℃、54.5℃、55.0℃、55.5℃、56.0℃、56.5℃、57.0℃又は57.5℃で実行され、好ましくは、フレームシフトはASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にある。
【0101】
いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、56.0℃、56.1℃、56.2℃、56.3℃、56.4℃、56.5℃、56.7℃、56.8℃、56.9℃、57.0℃、57.1℃、57.2℃、57.3℃、57.4℃、57.5℃、57.6℃、57.7℃、57.8℃、57.9℃又は58.0℃の温度で実行され、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7又は配列番号39、好ましくは配列番号3又は配列番号39によって定義される配列を含む。これらの実施形態のいくつかでは、アニーリング工程は、57℃の温度で実行される。
【0102】
いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、48℃、48.5℃、49℃、49.5℃、50℃、50.5℃、51℃、51.5℃、52℃、52.5℃、53℃、53.5℃、54℃、54.5℃、55℃、55.5℃又は56℃の温度で実行され、第一のプライマーは、配列番号15又は配列番号40によって定義される配列を含む。好ましくは、アニーリング工程は、50℃、50.5℃、51℃、51.5℃、52℃、52.5℃又は53℃の温度で実行される。
【0103】
いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、44.5℃、45℃、45.5℃、46℃、46.5℃、47℃、47.5℃、48℃、48.5℃、49℃、49.5℃、50.0℃、50.5℃、51.0℃、51.5℃、52.0℃、52.5℃、53.0℃、53.5℃、54.0℃、54.5℃、55.0℃、55.5℃、56.0℃、56.5℃、57.0℃、57.2℃又は57.5℃の温度で実行され、第一のプライマーは、配列番号31又は配列番号41によって定義される配列を含む。好ましくは、アニーリング工程は、45℃、45.5℃、46℃、46.5℃、47℃、47.5℃又は48℃の温度で実行される。
【0104】
付加的には又は代替的には、高ストリンジェンシー条件には、反応のために推奨されるよりも低い、例えば反応中の緩衝剤の推奨される濃度の10%、20%、30%、40%、50%、60%又は75%の緩衝剤濃度を用いることが含まれてもよい。いくつかの実施形態において、推奨される緩衝剤濃度よりも低い緩衝剤濃度は、0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×又は0.75×未満であってもよい。いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)中の緩衝剤の最終濃度は、0.1×~2×、0.1×~1.5×、0.1×~1×、0.2×~1×、0.3×~1×、0.4×~1×、又は0.5×~1×である。いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)中の緩衝剤の最終濃度は、0.5×、0.6×、0.7×、0.8×、0.9×、1×、1.5×、又は2×である。
【0105】
付加的には又は代替的には、高ストリンジェンシー条件には、反応中のよりストリンジェントな緩衝剤、例えばアンモニウムイオン(NH )を含む緩衝剤の使用が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、アンモニウム(NH )イオンを含む緩衝剤を、標準濃度、例えば1×で用いる。いくつかの実施形態において、アンモニウム(NH )イオンを含む緩衝剤を、1×~2×、好ましくは1×の最終濃度で用いる(すなわちこうした緩衝剤が反応混合物(複数の場合もある)中にある)。いくつかの実施形態において、アンモニウム(NH )イオンを含む緩衝剤は、Key緩衝剤である。いくつかの実施形態において、緩衝剤は1×Key緩衝剤である。
【0106】
いくつかの実施形態において、緩衝剤には、カリウムイオン(K)が含まれる。いくつかの実施形態において、カリウム(K)イオンを含む緩衝剤を、0.5×~1×、好ましくは0.5×又は1×の最終濃度で用いる。いくつかの実施形態において、緩衝剤は標準Taq緩衝剤(KCl)である。
【0107】
いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)中の順方向プライマー及び逆方向プライマーの各々の最終濃度は、独立に、0.1μM~1μM、0.1μM~0.5μM、0.1μM~0.4μM、0.1μM~0.4μM又は0.1μM~0.3μMである。いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)中の順方向プライマー及び逆方向プライマーの各々の最終濃度は、独立に、0.1μM、0.2μM又は0.3μM、好ましくは0.2μMである。
【0108】
いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)中のdNTPの最終濃度は、50μM~500μM、50μM~400μM、50μM~300μM、100μM~300μM、100μM~200μM、150μM~300μM、又は150μM~250μMである。いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)中のdNTPの最終濃度は、100μM、150μM、200μM、250μM又は300μM、好ましくは200μMである。
【0109】
高ストリンジェンシー条件には、付加的には又は代替的には、PCR中のサイクル数の減少、例えば30サイクル、35サイクル又は40サイクルと比較して、25サイクル、20サイクル、15サイクル又は更に10サイクルでの実行が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、30以下、25以下、20以下、15以下又は10以下のサイクルのPCRを実行する。いくつかの実施形態において、これらの高ストリンジェンシー条件の2つ以上を用いる。好ましくは30サイクル又は25サイクルのPCRを実行する。
【0110】
