IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーションの特許一覧

<>
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図1
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図2
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図3
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図4
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図5
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図6
  • 特表-ハロゲン化アルコキシエタンの合成 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ハロゲン化アルコキシエタンの合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/06 20060101AFI20240703BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20240703BHJP
   C07C 41/38 20060101ALI20240703BHJP
   C07C 41/42 20060101ALI20240703BHJP
   C07C 41/44 20060101ALI20240703BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C07C41/06
C07C43/12
C07C41/38
C07C41/42
C07C41/44
B01D11/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577955
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 AU2022050616
(87)【国際公開番号】W WO2022261727
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2021901842
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ツァナクツィディス
(72)【発明者】
【氏名】セシリー エルドリッジ
(72)【発明者】
【氏名】スコット コートニー
【テーマコード(参考)】
4D056
4H006
【Fターム(参考)】
4D056AB17
4D056AC22
4D056BA03
4D056CA28
4D056CA39
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC43
4H006AD11
4H006BC10
4H006BD84
(57)【要約】
一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続調製方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、本方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールを含む反応成分をプレート反応器中に導入するステップを含み、(a)プレート反応器は、反応成分が反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、(b)ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも反応成分が混合すると形成され、そのように形成されたハロゲン化アルコキシエタンが反応器流出物としてプレート反応器から流出する、ハロゲン化アルコキシエタンの連続製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続調製方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、前記方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールを含む反応成分をプレート反応器中に導入するステップを含み、
(i)前記プレート反応器は、前記反応成分が反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、
(ii)前記ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも前記反応成分が混合すると形成され、そのように形成された前記ハロゲン化アルコキシエタンが反応器流出物として前記プレート反応器から流出する、
一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続製造方法。
【請求項2】
前記プレート反応器は、前記反応成分が反応混合物として流れる前記1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールのスタックを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体モジュールは、約-15℃~約45℃の温度である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の流体経路は、少なくとも10mlの総内部容積を提供する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応器流出物は、少なくとも90容積%の前記ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プレート反応器は、約5分未満の滞留時間を提供する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物は、(i)C1-4アルカノールおよび塩基の溶液を(ii)一般式XClC=CFの化合物と混合することによって得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合は、前記1つ以上の流体経路の上流で実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合は、(i)前記C1-4アルカノールおよび前記塩基の前記溶液の流を、(ii)一般式XClC=CFの前記化合物の流と1:1~10:1の流量比に従って組み合わせることによって行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基は、塩基およびC1-4アルカノールの総重量に対して1重量%~30重量%の量で使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一般式XClC=CFの化合物は、ClC=CFまたはFClC=CFである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記C1-4アルカノールは、メタノール(CHOH)、エタノール(CHCHOH)、1-プロパノール(CHCHCHOH)、2-プロパノール((CHCHOH)、1-ブタノール(CHCHCHCHOH)、2-ブタノール(CHCHCHOHCH)、2-メチル-1-プロパノール((CHCHCHOH)、2-メチル-2-プロパノール((CHCOH)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化アルコキシエタンは、ClHC-CFOCH(メトキシフルラン)またはClFHC-CFOCHである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基は、アルカリ金属塩基カチオンまたはアンモニウム塩基カチオンを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、N-メチル-N,N,N-塩化トリオクチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルホスホニウムから選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(a)アミンおよび酸のうちの1つを前記反応器流出物または前記反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた前記混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、前記有機相は、前記ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(c)ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた前記有機相に添加し、それによって前記ハロゲン化アルコキシエタンを精製するステップと、
を含む精製手順をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップ(d)をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アミンは、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、エタノールアミン、ピロリジン、2-アミノブタン、およびそれらの混合物から選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、亜硝酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、分別蒸留によって単離される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記極性液体は、水である、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
メトキシエテン(ME)、オルトエステル(OE)、およびジクロロ酢酸メチル(MDA)の1つ以上を含む不純物からハロゲン化アルコキシエタンを精製するための、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、前記ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも99%の純度を有する、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法に従って得られる一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してハロゲン化アルコキシエタンの連続調製に関し、特に、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシである、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化アルコキシエタン化合物は、農薬、染料、難燃剤、造影剤はいうまでもなく、今日の医薬品有効成分のかなりの部分を構成している。
【0003】
医薬品有効成分として使用するハロゲン化アルコキシエタン化合物の合成には、再現可能な医薬品グレードの化合物が必要である。従来、ハロゲン化アルコキシエタン化合物はバッチ法で製造されている。
【0004】
ただし、バッチごとの製品の品質は変動し得、手順には高価な高圧装置の使用が必要であり得る。現在のバッチ手順では、試薬の混合が不十分で不均一であることが問題となり得、変換収率が比較的低いために長い反応時間が必要となり得る。その結果、ハロゲン化アルコキシエタン化合物の従来のバッチ合成では、医薬品グレードの化合物を商業的に適切な規模で確実に製造するために、コストのかかる後処理精製手順が必要となり得る。
【0005】
従来のバッチ手順とは対照的に、半バッチまたは半連続配置を使用した連続生産は、従来のバッチ手順と比べてより高い収率が得られ得るという点で魅力的である。しかしながら、特にハロゲン化アルコキシエタンの製造の場合、既存の半バッチ式または半連続式の装置では、有毒で腐食性の中間体および副生成物を効果的に管理することが困難であり、熱制御、安全性、廃棄物管理、長い反応時間、および低い変換収率の点で従来のバッチプロセスの課題に十分に対処できない。
【0006】
したがって、ハロゲン化アルコキシエタン化合物の従来の合成手順に伴う問題および制限を改善する機会が残されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続調製方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、本方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールを含む反応成分をプレート反応器中に導入するステップを含み、
(a)プレート反応器は、反応成分が反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、
(b)ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも反応成分が混合すると形成され、そのように形成されたハロゲン化アルコキシエタンが反応器流出物としてプレート反応器から流出する、
ハロゲン化アルコキシエタンの連続製造方法に関する。
【0008】
本発明によって、反応成分をプレート反応器に連続的に導入し、そこで目的のハロゲン化アルコキシエタンを含有する反応器流出物に変換し得る。流出物は、反応器から連続的に流出し、必要に応じてさらなる処理および/または精製に利用可能である。方法の連続的な性質によって、ハロゲン化アルコキシエタンを商業的な量で製造することが有利に可能になる。
【0009】
最も単純な構成では、プレート反応器中で使用する流体モジュールは、流体モジュールの流体入口と流体出口とを接続する単一の流体経路を有する。より複雑な構成では、流体モジュールは、流体モジュールの1つ以上の流体入口と1つ以上の流体出口とを接続する複数の流体経路を有し得る。当該複数の流体経路は合流し得、それぞれの流体を効果的に混合する。
【0010】
いくつかの実施形態では、プレート反応器は、複数の流体モジュールを備える。当該モジュールは、所与のモジュールの所与の流体出口が後続のモジュールの所与の流体入口と流体連通し、すべてのモジュールにわたる連続した流体経路を提供するように、直列に接続され得る。いくつかの実施形態では、プレート反応器は、並列に接続された複数の流体モジュールを備える。いくつかの実施形態では、プレート反応器は、複数の流体モジュールを備え、その一部は直列に接続され、一部は並列に接続される。
【0011】
