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特表2024-525085ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器
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  • 特表-ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器 図1
  • 特表-ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/835 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01H33/835
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500345
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022069042
(87)【国際公開番号】W WO2023281045
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184862.7
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドートル,マヘシュ
(72)【発明者】
【氏名】フォス,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】コーラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル,リジョ-ジュード
(72)【発明者】
【氏名】フラー,ニルス
【テーマコード(参考)】
5G001
【Fターム(参考)】
5G001AA01
5G001AA07
5G001BB03
5G001BB04
5G001CC03
5G001DD03
5G001EE01
5G001EE09
(57)【要約】
本発明は、第1のアークコンタクト(2)および第2のアークコンタクト(3)であって、2つのアークコンタクト(2,3)の少なくとも一方が開閉動作軸線(4)に沿って軸線方向に移動可能であることにより、遮断動作の最中にアーク領域(6)において第1のアークコンタクト(2)と第2のアークコンタクト(3)との間にアーク(5)を形成する、第1のアークコンタクト(2)および第2のアークコンタクト(3)と、遮断動作の最中にアーク領域(6)に消弧ガスを吹き付けるためのアーク領域(6)に向けられたチャネル(8)を含むバッファシリンダ(17)および/またはノズル(7)と、バッファシリンダ(17)を実質的に取り囲んでバッファシリンダ(17)に対してスライド可能に配置された第1のアークコンタクト(2)に関連付けられた第1のエンクロージャ(18)および/またはノズル(7)を実質的に取り囲んでノズル(7)に対してスライド可能に配置された第2のエンクロージャ(11)と、第1のエンクロージャ(18)とバッファシリンダ(17)との間の第1のエンクロージャ(18)および/またはバッファシリンダ(17)ならびに/あるいは第2のエンクロージャ(11)とノズル(7)との間の第2のエンクロージャ(11)および/またはノズル(7)に設けられたラビリンス構造(13、13’)とを備えるガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアークコンタクト(2)および第2のアークコンタクト(3)であって、前記2つのアークコンタクト(2,3)の少なくとも一方が開閉動作軸線(4)に沿って軸線方向に移動可能であることにより、遮断動作の最中にアーク領域(6)において前記第1のアークコンタクト(2)と前記第2のアークコンタクト(3)との間にアーク(5)を形成する、第1のアークコンタクト(2)および第2のアークコンタクト(3)と、
前記遮断動作の最中に前記アーク領域(6)に消弧ガスを吹き付けるための前記アーク領域(6)に向けられたチャネル(8)を含むバッファシリンダ(17)および/またはノズル(7)と、
前記バッファシリンダ(17)を実質的に取り囲んで前記バッファシリンダ(17)に対してスライド可能に配置された第1のアークコンタクト(2)に関連付けられた第1のエンクロージャ(18)および/または前記ノズル(7)を実質的に取り囲んで前記ノズル(7)に対してスライド可能に配置された第2のエンクロージャ(11)と、
前記第1のエンクロージャ(18)と前記バッファシリンダ(17)との間の前記第1のエンクロージャ(18)および/または前記バッファシリンダ(17)ならびに/あるいは前記第2のエンクロージャ(11)と前記ノズル(7)との間の前記第2のエンクロージャ(11)および/または前記ノズル(7)に設けられたラビリンス構造(13、13’)と
を備えるガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項2】
前記ラビリンス構造(13、13’)は、縦に並べて配置された複数の間隔を開けて位置するノッチ(14、14’)として設けられている、先行する請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項3】
前記ノッチ(14、14’)は、正方形のような形状または台形のような形状を備える、先行する請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項4】
前記ノズル(7)を備え、前記ノズル(7)は、前記アーク領域(6)に向けられた前記チャネル(8)を含み、絶縁ノズル(9)が、前記アーク領域(6)から前記絶縁ノズル(9)の下流のバッファ容積(10)へとガスを運ぶために前記チャネル(8)に隣接して設けられている、先行する請求項のいずれかに記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項5】
