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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】注入カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 130F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574493
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 IB2022056300
(87)【国際公開番号】W WO2023002287
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,658
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ワイ.チョン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェフリー ホン
(72)【発明者】
【氏名】グレイス チョアン リャオ
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ シンハ
(72)【発明者】
【氏名】サティッシュ ヤラマンチリ
(57)【要約】
本明細書に開示される実施形態は、眼圧を制御するために眼への/眼からの流体の注入/排出のための注入カニューレに関する。注入カニューレは、管状本体の近位端に位置する管状入口と、管状本体の遠位端に位置する管状出口とを有する管状本体を含む。管状出口は、第1の長手方向軸と位置合わせされ、弁付きカニューレハブの隔壁を通って延びるように構成されている。注入カニューレは、管状本体から延びるか、管状本体に結合された、保持ピースを含む。保持ピースは、管状本体の遠位端で管状本体を取り囲み、弁付きカニューレハブに結合されるように構成された環状本体を有する。環状本体の内面は、弁付きカニューレハブの外面に沿って形成された張出部とスナップフィットを形成するように構成された外形を有する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入カニューレであって、
管状本体であって、前記管状本体の近位端に位置する管状入口と、前記管状本体の遠位端に位置する管状出口とを備え、前記管状出口は、第1の長手方向軸と位置合わせされ、弁付きカニューレハブの隔壁を通って延びるように構成されている、管状本体と、
前記管状本体から延在する、又は前記管状本体に結合された保持ピースであって、前記管状本体の前記遠位端で前記管状本体を取り囲み、前記弁付きカニューレハブに結合されるように構成された環状本体を有し、前記環状本体の内面が前記弁付きカニューレハブの外面に沿って形成された張出部とスナップフィットを形成するように構成された外形を有する、保持ピースと、
を備える、注入カニューレ。
【請求項2】
前記管状入口が、前記管状出口の前記第1の長手方向軸に対して角度が付けられている、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項3】
前記管状出口の前記第1の長手方向軸と前記管状入口の第2の長手方向軸との間で測定される角度が約15°~約90°である、請求項2に記載の注入カニューレ。
【請求項4】
前記管状入口の第2の長手方向軸が、前記管状出口の前記第1の長手方向軸と少なくとも実質的に位置合わせされている、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項5】
前記管状本体が一体的に形成され、前記保持ピースは、前記管状本体とは別個に形成された後に前記管状本体に一緒に結合される軟質エラストマーを含む、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項6】
前記管状本体及び保持ピースが一体的に形成され、熱可塑性エラストマー又は硬質ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項7】
前記管状入口が、前記管状出口に対して、前記管状出口の前記第1の長手方向軸の周りで旋回するように構成されている、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項8】
前記保持ピースが、少なくとも23ゲージ、25ゲージ、及び27ゲージの弁付きカニューレを含む複数の異なるサイズの弁付きカニューレに嵌合するように構成されている、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項9】