流体モジュール内の1つ以上の流体経路は、反応混合物として反応器を通って流れる試薬成分を助ける任意の寸法および設計を有し得る。設計の観点から、1つ以上の流体経路は、その少なくとも一部が主軸に沿って一定の断面を有するチャネル、および/またはその少なくとも一部が主軸に沿って可変の断面を有するチャネルの形態であり得る。
【0012】
本発明の方法において、ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも反応成分が混合すると生成する。反応は、発熱性であり、反応熱は、プレート反応器に関連して当業者に既知である任意の手段によって連続的に抽出され得る。熱の抽出は、各流体モジュールの温度を制御することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約-15℃~約45℃の温度である。いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約-10℃~約25℃の温度である。提案された温度範囲は、メトキシフルランの高収率生産に特に有利であることが観察されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、反応成分は、反応混合物として1つ以上の流体経路を約1~15ml/minの平均流量で流れる。当業者には理解されるように、特定の流量は、1つ以上の流体経路の寸法設計、動作温度、およびプレート反応器中の流体経路全体に沿った過圧を含み得る、設計およびプロセスパラメータの適切な組み合わせによって得られるであろう。
【0014】
1つ以上の流体経路に沿った流は、ある程度の流体抵抗によって特徴付けられる。当該流体抵抗は、1つ以上の流体経路の入口と出口との間の圧力降下の観点から定量化され得る。次に、1つ以上の流体経路の所与の設計では、圧力降下は、1つ以上の流体経路に沿った反応混合物の流量に比例する。通常、圧力降下は、反応混合物が1つ以上の流体経路に沿って効果的に流れ得る。
【0015】
1つ以上の流体経路内の圧力は、当業者に既知である任意の手段によって調節され得る。例えば、圧力は、反応器の下流に位置する背圧バルブ、圧力変換器(PT)、および/または背圧調整(BPR)システムによって調整され得る。
【0016】
本発明のプレート反応器における流体モジュールの動作特性(例えば、圧力、流量、寸法など)によって、ハロゲン化アルコキシエタンの工業的生産が可能になることが理解されるであろう。これによって、プレート反応器は事実上、例えばマイクロ流体反応器とは対照的に、工業用反応器の部類に入る。
【0017】
1つ以上の流体経路およびプロセス条件(例えば、温度および圧力降下など)の特定の設計によって、反応成分の迅速かつ完全な混合が可能になり、反応時間および変換収率の点で従来の手順に比べて大幅な改善が得られる。
【0018】
さらに、1つ以上の流体経路は、バッチプロセスで使用される従来のシステムと比較して、より制御された反応環境を提供し、本発明のプレート反応器を本質的により安全に操作し、従来の装置と比較してより純粋な生成物の製造を可能にする。これに関連して、本発明の反応器では、温度および圧力の極端な条件が容易に実現され、プロセスパラメータの完全な制御を維持しながら、化学反応性を高める。
【0019】
したがって、目的のハロゲン化アルコキシエタンの形成に関与する非常に高速で発熱性の高い反応であっても、高い反応選択性と安全性の向上が達成され得る。1つ以上の流体経路によってもたらされる優れた熱および物質移動特性と、反応が反応チャネルの長さに沿って分解されるという事実によって、溶液の熱または化学急冷による中間体または生成物の滞留時間を正確に制御可能である。
【0020】
さらに、小セクションの流体経路によってもたらされる制御された反応環境によって、危険な化学物質の生成は、容易に制御され得る。有毒物質は、インラインで容易に急冷され得るため、望ましくない暴露が回避され、方法の安全性が大幅に向上する。
【0021】
本発明の方法は、商業的に関連するハロゲン化アルコキシエタン化合物の製造にも特に有利である。
【0022】
例えば、一般式XClC=CFの化合物は、ClC=CFであり得る。それらの場合、本発明の方法は、C1-4アルカノールがメタノールであるときに得られ得るメトキシフルラン(ClHC-CFOCH)などのハロゲン化アルコキシエタン化合物の効率的かつ拡張可能な製造を可能にする。この方法は、反応収率が高いため、医薬品グレードのメトキシフルランを容易かつ大規模に合成し得る。
【0023】
メトキシフルランの生成のために、流体モジュール(または複数の接続された流体モジュール)の温度は、約-10℃から約25℃の間の温度に有利に制御され得る。それらの場合、反応混合物は、約15ml/min~約100ml/minの流量でプレート反応器を横切って流れ得る。
【0024】
これらの実施形態は、良好な熱制御、安全性、短い反応時間、高い変換収率、および医薬品グレードのメトキシフルランの高スループット生産の高いスケールアップの可能性の間の有利な妥協点を提供し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、一般式XClC=CFの化合物は、FClC=CFである。それらの場合、本発明の方法は、C1-4アルカノールがメタノールであるときに得られ得る、ClFHC-CFOCHの効率的かつ拡張可能な製造を提供する。ClFHC-CFOCHは、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル-ジフルオロメチルエーテル(エンフルラン) の合成における既知の前駆体であるため、高純度かつ大量のClFHC-CFOCHを生成し得る可能性は、特に有利である。
【0026】
本発明のさらなる態様および実施形態について、下記でより詳細に説明する。
【0027】
本発明はまた、下記の非限定的な図面を参照して本明細書で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の方法で使用するためのプレート反応器の流体モジュールの第1の実施形態を示す図である。
図2】本発明の方法で使用するためのプレート反応器の流体モジュールの第2の実施形態を示す図である。
図3】本発明の方法で使用するためのプレート反応器の流体モジュールの第3の実施形態を示す図である。
図4】本発明の方法で使用するためのプレート反応器の流体モジュールの第4の実施形態を示す図である。
図5】反応器出口で抽出された生成物留分に記録されたH核磁気共鳴(NMR)トレースを示す図である。
図6】反応器出口で抽出された生成物留分に記録された13C NMRトレースを示す図である。
図7】反応器出口で抽出された生成物留分に記録された19F MRトレースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の方法は、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンであって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシである、ハロゲン化アルコキシエタンを連続調製するための方法である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「C1-4アルコキシ」という表現は、1~4個の炭素を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシ基を意味する。直鎖および分枝アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびt-ブトキシが挙げられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、Xは、-Clであり、ORは、メトキシ基であり、この場合、ハロゲン化アルコキシエタンは、式ClHC-CFOCH(メトキシフルラン)を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、Xは、-Fであり、ORは、メトキシ基であり、この場合、ハロゲン化アルコキシエタンは式FClHC-CFOCHを有する。このような化合物は、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル-ジフルオロメチルエーテル(エンフルラン)の合成用の前駆体として知られている。
【0033】
本発明の方法は、ハロゲン化アルコキシエタンを連続調製するための方法であり、プレート反応器の使用に基づいている。調製が「連続的」であるということは、試薬成分が混合され、1つ以上の流体経路を通って流れるときに、ハロゲン化アルコキシエタンが連続的に形成されることを意味する。したがって、そのように形成されたハロゲン化アルコキシエタンは、プレート反応器から連続的に出る流出物から収集され得る。
【0034】
本発明の方法で使用されるプレート反応器は、1つ以上の流体経路を備える。「流体経路」という表現は、本明細書では、流体が流れ得る連続流体ラインを意味するために使用される。プレート反応器の文脈では、当該流体ラインは、流体モジュールの入口と出口とを流体連通させるチャネルとして視覚化され得る。したがって、流体経路は、固体プレート内に埋め込まれたチャネルの形態、例えば、本明細書に記載される種類の流体モジュールを有し得る。
【0035】
したがって、「プレート反応器」とは、少なくとも1つの流体モジュールを備える反応器を意味し、各モジュールは、モジュールの1つ以上の流体入口と1つ以上の流体出口とを接続する少なくとも1つの流体経路を有する。通常の構成では、プレート反応器は、少なくとも1つ以上の平面流体モジュールによって作製され、各々が平面上に1つ以上の流体経路を画定する。
【0036】
最も単純な構成では、流体モジュールは、1つの流体入口と1つの流体出口との間の流体接続を提供する単一の流体経路を有する。複数の流体モジュールは、所与のモジュールの所与の流体出口が次のモジュールの所与の流体入口に接続されて、すべてのモジュールにわたる連続した流体経路を提供するように互いに接続され得る。当該接続は、当業者に既知である適切な流体接続(例えば、チューブなど)によって達成され得る。
【0037】
ハロゲン化アルコキシエタンの形態が提供されるという条件の下で、プレート反応器は、1つ以上の流体経路を提供するために接続された任意の数の流体モジュールを備え得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、プレート反応器は、1つの流体モジュールを備える。
【0039】
いくつかの実施形態では、プレート反応器は、少なくとも2つの流体モジュールを備える。例えば、プレート反応器は、3、4、5、6、7、8、9、または10個の流体モジュールを備え得る。いくつかの実施形態では、プレート反応器は、2~10個の流体モジュールを備える。例えば、プレート反応器は、5つの流体モジュールを備え得る。
【0040】
プレート反応器が複数の接続された流体モジュールを備えるとき、流体モジュールは、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで接続され得る。これによって、大量生産へのスケールアップが比較的簡単になる。その結果、反応条件は、各流体モジュール内で変化しないままであるため、反応条件の再最適化を最小限またはまったく行わずにスケールアップを実行し得る。これに関連して、単一のマクロ流体経路を開発して同量のハロゲン化アルコキシエタンを生成する場合と比較して、単に流体モジュールの「番号を増やす」だけで所与の量のハロゲン化アルコキシエタンを生成する方が、より効果的かつ効率的であり得る。本発明による方法は1つの流体モジュールを使用することによって少量のハロゲン化アルコキシエタン(例えば、1日あたり数グラム)を生成するために実行され得るが、複数の流体モジュールを容易に接続して、安全性、製品純度、反応時間、反応収率、安全性の同一基準を維持しながら、より商業的に適切な量のハロゲン化アルコキシエタン(例えば、1日あたり数グラムから数キロ)を生成し得る。
【0041】
本発明のプレート反応器は、(i)反応成分が反応混合物として流れる流体経路への反応成分の連続的な導入、および(ii)ハロゲン化アルコキシエタンを含有する流出物の反応器からの連続的な流出を可能にするように設計される。
【0042】
反応成分が反応混合物として1つ以上の流体経路を通って流れるという条件の下で、成分が1つ以上の流体経路に対して混合される場所に関して特に制限はない。
【0043】
例えば、反応成分は、1つ以上の流体経路に導入される前に、当該反応混合物を形成するために一緒に混合され得る。
【0044】
したがって、いくつかの実施形態では、反応成分を混合して、1つ以上の流体経路の上流で反応混合物を形成し、続いて、反応混合物を1つ以上の流体経路に導入する。それらの場合、反応器を製造する流体モジュールは、反応混合物がすべてのモジュールにわたって流れる、1つ以上の別個の交差しない流体経路によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、プレート反応器の流体モジュールは、モジュールの流体入口と流体出口とを接続する単一の流体経路を備える。このようなモジュールの例を図1~2に示す。複数のモジュールを接続して、プレート反応器の入口と出口とを接続する単一の流体経路を提供し得る。
【0045】
あるいは、いくつかの好ましい構成では、反応成分は、例えば対応する専用入口を通じて個別の流体経路に導入され、流体経路が合流するように設計することによってモジュール内で混合され得る。
【0046】
したがって、いくつかの好ましい実施形態では、反応成分は、別個の入口を通じてプレート反応器に導入される。それらの場合、反応器を形成する一連のモジュールのうちの流体モジュール(または反応器を形成する唯一のモジュール)は、反応成分の混合を誘発するように設計された合流流体経路を有する。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、流体モジュールは、各流体入口から流れる流体がモジュールの流体出口に到達する前に混合するように合流する、対応する流体経路を生じる少なくとも2つの流体入口を備える。そのようなモジュールの例を図3および4に示す。これらの場合、反応器は、1つのそのようなモジュール、または1つのそのようなモジュール(例えば、一連の最初のモジュール)を備える複数のモジュールを備え得る。
【0048】
1つ以上の流体経路は、標的とするハロゲン化アルコキシエタンの形成に役立つ任意の設計を有し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、流体モジュールは、その少なくとも一部が流の方向に沿って一定の断面積を有するチャネルの形態の流体経路を備える。それらの例では、チャネルの対向する内壁は互いに本質的に平行である。
