(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】局所スキンケア用の細菌株
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240702BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20240702BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240702BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240702BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K8/97
A61P17/10
A61Q19/00
A61P31/04
A61P29/00
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500200
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 IB2022056244
(87)【国際公開番号】W WO2023281415
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021000017855
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521530060
【氏名又は名称】ラック2バイオーム・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】LAC2BIOME S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ビッフィ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AD331
4C083AD332
4C083CC07
4C083EE14
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087BC57
4C087CA09
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB11
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ種(近年、J.Zheng et al.、2020によって再分類された)に属する選択された細菌株、およびそれらの混合物、それらの組成物、ならびに皮膚疾患および障害の予防および/または治療におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオニバクテリウム・アクネス種に属する病原性細菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置に使用するための細菌株であって、
前記株は、以下:
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)
- ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
からなるか、または、を含む群から選択され、
前記予防または治療処置は、P.アクネスに対する特異的作用を介して発揮されることを特徴とする、細菌株。
【請求項2】
請求項1に記載の菌株の少なくとも1つと、場合により少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物であって、
前記組成物がP.アクネスに対する特異的作用を介して作用することを意図していることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
以下:
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)
- ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
を含むか、または、からなる群から選択される細菌株を投与することを含む、ニキビの治療のための美容方法であって、
前記方法がP.アクネスに対する特異的作用を介して炎症を阻害することを意図していることを特徴とする、方法。
【請求項4】
以下:
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)
- ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
を含むか、または、からなる群から選択される細菌株が、必要とするヒトに1日1回投与される、請求項3に記載の美容方法。
【請求項5】
ニキビを治療または予防するための美容組成物の製造のための、少なくとも1つの請求項1に記載の細菌株の使用であって、
前記美容組成物がP.アクネスに対する特異的作用を介して作用する、使用。
【請求項6】
ニキビを治療または予防するための皮膚科組成物の製造のための、少なくとも1つの請求項1に記載の細菌株であって、
前記皮膚科組成物がP.アクネスに対する特異的作用を介して作用する、細菌株。
【請求項7】
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)、ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物を含むか、または、からなる群から選択される細菌株;
- ヒアルロン酸またはその塩;
を含む組成物であって、
前記組成物は、P.アクネスに対する特異的作用を介して炎症を抑制することを意図することを特徴とする、組成物。
【請求項8】
P.アクネス種に属する病原性細菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置に使用するための請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
- 請求項7に記載の組成物を皮膚に塗布し、少なくとも6時間塗布を維持すること;
- 塗布された組成物を水で除去すること;
を含む皮膚保湿を高めるための美容方法であって、
前記適用は、少なくとも14日間、好ましくは14~28日間の期間行われることを特徴とする、方法。
【請求項10】
- 請求項7に記載の組成物;および
- 細菌株用の別個のコンパートメントを備えたディスペンサー;
を含むキット。
【請求項11】
- ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788);および
- ヒアルロン酸またはその塩;
を含む、創傷治癒および表皮化促進において使用するための組成物。
【請求項12】
黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置における使用のための細菌株であって、前記菌株が、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)である、細菌株。
【請求項13】
皮膚老化の防止における、
- ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788);および場合により、
- ヒアルロン酸またはその塩;
を含む、皮膚科または美容組成物の使用。
【請求項14】
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)および場合により、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置における使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ種(近年、J.Zheng et al.、2020によって再分類された)に属する選択された細菌株、およびそれらの混合物、それらの組成物、ならびに皮膚疾患および障害の予防および/または治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
洗顔剤、化粧水、保湿剤、アンチエイジング美容液など、多くの局所タイプのスキンケア製品が入手可能である。これらの組成物には、皮膚に対して比較的攻撃性の高い化学物質が含まれていることが非常に多く、長期的には皮膚に顕著な損傷を引き起こす可能性がある。これらの製品には通常、化学成分が含まれており、単独で、または他の成分と組み合わせて、肌に利益をもたらす代わりに害を及ぼす可能性があるため、すべてのタイプの肌に適しているわけではない。さらに、これらの配合物は特定の肌タイプに刺激を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、従来の化学的美容組成物および治療に代わるものとして、皮膚の欠陥、皮膚の刺激/発赤、乾燥、および/または炎症を軽減することができる新しいスキンケア治療を特定することが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
出願人は、集中的かつ長期にわたる研究開発の結果、驚くべきことに、ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(登録商標)として同定され、2013年1月11日にSofar S.p.Aによって寄託番号DSM 26760の元で、ドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbH(DSMZ)に寄託され、2017年5月15日にブダペスト条約に基づく寄託に移管されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属するラクトバチルス属の特定の細菌株が、上記の技術的問題を解決することができることを発見した。
【0005】
出願人は、集中的かつ長期にわたる研究開発を経て、驚くべきことに、ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)として同定され、1995年5月5日にSofar S.p.Aによって寄託番号CNCM I-1572の元で、国立微生物培養コレクション(CNCM)に寄託されたラクトバチルス・カゼイ spp.カゼイ種に属するラクトバチルス属の特定の細菌株が、上記の技術的問題を解決することができることを発見した。
【0006】
出願人は、集中的かつ長期にわたる研究開発を経て、驚くべきことに、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム(biome) LIVESKIN88(たとえば、ラクトバチルス・パラカゼイまたはL.パラカゼイ)として同定され、寄託番号DSM 33788の元で、ラクトバチルス・パラカゼイとしてドイツ微生物および細胞培養コレクションGmbH(DSMZ)に寄託された(LAC2BIOME S.r.l.、イタリアによって2021年1月20日に申請され、その後、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ、DSM 33788と改名された)ラクトバチルス属の別の特定の細菌株もまた、いくつかの皮膚障害を解決することができることを発見した。
