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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】AAVベクターカラム精製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
C12N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576326
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022072859
(87)【国際公開番号】W WO2022261663
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,680
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/366,094
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518138077
【氏名又は名称】スパーク セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPARK THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】カナル オンマル
(72)【発明者】
【氏名】クマール ヴィジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジン ミ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA44
(57)【要約】
本明細書には、rAAV粒子を精製するための、特に完全rAAV粒子及び不完全粒子を両方とも含むrAAV調製物から完全rAAV粒子を精製するための方法が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全rAAV粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中の前記rAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、前記完全rAAV粒子は、前記クロマトグラフィー媒体に対して前記不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、前記カラムにアプライされる前記完全rAAV粒子及び前記不完全粒子の量は、前記クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記クロマトグラフィー媒体に結合した前記不完全粒子は、前記完全rAAV粒子により置換され、前記カラムからフロースルーへ入る、ステップ、並びに
(c)前記クロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、CIMmultusTMQAモノリシックカラム、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくは、Poros XQである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)前記完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中の前記rAAV調製物の第1のバッチを、第1のクロマトグラフィー媒体を含む第1のカラムに負荷するステップであり、前記完全rAAV粒子は、前記第1のクロマトグラフィー媒体に対して前記不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、前記第1のカラムにアプライされる前記完全rAAV粒子及び前記不完全粒子の量は、前記第1のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記第1のクロマトグラフィー媒体に結合した前記不完全粒子は、前記完全rAAV粒子により置換され、前記第1のカラムから第1の負荷フロースルーへ入る、ステップ、
(c)前記第1の負荷フロースルーを、第2のクロマトグラフィー媒体を含む第2のカラムに負荷して、負荷された又は部分的に負荷された第2のカラムを得るステップであり、前記第2のクロマトグラフィー媒体は、前記第1のクロマトグラフィー媒体と同じタイプである、ステップ、
(d)任意選択で、前記第1のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第1のカラムを得るステップ、
(e)前記第1のクロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、前記第1のカラムからの第1の溶出物及び溶出された第1のカラムを得るステップであり、前記第1の溶出物は、前記完全rAAV粒子対前記不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、
(f)任意選択で、負荷緩衝液中の前記rAAV調製物の第2のバッチを、前記少なくとも部分的に負荷された第2のカラムにアプライするステップであり、前記第2のカラムにアプライされる前記完全rAAV粒子及び前記不完全粒子の量は、前記第2のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記第2のクロマトグラフィー媒体に結合した前記不完全粒子は、前記完全rAAV粒子により置換され、前記第2のカラムから第2の負荷フロースルーへ入る、ステップ、
(g)任意選択で、ステップ(e)の後で、前記第2のカラムからの前記負荷フロースルーを前記溶出された第1のカラムに負荷して、第2の負荷された第1のカラムを得、任意選択で、ステップ(e)で溶出を行う前に、第2の負荷された第1のカラムを洗浄するステップ、
(h)任意選択で、前記第2のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第2のカラムを得るステップ、
(i)前記第2のクロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第2の溶出物及び溶出された第2のカラムを得るステップであり、前記第2の溶出物は、前記完全rAAV粒子対前記不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、並びに
(j)前記第1の溶出物及び前記第2の溶出物を一緒にして、完全rAAV粒子の精製調製物を生成するステップ
を含む方法。
【請求項5】
前記第1のクロマトグラフィー媒体及び/又は前記第2のクロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)~(i)は、1回又は複数回のサイクルで実施される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のカラムは、ステップ(c)の後で部分的に負荷される、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のカラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、CIMmultusTMQAモノリシックカラム、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくは、Poros XQである、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)前記完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中の前記rAAV調製物の第1のバッチを、第1のクロマトグラフィー媒体を含む第1のカラムに負荷するステップであり、前記完全rAAV粒子は、前記第1のクロマトグラフィー媒体に対して前記不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、前記第1のカラムにアプライされる前記完全rAAV粒子及び前記不完全粒子の量は、前記第1のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記第1のクロマトグラフィー媒体に結合した前記不完全粒子は、前記完全rAAV粒子により、前記第1のカラムからの第1の負荷フロースルーへと置換される、ステップ、
(c)前記第1の負荷フロースルーを、第2のクロマトグラフィー媒体を含む第2のカラムに負荷して、負荷された又は部分的に負荷された第2のカラムを得るステップであり、前記第2のクロマトグラフィー媒体は、前記第1のクロマトグラフィー媒体と同じタイプである、ステップ、
(d)任意選択で、前記第1のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第1のカラムを得るステップ、
(e)前記第1のクロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、前記第1のカラムからの第1の溶出物及び溶出された第1のカラムを得るステップであり、前記第1の溶出物は、前記完全rAAV粒子対前記不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、
(f)任意選択で、負荷緩衝液中の前記rAAV調製物の第2のバッチを、前記少なくとも部分的に負荷された第2のカラムにアプライするステップであり、前記第2のカラムにアプライされる前記完全rAAV粒子及び前記不完全粒子の量は、前記第2のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記第2のクロマトグラフィー媒体に結合した前記不完全粒子は、前記完全rAAV粒子により置換され、前記第2のカラムから第2の負荷フロースルーへ入る、ステップ、
(g)前記第2のカラムからの前記第2の負荷フロースルーを、第3のクロマトグラフィー媒体を含む第3のカラムに負荷して、負荷された又は部分的に負荷された第3のカラムを得るステップであり、好ましくは、前記第3のクロマトグラフィー媒体は、前記第1のクロマトグラフィー媒体と同じタイプである、ステップ、
(h)任意選択で、前記第2のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第2のカラムを得るステップ、
(i)ステップ(k)の後で、又は洗浄ステップ(l)が実施される場合には前記洗浄ステップ(l)の後で、前記第1のカラムをバイパスし、前記第2のクロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第2の溶出物及び溶出された第2のカラムを得るステップであり、前記第2の溶出物は、前記完全rAAV粒子対前記不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、
(j)任意選択で、前記第2カラムフロースルー後に前記第3のカラムが飽和(つまり、負荷)されていない場合、負荷緩衝液中の前記rAAV調製物の第3バッチを、前記部分的に負荷された第3のカラムにアプライしてもよく、前記第3のカラムにアプライされる前記完全rAAV粒子及び前記不完全粒子の量は、前記第3のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記第3のクロマトグラフィー媒体に結合した前記不完全粒子は、前記完全rAAV粒子により置換され、前記第3のカラムから第3の負荷フロースルーへ入る、ステップ、
(k)ステップ(n)が実施される場合、ステップ(d)と(e)との間で、前記第3のカラムからの前記第3の負荷フロースルーを、前記洗浄された第1のカラムに負荷して、第2の負荷された第1のカラムを得、任意選択で、ステップ(e)で溶出を行う前に、第2の負荷された第1のカラムを洗浄する、ステップ、
(l)任意選択で、前記第3のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第3のカラムを得るステップ、
(m)前記第1のカラム及び前記第2のカラムをバイパスし、前記第3のクロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第3の溶出物及び溶出された第3のカラムを得るステップであり、前記第3の溶出物は、前記完全rAAV粒子対前記不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、並びに
(n)前記第1の溶出物、前記第2の溶出物、及び前記第3の溶出物を一緒にして、完全rAAV粒子の精製調製物を生成するステップ
を含む方法。
【請求項10】
前記第1のクロマトグラフィー媒体及び/又は前記第2のクロマトグラフィー媒体及び/又は前記第3のクロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)~(m)は、1回又は複数回のサイクルで実施される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のカラムは、ステップ(c)の後で部分的に負荷される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3のカラムは、ステップ(g)の後で部分的に負荷される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のカラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、CIMmultusTMQAモノリシックカラム、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくは、Poros XQである、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記不完全粒子は、空粒子及び/又は部分粒子を含み、好ましくは空粒子及び部分粒子を両方とも含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記負荷緩衝液は、約10~100mMのナトリウム塩、好ましくは20~60mM NaClを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記負荷緩衝液は、約0~20mMのマグネシウム塩、好ましくは1~10mM MgCl2を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記負荷緩衝液は、約0~10mMのカルシウム塩、好ましくは0.1~2.5mM CaCl2を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記負荷緩衝液は、約0~100mMのリチウム塩、好ましくは0~75mM LiClを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記負荷緩衝液は、約0~5mMの銅塩、好ましくは0.1~2.5mM CuCl2を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記負荷緩衝液は、約5~100mMのアンモニウム塩、好ましくは10~50mM (NH42SO4を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記負荷緩衝液は、約20~60mM NaCl、20~50mM Tris、1~5mM MgCl2、0~75mM LiCl、0~10mM CuCl2、及び/又は0.1~2.5mM CaCl2を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記負荷緩衝液は、約20~60mM NaCl、10~30mM(NH42SO4、1~5mM MgCl2、0.1~2.5mM CuCl2を、好ましくはTris中に、より好ましくは20~100mM Tris中に、含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記負荷緩衝液は、約6~10のpHを有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記負荷緩衝液は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記負荷緩衝液中の前記界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記溶出緩衝液は、約0~1000mM NaCl、好ましくは、20~300mM NaClを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記溶出緩衝液は、約0~30mM MgCl2、好ましくは、2~15mM MgCl2を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記溶出緩衝液は、約0~200mM LiCl、好ましくは、0~150mM LiClを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記溶出緩衝液は、約0.1~20mM CaCl2、好ましくは、5~10mM CaCl2を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記溶出緩衝液は、約0~10mM CuCl2、好ましくは、0~3mM CuCl2を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記溶出緩衝液は、約5~100mMのアンモニウム塩、好ましくは10~50mM (NH42SO4を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記溶出緩衝液は、約20~200mM NaClを、好ましくはTris緩衝液中に、含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記溶出緩衝液は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記溶出緩衝液中の前記界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記rAAV調製物中の不純物は、前記完全rAAV粒子よりも高い親和性で前記第1のカラムに結合する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項42】
完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)前記完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中の前記rAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、前記負荷緩衝液はCaCl2を含み、前記完全rAAV粒子は前記クロマトグラフィー媒体に結合する、ステップ、及び
(c)前記クロマトグラフィー媒体に結合した前記完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップであり、前記溶出緩衝液はCaCl2を含む、ステップ
を含む方法。
【請求項43】
前記クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、CIMmultusTMQAモノリシックカラム、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくは、Poros XQである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記負荷緩衝液は、約0~10mM CaCl2、好ましくは、0.1~2.5mM CaCl2を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記負荷緩衝液は、約10~100mM NaCl、好ましくは20~60mM NaClを含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記負荷緩衝液は、約0~20mM MgCl2、好ましくは、1~10mM MgCl2を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記負荷緩衝液は、約0~100mM LiCl、好ましくは、0~75mM LiClを含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記負荷緩衝液は、約0~5mMの銅塩、好ましくは0.1~2.5mM CuCl2を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記負荷緩衝液は、約5~100mMのアンモニウム塩、好ましくは10~50mM (NH42SO4を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む、請求項42~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記負荷緩衝液は、約20~60mM NaCl、1~5mM MgCl2、0~75mM LiCl、0.1~2.5mM CaCl2を、好ましくは20~50mM Tris中に、含む、請求項42~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記負荷緩衝液は、約20~60mM NaCl、10~30mM(NH42SO4、1~5mM MgCl2、0.1~2.5mM CuCl2を、好ましくはTris中に、より好ましくは20~100mM Tris中に、含む、請求項42~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記負荷緩衝液は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項42~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記負荷緩衝液中の前記界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記負荷緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する、請求項42~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む、請求項42~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記溶出緩衝液は、約0.1~20mM CaCl2、好ましくは、5~10mM CaCl2を含む、請求項42~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記溶出緩衝液は、約0~1000mM NaCl、好ましくは、20~300mM NaClを含む、請求項42~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記溶出緩衝液は、約0~30mM MgCl2、好ましくは、2~15mM MgCl2を含む、請求項42~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記溶出緩衝液は、約0~200mM LiCl、好ましくは、0~150mM LiClを含む、請求項42~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む、請求項42~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記溶出緩衝液は、約20~200mM NaClを、好ましくは40~60mM Tris緩衝液中に、含む、請求項42~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記溶出緩衝液は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項42~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記溶出緩衝液中の前記界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する、請求項42~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
