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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】酵素バリアント及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20240703BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240703BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20240703BHJP
   C12P 7/44 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N15/63 Z ZNA
C12N9/16
C12P7/18
C12P7/44
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023570105
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 AU2022050455
(87)【国際公開番号】W WO2022236377
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】2021901431
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427250
【氏名又は名称】サムサラ・エコ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・ウェスリー・ソーンダース
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・スペンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ・ウォンスーティ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・マイケル・ダムリー
(72)【発明者】
【氏名】コリン・ジョン・ジャクソン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC05
4B064AD29
4B064CA21
4B064CB03
4B064CD16
4B064DA16
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA31
4B065CA55
(57)【要約】
本開示は、一般に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドに関し、より具体的には、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸156~396、398~410及び425~603位に対応する位置からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含む、ポリペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸156~396、398~410及び425~603位に対応する位置からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸192位に対応する位置;及び
(iv)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号11と異なるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2又は請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、N156G、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、T159V、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、Y252F、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、Y503W、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159、192、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159、192及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸156、159、及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記アミノ酸置換が、T159V、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記アミノ酸置換が、T159V、M192Y、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から11、及び13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記アミノ酸置換が、N156G、M192Y及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から11、及び14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記アミノ酸置換が、N156G、T159V、M192Y及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から11、及び15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記ポリペプチドが、
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置;
(iv)配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置;
(v)配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置;
(vi)配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置;
(vii)配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置;
(viii)配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置;及び
(ix)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S196A、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20又は請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、Y197V、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から23のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から24のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
配列番号1のアミノ酸位置に対応する位置におけるアミノ酸置換S260Aが存在する、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S264L、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S267A、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から28のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から29のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S286A、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から30のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸156及び159位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から31のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記アミノ酸置換が、N156G及びT159V、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)MHETaseのポリエステル基質と接触しない1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含み、前記ポリペプチドの前記MHETase活性が配列番号1のMHETaseのMHETase活性より大きい、ポリペプチド。
【請求項35】
配列番号1のMHETaseと比較して、
(i)宿主系における組換え発現の増加;
(ii)全細胞活性の増大;及び
(iii)熱安定性の増大
のうちの1又は複数を更に含む、請求項1から34のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、組成物。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記核酸配列が、配列番号37~72及び78~82からなる群から選択される、請求項37に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
請求項37又は請求項38に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項40】
請求項37若しくは請求項38に記載のポリヌクレオチド又は請求項39に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項41】
MHETase活性を有するポリペプチドを生産する方法であって、
(a)請求項37又は請求項38に記載のポリヌクレオチドを用意する工程;
(b)核酸配列を宿主細胞培養物において発現させることによってポリペプチドを産生する工程;及び
(c)(b)で産生された前記ポリペプチドを宿主細胞培養物から収集する工程
を含む方法。
【請求項42】
モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを加水分解する方法であって、前記モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載の組成物、又は請求項40に記載の宿主細胞に、前記モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをテレフタレート及びエチレングリコールに変換するのに十分な条件下で曝露する工程を含む方法。
【請求項43】
ポリエステルを含むプラスチック製品を分解する方法であって、前記プラスチック製品を、請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載の組成物、又は請求項40に記載の宿主細胞に曝露する工程を含む方法。
【請求項44】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート)(PEA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)及び前述のもののいずれかについての組合せからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
(a)前記PETを、ポリエチレンテレフタル酸エステラーゼ(PETase)に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(MHET)を生成するための前記PETの変換を前記PETaseが触媒するのに十分な条件下で、曝露する工程;及び
(b)工程(a)で生成された前記MHETを、請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載の組成物、又は請求項40に記載の宿主細胞に、テレフタレート及びエチレングリコールを生じさせるための前記MHETの加水分解を前記ポリペプチドが触媒するのに十分な条件下で、同時に又は逐次的に曝露する工程
を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
工程(b)で生じた前記テレフタレート及び/又はエチレングリコールを回収する工程を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法により回収された前記テレフタレート及び/又はエチレングリコールを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規酵素、より詳細には、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸のエステル結合を加水分解する組換え酵素、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に引用される任意の特許又は特許出願を含む、全ての参考文献は、本発明の十分な理解を可能にするために、これにより参照により本明細書に組み込まれる。とは言え、そのような参考文献は、これらの文献のいずれかが当技術分野における、オーストラリアにおける又は任意の他の国における共通の一般的知識の一部を形成することの承認に相当すると解されるべきではない。
【0003】
世界的な工業化は、環境に大きな影響を与えており、とりわけ、プラスチック及びプラスチック製品についての製造及びそれらへの依存の増加が、環境に最も大きな影響を与えている。プラスチックの、それらの製造及び処分を含めて、好適な且つ環境的に持続可能な代替を見つけるための努力が増えてきているが、そのような製品は、依然として大きな問題であり、環境汚染の大半に寄与する。この問題の大きな要因の1つは、世界中で毎年何百万トンも生産されているポリエチレンテレフタレート(PET)及びその廃棄物である。この問題の環境上の重要性は、プラスチック、特に、PETに基づく製品、の化学的性質に、少なくとも一部は、起因する。それらは、自然界で容易に分解されないからである。
【0004】
プラスチック廃棄物の問題に取り組むアプローチとして、典型的に、焼却、埋立て処分及び機械的分解が挙げられてきた。しかし、これらのアプローチもまた、環境に大きな影響を与える。例えば、プラスチックの焼却は、大気に放出される潜在的に有害な副産物を生じさせ;埋立てでのプラスチックの分解速度は、非常に遅く、毒性物質が地下水に浸出することになる危険性があり;機械的分解は、比較的費用が嵩み、多くの場合、その副産物の使用が限定される。
【0005】
更に最近では、プラスチックの生物学的(酵素的)分解が、廃プラスチック蓄積を低減させるための代替アプローチと考えられている。このアプローチは、単量体モノ-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)へのPETの加水分解を触媒するエステラーゼクラスの酵素である、PETaseの使用を含む。MHETaseを利用して、MHETをテレフタレート及びエチレングリコールに加水分解することもできる。その後、これらの加水分解物を、プラスチックをはじめとする新たな製品の製造のための材料として好適にリサイクルすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Palmら(2019、Nat. Comms. 10:1717頁)
【非特許文献2】Sagongら(2020、ACS Catal. 10:4805頁)
【非特許文献3】Yoshidaら(2020、Science、352(6278):1196頁)
【非特許文献4】http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/
【非特許文献5】http://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/
