(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】癌治療のためのナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20240702BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240702BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240702BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240702BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20240702BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240702BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240702BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240702BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K9/16
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/10
A61K31/085
A61K45/00
A61K31/704
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500609
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022036419
(87)【国際公開番号】W WO2023283380
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524008270
【氏名又は名称】イミックス バイオファーマ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ ラックマン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA32
4C076BB13
4C076CC27
4C076EE23
4C084AA19
4C084MA66
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4C086AA01
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4C086MA05
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4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA33
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書で開示する発明は、1以上のポリキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子、及びそれをチェックポイント阻害剤と組み合わせて癌を治療するために使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性ポリマー脂質コアに連結された親水性PEGポリマー及び1以上のポリキナーゼ阻害剤、並びに任意に、化学療法剤を含む、ナノ粒子。
【請求項2】
前記親水性PEGポリマーが、PEG2000である、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、約20 nm~約50 nmのサイズを有する、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項4】
1以上のキナーゼ阻害剤が、クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はそれらの組合わせから選択される、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記化学療法剤が、ドキソルビシン又はその医薬均等物、類似体、誘導体、及び/若しくは塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ドキソルビシンと共負荷されたクルクミノイド複合体のミセル構築物を含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記ミセル構築物が10 nm~20 nmである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記ミセル構築物が20 nm~60 nmである、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
前記ミセル構築物が30 nm未満である、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
PEG2000を含む医薬として許容し得る担体をさらに含む、請求項6記載の組成物。
【請求項11】
対象における癌を治療する方法であって、該対象に治療有効投薬量の請求項1記載のナノ粒子を、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体と組み合わせて共投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記癌種が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、非定型奇形腫/非定型ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、星細胞腫、脳脊髄腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫/非定型ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明の癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、小児癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳管内上皮内癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞性腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、骨の線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌(Gastric Cancer)、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質性腫瘍(GIST)、胚細胞性腫瘍、卵巣胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部(鼻咽頭)癌、心臓癌、肝細胞癌、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、肺癌、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳癌、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、NUT遺伝子の関与する正中線上の癌、口腔癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CIVIL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫、傍神経節腫、副鼻腔癌、鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎明細胞癌、腎盂腎癌、尿管癌、移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の扁平上皮頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、胃癌(Stomach Cancer)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、原発不明の妊娠性絨毛性腫瘍、小児のまれな癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載のナノ粒子を、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体より前に投与する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載のナノ粒子を、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体と同時に投与する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載のナノ粒子を静脈内に投与する、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記対象に静脈内投与するクルクミノイドの濃度が、少なくとも用量当たり5 mg/m
