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特表2024-525108熱膨張係数の整合を特徴とするヒートパイプ及びそれを使用した熱放散
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】熱膨張係数の整合を特徴とするヒートパイプ及びそれを使用した熱放散
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240702BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20240702BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240702BHJP
   B64G 1/50 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
F28D15/02 102G
F28D15/04 C
F28D15/04 E
F28D15/04 B
F28D15/04 D
F28D15/02 L
H05K7/20 R
H01L23/46 B
B64G1/50 600
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518955
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022032126
(87)【国際公開番号】W WO2022256629
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/197,080
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523457648
【氏名又は名称】クプリオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ジン、アルフレッド エー.
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322AA10
5E322DA04
5E322DB08
5E322FA01
5F136CC12
5F136FA03
5F136FA04
5F136FA15
5F136FA22
5F136FA83
(57)【要約】
ヒートパイプは、それと熱的接触する電子構成部品などの熱発生構成部品と熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)が整合するように、調整されてもよい。銅ナノ粒子は、ヒートパイプの封止された外側シェルを画定する銅複合材を形成するために、CTE調整剤と共に穏やかな条件下で圧密化されてもよく、それは、効果的な熱伝達及び2つの間の強固な結合を促進するために、熱発生構成部品に接触してもよい。熱伝達を促進するための作動流体は、封止された外側シェル内に画定された内部空間内に存在してもよい。作動流体は、ヒートパイプ内の第1の位置から第2の位置へと熱を伝達してもよい。熱は、第1の位置に接触する熱源からヒートパイプに入ることができ、熱は、好適なヒートシンクへの放出を通じて、第2の位置でヒートパイプから出ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートパイプであって、
熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、
前記封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を含み、前記内部空間が、前記封止された外側シェルと中空コアとの間に挿入されたウィッキング構造、又は前記封止された外側シェルの表面上に画定された流路を含む、ヒートパイプ。
【請求項2】
前記銅複合材が、銅ナノ粒子をマイクロメートルサイズの銅粒子及び前記CTE調整剤で圧密化することによって、形成される、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記ウィッキング構造が、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記封止された外側シェルが、前記ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
相補的部分が、前記封止された外側シェルに接触し、前記流路の上面を封止する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記CTE調整剤が、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、前記熱伝導性繊維の少なくとも一部が、前記内部空間内へと延在し、前記作動流体に接触する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項9】
プリント回路基板(Printed Circuit Board、PCB)であって、
電気絶縁基板上に配置された又は電気絶縁基板内に少なくとも部分的に埋め込まれた熱発生構成部品と、
前記熱発生構成部品と熱連通する少なくとも1つのヒートパイプと、を備え、前記少なくとも1つのヒートパイプが、
熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、
前記封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を含み、前記内部空間が、前記封止された外側シェルと中空コアとの間に挿入されたウィッキング構造、又は前記封止された外側シェルの表面上に画定された流路を備える、プリント回路基板(PCB)。
【請求項10】
前記銅複合材が、銅ナノ粒子をマイクロメートルサイズの銅粒子及び前記CTE調整剤で圧密化することによって、形成される、請求項9に記載のPCB。
【請求項11】
前記ウィッキング構造が、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載のPCB。
【請求項12】
前記封止された外側シェルが、前記ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する、請求項9に記載のPCB。
【請求項13】
相補的部分が、前記封止された外側シェルに接触し、前記流路の上面を封止する、請求項9に記載のPCB。
【請求項14】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する、請求項9に記載のPCB。
【請求項15】
前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記封止された外側シェルを含む前記銅複合材にCTE整合された銅複合材を含む接合層を介して、前記熱発生構成部品に接合される、請求項9に記載のPCB。
【請求項16】
前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記熱発生構成部品の上面に接合され、
1つ以上のヒートパイプが、前記熱発生構成部品の側面に接合され、
前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記熱発生構成部品の底面に接合され、前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記電気絶縁基板を通って延在するか、
又はこれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載のPCB。
【請求項17】
前記CTE調整剤が、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載のPCB。
【請求項18】
前記構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、前記熱伝導性繊維の少なくとも一部が、前記内部空間内へと延在し、前記作動流体に接触する、請求項9に記載のPCB。
【請求項19】
方法であって、
中空コアを画定する外側表面と内側表面とを有する細長いウィッキング構造を提供することと、
銅ナノ粒子ペースト組成物を前記外側表面に適用することであって、前記銅ナノ粒子ペースト組成物が、複数の銅ナノ粒子、複数のマイクロメートルサイズの銅粒子、及び熱膨張係数(CTE)調整剤を含む、適用することと、
前記細長いウィッキング構造の前記外側表面上に封止された外側シェルを形成するために、前記銅ナノ粒子を圧密化することと、
前記中空コアに作動流体を部分的に充填することと、
前記封止された外側シェルの少なくとも1つの端部を閉鎖して、前記中空コア内に前記作動流体を閉じ込めることと、を含む、方法。
【請求項20】
前記銅ナノ粒子ペースト組成物の第2の部分を前記少なくとも1つの端部に適用し、その内部の前記銅ナノ粒子を圧密化することによって、前記少なくとも1つの端部が閉鎖される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数の熱伝導性繊維を前記銅ナノ粒子ペースト組成物の前記第2の部分内に配置し、前記少なくとも1つの端部から延在させることを更に含み、所望により、前記熱伝導性繊維の少なくとも一部が前記中空コア内へと延在し、前記作動流体と接触する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウィッキング構造が、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記CTE調整剤が、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記封止された外側シェルが、前記ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱源とヒートシンクとの間の非効果的な熱連通は、システムからの過剰な熱放散を妨げ得る。例えば、高出力LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)及び高出力回路などの発熱電子構成部品は、絶えずサイズが縮小し、より強力になっており、それによって、ますます小さな空間に集中している過剰な熱の負荷を発生させる。過剰な熱の生成及びその集中が増大すると、効果的な熱除去が重要になるが、特に問題となり得る。電子システムから過剰な熱を除去することができないと、例えば、過熱、伝導の低下、通常よりも高い所要電力、及び/又はホットスポットの存在に起因する基板の焼損及びデバイスの故障を回避するためのクロックダウン動作の必要性などの、重大な結果をもたらし得る。
【0002】
非効果的な熱伝導は、様々な種類の回路基板、特に、プリント回路基板(Printed Circuit Boards、PCB)において、特に優勢であり得る。PCB及び類似の回路基板は、まさにそれらの構造の性質によって、断熱材である。具体的には、PCBは、断熱基板、例えば、約0.25W/m・K)の熱伝導率値を有するFR4のようなガラス繊維エポキシ複合材を用いてもよく、その上に適切な電子回路及び様々な基板構成部品が配置される。PCB基板の低い熱伝導率値は、このようなPCB基板が、それ自体によってではかなりの熱をヒートシンクに伝達することができないために、電子システムからの過剰な熱の除去を、むしろ困難にし得る。リード線又は埋め込まれた金属トレースでは、それらの通常のサイズが小さいことに起因して、リード線又は埋め込まれた金属トレースを介して除去することが可能である過剰な熱は、ほとんどない。なお、従来の鉛鑞は、特に熱伝導性ではない(例えば、銅などのより熱伝導性の金属の約1/10以下)である。例えば、5G基地局及び電力変換器に見られるような、GaN及びSiC系システム、モノリシックマイクロ波集積回路(Monolithic Microwave Integrated Circuits、MMIC)、フェーズドアレイ等のような発熱デバイスを含むパッケージ基板は、同様の熱伝導問題を経験する場合がある。
【0003】
サーマルビアは、プリント回路基板に関連する電子構成部品によって発生される過剰な熱を除去するための、1つの手法である。しかしながら、高融点金属をビア内へと直接液体鋳造する方法は、現在使用されている基板材料(基板)とは適合性がない(通常、PCB基板として使用される材料のポリマー融点がはるかに低いことに比べて、金属加工温度は>1000℃である)。したがって、ビアは、多くの場合、ロジン又は類似の充填剤で充填され、次に、PCB基板を通した電気的連通を容易にするために、ビア壁(すなわち、ビアバレル)上に形成された厚い金属メッキ(例えば、銅)のみで、端部においてガルバーニ電気的に末端保護されるか、又は開放されたままである。ガルバニック末端保護は、かなり遅いプロセスであり、PCB基板の面で熱源に接触する比較的小さい金属面積に起因して、準最適な熱連通をもたらす場合がある。更に、ガルバニックビア充填手法は、PCBを通って延在する金属プラグ内に間隙を残す場合があり、それによって、熱伝導率に更に影響を及ぼす。金属ナノ粒子を使用してビアを充填するための代替的な手法が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,616,994号に記載されており、これは、ビア正孔のより完全な充填を促進し、より高い熱伝導率をもたらし得る。大きな直径のビアは、過剰な熱のより効果的な除去を提供するために、このようなプロセスに適合する場合がある。しかしながら、かなりの量の過剰な熱を除去するためには、サーマルビアであっても不十分な場合がある。
【0004】
サーマルコインは、サーマルビアによって提供され得るよりも高い熱伝導が必要とされる場合に使用されてもよい、熱放散のための別の手法である。サーマルコインは、典型的には、直径3~4mmの金属体であり、PCB又は類似の基板の平面へと押し込まれ、そこを通って延在する。サーマルビアに対する熱伝導の増加が生じ得るが、サーマルコインのサイズ不適合が一般的であり、サーマルコイン及び/又はPCB基板の厚さが変化し得るため、複数のPCB層を一緒に積層する場合に、組立問題が生じることがある。
【0005】
ヒートパイプは、例外的に、大量の過剰な熱の伝達を容易にし得る、代替の伝熱媒体である。銅などの高熱伝導性金属は、数百W/m・Kの範囲の熱伝導率値しか有し得ないが、ヒートパイプは、数千W/m・Kの範囲又は更に高い、約10,000W/m・K~約100,000W/m・Kの範囲などの、はるかに高い有効熱伝導率値を提供する場合がある。ヒートパイプは、伝統的に、過酷な動作環境における熱の受動的放散が望ましい用途において、利用されてきた。例としては、衛星及び宇宙船用途が挙げられる。ヒートパイプは、重力及び配向とは独立して動作する場合があるため、これら及びその他のゼロ重力用途において、有利であり得る。小型化されたヒートパイプは、近年、プリント回路基板、及び設置面積(サイズ)が重要である小型熱発生電子構成部品を含む類似のシステムから、過剰な熱を放散するために、使用されてきた。
【0006】
ヒートパイプは、封止容器の内部空間内に収容された作動流体への直接的な熱伝達を通じて機能するが、これは、大気圧下又は好ましくは準大気圧(部分真空)下にあってもよい。熱伝導は、作動流体の液体-蒸気相転移及びその後の凝縮によって、更に補足されてもよい。要するに、ヒートパイプの外側表面は、熱源と熱的に接触している。熱源からの熱は、封止容器内へと運ばれ、その内部に収容された作動流体へと伝達される。加熱された際に、作動流体及びその蒸気は、次に、ヒートパイプを通ってより低温の位置(低温端)に移動し、そこで、過剰な熱は、ヒートパイプからヒートシンク又は類似の熱リザーバに放散される。作動流体の移動は、より低温の位置への、熱の直接伝達を促進する。熱を放出した際に、作動流体及びその凝縮蒸気は、次に、追加の熱伝達を行うために、ヒートパイプを通ってヒートパイプのより高温の位置(加熱端)に移動する。更に、進入してくる熱は、作動流体を蒸発させる場合があるが、これは、貯蔵された潜熱を放出するために、より低温の位置でその後の凝縮を受ける。作動流体の蒸発及びその後の凝縮は、それと共に伝導される熱の量を著しく増加させる場合がある。過剰な熱を放出した後、好ましくは、蒸発及び凝縮を受けた後、作動流体は、毛管作用又は別の好適な輸送手段によって、ヒートパイプのより高温の部分に戻る。
【0007】
熱伝達を促進するためにヒートパイプを利用することの困難さは、熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)の不整合に起因して、熱発生構成部品とヒートパイプの外側シェルとの間に非効果的な熱連通が存在し得ることである。例えば、銅は、ヒートパイプの外側シェルを形成するために多くの場合利用される高熱伝導性金属であるが、この金属は、プリント回路基板の熱発生構成部品又は過剰な熱を発生させる類似の構成部品において一般的に使用されるセラミック材料とは、CTEが大幅に異なる。CTEの不整合は、加熱が発生する際に、熱発生構成部品がヒートパイプから外れることにつながる場合があり、それによって、熱発生構成部品から過剰な熱を放散するヒートパイプの能力を無効にする。更に、ヒートパイプを熱発生構成部品に接合するために使用される材料は、CTEの不整合問題に更に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれており、排他的な実施形態と見なされるべきではない。開示された主題は、当業者及び本開示の利益を有する者に想起されるように、形態及び機能において大幅な修正、変更、組み合わせ、及び均等物が可能である。