いくつかの実施形態において、推奨されるアニーリング温度は、市販で得られるプライマーの製造者によって提供される。当業者は、所与のプライマーに関して推奨されるアニーリング温度を計算するための多くの公的に利用可能なツールを知っている。当業者はまた、特定のプライマーに関して与えられたT(融点)から3℃、4℃、5℃、又は6℃を引くことによって、推奨されるアニーリング温度が計算可能であることも知っている。1つの実施形態において、プライマーに関して推奨されるアニーリング温度は、反応条件下のプライマーのTよりも4℃低い。例えば、New England BioLabs(商標)(http://tmcalculator.neb.com/#!/mainで見られる)又はThermo Fisher Scientific(商標)(https://www.thermofisher.com/uk/en/home/brands/thermo-scientific/molecular-biology/molecular-biology-learning-center/molecular-biology-resource-library/thermo-scientific-web-tools/tm-calculator.htmlで見られる)によって、T計算器が提供される。Thermo Fischer Scientific(商標)によって提供されるT計算器はまた、Allawi and SantaLucia, 1997のように、改変Allawi and SantaLucia法としても知られる。
【0111】
反応混合物に関して推奨される緩衝剤濃度は1×である。例えば、いくつかの実施形態において、10×緩衝剤5μlを反応混合物に添加して、最終体積50μlとする。いくつかの実施形態において、緩衝剤には、アンモニウム(NH )イオンが含まれる。いくつかの実施形態において、緩衝剤はKey緩衝剤である。
【0112】
いくつかの実施形態において、アニーリング温度は、少なくとも57℃であり、緩衝剤にはカリウム(K)イオンが含まれる。好ましくは、緩衝剤は標準Taq(KCl)緩衝剤である。これらの実施形態において、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異は、好ましくはTGFBR2遺伝子である(すなわち、ターゲット配列は、マイクロサテライト中にフレームシフト突然変異を有するTGFBR2である)。
【0113】
ヒトDNAを含む試料は、患者から得られ得る任意の試料であってもよく、例えば試料は体液、組織、又は細胞であってもよい。試料はまた、セルフリーDNAを含有する液体生検、例えば血漿であってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、方法は、
a)方法の工程b)で、第一のアリコートに、
I)第二のプライマー及び第三のプライマーであって、第三のプライマーが、第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、かつ第三のプライマーが、第一のプライマーと同じ鎖及び第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第二のプライマー及び第三のプライマー、若しくは、
II)対照プライマー対、
のいずれかを更に添加して、第一の反応混合物を形成し、
第二のプライマー及び第三のプライマー又は対照プライマー対を用いて、DNA増幅から増幅産物が産生された際に、DNA増幅が成功裡に実行されたことを検出すること、又は、
b)ヒトDNAを含む試料の第二のアリコートを準備し、第二のアリコートに、DNA増幅に必要な構成要素、及び、
I)第一のプライマー及び第三のプライマーであって、第三のプライマーが、第二のプライマーがアニーリングするように設定される領域の5’上流にアニーリングするように設定され、かつ第三のプライマーが、第一のプライマーと同じ鎖及び第二のプライマーと反対の鎖にアニーリングするように設定される、第一のプライマー及び第三のプライマー、若しくは、
II)対照プライマー対、
のいずれかを添加し、
第二の反応混合物に対してDNA増幅を行い、第二の反応混合物のDNA増幅から増幅産物が産生された際に、DNA増幅が成功裡に実行されたことを検出すること、
を更に含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、上述の本発明のプライマーであり、したがって、上述の特徴のいずれかを有する。例えば、いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’に隣接する少なくとも2つのヌクレオチド及び/又は3’端に隣接する少なくとも2つのヌクレオチドにアニーリングするように設定される。第一のプライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの一端又は両端に隣接する少なくとも3つ、4つ、又は5つのヌクレオチドにアニーリングしてもよい。いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、対応する野生型マイクロサテライト配列の長さに亘ってアニーリングせず、かつ第一のプライマーの3’端は、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にアニーリングしない。これは、第一のプライマーが、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列にアニーリングするが、野生型マイクロサテライトを有する対応する配列にアニーリングしないという利点を提供する。いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接する1つ、2つ又は3つ、好ましくは2つ又は3つのヌクレオチドにアニーリングする(すなわち、第一のプライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含む対応する配列にアニーリングする、第一のプライマーに関して、マイクロサテライトの3’である2つ又は3つのヌクレオチドを含む)。いくつかの実施形態において、これらの2つ又は3つのヌクレオチドは、GCクランプを形成する。いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの長さに亘って、かつ第一のプライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’にアニーリングし、第一のプライマーは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトに隣接するヌクレオチドにアニーリングする2つ又は3つのヌクレオチドのみからなる。これは、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列にアニーリングする第一のプライマーが、5’から3’方向に伸長し、それによってフレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトを含有する配列の複製を可能にし得るという利点を提供する。フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの3’端に隣接するヌクレオチドは上述される。
【0116】
いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、第一のプライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11又は12のヌクレオチドにアニーリングする。いくつかの実施形態において、第一のプライマーのヌクレオチドの少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%が、第一のプライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチドにアニーリングする。いくつかの実施形態において、第一のプライマーに関して、フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチドにアニーリングする第一のプライマーの一部はまた、野生型マイクロサテライトを含有する対応する配列にもアニーリングする。これは、第一のプライマーが所望のターゲット配列に特異的であるという利点を提供する。フレームシフト突然変異を有するマイクロサテライトの5’端に隣接するヌクレオチドは更に上述される。
【0117】
いくつかの実施形態において、プライマーは各々、16~30のヌクレオチドのみからなる。好ましくは、プライマーは、16~25のヌクレオチドのみからなる。更に好ましくは、プライマーは、17~24、又は17~23のヌクレオチドのみからなる。すなわち、プライマーは各々、独立に、16~30のヌクレオチドのみからなる。好ましくは、プライマーは各々、独立に、1~25のヌクレオチドのみからなる。更に好ましくは、プライマーは各々、独立に、17~24のヌクレオチドのみからなる。プライマーの他の好ましい長さが上述される。
【0118】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、マイクロサテライトの3’下流又はマイクロサテライト内にアニーリングする第一のプライマーの位置中に位置する。好ましくは、ミスマッチヌクレオチドはすべて、マイクロサテライトの3’下流又はマイクロサテライト内にアニーリングする第一のプライマーの位置中に位置する。いくつかの実施形態において、ミスマッチヌクレオチドはすべて、マイクロサテライト内にアニーリングする第一のプライマーの位置中に位置する。少なくとも1つのミスマッチの他の好ましい位置が上述される。
【0119】
いくつかの実施形態において、第一のプライマー中の少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、マイクロサテライトの3’端の5’上流又は3’下流の3ヌクレオチド以内にある。好ましくは、第一のプライマー中のミスマッチヌクレオチドはすべて、マイクロサテライトの3’端の5’上流又は3’下流の3ヌクレオチド以内にある。
【0120】
いくつかの実施形態において、第一のプライマー中の少なくとも1つのミスマッチヌクレオチドは、チミン(T)のアデニン(A)での置換、アデニン(A)のグアニン(G)での置換、チミン(T)のシトシン(C)での置換、又はシトシン(C)のグアニン(G)での置換である。
【0121】
いくつかの実施形態において、DNA増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、PCRは変性、アニーリング、及び伸長の複数のサイクルを含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、反応混合物(複数の場合もある)は、1×緩衝剤(又は0.5×緩衝剤)、0.4mM dNTP、0.2μM順方向プライマー、及び0.2μM逆方向プライマーを含む。いくつかの実施形態において、緩衝剤にはアンモニウム(NH )イオンが含まれ、緩衝剤は好ましくはKey緩衝剤である。
【0123】
いくつかの実施形態において、方法は、ゲル上でPCR反応産物を泳動し、バンドを視覚化して、DNA増幅が成功していることを確認することを更に含む、工程d)を更に含む。
【0124】
このアプローチは、PCR反応がアンプリコンを成功裡に生成している(すなわち試料からターゲット配列を増幅している)かどうかに関する視覚的確認を可能にする。当業者は、こうしたゲルをどのように泳動するかをよく知っており、これは典型的には、PCR反応物を色素と混合し、アガロースに基づくゲル上にこれを装填し、染色されたPCR反応物がゲルの陽性端に向って移動し、視覚化可能なバンドを形成するようにゲル上で電気泳動を実行することを伴う。これは、このPCR法を数時間で、又は更に1時間未満で行い得る点で、結果を提供するために数日を要し得る慣用的な配列決定アプローチに勝る利点を提供する。こうしたものとして、この方法は、臨床的に関連する知見(すなわち所与の疾患における関連突然変異の存在)を臨床家又は患者に、より迅速に提供し得るという利点を有する。
【0125】
更なる実施形態において、方法は、DNA配列決定のため、バンドを切り出す工程f)を更に含む。上述のように、ゲル上でPCR反応を泳動する利点は、バンドをゲルから切り出し、これが配列決定可能であるように、当業者に知られる技術に従ってプロセシング可能であることである。配列決定は必須ではないが、これは、フレームシフト突然変異が、試料中に実際に存在することの更なる確認を可能にし得る。
【0126】
本明細書に開示するように、疾患関連フレームシフト突然変異が起こり得る多くのマイクロサテライトがある。例えば、フレームシフトは、ASTE1、ACVR22、TAF1B、KIAA2018、SLC22A9及びTGFBR2より選択される任意の遺伝子中のマイクロサテライト中にあってもよい。いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異は、TGFBR2又はASTE1中のマイクロサテライト中にある。
【0127】
いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異は、TGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、ターゲット配列は、配列番号19又は配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7若しくは配列番号39のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号2によって定義される配列を含む。いくつかの実施形態において、フレームシフト突然変異は、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、ターゲット配列は、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含み、第一のプライマーは、配列番号15、配列番号33、配列番号40若しくは配列番号41によって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号10によって定義される配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、マイクロサテライトはTGFBR2遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号19に記載の配列を含み、第三のプライマーは、配列番号1によって定義される配列を含む。いくつかの実施形態において、マイクロサテライトは、ASTE1遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号32に記載の配列を含み、第三のプライマーは、配列番号11又は配列番号38によって定義される配列を含む。上述のように、本明細書に開示のデータは、これらのプライマーが、TGFBR2(a9とも称され、a10が野生型マイクロサテライトである)又はASTE1内のマイクロサテライト中のフレームシフト突然変異の検出における使用のため、本発明の範囲内で、特に有用であることを立証する。
