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特表2024-525134ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための無溶媒方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための無溶媒方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20240703BHJP
   C01B 21/093 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C01B21/086
C01B21/093 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575477
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065529
(87)【国際公開番号】W WO2022258679
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21305798.7
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブイジーネ, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンス
(57)【要約】
本開示は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法及び前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩からのビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩の調製方法に関する。より具体的には、本発明は、工業規模で実施可能であるビス(フルオロスルホニル)イミドのこれらの塩を製造するための及び高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を提供するための新規な方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、且つ
- nは1であり、前記カチオンの価数を表わす)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための方法であって、
式(II):
Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl (II)のビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の、
式(III):
n+(F(HF)
(式中、
- pは、0~10の間で変わる)で表されるフッ素化剤によるフッ素化を含む方法において、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の量の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩において行われる、方法。
【請求項2】
減圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ素化剤(III)の化学量論量がビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり1~10当量の間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(i)ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の前記塩の量Qをその融点Tm(I)よりも高い温度Ta(℃)に加熱して、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩を製造する工程と、
(ii)前記フッ素化剤(III)と前記ビス(クロロスルホニル)イミド(II)とを前記ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩に添加する工程とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)が、
(ii1)前記フッ素化剤(III)を前記ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩に添加する工程と、
(ii2)水又は水性液の残留量を前記フッ素化剤(III)から任意選択により除去する工程と、
(ii3)前記ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を反応混合物に添加する工程とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水の蒸留によって行われる工程(ii2)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
全ての反応性材料が添加された時に前記量Qが反応混合物の総重量の20重量%以上である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
100℃未満の温度で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法により得られることができる、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、且つ
- nは1であり、カチオンの価数を表わす)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩において、
溶媒の量が100ppm未満である、塩。
【請求項10】
溶媒の前記量が50ppm未満である、請求項9に記載の塩。
【請求項11】
式(V)
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を調製するための方法であって、
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製する工程と、
(b)工程(a)において得られたビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の前記塩をリチウム塩又はセシウム塩でなるアルカリ剤と反応させる工程とを含む、方法。
【請求項12】
工程(b)が少なくとも1つの有機溶媒を含む有機反応媒体中で行われ、前記有機溶媒が、非プロトン性有機溶媒から、好ましくは酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11~12のいずれか一項に記載の方法により得られることができる、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項14】
バッテリー電解質溶液中での請求項13に記載の式(IV)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法及び前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩からのビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩の調製方法に関する。より具体的には、本発明は、工業規模で実施可能であるビス(フルオロスルホニル)イミドのこれらの塩を製造するための及び高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を提供するための新規な方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)は、様々な技術分野において有用な化合物である。