精製された完全rAAV粒子の収率は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記精製調製物中の前記完全rAAV粒子対前期不完全粒子の比は、9:1以上、好ましくは49:1以上である、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記不完全粒子は、空粒子及び/又は部分粒子を含み、好ましくは空粒子及び部分粒子を両方とも含む、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
部分rAAV粒子を精製するための方法であって、
(d)空粒子及び部分粒子を含む不完全rAAV調製物を準備するステップ、
(e)負荷緩衝液中の前記不完全rAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、前記部分rAAV粒子は、前記クロマトグラフィー媒体に対して前記空粒子よりも高い結合親和性を有する、ステップ、並びに
(f)前記クロマトグラフィー媒体に結合した前記部分rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップ
を含む方法。
【請求項72】
前記完全rAAV粒子は、ポリペプチドをコードする導入遺伝子、又はsiRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム、及びshRNAからなる群から選択される核酸を含む、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
空組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)前記空rAAV粒子、並びに完全rAAV粒子及び部分rAAV粒子の少なくとも1つを含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中の前記rAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、前記空rAAV粒子は、前記クロマトグラフィー媒体に対して前記完全粒子又は前記部分粒子よりも高い結合親和性を有し、前記カラムにアプライされる前記空rAAV粒子、並びに完全粒子及び部分粒子の前記少なくとも1つの量は、前記クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、前記クロマトグラフィー媒体に結合した完全粒子及び部分粒子の前記少なくとも1つは、前記空rAAV粒子により置換され、前記カラムからフロースルーへ入る、ステップ、並びに
(c)前記クロマトグラフィー媒体に結合した前記空rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップ
を含む方法。
【請求項74】
前記rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントからなる群から選択される1つ又は複数のAAVに由来するカプシドを含む、請求項1~73のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月11日に出願された米国特許仮出願第63/209,680号及び2022年6月9日に出願された米国特許仮出願第63/366,094号に対する優先権を主張するものであり、こうした文献の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法に関する。より詳細には、本出願は、完全rAAV粒子及び非完全rAAV粒子を両方とも含む調製物から完全rAAV粒子を精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子送達は、後天性疾患及び遺伝性疾患を治療するための有望な方法である。アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく系を含む、遺伝子移入を目的とした少なからぬウイルスに基づく系が報告されている。
AAVは、ディペンドウイルス属に属するヘルパー依存性DNAパルボウイルスである。AAVは、増殖性感染を生じさせるために、ヘルパーウイルス機能、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアを必要とする。
AAVは、幅広い宿主範囲を有し、好適なヘルパーウイルスの存在下にて、あらゆる種の細胞内で複製することができる。AAVは、いかなるヒト疾患又は動物疾患にも関連付けられておらず、組み込まれても宿主細胞の生物学的特性に有害効果を及ぼすことはないと考えられている。
AAVベクターは、目的の異種性核酸配列(例えば、治療用タンパク質をコードする選択された遺伝子、アンチセンス分子、リボザイム、miRNAなどの核酸)を運搬するように、AAVゲノムの内部部分を全体的に又は部分的に欠失させ、逆位末端配列(ITR)間に目的の異種性核酸配列を挿入することにより遺伝子操作することができる。ITRは、そのようなベクターにおいて機能を維持し、目的の異種性核酸配列を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の複製及びパッケージングを可能にする。また、異種性核酸配列は、典型的には、患者の標的細胞での核酸発現を駆動することが可能なプロモーター配列に連結されている。また、ポリアデニル化部位などの終結シグナルがベクターに含まれていてもよい。rAAVゲノムDNAは、正二十面体対称に配置された3つのカプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)の混合物を含むタンパク質殻であるウイルスカプシドにパッケージングされている。
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、複数のグループによる幾つかの初期段階臨床治験において優れた治療的有望性を示している。承認に向けたこの新しいクラスの生物学的製剤の開発は、ベクター設計及び製造工程パラメーターが臨床等級ベクターの不純物プロファイルにどのような影響を及ぼすかについてのより良好な理解を含む、ベクター特徴付け及び品質管理方法を向上させることを含むことになる。
【0004】
rAAVの生産に伴う課題の1つは、完全な遺伝物質を含まない「不完全」rAAV粒子の形成である。不完全rAAV粒子は、本明細書で使用される場合、「空」粒子及び「部分」粒子を含む、一連の粒子又はバリアントを指す。「部分」粒子は、本明細書では、一部の遺伝物質を有するが、完全粒子のように完全な遺伝物質を有していないrAAV粒子を指す。rAAV媒介性遺伝子発現の臨床安全性及び有効性に対する不完全粒子(空粒子及び部分粒子を含む)の影響に疑念が生じたため、こうした種を完全粒子から除去又は分離するための精製方法の開発が必要となった。こうしたタイプのrAAV粒子間の構造的類似性を考慮すると、不完全AAV粒子と完全AAV粒子とを効率的に分離するためのロバストで大規模化可能な精製方法の開発は依然として困難である。rAAV粒子は、rAAVにおける一本鎖DNAゲノムの存在及び長さが異なる。完全rAAV粒子を不完全粒子から分離するための様々な技法が開発されている。しかしながら、こうした技法では、設計された完全rAAV粒子は、低純度及び/又は低収率で得られることが多い。
【0005】
従って、空粒子又は部分粒子からの精製を含む、完全rAAV粒子を不完全粒子から高純度及び/又は高収率で精製するための新しい系及び方法の開発の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、カラムクロマトグラフィー技法を使用して、完全rAAV粒子並びに空粒子及び/又は部分粒子を含んでいてもよい不完全粒子を含むrAAV調製物から、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法及び系に関する。
1つの基本態様では、本出願は、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対して不完全粒子よりも高い結合親和性を有する、ステップ、及び
(c)クロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップ
を含む方法に関する。
【0007】
一部の実施形態では、不完全粒子は空粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は部分粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子及び部分粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、クロマトグラフィー媒体に結合せず、カラムを通過して流出する。
一部の実施形態では、部分粒子は、クロマトグラフィー媒体に結合せず、カラムを通過して流出する。
一部の実施形態では、カラムにアプライされる完全rAAV粒子及び空rAAV粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した空粒子は、完全rAAV粒子により、カラムからの負荷フロースルーへと置換される。
一部の実施形態では、カラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全rAAV粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した空粒子は、部分rAAV粒子及び完全rAAV粒子により、カラムからの負荷フロースルーへと置換される。
【0008】
一部の実施形態では、カラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全rAAV粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した空粒子及び部分粒子は、完全rAAV粒子により、カラムからの負荷フロースルーへと置換される。
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、CIMmultus(商標)QAモノリシックカラムなどのモノリスである。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
【0009】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
【0010】
一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子の収率は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
一部の実施形態では、精製調製物は不完全粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、完全rAAV粒子対不完全粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の完全rAAV粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、若しくは50:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは49:1以上である。
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、ポリペプチドをコードする導入遺伝子、又はsiRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム、及びshRNAからなる群から選択される核酸を含む。
一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV血清型に由来するカプシドを含む。
別の実施形態では、rAAV粒子は、イオン交換クロマトグラフィー媒体に結合することが可能な遺伝子操作カプシドに由来するカプシドを含む。
【0011】
別の基本態様では、本出願は、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物の第1のバッチを、第1のクロマトグラフィー媒体を含む第1のカラムに負荷するステップであり、完全rAAV粒子は、第1のクロマトグラフィー媒体に対して不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、第1のカラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、第1のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、第1のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第1のカラムからの第1の負荷フロースルーへと置換される、ステップ、
(c)第1の負荷フロースルーを、第2のクロマトグラフィー媒体を含む第2のカラムに負荷して、部分的に負荷された(つまり、完全には飽和していない)第2のカラムを得るステップであり、好ましくは、第2のクロマトグラフィー媒体は、第1のクロマトグラフィー媒体と同じタイプである、ステップ、
(d)任意選択で、第1のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第1のカラムを得るステップ、
(e)ステップ(c)の後で、又は洗浄ステップ(d)が実施される場合には洗浄ステップ(d)の後で、第2のカラムをバイパスし、第1のクロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第1のカラムからの第1の溶出物及び溶出された第1のカラムを得るステップであり、第1の溶出物は、完全rAAV粒子対不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、
(f)負荷緩衝液中のrAAV調製物の第2のバッチを、部分的に負荷された第2のカラムに負荷するステップであり、第2のカラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全な粒子の量は、第2のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、第2のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第2のカラムからの第2の負荷フロースルーへと置換される、ステップ、
(g)第2の負荷フロースルーを、溶出された第1のカラムに負荷して、部分的に負荷された第1のカラムを得るステップ、
(h)任意選択で、第2のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第2のカラムを得るステップ、
(i)ステップ(g)の後で、又は洗浄ステップ(h)が実施される場合には洗浄ステップ(h)の後で、第1のカラムをバイパスし、第2のクロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第2の溶出物及び溶出された第2のカラムを得るステップであり、第2の溶出物は、完全rAAV粒子対不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、並びに
(j)第1の溶出物及び第2の溶出物を一緒にして、精製調製物を生成するステップ
を含む方法に関する。
【0012】
一部の実施形態では、不完全粒子は空粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は部分粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子及び部分粒子を両方とも含む。
一部の実施形態では、不完全粒子が空粒子及び部分粒子を両方とも含む場合、ステップ(i)の第2の溶出物は、完全rAAV粒子及び部分rAAV粒子対空rAAV粒子の増加した比を含む。
一部の実施形態では、2つよりも多くのカラムを使用することができ、2つが最低である。3カラム設定では、完全粒子は第1のカラムで富化され、部分粒子は、存在する場合、第2のカラムで富化され、空粒子は第3のカラムで富化される。一部の実施形態では、調製物中に不純物又は凝集体が存在する場合、不純物又は凝集体は、完全粒子よりも高い親和性で第1のカラムに結合する可能性がある。こうした実施形態では、完全粒子は、その後のカラムで富化されることになる。
一部の実施形態では、第1のクロマトグラフィー媒体及び/又は第2のクロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
【0013】
一部の実施形態では、第2のカラムは、第1のフロースルーを負荷した後で、部分的に負荷される。
一部の実施形態では、ステップ(b)~(i)は、1回のサイクル又は複数回のサイクルで実施される。
一部の実施形態では、次の負荷サイクルの前に、溶出されたカラムを、サイクル全体にわたって一貫したカラム結合容量を維持するために有益であるか又は必要であるその後のステップに供してもよい。例えば、そのようなステップとしては、これらに限定されないが、カラムのストリッピング、カラムの清浄化及び/若しくは消毒、並びに/又はカラムの再平衡化が挙げられる。
一部の実施形態では、第1又は第2のカラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、CIMmultus(商標)QAモノリシックカラムなどのモノリスである。
【0014】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0015】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
【0016】
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子の収率は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
一部の実施形態では、精製調製物は、不完全粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、完全rAAV粒子対不完全粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の完全粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、若しくは50:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは49:1以上である。
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、ポリペプチドをコードする導入遺伝子、タンパク質をコードするか若しくは目的の転写物へと転写される核酸、又はsiRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム、及びshRNAからなる群から選択される核酸を含む。
【0017】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントからなる群から選択される1つ又は複数のAAVに由来するカプシドを含む。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
別の基本態様では、本出願は、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、負荷緩衝液はCaCl2を含み、完全rAAV粒子はクロマトグラフィー媒体に結合する、ステップ、並びに
(c)クロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップであり、溶出緩衝液は任意選択でCaCl2を含む、ステップ
を含む方法に関する。
【0019】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0020】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-Tris、Bis-Trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。
【0021】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~10mM CaCl2、好ましくは0.1~2.5mM CaCl2を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0.1~20mM CaCl2、好ましくは5~10mM CaCl2を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~100mM LiCl、好ましくは0~75mM LiClを含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~200mM LiCl、好ましくは0~150mM LiClを含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~10mM CuCl2、好ましくは0.1~3mM CuCl2を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~10mM CuCl2、好ましくは0~3mM CuCl2を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、NaCl及び/又はMgCl2を更に含む。
【0022】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、NaCl及び/又はMgCl2を更に含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
【0023】
一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子の収率は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
