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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】グルカゴン類似体及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C07K14/605
A61K38/26 ZNA
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P3/08
A61P3/10
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P39/02
A61P1/18
A61P3/06
A61P3/04
A61P9/12
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576365
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2022099357
(87)【国際公開番号】W WO2022262837
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110676681.3
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522226498
【氏名又は名称】北京拓界生物医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING TUO JIE BIOPHARMACEUTICAL CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】Level 7, No.4 Building, No.9 Yi Ke Road, ZGC Life Science Park, Changping District, Beijing 102206 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】劉 偉兵
(72)【発明者】
【氏名】黄 旭超
(72)【発明者】
【氏名】張 暁謙
(72)【発明者】
【氏名】呉 方舟
(72)【発明者】
【氏名】王 雷
(72)【発明者】
【氏名】曲 亮
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA32
4C084DB35
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA451
4C084ZA661
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZC202
4C084ZC331
4C084ZC35
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC371
4C084ZC412
4C084ZC422
4C084ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA30
4H045FA33
4H045FA74
(57)【要約】
グルカゴン類似体及びその医薬用途に関する。具体的に、上記グルカゴン類似体は、顕著に向上した体外活性、優れた物理的/化学的安定性及び良い溶解度を有し、低血糖、肥満症、糖尿病などの代謝性疾患の治療に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造で示される、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物であって、
そのうち、
は水素、C1-4アルキル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基又はpGluであり、
は-OH又は-NHであり、
、X15、X16、X20、X21、X24、X27とX28は、互いに独立的に任意の天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から選ばれ、X17はAibである、
式(I)の構造で示される、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項2】
はHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、
15はAsp又はGluから選ばれ、
16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、
20はAla、Gln、、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、
21はAsp又はGluから選ばれ、
24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、
27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、
28はAsn、Glu又はSerから選ばれる、
請求項1に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項3】
15はAspであり、
16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれる、
請求項1又は2に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項4】
20はGlnである、請求項1~3の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項5】
24はGln又はGluから選ばれる、請求項1~4の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項6】
27はGluであり、X28はSerである、請求項1~4の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項7】
はHis又はGlnから選ばれ、
15はAspであり、
16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、
17はAibであり、
20はGlnであり、
21はGluであり、
24はGln又はGluから選ばれ、
27はGluであり、
28はSerである、
請求項1~6の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項8】
は水素であり、Rは-OH又は-NHであり、-OHが好ましい、
請求項7に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項9】
前記グルカゴン類似体は、
H-HSQGTFTSDYSKYLDLAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号40)、
H-HSQGTFTSDYSKYLDTAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号39)、
H-HSQGTFTSDYSKYLDVAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号41)、
H-HSQGTFTSDYSKYLDIAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号42)、
H-HSHGTFTSDYSKYLDLAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号43)、
H-HSHGTFTSDYSKYLDLAibRAQEFVEWLEST-OH(配列番号47)、
から選ばれる何れか1つの化合物である、請求項1~8の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物と、
1種若しくは複数種の薬学的に許容されるベクター、希釈剤、緩衝剤又は賦形剤と、
を含む医薬組成物。
【請求項11】
代謝性疾患治療活性を有する少なくとも1種の化合物を更に含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記代謝性疾患治療活性を有する化合物は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト、インスリン、エンテログルカゴン、神経ペプチドY5受容体拮抗薬、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ阻害剤、Leptin受容体アゴニスト、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤(AGi)、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチドペプチダーゼ-4阻害剤類(DPP-IV)、ナトリウムグルコース共輸送体2阻害剤(SGLT-2)、ファルネソールX受容体(FXR)アゴニストとオベスタチン(Obestatin)から選ばれる1つ又は複数である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
疾患又は病状を治療するための薬剤の調製における、請求項1~9の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物或いは請求項10~12の何れか一項に記載の医薬組成物の用途であって、
好ましくは、前記疾患又は病状は、低血糖、高血糖症、2型糖尿病、1型糖尿病、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化、β-受容体遮断剤中毒、インスリノーマ、フォン・ギールケ病、耐糖能低下、脂質異常、高血圧、体重過重、過食症と肝脂肪変性から選ばれる、
用途。
【請求項14】
前記低血糖は、病理学的低血糖又は非病理学的低血糖である、請求項13に記載の用途。
【請求項15】
前記低血糖は、糖尿病性低血糖、非糖尿病性低血糖、空腹時低血糖、薬剤誘発性低血糖、急性インスリン誘発性低血糖、胃バイパス術誘発性低血糖、アルコール誘発性低血糖、反応性低血糖と妊娠低血糖から選ばれる、請求項13に記載の用途。
【請求項16】
請求項1~9の何れか一項に記載のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を調製する方法であって、固相合成、液相合成又は細胞組換え発現の方法により前記グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を調製することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月18日に提出された出願番号が202110676681.3である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、グルカゴン類似体及びその医薬用途に関する。本開示のグルカゴン類似体は、低血糖、肥満症、糖尿病などの代謝性疾患の治療又は病状の緩和に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
体内の血糖バランスを制御することは、体の代謝にとって非常に重要である。通常、ヒトの血糖値は、様々なポリペプチド系ホルモン(インスリン及びグルカゴンを主とする)の調節でダイナミックバランスを維持している。血糖の不均衡により合併症を引き起こす恐れがある。血糖濃度が正常レベルよりも低くなると、低血糖(Hypoglycemia)現象が出てくる。膵島内の膵臓はグルカゴンを産生することで、血糖値を正常範囲に上昇させる。非重症の低血糖は、一般的に自発的又は神経学的な低血糖症状が発生され、患者が低血糖の発症を認識することができるので、他人による補助治療は不要である。一方、血中グルコース濃度が他の薬剤、又は疾患、又はホルモン若しくは酵素の欠陥により低減されると(例えば、糖尿病、腎不全、特定の腫瘍、肝疾患、甲状腺機能低下症、先天性代謝異常、敗血症及び反応性低血糖の治療による一連の臨床的に重篤な低血糖症状)、体内のグルカゴンは血糖を回復させるのに不十分で、生命を脅かせることさえあり、通常は、認知又は身体機能障害として表れており、自己治療能力に限界があるので、正常な血糖を回復させるために、他人による補助治療が必要となる。
【0004】