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩の製造は文献に記載されている。記載された様々な技術のなかで、大部分は、溶媒中のフッ素化剤によるフッ素化反応を使用する。
【0004】
とりわけ、国際公開第2017/090877A1号パンフレット(CLS)には、(1)ビス(クロロスルホニル)イミドを溶媒中のフッ素化試薬と反応させ、その後に、アルカリ試薬で処理し、それによってアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する工程と、(2)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と反応させる工程とを含む、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造するための方法が記載されている。工程(1)において使用される溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソプロピルケトンなどのアルキルケトン;メタノール、無水エタノール、1-プロパノール、及びイソプロパノールなどのアルコール;アセトニトリル、及びプロピオニトリルなどのアルキルニトリル;及びテトラヒドロフラン、及びジアルコキシアルカンなどのエーテルからなる群から選択される。次に、溶媒を減圧下の蒸留及び濃縮によって除去する。
【0005】
国際公開第2012/117961A1号パンフレット(日本曹達)には、式[II]Cl-CO-NH-SO-R(Rは、フルオロアルキル基、フッ素原子又は塩素原子である)の化合物と好ましくは式NHF(HF)(pは0~10である)のフッ素化剤[III]との間の反応を含む、フルオロスルホニルイミド塩の製造方法が記載されている。化合物[II]と化合物[III]との間の反応は、溶媒の存在下で又は溶媒の非存在下で行われることができる。しかしながら、実施例1及び2によると、アンモニウムジ(フルオロスルホニル)イミドは、アセトニトリル中のジ(クロロスルホニル)イミドから調製される。次に、溶媒を減圧下で蒸留によって除去する。一般的に、この特許出願は、溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の量の存在下で行われるフルオロスルホニルイミド塩の製造方法を開示していない。
【0006】
日本特許第2016145147号公報(日本触媒)は、式(2)で表される化合物と、化合物1モルに対して、化学量論量で1~3当量の組成式(3)で表される化合物とを、化合物の0~4質量倍の溶媒の存在下で反応させて、式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物を得るための方法に関し、
【化1】
式中、RはC1~6フルオロアルキル基であり、Rはハロゲン又はC1~6フルオロアルキル基であり、Cat1及びCat2は、一価基であり、pは1~10の整数である。
【0007】
日本特許第2014201453号公報(日本触媒)には、カーボネート系溶媒、脂肪族エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトロ系溶媒、硫黄系溶媒及びニトリル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含有する反応溶媒の存在下でフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を合成し、その後、反応溶媒と芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒及び芳香族エーテル系溶媒からなる群から選択されるフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩のための少なくとも1つの不良溶媒との共存下で反応溶媒を蒸留除去することによってフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩溶液を濃縮する工程を含む、フルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を製造するための方法が記載されており、濃度工程は、上記の不良溶媒を反応溶媒とフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩とを含有する反応溶液と混合する工程を含む。
【0008】
文献に記載されているように、フッ素化によるビス(フルオロスルホニル)イミドとその塩の製造は、反応実体を分散させてそれらを反応させておくために、溶媒、例えば有機溶媒中で行われる。しかしながら、このような溶媒は、バッテリー用途のために使用することができる可能な限り高純度の生成物を得るために反応後に除去される必要がある。溶媒を除去するためのステップは、工業プロセスの複雑性、並びにその全体コストを増大させる。加えて、水の残留量がppm量にある、無水溶媒のみが実際に使用されるので、そのようなプロセスにおいて行われる前に、溶媒は、典型的には、残留量の水を除去するために処理されなければならない。
【0009】
本発明の目的は、反応溶媒の蒸留を必要としない、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩のより簡単な製造プロセスを提供することである。
【0010】
国際公開第2012/096371A1号パンフレット(住友電気工業)は、HN(SOCl)(液体形態)をKF(粉末形態)に無溶媒乾燥条件下で滴下して中間生成物を形成し、次に中間生成物とKFとを水性溶媒中で互いに反応させておくことによってKN(SOF)を製造するための方法に関する。より正確には、この文献に記載される方法によると、第1の工程において、HN(SOCl)の1つの塩素元素がフッ素で置換され、アルカリ金属塩KN(SOCl)(SOF)である中間生成物をもたらし、第2の工程において、他の塩素元素がフッ素で置換され、アルカリ金属塩KN(SOF)をもたらす。このような二段階工程に従って、HN(SOCl)はアルカリ金属塩KN(SOCl)(SOF)に変換されるので、結果として、水はアルカリ金属フッ化物を溶解するため、第2の工程において水を使用することができる。
【0011】
この文献によると、反応の最初の部分は、液体形態の反応体を粉末形態である第2の反応体上に落とすことによって無溶媒乾燥条件下で行われる。これは、工業的に取り扱うのが非常に難しいペースト状中間生成物をもたらす。更に、KN(SOF)へのHN(SOCl)の全変換は個別の中間生成物を有する2つの工程で行われるので、反応の収量、並びに最終生成物の不純物のレベルに悪影響を与える。
【0012】
本発明の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩XN(SOF)(XはK、Na又はオニウムカチオン(例えばNH )である)の調製方法を提供することであり、このような方法は、工業規模で実施可能であり、高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を提供する。特に、本発明の方法は、反応体を分散させるように作用する、溶融反応生成物、例えば溶融KN(SOF)又は溶融NHN(SOF)の存在下で、且つ溶媒の非存在下で(又は非常に限られた量の溶媒の存在下で)行われる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、且つ
- nは1であり、カチオンの価数を表わす)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための方法であって、
式(II):
Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl (II)
のビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の、
式(III):
n+(F(HF)
(式中、
- pは、0~10の間で変わる)で表されるフッ素化剤によるフッ素化を含む方法において、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の量の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩において行われる方法に関する。
【0014】
また、本発明は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、且つ
- nは1であり、カチオンの価数を表わす)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩に関し、
このような塩は本発明のプロセスによって得られることができ、これは、溶媒のその量が100ppm、例えば50ppm未満であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、式(V)
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を調製するための方法であって、
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製する工程と、
(b)工程(a)において得られる塩ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)をリチウム塩又はセシウム塩でなるアルカリ剤と反応させる工程とを含む方法に関する。
【0016】
また、本発明は、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩
並びにバッテリー電解質溶液中でのこのような塩の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願では、
- 表現「…~…の間(between…and…)」並びに「…~…の範囲の(from…to…)」等は、限界を含むとして理解されるべきであり;
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、及びそれらと交換可能であり;
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、及び/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に熟慮される関連実施形態では、要素又は成分は、個々の列挙された要素又は成分のいずれか1つであることができるか、又は明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群から選択することもでき;要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、そのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり;
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0018】
本発明の第1の目的は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオン、好ましくはNH からなる群から選択されるカチオンであり、且つ
- nは1であり、カチオンの価数を表わす)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための方法であって、
式(II):
Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl (II)
のビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の、
式(III):
n+(F(HF)
(式中、
- pは、0~10の間で変わる)で表されるフッ素化剤によるフッ素化を含む方法において、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の量の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩において行われる、方法である。
【0019】
ここに記載される塩(I)は、低い残留量の溶媒、有利には、塩(I)を多くの用途、とりわけバッテリー用途に適したものにする検出可能でない量の溶媒を特徴としている。
【0020】
本発明の方法は、溶媒及び希釈剤の非存在下で溶融体として行われる。より正確には、この方法は、反応体を分散させるように作用し且つ反応体(II)及び(III)を出会わせて反応させる、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩、例えば溶融KN(SOF)又は溶融NHN(SOF)において行われる。重要なことには、本発明の方法は無溶媒方法である。言い換えれば、反応中に反応混合物に、溶媒/希釈剤が全く添加されないか、或いはまた非常に少量の溶媒/希釈剤が添加される。第一に、溶媒を除去するための工程は、工業プロセスの複雑性、並びにその全体コストを増大させるので、これは有利である。第二に、無水溶媒(ppm量のオーダーである水の残留量を特徴とする)だけが実際に使用できるので、溶媒は典型的に、このようなプロセスにおいて使用される前に処理される必要がある。
【0021】
本発明の文脈において、用語「溶媒」は、以下の3つの累積特性1/反応の始めから終わりまで存在し、場合によりプロセス中に加えられる、2/プロセス中に変化していない、言い換えれば関与した反応体に対して非反応性であり、及び3/反応生成物がその高純度の形態でなければならない場合、プロセスの終わりに取り除かれなければならないという特性を示す化合物を意味することが意図される。この定義の範囲内に含まれる溶媒の例は以下に示される。明快にするために、本発明のプロセスにおいて使用される式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩は、上記の「溶媒」の定義には含まれない。
【0022】
本発明の一実施形態によると、ここに記載される方法は又は非常に少量の溶媒、すなわち反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の量の溶媒の存在下で行われる。好ましくは、この実施形態によれば、溶媒の量は、反応混合物の総重量を基準として、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満、又は0.001重量%未満の溶媒である。反応混合物の総重量は、反応体の重量、並びに式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩の重量を合計することによって得られる。
【0023】
そのようなプロセスにおいて典型的に使用される溶媒は、周知であり、文献に広範囲に記載されている。そのような溶媒は、非プロトン性、例えば極性の非プロトン性溶媒であり得、
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、及び
- シアノ-、ニトロ-、クロロ-又はアルキル-置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン
からなる群から選択され得る。
【0024】
典型的に、このようなプロセスを実施するために使用される有機溶媒は、例えば背景技術の欄に記載される文献におけるように、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択され得る。