図1】その上に界面活性剤コーティングを有する金属ナノ粒子の、推定される構造の図を示す。
図2】その上に界面活性剤コーティングを有する金属ナノ粒子の、推定される構造の図を示す。
図3A】中空コアに隣接するウィッキング構造を備える、例示的なヒートパイプの断面図である。
図3B】金属メッシュの又は発泡体のウィッキング構造を備える、例示的なヒートパイプの切断端面図を示す写真である。
図3C】溝を備える、例示的なヒートパイプの切断端面図を示す図である。
図4】複数の導電性繊維がヒートパイプの一端から延在する中空コアに隣接するウィッキング構造を備える、例示的なヒートパイプの断面図である。
図5A】例示的な振動ヒートパイプの上断面図である。
図5B】その内部に画定された流路を有する、例示的な銅ブロックの斜視図を示す写真である。
図5C】例示的な振動ヒートパイプの側断面図である。
図6】熱発生構成部品の上面に接合されたヒートパイプを示す図である。
図7】熱発生構成部品の底面に接合されたヒートパイプを示す図である。
図8】熱発生構成部品の上面及び下面に接合されたヒートパイプを示す図である。
図9】熱発生構成部品の側面に接合された複数のヒートパイプを示す図である。
図10A】高い熱伝導率を有する電気絶縁基板上の様々な位置に配置されたヒートパイプの側面図を示す図である。
図10B】高い熱伝導率を有する電気絶縁基板上の様々な位置に配置されたヒートパイプの側面図を示す図である。
図10C】高い熱伝導率を有する電気絶縁基板上の様々な位置に配置されたヒートパイプの側面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、一般に、熱管理に関し、より具体的には、銅クラダー基板(Copper Cladder Boards、CCB)並びにAlN(窒化アルミニウム)及びSiN(窒化ケイ素)のような新生セラミックを採用する基板を含む、プリント回路基板(PCB)及び様々なセラミックを含有する関連電子システムにおいて採用されるものなどの、熱発生構成部品に整合する改善された熱膨張係数(CTE)を有する外側シェルを有する、ヒートパイプに関する。熱発生構成部品は、FR4又はその他のポリマー基板のような電気絶縁基板及び断熱基板を用いてもよいが、場合によっては、AlNなどの、電気絶縁性であるが熱伝導性である基板が用いられてもよい。効果的な熱放散は、いずれの場合にも問題であることが分かる。本明細書の開示の適用を通して、ヒートパイプは、ヒートパイプの外側シェルのCTEが所与の熱発生構成部品のCTEに整合するように調整され得るような様式で、製造されてもよい。ヒートパイプは、PCB内に容易に組み込まれて、その内部の熱発生構成部品から外部ヒートシンクへの効果的かつ強固な熱伝達を促進してもよい。
【0010】
上述したように、回路基板及び関連する電子アセンブリ内の熱発生構成部品からの過剰な熱の除去は、その内部の断熱材料の普及に起因して問題となり得る。ヒートパイプは、大量の過剰な熱を放散させるために効果的であり得るが、ヒートパイプの金属構成部品と電子構成部品のセラミック材料との間のCTEの不整合は、多くの場合、顕著であり得る。過度のCTEの不整合が存在する場合、ヒートパイプは、熱発生構成部品から係合解除される場合があり、それによって、ヒートパイプが過剰な熱を放散する能力を無効にする。ヒートパイプの強固な接続によって、その上の熱発生電子構成部品から過剰な熱を除去することが依然として困難であり得るために、CTEの不整合は、AlN及びSiNなどの電気絶縁性であるが高熱伝導性の基板が存在する場合であっても問題となることがある。
【0011】
本開示は、ヒートパイプと、ヒートパイプが接続され得る熱発生構成部品と、の間の、より効果的なCTEの整合をもたらし得る、ヒートパイプを提供する。あるいは、本明細書に開示されるヒートパイプは、熱発生構成部品が配置される熱伝導性基板に効果的にCTE整合されてもよい。より具体的には、本開示は、銅複合材などのCTE調整剤を含む金属複合材であって、金属複合材中のCTE調整剤の添加量を容易に変更して、SiC、GaN、AlN等の熱発生構成部品中の所与のセラミック材料とのより効果的なCTEの整合を促進し得る金属複合材を提供する。金属複合材は、本明細書の開示におけるヒートパイプの封止された外側シェルの少なくとも一部を形成してもよい。金属複合材は、銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子を含む組成物から容易に形成され得るが、これにより、金属複合材及びヒートパイプを、溶融金属の融点よりも十分に低い低温で形成してもよい。銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子に関する更なる詳細、及びその低温加工を容易にし得る様々な特性について、以下に説明する。
【0012】
以下でより詳細に説明するように、金属ナノ粒子は、互いに圧密化される際に、バルク金属マトリックスを形成してもよい。金属複合材を形成するために、様々な添加物が、バルク金属マトリックスに含まれてもよい。CTE調整剤は、バルク金属マトリックスのCTEを変化させ得る。例えば、CTE調整剤は、銅ナノ粒子から形成されたバルク金属マトリックスのCTEを、バルク銅に典型的に見られる約17ppmの値と比較して、室温で約11ppmまで、あるいは、場合によっては約3ppmまで低下させてもよい。これらの特徴は、PCBのシステム設計及び組立を大幅に強化し、性能を著しく向上させながら全体的な製品コスト削減を提供し得る。様々なCTE調整剤が銅複合材のCTEをどのように変化させ得るかの例示的な説明が、以下に提供される。
【0013】
ヒートパイプの外側シェルと電子構成部品のセラミック材料との間の改善されたCTEの整合を容易にすることに加えて、金属ナノ粒子組成物はまた、接合層によって、電子構成部品とヒートパイプとの間の直接接着(接合)を促進してもよい。例えば、金属ナノ粒子組成物は、電子構成部品上に適用され、ヒートパイプの外側シェルと接触されてもよく、接合層中の金属ナノ粒子のその後の圧密化は、ヒートパイプの外側表面への直接的な冶金接合を促進してもよい。直接の冶金接合は、熱機械的応力の結果として熱発生電子構成部品とヒートパイプとが互いに分離する可能性を、大幅に減少させる。ヒートパイプの外側シェル及び接合層は、類似の材料から形成されてもよいため、ヒートパイプが電子構成部品に接触する際の熱機械的応力から生じるCTEの不整合及び分離の可能性が、やはり少ない。大きな電子構成部品サイズ及び高い動作温度(例えば、約350℃まで)では、小さなCTE差であっても、高い熱機械的応力値をもたらす場合があり、剥離及び最終的なデバイス故障につながる場合がある。本開示は、この困難を軽減し得る。
【0014】
圧密化された金属ナノ粒子から形成されるヒートパイプの接合層及び/又は外側シェルを有することによってもたらされる更なる利点は、金属ナノ粒子の圧密化後に得られる金属マトリックス中の多孔率である。金属マトリックス中の多孔率は、接合層及び/又は外側シェルに可撓性を付与し得るが、これは、依然として存在したままのいずれかのCTEの不整合から生じる熱機械的応力に対する耐性の強化を促進し得る。
【0015】
更に、本開示によって提供される依然として更なる利点は、CTE調整剤を含有する金属複合材が、様々な設計のヒートパイプに適用可能であり得ることである。特に、銅複合材などの金属複合材は、ヒートパイプの第1の端部(高温端)と第2の端部(低温端)との間でヒートパイプの内部内に延在するウィッキング構造を有する従来のヒートパイプと、ヒートパイプの内側表面上に画定された流路を備えるループ内で作動流体が移動する振動ヒートパイプと、の両方を形成するために利用されてもよい。動作上の考慮事項に応じて、ループは開いていても閉じていてもよい。流路を収容する構造はまた、本明細書の開示における出発材料として、金属ナノ粒子から形成されてもよい。
【0016】
本開示のヒートパイプは、熱発生構成部品が熱放散を問題にするプリント回路基板及び類似のアーキテクチャと併せて、利用されてもよい。熱発生構成部品は、PCB内の様々な位置に位置付けられてもよい。例えば、熱放散を必要とする位置は、プリント回路基板の前面上に配置され、PCBの非導電性基板から離れる方向に向けられた熱発生構成部品内に、熱発生構成部品の1つ以上の側面上に、又は熱発生構成部品の下側に存在してもよい。最初の2つの場合では、ヒートパイプは、熱放散を必要とする位置に直接接触してもよい(例えば、PCBの前面上又は所与のPCB層の前面上に直接接触してもよいが、一方で、後者の場合、ヒートパイプは、電気絶縁基板を通って更に延在することによって、熱放散を必要とする位置の下側に接触してもよい)。熱発生構成部品との側面接触の場合、1つ以上のヒートパイプは、所与のPCB層にわたって横方向に延在してもよい。集合的に、ヒートパイプを熱発生構成部品に接続するためのこれらの構成は、複数のPCB層を互いに積み重ねることを容易にするために、利用されてもよい。ヒートパイプを電子構成部品に接続するための構成の任意の組み合わせを、多層PCB内で利用して、そこからの熱放散を促進してもよい。更に、いくつかの積層構成では、振動ヒートパイプは、隣接するPCB層の間に配置されてもよく、ウィッキングヒートパイプは、積層されたPCB層の最も外側(上部又は下部)に配置されてもよい。ヒートパイプは、液体リザーバ、ラジエータ、又はヒートシンクとして機能する類似の構造などの、過剰な熱を排出するための構造(又は配置)と熱連通していてもよい。
【0017】
同様に、AlN又はSiNなどの電気絶縁性であるが高熱伝導性の基板上に収容された熱発生構成部品の場合、本開示のヒートパイプは、基板のいずれかの面上に配置されてもよいか、又は基板内の内部に配置されてもよい。ここでも、効率的な熱伝達と、熱除去を必要とする位置へのヒートパイプの強固な接続と、が実現されてもよい。場合によっては、AlN又はSiNは、電気絶縁基板の表面上に薄膜(例えば、約300マイクロメートル~約500マイクロメートルの厚さ)として堆積されて、そこへと熱伝導性を伝達してもよい。比較的薄い層は、熱をヒートパイプに伝達する際の熱抵抗を制限してもよい。熱発生構成部品がどのように位置付けられ得るか、及びヒートパイプがどのように熱発生構成部品に接続され得るか、に関する更なる詳細が、本明細書で提供される。あるいは、電気絶縁性であるが熱伝導性の基板が使用される場合、ヒートパイプは、熱発生構成部品に直接接触するのではなく、基板上に存在してもよく、それによって、熱伝導性基板を介して熱発生構成部品から過剰な熱を受容する。
【0018】
更にその他の実施例では、基板と関連付けられていない熱発生構成部品は、本開示のヒートパイプと直接接触してもよく、その場合、少なくとも部分的に、圧密化された金属ナノ粒子から形成された中間層が、ヒートパイプと熱発生構成部品との間に存在してもよい。中間層は、ヒートパイプと熱発生構成部品との間の電気的絶縁を提供してもよい。例えば、薄いAlN膜が、金属ナノ粒子から形成された第1の接合層によって熱発生構成部品に接合され、金属ナノ粒子から形成された第2の接合層によってヒートパイプに接合されてもよく、AlN膜は、ヒートパイプと熱発生構成部品との間の電気的絶縁を提供する。CTEの整合は、これらの場合のいずれにおいても達成され得る。
【0019】
金属ナノ粒子は、本明細書の開示によるヒートパイプの少なくとも一部を形成するために、並びにヒートパイプと熱発生構成部品との間に接合層を形成するために、独自に適格である。これらの機能は両方とも、金属ナノ粒子を圧密化して、金属複合材(例えば、CTE調整剤を含む銅複合材)中に、バルク金属(例えば、バルク銅)を形成するために必要な、適度な加工条件の結果として、促進されてもよい。以下に更に詳細に記載されるように、金属ナノ粒子は、金属自体の融点よりも著しく低い、ある範囲の穏やかな加工条件下で、対応するバルク金属へと一緒に圧密化(融合)されてもよい。銅の高い熱伝導率及び比較的低いコストに起因して、銅ナノ粒子は、本開示の様々な実施形態において使用するために、特に望ましい種類の金属ナノ粒子であり得る。金属ナノ粒子は、CTE調整剤と組み合わされてバルク金属へと圧密化された場合に、十分に分散した複合材を効果的に形成してもよい。好適なCTE調整剤としては、例えば、炭素繊維、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン、W及び/又はMo(モリブデン)粒子、並びにこれらの任意の組み合わせを挙げてもよい。W及び/又はMo粒子はまた、追加の利点として、銅に耐酸化性を付与し得る。ヒートパイプ内のCTEの整合を促進することに加えて、CTE調整剤及びマイクロメートルサイズの金属粒子は、その他の金属ナノ粒子系においてさもなければ20%を超え得る金属ナノ粒子の圧密化中の収縮を、制限し得る。制限された収縮は、動作中の高温-低温サイクル中に受ける熱機械的応力を、更に緩和し得る。
【0020】
前述の利点に加えて、金属ナノ粒子は、そこから熱を放散するための更に強化された構造を有するヒートパイプの製造を容易にし得る。例えば、金属ナノ粒子から形成された外側シェル内にウィッキング構造を有するヒートパイプは、ヒートパイプの端部分(低温端)から延在する複数の熱伝導性繊維(例えば、金属繊維、セラミック繊維、炭素繊維等)を、更に含んでもよい。熱伝導性繊維は、熱放散のための大きな表面積を提供することによって、周囲雰囲気、海洋環境(例えば、海、湖、若しくは川の水)、又は宇宙用途のためのラジエータなど、ヒートシンクへの過剰な熱の容易な放散を促進し得る。熱伝導性繊維は、以下に記載されるように、CTEの整合を容易にするために有効な金属ナノ粒子組成物を使用して、ヒートパイプに結合されてもよい。熱伝導性繊維の結合は、ヒートパイプの少なくとも一部を形成するために行われる金属ナノ粒子の圧密化に先立って、熱伝導性繊維を好適な金属ナノ粒子ペースト組成物に組み込むことなどによって、別個の結合工程なしに、ヒートパイプの製造中に達成されてもよい。なお、熱伝導性繊維は、必要に応じて、ヒートパイプの内部空間(空洞)内へと延在して、その内部の作動流体との熱連通の強化を促進してもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「金属ナノ粒子」という用語は、金属粒子の形状に特に言及することなく、サイズが約200nm以下である金属粒子を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「マイクロメートルスケールの金属粒子」という用語は、少なくとも1つの寸法において、約200nm以上のサイズである金属粒子を指す。
【0023】
「圧密化する(consolidate)」、「圧密化(consolidation)」という用語及びその他の変形は、本明細書において、「融合する(fuse)」、「融合(fusion)」という用語及びその他の変形と、互換的に使用される。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「部分的に融合された(partially fused)」、「部分的融合(partial fusion)」という用語、並びにその他の派生語及び文法上のそれらの等価物は、金属ナノ粒子同士の部分的な合体を指す。全体的に融合した金属ナノ粒子は、元の融合していない金属ナノ粒子の最小限の構造的形態のみを保持する(すなわち、それらは、高密度バルク金属に似ているが、100~500nmの範囲の粒界を有する)が、部分的に融合した金属ナノ粒子は、元の融合していない金属ナノ粒子の構造的形態の少なくともいくつか、例えば、より高いレベルの多孔率、より小さい平均粒径、及びより多数の粒界を保持する。部分的に融合した金属ナノ粒子の特性は、対応するバルク金属の特性と、元の融合していない金属ナノ粒子の特性と、の間の、中間であり得る。いくつかの実施形態では、十分に緻密な(非多孔質の)バルク金属は、金属複合材を得るための金属ナノ粒子圧密後に得られ得る。その他の実施形態では、金属複合材は、完全な緻密化を超える量(すなわち、>0%の多孔率)で、約10%未満の多孔率、又は約20%未満の多孔率、又は約30%未満の多孔率を有してもよい。したがって、特定の実施形態では、金属複合材は、約2%~約30%、又は約2%~約5%、又は約5%~約10%、又は約10%~約15%、又は約15%~約20%、又は約20%~約25%、又は約25%~約30%の範囲の多孔率を有してもよい。上述したように、多孔率は、熱機械的応力に対する耐性を強化し得る。
【0025】