前記第2のエンクロージャ(11)および/または前記第1のエンクロージャ(17)と前記ノズル(7)および/または前記絶縁ノズル(9)との間に周状に配置されたシール(12、12’)を備え、前記ラビリンス構造(13’)は、軸線方向において前記シール(12、12’)と前記チャネル(8)および/または前記バッファ容積(10)との間に配置されている、先行する請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項6】
前記第2のエンクロージャ(11)を備え、前記第2のエンクロージャ(11)は、内側エンクロージャ部分(15)および同軸に配置された外側エンクロージャ部分(16)を備え、前記シール(12)および前記ラビリンス構造(13)は、前記内側エンクロージャ部分(15)と前記ノズル(7)および/または前記絶縁ノズル(9)との間に設けられている、先行する請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項7】
金属エンクロージャを備え、前記回路遮断器(1)は、金属で囲まれた回路遮断器(1)として設けられている、先行する請求項のいずれかに記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項8】
前記回路遮断器(1)は、12kV以上、52kV以上、または72kV超、あるいは145kV以上の中電圧~高電圧を遮断するように構成されたガス絶縁回路遮断器(1)であり、かつ/または前記ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)は、パッファ型回路遮断器、自立吹き付け型回路遮断器、またはこれらの組み合わせのうちの1つである、先行する請求項のいずれかに記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項9】
ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)を動作させる方法であって、
先行する請求項のいずれか1項に記載の高電圧または中電圧回路遮断器で電流を遮断することを含む方法。
【請求項10】
前記電流を遮断することは、
遮断動作を開始させるために前記開閉動作軸線(4)に沿って前記第1および第2のアークコンタクト(2、3)の少なくとも一方を移動させることによって前記第1のアークコンタクト(2)と前記第2のアークコンタクト(3)とを離すこと
を含む、先行する請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、第1のアークコンタクトおよび第2のアークコンタクトであって、2つのアークコンタクトの少なくとも一方が開閉動作軸線に沿って軸線方向に移動可能であることにより、遮断動作の最中にアーク領域において第1のアークコンタクトと第2のアークコンタクトとの間にアークを形成する、第1のアークコンタクトおよび第2のアークコンタクトと、遮断動作の最中にアーク領域に消弧ガスを吹き付けるためのアーク領域に向けられたチャネルを含むバッファシリンダおよび/またはアーク領域に向けられたチャネルを含むノズルと、バッファシリンダを実質的に取り囲んでバッファシリンダに対してスライド可能に配置された第1のアークコンタクトに関連付けられた第1のエンクロージャおよび/またはノズルを実質的に取り囲んでノズルに対してスライド可能に配置された第2のエンクロージャと、を備えるガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
回路遮断器は、中電圧および高電圧の開閉の用途の分野において周知であり、電気的故障が発生したときに電流を遮断するために主に使用される。一例として、回路遮断器は、電気的故障自体に起因する高い電位の場合でも電流の流れを回避するために、コンタクトを開いて、互いに離れた状態に保つという役割を有する。回路遮断器は、12kV~72kVおよび最大1200kVの中電圧~高電圧において1kA~80kAという中程度~大きい短絡電流を遮断することができる。遮断器の動作原理は既知である。そのような回路遮断器は、電気回路における何らかの所定の事象の発生に基づいて電気回路を遮断する目的で、それぞれの電気回路に配置される。
【0003】
一般に、そのような回路遮断器の動作は、故障状態または故障電流の検出に応答する。そのような故障状態または故障電流を検出すると、機構が、回路遮断器を通って流れる電流を遮断するように回路遮断器を動作させることにより、電気回路を流れる電流を遮断することができる。故障が検出されると、回路遮断器内のコンタクトが、電気回路を遮断するために引き離される。多くの場合、コンタクトを引き離すために、ばね装置、空気圧による装置、または機械的に蓄積されたエネルギーを利用する他の何らかの手段が使用される。コンタクトを引き離すために必要なエネルギーの一部を、故障電流自体から得てもよい。電気回路を流れる電流を遮断する際に、一般に、アークが発生する。このアークを冷却することにより、コンタクト間のギャップが電気回路の電圧に繰り返し耐えることができるように、アークを冷まし、あるいは消さなければならない。アークが形成される媒体として、空気、油、または絶縁ガスを使用することが知られている。絶縁ガスは、例えば六フッ化硫黄(SF6)またはCO2を含む。
【0004】