【0025】
本発明のプロセスによると、溶融状態(液体状態とも呼ばれる)にあるために、或る量の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、例えばKN(SOF)及びNHN(SOF)を反応体(又は反応実体)の添加前にその融解温度Tm(I)よりも高く加熱する。次に、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、例えばKN(SOF)又はNHN(SOF)を製造するために、粉末形態又は液体形態であり得る反応体を反応混合物中に添加し、反応させる。これは、このような反応生成物(すなわち式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩)の量が反応時間にわたって増加することを意味する。言い換えれば、溶融反応生成物を用いて、反応体を分散させてそれらを出会わせて反応させる媒体をもたらす。したがって本発明によると溶媒は必要ではない。高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を得るために、このような溶媒を反応後に除去する必要がないため、これは製造プロセス全体を著しく簡単にするので有利である。それは、溶媒の代わりに水を除去する追加の工程を必要としないというさらなる利点を示す。
【0026】
本発明によると、ビス(クロロスルホニル)イミド(II):
Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl (II)
又はその塩を式(III):
n+(F(HF) (III)
(式中、X n+及びnは上記の通りであり、pは0~10の間で変わり、好ましくは0である)で表されるフッ素化剤と反応させる。
【0027】
本発明によると、X n+は、K、Na又はオニウムカチオンを表わし、ここでオニウムカチオンは当業者にとってその通常の意味を有する。
【0028】
オニウムカチオンの例としては、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、フルオロニウムカチオン、クロロニウムカチオン、ブロモニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、セレノニウムカチオン、テルロニウムカチオン、アルソニウムカチオン、スチボニウムカチオン、ビスムトニウム(bismutonium)カチオン;イミニウムカチオン、ジアゼニウムカチオン、ニトロニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ニトロソニウムカチオン、ヒドラゾニウムカチオン、ジアゼニウムジカチオン、ジアゾニウムジカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、第二級アンモニウムカチオン、第一級アンモニウムカチオン、アンモニウムNH カチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、グアニジニウムカチオン、イソウロニウムカチオン及びイソチウロニウムカチオンが挙げられる。
【0029】
これらの中で、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、第二級アンモニウムカチオン、第一級アンモニウムカチオン、アンモニウムNH カチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、グアニジニウムカチオン、及びイソウロニウムカチオンがより好ましい。
【0030】
これらのタイプのオニウムカチオンの例としては:
- イミダゾリウムカチオン、例えば1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘプチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-アリル-3-エチルイミダゾリウムカチオン、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジアリルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-2,3-メチルイミダゾリウムカチオン、及び1-ヘキサデシル-2,3-メチルイミダゾリウムカチオンなど;
- ピリジニウムカチオン、例えば1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-オクチルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、及び1-ブチル-3,5-ジメチルピリジニウムカチオンなど;
- 第四級アンモニウムカチオン、例えばテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、プロピルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチル-2-メトキシエチルメチルアンモニウムカチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルフェニルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジステアリルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、2-メトキシエトキシメチルトリメチルアンモニウムカチオン、N-メトキシトリメチルアンモニウムカチオン、N-エトキシトリメチルアンモニウムカチオン、N-プロポキシトリメチルアンモニウムカチオン及びテトラキス(ペンタフルオロエチル)アンモニウムカチオンなど;
- 第三級アンモニウムカチオン、例えばトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルアンモニウムカチオン、ジブチルメチルアンモニウムカチオン、及び4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンカチオンなど;
- 第二級アンモニウムカチオン、例えばジメチルアンモニウムカチオン、ジエチルアンモニウムカチオン、及びジブチルアンモニウムカチオンなど;
- 第一級アンモニウムカチオン、例えばメチルアンモニウムカチオン、エチルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、ヘキシルアンモニウムカチオン、及びオクチルアンモニウムカチオンなど;
- アンモニウムカチオンNH
- ピペリジニウムカチオン、例えば1-プロピル-1-メチルピペリジニウムカチオン及び1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウムカチオンなど;
- ピロリジニウムカチオン、例えば1-プロピル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウムカチオン、及び1-オクチル-1-メチルピロリジニウムカチオンなど;
- モルホリニウムカチオン、例えば4-プロピル-4-メチルモルホリニウムカチオン及び4-(2-メトキシエチル)-4-メチルモルホリニウムカチオンなど;
- ピラゾリウムカチオン、例えば2-エチル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、2-プロピル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、2-ブチル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、及び2-ヘキシル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオンなど;