【0007】
前記細菌株は、ブダペスト条約の規定に従って寄託されている;本特許出願に記載され特許請求されている前記細菌株の寄託者、および出願人は、特許の存続期間中、その株を利用可能にすることに同意を表明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】試験したさまざまなプロバイオティクスによるケラチノサイトの接触前刺激後に接着した生存し、活力のある細胞のパーセンテージで表したP.アクネスの接着(図中、(*)統計的に有意なデータ(p<0.05))。LP125=LPC-S01;LC48=DG
【
図2】ケラチノサイトとP.アクネスおよび試験したさまざまなプロバイオティクスとの共インキュベーション後に接着した生存し、活力のある細胞のパーセンテージで表したP.アクネスの接着(図中、(*)統計的に有意なデータ(p<0.05))。
【
図3】病原体による真核細胞のチャレンジ後、試験したさまざまなプロバイオティクスとケラチノサイトのインキュベーション後に接着した生存し、活力のある細胞のパーセンテージで表したP.アクネスの接着。(図中、(*)統計的に有意なデータ(p<0.05))。
【
図4】プロバイオティクス株によるIL1β、IL10およびIL8に対する免疫調節効果。
【
図5】COX-2とNF-kBのウェスタンブロッティング。
【
図8】4時間のVS 42-18 NF-kB転座を報告するブロック図。CN:ネガティブコントロール、CP:ポジティブコントロール、P1:LPC S01、P2:ヒアルロン酸マスク+LPC S01、P3:ヒアルロン酸マスク。
【
図9-10】4時間および24時間でのT皮膚における炎症老化モデル。
【
図11A-B】24時間後(左)と48時間後(右)の遺伝子発現結果。NC24時間=1で計算されたRQ、NC48時間=1で計算されたRQ。RQ < 0.5 ダウンレギュレーション、RQ> 2 アップレギュレーション。
【
図13-15】4b.2の試験のプロトコル。
図14は前処置プロトコルを表す;
図15は後処置プロトコルを表す
【
図16A-B】Log10 CFU/インサートで発現されたC.アクネス(以前は、P.アクネス)DSM1897の生存の減少(
図16の左欄)。右欄に、プロバイオティックによる前処置およびその後の病原体感染モデルで試験されたさまざまな条件下でのC.アクネスDSM1897の生存の減少パーセンテージ。
【
図18A-B】Log10 CFU/インサートで発現されたC.アクネス(以前は、P.アクネス)DSM1897の生存の減少(
図18の左欄)。右欄に、競合試験で試験されたさまざまな条件下でのC.アクネスDSM1897の生存の減少パーセンテージ。
【
図19A-B】Log10 CFU/インサートで発現されたC.アクネス(以前は、P.アクネス)DSM1897の生存の減少(
図19の左欄)。右欄に、置き換え試験で試験されたさまざまな条件下でのC.アクネスDSM1897の生存の減少パーセンテージ。
【
図20】29人のボランティアから得られた治療領域の皮膚表面水和値を示す。
【
図21】関与する顔面領域の拡張の臨床評価を表し、29人のボランティアで得られたデルタ値を示す。
【
図22】29人のボランティアから得られたデルタ値を示し、紅斑に関して統計的に有意な減少を示す。
【
図23】29人のボランティアから得られたデルタ値を示し、丘疹および/または膿疱の数に関して統計的に有意な減少を示す。
【
図24】29人のボランティアから得られたデルタ値を示し、皮膚の乾燥に関して統計的に有意な減少を示す。
【
図25】14日間の処置後と28日間の処置後のサンプル当り29症例に基づく治療の結果を示す。
【
図26】Haマスク+ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)が表皮細胞の増殖を促進したことを示す。完全なマスクの異なる希釈を使用した、異なる時点でのインキュベーション後の HaCaT細胞の創傷閉鎖の定量化。
【
図27】水で1から20に希釈した賦形剤マスクに再懸濁した異なる細菌細胞濃度を使用した表皮化の定量化を示す。
【
図28】光学顕微鏡下でギムザ染色により観察された、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)株のHaCaT表皮細胞層への接着を示す。
【
図29】アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーターベクターでトランスフェクトされたHaCaT細胞層におけるNF-κB転写調節因子の活性化の研究を示す。
【
図30】さまざまなプロバイオティクス調合液の除去効果の比較を示す。
【
図31】ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の抗酸化作用によるHaCaT細胞における細胞内ROS調節を示す。
【
図32】さまざまなラクトバチルス懸濁液と比較した、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)調合液の抗病原体効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の説明
興味深いことに、2つの特定の細菌株がP.アクネスに特異的な作用を及ぼすことにより、いくつかの皮膚疾患や機能障害に非常に効果があることが判明した。
【0010】
その第1の態様によれば、本発明は、プロピオニバクテリウム・アクネス種に属する病原性細菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置に使用するための細菌株に関する;ここで、前記株は、以下からなるか、または、以下を含む群から選択される:
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)
- ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
前記予防または治療処置は、P.アクネスに対する特異的作用を介して発揮されることを特徴とする。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、上記の菌株の少なくとも1つと、場合により少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物に関し、前記組成物がP.アクネスに対する特異的作用を介して炎症を阻害することを意図していることを特徴とする。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、ニキビを治療するための美容方法であって、以下を含むか、または、以下からなる群から選択される細菌株を投与することを含む方法に関する:
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)
- ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
前記方法は、P.アクネスに対する特異的作用を介して炎症を抑制することを意図することを特徴とする。
【0013】
好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を含むか、または、以下からなる群から選択される細菌株:
- ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)
- ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
が、必要とするヒトに1日1回投与される、上記美容方法に関する。
【0014】
美容組成物または皮膚科組成物がP.アクネスに対する特異的作用を介して作用することを特徴とする、ニキビを治療または予防するための前記美容組成物または皮膚科組成物を調製するための上で定義した少なくとも1つの細菌株の使用は、本発明の別の主題を表す。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、
-以下を含むか、または、以下からなる群から選択される細菌株:
ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)、ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
- ヒアルロン酸またはその塩;
を含む組成物に関し、
前記組成物は、P.アクネスに対する特異的作用を介して炎症を抑制することを意図することを特徴とする。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、皮膚保湿を高めるための美容方法であって、以下を含む方法に関する:
-上記で定義した組成物を皮膚に塗布し、少なくとも6時間塗布を維持すること;
- 塗布された組成物を水で除去すること;
適用は、少なくとも14日間、好ましくは14~28日間の期間行われることを特徴とする。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
- 上記で定義した組成物;および
- 細菌株用の別個のコンパートメントを備えたディスペンサー。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、ヒトの皮膚を紫外線から保護し、皮膚保湿を高めることにおいて使用するための、以下を含む組成物に関する:
-以下を含むか、または、以下からなる群から選択される細菌株:ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01(DSM 26760)、ラクトバチルス・カゼイDG(登録商標)(CNCM I-1572)、およびその混合物;
- ヒアルロン酸またはその塩。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、創傷治癒および表皮化促進において使用するための、以下を含む組成物に関する:
- ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788);
- ヒアルロン酸またはその塩。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、皮膚老化を防止するための、以下を含む美容組成物に関する:
- ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788);および
場合により、
- ヒアルロン酸またはその塩。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置における使用のための細菌株に関する;ここで、前記菌株は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)である。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)および場合により、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染症および/または炎症の予防または治療処置における使用のための組成物に関する。