金属で囲まれた遮断器においては、アークゾーンからの高温の絶縁ガスが、回路遮断器の端部に設けられた排気ボリュームに向かって逃げる。次いで、絶縁ガスは、低温の絶縁ガスと混ざり合うことによって冷却され、回路遮断器のタンク内に放出される。排気ボリュームが適切に封止されず、漏れがある場合、高温の絶縁ガスまたは粒子が誘電的に重要な領域に行き着き、回路遮断器の動作安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、絶縁ガスに関してより良好な封止を有する改善された回路遮断器、とくには金属で囲まれた回路遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって解決される。改良された実施態様が、従属請求項に詳述される。
【0007】
したがって、目的は、
第1のアークコンタクトおよび第2のアークコンタクトであって、2つのアークコンタクトの少なくとも一方が開閉動作軸線に沿って軸線方向に移動可能であることにより、遮断動作の最中にアーク領域において第1のアークコンタクトと第2のアークコンタクトとの間にアークを形成する、第1のアークコンタクトおよび第2のアークコンタクトと、
遮断動作の最中にアーク領域に消弧ガスを吹き付けるためのアーク領域に向けられたチャネルを含むバッファシリンダおよび/またはノズルと、
バッファシリンダを実質的に取り囲んでバッファシリンダに対してスライド可能に配置された第1のアークコンタクトに関連付けられた第1のエンクロージャおよび/またはノズルを実質的に取り囲んでノズルに対してスライド可能に配置された第2のエンクロージャと、
第1のエンクロージャとバッファシリンダとの間の第1のエンクロージャおよび/またはバッファシリンダならびに/あるいは第2のエンクロージャとノズルとの間の第2のエンクロージャおよび/またはノズルに設けられたラビリンス構造と
を備えるガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器によって解決される。
【0008】
したがって、本提案の解決策の要点は、流れによって引き起こされるシールを提供するラビリンス構造である。ラビリンス構造は、高温の消弧ガスを捕捉し、低温の消弧ガスと混合する。最終的に、ガスは、より低い速度で回路遮断器のらせん状コンタクトに隣接するシールに向かってラビリンス構造を出ることができる。ラビリンス構造は、高温の消弧ガス/粒子が回路遮断器の誘電的に重要な領域へと出ていく確率を好都合に下げることができる。実験によって、ラビリンス構造ゆえに、回路遮断器の内部において焼けがあまり見られず、フレークの存在が限定的であることが実証された。本提案のラビリンス構造は、回路遮断器のシールおよび銅管表面の両方を硫化銅粒子の生成から保護する。要約すると、ラビリンス構造は、シールの不具合を減らし、容易かつ信頼性の高い実施態様を提供し、銅管表面の温度を低くし、したがって硫化銅フレークを少なくする。
【0009】
高電圧または中電圧という用語は、1kVを超える電圧に関する。中電圧は、好ましくは、25kV、40kV、または60kVなどの12kV~72kVの範囲(中電圧範囲)の公称電圧に関する。高電圧は、好ましくは、145kV、245kV、または420kVなどの72kV超~550kVの範囲の公称電圧に関する。回路遮断器の公称電流は、好ましくは、1kA~5kAの範囲であってよい。回路遮断器がその責務を果たす異常状態の際に流れる電流は、適宜に遮断電流または短絡電流と呼ばれることがある。短絡電流は、31.5kA~80kAの範囲であってよく、これは大短絡電流責務と呼ばれる。遮断動作の際に、遮断電圧は、例えば110kV~1200kVの範囲など、きわめて高くなる可能性がある。
【0010】
「軸線方向」という用語は、軸線の方向の延在、距離、などを指す。或る部分の間の軸線方向の分離は、これらの部分が軸線方向に見たとき、または測定したときに、互いに離れていることを意味する。「半径方向」という用語は、軸線に垂直な方向の延在、距離、などを指す。「断面」という用語は、軸線に垂直な平面を意味し、「断面積」という用語は、そのような平面における面積を意味する。軸線は、例えば、開閉動作軸線であってよい。
【0011】
回路遮断器は、公称コンタクトまたは公称電流経路を含むことができる。本明細書において使用されるとき、公称電流が通過する電気コンタクト、すなわち公称電流経路は、公称コンタクトと呼ばれ、公称コンタクトとアークコンタクトとの組み合わせが、以下で「遮断器コンタクト」と呼ばれる。本明細書において使用されるとき、遮断コンタクトの少なくとも1つは、他方の遮断器コンタクトに対して相対的に移動する。すなわち、遮断器コンタクトの少なくとも1つが移動している。
【0012】
ガス絶縁回路遮断器において、消弧媒体はガスを含む。いくつかの実施態様において、回路遮断器は、ガスのための容積を定める封入ハウジングを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、回路遮断器は、電流遮断動作の一段階において回路遮断器の第1のアークコンタクトと第2のアークコンタクトとの間に形成されるアークを消すように構成されたガス吹き付けシステムを含むことができる。
【0013】
消弧ガスは、例えば、これに限られるわけではないが六フッ化硫黄SF6などの不活性ガスなど、電流遮断動作の際にアークコンタクト間に形成される電気アークを適切に消すことを可能にする任意の適切なガスであってよい。これにより、第1および第2のアークコンタクトの間のアークが、アーク領域に発生する。具体的には、回路遮断器に使用される消弧ガスは、SF6ガスまたは任意の他の誘電性絶縁媒体であってよく、ガス状および/または液体であってよく、とくには誘電性絶縁ガスまたはアーク冷却ガスであってよい。そのような誘電性絶縁媒体は、例えば、有機フッ素化合物を含む媒体を包含することができ、そのような有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトン、フルオロオレフィン、フルオロニトリル、ならびにこれらの混合物および/または分解生成物からなる群から選択される。