本開示のより特定の態様を更に詳細に説明する前に、金属ナノ粒子及びそれらの加工条件、特に銅ナノ粒子の追加の簡単な説明を、最初に提供する。金属ナノ粒子は、対応するバルク金属の特性とは著しく異なり得る、多くの特性を示す。本明細書の開示による加工のために特に重要であり得る金属ナノ粒子の1つの特性は、金属ナノ粒子の融解温度で発生するナノ粒子融合(圧密化)である。本明細書で使用される場合、「融解温度」という用語は、金属ナノ粒子が液化し、それによって、溶融の外観を所与する温度を指す。本明細書で使用される場合、「融合」及び「圧密化」という用語は、同義的に、金属ナノ粒子が互いに合体又は部分的に合体して、ヒートパイプの外側シェルを画定するバルク金属又はヒートパイプに接触する接合層などのより大きな塊を形成することを指す。融解温度は、対応するバルク金属の融点よりも80%程低くてもよい。したがって、融解温度を超えて加熱し、その後冷却した後に、金属ナノ粒子間に、少なくとも部分的な接続性が存在する。金属ナノ粒子の圧密化に続いて、得られるナノ多孔性は、ヒートパイプの気密封止を依然として維持しながら、加熱及び冷却のサイクル中に発生する熱応力に適応してもよい。
【0026】
サイズが減少すると、特に等価球直径が約20nm未満になると、金属ナノ粒子が液化する温度は、対応するバルク金属の温度から劇的に低下する。例えば、約20nm以下のサイズを有する銅ナノ粒子は、バルク銅の融点である1083℃と比較して、約235℃以下、又は約220℃以下、又は約200℃以下の融解温度を有し得る。したがって、融解温度で行われる金属ナノ粒子の圧密化は、バルク金属自体を出発材料として直接加工する場合よりも著しく低い加工温度でバルク金属を含有する構造体を製造することを、可能にし得る。金属ナノ粒子を圧密化するための加工条件は、典型的には、約375°F、あるいは最大約450°F、及び275~400psiの通常のPCB製造パラメータの範囲内であるが、圧力は、金属ナノ粒子の融合が起こるために必ずしも必要ではない。金属ナノ粒子の圧密化を促進する場合に圧力を印加することによって、より高密度のバルク金属を得てもよい。例えば、銅ナノ粒子の場合、融解温度は、一般的に使用されるPCB基板が溶融又は変形を受ける温度よりも低い。したがって、銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子は、PCB内の熱発生構成部品に接続されるヒートパイプ又は接合層内にバルク金属を形成するための、容易な材料を提供する。
【0027】
大量の金属ナノ粒子を目標サイズ範囲で生成するための多数の秤量可能なプロセスが、開発されてきた。最も典型的には、金属ナノ粒子を生成するためのこのようなプロセスは、1つ以上の界面活性剤の存在下で、金属前駆体を還元することによって、行われる。次に、金属ナノ粒子を、一般的な単離技術によって反応混合物から単離及び精製し、分配に好適な配合物へと加工してもよい。
【0028】
本明細書の開示で使用される金属ナノ粒子を形成するために、任意の適切な技術が用いられ得る。特に容易な金属ナノ粒子生成技術は、米国特許第7,736,414号、同第8,105,414号、同第8,192,866号、同第8,486,305号、同第8,834,747号、同第9,005,483号、同第9,095,898号、及び同第9,700,940号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そこに記載されているように、金属ナノ粒子は、1つ以上の異なる界面活性剤を含み得る好適な界面活性剤系の存在下で、溶媒中で金属塩を還元することによって、狭いサイズ範囲で生成され得る。二峰性サイズ分布を含む金属ナノ粒子の目標サイズ分布は、異なるサイズの金属ナノ粒子を一緒に組み合わせることによって得られてもよい。好適な界面活性剤系の更なる説明を、以下に示す。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、界面活性剤系は、金属ナノ粒子の核生成及び成長を媒介し、金属ナノ粒子の表面酸化を制限し、及び/又は金属ナノ粒子が少なくとも部分的に一緒に融合することに先立って、互いに広範囲に凝集することを阻害し得る、と考えられる。金属塩を可溶化し、金属ナノ粒子を形成するために好適な有機溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルプロピレン尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラヒドロフラン、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、プログリム、又はポリグリムが挙げられ得る。金属塩を還元し、金属ナノ粒子の形成を促進するために好適な還元剤としては、例えば、好適な触媒の存在下でのアルカリ金属(例えば、リチウムナフタリド、ナトリウムナフタリド、又はカリウムナフタリド)、又は水素化ホウ素還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、又は水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウムが挙げられ得る。
【0029】
図1及び図2は、その上に界面活性剤コーティングを有する金属ナノ粒子の、推定される構造の図を示す。図1に示すように、金属ナノ粒子10は、金属コア12と、金属コア12を被覆する界面活性剤層14と、を含む。界面活性剤層14は、以下により詳細に記載されるように、界面活性剤の任意の組み合わせを含有し得る。図2に示される金属ナノ粒子20は、金属コア12が核21の周りに成長することを除いて、図1に示されるものと同様であるが、これは、金属コア12の金属と同じ金属又は異なる金属であり得る。核21は、金属ナノ粒子20中の金属コア12内に深く埋め込まれており、サイズが非常に小さいため、全体的なナノ粒子特性に著しく影響を及ぼすとは考えられない。核21は塩又は金属を含んでもよく、金属は、金属コア12と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、非晶質形態を有してもよい。図1及び図2の金属ナノ粒子10及び20は、実質的に球状であるように示されているが、金属ナノ粒子の少なくとも一部は、形状が非球状であってもよい。
【0030】
上述したように、金属ナノ粒子は、その表面上に1つ以上の界面活性剤を含有する界面活性剤コーティングを有する。界面活性剤コーティングは、金属ナノ粒子の合成中に金属ナノ粒子上に形成され得る。界面活性剤コーティングは、一般に、融解温度を超えて加熱した際の金属ナノ粒子の圧密化中に失われ、その結果、バルク金属が形成されるが、場合により、その内部に均一なナノ多孔性を有する。金属ナノ粒子の合成中に、金属ナノ粒子上に界面活性剤コーティングを形成すると、望ましくは、金属ナノ粒子が互いに時期尚早に融合する能力を制限し、金属ナノ粒子の凝集を制限し、狭いサイズ分布を有する金属ナノ粒子の集団の形成を促進し得る。多孔率値は、圧密化後に約2~30%又は約2~15%の範囲であってもよいが、これは、存在する界面活性剤(複数可)の種類を含む多くの要因に基づいて、調整されてもよい。約2%~約15%のナノ多孔率において、銅複合材は、例えば、約50nm~約500nm、又は約100nm~約300nm、又は約150nm~約250nmの範囲の孔径を有する閉細孔ナノ多孔性を有する、約85%~98%の高密度融合銅ナノ粒子を含んでもよい。
【0031】
本開示の様々な実施形態と併せて使用するために好適な金属ナノ粒子の種類は、特に限定されるとは考えられない。好適な金属ナノ粒子としては、限定されないが、スズナノ粒子、銅ナノ粒子、アルミニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、鉄ナノ粒子、コバルトナノ粒子、ニッケルナノ粒子、チタンナノ粒子、ジルコニウムナノ粒子、ハフニウムナノ粒子、タンタルナノ粒子、モリブデンナノ粒子、タングステンナノ粒子等が挙げられ得る。これらの金属ナノ粒子の組み合わせもまた同様に、使用されてもよい。これらの金属のマイクロメートルスケールの粒子は、同様に、金属ナノ粒子を含有する金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在し得る。銅は、その低コスト、強度、並びに優れた電気伝導率値及び熱伝導率値により、本開示の実施形態において使用するために、特に望ましい金属であり得る。銅ナノ粒子は、その他の種類の金属ナノ粒子及び/又は同様に銅以外の金属を含有するマイクロメートルスケールの金属粒子と組み合わせて、使用されてもよい。
【0032】
様々な実施形態では、金属ナノ粒子内に存在する界面活性剤系は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。様々な界面活性剤の異なる特性を使用して、金属ナノ粒子の特性を調整し得る。金属ナノ粒子上に含めるための界面活性剤又は界面活性剤の組み合わせを選択する場合に考慮に入れ得る要因としては、例えば、ナノ粒子融合中の金属ナノ粒子からの界面活性剤の放散の容易さ、金属ナノ粒子の核生成及び成長速度、金属ナノ粒子の金属構成成分等が挙げられ得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、アミン界面活性剤又はアミン界面活性剤の組み合わせ、特に、脂肪族アミンが、金属ナノ粒子上に存在し得る。アミン界面活性剤は、銅ナノ粒子と共に使用するために、特に望ましくあり得る。いくつかの実施形態では、2種のアミン界面活性剤が互いに組み合わされて使用され得る。その他の実施形態では、3種のアミン界面活性剤が互いに組み合わされて使用され得る。より具体的な実施形態では、第一級アミン、第二級アミン、及びジアミンキレート剤が互いに組み合わされて使用され得る。更により具体的な実施形態では、3種のアミン界面活性剤は、長鎖の第一級アミン、第二級アミン、及び少なくとも1つの第三級アルキル基窒素置換基を有するジアミンを含み得る。好適なアミン界面活性剤に関する更なる開示が、以下に続く。
【0034】
いくつかの実施形態では、界面活性剤系は、第一級アルキルアミンを含み得る。いくつかの実施形態では、第一級アルキルアミンは、C~C18アルキルアミンであり得る。いくつかの実施形態では、第一級アルキルアミンは、C~C10アルキルアミンであり得る。その他の実施形態では、C~C第一級アルキルアミンもまた、使用され得る。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、第一級アルキルアミンの正確なサイズは、合成中に有効な逆ミセル構造を提供するために十分な長さであることと、易揮発性を有すること及び/又はナノ粒子圧密化中の取り扱いの容易さに対することとの間で、バランスが取られ得る。例えば、18個超の炭素を有する第一級アルキルアミンもまた、本実施形態における使用のために好適であり得るが、それらは、それらのワックス特性のために、取り扱いがより困難であり得る。特に、C~C10第一級アルキルアミンは、使用の容易さのための所望の特性の、良好なバランスを表し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、C~C18第一級アルキルアミンは、例えば、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、又はn-デシルアミンであり得る。これらは全て、直鎖状第一級アルキルアミンであるが、その他の実施形態では、分枝鎖状第一級アルキルアミンもまた使用され得る。例えば、7-メチルオクチルアミン、2-メチルオクチルアミン、又は7-メチルノニルアミンなどの分岐鎖状第一級アルキルアミンが使用され得る。いくつかの実施形態では、このような分岐鎖状第一級アルキルアミンは、それらがアミン窒素原子に結合している場合、立体障害され得る。このような立体障害された第一級アルキルアミンの非限定的な実施例としては、例えば、t-オクチルアミン、2-メチルペンタン-2-アミン、2-メチルヘキサン-2-アミン、2-メチルヘプタン-2-アミン、3-エチルオクタン-3-アミン、3-エチルヘプタン-3-アミン、3-エチルヘキサン-3-アミン等が挙げられ得る。追加の分岐もまた、存在し得る。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、第一級アルキルアミンは、金属配位圏において配位子として機能し得るが、金属ナノ粒子の圧密化中に金属配位圏から容易に解離し得る、と考えられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、界面活性剤系は、第二級アミンを含み得る。金属ナノ粒子を形成するために好適な第二級アミンは、アミン窒素原子に結合した直鎖状、分岐鎖状、又は環状のC~C12アルキル基を含み得る。いくつかの実施形態では、分枝は、アミン窒素原子に結合した炭素原子上で生じ得、それによって、窒素原子において有意な立体障害を発生させる。好適な第二級アミンとしては、ジヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジ-t-ペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられ得るが、これらに限定されない。C~C12の範囲外の第二級アミンもまた使用され得るが、このような第二級アミンは、それらの取り扱いを複雑にし得る低沸点又はワックス状粘稠度などの望ましくない物理的特性を有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、界面活性剤系は、キレート剤、特に、ジアミンキレート剤を含み得る。いくつかの実施形態では、ジアミンキレート剤の窒素原子の一方又は両方は、1つ又は2つのアルキル基で置換され得る。2つのアルキル基が同じ窒素原子上に存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。更に、両方の窒素原子が置換されている場合、同じ又は異なるアルキル基が存在し得る。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C~Cアルキル基であり得る。その他の実施形態では、アルキル基は、C~Cアルキル基又はC~Cアルキル基であり得る。いくつかの実施形態では、C以上のアルキル基は、直鎖状であり得るか、又は分岐鎖を有し得る。いくつかの実施形態では、C以上のアルキル基は、環状であり得る。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、ジアミンキレート剤は、ナノ粒子核生成を促進することによって、金属ナノ粒子形成を容易にし得ると考えられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、好適なジアミンキレート剤としては、N,N’-ジアルキルエチレンジアミン、特に、C~CN,N’-ジアルキルエチレンジアミンが挙げられ得る。対応するメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、又はヘキシレンジアミン誘導体もまた、使用され得る。アルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。存在し得るC~Cアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基か、又はイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基などの分岐鎖状アルキル基が挙げられる。金属ナノ粒子上に含めるのに好適であり得る例示的なN,N’-ジアルキルエチレンジアミンとしては、例えば、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、好適なジアミンキレート剤としては、N,N,N’,N’-テトラアルキルエチレンジアミン、特に、C~CN,N,N’,N’-テトラアルキルエチレンジアミンが挙げられ得る。対応するメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、又はヘキシレンジアミン誘導体もまた、使用され得る。アルキル基は、同じであっても異なっていてもよく、前述のものを含む。金属ナノ粒子の形成における使用のために好適であり得る例示的なN,N,N’,N’-テトラアルキルエチレンジアミンとしては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
脂肪族アミン以外の界面活性剤もまた、界面活性剤系中に存在し得る。これに関して、好適な界面活性剤としては、例えば、ピリジン、芳香族アミン、ホスフィン、チオール、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。これらの界面活性剤は、上記のものを含む脂肪族アミンと組み合わせて使用され得るか、又は脂肪族アミンが存在しない界面活性剤系において使用され得る。好適なピリジン、芳香族アミン、ホスフィン、及びチオールに関する更なる開示が、以下に続く。
【0041】
好適な芳香族アミンは、式ArNRを有し得るが、式中、Arは、置換アリール基又は非置換アリール基であり、R及びRは、同じであるか又は異なる。R及びRは、H又は1~約16個の炭素原子を含有するアルキル基若しくはアリール基から、独立して選択され得る。金属ナノ粒子の形成に使用するために好適であり得る例示的な芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、アニシジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等が挙げられる。金属ナノ粒子と共に使用され得るその他の芳香族アミンは、当業者によって想定され得る。