【0129】
いくつかの実施形態において、試料は、セルフリーDNAを含む液体生検であり、好ましくは、液体生検は血漿又は血清である。代替的には、試料は組織生検である。好ましくは、試料はヒトから得られる。液体生検からの検出が特に好適であり、これは、こうした生検が、患者から容易に得られ、例えば、分析をより困難にする、壊死性であり得る及び/又は多様なDNA内容物を有し得る腫瘍組織生検からよりも、DNAを抽出することがより容易であることが多いためである。先に言及されるように、腫瘍はしばしば不均一であり、したがって、腫瘍生検は、腫瘍全体を表すものではない可能性もあり、サンプリングされる部分のみを表すものである可能性もある。液体生検は、代表的な試料を提供することによって、この問題を克服する。
【0130】
いくつかの実施形態において、方法は、患者由来の試料において、工程d)でフレームシフト突然変異が検出されるならば、フレームシフト突然変異に関連する疾患又は障害を患う患者が、上記フレームシフト突然変異をターゲットとする治療に適していることを決定することを更に含む。好ましくは、フレームシフト突然変異に関連する疾患又は障害は癌である。
【0131】
いくつかの実施形態において、疾患又は障害は結腸直腸癌(CRC)、胃癌(GC)又はリンチ症候群であり、フレームシフト突然変異をターゲットとする治療はFMPV-1であり、フレームシフト突然変異はTGFBR2遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号19又は配列番号20の残基270~残基278に記載の配列を含む。いくつかの実施形態において、疾患又は障害は子宮内膜癌又は胃癌であり、フレームシフト突然変異をターゲットとする治療はFMPV-2であり、フレームシフト突然変異は、ASTE1遺伝子中のマイクロサテライト中にあり、配列番号33の残基328~残基337に記載の配列を含む。
【0132】
好ましくは、方法は、FMPV-1又はFMPV-2で患者を治療する工程e)を更に含む。FMPV-1は、特許文献1(引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるようなペプチドワクチンである。FPMV-1はまた、fsp2としても知られる。FMPV-2は、特許文献2(引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるようなペプチドワクチンである。FMPV-2はまた、fsp8としても知られる。
【0133】
任意選択で、本発明の検出法に関する陽性対照を提供するため、第三のプライマー、又は別の対照プライマー対もまた、試料からのDNA増幅に用いてもよい。いくつかの実施形態において、マイクロサテライトはTGFBR2遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号19又は配列番号34に記載の配列を含むか又は該配列からなり、第三のプライマーは、配列番号1によって定義される配列を含む。いくつかの実施形態において、マイクロサテライトはASTE1遺伝子中にあり、野生型マイクロサテライトを含む配列は、配列番号32又は配列番号36に記載の配列を含むか又は該配列からなり、第三のプライマーは、配列番号11又は配列番号38によって定義される配列を含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、第一のプライマーは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号15、配列番号31、配列番号39、配列番号40若しくは配列番号41のいずれか1つによって定義される配列を含み、及び/又は第二のプライマーは、配列番号2若しくは配列番号10によって定義される配列を含む。
【0135】
本発明の別の態様において、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異と関連する疾患を診断する方法であって、本発明の方法のいずれかを実行することを含む、方法が提供される。上述のように、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異は、限定されるわけではないが、リンチ症候群、嚢胞性線維症、クローン病、並びに結腸癌、胃癌、子宮内膜癌、卵巣癌、肝胆管癌、尿道癌、脳腫瘍及び皮膚癌を含む癌を含む、多くの疾患と関連付けられている。特に、マイクロサテライト中の癌関連フレームシフト突然変異は、限定されるわけではないが、ASTE1、ACVR22、TAF1B、KIAA2018、SLC22A9及びTGFBR2を含む、任意のいくつかの遺伝子中で検出され得る。
【0136】
任意の上述の方法において、試料が、セルフリーDNAを含む液体生検であることが好ましく、好ましくは、液体生検は血漿である。
【0137】
任意の上述の方法において、DNA増幅がPCRであり、PCRが高ストリンジェンシー条件で実行されることが好ましく、任意選択で、高ストリンジェンシー条件は、
a)反応の推奨されるアニーリング温度より、少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10℃高い温度で、好ましくは53℃~60℃の温度で、PCRのアニーリング工程を実行すること、
b)サイクルあたり、わずか30秒間、好ましくは15秒間、PCRのアニーリング工程を実行すること、
c)0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×又は0.75×未満での緩衝剤濃度で、DNA増幅を実行すること、
d)アンモニウムイオンを含む緩衝剤中でDNA増幅を実行すること、
e)25サイクル、20サイクル、15サイクル又は10サイクル、任意選択で30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下のサイクルにPCRのサイクル数を減少させること、
の少なくとも1つを含む。高ストリンジェンシー条件は、上述のいずれかであってもよい。
【0138】