本明細書において、「フルオロエーテル」、「オキシラン」、「フルオロアミン」、「フルオロケトン」、「フルオロオレフィン」、および「フルオロニトリル」という用語は、少なくとも部分的にフッ素化された化合物を指す。とくに、「フルオロエーテル」という用語は、ハイドロフルオロエーテルおよびパーフルオロエーテルの両方を包含し「オキシラン」という用語は、ハイドロフルオロオキシランおよびパーフルオロオキシランの両方を包含し、「フルオロアミン」という用語は、ハイドロフルオロアミンおよびパーフルオロアミンの両方を包含し、「フルオロケトン」という用語は、ハイドロフルオロケトンおよびパーフルオロケトンの両方を包含し、「フルオロオレフィン」という用語は、ハイドロフルオロオレフィンおよびパーフルオロオレフィンの両方を包含し、「フルオロニトリル」という用語は、ハイドロフルオロニトリルおよびパーフルオロニトリルの両方を包含する。したがって、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、およびフルオロケトンは、完全にフッ素化されており、すなわちパーフルオロ化合物であることが好ましい場合がある。
【0014】
誘電性絶縁媒体を、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロケトン、ハイドロフルオロオレフィン、パーフルオロニトリル、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。とくには、本発明の文脈において使用されるとき、「フルオロケトン」という用語は、広義に解釈されるべきであり、フルオロモノケトンおよびフルオロジケトンの両方、あるいは広くフルオロポリケトンを包含する。明示的には、炭素原子に隣接する複数のカルボニル基が分子中に存在し得る。さらに、この用語は、飽和化合物ならびに炭素原子間の二重および/または三重結合を含む不飽和化合物の両方を包含する。フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖は、直鎖または分岐鎖であってよく、随意により環を形成してもよい。誘電性絶縁媒体は、フルオロモノケトンであり、かつ/または1つ以上の炭素原子を置き換えるチッ素原子、酸素原子、および硫黄原子のうちの少なくとも1つなどの分子の炭素骨格に組み込まれたヘテロ原子も含む少なくとも1つの化合物を含み得る。より好ましくは、フルオロモノケトン、とくにはパーフルオロケトンは、3~15個または4~12個の炭素原子、とりわけ5~9個の炭素原子を有することができる。最も好ましくは、正確に5個の炭素原子および/または正確に6個の炭素原子および/または正確に7個の炭素原子および/または正確に8個の炭素原子を含んでよい。
【0015】
さらに、誘電性絶縁媒体は、少なくとも3個の炭素原子を含むハイドロフルオロオレフィン(HFO)、正確に3個の炭素原子を含むハイドロフルオロオレフィン(HFO)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、およびこれらの混合物からなる群から選択されるフルオロオレフィンである少なくとも1つの化合物を含むことができる。有機フッ素化合物は、フルオロニトリル、とくにはパーフルオロニトリルであってもよい。とくには、有機フッ素化合物は、2個の炭素原子、および/または3個の炭素原子、および/または4個の炭素原子を含むフルオロニトリル、具体的にはパーフルオロニトリルであり得る。より詳細には、フルオロニトリルは、パーフルオロアルキルニトリル、具体的にはパーフルオロアセトニトリル、パーフルオロプロピオニトリル(C2F5CN)、および/またはパーフルオロ-ブチロニトリル(C3F7CN)であり得る。最も詳細には、フルオロニトリルは、パーフルオロイソブチロニトリル(式(CF3)2CFCNによる)および/またはパーフルオロ-2-メトキシプロパンニトリル(式CF3CF(OCF3)CNによる)であり得る。中でも、毒性が低いことから、パーフルオロイソブチロニトリル(すなわち、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-トリフルオロメチルプロパンニトリル、別名i-C3F7CN)がとくに好ましい。誘電性絶縁媒体は、有機フッ素化合物とは異なる(とくには、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトン、およびフルオロオレフィンとは異なる)バックグラウンドガスまたはキャリアガスをさらに含むことができ、いくつかの実施形態においては、空気、N2、O2、CO2、希ガス、H2;NO2、NO、N2O;フルオロカーボン、とくにはCF4などのパーフルオロカーボン;CF3I、SF6;およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。例えば、誘電性絶縁ガスは、一実施形態においてはCO2であり得る。
【0016】
回路遮断器は、パッファ型シリンダ、自立吹き付けチャンバ、圧力収集空間、圧縮空間、またはパッファ容積、ならびに膨張空間などの1つ以上の構成要素を含むことができる。回路遮断器は、そのような構成要素のうちの1つ以上によって電気回路の遮断をもたらすことにより、電気回路における電流の流れを断ち、かつ/または電気回路の遮断時に発生するアークを消すことができる。回路遮断器は、説明を省略した駆動装置、コントローラ、などの他の部品も含むことができる。これらの部品は、従来からの高電圧または中電圧ガス絶縁回路遮断器と同様に設けられる。
【0017】
