(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】新しい非絶縁型ゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240702BHJP
H03K 17/13 20060101ALI20240702BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H03K17/13 A
H02M7/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518959
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022032451
(87)【国際公開番号】W WO2022261059
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523460855
【氏名又は名称】パワー スウィッチング リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ファルザド アーマドクハンロウ
(72)【発明者】
【氏名】アレン ダハキ
(72)【発明者】
【氏名】レザ サルハディ ニア
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
5J055
【Fターム(参考)】
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5J055GX01
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(57)【要約】
ZCVTTスイッチング回路は、スイッチと、スイッチに接続され、スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックと、を含む。スイッチング回路は、さらに、受動ブロックに接続され、受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックと、受動ブロックに接続され、受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチと、
前記スイッチに接続され、前記スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックと、
前記受動ブロックに接続され、前記受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックと、
前記受動ブロックに接続され、前記受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックと、
を備えるスイッチング回路。
【請求項2】
前記受動ブロックは、ゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロック、第1のゼロ電圧スイッチングブロック、および、第2のゼロ電圧スイッチングブロックを含む、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
前記受動ブロックは、ゼロ電流遷移技術(ZCTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロックのみを含む、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記スイッチは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを含み、前記受動回路は、
電圧線に接続された第1の端子と、
前記第1のスイッチに接続された第2の端子と、
前記RPEブロックに接続された第3の端子と、
電気的接地に接続された第4の端子と、
前記第2のスイッチに接続された第5の端子と、
前記RNEブロックに接続された第6の端子と、
入力電圧に接続された第7の端子と、
を含む、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、前記受動ブロックに接続された入力端子と、電気的接地に接続された接地端子と、前記リサイクルされた正のエネルギーおよび前記リサイクルされた負のエネルギーが電圧線に供給されるように前記電圧線に接続された出力端子と、を含む、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、前記入力端子と前記出力端子との間に接続されたパルス幅変調器(PWM)を含む、請求項5に記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、能動回路素子および受動回路素子の両方を含む能動ブロックである、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項8】
第2のスイッチと、該第2のスイッチに接続され、該第2のスイッチからの第2の入力信号を減衰させるように構成された第2の受動ブロックと、をさらに備え、前記RPEブロックは、前記第1の受動ブロックおよび前記第2の受動ブロックに接続され、前記第1の受動ブロックからの正のエネルギーおよび前記第2の受動ブロックからの正のエネルギーをリサイクルするように構成され、前記RNEブロックは、前記第1の受動ブロックおよび前記第2の受動ブロックに接続され、前記第1の受動ブロックからの負のエネルギーおよび前記第2の受動ブロックからの負のエネルギーをリサイクルするように構成される、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項9】
前記受動ブロック、前記RPEブロック、および、前記RNEブロックは、直流(DC)-DCコンバータ、交流(AC)-DCコンバータ、および、DC-ACインバータと共に使用されるように構成されている、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項10】
スイッチを含むスイッチングシステムの効率を向上させるための回路であって、
前記スイッチに接続され、前記スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックと、
前記受動ブロックに接続され、前記受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックと、
前記受動ブロックに接続され、前記受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックと、
を備える、スイッチング回路。
【請求項11】
前記受動ブロックは、ゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロック、第1のゼロ電圧スイッチングブロック、および、第2のゼロ電圧スイッチングブロックを含む、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項12】
前記受動ブロックは、ゼロ電流遷移技術(ZCTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロックのみを含む、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項13】
前記スイッチは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを含み、前記受動回路は、
電圧線に接続された第1の端子と、
前記第1のスイッチに接続された第2の端子と、
前記RPEブロックに接続された第3の端子と、
電気的接地に接続された第4の端子と、
前記第2のスイッチに接続された第5の端子と、
前記RNEブロックに接続された第6の端子と、
入力電圧に接続された第7の端子と、
を含む、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項14】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、前記受動ブロックに接続された入力端子と、電気的接地に接続された接地端子と、前記リサイクルされた正のエネルギーおよび前記リサイクルされた負のエネルギーが電圧線に供給されるように前記電圧線に接続された出力端子と、を含む、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項15】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、前記入力端子と前記出力端子との間に接続されたパルス幅変調器(PWM)を含む、請求項14に記載のスイッチング回路。