【0050】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路の少なくとも一部は、流の方向に沿って一定の断面積を有する正方形または長方形の内部断面形状を有するチャネルとして存在する。このような流体経路の平均内部対角線は、約1~約12mmの範囲であり得る。正方形または長方形の断面を有する流体経路の平均内部対角線は、通常、0.2mm以上12mm未満(およびそれらの間の任意の整数および/またはその分数を含む、例えば0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mmなど)であり得る。一実施形態では、平均内部対角線は2mm以上10mm以下である。一実施形態では、平均内部対角線は2mm以上8mm以下である。いくつかの実施形態では、平均内部対角線は約6mmである。これらの寸法は、反応混合物の効果的な混合と効果的な熱制御のための比表面積との特に有利な組み合わせを提供する。例えば、これらのサイズの流体経路はいずれも、本明細書に記載される種類のスタティックミキサーを収容するのに十分な大きさでありながら、効果的な熱制御のために十分に大きな比表面積を提供する。結果として、反応器を操作して、特に高収率のハロゲン化アルコキシエタンを提供し得る。したがって、得られた反応器は、医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンを大規模に製造するための有利なプラットフォームとなる。
【0051】
図1は、主要部分が流の方向に沿って一定の断面積を有する流体経路2を有する流体モジュール1の実施形態を示す。流体経路2の主要部分は、チャネルの垂直方向のサイズ(すなわち、表示面に垂直な方向)に応じて、正方形または長方形の内部断面形状を有するチャネルとして現れる。モジュール1は、流体が流体経路2に入る/出る、入口/出口ポート3、4を備える。図1の実施形態のモジュールは、モジュールの上流で混合された、反応混合物として流体経路2を通って流れ得る、反応成分の流に適する。平らなバッフルの形態のスタティックミキサー5は、流体経路に沿って配置され、反応混合物が流体経路を通って流れるときに反応成分の混合を補助する。
【0052】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路は、その少なくとも一部が流の方向に沿って可変の断面積を示すチャネルの形態である。
【0053】
例えば、チャネルは、流の方向に沿って交互する複数の最小値と複数の最大値によって特徴付けられる断面積を示し得る。結果として、1つ以上の流体経路は、流の方向に沿って周期的な狭窄を示し、これが振動流の生成を助ける。「振動流」とは、流体が交互の流量で流体経路に沿って流れるように、流体が1つ以上の流体経路の軸方向に振動することを意味する。これによって、交互する断面の制限と拡張の頻度、および交互の制限と拡張の相対間隔に基づいて、流体が壁から経路の中心まで交互に移動する効率的な混合メカニズムが実現する。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路は、各々がノズル状の入口と狭くなっている出口とを有する連続したチャンバを画定する。当該連続するチャンバのうちの1つのチャンバは、1つのチャンバの狭くなった出口が次に隣接する後続のチャンバのノズル状の入口を形成するように、次の後続チャンバの中に収納され得る。この構成は、流体の流に対して曲がりくねった経路を提供し得、反応成分の混合にさらに寄与するという点で特に有利であり得る。当該チャネル設計の例を図2に示す。
【0055】
図2は、本発明の方法で使用するためのプレート反応器の流体モジュール1aの実施形態を示す。モジュール1aは、流体入口/出口3a、4aの間に流体経路2aを画定する。流体経路2aは、各々がノズル状の入口7とテーパ状の出口8とを有する連続したチャンバ6を画定する。各チャンバ6の先細の出口8は、次に隣接する後続のチャンバのノズル状の入口を形成する。図示のモジュールでは、各チャンバ6の出口は、連続するチャンバ内の中に収納される。この実施形態では、各チャンバ6には、チャンバに入る流体の流を偏向させ得、各チャンバの出口8に向かって先細になるチャンバの湾曲した側面に沿わせ得る、内部湾曲静的バッフル9が設けられる。図2の実施形態のモジュールは、モジュールの上流で混合され、反応混合物として流体経路2aを通って流れる反応成分の流に適している。
【0056】
図3は、図2の実施形態モジュールの変形を示す。図3のモジュール1bでは、別個の入口3b、3b’が、混合点11で合流して第1のチャンバ6bのノズル状の入口を形成する2つの別個のチャネル10、11を生じさせる。流体経路2bの残りの部分は、図2のモジュールのそれと同様である。図3の実施形態のモジュールは、2つの入力流を、流体経路2bを通って流れて出口4bでモジュール1bを出る1つの流に混合するのに適している。例えば、モジュール1bを使用して、事前形成された塩基/アルカノール溶液をXClC=CF化合物と混合して、流体経路2bを通って流れる反応混合物を形成し得る。事前形成された塩基/アルカノール溶液は、入口3bを通して導入され、XClC=CF化合物は入口3b’を通して導入され得る。あるいは、事前形成された塩基/アルカノール溶液は、入口3b’を通して導入され得、XClC=CF化合物は、入口3bを通して導入され得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路は、本明細書に記載される設計の組み合わせである設計を有する。例えば、1つ以上の流体経路は、流の方向に沿って断面積が一定のセクションと流の方向に沿って断面積が可変のセクションとを交互に配置し得る。流の方向に沿った一定の断面積のセクションおよび可変の断面積のセクションは、本明細書に記載される種類のものであり得る。
【0058】
図4は、図1に示すような、図2~3に示される種類の可変断面積のセクション13と一定断面積のセクション14とを組み合わせる流体経路2cを有する実施形態モジュール1cを示す。
【0059】
例えば図1~4に示される種類の流体モジュールは、ハロゲン化アルコキシエタンの効果的な生成に役立つ任意のサイズを有し得る。例えば、流体モジュールは、少なくとも約100mm、少なくとも約250mm、少なくとも約500mm、または少なくとも約750mmの側面寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約100mm~約1m、例えば、約100mm~約750mm、約100mm~約500mm、または約100mm~約250mmの側面寸法を有する。いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約100×100mm~約750×750mmの寸法を有する正方形または長方形の形状を有する。いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約150×120mm、約300×250mm、約450×300mm、約600×400mm、または約700×500mmの寸法を有する。
【0060】
本発明の方法において、反応混合物は、ハロゲン化アルコキシエタンの生成に役立つ任意の流量で1つ以上の流体経路を通って流れ得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、少なくとも約1ml/minの流量で1つ以上の流体経路を流れる。例えば、反応混合物は、少なくとも約5ml/min、少なくとも約25ml/min、少なくとも約50ml/min、少なくとも約100ml/min、少なくとも約250ml/min、少なくとも約500ml/min、少なくとも約750ml/min、少なくとも約1L/min、少なくとも約2L/min、少なくとも約4L/min、または少なくとも約8L/minの流量で1つ以上の流体経路を通って流れ得る。
【0061】
1つ以上の流体経路は、ハロゲン化アルコキシエタンの生成に役立つ任意の内部容積を提供し得る。誤解を避けるために記すと、1つ以上の流体経路の「内部容積」とは、反応成分が反応混合物として流れる流体経路の内部空洞の容積を意味する。換言すれば、1つ以上の流体経路の「内部容積」は、反応器が動作しているときの任意の時点で流体経路内に存在する流体の総容積に対応する。
【0062】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路は、少なくとも約5ml、少なくとも約10ml、少なくとも約25ml、少なくとも約50ml、少なくとも約100ml、少なくとも約250ml、少なくとも約500ml、少なくとも約750ml、少なくとも約1L、少なくとも約1.5L、または少なくとも約2Lの総内部容積を有する。例えば、1つ以上の流体経路は、10ml~2Lの範囲、例えば1L以下(およびそれらの間の任意の整数および/またはその分数を含む、例えば、100ml、100.1m1など)の総内部容積を有し得る。一実施形態では、1つ以上の流体経路は、10ml以上1L以下の総内部容積を有する。例えば、1つ以上の流体経路は、10ml以上500ml以下の総内部容積を有し得る。一実施形態では、1つ以上の流体経路は、10ml以上100ml以下の総内部容積を有する。
【0063】
1つ以上の流体経路を流れる流体の容積滞留時間は、流体経路の総内部容積と流体経路を流れる流体の流量との比によって決定され得る。次に、後者は、1つ以上の流体経路に収束するすべての試薬成分ラインの流量の合計によって決定され得る。本発明の方法において、プレート反応器は、ハロゲン化アルコキシエタンの生成に役立つ、1つ以上の流体経路を流れる流体の任意の滞留時間を得るように操作され得る。
【0064】
例えば、プレート反応器は、約250分未満の滞留時間を提供するように操作され得る。いくつかの実施形態では、プレート反応器は、約200分未満、約100分未満、約50分未満、約25分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満、約2.5分未満、約2分未満、または約1分未満の滞留時間を提供するように操作される。いくつかの実施形態では、プレート反応器は、約1分~約5分の滞留時間を提供するように操作される。
【0065】
誤解を避けるために記すと、1つ以上の試薬化合物が提供される形態に関係なく、それらは液体反応混合物として1つ以上の流体経路を通って流れることが理解されるであろう。したがって、本発明は、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続調製方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、本方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールを含む反応成分をプレート反応器中に導入するステップを含み、(a)プレート反応器は、反応成分が液体反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、(b)ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも反応成分が混合すると形成され、そのように形成されたハロゲン化アルコキシエタンが反応器流出物としてプレート反応器から流出する、ハロゲン化アルコキシエタンの連続製造方法を提供するともいわれ得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンは、反応混合物を約-15℃までの温度に冷却することによって形成される。例えば、反応混合物は、約-10℃に、約-5℃に、約-2.5℃に、約-1℃に、約0℃に、約5℃に、約10℃に、あるいは約25℃に冷却され得る。いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンは0℃~25℃の温度で形成される。例えば、ハロゲン化アルコキシエタンは、約10℃の温度で生し得る。
【0067】
試薬化合物の温度はまた、混合して反応混合物を形成する前に、所望の値に制御され得る。例えば、塩基および/またはアルカノールは室温で使用され得る。いくつかの実施形態では、塩基およびアルカノールは、塩基/アルカノール溶液として提供される。当該塩基/アルカノール溶液は、15℃未満、例えば10℃未満、または0℃~15℃の温度で使用され得る。いくつかの実施形態では、XClC=CF化合物は室温で使用される。いくつかの実施形態では、XClC=CF化合物は、15℃未満、例えば10℃未満、または0℃~15℃の温度で使用される。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬化合物は、反応混合物が形成されるときに1つ以上の試薬化合物が液体の形態であるように、混合されて反応混合物を形成する前に冷却される。プレート反応器内で試薬成分を確実に液体の状態で使用するには、試薬成分の冷却が必要な場合があり得る。これは、当業者に知られている任意の手段によって達成され得る。例えば、塩基/アルカノール溶液およびXClC=CF化合物のいずれかまたは両方のリザーバは、温度制御され得る。いくつかの実施形態では、塩基/アルカノール溶液およびXClC=CF化合物のいずれかまたは両方が、対応する温度制御されたリザーバ内に提供される。このような温度制御は、本明細書に記載される種類の冷却手法(例えば、冷却ジャケット、熱交換器、またはそれらの組み合わせ)によって達成され得る。あるいは、または同時に、1つ以上の試薬成分の冷却は、温度制御されたリザーバポンプ、例えば、本明細書に記載される種類の冷却システム(例えば、冷却ジャケット、熱交換器、またはそれらの組み合わせ)を備えたポンプによって達成され得る。
【0069】
本明細書で使用するとき、「室温」は、例えば10℃~40℃であるが、より通常は15℃~30℃である周囲温度を指す。例えば、室温は、20℃~25℃の温度であり得る。
【0070】
本発明の方法におけるプレート反応器は、ハロゲン化アルコキシエタンの生成に役立つ任意の圧力で操作され得る。本発明の方法では、反応成分は、反応混合物が液体の形態に保たれるような圧力で1つ以上の流体経路を通って流れ得る。例えば、本発明の方法では、反応成分は、約1,250kPa(ゲージ圧)の圧力で1つ以上の流体経路を通って流れ得る。
【0071】
反応成分および対応する混合物と接触する1つ以上の流体経路の内壁は、反応成分、ハロゲン化アルコキシエタン、および任意の反応中間体または副産物に対して化学的に不活性な材料で作製され得る。その点において、当該材料は、流体モジュールが作製されているのと同じ材料であり得る。さらに、当該材料は、それを通過する流体の流量圧力および容積に耐えるのに適切な強度および構造的完全性を有しているべきである。
【0072】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路は、金属、合金、セラミック、またはポリマーで作製された内面壁を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールは、本明細書に記載される種類の材料で作製される。
