(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アザシチジンを含む新規製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/706 20060101AFI20240703BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240703BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240703BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K31/706
A61P19/08
A61K9/10
A61K47/02
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575791
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 GB2022051463
(87)【国際公開番号】W WO2022258987
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515318175
【氏名又は名称】ナネクサ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ロース,マルテン
(72)【発明者】
【氏名】リンダル,エリク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルルプ,ヨエル
(72)【発明者】
【氏名】ウエストベルク,ダビッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC09
4C076CC27
4C076DD29H
4C076FF21
4C076FF31
4C076GG16
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA96
4C086ZB26
(57)【要約】
骨髄異形成症候群の治療に有用な医薬製剤であって、水性担体システムに懸濁された複数の粒子を含み、当該粒子が、(a)10nm~約700μmの量である、重量、数、又は体積に基づく平均直径を有し、(b)少なくとも部分的に無機材料のコーティングによってコーティングされた、アザシチジン又はその薬学的に許容される塩を含む固体コアを含み、当該無機材料のコーティングが、(i)酸化亜鉛と、(ii)1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物との混合物を含み、原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:6と、最大で約6:1との間である、医薬製剤が提供される。当該混合された酸化物でコーティングされた粒子は、好ましくは、原子層堆積などの気相コーティング技術を介して合成される。製剤は、バースト効果なしに、骨髄異形成症候群を治療するために、アザシチジンの遅延放出又は持続放出を提供し得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄異形成症候群の治療に有用な医薬製剤であって、水性担体システムに懸濁された複数の粒子を含み、前記複数の粒子が、
(a)10nm~約700μmの量である、重量、数、又は体積に基づく平均直径を有し、
(b)少なくとも部分的に無機材料のコーティングによってコーティングされた、アザシチジン又はその薬学的に許容される塩を含む固体コアを含み、前記無機材料のコーティングが、
(i)酸化亜鉛と、
(ii)1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物と
の混合物を含み、
原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:6と、最大で約6:1との間である、医薬製剤。
【請求項2】
前記原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:1と、最大で約6:1との間である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
コーティングされた粒子が、
(a)アザシチジン、又はその薬学的に許容される塩を含む固体コアと、
(b)前記コアを取り囲む1つ以上の個別の層であって、前記1つ以上の個別の層が、各々、約1:1~約6:1の原子比で、酸化亜鉛と1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物との少なくとも1つの別個の混合物を含む、個別の層と
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記コアが、アザシチジン、又はその薬学的に許容される塩から本質的になる、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記粒子の重量、数、又は体積に基づく平均直径が、1μm~約50μmの量である、先行請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記酸化物の混合物の2つ以上の個別の層が、前記コアに順次塗布される、先行請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記酸化物の混合物の3~10層の個別の層が塗布される、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
混合酸化物コーティングの総厚が、約0.5nm~約2μmである、先行請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記コアに事前に塗布された任意の他の個別の層を含む、混合酸化物コーティングの個々の個別の層の最大厚さが、前記コアの重量、数、又は体積に基づく平均直径の約100分の1である、請求項6~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
酸化亜鉛と他の金属及び/又はメタロイド酸化物との比が、約2:1~約5:1である、先行請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物が、酸化アルミニウム及び/又は二酸化シリコンから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
無菌の注射用及び/又は注入用剤形の形態の、先行請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
デポー製剤を形成する外科的投与装置を介して投与可能な形態の、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
先行請求項のいずれか一項に記載の製剤を調製するためのプロセスであって、前記コーティングされた粒子が、原子層堆積によって、混合された酸化物コーティング材料の層をコア及び/又は以前にコーティングされたコアに塗布することによって作製される、プロセス。
【請求項15】
(i)固体コアを、混合された酸化物コーティング材料の第1の個別の層でコーティングし、
(ii)次いで、ステップ(i)からのコーティングされたコアを、脱凝集プロセスステップに供し、
(iii)次いで、ステップ(ii)からの脱凝集したコーティングされたコアを、混合された酸化物コーティング材料の第2の個別の層でコーティングし、
(iv)ステップ(ii)及び(iii)を繰り返して、必要な数の個別の層を取得する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
コーティングの塗布の間に行われる脱凝集ステップが、ふるい分けを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ふるい分けが、振動ふるい分けを含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記振動ふるい分けが、ふるいに結合された振動プローブを制御することを含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ふるい分けが、音波ふるい分けを含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
前記コーティングされた粒子が、コーティング後に前記担体システムと混合される、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤を調製するためのプロセス。
【請求項21】
注射若しくは注入手段に接続され、かつ/又はそれに関連付けられたリザーバー内に含まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤を含む、注射用及び/又は注入用剤形。
【請求項22】
デポー製剤を形成する外科的投与装置である、請求項21に記載の剤形。
【請求項23】
請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティングされた粒子及び前記担体システムが、別個に収容され、注射又は注入の前及び/又は最中に混合が起こる、請求項21又は22に記載の剤形。
【請求項24】
骨髄異形成症候群の治療で使用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤又は請求項21~23のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項25】
前記骨髄異形成症候群の治療のための医薬品の製造のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤又は請求項20~22のいずれか一項に記載の剤形の使用。
【請求項26】
骨髄異形成症候群の治療方法であって、かかる治療を必要とする患者に、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤、又は請求項21~23のいずれか一項に記載の剤形を投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記骨髄異形成症候群が、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、多系列異形成を伴う不応性血球減少症、多系列異形成及び環状鉄芽球を伴う不応性血球減少症、芽球増加を伴う不応性貧血、移行期の芽球増加を伴う不応性貧血、未分類型骨髄異形成症候群、及びisolated del(5q)に関連する骨髄異形成症候群からなる群から選択される、請求項24に記載の使用のための製剤、請求項25に記載の使用、又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
注射の後、前記製剤は、前記アザシチジンが3日~約3週間の期間にわたって放出されるデポー製剤を提供する、請求項24~27のいずれか一項に記載の使用のための製剤、使用又は方法。
【請求項29】
アザシチジンの総曝露が、アザシチジンの注射又は注入によって7日間連続して体表面積の75mg/m
2を投与することを含む投与レジメンから得られる前記総曝露の少なくとも約50%である、請求項28に記載の使用のための製剤、使用又は方法。
【請求項30】
無限時間までの濃度対時間曲線下の平均面積における曝露が、960±458ng*h/mLである、請求項29に記載の使用のための製剤、使用又は方法。
【請求項31】
血漿中で観察される平均最大濃度が、アザシチジンの注射又は注入によって7日間連続して75mg/m
2の体表面積を投与することを含む投与レジメンから得られる濃度未満である、請求項28~30のいずれか一項に記載の使用のための製剤、使用又は方法。
【請求項32】
前記血漿中で観察される前記平均最大濃度が、約200~約700ng/mLである、請求項31に記載の使用のための製剤、使用又は方法。
【請求項33】
アザシチジン又はその薬学的に許容される塩(遊離化合物として計算される)の用量が、体表面積1m
2当たり約200mg~約1000mgの範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤、請求項21~23のいずれか一項に記載の剤形、又は請求項24~32のいずれか一項に記載の使用のための製剤、使用若しくは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬物送達の分野で、特にがん、特に骨髄異形成症候群(MDS)の治療で使用するための新規の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における明らかに以前に公開された文書の列挙又は考察は、文書が最新技術又は共通の一般知識の一部であるという承認として必ずしも受け取られるべきではない。
【0003】
MDSは、骨髄中の未成熟血液細胞が成熟せずに健康な血液細胞になるがんの一種である。血液細胞形成の問題は、低い赤血球、血小板、及び白血球数の組み合わせをもたらす。いくつかのタイプのMDSは、骨髄又は血液中の未成熟血球数(芽球)の増加によっても明らかである。
【0004】
MDSの発生率は10万人に約7人で、典型的な発症年齢は70歳である。MDSには、血液細胞及び骨髄の特定の変化に従って特徴付けられるサブタイプがある。
【0005】
MDSの現在の治療には、支持療法(輸血、赤血球数を増加させることが知られている薬物及び/又は抗生物質)、細胞毒性薬による化学療法、造血幹細胞移植及び/又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0006】
化学療法剤アザシチジン(4-アミノ-1-β-D-リボフラノシル-s-トリアジン-2(1H)-オン;5-アザシチジン又は単に「アザシチジン」としても知られる)は、Vidaza(登録商標)のブランド名で販売されており、MDSの治療に一般的に処方されている。これは、DNA及びRNA中のヌクレオシドであるシチジンの化学的類似体である。
【0007】
低用量では、アザシチジンの抗腫瘍活性は、DNAメチルトランスフェラーゼの阻害によって進行し、DNAの低メチル化を引き起こすと考えられている。高用量では、DNA及びRNAに組み込むことによって、骨髄中の異常な造血細胞に直接細胞毒性をもたらし、細胞死をもたらすと考えられている。
【0008】
アザシチジンのRNAへの組み込みは、ポリリボソームの分解、転移RNAの欠陥のあるメチル化及びアクセプター機能、並びにタンパク質の産生の阻害をもたらす。そのDNAへの組み込みは、DNAメチルトランスフェラーゼとの共有結合をもたらし、DNA合成を防止し、続いて細胞毒性をもたらす。
【0009】
アザシチジンは、皮下又は静脈内に注射することによって投与される。これらの注射は、活性成分が長期間にわたって浸出するデポーを形成しないため、頻繁に投与される必要がある。特に、MDSの治療におけるアザシチジンの標準治療サイクルは、28日サイクルでのアザシチジン注射の7日間連続である。
【0010】
より最適な薬物動態プロファイルを確実にするために、MDSのような条件では、活性成分が、注射後に所望のかつ予測可能な速度でインビボで放出される、徐放組成物を提供することが有利であろう。
【0011】
任意の持続放出組成物の場合、その放出プロファイルが、活性成分の初期の最小の急速放出、すなわち投与直後に血漿中の薬物濃度が高くなることを示すことも非常に重要である。そのような「バースト」放出は、望ましくない、高濃度の活性成分をもたらし、治療ウィンドウが狭い薬物、又は高血漿中濃度で毒性のある薬剤の場合には、危険な場合がある。アザシチジンの場合、これは薬物の細胞毒性を考慮すると特に問題がある。
【0012】
注射用懸濁液の特定の場合、懸濁された粒径は、それらが針を通して注射され得るように制御されることを確実にすることも重要である。大きい凝集粒子が存在する場合、それら粒子は、針(それを通して懸濁液が注射される)を塞ぐことになるだけでなく、注射液中に安定した懸濁液を形成しないであろう(すなわち、それら粒子は代わりに、注射液の底に沈む傾向があるであろう)。
【0013】
したがって、アザシチジンを含むより長期的、より効果的及び/又は改善された薬物送達システムのためのMDSのような状態の治療には、満たされていない臨床的必要性が存在する。
【0014】
原子層堆積(ALD)は、様々な材料(有機材料、生物学的材料、ポリマー材料、及び、特に、金属酸化物などの無機材料が含まれる)を含む薄膜を固体基板上に堆積させるために用いられる技術である。これは、汎用性の高いアプリケーションにおける材料、構造、デバイス、及びシステムの原子及び近原子スケール製造(ACSM)を可能にする技術である(例えば、Zhang et al.Nanomanuf.Metrol.2022,https://doi.org/10.1007/s41871-022-00136-8を参照されたい)。その自己限定的な特性に基づいて、ALDは、成長サイクルの数を調整することによってのみ制御される原子レベルの厚さを達成することができる。更に、多層を堆積することができ、各層の特性を原子レベルでカスタマイズすることができる。
【0015】
その原子レベルの制御のために、ALDは、例えば、次世代の半導体の製造、又は高度な触媒の原子レベルの合成、並びにナノ構造、ナノクラスター、及び単一原子の正確な製造のための重要な技術として使用される(例えば、上記のZhang et al.を参照されたい)。
【0016】
この技術は通常、低圧及び高温で実行される。膜コーティングは、ALD反応器チャンバー内の固体基板を、気相で気化した反応物に交互にさらすことによって生成される。基板は、シリコンウェハー、粒状材料、又は小さい粒子(例えば、マイクロ粒子又はナノ粒子)であり得る。
【0017】
コーティングされた基板は、固体コーティングによって化学反応(分解)及び物理的変化から保護される。ALDは、溶媒内での基質材料の放出速度を制御するために使用することができる可能性もある。これにより、医薬品活性成分の製剤化に使用する可能性がある。
【0018】
ALDでは、金属含有物であり得る第1の前駆体がALD反応器チャンバーに供給され(いわゆる「前駆体パルス」で)、基板の表面に吸着された原子又は分子の単分子層を形成する。次いで、過剰な第1の前駆体が、反応器からパージされ、次いで、水などの第2の前駆体が反応器にパルス注入される。これが最初の前駆体と反応し、基板表面に、例えば、金属酸化物の単分子層を形成する。その後のパージパルスの後、第1の前駆体の更なるパルスが続き、したがって、同じ事象の新たなサイクル(いわゆる「ALDサイクル」)が開始される。
【0019】
膜コーティングの厚さは、とりわけ、実施されるALDサイクルの数によって制御される。
【0020】