2である、請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記対象に静脈内投与するクルクミノイドの濃度が、用量当たり5 mg/m
2~150 mg/m
2である、請求項11記載の方法。
【請求項19】
ナノ粒子の投薬スケジュールが、28日ごとの5日間にわたり1日1回である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
ナノ粒子の投薬スケジュールが、28日ごとの6~14日間にわたり1日1回である、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国仮出願第63/219,348号(2021年7月7日出願)を基礎とする優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本明細書で開示する発明は一般に、1以上のポリキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子、並びにそれをチェックポイント阻害剤及び/又は癌抗体と組み合わせて癌を治療するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
プログラム細胞死受容体1(PD-1)は、主に活性化されたT細胞及びB細胞表面に発現する免疫阻害性受容体である。そのリガンドとの相互作用により、インビトロ及びインビボの両方においてT細胞反応が弱められることが示されている。PD-1及びそのリガンドの1つであるPD-L1の間の相互作用の遮断により、腫瘍特異的なCD8-T細胞による免疫が増強されることが示されているため、該遮断は免疫系による腫瘍細胞の排除に有用となり得る。
【0004】
PD-1のリガンド(PD-L1及びPD-L2)は非造血組織並びに様々な腫瘍種を含む様々な細胞種において構成的に発現され、又は誘導され得る。PD-L1はB細胞、T細胞、骨髄細胞及び樹状細胞(DC)の表面に発現しているが、毛細血管内皮細胞のような末梢細胞の表面及び心臓、肺などのような非リンパ器官にも発現している。対照的に、PD-L2はマクロファージ及びDCの表面に見出されるのみである。PD-1リガンドの発現パターンは末梢寛容の維持におけるPD-1の役割について連想させ、かつ末梢における自己反応性T細胞及びB細胞の反応を調節する役割を果たし得る。
【0005】
PD-1経路の治療的遮断は免疫寛容を克服するのに有用となり得る。そのような選択的遮断は癌又は感染症の治療並びに(予防的であれ治療的であれ)ワクチン接種の間の免疫のブーストに有用となり得る。例えば、PD-1/PD-L1相互作用の遮断は腫瘍特異的T細胞による免疫の増強を導くことができ、従って免疫系による腫瘍細胞の排除に有用となり得る。
【0006】
抗PD-1及び抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤を含む過去数十年にわたる免疫治療モダリティの開発は、癌治療における大きな進歩を象徴する。チェックポイント阻害剤はいくつかの固形腫瘍の主要な治療となっており、少数ながら無視できない数の患者において印象的な長期的寛解をもたらす。しかしながら、固形腫瘍を有する患者におけるその有効性は依然としてきわめて予測不能であり、大多数の患者はこの治療クラスからの恩恵を受けない。従って、これらの治療の臨床利益を拡大することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
本発明のいくつかの実施態様は、疎水性ポリマー脂質コアに連結された親水性PEGポリマー及び1以上のポリキナーゼ阻害剤、並びに任意に、化学療法剤を含み得る、ナノ粒子に関する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示する組成物は、抗PD1抗体より前に投与するための、ナノ粒子、例えばPEG2000長並びに任意にドキソルビシン若しくはその医薬均等物、類似体、誘導体、及び/若しくは塩と共負荷されたクルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はクルクミノイド複合体を含む。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は癌の治療のための抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施態様において、ナノ粒子及び抗PD-1/PD-L1/PD-L1/PD-L2抗体を共投与すると、ナノ粒子を伴わない抗体の投与と比較して、抗体の有効性が増加する。
【0008】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約10 nm~約20 nm、又は約10 nm~約30 nm、又は約10 nm~約40 nm、又は約10 nm~約50 nm、又は約15 nm~約45 nm、又は約15 nm~約35 nm、又は約15 nm~約30 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約20 nm~約60 nm、又は約20 nm~約50 nm、又は約20 nm~約40 nm、又は約20 nm~約30 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約60 nm未満、又は約50 nm未満、又は約40 nm未満の平均径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約30 nm未満、又は約20 nm未満の平均径を有する。
【0009】
いくつかの実施態様において、1以上のキナーゼ阻害剤は、クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩又はそれらの組合わせ、又はクルクミノイド複合体とし得る。いくつかの実施態様において、化学療法剤はドキソルビシン又はその医薬均等物、類似体、誘導体、及び/若しくは塩とし得る。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様は、ドキソルビシンと共負荷されたクルクミノイド複合体のミセル構築物を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は約10 nm~20 nmである。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は約20 nm~60 nmである。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は約30 nm未満である。
【0011】
いくつかの実施態様において、組成物は、医薬として許容し得る担体をさらに含む。いくつかの実施態様において、組成物はPEG2000を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様は、対象において癌を治療する方法に関する。本方法は、対象に治療有効投薬量のナノ粒子を、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体と組み合わせて共投与することを含み得る。いくつかの実施態様において、対象はヒトである。