【0023】
本発明の細菌株および組成物は、1日1回以上、好ましくは、1日1回の局所使用を意図している。
【0024】
好ましくは、本発明の菌株は、凍結乾燥された形態であり、場合により従来の賦形剤の存在下で、局所使用のための医薬組成物、皮膚科組成物または化粧品組成物で投与される。このような組成物は、医薬品または化粧品であり得、当技術分野で知られている方法に従って調製され得、単位剤形または複数剤形(multiple dosage form)であり得る。たとえば、本発明の組成物は、ゲル、クリーム、エマルジョン、軟膏、フォーム、粉末、使用前に撹拌される水溶液もしくは水懸濁液、油溶液もしくは油懸濁液、または二相溶液もしくは二相懸濁液の形態で調製され得る。マスクも本発明の治療に適している。
【0025】
組成物は、組成物1グラムあたり103~1012、たとえば105~1010のCFU(コロニー形成単位)を含むことができる。このような組成物は、治療される領域の範囲に適切な量で投与され得る。治療は、少なくとも14日間、好ましくは、望まれる皮膚科学的または美容上の結果が得られるまで延長されることが好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、従来の賦形剤に加えて、疾患または美容上の障害の治療に有益なさらなる有効成分を含有することもできる。あるいは、本発明の菌株または組成物の投与は、局所的または非経口的のいずれかの別の都合のよい治療と組み合わせて実施することもできる。
【実施例】
【0027】
実験セクション
プロバイオティクス vs P.アクネス(キューティバクテリウム・アクネス、以前は、プロピオニバクテリウム・アクネス)
以下における有効性を評価するためのラクトバチルス・パラカゼイ、すなわち、L.パラカゼイ LPC-S01およびL.カゼイ DGの2つの菌株:
・P.アクネスの増殖の抑制;
・炎症性刺激(LPS)によるチャレンジ後のケラチノサイトの炎症反応の調節。
これらの実験を行うために、適切なサプリメントとともに培養物中に保持された正常なヒトのケラチノサイトが使用された。
【0028】
培養ヒトケラチノサイトは、皮膚炎症の軽減に適用することを目的としたプロバイオティクスの有効性を評価するために必要な予備測定に適した基質として同定されている。実際、ケラチノサイトは外部環境に対する皮膚の防御の第一線であり、外部の皮膚層(表皮)に播種され、サイトカインとケモカインの分泌を誘導して、警告メッセージを皮膚のより深い層に伝え、炎症反応を生成することができる。それらの進化の過程で、最も深い層から最も表面的な層への移動が起こり、ケラチンが進行的に沈着し、保護作用を担う。
【0029】
ヒト初代ケラチノサイトは、実験室でインビトロで培養することができ、細菌株によって誘発される免疫応答の性質を特定するために、細菌株を用いた培養試験を目的とすることができる。
【0030】
使用された細菌株を以下に列挙する:
・L.カゼイ DG(登録商標)(L.パラカゼイ CNCM I-1572)
・L.パラカゼイ LPC-S01(登録商標)(DSM 26760)
・L.カゼイ DG(登録商標)+L.パラカゼイ LPC-S01、1:1混合物
【0031】
次の試験を行った:
1.病原体による細胞株の接着およびチャレンジ試験;
2.免疫調節試験;
【0032】
1.2.1 接着およびチャレンジ試験
これらの実験は、単独または1:1混合物での、ラクトバチルス・パラカゼイの特定の菌株の、培養物中の正常ヒトケラチノサイトに対するプロピオニバクテリウム・アクネスの接着を妨げる能力を検証することである。
【0033】
排除試験(プロバイオティクスによる真核細胞の前処置とその後の病原体とのインキュベーション)では、結果は両方のプロバイオティクス株が同様の%でP.アクネスの接着を防ぐ能力を示したことを明らかにした(L.カゼイ DG(登録商標)は42%およびL.パラカゼイ LPC-S01は35%)。
【0034】
図1に報告する結果は、試験したさまざまなプロバイオティクスによるケラチノサイトの接触前刺激後に接着した生存し、活力のある細胞のパーセンテージで表したP.アクネスの接着を表す。プロバイオティクスによる刺激の不在下でP.アクネスが接着した後、試験菌株の阻害能力は、ポジティブコントロールと比較したP.アクネスによる接着減少の%として表される。
【0035】
競合試験(真核細胞とプロバイオティクスおよび病原体とプロバイオティクスの共インキュベーション)では、試験結果は、L.カゼイ DG(登録商標)株は17%の接着軽減能力を有するのに対し、L.パラカゼイ LPC- S01株は9%の接着軽減能力を有することを示している。菌株を混合すると、P.アクネス接着が統計的に有意に減少して、個別に検討した菌株で観察されたものよりも明らかに高く、明らかに相乗効果を示すパーセンテージである42%に達した。結果を
図2に示す。
【0036】
図2は、ケラチノサイトとP.アクネスおよび試験したさまざまなプロバイオティクスとの共インキュベーション後に接着した生存し、活力のある細胞のパーセンテージで表したP.アクネスの接着を表す。前述したように、プロバイオティクスによる刺激の不在下でのP.アクネスの接着の場合、試験菌株の阻害能力は、ポジティブコントロールと比較したP.アクネスによる接着減少の%として表された。
【0037】
置換試験(病原体による真核細胞の前処置とその後のプロバイオティクスとのインキュベーション)では、結果は、興味深い統計的に有意な相乗効果が観察されたことを示しており、これは2つのプロバイオティクスの混合物に関連しており、P.アクネスの接着を42%減少させ得ることが判明した。代わりに、個々のプロバイオティクスは、L.カゼイ DG(商標登録)については18%、L.パラカゼイ LPC-S01については11%に相当する接着減少能力を明らかにした。
【0038】
図3に報告する結果は、真核細胞を病原体で刺激した後、試験したさまざまなプロバイオティクスとケラチノサイトをインキュベートした後に接着した生存し、活力のあるP.アクネスの接着をパーセンテージで表す。前述したように、プロバイオティクスの不在下でのP.アクネスの接着の場合、試験菌株の阻害能力は、ポジティブコントロールと比較したP.アクネスによる接着減少の%として表された。
【0039】
1.2.2 免疫調節試験
これらの実験の目的は、ラクトバチルス・パラカゼイの特定の菌株の、単独または1:1混合物において、培養中の正常なヒトケラチノサイトに対するプロピオニバクテリウム・アクネスの接着を妨げる能力を検証することであった。
【0040】
試験は、サイトカイン(IL-8、IL-1ベータ、およびIL-10)の測定と2つのマーカーCOX-2およびNF-kBの活性化の評価に焦点を当てた。
【0041】
COX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)は、特定の炎症刺激に応答して少数の細胞型によって産生される誘導マーカーを表す。皮膚の腫瘍を含むいくつかの腫瘍で過剰発現しているようである。
【0042】
NF-kB(活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー)は、炎症性のものを含むさまざまな刺激に応答してすべての細胞タイプによって産生される、転写因子機能を有するタンパク質複合体である。
【0043】
結果は次のとおりである:
・プロバイオティクスに曝露された細胞の上清におけるサイトカインアッセイにより、特にL.パラカゼイ LPC-S01を参照して、個別に検討されたプロバイオティクス株による IL1β、IL10、およびIL8の発現の減少という免疫調節効果が強調された。結果を
図4に示す。
【0044】
・LPC-S01誘発活性化後の免疫調節効果は、COX-2およびNF-kBのウェスタンブロッティングの結果によっても確認される。L.パラカゼイ LPC-S01株には特定の可能性が関連付けられているが、L.カゼイ DG(登録商標)株も興味深いけれども、ケラチノサイトに対する全体的な抗炎症作用の効率が劣っている。結果を
図5に示す。
【0045】
1.3 結果の概要
混合菌株の相乗効果は、病原体の排除において重要であり、ケラチノサイトと接触する病原体の存在とともに、または感染に続いて混合物を使用した場合、その増殖を封じ込めるために使用される。
【0046】
免疫調節の観点からは、多くの場合、L.パラカゼイ LPC-S01株は、炎症刺激によるケラチノサイトの炎症反応の調節において、L.カゼイ DG(登録商標) よりも効果的であった(LPC-S01)。
【0047】
2.プロバイオティクス+マスク-恒常性モデル
研究の目的は、本発明によるプロバイオティック株の有無にかかわらず、ヒアルロン酸、コラーゲン、またはホホバ油に基づく一連のサンプルを評価することであった。研究は、スキンケアへの潜在的な応用と有効性を調査するために、真皮と表皮を含むインビトロで再構成された完全な3Dモデル(全層皮膚モデル)に対して実行された。
【0048】
2.1 背景
インビトロで再構成されたヒト皮膚モデルは、形態学(多層上皮)、生化学的および生理学的特性の点でインビボヒト組織に近く、今日、局所適用製品のインビトロでの安全性と有効性評価のための、動物、エクスビボ外植片および浸漬細胞単層に代わる最も有望な代替品となる(Gordon et al.、2015、Zuang V.2016)。
【0049】
これらのモデルの生物学的関連性と予測性は、異なる生細胞層を含む組織化された組織の存在に由来しており、現実的な臨床用量と曝露条件で製品を局所的に評価することができる。
【0050】
化粧品などの局所適用製品による人間の皮膚の治療は、動的な経路を有し、イベントカスケードの原因となる転写レベルでの最初の細胞シグナルを表すゲノム反応をもたらす。3D生体組織は、作用機序を調査し、直接的なゲノム応答と、可溶性メディエーターおよび特定のバイオマーカー発現を介した細胞コミュニケーションおよびクロストークの結果の両方を考慮して製品の有効性を評価するための適切な試験システムである。
【0051】
真皮と表皮の区画を再現した「全層皮膚モデル」(T-skin)の恒常性モデルを化粧品テスト用に開発された;このモデルは、マルチパラメトリックアプローチによる真皮の細胞外マトリックスの修正と生層の分化の研究を可能にする特異性を有する。
【0052】
2.2 試験
スキンケアへの潜在的な応用と有効性を探求するために、基準製剤(マスク)中のヒアルロン酸、コラーゲン、またはホホバ油をベースとした一連の新製品と、プロバイオティクス菌株LPC-S01の存在下での製品を、真皮と表皮を含むインビトロで再構成された完全な3Dモデル(全層皮膚モデル)で評価した
【0053】
【0054】
製品を3Dモデルの表面に8時間、生理学的一日曝露量で直接塗布し、その後生理食塩水で穏やかに洗浄して過剰な製品を除去し、マスクの現実的な曝露を模倣するために16時間ポストインキュベートした。
【0055】