前記管状出口の内径が、前記弁付きカニューレの内径よりも大きく、前記管状出口のより大きな内径は、前記注入カニューレを通る全体の流れ抵抗を、前記弁付きカニューレと比較してより小さくするように構成されている、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項10】
前記保持ピースと前記弁付きカニューレハブとの間に前記スナップフィットを形成するために、前記保持ピースが前記弁付きカニューレハブ上に押し付けられてそこに完全に着座した位置にされ、前記保持ピースと前記弁付きカニューレハブとの間の前記スナップフィットを解除するために、前記保持ピースが前記弁付きカニューレハブから引き離され、前記そこに完全に着座した位置から外される、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項11】
前記管状本体が、その前記外面から前記管状出口の前記第1の長手方向軸に直交する方向に延びる環状ディスクを更に備え、前記保持ピースの前記環状本体の内面は、前記環状ディスクに嵌合して前記保持ピースを前記管状本体に結合する環状凹部を備える、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項12】
前記管状本体が、その外面から前記管状出口の前記第1の長手方向軸に直交する方向に延びるフランジを更に備え、前記フランジは、前記保持ピースから前記管状本体に力を伝達するのに役立つ、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項13】
前記保持ピースの近位端が前記フランジの遠位面に接触する、請求項12に記載の注入カニューレ。
【請求項14】
環状空間が、前記弁付きカニューレハブの近位端を受け入れるために前記環状本体と前記管状出口の外面との間に半径方向に形成されている、請求項1に記載の注入カニューレ。
【請求項15】
前記環状本体にスリットが形成され、前記環状本体が前記弁付きカニューレハブに押し付けられるときに前記環状本体が拡張し、前記環状本体が前記弁付きカニューレハブに完全に着座した位置に移動するときに収縮することを可能にする、請求項1に記載の注入カニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2021年7月20日出願の、「INFUSION CANNULA」と題する、発明者がJames Y.Chon、Robert Jeffrey Heng、Grace Chuang Liao、Ashish Sinha及びSatish Yalamanchiliである、米国仮特許出願第63/223,658号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書にすべて且つ完全に記載されているかのように、その全体を引用して本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、概して、眼科手術中に眼圧(intraocular pressure、IOP)を制御するための装置、システム、及び方法に関する。より具体的には、本開示は、眼への/眼からの流体の注入/排出に有用な注入カニューレ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
後眼部外科手術は、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症及び糖尿病性硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、網膜上膜、サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎などの眼の奥の症状を治療するために行われる。
【0004】
眼の奥に影響を与える特定の問題には、硝子体切除術、又は硝子体の外科的除去が必要になる場合があり、硝子体は、通常は透明なゲル状の物質で、眼の中心を満たし、眼に外観や形状を与えるのに役立つ。例えば、眼から血液や破片を除去したり、瘢痕組織を除去したり、網膜の牽引を軽減したりするために、硝子体切除術が行われる場合がある。図1Aは、硝子体切除術などの例示的な眼科手術中の眼100の正面概略図である。図1Aに示す手術では、虹彩のすぐ後ろで網膜の前に位置する眼100の毛様体扁平部に3つの別個の切開が行われる。切開は、ライトパイプ、注入ポート、及び硝子体切除装置などの器具を眼100に通すために使用される。図1Aに示すように、弁付きカニューレ110は、器具のアクセスを可能にすると同時に、眼100の内側及び外側からの流体及び圧力伝達を受動的に制御するための自己密閉弁を提供するために、各切開部に配置される。例示的な弁付きカニューレ110が図1Bの上面等角図に示されている。弁付きカニューレ110は、眼100内に延びる遠位端を有するカニューレ部分112(図1Bの右側の破線の内側に示される)と、カニューレ部分112の近位端に結合され眼100の外側に配置され眼100の前面に接触しているハブ114(図1Bの左側の点線の外側に示されており、図1Aにも示されている)とを含む。本明細書に記載されるように、構成要素の遠位端又は遠位部分は、その構成要素の使用中に患者の身体により近い端部又は部分を指すことに留意されたい。一方、構成要素の近位端又は近位部分は、患者の身体からより遠く離れた端部又は部分を指す。弁隔壁116は、眼100への、及び眼100からの流体及び圧力伝達を調節するために、弁付きカニューレ110の貫通孔118(仮想線で示す)と整列して配置される。