【非特許文献6】Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440~3444頁
【非特許文献7】Raducanuら(2020、Journal of Biological Chemistry 295(34):12214~12223頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラスチックの酵素的分解は、プラスチック廃棄物及びそれらの処分の環境への影響を軽減するための魅力的な代替案であるが、その相対的非効率性、遅い酵素的分解速度、及び一般的な工業用宿主株における低い酵素発現レベルをはじめとする理由から、まだ幅広い採用は見られない。それ故、プラスチックの酵素的分解のための改善された方法及び試薬に対する差し迫った必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示されるある態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸156~396、398~410及び425~603位に対応する位置からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含む、ポリペプチドが提供される。
【0009】
別の態様では、
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸192位に対応する位置;及び
(iv)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、ポリペプチドが提供される。
【0010】
ある実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸159、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。別の実施形態では、アミノ酸置換は、T159V、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0011】
別の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸159、192、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。別の実施形態では、アミノ酸置換は、T159V、M192Y、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0012】
別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(a)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(b)
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置;
(iv)配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置;
(v)配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置;
(vi)配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置;
(vii)配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置;
(viii)配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置;及び
(ix)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含む、ポリペプチドが提供される。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して、
(i)宿主系における組換え発現の増加;
(ii)全細胞活性の増大;及び
(iii)熱安定性の増大
のうちの1又は複数を更に含む。
【0014】
本開示は、本明細書に記載のポリペプチドを含む組成物にも及ぶ。
【0015】
本開示は、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列にも及ぶ。ある実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号37~72及び79~84から選択される。好ましい実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号79~84から選択される。
【0016】
本開示は、本明細書に記載される核酸配列を含む発現ベクターにも及ぶ。
【0017】
本開示は、本明細書に記載される核酸配列又は発現ベクターを含む、宿主細胞にも及ぶ。
【0018】
別の態様では、本開示は、MHETase活性を有するポリペプチドを生産する方法であって、
a)本明細書に記載の核酸配列を用意する工程;
b)核酸配列を宿主細胞培養物において発現させることによってポリペプチドを産生する工程;及び
c)(b)で産生されたポリペプチドを宿主細胞培養物から収集する工程
を含む方法を提供する。
【0019】
更に別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを加水分解する方法であって、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをテレフタレート及びエチレングリコールに変換するのに十分な条件下で、曝露する工程を含む方法が、提供される。
【0020】
本開示は、ポリエステルを含むプラスチック製品を分解する方法であって、プラスチック製品を、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞に曝露する工程を含む方法にも及ぶ。
【0021】
別の実施形態では、本明細書で開示される方法は、
(i)PETを、ポリエチレンテレフタル酸エステラーゼ(PETase)に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(MHET)を生成するためのPETの変換をPETaseが触媒するのに十分な条件下で、曝露する工程;及び
(ii)工程(a)で生成されたMHETを、本明細書に記載のポリペプチド、組成物又は宿主細胞に、テレフタレート及びエチレングリコールを生じさせるためのMHETの加水分解をポリペプチドが触媒するのに十分な条件下で、同時に又は逐次的に曝露する工程
を含む。
【0022】
本開示は、本明細書で開示される方法により回収されたテレフタレート及び/又はエチレングリコールを含む組成物にも及ぶ。
【0023】
別の態様では、本明細書に記載されるポリペプチドを発現するように遺伝子改変された宿主細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】野生型(WT)MHETase(配列番号1)及び異なるコンセンサス設計(配列番号2~36)のアミノ酸配列を示す図である。
図2】野生型(WT)MHETase(配列番号37)及び異なるコンセンサス設計(配列番号38~72)の核酸配列を示す図である。
図3】全細胞懸濁液におけるMHETの類似体(1-ナフチルテレフタレート)に対するMHETaseバリアントの活性(dA465/dt(分-1))を示す図である。
図4】SDS-PAGEゲル電気泳動及びNTA-Atto550(Sigma社)での染色による、可溶性細胞溶解物における野生型MHETase(WT;配列番号1)の発現レベル及びMHETaseバリアントN156G+T159Vをはじめとする点変異を含むMHETaseバリアントの発現レベルを示す図である。
図5】222nmでの円偏光二色性(Y軸)により20~90℃の範囲の温度(X軸)で決定された、精製された野生型MHETase(WT)の熱安定性並びに点変異N156G+T159V、N156G+T159V+Y197V及びN156G+T159V+YY503Wを含むMHETaseバリアントの熱安定性を示す図である。
図6】試験した全てのMHETaseバリアントについての各変異誘発ラウンドからの全細胞懸濁液FastBlueアッセイ結果を示す図である。バーの高さは、各バリアント(n≧2、個々の測定を示す)について測定された平均活性(dA465/dt(分-1))を表し、エラーバーは、測定の標準誤差(standard error mean)を表す。強調表示されたバーは、次の変異誘発ラウンドで親として使用したバリアントを表す。
図7】ATTO550を使用して染色され、UV透過照明下でイメージングされた、各ラウンドからの選択されたMHETaseのSDS-PAGEゲルを示す図である。MHETaseバリアントの予想サイズ(約64kDa)が指し示されている。
図8】選択されたMHETaseバリアントのサイズ排除クロマトグラムを示す図である。
図9】本明細書に記載される発色アッセイを使用して得られた、選択されたMHETaseバリアントについてのミカエリス-メンテンプロットを示す図である。各点は、6nM MHETase及び4mM Fast Blue B塩と共に各々インキュベートされた、3回の技術的反復実験からの反応の平均初期速度を表す。エラーバーは、標準誤差を表す。
図10】酢酸ナトリウムpH5.1中で222nmでの円偏光二色性により測定された3回の技術的反復実験からのMHETaseバリアントの熱安定性を示す図である。データを二状態アンフォールディングモデル(線)に当てはめたものであり、エラーバーは、標準誤差に対応する。
図11】野生型MHETaseの活性と、ラウンド5 Y252F(R5)の活性と、192、156、159、252及び503位における野生型MHETase同一性へのR5の復帰の活性とを比較する、HPLCアッセイを示す図である。
図12】MHETase R5復帰変異についての全細胞懸濁液FastBlueアッセイ結果を示す図である。変異V159T、Y192M、F252Y、及びW503YをMHETase R5(ラウンド5のMHETase Y252F)のバックグラウンドに加えた。バーの高さは、各バリアント(n≧2)について測定された平均活性を表し、エラーバーは、測定の標準誤差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験の際に使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明では、以下の用語が下記に定義される。
【0026】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、別段の明示的記述がない限り、その冠詞の文法上の目的語の1つ又は1つより多く(即ち、少なくとも1つ)を指すために本明細書では使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つより多くの要素を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、参照数量、レベル、値、寸法、サイズ又は量に対して10%ほど(例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%)変動する数量、レベル、値、寸法、サイズ又は量を指す。
【0028】
本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、述べられている工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の群の包含を含意するが、いずれの他の工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の群の除外も含意しないと理解されたい。
【0029】
本開示は、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)のアミノ酸配列に、そのMHETase活性を有利に増強するある特定の改変を加えることができるという、本発明者らの予想外の発見に、少なくとも一部は基づいている。ある特定の改変はまた、宿主細胞に発現される際の改変MHETaseの発現を予想外に向上させた。ある特定の改変は、宿主細胞に発現される際の改変MHETaseの全細胞活性を驚くほど向上させた。ある特定の改変はまた、酵素の熱安定性を予想外に向上させた。本発明者らはまた、野生型MHETaseの活性部位外に存在するアミノ酸残基に置換を加えて、野生型MHETaseと比較してMHETaseの活性及び発現を向上させることができることを、意外にも発見した。したがって、本明細書で開示されるある態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)MHETaseのポリエステル基質とそうしなければ接触しない1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含み、ポリペプチドのMHETase活性が配列番号1のMHETaseのMHETase活性より大きい、ポリペプチドが提供される。
【0030】
本明細書で開示される別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸156~396、398~410及び425~603位に対応する位置からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含む、ポリペプチドが提供される。
【0031】
「少なくとも70%」とは、ポリペプチドが、配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、又はより好ましくは99%の配列同一性を共有することを意味する。本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1の天然に存在する(野生型)MHETaseのバリアントであるので、これに関連して、「少なくとも70%」は、配列番号1の全配列(残基1~603又は残基18~603)にわたっての100%配列同一性を含まないことを理解されたい。一部の実施形態では、改変ポリペプチドが、本明細書に記載の配列番号1のMHETaseと比較してより大きいMHETase活性を有することを条件に、ポリペプチドは、アミノ酸挿入及び/又は欠失、例えば、N末端及び/又はC末端におけるアミノ酸挿入及び/又は欠失を含むことができる。
【0032】
別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(a)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(b)
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸192位に対応する位置;及び
(iv)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含む、ポリペプチドが提供される。
【0033】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号11と異なる。
【0034】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、N156G、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0035】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0036】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、T159V、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0037】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0038】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、Y252F、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0039】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0040】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、Y503W、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0041】
