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特表2024-525188ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する抗体および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240703BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240703BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P9/00
A61P25/28
A61P1/00
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577995
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022034189
(87)【国際公開番号】W WO2022266540
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/212,414
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】523472995
【氏名又は名称】セリーニ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】スタベンハーゲン ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ガシオロウスカ オルガ
(72)【発明者】
【氏名】リッカート マサイアス
(72)【発明者】
【氏名】ウィドブーム ポール フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】ウォーフィールド ジョセフ ロバート
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB42
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する新規かつ改善された抗体、およびその使用方法を、本明細書に記載する。特定の局面において、ミクログリア活性化を阻害する方法を本明細書に記載する。特定の局面において、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する抗体を含む薬学的組成物を、本明細書に記載する。特定の局面において、本明細書に記載する抗体および方法は、炎症性脱髄を伴う変性神経障害の処置のために用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの重鎖CDR配列CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む可変重(VH)鎖配列を含む重鎖、ならびに
3つの軽鎖CDR配列CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む可変軽(VL)鎖配列を含む軽鎖
を含む、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体であって、
a. CDR-H1がSEQ ID NO: 1、13、25、37、49、61、73、85、97、109、121、133、145、157、169、181、193、205、217、または229に記載の配列を含み、
b. CDR-H2がSEQ ID NO: 2、14、26、38、50、62、74、86、98、110、122、134、146、158、170、182、194、206、218、または230に記載の配列を含み、
c. CDR-H3がSEQ ID NO: 3、15、27、39、51、63、75、87、99、111、123、135、147、159、171、183、195、207、219、または231に記載の配列を含み、
d. CDR-L1がSEQ ID NO: 4、16、28、40、52、64、76、88、100、112、124、136、148、160、172、184、196、208、220、または232に記載の配列を含み
e. CDR-L2がSEQ ID NO: 5、17、29、41、53、65、77、89、101、113、125、137、149、161、173、185、197、209、221、または233に記載の配列を含み、かつ
f. CDR-L3がSEQ ID NO: 6、18、30、42、54、66、78、90、102、114、126、138、150、162、174、186、198、210、222、または234に記載の配列を含む、
単離された抗体。
【請求項2】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7、19、31、43、55、67、79、91、103、115、127、139、151、163、175、187、199、211、223、または235の1つに記載の配列から選択されるVH配列を含む、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項3】
前記抗体が、SEQ ID NO: 10、22、34、46、58、70、82、94、106、118、130、142、154、166、178、190、202、214、226、または238に記載の配列から選択されるVL配列を含む、請求項1または2記載の単離された抗体。
【請求項4】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7の1つに記載の配列から選択されるVH配列、およびSEQ ID NO: 10に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項5】
前記抗体が、SEQ ID NO: 19に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 22に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項6】
前記抗体が、SEQ ID NO: 31に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 34に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項7】
前記抗体が、SEQ ID NO: 43に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 46に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項8】
前記抗体が、SEQ ID NO: 55に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 58に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項9】
前記抗体が、SEQ ID NO: 67に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 70に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項10】
前記抗体が、SEQ ID NO: 79に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 82に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項11】
前記抗体が、SEQ ID NO: 91に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 94に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項12】
前記抗体が、SEQ ID NO: 103に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 106に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項13】
前記抗体が、SEQ ID NO: 115に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 118に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項14】
前記抗体が、SEQ ID NO: 127に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 130に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項15】
前記抗体が、SEQ ID NO: 139に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 142に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項16】
前記抗体が、SEQ ID NO: 151に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 154に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項17】
前記抗体が、SEQ ID NO: 163に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 166に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項18】
前記抗体が、SEQ ID NO: 175に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 178に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項19】
前記抗体が、SEQ ID NO: 187に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 190に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項20】
前記抗体が、SEQ ID NO: 199に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 202に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項21】
前記抗体が、SEQ ID NO: 211に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 214に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項22】
前記抗体が、SEQ ID NO: 223に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 226に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項23】
前記抗体が、SEQ ID NO: 235に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 238に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項24】
前記抗体が、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項25】
前記抗体がヒト化抗体を含む、請求項24記載の単離された抗体。
【請求項26】
前記抗体が、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMから選択されるクラスの重鎖ヒト定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項27】
ヒトFc領域が、クラスIgGならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択されるサブクラスのヒト重鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項28】
ヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、請求項27記載の単離された抗体。
【請求項29】
ヒトFcドメインが、SEQ ID NO: 8、20、32、44、56、68、80、92、104、116、128、140、152、164、176、188、200、212、224、または236に記載の配列を含む、請求項28記載の単離された抗体。
【請求項30】
重鎖が、SEQ ID NO: 8、20、32、44、56、68、80、92、104、116、128、140、152、164、176、188、200、212、224、または236によって記載される定常重鎖配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項31】
軽鎖が、SEQ ID NO: 9、21、33、45、57、69、81、93、105、117、129、141、153、165、177、189、201、213、225、または237によって記載される定常軽鎖配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項32】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 10に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項33】
前記抗体が、SEQ ID NO: 19に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 22に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項34】
前記抗体が、SEQ ID NO: 31に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 34に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項35】
前記抗体が、SEQ ID NO: 43に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 46に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項36】
前記抗体が、SEQ ID NO: 55に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 58に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項37】
前記抗体が、SEQ ID NO: 67に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 70に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項38】
前記抗体が、SEQ ID NO: 79に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 82に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項39】
前記抗体が、SEQ ID NO: 91に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 94に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項40】
前記抗体が、SEQ ID NO: 103に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 106に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項41】
前記抗体が、SEQ ID NO: 115に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 118に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項42】
前記抗体が、SEQ ID NO: 127に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 130に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項43】
前記抗体が、SEQ ID NO: 139に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 142に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項44】
前記抗体が、SEQ ID NO: 151に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 154に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項45】
前記抗体が、SEQ ID NO: 163に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 166に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項46】
前記抗体が、SEQ ID NO: 175に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 178に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項47】
前記抗体が、SEQ ID NO: 187に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 190に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項48】
前記抗体が、SEQ ID NO: 199に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 202に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項49】
前記抗体が、SEQ ID NO: 211に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 214に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項50】
前記抗体が、SEQ ID NO: 223に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 226に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項51】
前記抗体が、SEQ ID NO: 235に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 238に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項52】
Fc領域が1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、ここで1つまたは複数の置換が、1つまたは複数の置換を有しないFcと比較して、抗体半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす、請求項27~51のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項53】
Fc領域が、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbからなる群より選択されるFcγ受容体に結合する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項54】
前記抗体が、モノクローナル抗体を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項55】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープに結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項56】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約1、2、3、4、5、6、7、または8×10-5 M以下のKDで、SEQ ID NO: 241および249~253の少なくとも1つに記載のアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項57】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約8×10-5 M以下のKDでヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープの配列を含むペプチドに結合する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項58】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのMac-1結合を阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項59】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害を示す、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項60】
神経系の変性障害の処置において用いるための、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項61】
前記請求項のいずれか一項記載の抗体、そのVH、そのVL、その軽鎖、その重鎖、またはその抗原結合部分をコードする、単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット; 任意でcDNA。
【請求項62】
請求項61記載のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項63】
請求項61記載のポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセットまたは請求項62記載のベクターもしくはベクターのセットを含む、宿主細胞。
【請求項64】
請求項63記載の宿主細胞で抗体を発現させる段階、および
発現された抗体を単離する段階
を含む、抗体を産生する方法。
【請求項65】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項66】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物と、使用説明書とを含む、キット。
【請求項67】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、神経系の変性障害を処置するための方法。
【請求項68】
神経系の変性障害が、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法。
【請求項70】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、ミクログリア活性化を阻害する方法。
【請求項71】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、神経系の変性障害を予防する方法。
【請求項72】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、その必要がある対象において大腸炎を処置する方法。
【請求項73】
請求項1~60のいずれか一項記載の抗体または請求項65記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、その必要がある対象において大腸炎を予防する方法。
【請求項74】
アミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421のいずれか1つの位置でヒトフィブリンに結合する、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体。