【0042】
好適なピリジンは、ピリジン及びその誘導体の両方を含み得る。金属ナノ粒子上に含めて使用するために好適であり得る例示的なピリジンとしては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、コリジン、ピリダジン等が挙げられる。ビピリジルキレート剤などのキレート化ピリジンもまた、使用されてもよい。金属ナノ粒子と共に使用され得るその他のピリジンは、当業者によって想定され得る。
【0043】
好適なホスフィンは、式PRを有し得るが、式中、Rは、1~約16個の炭素原子を含有するアルキル基又はアリール基である。リン中心に結合したアルキル基又はアリール基は、同じであっても異なっていてもよい。金属ナノ粒子上に存在し得る例示的なホスフィンとしては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。ホスフィンオキシドもまた、同様に使用され得る。いくつかの実施形態では、キレート環を形成するように構成された2つ以上のホスフィン基を含有する界面活性剤もまた、使用され得る。例示的なキレート化ホスフィンとしては、例えば、1,2-ビスホスフィン、1,3-ビスホスフィン、及びBINAPなどのビスホスフィンが挙げられ得る。金属ナノ粒子と共に使用され得るその他のホスフィンは、当業者によって想定され得る。
【0044】
好適なチオールは、RSHの式を有し得るが、式中、Rは、約4~約16個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基である。金属ナノ粒子上に存在し得る例示的なチオールとしては、例えば、ブタンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、ベンゼンチオール等が挙げられる。いくつかの実施形態では、キレート環を形成するように構成された2つ以上のチオール基を含有する界面活性剤もまた、使用され得る。例示的なキレート化チオールとしては、例えば、1,2-ジチオール(例えば、1,2-エタンチオール)及び1,3-ジチオール(例えば、1,3-プロパンチオール)が挙げられ得る。金属ナノ粒子と共に使用され得るその他のチオールは、当業者によって想定され得る。
【0045】
上述のように、金属ナノ粒子の際立った特徴は、それらの低い融解温度であるが、これは、本明細書の開示による金属複合材内にバルク金属を形成するための圧密化を容易にしてもよい。特定の位置へのそれらの堆積を容易にするために、金属ナノ粒子は、ペースト又は類似の配合物に組み込まれてもよい。金属ナノ粒子ペースト組成物及び類似の配合物に関する追加の開示が、以下に続く。
【0046】
金属ナノ粒子ペースト組成物又は類似の配合物は、1種以上の有機溶媒及び様々なその他の任意構成成分を含有する有機マトリックス中に、生成されたままの又は単離されたままの金属ナノ粒子を分散させることによって、調製されてもよい。本明細書中で使用される場合、「ナノ粒子ペースト配合物(nanoparticle paste formulation)」、「ナノ粒子ペースト組成物(nanoparticle paste composition)」という用語及びそれらの文法的等価物は、交換可能に使用され、所望の技術を使用する分配に好適である分散された金属ナノ粒子を含有する流体組成物を同義的に指す。「ペースト(paste)」という用語の使用は、ペースト単独の接着機能を、必ずしも意味しない。有機溶媒(複数可)及びその他の添加剤の賢明な選択、金属ナノ粒子等の充填を通じて、金属ナノ粒子の容易な分配及びバルク金属の形成が、好都合な条件下で実現されてもよい。
【0047】
金属ナノ粒子の圧密化中に、時々、亀裂が発生し得る。本開示のナノ粒子ペーストが、金属ナノ粒子圧密化後の亀裂及び空隙形成の程度の減少を促進し得る1つの方法は、高い固形分含有量を維持することによるものである。より詳細には、いくつかの実施形態では、ペースト組成物は、少なくとも約30重量%の金属ナノ粒子、特に、ペースト組成物の約30重量%~約98重量%の金属ナノ粒子、又はペースト組成物の約50重量%~約95重量%の金属ナノ粒子、又はペースト組成物の約70重量%~約98重量%の金属ナノ粒子を含有し得る。更に、いくつかの実施形態では、少量(例えば、ペースト組成物の約0.01重量%~約15重量%、又は約35重量%、又は約60重量%)のマイクロメートルスケールの粒子、特に、マイクロメートルスケールの金属粒子が、金属ナノ粒子に加えて存在し得る。このようなマイクロメートルスケールの金属粒子は、望ましくは、バルク金属の連続塊への金属ナノ粒子の融合を促進し、亀裂の発生率を更に低減し得る。金属ナノ粒子の場合のように液化されて直接圧密化される代わりに、マイクロメートルスケールの金属粒子は、それらの融解温度を超えて上昇した液化金属ナノ粒子と接触した際に、単に一緒に接合されるようになり得る。これらの要因は、金属ナノ粒子を一緒に融合させた後に生じる多孔性を減少させ得る。マイクロメートルスケールの金属粒子は、金属ナノ粒子と同じ又は異なる金属を含有し得るが、マイクロメートルスケールの金属粒子に好適な金属としては、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、スズ、モリブデン、タングステン等が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールのグラファイト粒子もまた、含まれてもよい。カーボンナノチューブ、炭素繊維、窒化ホウ素、ダイヤモンド粒子、及び/又はグラフェンは、マイクロメートルスケールの粒子として含まれてもよく、いくつかの実施形態では、それらの全てが、本明細書の開示に従ってCTEを調整するためのCTE調整剤として機能してもよい。いくつかの実施形態によれば、炭素質添加剤は、金属ナノ粒子圧密化が行われた後に生じる熱伝導率を増加させてもよい。前述のマイクロメートルスケールの粒子のいずれも、使用中の亀裂の伝播を制限するための亀裂デフレクタとして更に機能し得、それによって、機械的強度を増加させる。
【0048】
有機マトリックスを形成する溶媒(複数可)の賢明な選択によってもまた、金属ナノ粒子圧密化中の亀裂形成及び空隙形成の減少を促進し得る。有機溶媒の調整された組み合わせは、亀裂及び空隙形成の発生率を望ましく減少させ得る。より具体的には、1種以上の炭化水素(飽和、モノ不飽和、ポリ不飽和(2つ以上の二重結合)又は芳香族)、1種以上のアルコール、1種以上のアミン、及び1種以上の有機酸を含有する有機マトリックスが、本目的に特に有効であり得る。いくつかの実施形態では、1種以上のエステル及び/又は1種以上の無水物が含まれてもよい。場合によっては、エタノールアミンなどのアルカノールアミンが存在してもよい。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、有機溶媒のこの組み合わせは、金属ナノ粒子が互いにより容易に融合し得るように、圧密化中に金属ナノ粒子を取り囲む界面活性剤分子の除去及び分離を促進し得ると考えられる。より具体的には、炭化水素溶媒及びアルコール溶媒は、ブラウン運動(Brownian motion)によって金属ナノ粒子から放出された界面活性剤分子を受動的に可溶化し、それらが金属ナノ粒子に再付着する能力を低減し得ると考えられる。界面活性剤分子の受動的可溶化と協調して、アミン及び有機酸溶媒は、界面活性剤分子がもはや金属ナノ粒子との再結合に利用できないように、化学的相互作用を介して、界面活性剤分子を能動的に分離し得る。
【0049】
溶媒組成物の更なる調整は、界面活性剤除去及び金属ナノ粒子圧密化の間に起こる急激な体積収縮を低減するために、実行され得る。具体的には、有機溶媒の各類の2つ以上の員(すなわち、炭化水素、アルコール、アミン、及び有機酸)が、所望により1種以上のアルカノールアミン、エステル、又は無水物と組み合わされて、有機マトリックス中に存在し得るが、各類の員は、設定された程度だけ互いに分離された沸点を有する。例えば、いくつかの実施形態では、各類の様々な員は、互いに約20℃~約50℃離れた沸点を有し得る。このような溶媒混合物を使用することによって、溶媒混合物の様々な成分を、広範囲の沸点(例えば、約50℃~約200℃)にわたって徐々に除去し得るために、金属ナノ粒子の圧密化中に、溶媒の急速な損失に起因する突然の体積変化を最小限に押さえ得る。
【0050】
様々な実施形態では、1種以上の有機溶媒の少なくとも一部は、約100℃以上の沸点を有し得る。その他の様々な実施形態では、1種以上の有機溶媒の少なくとも一部は、約200℃以上の沸点を有し得る。いくつかの又はその他の実施形態では、1種以上の有機溶媒は、約50℃~約200℃、又は約50℃~約250℃、又は約50℃~約300℃、又は約50℃~約350℃の範囲の沸点を有し得る。高沸点有機溶媒の使用は、望ましくは、金属ナノ粒子ペースト組成物の可使時間を増加させ、溶媒の急速な損失を制限し得、そうでなければ、ナノ粒子圧密化中に、亀裂及び空隙形成をもたらし得る。いくつかの実施形態では、有機溶媒のうちの少なくとも1種は、金属ナノ粒子と会合する界面活性剤(複数可)の沸点(複数可)よりも、高い沸点を有し得る。したがって、界面活性剤(複数可)は、有機溶媒(複数可)の除去が行われる前に、蒸発によって金属ナノ粒子から除去され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、有機マトリックスは、1種以上のアルコールを含有し得るが、これは、より特定の実施形態では、C~C12、C~C12、又はC~C12であってもよい。様々な実施形態では、アルコールは、一価アルコール、ジオール、又はトリオールを含み得る。特定の実施形態では、1種以上のグリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール)、アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、トリエタノールアミン等)、又はこれらの任意の組み合わせが存在してもよく、これらは単独で又はその他のアルコールと組み合わせて存在してもよい。いくつかの実施形態では、様々なグリムが1種以上のアルコールと共に存在してもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の炭化水素は、1種以上のアルコールと組み合わせて存在し得る。上述したように、アルコール(及び所望によりグリム及びアルカノールアミン)及び炭化水素溶媒は、界面活性剤がブラウン運動によって金属ナノ粒子から除去される際に、界面活性剤の可溶化を受動的に促進し、金属ナノ粒子とのそれらの再会合を制限し得ると考えられる。更に、炭化水素溶媒及びアルコール溶媒は、金属ナノ粒子とわずかにしか配位しないので、それらは、ナノ粒子配位圏中の置換された界面活性剤を、単純に置換するわけではない。存在し得るアルコール溶媒及び炭化水素溶媒の例示的であるが非限定的な実施例としては、例えば、軽質芳香族石油蒸留物(CAS登録番号64742-95-6)、水素化処理された軽質石油蒸留物(CAS登録番号64742-47-8)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、リグロイン(CAS登録番号68551-17-7、C10~C13アルカンの混合物)、ジイソプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2-プロパノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ヘキサノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、及びテルピネオールが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリケトン溶媒もまた、同様に使用され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、有機マトリックスは、1種以上のアミン及び1種以上の有機酸を含有し得る。いくつかの実施形態では、1種以上のアミン及び1種以上の有機酸は、1種以上の炭化水素及び1種以上のアルコールもまた含む、有機マトリックス中に存在し得る。上述したように、アミン及び有機酸は、炭化水素溶媒及びアルコール溶媒によって受動的に可溶化された界面活性剤を能動的に分離し得、それによって、界面活性剤を、金属ナノ粒子との再会合に利用できなくすると考えられる。したがって、1種以上の炭化水素、1種以上のアルコール、1種以上のアミン、及び1種以上の有機酸の組み合わせを含有する有機溶媒は、金属ナノ粒子の圧密化を促進するための相乗的利益を提供し得る。存在し得るアミン溶媒の例示的であるが非限定的な例としては、例えば、タローアミン(CAS登録番号61790-33-8)、アルキル(C~C18)不飽和アミン(CAS登録番号68037-94-5)、ジ(水素化タロー)アミン(CAS登録番号61789-79-5)、ジアルキル(C~C20)アミン(CAS登録番号68526-63-6)、アルキル(C10~C16)ジメチルアミン(CAS登録番号67700-98-5)、アルキル(C14~C18)ジメチルアミン(CAS登録番号68037-93-4)、ジ水素化タローメチルアミン(CAS登録番号61788-63-4)、及びトリアルキル(C~C12)アミン(CAS登録番号68038-01-7)が挙げられる。ナノ粒子ペースト組成物中に存在し得る有機酸溶媒の例示的であるが非限定的な例としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、オレイン酸、及びリノール酸、が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、有機マトリックスは、2種以上の炭化水素、2種以上のアルコール、所望により2種以上のグリム(グリコールエーテル)、2種以上のアミン、及び2種以上の有機酸を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、有機溶媒の各類は、2つ以上の員、又は3つ以上の員、又は4つ以上の員、又は5つ以上の員、又は6つ以上の員、又は7つ以上の員、又は8つ以上の員、又は9つ以上の員、又は10以上の員を有し得る。更に、有機溶媒の各類における員の数は、同じであっても異なっていてもよい。各類の有機溶媒の複数の員を使用する特定の利点が、以下に記載される。より高い沸点の有機溶媒は、安全性の利点を提供し得る。
【0054】
有機溶媒の各類内で複数の員を使用する1つの特定の利点は、金属ナノ粒子ペースト組成物において広範囲の沸点を提供する能力を含み得る。広い範囲の沸点を提供することによって、有機溶媒は、温度が上昇するにつれて徐々に除去され得る一方で、金属ナノ粒子の圧密化に影響を及ぼし、それによって、体積収縮を制限し、亀裂が発生しにくくなる。このようにして有機溶媒を徐々に除去することによって、狭い沸点範囲を有する単一の溶媒を使用した場合よりも、遅い溶媒除去に影響を与えるために必要な温度制御が少なくて済む。いくつかの実施形態では、有機溶媒の各類内の員は、約50℃~約200℃、又は約50℃~約250℃、又は約100℃~約200℃、又は約100℃~約250℃、又は約150℃~約300℃、又は約150℃~約350℃の範囲の沸点の枠を有してもよい。より特定の実施形態では、各類の有機溶媒の様々な員はそれぞれ、少なくとも約20℃、具体的には、約20℃~約50℃だけ、互いに離れた沸点を有し得る。より具体的には、いくつかの実施形態では、各炭化水素は、有機マトリックス中のその他の炭化水素と約20℃~約50℃異なる沸点を有し得、各アルコールは、有機マトリックス中のその他のアルコールと約20℃~約50℃異なる沸点を有し得、各アミンは、有機マトリックス中のその他のアミンと約20℃~約50℃異なる沸点を有し得、各有機酸は、有機マトリックス中のその他の有機酸と約20℃~約50℃異なる沸点を有し得る。存在する有機溶媒の各類の員が多いほど、沸点間の差は小さくなる。沸点間の差をより小さくすることによって、溶媒除去をより連続的に行い得、それによって、各段階で発生する体積収縮の程度を制限し得る。各類の有機溶媒の4~5種以上が存在する場合(例えば、4種以上の炭化水素、4種以上のアルコール、4種以上のアミン、及び4種以上の有機酸、又は、5種以上の炭化水素、5種以上のアルコール、5種以上のアミン、5種以上の有機酸)、亀裂の程度の低下が発生し得るが、それぞれの沸点が、上記範囲内で互いに離れている。
【0055】