通常のALDプロセスでは、1つのサイクル中で、原子又は分子の単分子層のみが生成されるため、これらの単分子層の間に識別可能な物理的界面は形成されず、本質的に基板の表面で連続帯になる。
【0021】
国際特許出願第2014/187995号では、いくつかのALDサイクルが実行され、その後、得られたコーティングされた基板を反応器から定期的に取り出し、再分散/撹拌ステップを実行して、前駆体の吸着に利用可能な新たな表面を提示するプロセスが記載されている。
【0022】
撹拌ステップは、主にナノ粒子及びマイクロ粒子で観察される問題を解決するために行われる。つまり、ALDコーティングプロセス中に粒子の凝集が起こり、そのような粒子間の接触点によって「ピンホール」が形成される。再分散/撹拌ステップは、コーティングされた基板を水に入れ、超音波処理することによって実行され、その結果、脱凝集が生じ、コーティングされた活性物質の個々の粒子間の接触点が破壊される。
【0023】
次いで、粒子を反応器に装填し直し、粉末のALDコーティング及び粉末の脱凝集のステップを3回繰り返した(合計4回の一連のサイクル)。このプロセスにより、かなりの程度までピンホールのないコーティングされた粒子の形成が可能になることがわかっている(Hellrup et al,Int.J.Pharm.,529,116(2017)も参照されたい)。
【0024】
我々は、ALDを使用して、コーティングされた粒子が水性ビヒクルに懸濁される、特定の混合酸化物コーティング層でアザシチジン微粒子をコーティングする、新規の注射可能なアザシチジン組成物を作製した。これらの製剤は、長期間にわたって活性成分を放出することによって有利な薬物動態プロファイルを生成し、顕著な初期バースト効果なしに、全身循環における治療上有効なレベルの薬物を提供する。
【発明の概要】
【0025】
本発明の第1の態様によれば、水性担体システムに懸濁された複数の粒子を含む、MDSの治療に有用な医薬製剤が提供され、上記複数の粒子が、
(a)10nm~約700μmの量である、重量、数、又は体積に基づく平均直径を有し、
(b)少なくとも部分的に無機材料のコーティングによってコーティングされた、アザシチジン又はその薬学的に許容される塩を含む固体コアを含み、無機材料のコーティングが、
(i)酸化亜鉛(ZnO)と、
(ii)1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物と
の混合物を含み、
原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:6と、最大で約6:1との間である。
この製剤は、以下、「本発明の製剤」と称される。
【0026】
好ましくは、原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:1と、最大で約6:1との間である。
【0027】
酸化亜鉛と、1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物との混合物を含むコーティングは、以下、「混合酸化物」コーティング又はコーティング材料」と称される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、以下に記載されるように調製された様々なラットへの皮下投与後の、異なる期間にわたるアザシチジンの用量正規化された血漿中濃度を示す。
【
図2】
図2は、以下に記載されるように調製された様々なラットへの皮下投与後の、異なる期間にわたるアザシチジンの用量正規化された血漿中濃度を示す。
【
図3】
図3は、以下の実施例10に記載されるような臨床試験における処置プロトコールに従ってアザシチジンを投与された2人の患者の血漿中濃度-時間プロファイルを示す。
【
図4】
図4は、以下の実施例10に記載されるような臨床試験における処置プロトコールに従ってアザシチジンを投与された2人の患者の血漿中濃度-時間プロファイルを示す。
【
図5】
図5は、本発明の製剤の皮下投与後のミニブタに対するアザシチジンの血漿中濃度-時間プロファイルを示す。
【
図6】
図6は、抗炎症剤であるインドメタシンを含む混合された酸化物でコーティングされた微粒子とともに、本発明の皮下併用投与製剤の腫脹のサイズの観点から、局所炎症応答に対する正の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
「固形」という用語は、閉じ込められていないときにその形状及び密度を保持し、及び/又は分子が一般にそれらの間の反発力が許す限り強く圧縮されている物質のあらゆる形態を含むことが当業者によく理解されるであろう。固体コアは、コーティング材料の層を堆積することができる少なくとも固体の外面を有する。固体コアの内部も固体であってもよく、代わりに中空であってもよい。例えば、粒子が反応容器に入れられる前に噴霧乾燥される場合、それらは噴霧乾燥技術のために中空であってもよい。
【0030】
本発明の製剤の固体コアは、アザシチジン又はその薬学的に許容される塩を含み、この点で、本質的にアザシチジン又はその塩からなり得るか、又は他の賦形剤又は他の活性成分とともにアザシチジン又はその塩を含み得る。
【0031】
アザシチジン又はその薬学的に許容される塩から「本質的になる」とは、固体コアが本質的にアザシチジン又はその塩のみを含み、すなわち、賦形剤、担体などの非生物学的活性物質(後述)、及び他の活性物質を含まないことを含む。これは、コアが約5%未満、例えば約3%未満、例えば約2%未満、例えば約1%未満のそのような他の賦形剤及び/又は活性物質を含み得ることを意味する。
【0032】
あるいは、アザシチジン又はその薬学的に許容される塩を含むコアは、1つ以上の医薬成分と混合されたそのような活性成分を含み得、これは、アジュバント、希釈剤、若しくは担体などの薬学的に許容される賦形剤を含み得、及び/又は他の生物学的に活性な成分を含み得る。
【0033】
本発明に従ってコーティングされるコアに用いられ得る非生物学的に活性なアジュバント、希釈剤、及び担体は、炭水化物、例えばラクトース及び/若しくはトレハロースなどの糖、並びにマンニトール、ソルビトール、及びキシリトールなどの糖アルコールなどの水に可溶である薬学的に許容される物質、又は塩化ナトリウムなどの薬学的に許容される無機塩を含み得る。好ましい担体/賦形剤材料には、糖及び糖アルコールが含まれる。
【0034】
アザシチジン又はその薬学的に許容される塩は、結晶性、部分結晶性、及び/又はアモルファス状態で提示され得る。アザシチジン又はその薬学的に許容される塩は、物理的形態に関係なく、ほぼ室温(例えば、約18℃)及びほぼ大気圧で、固体状態にあるか、又は固体状態に変換され得る。活性剤(及び任意選択的に、本明細書に記載の他の医薬成分)はまた、例えば、ALD反応器中でコーティングされている間、固体の形態のままであるべきであり、また、コーティングされている間、又は混合された金属酸化物コーティング材料によって覆われた後、物理的若しくは化学的にかなりの程度(すなわち、約10%w/w以下)に分解してはならない。
【0035】
アザシチジンの薬学的に許容される塩としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。そのような塩は、慣用的手段により、例えば、活性成分の遊離酸又は遊離塩基形態と、1当量以上の適切な酸又は塩基とを、任意選択的に溶媒中で、又は塩が不溶である媒体中で反応させ、次いで、標準的技法を用いて(例えば、真空中、凍結乾燥又は濾過によって)、当該溶媒又は当該媒体を除去することにより、形成されてもよい。塩はまた、例えば、好適なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の活性成分の対イオンを別の対イオンと交換することなどによって、当業者に既知の技法を使用して調製され得る。
【0036】
言及され得る特定の塩としては、例えば、塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、マレイン酸、メタンスルホン酸などの酸付加塩が挙げられる。
【0037】
本発明の製剤は、薬理学的に有効な量のアザシチジン又はその薬学的に許容される塩を含む。好ましくは、本発明の製剤の固体コアは、当該薬理学的に有効な量のアザシチジン又はその塩を含む。
【0038】
「薬理学的に有効な量」という用語は、単独で又は別の活性成分と組み合わせて投与されるかどうかにかかわらず、治療患者に所望の生理学的変化(治療効果など)を与えることができるアザシチジン又はその塩の量を指す。患者におけるそのような生物学的若しくは医学的反応、又はそのような効果は、主観的(すなわち、対象が効果の兆候を与える、若しくは効果を感じる)であり得、治療されている疾患若しくは障害の症状の少なくとも部分的な緩和、又は当該疾患若しくは障害の治癒若しくは予防を含み、客観的(すなわち、何らかの試験若しくはマーカーによって測定可能)であり得る。
【0039】
したがって、患者に投与され得るアザシチジン/その塩の用量は、合理的及び/又は関連する時間枠にわたって治療反応に影響を与えるのに十分でなければならない。当業者は、正確な用量及び組成並びに最も好適な送達レジメンの選択が、製剤の薬理学的特性だけでなく、とりわけ投与経路、治療される状態の性質及び重症度、レシピエントの体調及び知的鋭敏性、並びに治療される患者の年齢、状態、体重、性別、及び反応、疾患の病期/重症度、並びに患者間の遺伝的差異によっても影響されることを認識している。
【0040】
アザシチジン/その塩の投与量はまた、投与のタイミング及び頻度によって決定され得る。いずれにしても、医師又は他の当業者は、個々の患者に最も好適なアザシチジン/その塩の実際の投与量を日常的に決定することができるであろう。
【0041】
注射されると、本発明の製剤は、アザシチジンが長期間にわたって放出されるデポー製剤を提供する。その期間は、少なくとも約3日、例えば、約5日、又は約7日、及び最大で約4週間、例えば約3週間(例えば、約2週間)であり得る。
【0042】
したがって、本発明の製剤中のアザシチジン又はその薬学的に許容される塩の好適な用量は、臨床現場で使用されるアザシチジンの現在の、市販の皮下注射及び/又は静脈内注射について得られたものと少なくとも同じ治療効果を提供する曝露(例えば、AUClast(長期間にわたる最後の検出可能な濃度までの血漿中濃度対時間曲線下の面積)、より好ましくは、AUC∞(無限の時間までの血漿中濃度対時間曲線下の面積)として定義されるAUC)を提供する血漿中濃度-時間プロファイルを提供し得る。
【0043】
本発明の製剤は、アザシチジンの注射又は注入によって、7日間連続して投与される現在の標準的なケア/投与レジメンから得られた総曝露(AUC∞)の100%以下である、上記の期間のいずれかにわたる血漿中のアザシチジンの曝露を、AUC∞の観点から提供することができ得、これは、現在、7日間にわたって皮下又は静脈内に投与される体表面積(BSA)のm2当たり75mgのアザシチジン(遊離化合物として計算される)である。
【0044】
より好ましくは、上記の期間のいずれか1つにわたるアザシチジンの総曝露(例えば、AUC∞)は、アザシチジンの注射又は注入(525mg/m2のBSAが、960±458ng*h/mLの平均AUC∞を与える)によって、7日間連続して投与される現在の標準的なケア/投与レジメンから得られる総曝露(例えば、AUC∞)の少なくとも約85%など、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約65%)、少なくとも約75%(例えば、少なくとも約80%)であり得る。
【0045】
これにより、本発明の製剤内のアザシチジン又はその薬学的に許容される塩の用量が、現在の標準的なケア内で投与される毎日の用量の約10%(例えば、約15%)~約80%(例えば、約70%、例えば、約65%)の範囲内にある、毎日の注射又は注入処置(それぞれが遊離化合物として計算される)である毎日の用量(これは、上記の期間のいずれか1つの期間にわたって注射後に製剤から放出される1日当たりの平均用量である)を提供するか、又は提供することが可能になる。
【0046】
したがって、本発明の製剤によって患者に注射され得る総用量は、約200mg(例えば、約300mg)~約1000mg/m2のBSAの範囲であり得る。
【0047】
本発明の製剤は、注射後のアザシチジンの定常状態放出を提供するため、これは、平均Cmax(血漿中濃度対時間曲線で観察される最大濃度)が、アザシチジン(750±403ng/mL)の注射又は注入によって7日間連続して投与される現在の標準的なケア/投与レジメンから得られる濃度未満であることを意味する。本発明の製剤について、平均Cmaxは、約200~約700ng/mLであり得る。
【0048】
本発明の製剤のアザシチジン含有コアは、ナノ粒子、又はより好ましくは微粒子の形態で提供される。好ましい重量、数、又は体積に基づく平均直径は、約50nm(例えば、約100nm、約250nmなど)~約30μm、例えば、約500nm~約100μm、より具体的には、約1μm~約50μm(約25μmなど、例えば、約20μm)である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「重量基準平均直径」という用語は、平均粒径が、重量による粒径分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、ふるい分け(例えば、湿式ふるい分け)によって得られる重量分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。本明細書で使用される場合、「数基準平均直径」という用語は、平均粒径が、数による粒径分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、顕微鏡検査によって測定された数分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。本明細書で使用される場合、「体積基準平均直径」という用語は、平均粒径が、体積による粒径分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、レーザー回折によって測定された体積分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。当業者はまた、面積ベースの平均直径などの平均直径を表現する他の好適な方法があり、平均直径のこれらの他の表現は、本明細書で使用されるものと交換可能であることを理解するであろう。例えば、Malvern Instruments,Ltd(Worcestershire,UK)及びShimadzu(Kyoto,Japan)が販売する機器など、この分野でよく知られている他の機器を用いて、粒径を測定し得る。
【0050】
粒子は、球形であり得、すなわち、それらは、約20未満、より好ましくは約10未満、例えば約4未満、特に約2未満のアスペクト比を有し、及び/又は粒子の少なくとも約90%、平均値の約50%以下、例えば、その値の約30%以下、例えば、その値の約20%以下における半径(重心から粒子表面まで測定)の変動を有し得る。
【0051】
それにもかかわらず、本発明によれば、任意の形状への粒子のコーティングも可能である。例えば、不規則な形状(例えば、「レーズン」形状)、針形状、薄片形状又は直方体形状の粒子をコーティングし得る。非球形粒子の場合、サイズは、例えば同じ重量、体積、又は表面積の対応する球形粒径として示され得る。中空粒子、並びに繊維状又は「もつれた」粒子などの細孔、隙間などを有する粒子もまた、本発明に従ってコーティングされ得る。
【0052】
粒子は、それらがコーティングされるのに好適な形態で得ても、その形態で、例えば、粒径縮小プロセス(例えば、特定の重量ベースの平均直径(本明細書で定義される)への粉砕、切断、ミリング、又は研削によって、例えば、湿式研削、乾式研削、エアジェットミリング(極低温微粉化を含む)、遊星ボールミリングなどのボールミリング、並びにエンドランナーミル、ローラーミル、振動ミル、ハンマーミル、ローラーミル、流体エネルギーミル、ピンミルなどを利用することによって、得てもよい。代替的に、粒子は、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、真空乾燥、超臨界流体の使用を含む沈殿、若しくは他のトップダウン法(すなわち、例えば、研削などによって、大きい粒径を小さくすること)、又はボトムアップ法(すなわち、例えば、ゾルゲル技術、結晶化などによって、小さい粒径を大きくすること)によって、好適なサイズ及び形状に直接調製され得る。代替的に、ナノ粒子は、ガス凝縮、摩滅、化学沈殿、イオン注入、熱分解、水熱合成などのようなよく知られた技術によって作製され得る。
【0053】
粒子を、それらの生成に由来し得る不純物を除去するために、洗浄及び/又は綺麗にし、次いで、それらを乾燥させる必要があり得る(コアを含む粒子が最初に提供される方法によって異なる)。乾燥は、蒸発、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、マイクロ波乾燥、IR放射、ドラム乾燥などを含む、当業者に知られている多くの技術によって実施され得る。乾燥したら、コアは、次いで、研削、スクリーニング、ミリング、及び/又は乾式超音波処理によって脱凝集され得る。代替的に、コアは、例えば、粒子を真空及び/又は高温に曝露することによって、その表面上に吸収され得る任意の揮発性物質を除去するために処理され得る。
【0054】
コアの表面は、コーティング材料の第1の層を塗布する前に、例えば、過酸化水素、オゾン、フリーラジカル含有反応物で処理することによって、又はコアの表面にフリー酸素ラジカルを創出するためにプラズマ処理を適用することによって、化学的に活性化され得る。これにより、ALD前駆体のコア上に有利な吸着部位/核形成部位が生成され得る。
【0055】
したがって、アザシチジン含有コアは、酸化亜鉛と、1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物との混合物を含むコーティング材料で、酸化亜鉛と他の酸化物との原子比が少なくとも約1:6(例えば、少なくとも約1:4、例えば、少なくとも1:2)、好ましくは少なくとも約1:1(例えば、少なくとも約1.5:1、例えば、少なくとも約2:1)(少なくとも約2.25:1を含む、例えば、少なくとも約2.5:1(例えば、少なくとも約3.25:1又は少なくとも約2.75:1(3:1を含む))、及び最大(すなわち、最大)約6:1まで(最大約5.5:1を含む)、又は最大約5:1、例えば、最大約4.5:1(最大約4:1を含む)(例えば、最大約3.75:1)でコーティングされる。
【0056】