【請求項16】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、能動回路素子および受動回路素子の両方を含む能動ブロックである、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項17】
第2のスイッチと、該第2のスイッチに接続され、該第2のスイッチからの第2の入力信号を減衰させるように構成された第2の受動ブロックと、をさらに備え、前記RPEブロックは、前記第1の受動ブロックおよび前記第2の受動ブロックに接続され、前記第1の受動ブロックおよび前記第2の受動ブロックから正のエネルギーをリサイクルするように構成され、前記RNEブロックは、前記第1の受動ブロックおよび前記第2の受動ブロックに接続され、前記第1の受動ブロックおよび前記第2の受動ブロックから負のエネルギーをリサイクルするように構成される、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項18】
前記受動ブロック、前記RPEブロック、および、前記RNEブロックは、直流(DC)-DCコンバータ、交流(AC)-DCコンバータ、および、DC-ACインバータと共に使用されるように構成されている、請求項10に記載のスイッチング回路。
【請求項19】
スイッチと、
前記スイッチに直列構成で接続され、前記スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックと、
前記受動ブロックに接続され、前記受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックと、
前記受動ブロックに接続され、前記受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックと、
を備える、スイッチング回路。
【請求項20】
前記RPEブロックおよび前記RNEブロックは、それぞれ、前記受動ブロックに接続された入力端子と、電気的接地に接続された接地端子と、前記リサイクルされた正のエネルギーおよび前記リサイクルされた負のエネルギーが電圧線に供給されるように、前記電圧線に接続された出力端子と、を含む、請求項19に記載のスイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、Novel Non-Isolated Zero Current and Voltage Transition Technique(ZCVTT)と題され、2021年6月7日に出願された米国仮出願第63/197,890号の利益および優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野
【0003】
本開示は、電力スイッチングトポロジに使用される回路に関し、より詳細には、電力スイッチングトポロジにおいて電力損失を低減させ、効率を向上させる回路に関する。
【0004】
2.関連技術の説明
【0005】
今日、多くの電子機器において、様々な構成のパワースイッチおよびその他のスイッチが使用されている。例えば、パワースイッチは、燃料電池用DC-DCコンバータ、ソーラーパネルに接続されたインバータ、風力タービン用電力インバータ、電気自動車の充電器および牽引システム、主要な家電製品などに組み込まれる場合がある。これらのパワースイッチは、全て、何らかの固有の非効率性、即ち、電力損失を有している。電力スイッチング損失は、例えば、スイッチが遮断状態(即ち、スイッチが電流のスループットを妨げる状態)から導通状態(即ち、スイッチに電流を流すことができる状態)に移行するとき、および、導通状態から遮断状態に移行するときに発生する。パワースイッチは、また、スイッチが完全な導通状態にあるときに発生する導通損失も生じさせ、これはスイッチに電力を供給するために使用される電流に基づく。
【0006】
化石燃料の削減に向けた現在の動きに伴い、より多くの電気機器が電気を使用して動作するように設計されている。ほとんどの場合、これらのデバイスは(例えば、電源装置内の)スイッチを利用している。電源スイッチによる損失を減少させることで、電気機器の動作を改善することができる。例えば、より効率的な電源スイッチを持つバッテリ充電器は、損失の多い電源スイッチを使うバッテリ充電器よりも、グリッドから低いエネルギーを使ってバッテリを充電する。他の例として、より効率的な電力スイッチを使用する電気自動車は、損失の多い電力スイッチを使用する同じ自動車よりも長い距離を走行することができる。さらに、スイッチ効率が高いほど電気的浪費が減るため、発電所から引き出される電力量が減り、発電所で燃焼される化石燃料の量を減らすことができる。
【0007】
このように、当技術分野では、損失を低減させ、効率を向上させるように設計されたパワースイッチおよびその他のスイッチに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書で説明するのは、スイッチと、スイッチに結合され、スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックと、を含むスイッチング回路である。スイッチング回路は、さらに、受動ブロックに結合され、受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックと、受動ブロックに結合され、受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックと、を含む。
【0009】
上述の実施形態のいずれかにおいて、受動ブロックは、ゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロック、第1のゼロ電圧スイッチングブロック、および、第2のゼロ電圧スイッチングブロックを含む。
【0010】
上述の実施形態のいずれかにおいて、受動ブロックは、ゼロ電流遷移技術(ZCTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロックのみを含む。
【0011】
上述の実施形態のいずれかにおいて、スイッチは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを含み、受動回路は、電圧線に接続された第1の端子と、第1のスイッチに接続された第2の端子と、RPEブロックに接続された第3の端子と、電気的接地に接続された第4の端子と、第2のスイッチに接続された第5の端子と、RNEブロックに接続された第6の端子と、入力電圧に接続された第7の端子と、を含む。
【0012】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、受動ブロックに接続された入力端子と、電気的接地に接続された接地端子と、リサイクルされた正のエネルギーおよびリサイクルされた負のエネルギーが電圧線に供給されるように電圧線に接続された出力端子と、を含む。
【0013】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、入力端子と出力端子との間に接続されたパルス幅変調器(PWM)を含む。
【0014】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、能動回路素子および受動回路素子の両方を含む能動ブロックである。
【0015】
上述の実施形態のいずれかは、第2のスイッチと、第2のスイッチに接続され、第2のスイッチからの第2の入力信号を減衰させるように構成された第2の受動ブロックと、をさらに含み、RPEブロックは、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックに接続され、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックから正のエネルギーをリサイクルするように構成され、RNEブロックは、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックに接続され、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックから負のエネルギーをリサイクルするように構成される。
【0016】
上述の実施形態のいずれかにおいて、受動ブロック、RPEブロック、および、RNEブロックは、直流(DC)-DCコンバータ、交流(AC)-DCコンバータ、および、DC-ACインバータと共に使用されるように構成される。
【0017】