現在、低血糖の予防・治療において、完全に意識のある低血糖患者は、糖質食品の経口投与が最も好ましい治療法であるが、意識障害者は、非医療従事者又は医療従事者の助けを借りて、50%ブドウ糖液の静脈注射又は0.5~2 mgのグルカゴンの筋肉注射による治療を受ける必要がある。非医療従事者は、50%ブドウ糖液の静脈注射を行うことが困難である。注射用量が高すぎると反跳性高血糖をもたらし、ブドウ糖液が血管から滲み出すと局所的な組織損傷を引き起こすことになる。従って、病院以外の環境では、意識障害の重度低血糖患者の最適な治療戦略は、グルカゴンの皮下又は筋肉注射である。グルカゴンは、重度の低血糖の救急薬として臨床でも使用されており、且つグルカゴンの脂質降下及びエネルギー消費促進作用に基づき、インクレチンとの二重受容体アゴニストも肥満糖尿病患者に更なる利益を与える。
【0005】
グルカゴンは、膵臓α-細胞によって分泌される29個のアミノ酸からなる直鎖ポリペプチドであり、肝臓によるグルコース及びケトン体の産生を制御するものである。グルカゴンは、夜間及び食間に分泌され、アミノ酸前駆体によるグルコース産生(糖新生)を増加させ、グリコーゲンのグルコースへの分解(解糖)を促進することにより、肝臓のグルコース流出を増加させて血糖濃度を向上させる。グルカゴンは、膵臓β細胞によって分泌されるインスリンとともに、体内の血糖バランスを正確に制御している。グルカゴンは低血糖に対する治療効果に加え、食欲を抑制し、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼを活性化して脂肪分解を促進することで抗肥満効果が示されている。
【0006】
グルカゴンは、低血糖防御機構に対抗する重要な構成要素であり、低用量のグルカゴンは、インスリン誘導性の低血糖を防止し、低血糖から回復する能力を改善することができる。低用量のグルカゴンは、更に、満腹感を引き起こして食欲を抑制可能であるとともに、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼを活性化して脂肪分解を促進可能であるので、潜在的な抗肥満効果があり、2型糖尿病に罹患した多くの患者の体重過重又は肥満の治療に適用することができる。
【0007】
しかしながら、天然のグルカゴンは、中性pHの水相溶液において溶解度が非常に低い。また、グルカゴンは、アミノ酸残基の側鎖脱アミド化、酸化、環状イミド中間体の形成をもたらすアミノ酸又はアミノ酸配列を含み、且つ異性化、ペプチド鎖切断などを起こすアミノ酸又はアミノ酸配列を含み、長期にわたって安定性を維持することができず、数時間から数日間でゲルや原線維(fibril)が形成され、化学的及び物理的安定性が極めて悪い。従って、注射製剤開発の要求に応えるために、溶解性に優れ、物理的/化学的安定性が良好な新規グルカゴン類似体を開発しなければならない。
【0008】
第1世代のグルカゴン注射製剤、例えば、グルカゴン救急試薬キット(Glucagon(登録商標)、Eli Lilly)、グルカゴン試薬キット(Glucagon(登録商標)、Novo Nordisk A/S)は、グルカゴンの望ましくない創薬可能性により限定されているため、凍結乾燥粉末の形態で保存され、使用時に溶媒で再溶解してから皮下/筋肉注射を行う必要があり、患者及び非医療従事者にとっては使い勝手が悪い。
【0009】
第2世代のグルカゴン注射製剤、例えば、ヒトグルカゴン点鼻粉末(BAQSIMI(登録商標)、Eli Lilly)、プレフィルド型ヒトグルカゴン注射液(GVOKE HYPOPEN(登録商標)、XERIS)は、治療効果を確保するとともに、患者及び非医療従事者による操作の利便性を顕著に向上させるように、製剤に対して的を絞った改良を行った。しかし、BAQSIMI(登録商標)は鼻腔内噴霧で投与されるので、効果が遅く生じ、筋肉注射に比べて3倍の用量が必要となり、有害反応がある。GVOKE HYPOPEN(登録商標)は、DMSOを製剤とするもので、直接皮下注射することができるが、注射部位における不快感と他の副作用が明らかに存在している。更に、Dasiglucagon(開発会社Zealand Pharma)は、天然のヒトグルカゴンを基にして7つのアミノ酸部位の改変を行ったもので、活性に影響を及ぼすことなく、溶解度及び物理的/化学的安定性が改善され、注射液剤形で直接皮下注射することができる。Dasiglucagonは、最近、米国食品医薬品局によって販売承認された。
【0010】
この分野では、高活性で溶解度に優れ、物理的/化学的安定性の良いグルカゴン類似体が依然として求められている。本開示は、高活性(天然グルカゴンに比べて、活性が向上した)で、水性溶液における溶解度が良く(特に生理学的pHで)、且つ安定性(物理的安定性及び化学的安定性を含む)が改善されたグルカゴン類似体を提供する。この分野におけるグルカゴン類似体に比べて、本開示のグルカゴン類似体は、体外のグルカゴン受容体アゴニスト活性がより強く、皮下投与の体積及び回数の低減、低血糖患者の使いやすさの向上、患者の経済的負担の軽減に大いに役立つ。本開示のグルカゴン類似体は、単独で、又は他の治療薬と組み合わせて、低血糖、肥満症、糖尿病などの代謝性疾患又は病状を治療する方法に使用可能である。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、それを含む医薬組成物、上記グルカゴン類似体をコードするポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含むベクター、上記ポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を提供する。並びに、上記グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物或いはそれを含む医薬組成物の、疾患の治療、病状(例えば、低血糖、肥満症、糖尿病などの代謝性疾患又は病状)の緩和に用いられる方法及び関連する製薬用途を提供する。
【0012】
グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物
本開示は、式(I)で示される構造であるグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供する:
【0013】
本開示は、式(I)で示される構造を含むグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を更に提供し、そのうち、R及び/又はRは存在せず、
そのうち、
は水素、C1-4アルキル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基又はpGluであり、
は-OH又は-NHであり、
、X15、X16、X20、X21、X24、X27とX28は、互いに独立的に任意の天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から選ばれ、X17はAibである。
【0014】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0015】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0016】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0017】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0018】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0019】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0020】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0021】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0022】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0023】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0024】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0025】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0026】
幾つかの実施形態において、XはHis又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はGluであり、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0027】
幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OH又は-NHである。幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OHである。
【0028】
本開示の薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、無機塩又は有機塩から選ばれる。
【0029】
本開示のグルカゴン類似体は、酸性化合物又は塩基性化合物と反応して対応する塩を生成することができる。
【0030】
「酸性化合物と反応して対応する塩を生成する」とは、他の副作用なしに、遊離塩基の生物学的有効性を保持することができる、無機酸又は有機酸と形成された塩を意味する。無機酸塩は塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを含むが、これらに限定されず、有機酸塩はギ酸塩、酢酸塩、2,2-ジクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプロン酸塩、オクタン酸塩、デカン酸塩、ウンデシレン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、セバシン酸塩、アジピン酸塩、グルタル酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、桂皮酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、ピログルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、4-アミノサリチル酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩などを含むが、これらに限定されない。これらの塩は、この分野で知られている方法で調製することができる。
【0031】
「塩基性化合物と反応して対応する塩を生成する」とは、他の副作用なしに、遊離酸の生物学的有効性を維持することができる、無機塩基又は有機塩基と形成された塩を意味する。無機塩基から誘導された塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などを含むが、これらに限定されない。有機塩基から誘導された塩は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、置換されたアミン、環状アミン、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、コリン、グリシンベタイン、グルコサミン、メチルグルコサミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミド樹脂などを含むが、これらに限定されない。好適な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインを含む。これらの塩は、この分野で知られている方法で調製することができる。
【0032】
「溶媒和物」という用語は、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩と、適切な溶媒とから形成された複合体を表す。溶媒の非限定的な実例としては、水、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、DMSO、酢酸エチルが含まれる。具体的な実施形態において、上記溶媒和物は水和物である。
【0033】
幾つかの実施形態において、本開示は、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供し、上記グルカゴン類似体は、配列番号1~49から選ばれる何れか1つで示される化合物である。