以下における皮膚耐性と有効性を定義するために、真皮と表皮を含むインビトロで再構成された完全な3Dモデル(FT-skinモデル)において次のパラメーターを検討している:
・抗菌ペプチドの誘導により皮膚の自己防御を強化すること;
・ケラチノサイトの自然免疫応答、表皮の再生および分化を刺激すること;
・表皮および真皮の区画の積極的な再生を誘導し、アンチエイジングとして作用すること。
【0056】
【0057】
細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01の有または無において、異なるマスクベースの製品の3つの主要成分(ホホバ油、ヒアルロン酸、コラーゲン)を比較してすることによって得られた主な肯定的な結果を、各製品について次の表に報告する。
【0058】
【0059】
ヒアルロン酸とL.パラカゼイ LPC-S01株の組み合わせのより最良の結果が得られた。
【0060】
形態素解析では、コントロールに対する定性的評価のスコアリングが付与されている:
+ →大幅な変更なし
++ →形態学的記述子の大幅な改善
- →わずかに変化した形態
- - →変化した形態
【0061】
【0062】
2.3 結果の概要
全体的に、得られた結果は、プロバイオティクスLPC-S01を単独で適用すると、自然免疫(TLR2およびHBD-2に基づく)を強化することによって皮膚にプラスの効果を発揮することを示す。
【0063】
プロバイオティクス株を含まないヒアルロン酸、コラーゲン、またはホホバ油をベースにした製品は、T-skinモデルにプラスの効果を及ぼしていない;それどころか、細菌株LPC-S01も含む同じ製品は、皮膚の自己防御機能を強化するプラスの効果を示す。
【0064】
ヒアルロン酸マスク+ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01という製品が、以下においてプラス効果を示す最も期待できる組み合わせとなった:
・皮膚の分化プロセスと皮膚の再生を促進すること;
・コラーゲンネットワークを増加させることにより真皮コンパートメントの構造を全体的に強化すること。
【0065】
3a.プロバイオティクス+マスク-インフラマソームモデル-生細胞
目的
この研究では、ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01株を単独で、またはヒアルロン酸(「マスク」)と組み合わせて、炎症軽減に対する潜在的な応用と有効性を調査するために、インフラマソームモデルに対する効果を評価した。この研究は、紫外線照射に応じたインフラマソーム活性化、つまり炎症に対する製品の効果に焦点を当てた。
【0066】
【0067】
3a.1 背景
インビトロで再構成されたヒト皮膚モデルは、形態学(多層上皮)、生化学的および生理学的特性の点でインビボヒト組織に近く、今日では局所的に適用される製品のインビトロでの安全性と有効性評価のための動物、エクスビボ外植片および浸漬細胞単層に代わる最も有望な代替品となる(Gordon et al.、2015、Zuang V.2016)。
【0068】
これらのモデルの生物学的関連性と予測性は、異なる生細胞層を含む組織化された組織の存在に由来しており、現実的な臨床用量と曝露条件で製品を局所的に評価することができる。化粧品などの局所適用製品による人間の皮膚の処置は、動的な経路を有し、イベントカスケードの原因となる転写レベルでの最初の細胞シグナルを表すゲノム反応を引き起こす。
【0069】
3D生体組織は、作用機序を調査し、直接的なゲノム応答と、可溶性メディエーターおよび特定のバイオマーカー発現を介した細胞コミュニケーションおよびクロストークの結果の両方を考慮して製品の有効性を評価するための適切な試験システムである。
【0070】
本試験では、VitroScreenが化粧品試験用に特別に開発した、真皮と表皮の区画を再現した「全層皮膚モデル」(T-skin)を使用した。このモデルにより、紫外線によって誘発されたストレス条件におけるマルチパラメーターアプローチによる真皮細胞外マトリックスの修正と表皮分化の研究が可能になった。
【0071】
3a.2 試験
基準製剤(「マスク」)中のヒアルロン酸それ自体をベースにした新製品と、プロバイオティクス細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01の存在下の製剤の、炎症減少に対する潜在的な応用と有効性を調査するために、インフラマソームモデルで評価した。
試験した製品は次の通りである
【0072】
【0073】
製品を3Dモデルの表面に直接塗布し、一晩インキュベートした後、生理食塩水で穏やかに洗浄して過剰な製品を除去した。組織をわずかに擦過した後、通常の日光曝露を模倣するために1MEDのUVに曝露した。インフラマソーム経路の活性化は、1MED照射の4時間後と24時間後に評価された。
【0074】
未処置のコントロールと比較して、次のパラメーターを分析した:
・NF-κBの免疫染色
・ヘマトキシリン・エオシン染色
・ELISAによる分泌IL-1βの定量
【0075】
ポジティブコントロール(1MEDによって誘導されたインフラマソーム)は次の特徴を示した:
【表7】
【0076】
形態の観点からは、表皮剥離後、予想通り、すべての照射組織は4時間後にサンバーン細胞を呈し、24時間後には重大な表皮および真皮の損傷が見られた。
【0077】
マスク(ヒアルロン酸)、プロバイオティクス菌株 LPC-S01、および両方の組み合わせを放射線照射ポジティブコントロールと比較することにより得られた試験項目の主な結果を次の表に報告する。
【0078】
【0079】
4時間後に得られた結果は
図8に示す通りである。
炎症を軽減する顕著な効果が、すべての製品で4時間で観察された。
【0080】
マスクはおそらく紫外線から守る膜形成剤として機能している。しかしながら、
図9および10に示すように、P2で処置したサンプルの組織形態は4時間と24時間で大きく異なった。
【0081】
製品ヒアルロン酸+LPC-S01は、本発明による細菌株を含まないヒアルロン酸マスクと比較して、真皮表皮接合部の完全性、および紫外線損傷による全体的な皮膚構造および硬さをよりよく保存し、明らかな相乗効果を示している。
【0082】
3a.3 結果の概要
プロバイオティクスLPC-S01単独(P1)およびプロバイオティクスLPC-S01とHAの組み合わせ(P2)は、皮膚バリアが障害されている場合に、κB核移行とそれに続くケラチノサイトの細胞質への蓄積に対して、生物学的に関連するUV線量(1MED)がNF-βに及ぼす影響を軽減するのに顕著な効果を示した:それらは、最初に核移行を減少させ(初期の有効性は4時間で可視)、次に細胞質のNF-κB含量(24時間で可視)を減少させ、インフラマソーム減少に対するそれらの遅延したプラスの有効性を示した。
【0083】
プロバイオティクスLPC-S01(P1)は、4時間後に細胞質のNF-κB含量のさらなる減少を誘導した。
【0084】
この研究で採用された特定の曝露条件(一晩の処置、残留物の穏やかな洗浄、バリア機能を低下させて紫外線に対するより高い感受性を誘発する磨耗、紫外線への曝露)では、P1とP2は、ストレス誘発後、4時間で目に見え、24時間後もまだ活性である抗炎症メカニズムを通じて作用することが示されました。
【0085】
同様の抗炎症効果にもかかわらず、P2には真皮表皮接合部構造を紫外線損傷から保護する相乗効果が見られた。さらに、HAマスク(P2)と併用すると、プロバイオティクスの効果がより効率的かつ長時間(24時間)持続する。
【0086】
3b.プロバイオティクス+マスク-インフラマソームモデル-生細胞および不活化細胞
UVA+UVB(1MEDの用量)によって誘発される炎症経路に基づくT-skin(全層皮膚)の実験モデルを適用して、プロバイオティクス株LPC-S01(生存および不活化)をインフラマソームストレス誘発前に適用した場合の有効性を評価した。
【0087】
本試験は、次の2つの目的を持って計画され、実施された:
・Viable LPC-S01自体の有効性、または長期の前処置時間(以前の試験のように一晩で16時間)と比較して、短い前処置時間(45分)後に基準製剤(マスク)に導入された場合の有効性と、その後の4時間後の最終読み取り値を評価すること;
・前処置時間の短期(45 分)および長期(一晩中16時間)における不活化LPC-S01の有効性を評価すること。
【0088】
3b.1 背景
本試験では、真皮および表皮区画を再現するVitroScreen「全層皮膚モデル」(T-skin)が使用された:このモデルにより、紫外線によって誘発されたストレス条件におけるマルチパラメーターアプローチによる真皮細胞外マトリックスの修正と表皮分化の研究が可能になった。
【0089】
3b.2 試験
ラクトバチルス・パラカゼイ プロバイオティクス株LPC-S01自体の有効性、または局所製剤(マスク)に導入した場合の有効性を、製剤プラセボ(3製品)と比較して評価するために試験が実施された:このプロトコルは、UVA+UVB(1MEDの用量)によって誘発される炎症経路に基づく。
【0090】
この研究では、製品を一晩前処置時間で適用した後、取り外して、T-skinに放射線を照射した:照射後、4時間後と24時間後に読み出し(NF-kB転座と形態)を定量化した。
【0091】
試験されたサンプルと実験条件(製品は、3Dモデルの表面に直接適用された)を次の表に示す。
【0092】
【0093】
16時間の長期前処置時間プロトコル:生存プロバイオティクスと不活化プロバイオティクスの比較
【0094】
以下の表は、16時間(長期)の前処置時間におけるNF-κB核移行の半定量分析を示し、現在のデータを以前に得られたデータと比較して(以前の研究を参照)、長期処置の効果を評価する。
【0095】
【0096】
・不活化LPC-S01シリーズ(不活化LPC-S01それ自体または製剤中)は、16時間の前処置後に測定されたNF-kBの有意な減少を誘導しなかったが、生存シリーズLPC-S01(LPC-S01それ自体または製剤中)(ref.VS 42-18)は、NF-kB転座の大幅な減少によりすべての試験項目について核内NF-kBレベルをネガティブコントロールに戻すのに効果的であった。
・プラセボマスクを考慮すると、以前の研究で報告されたように、本研究では16時間の前処置後にも有効性が検出された(-28.4% p=0.00)。
【0097】
次の表では、組織形態学的分析の結果が報告される:
【表11】
【0098】
インフラマソーム(すなわち、NF-κBポジティブ核およびSBC)を減少させる処置の有効性のスコアリング
凡例:(+) わずかに有効;(+++) 著しく有効;(-) 効果なし
【0099】
3b.3 結果の概要
インフラマソームモデル(1MEDでのUV曝露、最小紅斑線量)の生物学的関連性と再現性は、ネガティブコントロールと比較した照射サンプルの細胞核における NF-κB転座の増加によって確認されている。
【0100】
・NF-κB転座の相対的増加(パーセント差)は、以前の研究で定量化されたもの(+83.7、p=0.01- VS 42-18)と同等である(+70.7%、p=0.01- VS 75-18)。