【請求項75】
前記抗体が、アミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または全10個の位置でヒトフィブリンに結合する、請求項74記載の単離された抗体。
【請求項76】
前記抗体が、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Leu 50、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Ser 95、Lys 96またはAsp 96、Pro 97またはAla 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103のいずれか1つを含むパラトープを含むVH領域を含む、請求項74または75記載の単離された抗体。
【請求項77】
前記抗体が、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Leu 50、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Ser 95、Lys 96またはAsp 96、Pro 97またはAla 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、または全17個を含むパラトープを含むVH領域を含む、請求項76記載の単離された抗体。
【請求項78】
前記抗体が、アミノ酸残基Ser 31、Trp 33、His 35、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ser 94、Gly 101、Gly 102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む、請求項77記載の単離された抗体。
【請求項79】
前記抗体が、アミノ酸残基Ser 31、Trp 33、His 35、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Lys 96、Pro 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む、請求項78記載の単離された抗体。
【請求項80】
前記抗体が、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ser 94、Ser 95、Asp 96、Ala 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む、請求項78記載の単離された抗体。
【請求項81】
前記抗体が、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91 or Asn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96のいずれか1つを含むパラトープを含むVL領域を含む、請求項74~80のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項82】
前記抗体が、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91 or Asn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または全10個を含むパラトープを含むVL領域を含む、請求項81記載の単離された抗体。
【請求項83】
前記抗体が、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Gln 50、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む、請求項82記載の単離された抗体。
【請求項84】
前記抗体が、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Gln 50、Asn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む、請求項83記載の単離された抗体。
【請求項85】
前記抗体が、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む、請求項83記載の単離された抗体。
【請求項86】
前記抗体が、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体を含む、請求項74~85のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項87】
前記抗体がヒト化抗体を含む、請求項86記載の単離された抗体。
【請求項88】
前記抗体が、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMから選択されるクラスの重鎖ヒト定常領域を含む、請求項74~87のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項89】
ヒトFc領域が、クラスIgGならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択されるサブクラスのヒト重鎖定常領域を含む、請求項74~88のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項90】
ヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、請求項89記載の単離された抗体。
【請求項91】
ヒトFcドメインが、SEQ ID NO: 8、20、32、44、56、68、80、92、104、116、128、140、152、164、176、188、200、212、224、または236に記載の配列を含む、請求項88記載の単離された抗体。
【請求項92】
Fc領域が1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、ここで1つまたは複数の置換が、1つまたは複数の置換を有しないFcと比較して、抗体半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす、請求項74~91のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項93】
Fc領域が、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbからなる群より選択されるFcγ受容体に結合する、請求項74~92のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項94】
前記抗体が、モノクローナル抗体を含む、請求項74~93のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項95】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約1、2、3、4、5、6、7、または8×10-5 M以下のKDで、SEQ ID NO: 241、および249~253の少なくとも1つに記載のアミノ酸配列を含むペプチドに結合する、請求項74~94のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項96】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約8×10-5 M以下のKDでヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープの配列を含むペプチドに結合する、請求項74~95のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項97】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのMac-1結合を阻害する、請求項74~96のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項98】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害を示す、請求項74~97のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項99】
神経系の変性障害の処置において用いるための、請求項74~98のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項100】
眼の炎症に関連する状態の処置において用いるための、請求項74~98のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項101】
前記状態がブドウ膜炎である、請求項100記載の単離された抗体。
【請求項102】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体、そのVH、そのVL、その軽鎖、その重鎖、またはその抗原結合部分をコードする、単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット; 任意でcDNA。
【請求項103】
請求項102記載のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項104】
請求項61記載のポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセットまたは請求項103記載のベクターもしくはベクターのセットを含む、宿主細胞。
【請求項105】
請求項104記載の宿主細胞で抗体を発現させる段階、および
発現された抗体を単離する段階
を含む、抗体を産生する方法。
【請求項106】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項107】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物と、使用説明書とを含む、キット。
【請求項108】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、神経系の変性障害を処置するための方法。
【請求項109】
神経系の変性障害が、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される、請求項108記載の方法。
【請求項110】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法。
【請求項111】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、ミクログリア活性化を阻害する方法。
【請求項112】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、神経系の変性障害を予防する方法。
【請求項113】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、その必要がある対象において大腸炎を処置する方法。
【請求項114】
請求項74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項106記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む、その必要がある対象において大腸炎を予防する方法。
【請求項115】
その必要がある対象において眼の炎症状態を処置する方法であって、請求項1~60もしくは74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項65もしくは106記載の薬学的組成物を、該対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項116】
その必要がある対象において眼の炎症状態を予防する方法であって、請求項1~60もしくは74~101のいずれか一項記載の抗体または請求項65もしくは106記載の薬学的組成物を、該対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項117】