また、スイッチを含むスイッチングシステムの効率を向上させるための回路も開示される。この回路は、スイッチに接続され、スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックを含む。回路は、さらに、受動ブロックに接続され、受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックと、受動ブロックに接続され、受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックと、を含む。
【0018】
上述の実施形態のいずれかにおいて、受動ブロックは、ゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロック、第1のゼロ電圧スイッチングブロック、および、第2のゼロ電圧スイッチングブロックを含む。
【0019】
上述の実施形態のいずれかにおいて、受動ブロックは、ゼロ電流遷移技術(ZCTT)ブロックであり、ゼロ電流スイッチングブロックのみを含む。
【0020】
上述の実施形態のいずれかにおいて、スイッチは、第1のスイッチおよび第2のスイッチを含み、受動回路は、電圧線に接続された第1の端子と、第1のスイッチに接続された第2の端子と、RPEブロックに接続された第3の端子と、電気的接地に接続された第4の端子と、第2のスイッチに接続された第5の端子と、RNEブロックに接続された第6の端子と、入力電圧に接続された第7の端子と、を含む。
【0021】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、受動ブロックに接続された入力端子と、電気的接地に接続された接地端子と、電圧線に接続された出力端子と、リサイクルされた正のエネルギーおよびリサイクルされた負のエネルギーが電圧線に供給されるように、電圧線に結合された出力端子と、を含む。
【0022】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、入力端子と出力端子との間に接続されたパルス幅変調器(PWM)を含む。
【0023】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、能動回路素子および受動回路素子の両方を含む能動ブロックである。
【0024】
上述の実施形態のいずれかは、第2のスイッチと、第2のスイッチに接続され、第2のスイッチからの第2の入力信号を減衰させるように構成された第2の受動ブロックと、をさらに含んでよく、RPEブロックは、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックに接続され、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックから正のエネルギーをリサイクルするように構成され、RNEブロックは、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックに接続され、第1の受動ブロックおよび第2の受動ブロックから負のエネルギーをリサイクルするように構成される。
【0025】
上述の実施形態のいずれかにおいて、受動ブロック、RPEブロック、および、RNEブロックは、直流(DC)-DCコンバータ、交流(AC)-DCコンバータ、および、DC-ACインバータとともに使用されるように構成される。
【0026】
また、スイッチング回路も開示される。スイッチング回路は、スイッチと、直列構成でスイッチに接続され、スイッチからの入力信号を減衰させるように構成された受動ブロックと、を含む。スイッチング回路は、受動ブロックに接続され、受動ブロックからの正のスパイクから正のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル正エネルギー(RPE)ブロックをさらに含む。スイッチング回路は、受動ブロックに接続され、受動ブロックからの負のスパイクから負のエネルギーをリサイクルするように構成されたリサイクル負エネルギー(RNE)ブロックをさらに含む。
【0027】
上述の実施形態のいずれかにおいて、RPEブロックおよびRNEブロックは、それぞれ、受動ブロックに接続された入力端子と、電気的接地に接続された接地端子と、リサイクルされた正のエネルギーおよびリサイクルされた負のエネルギーが電圧線に供給されるように電圧線に接続された出力端子と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他のシステム、方法、特徴、および、利点は、以下の図および詳細な説明を検討することにより、当業者には明らかであるか、または明らかになるであろう。このような追加のシステム、方法、特徴、および、利点は、全て、本明細書内に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。図面に示された構成部分は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の重要な特徴をより良く説明するために誇張されている場合がある。図面において、同様の参照数字は、異なる図全体を通して同様の部品を示す。
【
図1A】
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTTブロック、リサイクル正エネルギー(RPE)ブロック、および、リサイクル負エネルギー(RNE)ブロックを含む、本明細書に開示されるゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)の特定のブロックを図示する。
【
図1B】
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTTブロック、リサイクル正エネルギー(RPE)ブロック、および、リサイクル負エネルギー(RNE)ブロックを含む、本明細書に開示されるゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)の特定のブロックを図示する。
【
図1C】
図1Cは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTTブロック、リサイクル正エネルギー(RPE)ブロック、および、リサイクル負エネルギー(RNE)ブロックを含む、本明細書に開示されるゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)の特定のブロックを図示する。
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、
図1A~1CのZCVTTブロックの例示的な回路レイアウトを示す概略図である。
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの実施形態によるゼロ電流遷移技術(ZCTT)ブロックの例示的な回路配置を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、従来の直流(DC)-DCコンバータに対するZCVTT技術の利点を例示する表である。
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、従来の交流(AC)-DCコンバータに対するZCVTT技術の利点を例示する表である。
【
図6A】
図6Aは、本開示のいくつかの実施形態による従来のDC-DC昇圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示のいくつかの実施形態によるZCVTT技術を含むDC-DC昇圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図6C】
図6Cは、本開示のいくつかの実施形態によるZCVTT技術を含む同期DC-DC昇圧コンバータの回路配置を例示する概略図である。
【
図6D】
図6Dは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む双方向同期DC-DC昇圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図6E】
図6Eは、本開示のいくつかの実施形態による従来のDC-DC降圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図6F】
図6Fは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む一方向DC-DC降圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図6G】