【0013】
いくつかの実施態様において、癌は、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、非定型奇形腫/非定型ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、星細胞腫、脳脊髄腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫/非定型ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明の癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、小児癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳管内上皮内癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞性腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、骨の線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌(Gastric Cancer)、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質性腫瘍(GIST)、胚細胞性腫瘍、卵巣胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部(鼻咽頭)癌、心臓癌、肝細胞癌、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、肺癌、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳癌、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、NUT遺伝子の関与する正中線上の癌、口腔癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CIVIL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫、傍神経節腫、副鼻腔癌、鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎明細胞癌、腎盂腎癌、尿管癌、移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の扁平上皮頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、胃癌(Stomach Cancer)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、原発不明の妊娠性絨毛性腫瘍、小児のまれな癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、又はウィルムス腫瘍からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物は、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体より前に投与することができる。いくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物は、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体と同時に投与することができる。いくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物は、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体より前に、及びそれと同時に投与することができる。
【0015】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物は、静脈内に投与することができる。いくつかの実施態様において、対象に静脈内投与するクルクミノイドの濃度は、少なくとも5 mg/m2とすることができる。いくつかの実施態様において、対象に静脈内投与するクルクミノイドの濃度は、少なくとも用量当たり5 mg/m2~150 mg/m2とすることができる。
【0016】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子の投薬は、28日ごとの5日間にわたり1日1回である。いくつかの実施態様において、ナノ粒子の投薬は、6~14日間にわたり1日1回である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
(図面の簡単な説明)
【
図1】膵臓癌のマウスモデルにおいて使用された本発明に関する実験についての投薬スケジュール及び生存データを示す。
【0018】
【
図2】本発明に関する実験で使用されたマウスにおける腫瘍のイメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細)
チェックポイント阻害剤は癌を攻撃するよう免疫系を配備する能力により印象的かつ長期持続性の反応を生み出すことができるものの、これらの薬物は分子、組織及び生物体レベルでの重大な課題に直面している。本明細書で開示する発明の実施態様は、1以上の疎水性キナーゼ阻害剤及び任意に化学療法剤を含むナノ粒子の組合わせを投与し、かつ任意に抗PD-1抗体を共投与することにより癌を治療するための、組成物及び方法に関する。この組合わせの利点は、大部分の患者において抗PD-1治療に反応することを妨げる複数の負のフィードバックループの複雑な重なりを克服することである。
【0020】
(ナノ粒子)
いくつかの実施態様において、ナノ粒子は、少なくとも1つの脂質二重層により封入された水性区画を含むリポソームとし得る。親水性頭部を含む脂質を水に分散させると、それらは自発的にラメラと呼ばれる二重層膜を形成する。ラメラは脂質分子の2つの単層シートから構成され、それらの非極性(疎水性)表面は互いに向かい合い、それらの極性(親水性)表面は水性媒体の方を向く。
【0021】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約10 nm~約400 nm、又は約25 nm~約350 nm、又は約50 nm~約300 nm、又は約100 nm~約250 nm、又は約150 nm~約200 nm、又は約100 nm~約400 nm、又は約10 nm~約100 nm、又は約10 nm~約90 nm、又は約10 nm~約80 nm、又は約10 nm~約70 nm、又は約10 nm~約60 nm、又は約10 nm~約50 nm、又は約10 nm~約40 nm、又は約10 nm~約30 nm、又は約20 nm~約60 nm、又は約20 nm~約50 nm、又は約20 nm~約40 nm、又は約25 nm~約50 nm、又は約25 nm~約40 nm、又は約25 nm~約35 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約10 nm、約15 nm、約20 nm、約25 nm、約30 nm、約35 nm、約40 nm、約45 nm、約50 nm、約55 nm、約60 nm、約65 nm、約70 nm、約75 nm、約80 nm、約85 nm、約90 nm、約95 nm、約100 nm、約125 nm、約150 nm、約175 nm、約200 nm、約225 nm、約250 nm、約275 nm、約300 nm、約325 nm、約350 nm、約375 nm又は400 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約50 nm未満、又は約45 nm未満、又は約40 nm未満、又は約35 nm未満、又は約30 nm未満、又は約25 nm未満、又は約20 nm未満の平均径を有する。