- グアニジニウムカチオン、例えばグアニジニウムカチオン及び2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムカチオンなと;並びに
- イソウロニウムカチオン、例えば2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウムカチオンなど
が挙げられる。
【0031】
第四級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、第二級アンモニウムカチオン、第一級アンモニウムカチオン、及びアンモニウムカチオンNH 、とりわけ上記のリストに具体的に引用されたものがより好ましい。アンモニウムカチオンNH が最も好ましいオニウムカチオンである。
【0032】
本発明のプロセスにおいて必要とされる反応体(原材料と呼ばれる場合もある)の1つは、HCSIと略される場合もある、式(Cl-SO-NH(II)のビス(クロロスルホニル)イミドである。HCSIは、市販されているか、又は公知の方法によって、例えば:
- クロロスルホニルイソシアネートClSONCOをクロロスルホン酸ClSOOHと反応させることによって;
- 塩化シアンCNClを無水硫酸SOと、及びクロロスルホン酸ClSOOHと反応させることによって;
- スルファミン酸NHSOOHを塩化チオニルSOClと及びクロロスルホン酸ClSOOHと反応させることによって
製造される。
【0033】
本発明のプロセスにおいて必要とされる他の反応体はフッ素化剤(III)である。それは、本発明のプロセスにおいて任意の形態で、例えば粉末の形態で又は液体の形態で使用することができる。フッ素化剤は市販されているか、又はそれらは公知の方法で製造することができる。
【0034】
式(III)において、pは0~10、好ましくは0~4の実数を表わし、より好ましくはpは0~4の整数である。いくつかの実施形態においては、pは0に等しい。
【0035】
一実施形態によると、フッ素化剤(III)は、式(IIIa):
KF(HF)p (IIIa)(式中、pは0又は1である)に従う。
【0036】
別の実施形態によると、フッ素化剤(III)は、式(IIIb):
NaF(HF)p (IIIb)(式中、pは0又は1である)に従う。
【0037】
別の実施形態によると、フッ素化剤(III)は、式(IIIc):
F(HF)p (IIIc)
(式中、Xは上で定義したオニウムカチオンであり、pは0又は1である)に従う。
【0038】
好ましい実施形態によると、フッ素化剤(III)は、式(IIId):
NHF(HF)p (IIId)
(式中、pは、0~10で変わる)
に従う。この好ましい実施形態によると、フッ素化剤(IIId)の特定の例には、NHF、NHF.HF、NHF.2HF、NHF.3HF、及びNHF. 4HFが含まれる。好ましいフッ素化剤(IIId)はNHFである。
【0039】
別の好ましい実施形態によると、フッ素化剤(III)は無水である。水分率は、例えばグローブボックス内で行われるカールフィッシャー水滴定によって測定されるとき、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満又は更に10ppm未満であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、フッ素化剤(III)対ビス(クロロスルホニル)イミド(II)の化学量論量(モル量とも呼ばれる)は0.1:1~20:1、例えば1:1~10:1、又は2:1~8:1である。
【0041】
いくつかの実施形態では、フッ素化剤(III)の化学量論量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり1当量以上、例えばビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり1~10当量の間である。好ましくは、フッ素化剤(III)の化学量論量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり2~8当量の間、又はビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり3~6当量の間である。より好ましくは、フッ素化剤(III)の化学量論量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり4±0.8当量又は4±0.5当量に等しい。
【0042】
本発明のプロセスは、バッチ、半バッチ又は連続方式で行なわれてもよい。
【0043】
実施形態によると、この方法は連続方法又は半連続方法で行われ、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の塩を反応混合物から連続的に又は半連続的に取り出す工程を含む。本発明によると、反応混合物中に反応体を連続的に添加すること及び反応生成物を半連続的に除去することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、
(i)ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の塩の量Qを化合物(I)の融点Tm(I)以上の温度Ta(℃)に加熱して、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩を製造する工程と、
(ii)フッ素化剤(III)とビス(クロロスルホニル)イミド(II)とをビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩に添加する工程とを含む。
【0045】
温度Ta(℃)は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の塩の融点Tm(I)以上であり得る。例えば、Taは、Tm(I)+2℃以上であり得るか、又はTaは、Tm(I)+5℃以上であり得る。
【0046】
第2の反応体、例えばビス(クロロスルホニル)イミド(II)を導入する前に反応混合物中に反応体の1つ、例えばフッ素化剤(III)を予備分散させることができる。
【0047】
これらの実施形態によると、工程(ii)は例えばそれ自体:
(ii1)フッ素化剤(III)をビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩に添加する工程と、
(ii2)水又は水性液の残留量をフッ素化剤(III)から任意選択により除去する工程と、
(ii3)ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を反応混合物に添加する工程とを含むことができる。
【0048】
上に説明されたように、反応体は、固体の形態又は液体の形態でなど、任意の形態であり得る。例えば、フッ素化剤(III)を固体形態で、例えば粉末形態で溶融化合物(I)に添加することができる。ビス(クロロスルホニル)イミド(II)は液体形態であり得、例えば反応混合物中に滴下され得る。
【0049】
有利には、フッ素化剤(III)をビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩に添加し、次に、任意選択の工程(ii2)によって、試剤(III)が含有し得る水(又は水性液)の残留量を除去する。この任意選択の工程は有利には、フッ素化剤が反応混合物に添加された後に行われる。上に説明されたように、反応は、ビス(フルオロロスルホニル)イミド(II)の非常に高純度の塩を得るために、残留水ができる限り少ないように行われるのがよい。しかしながら、全ての残留水をフッ素化剤(III)から完全に除去することはほとんど不可能である(結晶内の水分による乾燥限界)。しかしながら、これは、フッ素化剤(III)、特にNHFがビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩中に分散される場合、有利には可能である。この任意選択の工程は、反応の終了時に非常に高純度の生成物に著しく寄与する。