図6Gは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む一方向同期DC-DC降圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図6H】
図6Hは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む双方向同期DC-DC降圧コンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示のいくつかの実施形態による従来の単相一方向AC-DCコンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む単相一方向AC-DCコンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図7C】
図7Cは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む単相一方向同期DC-ACインバータの回路配置を例示する概略図である。
【
図7D】
図7Dは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む単相双方向同期AC-DCコンバータおよびDC-ACインバータの回路配置を示す概略図である。
【
図7E】
図7Eは、本開示のいくつかの実施形態によるZCVTT技術を含む三相AC-DCコンバータの回路配置を示す概略図である。
【
図7F】
図7Fは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む三相DC-ACインバータの回路配置を例示する概略図である。
【
図7G】
図7Gは、本開示のいくつかの実施形態による、ZCVTT技術を含む三相双方向AC-DCコンバータおよびDC-ACインバータの回路配置を示す概略図である。
【
図8A】
図8Aは、本開示のいくつかの実施形態によるシミュレーションで使用される従来の昇圧コンバータの概略図である。
【
図8B】
図8Bは、本開示のいくつかの実施形態による
図8Aの昇圧コンバータを用いたシミュレーションの結果を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、本開示のいくつかの実施形態によるZCVTT技術を含む昇圧コンバータを使用したシミュレーションの結果を示す。
【
図8D】
図8Dは、本開示のいくつかの実施形態に従って含まれるZCTT技術を有する昇圧コンバータを使用したシミュレーションの結果を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示のいくつかの実施形態による昇圧コンバータにおいてZCTT技術およびZCVTT技術を利用した結果としての効率の向上を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、回路におけるゼロ電流・電圧遷移技術(ZCVTT)スイッチングのためのシステム、装置、および、方法について説明する。本明細書に記載されるZCVTTスイッチング回路は、従来のスイッチング回路と比較して大きな利点を提供する。例えば、本開示の回路は、スイッチング動作中に発生する余分なエネルギーをリサイクルして、動作中の電力損失を低減させるように設計されている。この効率の向上により消費電力が低減されるため、1回のバッテリ充電でデバイスに長時間電力を供給できるようになり、バッテリを充電するためのエネルギーが低減されるなどの利点が得られる。
【0030】
ゼロ電圧スイッチングを含む標準的なソフトスイッチング技術は、高負荷時の直流(DC)-DCコンバータに使用されてきた。低電力範囲では、標準的なZVSはハードスイッチと同様の働きをする。一方、ZCVTTは、ハーフブリッジおよびフルブリッジのトポロジを変更し、ソフトスイッチングトポロジと追加の受動/能動回路素子を組み合わせることで、スイッチング時の電流の変化率(di/dt)と電圧の変化率(dv/dt)を制限し、スイッチング損失を低減させて効率を向上させる。ZCVTTは、また、電流(i)または電圧(v)の少なくとも一方をゼロにし、両者の積(iv)を可能な限りゼロに近づけることで、スイッチング間隔において効果を発揮する。
【0031】
図1~3を参照すると、ZCVTTイノベーションは、3つのブロック、即ち、(1)ZCVTTブロック100(後述するように、3つのサブブロック:ZCS、ZVS1、および、ZVS2を含む)、リサイクル正エネルギー(RPE)ブロック130、および、リサイクル負エネルギー(RNE)ブロック160から構成される。ZCVTTブロック100は、A1-A7と表示された7つの端子(即ち、入力端子および/または出力端子)を含み、RPEブロック130は、B1-B3と表示された3つの端子を含み、RNEブロック160は、C1-C3と表示された3つの端子を含む。ZCVTTイノベーションは、ZCVTTブロック100をRPEブロック130およびRNEブロック160と同時に使用して、切り捨てられたエネルギーをスイッチング回路にリサイクルさせることを含む。即ち、RPEブロック130はリサイクルされた正のエネルギーをスイッチング回路に戻す一方、RPEブロック160はリサイクルされた負のエネルギーをスイッチング回路に戻す。リサイクルされた正と負のエネルギーは、回路によって使用されるため、本来であれば失われるはずのエネルギーが、代わりに有用なエネルギーとして利用することができる。これにより、ZCVTTが適用されるスイッチング回路の損失が大幅に減少し、効率が向上する。ZCVTTイノベーションは、全ての非絶縁型一方向および双方向DC-DC(昇圧および降圧)、ハーフブリッジおよびフルブリッジDC-交流(AC)およびAC-DCトポロジに適用できる。
【0032】
ZCVTTブロック100、130、160は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、シリコン(Si)または炭化ケイ素(SiC)金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、および、窒化ガリウム(GaN)トランジスタなどの任意のスイッチと直列に回路内で使用することができる。スイッチの設計者は、ZCVTT技術で使用するこれらのスイッチのいずれかを選択できる。トポロジと用途によっては、ZCVTTブロック100の複数のインスタンスを標準回路に追加することができる。例えば、3相双方向DC-ACインバータでは、3つのZCVTTブロック100を追加することができる。ほとんどのトポロジおよび用途では、単一のRPEブロック130および単一のRNEブロック160のみが回路に追加される場合がある。一部の実施例では、ZCVTTブロック100の代わりにゼロ電流遷移技術(ZCTT)ブロックが使用されてもよく、そのような実施例では、回路は単一のZCSブロックのみを含み、ZVSブロックは含まなくてもよい。スイッチ設計者は、サイズ上の制約、コスト上の制約、スイッチの望ましい動作などの理由から、ZCVTTブロックではなくZCTTブロックを含めることができる。ZCVTTブロックは、ZCTTよりも高価でサイズが大きくなる可能性があるが、ZCTTよりも高い効率を提供することができる。
【0033】
図2を参照すると、ZCVTTブロックの例示的なセットを示す回路201が図示されている。図示のように、回路201は、ZCVTTブロック200、RPEブロック230、および、RNEブロック260を含んでよい。ZCVTTブロック200は、ZVS1ブロック204とZVS2ブロック206との間に接続されたZCSブロック202を含む。第1のスイッチ208が、(端子A5を介して)ZCSブロック202および(端子A4を介して)ZVS1ブロック204に接続され、第2のスイッチ210が、(端子A2を介して)ZCSブロック202および(端子A1を介して)ZVS2ブロック206に接続されてもよい。電圧源212は、端子A7を介してZCSブロック202に接続されてよい。
【0034】
RPEブロック230は、ZCVTTブロック200の端子A3およびRPEブロック230の端子B3を介してZVS2ブロック206の出力に接続されてよい。RNEブロック260は、ZCVTTブロック200の端子A6およびRNEブロック260の端子C3を介してZVS1ブロック204の出力に接続されてもよい。RPEブロック230は、端子B1を介して電気的接地214に接続されてよく、RNEブロック260は、端子C1を介して接地214に接続されてよい。RPEブロック230は電圧線216に接続され、端子B2を介して電圧線216に出力電圧または出力電流の少なくとも一方を供給することができる。同様に、RNEブロック260は電圧線216に接続され、端子C2を介して電圧線216に出力電圧または出力電流の少なくとも一方を供給することができる。RPEブロック230は、リサイクルされた正のエネルギーを電圧線216に供給し、RNEブロック260は、リサイクルされた負のエネルギーを電圧線216に供給する。電圧線216は、電圧線216上の電圧(または電流、即ちリサイクルされたエネルギー)が回路201の出力として提供され、リサイクルされたエネルギーが、回路201が実装されるシステム内の他の個所に提供されるように、出力端子218に接続されてもよい。
