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特表2024-525163ウイルス感染症を予防及び治療するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ウイルス感染症を予防及び治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/353
A61K45/00
A61P31/14
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577546
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022032969
(87)【国際公開番号】W WO2022265925
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】17/346,602
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523469825
【氏名又は名称】グローバル バイオライフ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、ダリル、エル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
天然に存在する化合物の組み合わせを使用してウイルス感染症を治療するための方法及び組成物が提供される。この方法は、ウイルス感染症のリスクがある患者またはウイルス感染症と診断された患者に、治療的有効量のミリセチン及びヘスペリチンを含む組成物を投与し、コロナウイルスを含むウイルス感染症を治療することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染症の発生を制限するか、ウイルス感染症のリスクもしくは重症度を軽減するか、またはウイルス感染症を治療する方法であって、治療的有効量のミリセチン及びヘスペリチンからなる組成物をコロナウイルスからなる群から選択されたウイルス感染症のリスクがある患者またはウイルス感染症と診断された患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記組成物が、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、皮下投与、舌下投与、頬側投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、経鼻投与、口からの吸入、鼻からの吸入、経皮投与、またはそれらの任意の組み合わせによって前記患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物には、約300~約700mgのミリセチン及び約100~約500mgのヘスペリチンが存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物には、約450~約600mgのミリセチン及び約250~約400mgのヘスペリチンが存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物には、混合物の総重量に対して、約55~約75重量%のミリセチン及び約30~約50重量%のヘスペリチンが存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物に存在するミリセチン対ヘスペリチンの比が、約(30~60):(30~60)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、ヘリカーゼ阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘリカーゼ阻害剤が、ヘリカーゼATP分解酵素阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ミリセチンが、前記患者においてICAM-1阻害剤として作用する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ウイルス感染症の予防及び治療に関し、より具体的には、ウイルス感染症のリスクがある患者またはウイルス感染症と診断された患者に投与される、免疫サイトカイン応答を減少させるためのヘリカーゼATP分解酵素阻害剤、シアリダーゼ酵素阻害剤、ICAM-1阻害剤、及びTNF-α阻害剤を含む組成物に関する。
【背景】
【0002】
人間の病気の多くは、ウイルスと呼ばれる微生物による感染によって引き起こされる。ウイルスに感染すると、軽度から重度まで様々な症状が現れることがある。ウイルス感染症は、多数の死者を引き起こす可能性がある。このようなパンデミックの例としては、約4,000万人が死亡した1918~1919年のスペイン風邪や約200万人が死亡したHIV/AIDSのパンデミック等が挙げられる。
【0003】
ウイルスは、増殖するために宿主生物を必要とする。また、ウイルスは、様々なメカニズムで感染した宿主から未感染の宿主に伝染する。ウイルスはまず、宿主細胞に付着する。その後、細胞に入り、その遺伝コード(即ち、RNAまたはDNA)を放出する。ウイルスは、増殖するために宿主細胞の機能的なタンパク質と酵素を利用する。宿主細胞が生き残るために必要なメカニズムがウイルスによって制御されるため、最終的に宿主細胞が死滅し得る。細胞の死後、増殖されたウイルスが放出され、新しい宿主細胞を攻撃できるようになり、増殖プロセスが継続される。一部のウイルスは、宿主細胞の改変を引き起こし、これにより、癌が引き起こされる。一方、他のウイルスは、感染が宿主で症状を示す前に長期間宿主内で休眠状態に留まる可能性がある。
【0004】
通常、1種のウイルスは特定の種類の細胞にのみ感染するため、ウイルス感染によって生じる症状はウイルスごとに異なる。この観察はまた、特定のウイルスは通常、特定の種にのみ感染するが、ウイルスの突然変異により、1種のウイルスが感染できる種の数を拡大できる可能性があることも意味する。
【0005】
宿主種は、ウイルス感染から身を守るために多くの防御メカニズムを発達させてきた。防御の第一線は、ウイルスの宿主への侵入を防ぐメカニズムである。皮膚は、侵入に対して不浸透性のバリアを提供する。ウイルスは通常、体腔を通って体内に侵入し、これらの体腔を覆う粘膜表面を通過することができる。ウイルスが体内に侵入し、体の免疫系によって検出されると、血液中のリンパ球と単球が侵入者を攻撃する方法を学習する。浸潤した細胞は、インターフェロン(例えば、IL 1、IL 6、IL 12、IL 16)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、及びインターフェロン(通常、インターフェロンа及びg)等のサイトカインを放出する。これらのサイトカインの役割は、侵入ウイルスに対する他の宿主細胞の耐性を高めることである。宿主が経験するウイルス感染の症状の多くは、一般にサイトカインストームと呼ばれるサイトカインの大量放出によって生じる。
【0006】
白血球は、以前に体内に侵入したウイルスと戦う方法を記憶することができる。従って、宿主がウイルスの最初の攻撃から生き残れば、免疫システムは、同じウイルスのその後の感染に対してより迅速に反応できるようになる。体は、このウイルスに対する免疫を獲得した。このような免疫は、免疫化として知られるプロセスで免疫系にウイルスの代用物(ワクチン)を提示することによって誘発することもできる。
【0007】