【0005】
後眼部手術中に硝子体液が吸引されると、眼圧(IOP)が低下し、眼が柔らかくなる傾向がある。注入カニューレは、例えば図1Aの弁付きカニューレ110の1つと併せて使用して、液体又は気体(例えば、平衡塩類溶液(BSS))などの流体を眼に注入して、IOPを維持し、眼球の変形又は崩壊を回避することができる。更に、IOPを維持することは強膜の硬直性を維持するのに役立ち、手術中の眼の動きや器具の交換を容易にすることができる。しかしながら、長期間にわたってIOPが上昇すると眼の構造に損傷を与える可能性があるため、IOPは注意深く調節する必要がある。IOPが高くなりすぎる場合には、別の注入カニューレを、例えば図1Aの弁付きカニューレ110の別の1つと組み合わせて使用して、圧力を軽減するために眼から流体を排出することができる。
【0006】
既存の注入カニューレには重大な欠点がある。例えば、現在の注入カニューレのチューブをルーティングする場合、テープを使用してサービスループを作成すると、障害物が生じ、追加の手術が加わる。更に、既存の注入カニューレはハブの内面に結合する。これは、既存の注入カニューレがサイズ固有であることを意味する。したがって、それぞれの異なる注入カニューレは、1つのサイズの弁付きカニューレにしか適合しない。更に、既存の注入カニューレは、互換性のある弁付きカニューレと比較して流体の流れを制限する内径を備えているため、所与の流体流量を維持するには高圧が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、眼圧を制御するための改良された装置、システム、及び方法が必要であり、特に、上述の欠点の少なくとも一部に対処する改良された注入カニューレが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、概して、硝子体切除術を含む後眼部外科手術などの眼科手術中に眼圧を制御するための装置、システム、及び方法に関する。より具体的には、本開示は、眼への/眼からの流体の注入/排出に有用な注入カニューレ及びその使用方法に関する。
【0009】
本明細書に記載の特定の実施形態は、眼圧を制御するために眼への/眼からの流体の注入/排出のための注入カニューレを提供する。注入カニューレは、管状本体の近位端に位置する管状入口と、管状本体の遠位端に位置する管状出口とを有する管状本体を含む。管状出口は、第1の長手方向軸と位置合わせされ、弁付きカニューレハブの隔壁を通って延びるように構成されている。注入カニューレは、管状本体から延びるか、管状本体に結合された、保持ピースを含む。保持ピースは、管状本体の遠位端で管状本体を取り囲み、弁付きカニューレハブに結合されるように構成された環状本体を有する。環状本体の内面は、弁付きカニューレハブの外面に沿って形成された張出部とスナップフィットを形成するように構成された外形を有する。
【0010】
以下の説明及び関連する図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の例示的な特徴を詳述する。
【0011】
添付の図面は、1つ又は複数の開示される実施形態の特定の態様を示すものであり、したがって本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A-1B】図1Aは例示的な眼科手術中の眼の正面概略図であり、図1B図1Aに示される手術中に使用され得る例示的な弁付きカニューレの上面等角図である。
図2A】本開示の特定の実施形態による、例示的な弁付きカニューレと組み立てられた例示的な注入カニューレを含む弁付きカニューレアセンブリの側断面図である。
図2B図2Aの例示的な注入カニューレの上面等角図である。
図2C図2Aの例示的な注入カニューレの底面等角図である。
図3】本開示の特定の実施形態による、眼圧を制御するために図2Aの弁付きカニューレアセンブリを使用する例示的な方法を示す図である。
図4】本開示の特定の実施形態による、図3の方法の一段階を示す眼の正面概略図である。
図5】本開示の特定の実施形態による、眼圧を制御するために図2Aの弁付きカニューレアセンブリを使用する別の例示的な方法を示す図である。
図6】本開示の特定の実施形態による、図5の方法の一段階を示す眼の正面概略図である。