【0074】
有利なことに、本明細書に記載される種類の1つ以上の流体経路におけるハロゲン化アルコキシエタンの連続合成は、従来の手順に従ってバッチシステムで行われる対応する合成よりも効率的である。その点において、本明細書に記載される種類の流体システムにおける流体の挙動は、バッチ環境における流体の挙動とは大きく異なる。バッチ環境における流体力学は主に圧力と重力とによって支配されるが、本発明のプレート反応器では、表面張力、エネルギー散逸、および流体抵抗が流体力学を決定する上で重要な役割を果たす。さらに、本明細書に記載される種類の1つ以上の流体経路の曲がりくねった性質によってもたらされる混合効率は、従来の方法の混合効率よりも優れている。
【0075】
1つ以上の流体経路の内部断面積は、任意の形状を有し得る。内部断面積の適切な幾何学的形状の例としては、円形幾何学、正方形幾何学、長方形幾何学、三角形幾何学、または当技術分野で既知である他の幾何学形状が挙げられる。
【0076】
本発明の方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールを含む反応成分をプレート反応器に導入するステップを含む。
【0077】
一般式XClC=CFの化合物は、Xが-Clまたは-Fである式の任意の化合物であり得る。ClC=CFである。いくつかの実施形態では、Xは、-Fであり、この場合、一般式XClC=CFの化合物は、FClC=CFである。
【0078】
1-4アルカノールは、一般式XClC=CFの化合物のC=C結合への付加反応を促進し、第2の炭素に結合したC1-4アルコキシ基をもたらす任意のC1-4アルカノールであり得る。いくつかの実施形態では、C1-4アルカノールは、メタノール(CHOH)、エタノール(CHCHOH)、1-プロパノール(CHCHCHOH)、2-プロパノール((CHCHOH)、1-ブタノール(CHCHCHCHOH)、2-ブタノール(CHCHCHOHCH)、2-メチル-1-プロパノール((CHCHCHOH)、2-メチル-2-プロパノール((CHCOH)、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、C1-4アルカノールはメタノールである。
【0079】
塩基は、本明細書に記載の条件下で一般式XClC=CFの化合物へのC1-4アルカノールの付加反応を触媒し得る任意の塩基であり得る。換言すれば、塩基は、C1-4アルカノールから対応するアルコキシイオンを生成するのに十分な強さの塩基である。例えば、C1-4アルカノールがメタノールであるとき、塩基はメトキシイオンを生成するのに十分強い塩基である。
【0080】
いくつかの実施形態では、塩基は、アルカリ金属塩基カチオンを含む。例えば、塩基は、アルカリ金属(例えば、Li、NaおよびK)、アルカリ金属塩(例えば、炭酸塩、酢酸塩およびシアン化物)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド(例えば、メチラート、エチラート、フェノラート)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、塩基は、ナトリウムメトキシドおよびカリウムメトキシドから選択され得る。いくつかの実施形態において、塩基は、一般式M-OHのアルカリ金属水酸化物であり、Mは、Li、NaおよびKからなる群から選択されるアルカリ金属である。いくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物は、NaOHまたはKOHである。いくつかの実施形態では、塩基は、KOHである。
【0081】
好ましくは、いくつかの実施形態では、塩基は、窒素含有塩基を含む。例えば、アンモニウム塩基である。適切なそのような塩基の例としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、塩化N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム(アリコート336)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、塩基は、ホスホニウム塩基である。例えば、塩基は、水酸化テトラメチルホスホニウムであり得る。
【0082】
本発明の方法は単一の塩基、例えば本明細書に記載される種類の単一の塩基を用いて有利に実施され得ることを理解されたい。これは、例えば、複合塩基触媒系を提供するために異なる塩基の混合物を使用することとは対照的である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される塩基は単一の塩基である。例えば、いくつかの実施形態では、塩基は、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、塩化N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム(アリコート336)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルホスホニウムから選択される1つの塩基である。
【0083】
ハロゲン化アルコキシエタンの形成中に、塩中間体が流体経路内で沈殿し得る。このような場合、中間塩の沈殿によって、流体経路の望ましくない閉塞が生じ得る。ラインは、清掃される必要があり、望ましくない方法の中断につながる。反応中に沈殿すると予想され得る塩中間体の例としては、アルカリ金属の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、またはハロゲン化物塩(例えば、塩化物、フッ化Naまたはフッ化Kなどのフッ化物塩)が挙げられる。このような場合、塩中間体の潜在的な沈殿に起因する問題を最小限に抑えるために、多くの戦略が採用され得る。
【0084】
例えば、塩基は、ハロゲン化アルコキシエタンの形成中にアルカノールに可溶な塩を形成するように選択され得る。これによって、有利なことに、流体経路に沿った不溶性沈殿物の形成が最小限に抑えられる。その結果、プレート反応器は、従来の手順と比較して、著しく長い時間、ラインを通る流体の流を中断することなく操作され得る。さらに、ラインの清掃の頻度も手間も減り得、大幅なコスト削減につながり得る。これに関連して、中間塩は、反応条件下で塩が結晶化および沈殿しない場合、C1-4アルカノールに「可溶性」であるとみなされる。例えば、中間塩は、反応条件下でC1-4アルカノールへの溶解度が少なくとも0.5重量%である場合、C1-4アルカノールに「可溶性」であるとみなされ得る。アルカノールに可溶な塩を形成し得る塩基の適切な例としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、N-メチル-N,N,N-塩化トリオクチルアンモニウム(アリコート336)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルホスホニウムから選択されるもののような、アンモニウムまたはホスホニウム塩基カチオンを含む塩基が挙げられる。
【0085】
例えば、一般式XClC=CFの化合物がClC=CFである場合、塩基は、水酸化アルキルアンモニウム、塩化アルキルアンモニウム、または水酸化アルキルホスホニウムであり得る。例えば、塩基は、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、塩化N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルホスホニウムから選択され得る。このような場合、塩中間体の形成と沈殿を最小限に抑え得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、一般式XClC=CFの化合物はClC=CF(1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエチレン)であり、C1-4アルカノールは、メタノールである。それらの場合、本発明の方法は、メトキシフルラン(ClHC-CFOCH)などのハロゲン化アルコキシエタン化合物の効率的かつ拡張可能な製造を可能にする。これは、メトキシフルランがPenthrox(登録商標)の有効成分であるため、特に有利である。Penthrox(登録商標)は、急性外傷性疼痛の初期管理や創傷被覆材などの短期間の痛みを伴う処置に効果的で即効性の短期鎮痛薬である。Penthrox(登録商標)は、医師、国防軍、救急車の救急隊員、スポーツクラブ、サーフィンのライフセーバーが、「グリーンホイッスル」として知られる吸入装置を介して緊急鎮痛を行うために使用される鎮痛剤である。
【0087】
Penthrox(登録商標)は、世界中の多くの主要な法域で規制当局の承認を取得しており、患者(子供を含む)が監督下で薬剤を自己投与できるようにする使い捨ての単回使用吸入器として広く普及すると期待される。現在のテストは、グリーンホイッスルに加えて販売される予定のPenthrox(登録商標)の自己投与用の先進的な吸入器で行われている。テスト吸入器は、約3mlのPenthrox(登録商標)を患者に迅速かつ簡単な方法で送達する、完全に統合された鎮痛システムとして開発された。試験吸入器は、ロックアウトタブ、吸入器を作動させるプランジャー、および使用者が通常の呼吸によって活性Penthrox(登録商標)組成物を吸入し得るマウスピースを含む。ロックアウトタブが取り外されると、プランジャーを押し下げることによって吸入器が作動され得る。その後、ユーザーが単に吸入することによってマウスピースを通じて有効成分が放出されるように吸入器が設定される。
【0088】
Penthrox(登録商標)は、(i)応急処置および緊急サービス(例えば、病院の緊急事態、救急車サービス、救命クラブなど)を提供し得る、(ii)形性、機敏性、応急処置のポイントオブケアおよびを必要とする(例えば、軍隊)、ならびに(iii)主流の鎮痛薬の選択としてPenthrox(登録商標)を一般大衆(例えば、薬局)に販売し得る、世界中の施設で、利用できるようにすることを目指している。
【0089】
特定のプロセスパラメータは、本明細書に記載される種類のプレート反応器を使用した医薬品グレードのメトキシフルランの製造に特に有利である。
【0090】
例えば、約-10℃~約25℃の温度でメトキシフルランの形成を行うのが特に有利である。したがって、いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約-5℃~約15℃の温度である。いくつかの実施形態では、流体モジュールは、約10℃の温度である。
【0091】
いくつかの実施形態では、メトキシフルランは、1つ以上の流体経路がそれぞれノズル状の入口と狭くなる出口とを有する連続チャンバを画定する流体モジュールを備えるプレート反応器を使用して生成される。当該連続チャンバのチャンバは、1つのチャンバの狭くなった出口が次に隣接する後続チャンバのノズル状入口を形成するように、次の後続チャンバの中に収納され得る。この構成は、流体の流に曲がりくねった経路を提供し得、反応成分の混合にさらに寄与し得るという点で特に有利であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、メトキシフルランは、本明細書に記載される特性、例えば、図1~4のいずれか1つに示されるモジュールの特性を有する流体モジュールを備えるプレート反応器を使用して生成される。
【0093】
いくつかの実施形態では、メトキシフルランは、少なくとも10mlの総内部容積を有する1つ以上の流体経路を提供する複数の流体モジュールを備えるプレート反応器を使用して生成される。例えば、メトキシフルランは、約10ml~約2Lの総内容積を有する1つ以上の流体経路を提供する複数の流体モジュールを備えるプレート反応器を使用して生成され得る。いくつかの実施形態では、総内部容積は、約20ml~約1L、約20ml~約750ml、約20ml~約500ml、約20ml~約250ml、約20ml~約100ml、または約20ml~約50mlである。
【0094】
メトキシフルランの形態であるという条件の下で、任意の塩基が使用され得る。メトキシフルランの合成に適した塩基の例としては、アルカリ金属塩基カチオンを含む塩基が挙げられる。例えば、塩基は、アルカリ金属(例えば、Li、NaおよびK)、アルカリ金属塩(例えば、炭酸塩、酢酸塩およびシアン化物)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド(例えば、メチラート、エチラート、フェノラート)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、塩基は、ナトリウムメトキシドおよびカリウムメトキシドから選択され得る。いくつかの実施形態では、塩基は、一般式M-OHのアルカリ金属水酸化物であり、Mは、Li、NaおよびKからなる群から選択されるアルカリ金属である。いくつかの実施形態では、アルカリ金属水酸化物は、NaOHまたはKOHである。いくつかの実施形態では、塩基はKOHである。いくつかの実施形態では、塩基は、アンモニウムまたはホスホニウム塩基カチオンを含む。適切なそのような塩基の例としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、塩化N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム(アリコート336)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルホスホニウムが挙げられる。
【0095】
いくつかの実施形態では、メトキシフルランは、メタノールおよび塩基を塩基/メタノール溶液として提供することによって生成される。溶液は、溶液の総重量に対して約1%(wt%)~約10%(wt%)の塩基を含有し得る。例えば、溶液は、溶液の総重量に対して約2%(wt%)~約5%(wt%)の塩基を含有し得る。いくつかの実施形態では、塩基/メタノール溶液は、溶液の総重量に対して約2.5%(wt%)の塩基を含む。塩基/メタノール溶液は、約-5℃~約10℃の温度で提供され得る。
【0096】