一般に、ラビリンス構造の実施態様に関して、さまざまな可能性が存在する。好ましくは、ラビリンス構造は、第1のエンクロージャ内、ならびに/あるいはバッファシリンダ、ノズル、および/または絶縁ノズル内に、軸線方向に延在し、かつ/または半径方向に延在する。好ましい実施態様によれば、ラビリンス構造は、縦に並べて配置された複数の間隔を開けて位置するノッチとして設けられる。好ましくは、ノッチは、軸線方向に延在し、互いに一定の距離を置いて配置され、かつ/またはエンクロージャ内および/または絶縁ノズル内に半径方向に延びる。ラビリンス構造、あるいはノッチは、消弧ガスを冷却する流れのパターンを好都合に生成する。別の好ましい実施態様において、ノッチは、正方形のような形状または台形のような形状を備える。正方形は、丸みを帯びた縁部を有する規則的な正方形として提供されてよい。好ましくは、ラビリンス構造および/またはノッチは、絶縁ノズルの周囲に周状に延在し、かつ/またはノッチは、リング状に設けられる。さらなる好ましい実施態様において、ノズルは、アーク領域に向けられたチャネルを含み、ディフューザが、ガスをアーク領域からディフューザの下流のバッファ容積へと運ぶためにチャネルに隣接して設けられる。これに関して、バッファシリンダは、チャネルをバッファシリンダおよびノズルの両方によって少なくとも部分的に周状に包囲できるように、ノズルに軸線方向に関して固定されてよい。
【0018】
好ましい実施態様によれば、ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器は、第2のエンクロージャおよび/または第1のエンクロージャとノズルおよび/またはディフューザとの間に周状に配置されたシールを備え、ラビリンス構造は、軸線方向においてシールとチャネルおよび/またはバッファ容積との間に配置される。好ましくは、回路遮断器は、互いに隣接しているが互いに離れて配置された2つのシールを備えることにより、シールは、絶縁ノズルの周りを周状に延びるリング状のやり方で設けられる。シールをノッチ内に設けることが可能である。好ましくは、シールは、ラビリンス構造に隣接させてラビリンス構造の端部に配置される。好ましくは、第1のアークコンタクトおよび第2のアークコンタクトの両方は、各々がラビリンス構造およびそれぞれのシールを備える。
【0019】
別の好ましい実施態様においては、第2のエンクロージャが、内側エンクロージャ部分と、同軸に配置された外側エンクロージャ部分とを備え、シールおよび/またはラビリンス構造は、内側エンクロージャ部分とノズルおよび/または絶縁ノズルとの間に設けられる。外側エンクロージャ部分は、開閉動作軸線に沿って内側エンクロージャ部分に対して相対的に移動可能に設けられてよい。したがって、ラビリンス構造を、第1のアークコンタクトおよび/または第2のアークコンタクトに設けることができる。
【0020】
好ましい実施態様によれば、ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器は、金属エンクロージャを備え、回路遮断器は、金属で囲まれた回路遮断器として設けられる。
【0021】
別の好ましい実施態様において、回路遮断器は、12kV以上、52kV以上、または72kV超、あるいは145kV以上の中電圧~高電圧を遮断するように構成されたガス絶縁回路遮断器であり、かつ/またはガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器は、パッファ型回路遮断器、自立吹き付け型回路遮断器、またはこれらの組み合わせのうちの1つである。
【0022】
目的は、ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器を動作させる方法であって、
前述のとおりの高電圧または中電圧回路遮断器で電流を遮断すること
を含む方法によって解決される。
【0023】
好ましい実施態様によれば、電流を遮断することは、
遮断動作を開始させるために開閉動作軸線に沿って第1および第2のアークコンタクトの少なくとも一方を移動させることによって第1のアークコンタクトと第2のアークコンタクトとを離すことを含む。
【0024】
電流を遮断するために、遮断動作を開始させるべく開閉動作軸線に沿って第1および第2のアークコンタクトの少なくとも一方を移動させることによって、第1のアークコンタクトと第2のアークコンタクトとを離すことができる。さらに、遮断動作の最中に、内側エンクロージャ部分および外側エンクロージャ部分の少なくとも一方を開閉動作軸線に沿って互いに相対的に移動させることで、運動の第2の状態において、第1の開口および第2の開口が重なり合い、消弧ガスをバッファ容積からエンクロージャの外側に部分的に放出するための貫通開口部をもたらすことができる。これにより、バッファ容積内の消弧ガスの温度を低下させることができる。したがって、バッファ容積からアークゾーンへと戻る加熱されたガスの流れの反転に起因する再ストライクまたは遅延再ストライク、すなわちアークの再点火の確率またはリスクも、低減することができる。
【0025】
本方法のさらなる実装態様および利点は、上述のとおりの回路遮断器から、当業者によって直接的かつ明確に導出される。
【0026】
図面の簡単な説明
本発明のこれらの態様および他の態様が、以下に記載される実施態様から明らかになり、以下に記載される実施態様を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】好ましい実施態様によるガス絶縁回路遮断器を概略図にて示している。
図2図1のガス絶縁回路遮断器の部分図を概略図にて示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例示的な実施態様の詳細な説明