【0035】
次に、RPEブロックおよびRNEブロックの動作について説明する。RPEブロック内の論理機能は、コントローラPWM4によって提供され得る。コントローラPWM4は、論理機能を提供する任意のコントローラ、プロセッサ、または他の論理デバイス(例えば、スイッチまたは他の電子部品の集合体)を含むことができる。例えば、コントローラPWM4は、パルス幅変調器(PWM)コントローラを含むことができる。コントローラPWM4は、論理デバイスによって使用可能な命令を記憶することができる非一過性メモリをさらに含むことができ、論理デバイスによって要求される情報を記憶することができる。PWM4は、感知された電圧に基づいて特定の動作を行うように設計することができる。例えば、PWM4は感知された電圧に基づいてスイッチSW4を制御することができる。特に、PWM4のIsense端子は、ZCVTTブロック200の端子A3によって出力される電圧に対応する、コンデンサーC3にわたる電圧に対応する電圧を検出することができる。電圧が、閾値電圧に達するか、または、閾値電圧を超えることに応答して、PWM4は、オン状態とオフ状態との間でSW4を制御し得る。PWM4は、インダクターL5を充電するためにSW4をターンオン(即ち、回路を閉じる)するように制御し、インダクターL5からシステムに戻るエネルギーを放出するためにSW4をターンオフ(即ち、回路を開く)するように制御することができる。エネルギーはダイオードD8を通過してシステムに戻る。
【0036】
RNEブロック内の論理機能は、コントローラPWM3によって提供され得る。コントローラPWM3は、論理機能を提供する任意のコントローラ、プロセッサ、または、他の論理デバイス(例えば、スイッチまたは他の電子部品の集合体)を含んでよい。例えば、コントローラPWM3は、パルス幅変調器(PWM)コントローラを含んでよい。コントローラPWM3は、論理デバイスによって使用可能な命令を記憶することができる非一過性メモリをさらに含んでよく、論理デバイスによって要求される情報を記憶することができる。PWM3は、検知された電圧に基づいて特定の動作を行うように設計されてもよい。例えば、PWM3は検知された電圧に基づいてスイッチSW3を制御することができる。特に、PWM3のIsense端子は、ZCVTTブロック200の端子A6によって出力される電圧に対応する、コンデンサーC10にわたる電圧に対応する電圧を検出することができる。電圧が、閾値電圧に達するか、または、閾値電圧を超えることに応答して、PWM3は、オン状態とオフ状態との間でSW3を制御し得る。PWM3は、インダクターL9を充電するためにSW3をターンオン(即ち、回路を閉じる)するように制御してもよく、インダクターL9からシステムに戻るエネルギーを放出するためにSW3をターンオフ(即ち、回路を開く)するように制御してもよい。エネルギーはダイオードD10を通過してシステムに戻る。
【0037】
次に
図3に着目すると、ZCTTブロックの例示的なセットを示す回路301が示されている。上述したように、ZCTTは、1つのZCSブロックのみを有し、ZVSブロックを有しないZCVTTの特別なケースである。特に、回路301は、ZCTTブロック300(単一のZCSブロック302を備える)、RPEブロック330、および、RNEブロック360を含んでよい。ZCSブロック302は、
図2のZCSブロック202と同様の機能と同様の構成を含む。ZCTTブロック300は、ZCVTTブロックの7端子ではなく、5端子(A1~A5と表示)を含む。特に、端子A4はRNEブロック360の端子C3に接続され、端子A5はRPEブロック330の端子B3に接続されている。端子A2は第1のスイッチ308に接続され、端子A1は第2のスイッチ310に接続されている。端子A3は電源312に接続されている。
【0038】
RPEブロック330は、
図2のRPEブロック230と同様の特徴および同様の構成を含んでよく、RNEブロック360は、
図2のRNEブロック260と同様の特徴および同様の構成を含んでよい。RPEブロック330およびRNEブロック360の動作は、
図2のRPEブロック230およびRNEブロック260と同様に機能し得る。その点で、RPEブロック330の端子B1は、電気的接地314に接続されてよく、RNEブロック360の端子C1は、接地314に接続されてよい。RPEブロック330の端子B2は、電圧線316に接続され、電圧線316にリサイクルエネルギーを供給することができ、RNEブロック360の端子C2は、電圧線316に接続され、電圧線316にリサイクルエネルギーを供給することができる。電圧線316は出力端子318に接続され、回路301が実装されたシステム内の他の個所にリサイクルエネルギーを供給できるようにすることができる。
【0039】
様々な能動および受動電気部品(例えば、抵抗器、コンデンサー、インダクター、集積回路(IC)、スイッチなど)が、様々な機能を提供するために、
図2の回路201または
図3の回路301に含まれてよい。特定のICが示されているが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、1つまたは複数の論理機能を実行可能な任意のICを含めてよいことを理解するであろう。同様に、本開示の範囲を逸脱することなく、任意のタイプのスイッチを含めてよい。さらに、受動素子(例えば、抵抗器、コンデンサー、インダクター)の値は、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の回路の所望の機能および性能に基づいて変化し得る。同様に、回路201、301内の様々なブロックのトポロジまたは構成は、本開示の範囲から逸脱することなく、所望の動作または構成に基づいて調整または変更され得る。
【0040】
本明細書で説明し示したZCVTTイノベーションは(ZCTTイノベーションとともに)、ZCVTTまたはZCTTの特徴を組み込んでいない他のスイッチング回路と比較して、様々な利点を提供し得る。例えば、ZCVTTおよびZCTTのイノベーションは、本明細書に記載される任意のスイッチング回路トポロジに対して、より高い効率、より高い電力密度、および、より高いスイッチング周波数を提供する。さらに、ZCVTTおよびZCTTのイノベーションにより、電流の変化率(di/dt)および電圧の変化率(dv/dt)、電磁干渉(EMI)、重量、および、本明細書に記載される、あらゆるスイッチング回路トポロジの全体的なサイズが縮小される。従来のスイッチング回路にサイズの制限がある場合、電力損失、接合部-ケース熱抵抗(θjc)、最大接合部温度の制限(例えば、摂氏150度、または、摂氏175度)により、標準的な昇圧回路トポロジを使用できない場合がある。回路にZCVTTを追加すると、ZCVTTとZCTTの利点により、昇圧トポロジが実現可能になる。ZCVTT(および、ZCTT)は、さらに、スイッチのデータシート(IGBT、SiCなど)に記載されているスイッチング特性に近いゲート抵抗(RG)値を利用する。さらに、ZCVTTまたはZCTT素子を追加することにより、スイッチング回路のスイッチング周波数が増加し、サイズが小さくなるため、モーターコントローラーで使用されるDC-ACインバータなどの用途で純粋な正弦波を生成するために、より小さなインダクター/キャパシターフィルターを使用することが可能になり、モーターの全体的な効率が向上する。
【0041】
次に
図4に着目すると、スイッチング回路にZCVTT(および、ZCTT)技術を含めることで、DC-DCコンバータの複数の従来型トポロジと比較してもたらされる改善点が表に示されている。この利点は、上述したものと同じであり、試験で検証されている。示されているように、ZCVTTおよびZCTT技術は、DC-DCスイッチング回路の多くのパラメータを改善し、従来のDC-DCトポロジのそれぞれと比較して、より高い効率、損失の低減、コストの削減、および、性能の向上を実現する。