【0050】
好ましくは、任意選択の工程(ii2)は、水の蒸留によって行われることができる。
【0051】
工程(ii3)によって、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)は、反応混合物に添加される前に、30~150℃の範囲の温度Tb(℃)に加熱することができる。温度Tb(℃)は例えば、35℃~125℃の間、又は40℃~100℃の間の範囲であり得る。特定の実施形態によると、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を温度Tb(℃)=Ta(℃)±10℃、例えばTa(℃)±5℃に加熱する。別の実施形態によると、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を温度Tb(℃)≦Ta(℃)+10℃、又はTb(℃)≦Ta(℃)に加熱する。
【0052】
いくつかの実施形態では、工程(ii)は、フッ素化剤(III)及びビス(クロロスルホニル)イミド(II)を同時にビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融オニウム塩に添加することでなる。
【0053】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融オニウム塩中への反応体(II)及び(III)の添加は一般的に、逐次に、徐々に又は連続的に行なうことができる。また、特にプロセスが回分式で行われる場合、各々の反応体の総量を反応器に例えば数回で、段階的に増量しながら添加することができる。
【0054】
例えば回分反応器、押出機及び混練機を本発明において用いることができる。防酸腐蝕材料(例えばPTFE)を選択された反応器内にコートする(言い換えれば、内張りする)ことができる。
【0055】
工業化溶融ミキサー又は溶融ブレンダーを参考にすることができる。
【0056】
使用される混練機は、塩(I)の融点よりも高く加熱することができ且つガス生成物の放出を可能にする公知の適した混練機のいずれかを含むことができる。適した混練機は一般的に、軸に平行である1つ、又は好ましくは少なくとも2つの回転シャフトを有し、その主シャフトは、それらの外面上に配置された混練要素を有する領域を有することができる。混練機は、5~50回転/分、特に好ましくは7.5~40回転/分、特に10~30回転/分の範囲の回転速度で運転されるローターを有することができる。本発明において使用される混練機の利点は、滞留時間が押出機におけるよりも実質的に長くなることができることである。ガス抜きは更にいっそう実質的に容易であり、もっと大きい程度に実施され得、したがってガス生成物を容易に放出することができる。更に本発明の剪断速度は混練機内でいっそう容易に達せられ得る。反応体の様々な供給システムを連続運転式混練機内で使用することができる。溶融反応体が必要とされる場合、液体計量を使用することができる。
【0057】
本発明による方法の工程のいくつか又は全ての工程は、有利には、反応媒体の腐食に耐えることができる装置中で行われる。この目的のために、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売される、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンに基づく合金又は名称Inconel(登録商標)若しくはMonel(商標)で販売される、銅及び/若しくはモリブデンが添加されているニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より特にHastelloy C276又はInconel 600、625若しくは718合金などの耐腐食性である材料は、反応媒体と接触する部品のために選択される。オーステナイト鋼、より特に304、304L、316又は316Lステンレス鋼などの、ステンレス鋼も選択され得る。最大でも22重量%、好ましくは6重量%~20重量%の、より優先的には8重量%~14重量%のニッケル含有量を有する鋼が使用される。304及び304L鋼は、8重量%~12重量%で変動するニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は、10重量%~14重量%で変動するニッケル含有量を有する。より特に、316L鋼が選らばれる。反応媒体の腐食に対して耐性があるポリマー化合物からなるか、又はそれでコーティングされた装置も使用され得る。特に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレンつまりテフロン)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)などの材料が挙げられ得る。ガラス装置も使用され得る。同等の材料を使用することは、本発明の範囲外ではないであろう。反応媒体と接触するのに好適であることができる他の材料として、黒鉛誘導体も挙げられ得る。濾過用の材料は、使用される媒体に適合していなければならない。フッ素化ポリマー(PTFE、PFA)、ロードされたフッ素化ポリマー(VitonTM)、並びにポリエステル(PET)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、綿、及び他の適合性材料を使用することができる。
【0058】
本発明のプロセスは、大気圧で又は減圧下で行われることができる。好ましくは、本発明のプロセスは減圧下で行われる。減圧下で反応を行なうのが、プロセス中に式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドからの塩素原子の除去を容易にするので、好ましい。プロセスに加えることができる圧力に特定の制限はない。プロセスは、例えば、0.5バール~3バールの間、例えば0.7~2.5バールの間、又は0.9~2バールの間の圧力で行なうことができる。
【0059】
本発明のプロセスは有利には、水分の混入を避けるために不活性雰囲気下で行なわれることができる。本発明のプロセスは例えば、窒素下で行われることができる。
【0060】
本発明のプロセスは、150℃未満、例えば125℃未満、又は100℃未満の温度で行われることができる。本発明のプロセスは好ましくは、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩、例えばKN(SOF)及びNHN(SOF)の融解温度(Tm(I))~150℃の間の温度で行われることができる。
【0061】
本発明のプロセスの反応時間は、例えば使用される反応器、必要とされる反応温度及び反応体の量に応じて自由に選択することができる。反応時間は1~12時間、特に1.5~10時間又は2~9時間であることが好ましい。
【0062】