当技術分野で知られているように、抗ウイルス薬は、患者において免疫系がウイルス感染を克服するのを助ける。ほとんどの抗ウイルス薬は、感染した患者の体内でのウイルスの増殖を遅らせることで作用し、病気の症状がそれほど重くないときに、体の免疫系が効果的な反応を開始できるようにする。抗ウイルス薬は、1種または2種のウイルスに特異的に作用し、または、広範囲のウイルスに効果を発揮し得る。抗ウイルス薬がウイルスの増殖を遅らせるメカニズムは数多く知られている。1種の抗ウイルス戦略は、ウイルスが細胞に侵入するのに必要な標的細胞上の受容体に結合することによって、またはウイルスをコーティングして標的受容体に結合する能力を妨げることによって、ウイルスの標的細胞への浸潤を遅らせるか防ぐことである。他の抗ウイルス薬は、ウイルス粒子が標的細胞に侵入すると、ウイルスの増殖を遅らせることができる。このようなメカニズムは当技術分野では周知されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、本開示を通じて「エクイビル」と呼ばれるミリセチン及びヘスペリチンを含む治療的有効量の組成物を使用して、コロナウイルス等のウイルス感染症を治療することに関する。コロナウイルスには、SARS-CoV-2(COVID-19)及び他のコロナウイルスが含まれるが、これらに限定されない。ミリセチンとヘスペリチンの組み合わせは、それが投与される被験者または宿主においてTNF-αを減少させる効果を有する。
【0009】
ミリセチンとヘスペリチンの組成物は、ウイルスの増殖速度を低下させ、宿主の免疫応答を刺激するウイルスの能力を低下させ、それによって細胞の完全性を維持することため、ウイルス感染症と戦うのに有効である。具体的には、前記組成物は、ドッキング部位競合によって細胞表面上の増殖酵素ヘリカーゼのATP分解酵素活性を阻害するのに有効である。さらに、前記組成物は、細胞間ウイルス粒子の侵入段階及び放出段階に関与するシアリダーゼ及びICAM-1酵素を阻害するのに有効である。
【0010】
一実施形態では、前記組成物は、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、皮下投与、舌下投与、頬側投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、経鼻投与、口からの吸入、鼻からの吸入、経皮投与、またはそれらの任意の組み合わせによって前記患者に投与される。
【0011】
別の実施形態では、前記患者は、ヒトである。
【0012】
別の実施形態では、前記組成物は、透過促進剤をさらに含む。
【0013】
別の実施形態では、前記透過促進剤は、ピペリンである。
【0014】
別の実施形態では、前記組成物は、ピペリンをさらに含む。
【0015】
別の実施形態では、約300~約700mgのミリセチン;約100~約500mgのヘスペリチン;及び約5~約100mgのピペリンが、前記組成物中に存在する。
【0016】
別の実施形態では、約450~約600mgのミリセチン;約250~約400mgのヘスペリチン;及び約5~約50mgのピペリンが、前記組成物中に存在する。
【0017】
別の実施形態では、混合物の総重量に対して、約55~約75重量%のミリセチン;約30~約50%のヘスペリチン;及び約0.5~約5%のピペリンが、前記組成物中に存在する。
【0018】
別の実施形態では、前記組成物中に存在するピペリン、ミリセチン、及びヘスペリチンの比は、約1:(30~60):(30~60)である。
【0019】
本発明の別の態様では、ヒトにおけるコロナウイルスを予防及び治療する方法であって、混合物の総重量に対して60%のミリセチン、39%のヘスペリチン、及び1%のピペリンを含む組成物を、コロナウイルスのリスクがあるヒトまたはコロナウイルスと診断されたヒトに投与することを含む方法が提供される。
【0020】
本発明の別の態様では、混合物の総重量に対して60%のミリセチン、39%のヘスペリチン、及び1%のピペリンを含む、コロナウイルスを予防及び治療するための組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は、ウイルス増殖に対するエクイビルの相乗効果を示している。
【0022】
図2は、ミリセチン、ヘスペリチン、及びピペリンが代謝プロセスに対する効果を示している。
【0023】
図3は、1日目において様々な濃度でのエクイビルのSARS-CoV-2に対する効果を示している。
【0024】
図4は、2日目において様々な濃度でのエクイビルのSARS-CoV-2に対する効果を示している。
【0025】
図5は、3日目において様々な濃度でのエクイビルのSARS-CoV-2に対する効果を示している。
【0026】
図6は、エクイビルで処理されたSARS-CoV-2の細胞毒性を示すグラフである。
【0027】
図7は、様々な濃度のエクイビルのSARS-CoV-2に対する有効性を示している。
【0028】
図8は、エクイビルで処理されたSARS-CoV-2の細胞毒性を示すグラフである。
【0029】
図9は、-2時間での様々な濃度のエクイビルの有効性を示している。
【0030】
図10は、+2時間での様々な濃度のエクイビルの有効性を示している。
【0031】
図11は、-2時間及び+2時間での細胞死割合とエクイビル濃度とを比較するグラフである。
【0032】
図12は、細胞死割合対エクイビル濃度を示すグラフである。
【0033】
図13は、細胞死割合対エクイビル濃度を示すグラフである。
【0034】
図14aは、0日目からのCalu-3細胞(未処理)の画像である。
【0035】
図14bは、2日目及び3日目(感染後48及び72時間)からの未処理/未感染のCalu-3細胞の代表例を示す画像である。
【0036】
図15aは、エクイビル200μg/mlでの感染細胞の画像である。
【0037】
図15bは、エクイビル150μg/mlでの感染細胞の画像である。
【0038】
図15cは、エクイビル100μg/mlでの感染細胞の画像である。
【0039】
図15dは、エクイビル50μg/mlでの感染細胞の画像である。
【0040】
図15eは、エクイビル25μg/mlでの感染細胞の画像である。
【0041】
図16は、SARS-CoV-2対エクイビル処理のグラフである。
【0042】
図17は、SARS-CoV-2対エクイビル濃度を示すグラフである。
【0043】
図18a及び18bは、48時間及び72時間における、エクイビルでそれぞれ2時間未満処理されたSARS-CoV-2を示すグラフである。
【0044】
図19a及び19bは、48時間及び72時間における、エクイビルでそれぞれ2時間以上処理されたSARS-CoV-2を示すグラフである。
【0045】
図20は、ウイルスコピー対エクイビルを示すグラフである。
【0046】
図21は、未感染細胞を示す写真である。
【0047】
図22は、未処理の感染細胞を示す写真である。
【0048】
図23は、50μM エクイビルで処理された感染細胞を示す写真である。
【0049】
図24は、未処理のCalu-3細胞の画像である。
【0050】
図25は、SARS-CoV-2による感染の2時間前に細胞に添加された未感染細胞の画像である。
【0051】
図26は、SARS-CoV-2による感染の2時間前に200μg/mlのエクイビルを添加された感染細胞の画像である。
【0052】
図27は、SARS-CoV-2による感染の2時間前に150μg/mlのエクイビルを添加された感染細胞の画像である。
【0053】
図28は、SARS-CoV-2による感染の2時間前に100μg/mlのエクイビルを添加された感染細胞の画像である。
【0054】
図29は、SARS-CoV-2による感染の2時間前に50μg/mlのエクイビルを添加された感染細胞の画像である。
【0055】
図30は、SARS-CoV-2による感染の2時間前に25μg/mlのエクイビルを添加された感染細胞の画像である。
【0056】
図31は、SARS-CoV-2による感染の2時間前にエクイビル200μg/ml及び没食子酸20μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0057】
図32は、SARS-CoV-2による感染の2時間前にエクイビル150μg/ml及び没食子酸15μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0058】
図33は、SARS-CoV-2による感染の2時間前にエクイビル100μg/ml及び没食子酸10μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0059】
図34は、SARS-CoV-2による感染の2時間前にエクイビル50μg/ml及び没食子酸5μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0060】