図5に着目すると、スイッチング回路にZCVTT(および、ZCTT)技術を含めることで、AC-DCコンバータ(例えば、双方向AC-DCコンバータ)の複数の従来トポロジと比較してもたらされる改善が表で示されている。示されているように、ZCVTTおよびZCTT技術は、AC-DCスイッチング回路の多くのパラメータを改善し、従来のAC-DCトポロジのそれぞれと比較して、より高い効率、損失の低減、コストの削減、および、性能の向上を提供する。
【0042】
図6A~6Hは、様々なDC-DCコンバータ(昇圧および降圧の両方)におけるZCVTT技術の例示的な実装を示す例示的な回路図である。端子識別子(A1~A7、B1~B3、および、C1~C3)は、
図2に示されるのと同じ端子を示し、追加情報は、可能な場合、ZCVTT技術の包含を容易にするために、
図2の回路
図201に関して提供される。ZCVTTブロックは、図示のように、
図6A~7Hの回路に配置され得る(即ち、ZCVTT、RNE、および、RPEブロックは、
図2に示されるように、これらの図面に正確に挿入され得る)。各実施例において(ZCVTTではなく)ZCTTを実施するために
図2のZCVTTブロックをどのように修正するかの説明も提供される。即ち、
図2のZCVTTブロックは、ZCVTTの代わりにZCTTを実施するために、各図面に関して論じたように修正され、特定の図面のZCVTTブロックに配置され得る。
【0043】
図6Aは、ZCVTTまたはZCTT技術を用いない従来の一方向DC-DC昇圧コンバータを示す回路600を示す。図示のように、コンバータは、スイッチSW、入力電圧Vin、および、出力電圧Voutを、様々な受動回路素子と共に含む。
図6Bは、ZCVTT技術を含む回路602を示す。特に、回路602は、ZCVTTブロック200、RPEブロック230、および、RNEブロック260を含む。図示のように、単一スイッチSWは、ZCVTTブロック200の端子A5に接続され、この端子A5は、入力電圧Vin、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。RPEブロック230およびRNEブロック260は出力Voutにも接続される。ZCVTTブロックは、
図2に示されたバージョンから変更されない場合がある。DC-DC昇圧コンバータにZCTTを実装するために、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を削除し、LS2をバイパスすることによって、
図2の回路201を変更することができる。回路602は、電力損失の低減、性能の向上、効率の向上など、回路600を上回る上述の利点を提供する。
【0044】
図2および
図6Cを参照すると、回路604は、ZCVTT技術を含む一方向同期DC-DC昇圧コンバータを示す。図示のように、ZCVTTブロック200は、入力電圧Vin、RPEブロック230、および、RNEブロック260に接続される。ZCVTTブロックは、また、出力Voutとともに、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2に接続されている。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続されている。回路604にZCTTを実装するために、
図2の回路201は、ZVS1ブロックおよびZVS2ブロックの回路素子を除去し、LS2をバイパスすることによって変更することができる。
【0045】
図2および
図6Dに着目すると、回路606は、ZCVTT技術を含む双方向同期DC-DC昇圧コンバータを示している。回路606は、
図2の回路201の回路素子を調整することなく、所望のように機能することができる。回路606にZCTT技術を実装するために、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去することによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0046】
図6Eは、従来の一方向DC-DC降圧コンバータを示す回路608を示す。図示のように、回路208は、ZCVTTブロックまたはZCTTブロックのいずれも欠いている。
図2、
図6E、および、
図6Fを参照すると、回路610は、ZCVTT技術を含む一方向DC-DC降圧コンバータを示す。図示のように、ZCVTTブロック200は、入力電圧Vin、RPEブロック230、および、RNEブロック260に接続されている。ZCVTTブロックは、また、出力VoutとともにスイッチSWに接続されている。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続されている。回路610にZCTT技術を実装するために、
図2の回路201は、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去し、LS1をバイパスすることによって変更することができる。
【0047】
図2および
図6Gに着目すると、回路612は、ZCVTT技術を含む一方向同期DC-DC降圧コンバータを示す。図示のように、ZCVTTブロック200は、入力電圧Vin、RPEブロック230、および、RNEブロック260に接続されている。ZCVTTブロックは、また、出力Voutとともに、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2に接続されている。RPEブロック230とRNEブロック260も出力Voutに接続されている。ZCTT技術を回路612に実装するために、
図2の回路201は、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去し、LS1をバイパスすることによって変更することができる。
【0048】
図2および
図6Hを参照すると、回路614は、ZCVTT技術を含む双方向同期DC-DC降圧コンバータを示す。図示のように、ZCVTTブロック200は、入力電圧Vin、RPEブロック230、および、RNEブロック260に接続されている。ZCVTTブロックは、また、出力Voutとともに、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2に接続されている。RPEブロック230およびRNEブロック260もまた、出力Voutに接続される。回路614は、
図2の回路201の回路素子を調整することなく、所望のように機能することができる。双方向同期DC-DC降圧コンバータにZCTT技術を実装するために、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去することによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0049】
図7Aは、ZCVTTまたはZCTT技術を使用しない従来の一方向AC-DCインバータを示す回路700を図示する。図示のように、コンバータは、種々の受動回路素子と共に、2つのスイッチSW1およびSW2、入力AおよびB、ならびに、出力電圧Voutを含む。
図7Bは、ZCVTT技術を含む一方向AC-DCインバータを示す回路702を図示する。特に、回路702は、第1のZCVTTブロック200Aおよび第2のZCVTTブロック200B、RPEブロック230およびRNEブロック260を含む。図示のように、第1のスイッチSW1は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続され、第2のスイッチSW2は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続される。ZCVTTブロック200A、200Bは、それぞれ、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。第1のZCVTTブロック200Aは入力Bに接続され、第2のZCVTTブロック200Bは入力Aに接続される。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続される。ZCTT技術を一方向AC-DCコンバータに実装するために、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去し、LS2をバイパスすることによって、
図2の回路201を変更することができる。回路702は、電力損失の低減、性能の向上、効率の向上など、回路700を上回る上述の利点を提供する。
【0050】