【0022】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子は親水性外部区画及び疎水性内部区画を有する両親媒性ポリマーを含む、ミセル構築物である。これらの両親媒性ポリマーが水性環境に曝露されると、それらは自発的に集合して単一層の複合体となり、それらの非極性疎水性部分はナノ粒子の内部コアの方を向く。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約10 nm~約60 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約10 nm~約20 nm、又は約10 nm~約30 nm、又は約10 nm~約40 nm、又は約10 nm~約50 nm、又は約15 nm~約45 nm、又は約15 nm~約35 nm、又は約15 nm~約30 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約20 nm~約60 nm、又は約20 nm~約50 nm、又は約20 nm~約40 nm、又は約20 nm~約30 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約60 nm未満、又は約50 nm未満、又は約40 nm未満の平均径を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は約30 nm未満、又は約20 nm未満の平均径を有する。
【0023】
(脂質)
いくつかの実施態様において、本明細書で提供するナノ粒子は、脂質を含む。好適な脂質には、脂肪、ろう、ステロイド、コレステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、陽イオン性又は陰イオン性脂質、及び誘導体化脂質などがある。
【0024】
好適なリン脂質には、これらに限定はされないが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルイノシトール(PI)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(Nマレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(phosphatidyethanolamine)(SOPE)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(phophoethanolamine)(transDOPE)及びカルジオリピンがある。
【0025】
いくつかの実施態様において、脂質は誘導体化脂質、例えばPEG化脂質である。誘導体化脂質には、例えばDSPE-PEG2000、コレステロール-PEG2000、DSPE-ポリグリセロール又は当該技術分野で一般的に公知の他の誘導体があり得る。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子はPEGポリマー、例えばPEG2000を含む。ポリマーの長さはミセルサイズを決定し、該ミセルサイズによりその組織への浸透が促進され、かつ送達が改善される。
【0026】
(キナーゼ阻害剤)
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は1以上の疎水性キナーゼ阻害剤を含む。疎水性キナーゼ阻害剤は、クルクミノイド又はクルクミノイド類似体、それらの誘導体又は塩とし得る。クルクミノイド(複数可)は、天然又は合成であり得る。キナーゼ阻害剤は、クルクミンの合成類似体とし得る。
【0027】
クルクミノイドはポリフェノール色素であり、クルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンを含む。
【0028】
本明細書で使用するクルクミンは、ジフェルロイルメタン又は(E,E)-1,7-ビス(4 ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオンとしても公知である。クルクミンは、天然の供給源、ショウガ科の成員である多年生ハーブのウコン(Curcuma longa L.)に由来し得る。
【0029】
クルクミンはエタノール、アルカリ、ケトン、酢酸及びクロロホルムに可溶性である。クルクミンは水中では不溶性である。従って、クルクミンは親油性であり、一般的に脂質、例えば本明細書で開示する発明の実施態様のコロイド性薬物送達システムにおいて使用される脂質の多くと容易に会合する。いくつかの実施態様において、クルクミンは金属キレートとして製剤化することもできる。
【0030】
本明細書で使用するクルクミン類似体は、そのクルクミンとの構造的類似性のためにクルクミンと同様の効果を示す化合物である。クルクミン類似体は、これらに限定はされないが、Ar-タメロン(tumerone)、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ナトリウムクルクミナート、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス (2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシナフチルクルクミン)及び1,1-ビス (フェニル)-1,3,8,10 ウンデカテトラエン-5,7-ジオン(シンナミルクルクミン)などがある。また、クルクミン類似体には、クルクミンの異性体、例えばクルクミンの(Z,E)及び(Z,Z)異性体がある。いくつかの実施態様において、クルクミンの代謝産物を使用する。公知のクルクミンの代謝産物には、これらに限定はされないが、テトラヒドロクルクミン及びヘキサヒドロクルクミンのグルコロニド(glucoronides)並びにジヒドロフェルラ酸がある。いくつかの実施態様において、クルクミン類似体又は代謝産物は、金属キレート、特に銅キレートとして製剤化することができる。本明細書で開示する発明の実施態様における使用に適切なクルクミンの他の誘導体、クルクミン類似体及びクルクミンの代謝産物は、本開示に基づき当業者には明らかであろう。
【0031】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子には、異なるキナーゼ阻害剤の組合わせがある。いくつかの実施態様において、阻害剤はEF24、EF31及びその全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,842,705号に開示された他の化合物とし得る。
【0032】
(化学療法剤)
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は、任意に1以上の化学療法剤をさらに含み得る。例示的化学療法剤には、これらに限定はされないが、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、デカルバジン、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツザマブ(alemtuzamab)、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)を含む)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシン又はボルテゾミブ)及び免疫モジュレーター、例えばサリドマイド又はサリドマイド誘導体(例えば、レナリドミド)などがある。
【0033】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子には、1以上のポリキナーゼ阻害剤及び1以上の化学療法剤が、共負荷される。例えば、いくつかの実施態様において、ナノ粒子には1以上のポリキナーゼ阻害剤及びドキソルビシンが、共負荷される。いくつかの実施態様において、ナノ粒子はドキソルビシンと共負荷されたクルクミノイド複合体のミセル構築物(「IMX-110」)である。
【0034】
(治療組成物)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のナノ粒子を含む治療組成物を提供する。組成物は、医薬として許容し得る担体、及び任意に他の所望の成分を含み得る。本明細書で開示する担体(複数可)は、製剤(formula)の他の成分と相溶性があり、そのレシピエントにとって有害でないという意味で、許容し得る。例えばリン酸緩衝生理食塩水などの適切な担体の選択は、当業者であれば十分に知悉している。いくつかの実施態様において、担体はPEG2000を含み得る。