【0034】
幾つかの具体的な実施形態において、本開示は、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供し、上記グルカゴン類似体は、
H-HSQGTFTSDYSKYLDTAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号39)、
H-HSQGTFTSDYSKYLDLAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号40)、
H-HSQGTFTSDYSKYLDVAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号41)、
H-HSQGTFTSDYSKYLDIAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号42)、
H-HSHGTFTSDYSKYLDLAibRAQEFVQWLEST-OH(配列番号43)、
H-HSHGTFTSDYSKYLDLAibRAQEFVEWLEST-OH(配列番号47)、
から選ばれる何れか1つの化合物である。
【0035】
本開示の各グルカゴン類似体の配列において、C末端「-OH」部分(moiety)は、C末端の「-NH」に置き換えることができる。
【0036】
幾つかの具体的な実施形態において、本開示は、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供し、上記グルカゴン類似体は、配列番号39、40、41、42、43、47から選ばれる何れか1つの構造を含み、そのうち、上記配列番号39、40、41、42、43、47のN末端のH及び/又はC末端のOHが存在しない。
【0037】
本開示は、式(I)で示される構造であるグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供する:
【0038】
本開示は、式(I)で示される構造を含むグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を更に提供し、そのうち、R及び/又はRは存在せず、
そのうち、
は水素、C1-4アルキル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基又はpGluであり、
は-OH又は-NHであり、
、X17、X20、X21、X24、X27とX28は、互いに独立的に任意の天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から選ばれ、X15はAspであり、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、例えば、Thr、Leu、Val又はIleから選ばれる。
【0039】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGluではなく、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0040】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGluではなく、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0041】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0042】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0043】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluではなく、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0044】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluではなく、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0045】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluではなく、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0046】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はAla、Gln、Glu、Ser、Thr又はLysから選ばれ、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0047】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0048】
幾つかの実施形態において、XはHis又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はGluであり、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0049】
幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OH又は-NHである。幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OHである。
【0050】
本開示は、グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供し、上記グルカゴン類似体は式(I)で示される構造を含む:
【0051】
本開示は、式(I)で示される構造を含むグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を更に提供し、そのうち、R及び/又はRは存在せず、
そのうち、
は水素、C1-4アルキル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基又はpGluであり、
は-OH又は-NHであり、
、X15、X16、X17、X21、X24、X27とX28は、互いに独立的に任意の天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から選ばれ、X20はGlnである。
【0052】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0053】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0054】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0055】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0056】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0057】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はAla、Gln、Ser、Glu、α-メチル-Ser又はArgから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0058】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0059】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAib又はAlaから選ばれ、X20はGlnであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0060】
幾つかの実施形態において、XはHis又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はGluであり、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0061】
幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OH又は-NHである。幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OHである。
【0062】
本開示は、式(I)で示される構造であるグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を提供する:
【0063】
本開示は、式(I)で示される構造を含むグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を更に提供し、そのうち、R及び/又はRは存在せず、
そのうち、
は、水素、C1-4アルキル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基又はトリフルオロアセチル基又はpGluであり、
は-OH又は-NHであり、
、X15、X16、X17、X21、X27とX28は、互いに独立的に任意の天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基から選ばれ、X20はGluであり、X24はArgである。
【0064】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はArgであり、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0065】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はArgであり、X27はMet、Glu、Nle、Leu又はSerから選ばれ、X28はAsn、Glu又はSerから選ばれる。
【0066】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAsp又はGluから選ばれ、X16はSer、Thr、Leu、Val、Ile又はα-メチル-Serから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はArgであり、X27はGluであり、X28はSerである。
【0067】
幾つかの実施形態において、XはHis、Dap(Ac)又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGluであり、X21はAsp又はGluから選ばれ、X24はArgであり、X27はGluであり、X28はSerである。
【0068】
幾つかの実施形態において、XはHis又はGlnから選ばれ、X15はAspであり、X16はThr、Leu、Val又はIleから選ばれ、X17はAibであり、X20はGlnであり、X21はGluであり、X24はGln又はGluから選ばれ、X27はGluであり、X28はSerである。
【0069】
幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OH又は-NHである。幾つかの実施形態において、Rは水素であり、Rは-OHである。
【0070】
本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、グルカゴン受容体(GCGR)アゴニスト活性を有し、そのGCGRへの結合がアゴニスト活性の表示として使用可能である。幾つかの選択的な実施形態において、化合物が受容体に結合することにより引き起こされた細胞内シグナル伝達を測定することもできる。例えば、グルカゴン受容体アゴニストによるGCGRへの活性化により、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)の形成が刺激される。従って、受容体を発現した好適な細胞におけるcAMPの産生によって受容体の活性をモニターすることができる。例えば、実施例2に示される材料(例えば、CHO-K1/GCGR/CRE-Luc安定形質転換細胞株及びCisbio-cAMP-Gs Dynamic kit)を利用して上記条件下で測定することができる。EC50値は、GCGRに対するアゴニスト有効性の数値計測基準として使用することができる。EC50値は、特定の測定において、検討される受容体に対して化合物の最大活性の半分を達成するのに必要な当該化合物の濃度である。
【0071】
幾つかの実施形態において、グルカゴン受容体は哺乳動物のグルカゴン受容体、例えば、ヒトグルカゴン受容体である。