特定の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸159、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は、T159V、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0042】
特定の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸159、192、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は、T159V、M192Y、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0043】
特定の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸159、192及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は、T159V、M192Y及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0044】
特定の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸156、159及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は、N156G、T159V及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0045】
特定の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸156及び159及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は、N156G、T159V及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0046】
別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(a)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(b)
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置;
(iv)配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置;
(v)配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置;
(vi)配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置;
(vii)配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置;
(viii)配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置;及び
(ix)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含み、
配列番号1のポリペプチドと比較してより大きい全細胞MHETase活性を有する、
ポリペプチドが提供される。
【0047】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0048】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、N156G、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0049】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0050】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、T159V、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0051】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0052】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、S196A、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0053】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0054】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、Y197V、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0055】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0056】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、S260A、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0057】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0058】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、S264L、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0059】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0060】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、S267A、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0061】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0062】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、S286A、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0063】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0064】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、Y503W、又はその保存的アミノ酸置換である。
【0065】
本開示は、本明細書に記載の配列番号1における位置に対応する2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)の位置におけるアミノ酸置換の組合せも企図している。ある実施形態では、ポリペプチドは、本明細書に記載の配列番号1における位置に対応する少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、好ましくは少なくとも6つ、好ましくは少なくとも7つ、好ましくは少なくとも8つ、好ましくは少なくとも9つ、又はより好ましくは少なくとも10の位置におけるアミノ酸置換の組合せを含む。
【0066】
ある実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸156、159及び197位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる。
【0067】
ある実施形態では、アミノ酸置換は、N156G、T159V及びY197V、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である。
【0068】
本開示は、本明細書に記載のポリペプチドを含む組成物にも及ぶ。
【0069】
本開示は、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列にも及ぶ。
【0070】
本開示は、本明細書に記載される核酸配列を含む発現ベクターにも及ぶ。
【0071】
本開示は、本明細書に記載される核酸配列又は発現ベクターを含む、宿主細胞にも及ぶ。
【0072】
別の態様では、本開示は、MHETase活性を有するポリペプチドを生産する方法であって、
a)本明細書に記載される核酸配列を用意する工程;
b)核酸配列を宿主細胞培養物において発現させることによってポリペプチドを産生する工程;及び
c)(b)で産生されたポリペプチドを宿主細胞培養物から収集する工程
を含む方法を提供する。
【0073】
更に別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを加水分解する方法であって、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをテレフタレート及びエチレングリコールに変換するのに十分な条件下で、曝露する工程を含む方法が、提供される。
【0074】
本開示は、ポリエステルを含むプラスチック製品を分解する方法であって、プラスチック製品を、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞に曝露する工程を含む方法にも及ぶ。
【0075】
ある実施形態では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート)(PEA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)及び前述のもののいずれかについての組合せからなる群から選択される。ある実施形態では、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0076】
別の実施形態では、本明細書で開示される方法は、
(a)PETを、ポリエチレンテレフタル酸エステラーゼ(PETase)に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(MHET)を生成するためのPETの変換をPETaseが触媒するのに十分な条件下で、曝露する工程;及び
(b)工程(a)で生成されたMHETを、請求項1から21のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項22に記載の組成物、又は請求項25に記載の宿主細胞に、テレフタレート及びエチレングリコールを生じさせるためのMHETの加水分解をポリペプチドが触媒するのに十分な条件下で、同時に又は逐次的に曝露する工程
を含む。
【0077】
ある実施形態では、方法は、工程(b)で生じたテレフタレート及び/又はエチレングリコールを回収する工程を更に含む。
【0078】
本開示は、本明細書で開示される方法により回収されたテレフタレート及び/又はエチレングリコールを含む組成物にも及ぶ。
【0079】
別の態様では、本明細書に記載されるポリペプチドを発現するように遺伝子改変された宿主細胞が提供される。
【0080】
本明細書では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」は、ペプチド結合によって連結されているアミノ酸の鎖を、前記鎖を形成するアミノ酸の数に関係なく、指すと理解されたい。アミノ酸は、概して、次の命名法に従ってそれらの1文字又は3文字表記によって表される:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リシン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:トレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)及びY:チロシン(Tyr)。
【0081】
用語「ヒドロラーゼ」は、より短いペプチドを生じさせるためのペプチド又はタンパク質中のペプチド結合の加水分解を触媒する、酵素命名法(Enzyme Nomenclature)に従ってEC 3と分類される、ヒドロラーゼのクラスに属する酵素を指す。
【0082】
用語「野生型」又は「親」は、ポリペプチドの天然に存在するアイソフォーム、つまり、それが自然に出現するときのもの、を示すために本明細書では同義で使用される。本開示では、野生型ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(EC 3.1.1.102; UniProt受託番号A0A0K8P8E7)を指す。
【0083】
Palmら(2019、Nat. Comms. 10:1717頁)によって述べられているような、ポリエチレンテレフタレート(PET)を特異的に分解する2つの最近発見された細菌酵素は、そうしなければ環境負荷の高いポリエステル含有製品に対する有望な解決策の代表である。第1に、構造的に十分に特徴付けられているα/β-ヒドロラーゼフォールド酵素である、イデオネラ・サカイエンシス(Ideonella sakaiensis) PETaseは、PETをモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(MHET)に変換する。第2の肝要な酵素であるMHETaseは、MHETを、PET抽出物であるテレフタレート及びエチレングリコールに加水分解する(Palmら(2019、Nat. Comm.、10:1717頁)、Sagongら(2020、ACS Catal. 10:4805頁)及びYoshidaら(2020、Science、352(6278):1196頁)。
【0084】
野生型MHETaseのアミノ酸及び核酸配列は、当業者によく知られているであろう。それらの説明に役立つ例としては配列番号1が挙げられる。
【0085】
用語「変異体」及び「バリアント」は、配列番号1に由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、配列番号1のポリペプチドと比較して1つ又は複数の(例えば、幾つかの)位置に改変又は変更(例えば、置換、挿入及び/又は欠失)を更に含み、MHETase活性が増強されている、ポリペプチドを指すために、本明細書では同義で使用されうる。そのようなバリアントを当技術分野において周知の様々な技法によって得ることができ、それらの説明に役立つ例としては、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発及び合成オリゴヌクレオチド構築が挙げられる。用語「改変」、「変更」、「置換」等は、アミノ酸残基又は位置に関して本明細書で使用される場合、概して、特定の位置におけるアミノ酸が野生型又は親ポリペプチドのアミノ酸と比較して改変されていることを意味する。
【0086】
好適な置換としては、あるアミノ酸残基の別のアミノ酸残基による置き換えを挙げることができ、このアミノ酸残基は、天然に存在する20種類の標準アミノ酸残基、稀に天然に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシルリシン、アロヒドロキシルリシン、6-N-メチルリシン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロイソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)、及び多くの場合、合成により作成される、天然に存在しないアミノ酸残基(例えば、シクロへキシル-アラニン)から選択される。好ましくは、置換は、天然に存在する20種類の標準アミノ酸残基(G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S及びT)から選択される、あるアミノ酸残基の別のアミノ酸残基による置き換えを含む。改変又は変更は、本明細書では以下の用語法を使用して特定されうる:Y197Vは、親ポリペプチド配列の197位におけるアミノ酸残基チロシン(Y)でバリン(V)が置換されることを示す。Y197V/I/Mは、親ポリペプチド配列の197位におけるアミノ酸残基チロシン(Y)で、次のアミノ酸:バリン(V)、イソロイシン(I)又はメチオニン(M)のうちの1つが置換されることを示す。置換は、保存的置換であることもあり、又は非保存的置換であることもある。保存的置換の例は、当業者によく知られているであろう。それらの説明に役立つ例としては、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン及びトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さいアミノ酸(グリシン、アラニン及びセリン)の群内での置換が挙げられる。