以下の説明は、ガス絶縁回路遮断器1に関して提示され、とくには中電圧および高電圧の用途のためのガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器1に関して提示されるが、本開示の実施態様がこれに限定されないことを理解されたい。代わりに、本実施態様は、ガス絶縁回路遮断器1が必要とされる場所であればどこにでも適用することができる。簡単にするために、本明細書で説明される実施態様は、多くの場合、ガス絶縁高または中回路遮断器1に言及するのではなく、回路遮断器1に言及する。遮断器1は、パッファ型回路遮断器、自立吹き付け型回路遮断器、発電機回路遮断器、断路器、断路器と回路遮断器との組み合わせ、ライブタンク遮断器、または送配電系統の負荷遮断スイッチであってよい。回路遮断器1は、公称コンタクト、駆動装置、コントローラ、など、図では省略されており、本明細書において詳細には説明しない他の部品も備えることができる。これらの部品は、従来からの高電圧または中電圧ガス絶縁回路遮断器と同様に設けられる。
【0029】
図1は、高電圧または中電圧のための本明細書に記載の好ましい実施態様によるガス絶縁回路遮断器1を示している。回路遮断器1は、第1のアークコンタクト2と、第2のアークコンタクト3とを含む。第1のアークコンタクト2は、図1において、例示的には、例えばコンタクトチューリップなど、チューリップの形態であり、したがって、第2のアークコンタクト3は、例えばコンタクトロッドなど、ロッドの形態である。2つのアークコンタクト2、3は、図1に示されるように2つのアークコンタクト2、3が互いに完全に電気的に分離されている開いた端部位置と、両者の間を電流が通過することができる閉じた端部位置との間で、互いに協働する。第1のアークコンタクト2は、例えば、簡略化のために図1には示されていない第1の公称コンタクトを有する第1の遮断コンタクトの一部であってよい。さらに、第2のアークコンタクト3は、第2の公称コンタクトを有する第2の遮断コンタクトの一部であってよい。
【0030】
第1および第2のアークコンタクト2、3は、アークコンタクト2、3が回路遮断器1の電流遮断動作の際に過度の発熱を生じることなく、発生したアーク5の熱に耐えるように、遮断電流に好都合に耐えることができるように構成される。とくには、アークコンタクト2、3は、例示的には、これらに限られるわけではないが銅、銅合金、銀合金、タングステン、タングステン合金、またはこれらの任意の組み合わせなど、回路遮断器1が本明細書に記載のように機能することを可能にする任意の適切な材料、典型的には耐アーク性材料で製作される。とくには、これらの材料は、それらの導電率、硬度(すなわち、耐摩耗性)、機械的強度、低コスト、および/または化学的特性に基づいて選択される。例えば、図1に示され、第2のアークコンタクト3を形成するコンタクトロッドは、例示的には、これに限られるわけではないが銅など、回路遮断器1が本明細書に記載のように機能することを可能にする任意の適切な導電性材料で製作される。必要に応じて、コンタクトロッドは、異なる材料で製作されてもよく、例えば、コンタクトロッドの異なる部分が、異なる材料で製作されても、これらの部分の各々に適切な電気的および/または機械的特性を提供する材料でコーティングされてもよい。
【0031】
図1に矢印で示されるように、例えば第1の遮断コンタクトおよび第2の遮断コンタクトの一部としての第1および第2のアークコンタクト2、3の少なくとも一方は、アークコンタクト2、3を開いた端部位置または閉じた端部位置へともたらすために、開閉動作軸線4に沿って他方に対して相対的に移動可能である。閉じた端部位置において、第2のアークコンタクト3が第1のアークコンタクト2に挿入される。遮断動作において、第1のアークコンタクト2が第2のアークコンタクト3から遠ざかるように移動し、両方のコンタクトが互いに離れる。遮断動作において、図1に示されるように、アーク5が、第1および第2のアークコンタクト2、3の各部分の間のアーク領域6に発生する。
【0032】
図1に示される回路遮断器1は、電気絶縁ガスまたは消弧ガスで満たされた気密ハウジング内に配置されている。ハウジングと図1に示した回路遮断器1の構成要素との間の容積は、気密ハウジングの内側にある。気密ハウジングを、これらに限られるわけではないが金属製またはセラミック製ハウジングなどの封入体として構成することができる。そのような封入体を、適切な構造に取り付けることができる。回路遮断器1は、アーク領域6またはアーク5に向けられたチャネル8を有するノズル7をさらに含む。ノズル7は、遮断動作の際に消弧ガスをアーク領域6に吹き付けるための噴気孔として機能する。これにより、アーク5を消し、あるいは冷ますことができる。ノズル7は、絶縁ノズル9を含む。アーク5を吹き消すための消弧ガスは、絶縁ノズル9の上流の容積にもたらされる。例えば、絶縁ノズル9の上流の容積を、いくつかの実施形態においてはCO2、SF6、あるいはSF6およびN2またはCF4などのその既知の混合物などの誘電ガスで満たすことができる。さらなる実施形態においては、他の絶縁ガスまたは消弧ガスも可能である。
【0033】
絶縁ノズル9は、ノズル7の軸線方向において、チャネル8に隣接して配置される。絶縁ノズル9の断面積は、ノズル7から遠ざかる軸線方向において増加してもよい。ノズル9は、消弧ガスの流れに関して発散ダクトを形成してもよい。したがって、絶縁ノズル9の上流の容積からの消弧ガスは、アーク領域6から絶縁ノズル9の下流の領域へと運ばれる。絶縁ノズル9の下流の領域は、絶縁ノズル9のすぐ下流に設けられたバッファ容積10を含む。したがって、消弧ガスは、アーク領域6および絶縁ノズル9を通過した後に、バッファ容積10に到達する。バッファ容積10は、周囲が第2のエンクロージャ11によって実質的に囲まれている。すなわち、第2のエンクロージャ11は、バッファ容積10の半径方向の範囲を実質的に境界付けることができる。本明細書において使用されるとき、「絶縁ノズルのすぐ下流のバッファ容積」という用語を、アーク領域6に流体に関して直接連絡していると理解することができる。
【0034】