図7図2Aの弁付きカニューレと組み立てられた状態で示される、真っ直ぐな入口を備えた別の例示的な注入カニューレの側断面図である。
図8図2Aの弁付きカニューレと組み立てられた状態で示される、旋回入口を備えた更に別の例示的な注入カニューレの側断面図である。
図9A図2Aの弁付きカニューレと組み立てられた状態で示される、更に別の例示的な注入カニューレの側断面図である。
図9B図9Aの例示的な注入カニューレの上面等角図である。
図9C図9Aの例示的な注入カニューレの底面等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解しやすくするために、複数の図面に共通する同じ要素を示すために、可能な限り同じ参照番号が使用されている。一実施形態の要素及び特徴は、更なる説明を伴わずに他の実施形態に有益に組み込むことができるように企図されている。
【0014】
本明細書に開示される実施形態は、眼圧(IOP)を制御するための装置、システム、及び方法を提供する。例えば、開示された装置、システム、及び方法は、硝子体切除術を含む後眼部外科手術などの眼科手術中にIOPを制御するのに有用である。より具体的には、実施形態は、以下により詳細に説明するように、弁付きカニューレと組み立てられたときに、眼への/眼からの流体の注入/排出に有用な、注入カニューレ及びその使用方法を開示する。
【0015】
特定の実施形態は、サービスループを作成する必要性をなくすために入口チューブのルーティングを容易にする角度の付いた入口を有する改良された注入カニューレを提供する。以下に詳細に説明するように、角度の付いた入口により視覚的及び物理的な障害が軽減され、手術のステップが削除されることで手術時間が短縮される。また、角度の付いた入口は、以下により詳細に説明するように、入口チューブを通る流れ及び圧力伝達を妨げる入口チューブの望ましくないよじれを制限する。特定の実施形態は、弁付きカニューレハブの外面に結合されるように構成された改良された注入カニューレを提供する。注入カニューレをハブの外面に結合することにより、注入カニューレが異なるサイズの弁付きカニューレと相互互換性を有することが可能になり、それにより、以下でより詳細に説明するように、注入カニューレの潜在的な使用例が拡大する。特定の実施形態は、互換性のある弁付きカニューレハブの対応する内径よりも大きい、流体の流れのための内径を有する改良された注入カニューレを提供する。このような実施形態では、改良された注入カニューレは、注入カニューレを通る全体的な流れ抵抗及び圧力降下を低減するように構成されており、これにより、所与の流体流量を維持するために必要な圧力が低下するか、又は別の言い方をすると、詳細については以下で説明するように所与のソース圧力での流量が増加する。
【0016】
図2Aは、弁付きカニューレアセンブリ200の側断面図である。弁付きカニューレアセンブリ200は、一般に、例示的な注入カニューレ230の遠位端に結合されたハブ214を有する弁付きカニューレ210を含む。特定の実施形態では、弁付きカニューレ210は、図1Bの弁付きカニューレ110と同様に構築及び配置され得る。その説明の態様は、制限なく本明細書に組み込むことができる。図2Aに示すように、弁付きカニューレ210のカニューレ部分212の近位端228は、ハブ214の内部に配置される。特定の実施形態では、カニューレ部分212をハブ214に結合するために、カニューレ部分212の近位端228から半径方向外側に延びる1つ又は複数のウィング220が、ハブ214に形成された対応する窓を通して配置される。特定の実施形態では、弁隔壁216は、カニューレ部分212の近位端228に結合され、そこを通して器具を挿入せずに内部に気密及び水密シールを形成するように構成されたスリット(図1Bに示す)を有する、エラストマー材料を含む。弁隔壁216は、貫通孔218を介して器具が眼にアクセスできるようにすると同時に、貫通孔218を封止して眼の内部及び外部からの流体及び圧力伝達を調節する。特定の実施形態では、弁付きカニューレのサイズは、とりわけ23ゲージ、25ゲージ、及び27ゲージの弁付きカニューレを含むなど、内径222の寸法に従って指定される。
【0017】