眼の炎症状態がブドウ膜炎を含む、請求項115または請求項116記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月18日付で出願された米国仮特許出願第63/212,414号の恩典を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
該当なし。
【背景技術】
【0003】
背景
多発性硬化症(MS)などの変性神経障害は、炎症性脱髄および自己免疫応答を伴うことがある。ミクログリア、特に血管周囲ミクログリアは、中枢神経系(CNS)自己免疫疾患における炎症性脱髄の維持だけでなく、発症にも必要であると考えられている。ミクログリアの活性化はサイトカインおよび一酸化窒素の放出を介して、ニューロンとオリゴデンドロサイトの両方の死に寄与する。MSでは、炎症過程はミエリン鞘の破壊と関連しており、麻痺および視力喪失などの永続的な機能障害につながりうる軸索損傷を伴うこともある。常在性ミクログリアは、ミエリンを貪食し、炎症促進性サイトカインを分泌するその能力を介して、脱髄に関与している。
【0004】
MS病変では、ミクログリアの血管周囲の活性化が血液脳関門(BBB)破壊領域と共局在しており、インビボ画像研究では、BBB破壊がミクログリアの即時的かつ局所的な活性化を引き起こすことが示されている。MSにおけるBBB破壊と関連する最も初期の事象の1つは、神経系における血液タンパク質フィブリノゲンの漏出であり、これにより血管周囲にフィブリンが沈着する。フィブリノゲンは健常なCNSには存在せず、BBB破壊後にのみ脳内に漏出するため、環境の「危険」シグナルとして機能する。フィブリノゲンがフィブリンに変換されると、CD11b/CD18インテグリン受容体(Mac-1、aMfl 2、補体受容体3ともいわれる)がフィブリンに結合し、ミクログリアの活性化を誘導して炎症性脱髄を引き起こす。CD11bは、炎症性脱髄中のミエリンの貪食を調節する受容体のアルファ鎖である。可溶性フィブリノゲンではなく、固定化フィブリノゲンおよび不溶性フィブリンがMac-1の生理学的な、高親和性リガンドとして同定されている。
【0005】
フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープは、フィブリンのCDIIbへの結合エピトープである。フィブリンγ377~395ペプチドは、フィブリンのMac-1への結合を遮断することにより、ミクログリア活性化の阻害剤として機能する。フィブリンは血小板インテグリンαIIbβ3受容体に異なるエピトープを介して結合することにより血液凝固を媒介するので、フィブリンへのCD11b結合エピトープを遮断する治療剤(抗体を含む)は、血液凝固におけるその有益な効果に影響を与えることなく、神経系におけるフィブリンの損傷効果を低減することができる。それゆえ、血液凝固における有益な効果に影響を与えることなく、フィブリン誘発性ミクログリア活性化を阻害する安全で効果的な抗体が、炎症性脱髄を伴う変性神経障害の治療用物質として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
特定の局面において、本明細書に記載するのは、3つの重鎖CDR配列CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む可変重(VH)鎖配列を含む重鎖、ならびに3つの軽鎖CDR配列CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む可変軽(VL)鎖配列を含む軽鎖を含む、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体であり、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1、13、25、37、49、61、73、85、97、109、121、133、145、157、169、181、193、205、217、または229に記載の配列を含み; CDR-H2は、SEQ ID NO: 2、14、26、38、50、62、74、86、98、110、122、134、146、158、170、182、194、206、218、または230に記載の配列を含み; CDR-H3は、SEQ ID NO: 3、15、27、39、51、63、75、87、99、111、123、135、147、159、171、183、195、207、219、または231に記載の配列を含み; CDR-L1は、SEQ ID NO: 4、16、28、40、52、64、76、88、100、112、124、136、148、160、172、184、196、208、220、または232に記載の配列を含み; CDR-L2は、SEQ ID NO: 5、17、29、41、53、65、77、89、101、113、125、137、149、161、173、185、197、209、221、または233に記載の配列を含み; かつCDR-L3は、SEQ ID NO: 6、18、30、42、54、66、78、90、102、114、126、138、150、162、174、186、198、210、222、または234に記載の配列を含む。
【0007】
特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 7、19、31、43、55、67、79、91、103、115、127、139、151、163、175、187、199、211、223、または235の1つに記載の配列から選択されるVH配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 10、22、34、46、58、70、82、94、106、118、130、142、154、166、178、190、202、214、226、または238に記載の配列から選択されるVL配列を含む。
【0008】
特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 7の1つに記載の配列から選択されるVH配列、およびSEQ ID NO: 10に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 19に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 22に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 31に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 34に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 43に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 46に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 55に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 58に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 67に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 70に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 79に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 82に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 91に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 94に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 103に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 106に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 115に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 118に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 127に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 130に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 139に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 142に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 151に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 154に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 163に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 166に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 175に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 178に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 187に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 190に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 199に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 202に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 211に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 214に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 223に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 226に記載のVL配列を含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO: 235に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 238に記載のVL配列を含む。
【0009】
特定の態様において、抗体はヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体を含む。特定の態様において、抗体はヒト化抗体を含む。特定の態様において、抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMから選択されるクラスの重鎖ヒト定常領域を含む。特定の態様において、ヒトFc領域は、クラスIgGならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるサブクラスのヒト重鎖定常領域を含む。特定の態様において、ヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、ヒトFcドメインは、SEQ ID NO: 8、20、32、44、56、68、80、92、104、116、128、140、152、164、176、188、200、212、224、または236に記載の配列を含む。
【0010】
特定の態様において、重鎖は、SEQ ID NO: 8、20、32、44、56、68、80、92、104、116、128、140、152、164、176、188、200、212、224、または236によって記載される定常重鎖配列を含む。特定の態様において、軽鎖は、SEQ ID NO: 9、21、33、45、57、69、81、93、105、117、129、141、153、165、177、189、201、213、225、または237によって記載される定常軽鎖配列を含む。
【0011】