【0072】
幾つかの実施形態において、ヒトGCGRに対する本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物のアゴニスト活性は、天然グルカゴンの少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3.0倍、又は少なくとも3.1倍である。
【0073】
幾つかの実施形態において、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、ヒトGLP-1R及び/又はGIPRに対してアゴニスト活性がないか、又は無視できる。
【0074】
幾つかの実施形態において、天然グルカゴンに比べて、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、向上した溶解度及び/又は安定性を有する。
【0075】
幾つかの実施形態において、向上した溶解度は、pH4(例えば、pH4の酢酸塩緩衝液において)、pH5(例えば、pH5の酢酸塩緩衝液において)、pH6(例えば、pH6のリン酸塩緩衝液において)、pH7(例えば、pH7のリン酸塩緩衝液において)及び/若しくはpH7.5(例えば、pH7.5のリン酸塩緩衝液において)で、天然グルカゴンに比べて、向上した溶解度を有することを含むか又はそれを指してもよい。一例として、実施例5に示される条件で測定することができる。溶解度≧1 mg/mLが望まれてもよい。
【0076】
幾つかの実施形態において、例えば、280 nmでの吸光度を測定してベールの法則によって算出される、pH7.4のリン酸塩緩衝液における本開示のグルカゴン類似体の溶解度は、≧1.00 mg/mL、≧1.10 mg/mL、≧1.20 mg/mL、≧1.30 mg/mL、≧1.40 mg/mL、≧1.50 mg/mL、≧1.60 mg/mL、≧1.70 mg/mL、≧1.80 mg/mL、≧1.90 mg/mL、≧2.00 mg/mL、≧2.10 mg/mL、≧2.20 mg/mL、≧2.30 mg/mL、≧2.40 mg/mL、≧2.50 mg/mL、≧2.60 mg/mL、≧2.70 mg/mL、≧2.80 mg/mL、≧2.90 mg/mL、≧3.00 mg/mL、≧3.10 mg/mL、≧3.20 mg/mL、≧3.30 mg/mL、≧3.40 mg/mL、≧3.50 mg/mL、≧3.60 mg/mL、≧3.70 mg/mL、≧3.80 mg/mL、≧3.90 mg/mL、≧4.00 mg/mL、≧4.10 mg/mL、≧4.20 mg/mL、≧4.30 mg/mL、≧4.40 mg/mL、≧4.50 mg/mL、≧4.60 mg/mL、≧4.70 mg/mL、≧4.80 mg/mL、≧4.90 mg/mL、又は≧5.00 mg/mLである。
【0077】
幾つかの実施形態において、向上した安定性は、天然ヒトグルカゴンに比べて向上した物理的安定性及び/又は向上した化学的安定性を含むか又はそれを指してもよい。
【0078】
幾つかの実施形態において、向上した物理的安定性は、凝集(例えば、可溶性又は不溶性凝集体(例えば、原線維)の形成)の減少傾向を含むか又はそれを指してもよい。0.1 NのHClでグルカゴン類似体を溶解し、1 mg/mLの濃度で37℃で凝集(例えば、原線維の形成)を測定しもよい。何れの適切な期間、例えば、24時間、48時間、96時間又は120時間を使用してもよい。凝集は、ThT蛍光アッセイにより測定することができる。凝集は、実施例4に示される条件下で測定することができる。
【0079】
幾つかの実施形態において、向上した化学的安定性は、水性緩衝液(一般的に、汚染性プロテアーゼ又はペプチダーゼ活性が存在しない)においてペプチドが切断又は分解される傾向が低下することを含むか又はそれを指してもよい。安定性は、例えば、pH7.4のリン酸塩緩衝液でグルカゴン類似体を溶解し、1 mg/mLの濃度で4℃、25℃又は40℃で測定することができる。評価は、インキュベーションに好適な期間、例えば、1日、7日、14日、21日又は28日間後に安定性を測定することを含むことができる。これは、実施例4に限定されるように、化合物の純度、即ち、各クロマトグラムにおける全ての統合ピークの総面積に対する主ピークの面積百分率を測定することを含むことができる。安定性は、実施例4に示される条件下で測定することができる。
【0080】
ポリヌクレオチド
本開示は、本開示のグルカゴン類似体の前駆体ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供し、そはRNA、DNA又はcDNAであってもよい。本開示の幾つかの実施形態によれば、本開示のポリヌクレオチドは、基本的に単離したポリヌクレオチドである。
【0081】
上記前駆体ペプチドは、修飾されると、本開示のグルカゴン類似体を得ることができるペプチドである。例えば、前駆体ペプチドのX17はArg又は他の天然アミノ酸であり、修飾されると、X17がAibである本開示のグルカゴン類似体が得られる。
【0082】
本開示のポリヌクレオチドはまた、ベクターの形態であってもよく、ベクターの中に存在してもよく、及び/又はベクターの一部であってもよく、当該ベクターは、プラスミド、コスミド、YAC又はウイルスベクターなどである。ベクターは、特に発現ベクター、即ち、グルカゴン類似体の体外及び/又は体内での(即ち、好適な宿主細胞、宿主有機体及び/又は発現系における)発現を可能にするベクターであってもよい。当該発現ベクターは通常、少なくとも1つの本開示のポリヌクレオチドを含み、それは、1つ又は複数の適切な発現調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)に操作可能に連結される。特定の宿主における発現に対して上記要素及びその配列を選択することは、当業者の常識である。
【0083】
幾つかの実施形態において、ベクターは、核酸断片の発現を駆動するためのプロモーター、分泌(細胞外相への分泌又は適切な場合にペリプラズムへの分泌)を可能にするリーダーペプチドをコードする任意選択的なポリヌクレオチド、前駆体ペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びターミネーターをコードする任意選択的なポリヌクレオチドという、5'→3'方向に作動可能に連結された要素(element)を含む。
【0084】
本開示のポリヌクレオチドは、本開示のグルカゴン類似体の前駆体ペプチドのアミノ酸配列についての情報に基づき、既知の方法(例えば、自動DNA合成及び/又は組換えDNA技術)により調製又は取得することができる。
【0085】
宿主細胞
本開示は、本開示のグルカゴン類似体の前駆体ペプチドを発現し、又は本開示のポリヌクレオチド若しくはベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。幾つかの実施形態において、宿主細胞は細菌細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞である。
【0086】
細菌細胞は、例えば、グラム陰性菌株(例えば、大腸菌(Escherichia coli)菌株、プロテウス属(Proteus)菌株及びシュードモナス属(Pseudomonas)菌株)とグラム陽性菌株(例えば、バチルス属(Bacillus)菌株、ストレプトミセス属(Streptomyces)菌株、ブドウ球菌属(Staphylococcus)菌株及びラクトコッカス属(Lactococcus)菌株)の細胞を含む。
【0087】
真菌細胞は、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)、アカパンカビ属(Neurospora)及びアスペルギルス属(Aspergillus)の種の細胞を含み、又はサッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えば、ピキアパストリス(Pichia pastoris)及びピキアメタノリカ(Pichia methanolica))及びハンゼヌラ属(Hansenula)の種の細胞を含む。
【0088】
哺乳動物細胞は、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などを含む。
【0089】
しかしながら、本開示は、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞及びこの分野における異種タンパク質を発現するための何れかの他の細胞を使用してもよい。
【0090】
本開示の細胞は、完成した植物又は動物個体に発達することができない。
【0091】
産生又は調製方法
本開示は、本開示のグルカゴン類似体を調製する方法を提供し、それは、例えば、
(a)化学合成(例えば、固相又は液相合成)の方法によりグルカゴン類似体を合成し、且つこれにより得られた合成されたグルカゴン類似体を回収する方法、又は
(b)前駆体ペプチドをコードするポリヌクレオチド又はベクターにより前駆体ペプチドを発現し、発現生成物を回収し、且つ本開示のグルカゴン類似体が産生されるように、上記前駆体ペプチドを修飾し、例えば、1種若しくは複数種の非天然アミノ酸(例えば、Aib)を導入することにより前駆体ペプチドを修飾することができる方法、
を含む。
【0092】
一実施形態において、
- 前駆体ペプチドの発現を可能にする条件下で、本開示の宿主細胞を培養するステップと、
- 培養物から前駆体ペプチドを回収するステップと、
- 上記前駆体ペプチドを修飾して、本開示のグルカゴン類似体を得るステップと、
を含む。選択的に、前駆体ペプチドを精製するステップを含む。
【0093】
組換えてポリペプチドを産生するための方法及び試薬、例えば、特定の好適な発現ベクター、形質転換又はトランスフェクション方法、選択マーカー、タンパク質発現を誘導する方法、培養条件などは、この分野において既知のものである。同様に、前駆体ペプチドを製造する方法に適用されるポリペプチドの単離・精製技術は、当業者に周知のものである。固相又は液相合成の方法は、この分野において既知のものであり、例えば、WO98/11125、特にFields、GB et al.、2002、「Principles and practice of solid-phase peptide synthesis」.In:Synthetic Peptides(第2版)、及び本開示中の実施例を参照することができる。
【0094】
幾つかの実施形態において、グルカゴン類似体の薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物を形成する方法を更に提供する。例えば、本開示のグルカゴン類似体は、薬学的に許容される酸性又は塩基性化合物と反応して塩を形成することができる。
【0095】
幾つかの実施態様において、本開示のグルカゴン類似体は、微生物による組換え発現の方法により調製されてもよく、Fmoc固相合成の方法により調製されてもよい(例えば、アミノ酸を脱保護する方法と、樹脂からペプチドを切断する方法と、それを精製する方法と、を含むSPPS方法)。
【0096】
幾つかの実施形態において、Fmoc固相合成の方法を用いる場合、合成ベクターはFmoc-L-Thr(tBu)-Wang樹脂(吉爾生化、負荷量0.533 mmol/g)である。幾つかの実施形態において、合成プロセスに使用されたアミノ酸誘導体は、Fmoc-L-Ala-OH、Fmoc-L-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-L-Asn(Trt)-OH、Fmoc-L-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-L-Gln(Trt)-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Ile-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-Met-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-Pro-OH、Fmoc-L-Ser(tBu)-OH、Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-L-Val-OH、Fmoc-Aib-OH、Fmoc-L-Nle-OHなどを含む。幾つかの実施形態において、合成プロセスは下記を含む:固相合成ベクターを洗浄した後、まず、20%の4-メチルピペリジンを含むN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液により固相合成ベクターα-アミノにおけるFmoc保護基を除去し、次に、過剰の場合に当該固相ベクターと配列における次のアミノ酸誘導体をHCTU/4-メチルモルホリンで活性化してから縮合してアミド結合を形成することで、ペプチド鎖を延長させ、縮合→洗浄→脱保護→洗浄→次のアミノ酸縮合という操作を繰り返すことで、合成すべきポリペプチド鎖長を達成し、最後にトリフルオロ酢酸:水:トリイソプロピルシラン(90:5:5、v:v:v)の混合溶液を樹脂と反応させてポリペプチドを固相ベクターから切断し、更に凍結メチルtert-ブチルエーテルで沈降させた後、ポリペプチド誘導体の固体粗生成物を取得し、ポリペプチド固体粗生成物を0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル/水の混合溶液で溶解してから、C-18逆相分取クロマトグラフィーカラムにより精製して単離した後、ポリペプチド及びその誘導体の純品を得る。