例えば、いくつかの実施形態において、高ストリンジェンシー条件は、推奨されるアニーリング温度より少なくとも4℃高い温度でアニーリング工程を実行すること及び/又はアンモニウム(NH )イオンを含む緩衝剤中でDNA増幅を実行すること、及び/又はサイクルあたり15秒間、PCRのアニーリング工程を実行すること、及び/又はPCRのサイクル数を25以下に減少させることを含む。いくつかの実施形態において、高ストリンジェンシー条件は、推奨されるアニーリング温度より少なくとも4℃高い温度で、好ましくは推奨されるアニーリング温度より4℃高い温度でアニーリング工程を実行すること、1×濃度でアンモニウム(NH )イオンを含む緩衝剤中でDNA増幅を実行すること、好ましくは緩衝剤がKey緩衝剤であること、PCRのアニーリング工程を15秒間実行すること、及びPCRのサイクル数を25に減少させることを含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、高ストリンジェンシー条件は、カリウム(K)イオンを含む緩衝剤、好ましくは標準Taq(KCl)緩衝剤中で、58℃の温度でアニーリング工程を実行することを含む。これらの実施形態において、マイクロサテライト中のフレームシフト突然変異はTGFBR2中にあることが好ましい。
【0140】
本発明はここで、以下の限定されない実験例に示されるであろう。
【実施例
【0141】
実施例I-フレームシフト突然変異TGFBR2の検出のためのプライマーの設計
プライマー設計は、典型的には、単一の特異的アンプリコン(断片)の所望の収量を確実にするため、特定の規則に従う。大部分の場合、これらの規則は、非常に類似の配列間を区別する場合であっても、容易に採用される。しかし、マイクロサテライト中のフレームシフトを区別する場合、相違がマイクロサテライトの長さのみである(1ヌクレオチドの相違)ため、これは当てはまらない。サテライトの隣接領域は、DNAのどちらの変異体においても正確に同じ配列を有し、これらの間のプライマーのアフィニティを同等に近いものにする。このことは、それだけで、検出試験を定義する際に克服すべき最大の障害であるが、これは、プライマー設計が、パラメーターをそれほど変化させる可能性がない、正確な配列/領域に固定されているためである。突然変異体検出プライマーを設計する際に用いられる戦略は、したがって、野生型配列とのミスマッチを生成することであり、このようにして、十分な反発力を誘導し、プライマーが野生型DNAにアニーリングするのをブロックする。
【0142】
フレームシフト突然変異TGFBR2の検出のための一団のPCRプライマー(表1)の一連の14の実験を設計し、試験した。まず、TGFBR2 DNAの増幅のため、第一のプライマーセットを設計し、試験した。先行する実験(複数の場合もある)からの結果に基づき、プライマーを最適化し、再試験した。野生型及び突然変異体マイクロサテライト、それぞれa10及びa9を含む合成TGFBR2 DNA断片を、PCRセットアップに用いた(それぞれ、配列番号19及び配列番号20)。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例II-プライマーの機能性の試験
最初の2つのプライマー(P1及びP2)は、信頼できる結果を確実にし、PCRを実行するためのすべての基準が満たされていることを確実にするため、検出試験に関する陽性対照として作用する(対照からのシグナルがない=PCRの失敗)。さらに、陽性対照は、TGFbR2変異体の検出/決定を実行するために必要なcfDNA(循環遊離DNA)の正しい長さ及び配列が存在していることを確実にする。P1-P2由来アンプリコン(249bp)は、すべての他の設計されるプライマーターゲット(対応配列)を含み、突然変異体特異的ではない。
【0145】
突然変異体プライマー(P4、P5、P6及びP10)は、主なターゲットとしてTGFbR2の突然変異体で設計され、9Aマイクロサテライト配列を包含する。10Aではなく9Aのより短い配列を有するだけで、野生型とプライマーの3’端との間にミスマッチができる。プライマーP4、P6及びP10のこの端上に単一ヌクレオチド置換(ランダムに選択)を導入することによって、ミスマッチ反発を増強し得る。アンプリコン(102bp~169bp)は、対照プライマーの1つとコンジュゲート化されて産生される。
【0146】
PCR反応のために必要なテンプレートDNAの量を決定するため、異なる量のテンプレートDNAを用い、NEB(New England BioLabs)のプロトコル及び計算温度を用いて、標準的PCR条件下で、PCR試験実行を行った。これらの試験実行の結果は、図1に示される電気泳動ゲルに見られ得る。
【0147】
特に、非常に少量のテンプレート(図1Bに見られ得るように、2pg未満)であっても、ゲル中で、優れた収量及び高い解像度バンドを達成することが見出された。さらに、アンプリコンは正しい予期される長さを有し、高い特異性を示した。
【0148】
すべてのプライマーが機能性であり、各プライマーがP2と(又はP2の場合はP1と)対形成して、標準的PCR条件下(表2を参照されたい)で、9aマイクロサテライト(突然変異体)及び10aマイクロサテライト(野生型)テンプレートDNAから増幅が成功することが見出された。これらのPCR反応の産物をDNA染色で染色して、泳動先端がゲルの端に到達するまで、およそ20分間~30分間、100Vの電気泳動を行うことによって、既製のアガロース-TAE混合物(2%)上で泳動した。この電気泳動の結果は、どちらのテンプレートDNAタイプからの増幅も成功したことを示し、すべてのレーンで強いバンドを見ることができた。しかし、プライマーは、フレームシフト突然変異を含有するマイクロサテライト(9a)(突然変異体)とフレームシフト突然変異を含有しないマイクロサテライト(10a)(野生型)とを区別しなかった。
【0149】
実施例III-最適以下の条件(高ストリンジェンシー)でのP4の試験
したがって、よりストリンジェントなPCR条件を用い、53℃のわずかにより高いアニーリング温度及び25回のみのより少ないサイクルを用いて、この実験アプローチを反復した(表2を参照されたい)。この条件変化の結果は、フレームシフト突然変異を含有しないマイクロサテライト(10a)(野生型)のより少ない増幅であり、10aテンプレート中で明らかにシグナルが減少している、プライマーP4に関する減少したバンドサイズによって、図2中で明らかに見られ得る。
【0150】
次いで、アニーリング温度を更に55℃に増加させ、アニーリング及び伸長工程を、それぞれ15秒間及び20秒間短くして、図2に示される実験に関するよりも、更によりストリンジェントな条件下で、P2プライマー及びP4プライマーを用いて、実験を反復した。これらの条件を以下の表2に示す。これらの条件は、10aテンプレート(野生型)と9aテンプレート(突然変異体)との更により改善された区別を提供し、図3に見られ得るように、野生型テンプレートに関しては、極端に弱く、ほぼ不可視のバンドが認められた。同じことはP5では見られず、このプライマーをストリンジェントな条件で用いても、10aテンプレート(野生型)と9aテンプレート(突然変異体)との区別は見られなかった(データ未提示)。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例IV-最適以下の条件(より高いストリンジェンシー)でのP4、P6及びP10の試験