生物学的に活性な薬剤を含むコアにコーティングを塗布する好ましい方法には、ALDなどの気相技術、又は原子層エピタキシー(ALE)、分子層堆積(MLD、ALDと同様の技術であるが、原子の代わりに分子(通常、有機分子)が各パルスで堆積する点で異なる)、分子層エピタキシー(MLE)、化学気相堆積(CVD)、原子層CVD、分子層CVD、物理蒸着(PVD)、スパッタリングPVD、反応性スパッタリングPVD、蒸着PVD及び二元反応シーケンス化学などの関連技術が含まれる。ALDは、本発明による好ましいコーティング方法である。
【0057】
ALDが用いられる場合、上記の混合酸化物コーティングは、第1の亜鉛含有前駆体、他の金属含有前駆体、又はメタロイド含有前駆体をALD反応器チャンバーに供給し(いわゆる「前駆体パルス」で)、粒子の表面に吸着された原子又は分子の亜鉛含有単分子層、他の金属含有単分子層、又はメタロイド含有単分子層を形成することによって調製され得る。次いで、第2の前駆体(例えば、水)を反応器内にパルスし、第1の前駆体と反応させ、基板表面上に亜鉛、金属又はメタロイド酸化物の単分子層をそれぞれ形成する。その後のパージパルスの後、第1の前駆体の更なるパルスが続き、したがって、同じ事象の新たなサイクル(いわゆる「ALDサイクル」)が開始される。
【0058】
ほとんどの場合、連続する反応の最初のものは、ヒドロキシ基(-OH)又は一級若しくは二級アミノ基(-NH2若しくはRが、例えばアルキル基などの脂肪族基である-NHR)などのコーティングされる表面にいくつかの官能基又は遊離電子対又はラジカルを伴う。個々の反応は、有利には、次の反応を行う前に、全ての過剰な試薬及び反応生成物が本質的に除去されるような条件下で、別々に実施される。
【0059】
1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物に対する酸化亜鉛の原子比が(例えば)少なくとも約1:1と、最大で約6:1との間の混合酸化物コーティングを作製するために、当業者は、他の酸化物の1つのALDサイクル(すなわち単分子層)ごとに、約1~約6のALDサイクルの酸化亜鉛も堆積されなければならないことを理解するであろう。例えば、3:1の原子比(亜鉛:他の酸化物)の混合酸化物コーティングが形成される場合、3つの亜鉛含有前駆体パルスの後に、それぞれ第2の前駆体パルスが続き、酸化亜鉛の3つの単分子層が形成され、次いで、他の金属及び/又はメタロイド含有前駆体の1つのパルスが続き、第2の前駆体パルスが続き、他の金属及び/又はメタロイドの酸化物の1つの単分子層が形成される。あるいは、酸化亜鉛の6つの単分子層の後に、約3:1の全体的な原子比を提供するように、他の酸化物の2つの単分子層、又は任意の他の組み合わせが続いてもよい。この点で、関連する酸化物を生成するためのパルスの順序は、結果として生じる原子比が最終的に関連する範囲内にある限り、重要ではない。
【0060】
言及され得る亜鉛以外の金属及び/又はメタロイド要素には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、貴金属、遷移金属、遷移後金属、ランタニドなどが含まれる。言及され得る金属及びメタロイドには、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル、ランタン、及び/又はシリコン、より好ましくは、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄、ガリウム、及び/又はジルコニウムが含まれる。言及され得る特定の金属及び/又はメタロイド要素には、アルミニウム及びシリコンが含まれる。
【0061】
この点で、混合された酸化物コーティング材料は、好ましくは、酸化アルミニウム(Al2O3)及び/又は二酸化シリコン(SiO2)のうちの1つ又は他のもの、又は両方を含む。
【0062】
したがって、本発明による複数のコーティングされた粒子を調製する方法が更に提供され、コーティングされた粒子は、気相堆積技術によって、固体コア及び/又は以前にコーティングされた固体コア上に混合された酸化物を形成する少なくとも2つの金属及び/又はメタロイド酸化物の前駆体を塗布することによって作製される。金属酸化物又はメタロイド酸化物を形成するための前駆体は、多くの場合、水、酸素、オゾン、及び/又は過酸化水素などの酸素前駆体、並びに金属及び/又はメタロイド化合物、典型的には有機金属化合物又は有機メタロイド化合物を含む。
【0063】
前駆体の非限定的な例は以下のとおりである:酸化亜鉛の前駆体は、水及びジエチル亜鉛などのジC1-C5アルキル亜鉛であり得る。酸化アルミニウムの前駆体は、水及びトリメチルアルミニウムなどのトリC1-C5アルキルアルミニウムであり得る。酸化シリコン(シリカ)の前駆体は、酸素前駆体としての水、並びにシラン、アルキルシラン、アミノシラン、及びオルトケイ酸テトラエチルエステルであり得る。酸化鉄の前駆体としては、酸素、酸素前駆体としてオゾン及び水、並びにジC1-C5アルキル鉄、ジシクロプロピル鉄、及びFeCl3が挙げられる。当業者は、どの前駆体が本明細書に開示される目的に適しているかを認識していることが理解されるであろう。
【0064】
ALDでは、コーティング材料の層は、約20℃~約800℃、又は約40℃~約200℃、例えば、約40℃~約150℃、例えば、約50℃~約100℃のプロセス温度で塗布され得る。最適なプロセス温度は、コアに採用される前駆体及び/又は物質(生物学的に活性な薬剤、例えば、アザシチジン/塩を含む)の反応性、並びに/又はコア物質の融点に依存する。約30℃~約100℃などのより低い温度が用いられることが好ましい。特に、上記方法の一実施形態では、約20℃~約80℃、例えば、約30℃~約70℃、例えば、約40℃~約60℃、例えば、約50℃の温度が採用される。
【0065】
約50℃~約100℃などの低温でALDを使用して酸化亜鉛を含むコーティングを塗布すると(アモルファス層を形成する酸化アルミニウム及び酸化チタンなどの他のコーティング材料とは異なり)、コーティング材料は、その性質上大部分が結晶性であることを、我々は見出した。
【0066】
理論に制限されることなく、酸化亜鉛は結晶性であるため、酸化亜鉛のみがコーティング材料として採用される場合、ALDによって堆積される酸化亜鉛の隣接する結晶間に界面が形成され得、これによって、酸化亜鉛が部分的に溶解する担体システム、媒体、又は溶媒(例えば、水性溶媒系)が、その中に懸濁後に侵入し得ることが理解される。これは、作製することが意図されるデポー形成組成物には速すぎる溶解を引き起こし得ると考えられる。
【0067】
更に、以前の研究では、水性媒体に懸濁した場合、酸化亜鉛でコーティングされたアザシチジン製剤の相対的な生物学的利用能が、コーティングされていないアザシチジンよりも低いことが示されている。我々は、この相対的な生物学的利用能の低下は、アザシチジンが全身循環に放出され得る前のアザシチジンの分解によるものであると考えている。上記のような酸化亜鉛コーティング内の結晶界面を通る水の貫通は、コーティングされた粒子の内部内のアザシチジンの加水分解をもたらすと考えられる。
【0068】
我々は、これらの問題が、本明細書に記載されているように混合酸化物コーティングを作製することによって緩和され得ることを発見した。特に、完全にではないが、主に酸化亜鉛で構成される、本明細書に記載されているような混合酸化物コーティングを形成することにより、本質的に非晶質、又は結晶性材料と非晶質材料との間の複合材料であるように見えるコーティング、及び/又は水などの注入ビヒクルの侵入を低減し得るコーティングで活性成分をコーティングすることができた。この点で、前述の知覚された界面の存在は、本発明の混合酸化物態様を、不均一な方法(他の酸化物が界面によって形成された間隙を「充填する」方法)、又は均質な方法(最初に界面が潜在的に回避される方法で、堆積中に混合酸化物材料の真の複合材料が形成される方法)のいずれかで採用することによって、減少又は完全に回避され得るように思われる。以下に記載されるように、本発明の製剤は、コーティングされていないアザシチジンと同等の相対的な生物学的利用能を示す。
【0069】
使用される気相堆積反応器チャンバーは、任意選択で、及び/又は好ましくは、固定気相堆積反応器チャンバーであってもよい。用語「静止」は、気相堆積反応器チャンバーの文脈において、例えば、関連する機械によって引き起こされるような無視できる動き及び/又は振動を除外して、気相堆積技術を実行するために使用中に反応器チャンバーが静止したままであることを意味すると理解されるであろう。
【0070】
更に、いわゆる「ストップフロー」プロセスが採用され得る。ストップフロープロセスを使用して、第1の前駆体が反応器チャンバーに供給され、第1の前駆体が反応器チャンバーからパージされる前に、第1の前駆体は、所定の期間(浸漬時間とみなされ得る)、反応器チャンバー内のコアに接触させられ得る。所定の期間の間、好ましくは、気体の流れをもたらし得るポンプの実質的な欠如、及び/又はコアの機械的撹拌の実質的な欠如がある。
【0071】
ストップフロープロセスの採用は、各ガスが粉末などの高いアスペクト比の基板に適合して拡散することを可能にすることによって、コーティングの均一性を高めることができる。前駆体が表面上で反応するのにより多くの時間が与えられるため、反応性が遅い前駆体を使用する場合、利点は更に顕著になり得る。これは、特に、本発明による混合酸化物コーティングを堆積させるときに明らかであり得る。例えば、本明細書に記載されるように混合された酸化亜鉛/酸化アルミニウムコーティングを堆積させるとき、我々は、ジエチル亜鉛(DEZ)などの亜鉛含有前駆体が、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)などのアルミニウム含有前駆体よりも基板の表面に向かって低い反応確率を有することを見出した。
【0072】
良好なシェル完全性及びより制御された放出プロファイルを有するコーティングを生成することに加えて、そのようなストップフロープロセスの採用は、特定のコーティング組成物を達成する能力を改善し得る。
【0073】
例えば、上記のように、得られたシェル内の亜鉛とアルミニウムとの間の原子比が3:1であるコーティングを製造するために気相技術を採用しようとすると、前駆体の連続的な流れを使用して材料を堆積させる場合よりも、ストップフロープロセスを使用して3:1に非常に近い比率が達成され得ることがわかった。
【0074】
好ましくは、及び/又は任意選択で、「マルチパルス」技術を採用して、第1の前駆体、第2の前駆体、又は両方の前駆体を反応器チャンバーに供給してもよい。
【0075】
そのようなマルチパルス技術を使用して、それぞれの前駆体は、複数の「サブパルス」として反応器チャンバーに供給され得、各々は、1つの連続したパルスとしてではなく、例えば、1秒から約1分(気相堆積反応器のサイズ及び性質に応じて)のような短い期間を持続する。前駆体は、各サブパルスの後、所定の期間、例えば、約1~500秒、約2~250秒、約3~100秒、約4~50秒、又は約5~10秒、例えば9秒、反応器チャンバー内のコアに接触させてもよい。繰り返しになるが、気相堆積反応器のサイズ及び性質に応じて、この時間は、最大数分(例えば、最大約30分)まで延長することができる。サブパルスの導入、続いて一定期間の浸漬時間は、所定の回数、例えば、約5~1000回、約10~250回、又は約20~50回、単一のステップで繰り返され得る。
【0076】
コアは、本明細書に定義されるような混合酸化物コーティングの1つ以上の別個の個別の層でコーティングされ得る。好ましくは、2つ以上の別個の個別の混合酸化物の層、コーティング又はシェル(これらの用語は本明細書で互換的に使用される)が、アザシチジンを含む固体コアに順次塗布される(すなわち、「別個に塗布される」)。
【0077】
「別個の層、コーティング、又はシェル」の「別個の塗布」は、固体コアが、コーティング材料の第1の層でコーティングされ、この層は、本明細書に記載されるように、2つ以上の(例えば、複数の、又は一組の)サイクルによって形成され、各サイクルは、酸化亜鉛、又は他の金属若しくは/又はメタロイド酸化物(必要に応じて)を生成し、次いで、得られたコーティングされたコアは、何らかの形態の脱凝集ステップに供されることを意味する。
【0078】
言い換えれば、「気相堆積(例えばALD)サイクル」を数回繰り返して、例えば10、25、又は100サイクルからなり得るサイクルの「気相堆積(例えばALD)セット」を提供することができる。しかしながら、この一連のサイクルの後、コーティングされたコアは、何らかの形態の脱凝集プロセスに供され、これには、更なる一連のサイクルが続く。
【0079】
このプロセスは、必要に応じて何度も繰り返され得、したがって、最終的なコーティングの中にある複数の一連のサイクルによって生成されるコーティング材料の個別の層の数は、これらの断続的な脱凝集ステップの数に対応し、最終的な機械的脱凝集は、コーティング材料の最終的な層(一連のサイクル)の塗布の前に行われる。
【0080】
「解凝集」及び「脱凝集」という用語は、コーティングされた粒子を指すときに互換的に使用され、コーティングされた粒子凝集体の解凝集は、好ましくは、機械的ふるい分け技術によって行われる。
【0081】
コーティングされたコアは、連続プロセスによって当該装置から取り出されることなく、内部で前述の脱凝集プロセスに供され得る。このようなプロセスは、反応器内に配置されたふるいを通して当該コアをコーティングすることによって形成された固体生成物塊を強制することを含み、第二のコーティング及び/又は更なるコーティングに供される前に、当該反応器内で適用された強制手段によってコーティングされたコアを強制すると、粒子の凝集体を脱凝集するように構成される。このプロセスは、本明細書に記載されているように、最終的なコーティングを塗布する前に、必要な回数及び/又は適切な回数だけ継続される。
【0082】
反応容器内にふるいを置くことは、粒子を反応器から取り出す必要のない連続プロセスによって、コーティングを塗布することができることを意味する。したがって、粒子を手動で取り扱う必要はなく、凝集粒子を脱凝集するために外部の機械も必要ない。これにより、コーティングプロセスが実施される時間が大幅に短縮されるだけでなく、より便利になり、有害な(例えば、有毒な)材料が人員によって取り扱われるリスクが軽減される。また、手作業を制限することでプロセスの再現性を高め、汚染のリスクが軽減される。
【0083】
あるいは及び/又は好ましくは、コーティングされたコアは、ALD反応器などのコーティング装置から取り出され、その後、例えば、国際特許出願第2014/187995号に記載されているように、外部脱凝集ステップに供され得る。そのような外部脱凝集ステップは、湿った状態又は乾いた状態での超音波処理などの撹拌を含み得るか、又は好ましくは、反応器から出された得られた固体生成物塊を、次のコーティングステップのために粒子をコーティング装置に戻す前に、例えば、以下に記載されるように、粒子を脱凝集させるために、例えば、ふるい又はメッシュを通すことによって、ふるいにかけることを含み得る。ここでも、このプロセスは、最終的なコーティングを塗布する前に、必要な回数及び/又は適切な回数だけ継続することができる。
【0084】
外部脱凝集プロセスでは、脱凝集は、代替的に、湿った状態又は乾いた状態のコーティングされた粒子を、ノズルエアロゾル発生、ミリング、粉砕、撹拌、高剪断混合及び/又は均質化のうちの1つ以上に供することによって、行うことができる。脱凝集のステップが湿った状態の粒子に対して実行される場合、脱凝集した粒子は、次のコーティングステップの前に、(コアに関して前述したように)乾燥されるべきである。
【0085】
しかしながら、かかる外部プロセスにおいて、脱凝集ステップは、1つ以上のふるい分けステップを含み、これは、ジェットふるい分け、手動ふるい分け、振動ふるい振盪、水平ふるい振盪、タップふるい分け、又は(好ましくは)以下に記載されるような音波ふるい分け、又はこれらのふるい分けステップの任意の組み合わせを含む同様のプロセスを含み得る。好適な音波シフターのメーカーとしては、Advantech Manufacturing、Endecott、及びTsutsuiが挙げられる。
【0086】
振動ふるい分け技術は、当該コアをコーティングすることによって形成された固体生成物塊を、反応器の内部又は(好ましくは)外部(すなわち、外側)に位置するふるいに振動的に通す手段を伴い得、任意の粒子凝集体を、コーティング材料の第2の及び/又は更なる層に供する前に、コーティングされたコアを当該振動的に通す際に脱凝集するように構成される。このプロセスは、コーティング材料の最終層を塗布する前に、必要な回数及び/又は適切な回数だけ繰り返される。
【0087】
振動的に通す手段は、ふるいに結合された振動モータを備える。振動モータは、電力が供給されるときに振動及び/又は回転するように構成される。例えば、振動モータは、逆の圧電効果の結果として、電界が印加されるときに形状を変化させる圧電材料を含む圧電振動モータであり得る。圧電材料の形状の変化は、圧電振動モータの音響又は超音波振動を引き起こす。
【0088】
代替的に、振動モータは、電力がモータに供給されるときに回転される質量を含む偏心回転質量(ERM)振動モータであってもよい。質量は回転軸から偏心し、質量の回転によりモータが不均衡になり、振動及び/又は回転する。更に、ERM振動モータは、モータに対して異なる位置に配置された複数の質量を含み得る。例えば、ERM振動モータは、各々がモータの反対側の端部に配置された上部質量及び下部質量を含み得る。各質量及び他の質量に対するその角度を変化させることによって、ERM振動モータの振動及び/又は回転を変化させることができる。
【0089】
振動モータは、電力が供給されるときにモータの振動及び/又は回転がふるいに伝達される様式でふるいに結合される。
【0090】
ふるい及び振動モータは、振動がマウントに実質的に伝達されるか、又はマウントによって減衰されることなく、ふるい及びモータがマウントに対して自由に振動するように、懸濁手段を介してマウント(例えば、床に配置可能なフレームなど)から懸濁され得る。これにより、振動モータ及びふるいは、障害物なしで振動及び/又は回転することができ、また、振動ふるい分けプロセス中に生成されるノイズを低減する。懸濁手段は、ふるい及び/又はモータをマウントに結合する1つ以上のばね又はベローズ(すなわち、エアクッション又は同等のクッション手段)を含み得る。かかるプロセスを実施するのに適した振動ふるい又はシフターのメーカーとしては、例えば、Russell Finex、SWECO、Filtra Vibracion、VibraScreener、Gough Engineering、及びFarley Greeneが挙げられる。
【0091】
好ましくは、振動ふるい分け技術は、ふるいに結合された振動プローブを制御することを更に含む。振動プローブは、振動モータによって引き起こされる振動の周波数とは別の周波数でふるいを振動させるように制御され得る。好ましくは、振動プローブは、振動モータによって引き起こされる振動よりも高い周波数でふるいを振動させ、より好ましくは、周波数は超音波範囲内にある。
【0092】