このプロセスは、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の塩の量Qを加熱して、塩(I)が溶融状態又は実質的に溶融状態にあるようにすることでなる工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、この工程は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の塩の量Qをその融点Tm(I)以上の温度Ta(℃)に加熱して、ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩を製造する工程に存する。ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩の量Qは、言い換えればプロセスを行なうために使用される溶融生成物の最小量であり、全ての反応性材料が添加された時に反応混合物の総重量の20重量%より少ないことはあり得ない。例えば、このような量Qは、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%であり得る。このような量Qは95重量%未満、90重量%未満又は85重量%未満であり得る。全ての反応性材料が添加された時に反応混合物の総重量は、プロセスにおいて必要とされる全ての反応体の重量にビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の溶融塩の重量を加えることによって計算することができる。実施形態によると、量Qは、全ての反応性材料が添加された時に反応混合物の総重量の50±10重量%である。
【0063】
プロセスの終わりに変換Cが少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%、特に少なくとも99%であるように反応条件を選択することが本発明には有利である。本発明の目的のために、変換Cは、反応させられた反応性基、すなわちビス(クロロスルホニル)イミド(II)及びフッ素化剤(III)のモル比率である。驚くべきことに、反応体(II)及び(III)の変換は、溶媒又は稀釈剤が全く存在しないにもかかわらずここに記載される作業条件において非常に高いことが見出された。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態では、プロセスは、変換Cが少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%又は少なくとも99.99%であるようなものである。
【0065】
本発明のプロセスは、反応混合物を80℃未満、例えば60℃未満の温度Tc(℃)に冷却することを更に含むことができる。
【0066】
本発明のプロセスは好ましくは、反応混合物を濾過することを更に含む。濾過の工程は、反応副生成物及び/又は不純物を除去するためにある。反応副生成物及び/又は不純物は例えば、XCl及び/又はXHF(式中、Xは、K、Na又は上に記載されたようなオニウムカチオンである)であり得る。フッ素化剤が例えばNHFである場合、反応副生成物及び/又は不純物は、NHCl及びNHHFであり得る。
【0067】
濾過製品(漏斗、膜、ヌッチェ(Nutsche)フィルター又はガラスフィルター、乾燥器…)は好ましくは、濾過のために使用される。
【0068】
本発明によると、高純度又は実質的に高純度の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、反応の終了時に溶融形態で得られる。式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドは、液体のままであるような温度に維持することができるが、それは、粉末形態、例えば結晶化形態になるように後処理することができる。本発明のプロセスから得られる式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドは、その溶融形態又は結晶化形態で使用することができる。例えば、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩をより低い温度の有機溶媒、例えばトリフルオロエタノールに添加することができ、更に使用する前に結晶化させることができる。更に別の実施形態によると、塩(I)を少なくとも部分的に溶融体中に結晶化させることができるが、次に抽出するか又は新しい反応サイクルにおいて再利用/再循環することができる。
【0069】
また、本発明のプロセスは、以下の反応パラメーター:
-反応混合物中のビス(クロロスルホニル)イミド(II)対フッ素化剤(III)のモル比,
-反応混合物中の反応体のモル数、とりわけビス(クロロスルホニル)イミド(II)のモル数、
-反応混合物の温度(℃)、
-圧力(atm)、
-反応混合物の溶融粘度、又は
-反応器、例えば混練機の充填レベル
の少なくとも1つを測定及び/又はモニタする追加の工程を含むことができる。
【0070】
本発明の第2の目的は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、且つ
- nは1であり、カチオンの価数を表わす)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩である。
【0071】
このような塩(I)は有利には、上記のプロセスによって得られることができる。
【0072】
本発明の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は例えば溶融状態又は結晶化形態であり得る。
【0073】
本発明によると、塩(I)は、その平均結晶長が有利には少なくとも400μm、例えば少なくとも450μm、少なくとも500μm、少なくとも600μm又は更に少なくとも700μmであるようなものである。先行技術の塩は約300μmであり、それは、塩が結晶タイプでないことを意味する。
【0074】
有利には、本発明のプロセスにおいて溶媒は使用されないという事実のために、このような塩は高純度であるか又は実質的に高純度であり、ごく微量の溶媒も有さないか又は非常に少量の残留溶媒を有する。塩(I)を調製するために通常に使用される溶媒はできる限り高純度の生成物を得るために反応後に除去される必要があるので、これは有利である。確かに、非常に高純度の生成物だけをバッテリー用途のために使用することができる。いくつかの好ましい実施形態では、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩中の溶媒の量は100ppm未満であり、例えば90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、又は更に1未満である。これは、本発明のプロセスによって得られる塩の有利な特徴である。残りの溶媒含有量は、GC(代わりにヘッドスペースGC)によって決定することができる。
【0075】
ここに記載される式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、式(II):
Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl (II)
のビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の、
式(III):
n+(F(HF)
(式中、
pは0~10の間で変わり、好ましくは0である)で表されるフッ素化剤によるフッ素化を含む方法によって得られ、
この方法は、溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の量の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩において行われる。
【0076】
式(I)のこのような塩は有利には、任意の追加の精製工程又は分離工程なしに式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドのフッ素化から直接に得られることができる。
【0077】
式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は好ましくは、以下の塩:
F-(SO)-NK-(SO)-F (Ia)、
F-(SO)-NNa-(SO)-F (Ib)、又は
F-(SO)-NNH-(SO)-F (Ic)
の1つである。