塩基/メタノール溶液とClC=CFは、メトキシフルランの形成につながる任意の比率で混合され得る。例えば、塩基/メタノール溶液とClC=CFは、10:1~1:1の容積比に従って混合され得る。いくつかの実施形態では、塩基/メタノール溶液およびClC=CFは、5:1の容積比に従って混合される。適切な容積比は、塩基/メタノール溶液とClC=CFを混合するときに、それぞれの流量を調整することで容易に得られ得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、一般式XClC=CFの化合物は、FClC=CFであり、C1-4アルカノールは、メタノールである。それらの場合、本発明の方法は、ClFHC-CFOCH(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルメチルエーテル)の効率的かつ拡張可能な製造を提供する。ClFHC-CFOCHは、吸入麻酔薬エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル-ジフルオロメチルエーテル)の合成における既知の前駆体であるため、高純度かつ大量のClFHC-CFOCHを生成できる可能性は特に有利であり得る。以下のスキーム1で仮定される反応手順に従って、エンフルラン(b)は、ClFHC- CFOCHを光(例えばUV)で塩素化して2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジクロロメチルエーテル(a)を得て、ジクロロメチル基上の塩素原子のフッ素による置換をされることによって合成され得る。後者は、例えば、塩化アンチモン(III)の存在下でフッ化水素を使用するか、または塩化アンチモン(V)を伴うフッ化アンチモン(III)を使用することによって達成される。
【0098】
【化1】
【0099】
本発明の方法において、塩基は、ハロゲン化アルコキシエタンの形成に役立つ任意の量で使用され得る。通常の手順では、塩基は、一般式XClC=CFの化合物に対して触媒量で使用される。「触媒量」で使用することにより、塩基は、一般式XClC=CFの化合物に対して化学量論未満の量で使用される。本発明のプレート反応器の文脈では、一般式XClC=CFの化合物に対して触媒量の塩基がプレート反応器に連続的に供給されることを理解されたい。いくつかの実施形態では、XClC=CF化合物モル比の塩基は、1のあらゆる分数の割合である。例えば、XClC=CF化合物モル比は、約0.1:1、約0.15:1、約0.2:1、約0.25:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、または約0.9:1であり得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、塩基は、C1-4アルカノールとの溶液中で使用される。それらの場合、塩基/アルカノール溶液は、塩基およびC1-4アルカノールの総重量に対して1重量%~30重量%の量で塩基を含有し得る。例えば、塩基は、塩基とC1-4アルカノールとの総重量に対して、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%の量で使用され得る。いくつかの実施形態では、塩基は、塩基およびC1-4アルカノールの総重量に対して約2.5重量%の量で使用される。いくつかの実施形態では、塩基は、塩基およびC1-4アルカノールの総重量に対して約5重量%の量で使用される。いくつかの実施形態では、塩基は、塩基およびC1-4アルカノールの総重量に対して約2.5重量%の量で使用される。
【0101】
本発明の方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、Xは-Clまたは-Fである、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールに対する追加の反応成分を使用することなく有利に実施され得ることを理解されたい。(i)~(iii)は本明細書に記載される種類の反応成分である。
【0102】
例えば、本発明の文脈において、C1-4アルカノールは、試薬および溶媒として同時に作用し、C1-4アルカノール以外の追加の溶媒を使用する必要なく反応が進行するといわれ得る。例えば、本発明の方法は、クロロフルオロオレフィン(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DG))、またはテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TG)などの反応に従来使用され得る溶媒を使用する必要なしに、有利に実施され得ることが理解されるであろう。
【0103】
したがって、本発明は、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの連続調製方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、本方法は、(i)一般式XClC=CFの化合物、Xは、-Clまたは-F、(ii)塩基、および(iii)C1-4アルカノールからなる反応成分をプレート反応器中に導入するステップを含み、
(a)プレート反応器は、反応成分が反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、
(b)ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも反応成分が混合すると形成され、そのように形成されたハロゲン化アルコキシエタンが反応器流出物としてプレート反応器から流出する、ハロゲン化アルコキシエタンの連続製造方法を提供するともいわれ得る。
【0104】
例えば、本発明の方法がメトキシフルランを製造するために使用されるとき、本発明は、2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロ-1-メトキシエタン(メトキシフルラン)の連続調製方法を提供するものであるといわれ得、本方法は、(i)1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエテン(ClC=CF)、(ii)塩基、および(iii)メタノールからなる反応成分をプレート反応器中に導入するステップを含み、
(a)プレート反応器は、反応成分が反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、
(b)メトキシフルランは、少なくとも反応成分が混合すると形成され、そのように形成されたメトキシフルランが反応器流出物としてプレート反応器から流出する。
【0105】
さらに、本発明の方法をClFHC-CFOCHの製造に使用するとき、本発明は、ClFHC-CFOCHの連続調製方法を提供するといわれ得、この方法は(i)FClC=CF、(ii)塩基、および(iii)メタノールからなる反応成分を、プレート反応器中に導入するステップを含み、
(a)プレート反応器は、反応成分が反応混合物として流れる1つ以上の流体経路を画定する流体モジュールを備え、
(b)ClFHC-CFOCHは、少なくとも反応成分が混合すると形成され、そのように形成されたClFHC-CFOCHが反応器流出物としてプレート反応器から流出する。
【0106】
本発明の方法では、反応成分は、反応混合物として1つ以上の流体経路を通って流れる。通常、各反応成分は別個の成分として提供され、これらの成分を混合して反応混合物を形成する。成分の混合は、成分が反応混合物として1つ以上の流体経路を確実に流れるようにするのに適した任意の順序または手段に従って達成され得る。例えば、各成分は、対応する別個のリザーバに提供され得、そこから抽出され(例えば、ポンプで送られ)、他の成分と混合されて反応混合物を形成し得る。当該混合は、任意の適切な混合順序に従って実行され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、反応成分は、1つ以上の流体経路の上流で混合される。それらの場合、1つ以上の流体経路に導入される流体は反応混合物である。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態では、反応成分は、例えば対応する専用入口を通して流体モジュールの個別の流体経路に導入され(例えばポンプで送られ)、それらが合流するように流体経路を設計することによって混合される。
【0109】
いくつかの実施形態では、塩基およびC1-4アルカノールは、本明細書に記載される種類の溶液として第1のリザーバに提供され、XClC=CF化合物は、第2のリザーバに提供される。したがって、それらの場合、反応混合物は、(i)第1のリザーバから抽出された塩基およびC1-4アルカノールの溶液を(ii)第2のリザーバから抽出された一般式XClC=CFの化合物と混合することによって得られる。当該混合は、1つ以上の流体経路の上流で行われ得、続いて、混合物が1つ以上の流体経路を通って流れる(例えば、ポンプで送られる)。あるいは、いくつかの好ましい構成では、当該混合は、例えば合流流体経路を画定する流体モジュールを採用することによって、1つ以上の流体経路に沿って行われ得る。
【0110】
XClC=CF化合物、塩基、およびC1-4アルカノールを混合する配置(任意の組み合わせ、例えば、XClC=CF化合物と塩基およびC1-4アルカノールの溶液との混合、またはXClC=CF化合物、塩基、および別個の化合物としてのC1-4アルカノール)が流体モジュール内で達成される(例えば、合流する流体経路を有することによって)ことは、メトキシフルランの生成に特に有利である。
【0111】
塩基、アルカノール、およびXClC=CF化合物が1つ以上の流体経路の上流で混合される場合、塩基、アルカノール、およびXClC=CF化合物は、当業者に既知の任意の手段によって混合されて反応混合物を形成され得る。
【0112】
場合によっては、塩基、アルカノール(または塩基/アルカノール溶液)およびXClC=CF化合物は、例えばT型またはY型配置で単一の流体ラインを形成するために交差するラインにそれらを流すことによって混合される。それらの場合、結果として得られる単一の流体ラインは、プレート反応器の1つ以上の流体経路の供給源であり得る。
【0113】
なおさらなる構成では、塩基、アルカノール(または塩基/アルカノール溶液)およびXClC=CF化合物は、1つ以上の流体経路の上流に位置する混合ユニット内で混合される。これによって、反応混合物として流体経路に入る前に、すべての反応成分間の高度な混合を有利に確実に行い得る。その結果、流体経路内にスタティックミキサーが存在しない場合でも、高純度のアロゲン化アルコキシエタンの迅速な形成が達成され得る。
【0114】
混合ユニットは、プレート反応器の一体構成要素であっても、そうでなくてもよい。混合ユニットは、外部エネルギーを提供することによって混合が達成される能動混合ユニットであり得る。本発明の方法での使用に適したそのようなユニットの例としては、ポンピングエネルギーまたは電場の周期的変化によって時間パルス流を与えるユニット、音響流体振動、超音波、エレクトロウェッティングベースの液滴振動、マイクロスターラーなどが挙げられる。代替構成では、混合ユニットは、塩基/アルカノール溶液ラインとXClC=CF化合物ラインとを1つの単一ラインに結合することによって混合が達成される受動的混合ユニットであり得る。本発明の方法での使用に適したそのような装置の例としては、Y型およびT型フロージャンクション、多重積層ミキサー、分割再結合ミキサー、カオスミキサー、ジェット衝突ミキサー、再循環フローミキサーなどが挙げられる。パッシブミキシングユニットの通常の設計には、Tフロー構成とYフロー構成、すだれ状および分岐フロー分配構造、流圧縮のための集束構造、繰り返される流の分割および再結合構造、ライン内の流障害物、蛇行状またはジグザグチャネル、多穴プレート、小さなノズルなどが挙げられる。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体経路はインラインスタティックミキサーを備える。これは、成分が1つ以上の流体経路を通って流れるときの成分の拡散による混合を補うのに特に有利である(これは、小さな内部断面積の流体経路における混合の主要な推進要因となり得る)。したがって、流体経路内のスタティックミキサーを実装して、流れる流体の多層膜化または流れる流体の容積内での渦の形成を誘発し、それによって混合効率を高め得る。
【0116】
適切なスタティックミキサーの例には、バッフル、ヘリカルミキサー、スピニングディスク、およびスピニングチューブが含まれる。当業者には理解されるように、スタティックミキサーは、反応成分、ハロゲン化アルコキシエタン、および反応副生成物および/または中間体に対して化学的に不活性な任意の材料で作製され得る。これに関して適切な材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フルオロカーボン(例えば、テフロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリ二フッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカンなど)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ガラス繊維強化プラスチック、炭化ケイ素、シリカ、Ni基合金、No-Mo基合金が挙げられる。当業者であれば、スタティックミキサーでの使用に適した他の材料を容易に特定可能であろう。
【0117】
スタティックミキサーの適切な構成の例は、図1~4の実施形態の流体モジュールにおけるバッフル5および湾曲バッフル9によって提供される。
【0118】
上記の議論は、1つ以上の流体経路の内壁を作成するために使用される材料に関連して行われているが、同様の考慮事項が、方法を実行するために使用され、反応成分、生成物、中間体、副生成物、および/またはそれらの混合物のいずれかと接触すると予想されるシステム/装置の要素(またはその一部)を作成(または内部にライン/コーティング)するために使用される材料にも適用されることが理解されるであろう。すなわち、反応成分、生成物、中間体、副生成物および/またはそれらの混合物のいずれかと接触すると予想される方法を実行するために使用されるシステム/装置の任意の要素(またはその一部)、は、当該反応成分、生成物、中間体、副生成物(HClまたはHFなどの強酸を含み得る)、および/またはそれの混合物に対して化学的に不活性な材料で作製されなければならないことが理解されるであろう。したがって、そのような要素はいずれも、本明細書に記載される種類の材料によって作製され(または必要に応じて裏打ちされ)得る。
【0119】
例えば、方法を実行するために使用されるシステム/装置の一部である任意のリザーバは、リザーバが貯蔵することを意図している化学成分または混合物に対して化学的に不活性な材料で作製され(または内部が裏打ちされ)得る。同様に、反応成分、生成物、中間体、副生成物、および/またはそれらの任意の混合物をポンプ輸送するために使用され得るポンプの関連構成要素は、当該反応成分、生成物、中間体、副生成物、および/またはそれらの混合物で作製され得る。また、反応成分、生成物、中間体、副生成物、および/またはそれらの任意の混合物と接触し得る、本明細書に記載される種類の混合ユニットの関連成分は、当該反応成分、生成物、副生成物、および/またはそれらの混合物に化学的に不活性な材料で作製され得る。これに関して適切な材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フルオロカーボン(例えば、テフロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリ二フッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカンなど)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ガラス繊維強化プラスチック、Ni基合金、No-Mo基合金が挙げられる。当業者であれば、本発明に関与するすべての混合物および化合物の安全な取り扱いを確保するために、反応器の構成要素のいずれかに使用するのに適した他の材料を容易に特定することが可能であろう。