【0035】
同様に、当業者であれば組成物に含めるのに適切な安定化剤及び保存料などを容易に選択することができる。当該技術分野で公知の任意の投与経路、例えば皮下、腹腔内、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、胸骨内、腫瘍内、注入、経口、筋肉内及び鼻腔内などを、ナノ粒子の投与に利用することができる。いくつかの実施態様において、組成物は静脈内投与による送達に好適である。
【0036】
(ナノ粒子の作製方法)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のナノ粒子を生産する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本方法はリン脂質、ポリフェノールであるキナーゼ阻害剤(クルクミノイド)又は他の疎水性キナーゼ阻害剤を、有機溶媒と混合して混合物を可溶化させることを含み得る。化学療法剤を使用する場合、その薬剤を混合物中に含める。その後、溶媒を公知の方法により蒸発させ、混合物をPBS中で水に戻すことができる。物理化学的特性、例えば粒子径、表面電荷、カプセル化効率及び含有量は、公知の方法に従い決定することができる。さらなる情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているSarisozenらの文献、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 108 (2016) 54-67に見出すことができる。
【0037】
(ナノ粒子の使用方法)
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子組成物の使用方法を、本明細書で提供する。いくつかの実施態様において、本方法は、有効量の本明細書で開示するナノ粒子組成物を投与することによる、対象における癌の治療に関する。
【0038】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書において互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するのに有効な本明細書に記載の化合物、製剤、物質又は組成物の量を指す。
【0039】
「癌」という用語は、異常細胞の急速かつ制御の利かない成長を特徴とする疾患を指す。癌細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を通じて体の他の部分に散在し得る。本明細書に記載の方法により治療される癌の例には、これらに限定はされないが、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、非定型奇形腫/非定型ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、星細胞腫、脳脊髄腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫/非定型ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明の癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、小児癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳管内上皮内癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞性腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、骨の線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌(Gastric Cancer)、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質性腫瘍(GIST)、胚細胞性腫瘍、卵巣胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部(鼻咽頭)癌、心臓癌、肝細胞癌、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、肺癌、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳癌、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、NUT遺伝子の関与する正中線上の癌、口腔癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CIVIL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫、傍神経節腫、副鼻腔癌、鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎明細胞癌、腎盂腎癌、尿管癌、移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の扁平上皮頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、胃癌(Stomach Cancer)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、原発不明の妊娠性絨毛性腫瘍、小児のまれな癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍などがある。
【0040】
「癌」という用語は、組織病理学的類型又は侵襲性のステージに関係なく、全ての種類の癌成長若しくは腫瘍形成プロセス、転移組織又は悪性形質転換した細胞、組織若しくは器官を指す。
【0041】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法により治療される癌は、癌細胞表面の、又は腫瘍微小環境中のPD-1リガンド、例えばPD-L1又はPD-L2の発現を特徴とする。
【0042】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法は、本明細書で提供するナノ粒子を含む組成物及び抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の共投与を含む。本明細書で使用する「抗PD1/PD-L1/PD-L1」とは、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1との結合を遮断する任意の抗体又は抗体断片を指す。
【0043】
本明細書で利用する「共投与」又は「併用投与」などという用語は、一人の患者への選択された治療剤の投与を包含することを意味し、かつ薬剤が必ずしも同じ投与経路により、又は同時に投与されるわけではない治療レジメンを含めることを意図するものである。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物及び抗PD-1/PD-L1/PD-L2を共投与することができる。
【0044】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子及び抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の共投与は、相乗効果を有する。
【0045】
「相乗的」及び「相乗的に有効な」という用語は、2以上の薬剤の適用から生み出される生物学的効果が、個別の薬剤を適用することによりもたらされる生物学的効果の和を上回ることを意味するものとして本明細書で使用する。相乗効果の定量化は、その全内容が参照により本明細書に完全に組み込まれている、S. R. Colbyの文献、「除草剤の組合わせの相乗的かつ拮抗的反応の計算(Calculating Synergistic and Antagonistic Response of Herbicide Combinations)」 Weeds 15(1):20-23, 1967に見出し、又はそれから適応させることができる。