【0078】
反応副生成物及び/又は不純物を除去するために、上記のプロセスに加えて濾過の工程を使用することができる。反応副生成物及び/又は不純物は例えば、X n+Cl及び/又はX n+HF (式中、XはK、Na又は上に記載されたようなオニウムカチオンである)であり得る。
【0079】
本発明の好ましい実施形態は、式(Ic):
F-(SO)-NNH-(SO)-F (Ic)
のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を目的としている。
【0080】
この好ましい実施形態では、塩は、以下の不純物:
-NHCl,
-NHF,
-NHHF
-NHFSO
-NHSONH
-NH[N(SOH)(SOF)](OFSI)、及び/又は
-NH[N(SOH)](OSI)
の少なくとも1つを含有し得る。
【0081】
NHCl及びNHHFなどの不純物は例えば、塩(Ic)中に1,000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満又は100ppm未満、好ましくは90ppm未満の残留量で存在し得る。このような不純物は、1ppm超、例えば5ppm超又は10ppm超の量で塩(Ic)中に存在し得る。
【0082】
OFSI及びOSIなどの不純物は例えば、塩(Ic)中に1,000ppm未満、500ppm未満、400ppm未満又は300ppm未満、好ましくは250ppm未満又は更に200ppm未満の残留量で存在し得る。このような不純物は、塩(Ic)中に1ppm超、例えば5ppm超又は10ppm超の量で存在し得る。
【0083】
また、本発明の塩(I)は好ましくは、化学実体の以下の含有量:
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物(Cl)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F);及び/又は
- 30,000ppm未満、好ましくは10,000ppm未満、より好ましくは5,000ppm未満の硫酸塩(SO 2-)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na+)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)含有量
の少なくとも1つを示す。
【0084】
フッ化物及び塩化物含有量は例えば、イオン選択電極s(又はISE)を使用して銀滴定によって滴定により測定することができる。硫酸塩含有量は代わりに、イオン性クロマトグラフィーによって又は比濁法によって測定することができる。
【0085】
元素不純物含有量は例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ)によって測定することができ、より具体的には、Na含有量は、AAS(原子吸光法)によって測定することができる。
【0086】
本発明の第3の目的は、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を調製するための方法である。
【0087】
この方法は、
(a)上に記載されたような式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製する工程と、
(b)ビス(フルオロスルホニル)イミド(I)の塩をリチウム塩又はセシウム塩でなるアルカリ試剤と反応させる工程とを含む。
【0088】
本発明によると、上に記載されたように、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの高純度又は実質的に高純度の塩が得られる。これは、実施形態によると、工程(b)は、工程(a)によって得られただけの、例えば追加の精製を全く行わない、例えば溶融形態の、塩(I)を直接に用いて行われることができることを意味する。代わりに、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩を有機溶媒、例えば、冷却剤であり得る、トリフルオロエタノールに添加することができる。その場合、工程(b)を行なう前に塩(I)が結晶化することが予想される。更に別の実施形態によると、塩(I)を少なくとも部分的に溶融体中に結晶化させることができ、次に抽出するか又は新しい反応サイクルにおいて再利用/再循環することができる。
【0089】
本発明の第4の目的は、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩である。
【0090】
このような塩(IV)は好ましくは、上記のプロセスによって得られることができる。
【0091】
また、本発明の塩(IV)は好ましくは、化学実体の以下の含有量:
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物(Cl)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F);及び/又は
- 30,000ppm未満、好ましくは10,000ppm未満、より好ましくは5,000ppm未満の硫酸塩(SO 2-)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na+)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)の少なくとも1つを示す。
【0092】
本発明の第5の目的は、バッテリー電解質溶液中での式(IV)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の使用を目的としている。
【0093】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0094】
これから、本発明を以下の実施例に関連してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0095】
実施例1 ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩形成
【0096】
窒素下で、63.5gのNHF(1.71モル、HCSIに対して4.4eq)を250gのNHFSI(1.26モル)と混合し、1時間の間90℃で撹拌した。次に、ヒートベルトを有する供給漏斗を使用して液体HCSIを反応混合物に40g/hの速度で及び83.3g(0.39モル)まで連続的に添加した。撹拌を12時間の間続けた。反応の温度を連続的にモニタし、100℃未満に維持した。次に、反応混合物を1時間で60℃に冷却した。次に、320gのTFEを混合物に添加した。固体を濾過によって単離した。次に、濾液を2時間で10℃に冷却した。結晶を25℃で濾過によって単離し、次に160gの新鮮なTFEで洗浄した。固体を12時間の間室温の真空下で乾燥させた。次に、生成物を分析した。変換は、19FNMR(FSI)によって測定されるとき、87.6%であった。
【0097】
実施例2 ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩形成
窒素雰囲気下で、実施例1から得られた6.9gのNHFSI(0.35mmol)の溶液を60gのエチルメチルカーボネート(EMC)中で調製した。14.6gの固体LiOH.HO(0.35mmol)を10分で室温の容器に添加した。1時間の撹拌後に、(NaOH滴定によって測定したとき)NH イオンの変換は、90%超であった。媒体を減圧(P=20mbar、T=0℃)下で1回目濃縮した。120mLのEMCを添加し、同じ条件下で2回目濃縮した。濃縮溶液を24時間の間30℃の減圧下で乾燥させた。5gの粘性透明液体が得られた。19F NMR分析は、99重量%を超える純度を示した。他のフッ素化種は検出されなかった。
【国際調査報告】