振動プローブによってふるいに追加の振動を提供することは、ふるいの目詰まりの発生を減らし、ふるいが過負荷になる可能性を減らし、ふるいのメッシュを清掃するのに必要な時間を減らす。
【0093】
好ましくは、上記の振動ふるい分け技術は、少なくとも1g/分のスループットでコーティングされた粒子をふるい分けることを含む。より好ましくは、振動ふるい分け技術は、4g/分以上のスループットでコーティングされた粒子をふるい分けることを含む。
【0094】
スループットは、ふるいのメッシュの面積、ふるいのメッシュサイズ、粒子のサイズ、粒子の粘着性、粒子の静的性質に依存する。これらの機能のいくつかを組み合わせることで、はるかに高いスループットが可能になる。したがって、振動ふるい分け技術は、より好ましくは、最大1kg/分又はそれ以上のスループットでコーティングされた粒子をふるい分けることを含む。
【0095】
上記のスループットのいずれか1つは、既知の機械的ふるい分け、又はふるい分け技術の使用に対する大幅な改善を表す。例えば、我々は、音波ふるい分けは、装置を保存するために必要な15分間の冷却時間を介して15分間のふるい分けを伴うことを見出した。20gのコーティングされた粒子をふるい分けるためには、9セットの15分の活性ふるい分け時間、すなわち、255分の(冷却を含む)合計時間が必要であった。比較すると、前述の振動ふるい分け技術を使用することによって、20gのコーティングされた粒子は、最大で20分間、又はより好ましくはわずか5分間、又はそれ以下で連続的にふるい分けられ得る。
【0096】
ふるいのメッシュサイズは、ふるいにかけられた粒子又は音波ふるいにかけられた粒子のサイズとふるいのメッシュサイズとの比率が、約1:>1、好ましくは約1:2、及び任意選択で約1:4であるように決定され得る。サイズのメッシュサイズは、約20μm~約100μm、好ましくは約20μm~約60μmの範囲であり得る。
【0097】
適切なふるいメッシュは、穴あきプレート、マイクロプレート、グリッド、菱形、スレッド、ポリマー又はワイヤー(編まれたワイヤーふるい)を含み得るが、ステンレス鋼などの金属から形成されることが好ましい。
【0098】
驚くべきことに、振動ふるい分け技術内でステンレス鋼メッシュを使用することは、音波ふるい分けなどの機械的ふるい分け技術の一部として、より柔らかいポリマーふるい分けを使用することと同様に、粒子コーティングに優しい。
【0099】
また、ふるい粉の既知の問題は、潜在的に危険な静電気の発生である。スチールメッシュは、粉末から静電気を除去するという利点があるが、ポリマーメッシュではそうではない。ポリマーメッシュは、音波シフターで使用する必要がある。
【0100】
更に、音波がメッシュを振動させるのではなくメッシュを通って移動するため、既知の音波シフターのメッシュサイズは、約100μmに制限される。その制限は、ふるいで振動を生成するために音波に依存しないため、振動ふるい分け技術のために使用することは存在しない。したがって、本明細書に記載の振動ふるい分け技術は、代替の機械的ふるい分け技術が使用された場合よりも大きな粒子をふるい分けることを可能にする。
【0101】
ふるいが反応器の外部(すなわち、反応器の外側)に位置する場合、本発明の製剤のコーティングされたコアを作製するプロセスは、コーティングされた粒子を撹拌に供する前に、コーティングされた粒子を気相堆積反応器から排出し、脱凝集したコーティングされた粒子を、少なくとも1つのコーティング材料の更なる層を、再導入された粒子に塗布する前に、気相堆積反応器に再導入することを含む。
【0102】
本発明者らは、外部脱凝集後、コーティング材料の別個の層を塗布すると、可視及び識別可能な界面が生じることを見出した。これは、コーティングされた粒子を、本発明に従って分析することによって観察することができ、例えば、TEMによって、電子透過性の高い領域として観察される。この点で、界面間の層の厚さは、ALD反応器内で、及び個々の外部撹拌ステップ間で実行される各シリーズのサイクル数に直接対応する。
【0103】
ALDコーティングプロセスでは、コーティングが原子レベルで起こるため、そのような明確な物理的界面は、典型的には、観察することがより困難である。
【0104】
理論に制限されることなく、真空条件のALD反応器からコーティングされた粒子を取り出し、新しくコーティングされた表面を大気にさらすと、最も外側の原子層の緩和と再構築による構造の再編成がもたらされると考えられている。このようなプロセスは、表面の自由エネルギーを減少させる熱力学的傾向によって駆動される、表面(及び表面近く)の原子の再編成を伴うと考えられている。
【0105】
更に、種(例えば、空気中に常に存在する炭化水素)の表面吸着は、炭化水素で形成されたコーティングの反応、並びに大気中の酸素などによる表面修飾と同様に、この現象に寄与する可能性がある。したがって、そのような界面を化学的に分析すると、ALDなどのコーティングプロセスに由来しない微量の汚染物質又はコアの一部を形成する活性成分などのコア材料が含まれている可能性がある。
【0106】
反応器の内部又は外部で実施されるかどうかにかかわらず、粒子凝集体は、好ましくは、それらをふるいに通す強制手段によって分解され、したがって、凝集体を個々の粒子又は所望及び所定のサイズの凝集体に分離する(それによって、脱凝集を達成する)。後者に関して、場合によっては、個々の一次粒径が非常に小さい(すなわち、<1μm)ため、「完全な」脱凝集(すなわち、凝集体が個々の粒子に分解される)を達成することは不可能である。代わりに、脱凝集は、ふるいのメッシュのサイズによって決定されるように、より大きい凝集体を所望のサイズの二次粒子のより小さい凝集体に分解することによって達成される。次いで、より小さい凝集体を気相技術でコーティングして、小さい凝集体粒子の形態で完全にコーティングされた「粒子」を形成する。このように、「粒子」という用語は、本発明の文脈で脱凝集及びコーティングされた粒子を指す場合、個々の(一次)粒子及び所望のサイズの凝集(二次)粒子の両方を指す。
【0107】
いずれにせよ、所望の粒径(それが個々の粒子であろうと所望のサイズの凝集体であろうと)は、維持され、更に、ふるい分けによるそのような脱凝集後の粒子への気相コーティング機構の継続的な適用は、粒子上に完全なコーティングを形成し、したがって、完全にコーティングされた粒子(個々の又は所望のサイズの凝集体)が形成されることを意味する。
【0108】
上記の繰り返されるコーティング及び脱凝集プロセスは、反応器の内部又は外部で実施されるかどうかにかかわらず、少なくとも1回、好ましくは2回、より好ましくは3回、例えば4回、5回を含む、より具体的には6回、例えば、7回、及び約100回以下、例えば、約50回以下、例えば、約40回以下、約30回以下を含む、例えば、2~20回、例えば、3~15回、例えば、10回、例えば、9又は8回、より好ましくは6又は7回、特に、4又は5回実施され得る。
【0109】
反応器の内部又は外部で実施されるかどうかにかかわらず、少なくとも1つのふるい分けステップが実施されることが好ましく、更に、そのステップは、好ましくは、上記のような振動ふるい分けステップを含む。更に、最終的なふるい分けステップは、コーティング材料の最終的な層(一連のサイクル)の塗布の前に行われる振動的なふるい分けステップを含むことが好ましい。しかしながら、ふるい分けステップのうちの2つ以上(各々を含む)は、本明細書に記載される振動ふるい分け技術、ステップ、又はプロセスを含むことが更に好ましい。
【0110】
これらのステップの好ましい繰り返しは、任意の振動ふるい分け技術の改善されたスループットを更に有益にする。
【0111】
コーティングの総厚(全ての別個の層/コーティング/シェルを意味する)は、平均で約0.5nm~約2μmの範囲にある。
【0112】
各個々の層/コーティング/シェルの最小の厚さは、平均で約0.1nmの範囲にある(例えば、約0.5nm、例えば、約0.75nm、例えば1nm)。
【0113】
各個々の層/コーティング/シェルの最大の厚さは、コアのサイズ(最初は)、及びその後の以前に塗布されたコーティングを有するコアのサイズに依存することになり、そのコア、又は以前にコーティングが塗布されたコアの平均で平均直径(すなわち、重量、数、又は体積に基づく平均直径)の約100分の1になり得る。
【0114】
好ましくは、平均直径が約100nm~約1μmである粒子の場合、コーティングの総厚は、平均で約1nm~約5nmでなければならず、平均直径が約1μm~約20μmの粒子の場合、コーティングの厚さは、平均で約1nm~約10nmでなければならず、平均直径が約20μm~約700μmの粒子の場合、コーティングの厚さは、平均で約1nm~約100nmでなければならない。
【0115】
コーティング/シェルを塗布した後、超音波処理などの1つ以上の脱凝集ステップを実行すると、コーティングされた粒子が、より厚いコーティングを塗布した直後、本質的に、より緊密に「結合」又は「接着」されるため、層/コーティングにおいて摩耗、ピンホール、破損、間隙、亀裂、及び/又は空隙(以下「亀裂」)が生じることがわかった。これにより、脱凝集が起こると、生物学的に活性な成分(すなわち、アザシチジン/塩)を含むコアが元素にさらされる可能性がある。
【0116】
例えば、患者に投与する前に、懸濁液中に試料を提供することが意図される場合、コーティングにピンホール又は亀裂のない脱凝集した一次粒子を提供する必要がある。そのような亀裂により、投与直後の活性成分の血漿中濃度において、望ましくない初期ピーク(バースト)が生じる。
【0117】
本明細書に記載される脱凝集ステップのうちの1つ以上を実施することで、コーティング材料の最終層において、顕著に少ないピンホール、間隙、又は亀裂が生じ、その層/コーティングで完全に被覆されるだけでなく、医薬製剤化前及び/又は中に形成されたコーティング材料の層を破壊しない様式で、粒子が容易に(例えば、ボルテックスなどの非侵襲的な技術を使用して)脱凝集され得る様式で被覆される粒子が生じることを、我々は発見した。
【0118】
この点で、混合酸化物コーティングは、典型的には、活性成分を含む当該固体コアを完全に取り囲み、囲み、及び/又はカプセル化する。このようにして、関連する活性成分が可溶性である溶媒と薬物が直接接触することに起因する最初の薬物濃度バーストのリスクを最小限に抑える。これは、体液だけでなく、そのようなコーティングされた粒子が注射前に懸濁され得る任意の媒体も含み得る。
【0119】
したがって、本発明の更なる実施形態では、本明細書に開示されるような粒子が提供され、当該コアを取り囲み、囲み、及び/又はカプセル化する当該コーティングは、固体コアの表面の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約65%、例えば、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%、より具体的には、少なくとも約90%、例えば、少なくとも約91%、例えば、少なくとも約92%、例えば、少なくとも約93%、例えば、少なくとも約94%、例えば、少なくとも約95%、例えば、少なくとも約96%、例えば、少なくとも約97%、例えば、少なくとも約98%、例えば、少なくとも約99%、例えば、おおよそ若しくは約100%をカバーし、コーティングは、本質的に、当該コアを完全に取り囲み、囲み、及び/又はカプセル化する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「本質的に完全にコーティングして、当該コアを完全に取り囲み、囲み、及び/又はカプセル化する」という用語は、固体コアの表面の少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の被覆を意味する。
【0121】
あるいは、本明細書に記載のプロセスは、活性成分が制御されない方法で放出され得る当該亀裂が本質的に存在しない、脱凝集したコーティングされた粒子をもたらし得る。
【0122】
放出を制御するという点でその本質的な機能に影響を及ぼすことなく、いくつかの軽微な亀裂が当該コーティングに現れることがあるが、更なる実施形態では、粒子の少なくとも約90%が、当該コアを取り囲み、囲み、及び/又はカプセル化するコーティングに亀裂を示さない、本明細書に開示されるような粒子が提供される。一実施形態では、少なくとも約91%、例えば、少なくとも約92%、例えば、少なくとも約93%、例えば、少なくとも約94%、例えば、少なくとも約95%、例えば、少なくとも約96%、例えば、少なくとも約97%、例えば、少なくとも約98%、例えば、少なくとも約99%、例えば、おおよそ100%の粒子は、当該亀裂を示さない。
【0123】
あるいは、コーティングに「本質的に当該亀裂がない」とは、コーティングされた粒子の表面の約1%未満が、摩耗、ピンホール、破損、間隙、亀裂及び/又は空隙(それを通して活性成分が潜在的に(例えば、元素に)さらされる)を含むことを意味する。
【0124】
コーティング材料の層は、まとめて、粒子の表面積にわたって本質的に均一な厚さであり得る。「本質的に均一な」厚さはとは、本発明の組成物中に存在するコーティングされた粒子の少なくとも約10%、例えば、約25%、例えば、約50%であるコーティングの厚さの変動の程度が、TEMで測定した場合、平均の厚さの約±20%以下(±50%以下を含む)であることを意味する。
【0125】
本発明の製剤に採用される本質的な混合酸化物コーティングに加えて、別個の混合酸化物コーティングの間(例えば、別個の脱凝集ステップの間)、及び/又は本明細書中の混合酸化物コーティングが塗布されている間のいずれかに、薬学的に許容され、本質的に非毒性のコーティング材料であり得る他のコーティング材料も加えて塗布され得る。そのような材料は、層の特性を改変するために、当該混合酸化物の複数の層又は複合体、及び1つ以上の異なる無機若しくは有機材料を含み得る。
【0126】
追加のコーティング材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリチオ尿素、ポリエステル、又はポリイミンなどの有機材料又はポリマー材料を含み得る。追加のコーティング材料はまた、金属又は別の元素と、アルコール、カルボン酸、アミン、又はニトリルとの間の組み合わせである材料を含む、ハイブリッド材料(有機材料と無機材料との間のような)を含み得る。しかしながら、コーティング材料は、無機材料を含むことが好ましい。
【0127】
追加の無機コーティング材料は、酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、炭酸塩、他の三元化合物などのような金属及び/又はメタロイドの他の化合物を含み得る。金属、及びメタロイド、水酸化物、特に酸化物、特に金属酸化物が好ましい。
【0128】
加えて、言及され得る亜鉛、アルミニウム又はシリコン以外の元素の酸化物には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、貴金属、遷移金属、遷移後金属、ランタノイドなどが含まれる。言及され得る金属及びメタロイドには、チタン、マグネシウム、鉄、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル及び/又はランタン、より好ましくは、チタン、マグネシウム、鉄、ガリウム及び/又はジルコニウムが含まれる。
【0129】
したがって、言及され得る追加のコーティング材料には、二酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(FexOy、例えば、FeO及び/若しくはFe2O3及び/若しくはFe3O4)、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ランタン(La2O3)、並びに/又は二酸化ジルコニウム(ZrO2)を含むものが含まれる。
【0130】
本発明による複数の混合された酸化物でコーティングされた粒子は、塗布されたコーティングにおいて、本質的に前述の亀裂がなく、それを通して活性成分が潜在的に(例えば、元素に)露出されるが、それを更なる医薬製剤の処理に供する前に、2つの更なる任意選択的なステップが複数のコーティングされた粒子に適用され得る。
【0131】
第1の任意選択的なステップは、前述の最終的な脱凝集ステップの後に、最終的なオーバーコーティング層の塗布を含み得、その外側の「オーバーコーティング」層/コーティング、又は「シーリングシェル」(これらの用語は、本明細書において互換的に使用される)の厚さは、以前に塗布された別個の層/コーティング/シェル(又は「サブシェル」)よりも薄くなければならない。
【0132】
したがって、厚さは、最も広い以前に塗布されたサブシェルの厚さの平均で約0.7倍以下(例えば、約0.6倍)であり得る。代替的に、厚さは、塗布される最後のサブシェルの厚さの平均で約0.7倍以下(例えば、約0.6倍)であり得、かつ/又は以前に塗布された全てのサブシェルの平均の厚さの平均で約0.7倍以下(例えば、約0.6倍)であり得る。厚さは、最大約20μmの粒子の場合、平均で約0.3nm~約10nmの範囲であり得る。より大きい粒子の場合、厚さは、コーティングされた粒子の重量、数、又は体積に基づく平均直径の平均で約1/1000以下であり得る。
【0133】
シーリングシェルの役割は、粒子に「シーリング」オーバーコーティング層を提供し、それらの亀裂を覆うことであり、そのため、そのシーリングシェルで完全に覆われているだけでなく、医薬製剤化前及び/又は中に下に形成されたサブシェルを破壊しない様式で、粒子が容易に(例えば、ボルテックスなどの非侵襲的な技術を使用して)脱凝集され得る様式で覆われる粒子が生じる。
【0134】
本明細書に記載の理由から、シーリングシェルは、酸化亜鉛を含まないことが好ましい。一方、シールシェルは、二酸化シリコン、又はより好ましくは酸化アルミニウムを含み得る。
【0135】
第2の任意選択的なステップは、壊れた及び/又は亀裂の入ったシェル/コーティングを有する少数の残りの粒子を、全ての粒子が溶媒に懸濁される処理(アザシチジン又はその塩は、例えば、少なくとも約0.1mg/mLの溶解度で可溶性であるが、混合酸化物コーティングの最も溶解度の低い材料は、例えば、約0.1μg/mL以下の溶解度で不溶性である)処理に供し、続いて、例えば、遠心分離、沈降、凝集、及び/又は濾過によって、溶媒から固形物粒子を分離し、その結果、主にインタクトな粒子が残ることを確実にすることを含み得る。
【0136】
上記の任意選択的なステップは、前に考察されたように、活性成分の血漿中濃度における(おそらく)望ましくない初期ピーク(バースト)の可能性を更に潜在的に低減する手段を提供する。
【0137】
プロセスの最後に、コーティングされた粒子は、コアを乾燥させるための前述した技術のうちの1つ以上を使用して、乾燥させることができる。乾燥は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、糖又は糖アルコール)の不在下又は存在下で起こり得る。