再び、プライマーを用いて、突然変異体(9a)と野生型(10a)テンプレートDNAとを区別するため、表3のようによりストリンジェントなPCR条件を用いて、より高いアニーリング温度及びより短いアニーリング工程を用いた。さらに、プライマー対あたり2回のPCR反応を実行し、1回は、標準的緩衝剤濃度で、1回は低緩衝剤濃度で(標準濃度の50%に減少させる)行った。P6及びP10を用いたプライマー対のみを、この特定の実験で調べた。図4に見られ得るように、低緩衝剤濃度試料をアスタリスク()で示した場合、これは、突然変異体においてP10プライマーを用いた、低緩衝剤濃度の試料でのみ、明らかに強いバンドが生じ、野生型テンプレートでは生じなかった。
【0153】
【表3】
【0154】
突然変異体テンプレート由来の設計プライマーによる増幅を最適化するため、P4、P6及びP10(及び陽性対照としてのP1)を用い、突然変異体テンプレートDNA(9a)を用いて、いくつかの異なる条件で、更なる実験を行った。
【0155】
特に、図5A図5Cに示される実験では、以下の表4に見られ得るように、それぞれ、55℃、56℃、及び58℃のアニーリング温度を用いた。ここでも、図5A図6Cに示される実験において、「低」緩衝剤濃度(アスタリスクによって示される)は、標準緩衝剤濃度のおよそ50%の緩衝剤濃度を含んだ。見られ得るように、図5B及び図5Cでは、特に低緩衝剤濃度で、より強いシグナルが見られた。注目すべきことに、P6プライマーは、ここで増幅を示し、以前の実験の増幅欠如がヒューマンエラーのためであるという仮説が確認された。
【0156】
【表4】
【0157】
60℃の更により高いアニーリング温度で(以下の表5を参照されたい)、標準及び低緩衝剤濃度の両方で、プライマー対を用い、更なるPCR反応を実行した(図6)。標準及び低緩衝剤濃度の両方で、対照(P1)において、強いシグナルが見られた。
【0158】
このより高いアニーリング温度によって、プライマーP2と組み合わせたプライマーP6により、突然変異体テンプレートの選択的増幅が可能になり、野生型テンプレートの検出可能な増幅はなく、これは図6Aで見られ得る。
【0159】
さらに、3プライマー反応もまた、同じ条件で行い、これは図6Bで見られ得る。3プライマー反応は、P1、P2及びP4、P6又はP10のいずれかを含有し、2つのバンドが249bp及び102bpで見られると予期された。低緩衝剤濃度反応ではシグナルは見られず、標準緩衝剤濃度反応で単一のバンドが見られただけだった。
【0160】
同じ条件を再び用いる(表5のように)が、プライマーP4も含む、更なるPCR反応を実行した(図7)。これらの実験では、標準緩衝剤濃度では陽性対照(P1)からの強いバンドが見られ、低緩衝剤濃度ではより弱いバンドが見られることが見出された。標準緩衝剤濃度では、P10での増幅が突然変異体及び野生型テンプレートの両方で見られたが、低緩衝剤濃度では、突然変異体テンプレートからP10での増幅が見られたものの、野生型テンプレートでは見られないことがわかった(図7)。したがって、低緩衝剤濃度でのP10は、野生型配列に対するアフィニティはまったく持たないことが見出された。
【0161】
再び、3プライマー反応を同じ条件で行い、この実験では、低緩衝剤濃度で1つの弱いバンドが検出されただけだったが、標準緩衝剤濃度では、2つのバンド(1つは強く、1つは弱い)が見られた。
【0162】
【表5】
【0163】
実施例V-プライマーP4.1、P4.2及びP10.1の機能性の試験
上記実施例のように、プライマーP4及びP10から更に修飾された更なるプライマーP4.1、P4.2及びP10.1も、プライマーP2と対として、PCR(条件は以下の表6に詳述される)、その後、ゲル電気泳動(図8に示される)を実行することによって試験した。この実験は、これらのプライマー3つすべてが、強いバンド形成を示す図8で見られ得るように、突然変異体(9a)及び野生型(10a)テンプレートの両方に対して増幅を示すため、機能性であることを示した。野生型テンプレートの同等のバンドと比較して、突然変異体テンプレートでは、P4.1に関して有意に減少したバンドが見られ得る。
【0164】
【表6】
【0165】
実施例VI-より高いストリンジェンシーのPCR条件における候補プライマーの試験
プライマーを用いて突然変異体(9a)と野生型(10a)テンプレートとを区別するため、2つの異なるタイプの緩衝剤:アンモニウムイオンを含まない標準Taq緩衝剤、及びアンモニウムイオン(NH )を含むKey緩衝剤を用いて、PCR反応を行った。
【0166】
まず、Taq緩衝剤又はKey緩衝剤を用いた突然変異体テンプレートに対するPCR反応を、表7に示される条件で用い、図9Aに示されるように電気泳動ゲル上で泳動した。Key緩衝剤中の反応が最小のシグナルを示した、プライマーP4.2を例外として、どの緩衝剤を用いたかに関わらず、比較的均一なシグナル強度が見られることがわかった。
【0167】
次いで、わずかにより高いアニーリング温度(これも表7に示される)で、これらの反応を反復し、図9Bに示されるように、電気泳動ゲル上で泳動した。この実験は、図9Aで見られるものと匹敵する結果を示したが、Key緩衝剤中のプライマーP10.1での反応によって生じるシグナルは、有意に減少した。プライマーP4.2での反応によって生じるシグナルは、この実験において、より区別可能であった。
【0168】
Key緩衝剤及びTaq緩衝剤を含有するいくつかのPCR試料によって生じるシグナル間で直ちに相違が示されることは、プライマー/テンプレート相互作用の安定性が強く影響を受けていることを示唆する。設計されるプライマーと野生型DNAとの間のミスマッチがより多数であると、Key緩衝剤を用いてこれらの試料から生じるアンプリコンの除去が導かれ得る。この結果から、いくつかの突然変異体テンプレートDNA及びプライマー試料は、緩衝剤変動にかかわらず、等しいシグナル強度を有することが明らかであり、これらの試料において相互作用は続いており、アンプリコンが生じるが、野生型テンプレートではプライマーアニーリングが減少していると予期される。対照プライマーは、試験した緩衝剤変動及び温度の影響を受けないようである。P4.2及びKey緩衝剤を含む試料が、2つの実験を通じて一定ではなかったことは、P4.2ストックの条件が劣っていたことを示す。
【0169】
【表7】
【0170】
突然変異体及び野生型テンプレートDNA両方に対して、P2と組み合わせたプライマーP4、P4.1、P4.2及びP6を用い、表7に示される図9Aと同じ条件で、更なる実験を行った。これらの反応はまた、図10に見られ得るような電気泳動ゲル上で泳動された。図10A中の反応を標準Taq緩衝剤中で実行し、図10B中の反応を、アンモニウムイオン(NH )を含有するKey緩衝剤中で実行した。