図7Cは、ZCVTT技術を含む一方向同期AC-DCインバータを示す回路704を図示する。特に、回路704は、第1のZCVTTブロック200Aおよび第2のZCVTTブロック200B、RPEブロック230およびRNEブロック260を含む。図示のように、第1のスイッチSW1は第2のZCVTTブロック200Bの端子A5に接続され、第2のスイッチSW2は第2のZCVTTブロック200Bの端子A2に接続され、第3のスイッチSW3は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続され、第4のスイッチSW4は第1のZCVTTブロック200Aの端子A2に接続される。ZCVTTブロック200A、200Bは、それぞれ、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。第1のZCVTTブロック200Aは入力Bに接続され、第2のZCVTTブロック200Bは入力Aに接続される。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続される。DC-ACインバータにZCTT技術を実装するために、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を削除し、LS1をバイパスすることによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0051】
図7Dは、ZCVTT技術を含む双方向同期AC-DCおよびDC/ACインバータを示す回路706を図示する。特に、回路706は、第1のZCVTTブロック200Aおよび第2のZCVTTブロック200B、RPEブロック230およびRNEブロック260を含む。図示のように、第1のスイッチSW1は第2のZCVTTブロック200Bの端子A5に接続され、第2のスイッチSW2は第2のZCVTTブロック200Bの端子A2に接続され、第3のスイッチSW3は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続され、第4のスイッチSW4は第1のZCVTTブロック200Aの端子A2に接続される。ZCVTTブロック200A、200Bは、それぞれ、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。第1のZCVTTブロック200Aは入力Bに接続され、第2のZCVTTブロック200Bは入力Aに接続される。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続される。回路706は、
図2の回路201の回路素子を調整することなく、所望のように機能することができる。双方向同期AC-DCコンバータおよびDC-ACインバータにZCTT技術を実装するには、ZVS1ブロックおよびZVS2ブロックの回路素子を除去することによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0052】
図7Eは、ZCVTT技術を含む三相AC-DCインバータを示す回路708を図示する。特に、回路708は、第1のZCVTTブロック200A、第2のZCVTTブロック200B、第3のZCVTTブロック200C、RPEブロック230、およびRNEブロック260を含む。図示のように、第1のスイッチSW1は第3のZCVTTブロック200Cの端子A5に接続され、第2のスイッチSW2は第3のZCVTTブロック200Cの端子A2に接続され、第3のスイッチSW3は第2のZCVTTブロック200Bの端子A5に接続され、第4のスイッチSW4は第2のZCVTTブロック200Bの端子A2に接続され、第5のスイッチSW5は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続され、第6のスイッチSW6は第1のZCVTTブロック200Aの端子A2に接続される。ZCVTTブロック200A、200B、200Cは、それぞれ、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。第1のZCVTTブロック200Aは入力Cに接続され、第2のZCVTTブロック200Bは入力Bに接続され、第3のZCVTTブロック200Cは入力Aに接続されている。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続される。回路708は、
図2の回路201の回路素子を調整することなく、所望のように機能することができる。三相AC-DCコンバータにZCTT技術を実装するために、ZVS1ブロックおよびZVS2ブロックの回路素子を除去することによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0053】
図7Fは、ZCVTT技術を含む三相DC-ACインバータを示す回路710を図示する。特に、回路710は、第1のZCVTTブロック200A、第2のZCVTTブロック200B、第3のZCVTTブロック200C、RPEブロック230、および、RNEブロック260を含む。図示のように、第1のスイッチSW1は第3のZCVTTブロック200Cの端子A5に接続され、第2のスイッチSW2は第3のZCVTTブロック200Cの端子A2に接続され、第3のスイッチSW3は第2のZCVTTブロック200Bの端子A5に接続され、第4のスイッチSW4は第2のZCVTTブロック200Bの端子A2に接続され、第5のスイッチSW5は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続され、第6のスイッチSW6は第1のZCVTTブロック200Aの端子A2に接続される。ZCVTTブロック200A、200B、200Cは、それぞれ、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。第1のZCVTTブロック200Aは入力Wに接続され、第2のZCVTTブロック200Bは入力Vに接続され、第3のZCVTTブロック200Cは入力Uに接続されている。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続される。回路708は、
図2の回路201の回路素子を調整することなく、所望のように機能することができる。三相DC-ACインバータにZCTT技術を実装するには、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去することによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0054】
図7Gは、ZCVTT技術を含む三相双方向AC-DCおよびDC-ACインバータを示す回路712を図示する。特に、回路712は、第1のZCVTTブロック200A、第2のZCVTTブロック200B、第3のZCVTTブロック200C、RPEブロック230、および、RNEブロック260を含む。図示のように、第1のスイッチSW1は第3のZCVTTブロック200Cの端子A5に接続され、第2のスイッチSW2は第3のZCVTTブロック200Cの端子A2に接続され、第3のスイッチSW3は第2のZCVTTブロック200Bの端子A5に接続される、第4のスイッチSW4は第2のZCVTTブロック200Bの端子A2に接続され、第5のスイッチSW5は第1のZCVTTブロック200Aの端子A5に接続され、第6のスイッチSW6は第1のZCVTTブロック200Aの端子A2に接続される。ZCVTTブロック200A、200B、200Cは、それぞれ、RPEブロック230、RNEブロック260、および、出力ラインVoutに接続される。第1のZCVTTブロック200Aは入力Cに接続され、第2のZCVTTブロック200Bは入力Bに接続され、第3のZCVTTブロック200Cは入力Aに接続されている。RPEブロック230およびRNEブロック260も出力Voutに接続される。回路708は、
図2の回路201の回路素子を調整することなく、所望のように機能することができる。ZCTT技術を三相双方向に実装するために、ZVS1ブロックとZVS2ブロックの回路素子を除去することによって、
図2の回路201を変更することができる。
【0055】
シミュレーションは、SPICEシミュレータソフトウェア(LTspice(登録商標)、マサチューセッツ州ウィルミントンのアナログデバイセズ社から入手可能)を使用して、ZCVTT技術(即ち、RPEブロックおよびRNEブロックを備えた少なくとも1つのZCVTTブロックまたはZCTTブロック)を欠くスイッチング回路と、ZCVTT技術を含む類似のスイッチング回路とを比較した。
【0056】
図8Aおよび
図8Bを参照すると、
図8Aに示すように、LTspice(登録商標)を使用して回路800が設計された。回路800は、シリコンMOSFETスイッチを使用する従来のDC-DC昇圧コンバータとして設計された。
【0057】
図8Bは、