【0138】
代替的に、プロセスの最後に、分離された粒子は、その後の保存及び/又は患者への投与のために、溶媒(例えば、水、本明細書で定義される1つ以上の薬学的に許容される賦形剤の存在の有無で)に再懸濁され得る。
【0139】
コーティング材料の第1の層を塗布する前に、又は順次のコーティングの間に、コア及び/又は部分的にコーティングされた粒子は、1つ以上の代替的及び/又は予備的な表面処理に供され得る。この点で、異なる材料(すなわち、無機材料以外)を含む1つ以上の中間層を、例えば、コーティングステップ/堆積処理中の前駆体との望ましくない反応からコア又は部分的にコーティングされた粒子を保護するため、コーティング効率を増強するため、又は凝集を低減するために、関連する表面に塗布することができる。
【0140】
中間層は、例えば、コーティングされる粒子の凝集を低減し、その後のコーティングに好適な親水性表面を提供する目的で、1つ以上の界面活性剤を含み得る。この点に関して、好適な界面活性剤としては、Tweenシリーズ(例えば、Tween80)などのよく知られた非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は双性イオン性の界面活性剤が挙げられる。代替的に、コアの一部として(又はコアとして)用いられる活性成分が、コーティング(例えば、ALD)プロセス中に気相に存在し得る1つ以上の前駆体化合物と反応しやすい場合、コアを、予備的な表面処理に供することができる。
【0141】
代替的に、この性質の「中間」層/表面処理の適用は、代替的に、液相非コーティング技術、続いて、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は他の乾燥方法によって達成されて、コーティング材料がその後塗布され得る表面層を、粒子に提供し得る。
【0142】
本発明の製剤の粒子の外面はまた、例えば、コーティング材料の最終層の外面に、1つ以上の化学化合物又は部分を付着させることよって、例えば、ナノ粒子が投与される患者内の粒子の標的化送達を増強する化学化合物又は部分を用いて、誘導体化又は官能化され得る。そのような化合物は、有機分子(例えば、PEG)ポリマー、抗体若しくは抗体断片、又は受容体結合タンパク質若しくはペプチドなどであり得る。
【0143】
あるいは、その部分は、シラン官能性を含む部分などのアンカリング基であり得る(例えば、Herrera et al,J.Mater.Chem.,18,3650(2008)及びUS8,097,742を参照されたい)。別の化合物(例えば所望の標的化化合物)は、共有結合若しくは非共有結合(水素結合若しくはファンデルワールス結合を含む)、又はそれらの組み合わせによって、かかるアンカリング基に結合され得る。
【0144】
かかる固定基の存在は、体内の特定の部位への標的化送達のための汎用性ツールを提供し得る。代替的に、PEGなどの化合物を使用すると、粒子が血流内でより長く循環し、肝臓又は脾臓に蓄積されないようにすることができる(身体が粒子を排除する自然な機構で、疾患組織への送達を防止する可能性がある)。
【0145】
混合酸化物コーティングでコーティングされたコアは、本明細書で定義されるように、別個の、個別の層、コーティング、又はシェルの形態であるかどうかにかかわらず、以下、「本発明の製剤のコーティングされた粒子」と称される。
【0146】
本発明の組成物の医薬(又は獣医用)製剤は、異なるタイプの粒子、例えば、異なる機能化(前述のように)を含む粒子、異なるサイズ、及び/若しくは異なる厚さの混合された酸化物コーティング材料の層の粒子、又はそれらの組み合わせを含み得る。単一の医薬製剤において、異なるコーティング厚さ及び/又は異なるコアサイズを有する粒子を組み合わせることにより、患者への投与後の薬物放出は、特定の期間にわたって制御(例えば、変動若しくは延長)され得る。
【0147】
本発明の製剤は、全身的に、例えば、注射又は注入によって、静脈内又は動脈内(血管内又は他の血管周囲のデバイス/剤形(例えば、ステント)によるものを含む)、筋肉内、骨内、脳内、脳室内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病巣内、頭蓋内、腫瘍内、皮膚、皮内、皮下、経皮的に、薬学的に(又は獣医学的)に許容される剤形の形態で、投与され得る。
【0148】
本発明の製剤の調製は、本明細書に記載のコーティングされた粒子を適切な薬学的に許容される水性担体システムに組み込むことを含み、意図する投与経路及び標準的な薬務を考慮して達成され得る。したがって、適切な賦形剤は、用いられる活性剤に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないことが必要である。そのような薬学的に許容される担体はまた、本発明の製剤の粒子からの活性剤(すなわち、アザシチジン/塩)の即時放出又は放出調節を付与し得る。
【0149】
本発明の製剤の粒子の無菌の水性懸濁液は、当該技術分野において既知の技術に従って製剤化され得る。水性媒体は、少なくとも約50%の水を含有すべきであるが、リンゲル溶液などの他の水性賦形剤を含み得、また、極性共溶媒(例えば、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、様々な分子量のポリエチレングリコール、及びテトラグリコール)、粘度増加剤、又は増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、グリコール酸デンプンナトリウム、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー407、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、及び様々な分子量のポリエチレングリコール)、均質懸濁を達成するための界面活性剤/湿潤剤(例えば、ソルビタンエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、モノグリセリド、ポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシルグリセリド、及び好ましくは、Tween(Polysorbate)、例えば、Tween80及びTween20)を含み得る。好ましい成分には、等張性修飾剤(例えば、乳酸ナトリウム、デキストロース、特に塩化ナトリウム)、pH調節剤及び/又は緩衝剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝剤、例えば、リン酸水素二ナトリウム水和物、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、及びこれらの組み合わせが含まれ、これらは、塩酸及び水酸化ナトリウムなどの標準的な無機酸及び塩基と組み合わせて採用され得る)、並びにマンニトール、クロスカルメロースナトリウム、及びヒアルロン酸などの他の成分が含まれる。
【0150】
本発明の製剤は、均一かつ注射液内で安定な(すなわち、沈降しない)懸濁液を形成することができ、かつ針を通して注射することができるサイズ分布を有するコーティングされた粒子の注射用懸濁液の形態で更に製剤化され得る。この点で、本発明の製剤は、本発明の製剤の早期ゲル化を防止し得る、及び/又は懸濁液が「均質」ではなくなり、したがって活性成分の過少又は過剰投薬のリスクが生じる沈降を防止するのに十分な粘性を有する不活性成分を含む水性媒体を含み得る。
【0151】
したがって、製剤は、通常の保管条件下で保管することができ、それらの物理的及び/又は化学的完全性を維持することができる。「物理的及び化学的完全性を維持する」という表現は、本質的に、化学的安定性及び物理的安定性を意味する。
【0152】
「化学的安定性」とは、本発明の製剤を、通常の保管条件下で、化学的分解(degradation)又は分解(decomposition)の程度がわずかなまま、(適切な医薬品包装の有無にかかわらず)保管することができることを含む。
【0153】
「物理的安定性」とは、本発明の製剤は、物理的変換(例えば、上記のような沈降)の程度がわずかなまま、又はコーティングされた粒子の性質及び/若しくは完全性の変化、例えば、コーティング自体若しくは活性成分の変化(溶解、溶媒和、固相相転移などを含む)がわずかなまま、通常の保管条件下で、(適切な医薬品包装の有無にかかわらず)保管され得ることを含む。
【0154】
本発明の製剤の「通常の保管条件」の例としては、長期間(すなわち、約12か月間以上、例えば、約6か月間)にわたる、約-50℃~約+80℃(好ましくは、約-25℃~約+75℃、例えば、約50℃)の温度、及び/又は約0.1~約2バールの圧力(好ましくは、大気圧)、及び/又は約460ルクスの紫外線/可視光への曝露、及び/又は約5~約95%(好ましくは、約10~約40%)の相対湿度が挙げられる。
【0155】
このような条件下では、本発明の製剤は、必要に応じて、約15%未満、より好ましくは約10%未満、とりわけ約5%未満が、化学的及び/又は物理的に劣化/分解されていることが見出され得る。当業者は、温度及び圧力の上記の上限及び下限が通常の保管条件の極値を表し、これらの極値の特定の組み合わせが通常の保管中に経験されないことを理解する(例えば、50℃の温度及び圧力0.1バール)。
【0156】
本発明の製剤は、コーティングされた粒子の約10重量%(約20重量%など、例えば、約50重量%)~約90重量%などの約1重量%~約99重量%を含み得、残りは、担体システム及び/又は他の薬学的に許容される賦形剤によって構成されている。
【0157】
注射に適切な本発明の組成物はまた、デポー製剤を形成するために外科的投与装置、例えば針、カテーテルなどを介して投与可能な液体、ゾル、又はゲルの形態の組成物を含み得る。
【0158】
いずれにしても、好適な製剤の調製は、日常的な技術を使用して当業者によって非進歩的に達成され得る。したがって、本発明の製剤及びそれを含む剤形は、医薬製剤の調製のために当該技術分野で使用される従来の医薬添加剤及び/又は賦形剤で製剤化され得、その後、標準的な技術を使用して様々な種類の医薬製剤及び/又は剤形に組み込まれ得る(例えば、Lachman et al.,‘The Theory and Practice of Industrial Pharmacy’,Lea & Febiger,3rd edition(1986)、‘Remington:The Science and Practice of Pharmacy’,Troy(ed.),University of the Sciences in Philadelphia,21st edition(2006)、及び/又は‘Aulton’s Pharmaceutics:The Design and Manufacture of Medicines’,Aulton and Taylor(eds.),Elsevier,4th edition,2013)、及びそこで言及されている文書を参照されたい。その全ての文書における関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0159】
本発明の更なる態様によれば、例えば本明細書に記載されるようなコーティングされた粒子を、例えば、本明細書に記載されるような水性担体システムと一緒に混合することを含む、本発明の製剤を調製するためのプロセスが提供される。
【0160】
皮下注射及び/又は筋肉内注射の場合、本発明の製剤は、デポー製剤を形成するために、外科的投与装置(例えば、注射用の針、カテーテルなどを備える注射器)を介して投与可能な無菌の注射用及び/又は注入用剤形の形態で提示され得る。
【0161】
更に、本発明の製剤を含む注射可能及び/又は注入可能な剤形が提供され、当該製剤は、注射若しくは注入手段(例えば、注射用の針、カテーテルなどを備える注射器)に接続され、かつ/又はそれに関連付けられるリザーバー内に含まれる。
【0162】
あるいは、本発明の製剤は、好適な注射可能及び/又は注入可能な投薬手段(例えば、注射用の針を備える注射器)に装填される前に保存され得るか、又はかかる投薬手段に装填される直前に調製され得る。
【0163】
したがって、無菌の注射用及び/又は注入用剤形は、本発明の製剤が予め装填されていてもよい注射又は注入手段と連通しているレセプタクル又はリザーバーを含んでいてもよいし、使用前の時点で装填されていてもよいし、本発明の製剤及び水性担体システムのコーティングされた粒子が別個に収容されており、注射又は注入の前及び/又は最中に混合が起こる1つ以上のリザーバーを含んでいてもよい。
【0164】
したがって、
(a)本発明の製剤のコーティングされた粒子と、
(b)本発明の製剤の担体システムと
を含む、キットオブパーツ、並びに本発明の製剤のコーティングされた粒子を、それらの粒子を本発明による担体システムと混合するエンドユーザーへの説明書とともに含むキットオブパーツが更に提供される。
【0165】
上記のように事前に装填された注射可能及び/又は注入可能な剤形が更に提供されるが、少なくとも2つのチャンバーを含むことによって改変され、その一方のチャンバー内に、本発明の製剤のコーティングされた粒子が配置され、他方のチャンバー内に、本発明の製剤の水性担体システムが配置され、混合することで、注射又は注入の前及び/又は最中に、懸濁液又はその他が生成される。
【0166】
本発明の製剤は、ヒト医学において使用され得る。本発明の製剤は、アザシチジンが使用が承認されているか、又はそうでなければ有用であることが知られている任意の適応症において特に有用である。特に、本発明の製剤は、MDSなどのがんの治療に有用である。
【0167】
「MDS」という用語は、骨髄中の未成熟血液細胞が非成熟であることを特徴とする任意のがん性状態を含むと理解され、これは、それらが健康な血液細胞にならないことを意味し、これは、疲労感、息切れ、出血、貧血、頻繁な感染、並びに赤血球数の減少、血小板数の減少、及び/又は白血球数の減少、並びに/又は骨髄又は血液中の芽球の割合の増加のうちの1つ以上の組み合わせによって、最初に症状的に明らかになり得る。
【0168】
「MDS」という用語はまた、異なるサブタイプを含み、これは、前述の血液細胞、血小板、及び/又は芽球数の評価によって医師によって定期的に決定され得る。したがって、この用語には、不応性貧血(RA)、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)、多系列異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)、多系列異形成及び環状鉄芽球を伴う不応性血球減少症(RCMD-RS)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)、移行期の芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB-T)、未分類型MDS(MDS-U)、及びisolated del(5q)に関連するMDSが含まれる。
【0169】
本発明の文脈では、MDSはまた、急性骨髄性白血病(AML)、並びに慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)などの白血病に発症及び/又は発症過程にある疾患として分類され得、これらは両方とも混合骨髄異形成/骨髄増殖性疾患として分類され得る。
【0170】
本発明の製剤は、上の状態のうちのいずれかの治療的、緩和的、及び/又は診断的な治療、並びに予防的治療(状態の悪化(deterioration)及び/又は悪化(worsening)を防止及び/又は抑止することを含む)において必要とされる。
【0171】
上記の状態のいずれかの治療において、アザシチジンを、関連する状態の治療に有用であることが知られている他の治療と組み合わせてもよい。これには、既知の抗がん薬、特にデシタビン、セダズリジン及び/又はレナリドマイドなどのMDS、AML、CMML及び/又はJMMLの治療に有用であることが知られている抗がん薬、並びに鉄、オールトランスレチノイン酸、同種造血幹細胞移植及び/又は血小板輸血などの非化学療法治療薬が含まれる。
【0172】
更に、以下に記載されるように、本発明の製剤の注入が軽度の炎症反応を引き起こし得ることを見出した。そのような応答は、注射に好適な抗炎症剤との同時投与によって緩和され得る。
【0173】