一部の実施形態では、精製調製物は、不完全粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、完全rAAV粒子対不完全粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の完全粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、若しくは50:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは49:1以上である。
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、ポリペプチドをコードする導入遺伝子、又はsiRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム、及びshRNAからなる群から選択される核酸を含む。
【0024】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントからなる群から選択されるAAVに由来する。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
1つの基本態様では、本出願は、部分rAAV粒子を精製するための方法であって、
(a)空粒子及び部分粒子を含む不完全rAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中の不完全rAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、部分rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対して空粒子よりも高い結合親和性を有する、ステップ、並びに
(c)クロマトグラフィー媒体に結合した部分rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップ
を含む方法に関する。
【0026】
一部の実施形態では、カラムにアプライされる部分rAAV粒子及び空rAAV粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した空粒子は、部分rAAV粒子により、カラムからの負荷フロースルーへと置換される。
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、CIMmultus(商標)QAモノリシックカラムなどのモノリスである。
【0027】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0028】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
【0029】
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
一部の実施形態では、精製調製物は、空粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、部分rAAV粒子対空粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の部分rAAV粒子対空粒子の比は、9:1以上、例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、若しくは50:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは49:1以上である。
一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV血清型に由来するカプシドを含む。
別の実施形態では、rAAV粒子は、イオン交換クロマトグラフィー媒体に結合することが可能な遺伝子操作カプシドに由来するカプシドを含む。
【0030】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントからなる群から選択されるAAVに由来する。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
1つの基本態様では、本出願は、空rAAV粒子を精製するための方法であって、
(a)空rAAV粒子並びに完全rAAV粒子及び部分rAAV粒子の少なくとも1つを含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、空rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対して完全粒子又は部分粒子よりも高い結合親和性を有し、カラムにアプライされる空rAAV粒子並びに完全粒子及び部分粒子の少なくとも1つの量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した完全粒子及び部分粒子の少なくとも1つは、空rAAV粒子により、カラムからのフロースルーへと置換される、ステップ、並びに
(c)クロマトグラフィー媒体に結合した空rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップ
を含む方法に関する。
【0032】
一部の実施形態では、カラムにアプライされる空rAAV粒子並びに完全粒子及び部分粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した完全粒子及び部分粒子の少なくとも1つは、空rAAV粒子により、カラムからの負荷フロースルーへと置換される。
一部の実施形態では、rAAV調製物は完全粒子を含む。
一部の実施形態では、rAAV調製物は部分粒子を含む。
一部の実施形態では、rAAV調製物は完全粒子及び部分粒子を両方とも含む。
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
【0033】
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、CIMmultus(商標)QAモノリシックカラムなどのモノリスである。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
【0034】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
【0035】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、好ましくは8~9のpHを有する。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0036】
一部の実施形態では、精製調製物は、空粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、部分rAAV粒子対空粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の部分rAAV粒子対空粒子の比は、3:1以上、例えば、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、若しくは7.5:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは4:1以上である。
一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV血清型に由来するカプシドを含む。
別の実施形態では、rAAV粒子は、イオン交換クロマトグラフィー媒体に結合することが可能な遺伝子操作カプシドに由来するカプシドを含む。
【0037】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントからなる群から選択されるAAVに由来する。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、下記の記載に示されている。他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるだろう。
本発明の上述の概要及び以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとより良好に理解されるだろう。本発明は、図面に示されている実施形態そのものに限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A-1C】3つの異なるpH値:pH8.0(図1A)、pH8.6(図1B)、及びpH9.25(図1C)における、Poros50HQ樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離を示す。
図2A-2D】異なるpHの異なる緩衝液:pH8.6及び50mM Tris(図2A)、pH8.6及び25mM Tris(図2B)、pH8.0及び25mM Tris(図2C)、並びにpH9.25及び25mM Tris(図1D)を用いた、Poros50D樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離を示す。
図3A-3E】異なるpH値の異なる結合強度:pH8.0、NaCl無し(図3A)、pH8.6、NaCl無し(図3B)、pH8.6及び30mM NaCl(図3C)、pH9.2、NaCl無し(図4C)、並びにpH9.2及び30mM NaCl(図3E)を用いた、Poros50PI樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離を示す。
図4A-4C】異なるpH値の異なる緩衝液:pH8.0及び50mM Tris、NaCl無し(図4A)、pH8.6及び25mM Tris、NaCl無し(図4B)、並びにpH9.0及び25mM Tris、NaCl無し(図4C)を用いた、Capto ImpRes Q樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離を示す。
図5】Poros XQ樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離が、pH8及びpH9.25と比較してpH8.75にて最も良好だったことを示す。
図6】Poros XQ樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離に対する、結合塩(1.6、5、及び6.8mS/cm)の効果を示す。
図7】Poros XQ樹脂での完全rAAV粒子と不完全粒子との分離に対する、流速の効果を示す。
図8A-8B】図8Aは、低負荷での試料のHPLC分析を示し、図8Bは、ブレイクスルー負荷での試料のHPLC分析を示す。
図9A-9D】ブレイクスルー条件下における、塩:45mM NaCl(図9A)、60mM NaCl(図9B)、75mM NaCl(図9C)、及び90mM NaCl(図9D)による結合強度の効果を示す。
図10A-10D】塩:60mM NaCl(図10A)、75mM NaCl(図10B)、90mM NaCl(図10C)、及び120mM NaCl(図10D)による異なる結合強度での段階溶出を示す。
図11A-11B】60mM NaClを有する50mM Tris pH8.5緩衝液で試料をPXQ樹脂に負荷したことを示す。溶出は、線形勾配を使用して、300mM NaCl、50mM Tris pH8.5緩衝液を用いて行った。図11Bでは、図11Aよりも多くの試料をカラムに負荷した。こうした図は、置換クロマトグラフィーが、完全rAAV粒子を不完全粒子から分離することを示す。図11Bは、より多くの試料を負荷すると置換がより顕著になり、>90%の収率で産物純度がほぼ100%に増加したことを更に示す。
図12】10mM MgCl2を有する50mM Tris pH8.5緩衝液で試料をPXQ樹脂に負荷したことを示す。溶出は、300mM NaCl、50mM Tris pH8.5緩衝液を用いて行った。図12は、10mMの高濃度のMgCl2を負荷試料に使用すると、負荷中に不完全粒子が除去されることを示す。
図13】2.5mM CaCl2を有する50mM Tris pH8.5緩衝液で試料をPXQ樹脂に負荷したことを示す。溶出は、300mM NaCl、50mM Tris pH8.5緩衝液を用いて行った。図13は、CaCl2を負荷物に添加することにより、負荷中に不完全粒子が除去されることを示す。この方法は、図12の方法と比較して、完全粒子と不完全粒子との導電率差異がより大きい(>4mS/cm)ため、よりロバストである。
図14A-14B】1~1.5mM CaCl2+2.5mM MgCl2+20mM NaClを有する50mM Tris pH8.5緩衝液で試料をPXQ樹脂に負荷したことを示す。溶出は、10mM CaCl2、2.5mM MgCl2、20mM NaCl、50mM Tris pH8.5緩衝液を用いて行った。こうした図は、CaCl2濃度のロバスト性を示す。図14Aは、1.5mM CaCl2を用いて負荷した場合であり、図14Bは、1mM CaCl2を用いて負荷した場合である。この方法では、CaCl2濃度が50%変化した場合でさえ、他の添加剤が存在した場合でさえ、完全粒子を一切喪失することなく、不完全粒子の100%除去がもたらされた。更に、CaCl2勾配による溶出では、5mM CaCl2がアプライされるまで完全粒子は溶出しない。これは、不完全収集と完全収集との間に4mM CaCl2というロバストな差異があることを示している。
図14C-14D】図14Bと同じ条件であるが、図14Dに示されている薬物物質の分析的超遠心分離(AUC)分析が共に示されている。
図15】50mM Tris pH8.5で試料をPXQ樹脂に負荷したクロマトグラムを示す。カラムを、1mM CaCl2+2.5mM MgCl2を有する50mM Tris pH8.5緩衝液で洗浄した。この図は、CaCl2を試料負荷物に添加しなかった場合、不完全粒子から完全粒子を精製する際に収率及び純度が両方とも損なわれたことを示している。加えて、カラムに結合した不完全粒子を、洗浄により全て除去することは困難だった。更に、CaCl2濃度を増加させたその後の溶出では、結合した不完全粒子は樹脂上で安定ではなく、新たな不純物が生成され、それによりひいては最終純度が損なわれた。
図16】完全rAAV粒子を不完全粒子から分離するためのサイクル置換クロマトグラフィーの実施スキームを示す。
図17】58mM LiClを有する50mM Tris pH8.5緩衝液で試料をPXQ樹脂に負荷したクロマトグラムを示す。カラムを、50mM Tris pH8.5+120mM LiCl緩衝液で溶出した。この条件では、不完全溶出と完全溶出との導電率差異は0.2mS/cmである。
図18】少なくとも負荷緩衝液中、好ましくは洗浄緩衝液及び溶出緩衝液中の添加剤を用いて完全rAAV粒子を不完全粒子から分離するためのサイクル置換クロマトグラフィーの実施スキームを示す。
図19A-19B】試料負荷中の不完全粒子の除去、及び勾配溶出又は段階溶出を用いたpH減少による完全粒子の回収を示す。負荷試料緩衝液は、50mM Tris、2mM MgCl2、2mM CaCl2、20mM NaCl、pH8.5である。20mM BisTris-30mM酢酸塩、2mM MgCl2、2mM CaCl2、pH6.0を用いた漸減pH勾配での溶出が図19Aに示されている。20mM BisTris-30mM酢酸塩、2mM MgCl2、2mM CaCl2、pH7.0及びpH6.0を用いたpH段階法による溶出が図19Bに示されている。
図20A-20B】(NH42SO4を試料負荷物に添加すると、負荷中に、不完全粒子のフロースルーがもたらされることを示す(図20B)。試料を、0.0002%ポロクサマー188、20mM NaCl、20mM (NH42SO4、及び2.0mM MgCl2を有する100mM Tris pH8.5緩衝液でPXQ樹脂に負荷した。。溶出緩衝液は、0.0002%ポロクサマー188及び300mM NaClを有する50mM Tris pH8.5である。(NH42SO4が存在しない場合(挿入図に示されている)、不完全粒子は、同じ緩衝液伝導率7mS/cmでの試料負荷中に除去されなかった(図20A)。
図21】(NH42SO4を試料負荷物に添加すると、モノリスカラムへの試料負荷中に、不完全粒子のフロースルーがもたらされることを示す。試料を、0.0002%ポロクサマー188、20mM NaCl、20mM (NH42SO4、及び2.0mM MgCl2を有する50mM Tris pH8.5緩衝液でBIA 1.3μmモノリスカラムに負荷した。溶出緩衝液は、0.0002%ポロクサマー188及び200mM NaClを有する50mM Tris pH8.5緩衝液である。
図22A-22B】CuCl2を試料負荷物に添加すると、試料負荷中に、不完全粒子のフロースルーがもたらされることを示す。試料を、0.0002%ポロクサマー188、20mM NaCl、15mM(NH42SO4、2.0mM MgCl2、及び1.5mM CuCl2を有する50mM Tris pH8.5緩衝液でPXQ樹脂に負荷した。溶出緩衝液は、0.0002%ポロクサマー188及び2mM MgCl2を有する180mMリン酸ナトリウムpH7.2緩衝液である。
図22C-22E】CuCl2を試料負荷物に添加すると、分析スケールにおいて、不完全粒子(最も左側のピーク)と完全粒子(左から2番目のピーク)との間の分解能の増加がもたらされることを示す。加えて、CuCl2の添加は、一部の産物バリアント(2番目のピーク以降のピーク)の著しい低減に結び付く。これは、CaCl2を負荷物に添加することにより、負荷中に不完全粒子が除去されることを示す。
図22F】Cu(II)が、他のイオンの中でも、不完全ピークと完全ピークとの分解能の最も高い増加に結び付くことを示す。試料は、0.5~2mMの指定イオンを有する50mM Tris pH8.5中に存在する。
図23A-23E】CuCl2を添加すると、負荷中に不完全粒子を除去することができ、部分粒子と完全粒子との間にある程度の分解能を達成できることを示す。rAAV調製物を、0.0002%ポロクサマー188、20mM NaCl、15mM NH4SO4、2.0mM MgCl2、及び1.5mM CuCl2を有する50mM Tris pH8.5緩衝液でPXQ樹脂に負荷した。結合した粒子を、0.0002%ポロクサマー188及び2つの異なる量のNaClを有する50mM酢酸ナトリウムpH6.0緩衝液を用いて段階的に溶出した。溶出ピーク1は50mM NaClで得られ、溶出ピーク2は200mM NaClで得られる(図23A~23B)。図23C~23Eは、分析用超遠心分離を使用した溶出液ピークの沈降係数分布を示す。下記の表1に示されているように、ピーク1は、部分粒子(40.1%)及び完全粒子(49.3%)を両方とも含むが、ピーク2には、主として完全粒子(69.8%)が富化されており、部分粒子(15.5%)のパーセンテージはより低く、不完全粒子(15.5%)は除去されている。
【表1】

図24A-24G】rAAV粒子バリアントを富化するための3カラム置換クロマトグラフィー法の使用を示す。rAAV調製物を、直列に接続された3つのPXQカラムに負荷した。負荷緩衝液は、50mM Tris pH8.5、75mM NaCl、及び2mM MgCl2である。3つのカラムを、0.0002%ポロクサマー188及び2mM MgCl2を有する200mM NaCl、50mM Tris緩衝液pH8.5を使用して連続的に溶出した(分取クロマトグラムは図24A~24Bを参照)。収集した画分を、UPLCを使用してIEXカラムで分析した。図24C~24Dに示されているように、空粒子はカラムを通過して流出し、空粒子の大部分は負荷中に除去された。加えて、分析用IEXクロマトグラムは、最初のカラムには最も強力な結合粒子が富化されており(最も長い保持時間、図24E)、2番目及び3番目のカラムには、それぞれ2番目に強力な結合粒子及び最も弱い結合粒子が富化されていることを示す(図24F図24G)。最初のカラム溶出物及び2番目のカラム溶出物には、完全粒子が富化されている。これは、3カラム設定で異なる粒子バリアントを富化するための置換クロマトグラフィーの使用を示す。
図25A-25D】完全粒子を富化するための2カラム置換クロマトグラフィー法の使用を示す。rAAV調製物を、直列に接続された2つのPXQカラムに負荷した。負荷緩衝液は、50mM Tris pH8.5、10mM NaCl、2.5mM MgCl2、及び1mM CaCl2である。溶出は、カラム1及びカラム2から、50mM Tris pH8.5、200mM NaCl、2.5mM MgCl2、及び0.0002%ポロクサマー188を用いて連続的に実施した(分取クロマトグラムは図25A~25Bを参照)。収集した画分を、UPLCを使用して分析した。図25Cに示されているように、空粒子は負荷中に流出した。rAAV調製物中の不純物は、完全粒子よりも高い親和性でPXQ樹脂に結合した。その結果、こうした不純物は、カラム2に負荷される調製物中では低減され、カラム2との結合に対して最も高い親和性を有する種は完全粒子だった。溶出すると、カラム2溶出物には完全粒子がより多く富化されている。従って、図25D(UPLC分析)に示されているように、カラム2溶出ピークは、カラム1よりも完全粒子の富化が良好だったことを示している。
図26A-26D】部分粒子及び完全粒子を富化するための3カラム置換クロマトグラフィー法の使用を示す。rAAV調製物を、直列に接続された3つのPXQカラムに負荷した。負荷緩衝液は、50mM Tris pH8.5、20mM NaCl、15mM硫酸アンモニウム、2mM MgCl2、及び1.5mM CaCl2である。溶出は、カラム1、2、及び3から、50mM Tris pH8.5、200mM NaCl、2.5mM MgCl2、及び0.0002%ポロクサマー188を用いて連続的に実施した(分取クロマトグラムは図26A~26Bを参照)。図26C~26Dは、分析用イオン交換クロマトグラフィー及び分析用超遠心分離(AUC)によるフロースルー及び溶出物の特徴付けを示す。空粒子は負荷中に流出した(図26C)。カラム1からの主要溶出物ピークには完全粒子が富化されており、カラム3からの主要溶出物ピークには部分粒子が富化されているが、カラム2には部分粒子及び完全粒子が両方とも含まれている(図26D)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
背景技術及び明細書全体にわたって、種々の出版物、論文、及び特許が引用又は記載されており、そうした参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれている文書、行為、物質、装置、又は物品などの考察は、本発明の状況を提供するためのものである。そのような考察は、こうしたもののいずれか又は全てが、開示又は特許請求されているあらゆる発明に関して、先行技術の一部を形成することを認めるものではない。
本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、別様に定義されていない限り、本発明が関する当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。それ以外の場合、本明細書で使用されるある特定の用語は、本明細書に示されている意味を有する。本明細書で引用されている全ての特許、公開特許出願、及び広報は、あたかも本明細書に完全に示されているかのごとく、参照により組み込まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、状況が明らかに別様に指示しない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の参照物を含むことが留意されなければならない。