・生きたプロバイオティクスLPC-S01を含む製品は、短期間の前処置(45分)では、長期の前処置(16時間)と比較して、NF-κB転座の減少効果が低いことが示された。
・不活化プロバイオティクスLPC-S01自体、または製剤(マスク)に導入された場合、短期および長期の前処置のいずれにおいても、UV誘発損傷(NF-κB転座)を軽減する効果は低いことが示される。
・ヒアルロン酸マスク単独(マスクプラセボ)は、短期(-27.2%、p=0.001)と長期(-28.4%、p=0.00)の前処置の両方で物理的シールドとしての作用を確認した。
【0101】
4.不活化プロバイオティクス+ヤルアージュ(Yaluage)(登録商標)クリーム
この研究は、3つの異なるフェーズに分かれる:
1.スキンケアへの潜在的な応用と有効性を探索するための皮膚の恒常性に対する利点の観点から、真皮と表皮を含む(全層皮膚モデル)である、インビトロで再構成された完全な3Dモデル上で、不活化プロバイオティクス株LPC-S01を単独で、またはクリーム製剤(ヤルアージュ)に含ませた場合の有効性を評価する。(恒常性モデル)。
【0102】
2.以前に研究された線量は、3つの形式で45分および4時間の前処置(照射に関して)を使用して、インフラマソームモデルでの有効性について試験する:a)それ自体、b)ヤルアージュの製剤中、およびc)ヤルアージュそれ自体として (コントロール)。(インフラマソームモデル)。
【0103】
3.以前に研究された線量は、照射後45分後および4時間後(治療後)の3つの形態で適用され、インフラマソームモデルでの有効性が試験される:a)それ自体(プロバイオティクス菌株LPC-S01)、b)ヤルアージュ製剤中およびc)ヤルアージュ(インフラマソームモデル)。
【0104】
ヤルアージュクリームは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ビタミンE、クチナシ幹細胞、フリー・ボンドケミカルフィルター(free and bond chemical filters)、およびシアバターを含むアンチエイジングフェイスクリームである。
【0105】
4a.恒常性モデル
研究の目的は、不活化細菌株(LPC-S01)の高濃度曝露後の皮膚耐性プロファイルを調査し、以下におけるその有効性(単独またはクリーム中)を評価することであった:
・抗菌ペプチドの誘導により皮膚の自己防御を強化すること。
・ケラチノサイトの自然免疫応答、表皮の再生と分化を刺激すること。
【0106】
4a.1 背景
本研究では、VitroScreenが開発した「全層皮膚モデル」を使用した。VitroScreenは、真皮および表皮区画を再現する「全層皮膚モデル」(T-skin)の恒常性モデルを化粧品テスト用に特別に開発した:このモデルは、マルチパラメトリックアプローチによる真皮細胞外マトリックスの修飾と生存層の分化の研究を可能にする特異性を備えている。
【0107】
4a.2 研究
不活化プロバイオティクス菌株LPC-S01の単独での、またはクリーム製剤(Yaluage)に含まれる場合の皮膚の恒常性における利点に関する効果をT-Skinモデルで評価した。
【0108】
この研究は、スキンケアへの潜在的な応用と有効性を調査するために、高濃度の不活化細菌(109細胞/組織)を使用して実施された。
【0109】
具体的には、以下の製品である:
- 生理食塩水に再懸濁した不活化LPC-S01(109細胞/組織)(ユニヴォーカルコード=P1)、
- ヤルアージュクリーム(ユニヴォーカルコード=P2)、
- ヤルアージュクリームに再懸濁した不活化LPC-S01(109細胞/組織)、最終製剤の30%に相当(ユニヴォーカルコード=P3)、
を3Dモデルの表面に24時間および48時間直接適用した。
【0110】
未処置のコントロールと比較して、次のパラメーターを分析した:
・培地中でのIL-1αの放出;
・皮膚防御の重要なバイオマーカー(DEFB4)、自然免疫応答(TLR2、TNFα)、表皮の分化と再生(TGMS-1、CCND1、TGF-β1)の遺伝子発現;
・H&Eによる組織学的解析。
上記のマーカーの生物学的意味は以下の通りである。
【0111】
【0112】
結果を以下に説明する。
この研究は、非常に高濃度の不活化細菌(109細胞/組織)を使用して実施された。
具体的には、テストした製品:
- 生理食塩水に再懸濁した不活化LPC-S01(109細胞/組織)(P1とラベル付け)、
- ヤルアージュクリーム(P2とラベル付け)、
- ヤルアージュクリームに再懸濁した不活化LPC-S01(109細胞/組織)、最終製剤の30%に相当(P3とラベル付け)、
をT-skinモデルの表面に24時間および48時間直接適用した。
【0113】
ヤルアージュクリームは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ビタミンE、クチナシ幹細胞、フリー・ボンドケミカルフィルター(free and bond chemical filters)、およびシアバターを含むアンチエイジングフェイスクリームであり、次の特性を有する:アンチエイジング、しわや小じわの予防、UVAおよびUVB保護、表皮層の滑らかさ、保湿、皮膚軟化、抗酸化。
特定のパラメーターとその生物学的意味を次の表に示す:
【0114】
【0115】
得られた主な結果を以下に報告する:
【0116】
【0117】
ヒトディフェンシンβに関する結果を
図11に報告する。一方、皮膚分化プロセスに対する組み合わせの効果を
図12に報告する。
【0118】
4a.3 結果の概要
この恒常性モデルでは、不活化LPC-S01とヤルアージュクリームの組み合わせで観察された効果は次のように要約することができる:
・常時(24時間および48時間)ヒトβ2ディフェンシンのアップレギュレーションが考慮されており、前述の組み合わせによる宿主の防御力の向上における有効性の増加を示唆する。
・高度に分化した組織と角質層の変化を伴い、24時間から48時間の動的なパターンで分化の加速プロセスを誘導する代謝活性化(後述の図)。
【0119】
したがって、この組み合わせは、3D皮膚モデルで良好に許容され、身体の防御と細胞分化プロセスを刺激することができた。
【0120】
4b. インフラマソームモデル
研究の目的は、インフラマソームストレスの誘発前または後に適用された場合の、NF-kBの活性化と核への転位の調節における不活化細菌LPC-S01の2つの異なる投与(単独またはクリーム中)の有効性を調査することであった。
【0121】
本研究では、VitroScreen が開発した「全層皮膚モデル」を使用した。VitroScreenは、真皮および表皮区画を再現する「全層皮膚モデル」(T-skin)の恒常性モデルを化粧品テスト用に特別に開発した:このモデルは、紫外線によって誘発されたストレス条件におけるマルチパラメトリックアプローチによる真皮細胞外マトリックスの修飾と表皮分化の研究を可能にする。
【0122】
4b.2 研究
図13~15に示すように、前処置と後治処置の2つのプロトコルに従って、不活化プロバイオティクス株LPC-S01を単独で、またはクリーム製剤(ヤルアージュ)に含ませて、T-skinインフラマソームモデルに対する潜在的な応用と有効性を調査するために、2つの異なる濃度の不活化細菌(10
7または10
9細胞/組織)を使用して評価した。
【0123】
具体的には、製品は次の2つのプロトコルに従って、T-skinで試験された:
・生理食塩水に再懸濁した不活化LPC-S01(10
9細胞/組織)(P1とラベル付け);
・ヤルアージュクリーム(P2とラベル付け);
・ヤルアージュクリームに2つの濃度(10
7または10
9細胞/組織)で再懸濁した不活化LPC-S01、それぞれ最終製剤の30%と0.03%に相当する(P3-10
9およびP3-10
7とラベル付け);
・前処置プロトコル:表皮表面に機械的ストレスにより擦過されたT-skinを試験項目で45分および4時間前処置した後、UVAおよびUVB(1MED)照射に付した。4時間のポストインキュベーションの後、分析のために組織を収集した(
図14);
・後処置プロトコル:表皮表面に機械的ストレスにより擦過されたT-skinをUVAおよびUVB(1MED)照射に付し、その後、試験項目で45分および4時間処置し、分析のために直ちに収集した(
図15)。
結果を以下に報告する。
【0124】
【0125】
【0126】
上記の表では、インフラマソーム経路の減少における不活化LPC-S01の有効性に対応する結果は、太字で報告される。不活化されたLPC-S01とヤルアージュの間で観察された最良の相乗効果は、下線と太字で示される。
【0127】
4b.3 結果の概要
UVA+UVBによって誘発される炎症経路に基づくT-skinのこの実験モデルでは、不活化プロバイオティクス株LPC-S01は、単独またはクリームとしてインフラマソームストレスの誘発前または後に適用した場合、次のように示される:
・前処置:109細胞/組織の濃度のLPC-S01とクリームの組み合わせは、単独成分と比較して相乗効果として抗炎症予防効果を確認した。2つの異なる濃度での前処置は、用量反応の正のメカニズムを示唆する:最高用量の細菌はNF-κBを減少させる効果が高く、したがって炎症を軽減する。
【0128】
これらの結果は、プロバイオティクス株の免疫調節特性を、生理学的レベルと紫外線誘発性炎症ストレスに対する予防的治療の両方において確認する。同時に、相乗効果により皮膚の局所耐性と宿主防御機構の誘導が保証される。
【0129】
・後処置:クリーム製剤に含まれる場合、LPC-S01は、特に短期間の処置後(炎症反応が最大レベルにあるとき)、NF-κBの基礎レベルまでより効率的かつ迅速に回復することを確認し、この相乗効果は組織の恒常性を回復するのに効果的であることを示唆する。
【0130】
これらの結果は、クリームと不活化LPC-S01の組み合わせが恒常性維持状態と紫外線誘発性インフラマソーム皮膚の両方に有効であることを裏付ける。
【0131】
5. プロバイオティクス+マスク vs P.アクネス
研究の目的は、プロバイオティクス ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01株を単独および/またはヒアルロン酸と組み合わせて、全層のインビトロ皮膚モデルへのキューティバクテリウム・アクネス(以前のプロピオニバクテリウム・アクネス)の接着を阻止する能力を評価することであった。考えられるすべての感染状況へ評価を拡大するために、2015年にComan et al.によって説明された方法の適応に基づいて、このプロジェクトの枠組みで競争モデル、除外モデル、および置換モデルが評価された。
【0132】
5.1 研究
C.アクネスによる全層皮膚インサートの感染のインビトロモデルを使用して、病原体の感染能力に対する高分子量ヒアルロン酸および/またはプロバイオティクス株L.パラカゼイ LPC-S01の考えられる影響を評価した。
【0133】
プロバイオティクス菌株および/またはヒアルロン酸の病原体に対する潜在的な効果を、3つの異なるインビトロモデルによって評価した:
・プロバイオティクスおよび/またはヒアルロン酸による全層皮膚の前処置(除外モデル)、
・プロバイオティクスおよび/またはヒアルロン酸と病原体による全層皮膚の同時処置(競合モデル)、
・プロバイオティクスおよび/またはヒアルロン酸による、一次的に病原体に感染した全層皮膚の後処置(置換モデル)。
【0134】
具体的には、以下のようなさまざまな処置条件を考慮して試験を実施した:
1)排除、競合、置換の3つのモデルで、無処置の、C.アクネス DSM 1897の効果的で邪魔されない接着能力を評価する;
2)L.パラカゼイ LPC-S01による24時間の予防、同時または後処置;
3)0.5%ヒアルロン酸による24時間の予防、同時または後処置;
4)ヒアルロン酸とL.パラカゼイ LPC-S01の均質混合物による24時間の予防、同時または後処置;
5)過酸化ベンゾイルによる24時間の予防、同時または後処置(ベンザック10%、ポジティブコントロール)。
【0135】
【0136】
a)除外アッセイ
図16に報告された結果に基づいて、0.5%ヒアルロン酸の存在下でBenzac 10%、LPC-S01、およびLPC-S01の組み合わせで行われた処置は、約1.0~1.4 Log10までC.アクネスの生命電荷を減少させると言うことができ、これは、病原体の生存率の約20%減少に相当する。しかしながら、0.5%ヒアルロン酸単独による処置では、いかなる手段においても病原体の生存率を低下させることはできないように見える。
【0137】
L.パラカゼイ LPC-S01株は、3D全層皮膚モデルに親和性を示すことを強調すべきである。実際、L.パラカゼイ LPC-S01株は、3D全層皮膚モデルとのインキュベーション中に活発に増殖することができ、前処置されたインサートでは対数の半分をわずかに上回るまで生命電荷が増加する。
【0138】
したがって、プロバイオティクス株L.パラカゼイ LPC-S01による前処置後の病原体C.アクネス DSM 1897の減少は、プロバイオティクスの活発な増殖による培地の酸性化に起因すると考えられる。
【0139】
インキュベーション期間の終わりに関連するインサートで観察されたわずかな劣化(インサートの培地の黄変)も、プロバイオティクスの代謝活性に起因する可能性がある(
図17)。
【0140】
b)競合アッセイ
図18に示すように、0.5%ヒアルロン酸の存在下でBenzac 10%、LPC-S01、および LPC-S01の組み合わせで行われた処置により、C.アクネス DSM 1897の生命電荷が1.0-1.3 Log10 CFU減少することが確認された。0.5%ヒアルロン酸単独による処置は、病原体の生存率を減少させないようである。
【0141】
L.パラカゼイ LPC-S01株は、インキュベーション時間中に3D全層皮膚モデルに対して非常に低い親和性を示したことに留意すべきである。L.パラカゼイ LPC-S01株の数は、インサートとの24時間のインキュベーション後に、8.0 Log10 CFUから8.2 Log10 CFUへと非常にわずかな増加を示した。その結果、競合モデルでは、プロバイオティクス株L.パラカゼイ LPC-S01の同時存在に続く病原体C.アクネス DSM 1897の減少は、明らかにはプロバイオティクスの増殖に起因するものではなく、したがって、作用の異なるメカニズムが仮定されうる。
【0142】
c)置換アッセイ
図19に示すように、ベンザック10%で行った処置のみが病原菌の増殖を約2対数(約23%)減少させることができた。
【0143】
C.アクネス DSM 1897の他のすべての感染後の処置は、病原体の生存率を低下させないようである。
【0144】
L.パラカゼイ LPC-S01株は、24時間の置換試験中に活発に増殖できなかったことに留意すべきである。実際、L.パラカゼイ LPC-S01株の数は、インサートとの24時間のインキュベーション後に減少を示した。その結果、置換モデルでは、プロバイオティクス株L.パラカゼイ LPC-S01の同時存在後の病原体C.アクネス DSM 1897のわずかな減少は、明らかにはプロバイオティクスの増殖に起因するものではない。
【0145】
5.2 試験の概要
すべてのインビトロ試験では、C.アクネスによる感染の封じ込めにおける10%ベンザックポジティブコントロールの有効性が実証されており、病原体集団の活力の割合は、15%から23%に減少した。置換試験で示されるように、インサート内でC.アクネス DSM 1897の感染が始まると、医療機器のみがその複製を効果的に阻止できることが証明されている。
【0146】
排除試験および競合試験により、LPC-S01およびLPC-S01と0.5%のヒアルロン酸の組み合わせで行われた処置により、C.アクネス DSM 1897の感染が約18%~19% 減少することが示された。プロバイオティクスの有効性は、インビトロ除外モデルにおいて、インサートの培地中で増殖し、培地のわずかな酸性化を引き起こす菌株の能力に合理的に起因すると考えられ、一方、競合モデルでは、インキュベーション時間が短いため、この効果は観察されず、その結果、プロバイオティクスによる顕著な病原体阻害は別のメカニズムに起因するはずである。
【0147】
置換モデルの結果は、以前に検討された2つのモデルで観察された効果よりもはるかに低かったものの、プロバイオティクスの非常にわずかなプラスの効果 (病原体集団の生存率の3%減少)を示した。
【0148】
得られたデータは、0.5%ヒアルロン酸がプロバイオティクス株LPC-S01に対していかなる拮抗作用も生じず、ヒアルロン酸と組み合わせても、C.アクネス DSM 1897に対抗する能力を実質的に変化させずに維持することを示唆する。
【0149】
実験パート
研究の目的
研究の目的は、臨床評価、皮膚水分量の機器測定、および自己認識アンケートを通じて、14日間および28日間の処置後の製品「Infinite Skin Microbiome Serum」の有効性を評価することであった。
【0150】
製品および使用方法
本発明の一実施形態は「Infinite Skin Microbiome Serum」と称され、以下を含む:水、プロパンジオール、ヒアルロン酸ナトリウム、フェノキシエタノール、乳酸菌発酵物、マルトデキストリン、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール、アニン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸。 ボランティアには、次のように化粧品を塗布するよう依頼した:
製品の活性化:
・タブをちぎって外す、
・プランジャーを手のひらで押し込む(硬くて平らな面で行うと、より容易である)、
・ボトルを5~10秒ほど振り、粉末を液体中に完全に分散させる。
【0151】
保存:
・再活性化後および各塗布後は、必ず冷蔵庫に保存すること。
【0152】
使い方:
・製品は夕方に塗布し、夜はそのままにしておき(毎晩のルーチンの最後のステップとして)、
・各塗布前にボトルを2~3秒ほど振り、
・美容液を2ピペット分とり、手のひらに置き、顔と首に塗布し;乾かし(製品は数分で乾く)、
・朝に顔を洗う。
【0153】
目的:
14週間および28週間の使用後の治療効果を次の観点から評価する:
・MoistureMeter SC(Delfin)を用いた機器評価による肌水分量の変化。
・皮膚科医の臨床評価を通じて、ニキビに関係する顔面領域の広がり、存在するニキビの数の変化、赤みのある領域(紅斑)および皮膚の乾燥に関する各ボランティアの皮膚の変化を検証する。
・14日間と28日間の使用後の治療および副作用の有無について、ボランティアが感じた効果を評価する。
・処置前後の肌の状態の画像をデジタルカメラで記録する。
【0154】
対象:
30人のボランティア;男性および女性。年齢:18~40歳。皮膚疾患のない健康な被験者、彼らは、化粧品または薬に対するアレルギーおよび/または不耐性がない。特徴:ニキビができやすい肌であり、軽度から中等度のニキビがある被験者。
【0155】
被験者:
研究に参加するボランティアは、モデナ地域において、以下の組み入れ/除外基準に従って健康な被験者のパネルから選択された。
【0156】
組み入れ基準:
18歳~40歳の年齢。ニキビができやすい肌を有し、軽度から中等度のニキビがある被験者。皮膚疾患または化粧品もしくは薬に対するアレルギー/不耐症のない健康な被験者。研究手順に従い、管理手順を尊重することに同意した被験者。
【0157】
除外基準:
有効性試験の結果に影響を与える可能性のある薬物による局所的または全身的治療を受けている被験者。皮膚疾患に罹患している被験者。妊娠中または授乳中の女性。薬物および/または化粧品に対して不耐性のある被験者。
【0158】
制限:
研究期間全体を通じて、ボランティアは分析対象の皮膚領域に研究対象のものとは異なる化粧品を塗布しないよう依頼された。
【0159】
脱落:
脱落者は1名であった。
【0160】
試験の開始前に、調査員は試験された製品と情報フォームをボランティアに渡す。各被験者は、試験の開始時に、研究に参加するためのインフォームドコンセントを読み、連署した。処置開始時と14日後、28日間の処置後に以下の評価を実施した:
- MoistureMeter SC(Delfin) を使用した機器測定により、顔の指定された領域の皮膚の表面水和度を評価する。
- ニキビが気になる顔の部位、ニキビの数、皮膚の赤み(紅斑)および皮膚の乾燥について皮膚科医が臨床評価を行なう。
- 肌の状態の画像をデジタルカメラで撮影して記録する。
【0161】
処置の14日後、28日後、および研究終了から30日後に、ボランティアは知覚された有効性と副作用の観点から処置を評価するよう依頼され、アンケートに答えた。
【0162】
表面水和評価:
機器測定は、試験で製品で処置された、顔の指定された領域で実行された。
各ボランティアについて、次のプローブを使用して各ステップで3回繰り返した:
MoistureMeter SC(Delfin)。プローブは、角質層のレベルにおいて皮膚表面の水和レベルを測定する。
【0163】
臨床評価:
臨床評価は、以下の表に示す臨床スコアに従って皮膚科医によって行われた。
関与する顔面領域の拡張の臨床分類:
関与する領域なし 0 *
顔面の<25% 1
顔面の25%~50% 2
顔面の> 50% 3
【0164】
紅斑の臨床分類:
紅斑の証拠なし 0 *
ほとんど目立たない紅斑 0.5
軽度の紅斑 1
中程度の赤み 2
均一な強い赤み 3
激しい赤み 4
* T0にて、値0は除外基準とみなされる。
【0165】
皮膚の乾燥の臨床分類:
乾燥なし 0
非常にわずかな乾燥 0.5
わずかな乾燥 1
中程度の乾燥 2
重度の乾燥 3
目に見える剥離を伴う重度の乾燥 4
【0166】
1.機器による結果:
皮膚表面水和(MoistureMeter SC-Delfin)
図20に報告されるグラフは、化粧品による処置のT0から14日および28日までの間に各ボランティアについて記録された機器評価データのデルタを示す。得られたデータに対して対データのウィルコクソン検定を実行した。この試験は、ノンパラメトリックデータに対して、統計的に有意な治療効果があるかどうかを確認することができる(P=95%)。