様々な実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物において使用される金属ナノ粒子は、約20nm以下のサイズであり得る。その他の様々な実施形態では、金属ナノ粒子は、最大約75nmのサイズであってもよい。上述したように、このサイズ範囲の金属ナノ粒子は、対応するバルク金属の融解温度よりも著しく低い融解温度を有し、その結果、互いに容易に圧密化を受ける。いくつかの実施形態では、サイズが約20nm以下である金属ナノ粒子は、約220℃以下の融解温度(例えば、約140℃~約220℃の範囲の融解温度)又は約200℃以下の融解温度を有し得るが、これにより、上記の利点が提供され得る。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子の少なくとも一部は、約10nm以下のサイズ、又は約5nm以下のサイズであり得る。より具体的な実施形態では、金属ナノ粒子の少なくとも一部は、約1nmのサイズ~約20nmのサイズ、又は約1nmのサイズ~約10nmのサイズ、又は約1nmのサイズ~約5nmのサイズ、又は約3nmのサイズ~約7nmのサイズ、又は約5nmのサイズ~約20nmのサイズの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、実質的に全ての金属ナノ粒子が、これらのサイズ範囲内に存在し得る。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物において、より大きな金属ナノ粒子が、約20nm以下のサイズの金属ナノ粒子と組み合わせられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、サイズが約1nm~約10nmの範囲の金属ナノ粒子が、サイズが約25nm~約50nmの範囲の金属ナノ粒子、又はサイズが約25nm~約100nmの範囲の金属ナノ粒子、又はサイズが約25nm~約150nmの範囲の金属ナノ粒子と、組み合わせられ得る。更に後述するように、いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの金属粒子及び/又はナノスケールの粒子もまた、金属ナノ粒子ペースト組成物中に含まれ得る。より大きな金属ナノ粒子及びマイクロメートルスケールの金属粒子は、それらのより小さな対照物の低温で液化可能でない場合があるが、それらは、一般的に上述したように、それらの融解温度以上で液化されたより小さな金属ナノ粒子と接触した際に、依然として圧密化され得る。
【0056】
金属ナノ粒子及び有機溶媒に加えて、その他の添加剤もまた、金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在し得る。このような追加の添加剤としては、例えば、レオロジー制御助剤、増粘剤、マイクロメートルスケール導電性添加剤、ナノスケール導電性添加剤、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。化学添加剤もまた、存在し得る。以下に説明するように、マイクロメートルスケールの金属粒子などのマイクロメートルスケール導電性添加剤を含めることは、特に有利であり得る。場合によっては、より効率的な熱伝達を促進し、更に同様にCTEを調整するために、ナノスケール又はマイクロメートルスケールのダイヤモンド又はその他の熱伝導性添加剤を含むことが、望ましい場合がある。マイクロメートルスケールサイズの範囲又はナノスケールサイズの範囲であってもよい好適なCTE調整剤としては、炭素繊維、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物は、約0.01重量%~約15重量%のマイクロメートルスケールの金属粒子、又は約1重量%~約10重量%のマイクロメートルスケールの金属粒子、又は約1重量%~約5重量%のマイクロメートルスケールの金属粒子、又は約0.1重量%~約35重量%のマイクロメートルスケールの金属粒子を含有し得る。金属ナノ粒子ペースト組成物中にマイクロメートルスケールの金属粒子を含めることにより、バルク金属を形成する場合に金属ナノ粒子の圧密化中に発生する亀裂の発生率を、望ましく低減し得る。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、マイクロメートルスケールの金属粒子は、金属ナノ粒子が液化され、マイクロメートルスケールの金属粒子の表面上に過渡的な液体コーティングを形成するにつれて、互いに圧密化され得ると考えられる。いくつかの実施形態では、ミクロンスケールの金属粒子は、少なくとも1つの寸法において約500nm~約100ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約500nm~約10ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約100nm~約5ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約100nm~約10ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約100nm~約1ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約1ミクロン~約10ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約5ミクロン~約10ミクロンのサイズ、又は少なくとも1つの寸法において約1ミクロン~約100ミクロンのサイズの範囲であり得る。マイクロメートルスケールの金属粒子は、金属ナノ粒子と同じ金属を含有し得るか、又は異なる金属を含有し得る。したがって、銅ナノ粒子とCTE調整剤とを互いに組み合わせることによって、所望により、マイクロメートルスケールの銅粒子と更に組み合わせることによって、本開示において銅複合材を形成してもよい。同様に、金属ナノ粒子の金属とは異なる金属を有するペースト組成物中に、マイクロメートルスケールの金属粒子を含めることによって、金属合金が製造され得る。金属合金はまた、異なる種類の金属ナノ粒子を互いに組み合わせることによって、形成されてもよい。好適なマイクロメートルスケールの金属粒子としては、例えば、Cu、Ni、Al、Fe、Co、Mo、W、Ag、Zn、Sn、Au、Pd、Pt、Ru、Mn、Cr、Ti、V、Mg又はCaの粒子が挙げられ得る。例えば、Si、B、及びCの系のマイクロメートルスケールの粒子などの非金属粒子が、同様に使用され得る。いくつかの実施形態では、マイクロメートルスケールの金属粒子は、例えば、高アスペクト比の銅フレークなどの金属フレークの形態であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される金属ナノ粒子ペースト組成物は、銅ナノ粒子と高アスペクト比の銅フレーク又は別の種類のマイクロメートルスケール銅粒子と、の混合物を、CTE調整剤と組み合わせて、含有し得る。具体的には、いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物は、約30重量%~約90重量%の銅ナノ粒子、及び約0.01重量%~約15重量%、又は1重量%~35重量%の、高アスペクト比の銅フレークを、含有し得る。
【0058】
高アスペクト比の金属フレークと同等に使用され得るその他のマイクロメートルスケールの金属粒子としては、例えば、金属ナノワイヤ及びその他の高アスペクト比の粒子が挙げられるが、これらは、最大約300マイクロメートルの長さであり得る。金属ナノ粒子対金属ナノワイヤの比は、様々な実施形態によれば、約10:1~約40:1の範囲であってもよい。好適なナノワイヤは、例えば、約5マイクロメートル~約50マイクロメートルの長さ、及び約100nm~約200nmの直径を有してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、ナノスケール導電性添加剤もまた、金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在し得る。これらの添加剤は、望ましくは、更なる構造的安定化を提供し、金属ナノ粒子の圧密化中の収縮を低減し得る。更に、ナノスケール導電性添加剤の包含は、ナノ粒子圧密化後の対応するバルク金属のものに近づくか又はそれを超え得る電気伝導率値及び熱伝導率値を増加させ得るが、これは、本明細書の開示による熱伝達を促進するために望ましくあり得る。ナノスケール導電性添加剤は、約5nm~約500nm、又は約10nm~約200nmの範囲の少なくとも1つの寸法などの、ナノスケール寸法の少なくとも1つのサイズを示し得る。いくつかの実施形態では、ナノスケール導電性添加剤は、少なくとも1つの寸法において、約1マイクロメートル~約50マイクロメートルの範囲、又は約50マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲、又は約100マイクロメートル~約300マイクロメートルの範囲のサイズを更に有し得る。好適なナノスケール導電性添加剤としては、例えば、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、グラフェン、ナノダイヤモンド、ナノグラファイト等が挙げられ得るが、これらのいずれも、CTE調整剤として機能してもよい。存在する場合、金属ナノ粒子ペースト組成物は、約1重量%~約20重量%、若しくは約1重量%~約10重量%のナノスケール導電性添加剤、又は約1重量%~約5重量%のナノスケール導電性添加剤、又は約5重量%~約15重量%のナノスケール導電性添加剤を含有し得る。
【0060】
金属ナノ粒子ペースト組成物中にも所望により存在し得る追加の物質としては、例えば、難燃剤、UV保護剤、酸化防止剤、カーボンブラック、グラファイト、繊維材料(例えば、細断された炭素繊維材料)、ダイヤモンド等が挙げられる。
【0061】
いくつかのより具体的な実施形態では、好適なナノ粒子ペースト組成物は、ダイヤモンド粒子を更に含んでもよい。ダイヤモンド粒子の好適なサイズは、金属ナノ粒子ペースト組成物の分散性が損なわれないように十分に小さいままでありながら、熱伝達中にフォノンによって横切られる必要がある粒界を制限するために、可能な限り大きいサイズであってもよい。
【0062】
更により具体的な実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物における使用に好適なダイヤモンド粒子は、約1マイクロメートル~約1000マイクロメートル、又は約0.5マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲のサイズを有してもよく、これは、良好な粒子分散及び許容可能なペースト分散性を提供し得る。約200マイクロメートル~約250マイクロメートル、又は約1マイクロメートル~約10マイクロメートルの範囲のサイズを有するダイヤモンド粒子は、有効な分散を提供することと、フォノン散乱を抑制するための最小化された粒界と、の間の良好な妥協を表し得る。ダイヤモンド粒子のその他の好適なサイズ範囲は、約25マイクロメートル~約150マイクロメートル、又は約50マイクロメートル~約250マイクロメートル、又は約100マイクロメートル~約250マイクロメートル、又は約100マイクロメートル~約200マイクロメートル、又は約150マイクロメートル~約250マイクロメートル、又は約1マイクロメートル~約100マイクロメートル、又は約10マイクロメートル~約50マイクロメートル、又は約5マイクロメートル~約25マイクロメートルの範囲であり得る。
【0063】
例示的な実施形態では、複合材は、金属ナノ粒子の圧密化が行われて、モノリシック金属体(CTE調整剤を含有する銅複合材などの金属複合材)を形成した後に、約10体積%~約75体積%のダイヤモンド粒子を含み得る。その他の導電性粒子が、類似の組成範囲で存在してもよい。
【0064】
銅ナノ粒子とダイヤモンド粒子とを混合して銅複合材を形成することは、いくつかの理由で望ましい場合がある。銅は、ほとんどのその他の金属と比較してコストが低く、ダイヤモンドと比較的良好にインピーダンス整合し、それ自体で高い熱伝導率を有する。いくつかの実施形態では、インピーダンス整合は、ダイヤモンド粒子上に炭化物の薄層(単一原子から<10nm厚の層)を形成するために、炭化物形成添加剤を含めることによって、更に改善され得る。このように、銅ナノ粒子とダイヤモンド粒子との組み合わせは、本開示の様々な実施形態では、非常に効果的な熱伝達を提供し得る。様々な基板層間の電子通信を確立するために、銅は、高い導電性もまた提供する。利用される特定の組成物に応じて、例えば、非導電性添加剤の量に起因してなどで、導電率は、約30~50%のIACS、又は約35~60%のIACS、又は約50~75%のIACS、又は約55~90%のIACS、又は約60~98%のIACS(International Annealed Copper Standard、国際軟銅規格)であってもよい。
【0065】
本開示における使用に好適なナノ粒子ペースト組成物は、上記の開示のいずれかに従って、配合され得る。いくつかの実施形態によれば、複数の金属が、金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在してもよい。いくつかの又はその他の実施形態では、好適な金属ナノ粒子ペースト組成物は、金属ナノ粒子と、その他のナノサイズ粒子(すなわち、約200nm以下の寸法を有する粒子)、及び/又はマイクロメートルスケールの金属粒子を含むマイクロメートルスケールの粒子と、の混合物を、含み得る。金属ナノ粒子ペースト組成物は、より具体的な実施形態によれば、銅ナノ粒子を含んでもよい。
【0066】
様々なヒートパイプ及びヒートパイプを利用するプリント回路基板は、少なくとも部分的に、銅ナノ粒子及び銅ナノ粒子ペースト組成物から形成されてもよい。熱発生構成部品内のいくつかのセラミック材料へのCTEの整合を容易にするために必要とされ得るように、代替の金属ナノ粒子を利用して、異なる金属を含むヒートパイプを形成してもよいことを理解されたい。したがって、以下に続く本開示における銅又は銅ナノ粒子を利用する任意の実施形態は、用途特有の必要性に応じて、代替の金属又は金属ナノ粒子を利用してもよいことを理解されたい。
【0067】
本開示のヒートパイプは、CTE調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルと、封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を有する構造を含んでもよい。作動流体は、ヒートパイプの内部空間内を自由に移動してもよいか、又は作動流体が移動し得る画定されたチャネルが存在してもよい。様々なヒートパイプ構成が、図面を参照して以下に説明される。ウィッキング及び振動ヒートパイプ構成の両方が、本明細書の開示において企図される。すなわち、本開示のヒートパイプは、封止された外側シェルと中空コアとの間に介在するウィッキング構造を備えてもよいか、又は流路が封止された外側シェルの表面上に画定されてもよい。
【0068】
様々な実施形態では、銅複合材は、銅ナノ粒子を、マイクロメートルサイズの銅粒子及びCTE調整剤で圧密化することによって、形成されてもよい。銅ナノ粒子、マイクロメートルサイズ銅粒子、及びCTE調整剤は、上記でより詳細に説明したように、銅ナノ粒子ペースト組成物を定義してもよい。いくつかの実施形態では、好適な銅ナノ粒子ペースト組成物は、約30重量%~約60重量%の銅ナノ粒子、又は約5重量%~約50重量%のマイクロメートルサイズの銅粒子と、特定のCTEを目標とするための有効量のCTE調整剤と、を含んでもよい。CTE調整剤は、約1重量%~約35重量%、又は約4重量%~約8重量%、又は約5重量%~約15重量%、又は約10重量%~約20重量%の範囲の量で、存在してもよい。銅複合材において特定のCTE値を達成するために、特定のCTE調整剤及びその量を選択する方法の例示的なガイダンスが、以下に提供される。マイクロメートルサイズの銅粒子は、いくつかの実施形態では、省略されてもよい。
【0069】
好適なCTE調整剤としては、限定されないが、ダイヤモンド粒子、グラファイト/ピッチ系炭素繊維(例えば、約10マイクロメートルの直径を有する)、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素粒子、炭化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられてもよい。例えば、炭素系添加剤は、約16体積%で添加された場合、約2~3ppmの熱膨張を達成し得、約9体積%で添加された場合、約7ppmの熱膨張を達成し得、約11体積%で添加された場合、約6ppmの熱膨張を達成し得る。
【0070】
約45体積%のダイヤモンドを添加すると、密度(82%)に応じて、約5~6ppmの熱膨張を達成し得る。約37体積%の負荷及び93%の密度において、ダイヤモンドによって提供される熱膨張は、約6ppmであってもよい。約50体積%を超えるダイヤモンド添加量では、熱膨張は約5ppm未満に低下する。
【0071】
圧密化された銅ナノ粒子自体は、加工条件及び密度に依存して、約7~12ppmの熱膨張を示す。密度が増加すると、熱膨張は、バルク銅の熱膨張(17ppm)に近づく。約91%の密度では、熱膨張は約7~8ppmであり、約93%の密度では、熱膨張は約10~11ppmに増加する。約98%の密度では、熱膨張は約12ppmに達する。このような高密度値であっても、熱膨張は依然としてバルク銅の値未満であるが、これは、銅ナノ粒子の圧密化後に存在するナノ多孔率から生じると、推定される。
【0072】
金属ナノ粒子(例えば、同ナノ粒子)へのマイクロメートルスケールの金属粒子の添加は、熱膨張を増加させて、特定の金属に応じて17ppm以上に達し得る。例えば、約23~24ppmのバルクCTEを有するAl粒子の添加は、得られる複合材のCTEを、バルク銅のCTEを超える値へと、増加させ得る。約55%のマイクロメートルスケール銅粉末の添加は、96%の密度で、約14ppmの熱膨張をもたらす。