【0041】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、状況が別様に要求しない限り、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などの変化形は、記載の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を包含するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解されることになる。本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」という用語は、「含むこと(containing)」又は「含むこと(including)」という用語で置き換えることができ、本明細書で使用される場合、場合によっては「有すること(having)」という用語で置き換えることができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、請求項要素で指定されていないあらゆる要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的及び新規特徴に実質的に影響を及ぼさない物質又はステップを排除しない。本明細書において本発明の態様又は実施形態の状況で使用される場合は常に、「含むこと(comprising)」、「含むこと(containing)」、「含むこと(including)」、及び「有すること(having)」という前述の用語はいずれも、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に置き換えて、本開示の範囲を変更することができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値と併せて使用される場合、参照数値の±10%以内、例えば±5%又は±1%以内の任意の数値を指す。例えば、約5.0のpHは、端値を含む4.5~5.5の任意のpHを意味する。
本明細書で使用される場合、複数の記載要素間の接続用語「及び/又は」は、個々の選択肢及び選択肢の組合せを両方とも包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」で結合されている場合、第1の選択肢は、第2の要素を除いた第1の要素の適用可能性を指す。第2の選択肢は、第1の要素を除いた第2の要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素の適用可能性を指す。こうした選択肢のいずれか1つがその意味の範囲内に入ると理解され、従って、本明細書で使用される「及び/又は」という用語の要件を満たす。選択肢の1つよりも多くの同時適用も、その意味に入ると理解され、従って「及び/又は」という用語の要件を満たす。
【0044】
「ベクター」という用語は、核酸分子のあらゆる小型キャリア、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオン、又は核酸の挿入若しくは組込みにより操作することができる他のビヒクルを指す。ベクターは、遺伝的操作(つまり、「クローニングベクター」)、細胞へのポリヌクレオチドの導入/移入、及び挿入ポリヌクレオチドの細胞での転写又は翻訳に使用することができる。「発現ベクター」は、宿主細胞での発現に必要な必須調節領域を有する遺伝子又は核酸配列を含むベクターである。ベクター核酸配列は、一般に、細胞において増殖するための少なくとも複製起点を含み、任意選択で、異種性核酸配列、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、イントロン、逆位末端配列(ITR)、任意選択の選択可能マーカー、ポリアデニル化シグナルなどの追加エレメントを含む。
【0045】
「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」又は「AAVベクター」という用語は、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、限定ではないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントなどのAAV血清型を含む、アデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを指す。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、AAVベクターとしては、組織向性、安定性、及び形質導入効率を考慮して遺伝子操作されているAAVが挙げられる。AAVベクターは、AAV野生型遺伝子の1つ又は複数、好ましくは複製(rep)遺伝子及びカプシド(cap)遺伝子の全体又は一部が欠失していてよいが、機能的フランキングITR配列を保持している。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製、及びパッケージングに必要である。従って、AAVベクターは、本明細書では、ウイルスの複製及びパッケージングのためにシス位に必要とされる少なくともそうした配列(例えば、機能的ITR)を含むと規定される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列が機能的レスキュー、複製、及びパッケージングを提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、又は置換により変更されていてもよい。
【0046】
「AAVビリオン」という用語は、AAVカプシドタンパク質コートに付随する直鎖状一本鎖核酸ゲノムを含む野生型(wt)AAVウイルス粒子などのウイルス粒子を指す。
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAVベクター)は、アデノ随伴ウイルスに由来する。AAVベクターは、核酸/遺伝物質が細胞で維持され得るように核酸/遺伝物質を細胞へと導入することができるため、遺伝子療法ベクターとして有用である。AAVはヒトの病原性疾患に関連付けられていないため、rAAVベクターは、実質的なAAV病原性又は疾患を引き起こすことなく、異種性核酸配列(例えば、治療用タンパク質及び作用剤)をヒト患者に送達することができる。
【0047】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターなどのベクターの修飾語としての、並びに組換えポリヌクレオチド及びポリペプチドなどの配列の修飾語としての「組換え」という用語は、組成が、一般に自然界では生じない様式で操作されている(つまり、遺伝子操作されている)ことを意味する。rAAVベクターの一例は、野生型AAVゲノムに通常は存在しない核酸がウイルスゲノム内に挿入されているものであってもよい。例えば、治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする核酸(例えば、遺伝子)は、遺伝子がAAVゲノム内で通常は付随している5’領域、3’領域、及び/又はイントロン領域の有無に関わらず、ベクターにクローニングされている。「組換え」という用語は、本明細書では、AAVベクター並びにポリヌクレオチドなどの配列に対して常に使用されているわけではないが、あらゆるそのような省略にも関わらず、AAVベクター、ポリヌクレオチドなどを含む組換え形態は、明示的に含まれる。
【0048】
rAAVベクターは、分子的方法を使用してAAVゲノムから野生型ゲノムを除去し、目的の治療用タンパク質又は核酸分子をコードする核酸などの非天然(異種性)核酸で置き換えることにより、AVVなどのウイルスの野生型ゲノムから導出される。典型的には、AAVの場合、AAVゲノムの一方又は両方の逆位末端配列(ITR)配列が、rAAVベクターに保持されている。rAAVゲノムは、AAVゲノムの全部又は一部が、治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする異種性核酸など、AAVゲノム核酸に関して非天然である配列で置き換えられているため、AAVゲノムとは区別される。従って、非天然配列の組込みは、AAVを「組換え」AAVベクターであると規定し、それを「rAAVベクター」と呼ぶことができる。組換えAAVベクター配列をパッケージングすることができ、これを本明細書ではex vivo、in vitro、又はin vivoでの細胞のその後の感染(形質導入)のための「粒子」と呼ぶ。
【0049】
「組換えAAVビリオン」、「rAAVビリオン」、「AAVベクター粒子」、「完全rAAVカプシド」、「完全rAAV粒子」、「完全カプシド」、及び「完全粒子」という用語は各々、本明細書で使用される場合、片側又は両側がAAV ITRによりフランキングされている目的の異種性ヌクレオチド配列を含む核酸分子が被包されている、AAVタンパク質殻を含む感染性複製欠損ウイルスを指す。完全rAAV粒子は、その中に導入されたAAVベクター、AAVヘルパー機能、及びアクセサリー機能を指定する配列を有する好適な宿主細胞において産生される。このようにして、宿主細胞は、その後の遺伝子送達のためのAAVベクター(目的の組換えヌクレオチド配列を含む)を感染性組換えビリオン粒子へとパッケージングするために必要なAAVポリペプチドをコードすることが可能になる。
【0050】
「不完全カプシド」及び「不完全粒子」という用語は各々、本明細書で使用される場合、片側又は両側がAAV ITRによりフランキングされている異種性核酸配列を含む、AAV粒子殻を含むが完全な核酸分子を欠如するAAV粒子又はビリオンを指す。そのような不完全粒子は、完全な異種性核酸配列を宿主細胞へと又は生物内の細胞へと移入しない。こうした不完全粒子としては、異なる長さ又は量の不完全遺伝物質を有するバリアントが挙げられる。分析方法(例えば、UPLC及びAUC)により任意の遺伝物質を有すると検出されるのに十分な遺伝物質を欠如するか又は全く有していない不完全粒子は、「空」粒子と呼ばれる。ある程度の遺伝物質を有するが完全粒子未満であると分析方法により検出されるのに十分な遺伝物質を有する不完全粒子は、「部分」粒子と呼ばれる。不完全遺伝物質は、インタクトであってもよく又は断片化されていてもよい。
【0051】
当技術分野で公知である任意の分析方法を使用して、完全粒子対不完全粒子又は不完全粒子対完全粒子の比を決定することを含む、完全粒子及び不完全粒子を定量化することができる。例えば、そのような方法は、これらに限定されないが、物理的力価計算;A260&A280吸光度;分析用陰イオン交換クロマトグラフィー法(例えば、UPLC);マルチアングル光散乱法;分析用超遠心分離法(AUC);極低温電子顕微鏡法(Cryo-EM);又は電荷検出質量分析法(CDMS)であってもよい。定量的評価を例示するために、幾つかの異なる方法、UPLC、A260&A280吸光度、及びAUCが、本開示に示されている。
【0052】
ベクター「ゲノム」は、最終的にパッケージング又は被包されてrAAV粒子を形成する組換え配列の部分を指す。組換えプラスミドを使用して組換えAAVベクターを構築又は製造する場合、AAVベクターゲノムは、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない「プラスミド」の部分を含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は、「プラスミド骨格」と呼ばれ、プラスミドのクローニング及び増幅、つまり増殖及び組換えウイルス産生に必要な工程にとって重要であるが、それ自体はrAAV粒子にパッケージング又は被包されない。従って、ベクター「ゲノム」は、rAAVによりパッケージング又は被包されている核酸を指す。
【0053】
「AAVヘルパー機能」という用語は、発現されると、AAV遺伝子産物及びAAVベクターを提供することができ、次いで生産的なAAV複製及びパッケージングのためにトランスで機能するAAV由来コード配列(タンパク質)を指す。従って、AAVヘルパー機能は、rep及びcap並びにある特定のAAV血清型のアセンブリ活性化タンパク質(AAP)などの他のものを含むAAVオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。Rep発現産物は、なかでも、DNA複製のAAV起点の認識、結合、及びニッキング;DNAヘリカーゼ活性;及びAAV(又は他の異種性)プロモーターからの転写のモジュレーションを含む、多数の機能を有することが示されている。Cap発現産物(カプシド)は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターゲノムに欠けているトランス位のAAV機能を補完するために使用される。
【0054】
「AAVヘルパー構築物」という用語は、一般に、例えば対象に対する遺伝子療法により目的の核酸配列を送達するための形質導入AVVベクターを産生するために使用されることになるAAVベクターから欠失されたAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸配列を指す。AAVヘルパー構築物は、一般に、AAV rep及び/又はcap遺伝子の一過性発現を提供して、AAVベクター複製に必要な欠落AAV機能を補完するために使用される。ヘルパー構築物は、一般に、AAV ITRを欠如し、それら自体を複製もパッケージングもすることができない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態であってもよい。Rep発現産物及びCap発現産物を両方ともコードするプラスミドpAAV/Ad及びpIM29+45などの、少なからぬAAVヘルパー構築物が報告されている(例えば、Samulskiら(1989年)J.Virol.63巻:3822~3828頁;及びMcCartyら(1991年)J.Virol.65巻:2936~2945頁を参照)。Rep発現産物及び/又はCap発現産物をコードする少なからぬ他のベクターが報告されている(例えば、米国特許第5,139,941号明細書及び第6,376,237号明細書を参照)。
【0055】
「アクセサリー機能」という用語は、AAVが複製に関して依存する非AAV由来のウイルス及び/又は細胞機能を指す。この用語は、AAV遺伝子転写の活性化、段階特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、及びAAVカプシドパッケージングに関与する部分を含む、AAV複製に必要なタンパク質及びRNAを含む。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)及びワクシニアウイルスなど、公知のヘルパーウイルスのいずれに由来してもよい。
【0056】
「アクセサリー機能ベクター」は、一般に、アクセサリー機能を提供するポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。そのような配列は、アクセサリー機能ベクターに存在してもよく、好適な宿主細胞にトランスフェクトすることができる。アクセサリー機能ベクターは、宿主細胞でのrAAVビリオン産生を支援することが可能である。アクセサリー機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、又はコスミドの形態であってもよい。加えて、アクセサリー機能には、アデノウイルス遺伝子の完全な補完は必要ではない。例えば、DNA複製及び後期遺伝子合成が可能ではないアデノウイルス突然変異体は、AAV複製を許容することが報告されている(Itoら、(1970年)J.Gen.Virol.9巻:243頁;Ishibashiら、(1971年)Virology 45巻:317頁)。同様に、E2B及びE3領域内の突然変異体は、AAV複製を支援することが示されており、これは、E2B及びE3領域が、おそらくはアクセサリー機能の提供に関与していないことを示す(Carterら、(1983年)Virology 126巻:505頁)。E1領域を欠損しているか又はE4領域が欠失しているアデノウイルスは、AAV複製を支援することができない。従って、E1A及びE4領域は、直接的に又は間接的にのいずれかでAAV複製に必要であると考えられる(Laughlinら、(1982年)J.Virol.41巻:868頁;Janikら、(1981年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78巻:1925頁;Carterら、(1983年)Virology 126巻:505頁)。他の特徴付けられているアデノウイルス突然変異体としては、以下のものが挙げられる:EIB(Laughlinら(1982年)、上記;Janikら(1981年)、上記;Ostroveら、(1980年)Virology 104巻:502頁);E2A(Handaら、(1975年)J.Gen.Virol.29巻:239p頁;Straussら、(1976年)J.Virol.17巻:140頁;Myersら、(1980年)J.Virol.35巻:665頁;Jayら、(1981年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78巻:2927頁;Myersら、(1981年)J.Biol.Chem.256巻:567頁);E2B(Carter、Adeno-Associated Virus Helper Functions、I CRC Handbook of Parvoviruses(P.Tijssen編、1990年));E3(Carterら(1983年)、上記);及びE4(Carterら(1983年)、上記;Carter(1995年))。EIBコード領域に突然変異を有するアデノウイルスにより提供されるアクセサリー機能の研究では、矛盾する結果が得られているが、ElB55kは、AAVビリオン産生に必要である可能性があるが、EIB19kはそうではない(Samulskiら、(1988年)J.Virol.62巻:206~210頁)。加えて、国際公開第97/17458号パンフレット及びMatshushitaら、(1998年)Gene Therapy 5巻:938~945頁には、種々のアデノウイルス遺伝子をコードするアクセサリー機能ベクターが記載されている。例示的なアクセサリー機能ベクターは、アデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、及びインタクトE1B55kコード領域を欠如するアデノウイルスEIB領域を含む。そのようなアクセサリー機能ベクターは、例えば、国際公開第01/83797号パンフレットに記載されている。
【0057】
本明細書で使用される場合、「血清型」という用語は、他のAAV血清型とは血清学的に異なるカプシドを有するAAVを指すために使用される区別である。血清学的区別性は、別のAAVと比較して1つのAAVに対する抗体間の交差反応性が欠如していることに基づいて決定される。交差反応性の違いは、通常、カプシドタンパク質配列/抗原決定基の違いによるものである(例えば、AAV血清型のVP1、VP2、及び/又はVP3配列の違いによる)。
【0058】
伝統的な定義下では、血清型は、目的のウイルスを、中和活性に関して全ての既存の特徴付けられている血清型に特異的な血清に対して試験し、目的のウイルスを中和する抗体が見出されないことを意味する。より多くの天然に存在するウイルス分離株が発見されるため、及び/又はカプシド突然変異体が発生するため、現在存在する血清型のいずれかとの血清学的差異が存在する場合もあれば、又は存在しない場合もある。従って、新しいウイルス(例えば、AAV)が血清学的差異を示さない場合、この新しいウイルス(例えば、AAV)は、対応する血清型のサブグループ又はバリアントであるだろう。多くの場合、カプシド配列修飾を有する突然変異ウイルスに対しては、血清型の従来の定義に従って別の血清型であるか否かを決定するための、中和活性に関する血清学的試験はまだ実施されていない。従って、便宜上また繰返しを避けるために、「血清型」という用語は、血清学的に異なるウイルス(例えば、AAV)並びに血清学的に異なっておらず、所与の血清型のサブグループ又はバリアント内に存在する可能性のあるウイルス(例えば、AAV)の両方を幅広く指す。
【0059】
rAAVベクターとしては、任意のウイルス株又は血清型が挙げられる。非限定的な例として、rAAVプラスミド又はベクターゲノム又は粒子(カプシド)は、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、例えば、限定はされないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントを含む任意のAAV血清型に基づいていてもよい。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列情報を含む全ての上述のAAVの説明は、それらの全体が参照により組み込まれる。そのようなベクターは、同じ株又は血清型(又はサブグループ又はバリアント)に基づいていてもよく、又は互いに異なっていてもよい。非限定的な例として、1つの血清型ゲノムに基づくrAAVプラスミド又はベクターゲノム又は粒子(カプシド)は、ベクターをパッケージングするカプシドタンパク質の1つ又は複数と同一であってもよい。加えて、rAAVプラスミド又はベクターゲノムは、ベクターゲノムをパッケージングするカプシドタンパク質の1つ又は複数とは異なるAAV(例えば、AAV2)血清型ゲノムに基づいていてもよく、その場合、3つのカプシドタンパク質の少なくとも1つは、これらに限定されないが、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントであってもよい。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。従って、rAAVベクターは、特定の血清型並びに混合血清型に特徴的な遺伝子/タンパク質配列と同一の遺伝子/タンパク質配列を含む。種々の実施形態は、カプシドがイオン交換クロマトグラフィーカラムに結合することが可能である限り、あらゆる供給源に由来するあらゆるrAAV又はAAVカプシドに適用可能である。
【0060】
種々の例示的な実施形態では、rAAVベクターは、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントの1つ又は複数のカプシドタンパク質と少なくとも70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など)同一であるカプシド配列を含むか又はからなる。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。種々の例示的な実施形態では、rAAVベクターは、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、 Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントの1つ又は複数のITRと少なくとも70%以上(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%など)同一である配列を含むか又はからなる。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