図1から見て取ることができ、図2においてさらに詳細に見て取ることができるとおり、ラビリンス構造13が、第2のエンクロージャ11と絶縁ノズル9との間で、第2のエンクロージャ11および/または絶縁ノズル9に設けられる。具体的には、ラビリンス構造13は、縦に並べて配置された複数の間隔を開けて位置するノッチ14として設けられる。ノッチ14は、図2に示されるように正方形のような形状を備え、あるいは台形のような形状を備える。ラビリンス構造13は、遮断動作から生じる高温の絶縁ガスを捕捉することができる流れ乱流をもたらし、高温の絶縁ガスを冷却し、回路遮断器1の重要部分への高温の絶縁ガスの侵入を回避する。このようにして、ラビリンス構造13は、第2のエンクロージャ11と絶縁ノズル9との間に流れによって引き起こされるシールをもたらすことにより、ラビリンス構造13に高温の絶縁ガスを捕捉し、絶縁ガスを低温の絶縁ガスと混合する。
【0035】
これに代え、あるいは加えて、代案の間隔を空けて位置するノッチ14’を有する代案のラビリンス構造13’および代案のシール12’を、アーク領域6に関して回路遮断器1の反対側で、第1のアークコンタクト2において、回路遮断器1のスライドする部分の間に設けることができる。したがって、第1のアークコンタクト2は、チャネル8をさらに包むバッファシリンダ17の周囲を取り囲み、バッファシリンダ17に対してスライド可能に配置された第1のエンクロージャ18を備えることができる。したがって、代案のラビリンス構造13’は、第1のエンクロージャ18とバッファシリンダ17との間において第1のエンクロージャ18および/またはバッファシリンダ17に設けられ、かつ/あるいは第2のエンクロージャ11に設けられる。一般に、代案の間隔を空けて位置するノッチ14’を有するラビリンス構造13’および代案のシール12’は、回路遮断器1の任意のスライドする部分の間に設けることが可能である。
【0036】
回路遮断器は、第2のエンクロージャ11と絶縁ノズル9との間に配置されて周状に延びるリングシール12をさらに備え、ラビリンス構造13は、軸線方向において、シール12とバッファ容積10との間に配置される。絶縁ガスは、より低い速度でシール12に向かってラビリンス構造13を離れる。要約すると、ラビリンス構造13およびシールにおいても、高温のガス/粒子が誘電的に重要な領域へと出ていく確率が低くなる。ラビリンス構造13がシールを保護するため、チャンバの内部において焼けまたはフレークがあまり見られないことを、試験が実証する。
【0037】
さらに、第2のエンクロージャ11は、内側エンクロージャ部分15および外側エンクロージャ部分16を含む。外側エンクロージャ部分16は、内側エンクロージャ部分15に対して同軸に配置される。図1に例示的に示されるように、外側エンクロージャ部分16は、開閉動作軸線4に沿って内側エンクロージャ部分15に対して相対的に移動可能である。これにより、シール12およびラビリンス構造13は、内側エンクロージャ部分15と絶縁ノズル9との間に設けられる。ノズル9は、第2のアークコンタクト3と一緒に移動する。ノッチ14は、互いに4,5mmの間隔であってよく、5mmの幅および/または深さを備えてよい。
【0038】
回路遮断器1は、開閉動作軸線に沿った並進運動をもたらすために、第1または第2のアークコンタクト2、3の少なくとも一方およびノズル7に動作可能に結合したギアシステムを含むことができる。ギアシステムの少なくとも一部分を、支持構造に配置することができる。回路遮断器1は、シングルモーションの回路遮断器として提供することができる。すなわち、第1および第2のアークコンタクト2、3の一方のみが、開閉動作軸線4に沿って移動可能である。あるいは、回路遮断器は、ダブルモーションの回路遮断器であってもよい。換言すると、第1および第2のアークコンタクト2、3の両方が、開閉動作軸線4に沿って移動可能である。
【0039】
さらに、アーク5を消すための消弧システムを、ノズル7の上流の容積に統合することができる。消弧システムは、加圧システム(パッファシステム)を有することができる。加圧システムは、例えば、内部に冷却ガスを収容した加圧チャンバ(パッファチャンバ)を含むことができる。冷却ガスは、回路遮断器1のハウジング容積(外容積)に含まれる絶縁ガスの一部であってよい。加圧チャンバを、チャンバ壁と、電流遮断動作の最中に加圧チャンバ内の冷却ガスを圧縮するためのピストンとによって画定することができる。
【0040】
この目的のために、ピストンは第1のアークコンタクト2と一緒に移動し、したがって第1のアークコンタクト2が回路遮断器1を開くために第2のコンタクト3から遠ざかるように移動するときに、加圧チャンバ内の冷却ガスがピストンによって加圧される。ノズル7を、例えば消弧ガスなど、加圧された冷却ガスを、電流遮断動作の際に形成されたアーク6へと上流の容積から吹き付けるように構成することができる。ノズル7は、加圧チャンバから加圧された冷却ガスを受け取るための加圧チャンバに接続された入口と、アーク領域6へのノズル7の出口とを含むことができる。ノズル7は、好ましくは、例えばPTFEなどの電気絶縁性材料から製作される。ノズル7は、その端部のうちの1つに取り付けられたリング部分を備えることができる。
【0041】
本発明を図面および以上の説明において詳細に図示および説明してきたが、そのような図示および説明は、例示または典型であって、限定ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施態様に限定されない。図面、開示、および添付の特許請求の範囲を検討することで、当業者であれば、特許請求される発明の実施において、開示された実施態様に対する他の変種を理解および達成することが可能である。特許請求の範囲において、「・・・を含む/・・・を備える(comprising)」という語は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数であることを排除しない。たとえ特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されたとしても、これらの手段の組み合わせを好都合に使用することができないという意味ではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0042】