図35は、SARS-CoV-2による感染の2時間前にエクイビル25μg/ml及び没食子酸2.5μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0061】
図36は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル200μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0062】
図37は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル150μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0063】
図38は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル100μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0064】
図39は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル50μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0065】
図40は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル25μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0066】
図41は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル200μg/ml及び没食子酸20μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0067】
図42は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル150μg/ml及び没食子酸15μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0068】
図43は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル100μg/ml及び没食子酸10μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0069】
図44は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル50μg/ml及び没食子酸5μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0070】
図45は、SARS-CoV-2による感染の2時間後にエクイビル25μg/ml及び没食子酸2.5μg/mlを細胞に添加した場合の画像である。
【0071】
図46aは、48時間における細胞死割合対エクイビルを示すグラフである。
【0072】
図46bは、72時間における細胞死割合対エクイビルを示すグラフである。
【0073】
図47は、様々な濃度のエクイビル及びエクイビル+10%没食子酸で2時間未満または2時間以上処理されたSARS-CoV-2を示す4つのグラフを含む。
【詳細な説明】
【0074】
本明細書で使用される場合、以下の用語及び語句は、以下に示す意味を有する。
【0075】
化合物に言及する場合の「天然に存在する」という語句は、天然に存在する形態にある化合物を意味する。例えば、化合物が自然界でその化合物とともに見出される他の分子の少なくとも一部から精製され、分離されている場合、その化合物は天然に存在する形態ではない。「天然に存在する化合物」とは、自然界に存在する化合物、即ち、人為によって生成または改変されていない化合物を指す。
【0076】
状態または疾患を「治療する」とは、該状態または疾患の少なくとも1つの症状を治癒すること及び改善することを指す。
【0077】
「治療効果」という用語は、当技術分野で認識されており、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、具体的には哺乳動物、より具体的にはヒトにおける局所的または全身的な効果を指す。「治療的有効量」という語句は、任意の治療に適用できる妥当な利益/リスク比で、何らかの所望の局所的効果または全身的効果を生み出すような物質の量を意味する。このような物質の治療的有効量は、治療中の患者及び疾患または状態、患者の体重及び年齢、疾患または状態の重篤度、投与方法等に応じて変化し、当業者によって容易に決定され得る。例えば、本明細書に記載される特定の組成物は、そのような治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で所望の効果を生み出すのに十分な量で投与されてもよい。
【0078】
「製剤的に許容される担体」という用語は、生物に刺激を与えず、かつ投与された化合物の性質や生物活性を破壊しない担体または希釈剤を意味する。
【0079】
本発明は、一形態では、コロナウイルスを含むウイルス感染症を治療するためにミリセチンとヘスペリチン(両方の化学構造を以下に示す)を組み合わせた治療処置に関する。
【化1】
【化2】
図1を全体的に参照すると、ウイルスの増殖サイクルを遮断し、またはそれに悪影響を与えるのに、ミリセチンとヘスペリチン相乗効果が存在する。
【0080】
以下、COVID-19としても知られるSARS-CoV-2に対するミリセチンとヘスペリチンを組み合わせた(「エクイビル」)有効性を要約する。
【0081】
50μg/mlでの治療として、COVID-19を効果的に抑制する。
【0082】
曝露後の100μg/mlでの治療として、COVID-19を効果的に抑制する。また、
【0083】
100μg/mlで予防薬として、COVID-19に有効である。
【0084】
さらに、エクイビルには、図2に示されるように、様々な代謝プロセスを減少させる効果がある。
【0085】
一実施形態では、朝に服用される1日1回の用量は、約750mgまたは約1500mgである。別の実施形態では、前記組成物は、1回約750mg、1日3回の用量として投与される。1日に投与される組成物の総量は、一実施形態では、少なくとも500mg、または少なくとも750mg、または少なくとも100mg、または少なくとも2500mgである。
【0086】
ミリセチンは、宿主に投与されると、いくつかの場合では、ヘリカーゼATP分解酵素阻害剤及び/またはICAM-1阻害剤として作用する。例えば、(ヘリカーゼATP分解酵素阻害剤として作用する)ミリセチンは、ドッキング部位競合によって、細胞表面上の増殖酵素ヘリカーゼのATP分解酵素の活性を阻害することにより、細胞増殖阻害剤として機能する。この阻害により、ウイルスのアンパッケージングと増殖速度が低下し、細胞外で起こる阻害活性によりウイルス株の突然変異が減少する。
【0087】
ミリセチンは、チェリー、クランベリー、ビルベリー等のほとんどのベリー類や、パセリやルタバガ等の他の植物に含まれるフラボノイドである。酵素ヘリカーゼの阻害に加えて、ミリセチンは、強力かつ広範なサイトカインシグナル伝達阻害剤及び免疫調節剤として機能する。ミリセチンは、サイトカイン活性とTNF-αを減少させる。これには、例えば、リンホカイン、インターロイキン及びケモカイン、特にインターロイキンIL-IL-36及びTNF-αが含まれる。
【0088】
ミリセチン等の天然のフラボノイドは、通常、主にヒドロキシル基、メトキシル基、イソプレニル基、及びグリコシル基によって、様々な位置で置換されている。これらの分子にハロゲンを導入すると、抗ウイルス特性を含む強力な生物学的活性が示される。
【0089】
上で述べたように、ミリセチンは、細胞間ウイルス粒子の侵入段階及び放出段階に関与するICAM-1酵素を阻害することにより、細胞内でのウイルス増殖を遅らせるICAM-1阻害剤として作用することができる。
【0090】
本開示によれば、ヘスペリチンは、シアリダーゼ酵素阻害剤として作用し、細胞間ウイルス粒子の侵入段階及び放出段階に関与するシアリダーゼ酵素を阻害することによって細胞内でのウイルス増殖を遅らせる。