図8Aの回路800を用いたシミュレーションの結果802を示す。結果802は、ダイオードDを流れる電流(I(D))、MOSFETスイッチSWを流れる電流(Id(SW))、スイッチSWのドレイン・ソース間電圧(V(SWDS))、ゲート・ソース電圧(V(N031))、ゲート電流(Ig(SW))、および、スイッチを介する総電力損失(V(SWDS)*Id(SW)+V(N031)*Ig(SW))を、全て設定された期間にわたって示している。示されているように、スイッチSWがオフになっている間にもいくらかの電力が失われ、スイッチがオンになると、かなりの電力が失われる(約8.5957ミリ秒(ms)のスパイクによって証明される)。この損失は、スイッチング損失(スパイク)と導通損失(スイッチSWがオフのとき)によるものである。
【0058】
次に
図8Cに着目すると、ZCVTT技術を含む昇圧コンバータを使用したシミュレーションの結果804が示されている。シミュレーションはLTSpice(登録商標)を使用し、
図2の回路201と同様に設計された回路で実行された。この点に関して、シミュレーションはZCVTTではなくZCTTを使用して実行された。結果は、ダイオードDを流れる電流(I(D))、MOSFETスイッチSWを流れる電流(Id(SW))、スイッチSWのドレイン・ソース間電圧(Vswds)、スイッチを介した電力損失(V(SWDS)*Id(SW)+V(N031)*Ig(SW))、および、インダクターを流れる電流(I(Ls))を、全て設定された期間にわたって示している。図示のように、ZCVTTブロックが追加された結果、
図8Bの結果802に比べて電力損失が大幅に減少している。従来の昇圧コンバータ(即ち、ZCVTTまたはZCTTなし)におけるスイッチターンオフおよびスイッチターンオンでのピーク電力損失は、それぞれ、90kWおよび2.6MWである。ZCVTTを使用した昇圧コンバータのスイッチターンオフおよびスイッチターンオンにおけるピーク電力損失は、それぞれ、8.5kWおよび6.3kWである。ZCVTTを用いた昇圧コンバータでは、従来の昇圧コンバータと比較して、スイッチターンオフおよびスイッチターオンにおける電力損失が、それぞれ、91%および99.8%低減されている。電力損失スパイクを低減させるための主な素子は、
図2のZCSブロックのLS1とLS2、および、
図2のZVS1ブロックとZVS2ブロックである。
【0059】
図8Dを参照すると、ZCTT技術を含む昇圧コンバータを使用したシミュレーションの結果806が示されている。シミュレーションはLTSpice(登録商標)を使用し、
図3の回路301と同様に設計された回路で実行された。即ち、ZCVTTブロックには、ZVSブロックを含まないZCSブロックが含まれる。その点で、シミュレーションはZCVTTではなくZCTTを使用して実行された。結果は、ダイオードDを流れる電流(I(D))、MOSFETスイッチSWを流れる電流(Id(SW))、スイッチSWのドレイン・ソース間電圧(Vswds)、スイッチを介した電力損失(V(SWDS)*Id(SW)+V(N031)*Ig(SW))、および、インダクターを流れる電流(I(Ls))を、全て一定期間にわたって示している。図示のように、ZCTTブロックを追加した結果、
図8Bの結果802と比較して電力損失が大幅に減少している。従来の昇圧コンバータにおけるスイッチターンオフおよびスイッチターンオンのピーク電力損失は、それぞれ、90kWおよび2.6MWである。ZCTT付き昇圧コンバータのスイッチターンオフ時およびスイッチターンオン時のピーク電力損失は、それぞれ、90kWおよび6.3kWである。ZCVTTを用いた昇圧コンバータでは、従来の昇圧コンバータと比較して、スイッチターンオフおよびスイッチターンオンにおける電力損失が、それぞれ、0%および99.8%低減されている。電力損失スパイクを低減させる主な素子は、
図2のZCSブロックのLS1とLS2である。
【0060】
次に、
図9に着目すると、チャート900は、ZCVTT技術およびZCTT技術を使用した効率の向上を示している。Y軸は、効率パーセント(効率%)を示し、X軸は、回路に加えられる負荷(キロワット(KW)単位)を示す。図示のように、2KWの負荷での効率向上は、ZCVTTブロックを使用した従来の昇圧コンバータよりも約1.4%大きく、ZCTTブロックを使用した場合の効率向上よりもわずかに大きい。しかしながら、ZCTT技術を搭載しても、従来の昇圧コンバータよりも大幅に高い効率が得られることがわかる。負荷が大きい場合(約20KW)の効率向上は、2KWの場合よりも大きい。即ち、20KWでの効率向上は、ZCVTTブロックを使用した従来の昇圧コンバータよりも約4.5%大きい。さらに、20KWでの効率向上は、従来の昇圧コンバータと比較して、ZCTT技術を使用した場合の方が大幅に大きい。
【0061】
本明細書で開示するZCVTTおよびZCTT技術は、DC-DCコンバータ、AC-DCコンバータ、および、DC-ACコンバータを含む複数のスイッチングアプリケーションにおいて、スイッチング効率を高め、損失を低減させるために使用することができる。ZCVTTおよびZCTTが利用されるDC-DCコンバータの例としては、昇圧、ブースト、および、降圧コンバータを含む非絶縁型DC-DCコンバータ、AC-DC電源ユニット(PSU)およびDC-DC配電システムが挙げられる。さらに、燃料電池や非絶縁型双方向DC-DCコンバータも含まれる。その他の例としては、低雑音ブロック(LNB)降圧コンバータ、セットトップメディアボックス(ケーブルボックス、衛星受信機など)、パーソナルコンピュータ(PC)カード衛星受信機などがある。また、ソーラーインバータ(例えば、入力およびバッテリ充電器)、LED照明および制御(例えば、スマートフォン、キーボード、および、その他のアクセサリー、ウェアラブルデバイス、交通信号など)も含まれる。
【0062】
力率変換(PFC)プロセスは、多くの装置で使用される可能性がある。ZCVTTは、単相または三相無停電電源装置(UPS)、スイッチモード電源装置(SMPS)、暖房、換気、および、空調(HVAC)モーターコントローラー、トレッドミル、および、レーザシステムを含む、多くの用途の入力段で使用され得るPFCプロセスにおいて利点を提供するように実施され得る。ZCVTT技術によるPFCは、主要家電製品(冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、テレビ、電子レンジ、その他の雑多な機器など)、IH調理器、電気自動車(EV)用車載充電器(OBC)、直流急速充電ステーション、工業用溶接機器、風力タービン電力インバータ、保護リレー試験システムなどにも使用できる。
【0063】
ZCVTTまたはZCTTは、単相または三相UPS、AC電気モーター(EVまたはハイブリッド電気自動車(HEV)および産業用途など)用の可変周波数ドライブ(VFD)、DCモーター速度制御、および、クラスDアンプを含むDC-ACコンバータを含む複数の技術に含まれ、利点を提供することもできる。ZCVTTまたはZCTTを含めることで恩恵を受ける可能性のあるその他のDC-ACコンバータには、太陽光発電バッテリシステムのインバータ、風力タービン電源インバータ、保護リレー試験システム、電気自動車の主牽引インバータ、自動車の非絶縁型48ボルトスタートストップシステムなどがある。
【0064】
本明細書を参照すれば明らかなように、ZCVTTおよびZCTT技術は大きな利点を提供し、複数の産業で複数の用途に使用することができる。ZCVTTおよびZCTT技術の利点は多岐にわたり、電力損失の低減、効率の向上、および、スイッチ性能の向上が含まれる。ZCVTTおよびZCTTの特定の用途および利点が本明細書に開示されているが、その他の用途も本開示の範囲内と考えられ、本明細書に開示された技術を利用することにより、さらなる利点が実現される可能性がある。
【0065】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用される場合、「AまたはBの少なくとも1つ」は、「A」のみ、「B」のみ、または、「AおよびB」を含む。方法/システムの例示的な実施形態は、例示的な様式で開示されている。したがって、全体を通して採用されている用語は、非限定的な態様で読まれるべきである。本明細書における教示に対する若干の修正は、当該技術に精通した者には生じるであろうが、本明細書において保証される特許請求の範囲内に包含されることが意図されるのは、本明細書において寄与される技術に対する進歩の範囲内に合理的に含まれる全てのそのような実施形態であり、その範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物に照らす場合を除き、制限されないことが理解されよう。
【国際調査報告】