参照符号の列挙
1 回路遮断器
2 第1のアークコンタクト
3 第2のアークコンタクト
4 開閉動作軸線
5 アーク
6 アーク領域
7 ノズル
8 チャネル
9 絶縁ノズル
10 容積
11 エンクロージャ
12,12’ シール
13,13’ ラビリンス構造
14,14’ ノッチ
15 内側エンクロージャ部分
16 外側エンクロージャ部分
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアークコンタクト(2)および第2のアークコンタクト(3)であって、第1および第2のアークコンタクト(2,3)の少なくとも一方が開閉動作軸線(4)に沿って軸線方向に移動可能であることにより、遮断動作の最中にアーク領域(6)において前記第1のアークコンタクト(2)と前記第2のアークコンタクト(3)との間にアーク(5)を形成する、第1のアークコンタクト(2)および第2のアークコンタクト(3)と、
前記遮断動作の最中に前記アーク領域(6)に消弧ガスを吹き付けるための前記アーク領域(6)に向けられたチャネル(8)を含むバッファシリンダ(17)および/またはノズル(7)と、
前記バッファシリンダ(17)を実質的に取り囲んで前記バッファシリンダ(17)に対してスライド可能に配置された前記第1のアークコンタクト(2)に関連付けられた第1のエンクロージャ(18)および/または前記ノズル(7)を実質的に取り囲んで前記ノズル(7)に対してスライド可能に配置された第2のエンクロージャ(11)と、
縦に並べて配置された複数の間隔を開けて位置するノッチ(14、14’)として設けられ、かつ
前記第1のエンクロージャ(18)と前記バッファシリンダ(17)との間の前記第1のエンクロージャ(18)および/または前記バッファシリンダ(17)ならびに/あるいは前記第2のエンクロージャ(11)と前記ノズル(7)との間の前記第2のエンクロージャ(11)および/または前記ノズル(7)に設けられたラビリンス構造(13、13’)と
前記第2のエンクロージャ(11)および/または前記第1のエンクロージャ(18)と前記ノズル(7)および/または絶縁ノズル(9)との間に周状に配置されたシール(12、12’)を備え、前記ラビリンス構造(13’)は、軸線方向において前記シール(12、12’)と前記チャネル(8)および/またはバッファ容積(10)との間に配置されている、ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項2】
前記ノッチ(14、14’)は、正方形のような形状または台形のような形状を備える、請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項3】
前記ノズル(7)を備え、前記ノズル(7)は、前記アーク領域(6)に向けられた前記チャネル(8)を含み、絶縁ノズル(9)が、前記アーク領域(6)から前記絶縁ノズル(9)の下流のバッファ容積(10)へとガスを運ぶために前記チャネル(8)に隣接して設けられている、請求項1または2に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項4】
前記第2のエンクロージャ(11)を備え、前記第2のエンクロージャ(11)は、内側エンクロージャ部分(15)および同軸に配置された外側エンクロージャ部分(16)を備え、前記シール(12)および前記ラビリンス構造(13)は、前記内側エンクロージャ部分(15)と前記ノズル(7)および/または前記絶縁ノズル(9)との間に設けられている、請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項5】
金属エンクロージャを備え、前記ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)は、金属で囲まれたガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)として設けられている、請求項1または2に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項6】
前記ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)は、12kV以上、52kV以上、または72kV超、あるいは145kV以上の中電圧~高電圧を遮断するように構成されたガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)であり、かつ/または前記ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)は、パッファ型回路遮断器、自立吹き付け型回路遮断器、またはこれらの組み合わせのうちの1つである、請求項1または2に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)。
【請求項7】
ガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)を動作させる方法であって、
請求項1または2に記載の高電圧または中電圧回路遮断器で電流を遮断することを含む方法。
【請求項8】
前記電流を遮断することは、
遮断動作を開始させるために前記開閉動作軸線(4)に沿って前記第1および第2のアークコンタクト(2、3)の少なくとも一方を移動させることによって前記第1のアークコンタクト(2)と前記第2のアークコンタクト(3)とを離すこと
を含む、請求項に記載のガス絶縁高電圧または中電圧回路遮断器(1)を動作させる方法。
【国際調査報告】