【0167】
図20のグラフは、29名のボランティアから得られた処置領域の皮膚表面水和値を示す。
【0168】
図20は、各ボランティアについて、T0と比較したT14日とT28日の平均値の差を示す。処置の14日後と28日後には、皮膚表面の水和において統計的に有意な改善が観察された。
【0169】
2.臨床結果:
顔面領域の拡張に関する臨床評価
図21のグラフは、皮膚科医が各ボランティアについて記録した臨床評価データのデルタを、化粧品による処置のT0から14日間と28日間との間で示す。得られたデータに対して対データのウィルコクソン検定を実行した。この試験は、ノンパラメトリックデータに対して、統計的に有意な治療効果があるかどうかを確認することができる(P=95%)。
【0170】
図21のグラフ(関与する顔面領域の拡張の臨床評価)は、29名のボランティアから得られたデルタ値を示す。
【0171】
3.臨床結果:
紅斑
図22のグラフは、29人のボランティアから得られたデルタ値を示す。
臨床的には、14日間および28日間の処置後に、紅斑に関して統計的に有意な減少が記録される。
【0172】
4.臨床結果:
丘疹および/または膿疱の数
図23のグラフは、29人のボランティアから得られたデルタ値を示す。
臨床的には、14日間および28日間の処置後に、丘疹および/または膿疱の数に関して統計的に有意な減少が記録される。
【0173】
5.臨床結果:
皮膚の乾燥
図24のグラフは、29人のボランティアから得られたデルタ値を示す。
臨床的には、14日間および28日間の処置後に、皮膚の乾燥に関して統計的に有意な減少が記録される。
【0174】
6.自己認識の結果
サンプル当たり29例に基づいて、14日間の処置後と28日間の処置後を
図25に示す。
【0175】
ボランティアの評価は、分散分析(P=95%)および最小有意差検定(LSD P=95%)に付された。グラフの観点から、LSD検定の結果は、平均値の近くに1つ以上の文字を適用することによってグラフ内にマークされる:各項目について、同じ文字が付いていなければ、2つのステップは、確率P≧95%で統計的に区別可能であると考えられる。
【0176】
結論
(i) 機器的および臨床的結論
処置の14日後と28日後の両方で、参加したボランティアのパネルでMoistureMeter SC(Delfin)を使用して実行された機器測定では、統計的に有意な皮膚水和の増加が示された。皮膚科医が行った臨床評価では、ニキビが関与する顔面領域の広がりが統計的に有意に減少し、皮膚の赤み、丘疹および/または膿疱の数、ならびに皮膚の乾燥が統計的に有意に減少したことが示された。
【0177】
(ii) 自己認識の結論
全体として、処置の14日後と28日後のボランティアは、処置を高く評価した。ボランティアは、ニキビのある領域の赤み/炎症に関して皮膚の改善を認識することに完全に同意する。「肌の状態が改善されたと感じる」および「ニキビが減り、見た目も良くなった」との意見への同意の程度は良好である。この処置は、研究に参加したすべての被験者にも良好な忍容性を示した(28日間の全試験期間中、有害な皮膚反応は観察されなかった)。
【0178】
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)+ヒアルロン酸(HA)ドライキャップマスクの創傷治癒、NFkB発現および皮膚老化に対する効果
研究の目的
このプロジェクトの目的は、プロバイオティクス株ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の存在下でのヒアルロン酸マスク(HA)のスキンケア製品としての有効性を調査することである。特に、2つの成分の相乗効果を以下の点で評価する:
- 創傷治癒
- 接着/コロニー形成特性
- NFkB活性化
- 抗酸化特性
- 抗病原性特性
【0179】
材料および方法
HaCaT接着アッセイ
Liveskin88のHaCaT細胞層への接着を、光の変化を用いて記載されているように(Guglielmetti、2008)評価した。簡単に説明すると、HaCaT細胞を、10%(v/v)熱不活化ウシ胎児血清、100U ml-1ペニシリン、100mg ml-1ストレプトマイシン、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(MEM)で増殖させ、95%空気および5%二酸化炭素の雰囲気下、37℃でインキュベートした。単層を、pH7.3のリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄して結合していない細菌を遊離させ、メタノール3mlとともに室温で8分間インキュベートして細胞を固定した。その後、細胞を3mlのギムザ染色液(1:20;Carlo Erba、Milano、Italy)で染色し、暗所、室温で30分間放置した。最後に、単層をPBSで3回洗浄し、インキュベーターで1時間乾燥させ、油浸下で顕微鏡(倍率、400倍)により検査した。
【0180】
インビトロHaCaT創傷治癒
HAマスク刺激に応答した創傷治癒を、HaCaT細胞単層に対するスクラッチアッセイによって評価した。簡単に説明すると、5×105個のHaCaT細胞を培養インサートの各ウェルに播種し、5%CO2を含む加湿雰囲気下、37℃でインキュベートした。24時間後、滅菌ピンセットを使用して培養インサートを静かに取り外し、単層に傷を付けた。創傷領域の写真は、刺激の直前(0時間時点)と、創傷領域の閉鎖を監視するために選択したインキュベーション時間後に撮影された。創傷閉鎖のパーセンテージは、(初期面積-最終面積)/初期面積×100として計算された。
【0181】
NF-κB活性化アッセイ
活性化核因子κB(NF-κB)は、ベクターpNiFty2-Seap(InvivoGen、Labogen、Rho、Italy)で安定にトランスフェクトされた組換えHaCaT細胞株を用いて研究された。簡単に説明すると、組換えCaco-2単層(約5×105細胞/ウェル)を50μg ml-1ゼオシンの存在下で培養し、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄した後、100mM HEPES(pH7.4)を含む新鮮なDMEMに懸濁したz5×107細胞のラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)製品でインキュベートし、MOIは約100のMOIを得た。各製品成分の免疫調節特性を評価するために、HAおよびコンプリートマスク(HA+ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788))をPBSで1対20に希釈し、HaCaT細胞単層に添加した。
【0182】
刺激は、20ng ml-1のTNF-αを加えることによって行った。37℃で4時間インキュベートした後、メーカーのプロトコルに従ってQuanti-Blue試薬(Invivogen)を使用して上清中のSEAPを明らかにし、655nm ODで定量した。すべての測定は、マイクロプレートリーダー(Multiskan SkyHigh、Thermo Fisher Scientific)を使用して行った。2つの独立した実験を、各条件について3回行った。
【0183】
(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)フリーラジカル除去活性
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)のフリーラジカル除去活性を、いくつかの変更を加えたDPPHアッセイによって調べた。簡単に説明すると、1x109細胞/mLの濃度のプロバイオティクス懸濁液を96ウェルプレート内の1mM DPPH溶液に添加した。混合物を室温で30分間、インキュベートし、光から保護した。DPPHは抗酸化物質サンプルから水素原子を受け取ると、色が紫から淡黄色に変化する。吸光度をマイクロプレートリーダーで517nmにて測定した。濃度1μg/mLのアスコルビン酸をポジティブコントロールとして使用した。
【0184】
HaCaT細胞におけるROS生成
細胞内ROS濃度を、ジクロロ-ジヒドロ-フルオレセインジアセテート(DCFH-DA)アッセイを使用して評価した。HaCaT細胞を96ウェルプレートに3.0×104細胞/ウェルで24時間播種した。インキュベーション後、培地を除去した。細胞を過剰のPBSで洗浄し、無血清培地中の10μmol/LのDCFH-DAで37℃にて45分間前処理した。次に、細胞を過剰のPBSで洗浄し、無血清培地中1500μmol/Lの濃度のプロバイオティクス懸濁液およびH2O2で37℃にて処理した。最後に、マイクロプレートリーダーを使用して、励起波長485nmと発光波長485nmおよび発光波長530nmにて、3時間後にROSレベルを測定した。
【0185】
抗菌アッセイ
抗菌活性を寒天スポット試験法により測定した。簡単に説明すると、LABの各分離株をMRS寒天上にスポットし、嫌気条件下、37℃にて72時間インキュベートした。次に、一晩培養した黄色ブドウ球菌株1mlを播種した6mlの軟MRS寒天(0.9%寒天)をプレートに重ねた。ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の活性を以下の菌株の活性と比較して研究した:L. ラムノサス GG、L. アシドフィルスLA5およびL.パラカゼイ・シロタ。クロレキシジンをコントロールとして使用した。
【0186】
結果と考察
創傷治癒に対するラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)マスクの効果
皮膚損傷は、外傷(切り傷、擦り傷、化学熱傷、火傷、寒さ、熱、放射線、手術など)、または糖尿病などの基礎疾患の結果など、さまざまな理由によって引き起こされ得る。最も効果的な創傷管理戦略は、感染を予防し、治癒を促進し、過剰な瘢痕化を防ぐことである。
【0187】
従来の単層培養は、簡単で、安価であり、比較的早く結果が表示される。ヒトの表皮ケラチノサイトなどの細胞の単層は、通常、無菌創傷器具(スクラッチアッセイ)を使用して破壊され、創傷治癒を支配するメカニズムを理解する上で一般的な欠点となる。創傷治癒研究に最もよく使用される細胞株モデルの1つは、不死化された成人の皮膚から自然に突然変異したケラチノサイト細胞株であるHaCaTである。
【0188】
いくつかの証拠は、HAが増殖および遊走などのさまざまな生物学的プロセスに関与する細胞外マトリックスの重要な成分であることを裏付ける。人間の皮膚の再生過程におけるHAとラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)化粧品間の相乗効果の仮説に取り組むために、私たちはHaCaT細胞を使用してインビトロでの増殖に対する効果を試験した。創傷治癒をシミュレートするためのモデルの使用に関する出版された文献もいくつかあるが、プロバイオティクスの使用に関する出版された文献はまだない。
【0189】
まず、完全なマスク(ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)凍結乾燥粉末(8x10