図2Aに示すように、注入カニューレ230の遠位端は、弁付きカニューレ210のハブ214を半径方向に取り囲み、ハブ214に結合する。図2B図2Cは、それぞれ、図2Aの注入カニューレ230の上面等角図及び底面等角図である。したがって、明確にするために、本明細書では図2A図2Cを一緒に説明する。注入カニューレ230は、一般に、近位端に管状入口250、遠位端に管状出口260、並びに、管状本体240の遠位端の外面248から延びる及び/又は外面248に結合された保持ピース270を備えた、管状本体240を含む。特定の実施形態では、管状入口250は、入口チューブ232に結合されるように構成されている。入口チューブ232は、液体又は気体(例えば、BSS)などの流体を、その後の眼への注入のために注入カニューレ230の管状入口250に供給するように構成されている。図2Aの例では、管状入口250は、入口チューブ232を取り付けるためのルアー接続を近位端に有する。特定の実施形態では、管状入口250を通る流体の流れの内径は、管状入口250の近位端における第1の内径が、角度254で配置された管状入口250の遠位端における第2の内径よりも大きくなるように先細になっている。このような実施形態では、管状本体240の残りの内径は、図2Aと同じ第2の内径にほぼ等しい。特定の実施形態では、管状入口250及び管状入口250を通る流体の流れの内径は、管状本体240を通る残りの流体流路と比較して拡大される。
【0018】
管状出口260は、管状本体240の遠位端に位置し、図2Aに示すように、弁付きカニューレ210のハブ214の弁隔壁216を通って延びるように構成されている。外面262の直径及び管状出口260の長さは、弁隔壁216を通って嵌合するような大きさに作られている。管状出口260は、「弁無効」幾何学的形状と呼ばれることがある弁隔壁216を通って延びているので、管状出口260を通って供給される流体は、続いて眼内に注入するために弁隔壁216を通過して弁付きカニューレ210のカニューレ部分212に入ることができる。図2Aに示すように、管状出口260は、第1の長手方向軸264と位置合わせされる。
【0019】
管状本体240は、例えば射出成形により一体的に形成される。特定の実施形態では、管状本体240は、熱可塑性エラストマー又はポリプロピレンなどの硬質ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。管状本体240の管状入口250と管状出口260との間には、連続した流路が形成されている。特定の実施形態では、流路の最小内径242は、弁付きカニューレ210のカニューレ部分212の内径222よりも大きい。例えば、最小内径242は、23ゲージの弁付きカニューレの内径222より大きくてもよい。例えば、最小内径242は、約0.5mm(約0.02インチ)以上、例えば約0.5mm(約0.02インチ)から約0.76mm(約0.03インチ)、例えば約0.64mm(約0.025インチ)であってもよい。弁付きカニューレ210の内径222と比較して相対的に大きい注入カニューレ230の最小内径242は、弁付きカニューレ210と比較して、また既存の注入カニューレ設計と比較して、注入カニューレ230を通る全体の流れ抵抗及び圧力降下を低減するように構成されている。
【0020】
特定の実施形態では、本明細書に開示される注入カニューレの実施形態では、より低いソース圧力を使用して所与の流量を維持することができる。特定の実施形態では、ソース圧力は、流れ抵抗の減少に比例して低減され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される注入カニューレの実施形態を用いて、流量を所与のソース圧力で増加させることができる。特定の実施形態では、120mmHg(水銀柱ミリメートル)のソース圧力では、圧力低下の減少は、ゲージのサイズに応じて、既存の注入カニューレの設計と比較して、約10%以上、例えば約10%~約40%、例えば約20%、例えば約35%であり得る。特定の実施形態では、120mmHgのソース圧力において、流量の増加は、ゲージのサイズに応じて、また既存の注入カニューレ設計と比較して、約1%以上、例えば、約1%~約30%、例えば、約1%~約10%、例えば、約2%、例えば、約10%~約30%、例えば約20%であり得る。
【0021】
図2Aに示すように、管状入口250は、管状出口260の第1の長手方向軸264に対して角度が付けられている。特定の実施形態では、管状出口260の第1の長手方向軸264と管状入口250の第2の長手方向軸252との間で測定される角度254は、約15°より大きく、例えば約15°~約90°、例えば約15°~約45°、例えば、約30°~約60°、例えば、約45°~約75°、例えば、約60°~約90°、例えば、約30°、例えば、約45°、例えば、約60°である。第1の長手方向軸264と第2の長手方向軸252との間の任意の角度が可能であり、その例の開示は後述の特許請求の範囲を超えて限定することを意図していないが、約15°未満の角度は、サービスループを作成する必要性を取り除くため、又はその外形を縮小するための入口チューブ232のルーティングに十分に役立たない可能性があり、一方、約90°を超える角度は、入口チューブ232が眼又は眼の周囲の解剖学的構造を妨げる可能性がある、と考えられる。開示された範囲内の角度はまた、入口チューブ232を通る流れ及び圧力伝達を妨げる入口チューブ232の望ましくないよじれを制限することができる。
【0022】