これらに限定されないが、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書(これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントを含むrAAV、並びにバリアント、ハイブリッド、及びキメラ配列は、当業者に公知である組換え技法を使用して、1つ又は複数の機能的AAV ITR配列でフランキングされている1つ又は複数の異種性ポリヌクレオチド配列(導入遺伝子)を含むように構築することができる。そのようなベクターは、野生型AAV遺伝子の1つ又は複数が全体的に又は部分的に欠失されているが、組換えベクターのレスキュー、複製、及びrAAVベクター粒子へのパッケージングに必要な、少なくとも1つの機能的フランキングITR配列を保持する。従って、rAAVベクターゲノムは、複製及びパッケージングのためにシス位に必要な配列(例えば、機能的ITR配列)を含むだろう。
【0062】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では同義的に使用され、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む、全ての形態の核酸、オリゴヌクレオチドを指す。核酸としては、ゲノムDNA、cDNA、及びアンチセンスDNA、並びにスプライス又は未スプライスmRNA、rRNA tRNA、並びに阻害性DNA又はRNA(RNAi、例えば、低分子又は短鎖ヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子又は短鎖干渉(si)RNA、トランススプライシングRNA、又はアンチセンスRNA)が挙げられる。核酸としては、天然に存在するポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、及び意図的に修飾又は変更されたポリヌクレオチドが挙げられる。核酸は、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖であってもよく、直鎖状又は環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸が考察されている場合、特定のポリヌクレオチドの配列又は構造は、本明細書では、5’から3’方向で配列を提供する慣例に従って記載されていてもよい。
【0063】
「異種性」核酸配列は、ポリヌクレオチドを細胞にベクター媒介性移入/送達するための、AAVプラスミド又はベクターに挿入されたポリヌクレオチドを指す。異種性核酸配列は、AAV核酸とは異なり、つまりAAV核酸に対して非天然である。細胞へと移入/送達したら、ベクター内に含まれている異種性核酸配列を発現させることができる(例えば、適切な場合には転写及び翻訳させることができる)。代替的に、細胞へと移入/送達された、ベクター内に含まれている異種性ポリヌクレオチドは、発現させる必要はない。
【0064】
「核酸配列」によりコードされる「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」は、天然に存在するタンパク質と同様の完全長天然配列、並びに部分配列、修飾型、又はバリアントが天然完全長タンパク質のある程度の機能を保持する限り、機能的部分配列、修飾型、又は配列バリアントを含む。核酸配列によりコードされるそのようなポリペプチド、タンパク質、及びペプチドは、治療される哺乳動物において欠損しているか、又はその発現が不十分であるか、又は欠乏している内因性タンパク質と同一であってもよいが、同一である必要はない。
「導入遺伝子」は、本明細書では、細胞又は生物へと導入することが意図されているか又は導入されている核酸(例えば、異種性)を便宜的に指すために使用される。導入遺伝子としては、治療用タンパク質又はポリヌクレオチド配列をコードする異種性核酸などの任意の核酸が挙げられる。
【0065】
導入遺伝子を有する細胞では、導入遺伝子は、プラスミド又はAAVベクターによる細胞の「形質導入」又は「トランスフェクション」により導入/移入されている。「形質導入する」及び「トランスフェクトする」という用語は、宿主細胞(例えば、HEK293)又は生物の細胞への、核酸などの分子の導入を指す。導入遺伝子は、レシピエント細胞のゲノム核酸に組み込まれてもよく又は組み込まれなくてもよい。導入核酸は、レシピエント細胞又は生物の核酸(ゲノムDNA)に組み込まれると、その細胞又は生物に安定的に維持され、レシピエント細胞又は生物の細胞の子孫細胞又は子孫生物に更に受け継がれるか又は遺伝され得る。
「宿主細胞」は、例えば、AAVベクタープラスミド、AAVヘルパー構築物、アクセサリー機能ベクター、又は他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用することができるか又は使用されている微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を意味する。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。従って、「宿主細胞」は、一般に、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指す。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶発的な、又は意図的な突然変異により、元の親とは形態学に又はゲノムDNA若しくは全DNA相補性が必ずしも完全に同一であるとは限らない可能性があることが理解される。例示的な宿主細胞としては、HEK293などのヒト胎児腎臓(HEK)細胞が挙げられる。
【0066】
「治療用タンパク質」は、本明細書で使用される場合、細胞又は対象におけるタンパク質の不十分な量、非存在、又は欠陥に起因する症状を緩和又は低減することができるペプチド又はタンパク質である。導入遺伝子によりコードされる「治療用」タンパク質は、例えば遺伝的欠陥の修正、遺伝子(発現又は機能)欠損の修正などの利益を対象に付与することができる。
本発明に従って有用な遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質)をコードする異種核酸の非限定的な例としては、これらに限定されないが、以下のものを含む疾患又は障害の治療に使用することができるものが挙げられる:
「止血」又は血液凝固障害、例えば、血友病A、阻害性抗体を有する血友病A患者、血友病B、凝固第VII、第VIII、第IX及び第X、第XI、第V、第XII、第II因子、フォンビルブランド因子の欠乏症、複合FV/FVIII欠乏症、サラセミア、ビタミンKエポキシドレダクターゼCI欠乏症、ガンマ-カルボキシラーゼ欠乏症;貧血、外傷に伴う出血、傷害、血栓症、血小板減少症、脳卒中、凝固障害、播種性血管内凝固症候群(DIC);ヘパリン、低分子量ヘパリン、五糖、ワルファリン、小分子抗血栓薬(つまり、FXa阻害剤)に関連付けられる過剰抗凝固作用;並びにベルナールスーリエ症候群、グランツマン血小板無力症(Glanzman thromblastemia)、及び貯蔵プール欠乏症などの血小板障害。
【0067】
ある特定の実施形態では、疾患又は障害は、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼすか又はそれを起源とする。ある特定の実施形態では、疾患は神経変性疾患である。ある特定の実施形態では、CNS又は神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、遺伝性痙性片麻痺、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ケネディ病、ポリグルタミンリピート病、又はパーキンソン病である。ある特定の実施形態では、CNS又は神経変性疾患は、ポリグルタミンリピート病である。ある特定の実施形態では、ポリグルタミンリピート病は、脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6、SCA7、又はSCA17)である。
【0068】
ある特定の実施形態では、異種性核酸は、以下のものからなる群から選択されるタンパク質をコードする:ポンペ病の治療のためのGAA(酸性アルファ-グルコシダーゼ);ウィルソン病の治療のためのATP7B(銅輸送ATPase2);ファブリー病の治療のためのアルファガラクトシダーゼ;シトルリン血症1型の治療のためのASS1(アルギノコハク酸シンターゼ);ゴーシェ病1型の治療のためのベータ-グルコセレブロシダーゼ;ティサックス病の治療のためのベータ-ヘキソサミニダーゼA;C1阻害剤欠乏症I型及びII型としても知られている遺伝性血管浮腫(HAE)の治療のためのSERPING1(C1プロテアーゼ阻害剤又はC1エステラーゼ阻害剤);並びに糖原病I型(GSDI)の治療のためのグルコース-6-ホスファターゼ。
【0069】
ある特定の実施形態では、異種性核酸は、以下のものをコードする:CFTR(嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質)、血液凝固(凝血)因子(第XIII因子、第IX因子、第VIII因子、第X因子、第VII因子、第VIIa因子、プロテインCなど)、機能獲得型血液凝固因子、抗体、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)、エリスロポエチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、金属輸送体(ATP7A若しくはATP7)、スルファミダーゼ、リソソーム蓄積症に関与する酵素(ARSA)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-25グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼ、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、ホルモン、成長因子、インスリン様成長因子1若しくは2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、神経成長因子、神経栄養因子-3及び-4、脳由来神経栄養因子、グリア由来成長因子、トランスフォーミング成長因子α及びβ、サイトカイン、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン12、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシン、自殺遺伝子産物、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、シトクロムP450、デオキシシチジンキナーゼ、腫瘍壊死因子、薬剤耐性タンパク質、腫瘍抑制タンパク質(例えば、p53、Rb、Wt-1、NF1、フォンヒッペル-リンダウ(VHL)、腺腫性大腸ポリポーシス(APC))、免疫調節特性を有するペプチド、寛容原性又は免疫原性ペプチド又はタンパク質Tレジトープ(Tregitope)又はhCDR1、インスリン、グルコキナーゼ、グアニル酸シクラーゼ2D(LCA-GUCY2D)、Rabエスコートタンパク質1(コロイデレミア)、LCA5(LCA-レベルシリン(Lebercilin))、オルニチンケト酸アミノトランスフェラーゼ(脳回転状萎縮症)、レチノスキシン1(X連鎖網膜剥離症)、USH1C(Usher症候群1C)、X連鎖網膜色素変性GTPase(XLRP)、MERTK(AR型のRP:網膜色素変性症)、DFNB1(コネキシン26難聴)、ACHM2、3、及び4(色覚異常)、PKD-1若しくはPKD-2(多発性嚢胞腎)、TPP1、CLN2、スルファターゼ、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ、カテプシンA、GM2-AP、NPC1、VPC2、スフィンゴ脂質活性化タンパク質、ゲノム編集のための1つ若しくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ、又はゲノム編集のための修復鋳型として使用される1つ若しくは複数のドナー配列。
【0070】
核酸分子、クローニングベクター、発現ベクターなどのベクター(例えば、ベクターゲノム)、及びプラスミドは、組換えDNA技術法を使用して調製することができる。ヌクレオチド配列情報が利用可能であると、様々な手段による核酸分子の調製が可能になる。例えば、ベクター又はプラスミドを含む第IX因子(FIX)をコードする異種性核酸は、種々の標準的なクローニング、組換えDNA技術を使用して、細胞発現又はin vitro翻訳及び化学合成技法により製作することができる。ポリヌクレオチドの純度は、配列決定及びゲル電気泳動などにより決定することができる。例えば、核酸は、ハイブリダイゼーション又はコンピュータに基づくデータベーススクリーニング技法を使用して単離することができる。そのような技術としては、これらに限定されないが、(1)ゲノムDNA又はcDNAライブラリーと相同性ヌクレオチド配列を検出するためのプローブとのハイブリダイゼーション;(2)例えば、発現ライブラリーを使用して、共通の構造的特徴を有するポリペプチドを検出するための抗体スクリーニング;(3)目的の核酸配列にアニーリングすることが可能なプライマーを使用した、ゲノムDNA又はcDNAに対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR);(4)関連配列の配列データベースのコンピュータ検索;及び(5)サブトラクション核酸ライブラリーのディファレンシャルスクリーニングが挙げられる。
【0071】
rAAVビリオンを生成するための当技術分野で公知の方法:例えば、1つのAAVヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルス)による共感染と併せてAAVベクター及びAAVヘルパー配列を使用するトランスフェクション、又は組換えAAVベクター、AAVヘルパーベクター、及びアクセサリー機能ベクターによるトランスフェクション。rAAVビリオンを生成するための非限定的な方法は、例えば、米国特許第6,001,650号明細書及び第6,004,797号明細書、国際出願PCT/US16/64414号パンフレット(国際公開第2017/096039号パンフレットとして公開)並びに米国特許仮出願第62/516,432号明細書及び第62/531,626号明細書に記載されている。組換えrAAVベクター産生(つまり、細胞培養系でのベクター生成)後、宿主細胞及び細胞培養上清からrAAVビリオンを得、次いで本明細書に記載のように精製することができる。
【0072】
完全rAAV粒子の精製方法
一基本態様では、本出願は、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対して不完全粒子よりも高い結合親和性を有する、ステップ、並びに
(c)クロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、完全rAAV粒子対不完全粒子の増加した比を含む精製調製物を得るステップ
を含む方法に関する。
【0073】
本出願の実施形態によると、rAAV調製物は、完全rAAV粒子、並びに空粒子及び部分粒子を含む不完全粒子、並びにそれらのバリアントを含む任意の混合物であってもよい。また、rAAV調製物は、更に分離するための種々の不完全粒子(例えば、空粒子及び部分粒子)の混合物を含んでいてもよい。例えば、rAAV調製物は、細胞ライセート、処理された細胞ライセート、上清、又は以前に精製された調製物であってもよい。本出願の方法に有用なrAAV調製物は、本開示に照らして、当技術分野で公知のrAAVを収集するための任意の方法を使用して得ることができる。例えば、細胞ライセートは、細胞を破壊又は溶解し、遠心分離、顕微溶液化、及び/又は深層濾過により細胞デブリを除去することにより得ることができる。細胞ライセートは直接使用してもよく、又は本出願の方法に使用する前に更に処理若しくは保管してもよい。
【0074】
典型的には、細胞ライセートを、濾過及び遠心分離などにより清澄化して細胞デブリを除去し、清澄化細胞ライセートにする。ライセート(任意選択で清澄化されている)は、完全rAAV粒子、不完全粒子、及び他のrAAVベクター産生/工程関連不純物、例えば、とりわけ細胞性タンパク質、脂質、及び/又は核酸、並びに細胞培養培地成分が含まれている可能性のある、宿主細胞の可溶性細胞成分を含む。次いで、任意選択で清澄化されたライセートを追加の精製ステップに供して、当技術分野で公知の任意の方法により他の工程関連不純物を除去することができる。得られた処理されたライセートを、本出願の方法に使用する前に、適切な緩衝液で希釈又は濃縮してもよい。
【0075】
一部の実施形態では、不完全粒子は空粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は部分粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子及び部分粒子を両方とも含む。
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。この方法で使用される陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、強陰イオン交換樹脂であってもよく又は弱陰イオン交換樹脂であってもよい。好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、独自の第四級アミン、四級化ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン、又はジメチルアミノプロピルなどの陰イオン交換リガンドを含む。より好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体は、弱陰イオン交換樹脂(例えば、Poros50D、Poros50PI)又は強陰イオン交換樹脂(例えば、Poros XQ、Poros50HQ)から選択される。陰イオン交換クロマトグラフィー媒体の他の例としては、これらに限定されないが、DEAE Sepharose FF、Q-Sepharose(HP及びFF)、QSepharose FF(低置換及び高置換)、Capto Q、Q XP、Source30Q 及び15Q、Fractogel DEAE、及びMPHQが挙げられる。陰イオン交換クロマトグラフィー媒体の他の例としては、CIMmultus(商標)QAモノリシックカラムなどのモノリスが挙げられる。
【0076】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros50HQ、Poros50D、Poros50PI、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、CIMmultus(商標)QAモノリシックカラムなどのモノリスである。
一部の実施形態では、複数のクロマトグラフィー媒体が使用される。
一部の実施形態では、複数のクロマトグラフィー媒体が使用される場合、媒体は同じである。
一部の実施形態では、イオン交換クロマトグラフィー媒体は、AVB Sepharose(商標)High Performance(GE Healthcare、マサチューセッツ州マールボロ)などの親和性クロマトグラフィー媒体、又はSuperdex200(GE Healthcare)などのサイズ排除クロマトグラフィーと併せて(前又は後を意味する)使用される。
【0077】
一部の実施形態では、rAAV調製物が、ステップ(b)において、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷緩衝液で負荷される場合、完全rAAV粒子のみがクロマトグラフィー媒体に結合し、不完全粒子はクロマトグラフィー媒体に結合せず、カラムを通過して流出する。一部の実施形態では、カラムからのフロースルーは空粒子を含む。一部の実施形態では、カラムからのフロースルーは部分粒子を含む。一部の実施形態では、カラムからのフロースルーは完全rAAV粒子及び空粒子を両方とも含む。一部の実施形態では、カラムからのフロースルーは完全rAAV粒子及び部分粒子を両方とも含む。一部の実施形態では、カラムからのフロースルーは、完全rAAV粒子、並びに空粒子及び部分粒子を含む不完全粒子を両方とも含む。
【0078】
一部の実施形態では、負荷緩衝液中のrAAV調製物が、ステップ(b)においてクロマトグラフィー媒体を含むカラムにアプライされる場合、完全rAAV粒子、及びバリアント様粒子を含む不完全粒子は両方ともクロマトグラフィー媒体に結合するが、完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対して不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、カラムにアプライされる完全粒子及び不完全粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、クロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、カラムからの負荷フロースルーへと置換される。カラムからの負荷フロースルーは、完全rAAV粒子及び不完全粒子を両方とも含む。ある特定の実施形態では、一部の不完全粒子(例えば、空粒子及び/又は部分粒子)は、クロマトグラフィー媒体に結合するが、溶出緩衝液による完全rAAV粒子の溶出前に洗浄緩衝液により溶出することができる。
【0079】
理論に束縛されることは望まないが、完全AAV粒子と不完全AAV粒子との分離は、置換現象により負荷中に生じると考えられる。粒子の混合物を含むrAAV調製物をまずカラムにアプライすると、全ての粒子がカラムの利用可能な部位に結合する。利用可能な部位がカラムの入口に向かって占有されると共に、クロマトグラフィー媒体に対してより高い親和性を有する完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対してより低い親和性を有する結合した不完全粒子を置換し、カラムの上部部分では完全粒子が富化される。この過程で、不完全粒子は、下流のクロマトグラフィー媒体に結合する。より多くの混合物がカラムにアプライされると、より多くの完全rAAV粒子が、上流のクロマトグラフィー媒体に結合し、結合した不完全粒子を置換し、不完全粒子を更に下流へと押し流すことになる。ある特定の実施形態では、試料負荷が完了した後、クロマトグラフィー媒体には不完全粒子が結合していないか、又はクロマトグラフィー媒体に結合している不完全粒子の量は、完全rAAVの量と比較して低減されている。完全粒子による不完全粒子の置換は、クロマトグラフィー媒体に対するそれらの親和性が異なる結果であるため、それらの親和性の対比を強化することにより分離を向上させることができる。クロマトグラフィー媒体に結合する粒子の親和性は、rAAV粒子、樹脂、及び環境(緩衝液条件(塩及びpH)を含む)などの要因により決まる。同様に、この推論は、不完全rAAV粒子が部分粒子を含む場合、部分粒子にも当てはまる。不完全粒子集団のバリアントとして、部分粒子は、他の不完全粒子、特に空粒子よりも高い親和性だが、完全粒子よりも低い親和性でクロマトグラフィー媒体に結合することができ、従って完全粒子及び部分粒子は両方とも、他の不完全粒子を置換することができる。他の不完全粒子に加えて、クロマトグラフィー媒体に対する完全粒子及び部分粒子の親和性の対比を強化することにより、完全粒子からの部分粒子の分離を更に向上させることができる。また同様に、不完全rAAV粒子が空粒子を含む場合、本開示の方法を使用して、完全粒子及び他の不完全粒子からの空粒子の分離を向上させることができる。