【0097】
医薬組成物
本開示は、予防、治療又は緩和有効量の本開示のグルカゴン類似体又は薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物と、1種若しくは複数種の薬学的に許容されるベクター、希釈剤、緩衝剤又は賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0098】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物の単位用量には、本開示のグルカゴン類似体又は薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物が0.01~99重量%含まれでもよい。更なる幾つかの実施形態において、医薬組成物の単位用量における本開示のグルカゴン類似体又は薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物の含有量は、0.1~2000 mgであり、幾つかの具体的な実施形態では1~1000 mgである。
【0099】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、代謝性疾患の治療活性を有する少なくとも1種の化合物又は物質を更に含む。
【0100】
幾つかの実施形態において、上記の代謝性疾患治療活性を有する化合物又は物質は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト、インスリン、エンテログルカゴン、神経ペプチドY5受容体拮抗薬、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ阻害剤、Leptin受容体アゴニスト、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤(AGi)、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチドペプチダーゼ-4阻害剤類(DPP-IV)、ナトリウムグルコース共輸送体2阻害剤(SGLT-2)、ファルネソールX受容体(FXR)アゴニスト及びオベスタチン(Obestatin)から選ばれる1つ若しくは複数である。
【0101】
本開示の医薬組成物は、注射器(任意選択的に、ペン型注射器)で、皮下、筋肉、腹腔内又は静脈内注射により行われるように、非経口的に投与することができる。或いは、非経口投与は、注入ポンプにより行われてもよい。他の選択肢として、組成物は、経鼻又は肺内噴霧の形態でグルカゴンペプチドを投与する溶液剤又は懸濁液であってもよく、或いは、無針注射による、又はパッチ、任意選択的にイオン導入パッチによるなど、経皮投与であってもよく、或いは、経粘膜(例えば、口腔)投与であってもよい。
【0102】
試薬キット(又はキット)
本開示は、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物と、投与装置と、を含むキットを更に提供する。
【0103】
幾つかの実施形態において、上記装置は、注射器及び針を含む。幾つかの具体的な実施形態において、上記装置は、プレフィルドシリンジである。
【0104】
幾つかの実施形態において、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物は、プレフィルドシリンジに入っている。
【0105】
疾患又は病状を予防・治療する方法及び製薬用途
本開示は、疾患又は病状を予防、治療するための薬剤の調製における、上記グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、並びに/或いは上記医薬組成物の用途を更に提供する。
【0106】
本開示は、疾患又は病状の予防・治療に用いられる、上記グルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、並びに/或いは上記医薬組成物を更に提供する。
【0107】
本開示は、疾患又は病状を予防・治療する方法を更に提供し、それは、必要とする対象に治療有効量の本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を投与し、並びに/或いは治療有効量の本開示の医薬組成物を投与することを含む。
【0108】
幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状は、低血糖、高血糖症、2型糖尿病、1型糖尿病、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化、β-受容体遮断剤中毒、インスリノーマとフォン・ギールケ病から選ばれ、上記病状又は病状は、耐糖能低下、脂質異常、高血圧、体重過重、過食症、肝脂肪変性、肥満から選ばれる。
【0109】
幾つかの実施形態において、上記低血糖は、病理学的低血糖又は非病理学的低血糖から選ばれる。
【0110】
幾つかの実施形態において、上記低血糖は、糖尿病性低血糖、非糖尿病性低血糖、空腹時低血糖、薬剤誘発性低血糖、急性インスリン誘発性低血糖、胃バイパス術誘発性低血糖、アルコール誘発性低血糖、反応性低血糖と妊娠低血糖から選ばれる。
【0111】
幾つかの実施形態において、グルコースレベルを急速に増加させることで、血糖値を正常化し、血糖値を安定化し、或いは低血糖を予防又は治療する方法を提供し、それは、必要とする対象に有効量の本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0112】
幾つかの実施形態において、体重増加を減らすか又は体重減少を引き起こす方法を提供し、それは、必要とする対象に有効量の本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物を投与することを含む。体重増加を減らすか又は体重減少を引き起こす方法は、薬剤誘発性の肥満を含む様々な原因による肥満を治療するとともに、血管疾患(例えば、冠動脈疾患、脳卒中、末梢血管疾患、虚血性再灌流など)、高血圧、2型糖尿病、高脂血症と骨格筋疾患を含む肥満関連の合併症を低減することができると期待される。本開示は、肥満を予防・治療・緩和する薬剤の調製に用いられる、対応するグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物の製薬用途を提供する。
【0113】
幾つかの実施形態において、高血糖症又は糖尿病を治療する方法を提供し、それは、インスリンと、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物とを併用投与することを含む。インスリン(例えば、基礎、速効又は持続型インスリン)と、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物とを併用投与することで、夜間低血糖を減少させ、及び/又はインスリンによる血糖の過剰低下効果を緩和することができる。本開示は、高血糖症又は糖尿病を予防・治療・緩和する薬剤の調製に用いられる、対応するグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはそれを含む医薬組成物の製薬用途を提供する。
【0114】
幾つかの実施形態において、上記方法はヒト対象に用いられるもので、上記製薬用途はヒト対象用の薬剤の調製用途である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1図1は、ThT原線維形成アッセイによりグルカゴン類似体の物理的安定性を評価した結果である。
図2図2は、正常血糖ラットモデルにおけるグルカゴン類似体40及びDasiglucagonの薬効結果である。
図3図3は、低血糖ラットモデルにおけるグルカゴン類似体40及びDasiglucagonの薬効結果である。
図4図4AはDasiglucagonの溶血性検査結果であり、図4Bはグルカゴン類似体40の溶血性検査結果である。
図5図5A及び図5Bはそれぞれ、ヒト肝臓ミクロソーム、ヒト腎臓ミクロソームにおけるグルカゴン類似体40及びDasiglucagonの安定性の結果である。
図6図6は、グルカゴン類似体40及びDasiglucagonの皮下又は静脈注射投与後の血中濃度-時間曲線の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
定義
本開示が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本開示における別の箇所で別途明確に定義されていない限り、本開示に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を有する。
【0117】
「グルカゴン類似体」という用語は、グルカゴン受容体に対する天然グルカゴンの少なくとも一部、全て、又はそれ以上のアゴニスト活性を有する化合物を指す。例えば、グルカゴン類似体は、配列番号51で示されるアミノ酸配列を基にして任意のアミノ酸置換、追加若しくは削除をを含有するか、又は翻訳後修飾若しくは他の化学修飾したポリペプチドを含有することを含むが、これらに限定されず、その前提として、上記類似体は、グルカゴン受容体を刺激する活性を有し、例えば、実施例2に記載されるアッセイを用いてcAMPの産生によって測定される。
【0118】
本開示において、グルカゴン類似体は、修飾したアミノ末端及び/又はカルボキシ末端を有するペプチドも含む。例えば、アミド基で末端カルボン酸が置換されたペプチドを含む。例えば、本開示のグルカゴン類似体は、配列のアミノ端(N末端)に「H-」部分を導入し、配列のカルボキシ末端(C末端)に「-OH」部分又は「-NH」部分を導入してもよい。この場合、特に明記のない限り、検討される配列のN末端の「H-」部分は、水素原子[即ち、式(I)中、R=水素=Hで、N末端に遊離の第1級アミノ又は第2級アミノがあることに相当する]を表すが、配列のC末端の「-OH」又は「-NH」部分は、それぞれヒドロキシ基[例えば、式(I)中、R=OHで、C末端にカルボキシ基(COOH)があることに相当する]又はアミノ[例えば、式(I)中、R=NHで、C末端にアミド基(CONH)があることに相当する]を表す。本開示の各配列において、C末端の「-OH」部分は、C末端「-NH」に置き換えられてもよく、その逆も同様である。
【0119】
「天然のグルカゴン」は、以下の配列を有する天然ヒトグルカゴンを指す:
H-His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-OH(配列番号51)。
【0120】
「Dasiglucagon」は、特にジーランド・ファーマ社(Zealand Pharma)により開発されたグルカゴン類似体を指し、そのアミノ酸配列が、H-HSQGTFTSDYSKYLDAibARAEEFVKWLEST-OH(配列番号52)である。
【0121】
本開示において、更なる解釈のない限り、「GLP-1」という用語はヒトGLP-1(7-36又は7-37)を指し、「GIP」という用語はヒトGIP(1-42)を指す。
【0122】
本開示に使用されるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J.biol.chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。明記のない限り、本開示における全てのアミノ酸残基の立体配置は、L-型である。また、Aibは2-アミノイソ酪酸(α-アミノイソ酪酸ともいう)であり、α-メチル-Ser(α-メチルセリン)はα位のHがメチルで置換されたセリンであり、pGluはピログルタミン酸である。