【0046】
いくつかの実施態様において、相乗効果は、NF-κB及びStat3の活性化の阻害剤であるクルクミン、及びアポトーシス誘導因子/トポイソメラーゼ阻害剤であるドキソルビシンの組合わせに起因する、本明細書で開示する組成物によるPD-1/PD-L1/PD-L2抗体の抗腫瘍反応の増強であり得る。いくつかの実施態様において、相乗効果は、標準的な用量と比較して低いPD-1/PD-L1/PD-L2抗体の用量の使用により実証される。例えば、いくつかの実施態様において、本明細書で開示する組成物との組合わせで使用する場合、抗体の用量は、標準的な用量より低くすることができるが、依然として有効であり、又はより有効性を高めることすらできる。例えば、抗体の用量は、標準的な用量の約50%、又は約55%、又は約60%、又は約65%、又は約70%、又は約75%、又は約80%、又は約85%、又は約90%、又は約95%とすることができる。
【0047】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する組成物は、抗PD1抗体より前に投与するための、ナノ粒子、例えばPEG2000長並びに任意にドキソルビシン若しくはその医薬均等物、類似体、誘導体、及び/若しくは塩と共負荷されたクルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はクルクミノイド複合体を含む。他者により数千もの組合わせがインビトロで試みられてきたが、この組合わせアプローチをインビボで機能的なものとすることができることを示した例はなく、ましてや本発明の発明者らにより実証されたように、ヒト患者において機能的なものとすることができることを示した例はない。さらに、本明細書で使用するドキソルビシンの用量は一般的に使用されているドキソルビシンの用量より著しく低いにもかかわらず、有効性はより優れている。このことは、あらゆる先行技術において過去開示されていない予期せぬ相乗効果を示している。
【0048】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子組成物は、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の投与より前に投与する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物は、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の投与と同時に投与する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子組成物は、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の投与より前又はそれと同時に投与する。
【0049】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子組成物及び抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の共投与により、ナノ粒子組成物を伴わない抗体の投与と比較して、抗体の有効性が増加する。
【0050】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法は、対象への1以上の疎水性キナーゼ阻害剤を含むナノ粒子を含む組成物の投与を含む。いくつかの実施態様において、投与は静脈内、経口、吸入、鼻腔内、直腸及び局所などとし得る。
【0051】
いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤はクルクミノイドであり、約0.01 mg/個体の体重1 kg~約500 mg/個体の体重1 kgの用量で投与する。例えば、クルクミノイドは、約0.01 mg/kg、約1 mg/kg、約10 mg/kg、約50 mg/kg、約100 mg/kg、約150 mg/kg、約200 mg/kg、約250 mg/kg、約300 mg/kg、約350 mg/kg、約400 mg/kg、約450 mg/kg、又は約500 mg/kgの用量で投与し得る。いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤はクルクミノイドであり、用量当たり約5 mg/m2~約150 mg/m2の用量で投与する。例えば、クルクミノイドは用量当たり約5 mg/m2、約10 mg/m2、約15 mg/m2、約20 mg/m2、約25 mg/m2、約30 mg/m2、約35 mg/m2、約40 mg/m2、約45 mg/m2、約50 mg/m2、約55 mg/m2、約60 mg/m2、約65 mg/m2、約70 mg/m2、約75 mg/m2、約80 mg/m2、約85 mg/m2、約90 mg/m2、約95 mg/m2、約100 mg/m2、約110 mg/m2、約120 mg/m2、約130 mg/m2、約140 mg/m2又は約150 mg/m2の用量で投与し得る。
【0052】
クルクミンは、Ar-タメロン(tumerone)、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ナトリウムクルクミナート、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス (2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシナフチルクルクミン)及び1,1-ビス (フェニル)-1,3,8,10 ウンデカテトラエン-5,7-ジオンなどから選択し得る。
【0053】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子組成物の投薬レジメンは、例えば1日1回、1日2回、1日3回、又は2、3、4、5、6、7若しくは8時間ごとである。いくつかの実施態様において、治療の長さは5日間、7日間、10日間、2週間、3週間、4週間又は約5日間~28日間とし得る。
【0054】
いくつかの実施態様において、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体を用いた共治療は、本明細書で開示するナノ粒子組成物の投与開始後又はそれと同時に行うことができる。例えば、抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体は、本明細書で開示するナノ粒子組成物を投与した後0日、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日又はそれ以上の日数で投与することができる。抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の投与は、当該技術分野で現在使用されている用量に対し標準的又はそれ未満とすることができる(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれているTawbi, Hussein Aらの文献、「進行軟部組織肉腫及び骨肉腫におけるペムブロリズマブ(SARC028):多施設2コホート単群非盲検第II相臨床試験(Pembrolizumab in advanced soft-tissue sarcoma and bone sarcoma (SARC028): a multicentre, two-cohort, single-arm, open-label, phase 2 trial.)」The Lancet. Oncology vol. 18,11 (2017):1493-1501. doi:10.1016/S1470-2045(17)30624-1及びKang, Yoon-Kooらの文献、「少なくとも2つの先行する化学療法レジメンに不応性であり、又は耐えなかった進行胃癌又は食道胃吻合癌を有する患者におけるニボルマブ(ONO-4538-12, ATTRACTION-2):無作為二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験(Nivolumab in patients with advanced gastric or gastro-oesophageal junction cancer refractory to, or intolerant of, at least two previous chemotherapy regimens (ONO-4538-12, ATTRACTION-2): a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.)」 Lancet (London, England) vol. 390,10111 (2017):2461-2471. doi:10.1016/S0140-6736(17)31827-5を参照されたい)。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子組成物及び抗PD-1/PD-L1/PD-L2抗体の共投与レジメンは、反復することができる。例えば、レジメンは、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月、又はそれ以上の月数にわたり、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間ごとに反復することができる。