管状本体240は、管状本体240の外面248から管状出口260の第1の長手方向軸264に直交する方向に延びるフランジ244を含む。フランジ244は、管状本体に強度及び/又は剛性を追加することができ、保持ピース270から管状本体240への力の伝達を助けることによって、注入カニューレ230とハブ214との間の接続を安定させるのに役立ち得ることが考えられる。例えば図2Aでは、フランジ244の遠位面245は保持ピース270の近位端280に接触し、それらの間に形成される境界面を横切って荷重が伝達され得る。図2Aに示す実施形態では、環状ディスク246は、管状本体240の外面248から管状出口260の第1の長手方向軸264に直交する方向に延びる。環状ディスク246は、注入カニューレ230に対して遠位方向にフランジ244から間隔を置いて配置され、管状本体240を保持ピース270に結合するための構造を提供するように構成されている。
【0023】
図2Aに示すように、保持ピース270は、注入カニューレ230の管状出口260を含む管状本体240を取り囲む環状本体272を備える。環状凹部274が環状本体272の内面276上に形成されている。図2Aに示すように、環状凹部274の形状及び位置は、保持ピース270を管状本体240に結合するために、環状ディスク246と嵌合するように設計されている。特定の実施形態では、保持ピース270は、シリコーンなどの軟質エラストマー材料を含む。軟質エラストマーは、組み立て中に環状ディスク246の周りに嵌合するように環状本体272に追加の柔軟性を提供する。特定の実施形態では、保持ピース270は射出成形によって形成される。特定の実施形態では、保持ピース270は、上述のように管状本体240とは別個に形成された後に管状本体240に一緒に結合される。いくつかの他の実施形態では、保持ピース270は、製造中に管状本体240上にオーバーモールドされる。特定の実施形態では、管状本体240及び保持ピース270を含む注入カニューレ230は、その知覚される外形を最小限に抑えるために半透明である。
【0024】
環状本体272は、環状凹部274から注入カニューレ230に対して遠位方向に延在し、注入カニューレ230の遠位端で管状出口260を取り囲む。環状空間266は、ハブ214の近位端234を受け入れるために、環状本体272と管状出口260の外面262との間に半径方向に形成される。環状本体272は、図2Aに示すように、ハブ214に結合されるように構成されている。一般に、保持ピース270及びハブ214は、組み立てられた位置で互いにインターロックする嵌合ロック機構を有する。動作中、このインターロックを通じて、保持ピース270をハブ214から取り外し、同じ又は異なるハブに再取り付けして繰り返し使用することができる。
【0025】
特定の実施形態では、環状本体272の内面に形成された外形278は、ハブ214の外面226に形成された張出部224とスナップフィットを形成するように構成されている。特定の実施形態では、外形278は、張出部224を含むハブ214の外面226の対応する形状に一致する形状を有する。保持ピース270とハブ214との間にスナップフィットを形成するには、保持ピース270をハブ214に押し付けてハブ214に完全に着座した位置にする。保持ピース270がハブ214に押し付けられると、外形278は外側に撓んで張出部224の周囲に嵌合し、弁付きカニューレアセンブリ200が組み立てられるとき、内側に引っ込んで張出部224を把持する。保持ピース270とハブ214との間のスナップフィットを解除するには、保持ピース270をハブ214から引き離し、ハブ214との完全に着座した位置から外す。同じサイズのハブ214を有する異なるサイズの弁付きカニューレと、ハブ214の外面226に結合された保持ピース270の結果として、注入カニューレ230は、異なるサイズの弁付きカニューレと相互互換性がある。例えば、特定の23ゲージ、25ゲージ、及び27ゲージの弁付きカニューレは、同じサイズのハブを使用する。したがって、単一の注入カニューレ230が、異なるサイズのそれぞれに嵌合するように構成され得る。
【0026】
図3は、眼科手術中にIOPを制御するために図2Aの弁付きカニューレアセンブリ200を使用する例示的な方法300を示す図である。動作302では、図4に示すように、第1の注入カニューレ230aが第1の弁付きカニューレの第1のハブ214aに取り付けられる。特定の実施形態では、それぞれ第2及び第3のハブ214b、214cを有する第2及び第3の弁付きカニューレ210b、210cは、注入中に器具を通過させるために開いたままである。動作304では、IOPが監視されて、IOPが正常レベルを下回っているか上回っているかを判定する。動作306では、正常レベルを下回るIOPの低下が観察される。動作308では、液体(例えば、BSS)が第1の注入カニューレ230aを通じて眼100に注入され、IOPを正常レベルに維持する(注入は図4の矢印400で示される)。