特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 7に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 10に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 19に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 22に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 31に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 34に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 43に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 46に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 55に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 58に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 67に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 70に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 79に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 82に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 91に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 94に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 103に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 106に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 115に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 118に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 127に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 130に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 139に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 142に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 151に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 154に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 163に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 166に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 175に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 178に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 187に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 190に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 199に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 202に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 211に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 214に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 223に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 226に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。特定の態様において、抗体はSEQ ID NO: 235に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 238に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。
【0012】
特定の態様において、Fc領域は1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、ここで1つまたは複数の置換は、1つまたは複数の置換を有しないFcと比較して、抗体半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす。特定の態様において、Fc領域は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbからなる群より選択されるFcγ受容体に結合する。
【0013】
特定の態様において、抗体はモノクローナル抗体である。特定の態様において、抗体はフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープに結合する。特定の態様において、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約1、2、3、4、5、6、7、または8×10-5 M以下のKDでSEQ ID NO: 241、および249~253の少なくとも1つに記載のアミノ酸配列を含むペプチドに結合する。特定の態様において、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約8×10-5 M以下のKDでヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープの配列を含むペプチドに結合する。特定の態様において、抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのMac-1結合を阻害する。特定の態様において、抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害を示す。
【0014】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害の処置において用いるための前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体である。
【0015】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、前記請求項のいずれか記載の抗体、そのVH、そのVL、その軽鎖、その重鎖、またはその抗原結合部分をコードする単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットであり、任意でcDNAである。
【0016】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含むベクターまたはベクターのセットである。
【0017】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載するポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセットまたはベクターもしくはベクターのセットを含む宿主細胞である。
【0018】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、抗体を産生する方法であり、該方法は、本明細書に記載する宿主細胞で抗体を発現させる段階、および発現された抗体を単離する段階を含む。
【0019】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載する抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物である。
【0020】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載するものまたは本明細書に記載する薬学的組成物と、使用説明書とを含むキットである。
【0021】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または本明細書に記載する薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、神経系の変性障害は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される。
【0022】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0023】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、ミクログリア活性化を阻害する方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0024】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0025】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、その必要がある対象において大腸炎を処置する方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の局面において、本明細書に記載するのは、その必要がある対象において大腸炎を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の局面において、本明細書に記載するのは、その必要がある対象において眼の炎症状態を処置する方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の局面において、本明細書に記載するのは、その必要がある対象において眼の炎症状態を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗体または薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、眼の炎症状態はブドウ膜炎である。
【0026】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体であり、ここで該抗体はアミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421のいずれか1つの位置でヒトフィブリンに結合する。特定の態様において、ここで該抗体はアミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または全10個の位置でヒトフィブリンに結合する。
【0027】