【0123】
「天然アミノ酸」とは、20種類の通常のアミノ酸(即ち、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)及びチロシン(Y)である。
【0124】
「非天然アミノ酸」とは、非天然にコードされるか、又は何れの生体の遺伝暗号にも発現されないアミノ酸である。それらは、例えば純粋に化学合成される化合物であってもよい。非天然アミノ酸の実例は、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-リン酸セリン、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸(Aib)、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、tert-ブチルグリシン、2,4-ジアミノイソ酪酸(Dap)、デスモシン(desmosine)、2,2′-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dab)、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ピペコリン酸、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン(allo-hydroxylysine)、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン(isodesmosine)、アロイソロイシン、N-メチルアラニン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルペンチルグリシン、N-メチルバリン、ナフチルアラニン(naphthalanine)、ノルバリン、ノルロイシン(Nle)、オルニチン(Orn)、D-オルニチン、D-アルギニン、p-アミノフェニルアラニン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸(pipecolic acid)とチオプロリンを含むが、これらに限定されない。また、「非天然アミノ酸」は、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸のC末端カルボキシル基、N末端アミノ基及び/又はその側鎖官能基で化学的に修飾されて得られた誘導体を更に含む。
【0125】
「アゴニスト」という用語は、検討される受容体タイプを活性化する物質又はリガンドとして定義される。例えば、本開示の文脈に使用されるGLP-1若しくはGIP又はグルカゴン(受容体)アゴニストという用語は、GLP-1受容体若しくはGIP受容体又はグルカゴン受容体を活性化可能な物質又はリガンドを指す。
【0126】
「薬学的に許容される塩」という用語は、治療される患者又は対象に無害な塩を指す。そのような塩は、一般的に、酸付加塩又は塩基性塩である。
【0127】
「溶媒和物」という用語は、化学量論量が限定された溶質(この場合は、本開示のグルカゴン類似体又はその薬学的に許容される塩)と溶剤から形成される複合体を指す。
【0128】
「医薬組成物」という用語は、1種若しくは複数種の本開示のグルカゴン類似体又はその生理学的/薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと他の化学成分との混合物と、生理学的/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の成分とを含むことを表す。
【0129】
「薬学的に許容されるベクター」という用語は、経口、肺、直腸、鼻、局所、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、経皮若しくは膣内投与に適する組成物又は製剤に使用されるものなど、何れの標準的な薬学的に許容されるベクター又は希釈剤も含む。
【0130】
「治療」という用語は、有益な又は所望の臨床結果を得るための方法を指す。本開示の目的から言えば、有益な又は所望の臨床結果は、検出の可否を問わず、病状の緩和、疾患程度の軽減、疾患状態の安定化(即ち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び(部分的又は全体的な)寛解(remission)を含むが、これらに限定されない。「治療」は、治療されていない場合の予想生存に比べて生存期間を延長することを指してもよい。「治療」とは、疾患の発生を防ぐか、又は疾患の病理的状態を変えるために行われる介入である。従って、「治療」は、治療的処理及び予防的又は防御的手段の両方を指す。予防的手段又は防御的手段の文脈に使用される場合、化合物は、疾患又は病状の発生を完全に防止するとは限らない。治療を必要とする対象は、疾患を患っている対象、又は疾患の発生を予防する必要のある対象を含む。「治療」はまた、治療しない場合に比べて、病理的状態又は症状(例えば、体重増加や低血糖)の増加を抑制又は低減することを意味し、関連病状の完全な終了を示唆しない。
【0131】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所定の病状(障害、疾患)若しくは損傷の治癒、軽減又は部分的阻止、或いは他の方式による促進、及び好ましくは、それらによる合併症の治癒又は回復に十分な量又は用量を指す。特定の目的に有効な量又は用量は、疾患又は病状の重症度、及び治療すべき対象又は患者の体重と全身状態によって決定される。好適な量又は用量の決定は、訓練された、一般的に熟練した医師(又は獣医師)の能力の範囲内にある。
【0132】
「対象」という用語は、「患者」、「個体」、「対象」などと入れ替えて使用されてもよく、何れもヒト又は非ヒト動物を指し、哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ)、ペット(例えば、イヌ、ネコ)とげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。
【実施例
【0133】
以下、実施例と合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に、例えば、通常のポリペプチドFmoc固相合成法マニュアル、コールド・スプリング・ハーバーの抗体技術実験マニュアル、分子クローニングマニュアルなどの通常の条件に従うか、又は原料若しくは商品メーカーにより推薦された条件に従った。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0134】
本開示の主な実験試薬(供給源):Fmoc-Thr(tBu)-Wang樹脂(吉爾生化)、HCTU(昊帆生物)、Fmoc-Aib-OH(吉爾生化)、N,N-ジメチルホルムアミド(国薬)、ジクロロメタン(国薬)、トリフルオロ酢酸(TCI Chemicals)、トリイソプロピルシラン(TCI Chemicals)、アセトニトリル(Merck-Millipore)、ジイソプロピルエチルアミン(Sigma)、4-メチルピペリジン(TCI Chemicals)、メチルtert-ブチルエーテル(TCI Chemicals)、4-メチルモルホリン(TCI Chemicals)、Fmoc-Nle-OH(吉爾生化)。DMEM/F12(Gibco 11330032)、カゼイン(Casein)、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(Sigma I7018-250MG)、cAMP-Gs Dynamic kit(Cisbio 62AM4PEC、20000個の試験)、384ウェルプレート(Sigma CLS4514-50EA)、96V型ベースプレート(PS)(Axygen WIPP02280)、96ウェルプレート(Cisbio 66PL96100)、Countess(登録商標) Cell Counting Chamber Slides(Invitrogen C10228)、Cisbio-cAMP-Gs Dynamic試薬キット(Cisbio 62AM4PEC)、0.25%トリプシン-EDTA及びPhenol Red(ThermoFisher 25200-114)、ウシ胎児血清(GibcoTM、ThermoFisher 10099-141)、ヒトグルカゴン(Abmole M9312)。
【0135】
本開示の主な実験機器(供給源):H-CLASS分析用超高速液体クロマトグラフィー(WATERS)、Agilent 1290-6530超高速液体クロマトグラフィー-質量分析計(Agilent Technologies)、Prep-150分取用高速液体クロマトグラフィー(WATERS)、Prelude-Xマルチチャネルポリペプチド固相合成装置(Protein Technologies)、マイクロプレートリーダー(BioTek H1MFD、Tecan-Infinite F Plex)。
【0136】
実施例1. グルカゴン類似体の合成
本実施例は、表1の化合物を設計して下記の方法によって合成した。
【0137】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0138】
1. 化合物1の化学合成
1.1 ポリペプチド骨格の合成
固相合成ベクターであるFmoc-Thr(tBu)-Wang樹脂0.1 mmolを秤量して使い捨てポリプロピレンポリペプチド合成固相反応管に入れ、DMF(10 mL)を加えて樹脂を10分間膨潤し、真空下でDMFを吸引除去し、DMF(10 mL)を加えて樹脂を洗浄し、洗浄を2回繰り返した。ポリペプチド骨格の合成は、Prelude-X全自動ポリペプチド合成装置により達成され、ここで、アミド結合縮合は、対応するFmoc保護アミノ酸を10倍過剰に用い、HCTU/4-メチルモルホリンで活性化した後、室温で30分間反応させてアミノ酸の縮合を行った。Fmoc基の脱保護は、20%の4-メチルピペリジンを含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液を使用し、室温で10分間ずつ2回反応させた。また、Aibの傍にあるN末端アミノ酸の縮合は、室温で2回ないし3回の縮合を行う必要があり、縮合時間が毎回30~60分間であり、これは粗ペプチドの純度の改善に非常に重要である。
【0139】
1.2 樹脂ペプチドの切断
上記ステップで得られた樹脂ペプチドを、順にDMF、DCMで3回洗浄した後、真空下で乾燥させた後、調製したばかりの切断液10 mL(トリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:水=90:5:5、v:v:v)を加え、室温で3時間振とうしながら反応させた。反応終了後にろ過し、トリフルオロ酢酸で樹脂を2回洗浄し、ろ液を合わせた後に大量の凍結メチルtert-ブチルエーテルを加えて固体を析出させ、遠心分離した後に上清液を除去して化合物1であるポリペプチド粗生成物を得た。
【0140】
1.3 粗ペプチドの逆相液体クロマトグラフィーによる精製
粗ペプチドを0.1%(v/v)のトリフルオロ酢酸、20%(v/v)のアセトニトリル/水を含む混合溶媒に溶解し、0.22 μm膜でろ過した後、WATERS Prep150 LC逆相高速液体クロマトグラフィーシステムにより分離し、移動相はA(0.1%トリフルオロ酢酸、10%アセトニトリル、水溶液、v/v)及びB(0.1%トリフルオロ酢酸、90%アセトニトリル、水溶液、v/v)であった。ここで、クロマトグラフィーカラムは、X-SELECT OBD C-18(WATERS)逆相クロマトグラフィーカラムであり、精製中に、クロマトグラフの検出波長は220 nmに設定され、流速は20 mL/minとされた。生成物に関連する留出物を収集して凍結乾燥したら、化合物番号1であるポリペプチド純品が得られ、収率が20%であった。ポリペプチドの純品は、分析用高速液体クロマトグラフィーと液体クロマトグラフィー/質量分析の併用により、純度及び化合物の身分を確認し、ここで、純度=96.09%で、分子量は正しい。
【0141】
2. 化合物2~49の化学合成
化合物1の実験計画により本開示の化合物2~49であるポリペプチド化合物を合成し、分析用超高速液体クロマトグラフィーと液体クロマトグラフィー/質量分析の併用により、純度及び化合物の分子量を確認し、ここで、化合物は分子量が正しく、純度が表2の通りである。
【0142】
【表2-1】


【表2-2】

【0143】
以下の実施例は、実施例1で合成されたグルカゴン類似体について生物学的試験・評価を行った。
【0144】