【0087】
別段の定めがない限り、本願で開示される位置は、配列番号1で示されるアミノ酸を参照することにより番号付けされる。これに関連して、用語「に対応する」は、アミノ酸位置に関して使用される場合、ポリペプチド配列内のアミノ酸位置であって、その位置が配列番号1で示される配列内の同等の又は対応する位置とアラインされたときのアミノ酸位置を意味するように意図されている。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「配列同一性」又は「同一性」は、2つのポリペプチド配列間のマッチ(同一アミノ酸残基)の数(又はパーセンテージ%として表される分率)を指す。好ましい実施形態では、配列同一性は、配列ギャップを最小限に抑えつつオーバーラップ及び同一性を最大にするようにアラインして配列を比較することにより決定される。配列同一性は、2つの配列の長さに依存して、当業者に公知の多数の数学的大域又は局所アラインメントアルゴリズムのいずれかを使用して、決定されうる。類似の長さの配列は、配列をその全長にわたって最適にアラインする大域アラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman及びWunschアルゴリズム;Needleman and Wunsch、1970)を使用してアラインされうるが、大幅に異なる長さの配列は、好ましくは、局所アラインメントアルゴリズム(例えば、Smith及びWatermanアルゴリズム(Smith及びWaterman、1981)又はAltschulアルゴリズム(Altschulら、1997; Altschulら、2005))を使用してアラインされる。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、当業者が利用可能な任意の手段により達成することができ、そのような手段の説明に役立つ例は、公開されているコンピュータソフトウェアを含み、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/)で入手可能である。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書で使用される場合、配列同一性%は、全ての検索パラメーターが、デフォルト値、例えば、スコア行列=BLOSUM62、ギャップ開始=10、ギャップ伸長=0.5、エンドギャップペナルティ=偽、エンドギャップ開始=10及びエンドギャップ伸長=0.5に設定される、2つの配列の最適な大域アラインメントを(例えば、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して)作成するペアワイズ配列アラインメントを使用して生成される値を概して指す。
【0089】
用語「組換え」は、本明細書で使用される場合、概して、遺伝子操作により生産された核酸構築物、ベクター、ポリペプチド又は細胞を指す。
【0090】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、概して、転写、転写後改変、翻訳、翻訳後改変、及び分泌等によるポリペプチドの生産に関与する任意の工程を指す。
【0091】
用語「発現カセット」は、コード領域と好適にはそのコード領域に作動可能に連結されている調節領域とを含む、核酸構築物を示す。
【0092】
用語「発現ベクター」は、概して、発現カセットを含むDNA又はRNA分子を意味する。発現ベクターは、直鎖状又は環状二本鎖DNA分子であることがある。
【0093】
用語「ポリマー」は、本明細書で使用される場合、その構造が、共有化学結合により連結されている複数のモノマー(繰り返し単位)で構成されている、ケミカルコンパウンド又は化合物の混合物を概して指す。本発明の文脈の中で、用語ポリマーは、単一タイプの繰り返し単位で構成されている天然若しくは合成ポリマー(即ち、ホモポリマー)又は異なる繰り返し単位の混合物で構成されている天然若しくは合成ポリマー(即ち、コポリマー若しくはヘテロポリマー)を含む。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「ポリエステル含有材料」、「ポリエステル含有製品」等は、結晶性、半結晶性又は完全非晶性形態の少なくとも1種のポリエステルを含む製品、例えばプラスチック製品、を指すと理解されたい。ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステル及びことによると他の物質又は添加剤、例えば、可塑剤、無機又は有機充填剤を含有する、少なくとも1種のプラスチック材料から製造された任意の品物、例えば、プラスチックシート、チューブ、ロッド、異形材、型材、フィルム、塊状ブロック、繊維、布地等を指しうる。ある実施形態では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステル含有繊維を含む、布地又は生地である。別の実施形態では、ポリエステル含有材料は、プラスチック製品の作製に好適な、溶融又は固体状態の、プラスチックコンパウンド又はプラスチック配合物である。
【0095】
好適なポリエステル類は、当業者によく知られているであろう。それらの説明に役立つ例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリ(エチレンアジペート)(PEA)が挙げられる。したがって、ある実施形態では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)及び前述のもののいずれかについての組合せからなる群から選択される。
【0096】
本明細書中の他の箇所で述べられるように、本発明者らは、配列番号1の親ポリペプチドと比較してMHETase活性の増大を示す、配列番号1の天然に存在するMHETaseのバリアントを開発した。MHETaseバリアントは、組換え宿主細胞系における発現の増強も提示する。より詳細には、本発明者らは、工業プロセスにおける使用のための優れた特性を有する新規MHETaseを開発した。分解性プラスチック製品の工業生産が実施されうる及び/又はプラスチック製品の環境による分解が達成されうる状況の中でヒドロラーゼ、特にMHETase、の活性を向上させることを目指して、本発明者らは、配列番号1の野生型MHETaseに由来する新規MHETaseであって、この親ヒドロラーゼと比較して高いMHETase活性を意外にも示す新規MHETaseを開発した。本明細書で開示されるMHETaseバリアントは、プラスチック製品、特に、PETを含有するプラスチック製品の分解に、特に適している。更に、本発明者らは、タンパク質の構造の中のそうしなければポリエステル基質と接触することが考えられないアミノ酸残基を有利に改変してMHETase活性を増強することができることを、驚くべきことに発見した。したがって、本明細書で開示される別の態様では、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)MHETaseのポリエステル基質と接触しない1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含み、ポリペプチドのMHETase活性が配列番号1のMHETaseのMHETase活性より大きい、ポリペプチドが提供される。この文脈での用語「接触」は、概して、配列番号1のMHETaseのアミノ酸残基によってなされるそのポリエステル基質との直接接触を指す。そのポリエステル基質と接触する配列番号1のアミノ酸残基は、当業者によく知られているであろう。それらの残基は、Sagongら(2020、ACS Catal. 10:4805頁)にも記載されており、配列番号1のR411、S416及びF424を含む。ある実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のMHETaseの活性部位外にある1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む。用語「活性部位」は、ポリエステル基質(即ち、MHET)と接触すること及びそれを加水分解することができる、配列番号1の領域を概して指す。配列番号1のMHETaseの活性部位外に存する配列番号1のアミノ酸位置は、当業者によく知られているであろう。
【0097】
本開示に関して、MHETase活性の増大又は増強への言及は、次のうちの1つ又は複数を含みうる:配列番号1のMHETaseと比較して、MHETを加水分解するポリペプチドの能力の増大;配列番号1のMHETaseと比較して宿主細胞における組換え発現の増加;配列番号1のMHETaseと比較して全細胞活性の増大;及び配列番号1のMHETaseと比較して熱安定性の増大。
【0098】
ある実施形態では、本明細書で開示のポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して、宿主細胞におけるMHETaseの組換え発現の増加を含む。
【0099】
別の実施形態では、本明細書で開示のポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して熱安定性の増大を含む。
【0100】
別の実施形態では、本明細書で開示のポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して全細胞活性の増大を含む。本明細書で使用される場合、全細胞活性という用語は、宿主細胞系に発現されたときにMHETを加水分解するMHETaseの能力を概して指す。
【0101】
更なる実施形態では、本明細書で開示のポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して熱安定性の増大及び全細胞活性の増大を含む。
【0102】
更なる実施形態では、本明細書で開示のポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して、宿主細胞におけるMHETaseの組換え発現の増加、熱安定性の増大及び全細胞活性の増大を含む。
【0103】
ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドのMHETase活性は、配列番号1のMHETaseのMHETase活性と同様である。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドのMHETase活性は、配列番号1のMHETaseと比較して、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約400%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約600%、好ましくは少なくとも約700%、好ましくは少なくとも約800%、好ましくは少なくとも約900%、又はより好ましくは少なくとも約1,000%以上、増大される。ポリペプチドのMHETase活性を決定又は測定する好適な方法は、当業者によく知られているであろう。それらの説明に役立つ例は、本明細書中の他の箇所に記載される。他の説明に役立つ例は、Palmら(2019、Nat. Comm.、10:1717頁)、Sagongら(2020、ACS Catal. 10:4805頁)及びYoshidaら(2020、Science、352(6278):1196頁)に記載されており、これらの内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態では、MHETase活性は、1-ナフチルテレフタレート(1NT)を基質として使用して発色アッセイにより決定した場合、配列番号1のMHETaseと比較して、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約400%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約600%、好ましくは少なくとも約700%、好ましくは少なくとも約800%、好ましくは少なくとも約900%、又はより好ましくは少なくとも約1,000%以上、増大される。
【0104】
MHETase活性に絶対値を割り当てることでき、又は比較対照(例えば、配列番号1のMHETase)のMHETase活性に対する相対的な値を割り当てることができる。ある実施形態では、MHETase活性は、温度、pH及び緩衝剤の好適な条件下で時間当たりの及び酵素のmg当たりの放出されるモノマー及び/又はオリゴマー(例えば、mgでの)の速度として測定される。
【0105】
MHETase活性を、精製された酵素を使用して測定又はアッセイすることができる。或いは、MHETase活性を、宿主細胞系に組換え発現されたときの酵素の活性(本明細書では細胞触媒活性又は全細胞活性とも呼ばれる)の関数として、測定することができる。
【0106】
或いは、本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1のMHETaseと比較して、宿主細胞における組換え発現の少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約400%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約600%、好ましくは少なくとも約700%、好ましくは少なくとも約800%、好ましくは少なくとも約900%、又はより好ましくは少なくとも約1,000%増大又は増強を示す。
【0107】
有利なことに、本明細書に記載されるポリペプチドは、少なくとも、約10℃~約60℃、好ましくは約20℃~約680℃、好ましくは約30℃~約60℃、より好ましくは約40℃~約60℃、より一層好ましくは約40℃~約50℃の温度の範囲で、より一層好ましくは約45℃で、MHETase活性を示す。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約10℃~約60℃、好ましくは約20℃~約60℃、好ましくは約30℃~約60℃、より好ましくは約40℃~約60℃、より一層好ましくは約40℃~約50℃の温度で、又はより一層好ましくは約45℃で、MHETase活性を示す。ある実施形態では、MHETase活性は、約40℃~約60℃の間、好ましくは約40℃~約50℃間の温度で、又はより一層好ましくは約45℃で測定可能である。別の特定の実施形態では、ポリエステル分解活性は、自然環境における平均温度(室温)に対応する、約10℃~約30℃の間、好ましくは約15℃~約28℃間の温度でもやはり測定可能である。
【0108】
ある実施形態では、ポリペプチドは、約10℃~約60℃、好ましくは約20℃~約60℃、好ましくは約30℃~約60℃、より好ましくは約40℃~約60℃、より一層好ましくは約40℃~約50℃の温度で、又はより一層好ましくは約45℃で、同じ温度での配列番号1のMHETaseと比較して、少なくとも約5%の、好ましくは少なくとも約10%までの、好ましくは少なくとも約20%までの、好ましくは少なくとも約30%までの、好ましくは少なくとも約40%までの、好ましくは少なくとも約50%までの、好ましくは少なくとも約100%までの、好ましくは少なくとも約200%までの、好ましくは少なくとも約300%までの、好ましくは少なくとも約400%までの、好ましくは少なくとも約500%までの、好ましくは少なくとも約600%までの、好ましくは少なくとも約700%までの、好ましくは少なくとも約800%までの、好ましくは少なくとも約900%までの、又はより好ましくは少なくとも約1,000%以上までの、MHETase活性を含む。
【0109】