【0091】
ヘスペリチンは、ヘスペリジンのアグリコン型である。シアリダーゼ酵素の阻害に加えて、ヘスペリチン及びヘスペリジンは、過剰なヒスタミンとヒスタジン濃度による細胞層の酸性化を阻害することにより、細胞完全性因子として機能する。ヘスペリチン及びヘスペリジンは、細胞内H産生の阻害、核因子kBの活性化、IkB(α)のリン酸化、及びP-38 MAPK(マイトジェン活性化キナーゼ)の阻害によって、インテグリンの損失をさらに防ぐ。ヘスペリチン及びヘスペリジンは、線維芽細胞のコラーゲン合成を刺激し、それに関連して遊走と増殖を促進することにより、細胞の完全性をさらに高める。
【0092】
ミリセチン、ヘスペリチン、またはヘスペリジンを元の植物源から採取する方法はいくつかある。例えば、ある方法では、植物源からの抽出は、ブドウの種子やトマトの種子、松の樹皮、または柑橘類の皮等の適切な種子材料から始まる。原料を浸軟化し、水で洗い流し、原料のかさばったペクチン及び繊維から水溶性フラボノイドを分離する。次いで、このパルプ洗浄液を、当技術分野で知られている適切な酸及びアルカリで処理して、沈殿を生じさせる。次いで、沈殿物を再度洗浄し、乾燥させ、次いで濃縮して、かなり純粋なフラボノイド組成物を得る。この組成物をさらに清澄化すると、目的のフラボノイド生成物を含有する画分が得られる。
【0093】
別の方法では、逆浸透を使用して、飲料製造プロセスからのジュースの流れから目的のフラボノイドを濾過することによって、目的のフラボノイドを除去してもよい。柑橘類等のフルーツジュースの製造プロセスでは、フラボノイドが皮から遊離し、ジュース製品中に浮遊する。これらの水溶性フラボノイドは、ジュース製品に苦味や異臭を生じさせ得るため、しばしば、除去することが望ましい。
【0094】
例えば、グレープフルーツ ジュースの製造中に、主要なグレープ フルーツ フラボノイドのナリンギンがジュースの流れに放出される。ナリンギンには非常に独特の苦味があるため、グレープフルーツ ジュースの適切な風味プロファイルを復元するには、樹脂でコーティングされた逆浸透装置を使用して製品ストリームからナリンギンを除去する必要がある。得られたフラボノイドは、最終的に収集され、乾燥されて、かなり純粋な製品が得られる。
【0095】
フラボノイドは、合成方法によって製造することもできる。このような方法には、アラン・ロビンソン反応が含まれ得る。これは、フラバノンを形成するo-ヒドロキシルアリールケトンと芳香族無水物との化学反応である。別の例は、アウワース合成である。これは、o-ヒドロキシカルコンが生成される、ベンズアルデヒドと3-オキシペンタノンとの間の酸触媒によるアルドール縮合を必要とする操作である。アルケン基をさらに臭素化すると、水酸化カリウムとの反応によりフラバノールに再配列されるジブロモ付加物が得られる。さらなる例は、Baker-Venkataraman転位である。ここでは、2-アセトキシアセトフェノンと塩基との反応により、1,3-ジケトンを形成する。この転位反応はエノラート形成を介して進行し、その後、アシル転移してフラバノンを形成する。アルガー-フリン-小山田反応も使用することができる。この反応では、カルコンが、酸化的環化して、フラバノールを形成する。
【0096】
感染後の症状の重症度を予防または軽減するため、及び/または感染後の重篤な症状や死亡の可能性を減らすために、例えば、ウイルス性疾患に罹患していることがわかっている、またはその疑いがある患者との接触を通じて、ウイルス感染症のリスクがある患者に本発明の組成物を投与してもよい。
【0097】
症状の重篤度を軽減するため、及び/または重篤な症状もしくは死亡の可能性を低減するために、ウイルス疾患を患っていることがわかっている、またはウイルス疾患を患っていると疑われる患者に本発明の組成物を投与してもよい。
【0098】
一実施形態では、前記患者は、ヒトである。他の実施形態では、前記患者は、イヌ等のヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0099】
一実施形態では、前記組成物は、透過促進剤をさらに含む。本発明の透過促進剤は、前記ヘリカーゼATP分解酵素阻害剤、ICAM-1酵素阻害剤、及びシアリダーゼ酵素阻害剤の経口摂取または細胞摂取を促進するように機能する。
【0100】
一実施形態では、前記透過促進剤は、ピペリンである。ピペリン(下記の構造)は、アルカロイドであり、黒胡椒や長胡椒の辛味の原因となる。
【化3】
ピペリンは、市販されているか、またはジクロロメタンを使用して黒コショウから抽出することができる。ピペリンは、栄養素の生物学的利用能を高める。
【0101】
一実施形態では、前記組成物は、約300~約700mgのミリセチン、約100~約500mgのヘスペリチン、及び約5~約100mgのピペリンを含む。別の実施形態では、前記組成物は、約450~約600mgのミリセチン、約250~約400mgのヘスペリチン、及び約5~約50mgのピペリンを含む。
【0102】
一実施形態では、前記組成物は、混合物の総重量に対して、約50~約80重量%のミリセチン、約25~約55重量%のヘスペリチン、及び約0.5~約10重量%のピペリンの混合物を含む。別の実施形態では、前記組成物は、混合物の総重量に対して、約55~約75重量%のミリセチン、約30~約50%のヘスペリチン、及び約0.5~約5%のピペリンの混合物を含む。さらに別の実施形態では、前記組成物は、混合物の総重量に対して、約60%のミリセチン、約39%のヘスペリチン、及び1%のピペリンの混合物を含む。
【0103】
一実施形態では、前記組成物におけるピペリン:ミリセチン:ヘスペリチンの比は、約1:(2~4):(2~4)、または約1:(2~3):(2~3)、または約1:3:3である。別の実施形態では、前記組成物におけるピペリン:ミリセチン:ヘスペリチンの比は、約1:(20~75):(20~75)、または約1:(30~60):(30~60)、または約1:(40~55):(40~55)である。
【0104】
一実施形態では、前記組成物は、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、皮下投与、舌下投与、頬側投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、経鼻投与、口からの吸入、鼻からの吸入、経皮投与、またはそれらの任意の組み合わせによって前記患者に投与される。
【0105】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、粉末、顆粒の形態であってもよく、あるいは水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型または油中水型の液体エマルションとして、またはエリキシル剤またはシロップとしてもよく、それぞれが有効成分として所定量の本発明の化合物を含有する。
【0106】
経口投与のための本発明の固体剤形では、前記活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、及び/または以下のいずれか等の1種または複数種の薬剤的に許容される担体と混合される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/またはケイ酸等の増量剤または増量剤、(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/またはアカシア等の結合剤、(3)グリセロール等の保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、(5)パラフィン等の溶解遅延剤、(6)4級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、(7)セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイト粘土等の吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物等の滑沢剤、及び(10)着色剤。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、前記医薬組成物は、緩衝剤も含んでもよい。