【0027】
図5は、眼科手術中にIOPを制御するために図2Aの弁付きカニューレアセンブリ200を使用する別の例示的な方法500を示す図である。動作502では、IOPが監視されて、IOPが正常レベルを下回っているか上回っているかを判定する。動作504では、正常レベルを上回るIOPの上昇が観察される。動作506では、図6に示すように、第2の注入カニューレ230bが第2の弁付きカニューレの第2のハブ214bに取り付けられる。特定の実施形態では、第3のハブ214cを有する第3の弁付きカニューレ210cは、排出中に器具を通過させるために開いたままである。動作508では、圧力が第2の注入カニューレ230bを通じて眼100の外に排出され、IOPを正常レベルに維持する(排出は図6の矢印600で示される)。
【0028】
図7は、図2Aの弁付きカニューレ210と組み立てられた状態で示される、真っ直ぐな入口を備えた別の例示的な注入カニューレ730の側断面図である。図7を参照すると、弁付きカニューレ210は図2Aに示したものと同じである。特定の実施形態では、注入カニューレ730は、図2Aの注入カニューレ230と同様に構築及び配置され得る。その説明の態様は、制限なく本明細書に組み込むことができる。例えば、注入カニューレ730の管状出口260及び保持ピース270は、図2Aに示されるものと同じである。しかしながら、図2Aの注入カニューレ230の角度の付いた入口とは対照的に、注入カニューレ730は、図7に示すように真っ直ぐな入口を有する。換言すれば、管状入口750の第2の長手方向軸752は、管状出口260の第1の長手方向軸264と少なくとも実質的に位置合わせされる。注入カニューレ730の真っ直ぐな入口は、角度の付いた入口を使用すると入口チューブ232が眼、眼の周囲の解剖学的構造、又は手術の他の側面を妨げる場合に、眼の特定の位置又は注入カニューレの特定の向きで使用するのに有益であり得る。
【0029】
図8は、図2Aの弁付きカニューレ210と組み立てられて示される旋回入口を備えた更に別の例示的な注入カニューレ830の側断面図である。図8を参照すると、弁付きカニューレ210は図2Aに示したものと同じである。特定の実施形態では、注入カニューレ830は、図2Aの注入カニューレ230と同様に構築及び配置され得る。その説明の態様は、制限なく本明細書に組み込むことができる。例えば、注入カニューレ830の管状出口260及び保持ピース270は、図2Aに示されるものと同じである。しかしながら、管状本体240が一体的に形成される図2Aの注入カニューレ230とは対照的に、管状入口850は、図8に示すように、管状本体840の残りの部分に対して旋回するように構成されている。特定の実施形態では、管状入口850は、管状出口260の第1の長手方向軸264の周りで管状出口260に対して旋回するように構成されている。注入カニューレ830の旋回入口は、注入口の向きが固定されていると入口チューブ232が眼、眼の周囲の解剖学的構造、又は手術の他の側面を妨げる場合に、眼の特定の位置又は注入カニューレの特定の向きで使用するのに有益であり得る。このような状況では、管状入口850を旋回させて、入口チューブ232をより便利な位置にルーティングすることができる。
【0030】
図8を参照すると、管状本体840の軸部分802は、管状入口850の遠位端に形成された雌フィッティング804内に配置され、回転可能に結合される。複数のボールベアリング806は、管状本体840に対する管状入口850の回転を容易にするために、軸部分802と雌フィッティング804との間の境界面に配置されている。Oリングシール808及びリングシール810などの1つ又は複数のシールは、軸部分802と雌フィッティング804との間のシーリングを達成するために、軸部分802と雌フィッティング804との間の境界面に配置されている。特定の実施形態では、管状入口850の回転は位置決めのためだけであるため、旋回入口はベアリングなしで構築されてもよい。図8において、管状入口850は、第1の長手方向軸264の周りでのみ回転し、したがって、1つの回転自由度を有する。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、例えば管状入口850と管状本体840との間に自在継手が使用されて、管状入口850が複数の軸の周りを回転し、したがって2つ又は3つの回転自由度を有することができるようにすることができる。
【0031】
図9Aは、図2Aの弁付きカニューレ210と組み立てられた状態で示される更に別の例示的な注入カニューレ930の側断面図である。図9Aを参照すると、弁付きカニューレ210は図2Aに示したものと同じである。特定の実施形態では、注入カニューレ930は、図2Aの注入カニューレ230と同様に構築及び配置され得る。その説明の態様は、制限なく本明細書に組み込むことができる。図9B図9Cは、それぞれ、図9Aの注入カニューレ930の上面等角図及び底面等角図である。したがって、明確にするために、本明細書では図9A図9Cを一緒に説明する。