別の特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約10℃~約60℃の間、好ましくは約20℃~約60℃の間、好ましくは約30℃~約60℃、好ましくは約40℃~約60℃の間、好ましくは約40℃~約50℃の間の温度で、又はより好ましくは約45℃で、配列番号1のポリペプチドと比較して、MHETase活性の増大を有する。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約20℃~約6045℃の間の温度で、同じ温度での配列番号1のMHETase活性と比較して、少なくとも約5%の、好ましくは少なくとも約10%までの、好ましくは少なくとも約20%までの、好ましくは少なくとも約30%までの、好ましくは少なくとも約40%までの、好ましくは少なくとも約50%までの、好ましくは少なくとも約100%までの、好ましくは少なくとも約200%までの、好ましくは少なくとも約300%までの、好ましくは少なくとも約400%までの、好ましくは少なくとも約500%までの、好ましくは少なくとも約600%までの、好ましくは少なくとも約700%までの、好ましくは少なくとも約800%までの、好ましくは少なくとも約900%までの、又はより好ましくは少なくとも約1,000%以上までの、MHETase活性を有する。
【0110】
別の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約10℃~約30℃の間、好ましくは約15℃~約30℃の間、より一層好ましくは約20℃~約30℃の間の温度で、又はより一層好ましくは約28℃で、配列番号1のポリペプチドと比較して、MHETase活性の増大を有する。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約10℃~約30℃の間の温度で、同じ温度での配列番号1のMHETase活性と比較して、少なくとも約5%の、好ましくは少なくとも約10%までの、好ましくは少なくとも約20%までの、好ましくは少なくとも約30%までの、好ましくは少なくとも約40%までの、好ましくは少なくとも約50%までの、好ましくは少なくとも約100%までの、好ましくは少なくとも約200%までの、好ましくは少なくとも約300%までの、好ましくは少なくとも約400%までの、好ましくは少なくとも約500%までの、好ましくは少なくとも約600%までの、好ましくは少なくとも約700%までの、好ましくは少なくとも約800%までの、好ましくは少なくとも約900%までの、又はより好ましくは少なくとも約1,000%以上までの、MHETase活性を有する。
【0111】
ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、少なくとも、5~11のpHの範囲、好ましくは6~10のpHの範囲、より好ましくは6.5~9のpHの範囲、より一層好ましくは7~8のpHの範囲で、測定可能なMHETase活性を示す。
【0112】
有利なことに、本明細書に記載されるポリペプチドの熱安定性は、配列番号1のポリペプチドと比較して有意に損なわれない。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの熱安定性は、配列番号1の熱安定性と比較して向上される。用語「熱安定性の向上」又は「熱安定性の増大」は、本明細書で使用される場合、配列番号1のポリペプチドと比較して、より高温で、より具体的には40℃~60℃の間の温度で、その化学的及び/又は物理的構造の変化に耐える酵素の能力の増大を示す。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドと比較して、40℃~60℃の間の温度で半減期の増加を有する。本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドと比較して、より高い又は同等の融解温度(Tm)を示しうる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドと比較して、40℃~68℃の間の温度での熱安定性の向上を示す。
【0113】
ポリペプチドの熱安定性は、当業者に公知の任意の好適な手段により評価することができる。例えば、異なる温度でのインキュベーション後にポリペプチドの残留MHETase活性を測定することにより、熱安定性を評定することができる。異なる温度での複数のMHETase媒介加水分解ラウンドの実施能力も評価することができる。示差走査蛍光定量法(DSF)を使用してポリペプチドの熱安定性を評定することもできる。円偏光二色性を使用して、本明細書に記載されるポリペプチドの熱安定性を、それらの融解温度(Tm)を含めて、測定することもできる。用語「融解温度(Tm)」は、所与のタンパク質が、当該タンパク質の50%が変性される温度に対応することを意味すると解釈される。
【0114】
ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約45℃~約68℃、好ましくは約50℃~約65℃、好ましくは約52℃~約63℃の融解温度(Tm)を示す。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドにより示される融解温度(Tm)より低い融解温度(Tm)を示す。一実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドにより示される融解温度(Tm)より高い融解温度(Tm)を示す。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、約52℃~約64℃、好ましくは約55℃~約63℃、より好ましくは約63℃の融解温度(Tm)を示す。
【0115】
本開示は、本明細書に記載されるMHETaseポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドにも及ぶ。この、本明細書で開示されるある態様では、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが、提供される。ある実施形態では、核酸配列は、配列番号38~72及び79~84からなる群から選択される。別の実施形態では、核酸配列は、配列番号79~84からなる群から選択される。本明細書で使用される場合、用語「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ヌクレオチド配列」は、同義で使用され、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドの配列を指す。核酸は、DNA(cDNA若しくはgDNA)であることがあり、RNAであることがあり、又はこれら2つの混合物であることがある。それは、一本鎖形態であることがあり、又は二本鎖形態であることがあり、又はこれら2つの混合物であることがある。それは、組換え、人工及び/又は合成起源のものであることがあり、それは、例えば、改変された結合、改変されたプリン若しくはピリミジン塩基、又は改変された糖を含む、改変されたヌクレオチドを含むことがある。本発明の核酸は、単離又は精製された形態であることがあり、本発明の核酸を、当技術分野においてそれ自体が公知の技法、例えば、cDNAライブラリーのクローニング及び発現、増幅、酵素的合成又は組換技術によって、作製、単離及び/又はマニピュレートすることができる。核酸を、例えば、Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440~3444頁に記載されているような、周知の化学合成技法によってin vitroで合成することもできる。
【0116】
本明細書で開示される核酸配列を好適にコドン最適化することができる。コドン最適化のための好適な方法は、当業者によく知られているであろう。その説明に役立つ例は、Sambrookらの参考マニュアル(Sambrookら、2001)に記載されている。
【0117】
本明細書に記載される核酸配列は、本明細書に記載されるポリペプチドのアミノ酸配列から好適に推定することができ、核酸が転写されることになる宿主細胞に応じてコドン使用頻度を適応させることができる。
【0118】
一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸配列は、好適には、追加のヌクレオチド配列、例えば、調節領域、即ち、選択された宿主細胞又は系におけるポリペプチドの発現を引き起こす又は調節するために使用されうる、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、シグナルペプチド等を含みうる。或いは、又は加えて、本明細書に記載される核酸配列は、ポリペプチドの発現及び/又は溶解度に有利に働くように使用されうる、マルトース結合タンパク質(MBP)又はグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)等の、融合タンパク質をコードする追加のヌクレオチド配列を更に含みうる。
【0119】
本明細書中の他の箇所で述べられるように、本開示は、好適な宿主細胞において核酸配列の発現を指示する1つ又は複数の制御配列に必要に応じて作動可能に連結されている、本明細書に記載される核酸配列を含む、発現ベクター及び発現カセットにも及ぶ。概して、発現ベクター又はカセットは、転写プロモーター及び/又は転写ターミネーター等の制御配列に作動可能に連結されている、本明細書に記載される核酸配列を含む。制御配列は、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸の発現のための宿主細胞又はin vitro発現系により認識されるプロモーターを含みうる。プロモーターは、ポリペプチドの発現を媒介する転写制御配列を概して含むことになる。プロモーターは、変異型、切断型及びハイブリッドプロモーターをはじめとする、宿主細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドでありえ、プロモーターを、宿主細胞にとって同種又は異種どちらかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から好適に得ることができる。制御配列は、転写を終結させるために宿主細胞により認識される転写ターミネーターであることもある。ターミネーターは、概して、ポリペプチドをコードする核酸配列の3'末端に作動可能に連結されている。宿主細胞において機能する任意のターミネーターを、これに関連して使用することができる。概して、発現ベクター又はカセットは、転写プロモーター及び転写ターミネーターに作動可能に連結されている、本明細書に記載される核酸配列を含む。
【0120】
用語「ベクター」は、概して、組換え遺伝物質を宿主細胞に移入するためにベクターとして使用されるDNA分子を指す。好適なベクターとしては、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、フォスミド、コスミド、及び人工染色体が挙げられる。ベクターは、概して、インサート(異種核酸配列、導入遺伝子)とベクターの「骨格」としての役割を果たすより大きい配列とを含むDNA配列である。宿主に遺伝情報を伝達するベクターの目的は、概して、インサートを単離すること、増やすこと、又は標的細胞において発現させることである。発現ベクター(発現構築物とも呼ばれる)は、標的細胞における異種配列の発現に特に適しており、一般に、ポリペプチドをコードする異種配列の発現を駆動するプロモーター配列を有する。
【0121】
一般に、発現ベクターにおいて使用される調節エレメントとしては、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、及び必要に応じて存在するオペレーターが挙げられる。発現ベクターは、宿主細胞における自己複製のための複製起点、選択可能なマーカー、限られた数の有用な制限酵素部位、及び高コピー数の可能性を更に含みうる。好適な発現ベクターは、当業者によく知られているであろう。それらの説明に役立つ例としては、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター、プラスミド及びウイルスが挙げられる。異なる宿主において好適なレベルのポリペプチド発現をもたらすことができる発現ベクターも、当技術分野において周知である。ベクターの選択は、ベクターとベクターが導入されることになる宿主細胞との適合性に概して依存することになる。一実施形態では、ベクターは、細菌発現ベクターpET-28a(+)(配列番号85)である。
【0122】
本開示は、本明細書に記載される核酸配列を含む宿主細胞にも及ぶ。一過性の又は安定的な様式で、宿主細胞を形質転換すること、宿主細胞にトランスフェクト又は形質導入することができる。核酸、発現カセット又はベクターは、宿主細胞に導入され、その結果、その核酸、カセット又はベクターは、染色体組込み体として又は自己複製染色体外ベクターとして維持される。用語「宿主細胞」は、複製中に起こる変異に起因して親宿主細胞と同一でない、親宿主細胞の任意の子孫を包含する。宿主細胞は、本発明のバリアントの産生に有用な任意の細胞、例えば、原核生物又は真核生物でありうる。原核生物宿主細胞は、任意のグラム陽性又はグラム陰性菌でありうる。宿主細胞はまた、真核細胞、例えば、酵母、真菌、哺乳動物、昆虫又は植物細胞でありうる。特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バシラス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、サーマス属(Thermus)又はヤロウイア属(Yarrowia)の群から選択される。
【0123】
本発明による核酸、発現カセット又は発現ベクターを、宿主細胞に、当業者に公知の任意の好適な方法により導入することができ、そのような方法の説明に役立つ例としては、電気穿孔、コンジュゲーション、形質導入、コンピテント細胞形質転換、プロトプラスト形質転換、プロトプラスト融合、バイオリスティック「遺伝子銃」形質転換、PEG媒介形質転換、脂質支援形質転換又はトランスフェクション、化学的に媒介されるトランスフェクション、酢酸リチウム媒介トランスフェクション及びリポソーム媒介トランスフェクションが挙げられる。
【0124】
ある実施形態では、宿主細胞は、遺伝子改変された宿主細胞又は微生物である。これに関連して、宿主細胞又は微生物は、その宿主細胞又は微生物に発現されるポリペプチドの発現及び/又は活性を増強するように遺伝子改変されうる。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドを使用して、MHETase活性能があることが既知の真菌又は細菌の野生型株を、その株のMHETase活性を向上及び/又は増大させるように補完することができる。
【0125】
本開示は、MHETase活性を有するポリペプチドを生産する方法であって、
a)本明細書に記載の核酸配列を用意する工程;
b)核酸配列を宿主細胞培養物において発現させることによってポリペプチドを産生する工程;及び
c)(b)で産生されたポリペプチドを宿主細胞培養物から収集する工程
を含む方法にも及ぶ。
【0126】
本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドを産生するin vitro法であって、(a)本発明の核酸、カセット又はベクターをin vitroで発現系と接触させる工程;及び(b)産生されたポリペプチドを回収する工程を含む、in vitro法にも及ぶ。in vitro発現系は、当業者に周知であり、市販されている。
【0127】
好適な宿主細胞は、当業者によく知られているであろう。それらの説明に役立つ例としては、組換えバシラス属、組換え大腸菌(E. coli)、組換えシュードモナス属、組換えアスペルギルス属、組換えトリコデルマ属、組換えストレプトミセス属、組換えサッカロミセス属、組換えピキア属、組換えサーマス属又は組換えヤロウイア属が挙げられる。ある実施形態では、宿主細胞は、大腸菌である。
【0128】