特定の態様において、本明細書に記載するのは、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、Trp 33、His 35、Trp 47、Leu 50、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Ser 95、Lys 96またはAsp 96、Pro 97またはAla 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103のいずれか1つを含むパラトープを含むVH領域を含む抗体である。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Leu 50、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Ser 95、Lys 96またはAsp 96、Pro 97またはAla 97、Gly 101、Gly 102、およびTrp 103の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、または全17個を含むパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Trp 33、His 35、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ser 94、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Trp 33、His 35、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Lys 96、Pro 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、Trp 33、His 35、Trp 47、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ser 94、Ser 95、Asp 96、Ala 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む。
【0028】
特定の態様において、本明細書に記載するのは、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91またはAsn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96のいずれか1つを含むパラトープを含むVL領域を含む、単離された抗体である。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91またはAsn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または全10個を含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Gln 50、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Gln 50、Asn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む。
【0029】
本発明のこれらのおよびその他の特徴、局面、および利点は、以下の説明、および添付の図面に関してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】3つの親ヒト化抗体の1つ(クローン56657)から作り出された1つのライブラリでの3ラウンドの抗体親和性成熟の結果を示す、N末端ビオチン化フィブリンP2ガンマペプチドに結合する抗体ライブラリのFACS分析からのプロットである。
図2A】示されたヒト化抗体変種およびP2ペプチドで実施した酵素結合免疫測定法(ELISA)の結果を示すグラフである。A = クローン60143; B = クローン61278; C = クローン61278 (二つ組); D = 親抗体。
図2B】示されたヒト化抗体変種およびFGG (フィブリノゲン)で実施した酵素結合免疫測定法(ELISA)の結果を示すグラフである。A = クローン60143; B = クローン61278; C = クローン61278 (二つ組); D = 親抗体。
図2C】示されたヒト化抗体変種およびフィブリンで実施した酵素結合免疫測定法(ELISA)の結果を示すグラフである。A = クローン60143; B = クローン61278; C = クローン61278 (二つ組); D = 親抗体。
図3A図3Aおよび3Bは、変種ヒト化抗体の存在下でのサンプルの血餅溶解時間を実証するアッセイの結果を示すグラフである。A = クローン56666; B = クローン56657; C = クローン60143; D = クローン60181; E = クローン60175; F = クローン60163; G = クローン60173; H = クローン60184; I = クローン60141; J = クローン60179; K = クローン60140; L = クローン60183。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図4A-1】IgGにコンジュゲートされたN末端ビオチン化フィブリンP2ガンマペプチド溶液(100 nM)またはFAB (一価)にコンジュゲートされたN末端ビオチン化フィブリンP2ガンマペプチド溶液(100 nM)での本明細書に記載するForteBio KD測定の結果を示すグラフである。試験した抗体クローンを示す。
図4A-2】図4A-1の説明を参照のこと。
図4B-1】図4A-1の説明を参照のこと。
図4B-2】図4A-1の説明を参照のこと。
図4C図4A-1の説明を参照のこと。
図4D-1】図4A-1の説明を参照のこと。
図4D-2】図4A-1の説明を参照のこと。
図5】100 mM Fab溶液を用いたSAセンサ上でのN末端ビオチン化フィブリンP2ガンマペプチドに結合するoctet Fabの結果を示すグラフである。試験した抗体クローンを示す。
図6】人工脳脊髄液(acsf)、フィブリノゲンのみ、またはフィブリノゲンおよび示した抗体クローンを10 mg/Kg (「10」)または30 mg/Kg (「30」)のいずれかでI.V注入したフィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)マウスモデルからの脳組織切片の染色を示すグラフである。切片をIba-1 (左) (1:750希釈のミクログリアマーカー)またはMac-2 (右) (1:750希釈のマクロファージ浸潤マーカー)のいずれかで染色した。
図7】PBSのみ、IgG1のみ、抗体クローン60143、抗体クローン61278、またはデキサメタゾンの予防的注入に供した実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルのマウスの臨床スコアを示すグラフである。抗体を3日ごとに5 mg/kgで腹腔内注入により注入した。
図8】PBSのみ、IgG1のみ、抗体クローン60143、抗体クローン61278、またはデキサメタゾンの予防的注入に供した実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルのマウスの疾患発症(左)および麻痺率(右)のグラフを示す。抗体を3日ごとに5 mg/kgで腹腔内注入により注入した。
図9】PBSのみ、デキサメタゾン、抗体クローン60143 (左)または対照抗体ヒトIgG1 (右)の予防的注入に供した実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルのマウスの臨床スコアを示すグラフである。
図10】PBSのみ、デキサメタゾン(dexa)、抗体クローン6043 (表示濃度; 5= 5 mg/kg、1= 1 mg/kgおよび0.2=0.2 mg/kg)または対照抗体ヒトIgG1 (5 mg/kg)の予防的注入に供した実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルの麻痺マウス(完全麻痺- 左)または麻痺マウス(後肢部分麻痺- 右)の割合を示すグラフである。
図11】BMDM細胞株の遺伝子発現アッセイのワークフローを示す略図である。
図12】フィブリノゲンおよびフィブリン、IgG1、抗体クローン60143および抗体クローン61278とともに50 ug/mL (左)または10 ug/ml (右) 抗体のいずれかでのインキュベーション後のBMDM細胞におけるインターロイキン(IL)-12b発現を示すグラフである。
図13】表示濃度のフィブリノゲンおよび抗体クローン61278 (左)または抗体クローン60143 (右)とのインキュベーション後のBMDM細胞におけるインターロイキン(IL)-12b発現を示すグラフである。
図14】デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎マウスモデルにおいて、5 mg/kgまたは30 mg/kgの抗体クローン60143またはアイソタイプ対照抗体ヒトIgG1を静脈内注入した動物における大腸炎の生理学的症状の軽減を示すグラフである。
図15図15Aおよび15Bは、理論上の血液量および血漿量で補正した、マウスの血液(A)および血漿(B)中の10 mg/kgおよび30 mg/kgで注入した[125I]SIB-60143および[125I]SIB-61278の取り込み(%ID)を示す。
図16A図16A図16B図16C、および図16Dは、マウスにおける10 mg/kg (AおよびC)ならびに30 mg/kg (BおよびD)で注入した[125I]SIB-60143 (AおよびB)ならびに[125I]SIB-61278 (CおよびD)のエクスビボ生体内分布を経時的に示す。
図16B図16Aの説明を参照のこと。
図16C図16Aの説明を参照のこと。
図16D図16Aの説明を参照のこと。
図17】P2ペプチドと複合体を形成した抗体クローン60143 (ADI60143)および抗体クローン61278 (ADI61278)のFabの結晶構造を描く略図である(共結晶- 右)。フィブリノゲン(FGG)の構造およびP2ペプチドの位置も示されている(左下)。
図18】P2ペプチドと複合体を形成した抗体クローン60143 (ADI60143)および抗体クローン61278 (ADI61278)のFabの重ね合わせ構造を描く略図である。
図19】抗体クローン60143 (ADI60143)および抗体クローン61278 (ADI61278)の結合親和性を描くグラフである。Octet RED384を用いてP2ペプチドへのADI-60143およびADI-61278 Fabの結合を決定し(図21および22)、かつ異なる種からの3つのP2ペプチドについて同様の結合プロファイルが観察された。しかしながら、3種の拡張P2ペプチドはADI-60143 Fabに十分に結合しなかった(図22)。
図20図20Aは、ELISAによって決定されたラット、マウスまたはヒトP2ペプチドへのADI-60143 Fabの結合を描くグラフである。図20Bは、ELISAによって決定されたラット、マウスまたはヒトP2ペプチドへのADI-60143 IgGの結合を描くグラフである。
図21】ELISAによって決定されたラット、マウスまたはヒト拡張P2ペプチドへのADI-60143 IgGの結合を描くグラフである。
図22図22Aは、フィブリン誘発脳炎(FIE)マウスモデルにおけるミクログリア活性化およびマクロファージ動員を決定するために実施された実験プロトコルを描く略図である。図22Bは、acsf(人工脳脊髄液)、フィブリノゲン、IgGアイソタイプ対照(30 mg/Kg)、親ヒト化抗体クローンTHN227 (親和性成熟していない) (10または30 mg/Kg)、および親和性成熟した抗体クローンADI-60143 (10または30 mg/Kg)を投与したFIEマウスからの脳組織切片におけるミクログリア活性化を決定するためのIba-1陽性染色の面積パーセントを描くグラフである。図22Cは、acsf(人工脳脊髄液)、フィブリノゲン、IgGアイソタイプ対照(30 mg/Kg)、親ヒト化抗体クローンTHN227 (親和性成熟していない) (10または30 mg/Kg)、および親和性成熟した抗体クローンADI-60143 (10または30 mg/Kg)を投与したFIEマウスからの脳組織切片におけるマクロファージ浸潤を決定するためのMac-2陽性染色の面積パーセントを描くグラフである。
図23】ADI-60143について染色された健常マウスおよびEAEマウスの脊髄からの組織切片を示す画像である。
図24図24Aは、PBS、デキサメタゾン(DEXA)、および0.2、1または5 mg/Kgの抗体クローンADI-60143を投与したEAEマウスの脊髄からの組織切片のMBP染色によって決定された脱ミエリン化(demylination)を描くグラフである。図24Bは、PBS、デキサメタゾン(DEXA)、および0.2、1または5 mg/Kgの抗体クローンADI-60143を投与した完全な後肢麻痺を示すEAEマウスのパーセントを描くグラフである。