【0073】
カーボンナノチューブは、銅の熱伝導率を、バルク銅単独の場合の低い400s W/m・Kの値から約600W/m・Kまで増加させてもよい。カーボンナノチューブを用いて達成可能な熱伝導率変更の程度は、カーボンナノチューブの長さに依存する場合があり、より長いカーボンナノチューブは、約600W/m・Kの熱伝導率値を超える。このような熱伝導率の変更は、上述したように、CTEの変更と共に行われてもよい。
【0074】
表面改質剤が存在しない場合、好適なCTE調整剤は、熱伝導率を、バルク銅の約400W/m・Kの初期値から、再び多孔率に応じて約150W/m・Kの値に低下させてもよい。熱伝導率の低下は、例えば、マイクロメートルスケールの金属粒子又はダイヤモンド粒子などの金属粉末を含めることによって、少なくともある程度相殺されてもよい。約25体積%のダイヤモンドでは、銅-ダイヤモンド複合材の熱伝導率は、約240W/m・Kであってもよい。銅-ダイヤモンド複合材中に湿潤剤を含むことによって、1000W/m・Kを超える熱伝導率が、50体積%のダイヤモンド充填量で達成されてもよい。約10体積%の炭素質添加剤の充填量で、約300W/m・Kの熱伝導率が達成され得る。したがって、本開示は、強固な熱伝達を促進するために、銅複合材のCTEと熱伝導率とのバランスをとることを容易にしてもよい。
【0075】
好適な作動流体は、特に限定されるとは考えられず、ヒートパイプ内の第1の位置から第2の位置へと、熱を効果的に伝達し得る、任意の液体を含んでもよい。好適な作動流体の更なる特徴は、ヒートパイプの内側表面を画定する材料(複数可)の適合性を含んでもよい。好適な作動流体としては、液体ヘリウム、液体アンモニア、液体窒素、水、メタノール、エタノール、水銀、液体ナトリウム、液体インジウム、グリコール(例えば、エチレングリコール又はグリコール-水混合物)等が挙げられてもよいが、これらに限定されない。フルオロカーボン冷媒もまた、使用されてもよい。予想される動作温度範囲は、ヒートパイプに含めるための所与の作動流体の適合性を決定してもよい。より具体的な実施例では、作動流体は、予想される動作温度下で(ヒートパイプの高温端で)気化を受け、(ヒートパイプの低温端で)凝縮を受けるように、選択されてもよい。
【0076】
図3Aは、中空コアに隣接するウィッキング構造を備える、例示的なヒートパイプの断面図である。ヒートパイプ300は、ウィッキング構造304に隣接し、所望によりウィッキング構造304内へと貫入する、封止された外側シェル302を含む。封止された外側シェル302は、本明細書の開示におけるCTE調整剤を含む銅複合材から形成されるが、銅複合材は、複数の銅ナノ粒子の圧密化の際に形成されてもよい。端部310及び端部312は、同様に銅複合材で末端保護(封止)されてもよく、それによって、中空コア306内に作動流体(図示せず)を封止する。図3Aからは明らかではないが、端部310及び端部312における銅複合材は、少なくとも部分的に、中空コア306に衝突する場合がある。以下に説明するように、端部310及び端部312を封止するその他の技術もまた、可能である。ウィッキング構造304は、中空コア306と封止された外側シェル302との間に挿入され、中空コア306内に収容された作動流体と接触してもよい。作動流体(図示せず)は、中空コア306内で、高温端(例えば、熱発生構成部品と熱的に接触しているヒートパイプ300の端部)から、低温端(例えば、周囲雰囲気、海洋環境、又は外部空間へのラジエータなどのヒートシンクと熱連通しているヒートパイプ300の端部)へと、移動する。作動流体の気化は高温端で発生し、続いて、潜熱の放出時に低温端で作動流体の凝縮が発生する場合がある。作動流体蒸気が低温端で凝縮した後、凝縮した作動流体は、更なる熱伝達を容易にするために、ヒートパイプ300の設計に応じて重力の補助を受けて、又は受けずに、ウィッキング構造304を介して高温端へと移動して戻ってもよい。金属ナノ粒子を使用してヒートパイプ300を構築するための詳細が、以下に提供される。
【0077】
様々な実施形態では、ウィッキング構造304は、発泡体、金属メッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを備えてもよい。好適な発泡体としては、例えば、Al発泡体、SiC発泡体、Cu発泡体等を挙げてもよく、これらのいずれも、網状発泡体であってもよい。好適な発泡体は、連続気泡網状発泡体、スポンジ様、又は類似の構造であってもよい。図3Bは、金属メッシュの又は発泡体のウィッキング構造を備える、例示的なヒートパイプの切断端面図を示す写真である。図3Bのヒートパイプは、熱源とヒートシンクとの間の特定の位置への配置を容易にするために、部分的に平坦化されている。図3Cは、ウィッキング構造として溝を備える例示的なヒートパイプの切断端面図を示す図である。大きく丸みを帯びた構成で示されているが、図3Cのヒートパイプは、代替的に、図3Bに示されるヒートパイプのように、少なくとも部分的に平坦であってもよいか、又は別の幾何学的形状であってもよい。
【0078】
ヒートパイプ300又は類似のヒートパイプは、管状形態のウィッキング構造304を提供し、銅ナノ粒子ペースト組成物を、ウィッキング構造304の外側部分内に、数マイクロメートルの深さで貫入させることによって、形成されてもよい。非限定的な実施例では、貫入深さは、約100マイクロメートル以下、又は約75マイクロメートル以下、又は約50マイクロメートル以下、又は約25マイクロメートル以下、例えば、約10マイクロメートル~約50マイクロメートル、又は約25マイクロメートル~約75マイクロメートル、又は約50マイクロメートル~約100マイクロメートルであってもよい。銅ナノ粒子ペースト組成物の層は、管状形態の外側表面上に残る場合があるが、これはまた、ウィッキング構造304内に貫入された銅ナノ粒子ペースト組成物と隣接している。銅ナノ粒子の圧密化の際に、封止された外側シェル302は、管状形態上に形成されてもよく、所望により、管状形態内へと少なくとも部分的に貫入してもよい。ウィッキング構造304は、ヒートパイプ300の内部で作動流体と接触するために好適な細長い管状形態を与える任意の連続の又はほぼ連続の製造ライン(例えば、連続押出プロセス)によって、提供されてもよい。ウィッキング構造304上及びその内部への銅ナノ粒子ペースト組成物の貫入は、細長い管状形態の製造と併せて行われてもよいか、又は貫入は、1つ以上の加工操作において、別々に行われてもよい。なお、ウィッキング構造304の外側表面は、ヒートパイプ300の気密封止を確実にするために、銅ナノ粒子の圧密化に続いて、更に電気メッキされてもよい。ウィッキング構造304の多孔率、銅ナノ粒子ペースト組成物中の粒子充填量及びその密度、銅ナノ粒子ペースト組成物の適用技術等は、銅ナノ粒子ペースト組成物がウィッキング構造304内へと貫入する深さ、並びに得られる封止された外側シェル302の厚さに、影響を与える場合がある。例示的な実施形態では、ウィッキング構造304の上及び内部への銅ナノ粒子ペースト組成物の組み込みは、細長い管状形態の外側表面上に銅ナノ粒子ペースト組成物を展延させるか若しくは適用することによって、又はその上に銅ナノ粒子ペースト組成物を射出成形若しくは熱圧プレスすることによって、行われてもよい。銅ナノ粒子ペースト組成物の適用に続いて、ウィッキング構造304は、銅ナノ粒子の圧密化を促進する条件に曝露されてもよい。例えば、様々な実施形態によれば、銅ナノ粒子は、融解温度以上に加熱されてもよいか、又は圧力が印加されてもよい。
【0079】
非限定的な例では、銅ナノ粒子ペースト組成物は、ペースト組成物を構造内へと押し込む円錐形状を有するオリフィス部を通してウィッキング構造304を供給することなどによって、ドクターブレードのような手法を使用して、連続プロセスでウィッキング構造304に適用されてもよい。貫入の深さは、ペースト組成物の粘度及び密度、並びにCTE調整剤及び熱伝導性添加剤のサイズ及び量によって、制御されてもよい。いずれかの成分のより高い充填量は、貫入深さを減少させてもよい。次に、ウィッキング構造304は、クランプシェルを使用して圧力下に置かれるか、又はカプトン(KAPTON)若しくは220~240℃の加工温度を扱い得るその他の市販の収縮包装材料のような好適な材料で、包まれる。その後、銅ナノ粒子の薄層を適用して、残りの細孔又は空隙を閉鎖してもよい。本工程のために、圧力は必要ではないが、所望であれば、類似の方法で再び使用し得る。最後に、得られた細長い構造体を電気メッキして、存在し得る最後の細孔又は空隙を閉鎖し、滑らかな表面仕上げを提供し得る。最終構造体では、全ての層が互いに融合した固体壁構造体が得られる。
【0080】
金属ナノ粒子の圧密化は、封止された外側シェル302を提供するために、ウィッキング構造304の少なくとも一部の上にバルク銅の連続的なマトリックスを提供し、かつウィッキング構造304の少なくとも一部内へと貫入する。必要であれば、封止された外側シェル302の形成を完了し、端部310及び端部312が閉じられるとヒートパイプ300の気密封止を提供するために、金属ナノ粒子の圧密化が行われた後に、電気メッキが実行されてもよい。
【0081】
金属ナノ粒子の圧密化及び所望による更なる電気メッキの後、封止された外側シェル302の厚さは、約100マイクロメートル~約1000マイクロメートル、又は約100マイクロメートル~約300マイクロメートル、又は約200マイクロメートル~約300マイクロメートル、又は約300マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲であってもよい。ウィッキング構造304は、約0.1マイクロメートル~約3000マイクロメートル、又は約500マイクロメートル~約3000マイクロメートル、又は約500マイクロメートル~約1000マイクロメートル、又は約1000マイクロメートル~約3000マイクロメートルの厚さの範囲であってもよい。
【0082】
ウィッキング構造304の端部310及び端部312は開いたままであるが、作動流体は、依然としてその内部に充填されていない。非限定的な実施例では、端部310及び端部312は、好ましくは、真空を適用しながら、溶接若しくはスポット溶接、ネジ付きプラグ若しくはネジなしプラグ若しくはキャップ、圧縮(ピンチオフ)、又は弁操作によって、閉鎖されてもよい。銅ナノ粒子ペースト組成物はまた、端部310又は端部312の一方又は両方に充填され、別の方法で封止を促進するために、圧密化されてもよい。端部310及び端部312の閉鎖は、別々に又は同時に発生してもよい。ヒートパイプ300内への作動流体の充填は、端部310若しくは端部312のいずれかが閉鎖される前、又は端部310若しくは端部312の少なくとも1つが閉鎖された後に、行われてもよい。例えば、端部310が最初に閉鎖されてもよく、次に、作動流体が中空コア306内へと充填されてもよく、次に、端部312が閉鎖されて、作動流体を中空コア306内に封止してもよい。ヒートパイプ300の、プリント回路基板又は類似の熱発生構成部品などの熱源への接合は、作動流体を充填し、端部312を閉鎖する前に、行われてもよい。代替的に、作動流体は、ヒートパイプ300内に充填されてもよく、熱源への結合は、閉鎖端部312と併せて発生し得る。依然として更に代替的に、ヒートパイプ300に作動流体を充填し、端部310及び端部312の両方で、順次に又は同時に閉鎖してもよく、熱源への結合を(例えば、接合層を形成するために金属ナノ粒子ペースト組成物を用いて)その後に別々に行ってもよい。ヒートパイプ300が既に完全に組み立てられている場合、スポット加熱を実行して、金属ナノ粒子から形成された接合層を介して、ヒートパイプ300の熱源又はヒートシンクへの接合を促進してもよいが、これは、そうでなければ、より広く分散された熱が、ヒートパイプ300によって所望の加熱位置から離れて伝達される場合があり、かつ/又はヒートパイプ300が、損傷を受ける場合があるためである。接合層を介した熱源又はヒートシンクへの接合を促進するための局所的な急速加熱は、例えば、レーザ又はXeランプを用いて実行されてもよい。
【0083】
熱源又はヒートシンクは、ヒートパイプ300の端部310及び端部312に接合されてもよい。あるいは、熱源又はヒートシンクは、ヒートパイプ300の側壁に(例えば、封止された外側シェル302上に)接合されてもよい。更に別の選択肢として、ヒートパイプ300は、熱発生構成部品と熱連通している熱伝導性基板に接合されてもよい。
【0084】
銅ナノ粒子ペースト組成物が、端部310又は端部312のうちの少なくとも1つを閉鎖するために使用される場合、複数の伝導性繊維が、ヒートパイプの1つの端部から延在してもよい。導電性繊維は、熱放散を容易にするために大きな表面積を提供してもよいため、ヒートパイプからヒートシンクへの熱放散を更に容易にし得る。図4は、複数の導電性繊維402がヒートパイプの一端から延在する中空コアに隣接するウィッキング構造を備える、例示的なヒートパイプの断面図である。端部312から延在する導電性繊維402以外は、ヒートパイプ400は、ヒートパイプ300(図3)と類似しており、それを参照することによって、より良好に理解され得る。なお、類似の構成及び機能を有する要素には、共通の符号を付している。伝導性繊維402は、図4では、それらの端部がヒートパイプ400の端部312で終端するように示されているが、伝導性繊維402の端部はまた、それらが、その内部の作動流体と接触し得るように、ヒートパイプ400の内部内(すなわち、中空コア306内)へと延在してもよいことを理解されたい。このように構成される場合、導電性繊維402と作動流体との直接接触は、依然としてより効果的な熱伝達を促進し得る。なお、導電性繊維402は、作動流体の凝縮が中空コア306内で発生し得る大きな表面積を提供してもよい。
【0085】
本明細書に開示されるヒートパイプ内に存在し得る好適な伝導性繊維としては、バルク銅の2倍以上の熱伝導率値(例えば、800~1100W/m・K)を呈し得る、グラファイト繊維束が挙げられるが、これに限定されない。その他の種類の好適な導電性繊維としては、金属繊維(例えば、Al繊維又はCu繊維)、ダイヤモンド繊維、カーボンナノチューブ若しくはカーボンナノチューブ繊維、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられてもよいが、これらに限定されない。適切な繊維長さは、繊維の可撓性に応じて、約2~8インチであってもよい。好適な繊維直径は、約5~50マイクロメートル、又は約5~10マイクロメートル、又は約5~20マイクロメートル、又は約30~50マイクロメートルであってもよい。繊維は、ヒートパイプの端部に埋め込まれるよりも多くの繊維端部がヒートパイプの外部に存在するように、所望により分岐されてもよい。伝導性繊維はまた、ヒートパイプから延在する多孔質発泡体の形態であってもよく、その場合、空気又は液体などの冷却流体は、伝導性繊維から伝達された熱を除去することを補助するために、ヒートパイプの外部の発泡体の細孔を通過してもよい。多孔質発泡体の形態の伝導性繊維が使用される場合、伝導性繊維は、作動流体がヒートパイプの中空コア内に封止されたままであるように、位置付けられてもよい。
【0086】
導電性繊維402をヒートパイプ400に導入するために、端部312は、熱圧プレス又は射出成形操作中などに、銅ナノ粒子ペースト組成物で閉鎖されてもよい。銅ナノ粒子ペースト組成物は、最初に端部312に適用されてもよく、次に、導電性繊維402が、未圧密化銅ナノ粒子ペースト組成物内へと挿入されてもよい。銅ナノ粒子の圧密化に続いて、導電性繊維402は、銅ナノ粒子ペースト組成物から形成されたバルク銅のマトリックス中で、ヒートパイプ400の端部312にしっかりと固定されてもよい。
【0087】
図5Aは、本明細書の開示による銅複合材から形成され得る例示的な振動ヒートパイプの、上断面図である。ヒートパイプ500は、銅ブロック502の上面内に非限定的な蛇行パターンで配置された、流路504を含む。流路504は、閉ループ内に画定されてもよく、閉ループの少なくとも1つの部分、通常は閉ループの複数の部分が、ヒートパイプ500の高温端と低温端との間に延在する。図5Aに示す振動ヒートパイプ500などの振動ヒートパイプでは、作動流体(図示せず)は、熱が高温端で吸収されて低温端に移動する際に、流路504によって画定される閉ループ内で、複数の流体スラッグとして移動する。流路504内の各流体スラッグ間に、空隙が存在してもよい。流体スラッグは、ヒートパイプ500の高温端付近で少なくとも部分的に蒸発し、低温端付近で凝縮して、閉ループを通る流体スラッグの脈動運動をもたらしてもよい。
【0088】