宿主細胞を、ポリペプチドの産生に好適な栄養培地において、当業者に公知であろう方法を使用して培養することができる。好適な例としては、振盪フラスコ培養、又は好適な培地で並びに酵素の発現及び/若しくは単離を可能にする条件下で実施される研究室用若しくは工業用発酵槽における小規模若しくは大規模発酵(連続、回分、流加若しくは固体発酵を含む)による、宿主細胞の培養が挙げられる。培養は、商業供給業者からの若しくは公開されている組成(例えば、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)のカタログにおいて)に従って調製された好適な栄養培地、又は細胞成長に好適な任意の他の培養培地において、概して行われることになる。ポリペプチドが、培養培地に発現及び/又は分泌された場合、ポリペプチドを、培養/上清混合物の形態で、又は粗細胞溶解物の形態で、使用することができる。或いは、ポリペプチドを培養上清から直接回収することができる。逆に、ポリペプチドを細胞溶解物から回収することができ、又は宿主細胞膜の透過処理後に回収することができる。ポリペプチドを、当業者に公知の任意の好適な方法を使用して回収することができ、そのような方法の説明に役立つ例としては、収集、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、又は沈殿が挙げられる。必要に応じて、ポリペプチドを、熱ショック(thermal chock)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動手順(例えば、分取等電点電気泳動)、溶解度の差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE又は抽出を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の様々な手順によって部分的に又は完全に精製して、実質的に純粋なポリペプチドを得ることができる。
【0129】
ポリペプチドを精製された形態で、単独で、又は追加の酵素(例えば、PETase)と組み合わせて、どちらかで使用して、ポリエステルを含有するプラスチック製品等のポリエステル含有材料の分解及び/若しくはリサイクルに関与する酵素反応を触媒することができる。本明細書に記載されるポリペプチドは、可溶性形態であることもあり、又は固相上にあることもある。詳細には、それらは、細胞膜若しくは脂質小胞に、又は例えばビーズ、カラム、プレート等の形態の、合成支持体、例えば、ガラス、プラスチック、ポリマー、繊維、膜に、結合していることがある。
【0130】
本開示は、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸又は宿主細胞を含む組成物にも及ぶ。
【0131】
組成物は、液体であることがあり、又は乾燥している、例えば、粉末の形態であることがある。一部の実施形態では、組成物は、凍結乾燥物である。例えば、組成物は、ポリペプチド、核酸及び/又は宿主細胞、並びに必要に応じて、賦形剤及び/又は試薬等を含みうる。好適な賦形剤としては、生化学において一般に使用される緩衝剤、pHを調整するための薬剤、保存剤、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウム、保存料(conservatives)、保護又は安定剤、例えば、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、塩、糖、例えば、ソルビトール、トレハロース又はラクトース、グリセロール、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol)、ポリエチレングリコール(polyethene glycol)、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、二価イオン、例えばカルシウム、捕捉剤、例えばEDTA、還元剤(例えば、ベータ-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、アスコルビン酸、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、アミノ酸、担体、例えば、溶媒又は水溶液等を挙げることができる。
【0132】
ある実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるポリペプチドを含む(ポリペプチドは、単離された形態で又は少なくとも部分的に精製された形態で組成物中に存在しうる)。ある実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるポリペプチドを、組成物の総質量に対して約0.1質量%~約99.9質量%、好ましくは約0.1質量%~約50質量%、好ましくは約0.1質量%~約30質量%、好ましくは約0.1質量%~約5質量%の量で含む。好ましい実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるポリペプチドを、組成物の総質量に対して約0.1~約5質量%の量で含む。別の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるポリペプチドを、組成物の総質量に対して約0.1~約0.2質量%の量で含む。組成物中のポリペプチドの量を、当業者は、例えば、分解(加水分解)されることになるポリエステル含有材料の性質及び/若しくは量、並びに/又は組成物中の任意の追加の酵素/ポリペプチドの存在若しくは非存在に依存して、好適に適応させることができる。
【0133】
本明細書に記載される組成物は、MHETaseに限定されない、酵素活性を示す追加のポリペプチドを更に含みうる。
【0134】
ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、1つ又は複数の賦形剤、例えば、ポリペプチドを好適に安定化すること又は分解から好適に保護することができる賦形剤、と一緒に水性媒体に可溶化される。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドを水に可溶化し、次いで賦形剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、デキストラン、デンプン、グリコール、例えばプロパンジオール、塩等と混合することができる。次いで、得られた混合物を乾燥させて粉末を得ることができる。そのような混合物を乾燥させるための方法は、当業者に周知であり、凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥、超臨界乾燥、ダウンドラフト蒸発、薄層蒸発、遠心蒸発、コンベア乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥又はこれらの任意の組合せを含むが、それらに限定されない。
【0135】
ある実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるポリペプチドを発現する少なくとも1つの宿主細胞、又はその抽出物を含む。「細胞の抽出物」とは、本質的に生細胞を含まない、細胞から得られる任意の画分、例えば、細胞上清、細胞残屑、細胞壁、DNA抽出物、酵素若しくは酵素標品、又は化学的、物理的及び/若しくは酵素的処理によって細胞から採取された任意の標品を意味する。好ましい抽出物は、酵素的に活性な抽出物である。組成物は、本明細書に記載されるポリペプチドを含有する1つ若しくは幾つかの宿主細胞又はその抽出物、及び必要に応じて1つ又は幾つかの追加の細胞を含みうる。
【0136】
本明細書中の他の箇所で述べられるように、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載されるポリペプチド(MHETaseバリアント)が配列番号1の野生型MHETaseと比較してより大きいMHETase活性を有することを発見した。それ故、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを加水分解する方法であって、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをテレフタレート及びエチレングリコールに変換するのに十分な条件下で曝露する工程を含む方法が、本明細書で開示される。本開示は、ポリエステルを含むプラスチック製品を分解する方法であって、プラスチック製品を、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞に曝露する工程を含む方法にも及ぶ。
【0137】
本開示は、好気性若しくは嫌気性条件でポリエステルを分解するための、及び/又はポリエステル含有材料を、ポリエステル製の若しくはポリエステルを含有するプラスチック製品としてリサイクルするための、及び/又はポリエステルを含有する生分解性プラスチック製品を生産するための、本明細書に記載されるポリペプチド、組成物又は宿主細胞の使用に及ぶ。そのような方法及び使用は、PETを含むプラスチック製品の分解に特に有用である。
【0138】
有利なことに、ポリエステル含有材料のポリエステル(類)は、モノマー及び/又はオリゴマーまで解重合される。ある実施形態では、少なくとも1種のポリエステルが分解されて再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを生じ、有利なことに、これらが更なる使用のために取り出される又は回収される。
【0139】
ある実施形態では、ポリエステル含有材料のポリエステル(類)は、完全に分解される。
【0140】
本明細書中の他の箇所で述べられるように、プラスチック製品は、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)及び前述のもののいずれかについての組合せからなる群から選択される、少なくとも1種のポリエステルを含みうる。
【0141】
ポリエステル含有材料を分解するために必要な時間は、ポリエステル含有材料自体(即ち、プラスチック製品の性質及び起源、その組成、形状等)、使用されるポリペプチドのタイプ及び量、並びに様々なプロセスパラメーター(即ち、温度、pH、追加の薬剤等)に依存して変わりうる。当業者は、ポリエステル含有材料にプロセスパラメーターを容易に適応させることができる。
【0142】
有利には、分解プロセスは、約10℃~約60℃、好ましくは約20℃~約60℃、好ましくは約30℃~約60℃、より好ましくは約40℃~約60℃、より一層好ましくは約40℃~約50℃の温度で、又はより一層好ましくは約45℃で実行される。温度は、概して、不活性化温度未満であり、この不活性化温度は、ポリペプチドが不活性化される及び/又は組換え微生物が本明細書に記載されるポリエステルを合成も産生も放出もしない温度に対応する。ある実施形態では、温度は、ポリエステル含有材料中のポリエステルのガラス転移温度(Tg)未満で維持される。ある実施形態では、分解プロセス又は方法は、約10℃~約60℃、好ましくは約20℃~約60℃、好ましくは約30℃~約60℃、より好ましくは約40℃~約60℃、より一層好ましくは約40℃~約50℃の温度で、又はより一層好ましくは約45℃で実行される。ポリペプチドを数回使用することができる及び/又はリサイクルすることができる温度で、連続的に、プロセス又は方法を好適に実行することができる。
【0143】
有利には、分解プロセス又は方法は、5~11の間に含まれるpHで、好ましくは6~10の間のpHで、より好ましくは6.5~9の間のpHで、より一層好ましくは7~8の間のpHで実行される。
【0144】
ある実施形態では、ポリエステル含有材料をポリペプチドと接触させる前に前処理して、ポリエステルと酵素との接触面を増加させるようにその構造を物理的に変化させることができる。
【0145】
解重合又は分解プロセス又は方法から得られるモノマーを、逐次的に又は連続的に、好適に回収することができる。出発ポリエステル含有材料に依存して、単一のタイプのモノマー又は幾つかの異なるタイプのモノマーを回収することができる。
【0146】
回収されたモノマーを、任意の好適な精製方法を使用して更に精製し、再重合可能な形態でコンディショニングすることができる。好適な精製方法の説明に役立つ例としては、組み合わせられた又は組み合わせられていない、ストリッピングプロセス、水溶液による分離、水蒸気選択的凝縮、バイオプロセス後の培地の濾過及び濃縮、分離、蒸溜、真空蒸発、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、沈殿、結晶化、濃縮及び酸添加による脱水及び沈殿、ナノ濾過、酸触媒処理、半連続モード蒸溜又は連続モード蒸溜、溶媒抽出、蒸発濃縮、蒸発晶析、液/液抽出、水素化、共沸蒸留プロセス、吸着、カラムクロマトグラフィー、真空単蒸溜並びに精密濾過が挙げられる。
【0147】
再重合可能なモノマーを使用して新たなポリエステルを合成することができる。有利には、同じ性質のポリエステルが再重合される。しかし、回収されたモノマーを他のモノマーと、例えば新たなコポリマーを合成するために、混合することが可能である。或いは、回収されたモノマーを、目的の新たなケミカルコンパウンドを生じさせるための中間体として使用することができる。
【0148】
本開示は、ポリペプチド、前記ポリペプチドを含有する組成物、及び/又は前記ポリペプチドを発現する宿主細胞、若しくはその抽出物を含む、プラスチックコンパウンドにも及ぶ。
【0149】
本開示は、ポリペプチド、前記ポリペプチドを含有する組成物及び/又は前記ポリペプチドを発現する宿主細胞若しくはその抽出物を含む、マスターバッチ組成物にも及ぶ。
【0150】
有利には、本明細書に記載されるそのようなプラスチックコンパウンド又はマスターバッチ組成物を、本明細書に記載されるポリペプチドを含むことになるポリエステル含有材料及び/又はプラスチック物品の生産に使用することができる。
【0151】
ある実施形態では、得られるプラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック物品は、EN規格13432、ASTM規格D6400、OK Biodegradation Soil(Label Vincotte)、OK Biodegradation Water(Label Vincotte)、OK Compost(Label Vincotte)、OK Home Compost(Label Vincotte)等の、当業者に公知の関連規格及び/又はラベルのうちの少なくとも1つに準拠する生分解性プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック物品である。
【0152】
有利には、ポリエステル含有材料(即ち、プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)の分解プロセスは、10℃~50℃の間、好ましくは15℃~40℃の間、より好ましくは20℃~30℃の間に含まれる温度で、より好ましくは28℃、+/-2℃で、実行される。
【0153】
或いは、ポリエステル含有材料(即ち、プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)の分解プロセスは、50℃~60℃の間に含まれる温度で、より好ましくは55℃、+/-2℃で、実行される。
【0154】
本明細書で開示されるMHETaseバリアントは、工業的応用を含む様々な応用に好適であり、その説明に役立つ例としては、洗剤の添加剤、飼料組成物(動物飼料用のものを含む)、布地生産、電子機器及び生物医学的応用が挙げられる。例えば、本明細書で開示されるMHETaseバリアントを布地生産に利用することができ、その場合、布地繊維の特性を好適に改変するためのエキソヌクレアーゼとしてそれを使用することができる。
【0155】
本発明は、次に、本発明の一部の好ましい態様を例証する以下の実施例を参照して説明されることになる。しかし、本発明の以下の説明の特異性は、本発明の前述の説明の一般性を凌駕しないことを理解されたい。
【実施例
【0156】
材料及び方法
組換えMHETaseの構築、発現及び精製
A.コンセンサス設計構築
シード配列として野生型I.サカイエンシス(I. sakasiensis)MHETase(配列番号1)を使用してBLAST+により5,000の配列を収集し、E値の閾値10-5を使用した。
【0157】
【化1】
【0158】
315の非冗長配列は、MHETaseとの高い類似性を示し、それらの配列をUniProtデータベースから取り込んだ。ペプチド輸送シグナルを、SignalP4.0を使用して同定し、検出した。PROMALS3Dライブラリーベースの配列アラインメントアルゴリズム及び利用可能なMHETase構造(6QGB)を使用して全ての配列をアラインした後、最終的なキュレートされたアラインメントを手作業で洗練した。多数の異なる閾値(95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、及び50%)を使用して、各アミノ酸位置におけるアラインメントのコンセンサスを構築した。N'末端の最初の19個のアミノ酸を欠いているMHETase遺伝子の切断型コドン最適化バージョン(GenBank受託番号A0A0K8P8E7)、並びに10のコンセンサス設計を、商業的に合成し、pET-28a(+)(Twist Bioscience社)にクローニングした。