【0171】
標準Taq緩衝剤を含有する試料では、多様なプライマー及びテンプレートで、強いバンドを生じるために十分なアンプリコンが産生された(図10A)。Key緩衝剤を含有する試料は、いくつかのプライマー/テンプレートの組み合わせにおいて、弱い/消失したバンドによって可視化されるように、プライマーアニーリングの欠如、したがって、産物収量の欠如を示した(図10B)。突然変異体テンプレートDNAでは、P6は、機能性を大きく減少させた。野生型テンプレートDNAに切り替えると、P4、P6には機能喪失、及びP4.2には少量の(fractioned)/減少した成績を示した。
【0172】
次いで、59℃のわずかにより高いアニーリング温度で実験を反復し、図11Aに示される標準Taq緩衝剤中での反応及び図11Bに示されるKey緩衝剤中での反応で、図11に見られ得る、電気泳動ゲル上での泳動を行った。以前の実験で見られるように、すべての試料は、テンプレートDNAに関わらず、ゲル上に強いシグナルを生じた。テンプレートとしての突然変異DNA及びKey緩衝剤を含む試料を見ると、この組み合わせでアンプリコンを産生しなかった(又は少量産生した)唯一のプライマーは、P6である。野生型DNAテンプレート及びKey緩衝剤で、P4.2及びP6を含む試料において、弱い/消失するバンドが注目された。
【0173】
図10及び図11の結果を見ると、Key緩衝剤(アンモニウム、NH )がテンプレートDNAへの(選択された)プライマーのアニーリングを防止する、有意な脱安定化効果を有することが明らかである。さらに、温度のわずかな改変が、(アニーリングの)機能喪失又は獲得に重大な役割を果たす。設計されたプライマーは、本質的に、突然変異体配列と比較して、テンプレートDNAとしての野生型配列と組み合わせると、より多くのミスマッチを有するため、Key緩衝剤の影響は有意により大きい。プライマー/テンプレートアニーリングは、パラメーターのより広い範囲で、突然変異体TGFβR2配列で機能性のままである。
【0174】
実施例VII-MSI-結腸直腸癌患者由来の液体生検のセルフリーDNA(cfDNA)におけるTGFbR2 a10→a9フレームシフト突然変異の検出
方法
cfDNA抽出キット(血漿/血清セルフリー循環DNA精製ミニキット、カテゴリー番号55100、www.norgenbiotek.com)を用いて、患者血漿試料からcfDNAを抽出した。患者試料を、Indivumed GmbH(www.indivumed.com)より購入し、これらはすべて個々の患者の治療の同じ時点-T0(ベースライン)で採取された。患者は結腸直腸癌(CRC)を有し、MSI-H又はMSSであり、42歳~73歳であった。
【0175】
i)cfDNAの配列決定
血漿試料中に存在するcfDNA断片の配列決定を、高忠実度ポリメラーゼ(OneTaq DNAポリメラーゼ、New England Biolabs、www.international.neb.com)及び標準条件で、1×OneTaq緩衝剤(KCl)を用いてPCRを実行することによって行った。高忠実度ポリメラーゼは、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、多数の単一ヌクレオチド反復のため、ポリメラーゼが「スリップする」傾向があるマイクロサテライトの配列が、正確に合成されることを確実にした。マイクロサテライトの配列決定データが正しく、かつ電気泳動ゲルの読み取りが既知の配列と比較して一定であることを検証するため、合成TGFβR2テンプレートDNAを対照として用いた(野生型(配列番号19と同じ配列)及び9a突然変異体(配列番号20と同じ配列))。配列決定目的のため、PCR中で用いたプライマーはP1及びP2であった。
【0176】
PCR条件は、表8に示される通りであった。
【0177】
【表8】
【0178】
ゲル電気泳動を用いてPCR産物を精製した。正しい長さの断片/アンプリコンを含むバンドをゲルから切り出し、ゲル抽出キット(VWR peqGOLDゲル抽出キット、カテゴリー番号13-2500-01、www.vwr.com)を用いて抽出した。次いで、抽出PCR産物を配列決定のために送り、Eurofins Genomics(www.eurofinsgenomics.eu)によって配列決定を実行した。
【0179】
ii)突然変異TGFβR2 cfDNAの検出
患者血漿試料由来のcfDNA、並びに対照としての合成野生型及びa9突然変異体TGFβR2(配列番号19及び配列番号20)を、表10の条件を用いて、PCRによって増幅した。表9に示されるように、プライマーP1及びP2を陽性対照に用い、プライマーP2及びP4を突然変異TGFβR2の検出に用いた。表9において、「プライマー」列は、プライマーP2がすべてのチューブで用いられるため、P1又はP4のいずれが用いられるかどうかのみを示す。「試料」列中、「合成」は、患者血漿試料から得られるcfDNAではなく、合成DNAをテンプレートとして用いた(すなわち対照試料)ことを示す。用いた緩衝剤は、1×Key緩衝剤((NHSO)であった。PCR産物をゲル電気泳動に供し、次いで配列決定した。
【0180】
【表9】
【0181】
【表10】
【0182】
結果
TGFbR2 DNAは、試験したすべての(10/10)CRC患者由来のcfDNA中に存在した。プライマーを用いたPCR増幅、その後のゲル電気泳動によって、TGFbR2 a10→a9フレームシフトが、試験したすべて(5/5)のMSI-CRC患者に存在し、MSS-CRC患者にはまったく(0/5)存在しなかったことが示された(図12)。これらの結果は、電気泳動ゲルから抽出された正しいサイズのPCR産物の配列決定によって確認された。配列決定PCR産物は、適切であるように、全a9/a10マイクロサテライトを含有し、配列決定データは、PCR結果に対応することが示された。
【0183】
選択されたa9モデリングプライマー(P4)を用いたPCRは、MSI-CRC患者由来のcfDNAに関してのみ(5/5)、電気泳動ゲル上で明らかに検出可能なPCR産物を生じた。TGFbR2 cfDNA断片は、マイクロサテライト、及び対照プライマー対がアニーリングする領域(250bp)を含有するために十分に長かった。
【0184】
結果は、TGFbR2 a10→a9フレームシフトDNAがMSI-CRC患者由来の液体生検のcfDNA中に存在することを示し、これにより、セルフリーTFGbR2フレームシフトDNAは、遺伝性CRC(リンチ症候群)の初期検出とともに、孤発性MSI-CRCの癌進行及び寛解の監視のための、潜在的なバイオマーカーとして確立される。
【0185】
電気泳動ゲルから抽出された、各患者由来のcfDNAの配列を、各配列の最後のカッコ内に示されるマイクロサテライト長とともに、表11に示す。
【0186】