【0107】
以下の実施例において本発明の組成物及び方法の実施形態を説明する。これらの実施例は、例示を目的として提供されており、本発明の組成物及び方法の範囲を限定するものとはみなされない。
【実施例
【0108】
以下の実施例を参照して本発明の組成物及び方法を説明する。これらの実施例は、本発明の組成物及び方法についてのより良い理解を提供するであろう。
【0109】
実施例1:
ミリセチン300mg、ヘスペリチン195mg、及びピペリン5mgを含むゼラチンカプセルを患者に1日2回食事とともに経口投与する。
【0110】
実施例2:
クエン酸ナトリウム10mg、ミリセチン500mg、及びヘスペリチン300mgを含む錠剤を1日1回起床時に経口投与する。
【0111】
実施例3:
ミリセチン600mg、ヘスペリチン390mg、ピペリン10mgを含む粉末を消費前に調理したスクランブルエッグ等の食品に振りかける。
【0112】
実施例4:
55重量%のミリセチン、35重量%のヘスペリチン、及び10重量%のピペリンの混合物を含む組成物を、生理食塩水1gあたり組成物1mgとなるように生理食塩水に混合し、静脈内注射する。
【0113】
試験#1~4の実験目的
【0114】
目的:
【0115】
SARS-CoV-2の増殖制限における「フラボノイド化合物」の有効性を測定する。
【0116】
作業概要:
【0117】
GloballRDGからPSUに送付された4種の化合物の様々な濃度でVero E6細胞を処理する。次に、処理済み細胞と未処理細胞を所定の濃度のSARS-CoV-2 USA/WA1-2020株に感染させる。これらの細胞の生存及び健康状態を感染後最大72時間まで監視する。
【0118】
変更:試験化合物の最大濃度の変更。
【0119】
実験詳細:
【0120】
A. 化合物のSARS-CoV-2に対する有効性の測定:
【0121】
1.24ウェル プレートにおいて、Vero E6細胞を1ウェルあたり10個の細胞の密度まで増殖させる。
【0122】
2. 感染前に、4種の化合物、固体粉末化合物の場合、0μg/ml~最大100μg/mlの濃度範囲で、また、液体化合物の場合、最大希釈率1/1000~1/20000で、濃度ごとに3つのウェルで前記細胞を2時間処理する。
【0123】
3.前記細胞をウイルス濃度5×10TCID50のSARS-CoV-2(USA/WA1-2020)に感染させる。
【0124】
4.感染後72時間にわたって24時間ごとに前記細胞の健康状態を光学顕微鏡で監視する。具体的には、細胞変性効果、細胞の丸まり、ウェルの底からの細胞脱落を観察する。
【0125】
5.感染後72時間にLHD放出アッセイで細胞死を測定する。
試験
【0126】
以下の試験を参照して本組成物及び方法を説明する。
【0127】
以下の試験を実施し、コロナウイルスに対するエクイビルの有効性を実証した。
【0128】
試験#1
【0129】
目的:
【0130】
Vero E6細胞中のSARS-CoV-2に対するエクイビルの効果を測定する。
【0131】
実験概要:
【0132】
Vero E6細胞を24ウェル プレートに1.5×10細胞/ウェルの密度で播種した。提供された化合物の8つの希釈物(エクイビル、ミリセチン、ヘスペリチン)のそれぞれ及び媒体処理(DMSO)をSARS-CoV-2(MOI:0.03)と同時に添加した。各濃度を3つのウェルで試験した。これらのウェルを毎日に画像化し、実験の最終日(3日目)に、LHD細胞毒性アッセイは完了した。図3~5は、1~3日目の各濃度を表す写真であり、以下の通りである。代表的なプロトコルを以下の試験#2に示す。
【0133】
試験されたエクイビルの濃度:
【0134】
エクイビル (μg/ml): 100、50、25、12.5、6.25、3.125、1.5625、及び0.78125。
【0135】
エクイビルを試験するための代表的なプロトコル:
【0136】
化合物LB-1を試験するためのプロトコル
【0137】
1日目
【0138】
化合物の原液の調製 (MSCにおけるBSC内)
・化合物20mgを秤量し、1mlのDMSO(細胞培養グレード)に再懸濁する。
・よくボルテックスし、100μlの分量を10個作成する。ラベルを付けて、-20℃で保管する。
【0139】
細胞の播種(感染前日)(ペルにおけBSC内)
・1X Penn/Strepを含むMEM+10%FBS中で、Vero E6細胞を最終濃度1.5×10細胞/mlになるように再懸濁する。
・1mlの細胞懸濁液を24ウェル プレートの各ウェルに添加する。
・これらを37℃ O/NのCOインキュベーターに放置する。
【0140】
0日目
【0141】
化合物の使用溶液の調製 (MSCにおけるBSC内)
・2%血清と1X Pen/Strepを含むMEMを調製する。
・9.9mlの培地を入れた10mlの滅菌チューブを1本準備する。このチューブに#1というラベルを付ける。
・5mlの培地を入れた10mlの滅菌チューブを7本準備する。これらのチューブに#2~#8というラベルを付ける。
・前記化合物の原液が入っているチューブを1本解凍する。
・原液100μlをチューブ#1に添加して、よくボルテックスする。
・チューブ#1から5mlをチューブ#2に移して、よくボルテックスする。チューブ#8まで繰り返す。
・ペルへの輸送のために、これらのチューブを氷上で保管する。
・感染させて、処理する(ペルにおけるBSC内)。
【0142】
ウイルスの調製
・ウイルス(SARS-CoV-2、WA1/USA-2020) を調製する。
・ウイルス原液の濃度:1×106.25TCID50
・標的感染のMOI:0.05
・50mlの、2%血清と1X Pen/Strepを含むMEMに0.5mlのウイルス原液を再懸濁する(最終濃度1×104.25TCID50/mlまで)。
【0143】
細胞の調製 (ペルにおけるBSC内)
・顕微鏡下で観察し、クラスIIA BSCで写真を撮影する。
・プレートをクラスIIB BSCに移す。
・吸引でO/M培地を24ウェル プレートから除去する。
・0.5mlのウイルス懸濁液を各ウェルに(全てのウェルに)添加する。
・0.5mlの各濃度の化合物をチューブ#1~#8の3つのウェルに添加する。
・エクイビルの最終濃度を表に示す:
表1:
・プレートを静かに旋回させてウェル内の培地を混合する。
・プレートをインキュベーターに移す。
【0144】
1日目
・プレートをインキュベーターから取り出す。
・クラスIIA BSCで、細胞を顕微鏡下で観察する。
・各濃度での細胞の写真を撮影する。
・プレートをインキュベーターに移す。
【0145】
2日目
・プレートをインキュベーターから取り出す。
・クラスIIA BSCで、細胞を顕微鏡下で観察する。
・各濃度での細胞の写真を撮影する。
・プレートをインキュベーターに移す。
【0146】
3日目
・プレートをインキュベーターから取り出す。
・クラスIIA BSCで、細胞を顕微鏡下で観察する。
・各濃度での細胞の写真を撮影する。
・プレートをクラス IIB BSCに移す。
・各ウェルから0.5mlを取り出し、1mlのエッペンドルフチューブに移す。該チューブにラベルを付ける。
・クラスIIB BSCに遠心分離機を設置する。
・チューブを5,000gで5分間遠心分離する。
・各チューブから100μlを96ウェル プレートに移す。
・キットの説明書に従ってLHD放出アッセイを実行する。
【0147】
結果の概要:
【0148】
SARS-CoV-2に対する化合物の有効性について、感染時にMOI 0.03で添加された様々な化合物でVero E6細胞を処理することによって試験した。エクイビルは、試験した濃度では毒性を示さず、より高い濃度(100及び50μg/ml)でウイルス増殖の阻害に効果があった。
【0149】
表2:
【0150】
様々な濃度でのエクイビルの有効性
【0151】
図6は、エクイビルには毒性がないことを示すグラフである。
【0152】
試験#2
【0153】
目的:
【0154】
Vero E6細胞中のSARS-CoV-2に対するエクイビルの効果を測定する。
【0155】
実験概要:
【0156】