【0159】
B.タンパク質発現及び精製
プラスミドをエレクトロコンピテント大腸菌SHuffle T7 Express細胞(New England Biolab社)への電気穿孔によって形質転換し、100μg/mLのアンピシリンを補足した溶原性ブロス(LB)寒天に播種し、37℃で一晩インキュベートした。単一コロニーを使用して、100μg/mLのアンピシリンを補足した10mlのLB(LBA)に接種し、30℃で一晩インキュベートした。この培養物を1LのLBAに添加し、OD600が1.0に達するまで30℃でインキュベートした。最終濃度1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドを添加し、培養物を16時間の18℃インキュベーションに移した。
【0160】
細胞を、5000×gで15分間、4℃での遠心分離、及び溶解緩衝液(500mM NaCl、30mMイミダゾール、0.5mg/mLのリゾチーム、1%(v/v)TritonX-100、1U/mlのTurbonuclease(Sigma社)、0.5mMチジオトレイトール(DTT)及び25mM HEPES pH7.5)への再懸濁によって回収した。細胞懸濁液を出力50%及び5分間のパルス時間での2ラウンドの超音波処理によって溶解し、可溶性細胞溶解物を不溶性細胞残屑から32,000×gで45分間の4℃での遠心分離によって分離した。溶解物を0.45μm細孔径フィルターに通し、次いで、溶解緩衝液中で平衡させた5mLのHisTrap HP(GE Healthcare Life Sciences社)を使用してニッケル荷電IMACによって精製し、溶出緩衝液(500mM NaCl、500mMイミダゾール、0.5mMジチオトレイトール(DTT)及び25mM HEPES pH7.5)によって溶出させた。MHETaseを伴う溶出物を収集し、濃縮し、0.2μmフィルターによって濾過した。SEC緩衝液(150mM NaCl、25mM HEPES pH7.5)中で平衡させたHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare Life Sciences社)を使用して、最終生成物を更に精製した。
【0161】
C.発色アッセイ
発現タンパク質の50μLの細胞懸濁液を150μLの反応緩衝液(90mM NaCl、45mMリン酸ナトリウムpH7.5)で希釈した。100%(v/v)DMSO中の50μLの10mM 1NT(1-ナフチルテレフタレート)及び5mM Fast Blue B塩色素の添加によって、反応を開始させた。Epochマイクロプレート分光光度計(BioTek社)を使用して465nmでの吸光度を30分間モニターした。
【0162】
動態決定のために、1NTの濃度を1mMから7.8μMへ変化させながら可溶性細胞溶解物の代わりに最終濃度7.5nMの均一なMHETaseを使用した。Fast Blue B塩の濃度は、一定のままであった。1mMから7.8μMの1-ナフトールの較正曲線を使用することにより吸光度を生成物濃度に変換した。
【0163】
D. SDS-PAGE Atto550
方法は、Raducanuら(2020、Journal of Biological Chemistry 295(34):12214~12223頁)から適応させたものであった。SEC緩衝液で希釈した1x BugBuster(Merck-Millipore社)に1mLの細胞ペレットを再懸濁させ、室温で10分間インキュベートした。その混合物を15,000×gで10分間、遠心分離し、5μLの可溶性細胞溶解物をSDS-PAGEゲル上で60分間、140Vで泳動させた。ゲルにMilli-Q水(MQ)中で30秒間、マイクロ波を照射し、次いで、固定溶液(MQ中の40%(v/v)メタノール、10%(v/v)酢酸)中で2分間、マイクロ波を照射した。今や固定されているタンパク質ゲルにMQ中で10分間、再びマイクロ波を照射し、そしてその後、1時間、振盪機上で暗環境においてPBS緩衝液中のNTA-Atto550色素の1:3000希釈液中でインキュベートした。次いで、ゲルを、更なる30分の振盪のために温MQの容器に移した。ChemiDoc MP Imaging System(BIO-RAD社)を使用し、DyLight 550フルオロフォアオプションを使用して、ゲルをイメージングした。
【0164】
E.円偏光二色性及び温度安定性
MHETaseの円偏光二色性スペクトルの測定をApplied Photophysics Chirascan Spectrometerにおいて1mm石英キュベットで実施した。均一な酵素を、25mM酢酸ナトリウムpH7.5中、0.2mg/mLに希釈した。CDスペクトルを20℃、200nm~260nmの間で測定し、1nmのバンド幅及び0.5秒のスキャン速度を使用して適応サンプリングを可能にした。スペクトルを三重反復で測定し、緩衝液ブランクを結果から引いた。熱融解の評定のために、溶液の温度を20℃から90℃へ1℃/分で上昇させながら、222nmでのCDを記録した。標準S字形曲線を熱融解曲線に当てはめてTmを決定した。
【0165】
F. MHETaseについての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による活性の評定
HPLCアッセイは、Palm et al.(2019)から適応させたものであった。均一なMHETaseを反応緩衝液で7.5nMの最終濃度(80μL)に希釈した。100% DMSOに溶解した20μLの1mM MHETを添加することにより、反応を開始させた。設定時点(0、10、30及び60分)後に100μLのクエンチング緩衝液(160mMリン酸ナトリウムpH2)を添加することにより反応をクエンチし、10分間、80℃に加熱した。10μLの体積の反応ミックスをAgilent ZORBAX SB-C18、3.5um、4.6×150mmカラムに負荷した。7分の実行時間にわたって50%リン酸緩衝液(20mMリン酸ナトリウムpH2.0)及び50%アセトニトリルで平衡させて30℃で1mL/分の流速を使用してTPA及びMHETを分離した。TPA及びMHETを240nmで検出し、較正曲線に対して定量化した。
【0166】
(実施例1)
バリアントMHETase
MHETaseとその最も近縁のもののアラインメント配列を使用してコンセンサスベースの設計を実施した。この設計から、多数の異なる組合せMHETase配列を、異なるコンセンサス閾値:95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%及び50%を使用して構築した。例えば、95%閾値でのコンセンサス設計は、アラインされた配列の95%に見られるがWT MHETaseには見られない差の全てを示す。WT MHETase(配列番号1)のアミノ酸配列及び異なるコンセンサス設計(配列番号2~36)のアミノ酸配列を図1に示す。WT MHETaseの核酸配列及び異なるコンセンサス設計(配列番号37~72)の核酸配列を図2に示す。95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%及び50%の閾値から得られる異なるコンセンサス設計を本明細書ではそれぞれラウンド1コンセンサスA、B、C、D、E、F、G、H、I及びJと呼ぶ。
【0167】
上記の発色アッセイを使用し、全細胞懸濁液を使用して、MHETaseの活性/発現を測定した。
【0168】
図3に示されているように、バリアント「ラウンド1コンセンサスA」(配列番号73)は、WT MHETase又は他のコンセンサス設計より高い全細胞活性を示した。ラウンド1コンセンサスAは、WTと比較して2つのアミノ酸置換、つまり、N156G及びT159Vを含有した。初期研究として、MHETase活性及び/又は発現を更に安定化する/向上させる変異を同定するために、多重配列アラインメントによって同定された他のコンセンサス残基に基づいてこのバリアントに点変異を加えた。残りのバリアント(変異体;配列番号3~36)は、ラウンド1コンセンサスA配列と比較して以下の点変異のうちの1つを含む(この命名法は、野生型MHETase、配列番号1のアミノ酸位置を参照する):
T68V、A78P、E110A、M117L、E128Q、S131G、N134D、A161G、G156N、D191L、M192Y、S196A、Y197V、G204A、A207L、A216P、E226N、L234A、S235A、P255V、G258A、S260A、T264L、T265L、N284L、L295V、S296A、T355R、A377P、S463L、A493P、Y503W、E594A及びN496S
【0169】
また図3に示されているように、点変異S196A、Y197V、S235A、P255V、S260A、S286A、Y503Wは、これらをラウンド1コンセンサスA配列に加えたとき、大腸菌における発現時により一層高い全細胞活性を示した。
【0170】
可溶性細胞溶解物をSDS-PAGEによって泳動させ、NTA-Atto550で染色して酵素の発現率を同定した。ゲル上の64kDaでのMHETase泳動を図4に示す。このゲルは、MHETase変異体の大部分(対照を含む)が、このより特異的な染色法のもとでも不可視であることを示す。この結果は、低い可溶性タンパク質発現と一致する。ラウンド1コンセンサスA、及びバリアントB骨格上に点変異S196A、Y197V、S235A、P255V、S260A、S286A又はY503Wを含むバリアントは、大腸菌において野生型(WT)よりも異種発現の増加を示すように見えた。
【0171】
選択した生成されたバリアントの安定性も、精製されたタンパク質バリアントを使用して試験した。図5に示されているように、WT MHETase、ラウンド1コンセンサスA及びラウンド1コンセンサスA+Y503Wの熱融解(Tm)は、おおよそ59oCであったのに対して、ラウンド1コンセンサスAへのY197V点変異の導入は、Tmを52oCに低下させた。
【0172】
工業的応用における野生型MHETaseの使用に対する肝要な制限の1つは、工業用株におけるその低い発現である。本明細書で開示されるバリアントにより実証されるように、全細胞活性(触媒効率と活性タンパク質の発現収率の組合せ)の増大は、生産及び使用のコストを有利に低下させる。
【0173】
(実施例2)
活性の向上を有するMHETaseの操作
ラウンド1コンセンサスAは、熱安定性への変化を殆ど伴うことなく(図5)、全細胞MHETase活性の向上を有する(図3)ことが明らかになったので、熱安定性の向上を有するバリアントを生成するために、ラウンド1コンセンサスA(N156G及びT159V点変異を含有する)を更なる操作の基礎として選択した。この新たな操作プロセスでは、点変異をラウンド1コンセンサスAに加えて変異体のライブラリーを生成し(ラウンド2)、全細胞活性についてスクリーニングした。このプロセスは、最も有望なバリアントを選択する工程、及び幾つかの設計ラウンドにわたって単一点変異を繰り返し導入する工程を必要とする。
【0174】
ラウンド2では、以下の点変異をラウンド1コンセンサスA骨格に導入した(この命名法は、野生型MHETase、配列番号1のアミノ酸位置を参照する):
T593D、P543A、Y503W、S463L、P449A、T355R、G301A、S296A、H293Q、S286A、N284L、S267A、T265L、T264L、S260A、P255V、S235A、K218R、A216P、A207L、Y197B、S196A、D191L、L190I、E110A、Y107Q、A99N、A81P、A78P、T68V
【0175】
ラウンド2から選択した最高性能バリアントは、「ラウンド2 Y503W」(N156G、T159V及びY503W点変異を含有する;配列番号74)である。
【0176】
ラウンド3では、以下の点変異を「ラウンド2 Y503W」に導入した:
E594A、A493P、A377P、S286A、S267A、T264L、S260A、S196A、M192Y
【0177】
ラウンド3から選択した最高性能バリアントは、「ラウンド3 M192Y」(N156G、T159V、M192Y及びY503W点変異を含有する;配列番号75)である。
【0178】
ラウンド4では、以下の点変異をラウンド3 M192Yに導入した。ここで、「+」は、特定の位置におけるアミノ酸の挿入を示す:
+N564、S561A、G534A、L486V、A469P、+P467、H467M、W398K、A377P、M361F、I357L、S288T、L282D、S286A、S267A、S260A、Y252F、M233V、G231A、E230H、V208I、Q202P、V200L、T162S、A161S、G156N、V159T、L137V、G130N、R114E、L112G、A79G
【0179】
ラウンド4から選択した最高性能バリアントは、「ラウンド4 G156N」(T159V、M192Y及びY503W点変異を含有する;配列番号76)である。
【0180】
ラウンド5では、以下の点変異をラウンド4 G156Nに導入した。ここで、「+」は、特定の位置におけるアミノ酸の挿入を示す:
N592E、I582V、G562R、R537Q、A494V、W466F、Q461E、M361F、I357L、N316D、I283L、Y252F、V246L、Y242F、G231A、V200L、G164A、I104V、E90A、E71T
【0181】
ラウンド5選択した最高性能バリアントは、「ラウンド5 Y252F」(T159V、M192Y、Y252F及びY503Wを含有する;配列番号77)であり、これは、野生型と比べて全細胞活性の16倍増大を示した(図6)。
【0182】
各ラウンドからの最高バリアントの発現を、Hisタグ特異的蛍光標識ATTO550で染色されたSDS-PAGEを使用して定性的に測定した。WT MHETaseの発現は低すぎて、バックグラウンド内在性大腸菌タンパク質発現に対して最終的に検出することができなかった。しかし、操作ラウンド2によって、バリアントMHETase(ラウンド2 Y503W)組換え発現レベルは、ATTO550蛍光色素を使用して可視検出可能となるレベルに向上された(図7)。
【0183】
本明細書に記載する発色アッセイを精製されたタンパク質(図8)と共に使用して、これらの酵素の動態パラメーターを決定した。全てのバリアントの触媒効率(kcat/KM)は、野生型MHETaseのものに対して相対的に一定のままであった。図9は、様々な基質濃度での酵素機能の速度のミカエリス・メンテンプロットを示す。これらのデータから、Table 1(表1)に示すように、2つの定数-kcat及びKM-を獲得した。
【0184】
【表1】
【0185】
本明細書に記載する発色アッセイを使用して観察されたデータを検証するために、天然基質MHETに対する野生型MHETaseの及びラウンド5からの最高バリアント(ラウンド5 Y252F;配列番号77)の活性を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定した。HPLCを使用して、野生型MHETase又はラウンド5 Y252Fを含有する酵素反応におけるテレフタル酸(TPA)及びMHETの濃度を経時的に測定した。データは、発色アッセイを使用して観察されたkcat及びKMの低下と一致しており、ラウンド5 Y252FがMHETをTPAに加水分解することを確証する。(図11を参照されたい)。
【0186】
精製されたタンパク質バリアントを使用して、コンセンサス設計に関する安定性試験も実施した。192及び252位における変異は、WT MHETaseと比べて(Tm)の温度安定性を向上させる(図10)。
【0187】
全体的に見て、これらの安定化特性は、野生型MHETaseと比べてラウンド5 Y252Fの発現及び活性の向上に寄与する。しかし、これらの向上にもかかわらず、このバリアントの比活性は、そのより低いkcatによって実証されるように、野生型と比較して低下される(Table 1(表1))。
【0188】
更なる操作を実施して、ラウンド5 Y252Fの個々の変異の一部をそれらの野生型残基に復帰させた。156位の場合には、変異N156GをMHETase R5のバックグラウンドに再導入して、ラウンド4における野生型同一性へのこの残基の復帰の影響を調査した。FastBlueアッセイにより決定した全細胞活性を図12に示す。
【0189】