実施例2. グルカゴン受容体(GCGR)、グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)及びグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体(GIPR)に対するグルカゴン類似体のアゴニスト活性の評価
1. 実験の目的
ヒトグルカゴン受容体(GCGR)、グルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1R)及びグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体(GIPR)に対する本開示のグルカゴン類似体のアゴニスト活性を測定した。かかる化合物のGCGRへの活性化により、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)の形成が刺激される。従って、受容体を発現した好適な細胞におけるcAMPの産生によって受容体の活性をモニターすることができる。
【0145】
2. 実験の方法
GCGRのアゴニスト活性についての測定:液体窒素容器から凍結保存したCHO-K1/GCGR/CRE-Luc安定形質転換細胞株を取り出し、37℃の水浴ポットに入れて速く融解させ、DMEM/F12培地(Sigma Cat#D8437)により再懸濁し、遠心分離した後、T75培養フラスコに播種し、細胞を少なくとも1回継代してから、次の試験に使用した。試験前に、パンクレアチンで細胞を消化し、遠心分離した後に細胞を1回洗浄し、血清無しのDMEM/F12により細胞を再懸濁して細胞密度を調整し、2,500個の細胞/5 μL/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、Cisbio-cAMP-Gs Dynamic試薬キットにおける1×緩衝液を調製し、最終濃度が0.5 mMになるようにIBMXを添加し、各ウェルに緩衝液で勾配希釈したポリペプチド5 μLを加え、軽く振とうして均一に混合し、37℃で静置して30分間インキュベーションし、cAMP-d2及びAnti-cAMP-Eu3+-CryptateをそれぞれcAMP Lysis & Detection bufferで20倍希釈して均一に混合し、各ウェルに希釈したcAMP-d2溶液5 μLを加え、更に希釈したAnti-cAMP-Eu3+-Cryptate溶液5 μLを加え、軽く振とうして均一に混合し、室温で暗所にて静置して1時間インキュベーションした。
【0146】
GLP-1Rのアゴニスト活性についての検出:CHO-GLP-1R安定形質転換細胞株が使用された点で、上記のGCGRのアゴニスト活性についての検出方法とは異なっている。
【0147】
GIPRのアゴニスト活性についての検出:CHO-K1/GIPR安定形質転換細胞株が使用され、細胞密度が3,000個の細胞/5 μL/ウェルである点で、上記のGCGRのアゴニスト活性についての検出方法とは異なっている。
【0148】
3. 実験の結果
Tecan-Infinite F PlexマイクロプレートリーダーによりHTRFのシグナルを読み取り、励起波長が320 nm、発光波長が620 nm及び665 nmである。シグナル比(665 nm/620 nm×10,000)を算出し、それと試料濃度を4変数方程式で非線形フィッティングしてEC50値を得て、表3及び4に示している。
【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
表3の結果によると、本開示のグルカゴン類似体は、ヒトGCGRに対するアゴニスト活性がDasiglucagonよりも顕著に優れている。表4の結果によると、天然グルカゴンに比べて、本開示のグルカゴン類似体は、GLP-1R及びGIPRに対するアゴニスト活性が非常に低くて、無視することができ、即ち、本開示のグルカゴン類似体は、GCGRに良好な特異性を有する。
【0152】
実施例3. グルカゴン類似体の生理的緩衝液における溶解度の評価
1. 実験の目的
天然グルカゴンは、中性pH7.4の条件で溶解度が1 mg/mLよりも遥かに低いため、治療剤としての直接使用が制限されている。本実施例の目的は、中性pHの緩衝液における本開示のグルカゴン類似体の溶解度を評価し、天然グルカゴンよりも高い溶解度を有することを望むことである。
【0153】
2. 実験の方法
pH7.4のリン酸塩緩衝液において一部の本開示のグルカゴン類似体の飽和溶液を調製し、室温で5 min超音波処理した後、遠心分離し(10000 g、5 min)、上清液を吸い取り、沈殿が認められないことを確保した。溶液の280 nmでの吸光度(Absλ=280 nm)を測定し、グルカゴン類似体配列におけるトリプトファン及びチロシンの含有量に基づいてポリペプチドの280 nmでのモル吸光係数(ε=8250 M-1cm-1)を算出し、ベールの法則に従って各試験のグルカゴン類似体の中性pH緩衝液における最大溶解度を算出した。
【0154】
3. 実験の結果
本開示の種々のグルカゴン類似体は、表5に示されるように、天然のグルカゴンに比べて溶解度が顕著に向上している。化合物2~化合物5を比較すると、17位にAibを含む化合物3は、18位にAibを含む化合物4よりも向上した溶解度を有し、17位にAibを含む化合物3は、16又は19位にα-メチル-Serを含む化合物2及び化合物4よりも向上した溶解度を有することが明らかになった。グルカゴン類似体が17位にAibを含むことは、ポリペプチドの溶解度の向上に重要な役割を持つことが分かる。
【0155】
【表5】

【0156】
実施例4. グルカゴン類似体の物理的安定性及び化学的安定性の評価
天然のグルカゴンは、溶液における物理的及び化学的安定性が非常に低い。天然グルカゴン水溶液は、数時間から数日間以内にゲルや繊維状沈殿が形成され、且つ高濃度のポリペプチド、外乱及び塩含有の場合に、更にゲル化しやすくなる。また、天然グルカゴンの化学的不安定性は、主にその配列の異性化(アスパラギン酸残基)、脱アミド化(アスパラギン、グルタミン残基)及び酸化(メチオニン残基)などによるものである。
【0157】
1. 実験の目的
本実施例の目的は、本開示のグルカゴン類似体の溶液における物理的安定性及び化学的安定性を評価することである。
【0158】
2. 物理的安定性の評価実験方法
本実験は、Thioflavin-T(ThT)蛍光アッセイにより原線維の形成をモニターした。凍結乾燥したグルカゴン類似体を0.1 NのHCl水溶液に溶解し、濃度1 mg/mLであった。ポリペプチド溶液を恒温振とう器で120 h(37℃、300 rmp)インキュベートし、それぞれ24 h、48 h及び120 hに溶液中の原線維含有量を検出した。ThT蛍光アッセイでは、8 mgのThT粉末を正確に秤量して50 mLのPBS緩衝液(1×)に溶け、0.22 μmのろ過膜でろ過した後、暗所にて4℃で保存して使用に備えた。使用時にPBS緩衝液(1×)により1:500の割合で希釈して作業溶液に調製し、96ウェルプレートにおいて各ウェルにそれぞれ100 μLの作業溶液及び5 μLの測定待ちのポリペプチド溶液を加え、均一に混合した後、室温で20~30 minインキュベーションし、Tecan-Infinite F PlexマイクロプレートリーダーによりThT蛍光シグナルを読み取り、励起波長が450 nm、発光波長が482 nmであり、各ポリペプチドの試験は4回の生物学的反復を含んだ。
【0159】
3. 化学的安定性の評価実験方法
グルカゴン類似体の凍結乾燥粉末をリン酸塩緩衝液(10 mMのリン酸二水素ナトリウム、15 mg/mLのプロピレングリコール、0.01%のTween-80、pH7.4)に最終濃度が1 mg/mL(溶液の280 nmでの吸光度を測定することで決定された)になるように溶け、試料をガラス瓶に入れて4℃と25℃で30日間インキュベーションした。0日目、7日目、14日目、21日目及び28日目にサンプリングした後、超高速液体クロマトグラフィーにより試料の純度及び分解生成物を検出し、クロマトグラフィーでは、C-18逆相クロマトグラフィーカラムを利用し、UV=214 nmであった。化合物の純度は、各クロマトグラムにおける全ての統合ピークの総面積に対する主ピークの面積百分率と定義され、0日目の試料の純度を基準として所定のポリペプチドの異なる時間での純度を正規化したものである。
【0160】
4. 実験の結果
以上の実験方法により、本開示のグルカゴン類似体の一部は、水溶液における物理的安定性が図1に示す通りであり、リン酸塩緩衝液における化学的安定性が表6に示す通りである。
【0161】
【表6】

【0162】
研究により、本開示のグルカゴン類似体は、天然グルカゴン(Glucagon)に比べて優れた物理的安定性及び化学的安定性を示しており、そのうち、化合物40は、リン酸塩緩衝液における化学的安定性がDasiglucagonよりも優れていることが明らかになった。
【0163】
実施例5. グルカゴン類似体の正常血糖ラットモデルの体内での薬効評価
1. 実験の目的
本実施例は、本開示におけるグルカゴン類似体40、天然グルカゴン(Glucagon)及びDasiglucagonの正常ラットモデルの体内での血糖上昇薬効を比較して評価するためのものである。
【0164】
2. 実験の方法
7~8週齢の雄のSDラット(Sprague-Dawley rats)を1週間適応飼育した。体重によって群分けし、群分け後に、各群のラットの平均体重及び標準偏差が同程度になるように確保した。実験前の4時間及び実験中に絶食させ、水を通常の通り投与した。4時間絶食した後、実験群のラットには、それぞれ0.5 nmol/kg、2 nmol/kg、6 nmol/kgのグルカゴン類似体40又は2 nmol/kgの天然グルカゴン又は2 nmol/kgのDasiglucagonを単回皮下投与し、対照群のラットには、グルカゴン類似体と同じように調製されたリン酸塩緩衝液を皮下投与した。投与前に尾部から採血してT0点での血糖を測定した後、それぞれ15 min、30 min、45 min、60 min、75 min、90 min、105 min、120 minにラットの血糖を測定した。
【0165】
3. 実験の結果
グルカゴン類似体40によるラットの血糖値の上昇は用量依存性を示しており、天然グルカゴン、Dasiglucagonは共に短時間で効果が生じるという特徴を持っているが、同用量でのグルカゴン類似体40は、血糖値をより高く上昇させており、具体的な結果は図2と表7に示されている。
【0166】
【表7】

【0167】
4. 実験の結論
結果によると、皮下注射で投与した後、グルカゴン類似体40、天然グルカゴン(Glucagon)及びDasiglucagonは、何れもラットの血糖値を急速に上昇させることができる。用量が0.5 nmol/kgのグルカゴン類似体40と用量が2 nmol/kgのDasiglucagonは、血糖上昇に対する効果が近く、且つ同用量(2 nmol/kg)では、グルカゴン類似体40は、Dasiglucagonに比べて薬効が明らかに良い。
【0168】
正常血糖ラットモデルにおいて、本開示におけるグルカゴン類似体40は、Dasiglucagonに比べて、同用量条件下で血糖値をより高く上昇させ、薬効がより良い。
【0169】
実施例6. グルカゴン類似体の低血糖ラットモデルの体内での薬効評価
インスリンの皮下注射により、ラットに低血糖症状を誘発し、ヒトに低血糖症が生じた様子をシミュレーションし、血糖が正常レベルに急速に回復されるように、グルカゴン類似体を皮下投与して治療した。
【0170】
1. 実験の目的
Dasiglucagonと比較して、本開示におけるグルカゴン類似体40の低血糖ラットモデルの体内での薬効を評価した。
【0171】
2. 実験の方法
7~8週齢の雄のSDラット(Sprague-Dawley rats)を1週間適応飼育した。血糖値によって群分けし、群分け後に、各群のラットの平均血糖及び標準偏差が同程度になるように確保した。実験前の4時間及び実験中に絶食させ、水を通常の通り投与した。4時間絶食した後、尾部から採血してT0点での血糖を測定し、モデル構築群のラットには直ちに0.65 IU/kgのインスリンを皮下注射し、非モデル構築群のラットには同体積の生理食塩水を皮下注射した。その後、15 min、30 min、45 minに血糖を測定した。45 minの時に、モデル構築群のラットには、それぞれ6 nmol/kg、12 nmol/kg、20 nmol/kgのグルカゴン類似体40又は12 nmol/kgのDasiglucagonを単回皮下投与し、対照群のラット及び非モデル構築群のラットには、グルカゴン類似体40と同じように調製されたリン酸塩緩衝液を皮下投与した。その後、引き続き60 min、75 min、90 min、105 min、120 min、150 min、180 minにラットの血糖を測定した。