【0120】
本発明の方法では、反応混合物中の反応成分の相対量は、各成分が他の成分と混合されるときの各成分の流量を調整することによって調節され得る。
【0121】
例えば、塩基およびアルカノールが塩基/アルカノール溶液として提供される場合、反応混合物中の反応成分の相対量は、化合物XClC=CFの流量に対する塩基/アルカノール溶液の流量を調整することによって調節され得る。一般式XClC=CFの化合物の流量に対する塩基/アルカノール溶液の流量の比は、ハロゲン化アルコキシエタンの形成に役立つ任意の比であり得る。例えば、反応混合物は、(i)C1-4アルカノールおよび塩基の溶液を、(ii)一般式XClC=CFの化合物と、1:1~10の流量比に従って混合することによって得られ得る。いくつかの実施形態では、当該流量比は、1:1~6:1、2:1~6:1、3:1~6:1、または4:1~5:1である。
【0122】
これに関連して、塩基/アルカノール溶液ラインおよびXClC=CF化合物ラインの各々は、塩基/アルカノール溶液とXClC=CF化合物との混合時にハロゲン化アルコキシエタンの形成に役立つ流量で操作され得る。一実施形態では、各ラインの流量は少なくとも1ml/minである。例えば、それぞれの個々のラインの流量は、少なくとも約5ml/min、少なくとも約25ml/min、少なくとも約50ml/min、少なくとも約100ml/min、少なくとも約200ml/min、少なくとも約500ml/min、少なくとも約1,000ml/min、少なくとも約1,500ml/min、少なくとも約2,000ml/min、少なくとも約4,000ml/min、または少なくとも約8,000ml/minであり得る。いくつかの実施形態では、各々の個別のラインの流量は約250ml/minである。
【0123】
いくつかの実施形態では、塩基/アルカノール溶液は、5ml/min超であるが8,000ml/min未満の流量でミキサーユニットまたは1つ以上の流体経路にポンプで送られるかさもなければ供給され、XClC=CF化合物は、5ml/min超であるが8,000ml/min未満の流量でミキサーユニットまたは1つ以上の流体経路にポンプで送られるかさもなければ供給される。一実施形態では、塩基/アルカノール溶液は、50ml/min以上500ml/min以下の流量でミキサーユニットまたは1つ以上の流体経路にポンプで送られるか、そうでなければ供給される。XClC=CF化合物は、50ml/min以上500ml/min以下の流量でミキサーユニットまたは1つ以上の流体経路にポンプで送られるか供給される。一実施形態では、塩基/アルカノール溶液は、約250ml/minの流量でミキサーユニットまたは1つ以上の流体経路にポンプで送られるか、またはそうでなければ供給され、XClC=CF化合物は、約50ml/minの流量でミキサーユニットまたは1つ以上の流体経路に流入するポンプで送られるかそうでなければ供給される。
【0124】
本発明の方法では、ハロゲン化アルコキシエタンはプレート反応器から反応器流出物として流出する。これは、当業者に知られている任意の手段によって達成され得る。プレート反応器が2つ以上の流体経路を備える場合、ラインは通常収束して単一の出口を形成し、そこから流出物が反応器から排出される。流出物は、反応器の動作パラメータに依存する流量で反応器から出得る。例えば、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する反応器流出物は、少なくとも5ml/minの流量で反応器を出得る。いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンを含む反応器流出物は、少なくとも10ml/min、少なくとも25ml/min、少なくとも50ml/min、少なくとも100ml/min、少なくとも250ml/min、少なくとも500ml/min、少なくとも750ml/min、少なくとも1L/min、少なくとも1.5L/min、少なくとも2L/min、少なくとも4L/min、または少なくとも8L/minの流量で反応器から出る。
【0125】
流出物は、反応器の操作パラメータに応じて一定量のハロゲン化アルコキシエタンを含有し得る。いくつかの実施形態では、反応器流出物は、少なくとも70容積%、少なくとも80容積%、少なくとも90容積%、または少なくとも95容積%のハロゲン化アルコキシエタンを含有する。有利なことに、本発明の方法は、従来の手順よりも高い変換収率をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、反応器流出物は、少なくとも90容積%のハロゲン化アルコキシエタンを含有する。換言すれば、反応器流出物は、70%以上、例えば80%以上、90%以上、または95%以上の純度でハロゲン化アルコキシエタンを含有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、この方法は、反応器流出物を極性液体と混合するステップをも含む。例えば、この方法は、反応器流出物を水と混合するステップを含み得る。これによって、本明細書に記載の精製手順に関連して使用され得る二相混合物が提供され得る。極性液体(例えば、水)は、本明細書に記載される混合手順のいずれかによって反応器流出物と混合され得る。例えば、リザーバから極性液体(例えば、水)を運ぶ1つ以上のラインは、反応器流出物ラインに挿入するように作製し、極性液体を専用のリザーバから流し得る(例えば、ポンプで送られる)。あるいは、極性液体(例えば、水)は、本明細書に記載される種類の混合ユニットによって反応器流出物と混合され得る。
【0127】
極性液体(例えば、水)は、反応器流出物との二相混合物を得るのに適した任意の流量に従って提供され得る。通常、極性液体(例えば水)は室温で汲み上げられ得る。
【0128】
反応器流出物はまた、流出物中に不純物として存在する追加の化合物をも含み得る。反応器の条件および/または反応成分の性質に応じて、当該不純物は、1つ以上の反応副生成物および/または1つ以上の未反応反応成分を含み得る。不純物の性質は、反応条件および/または反応成分の性質に依存する。例えば、本発明の方法がメトキシフルランを生成するために実施されるとき、不純物は、メタノール、ジクロロジフルオロエチレン(DCDFE)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、クロロホルム、エーテル(例えば、メトキシエテン(ME)、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテン、ハロマー(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルメチルエーテル))などのビニルエーテル、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリメトキシエタン、などのオルトエステル(OE)、ジクロロ酢酸メチル(MDA)、クロロホルム、およびHFを含み得る。1つのそのような実施形態では、不純物は、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテンを含む。
【0129】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、メタノール、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、ジクロロ酢酸メチル、1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエチレン、クロロホルム、フッ化水素およびメトキシエテン(ME)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリメトキシエタンなどのオルトエステル(OE)、およびジクロロ酢酸メチル(MDA)のうちの1つ以上を含む不純物からハロゲン化アルコキシエタンを精製するための方法である。
【0130】
反応器の条件および/または反応成分の性質に応じて、当該不純物は、流出物の5容積%未満~約30容積%の範囲であり得る量で存在し得る。有利なことに、本発明の方法は、従来の合成手順と比較して、ハロゲン化アルコキシエタンを著しく高い純度(すなわち、流出物の90容積%以上)で製造し得ることを保証し得る。いくつかの実施形態では、反応器流出物は5容積%未満の不純物を含む。
【0131】
必要に応じて、本発明の方法の一部として、プレート反応器から流出物として出るハロゲン化アルコキシエタンを精製に供し得る。
【0132】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、
(a)アミンおよび酸のうちの1つを反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(c)ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加し、それによってハロゲン化アルコキシエタンを精製するステップと、
を含む精製手順をさらに含む。
【0133】
これに関連して、「精製」手順である手順は、当該手順が反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相から不純物、例えば本明細書に記載される種類の不純物、を除去し、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相と比較して少ない不純物の量を有する混合物をもたらすことを意味する。
【0134】
いくつかの実施形態では、精製手順は、精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップ(d)を含む。ステップ(d)において、精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも95%、例えば約99.9%などの、例えば少なくとも99%、の純度を有するハロゲン化アルコキシエタンをもたらす、当業者に既知の任意の適切な手段によって単離され得る。したがって、本発明は、本明細書に記載の方法に従って得られる、一般式XClHC-CFOR、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1~4アルコキシである、のハロゲン化アルコキシエタンを提供するともいわれ得、ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも99%の純度を有する。
【0135】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、
(a)アミンおよび酸のうちの1つを反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(c)ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加し、それによってハロゲン化アルコキシエタンを精製するステップと、
(d)精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む精製手順をさらに含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、精製手順は、反応器流出物に対して直接行われる。
【0137】
いくつかの実施形態では、反応器流出物は、アミンまたは酸を添加する前にさらなる処理を受ける。例えば、反応器流出物は、最初に相分離手順を受け得る。当該手順は、極性液体(例えば水)を反応器流出物に添加して、極性相とハロゲン化アルコキシエタンを含む別個の有機相とから作製される二相混合物を形成することを含み得る。このような場合、有機相は極性相から分離され、さらなる処理の前に廃棄され得る。相分離は、バッチまたは連続(例えばインライン)相分離として行われ得る。
【0138】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、極性液体を反応器流出物に添加して相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導するステップと、極性相から当該有機相を分離するステップとをさらに含む。当該有機相は、ステップ(a)で述べた反応器流出物から分離された有機相である。
【0139】
精製手順の文脈において、二相混合物中の別の有機相からの極性相の分離は、当業者に知られている任意の手段に従って行われ得る。例えば、当該分離は、重力分離器(例えば、相分離フラスコ、タンク、または分液漏斗)、超疎水性メッシュ、超疎油性メッシュなどによって行われ得る。当業者であれば、二相混合物の相を効果的に分離するための適切な手段および手順を特定可能であろう。
【0140】
本明細書で使用される場合、「極性液体」は、本明細書に記載される種類のハロゲン化アルコキシエタンを含有する混合物に添加され得、極性相とハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相とを含む二相混合物の形成をもたらす液体物質である。この点に関して適切な極性液体の例は水である。
【0141】
精製手順は、アミンおよび酸のうちの1つを反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップ(a)を含む。このステップでは、アミンまたは酸のいずれかが反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加される。したがって、いくつかの実施形態では、精製手順は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相にアミンを添加することを含む。いくつかの実施形態では、精製手順は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に酸を添加することを含む。アミンまたは酸は、本明細書に記載される種類のアミンまたは酸であり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(a)は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相にアミンを添加することを含む。