Vero E6細胞を96ウェル プレートに5×10細胞/ウェルの密度で播種した。エクイビルの8つの希釈液と媒体処理(DMSO)をSARS-CoV-2(MOI:0.01)と同時に添加した。各濃度を3つのウェルで試験した。これらのウェルを毎日に画像化し、実験の最終日(3日目)に、LHD細胞毒性アッセイは完了した。3日目の各濃度の代表画像は以下の通りである。
【0157】
試験されたエクイビルの濃度:
【0158】
エクイビル(μg/ml):1000、500、250、125、62.5、31.25、15.625、及び7.8125。
【0159】
結果の概要:
【0160】
SARS-CoV-2に対する化合物の有効性について、感染時にMOI 0.01で添加された様々な化合物でVero E6細胞を処理することによって試験した。エクイビルは、高濃度では有毒であるが、低濃度では毒性がない。エクイビルは、250、125、及び62.5μg/mlの非毒性の濃度でウイルス増殖の阻害に効果的であった。
【0161】
表3:
【0162】
図7は、効果を示す写真である。
【0163】
図8は、細胞毒性を示すグラフである。
【0164】
試験#3
【0165】
目的:
【0166】
Vero E6細胞中のSARS-CoV-2に対するエクイビルの予防効果及び感染後の治療効果を測定する。
【0167】
実験概要:
【0168】
Vero E6細胞を24ウェル プレートに1.5×10細胞/ウェルの密度で播種した。4つの異なる濃度のエクイビルをSARS-CoV-2感染(MOI:0.01)の2時間前または後のいずれかに添加した。各濃度を3つのウェルで試験した。これらのウェルを毎日に画像化し、実験の最終日(3日目)に、LHD細胞毒性アッセイは完了した。3日目の各濃度の代表画像は以下の通りである。
【0169】
試験された様々な化合物の濃度:
【0170】
エクイビル(μg/ml):200、100、50、及び25。
【0171】
これらの濃度が選択されたのは、これらの濃度では毒性が観察されず、かつウイルスと化合物を同時に添加した場合に効果があったためである。
【0172】
結果の概要:
【0173】
図9~11を参照すると、SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性について、感染の前後にMOI 0.01で添加された様々な化合物でVero E6細胞を処理することによって試験した。エクイビルは、試験された濃度では毒性がなかった。エクイビルは、200及び100μg/mlの非毒性の濃度でウイルス増殖の阻害に効果があった。
【0174】
表4:
【0175】
試験#4
【0176】
試験の全体的な概要:
【0177】
エクイビルは、濃度250μg/ml未満ではVero E6細胞に対して毒性がない。
【0178】
エクイビルは、ウイルスと薬物を同時に添加した場合、50~250μg/mlの範囲の用量で、Vero E6細胞中のSARS-CoV-2(MOI:0.01)を阻害するのに有効である。
【0179】
エクイビルは、ウイルス感染の2時間前または2時間後に薬物を添加した場合、100~200μg/mlの範囲の用量で、Vero E6細胞中のSARS-CoV-2(MOI:0.01)を阻害するのに有効である。
【0180】
試験#5~9の実験目的
【0181】
目的:
【0182】
SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性を測定する。
【0183】
作業概要:
【0184】
SARS-CoV-2(WA1/USA-2020)に感染したCalu-3細胞(ヒト肺腺癌細胞株)を様々な濃度のエクイビルで処理し、TCID50、qRT-PCR、及びNPタンパク質免疫組織化学によって該薬物の有効性を測定する。
【0185】
実験詳細:
【0186】
A.SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性の測定:
【0187】
1.Calu-3細胞を24ウェル プレートで増殖させる。
【0188】
2.前記細胞にSARS-CoV-2(WA1/USA-2020)をMOI 0.05で感染させる。
【0189】
3.感染後-2、0、及び+2時間に濃度25、50、100、150、及び200μg/mlのエクイビルで細胞を処理する。
【0190】
4.72時間にわたって前記細胞の健康状態を監視する。
【0191】
5.3つのウェルからの上清を、全ての条件(4つのエクイビル濃度及び3つの処理期間)下で48時間後のTCID50アッセイによるウイルス増殖の推定に使用する。
【0192】
6.3つのウェルからの上清を、全ての条件(4つのエクイビル濃度及び3つの処理期間)下で72時間後のqRT-PCRアッセイによるウイルス増殖の推定に使用する。
【0193】
7.感染細胞の3つのウェル(感染後48時間に4つの異なる濃度のエクイビル及び3つの処理条件で)を固定し、蛍光標識された抗NP抗体で染色し、蛍光顕微鏡を使用して画像化する。
【0194】
8.未処理の感染細胞と処理済の未感染細胞との間で各アッセイからのデータを比較する。
【0195】
9.全ての条件において、感染後48時間における細胞死をLHD放出アッセイによって測定する。
【0196】
B. SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性の測定:
【0197】
10.Calu-3細胞を24ウェル プレートで増殖させる。
【0198】
11.前記細胞にSARS-CoV-2(WA1/USA-2020)をMOI 0.05で感染させる。
【0199】
12.感染後-2、0、及び+2時間に、10%w/v没食子酸を含む濃度50、100、200、及び250μg/mlのエクイビルで細胞を処理する。
【0200】
13.72時間にわたって前記細胞の健康状態を監視する。
【0201】
14.3つのウェルからの上清を、全ての条件(4つのエクイビル濃度及び3つの処理期間)下で48時間後のTCID50アッセイによるウイルス増殖の推定に使用する。
【0202】
15.3つのウェルからの上清を、全ての条件(4つのエクイビル濃度及び3つの処理期間)下で48時間後のqRT-PCRアッセイによるウイルス増殖の推定に使用する。
【0203】
16.感染細胞の3つのウェル(感染後48時間に4つの異なる濃度のエクイビル及び3つの処理条件で)を固定し、蛍光標識された抗NP抗体で染色し、蛍光顕微鏡を使用して画像化する。
【0204】
17.未処理の感染細胞と処理済の未感染細胞との間で各アッセイからのデータを比較する。
【0205】
成果:
【0206】
1)感染及びエクイビル処理の48時間後でのTCID50値。
【0207】
2)感染及びエクイビル処理の72時間後でのq-RT-PCRTによるウイルス力価。
【0208】
3)少なくとも3つの、各条件下での細胞の蛍光抗NP染色の画像(40倍、適切な対照とともに)。
【0209】
SARS-CoV-2感染アッセイ/TCID50一般プロトコル-MJN -Sutton実験室から適応:
【0210】
1.DMSO中で20mg/mlの原液を調製する。小分けし、-20℃で保管する。
【0211】
2.感染の24時間前に、24または96ウェル プレートに指定の細胞タイプを播種する。37℃のCOインキュベーターに放置する。
【0212】
3.感染当日、化合物の使用溶液を指定濃度に調製し、目的MOIに合わせてウイルス原液を希釈する。
【0213】
4.-2時間、0時間、または+2時間の時点で、ウイルス懸濁液、処理、または必要に応じてその2つの組み合わせを個々のウェルに添加する。
【0214】
5.ウイルスと細胞を37℃で1時間インキュベートし、ウイルス懸濁液を吸引する。
【0215】
6.処理化合物または単純な培地に交換し、細胞を所定の時間インキュベートする。
【0216】
7.インキュベーション後、各ウェルから上清を収集し、遠心沈殿して精製する。
【0217】
8.24ウェルTCID50の場合、アッセイの24時間前にVero E6細胞をプレートに播種する。37℃のCOインキュベーターに放置する。
【0218】
9.原液を1:10から10-10までの濃度に段階的に希釈する。
【0219】
10.Vero E6細胞から古い培地を吸引し、2%FBSを含む新しい培地を900μl/ウェルで添加する。