この点で用いられ得る適切な抗炎症剤としては、ブチルピラゾリジン(例えば、フェニルブタゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ケブゾン及びスキシブゾン)、酢酸誘導体及び関連物質(インドメタシン、スリンダック、トルメチン、ゾメピラック、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ブマジゾン、エトドラック、ロナゾラック、フェンチアザック、アセメタシン、ジフェンピラミド、オキサメタシン、プログルメタシン、ケトロラック、アセクロフェナク及びブフェキサマク)、オキシカム(例えば、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム及びメロキシカム)、プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ベノキサプロフェン、スプロフェン、ピルプロフェン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、イブプロキサム、デキシブプロフェン、フルノキサプロフェン、アルミノプロフェン、デクスケトプロフェン、ベダプロフェン、カルプロフェン及びテポキサリン)、フェナメート(例えば、メフェナミン酸、トルフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸及びフルニキシン)、コキシブ(例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、フィロコキシブ、ロベナコキシブ、マバコキシブ及びシミコキシブ)、他の非ステロイド性抗炎症剤(例えば、ナブメトン、ニフルミン酸、アザプロパゾン、グルコサミン、ベンジダミン、グルコサミノグリカンポリスルフェート、プロクアゾン、オルゴテイン、ニメスリド、フェプラゾン、ジアセレイン、モルニフルメート、テニダップ、オキサセプロール、コンドロイチン硫酸、ペントサンポリスルフェート及びアミノプロピオニトリル)、コルチコステロイド(例えば、11-デヒドロコルチコステロン、11-デオキシコルチコステロン、11-デオキシコルチゾール、11-ケトプロゲステロン、11β-ヒドロキシプレグネノロン、11β-ヒドロキシプロゲステロン、11β、17α、21-トリヒドロキシプレグネノロン、17α、21-ジヒドロキシプレグネノロン、17α-ヒドロキシプレグネノロン、17α-ヒドロキシプロゲステロン、18-ヒドロキシ-11-デオキシコルチコステロン、18-ヒドロキシコルチコステロン、18-ヒドロキシプロゲステロン、21-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾン、21-ヒドロキシプレグネノロン(プレベジオロン)、アルドステロン、コルチコステロン(17-デオキシコルチゾール)、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、コルチゾン、プレグネノロン、プロゲステロン、フルーゲストン(フルロゲストン)、フルオロメトロン、メドリゾン(ヒドロキシメチルプロゲステロン)、プレベジオロンアセテート(21-アセトキシプレグネノロン)、クロロプレドニゾン、クロプレドノール、ジフルプレドネート、フルドロコルチゾン、フルオシノロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ロテプレドノール、メチルプレドニゾロン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フルチカゾンフロエート、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール(ハロベタゾール)、アムシノニド、ブデソニド、シクレソニド、デフラザコルト、デソニド、ホルモコルタール フルクロロロンアセトニド(フルクロロニド)、フルドロキシコルチド(フルランドレノロン、フルランドレノリド)、フルニゾリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド及びトリアムシノロンアセトニド)、キノリン(例えば、オキシシンコフェン)金製剤(例えば、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーロチオ硫酸ナトリウム、オーラノフィン、アウロチオグルコース及びオーロチオプロール)、ペニシラミン及び類似の薬剤(例えば、ブシラミンなど)、並びに抗ヒスタミン薬(アクリバスチン、アリメマジン、アンタゾリン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、バミピン、ビラスチン、ブロムジフェンヒドラミン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、セチリジン、シンナリジン、シクリジン、シプロヘプタジン、デプトロピン、デスロラタジン、デクスブロムフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、ジエニルピラリン、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、ドキシラミン、エバスチン、エピナスチン、フェニンダミン、フェニラミン、フェキソフェナジン、ヒスタピロジン、ヒドロキシエチルプロメタジン、イソチペンジル、カルビノキサミン、ケトチフェン、キフェナジン、クレマスチン、クロルシクリジン、クロルフェナミン、クロルフェノキサミン、クロロピラミン、レボセチリジン、ロラタジン、メブヒドロリン、メキタジン、メクロジン、メピラミン、メタピリレン、メトジラジン、ミゾラスチン、オキサトミド、オキソメマジン、ピメチキセン、プロメタジン、ピロブタミン、ルパタジン、セキフェナジン、タラスチン、テナリジン、テルフェナジン、チアジナム、チエチルペラジン、トンジルアミン、トリメトベンザミド、トリペレナミン、トリプロリジン及びトリトクバリン)が挙げられる。前述した抗炎症剤のうちのいずれか1つ以上の組み合わせが使用され得る。
【0174】
好ましい抗炎症剤としては、ジクロフェナク、ケトプロフェン、メロキシカム、アセクロフェナク、フルルビプロフェン、パレコキシブ、ケトララックトロメタミン、又はインドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬が挙げられる。
【0175】
対象は、本発明の製剤とは別個の、前述の共治療薬及び/又は抗炎症剤のうちの1つ以上を受容してもよく(又は既に受容してもよい)、これは、本発明の製剤による治療の前に、それに加えて、及び/又はそれに続いて、これらの他の治療剤のうちの1つ以上を所定の用量で受容することを意味する。
【0176】
アザシチジン/その塩をそのような他の治療剤と「併用する」場合、活性成分は、同じ製剤で一緒に投与されてもよく、又は異なる製剤で別個に(同時に又は連続して)投与されてもよい(以下、「併用製品」と称される)。
【0177】
そのような併用製品は、他の治療剤と併せたアザシチジンの投与を提供し、したがって、それらの製剤のうちの少なくとも1つが、本発明の製剤であり、少なくとも1つが別個の製剤中の他の治療剤を含む、別個の製剤として提示され得るか、又は組み合わせ調製物として提示(すなわち、製剤化)され得る(すなわち、アザシチジン/塩及び他の治療剤を含む単一製剤として提示され得る)。
【0178】
この点で、他の治療剤は、前述の本発明の製剤の一部を形成するコアのうちの1つ以上において、適切な用量でアザシチジンとともに提示されてもよく、又はアザシチジンについての前述のものとコーティングのための同じ又は類似のプロセスを使用して製剤化されてもよく、これは、同じ時間スケールにわたって、又は異なる時間スケールにわたって、他の治療剤の放出を可能にし得る。
【0179】
したがって、本明細書で定義されるMDSなどのがんの治療に有用な治療剤、及び/又は抗炎症剤を更に含む、本発明の医薬製剤が更に提供される。
【0180】
本発明のそのような製剤においては、更なる治療剤は、
(1)本発明の製剤(この製剤は、以下、「併用コア調製物」と称される)の固体コア内で、生物活性剤とともに製剤化することと、
(2)それを、本発明の製剤(この製剤は、以下、「併用調製物」と称される)の水性担体システム内に溶解させること、及び/又は懸濁させることと
によって含まれ得る。
【0181】
上記の実施形態(2)では、他の治療剤は、アザシチジン含有コアとは別個の任意の形態で、本発明の製剤中に提示され得る。これは、例えば、その活性成分を本発明の製剤の水性媒体中に直接溶解又は懸濁させることによって、又はその放出がまた、アザシチジンと同様に、注射後に制御され得る形態でそれを提示することによって達成され得る。
【0182】
後者の選択は、例えば、本発明の製剤の水性担体システムに懸濁された追加の粒子の形態の他の治療剤を提供することによって達成され得、この追加の粒子は、10nm~約700μmの量である、重量、数、又は体積に基づく平均直径を有し、本明細書で定義されるMDSのような、がんの治療に有用な治療剤、及び/又は抗炎症剤を含むコアを含み、このコアは、少なくとも部分的に、上述の1つ以上のコーティング材料によってコーティングされる(この製剤は、以下、「併用懸濁液」と称される)。
【0183】
更に、以下の成分を含むキットオブパーツの形態である、本発明の医薬製剤が提供される:
(A)本発明の医薬製剤と、
(B)本明細書で定義されるMDSなどのがんの治療に有用な治療剤、及び/又は抗炎症剤を含む医薬製剤、
これら成分(A)及び(B)が、各々、他方と併せて投与するのに好適である形態で提供される。
【0184】
上記の提示されたキットオブパーツの成分(B)は、その化学組成及び/又は物理的形態が成分(A)(すなわち、本発明の製剤)と異なる場合があるが、それはまた、本質的に本発明の生物学的活性剤含有製剤と同一又は少なくとも類似する形態、すなわち(例えば、水性)担体システムに懸濁された複数の粒子の形態である形態であってもよく、上記粒子は、
(a)10nm~約700μmの量である、重量、数、又は体積に基づく平均直径を有し、
(b)他の治療剤を含む固体コアを含み、そのコアは、少なくとも部分的に、(例えば、無機)材料のうちの1つ以上のコーティングによってコーティングされる。
【0185】
加えて、そのような好ましいキットオブパーツ、及び上記の実施形態(2)の下に提示される併用懸濁液では、他の治療剤を含むコーティングされたコアは、それらの化学組成及び/又は物理的形態の点で異なる場合があるが、用いられる無機材料のコーティングは、本発明のアザシチジン含有製剤で用いられるコーティングと同一又は類似であることが好ましく、これは、他の治療剤が、本明細書に記載されるような1つ以上の無機コーティング、例えば、1つ以上の金属含有又はメタロイド含有化合物、例えば、金属、又はメタロイド、酸化物、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、硫化亜鉛、より好ましくは、酸化亜鉛、二酸化シリコン及び/又は酸化アルミニウムを含む1つ以上の無機コーティング材料によってコーティングされることを意味し、このコーティング材料は、そのような酸化物の(個別又は集合ベースで)本質的に(例えば、約80%超、例えば、約90%、例えば、約95%、例えば、約98%)を構成し得、より具体的には、無機コーティングは、以下:
(i)酸化亜鉛と、
(ii)1つ以上の他の金属及び/又はメタロイド酸化物と
の混合物を含む。原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:6と、最大で約6:1との間である。
【0186】
好ましくは、原子比((i):(ii))が、少なくとも約1:1と、最大で約6:1との間である。
【0187】
いずれにせよ、疑義を避けるために、本明細書で開示されている、及び/又は特許請求されている、本発明のアザシチジン含有製剤の、好ましい態様を含む全ての態様は、上記の更なる治療剤のうちの1つ以上を含むコーティングされたコアの態様及び/又は好みとして等しく適用可能である。疑義を避けるために、そのような態様、好み及び特徴は、単独で又は組み合わせて、本発明のこれらの態様を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0188】
したがって、上記の併用コア調製物、併用懸濁液及びキットオブパーツを含む全ての併用製品は、ヒト医学、特に、アザシチジンが使用が承認されているか、又はそうでなければ、本明細書で定義されるがん及びMDSなどにおいて、有用であることが知られている任意の適応症で使用され得る。
【0189】
特定の事例では、例えば、MDSの治療に有用であるもののいくつかを含む、そのような追加の治療剤は、特定の状態に関連して「標準的なケア」と称され得る。「標準的なケア」という用語は、当業者によって、臨床医が特定のタイプの患者、疾患、及び/又は臨床状況に対して従うべき、及び/又は従うことが期待される治療プロセスを含むように理解される。特定の新しい、又はあまり理解されていない状態では、標準的なケアは、時間の経過とともに変化及び/又は発展する可能性がある。
【0190】
本発明の更なる態様によれば、上記に定義されるキットオブパーツを作製する方法が提供され、この方法は、上記に定義されるように、成分(A)を上記に定義されるように成分(B)と関連付けることを含み、したがって、2つの成分を互いに併用して投与するのに好適なものにする。
【0191】
2つの成分を互いに「関連付ける」ことによって、キットの成分(A)及び(B)は、
(i)別個の製剤として(すなわち、互いに独立して)提供され得、その後、併用療法において互いに併せて使用するために一緒にされるか、又は
(ii)併用療法において互いに併せて使用するための「併用パック」の別個の成分として一緒に包装及び提示され得ることを含む。
【0192】
したがって、成分(A)及び(B)が、併用療法で互いに併用するために、併用パックの別個の成分として一緒に包装及び提示される、本明細書で定義されるキットオブパーツ、並びに
(I)本明細書に定義される成分(A)及び(B)のうちの一方と、
(II)成分を2つの成分のうちの他方と併せて使用するための指示書と
を含むキットオブパーツが更に提供される。
【0193】
前述のとおり、本明細書に記載のキットオブパーツは、適切な量/用量のアザシチジン/塩を含む2つ以上の製剤、及び/又は前述のように、反復投与を提供するために、適切な量/用量の他の治療剤を含む2つ以上の製剤を含み得る。
【0194】
この点で、本明細書に記載のキットオブパーツに関して、「~と併せた投与」は、キットの成分(A)及び(B)が、状態の治療の過程にわたって、連続的に、別個に、及び/又は同時に投与されることを含む。
【0195】
したがって、「~と併せて」という用語は、2つの製剤のうちの一方又は他方が(任意選択的に反復して)、他の成分の投与前、投与後、及び/又は同時に投与され得ることを含む。この文脈で使用される場合、「同時投与される」及び「~と同時に投与される」という用語は、アザシチジン/塩及び他の治療剤の個々の用量が、互いの48時間(例えば、24時間)以内に投与されることを含む。
【0196】
本発明による上記の併用製品のいずれかに関して、それぞれの製剤は、アザシチジン/塩単独を含む製剤(例えば、本発明の製剤)が、他の成分の不在下で、同じ治療過程にわたって投与される場合(例えば、本明細書に記載されるように反復して)よりも、状態の治療過程にわたって、対象にとって有益な効果を可能にし得る様式、すなわちよりも大きい様式で、投与される(又は、キットオブパーツの場合、2つの成分は、任意選択的に反復して、互いに併せて投与される)。
【0197】
併用製品が、治療に関して、及び治療過程にわたって、より大きな有益な効果を提供するかどうかの決定は、治療される状態及び/又はその重症度に依存するが、当業者によって慣習的に達成され得る。
【0198】
例えば、医師は、MDSを有する患者を治療するために単独で含む本発明の製剤を最初に投与し、次いで、その人が炎症反応(これは、活性成分自体及び/又は製剤の任意の他の成分によって引き起こされ得る)を示すことを見出し得る。
【0199】
次いで、医師は、以下のうちの1つ以上を投与し得る:
●上記のようなキットオブパーツの成分(B)、
●併用コア調製物、
●併用調製物、及び/又は
●併用懸濁液
上記のように、そのいずれかが、前述したように抗炎症剤を含む。
【0200】
本発明による併用製品に使用され用いられ得る上記の他の活性成分/治療剤は、(例えば、薬学的に許容される)塩の形態で提供され得、これには、当技術分野で既知であり、医学文献、例えば、Martindale-The Complete Drug Reference,38th Edition,Pharmaceutical Press,London(2014)及びそこで言及されている文書(その全ての文書における関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に問題の薬物について記載されている任意のそのような塩が含まれる。
【0201】
本発明による併用製品に用いられ得る他の活性成分/治療剤の量は、その薬理学的効果を発揮するのに十分でなければならない。
【0202】
したがって、患者に投与され得るそのような他の活性成分の用量は、合理的及び/又は関連する時間枠にわたって治療反応に影響を与えるのに十分でなければならない。当業者は、正確な用量及び組成並びに最も好適な送達レジメンの選択が、他の治療剤の性質だけでなく、とりわけ製剤の薬理学的特性、投与経路、治療される状態の性質及び重症度、レシピエントの体調及び知的鋭敏性、並びに治療される患者の年齢、状態、体重、性別、及び反応、疾患の病期/重症度、並びに患者間の遺伝的差異によっても影響されることを認識している。
【0203】
本発明の製剤の投与は、連続的又は断続的であり得るので(例えば、ボーラス注入によって)、そのような他の活性成分の投与量はまた、投与のタイミング及び頻度によって決定され得る。
【0204】
いずれにしても、医師又は他の当業者は、個々の患者に最も好適な任意の特定の追加の活性成分の実際の投与量を日常的に決定することができ、上記の関連する追加の活性成分の投与量には、当技術分野で知られており、医学文献(Martindale-The Complete Drug Reference,38th Edition,Pharmaceutical Press,London(2014)及びその中で言及されている文書)に問題のある薬物について記載されているものが含まれる。これらの文書の全てにおける関連ある開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0205】
本発明の製剤の使用は、前述のように任意のバースト効果(例えば、投与直後の濃度最大値)を低減することによって、及び/又は血漿中濃度-時間プロファイルにおけるCmaxを低下させることによって、アザシチジンの溶解速度を制御し、薬物動態プロファイルに影響を与えることができる。
【0206】
本発明の製剤はまた、製剤からのアザシチジンの放出の長さを増加させる放出及び/又は薬物動態プロファイルを提供し得る。
【0207】
これらの要因は、製剤がMDS罹患者に投与される必要がある頻度又はそれ以上の頻度を減少させるだけでなく、罹患者に外来患者としてより多くの時間を与え、したがって生活の質を向上させる。
【0208】
本発明の製剤はまた、長期間にわたって安定した速度で有効成分の放出を制御することによって、例えば、細胞毒性のある薬物への低い毎日の曝露が提供され、それが望ましくない副作用を減少させることが期待されるという利点を有する。
【0209】
本明細書に記載の製剤及びプロセスは、関連する状態の治療において、医師及び/又は患者にとって、先行技術において知られたいかなる類似の治療よりも便利であり、より効果的であり、より毒性が低く、より広い範囲の活性を有し、より強力であり、より少ない副作用をもたらし、他の有用な薬理学的特性を有し得るという利点を有し得る。
【0210】
本明細書で「約」という言葉が用いられる場合はいつでも、例えば、量(例えば、数、濃度、寸法(サイズ及び/若しくは重量)、用量、期間、薬物動態パラメータなど)、相対量(百分率、重量比、サイズ比、原子比、アスペクト比、割合、倍数又は分率など)、相対湿度、ルクス、温度又は圧力の文脈では、そのような変数は、概算であり、したがって、本明細書で指定された数値から±15%、例えば±10%、例えば±5%、好ましくは±2%(例えば±1%)変動し得ることが理解されるであろう。これは、そもそもそのような数値がパーセンテージで表されている場合でも当てはまる(例えば、「約15%」は、数値10の±15%を意味し得、これは8.5%~11.5%のいずれでもある)。
【0211】
本発明は、以下の添付の図を参照して、以下の実施例により示されるが、決して限定されない。
図1及び
図2は、以下に記載されるように調製された様々なラットへの皮下投与後の、異なる期間にわたるアザシチジンの用量正規化された血漿中濃度を示す。
図3及び
図4は、以下の実施例10に記載されるような臨床試験における処置プロトコールに従ってアザシチジンを投与された2人の患者の血漿中濃度-時間プロファイルを示す。
図5は、本発明の製剤の皮下投与後のミニブタに対するアザシチジンの血漿中濃度-時間プロファイルを示す。
図6は、抗炎症剤であるインドメタシンを含む混合された酸化物でコーティングされた微粒子とともに、本発明の皮下併用投与製剤の腫脹のサイズの観点から、局所炎症応答に対する正の影響を示す。