【0143】
アミンは、第一級アミンであっても第二級アミンであってもよい。
【0144】
特定の理論に限定されることを望むものではないが、本明細書に記載される種類のアミンは、N-アルキル化および/またはアミド化経路を通じて反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相中に存在する不純物と反応し得ると考えられる。これは、不純物を、出発不純物よりも単離ステップで除去しやすい化合物に有利に変換する。
【0145】
例えば、本明細書に記載される種類のメトキシフルランを製造するための合成手順は、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテン(ビニルエーテル)および/またはジクロロ酢酸メチル不純物の形成を引き起こし得る。このような場合、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテン(ビニルエーテル)は、N-メチル化を通じて第一級および/または第二級アミンと反応し、2,2-ジクロロアセチルフルオリドを生成する。2,2-ジクロロアセチルフルオリドとジクロロ酢酸メチルとは両方とも、アミド化経路を通じて第一級および/または第二級アミンとさらに反応して、対応するジクロロアセトアミドを生成し得る。得られるジクロロアセトアミドは、単離ステップでより除去しやすくなる。これらの反応の概略図をスキーム2に示す。
【0146】
【化2】
【0147】
精製手順での使用に適したアミンの例としては、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、エタノールアミン、ピロリジン、2-アミノブタン、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、アミンは、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、およびそれらの混合物から選択される。
【0148】
いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(a)は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に酸を添加することを含む。
【0149】
適切な酸の例としては、クエン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、亜硝酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、酸はメタンスルホン酸(MSA)である。
【0150】
酸は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相中に存在する不純物との効果的な反応を促進するのに適した任意の形態で添加され得る。例えば、酸は、酸水溶液などの酸溶液の形態であり得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、酸は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の酸溶液である。
【0152】
精製手順のステップ(a)において、アミンまたは酸は、意図された目的に適合する任意の有効量に従って、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加され得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.05:1~約2:1(アミンまたは酸:反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相)の容積比に従って、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加される。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.1:1、約0.25:1、約0.5:1、約1:1、または約2:1(アミンまたは酸:反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相)の容積比に従って反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加される。
【0153】
精製手順のステップ(a)は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の反応を促進するのに有効な任意の方法で実施され得る。例えば、アミンまたは酸の添加は、バッチ手順または連続手順として実行され得る。
【0154】
アミンまたは酸は、精製手順のステップ(a)において反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加され、得られた混合物は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応につながる任意の時間、反応され得る。例えば、精製手順のステップ(a)で得られた混合物を少なくとも約1分間反応させてもよい。いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(a)で得られた混合物を、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約60分間、または少なくとも約2時間反応させる。反応中、混合物は、一定の撹拌下に維持され得る。
【0155】
精製手順のステップ(a)における反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相へのアミンまたは酸の添加は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応に役立つ任意の温度で実施され得る。例えば、アミンまたは酸は、約10℃~約120℃の温度で反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加され得る。添加温度を高くすると(例えば、最大120℃)、より揮発性の不純物の分離が容易になり得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約10℃~約50℃の温度で反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加される。いくつかの実施形態において、精製手順のステップ(a)におけるアミンまたは酸は、室温で反応混合物に添加される。得られた混合物は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応を助長する温度に保たれ得る。例えば、得られた混合物は、約10℃~約50℃の温度に保たれ得る。場合によっては、不純物とアミンまたは酸との反応は、発熱し得、その場合、アミンまたは酸の添加後、アミンまたは酸の添加に伴って、得られる混合物の温度が徐々に上昇することが観察され得る。
【0156】
精製手順はまた、精製手順のステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加するステップ(b)をも含む。これによって、極性相と別個の有機相とで作製される二相混合物が形成され、その別個の有機相はハロゲン化アルコキシエタンを含有する。
【0157】
精製手順のステップ(b)で使用される極性液体は、本明細書に記載される種類の極性液体であり得る。例えば、精製手順のステップ(b)で使用される極性液体は、水であり得る。それらの場合、ステップ(b)の極性相は水相である。
【0158】
精製手順のステップ(b)において、極性液体は、精製手順のステップ(a)で得られた混合物に、必要な相分離および極性相と分離された有機相との形成を誘導するのに適した任意の量で添加され得る。例えば、極性液体は、約0.5:1~約2:1(極性液体:混合物)の容積比に従って、精製手順のステップ(a)で得られた混合物に添加され得る。いくつかの実施形態では、極性液体は、約0.5:1、約1:1、約1.5:1、または約2:1(極性液体:混合物)の容積比に従って、精製手順のステップ(a)で得られた混合物に添加される。
【0159】
精製手順のステップ(a)で得られた混合物にステップ(b)で極性液体が添加されると、得られた二相混合物は、出発混合物中に存在する極性不純物の極相への溶解につながる任意の時間撹拌下に維持され得る。例えば、得られた二相混合物は、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、または少なくとも約60分間、一定の撹拌下に維持され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(b)の後に、さらなる処理の前に、ステップ(b)で得られた有機相を極性相から分離するステップが続く。分離は、意図された目的に適した当業者に知られている任意の手順に従って行われ得る。例えば、分離は、本明細書に記載される種類の手段によって達成され得る。このような場合、分離された極性相は廃棄される。
【0161】
精製手順はまた、ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加するステップ(c)を含む。
【0162】
「ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方」という表現は、アミンが精製手順のステップ(a)で使用される場合、酸は精製手順のステップ(c)で使用されることを意味する。逆に、酸がステップ(a)で使用される場合、アミンはステップ(c)で使用される。
【0163】
いくつかの実施形態では、精製手順は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相にアミンを添加し、その後、得られた混合物に酸を添加することを含む。アミンまたは酸は、本明細書に記載される種類のアミンまたは酸であり得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、精製手順は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に酸を添加し、その後、得られた混合物にアミンを添加することを含む。アミンまたは酸は、本明細書に記載される種類のアミンまたは酸であり得る。
【0165】
したがって、いくつかの実施形態では、精製手順は、
(i)アミンを反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)ステップ(i)で得られた酸をステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
を含む。
【0166】
したがって、いくつかの実施形態では、精製手順は、
(i)酸を反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)ステップ(i)で得られたアミンをステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
を含む。
【0167】
前の4つの段落で説明した実施形態では、すべての化合物(例えば、アミン、酸、および極性液体)が本明細書に記載される種類の化合物であり、いかなる手順条件も本明細書に記載されている種類の手順条件であることが理解されるであろう。
【0168】
当業者であれば理解するように、ステップ(b)で得られた有機相へのアミンまたは酸の添加には、最初にステップ(b)で得られた極性相から当該有機相を分離する必要があり得る。例えば、ステップ(c)で使用されるアミンまたは酸がステップ(b)で得られた極性相と危険な反応をし得るとき、有機相と当該極性相を最初に分離する必要がある。相分離は、本明細書に記載される種類の任意の手順に従って達成され得る。
【0169】
精製手順のステップ(c)において、精製手順のステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方を精製手順のステップ(b)で得られた有機相に添加することは、ステップ(a)で変換され得なかった不純物を変換しおよび/またはステップ(a)で促進された反応によって生成される望ましくない副生成物不純物を除去するのに有利である。
【0170】
例えば、精製手順のステップ(a)が反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に酸を添加することを含むとき、エタン不純物(存在する場合)は対応するクロロ酢酸塩に変換され得、これは、精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離に影響を及ぼし、さらなる酸性副生成物不純物の形成を引き起こし得る。これによって、クロロ酢酸による最終製品の汚染が生じ得る。例えば、酸性条件下では、副生成物2,2-ジクロロ-1,1,1-トリエトキシエタンは、下記のスキーム3に要約されるように、ジクロロ酢酸メチルに変換され得る。
【0171】
【化3】
【0172】
このような場合、精製手順のステップ(c)で続いて追加されるアミンは、アミド化経路を通じてクロロ酢酸と反応して、単離ステップでの除去がより容易な対応するジクロロアセトアミドを生成し得る。
【0173】
精製手順のステップ(c)において、アミンまたは酸は、意図された目的に適合する任意の有効量に従って、ステップ(b)で得られた有機相に添加され得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.05:1~約2:1(アミンまたは酸:有機相)の容積比に従って、ステップ(b)で得られた有機相に添加される。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.1:1、約0.25:1、約0.5:1、約1:1、または約2:1(アミンまたは酸:有機相)の容積比に従って、ステップ(b)で得られた有機相に添加される。
【0174】
精製手順のステップ(c)は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の反応を促進するのに有効な任意の方法で実施され得る。例えば、精製手順のステップ(b)で得られた有機相へのアミンまたは酸の添加は、バッチ手順または連続手順として実行され得る。
【0175】
精製手順のステップ(c)では、アミンまたは酸をステップ(b)の有機相に添加すると、得られた混合物を、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応につながる任意の時間反応させ得る。例えば、精製手順のステップ(c)で得られた混合物を少なくとも約1分間反応させ得る。いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(c)で得られた混合物は、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約60分間、または少なくとも約2時間反応される。反応中、混合物は、一定の撹拌下に維持され得る。