【0220】
11.最も薄い上清サンプル(10-10)から始めて、各サンプル100μlを、4つの事前にラベルを付けられたVero E6ウェルに添加する。最も薄いサンプルから最も濃いサンプルまでの各サンプル100μlを対応するウェルに添加し続ける。
【0221】
12.陰性対照用には必ず未処理のウェルを用意する。
【0222】
13.細胞変性効果を読み取って、TCID50の値を計算する前に、37℃で72時間インキュベートする。
【0223】
SARS-CoV-2qRT-PCRプロトコル-MJN:
【0224】
1.TRIzolとInvitrogen PureLink RNAミニキットを組み合わせた前述のプロトコルを使用して、RNAを細胞または組織から単離する。
【0225】
2.処理されたRNAサンプルをBSL2施設に持ち込む前に、前述のプロトコルでサンプルのウイルス不活化を確認する。
【0226】
3.品質チェックと濃度値のため、RNAサンプルをナノ滴下する。
【0227】
4.サンプル全体のRNA濃度を正規化する。
【0228】
5.BioRad iScript cDNAキットでcDNAを生成し、RNaseを含まない水で最終生成物を20倍希釈する。
【0229】
6.BioRad CFX Connectシステムを使用して、SARS-CoV-2 N2タンパク質のqPCRを実行する。各サンプルの希釈cDNA 5μlを、それぞれの容量のBioRad SsoAdvanced Universal SYBR Green SuperMix、IDT nCOV_N2(SUN)プローブ、及び水に添加する。事前に計算された陽性対照サンプルを含める。
【0230】
CFX Manager(登録商標)ソフトウェアで定量化または閾値サイクル値を取得し、標準に基づいて遺伝子コピー数を計算する。
【0231】
SARS-CoV-2 IFAアッセイ プロトコル-MJN-Jose実験室から適応:
【0232】
1.各ウェルの底にガラス カバースリップを備えた24ウェル プレートに細胞を播種する。
【0233】
2.SARS-CoV-2で感染アッセイを実行し、48~72時間インキュベートする。
【0234】
3.固定する前に、感染細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回優しく洗浄する。
【0235】
4.3.7%パラホルムアルデヒドのPBS溶液を使用して(500μl/ウェル)、室温で細胞を30分間固定する。
【0236】
5.PBSで3回洗浄する(1ml/ウェル)。
【0237】
6.0.1%Triton X-100のPBS溶液を使用して(500μl/ウェル)、前記細胞を15分間透過処理する。
【0238】
7.250μlのTriton X-100を24.75mlの1X PBXに添加し、25mlの0.1%Triton X-100を調製する。
【0239】
8.PBS(1ml/ウェル)で、毎回3分間ずつ3回洗浄する。
【0240】
9.固定された細胞をBSL2施設に持ち込む前に、前述のプロトコルでプレートのウイルス不活化を確認する。プレートを-4℃に保管する。
【0241】
10.PBS+10mg/mLウシ血清アルブミン(500μl/ウェル)を用いて4℃で1時間~一晩ブロッキングする。
【0242】
11.ブロッキング溶液を除去する。50μlの一次抗体を1時間添加する(PBS+10mg/mLウシ血清で希釈)。室温でロッカーに1時間ロックする。
【0243】
12.前記溶液を除去し、PBSで3回洗浄する(500μl/ウェル)。
【0244】
13.ここからの実験を全て暗所で行う。プレートをアルミホイルで覆い、フード内のライトを消す。50μlの、PBS+10mg/mLウシ血清中の二次抗体とインキュベートする。室温でロッカーに1時間ロックする。
【0245】
14.ヘキスト染色剤のPBS溶液を使用して(0.2~2μg/mL)、細胞核を15分間染色する。
【0246】
15.PBSで毎回3分間ずつ3回洗浄する(500μl/ウェル)。PBSをウェル プレート上に残す。
【0247】
16.1滴のFluorsaveでカバー スライドをガラス スライドに取り付け、透明なマニキュアを使用してスライドを密封する。
【0248】
17.撮影の準備が整うまで4℃の暗所に保管する。
【0249】
試験#5
【0250】
目的:
【0251】
Calu-3細胞に対するエクイビルの毒性を測定する。
【0252】
実験概要:
【0253】
Calu-3細胞(ATCCから購入)を24ウェル プレートに1.55細胞/ウェルの密度で播種した。エクイビルを最終濃度200、150、100、50、25、及び0μg/mlになるように添加した。各濃度を3つのウェルで試験した。これらのウェルを毎日に監視し、実験の2日目と最終日(3日目)に、LHD細胞毒性アッセイは完了した。
【0254】
試験されたエクイビルの濃度:
【0255】
エクイビル(μg/ml):200、150、100、50、25、及び0。
【0256】
結果の概要:
【0257】
図12及び13を参照すると、エクイビルは、100μg/ml以上の濃度で、処理後48及び72時間にCalu-3細胞に対して毒性(対照群を上回った)があった。
【0258】
試験#6
【0259】
目的:
【0260】
感染時にGRDGを添加した場合、該化合物に提供されたエクイビルのCalu-3細胞中のSARS-CoV-2に対する効果を測定する。本試験の結果を図14a~17に示す。
【0261】
実験概要:
【0262】
Calu-3細胞を24ウェル プレートに5×10細胞/ウェルの密度で播種した。エクイビルの5つの希釈液と媒体処理(DMSO)をSARS-CoV-2と同時に添加した(MOI:0.05)。各濃度を3つのウェルで試験した。1時間後、細胞をPBSで洗浄し、前記濃度のエクイビルを添加した。感染中、エクイビルを培地中に維持した。感染の48時間後、100μlの上清を除去し、培地中のウイルス力価をTCID50アッセイによって定量した(プロトコルは付録として添付)。3日目の各濃度の代表画像は以下の通りである。
【0263】
試験されたエクイビルの濃度:
【0264】
エクイビル(μg/ml):200、150、100、50、及び25。
【0265】
結果の概要:
【0266】
SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性にいついて、感染時にMOI 0.05で添加された様々な濃度のエクイビルでCalu-3細胞を処理することによって試験した。エクイビルは、100μg/mlを超える濃度では毒性があったが、それより低い濃度では毒性がなかった。エクイビルは、50 μg/mlの非毒性濃度でウイルス増殖の阻害に効果的であった。感染後48及び72時間での約3~4 log倍の減少は、統計的に有意であった(一元配置分散分析)。25μg/ml(感染の48時間後)で観察されたウイルス力価の約1 log倍の減少は、統計的に有意ではなかった。
【0267】
図14a~17は、有効性を示している。
【0268】
試験#7
【0269】
目的:
【0270】
感染の2時間前(-2時間)または2時間後(+2時間)にGRDGを添加した場合、該化合物に提供されたエクイビルのCalu-3細胞中のSARS-CoV-2に対する効果を測定する。その結果を図18a~19bに示す。
【0271】
実験概要:
【0272】
Calu-3細胞を24ウェル プレートに5×10細胞/ウェルの密度で播種した。エクイビルの5つの希釈液と媒体処理(DMSO)をウェルのサブセットに添加した。処理の2時間後(-2時間)に、SARS-CoV-2をMOI 0.05で添加した。1時間後、細胞をPBSで洗浄し、以前にエクイビルで処理したウェルのサブセットに前記濃度のエクイビルを添加した。洗浄の1時間後(+2時間)、所定濃度のエクイビルを残りのウェルに添加した。感染中、エクイビルを培地中に維持した。各濃度を3つのウェルで試験した。感染後48時間及び72時間に100μlの上清を除去し、TCID50アッセイを測定することによって培地中のウイルス力価を定量した(プロトコルは以下の通り)。
【0273】
試験されたエクイビルの濃度:
【0274】
エクイビル(μg/ml): 200、150、100、50、及び25。