更に図5Aを参照すると、銅ブロック502は、上述したように、銅ナノ粒子及びCTE調整剤から形成された例示的な銅複合材などの銅複合材から形成されてもよい。様々な実施形態では、銅ブロック502は、銅ナノ粒子ペースト組成物内の銅ナノ粒子の圧密化を通じて形成されてもよく、銅ナノ粒子ペースト組成物は、金属ナノ粒子の圧密化に続いて、その上面にパターン形成された流路504を有するモノリシック構造を形成するように成形される。その他の実施形態では、射出成形又は金属鋳造を使用して、流路504の全部又は一部がその内部に画定されたネットシェイプ部分(例えば、半球体)を作製してもよい。銅ブロック502が形成されると、相補的部分(例えば、銅ブロック502と同じ組成の平板)が銅ブロック502上に適用されて、作動流体がその内部に充填されると、流路504を気密封止してもよい。金属ナノ粒子を利用して、銅ブロック502と相補的部分との間の接合を促進して、流路504の封止を促進してもよく、これによって、作動流体がそこを通って流れ得る。ヒートパイプの封止された外側シェルを形成するために使用される銅ナノ粒子とは別個の銅ナノ粒子の第2の部分が、本目的のために利用されてもよい。代替的又は追加的に、銅ナノ粒子の第2の部分は、銅ブロック502の熱発生構成部品への接合を促進するために、使用されてもよい。
【0089】
図5Bは、その内部に画定された流路を有する、例示的な銅ブロックの斜視図を示す写真である。図5A及び図5Bには示されていないが、上部銅ブロック(相補的部分)は、流路502を囲み、その内部に作動流体を維持する。図5Cは、ヒートパイプ500の側断面図であり、流路504が銅ブロック502内に画定され、相補的部分506が流路504を封止してその内部に作動流体を閉じ込める。銅ブロック502と同様に、相補的部分506は、銅複合材から形成されてもよく、所望の場合、銅複合材は、銅ブロック502に対して更にCTE整合されてもよい。そうでなければ、相補的部分506は、従来の機械加工技術によって形成されてもよい。様々な実施形態では、相補的部分506は、銅ナノ粒子ペースト組成物内の銅ナノ粒子の圧密化によって、形成されてもよい。銅ナノ粒子ペースト組成物を利用して、銅ブロック502と相補的部分506との間に、冶金接合を形成してもよい。弁510は、流路504が相補的部分506で封止された際に、流路504内へと作動流体を充填するために存在してもよい。少なくとも部分的な真空は、封止後であって、作動流体を流路504内へと充填する前に、適用されてもよい。真空は、流路504内への作動流体の進入を促進してもよい。
【0090】
本明細書に開示されるヒートパイプは、任意の特定の形状であってもよい。限定するものではないが、ヒートパイプは、円形、角柱形、卵形、三角形、長方形、平坦状、部分的に平坦状等であってもよい。ヒートパイプは、特に熱源とヒートシンクとの間に接続された後に、曲げられてもよいか、又は実質的に直線状であってもよい。いくつかの実施形態では、ヒートパイプは、熱発生構成部品の上面又は底面に接触し、熱発生構成部品が配置される基板の表面に適合するように、屈曲していてもよい。特定の作業環境に適合することを除いて、ヒートパイプの寸法は、特に限定されるとは考えられない。
【0091】
本明細書に開示されるヒートパイプは、プリント回路基板に関連付けられた熱発生構成部品から熱を放散するために、利用されてもよい。熱発生構成部品は、例えば、Si(CTE=3.5)、SiC(CTE=4.2ppm)、GaN(CTE=5.6ppm)、又はAlN(CTE=4.5ppm)などのセラミックを含んでもよい。銅ナノ粒子と組み合わされるCTE調整剤及びその量は、所望の許容範囲内で熱発生構成部品のCTEに整合するように、調整されてもよい。非限定的な実施例では、ヒートパイプのCTEは、約±50%以内、又は約±25%以内、又は約±20%以内、又は約±15%以内、又は約±10%以内、又は約±5%以内、又は約±4%以内、又は約±3%以内、又は約±2%以内、又は約±1%以内の許容範囲内で、熱発生構成部品のCTEと整合してもよい。
【0092】
本開示のプリント回路基板は、電気絶縁基板上に配置された又は電気絶縁基板内に少なくとも部分的に埋め込まれた熱発生構成部品と、熱発生構成部品と熱連通する少なくとも1つのヒートパイプと、を備えてもよく、少なくとも1つのヒートパイプは、熱発生構成部品にCTE整合される。電気絶縁基板はまた、FR4などの熱絶縁性、又はAlN若しくはSiNを含むものなどの熱伝導性であってもよい。様々な実施例では、少なくとも1つのヒートパイプは、CTE調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルと、封止された外側シェル内に収容された内部空間内で移動可能な作動流体と、を有する。好適なヒートパイプは、上記でより詳細に説明したように、作動流体が移動するウィッキング構造又は封止された流路を備えてもよい。少なくとも1つのヒートパイプは、銅複合材を含む接合層を介して熱発生構成部品に接合されてもよいが、これはまた、熱発生構成部品及び封止された外側シェルを含む銅複合材にCTE整合される。あるいは、ヒートパイプは、熱発生構成部品に接合されるのではなく、十分な熱伝導率を有する電気絶縁基板に接合されてもよい。
【0093】
熱発生構成部品は、電気絶縁基板の上面上に配置されてもよいか、又は電気絶縁基板内に少なくとも部分的に埋め込まれて(埋設されて)もよい。少なくとも1つのヒートパイプは、熱発生構成部品の上面又は底面に接合されてもよく、1つ以上のヒートパイプは、熱発生構成部品の側面に接合されてもよいか、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。熱発生構成部品の底面に接合された場合、少なくとも1つのヒートパイプは、電気絶縁基板を通って延在してもよい。1つ以上のヒートパイプが熱発生構成部品にどのように接続され得るかに関する更なる詳細が、以下に提供される。
【0094】
図6は、熱発生構成部品の上面に接合されたヒートパイプの側面図を示す図である。このような構成は、例えば、フリップチップパッケージにおいて利用されてもよい。図示されるように、PCB600は、電気絶縁基板602と、その上の熱発生構成部品604と、を含む。ヒートパイプ606は、熱発生構成部品604の上面に接合され、そこから過剰な熱を伝導するように方向付けられている。ヒートパイプ606は、上記でより詳細に説明した本開示のヒートパイプであってもよい。ヒートパイプ606は、図6では実質的に直線状で支持されていない構成で示されているが、ヒートパイプ606は、代替的に、曲げられてもよいか、又は湾曲されてもよく、及び/又はPCB600の表面の少なくとも一部に適合してもよいことを理解されたい。更に別の実施例では、熱発生構成部品604は、電気絶縁基板602の表面内へと少なくとも部分的に埋め込まれてもよく、その場合、ヒートパイプ606は、図6に示されるものと同様に配向されてもよい。
【0095】
図7は、熱発生構成部品の底面に接合されたヒートパイプの側面図を示す図である。本構成では、ヒートパイプ606は、PCB700の電気絶縁基板602内に画定されたビア702(即ち、平面貫通ビア)を通って、延在する。ビア702は、ヒートパイプ606の表面が熱発生構成部品604の底面に接触し得るように、ヒートパイプ606がそこを通って延在するために、好適なサイズにされてもよい。ヒートパイプ606は、ここでも、上記でより詳細に説明した本開示のヒートパイプであってもよい。同様に、熱発生構成部品604は、電気絶縁部品602の表面に少なくとも部分的に埋め込まれてもよく、ヒートパイプ606は、図7に示されるものと同様に配向される。ビア702は、図7では、熱発生構成部品604と実質的に同じ幅であるように示されているが、ビア702は、ヒートパイプ606が熱発生構成部品604の全表面未満に接触するように、幅がより小さくてもよいことを理解されたい。ヒートパイプ606は、代替的に、ビア702を通過した後に曲げられてもよいか、又は湾曲されてもよい、及び/又はPCB700の底面の少なくとも一部に適合してもよいこともまた理解されたい。
【0096】
ヒートパイプはまた、図8に示されるように、熱発生構成部品の上面及び底面に接合されてもよい。図8は、熱発生構成部品の上面及び底面の両方に接合されたヒートパイプの側面図を示す図である。PCB800において、ヒートパイプ606aは、図6に示されるのと類似の方法で、熱発生構成部品604の上面に接合され、ヒートパイプ606bは、電気絶縁基板602を通って延在し、図7に示されるのと類似の方法で、熱発生構成部品604の底面に接合される。したがって、本開示は、熱除去がPCBの複数の面から発生し得るように、複数のヒートパイプの熱発生構成部品への取り付けを、容易にし得る。
【0097】
図9は、熱発生構成部品の側面に接合された複数のヒートパイプの上面図を示す図である。図9において、熱発生構成部品604は、電気絶縁基板602の上に配置されるか、又は少なくとも部分的にその内部に埋め込まれる。ヒートパイプ606a及び606bは、所望により、ヒートパイプ606a及び606bが電気絶縁基板602の表面に沿って延在するように、熱発生構成部品604の側面に接触し、接合される。2つのヒートパイプ(606a及び606b)が、PCB900内の熱発生構成部品604への側面接合を伴って示されているが、1つ、又は2つ超のヒートパイプが、所望により、熱発生構成部品604の上面及び/又は底面に接合されるヒートパイプと組み合わせて同様に接合されてもよい(図6~8)ことを理解されたい。1つ以上のヒートパイプの熱発生構成部品604への側面接合は、複数のPCB層の積層を容易にし得、1つ以上のヒートパイプは、隣接するPCB層間に挟まれ、PCBからの横方向の熱除去を促進する。2つのPCB層間に延在するヒートパイプを介して横方向に過剰な熱を排除することによって、PCB製造は、熱発生構成部品604の上面又は底面から複数のPCB層を通って延在するヒートパイプを収容するために電気絶縁基板を機械加工する必要がないことによって、簡略化されてもよい。上部ヒートパイプ及び底部ヒートパイプ(図示せず)が、特に多層PCBの上部層及び底部層のために存在してもよいことを理解されたい。
【0098】
電気絶縁基板が高い熱伝導率を有する場合、本開示のヒートパイプは、電気絶縁基板の少なくとも1つの表面上に配置されてもよい。したがって、熱が熱発生構成部品から直接除去される代わりに、熱は、熱発生構成部品から電気絶縁基板を通して伝達されてもよく、次に、熱は、本開示のヒートパイプを介して除去されてもよい。すなわち、高い熱伝導率を有する電気絶縁基板の場合、熱発生構成部品からの熱除去は、間接的に発生し得る。
【0099】
図10A図10Cは、高い熱伝導率を有する電気絶縁基板上に配置されたヒートパイプの側面図を示す図である。図10AのPCB1000Aにおいて、ヒートパイプ606は、電気絶縁基板602の上面1001上に配置されている。熱発生構成部品604もまた、上面1001上に配置されるが、熱伝達が電気絶縁基板602を通して行われるように、ヒートパイプ606から離間されたままである。図10BのPCB1000Bは、図10AのPCB1000Aと類似しているが、ヒートパイプ606が、底面1002上に配置されている、すなわち、上面1001上の熱発生構成部品604に対向している点を除く。同様に、図10CのPCB1000Cは、同様の結果を達成するために、電気絶縁基板602の内部にヒートパイプ606を組み込む。
【0100】
したがって、本開示のヒートパイプを含むPCBは、様々な実施形態によれば、単層又は多層であってもよい。多層PCBは、ビア及びその他の基板特徴部を画定するために一緒に積層される、個々の層を含有し得る。複数のPCB層間の接合は、例えば、堆積プロセスにおいて、適切な接着剤を用いて達成されてもよい。多層PCB内の層の数は、特に限定されるとは考えられず、例えば、最大約10個の個々のPCB層であってもよく、そのそれぞれは、本明細書の開示によるヒートパイプの使用による熱除去を必要とする熱発生構成部品を含んでもよい。
【0101】
様々な実施形態では、封止された外側シェル及びヒートパイプを熱発生構成部品に接続する接合層は、銅を含み、銅ナノ粒子、より具体的には、接合層のCTEを熱発生構成部品のCTEに整合させるように調整するために好適な添加剤を含有する、銅ナノ粒子ペースト組成物から形成されてもよい。CTE調整剤は、炭素繊維、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン等を含んでもよい。特定のCTE調整剤及びその量は、所望の程度のCTE調整を提供するように、選択されてもよい。上記でより詳細に説明したように、分配及び取り扱いを容易にするために、その他の添加剤が銅ナノ粒子ペースト組成物中に存在してもよい。
【0102】
したがって、本開示の方法は、中空コアを画定する外側表面及び内側表面を有する細長いウィッキング構造を提供することと、銅ナノ粒子ペースト組成物を外側表面に適用することであって、銅ナノ粒子ペースト組成物が、複数の銅ナノ粒子、複数のマイクロメートルサイズ銅粒子、及びCTE調整剤を含む、適用することと、銅ナノ粒子を圧密化して、細長いウィッキング構造の外側表面上に封止された外側シェルを形成し、所望により、電気メッキして、封止された外側シェルの形成を完了することと、中空コアに作動流体を部分的に充填することと、密封された外側シェルの少なくとも1つの端部を閉鎖することと、を含んでもよい。様々な実施形態では、端部の少なくとも1つは、銅ナノ粒子ペースト組成物で閉鎖されてもよく、その後、上記でより詳細に説明したように、その内部の銅ナノ粒子を圧密化する。適切な銅ナノ粒子ペースト組成物、CTE調整剤、及び熱交換器構成は、上記でより詳細に説明されている。
【0103】
ヒートパイプから延在する複数の繊維を含むヒートパイプを形成する場合、本方法は、ヒートパイプの端部上の銅ナノ粒子ペースト組成物の第2の部分内に複数の熱伝導性繊維を配置することを更に含んでもよい。銅ナノ粒子ペースト組成物内の銅ナノ粒子を圧密化させる際に、複数の繊維がヒートパイプの端部に付着する場合がある。所望により、導電性繊維の少なくとも一部は、ヒートパイプの中空コア内へと延在し、その内部の作動流体と接触してもよい。
【0104】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む。
A.ヒートパイプ。ヒートパイプは、熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、封止された外側シェル内に収容された内部空間内を移動するために有効な作動流体と、を含む。
B.プリント回路基板であって、電気絶縁基板上に配置された熱発生構成部品と、熱発生構成部品と熱連通する少なくとも1つのヒートパイプであって、少なくとも1つのヒートパイプが、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造を含む、少なくとも1つのヒートパイプと、封止された外側シェル内に収容された内部空間内を移動するために有効な作動流体と、を含む、プリント回路基板。所望により、電気絶縁基板は、FR4及び類似のエポキシ基板などの断熱性、又は窒化アルミニウム若しくは炭化ケイ素などの熱伝導性であってもよい。
C.ヒートパイプの製造方法。本方法は、外側表面と、中空コアを画定する内側表面と、を有することを画定する、細長いウィッキング構造を提供することと、銅ナノ粒子ペースト組成物を外側表面に適用することであって、銅ナノ粒子ペースト組成物が、複数の銅ナノ粒子、複数のマイクロメートルサイズの銅粒子、及び熱膨張係数(CTE)調整剤を含む、適用することと、銅ナノ粒子を圧密化して、封止された外側シェルをウィッキング構造上に形成することと、中空コアに作動流体を部分的に充填することと、密封された外側シェルの少なくとも1つの端部を閉鎖することと、を含む。
【0105】
実施形態A、実施形態B、及び実施形態Cのそれぞれは、以下の追加要素のうちの1つ以上を、任意の組み合わせで有してもよい。
【0106】
要素1:銅複合材は、銅ナノ粒子をマイクロメートルサイズの銅粒子及びCTE調整剤で圧密化することによって、形成される。
【0107】
要素2:内部空間は、中空コアに隣接するウィッキング構造を含む。
【0108】
要素3:ウィッキング構造は、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0109】
要素4:内部空間は、封止された外側シェルの内側表面上に画定された流路を備える。
【0110】
要素5:銅複合材は、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する。
【0111】
要素6:CTE調整剤は、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、カーボンナノチューブ、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0112】
要素7:ヒートパイプは、構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、熱伝導性繊維の少なくとも一部は、内部空間内へと延在し、作動流体に接触する。
【0113】
要素7A:PCBは、構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、熱伝導性繊維の少なくとも一部は、内部空間内へと延在し、作動流体に接触する。
【0114】
要素7B:本方法は、複数の熱伝導性繊維を銅ナノ粒子ペースト組成物中に配置し、少なくとも1つの端部から延在させることを更に含み、所望により、熱伝導性繊維の少なくとも一部が中空コア内へと延在し、作動流体と接触する。
【0115】
要素8:少なくとも1つのヒートパイプは、封止された外側シェルを含む銅複合材にCTE整合された銅複合材を含む接合層を介して、熱発生構成部品に接合される。
【0116】