変異M192Yをラウンド5 Y252Fでの野生型残基(M)(「R5-Y192M」;配列番号78)に復帰させたとき、ラウンド5 Y252Fと比べて比活性のおよそ3倍増大が観察された(図11)。これは、配列番号1の野生型MHETaseのものに、より高度に匹敵する。ラウンド5 Y252Fにおける他の点変異の復帰は、酵素活性を低下させるか又は有意に変化させないかのどちらかであった。MHETaseバリアントの温度安定性をTable 2(表2)に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
本明細書に引用したあらゆる特許、特許出願及び公表文献の開示は、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
本明細書におけるいずれの参考文献の引用も、そのような参考文献が本願の「先行技術」として利用可能であることの承認と見なすべきではない。
【0193】
本明細書を通して、目的は、本発明をいずれか1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。したがって、本開示に鑑みて、例示されている特定の実施形態に本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変及び変化を加えることができることは、当業者には理解されるであろう。そのような改変及び変化は、添付の特許請求の範囲内に含まれることになると考えている。
【符号の説明】
【0194】
1NT 1-ナフチルテレフタレート
GST グルタチオンSトランスフェラーゼ
MBP マルトース結合タンパク質
MHET モノ-2-ヒドロキシエチルテレフタレート又はモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート
MHETase モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ
PBS ポリブチレンスクシネート
PBAT ポリブチレンアジペートテレフタレート
PBD ポリブチレンスクシネート
PBSA ポリブチレンスクシネートアジペート
PBT ポリブチレンテレフタレート
PCL ポリカプロラクトン
PEA ポリエチレンアジペート)又はポリ(エチレンアジペート)
PEF ポリエチレンフラノエート
PEIT ポリエチレンイソソルビドテレフタレート
PET ポリエチレンテレフタレート
PETase ポリエチレンテレフタル酸エステラーゼ
PGA ポリ(グリコール酸)
PHA ポリヒドロキシアルカノエート
PLA ポリ乳酸
PLGA ポリ(乳酸-co-グリコール酸)
PTT ポリトリメチレンテレフタレート
TPA テレフタル酸
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
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図2-9】
図2-10】
図2-11】
図2-12】
図2-13】
図2-14】
図2-15】
図2-16】
図2-17】
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図2-19】
図2-20】
図2-21】
図2-22】
図2-23】
図2-24】
図2-25】
図2-26】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024525117000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸156~396、398~410及び425~603位に対応する位置からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含み、(iii)前記ポリペプチドの前記MHETase活性が配列番号1のMHETaseのMHETase活性より大きい、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸192位に対応する位置;及び
(iv)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2又は請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、N156G、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、T159V、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、Y252F、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、Y503W、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項2から10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159、192、252及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸159、192及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸156、159、及び503位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項2から14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記アミノ酸置換が、T159V、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記アミノ酸置換が、T159V、M192Y、Y252F及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から11、及び13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記アミノ酸置換が、N156G、M192Y及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から11、及び14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記アミノ酸置換が、N156G、T159V、M192Y及びY503W、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項2から11、及び15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記ポリペプチドが、
(i)配列番号1のアミノ酸156位に対応する位置;
(ii)配列番号1のアミノ酸159位に対応する位置;
(iii)配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置;
(iv)配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置;
(v)配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置;
(vi)配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置;
(vii)配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置;
(viii)配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置;及び
(ix)配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置
からなる群から選択される1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号1のアミノ酸196位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S196A、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20又は請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
配列番号1のアミノ酸197位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、Y197V、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から23のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸260位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から24のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
配列番号1のアミノ酸位置に対応する位置におけるアミノ酸置換S260Aが存在する、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
配列番号1のアミノ酸264位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S264L、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
配列番号1のアミノ酸267位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S267A、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から28のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から29のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
配列番号1のアミノ酸286位に対応する位置における前記アミノ酸置換が、S286A、又はその保存的アミノ酸置換である、請求項20から30のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記ポリペプチドの前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸156及び159位に対応する位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、請求項20から31のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記アミノ酸置換が、N156G及びT159V、又は前述のもののいずれかについての保存的アミノ酸置換である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸ヒドロラーゼ(MHETase)活性を有するポリペプチドであって、(i)配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、(ii)配列番号1のMHETaseの活性部位外にある1つ又は複数の位置におけるアミノ酸置換によって配列番号1と異なる、アミノ酸配列を含み、前記ポリペプチドの前記MHETase活性が配列番号1のMHETaseのMHETase活性より大きい、ポリペプチド。
【請求項35】
配列番号1のMHETaseと比較して、
(i)宿主系における組換え発現の増加;
(ii)全細胞活性の増大;及び
(iii)熱安定性の増大
のうちの1又は複数を更に含む、請求項1から34のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、組成物。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記核酸配列が、配列番号37~72及び79~82からなる群から選択される、請求項37に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
請求項37又は請求項38に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項40】
請求項37若しくは請求項38に記載のポリヌクレオチド又は請求項39に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項41】
MHETase活性を有するポリペプチドを生産する方法であって、
(a)請求項37又は請求項38に記載のポリヌクレオチドを用意する工程;
(b)核酸配列を宿主細胞培養物において発現させることによってポリペプチドを産生する工程;及び
(c)(b)で産生された前記ポリペプチドを宿主細胞培養物から収集する工程
を含む方法。
【請求項42】
モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを加水分解する方法であって、前記モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載の組成物、又は請求項40に記載の宿主細胞に、前記モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをテレフタレート及びエチレングリコールに変換するのに十分な条件下で曝露する工程を含む方法。
【請求項43】
ポリエステルを含むプラスチック製品を分解する方法であって、前記プラスチック製品を、請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載の組成物、又は請求項40に記載の宿主細胞に曝露する工程を含む方法。
【請求項44】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート)(PEA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)及び前述のもののいずれかについての組合せからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
(a)前記PETを、ポリエチレンテレフタル酸エステラーゼ(PETase)に、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(MHET)を生成するための前記PETの変換を前記PETaseが触媒するのに十分な条件下で、曝露する工程;及び
(b)工程(a)で生成された前記MHETを、請求項1から35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載の組成物、又は請求項40に記載の宿主細胞に、テレフタレート及びエチレングリコールを生じさせるための前記MHETの加水分解を前記ポリペプチドが触媒するのに十分な条件下で、同時に又は逐次的に曝露する工程
を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
工程(b)で生じた前記テレフタレート及び/又はエチレングリコールを回収する工程を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法により回収された前記テレフタレート及び/又はエチレングリコールを含む、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸252位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、Y252F、又はその保存的アミノ酸置換である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
ある実施形態では、配列番号1のアミノ酸503位に対応する位置におけるアミノ酸置換は、Y503W、又はその保存的アミノ酸置換である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
別段の定めがない限り、本願で開示される位置は、配列番号1で示されるアミノ酸を参照することにより番号付けされ、これらの位置の番号付けは、(配列番号1及び19アミノ酸のN末端シグナル配列を含む)UniProt受託番号A0A0K8P8E7にみられる野生型配列と同一の位置に相当する。これに関連して、用語「に対応する」は、アミノ酸位置に関して使用される場合、ポリペプチド配列内のアミノ酸位置であって、その位置がA0A0K8P8E7で示される配列内の同等の又は対応する位置とアラインされたときのアミノ酸位置を意味するように意図されている。
【国際調査報告】