【0055】
(プログラム細胞死受容体1(PD-1))
いくつかの実施態様において、本発明は、PD-1に結合する単離抗体及び抗体断片を提供する。いくつかの実施態様において、抗体又は抗体断片は、PD-L1及びPD-L2のPD-1との結合を遮断する。
【0056】
(利点)
本明細書で開示する発明の発明者らは、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むナノ粒子の使用の実現性を、治療困難な進行固形腫瘍における抗PD-1抗体の抗癌有効性を改善するための、抗PD-1抗体に対する前治療又は共治療としてのクルクミノイド複合体及びドキソルビシンを共負荷されたミセル(IMX-110)の使用を例に挙げて実証した。後述の実施例における免疫学的にインタクトなKPC膵臓癌モデルの使用により、抗PD-1の効果を打ち消す進行癌の免疫抑制効果の克服における、IMX-110の効力が強調される。本願に開示する新規併用治療は、進行固形癌の治療における見込みのある新たな方向を示す。
【0057】
本明細書で開示する発明の直観に反する特徴は、一見相互に阻害しあう薬剤、例えばNF-κb及びStat-3の活性化を阻害するクルクミノイド並びに免疫細胞におけるNF-κb及びStat3の活性化を通じて免疫反応を活性化する抗PD1抗体を組み合わせることである。本発明より以前の優勢な考えは、任意の抗NF-κB及び抗Stat3薬物は抗腫瘍免疫反応を弱めるはずであるというものであり、本発明者らが実証したように、抗腫瘍免疫反応を刺激するという考えは優勢ではなかった。
【0058】
当業者であれば、NF-κb及びStat3による転写活性化の決定的な重要性を認識されよう。厳密な空間特異的、時間特異的及び細胞周期特異的様式をとらずに、抗NF-κB及び抗Stat3剤を投与して、有意義な抗癌免疫反応を観察することを期待するのでは、非常に望ましくない結果を得るであろう。従って、(NF-κB及びStat3の活性化の阻害剤(Cur)だけでなく、アポトーシス誘導因子/トポイソメラーゼ阻害剤Doxを組み合わせた)IMX-110を、PD-1抗体と組み合わせることにより、PD-1抗体が実施例1に記載の公開された報告における用量よりも低い用量でさえも、本発明者らが抗腫瘍反応の増強を観察したことは、非常に意外である。
【0059】
抗PD1抗体により促進される抗癌免疫反応は、癌において活動する多くのプロセスにより、妨害される。そのような妨害因子の1つは、癌患者におけるエキソソーム生産の上方調節である。これらのエキソソームはその表面にPD-1/PD-L1を発現し、従って投与された抗PD-1抗体の吸着因子として作用し、その結果抗PD-1抗体の意図された効果を妨害する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Yin, Ziらの文献、「癌の免疫療法におけるPD-1/PD-L1遮断抗体への低臨床反応の根底にある機構:エキソソームPD-L1の重要な役割(Mechanisms underlying low-clinical responses to PD-1/PD-L1 blocking antibodies in immunotherapy of cancer: a key role of exosomal PD-L1.)」 Journal for immunotherapy of cancer vol. 9,1 (2021): e001698. doi:10.1136/jitc-2020-001698を参照されたい)。同様に、癌との闘いにおける免疫系のエフェクター機能を制限するものは、腫瘍組織中に存在する酸性環境である(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Huber, Veronicaらの文献、「癌の酸性度:腫瘍免疫回避の最終フロンティア及び免疫調節の新規標的(Cancer acidity: An ultimate frontier of tumor immune escape and a novel target of immunomodulation.)」 Seminars in cancer biology vol. 43 (2017): 74-89. doi:10.1016/j.semcancer.2017.03.001を参照されたい)。エキソソーム生産及び酸性化は両方とも、少なくとも部分的にNF-κB及びStat3により活性化される。従って、本明細書で開示する発明の利点は、抗PD1抗体に対してNF-κB/Stat3阻害剤を適切なタイミング及び用量で投与して、それらの所望の効果を最大化する点である。
【実施例】
【0060】
(実施例)
(実施例1)
抗PD-1抗体の抗癌有効性が抗PD-1有効性を弱める癌保護免疫機構を遮断することができる薬物による前治療により改善することができるという着想を立証するため、本発明者らは膵臓癌の免疫学的にインタクトなKPCマウス遺伝学モデルにおいてクルクミノイド複合体及びドキソルビシンを共負荷したミセル(IMX-110)をマウス抗PD-1抗体と組み合わせた(その全体が参照により本明細書に組み込まれているLeeらの文献、Curr Protoc Pharmacol. 2016; 73:14.39.1-14.39.20を参照されたい)。このマウスモデルは、化学療法、放射線照射又は抗PD-1抗体を含む免疫腫瘍学的薬物に最小限にしか反応しないヒト膵臓癌と同様に挙動する。免疫学的にインタクトであるため、これらのマウスは免疫学的薬物の効果を研究するのに理想的なモデルとなる。
【0061】
膵臓特異的プロモーターの制御下の突然変異体KRASを有するマウスを、この研究に使用した。一度マウスがインビボルシフェラーゼアッセイにより膵臓癌を表す視認可能な病変を発症したら、それらのマウスをIMX-110及び抗PD-1抗体の組合わせで処置した。治療スケジュールは、第1~5日における5回(5回)にわたる毎日の用量当たりドキソルビシンを1.5mg/kg/クルクミンを6 mg/kgとしたIMX-110並びに第5、8及び11日に静脈内投与する100マイクログラムのマウス抗PD1抗体の注射とした。これらのサイクルを、3週間(3週間)毎に反復し、観察によりマウスの生存期間並びに臨床状態を入手した(
図1を参照されたい)。
【0062】
その全体が参照により本明細書に組み込まれている文献(Winograd, Rafaelらの文献、「T細胞免疫の誘導により、PD-1及びCTLA-4の遮断に対する完全な抵抗性が克服され、膵臓癌における生存率が改善される(Induction of T-cell Immunity Overcomes Complete Resistance to PD-1 and CTLA-4 Blockade and Improves Survival in Pancreatic Carcinoma.)」 Cancer immunology research vol. 3,4 (2015):399-411. doi:10.1158/2326-6066.CIR-14-0215; http://cancerimmunolres.aacrjournals.org/content/3/4/399.long)に公開されている一般に投与されているマウス抗PD1抗体のちょうど50%を使用する、IMX-110+抗PD-1抗体併用治療は、腫瘍質量の顕著な低下を示した。