【実施例】
【0212】
実施例1
混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン微粒子I
アザシチジン(MSN Labs,India)の微粒子の試料をジェットミリングによって調製した。レーザー回折によって決定された粒径分布は、以下のとおりであった。D102.9μm、D507.9μm、D9023.2μm。
【0213】
粉末は、ALD反応器(Picosun,SUNALE(商標)R-series,Espoo,Finland)に装填され、50℃の反応器温度で24回のALDサイクルが実行された。コーティングシーケンスは、3つのALDサイクルの前駆体としてジエチル亜鉛と水を用いた3つのALDサイクル、続いてトリメチルアルミニウムと水の1つのサイクルを6回繰り返し、亜鉛:アルミニウムの原子比が3:1の混合酸化物層を形成した。第1の層の厚さは、約4~約8nmであった(ALDサイクル数から推定)。
【0214】
粉末を反応器から取り出し、音波シフターを使用して、粉末をメッシュサイズが20μmのポリマーふるいに通すことによって、脱凝集させた。
【0215】
得られた脱凝集した粉末を、ALD反応器に再装填し、前述の比で、混合酸化物の第2の層を形成する前と同様に、更に24回のALDサイクルを実施し、反応器から抽出し、上記のように音波ふるい分け手段によって脱凝集させ、再装填して第3の層を形成し、脱凝集させ、次いで再装填して最後の第4の層を形成した。
【0216】
薬物負荷(すなわち、粉末中のアザシチジンのw/w%)を決定するために、4.6×250mm、3μm粒子、C18カラム(Luna,Phenomenex,USA))を使用して、223nmに設定されたダイオードアレイ検出器(Shimadzu,Japan)を備えたHPLC(Prominence-i(Shimadzu,Japan))を用いた。ナノシェルコーティングを、DMSO中の5Mのリン酸に溶解し、次いで、スラリーをDMSOで希釈してから、濾過し(0.2μm RC,Lab Logistics Group,Germany)、HPLCで更に分析した(n=2)。薬物負荷は、88.9%と決定された。
【0217】
実施例2
混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン微粒子II
実施例1に記載のものと同じ手順を実施して、2:1の亜鉛:アルミニウムの原子比を含む混合酸化物コーティングでコーティングされた微粒子を製造した。
【0218】
コーティングシーケンスは、ジエチル亜鉛及び水を前駆体として用いた2つのALDサイクル、続いてトリメチルアルミニウム及び水の1サイクル、反応器からコーティングされた粉末の繰り返し10回の除去、脱凝集、再装填及び同じコーティングシーケンスの繰り返し、除去、合計4セットの30サイクルが提供されるまでの脱凝集であった。
【0219】
薬物負荷は、86.6%と決定された。
【0220】
実施例3
混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン微粒子III
実施例1に記載のものと同じ手順を実施したが、今回は、24のALDサイクルの6セットを実施することによって、3:1の亜鉛:アルミニウムの原子比を含むより厚い混合酸化物コーティングを製造した。
【0221】
薬物負荷は、80.7%と決定された。
【0222】
比較実施例4
酸化アルミニウムでコーティングされたアザシチジン微粒子
実施例1に記載のように、混合酸化物コーティングでコーティングされた同じ微粒子は、純粋なアルミニウム酸化物コーティングでコーティングされた。7回のALDサイクルは、実施例1に記載のように、コーティングされた粉末を反応器から除去し、脱凝集させる前に実施された。得られた脱凝集した粉末を、ALD反応器に再装填し、更に7回のALDサイクルに供し、続いて、抽出、脱凝集、及び7サイクルの再装填を、その後2回繰り返し、続いて、再装填し、2回の14サイクルに供した。
【0223】
薬物負荷は、91.8%と決定された。
【0224】
比較実施例5
ビヒクル中のアザシチジン微粒子の懸濁液
実施例1に記載の酸化物コーティングでコーティングされる同じ微粒子は、10mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム(pH7.4)の滅菌、等張、リン酸緩衝溶液を含む、馬などの動物の注射に使用される獣医用医薬品である市販の水性ビヒクル、Hyonate(登録商標)vetに懸濁された。
【0225】
製剤中のアザシチジンの濃度は10mg/mLであり、これはSprague-Dawleyラットの5mg/kg体重に一致する。
【0226】
比較実施例6
ビヒクル中の酸化アルミニウムでコーティングされたアザシチジン微粒子の懸濁液
比較例4のコーティングされた微粒子を、市販の水性ビヒクルHyonate(登録商標)vetに、27mg/mLの製剤中のアザシチジンの濃度まで懸濁した。これは、Sprague-Dawleyラットの13.5mg/kg体重に相当する。
【0227】
実施例7
本発明の製剤I
アザシチジンのコーティングされた微粒子の3つの懸濁液(上記の実施例1、2、及び3に記載のプロセスに従って調製した)をHyonate vetに懸濁した。
【0228】
アザシチジンのコーティングされた微粒子の更なる懸濁液(上記の実施例3に記載のプロセスに従って調製された)を、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中の0.1%(w/w)のPolysorbate20、025%(w/w)、カルボキシルメチルセルロースナトリウムを含む水性ビヒクルに懸濁させた。
【0229】
各場合において、製剤中のアザシチジンの濃度は27mg/mLであり、これはSprague-Dawleyラットの13.5mg/kg体重に一致する。
【0230】
実施例8
インビボのラット試験
投与日に体重が266~302gの雄Sprague Dawleyラット38匹をCharles River(UK)から提供された。動物は、群ごとに6匹の動物にランダムに分けられた。
【0231】
意図した投与領域の毛を注射前に刈り取り、注射部位に印を付けた。比較例5(群1)、比較例6(群2)、及び実施例7(以下の表1で特定される群3~6)に記載の懸濁液を1mLのBD注射器に吸い込み、20G針(BDマイクロランス)を通して各ラットの脇腹に単回皮下注射(約0.15mL)を投与した。投与は、製剤の調製後10分以内に行われた。
【表1】
【0232】
血液試料(約0.2mL)は、次の時点で、尾静脈から5μLのTHU(25μL/mLの血液;テトラヒドロウリジン、これは競合的シチジンデアミナーゼ阻害剤である)安定化剤(1mg/mLの水溶液)を含有するK2EDTA(エチレンジアミン四酢酸二カリウム)チューブに採取された:投与後0.5、1、3、6、12、24、48、72、120、168、240、及び336時間。実際のサンプリング時間が記録された。血液試料採取後、実質的に可能な限り早く、血漿を遠心分離(1500g、4℃で10分間)によって分離し、分析が行われるまで-80℃で保管した。
【0233】
試験完了後、全ての血漿試料は、ドライアイス上で深く凍結された分析のために出荷された。試験の最終日に動物を屠殺した。
【0234】
アザシチジンの血漿中濃度をLC-MS/MSで決定した。試験試料は、TECAN Genesis液体ハンドリングロボットを使用して、ラット血漿25μLを96ウェルプレートにピペッティングし、アセトニトリル中に25μLの5%DMF及び75μLの内部標準作業溶液を添加することによって調製した。次いで、96ウェルプレートを15分間振盪させ、遠心分離した。次いで、全ての試料を、UPLC-MS/MSシステム上に注入した。ACQUITY BEHアミドカラム、2.5μm、2.1×100mm、25℃のWatersで、移動相A(MP A)として0.125μMの酢酸Li、及び移動相B(MP B)としてアセトニトリルを含む水中で10mMのギ酸アンモニウムpH3.4を使用して分離を得た。
【0235】
血漿中のアザシチジンの薬物動態分析は、Microsoft Excel for Mac(16.43,Microsoft,Redmond,Washington,USA)を使用して、標準的な非コンパートメントアプローチに従って行われた。最大濃度、Cmax、及び関連する時間、tmaxは、時間コースの最高濃度の座標になった。tlastは、最後に検出可能な濃度の時間になった。最後に検出可能な濃度(AUClast)までの濃度対時間曲線下の面積は、線形台形規則を使用して計算された。
【0236】
各動物の投与部位を投与後にマークし、試験中に無毛に保った。投与部位の観察は、投与後24、120、168、及び336時間に実施した。
【0237】
結果
様々な製剤の単回皮下投与後の2週間にわたるアザシチジンの用量正規化された血漿中濃度を
図1に示し、
図2は、最初の6時間にわたる同じ血漿中濃度プロファイルを示す。血漿薬物動態パラメータも、以下の表2において、6匹のラットの群の平均値として提示される(括弧内に標準偏差が示されている)。
●用量はラットのmg/kg体重で表される。
●「t
max」は、時間単位で表される濃度のピークまでの時間である。
●「C
max」は、μg/mLで表される分析で見出される最大濃度である。
●「t
last」は、時間単位で表される最後に検出可能な濃度の時間である。
●「t
1/2,z」は、時間単位で表される終末相半減期である。
●「AUC
∞」は、μg*h/mLで表される無限時間までの濃度対時間曲線下の面積である。
●「F」は、パーセンテージで表される相対的な生物学的利用能である。
●「C
max/D」は、ラットのμg/mL/mg/kg体重で表される1mg/kgに正規化された最大濃度である。
●「AUC
last/D」は、ラットのμg*h/mL/mg/kg体重で表される1mg/kgに正規化された最後の検出可能な濃度までの血中濃度対時間曲線下の面積である。
●「AUC
∞/D」は、ラットのμg*h/mL/mg/kg体重で表される、1mg/kgに正規化された無限時間までの濃度対時間曲線下の面積である。
●「Fr.Rel.
0-12h」は、パーセンテージとして表される無限の時間までの濃度対時間曲線下の面積の最初の12時間に放出される分率である。
【表2】
【0238】
血漿中濃度のプロファイルは、群3~6で同等であり、最初の1時間以内に最大血漿中濃度(Cmax)に達し、その後、14日間の研究期間にわたって濃度が緩慢であるが着実に減少したことがわかる。
【0239】
群2は、混合酸化物コーティング製剤と比較して、より高い初期薬物放出を有した。
【0240】
群5と群6を比較すると、PBSベースのビヒクルは、Hyonate vetを使用した場合と比較してわずかに低いAUCをもたらしたが、それぞれの薬物動態プロファイルは大部分比較可能であったことがわかる。
【0241】
群2~6はまた、より低いF値を示す酸化亜鉛でコーティングされたアザシチジンの水性懸濁液に関する我々の以前の研究とはまったく対照的に、コーティングされていないアザシチジンと同等であった相対的な生物学的利用能(F)を示した。
【0242】
Cmaxは、コーティングされていないアザシチジン(群1)と比較して、群2~6で低く、用量の約5分の1が初日に放出された。用量について正規化すると、差は約1桁である。また、最後のサンプリング時間(投与後336時間)後の残存面積(未放出薬物と相関する)は、12%未満であった。
【0243】
群2の結果は、初日に放出された用量のより大きな分率、より高いCmax、及びより短い期間を特徴とするわずかに異なるプロファイルを示した。
【0244】
まとめると、群3~6は、コーティングされていないアザシチジンの投与後の急速な低下とは異なる、持続放出プロファイルを示した。同様に、本発明の全ての製剤について有利な血漿中濃度-時間プロファイルが観察された。
【0245】
実施例9
混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン微粒子IV
アザシチジンの微粒子が、以下のような粒径分布を有していたことを除いて、実施例1に記載のものと同じ手順を実施した。D101.2μm、D503.8μm、D9011.3μm。薬物負荷は、81.3%と決定された。
【0246】
実施例10
第1a相臨床試験:
Hyonate vet(Boehringer Ingelheim Animal Health;ヒアルロン酸ナトリウム(10mg/mL)、塩化ナトリウム(8.5mg/mL)、リン酸二ナトリウム(0.223mg/mL)、リン酸一水素二ナトリウム(40μg/mL)、HCl及びNaOHを含む、pH調整のための水溶液)に懸濁され、かつアザシチジンによる治療を既に受けている患者において、中間体2以上のリスクのMDS、CMML、又はAMLの治療のための皮下注射として投与された、上記実施例9のコーティングされたアザシチジン微粒子の薬物動態、忍容性、及び安全性を評価するためのオープンパイロット第Ia相臨床試験を実施した。
【0247】
AUC0-24h、AUC0-last、AUC0-∞)、Cmax、Clast、終末t1/2、分布体積Vd及びクリアランスを含む薬物動態パラメータを測定した。
【0248】
局所耐性は、注射部位の検査によって測定した。疼痛、圧痛性紅斑/発赤、及び硬化/腫脹は、4段階の尺度で評価し、1は軽度とみなされ、4は潜在的に生命を脅かすとみなされる。
【0249】
これは、スクリーニングフェーズ、治療フェーズ、中間解析、及びフォローアップフェーズからなる6人の患者を試験に含めることを意図していた。
【0250】
包含基準には以下が含まれる:
●試験固有の手順の前に書面によるインフォームドコンセント。
●18歳以上の患者
●スクリーニング時のボディマス指数(BMI)≧19かつ≦32kg/m2のBSA
●診断のための少なくとも6サイクルの治療サイクル当たり100mg/m2のBSA×5又は×4に対応するアザシチジンによる、現在の治療:
a.国際予後スコアリングシステム(IPSS)による中間体2及び高リスク骨髄異形成症候群(MDS)
b.10~29%の骨髄芽球を有する慢性骨髄単球性白血病(CMML)
c.世界保健機関(WHO)分類による急性骨髄性白血病(AML)
●米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)パフォーマンスステータス0、1、又は2
●スクリーニング来院前の最後のアザシチジン治療サイクルの開始時の臨床診療による血液学の回復及び臨床化学的評価
●出産の可能性のない女性被験者(記録された卵管結紮又は子宮摘出術又は両側卵巣摘出術を有する閉経前の女性、又は12か月の無月経として定義される閉経後の女性として定義される)
●男性患者は、適切な避妊法を使用することに同意した
●試験手順、来院スケジュール、試験の制限、及び要件に従う意思と能力
【0251】
除外基準には以下が含まれる:
●患者が、スクリーニング前の30日以内(又はスクリーニング前の試験薬の半減期が5回のうち、いずれか長い方)に試験薬を含む他の試験/介入試験に参加していること
●過去5年以内の悪性疾患の診断(合併症のない皮膚の基底細胞がん、子宮頚部又は乳房の上皮内がん、又は高い治癒確率で切除又は照射された他の局所悪性腫瘍を除く)
●患者が研究に参加することを妨げる重大な病状、検査異常、又は精神疾患
●過去12か月以内のアルコール乱用又は薬物乱用歴
●検査異常の存在を含む、患者が試験に参加した場合に容認できないリスクにさらされる状態
●試験責任医師が判断した参加不適合のその他の理由。
【0252】
試験における患者の持続時間は、約2~3か月であることが意図された。この時間枠は、3~4週間のスクリーニング期間、続いて、1日目~4日目まで、コーティングされていないアザシチジン(Vidaza(登録商標)又はアザシチジンのジェネリック医薬品(Mylan)、注射用水に懸濁した注射用凍結乾燥粉末)、両方とも100mg/m2のBSA、25mg/mLの毎日の注射を含む、治療段階の約4週間で構成された。
【0253】
試料は、4日目(試験薬の開始前)に薬物動態分析のために採取した。平均最大血漿中濃度(Cmax)は562ng/mLであり、0.433時間のtmax後に生じた。平均半減期は6.82時間であった。平均AUCinfは、1120ng h/mLであった。
【0254】
5日目に、上記の試験薬懸濁液の単回投与(100mg/m2BSA、100mg/mL)を行った。試料を、5日目~8日目、次いで10日目、12日目、15日目、17日目及び19日目の各日に、薬物動態分析のために採取した。
【0255】
また、試験段階の後、最後のアザシチジン用量を単回用量のアザシチジン比較薬(上記のように)に置き換え、同日にフォローアップ来院を予定することが意図された。
【0256】
しかし、登録された2人の患者が段階に供された後、安全性データのレビューを担当した内部安全性委員会の会議の後、研究は保留された。
【0257】
注射部位で中等度に分類される硬化及び炎症(発赤及び軽度の疼痛)が両方の患者に示されたことに留意した。これ以上の患者を試験に登録せず、2人の患者からの生検結果の追加の専門家レビュー/分析を要請することが決定された。
【0258】
それにもかかわらず、試験薬の投与後の2人の患者の血漿中濃度時間曲線は、それぞれ
図3及び
図4に示され、注射された試験薬製剤からのアザシチジンの明確な定常状態の持続放出を示す。血漿中濃度時間曲線は、半対数スケール(正方形)でグラフに示される。平均最大血漿中濃度(C
max)は94.8ng/mLであり、(T
max)1.02時間後に生じた。平均半減期は15.2時間であった。平均AUC
infは、495ng h/mLであった。
【0259】
実施例11
本発明の併用製剤
アザシチジン及びインドメタシンの併用を含む本発明の様々な製剤は、以下のように調製される。
【0260】
(A)100:1~1:10の重量比のアザシチジン及びインドメタシンの微粒子の混合物をジェットミリングによって調製する。レーザー回折によって決定される粒径分布は、0.1~100μmの平均粒径である。
【0261】
得られた粉末は、上記の実施例1に記載のようにALDによってコーティングされ、ビヒクル中で製剤化され、上記の実施例10に記載のように、MDSに罹患している患者の治療に使用される。
【0262】
(B)100:1~1:10の重量比でアザシチジンとインドメタシンの例えば共沈殿混合物を含む微粒子を調製する。レーザー回折によって決定される粒径分布は、0.1~100μmの平均粒径である。
【0263】
微粒子は、上記の実施例1に記載のようにALDによってコーティングされ、ビヒクル中で製剤化され、上記の実施例2に記載のように、MDSに罹患している患者の治療に使用される。
【0264】
(C)2組の微粒子試料をジェットミリングによって別々に調製する。第1のセットは、アザシチジンを含み、第2のセットは、インドメタシンを含む。レーザー回折によって決定される、試料の両方のセットにおける粒径分布は、0.1~100μmである。