図25】アイソタイプ対照、抗体クローンADI-60143 IgG、およびFc安定化LALA変異を有する抗体クローンADI-60143を投与されたEAEマウス、ならびにEAE誘導のないナイーブマウスの臨床スコアを描くグラフである。
図26図26Aは、アイソタイプ対照、抗体クローンADI-60143 IgG、およびFc安定化LALA変異を有する抗体クローンADI-60143を投与されたEAEマウス、ならびにEAE誘導のないナイーブマウスの総炎症病巣/脊髄組織切片の平均数を描くグラフである。図26Bは、アイソタイプ対照、抗体クローンADI-60143 IgG、およびFc安定化LALA変異を有する抗体クローンADI-60143を投与されたEAEマウス、ならびにEAE誘導のないナイーブマウスの組織切片あたりのCD11b+ 面積パーセントを描くグラフである。
図27】アイソタイプ対照、Fc安定化LALA変異を有するマウス化抗体クローンADI-60143 (低用量 = 10 ug/眼; 高用量 = 50 ug/眼)、陽性対照FTY-720 (0.3 mg/kgの用量で強制経口投与)を硝子体内に投与したラットおよびEAE誘導のないナイーブマウスのブドウ膜炎臨床スコアを描くグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
定義
他に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語、表記法および他の科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語は、明確化のため、および/またはすぐに参照できるように本明細書において定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当技術分野において一般に理解されているものとの差異を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される技法および手順は、一般的によく理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed. (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載された広く利用されている分子クローニング方法論などの、従来の方法論を用いて当業者により一般的に採用される。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を伴う手順は、特に断りのない限り、一般に製造業者が定義したプロトコルおよび条件にしたがって実行される。
【0032】
本明細書において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別段の指示がない限り、複数の参照を含む。
【0033】
本明細書に記載する本発明の局面および態様は、局面および態様「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むことが理解される。
【0034】
本明細書に記載する全ての組成物、および本明細書に記載する組成物を用いる全ての方法について、組成物は、列挙された構成要素もしくは段階を含むことができ、または列挙された構成要素もしくは段階「から本質的になる」ことができる。組成物が列挙された構成要素「から本質的になる」と記載される場合、組成物は列挙された構成要素を含み、明示的に列挙される構成要素以外の、処置される状態に実質的に影響を及ぼさないが、処置される状態に実質的に影響を及ぼす任意の他の構成要素を含まない他の構成要素を含みうるか、または組成物が処置される状態に実質的に影響を及ぼす列挙された構成要素以外の追加の構成要素を含む場合、組成物は処置される状態に実質的に影響を及ぼすのに十分な濃度または量の追加の構成要素を含まない。方法が列挙される段階「から本質的になる」と記載されている場合、その方法は、列挙される段階を含み、処置される状態に実質的に影響を及ぼさない他の段階を含んでもよいが、その方法は、明示的に列挙される段階以外の処置される状態に実質的に影響を及ぼす任意の他の段階を含まない。非限定的な具体例として、組成物が構成要素「から本質的になる」と記載されている場合、組成物は、任意の量の薬学的に許容される担体、ビヒクルまたは希釈剤、および処置される状態に実質的に影響を及ぼさない、そのような他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0035】
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子をいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターと、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターとを含む。ある種のベクターは、それが機能的に連結されている核酸の発現を指令することができる。そのようなベクターは本明細書において「発現ベクター」といわれる。
【0036】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に用いられ、外因性核酸が導入された細胞、およびそのような細胞の後代をいう。宿主細胞は「形質転換体」(または「形質転換細胞」)および「トランスフェクタント」(または「トランスフェクト細胞」)を含み、これらはそれぞれ、初代の形質転換細胞またはトランスフェクト細胞およびそれらに由来する後代を含む。そのような抗体は、親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。「組み換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入のために用いられる方法、例えば、直接取り込み、形質導入、f-交配、または組み換え宿主細胞を作り出すための当技術分野において公知の他の方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞をいう。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「真核生物」という用語は、動物(哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥類などを含むが、これらに限定されない)、繊毛虫、植物(単子葉植物、双子葉植物、藻類などを含むが、これらに限定されない)、真菌、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物などのような系統発生ドメイン真核生物(Eucarya)に属する生物をいう。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「原核生物(prokaryote)」という用語は原核生物(prokaryotic organisms)をいう。例えば、非真核生物は、真正細菌(Eubacteria) (大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などを含むが、これらに限定されない)系統発生ドメイン、または古細菌(Archaea) (メタノコッカス・ジャナスキー(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロバクテリウム(Halobacterium)、例えばハロフェラックス・ボルカニー(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム種NRC-1、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、アエロパイラム・ペルニクス(Aeuropyrum pernix)などを含むが、これらに限定されない)系統発生ドメインに属しうる。
【0039】
本明細書において用いられる「有効量」または「治療的有効量」は、単回用量または一連の用量の一部のいずれかとして、個体に投与される、抗フィブリン(FIBRIN)抗体などの、治療用化合物の量をいい、これは単独でまたは別の治療法との組み合わせで、所望の治療効果を生ずるか、または所望の治療効果に寄与するのに有効である。所望の治療効果の例は、免疫応答の増強、腫瘍発生の緩徐化または遅延; 疾患の安定; 1つまたは複数の症状の改善である。有効量は、1回または複数回の投与量で与えられうる。
【0040】
用語「処置する」(および「治療する」または「処置」などのその変形)は、それを必要とする対象における疾患または状態の自然経過を変化させようとする臨床的介入をいう。処置は臨床病理の経過中に実施することができる。処置の望ましい効果は、疾患の再発の抑止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の軽減、転移の抑止、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善を含む。
【0041】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生ずるのに十分な量、例えば、対象における免疫応答を調節するのに十分な量を意味する。
【0042】
本明細書において用いられる場合、「対象」または「個体」という用語は、哺乳動物対象を意味する。例示的な対象としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、ウサギ、およびヒツジが挙げられる。特定の態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、本明細書において提供される抗体で処置できる疾患または状態を有している。いくつかの局面において、疾患または状態はがんである。いくつかの局面において、疾患または状態はウイルス感染症である。
【0043】
「インビトロ」という用語は、生物とは別に増殖している、例えば、組織培養において増殖している生細胞内で行われるプロセスをいう。
【0044】
「インビボ」という用語は、生物内で行われるプロセスをいう。
【0045】
「添付文書」という用語は、治療薬または診断薬の市販パッケージ(例えば、キット)に慣例的に含まれている説明書で、そのような治療薬または診断薬の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌および/または警告に関する情報を含むものをいうように用いられる。
【0046】
「薬学的組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が対象の処置において有効であるようにさせるような形態であり、薬学的組成物において提供される量では対象に許容できないほど有毒な追加成分を含まない調製物をいう。
【0047】
「同時投与」、「同時投与する」および「と組み合わせて」という用語は、特定の時間制限がないなかで同時に、併行してまたは連続的に2つまたはそれ以上の治療剤を投与することを含む。1つの態様において、薬剤は細胞内もしくは対象の体内に同時に存在するか、またはそれらの生物効果もしくは治療効果を同時に発揮する。1つの態様において、治療剤は同じ組成物または単位剤形中にある。他の態様において、治療剤は別々の組成物または単位剤形中にある。特定の態様において、第1の薬剤は、第2の治療剤の投与前に投与することができる。
【0048】
「調節する」および「調節」という用語は、列挙された変量を低減または阻害すること、あるいは、活性化または増加させることをいう。
【0049】
「増加する」および「活性化する」という用語は、列挙された変量の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上の増加をいう。
【0050】
「低減する」および「阻害する」という用語は、列挙された変量の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上の減少をいう。
【0051】
「約」という用語は、示された値およびその値の上下の範囲を示唆および包含する。特定の態様において、「約」という用語は、指定された値± 10%、± 5%、または± 1%を示す。特定の態様において、該当する場合、「約」という用語は、指定された値 ± その値の1標準偏差を示す。
【0052】
「作動させる」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を誘導するための受容体シグナル伝達の活性化をいう。「アゴニスト」は、受容体に結合して受容体を作動させる実体である。
【0053】