【0080】
置換の利益は、カラムにおいてブレイクスルーが生じ、カラムクロマトグラフィー媒体の結合容量点を超えると実現される。クロマトグラフィー媒体樹脂が局所的にその飽和を超え続けると、完全粒子と不完全粒子との間で競合が起こり、結合した不完全粒子が、進入してくる完全粒子により置換されることに結び付く。
置換の利益は、クロマトグラフィー媒体に対する親和性が異なることに基づいて、他のrAAV不純物及び産物バリアント、例えば、切断導入遺伝子を有する部分的に充填されたカプシド、翻訳後修飾を有する空の若しくは部分的な若しくは完全なカプシドバリアント、又は断片若しくは凝集体の分離にも同様に適用することができる。
【0081】
一部の実施形態では、不完全粒子が空粒子及び部分粒子を両方とも含む場合、全ての不完全粒子は、カラムの利用可能な部位に結合する。利用可能な部位が占有されると、クロマトグラフィー媒体に対して空粒子よりも比較的より高い親和性を有する部分粒子は、結合した空粒子を置換する。
陰イオン交換樹脂などのクロマトグラフィー媒体は、pH及び緩衝液容積などの種々の条件下で種々の緩衝液を用いて、平衡化、洗浄、及び溶出することができる。以下は、特定の非限定的な例を説明することを目的とするが、本発明を限定することを意図するものではない。
陰イオン交換クロマトグラフィーは、標準的緩衝液を使用し、製造業者の仕様書に従って平衡化することができる。次いで、平衡化後、試料を負荷する。その後、クロマトグラフィー媒体を、少なくとも1回又はそれよりも多くの回数で、例えばカラム容積の2~10倍で洗浄する。クロマトグラフィー媒体からの溶出は、2~20カラム容量の高塩緩衝液による。
【0082】
本出願の実施形態によると、陰イオン交換クロマトグラフィーの洗浄及び溶出のための平衡緩衝液及び溶液は、約pH6.0~pH12のpHが適切である。加えて、陰イオン交換カラムの洗浄及び溶出のための適切な平衡緩衝液及び溶液は、一般に、性質が陽イオン性又は双性イオン性である。そのような緩衝液としては、限定ではないが、以下の緩衝剤を有する緩衝液が挙げられる:N-メチルピペラジン;ピペラジン;Bis-Tris;Bis-Trisプロパン;トリエタノールアミン;Tris;Tris酢酸;N-メチルジエタノールアミン;1,3-ジアミノプロパン;エタノールアミン;及び酢酸などが挙げられる。試料を溶出するには、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、硫酸塩、ギ酸塩、又は酢酸塩などの塩を使用して、開始緩衝液のイオン強度を増加させる。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、約20~50mMの濃度、例えば、20mM、30mM、40mM、50mM、100mM、又はそれらの間の任意の濃度の選択された緩衝剤を含んでいた。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、20~50mM Trisを含む。
【0083】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。例えば、負荷緩衝液は、NaCl、MgCl2、及びCaCl2からなる群から選択される複数の塩を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、NaCl、MgCl2、CuCl2、LiCl、及びCaCl2を含む。塩に対する陰イオン成分は決定的なものではなく、特定の陰イオンが好ましいということはない。
【0084】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含み、完全rAAV粒子のみがクロマトグラフィー媒体に結合し、不完全粒子はクロマトグラフィー媒体に結合せず、カラムを通過して流出する。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、少なくともCaCl2を含む。
【0085】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約10~100mM、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のナトリウム塩を含む。好ましい実施形態では、ナトリウム塩の濃度は、約20~60mM、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~20mM、例えば、0、5、10、15、20mM、又はそれらの間の任意の濃度のマグネシウム塩を含む。好ましい実施形態では、マグネシウム塩の濃度は、約1~10mM、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0086】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~100mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のリチウム塩を含む。好ましい実施形態では、リチウム塩の濃度は、約0~75mM、例えば、0、15、25、35、45、55、65、75mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~10mM、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度のカルシウム塩を含む。好ましい実施形態では、カルシウム塩の濃度は、約0.1~2.5mM、例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~5mM、例えば、0、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mM、又はそれらの間の任意の濃度の銅塩を含む。好ましい実施形態では、銅塩の濃度は、約0.1~2.5mM、例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約5~100mM、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のアンモニウム塩を含む。好ましい実施形態では、アンモニウムの濃度は、約10~50mM、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0087】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約7~10のpH、例えば、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、又はそれらの間の任意のpH、好ましくは約8~9のpHを有する。
ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、好ましくは、Tris中に、より好ましくは20~50mM Tris中に、約20~60mM NaCl、1~5mM MgCl2、0.1~2.5mM CaCl2を含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、好ましくはTris中に、より好ましくは20~100mM Tris中に、約20~60mM NaCl、10~30mM(NH42SO4、1~5mM MgCl2、0.1~2.5mM CuCl2を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0089】
負荷ステップ(b)の後、負荷緩衝液中のrAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷し、完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に対して不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に結合する。任意選択で、カラムを、溶出前に洗浄緩衝液で洗浄してもよい。例えば、クロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子を除去するために、洗浄緩衝液は、負荷条件と比較して増加した塩濃度及び/又は増加した溶出pHを有してもよい。
次いで、クロマトグラフィー媒体に結合した完全粒子を、例えば、負荷条件と比較して増加した塩濃度及び/又は溶出用に調整されたpHを使用して、より純粋な形態で溶出させる。pHを調整すると、完全粒子と不完全粒子との分離を強化することができる。好ましくは、完全粒子の溶出は、pHを変化させずに塩勾配のみを使用して達成される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、溶出緩衝液は、約20~70mMの濃度、例えば、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、又はそれらの間の任意の濃度の選択された緩衝剤を含んでいた。好ましい実施形態では、溶出緩衝液は、40~60mM Trisを含む。
【0090】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。例えば、溶出緩衝液は、好ましくは、NaCl、MgCl2、LiCl、CuCl2、及びCaCl2からなる群から選択される1つ又は複数の塩を含んでいてもよい。塩の陰イオン成分は決定的なものではない。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。
【0091】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~1000mM、例えば,0、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000mM、又はそれらの間の任意の濃度のNaClを含む。好ましい実施形態では、NaClの濃度は、約20~300mM、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~30mM、例えば、0、5、10、15、20、25、30mM、又はそれらの間の任意の濃度のMgCl2を含む。好ましい実施形態では、MgCl2の濃度は、約2~15mM、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0092】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~200mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200mM、又はそれらの間の任意の濃度のLiClである。好ましい実施形態では、LiClの濃度は、約0~150mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0.1~20mM、例えば、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20mM、又はそれらの間の任意の濃度のCaCl2を含む。好ましい実施形態では、CaCl2の濃度は、約5~10mM、例えば、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~10mM、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度のCuCl2を含む。好ましい実施形態では、CuCl2の濃度は、約0~3mM、例えば、0、1、2、3mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0093】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約5~100mM、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度の(NH42SO4を含む。好ましい実施形態では、(NH42SO4の濃度は、約10~50mM、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10のpH、又はそれらの間の任意のpH、好ましくは約7~9のpHを有する。
ある特定の実施形態では、溶出緩衝液は、好ましくはTris中に、より好ましくは40~60mM Tris中に、約20~150mM NaClを含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0094】
別の基本態様では、本出願は、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物の第1のバッチを、第1のクロマトグラフィー媒体を含む第1のカラムに負荷するステップであり、完全rAAV粒子は、第1のクロマトグラフィー媒体に対して不完全粒子よりも高い結合親和性を有し、第1のカラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、第1のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、第1のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第1のカラムからの第1の負荷フロースルーへと置換される、ステップ、
(c)第1の負荷フロースルーを、第2のクロマトグラフィー媒体を含む第2のカラムに負荷して、負荷された又は部分的に負荷された第2のカラム及び第2のカラムからの第1のフロースルーを得るステップであり、第2のクロマトグラフィー媒体は、第1のクロマトグラフィー媒体と同じタイプである、ステップ、
(d)任意選択で、第1のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第1のカラムを得るステップ、
(e)ステップ(c)の後に、又は洗浄ステップ(d)が実施される場合には洗浄ステップ(d)の後に、第2のカラムをバイパスし、第1のクロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第1のカラムからの第1の溶出物及び溶出された第1のカラムを得るステップであり、第1の溶出物は、完全rAAV粒子対不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、
(f)任意選択で、第1のカラムフロースルー後に第2のカラムが飽和(つまり、負荷)されていない場合、負荷緩衝液中のrAAV調製物の第2のバッチを、部分的に負荷された第2のカラムにアプライしてもよく、第2のカラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、第2のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、第2のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第2のカラムからの第2の負荷フロースルーへと置換される、ステップ、
(g)ステップ(f)が実施される場合、ステップ(d)と(e)との間で、第2のカラムからの第2の負荷フロースルーを、洗浄された第1のカラムに負荷して第2の負荷された第1のカラムを得、任意選択で、ステップ(e)での溶出へと進む前に第2の負荷された第1のカラムを洗浄するステップ、
(h)任意選択で、第2のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第2のカラムを得るステップ、
(i)ステップ(g)の後で、又は洗浄ステップ(h)が実施される場合には洗浄ステップ(h)の後で、第1のカラムをバイパスし、第2のクロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第2の溶出物及び溶出された第2のカラムを得るステップであり、第2の溶出物は、完全rAAV粒子対不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、並びに
(j)第1の溶出物及び第2の溶出物を一緒にして、完全rAAV粒子の精製調製物を生成するステップ
を含む方法に関する。
【0095】
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、部分粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子及び部分粒子を両方とも含む。
一部の実施形態では、第1のクロマトグラフィー媒体及び/又は第2のクロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、2カラム精製法は、図12に示されている実施スキームに従って設定及び操作される。2カラム法のステップ(a)及び(b)は、1カラム置換クロマトグラフィー法の最初の2つのステップと同様である。こうした2つのステップの後、完全rAAV粒子は、第1のクロマトグラフィー媒体に結合し、第1のカラムからの第1の負荷フロースルーは、完全rAAV粒子及び不完全粒子を両方とも含む。
ステップ(f)では、負荷緩衝液中のrAAV調製物の第2バッチを、ステップ(c)で部分的に負荷された第2カラムにアプライする。rAAV調製物の第2バッチの量は、第1のバッチと同じであってもよく、又は第1のバッチと異なっていてもよい。好ましくは、第2のバッチの量は第1のバッチと同じである。
【0096】
本出願の実施形態によると、ステップ(f)において第2カラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、第1負荷フロースルーからの量及びrAAV調製物の第2バッチからの量を含み、第2のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えている。部分的に負荷された第2のカラムへの第2のバッチの負荷中に、第2のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第2のカラムからの第2の負荷フロースルーへと置換される。
その後のステップ(g)では、第2のカラムからの第2の負荷フロースルーを、以前に洗浄又は溶出された第1のカラムに負荷する。次いで、ステップ(g)の後、第1のカラムを部分的に負荷し、第2のカラムからの第2の負荷フロースルー中の完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、この時点では、第1のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えていない。
【0097】
ステップ(b)~(i)は、rAAV調製物の量に応じて、1サイクル又は複数サイクルで実施することができる。「1サイクル」という用語は、本明細書で使用される場合、ステップ(b)~ステップ(i)を連続して1回実施すること指す。「複数サイクル」という用語は、本明細書で使用される場合、ステップ(b)~ステップ(i)を連続して1回よりも多く実施すること指す。
ステップ(b)~(i)が複数サイクルで実施される場合、繰返しステップ(b)における「第1のバッチ」は、そのサイクル番号のrAAV調製物の新たな「第1のバッチ」を指し、繰返しステップ(f)における「第2のバッチ」は、その同じサイクルでのrAAV調製物の新たな「第2のバッチ」を指す。
【0098】
一部の実施形態では、不完全粒子が空粒子及び部分粒子を両方とも含む場合、ステップ(i)の第2の溶出物は、完全rAAV粒子及び部分rAAV粒子対空rAAV粒子の増加した比を含む。
一部の実施形態では、複数のサイクルが実施される場合、溶出されたカラムを、次の負荷サイクルの前に、サイクル全体にわたって一貫したカラム結合容量を維持するために有益であるか又は必要であるその後のステップに供してもよい。例えば、そのようなステップとしては、これらに限定されないが、カラムのストリッピング、カラムの清浄化、及び/若しくは消毒、並びに/又はカラムの再平衡化が挙げられる。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、約20~50mMの濃度、例えば、20mM、30mM、40mM、50mM、又はそれらの間の任意の濃度の選択された緩衝剤を含んでいた。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、20~50mM Trisを含む。
【0099】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、0~200mMの範囲の、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。塩に対する陰イオン成分は決定要因ではなく、特定の陰イオンが好ましいということはない。例えば、負荷緩衝液は、好ましくは、NaCl、MgCl2、LiCl、CuCl2、及びCaCl2からなる群から選択される1つ又は複数の塩を含んでいてもよい。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約10~100mM、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のナトリウム塩を含む。好ましい実施形態では、ナトリウム塩の濃度は、約20~60mM、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0100】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~20mM、例えば、0、5、10、15、20mM、又はそれらの間の任意の濃度のマグネシウム塩を含む。好ましい実施形態では、マグネシウム塩の濃度は、約1~10mM、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~100mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のリチウム塩を含む。好ましい実施形態では、リチウム塩の濃度は、約0~75mM、例えば、0、15、25、35、45、55、65、75mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0101】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~10mM、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度のカルシウム塩を含む。好ましい実施形態では、カルシウム塩の濃度は、約0.1~2.5mM、例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~5mM、例えば、0、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mM、又はそれらの間の任意の濃度の銅塩を含む。好ましい実施形態では、銅塩の濃度は、約0.1~2.5mM、例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約5~100mM、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のアンモニウム塩を含む。好ましい実施形態では、アンモニウムの濃度は、約10~50mM、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0102】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10のpH、又はそれらの間の任意のpH、好ましくは約8~9のpHを有する。
ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、好ましくはTris中に、より好ましくは20~50mM Tris中に、約20~60mM NaCl、1~5mM MgCl2、0.1~2.5mM CuCl2を含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、0.00005~0.01%ポロクサマー188、より好ましくは0.0002~0.001%ポロクサマー188を有する、好ましくはTris中に、より好ましくは20~50mM Tris中に、約20~60mM NaCl、50~30mM(NH42SO4、1~5mM MgCl2、0.1~3mM CuCl2を含む。
負荷ステップの後、完全粒子はクロマトグラフィー媒体に結合し、不完全粒子はカラムから出てフロースルーに入る。任意選択で、カラムを、溶出前に好適な洗浄緩衝液で洗浄してもよい。例えば、クロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子を除去するために、洗浄緩衝液は、負荷条件と比較して増加した塩濃度及び/又は増加した溶出pHを有してもよい。
【0104】
次いで、クロマトグラフィー媒体に結合した完全粒子を、例えば、負荷条件と比較して増加した塩濃度及び/又は溶出用に調整されたpHを使用して、より純粋な形態で続いて溶出させる。pHを調整すると、分離の強化を可能にすることができる。好ましくは、完全粒子の溶出は、pHを増加させずに塩勾配のみを使用して達成される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、約20~70mMの濃度、例えば、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、又はそれらの間の任意の濃度の選択された緩衝剤を含んでいた。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、40~60mM Trisを含む。
【0105】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。例えば、溶出緩衝液は、好ましくは、NaCl、MgCl2、LiCl、CuCl2、及びCaCl2からなる群から選択される1つ又は複数の塩を含んでいてもよい。塩の陰イオン成分は決定的なものではない。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。例えば、負荷緩衝液は、好ましくは、NaCl、MgCl2、LiCl、CuCl2、及びCaCl2からなる群から選択される1つ又は複数の塩を含んでいてもよい。
【0106】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~1000mM、例えば0、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000mM、又はそれらの間の任意の濃度のナトリウム塩を含む。好ましい実施形態では、ナトリウム塩の濃度は、約20~300mM、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~30mM、例えば、0、5、10、15、20、25、30mM、又はそれらの間の任意の濃度のマグネシウム塩を含む。好ましい実施形態では、マグネシウム塩の濃度は、約2~15mM、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0107】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~200mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200mM、又はそれらの間の任意の濃度のリチウム塩を含む。好ましい実施形態では、リチウム塩の濃度は、約0~150mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0.1~20mM、例えば、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20mM、又はそれらの間の任意の濃度のカルシウム塩を含む。好ましい実施形態では、カルシウム塩の濃度は、約5~10mM、例えば、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0108】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~5mM、例えば、0、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mM、又はそれらの間の任意の濃度の銅塩を含む。好ましい実施形態では、銅塩の濃度は、約0.1~2.5mM、例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約5~100mM、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のアンモニウム塩を含む。好ましい実施形態では、アンモニウムの濃度は、約10~50mM、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10のpH、又はそれらの間の任意のpH、好ましくは約8~9のpHを有する。
【0109】
ある特定の実施形態では、溶出緩衝液は、好ましくはTris中に、より好ましくは40~60mM Tris中に、約20~150mM NaClを含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0110】
一部の実施形態では、この方法では、完全rAAV粒子の精製のために、少なくとも2つのカラム、例えば3つのカラムが使用される。特に、この方法は、ステップ(g)~(j)を含まないが、
(k)ステップ(f)の後、第2のカラムからの第2の負荷フロースルーを、第3のクロマトグラフィー媒体を含む第3のカラムに負荷して、負荷された又は部分的に負荷された第3のカラムを得るステップであり、好ましくは、第3のクロマトグラフィー媒体は、第1のクロマトグラフィー媒体と同じタイプである、ステップ、
(l)任意選択で、第2のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第2のカラムを得るステップ、
(m)ステップ(k)の後で、又は洗浄ステップ(l)が実施される場合には洗浄ステップ(l)の後で、第1のカラムをバイパスし、第2のクロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第2の溶出物及び溶出された第2のカラムを得るステップであり、第2の溶出物は、完全rAAV粒子対不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、
(n)任意選択で、第2のカラムフロースルー後に第3カラムが飽和(つまり、負荷)されていない場合、負荷緩衝液中のrAAV調製物の第3バッチを、部分的に負荷された第3のカラムにアプライしてもよく、第3のカラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、第3のクロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、第3のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第3のカラムからの第3の負荷フロースルーへと置換される、ステップ、
(o)ステップ(n)が実施される場合、ステップ(d)と(e)との間で、第3のカラムからの第3の負荷フロースルーを、洗浄された第1のカラムに負荷して、第2の負荷された第1のカラムを得、任意選択で、ステップ(e)での溶出に進む前に、第2の負荷された第1のカラムを洗浄する、ステップ、
(p)任意選択で、第3のカラムを洗浄緩衝液で洗浄して、洗浄された第3のカラムを得るステップ、
(q)第1のカラム及び第2のカラムをバイパスし、第3のクロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、第3の溶出物及び溶出された第3のカラムを得るステップであり、第3の溶出物は、完全rAAV粒子対不完全rAAV粒子の増加した比を含む、ステップ、並びに
(r)第1の溶出物、第2の溶出物、及び第3の溶出物を一緒にして、完全rAAV粒子の精製調製物を生成するステップ
を更に含む。
【0111】
一部の実施形態では、不完全粒子が空粒子及び部分粒子を両方とも含む場合、完全粒子は第1のカラムで富化され、部分粒子は第2のカラムで富化され、空粒子は第3のカラムで富化される。
【0112】
本発明者らの知る限り、不完全rAAV粒子から完全rAAV粒子を精製するための置換クロマトグラフィー法は存在しない。通常の陰イオン交換クロマトグラフィーなどの、完全粒子を精製するための既存の精製方法と比較して、本出願の方法後の完全粒子の純度は著しく増加する。一部の実施形態では、精製調製物は、不完全粒子を実質的に含まず、より詳細には、空粒子及び/又は部分粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、完全rAAV粒子対不完全粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の完全rAAV粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、若しくは50:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは49:1以上である。
【0113】
本出願の実施形態によると、精製調製物中の完全rAAV粒子対不完全粒子の比は、完全rAAV粒子及び不完全粒子の数により計算することができる。一部の実施形態では、比は、完全rAAV粒子及び不完全粒子のモル濃度に基づく検量線から導出される。一部の実施形態では、比は、完全rAAV粒子及び不完全粒子の数に基づいて計算される。
【0114】
一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子中の完全粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、好ましくは49:1以上である。
本出願の置換クロマトグラフィー法は、精製された完全粒子の高い収率/回収率も達成することができる。一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子の収率は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。「収率」という用語は、本明細書で使用される場合、初期rAAV調製物中の完全rAAV粒子に対する、精製調製物中の完全rAAV粒子のパーセンテージ又は割合を指す。収率を計算する方法は複数存在する。収率を計算する1つの方法は、パーセント(%)=(精製調製物中の完全rAAV粒子の量)/(初期rAAV調製物中の完全rAAV粒子の量)×100である。収率パーセントを計算するための別の方法は、精製調製物中の導入遺伝子のコピー数を、初期調製物中の導入遺伝子のコピー数で割り、100を掛けることである。
【0115】
別の基本態様では、本出願は、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を精製するための方法であって、
(a)完全rAAV粒子及び不完全粒子を含むrAAV調製物を準備するステップ、
(b)負荷緩衝液中のrAAV調製物を、クロマトグラフィー媒体を含むカラムに負荷するステップであり、負荷緩衝液はCaCl2を含み、完全rAAV粒子は、クロマトグラフィー媒体に結合する、ステップ、
(c)クロマトグラフィー媒体に結合した完全rAAV粒子を溶出緩衝液で溶出して、精製調製物を得るステップであり、溶出緩衝液は任意選択でCaCl2を含む、ステップ
を含む方法に関する。
【0116】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、イオン交換カラムクロマトグラフィー媒体、好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体である。
一部の実施形態では、カラムクロマトグラフィー媒体は、Poros HQ、Poros PD、ポリエチレンイミン(PI)、Capto ImpRes Q、及びPoros XQからなる群から選択され、好ましくはPoros XQである。
一部の実施形態では、カラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えない。
【0117】
一部の実施形態では、カラムにアプライされる完全rAAV粒子及び不完全粒子の量は、クロマトグラフィー媒体の結合容量を超えており、第1のクロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子は、完全rAAV粒子により、第1のカラムからの第1の負荷フロースルーへと置換される。
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、部分粒子を含む。
一部の実施形態では、不完全粒子は、空粒子及び部分粒子を両方とも含む。
【0118】
本出願の実施形態によると、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの塩を負荷緩衝液に添加することにより、より多くの完全rAAV粒子がクロマトグラフィー媒体に結合し、より少ない不完全粒子がクロマトグラフィー媒体に結合するように、クロマトグラフィー媒体に対する親和性の差異を増加させることができる。従って、カラムからの負荷フロースルーは、より少ない完全粒子を含み、従って完全粒子の回収率が増加する。所与の塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
【0119】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~10mM、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度のカルシウム塩を含む。好ましい実施形態では、カルシウム塩の濃度は、約0.1~2.5mM、例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~100mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のリチウム塩を含む。好ましい実施形態では、リチウム塩の濃度は、約0~75mM、例えば、0、15、25、35、45、55、65、75mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、約20~50mMの濃度、例えば、20mM、30mM、40mM、50mM、又はそれらの間の任意の濃度の選択された緩衝液を含んでいた。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、20~50mM Trisを含む。
【0120】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、ナトリウム塩及び/又はマグネシウム塩を更に含む。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、ナトリウム塩及びマグネシウム塩を両方とも更に含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約10~100mM、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mM、又はそれらの間の任意の濃度のナトリウム塩を含む。好ましい実施形態では、ナトリウム塩の濃度は、約20~60mM、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約0~20mM、例えば、0、5、10、15、20mM、又はそれらの間の任意の濃度のマグネシウム塩を含む。好ましい実施形態では、マグネシウム塩の濃度は、約1~10mM、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0121】
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、約6~10、例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10のpH、又はそれらの間の任意のpH、好ましくは約8~9のpHを有する。
ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、好ましくは、Tris中に、より好ましくは20~50mM Tris中に、約20~60mM NaCl、1~5mM MgCl2、0.1~2.5mM CaCl2を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、負荷緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
【0122】
負荷ステップの後、完全粒子はクロマトグラフィー媒体に結合し、不完全粒子はカラムから出てフロースルーに入る。任意選択で、カラムを、好適な洗浄緩衝液で洗浄してもよい。例えば、クロマトグラフィー媒体に結合した不完全粒子を除去するために、洗浄緩衝液は、負荷条件と比較して増加した塩濃度及び/又は溶出用に調整されたpHを有してもよい。
次いで、クロマトグラフィー媒体に結合した完全粒子は、例えば、負荷条件と比較して増加した塩濃度及び/又は溶出用に調整されたpHを使用して、より純粋な形態で続いて溶出される。pHを調整すると、完全rAAV粒子と不完全rAAV粒子との分離を増加させることができる。好ましくは、完全粒子の溶出は、pHを増加させずに塩勾配のみを使用して達成される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、エタノールアミン、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。
【0123】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。例えば、溶出緩衝液は、好ましくは、NaCl、MgCl2、LiCl、CuCl2、及びCaCl2からなる群から選択される1つ又は複数の塩を含んでいてもよい。塩の陰イオン成分は決定的なものではない。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、K(I)、Li(I)、Ca(II)、Mg(II)、Cu(II)、Ba(II)、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、Zn(II)、Cd(II)、Pb(II)、Fe(III)、Fe(II)、Na(I)、及びNH4 +からなる群から選択される陽イオンの少なくとも1つの塩を含む。例えば、負荷緩衝液は、好ましくは、NaCl、MgCl2、LiCl、CuCl2、及びCaCl2からなる群から選択される1つ又は複数の塩を含んでいてもよい。
【0124】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0.1~20mM、例えば、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20mM、又はそれらの間の任意の濃度のカルシウム塩を含む。好ましい実施形態では、カルシウム塩の濃度は、約5~10mM、例えば、5、6、7、8、9、10mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~200mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200mM、又はそれらの間の任意の濃度のリチウム塩を含む。好ましい実施形態では、リチウム塩の濃度は、約0~150mM、例えば、0、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
【0125】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、Tris、Bis-tris、Bis-trisプロパン、Tris酢酸、及びホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、負荷緩衝液は、約20~70mMの濃度、例えば、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、又はそれらの間の任意の濃度の選択された緩衝剤を含んでいた。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は40~60mM Trisを含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤は、ポロクサマー188、ポリソルベート80、ポリソルベート20、NP-40、Triton X-100、及びTriton CG-110からなる群から選択される。
一部の実施形態では、溶出緩衝液中の界面活性剤の濃度は、0.0001%~0.1%である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、ナトリウム塩及び/又はマグネシウム塩を更に含む。好ましい実施形態では、負荷緩衝液は、ナトリウム塩及びマグネシウム塩を両方とも更に含む。塩の陰イオン成分は、決定的なものではない。
【0126】
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~1000mM、例えば0、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000mM、又はそれらの間の任意の濃度のナトリウム塩を含む。好ましい実施形態では、ナトリウム塩の濃度は、約20~150mM、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約0~30mM、例えば、0、5、10、15、20、25、30mM、又はそれらの間の任意の濃度のマグネシウム塩を含む。好ましい実施形態では、マグネシウム塩の濃度は、約2~15mM、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15mM、又はそれらの間の任意の濃度である。
一部の実施形態では、溶出緩衝液は、約6~10、例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10のpH、又はそれらの間の任意のpH、好ましくは約8~9のpHを有する。
【0127】
ある特定の実施形態では、溶出緩衝液は、好ましくはTris中に、より好ましくは40~60mM Tris中に、約20~150mM NaClを含む。
一部の実施形態では、精製調製物は、不完全粒子を実質的に含まない。他の実施形態では、精製調製物は、rAAV調製物よりも、完全rAAV粒子対不完全粒子の増加した比を含む。好ましくは、精製調製物中の完全rAAV粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、若しくは50:1以上、又はそれらの間の任意の比、より好ましくは49:1以上である。