9CFU/g))の創傷治癒促進能力を測定する。これを行うために、賦形剤の毒性を評価するためと、機械的ストレス後の組織再生を促進する能力を評価するために、完成生成物の異なる希釈を使用した(
図26)。
【0190】
結果は、完全なマスク(HA+ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788))の適用が、傷ついているHaCaT細胞のコンフルエントな単層を引っ掻くことによって創傷治癒を促進することを示す。1対10の希釈により単層の再生が促進されるにもかかわらず、24時間後の閉鎖%の減少は細胞の増殖/遊走に対して毒性があることを示す。HaCaT単層の閉鎖%に関する最良の結果は、1対20の希釈で得られ、より遅いがより高い組織再生が得られた。さらに、この希釈は、各ボトルに対して製品の7回の塗布を考慮した、実際の顔へのフェイシャルマスクの曝露を模倣する。
【0191】
再生の効果が細菌細胞またはHAの効果のどちらによるものであるかを調査するために、1対20のHAマスクを単独で使用し、さまざまな細菌濃度のラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)を使用していくつかの実験を実行した。
【0192】
HAマスクにおけるプロバイオティクス中毒の影響を調査するために、1対20に希釈したマスクに再懸濁したさまざまな濃度のラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)を使用して、4時間後の創傷治癒促進をモニタリングした。
【0193】
図27に示すように、1対20のマスクに再懸濁した高濃度の細胞(9および8logCFU/mL)を使用すると、組織の創傷閉鎖が得られないか、またはより低い程度の閉鎖が得られた。おそらくこれは、大量の凍結乾燥ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)が溶解したマスク賦形剤によって引き起こされる、試験した懸濁液の低いpH(4.5~5の間)の影響である。
【0194】
より低い濃度(7および6logCFU/mL)で良好な結果が得られた。特にこれらのデータは、HAマスクとラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の組み合わせによってもたらされる相乗効果を示す。特に、7logCFU/mLは、1対20に希釈した完全マスクの細菌細胞濃度に相当する。最後の2つの希釈の間に有意な差は検出されなかった。
【0195】
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)のHaCaT細胞への接着能
宿主への接着能力は、潜在的なプロバイオティクス細菌の古典的な選択基準であり、免疫調節効果の促進ならびに皮膚のバリア機能および代謝機能の刺激に役立つ一時的なコロニー形成をもたらす可能性がある。プロバイオティクス細菌が、抗菌化合物の産生、病原性細菌の接着の減少、宿主細胞結合部位の競合などのさまざまなメカニズムを通じて、病原体に対して潜在的な保護的役割を果たしていることはよく知られている。
【0196】
競合排除、つまり栄養素および結合部位のための微生物間の競争、および抗菌物質の生成により、病原体を不活性化することは、正常で健康な皮膚微生物叢の重要な機能である。プロバイオティクスにも同様の効果があることが示されており、皮膚に接着することにより一部の病原菌の結合を防ぐ可能性がある。
【0197】
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の接着性におけるHAの「増強効果」を評価するため、HAマスクの存在下および不在下で、HaCaT細胞に対するラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の接着特性を評価した(
図28)。
【0198】
結果は、HAマスク中のラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88 (DSM 33788)の再懸濁が細菌細胞の接着特性の改善を保証することを示した。実際、HAの存在下で再懸濁された細菌細胞で得られた接着指数は、PBSに再懸濁した菌体で得られた値と比較して、より高くなった。おそらくこの改善は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)細胞の接着の安定性を向上させるHaCaT皮膚モデルの層を作成するHAの機械的効果によるものと考えられる。
【0199】
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)マスクは、炎症刺激下でHaCaT細胞のNF-κB活性化を調節する
NF-κBは、宿主の免疫および炎症反応の重要な調節因子である誘導性転写因子のファミリーを構成する。NF-κBはいくつかの炎症誘発性サイトカインの転写を活性化するので、皮膚の炎症プロセスと密接に関係する。皮膚病理には、表皮過形成、過角化症、不全角化症、顆粒層の喪失、T細胞浸潤、および微小膿瘍の形成が含まれる。これらの特徴は、ヒトの炎症性皮膚疾患、乾癬の特徴であると考えられており、T細胞が中心的な役割を果たしていることが十分に確立されている。
【0200】
HA製品に再懸濁したラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88 (DSM 33788)の抗炎症特性を、HaCaT/NF-κBレポーターシステムを使用して評価した。実験は、ベースラインで、TNF-αによる炎症誘発性刺激の存在下で、組換えHaCaT細胞層を4時間刺激して実行された。
【0201】
TNF-αの添加により、NF-κBの活性化レベルが約2倍になった(
図29)。特に、どちらの場合も、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)またはHAの存在により、炎症状態と比較して、NF-κB活性化が確実に減少する(それぞれ27%および13%減少)。両方の成分を一緒に使用すると、強力で統計的に有意な効果が得られ、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)とHAの間の相加作用または相乗作用を示唆する。
【0202】
酸化ストレス下のHaCaT細胞におけるROS産生に対するラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の影響
活性酸素種(ROS)という用語は、主に酸素分子に由来するフリーラジカルと、酸素分子の段階的な還元中に発生する他のいくつかの化学反応性分子を示す。プロバイオティクス株は、ヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドアニオンを除去し、抗酸化物質を生成することが報告されている。現在最も広く研究されている菌株はビフィズス菌とラクトバチルスである。
【0203】
DPPHアッセイは、DPPHラジカルを除去するサンプルの能力に基づく。この研究では、異なるプロバイオティクス懸濁液(ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)、L.パラカゼイ DGおよびL.パラカゼイ・シロタ)を使用して、ポジティブコントロールとして使用したアスコルビン酸と比較してROS除去活性を評価した。
【0204】
ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)およびL.パラカゼイ DGが除去効果の点で最高のパフォーマンスを示した。これらの結果は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)が皮膚の酸化ストレス状態の軽減に寄与する強力なラジカルスカベンジャー効果を有することを示唆する(
図30)。ROSの細胞内レベルに対するラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88 (DSM 33788)の効果を確認するために、プロバイオティクス懸濁液で処置したHaCaTケラチノサイトをH
2O
2で誘導した
(図31)。その後、ROSレベルをDCF-DA溶液で分析した。未処置の細胞では、濃度1500μmol/L(Ctrl+)のH
2O
2により、HaCaTケラチノサイトの細胞内ROSレベルが大幅に増加した。ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)で処置した細胞は、H
2O
2誘発ROSに対する阻害効果を示した。証拠は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88 (DSM 33788)が、H
2O
2曝露に応答して生成されるROSを除去することによってHaCaTケラチノサイトを保護することを示唆する。
【0205】
黄色ブドウ球菌感染症に対するラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88 (DSM 33788)の効果
病原体に対する抗菌活性は、皮膚内の健康な微生物バランスを維持するための潜在的なプロバイオティクス株の選択において考慮すべきもう1つの重要な特性である。
【0206】
本分析では、5つのラクトバチルス菌株が分析され、いずれもヒトの皮膚に対して病原性のある黄色ブドウ球菌病原菌株に対して高い拮抗活性を示した。ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)は、試験した病原菌株に対して高い拮抗作用を示し、参照株L.カゼイ・シロタよりも高い増殖阻害能力を示した(
図32)。
【0207】
結論
得られたデータは、HAマスクとラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の相乗効果を示した:マスク+プロバイオティクスは、プロバイオティクスであるラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)が、HaCaT表皮化にプラスの効果をもたらし、同時にHAがラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)の接着特性にプラスの効果をもたらすことを示した。
【0208】
同じ相乗効果がNFkB発現の調節でも示され、プロバイオティクス製品の優れた免疫調節活性が強調された。ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)は、皮膚の老化によって通常生成されるROSに対する強力な除去効果により、抗酸化特性も示した。さらに、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ m.バイオーム LIVESKIN88(DSM 33788)は、黄色ブドウ球菌に対して強力な抗菌効果を示すので、感染症の治療と予防に貴重な薬剤である。
【国際調査報告】