【0032】
図2Aの注入カニューレ230とは対照的に、管状本体940及び保持ピース970は、単一ピースとして一体的に形成される。特定の実施形態では、注入カニューレ930は射出成形によって形成される。特定の実施形態では、注入カニューレ930は、熱可塑性エラストマー又はポリプロピレンなどの硬質ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。フランジ244が保持ピース270に接触する図2Aの注入カニューレ230とは対照的に、図9Aでは、フランジ944の遠位面945は、環状本体972と管状出口960の外面962との間に半径方向に形成される環状空間966に開いている。したがって、弁付きカニューレアセンブリ900が完全に組み立てられると、図9Aに示すように、フランジ944の遠位面945がハブ214の近位端234に接触する。注入カニューレ930は、例えば注入カニューレ230など、本明細書に開示されるいくつかの他の実施形態と比較して、より目立たない外形(例えば、注入カニューレが眼の前から延びる距離に関して定義される)を有する。注入カニューレ930のより目立たない外形は、外科手術中の視覚的及び物理的障害を軽減するのに有益であり得ると考えられる。
【0033】
注入カニューレ930は、図9Aに示されるように、ハブ214に結合されるように構成されている。特定の実施形態では、環状本体972の内面に形成された外形978は、ハブ214の外面226に形成された張出部224とスナップフィットを形成するように構成されている。図2Aの注入カニューレ230とは対照的に、1つ又は複数の窓974が環状本体972を通って半径方向に形成されている。窓974は、環状本体972に追加の柔軟性を与え、組み立て中に張出部224の周りに嵌合する。窓974は、張出部224の対応する部分をその中に受け入れるサイズの高さh1を有し、弁付きカニューレアセンブリ900が完全に組み立てられたときに、注入カニューレ930をハブ214に固定するのを助ける。環状本体972には、図9A及び図9Cに示すように、スリット982が形成されている。スリット982は、環状本体972がハブ214に押し付けられるときに環状本体972が拡張し、環状本体972がハブ214に完全に着座した位置に移動するときに収縮できるようにすることによって、より良好なスナップフィットを提供する。
【0034】
本明細書に開示される注入カニューレの実施形態は、眼への/眼からの流体の注入/排出を通じて眼科手術中にIOPを制御するのに有用である。特定の実施形態は、サービスループを作成する必要性をなくすために入口チューブのルーティングを容易にする角度の付いた入口を有する改良された注入カニューレを提供する。角度の付いた入口により視覚的及び物理的な障害が軽減され、手術のステップが削除されることで手術時間が短縮される。また、角度の付いた入口は、入口チューブを通る流れ及び圧力伝達を妨げる入口チューブの望ましくないよじれを制限する。特定の実施形態は、弁付きカニューレハブの外面に結合されるように構成された改良された注入カニューレを提供する。注入カニューレをハブの外面に結合することにより、注入カニューレが異なるサイズの弁付きカニューレと相互互換性を有することが可能になり、注入カニューレの潜在的な使用例が拡大する。特定の実施形態は、互換性のある弁付きカニューレハブの対応する内径よりも大きい、流体の流れのための内径を有する改良された注入カニューレを提供する。改良された注入カニューレは、注入カニューレを通る全体的な流れ抵抗及び圧力降下を低減するように構成されており、これにより、所与の流体流量を維持するために必要な圧力が低下する、又は別の言い方をすれば、所与のソース圧力での流量が増加する。特定の実施形態は、角度の付いた入口の代わりに真っ直ぐな入口を備えた改良された注入カニューレを提供する。特定の実施形態は、入口チューブをより便利な位置にルーティングするために旋回することができる旋回入口を備えた改良された注入カニューレを提供する。特定の実施形態は、外科手術中の視覚的及び物理的障害を軽減するために、より目立たない外形を有する改良された注入カニューレを提供する。
【0035】
前述の説明は、いかなる当業者も本明細書に記載される様々な実施形態を実践できるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な修正形態が当業者に容易に明らかであり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言と整合する全範囲が認められるべきである。
図1A-1B】
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】