【0275】
結果の概要:
【0276】
SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性について、感染の2時間前または2時間後にMOI 0.05で添加された様々な濃度のエクイビルでCalu-3細胞を処理することによって試験した。エクイビルは 、100μg/mlを超える濃度では毒性があったが、それより低い濃度では毒性がなかった。
【0277】
エクイビルは、感染の2時間前に処理した場合、50μg/mlの非毒性濃度でウイルス増殖の阻害に効果的であった。感染後48及び72時間での約2 log倍の減少は、統計的に有意であった(一元配置分散分析)。25μg/ml(感染後48及び72時間)でウイルス力価の約3~4倍の減少が観察された。
【0278】
感染の2時間後にエクイビルで処理された細胞では、ウイルス増殖において統計的に有意な減少はなかった。
【0279】
試験の限界:
【0280】
前記化合物の有効性について、Calu-3細胞で試験した。
【0281】
MOI 0.05で試験した。従って、高濃度に対する前記化合物の有効性は未知である。
【0282】
感染の2時間前に添加された25μg/mlのエクイビルによるウイルス増殖の阻害は、その後のqRT-PCRによる確認ではウイルス力価の同様の低下が示されないため、繰り返す必要がある(下記の試験#8)。
【0283】
試験#8
【0284】
目的:
【0285】
GRDGに提供されたエクイビルのCalu-3細胞中のSARS-CoV-2に対する効果をqRT-PCRで測定する。
【0286】
実験概要:
【0287】
Calu-3細胞を24ウェル プレートに5×10細胞/ウェルの密度で播種した。エクイビルの5つの希釈液と媒体処理(DMSO)をウェルのサブセットに添加した。処理の2時間後(-2時間)に、SARS-CoV-2をMOI 0.05で添加した。感染時(0時間)に、エクイビルをウェルの別のサブセットに添加した。1時間後、細胞をPBSで洗浄し、以前にエクイビルで処理したウェルのサブセットに前記濃度のエクイビルで添加した。洗浄の1時間後(+2時間)に、所定濃度のエクイビルを残りのウェルに添加した。感染中、エクイビルを培地中に維持した。各濃度を3つのウェルで試験した。感染後72時間に800μlの上清を除去し、RNAを単離し、qRT-PCRにより培地中のウイルス力価を定量した(プロトコルは付録として添付)。
【0288】
試験したエクイビルの濃度:
【0289】
エクイビル(μg/ml): 200、150、100、50、及び25。
【0290】
結果の概要:
【0291】
SARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性に、感染の2時間前または2時間後にMOI 0.05で添加された様々な濃度のエクイビルでCalu-3細胞を処理することによって試験した。エクイビルは、100 μg/mlを超える濃度では毒性があったが、それより低い濃度では毒性がなかった。
【0292】
エクイビルは、感染の2時間前または感染時に処理した場合、50μg/mlの非毒性濃度でウイルス増殖の阻害に効果的であった。感染の72時間後での約2log倍の減少は、統計的に有意であった(一元配置分散分析)。25μg/mlの濃度では、ウイルス コピーの有意な減少は認められなかった。
【0293】
感染後2時間に濃度50及び25μg/mlのエクイビルで処理された細胞では、ウイルス増殖において統計的に有意な減少はなかった。
【0294】
試験#9
【0295】
目的:
【0296】
Calu-3細胞中のSARS-CoV-2に対するエクイビルの効果を免疫蛍光法で測定する。
【0297】
実験概要:
【0298】
Calu-3細胞をカバーガラス上の24ウェル プレートに5×10細胞/ウェルの密度で播種した。エクイビルの3つの希釈液と媒体処理(DMSO)をウェルのサブセットに添加した。前記化合物を添加した直後に、SARS-CoV-2をMOI 0.05で添加した。1時間後、細胞をPBSで洗浄し、以前にエクイビルで処理したウェルのサブセットに前記濃度のエクイビルを添加した。感染中、エクイビルを培地中に維持した。感染後48時間に全ての上清を除去し、細胞を固定し、免疫蛍光法によりウイルス抗原(NPタンパク質)の存在について試験した(プロトコルは付録として添付)。
【0299】
試験したエクイビルの濃度:
【0300】
エクイビル(μg/ml):75、50、及び25。
【0301】
結果の概要:
【0302】
亜毒性レベルでのSARS-CoV-2に対するエクイビルの有効性について、感染時に添加された様々な濃度のエクイビルでCalu-3細胞を処理することによって試験した。
【0303】
50μg/mlエクイビルで処理された細胞では有意に低い抗原レベルが検出され、SARS-CoV-2に感染した対照細胞と比較してウイルス増殖が有意に減少したことを示唆している。
【0304】
試験の限界:
【0305】
前記化合物の有効性について、Calu-3細胞で試験した。
【0306】
MOI 0.05で試験した。従って、高濃度に対する前記化合物の有効性は未知である。
【0307】
濃度75μg/ml及び25μg/mlのエクイビルで処理された細胞の免疫蛍光イメージングは保留中である(必要に応じて画像化する)。
【0308】
試験の全体的な概要:
【0309】
エクイビルは、100μg/ml未満の濃度ではCalu-3細胞に対して毒性がない。
【0310】
エクイビルは、前記ウイルスと薬物を同時に添加した場合、感染後48及び72時間にTCID50で測定したところ、50μg/mlの用量でCalu-3細胞において、MOI 0.05でSARS-CoV-2を阻害するのに有効である。
【0311】
エクイビルは、ウイルスの2時間前に前記薬物を添加した場合、感染後48及び72時間にTCID50で測定したところ、50μg/mlの用量でCalu-3細胞において、MOI 0.05でSARS-CoV-2を阻害するのに有効である。
【0312】
エクイビルは、前記ウイルスと薬物を同時に添加した場合、感染後72時間にqRT-PCRで測定したところ、50μg/mlの用量でCalu-3細胞において、MOI 0.05でSARS-CoV-2を阻害するのに有効である。
【0313】
エクイビルは、ウイルスの2時間前に前記薬物を添加した場合、感染後72時間にqRT-PCRで測定したところ、50μg/mlの用量でCalu-3細胞において、MOI 0.05でSARS-CoV-2を阻害するのに有効である。
【0314】
前記ウイルスと薬物を同時に添加した場合、免疫蛍光法で測定したところ、50μg/mlのエクイビルで処理したCalu-3細胞ではウイルス抗原の減少が観察された。
【0315】
試験#10
【0316】
実験概要:
【0317】
Calu-3細胞を24ウェル プレートに1.5×10細胞/ウェルの密度で播種した。SARS-CoV-2による感染の2時間前または感染後のいずれかに、特定のウェルについて、事前に指定されたエクイビル/エクイビル+没食子酸の処理を実施した。細胞を洗浄し、感染後、処理した新鮮な培地を添加した。上清を採取し、感染後48及び72時間にウェルを画像化した。各処理条件についてTCID50分析を実行し、処理後の感染性ウイルスの回収可能な濃度を測定した。未感染の処理ウェルに対してLHD分析を実行し、Calu-3細胞に対する処理の細胞毒性を測定した。その結果を図24~47に示す。
【0318】
本発明の原理をよりよく理解するために、本発明を様々な実施形態に関連して説明してきた。理解されたいこととして、本明細書を読めば、当業者にはその様々な改変が明らかである。本明細書に記載される様々な実施形態の特徴は、記事内で組み合わせることができる。従って、理解されたいこととして、本明細書に記載の本発明は、添付される請求項の範囲に含まれるような改変を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図15c
図15d
図15e
図16
図17
図18a
図18b
図19a
図19b
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46a
図46b
図47
【国際調査報告】