本出願の実施形態によると、精製調製物中の完全rAAV粒子対不完全粒子の比は、完全rAAV粒子及び不完全粒子の数により計算することができる。一部の実施形態では、比は、完全rAAV粒子及び不完全粒子のモル濃度に基づく検量線から導出される。一部の実施形態では、比は、完全rAAV粒子及び不完全粒子の数に基づいて計算される。
【0128】
一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子中の完全粒子対不完全粒子の比は、9:1以上、好ましくは49:1以上である。
一部の実施形態では、精製された完全rAAV粒子の収率は、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。「収率」という用語は、本明細書で使用される場合、初期rAAV調製物中の完全rAAV粒子に対する、精製調製物中の完全rAAV粒子のパーセンテージを指す。例えば、収率(%)=(精製調製物中の完全rAAV粒子の量)/(初期rAAV調製物中の完全rAAV粒子の量)、パーセントとして。
以下の実施形態は、上記に記載の基本態様を含む、本明細書で開示される基本態様の各々に当てはまる。
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、ポリペプチドをコードする導入遺伝子、タンパク質をコードするか又は目的の転写物へと転写される核酸、又はsiRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム、及びshRNAからなる群から選択される核酸を含む。
【0129】
本明細書で開示される種々の実施形態は、カプシドの供給源又は血清型に関わりなく、イオン交換クロマトグラフィーカラムに結合することが可能な任意のrAAV若しくはAAVカプシド、粒子、不純物、又は凝集体に適用可能である。本開示の方法は、イオン交換クロマトグラフィーカラムに結合可能な任意のAAV又はrAAVカプシドに適用可能であるため、カプシドは、任意の供給源、例えば、ヒト、トリ、ウシ、イヌ、ウマ、霊長類、非霊長類、ヒツジ、又はそれらの派生物に由来してもよい。
【0130】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、細胞標的指向性ペプチドなどのペプチド修飾を有するAAVカプシドを含み、Pulicherlaら、Mol.Ther.、19巻(6号)1070~1078頁(2011年)(なかでも、AAV9.47を含むAAV9バリアントが記載されている)、米国特許第7,906,111号明細書(なかでもAAV9(hu14)が記載されている)、第10,532,111号明細書(なかでもNP59が記載されている)、第10,738,087号明細書(なかでもAnc-80が記載されている)、第9,169,299号明細書(「LK03」が記載されている)、第9,840,719号明細書(「RHM4-1」が記載されている)、第7,749,492号明細書、第7,588,772号明細書(「DJ」及び「DJ8」が記載されている)、第9,587,282号明細書、及び国際公開第2012/145601号パンフレット、国際公開第2013/158879号パンフレット、国際公開第2015/013313号パンフレット、国際公開第2018/156654号パンフレット、米国特許出願公開第2013/0059732号明細書(これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に示されているAAVカプシドのバリアントを含む、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、Rh8、Rh10、Rh74、AAV3B、AAV-2i8、LK03、RHM4-1、DJ、DJ8、NP59、Anc-80、及びそれらのバリアントからなる群から選択される1つ又は複数のAAVに由来する。
【0131】
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、以下のものからなる群から選択される遺伝子産物をコードする導入遺伝子を含む:インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、表皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFa)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、TGFp、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3及びNT4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ、及びチロシンヒドロキシラーゼ。
【0132】
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL1~IL-17)、単球走化性タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α及びβ、インターフェロンα、β、及びγ、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンド、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、単鎖T細胞受容体、クラスI及びクラスII MHC分子からなる群から選択される遺伝子産物をコードする導入遺伝子を含む。
【0133】
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(fumarylacetacetate hydrolase)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、第V因子、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンベータシンターゼ、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ-グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylate)、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、RPE65、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)配列、及びジストロフィンcDNA配列からなる群から選択される、先天性代謝異常の修正に有用なタンパク質をコードする導入遺伝子を含む。
【0134】
一部の実施形態では、完全rAAV粒子は、第VIII因子及び第IX因子をコードする導入遺伝子を含む。
本出願の実施形態による方法により精製される目的の完全rAAV粒子は、宿主細胞で産生することができる。初期ステップとして、典型的には、rAAVビリオンを産生する宿主細胞を、任意選択で、rAAVビリオンを産生する宿主細胞(懸濁又は接着)が培養された細胞培養上清(培地)の回収と組み合わせて、回収することができる。本明細書の方法では、回収された細胞及び任意選択で細胞培養上清を、必要に応じてそのまま使用してもよく又は濃縮して使用してもよい。更に、アクセサリー機能を発現させるために感染を使用する場合、残留ヘルパーウイルスを不活化してもよい。例えば、アデノウイルスは、例えば20分間以上およそ60℃の温度に加熱することにより不活化することができ、それによりヘルパーウイルスのみが不活化される。なぜならば、AAVは熱安定性であるが、ヘルパーアデノウイルスは熱不安定性であるからである。
【0135】
回収物の細胞及び/又は上清を、例えば、界面活性剤、顕微溶液化、及び/又はホモジナイゼーションなどの化学的又は物理的手段により細胞を破壊することにより溶解し、rAAV粒子を放出させる。細胞溶解と同時に又は細胞溶解後に続いて、ベンゾナーゼなどのヌクレアーゼを添加して、夾雑DNAを分解してもよい。典型的には、得られたライセートを、濾過、遠心分離などにより清澄化して、細胞デブリを除去し、清澄化細胞ライセートにする。特定の例では、ライセートを、ミクロン径細孔サイズフィルター(例えば、0.1~10.0μmの細孔サイズフィルター、例えば0.45μm及び/又は細孔サイズ0.2μmフィルター)で濾過して、清澄化ライセートを生成する。
【0136】
ライセート(任意選択で清澄化されている)は、rAAV粒子(完全rAAV粒子及びAAV不完全粒子)及びAAVベクター産生/工程関連不純物、例えば、とりわけ細胞性タンパク質、脂質、及び/又は核酸、並びに細胞培養培地成分を含んでいてもよい、宿主細胞に由来する可溶性細胞成分を含む。次いで、必要に応じて清澄化されたライセートを、クロマトグラフィーを使用して完全AAV粒子を不純物から精製するための追加の精製ステップに供する。清澄化されたライセートを、本出願のクロマトグラフィー法の前に、適切な緩衝液で希釈又は濃縮してもよい。
【実施例
【0137】
実施例1
完全rAAV粒子と不完全粒子とを分離するための樹脂スクリーニング
この実施例では、完全rAAV粒子と不完全粒子との分離に最も良好な樹脂を特定するために、様々な樹脂をスクリーニングした。
方法及び材料
試料は、不完全粒子及び完全RHM4-1 rAAV粒子を、2.4:1の比で含んでいた(つまり、70%不純物/30%産物)。カラムサイズは、0.353mL 3mm×50mmである。樹脂スクリーニングは、パルス負荷(結合容量の10%)及び1分間の滞留時間を使用して実施した。スクリーニング中、3つのpH値(8.0、8.6、及び9.25)及び塩(6.8、5、及び1.6mS/cm)による3つの結合強度を試験した。負荷緩衝液は、50mM Tris又は25mM Trisだった。カラムからのフロースルー流出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して、完全粒子と不完全粒子との分離を決定した。
【0138】
結果
Poros50HQ樹脂(Thermo Scientific;POROS(商標)-(マサチューセッツ州ウォルサム)):この樹脂は、ある程度の弱陰イオン交換(AEX)官能性を有する四級化ポリエチレンイミン官能基に基づく。図1A~1Cに示されているように、Poros50HQ樹脂での完全粒子と不完全粒子との分離は、50mM Tris及び30mM NaCl下の3つのpH値の全てで有意差はなく、pH8.6での分離が、他の2つのpH値と比較してわずかにより良好であるに過ぎなかった。
Poros50D樹脂:この樹脂は、ジメチルアミノプロピル官能基に基づく。図2A~2Dに示されているように、rAAV粒子とPoros50D樹脂との結合は、スクリーニング条件下では不良であり、pHの増加と共に減少した。図では種々の負荷緩衝液を使用した:pH8.6及び50mM Tris(図2A)、pH8.6及び25mM Tris(図2B)、pH8.0及び25mM Tris(図2C)、及びpH9.25及び25mM Tris(図2D)。
【0139】
Poros50PI樹脂:この樹脂は、ポリエチレンイミン官能基に基づく。図3A~3Eに示されているように、rAAV粒子とPoros50PI樹脂との結合は、pHの増加と共に減少した。NaClの添加も、分解能をわずかに向上させたことに留意されたい。こうした図では、異なるpH及び塩濃度でのPoros50PI樹脂が評価されている:pH8.0、NaCl無し(図3A)、pH8.6、NaCl無し(図3B)、pH8.6及び30mM NaCl(図3C)、pH9.2、NaCl無し(図4C)、pH9.2及び30mM NaCl(図3E)。
Capto ImpRes Q樹脂:この樹脂には、イオン基リガンドを有するCapto(商標)(Cytiva Life Sciences-マサチューセッツ州マールボロ)に基づくアガロースマトリックスが使用されている。図4A~4Cに示されているように、rAAV粒子とCapto ImpRes Q樹脂との結合は、pHの増加と共に増加した。しかしながら、スクリーニング条件下では、完全粒子と不完全粒子との分離は、Capto ImpRes Q樹脂では不良だった。こうした図では、異なるpH値の異なる緩衝液を用いてCapto ImpRes Q樹脂が評価されている:pH8.0及び50nm Tris、NaCl無し(図4A)、pH8.6及び25mM Tris、NaCl無し(図4B)、及びpH9.0及び30mM Tris、NaCl無し(図4C)。
【0140】
Poros XQ樹脂:この樹脂は、独自の第四級アミン官能基に基づく。スクリーニングにより、Poros XQ樹脂は、完全粒子と不完全粒子との分離に最も良好であることが示された。図5に示されているように、分離は、他のpH値(pH8及び9.25)と比較してpH8.75において最も良好でだった。図6に示されているように、結合塩も分離に影響を及ぼした。加えて、図7に示されているように、分離は、pH8.75で実施した場合、異なる流速(84cm/h、150cm/h、及び300cm/h)下で同様だった。
【0141】
実施例2
Poros XQ樹脂を用いた置換クロマトグラフィーの最適化
この実施例では、Poros XQ樹脂にて完全RHM4-1 rAAV粒子と不完全粒子とを置換クロマトグラフィーで分離するための最適な条件を特定するために、異なる条件をスクリーニングした。
図8Aは、試料をpH8.6の30mM Trisで負荷し、負荷量が少なかった場合、流出物のHPLC分析では2つの産物ピークが存在したことを示す。2つのピークのうち、不完全粒子対完全粒子の比(E/F)は、ピークP1では9.9だったが、ピークP2のE/Fの比は0.8だった。これは、Poros XQ樹脂に結合する不完全粒子の親和性が、樹脂に結合する完全粒子の親和性よりも弱く、従って不完全粒子が完全粒子よりも早く溶出したことを示している。
対照的に、結合容量を超える量の試料を負荷した場合、図8Bに示されているように、フロースルー(FT)中のE/F比は、ブレイクスルーでは2.4であった。図8Bは、負荷物への30mM NaClの添加が、置換の促進には十分ではなかったことを示している。従って、フロースルーのE/F比は、負荷物の比と同じである。
次に、置換カラムクロマトグラフィー下で不完全粒子と完全粒子をより良好に分離するための最適な塩濃度を特定するために、異なる塩濃度における異なる結合強度をスクリーニングした。図9A及び9Bに示されているように、負荷緩衝液中のNaCl濃度をそれぞれ45mMから60mMへと増加させると、フロースルー中のE/F比が3.4から229に増加し、より高い塩濃度では完全粒子による不完全粒子のより大きな置換が示された。同時に、産物ピークP2の純度は、E/F=1からE/F=0.7へと向上した。
【0142】
しかしながら、塩濃度を更に75mM及び90mMへと増加させても、それぞれ図9C及び9Dに示すように、樹脂に対する試料の全体的親和性が低減されたため、置換は更には強化されなかった。従って、図9A~9Dは、不完全粒子と完全粒子との間の結合親和性の差異が最も顕著であった中間の結合強度で最適な置換が生じたことを示している。より一般には、こうした結果は、塩濃度で調整可能な結合強度を手がかりとして使用して、不完全粒子の置換を促進することができ、その結果、分解能を向上させることができることを示している。
加えて、段階溶出条件も試験して、溶出緩衝液中の塩範囲を決定した。試験に使用した負荷緩衝液は、50mM Tris pH8.5及び30mM NaClを含んでいた。図10A~10Dに示されているように、段階溶出は、それぞれ60mM、75mM、90mM、及び120mMの濃度のNaClを有する全ての試験した溶出緩衝液で機能した。
【0143】
この実施例では、更なる置換も研究した。図11A~11Bに示されていように、ブレイクスルー負荷を超えてより多くの試料を負荷すると、更なる置換が生じ、カラムの底部部分に結合した不完全粒子も完全粒子により置換され、フロースルーに存在した。図11Bは、更なる置換により、精製調製物中のrAAVの純度がほぼ100%に向上されたことを示した。加えて、更なる置換クロマトグラフィーでも、精製された完全粒子が90%よりも高い高収率で得られた。
【0144】
実施例3
試料負荷物及び洗浄緩衝液における添加剤としてのCaCl2の使用
Poros XQ樹脂を用いた完全RHM4-1 rAAV粒子と不完全粒子との分離の研究では、置換クロマトグラフィー精製での産物喪失が認められた。例えば、ブレイクスルー実行では、負荷緩衝液が50mM Tris/60mM NaCl、pH8.5の場合、回収収率は、単一カラム法では89.81%、提案されている2カラム法では74.92%だった。喪失は、主にフロースルー中に完全粒子が存在することに起因すると考えられる。分解能を向上させ、フロースルー中の完全rAAV粒子の量を減少させ、従って回収収率を増加させるために、試料負荷物又は洗浄緩衝液への添加剤の添加を研究した。
図12に示されているように、試料負荷物へのMgCl2の添加をまず試験した。MgCl2を添加剤として使用して、分解能を向上させることができた。しかしながら、その後の洗浄ステップでは、カラムに結合している不完全粒子を洗い流すためにMgCl2の濃度を増加させる必要があった。負荷緩衝液と溶出緩衝液との間の伝導率の差異がわずか約1mS/cmであったため、試料負荷物へのMgCl2の添加は、非結合条件下でさえもロバストではないことが見出された。
【0145】
他の添加剤も試験した。CaCl2は、Poros XQ樹脂での精製に最も良好なフロースルーをもたらした添加剤であることが特定された。図13に示されているように、CaCl2の添加は、不完全rAAV粒子と完全rAAV粒子との分離を向上させた。加えて、CaCl2を使用すると、負荷緩衝液と溶出緩衝液との間の伝導率の差異はロバストであり、例えば、約4mS/cmだった。
CaCl2を試料負荷物に添加しなかった場合、不完全粒子からの完全rAAV粒子の精製において、収率及び産物純度が両方とも損なわれることも見出された。図15に示されているように、NaCl以外の添加剤が試料負荷物に使用されておらず、洗浄緩衝液が1mM CaCl2及び2.5mM MgCl2を含んでいた場合、カラムに結合した不完全粒子を洗浄により全て除去することは困難だった。更に、CaCl2濃度増加によるその後の溶出中(図15)、結合した不完全粒子は樹脂上で不安定であり、新たな不純物が生成されると考えられ、それがひいては産物純度に影響を及ぼした。
従って、本発明者らは、驚くべきことに、試料負荷物に、好ましくは洗浄緩衝液及び溶出緩衝液にCaCl2を添加すると、最適な分離が得られ、収率が向上することを見出した。
【0146】
実施例4
試料負荷物及び洗浄緩衝液における添加剤としてのLiClの使用
Poros XQ樹脂での精製について試験した別の添加剤は塩化リチウムだった。図17に示されているように、LiClの添加は、不完全RHM4-1 rAAV粒子と完全RHM4-1 rAAV粒子との分離を向上させた。加えて、LiClを使用すると、負荷緩衝液と溶出緩衝液との間の伝導率の差異は、約0.2mS/cmだった。
【0147】
実施例5
試料負荷物及び洗浄緩衝液にCaCl2を添加することによる、置換クロマトグラフィーでの分離及び収率の向上強化
実施例3及び4に示されているような、負荷緩衝液並びに任意選択で洗浄緩衝液及び溶出緩衝液にCaCl2のような添加剤を使用することによる不完全RHM4-1 rAAV粒子と完全RHM4-1 rAAV粒子との分離の向上も、実施例2に示されている置換クロマトグラフィー法と併せて使用することができる。こうした方法は、図18に示されているように組み合わせると、不完全粒子に対する完全rAAV粒子の最適な分離及び収率をもたらすことになる。
【0148】
実施例6
添加剤及びpH減少による分離の向上強化
実施例3及び4に示されているような、負荷緩衝液及び任意選択で洗浄緩衝液及び溶出緩衝液にCaCl2のような添加剤を使用することによる不完全RHM4-1 rAAV粒子と完全RHM4-1 rAAV粒子との分離向上は、図19に示されているように、勾配溶出又は段階溶出を使用してpHを減少させることにより強化することができる。
【0149】
実施例7
添加剤(NH42SO4による分離の向上強化
PXQ樹脂での空RHM4-1 rAAV粒子と完全RHM4-1 rAAV粒子との分離向上は、図20A~20Bに示されているように、(NH42SO4を負荷緩衝液中の添加剤として使用することにより達成することができる。
【0150】
実施例8
添加剤(NH42SO4による分離の向上強化
BIAモノリス樹脂での空RHM4-1 rAAV粒子と完全RHM4-1 rAAV粒子との分離向上は、図21に示されているように、(NH42SO4を負荷緩衝液中の添加剤として使用することにより達成することができる。
【0151】
実施例9
添加剤CuCl2による分離の向上強化
PXQ樹脂での空RHM4-1 rAAV粒子と完全RHM4-1 rAAV粒子との分離向上は、図22A~22Eに示されているように、CuCl2を負荷緩衝液中の添加剤として使用することにより達成することができる。
【0152】
実施例10
CuCl2による部分粒子の分離並びにより低いpH及び漸増塩による溶出の向上強化負荷緩衝液にCuCl2のような添加剤を使用することによる空LK03 rAAV粒子、部分LK03 rAAV粒子、及び完全LK03 rAAV粒子の分離向上は、図23A~23Eに示されているように、より低いpHでの塩を増加させた勾配溶出又は段階溶出により強化することができる。
実施例11
複数のカラムによる部分粒子の分離の向上強化
2つのカラムを使用して観察された空LK03 rAAV粒子、部分LK03 rAAV粒子、及び完全LK03 rAAV粒子の分離向上は、図24~26に示されているように、少なくとも3つのカラムを使用することにより強化することができる。この方法は、図25に示されているように、カラムに対して完全粒子よりも強力な親和性を有する不純物及び凝集体を除去するために使用することができる。この2カラム設定では、カラムに対して完全粒子よりも強力な親和性を有する凝集体及び不純物が、最初のカラムに結合しているため、2番目のカラムには完全粒子が富化される。複数カラム設定では、最初のカラムでは最も強力な結合粒子(最も高い保持時間)が富化され、その後のカラムでは次に最も強力な結合粒子が富化される。標的rAAV粒子又は不純物が最も大きな親和性を有するカラムを決定したら、本開示の方法を使用して、所望のrAAV粒子又は不純物を精製することができる。この実施例は、複数カラム設定で異なる粒子バリアントを富化するための本開示の方法の使用を更に示す。
【0153】
本明細書に記載の例及び実施形態は例示を目的としているに過ぎず、その幅広い発明概念から逸脱することなく上記に記載の実施形態に変更をなすことができることが理解される。例えば、本発明の概念は、空粒子から部分粒子を分離して、又は図25に示されているように、樹脂に対して完全粒子よりも強力な親和性を有する不純物を分離して、第1のカラムとは対照的に完全粒子を第2のカラムにて富化することを含む。従って、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の趣旨及び範囲内の改変を網羅することが意図されていることが理解される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図24G
図25A
図25B
図25C
図25D
図26A
図26B
図26C
図26D
【国際調査報告】