【0265】
両方のセットの試料は、上記の実施例1に記載のように、ALDによって別々にコーティングされ、第1のセットと第2のセットの粉末との間の重量比が100:1~1:10の間である製剤中で混合される。
【0266】
混合粉末は、ビヒクル中で製剤化され、上記の実施例10に記載のように、MDSに罹患している患者の治療に使用される。
【0267】
(D)実施例1に記載のように、アザシチジンの試料を調製し、上記の実施例10に記載のように、ビヒクル中で製剤化する。インドメタシン粒子を含む追加の製剤を同様に調製する。
【0268】
両方の製剤は、MDSに罹患している患者の治療のために、上記の実施例10に記載のように、異なる部位に実質的に同時に注射するために使用される。2つの異なる注射におけるアザシチジン及びインドメタシンの重量に対する用量比は、100:1~1:10である。
【0269】
(E)アザシチジンのコーティングされた粒子は、本質的に、上記の実施例1に記載のように調製され、溶解及び/又は懸濁したインドメタシンを更に含む、上記の実施例10に記載のビヒクル中で製剤化される。
【0270】
この製剤は、上記の実施例10に記載のように、MDSに罹患している患者の治療に使用される。
【0271】
上記(A)~(E)の全ての場合において、皮下投与部位(及び形成されたデポー)における炎症反応は、インドメタシンの抗炎症特性によって抑制される。
【0272】
実施例12
混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン微粒子V
実施例1及び9に記載のものと同じ手順を実施して、80.1%と決定された薬物負荷を有するコーティングされたアザシチジン微粒子を製造した。
【0273】
実施例13
混合酸化物コーティングされたアザシチジン微粒子VI
30回のALDサイクルを50℃の反応器温度で実施し、ジエチル亜鉛及び水を前駆体として用いた2回のALDサイクルのコーティングシーケンスに続いて、トリメチルアルミニウム及び水の1サイクルを10回繰り返して、2:1の亜鉛:アルミニウムの原子比を有する混合酸化物層を形成することを除いて、実施例1及び9に記載の本質的に同じ手順を実施した。第1の層の厚さは、約5~約10nmであると推定された。
【0274】
粉末を反応器から取り出し、音波シフターを使用して粉末をメッシュサイズが20μmのポリマーふるいに通すことによって脱凝集させ、次いで脱凝集した粉末をALD反応器に再装填し、更に30回のALDサイクルを上記のように実施し、同じ比率で混合酸化物の第2の層を形成し、上記のように音波シフトを使用して反応器から抽出し、脱凝集を行い、プロセスを繰り返して合計8層を形成した。
【0275】
薬物負荷は、69.1%と決定された。
【0276】
比較実施例7
混合された酸化物でコーティングされたインドメタシン微粒子
インドメタシン(Recce Pharmaceuticals,Australia)の微粒子の試料をジェットミリングによって調製した。レーザー回折によって決定された粒径分布は、以下のとおりであった。D10 1.2μm、D50 3.8μm、D90 11.3μm。
【0277】
実施例1に記載のものと同じALDコーティング及び断続的な脱凝集プロセスを実施して、亜鉛:アルミニウムの原子比が3:1の4つの別個の混合酸化物層を有するコーティングされたインドメタシン微粒子を形成した。
【0278】
薬物負荷は、81%と決定された。
【0279】
比較実施例8
混合された酸化物でコーティングされたラクトース微粒子
ラクトース(InhaLac(登録商標)400,Meggle,Germany)の微粒子の試料を使用した。公称粒径分布は以下のとおりであった:D10 0.8~1.6μm、D50 4.0~11.0μm、D90 15~35.0μm。
【0280】
粉末は、ALD反応器(Picosun,SUNALE(商標)R-series,Espoo,Finland)に装填され、50℃の反応器温度で48回のALDサイクルが実行された。コーティングシーケンスは、3つのALDサイクルの前駆体としてジエチル亜鉛と水を用いた3つのALDサイクル、続いてトリメチルアルミニウムと水の1つのサイクルを12回繰り返し、亜鉛:アルミニウムの原子比が3:1の混合酸化物層を形成した。第1の層の厚さは、約8~16nmであった(ALDサイクル数から推定)。
【0281】
粉末を反応器から取り出し、音波シフターを使用して、粉末をメッシュサイズが20μmのポリマーふるいに通すことによって、脱凝集させた。
【0282】
得られた脱凝集した粉末を、ALD反応器に再装填し、以前と同様に更に48回のALDサイクルを実施し、前述の比率で混合酸化物の第2の層を形成し、続いて反応器から抽出した。
【0283】
レーザー回折によって決定されたコーティングされたラクトース微粒子の粒径分布は、以下のとおりであった。D10 2.1μm、D50 7.6μm、D90 23.4μm。
【0284】
実施例14
本発明の製剤II
上記実施例12からのコーティングされた微粒子を、ガラスバイアル中のHyonate vetに懸濁して、それぞれ、100mg/mL及び200mg/mLの最終濃度を得た(それぞれ、以下、「製剤B」及び「製剤E」と称される)。
【0285】
上記の実施例12のコーティングされた微粒子を、上記の比較例7のコーティングされたインドメタシン微粒子とともに、ガラスバイアル内のHyonate vetに一緒に懸濁して、以下の表3に示されるように、各コーティングされた活性成分の最終濃度を得た。ここで、製剤は、以下で言及される方法でも同定される。
【表3】
【0286】
比較実施例9
混合された酸化物でコーティングされたインドメタシン及びラクトース微粒子を含む製剤
上記の実施例14に記載の手順に従って、インドメタシンのコーティングされた微粒子(上記の比較例7から)及びラクトースのコーティングされた微粒子(上記の比較例8から)の懸濁液を、Hyonate vet2.2mL中の100mg/mLの最終濃度で作製した。
【0287】
これらの懸濁液は、それぞれ「製剤C」(インドメタシン)及び「製剤A」(ラクトース)と標識した。
【0288】
実施例14
ミニブタ試験I
この試験(デンマークのScantox A/Sで実施された)の目的は、ミニブタへの皮下注射によって投与される本発明に従って製剤化されたアザシチジンの局所耐性及び薬物動態、並びに本発明に従って製剤化されたアザシチジン及び本明細書に記載されているように製剤化されたインドメタシンの投与後の局所耐性を評価することであった。
【0289】
ミニブタは、このタイプの試験において十分に受け入れられた適合性と、ヒトとミニブタとの間の皮膚生理学的な類似性のために、試験モデルとして選択された。重篤な局所反応のリスクを低減するために、フル用量に達する前に、同等のヒト臨床用量の1/4及び1/2に相当する2用量から始まるスタガード用量スキームを選択した。
【0290】
この動物は、試験に割り当てられたときに体重が24.9kgであり、科学的目的で使用される動物の保護に関する2010年9月22日のEU指令2010/63/EUに従って収容された。要するに、標準的なミニブタダイエットは、食事当たり約350gの量で1日2回(朝と午後)提供された。食事の量は、動物の合理的な成長を可能にするために、試験の過程中に調整され得る。脱水草(Compact Gras,Hartog B.V.,Netherlands)の供給も毎日与えられ、動物は家庭用品質の飲料水に自由にアクセスできた。
【0291】
治療開始の1週間前に、動物を首の筋肉内注射(1.0mL/10kg体重)によって麻酔し、合計6つの注射部位(約2×2cm)を首の後ろに入れ墨した。
【0292】
次いで、動物を処置の3日前に再び麻酔し、試験中に血液試料を採取するために耳静脈カテーテルを移植した。試験中の疼痛治療のために、動物は、移植直前に、メロキシカム5mg/mL(0.08mL/kg)の後肢に筋肉内注射を与えられ、次の2日間、1日1回投与された。
【0293】
動物は、200mgのアンピシリン/mL(0.05mL/kg)の静脈内注射を受けた。カテーテルを10mLの滅菌生理食塩水で洗浄し、0.5mLのTauroLock Hep500(500IE/mLのヘパリンを含むタウロリジンクエン酸塩)を使用してロックした。ストッパー、例えば、バイオネクターIVアクセスシステムをルアーに塗布した。
【0294】
血液試料採取の間に、TauroLockTM Hep500はカテーテルにヘパリンロックを生成する。
【0295】
試験製剤の単回投与は、以下の表4に示されるように、6つのマークされた注射部位の各々において皮下注射によって与えられた。
【表4】
【0296】
局所耐性
試験の1日目に、動物を麻酔し、上記の表4に示されるように、関連する用量体積の注射部位1、2及び3において、製剤A及びBを皮下投与した。試験の41目に、上記の表4に示されるように、動物を麻酔し、関連する用量体積の注射部位5及び6で製剤D及びCを皮下投与した。
【0297】
これらの注射は、局所耐性について評価した。
【0298】
各場合において、注射の前に、被験試料の沈降及び結果として生じる正しい用量からの逸脱を避けるために、各注射のために試料を後退させる直前に、関連する試料バイアルを3回反転させた。
【0299】
不健康の全ての臨床的徴候及び行動の変化を毎日記録した。加えて、投与前/投与に関連して、投与後30分以内に用量関連の観察を実施し、正常からの任意の逸脱を記録した。
【0300】
注射部位を、投与から30分後、2時間後及び6時間後に撮影し、採点し、記録し、次いで採点が提示されないまで毎日記録した。10日目以降、写真は撮影されず、採点が提示されないか、又は試験が終了するまで、注射部位は2日ごとに採点されただけであった。
【0301】
注射部位5及び6を、投与後から30分後、並びに2時間後及び6時間後、並びに48日目まで毎日、撮影し、採点し、記録した。その後、注射部位の写真撮影はされず、注射部位は、採点が提示されないか、又は試験が終了するまで、週2回のみ採点された。
【0302】
特に、出血、紅斑、腫脹(サイズの適応/測定)、硬さ/硬化及び壊死、並びに炎症性又はアレルギー反応の他のいずれかの兆候に注意を払った。パラメータは、以下のグレーディングシステム、0(存在しない)、1(最小)、2(わずか)、3(中等度)、及び4(マーク付き)に従って採点された。
【0303】
2日目に、動物から血液試料を採取し、臨床病理パラメータを評価した。5日目に追加の試料採取を行った。血液試料が採取される前に、動物を一晩絶食させたが、水が利用可能であった。
【0304】
血液学のために、少なくとも2.5mLのK3 EDTA安定化血液を採取した。この試料から、バックアップ塗抹標本を調製し、後で手動で白血球百分率を測定できるように、May-Grunwald及びGiemsaで染色した。塗抹標本を分析せず、試験の終了時に廃棄した。凝固試験については、1.8mLのクエン酸塩安定化血液を採取した。実験室調査のためのパラメータ、方法及び単位を以下の表5に提示する。
【表5】
【0305】
約3mLの血液を、血清用の凝固活性剤を有するチューブ内で臨床化学のために採取した。実験室調査のためのパラメータ、方法及び単位を以下の表6に提示する。
【表6】
【0306】
全厚生検は、注射部位1から3日目及び7日目、並びに注射部位2及び3から2日目及び6日目に採取した。組織病理学的評価で比較するために、単一の対照生検を注射部位の外側で採取した。注射部位5及び6から43日目及び47日目に全厚生検を行った。
【0307】
生検採取の前に動物を麻酔し、生検の最初のサンプリングの約30分前に、疼痛の反応を防ぐために10mg/mL(0.02mL/kg)のメタドンを筋肉内注射した。
【0308】
生検を8mmのパンチを使用して収集し、リン酸緩衝中性4%ホルムアルデヒド中に固定した。固定後、標本をトリミングし、処理した。標本をパラフィンに埋め込み、約5μmの公称厚さで切断し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡で検査した。全ての病理学的所見は、Instem Provantis(登録商標)(バージョン9.3.0.0)に直接入力した。組織学的変化は、5段階の尺度(最小、軽度、中等度、顕著及び重度)で分類した。
【0309】
薬物動態(PK)
試験の22日目に、上記の表4に示されるように、動物を麻酔し、関連する用量体積で注射部位4で製剤Bを皮下投与した。この注射は、PKパラメータについて評価した。
【0310】
注射の前に、試験材料の沈降及び結果としての正しい用量からの逸脱を避けるために、各注射について上述のように試料を後退させる直前に、関連する試料バイアルを3回反転させた。
【0311】
投与日に、血液試料を、以下の時点、すなわち治療前、及び治療から30分、2時間、6時間、10時間、24時間、48時間、72時間、120時間、及び168時間後に採取した。
【0312】
約3mLの血液試料を頸静脈/双頸静脈幹から採取した。血液を、抗凝固剤としてK2-EDTAを含有するバキュテイナーにサンプリングした。バキュテイナーを、遠心分離(10分、1270G、+4℃)まで氷水中に置いた。各血漿試料を約0.5mLの2つのアリコートに分割し、試験依頼者が提供したクライオチューブに移し、採取後90分以内に-18℃以下で凍結した。最初のセットの試料は、分析のためにドライアイス(約-70℃)で送付された。出荷は、サーモロガーなしで送付する必要がある。第2のセットの試料を、バックアップ試料として-18℃以下で保存した。バックアップ試料は、一次試料を受領してから数日後に出荷された。
【0313】
血漿中のアザシチジンを、UPLC-MS/MSによって決定した。アザシチジンを、DMF:アセトニトリル(5:95)を使用して、タンパク質沈殿によって血漿から抽出した。直線相クロマトグラフィーカラムに注入した後、物質をアセトニトリル及び水性勾配で溶出させ、MS/MSで検出した。
【0314】
個々の血漿中濃度プロファイルを、ソフトウェアPKanalix(バージョン2020)を使用して非コンパートメント薬物動態分析に供した。
【0315】
投与前の試料で得られた血漿中濃度がLLOQを下回った場合、データポイントはゼロとして入力された。LLOQを下回る他の全ての濃度は、LLOQ(1/2*LLOQ)の値の半分として入力した。Tmax後のLLOQを下回る連続データポイントをモデリング及び分析から除外した。
【0316】
最大血漿中濃度(Cmax)及びそれが生じる時間(Tmax)を、データの目視検査によって推定した。
【0317】
時刻0から最後の定量可能な濃度の時点までの曲線下の面積(AUC(0-t))、及び時刻0から無限大までの曲線下の面積(AUCinf)を、線形/対数台形法に従って計算した。外挿された面積(AUC(外挿された%))が20%を超える場合、AUCinfの信頼性は低いと考えられた。
【0318】
半減期T1/2をln2/1zとして計算し、1zは除去率定数であった。半減期は、少なくとも3つのデータポイントを含めることができる場合にのみ計算された。回帰直線が0.80未満のRsqをもたらした場合、結果は信頼性がないとみなされた。
【0319】
最後の血液サンプル/処置の採取後、動物はもはや試験の一部ではなくなり、終了した。
【0320】
結果
注射部位1で、製剤A(ラクトース)を投与した後、最初に反応は観察されなかった。しかしながら、14日目に、軟腫脹が観察された(最大10×15mm、ほとんど知覚できなかった)。
【0321】
注射部位2(アザシチジン、50mg)で製剤Bを投与した翌日、少なくとも28日間持続した硬い腫脹(最大40×20mm)が観察された。最小~わずかな紅斑は、2日目及び3日目に、並びに7日目から再び観察された。注射部位4(また、アザシチジン、50mg)で製剤Bを投与した翌日、軟腫脹(最大10×10mm、ほとんど知覚できなかった)、これは投与後11日まで続いた(23日目~33日目)。23日目から28日目まで、最小限の紅斑が観察された。
【0322】
しかしながら、注射部位3(アザシチジン、100mg)で製剤Bを投与した翌日、注射部位で硬く、境界明瞭な腫脹(最大55×30mm)が少なくとも28日間続いた。軽度の紅斑は、2日目及び3日目に、並びに7日目から再び観察された。
【0323】
逆に、注射部位5で製剤Dを投与した翌日(アザシチジン50mg+インドメタシン50mg)、注射部位の反応はまったく観察されなかった。
【0324】
PKパラメータに関して、50mgのコーティングされたアザシチジン(注射部位4)の単回皮下投与は、
図5に示されるように、持続放出プロファイルを伴う全身曝露を示した。持続時間は120時間であり、曝露の47%が投与後の最初の12時間以内に観察された。
【0325】
病理組織学的結果は、以下のことを示した:
注射部位2:3日目に中等度の炎症及び中等度の壊死、7日目に軽度の炎症及び中等度の壊死。
注入部位5 45日目(注入後3日目)の中等度の炎症及び軽度の壊死、並びに49日目(注入後7日目)の最小の炎症及び最小の壊死。
【0326】
製剤D(混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン及び混合された酸化物でコーティングされたインドメタシンの併用)の皮下投与は、製剤B(混合された酸化物でコーティングされたアザシチジン単独)の皮下投与よりも皮膚反応が少ないと結論付けた。
【0327】
実施例16
ミニブタ試験II
上記の実施例15に記載のものと同様の試験を、5匹のミニブタで実施した。到着日に、無作為化スキームを使用して、動物に最終番号を与えた。動物は、固有の数値コードを持つチップを受け取った。
【0328】
治療開始の約1週間前に、上記の実施例15に記載のものと同じ方法で、2つの注射部位をミニブタの頚部にマークした
【0329】
動物の治療スケジュールは、以下の表7に示されるとおりであった。25mg/mLの濃度を有するアザシチジンの市販の注射用製剤であるVidaza(登録商標)(Mylan)は、「コーティングされていない」アザシチジンの等価用量を提供すると考えることができる。
【表7】
【0330】
上記の実施例14に記載のものと本質的に同じ処置プロトコールに従った。各動物について、該当する製剤の皮下注射を、1日目(各動物の注射部位1)及び8日目(各動物の注射部位2)に上記用量体積で投与した。
【0331】
観察は、29日目の剖検で、上記の実施例14に記載のものと本質的に同じ方法で実施した。
【0332】
mm
3の炎症性腫脹のサイズは、以下のように
図6に示されている:
動物1/注射部位1(50mgのアザシチジン、より低濃度の粒子、菱形)、
動物3/注射部位1(50mgのアザシチジン、より高濃度の粒子、三角形)、
動物2/注射部位2(50mgのアザシチジン、より低濃度の粒子+50mgのインドメタシン、クロス)、及び
動物5/注射部位2(50mgのアザシチジン、より高濃度の粒子+25mgのインドメタシン、正方形)。
【0333】
図6は、インドメタシンとのアザシチジンの投与の大きな影響を明確に示す。
【国際調査報告】