【表11】
【0187】
実施例VIII-異なるアニーリング温度でのTGFbR2 a10→a9フレームシフト突然変異の検出
i)温度勾配PCR1(パラメーター調節)
この実験は、プライマー対が、突然変異体DNAテンプレートに対してのみアニーリングが有効であり、野生型DNAテンプレートには有効でない、温度範囲を確立する目的のためであった。
【0188】
プライマーP2及びP4とともに、合成DNA(突然変異体(F1)及び野生型(F2))をPCRのテンプレートとして用いた。PCR条件を表12~表14に示し、各チューブに関して用いられるPCRチューブレイアウト及びアニーリング温度を表15に示す。アニーリング温度範囲は、54℃~60℃であった。
【0189】
【表12】
【0190】
【表13】
【0191】
【表14】
【0192】
【表15】
【0193】
図13は、PCR産物の電気泳動ゲルを示す。プライマー-野生型テンプレート相互作用は、プライマー-突然変異体テンプレートと比較して、およそ57.8℃以上の範囲の温度で最も弱くなることが明らかである。さらに、およそ59℃で、プライマー-野生型テンプレート相互作用は、多かれ少なかれ、完全に攪乱される。プライマー-突然変異体テンプレート相互作用は強いままであり、プライマーは高温でなお、高いアフィニティを有する。
【0194】
ii)温度勾配PCR2(パラメーター調節)
プライマー対が、突然変異体DNAテンプレートにのみアニーリングが有効である温度範囲を更に確立するため、この実験を実行した。
【0195】
上記パートi)でのように、プライマーP2及びP4とともに、合成DNA(突然変異体(F1;配列番号20)及び野生型(F2;配列番号19))をPCRのテンプレートとして用いた。PCR条件を表16~表18に示し、各チューブに関して用いられるPCRチューブレイアウト及びアニーリング温度を表19に示す。アニーリング温度範囲は、57℃~62℃であった。
【0196】
【表16】
【0197】
【表17】
【0198】
【表18】
【0199】
【表19】
【0200】
図14は、PCR産物の電気泳動ゲルを示し、上記パートi)で言及された57.8℃未満の温度であっても、プライマー-野生型テンプレート相互作用は攪乱され、プライマーのアフィニティは存在しないに近いことを示す。特に、図14は、プライマー-野生型テンプレート相互作用が57℃で攪乱されることを示す。しかし、突然変異体テンプレートに対するプライマーアフィニティは、同じ条件下で比較すると強いままである。
【0201】
実施例IX-標準Taq(KCl)緩衝剤を用いたTGFbR2 a10→a9フレームシフト突然変異の検出
この実験は、標準Taq緩衝剤(KCl)を含むPCR混合物中のプライマーの有効性を評価するために行われた。合成DNA(突然変異体(F1)及び野生型(F2))をPCRのテンプレートとして用いた。プライマーP1及びP4を各々、プライマーP2とともに用いた。表20及び表21はPCR条件を示し、各チューブに関して用いたプライマー及び緩衝剤を表22に示す。
【0202】
【表20】
【0203】
【表21】
【0204】
【表22】
【0205】
図15は、PCR産物の電気泳動ゲルを示し、サーモサイクラーに渡る高い均一な温度で、標準Taq緩衝剤が安定であり、プライマー-突然変異体テンプレートアフィニティを保持する条件を生じることを示す。プライマー-野生型テンプレートアフィニティは失われ、相互作用は、断片が最小量でしか生じない点まで攪乱される。
【0206】
実施例X-ASTE1 a11→a10フレームシフト突然変異の検出
突然変異ASTE1の検出のための一団のPCRプライマーを、実施例IのTGFβR2プライマーと同様に設計した。
【0207】
プライマーP11及びP12は、それぞれ、陽性対照順方向プライマー及び逆方向プライマーであり、野生型及び突然変異体ASTE1配列の両方にアニーリングする。これらのプライマーは、a11からa10のフレームシフト突然変異の存在又は非存在に関わらず、ASTE1の存在を検出し(すなわちP11及びP12は突然変異体特異的ではない)、信頼できる結果を確実にし、PCRを実行するためのすべての基準が満たされている(対照からのシグナルがない=PCRの失敗)ことを確実にする。
【0208】
突然変異体ASTE1を主なターゲットとするASTE1突然変異体プライマーを設計し、各プライマーは、a10マイクロサテライト配列を包含する。実施例I及び実施例IIのTGFβR2プライマーでのように、野生型11a配列ではなく、より短い10a配列は、野生型ASTE1とプライマーの3’端との間にミスマッチを導入する。プライマー中のマイクロサテライトの3’に1つ~4つのミスマッチ(ランダムに選択されたヌクレオチド置換)を導入することによって、プライマーと野生型ASTE1配列との間にミスマッチ反発が強いられる。
【0209】
P16及びP24のASTE1プライマーを、実施例VIIIと類似のプロトコルを用いて試験して、プライマーが、突然変異体DNAテンプレートにのみアニーリングが有効であり、野生型DNAテンプレートには有効でない温度範囲を確立した。陽性対照逆方向プライマーP12もまた或る温度範囲で用いた。プライマーP11をすべての実験において陽性プライマーとして用いた。野生型(a11)又は突然変異体(a10)マイクロサテライトのいずれかを含む合成ASTE1 DNA断片を、PCRセットアップに用いた(それぞれ、F4及びF3と称される;それぞれ、配列番号32及び配列番号33)。
【0210】
各PCRに用いたPCRマスター混合物を以下の表23に示す一方、PCR条件を表24に示す。各PCRには、表25~表27及び図16図18に示すように、異なるアニーリング温度を用いた。標準(KCl)緩衝剤をすべてのPCRに用いた。P11をすべてのPCRの順方向プライマーとして用いた。
【0211】
【表23】
【0212】
【表24】
【0213】
【表25】
【0214】
【表26】
【0215】
【表27】
【0216】
結果
図16図18は、異なるアニーリング温度を用いたこれらのPCRの結果を示す。特に、これらの図は、a10突然変異体ASTE1に基づいて設計されたプライマー(すなわちP16及びP24)が、a10突然変異体ASTE1に特異的であり、ASTE1野生型がテンプレートである場合、はるかにより少ないPCR産物しか生じないか又は産物をまったく生じないことを示す。図18は、P12を用いて、野生型及びa10突然変異体ASTE1の両方を増幅可能であり、したがって、これを陽性対照プライマーとして用いることができることを示す。
【0217】
参考文献
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【0218】
【表28】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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【国際調査報告】