要素9:熱発生構成部品は、電気絶縁基板の表面上に配置され、少なくとも1つのヒートパイプは、熱発生構成部品の上面に接合され、1つ以上のヒートパイプは、熱発生構成部品の側面に接合され、少なくとも1つのヒートパイプは、熱発生構成部品の底面に接合され、少なくとも1つのヒートパイプは、電気絶縁基板を通って延在するか、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0117】
要素10:少なくとも1つの端部は、そこへと銅ナノ粒子ペースト組成物を適用し、その内部の銅ナノ粒子を圧密化することによって、閉鎖される。
【0118】
非限定的な実施例として、A、B、Cに適用可能な代表的な組み合わせとしては、1及び2、1~3、1及び4、1及び5、1及び6、1及び7、7A又は7B、1及び8、1及び9、1及び10、2及び4、2~4、2及び5、2及び6、2及び7、7A又は7B、2及び8、2及び9、2及び10、4及び5、4及び6、4及び7、7A又は7B、4及び8、4及び9、4及び10、5及び6、5、及び7、7A又は7B、5及び8、5及び9、5及び10、6及び7、7A又は7B、6及び8、6及び9、6及び10、7、7A又は7B、及び8、7、7A又は7B、及び9、7、7A又は7B、及び10、8及び9、8及び10、8~10、7B、及び8~10、並びに9及び10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本明細書に開示される追加の実施形態は、以下を含む。
A’:ヒートパイプ。ヒートパイプは、熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を含み、内部空間は、封止された外側シェルと中空コアとの間に挿入されたウィッキング構造、又は封止された外側シェルの表面上に画定された流路を含む。
B’:プリント回路基板(Printed Circuit Boards、PCB)。PCBは、電気絶縁基板上に配置された又は電気絶縁基板内に少なくとも部分的に埋め込まれた熱発生構成部品と、熱発生構成部品と熱連通する少なくとも1つのヒートパイプと、を備え、少なくとも1つのヒートパイプは、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を含み、内部空間は、封止された外側シェルと中空コアとの間に挿入されたウィッキング構造、又は封止された外側シェルの表面上に画定された流路を備える。
C’:ヒートパイプの製造方法。本方法は、外側表面と、中空コアを画定する内側表面と、を有する、細長いウィッキング構造を提供することと、銅ナノ粒子ペースト組成物を外側表面に適用することであって、銅ナノ粒子ペースト組成物が、複数の銅ナノ粒子、複数のマイクロメートルサイズの銅粒子、及び熱膨張係数(CTE)調整剤を含む、適用することと、細長いウィッキング構造の外側表面上に封止された外側シェルを形成するために、銅ナノ粒子を圧密化することと、中空コアに作動流体を部分的に充填することと、封止された外側シェルの少なくとも1つの端部を閉鎖して、中空コア内に作動流体を閉じ込めることと、を含む。
【0120】
実施形態A’、実施形態B’、及び実施形態C’のそれぞれは、以下の追加要素のうちの1つ以上を、任意の組み合わせで有してもよい。
【0121】
要素1’:銅複合材は、銅ナノ粒子をマイクロメートルサイズの銅粒子及びCTE調整剤で圧密化することによって、形成される。
【0122】
要素2’:ウィッキング構造は、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0123】
要素3’:封止された外側シェルは、ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する。
【0124】
要素4’:相補的部分が、封止された外側シェルに接触し、流路の上面を封止する。
【0125】
要素5’:銅複合材は、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する。
【0126】
要素6’:CTE調整剤は、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0127】
要素7’:ヒートパイプは、構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、熱伝導性繊維の少なくとも一部は、内部空間内へと延在し、作動流体に接触する。
【0128】
要素8’:少なくとも1つのヒートパイプは、封止された外側シェルを含む銅複合材にCTE整合された銅複合材を含む接合層を介して、熱発生構成部品に接合される。
【0129】
要素9’:少なくとも1つのヒートパイプは、熱発生構成部品の上面に接合され、1つ以上のヒートパイプは、熱発生構成部品の側面に接合され、少なくとも1つのヒートパイプは、熱発生構成部品の底面に接合され、少なくとも1つのヒートパイプは、電気絶縁基板を通って延在するか、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0130】
要素10’:銅ナノ粒子ペースト組成物の第2の部分を少なくとも1つの端部に適用し、その内部の銅ナノ粒子を圧密化することによって、少なくとも1つの端部が閉鎖される。
【0131】
要素11’:本方法は、複数の熱伝導性繊維を銅ナノ粒子ペースト組成物の第2の部分内に配置し、少なくとも1つの端部から延在させることを更に含み、所望により、熱伝導性繊維の少なくとも一部が中空コア内へと延在し、作動流体と接触する。
【0132】
非限定的な実施例として、A’、B’、及びC’に適用可能な代表的な組み合わせとしては、1’及び2’、1’及び3’、1’及び4’、1’及び5’、1’及び6’、1’及び7’、2’及び/又は3’、及び5’、2’及び/又は3’、及び6’、2’及び/又は3’、及び7’、4’及び5’、4’及び6’、4’及び7’、5’及び6’、5’及び7’、及び6’及び7’が挙げられるが、これらに限定されない。前述のいずれか、又は1’~7’のいずれか1つは、8’及び9’、8’、9’、10’及び11’、10’、又は11’と、更に組み合わされてもよい。
【0133】
別段の指示がない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件等を表す全ての数字は、全ての場合において「約(about)」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に異議を唱えない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の端数技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0134】
本開示の特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が、本明細書に提示される。本出願では、明確にするために、物理的実装の全ての特徴が説明又は図示されているわけではない。本開示を組み込む物理的な実施形態の開発において、開発者の目標を達成するために、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及びその他の制約の遵守など、実装によって変動する及び随時変動する、多数の実装固有の決定が行われなければならないと理解される。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、このような努力は、当業者にとって日常的な仕事であり、本開示の利益を有するであろう。
【0135】
したがって、本開示は、言及された目的及び利点並びにそれに固有の目的及び利点を達成するように、十分に適合される。本開示は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな、異なるが等価な様式で修正及び実施され得るので、上記で開示された特定の実施形態は、例示的なものにすぎない。更に、以下の特許請求の範囲に記載される以外に、本明細書に示される構成又は設計の詳細に限定することは、意図されていない。したがって、上記で開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正されてもよく、全てのこのような変形形態は、本発明の範囲及び趣旨内であると考えられることは、明らかである。本明細書の開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素及び/又は本明細書に開示されている所望の要素が存在しなくても、好適に実施され得る。組成物及び方法は、様々な構成要素又は工程を「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、又は「含む(including)」という用語で記載されているが、組成物及び方法は、様々な構成要素及び工程「から本質的になる(consist essentially of)」又は「からなる(consist of)」こともまた可能である。上記に開示された全ての数及び範囲は、ある量だけ変化してもよい。下限及び上限を有する数値範囲が開示される場合はいつでも、その範囲内に入る任意の数及び任意の含まれる範囲が、具体的に開示される。特に、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は同等に「およそa~b(from approximately a to b)」、又は同等に「およそa~b(from approximately a-b)」の形態の)値のあらゆる範囲は、値のより広い範囲内に包含されるあらゆる数及び範囲を示すと理解されるべきである。同様に、特許請求の範囲における用語は、特許権者によって明示的かつ明確に定義されない限り、それらの明白な通常の意味を有する。更に、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、それが導入する要素の1つ又は2つ以上を意味するように、本明細書で定義される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートパイプであって、
熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、
前記封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を含み、前記内部空間が、前記封止された外側シェルと中空コアとの間に挿入されたウィッキング構造、又は前記封止された外側シェルの表面上に画定された流路を含む、ヒートパイプ。
【請求項2】
前記銅複合材が、銅ナノ粒子をマイクロメートルサイズの銅粒子及び前記CTE調整剤で圧密化することによって、形成される、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記ウィッキング構造が、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記封止された外側シェルが、前記ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
相補的部分が、前記封止された外側シェルに接触し、前記流路の上面を封止する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記CTE調整剤が、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、前記熱伝導性繊維の少なくとも一部が、前記内部空間内へと延在し、前記作動流体に接触する、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項9】
プリント回路基板(Printed Circuit Board、PCB)であって、
電気絶縁基板上に配置された又は電気絶縁基板内に少なくとも部分的に埋め込まれた熱発生構成部品と、
前記熱発生構成部品と熱連通する少なくとも1つのヒートパイプと、を備え、前記少なくとも1つのヒートパイプが、
熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む封止された外側シェルを有する構造と、
前記封止された外側シェル内に画定された内部空間内で移動可能な作動流体と、を含み、前記内部空間が、前記封止された外側シェルと中空コアとの間に挿入されたウィッキング構造、又は前記封止された外側シェルの表面上に画定された流路を備える、プリント回路基板(PCB)。
【請求項10】
前記銅複合材が、銅ナノ粒子をマイクロメートルサイズの銅粒子及び前記CTE調整剤で圧密化することによって、形成される、請求項9に記載のPCB。
【請求項11】
前記ウィッキング構造が、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載のPCB。
【請求項12】
前記封止された外側シェルが、前記ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する、請求項9に記載のPCB。
【請求項13】
相補的部分が、前記封止された外側シェルに接触し、前記流路の上面を封止する、請求項9に記載のPCB。
【請求項14】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する、請求項9に記載のPCB。
【請求項15】
前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記封止された外側シェルを含む前記銅複合材にCTE整合された銅複合材を含む接合層を介して、前記熱発生構成部品に接合される、請求項9に記載のPCB。
【請求項16】
前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記熱発生構成部品の上面に接合され、
1つ以上のヒートパイプが、前記熱発生構成部品の側面に接合され、
前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記熱発生構成部品の底面に接合され、前記少なくとも1つのヒートパイプが、前記電気絶縁基板を通って延在するか、
又はこれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載のPCB。
【請求項17】
前記CTE調整剤が、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載のPCB。
【請求項18】
前記構造の端部から延在する複数の熱伝導性繊維を更に備え、所望により、前記熱伝導性繊維の少なくとも一部が、前記内部空間内へと延在し、前記作動流体に接触する、請求項9に記載のPCB。
【請求項19】
方法であって、
中空コアを画定する外側表面と内側表面とを有する細長いウィッキング構造を提供することと、
銅ナノ粒子ペースト組成物を前記外側表面に適用することであって、前記銅ナノ粒子ペースト組成物が、複数の銅ナノ粒子、複数のマイクロメートルサイズの銅粒子、及び熱膨張係数(CTE)調整剤を含む、適用することと、
前記細長いウィッキング構造の前記外側表面上に封止された外側シェルを形成するために、前記銅ナノ粒子を圧密化することと、
前記中空コアに作動流体を部分的に充填することと、
前記封止された外側シェルの少なくとも1つの端部を閉鎖して、前記中空コア内に前記作動流体を閉じ込めることと、を含む、方法。
【請求項20】
前記銅ナノ粒子ペースト組成物の第2の部分を前記少なくとも1つの端部に適用し、その内部の前記銅ナノ粒子を圧密化することによって、前記少なくとも1つの端部が閉鎖される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数の熱伝導性繊維を前記銅ナノ粒子ペースト組成物の前記第2の部分内に配置し、前記少なくとも1つの端部から延在させることを更に含み、所望により、前記熱伝導性繊維の少なくとも一部が前記中空コア内へと延在し、前記作動流体と接触する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウィッキング構造が、発泡体、ワイヤメッシュ、複数の溝、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ多孔率を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記CTE調整剤が、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記封止された外側シェルが、前記ウィッキング構造の少なくとも一部内へと貫入する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記銅ナノ粒子が、表面上に1つ以上の界面活性剤を含有する界面活性剤コーティングを有する、請求項2に記載のヒートパイプ。
【請求項27】
前記銅複合材が、約30重量%~約98重量%の銅ナノ粒子、及び約0.1重量%~約15重量%のマイクロメートルスケールの粒子を含む、請求項2に記載のヒートパイプ。
【請求項28】
前記銅ナノ粒子の少なくとも一部が、約1~約10nmのサイズの範囲であり、残りの前記銅ナノ粒子が、25~約50nmのサイズの範囲である、請求項2に記載のヒートパイプ。
【国際調査報告】