【0063】
3頭のマウスのうち2頭において、高強度ルシフェラーゼシグナルが顕著に低下しており、膵臓塊のサイズが低下したことが示された。さらに、この40週のステージにある全てのマウスの臨床状態は、これらのマウスにおいて典型的に観察されるよりも良さそうであった。
【0064】
図2は、第2サイクルのIMX-110及び抗PD1抗体の後のイメージングデータを示している。一方のマウスにおいて腫瘍サイズは縮小し続け、他方のマウスは臨床上予後は良好であり続けたが、スキャン画像上では外見上の腫瘍拡大を示していた。
【0065】
(実施例2)
相乗効果を実証し、クルクミノイド複合体を負荷したミセル(ドキソルビシンあり又はなし)の最適な投薬レベル及び抗PD1抗体の投与に対してそれを投与する最適なタイミングを決定するために、実験を実施する。ポリキナーゼ阻害剤をカプセル化したナノ粒子(ドキソルビシンあり又はなし)及び抗PD1抗体の間の相乗効果を最大限に探索するためには、先に論じたそれらの相互作用の臨床転帰に影響を及ぼす多数の要因を検討しなければならない。
【0066】
免疫学的にインタクトな癌モデルを使用する。第1~5日にマウスにIMX-110を、続いて7~14日間にわたりポリキナーゼ阻害剤単独を含むナノ粒子(Doxなし)を、静脈内投薬した。マウスにおいて試験した用量範囲は、Dox:0.5 mg/kg~3 mg/kg;クルクミノイド:2 mg/kg~100 mg/kgを含み、これらはそれらの標準的な公開用量の50%及び100%である。抗PD1抗体は毎週投与する。相乗効果を観察し、最適な投薬スケジュールを決定する。
【0067】
(実施例3)
進行固形腫瘍を有するヒト患者をクルクミノイド複合体及びドキソルビシンを共負荷したミセル並びに抗PD1抗体により静脈内処置する。ドキソルビシンの用量範囲は、2.5 mg/m2~10 mg/m2であり、クルクミンの用量は用量当たり10 mg/m2~150 mg/m2以上の範囲である。投薬スケジュールは、28日ごとの5日(5日)間にわたり1日1回である。抗PD1抗体は14~21日ごとに、それらの標準的な公知の用量の50及び100%でヒト患者に投与する。治療上の相乗効果を観察し、最適な投薬スケジュールを確認する。
【0068】
上記の様々な方法及び技術は、本願を実施するためのいくつかの方法を提供する。もちろん、本明細書に記載の任意の特定の実施態様により、記載された全ての目的又は利点が達成されるとは必ずしもいえないことを理解すべきである。従って例えば、当業者であれば本明細書で教示され、又は示唆された他の目的又は利点を必ずしも達成せずに、本明細書で教示する1つの利点又は利点の群を達成し、又は最適化するようにして本方法を実施することができることを認識されよう。様々な代替物が本明細書で言及されている。いくつかの実施態様は具体的にある特徴、別の特徴又はいくつかの特徴を含む一方、他の実施態様は具体的にある特徴、別の特徴又はいくつかの特徴を除外しており、さらに他の実施態様はある特徴、別の特徴又はいくつかの他の特徴を含むことにより特定の特徴を緩和することを理解すべきである。
【0069】
さらに、当業者であれば異なる実施態様から様々な特徴の適用可能性を認識されよう。同様に、先に論じた様々な要件、特徴及び工程並びにそのような要件、特徴又は工程の各々の他の公知の均等物は、当該技術分野の当業者により様々な組合わせで利用して、本明細書に記載の原則に従う方法を実施することができる。様々な要件、特徴及び工程のうち、いくつかは具体的に含まれ、他のものは具体的に多様な実施態様において除外される。
【0070】
本願はある実施態様及び実施例の状況で開示されたものの、当業者であれば、本願の実施態様は具体的に開示された実施態様を超えて他の代替の実施態様及び/又は使用並びにそれらの改変及び均等物まで拡張することを理解されよう。
【0071】
いくつかの実施態様において、本開示のある実施態様を記載し、特許を請求するために使用する、成分の量、例えば分子量及び反応条件などの特性を表す任意の数は、用語「約」によりいくつかの例において改変されるものとして理解すべきである。従っていくつかの実施態様において、明文の明細書及び任意の含まれる特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、特定の実施態様により取得することが模索される所望の特性に依存して変化し得る近似である。いくつかの実施態様において、数値パラメータは報告された有効数字の数を考慮して、通常の切り捨て技術を適用することにより解釈すべきである。本願のいくつかの実施態様の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似であるにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は通常実施可能なほど厳密に報告されている。
【0072】
いくつかの実施態様において、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「該(the)」並びに本願の特定の実施態様を記載する状況において(特にある請求項の状況において)使用する類似の指示語は、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈する。本明細書における値の範囲の記載は、単に範囲内にある各々の離れた値を個別に指す簡略化した方法としての役割を果たすことを意図するに過ぎない。そうでないことが本明細書で示されない限り、各個別の値は、それが本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書に記載の全ての方法は、そうでないことが本明細書中に示されておらず、又はそうでなくとも状況により明らかに否定されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書中のある実施態様に関して提供される任意且つすべての例又は例示的用語(例えば、「例えば」)の使用は、単に本願をより十分に説明することを意図するものであり、そうでなければ特許が請求される本願の範囲に限定を与えるものではない。本明細書中の用語は、本願の実施に必須である任意の特許請求の範囲に記載されていない要件を示すものとして解釈されるべきではない。
【0073】
好ましい実施態様への変形は、先行する明細書を読んだ当業者には明らかとなろう。当業者はそのような変形を適切に利用することができ、本願は本明細書に具体的に記載されたものとは異なる形で実施することができることが企図される。従って、本願の多くの実施態様は、適用可能な法により認められたように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の主題事項の全ての改変及び均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形中の上記要件の任意の組合わせは、そうでないことが本明細書に示されておらず、又はそうでなくとも状況により明らかに否定されない限り、本願に包含される。
【0074】
本明細書で引用する全ての特許、特許出願、特許出願の公開公報並びに他の材料、例えば論文、書籍、明細書、刊行物、文書及び/又は物などは、それらと関連するあらゆる手続包袋履歴、これらのうち任意の、本文書と矛盾し、若しくは対立するもの、又はこれらのうち任意の、現在または将来本文書と関連付けられる請求項の最も広い範囲について限定的な効果を有し得るものを除き、全ての目的のためにその全体がこの参照によりここで本明細書に組み込まれている。例として、組み込まれた材料のいずれかに関連付けられる記述、定義及び/又は用語の使用並びに本文書と関連付けられるそれらの間に任意の矛盾又は対立が存在する場合、本文書中の記述、定義及び/又は用語の使用が優先されるものとする。
【0075】
最後に、本明細書で開示する本願の実施態様は、本願の実施態様の原則を説明するものであることを理解すべきである。利用可能な他の改変は、本願の範囲内にあり得る。従って、限定するものではないが例として、本願の実施態様の代替の構成は、本明細書中の教示に従い利用することができる。従って、本願の実施態様は、厳密に示され、記載されているものに限定されない。
【国際調査報告】