【0172】
3. 実験の結果
インスリンで処理した後、ラットの血糖最低点で本開示におけるグルカゴン類似体40を投与して治療することで、ラットの血糖を急速に回復させることができるとともに用量依存性が示され、本開示のグルカゴン類似体40とDasiglucagonは共に短時間で効果が生じるという特徴を持っているが、同用量では、本開示におけるグルカゴン類似体40は、血糖値をより高く上昇させており、具体的な結果は図3と表8に示されている。
【0173】
【表8】

【0174】
4. 実験の結論
結果によると、インスリン誘導性の低血糖ラットモデルにおいて、皮下注射で投与した後、グルカゴン類似体40、天然グルカゴン(Glucagon)及びDasiglucagonは、何れも15分間以内にラットの血糖値を急速に回復させて上昇させることができる。同用量(12 nmol/kg)では、グルカゴン類似体40は、Dasiglucagonよりも血糖上昇効果が明らかに優れており、且つ持続時間がより長い。
【0175】
インスリン誘導性の低血糖ラットモデルにおいて、同用量条件下で、グルカゴン類似体40は、Dasiglucagonよりも薬効が良い。
【0176】
実施例7. グルカゴン類似体の溶血性実験評価
溶血は、赤血球膜が破壊され、透明性が増加されて濃い赤色を呈することを意味し、ある薬物成分や、添加物などには溶血成分が含まれて、人体の溶血反応を引き起こし、局部的な腫れ、血行障害などの悪反応を引き起こすことが可能である。赤血球が破壊されて放出したヘモグロビンが可視光波長帯域において吸収を有するという原理に基づき、供試化合物溶液をラットの赤血球懸濁液に加え、インキュベートした後にマイクロプレートリーダーで吸光度値を測定し、溶血の程度を評価した。
【0177】
1. 実験の目的
グルカゴン類似体40が溶血反応を引き起こすか否かを観察した。
【0178】
2. 溶血性試験の方法
赤血球懸濁液の調製:新鮮なラット全血100 μLを採取してから、1×PBS溶液900 μLを加え、プレートシェーカーに置き、30 rpmで5 min振とうした後、1000 gで5 min遠心分離し、上清液を捨て、上清液が赤色を呈しなくなるまで上記洗浄ステップを繰り返し、試験用に備えた。
【0179】
供試品溶液の調製:供試品の固形分に適量の1×PBS溶液を加え、溶けて標準原液を得た後、1×PBSで希釈し、濃度が1 μg/mL、3 μg/mL、10 μg/mL、30 μg/mL、100 μg/mL及び300 μg/mLの供試品溶液を得た。同時に、ブランク1×PBSを陰性対照として、0.1%のTriton X-100(1 μg/mL)を含む1×PBS溶液を陽性対照とした。
【0180】
インキュベーション過程:500 μLの供試品溶液を赤血球懸濁液に加え、プレートシェーカーにて、十分に均一に混合されるように30 rpmで5 min振とうし、そして懸濁液を37℃で1時間インキュベートし、更に1000 gの速度で5 min遠心分離し、上清液100 μLを取ってマイクロプレートの1ウェルに入れ、540 nmでの吸光度を測定した。
【0181】
3. 実験の結果
溶血率(%)の計算式は、(供試品吸光度-陰性対照吸光度)/(陽性対照吸光度-陰性対照吸光度)×100%である。結果が5%未満である場合は、溶血性がないと判定し、結果が5%を超える場合は、測定待ちのものが溶血性を有すると判定した。
【0182】
本開示のグルカゴン類似体の溶血性検査の結果は、図4A図4B及び表9に示されている。結果によると、本開示のグルカゴン類似体40及びDasiglucagonは、1~300 g/mLの濃度範囲で、溶血性検査が何れも規定された要件を満たし、顕著な溶血副作用のリスクが認められない。
【0183】
【表9-1】
【表9-2】

【0184】
実施例8. グルカゴン類似体のヒト肝臓、腎臓ミクロソーム安定性の評価
肝臓及び腎臓は、人体の最も主要な代謝器官であり、第1相及び第2相代謝酵素を豊富に含み、薬剤の代謝速度に影響を与え、薬剤の分解クリアランスに重要な役割を果たし、血中濃度と半減期に影響を及ぼす。肝腎代謝によく使用されるモデルは、肝腎臓ミクロソーム、S9成分、肝細胞、組織ホモジネートなどを含む。体外での肝腎代謝安定性は、体内での薬物動態及び薬力学的特性を予測する主な指標の1つである。肝腎臓ミクロソームモデルとしては、肝臓又は腎臓から抽出されたミクロソームを採用し、還元型補酵素(NADPH)再生系を加え、生理環境での代謝反応をシミュレーションし、試験化合物の体外代謝安定性を評価し、薬剤の体内での分解とクリアランス速度の予測に使用することができる。理想的な条件で、グルカゴン類似体は、急速な吸収とクリアランスを必要とし、体内で比較的速い分解速度を有し、低血糖が回復されるとともに、高血糖の毒性や副反応が回避される。
【0185】
1. 実験の目的
ヒトの肝臓ミクロソーム及び腎臓ミクロソームの体外代謝系におけるグルカゴン類似体の代謝安定性を比較して評価した。
【0186】
2.ヒト肝臓ミクロソーム、腎臓ミクロソームの検出実験方法
溶液の調製:化合物の純品を適量に秤量し、適量のDMSOを加えて溶けてDasiglucagon及び40の1 mMの供試溶液をそれぞれ得た。
MgCl-PBS緩衝溶液の調製:200 mMのPBS緩衝液200 μLを取り、106 μLのH2O及び40 μLのMgCl溶液(50 mM)を順に加え、ボルテックスで均一に混合し、MgCl-PBS緩衝溶液を得た。
【0187】
安定性実験過程:試料を以下のように処理する:
(1)インキュベーションシステムの用意
a)NADPHを加える:20 mg/mLの肝臓ミクロソーム10 μL及び10 mMのNADPH溶液40 μLを取ってインキュベーションシステムに加え、肝臓ミクロソーム及びNADPHの最終濃度はそれぞれ0.5 mg/mL及び1 mMであった。
b)NADPHを加えない:20 mg/mLの肝臓ミクロソーム10 μL及びHO 40 μLをインキュベーションシステムに加えた。
【0188】
(2)インキュベーション反応系に100 μMの試験化合物溶液4 μL及び陽性対照化合物(ヒト肝臓ミクロソームはベラパミル(Verapamil)、ヒト腎臓ミクロソームは塩酸ベンジダミンを採用した)を加え、インキュベーション系の最終濃度が1 μM、インキュベーション温度が37℃であり、ここで、ベラパミルと塩酸ベンジダミンは、それぞれ既知の肝代謝酵素と腎代謝酵素の基質であり(Pauli-Magnus C et al.、J Pharmacol Exp Ther. 2000 May;293(2):376-82.を参照)、ミクロソームインキュベーションシステムの酵素反応活性を確認するためであった。
【0189】
(3)それぞれ0 min、15 min、30 min、60 minと120 minに50 μLサンプリングし、内部標準と3%のギ酸を含む4倍体積のアセトニトリル溶液を加えて反応を中止した。試料を更に3220 gの速度で40 min遠心分離し、100 μLの上清液を取り、等体積のHOを加えて均一に混合し、HPLC-MS/MS分析を行った。
【0190】
3. 実験の結果:
本開示におけるグルカゴン類似体のヒト肝臓ミクロソームと腎臓ミクロソームでの安定性結果は、図5A図5Bと表10、表11に示す通りである。
【0191】
【表10】

【0192】
【表11】

【0193】
4. 実験の結論
肝代謝では、第1に、Dasiglucagonとグルカゴン類似体40は、肝ミクロソームにおいて代謝速度が腎ミクロソームよりも遅く、代謝がNADPHとは無関係である。第2に、グルカゴン類似体40は、Dasiglucagonよりも分解がやや速い(体外T1/2:40は68.76 min、Dasiglucagonは161.74 minである)。
【0194】
腎代謝では、第1に、Dasiglucagonとグルカゴン類似体40は腎臓ミクロソームにおいて代謝されるが、代謝がNADPHとは無関係であり、第2に、グルカゴン類似体40は、Dasiglucagonよりも分解が速い(体外T1/2:40は35.73 min、Dasiglucagonは51.27 minである)。
【0195】
とにかく、肝腎臓ミクロソームのインキュベーション過程中に、本開示におけるグルカゴン類似体40は、Dasiglucagonよりも代謝速度が速いので、体内でより容易にクリアランスされ、高血糖副反応の生じるリスクがより低く、糖尿病患者の血糖制御により有利である。
【0196】
実施例9. グルカゴン類似体のラット体内での薬物動態評価
動物の薬物動態研究の一般的な方法としては、臨床的に提案された投与経路により、動物に一定用量の試験化合物を投与した後、HPLC、GC、HPLC-MSなどの分析機器の方法により血液、尿液などの生体マトリックスにおける薬物濃度の経時変化の様子を測定することで、当該化合物の体内での動的変化法則を把握し、血中濃度-時間曲線決定を取得し、更に薬剤の薬物動態パラメータを得て、化合物の吸収、分布、代謝及び排せつの過程と特徴を解明する。
【0197】
1. 実験の目的
雄のSDラットを被験動物として、単回皮下注射でDasiglucagonとグルカゴン類似体40を投与し、Dasiglucagonとグルカゴン類似体40のSDラット体内(血漿)での薬物動態的特徴を研究した。
【0198】
2. 実験の方法
(1)表12のように動物を群分けし、投与前にラットに水や餌を自由に摂取させた。
【0199】
【表12】
【0200】
(2)採血
サンプリング時間:投与前の0 min(predose)、投与後の2 min、4 min、7 min、10 min、20 min、40 min、1 hと2 h。ラットの頸静脈からカニューレを入れて採血した。
【0201】
(3)試料の採取
1)各時点で0.2 mLの全血を取り、EDTA-K2抗凝固剤を含む遠心分離管に移した。
2)血液試料を4℃で4000 gの速度で5 min遠心分離して血漿を得た。
3)血漿試料を-80℃で凍結保存した。
【0202】
(4)生物試料分析
試料の前処理方法:100 μLの血漿試料を取り、1 ng/mLの内部標準(ベラパミル)を含むメタノール溶液300 μLを加え、ボルテックスで5 min行い、低温で10 min遠心分離し、上清液100 μLを取り、0.1%のギ酸水溶液100 μLを加え、均一に混合し、機器で分析した。
液体クロマトグラフィー及び質量分析:LC-30A液体クロマトグラフィーシステム(日本島津社)、API 5500型液体クロマトグラフィー-トリプル四重極タンデム質量分析計(Analyst Softwareデータ処理システム、米国AB社)が使用された。クロマトグラフィーカラムはnanomicro Unisil C18aq(4.6 mm×150 mm、5 μm)クロマトグラフィーカラムであり、カラム温度が40℃、移動相Aが0.1%のギ酸水溶液、移動相Bが0.1%のギ酸アセトニトリル溶液、流速が0.5 mL/min、注入量が20 μLであり、勾配条件は下記の表13に示す通りである。質量分析は、エレクトロスプレーイオン源(ESI)、正イオン分析モード、多重反応モニタリング(MRM)走査方式を採用した。
【0203】
【表13】

【0204】
3. 実験の結果
上記HPLC-MS/MS方法により血漿における各測定待ちの物の血中濃度を測定し、血中濃度時間曲線を描き、そしてPKSolverソフトフェアにより薬物動態パラメータを算出した。上記実験方法により、本開示のグルカゴン類似体の薬物動態(PK)パラメータは、表14及び図6に示す通りである。
【0205】
【表14】
【0206】
4. 実験の結論
結果によると、皮下注射で投与した後、グルカゴン類似体40は、DasiglucagonよりもT1/2が明らかに短い(40のT1/2は0.41 h、DasiglucagonのT1/2は0.51 hである)ので、グルカゴン類似体40のクリアランス速度がより速いことを示しており、グルカゴン類似体40は、TmaxもDasiglucagonよりも短い(40のTmaxは0.117 h、DasiglucagonのTmaxは0.167 h)ので、グルカゴン類似体40の吸収速度がDasiglucagonよりも明らかに速いことを示している。
【0207】
とにかく、Dasiglucagonに比べて、グルカゴン類似体40は、より速く吸収されて効果を生じさせ、且つより急速にクリアランスされることができ、より優れた薬物動態特性を有する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
【配列表】
2024525144000001.app
【国際調査報告】