【0176】
精製手順のステップ(c)におけるアミンまたは酸の添加は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応に役立つ任意の温度で実施され得る。例えば、精製手順のステップ(c)において、アミンまたは酸は、約10℃~約120℃の温度で添加され得る。 添加温度を高くすると(例えば、最大120℃)、より揮発性の不純物の分離が容易になり得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、ステップ(c)において約10℃~約50℃の温度で添加される。いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(c)におけるアミンまたは酸は、室温で添加される。得られた混合物は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応を助長する温度に保たれ得る。例えば、得られた混合物は、約10℃~約50℃の温度に保たれ得る。
【0177】
有利なことに、精製手順に使用されるアミンまたは酸は、ハロゲン化アルコキシエタンに対して不活性のままでありながら、不純物と特に効果的に反応し得る。
【0178】
例えば、医薬品グレードのメトキシフルランを得る精製手順において、本明細書に記載される種類のアミンは、メトキシフルランを保持しながら、低成分の不純物(例えば、ジクロロ酢酸メチル)と選択的に反応するのに特に効果的である。これは、99%を超える純度、例えば約99.9%の純度でメトキシフルランを精製するのに特に有利であることが判明した。
【0179】
メトキシフルランの特に有利な精製手順では、精製手順のステップ(a)は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に酸を添加することを含み、精製手順のステップ(c)は、アミンをステップ(b)で得られる有機相に添加することを含む。例えば、メトキシフルランの精製手順のステップ(a)は、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相にメタンスルホン酸を添加することを含み得、精製手順のステップ(c)は、ステップ(b)の精製手順で得られた有機相にエタノールアミンを添加することを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、メトキシフルランの製造のための方法であり、反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に酸(例えば、メタンスルホン酸)を添加すること、および得られた混合物にアミン(例えばエタノールアミン)を続いて添加することを含む、精製手順を含む。
【0180】
アミンおよび酸はハロゲン化アルコキシエタンに対して不活性なままであるため、精製手順は、関連する混合物中に存在する不純物の量に対して過剰のアミンおよび酸を使用して実行され得る。したがって、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するために使用される特定の合成手順に依存する不純物のレベルにおける任意の差異は有利に適応され得る。
【0181】
要するに、本発明の特定の実施形態による精製手順は、混合物中に存在する不純物の量に関係なく、ハロゲン化アルコキシエタンを含む混合物からの不純物の除去を容易にし得る。これは、ハロゲン化アルコキシエタンの合成が低い変換収率によって制限される場合に特に有利である。それらの場合、本発明の精製手順は、医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンを提供するのに大いに役立ち得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、精製手順は、精製手順のステップ(c)で得られた混合物に極性液体を添加するステップを含む。これによって、相分離が引き起こされ、極性相とハロゲン化アルコキシエタンとを含む別個の有機相の形成が引き起こされる。いくつかの実施形態では、当該有機相は、さらなる処理の前に極性相から分離され得る。分離は、意図された目的に適した当業者に知られている任意の手順に従って行われ得る。例えば、分離は、本明細書に記載される種類の手段によって達成され得る。このような場合、分離された極性相は廃棄される。分離された有機相は、さらに処理される前に乾燥を受け得る。例えば、分離された有機相は、乾燥剤を用いて乾燥され得る。これに関して適切な乾燥剤の例としては、硫酸マグネシウムなどの無機乾燥剤が挙げられる。
【0183】
したがって、精製手順のいくつかの実施形態では、ステップ(c)で得られた混合物に極性液体を添加した後、極性相から分離された有機相は、さらなる処理の前に乾燥剤で乾燥される。乾燥剤は硫酸マグネシウムであり得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、精製手順は、精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップ(d)をさらに含む。このステップは、本明細書に記載される種類の相分離手順に従って、ステップ(c)で得られた混合物から得られた乾燥有機相に対して実行され得る。
【0185】
精製手順のステップ(d)において、精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば約99.9%の純度を有するハロゲン化アルコキシエタンをもたらす、当業者に既知の任意の適切な手段によって単離され得る。
【0186】
例えば、精製手順のステップ(d)において、精製されたハロゲン化アルコキシエタンは蒸留によって単離され得る。当業者であれば、例えば特定のハロゲン化アルコキシエタンの物理的特性および残留不純物の性質および量に基づいて、ハロゲン化アルコキシエタンの単離を可能にする適切な蒸留条件を容易に特定可能であろう。
【0187】
いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(d)における精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離は、分別蒸留によって行われる。これらの実施形態は、ClC=CFを本明細書に記載の種類の塩基およびメタノールと反応させることによって得られる精製メトキシフルランの単離に特に有利である。
【0188】
当業者であれば、適切な蒸留条件を容易に特定可能であろう。例えば、精製手順のステップ(d)における分別蒸留は、ハロゲン化アルコキシエタンの沸点を超える温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、蒸留は100℃を超える温度で行われる。
【0189】
したがって、いくつかの実施形態では、精製手順は、
(i)アミンを反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)酸をステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
(iv)精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0190】
いくつかの代替実施形態では、精製手順は、
(i)酸を反応器流出物または反応器流出物から分離された有機相に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)アミンをステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
(iv)精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、精製手順は、本明細書に記載される種類の一連のステップを含む。したがって、いくつかの実施形態では、蒸留手順は、
(i)ハロゲン化アルコキシエタンを含む反応器流出物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた有機相を分離するステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られた有機相にアミンおよび酸のうちの1つを添加するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(v)ステップ(iv)で得られた有機相を分離するステップと、
(vi)ステップ(iii)で使用されなかったアミンおよび酸の他方を、ステップ(v)で得られた有機相に添加するステップと、
(vii)ステップ(vi)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離を誘導ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含む別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(viii)ステップ(vii)で得られた有機相を分離するステップと、
(ix)ステップ(viii)で得られた有機相を乾燥させるステップと、
(x)ステップ(ix)で得られた有機相を分別蒸留によって蒸留し、それによって精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0192】
前段落に列挙されたステップ(i)~(x)のすべての化合物および手順条件は、本明細書に記載される種類の化合物および手順条件であることが理解されるであろう。当該ステップ(i)~(x)の順序を有する精製手順の実施形態は、ClC=CFを本明細書に記載の種類の塩基およびメタノールと反応させることによって得られるメトキシフルランの精製に特に有利である。
【0193】
次に、本発明の特定の実施形態を、下記の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0194】
[実施例1]
メタノール(1000ml)中の水酸化カリウム(2.5%w/v)のバッチ溶液を調製し、氷中で冷却し、「材料1」として使用した。1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエチレン(DCDFE、200ml)を「材料2」として使用した。
【0195】
直列に接続された5つの流体モジュールを備えた市販のプレート反応器を使用し、総反応容積45mlを提供した。プレート反応器は、CorningのAFR反応器、またはChemtrixのガラスもしくはセラミック反応器など、市販されているもののいずれかから購入され得る。
【0196】
材料1を第1の流体モジュールの入口に10ml/minの流量で導入し、材料2を流体プレートの別の入口に2ml/minの流量で導入した。流体モジュールの温度を10℃に制御した。
【0197】
総量80mlのDCDFEを反応器に通過させ、反応混合物の滞留時間を3.75分とするために定常状態で操作した。流出物を留分に集め、分離後に乾燥後に生成物を無色透明の液体として得た。最終的に合算した容積=80ml(113.6g、モル収率=80%、純度97%)。
【0198】
以下のスキーム4は、メトキシフルランのさらなる反応による不純物の形成に関係する仮定されたメカニズムを示す。
【0199】
【化4】
【0200】
実施例1の手順によって得られた有機相からの不純物は、主にメトキシエテン(ME)不純物によって作製された。
【0201】
ガスクロマトグラフィー(図示せず)によって、メトキシフルランの形成が確認された。分離された生成物の後続の留分の組成を以下の表1に報告する。すべての留分には、96.9%を超えるメトキシフルラン(MEOF)が含まれており、微量のクロロホルム、オルトエステル(OE)、およびメトキシエテン(ME)不純物、ならびに未反応メタノールおよびDCDFEの留分が含まれていた。この純度のレベルは、通常約65%の純度の反応生成物を特徴とするバッチ反応条件下で得られる純度よりも優れていた。
【0202】
【表1】
【0203】
表に挙げた留分4についてもNMRを実行し、図5~7に示す結果を得た。図5Hトレースに関連し、図613Cトレースに関連し、図719Fトレースに関連する。
【0204】
[実施例2]
(精製プロセス)
(メトキシエテン(ME)およびオルトエステル(OE)プロセス不純物の除去)
実施例1からの粗反応生成物約77ml(110g)を、磁気撹拌装置および周囲温度(20℃で記録)の温度計を備えた3N 250ml RBFに移した。9.5mlのメタンスルホン酸を、撹拌しながら約1分間かけて混合物にゆっくりと加えた。得られた混合物を120分間撹拌し、この時点で、撹拌混合物に水15mlを加え、さらに60分間撹拌した。懸濁液を分液漏斗に移し、それによって有機層を水層から除去した。有機層を3N 250ml RBFに戻し、粗製物Bとラベルを付けた。
【0205】
(ジクロロ酢酸メチル(MDA)の除去)
7.7mlのエタノールアミンを周囲温度で撹拌しながら約1分間粗製物B混合物にゆっくりと加えた。得られた混合物を約30分間撹拌したままにした。この時点で水25mlを添加し、撹拌を停止して懸濁相を分離させた。この懸濁液を分液漏斗に移し、有機層を水層から除去した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、純度を調べるためにサンプリングした。得られた混合物(粗製物C)の最終容積は71mlであった(100.8g、モル収率=70%、純度>99%、最大99.9%)。
【0206】
本明細書で使用される場合、数値を指す場合の「約」という用語は、特定の数値から、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の、変動を包含し得る。
【0207】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の必要がない限り、「備える」という語、および「含む」および「備えている」などの変形は、記載された整数、ステップまたは整数の群を含むことを意味するものと理解されるであろう。ただし、他の整数、ステップ、または整数またはステップの群は除外されない。
【0208】
本明細書における以前の出版物(またはそこから派生した情報)、または既知の事項への言及は、その以前の出版物(またはそれに由来する情報)の承認または確認、あるいは何らかの形の示唆ではなく、また、そのように解釈されるべきではなく、または既知の事項は、本明細書が関連する分野における共通の一般知識の一部を形成する。
【0209】
本発明の範囲から逸脱することのない多くの修正は、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】