「拮抗する」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を阻害するための受容体シグナル伝達の阻害をいう。「アンタゴニスト」は、受容体に結合して拮抗する実体である。
【0054】
本明細書に記載する構造的特徴および機能的特徴のいずれについても、これらの特徴を決定する方法は当技術分野において公知である。
【0055】
「任意で」という用語は、連続して用いられる場合、列挙された組み合わせの1つから全てを含むことを意味し、全ての下位組み合わせを企図する。
【0056】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在する20種類の一般的なアミノ酸をいう。天然に存在するアミノ酸は、アラニン(Ala; A)、アルギニン(Arg; R)、アスパラギン(Asn; N)、アスパラギン酸(Asp; D)、システイン(Cys; C); グルタミン酸(Glu; E)、グルタミン(Gln; Q)、グリシン(Gly; G); ヒスチジン(His; H)、イソロイシン(Ile; I)、ロイシン(Leu; L)、リジン(Lys; K)、メチオニン(Met; M)、フェニルアラニン(Phe; F)、プロリン(Pro; P)、セリン(Ser; S)、スレオニン(Thr; T)、トリプトファン(Trp; W)、チロシン(Tyr; Y)、およびバリン(Val; V)を含む。
【0057】
「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原またはエピトープ)との間の非共有結合性相互作用の合計の強さをいう。別段の指示がない限り、本明細書において用いられる場合、「親和性」は、結合対(例えば、抗体および抗原またはエピトープ)の成員間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性をいう。
【0058】
本明細書において用いられる「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数をいう。この値はkoff値ともいわれる。
【0059】
本明細書において用いられる「ka」(M-1×sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数をいう。この値はkon値ともいわれる。
【0060】
本明細書において用いられる「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。KD = kd/ka。いくつかの態様において、抗体の親和性は、そのような抗体とその抗原との間の相互作用に対するKDの観点から記載される。明確にするために、当技術分野において公知のように、KD値が小さいほど親和性の高い相互作用を示し、KD値が大きいほど親和性の低い相互作用を示す。
【0061】
本明細書において用いられる「KA」(M-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数をいう。KA = ka/kd
【0062】
「抗体」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられ、抗原またはエピトープに特異的に結合する1つまたは複数の抗原結合ドメインを含むある種の免疫グロブリン分子を含む。抗体は、具体的には、インタクト抗体(例えば、インタクト免疫グロブリン)、抗体断片、および多重特異性抗体を含む。
【0063】
「フィブリン抗体」、「抗フィブリン抗体」または「フィブリン特異的抗体」は、本明細書において提供されるように、抗原フィブリンに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体はフィブリンの細胞外ドメインに結合する。特定の態様において、本明細書において提供されるフィブリン抗体は、異なる種由来のフィブリンタンパク質の間でまたは中で保存されているフィブリンのエピトープに結合する。
【0064】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合する抗原の一部分を意味する。
【0065】
本明細書において用いられる「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変である、および/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの各領域をいう。
【0066】
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原またはエピトープに特異的に結合できる抗体の部分を意味する。
【0067】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残部分が異なる供給源または種に由来する抗体をいう。
【0068】
「ヒト抗体」という用語は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する(例えば、ヒト供給源から得られた、もしくは新たに(de novo)設計された)抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体をいう。ヒト抗体は特にヒト化抗体を除外する。
【0069】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト対象に投与された場合、非ヒト種抗体と比較して、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性が低い、および/またはあまり重篤でない免疫応答を誘導するような、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって非ヒト種に由来する抗体の配列とは異なる配列を有するタンパク質をいう。
【0070】
「多重特異性抗体」という用語は、2つまたはそれ以上の異なるエピトープに集合的に特異的に結合する2つまたはそれ以上の異なる抗原結合ドメインを含む抗体をいう。
【0071】
「単一特異性抗体」は、単一のエピトープに特異的に結合する1つまたは複数の結合部位を含む抗体である。単一特異性抗体の例は、二価(すなわち、2つの抗原結合ドメインを有する)でありながら、2つの抗原結合ドメインのそれぞれで同じエピトープを認識する天然IgG分子である。結合特異性は、任意の適当な価数で存在してもよい。
【0072】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団からの抗体をいう。実質的に均一な抗体の集団は、モノクローナル抗体の産生中に通常生じる可能性のある変種を除いて、実質的に類似する、かつ同じエピトープに結合する抗体を含む。そのような変種は一般に、少量しか存在しない。モノクローナル抗体は、典型的には、複数の抗体からの単一の抗体の選択を含むプロセスによって得られる。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、酵母クローン、細菌クローン、または他の組み換えDNAクローンのプールなどの、複数のクローンからの固有のクローンの選択とすることができる。選択された抗体は、例えば、標的に対する親和性(「親和性成熟」)を改善するために、抗体をヒト化するために、細胞培養におけるその産生を改善するために、および/または対象におけるその免疫原性を低減するために、さらに改変することができる。
【0073】
「単鎖」という用語は、ペプチド結合によって直線的に連結されたアミノ酸単量体を含む分子をいう。特定のそのような態様において、Fab軽鎖のC末端は、単鎖Fab分子中のFab重鎖のN末端に接続される。本明細書においてさらに詳細に記載するように、scFvは、そのC末端からポリペプチド鎖によって重鎖の可変ドメイン(VH)のN末端に接続された軽鎖の可変ドメイン(VL)を有する。あるいは、scFvは、VHのC末端がポリペプチド鎖によってVLのN末端に接続されたポリペプチド鎖を含む。
【0074】
「Fab断片」(抗原結合断片(fragment antigen-binding)ともいわれる)は、軽鎖および重鎖それぞれの可変ドメインVLおよびVHとともに軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。可変ドメインは、抗原結合に関与する相補性決定ループ(CDR、超可変領域ともいわれる)を含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数残基が付加されることによりFab断片とは異なる。
【0075】
「F(ab')2」断片はヒンジ領域近くで、ジスルフィド結合によりつながれた2つの Fab'断片を含む。F(ab')2断片は、例えば、組み換え法によりまたはインタクト抗体のペプシン消化により作り出されうる。F(ab')断片は、例えば、β-メルカプトエタノールでの処理により解離させることができる。
【0076】
「Fv」断片は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合二量体を含む。
【0077】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」は抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。1つの態様において、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。HER2抗体scFv断片は、WO93/16185; 米国特許第5,571,894号; および米国特許第5,587,458号に記載されている。
【0078】
「scFv-Fc」断片は、Fcドメインに結合したscFvを含む。例えば、FcドメインはscFvのC末端に結合されうる。Fcドメインは、scFvにおける可変ドメインの方向(すなわち、VH-VLまたはVL-VH)に応じて、VHまたはVLに続きうる。当技術分野において公知の、または本明細書に記載の任意の適当なFcドメインが用いられうる。場合によっては、FcドメインはIgG4 Fcドメインを含む。
【0079】
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、抗体の1つの可変ドメインが、他の可変ドメインの存在なしに抗原に特異的に結合する分子をいう。単一ドメイン抗体およびその断片は、Arabi Ghahroudi et al., FEBS Letters, 1998, 414:521-526およびMuyldermans et al., Trends in Biochem. Sci., 2001, 26:230-245に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が組み入れられる。単一ドメイン抗体はsdAb またはナノボディとしても知られている。sdabはかなり安定であり、抗体のFc鎖との融合パートナーとして発現するのが容易である(Harmsen MM, De Haard HJ (2007). "Properties, production, and applications of camelid single-domain antibody fragments". Appl. Microbiol Biotechnol. 77(1): 13-22)。
【0080】
「全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に用いられて、天然に存在する抗体構造と実質的に類似した構造を有し、Fc領域を含む重鎖を有する抗体をいう。例えば、IgG分子をいうために用いられる場合、「全長抗体」は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む抗体である。
【0081】
「抗体断片」という用語は、インタクト抗体の抗原結合領域または可変領域などの、インタクト抗体の一部分を含む抗体をいう。抗体断片は、例えば、Fv断片、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、scFv (sFv)断片、およびscFv-Fc断片を含む。
【0082】
本明細書において「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために用いられる。この用語は、ネイティブ配列Fc領域および変種Fc領域を含む。
【0083】
「実質的に精製された」という用語は、天然に存在する環境、すなわち天然細胞、または組み換えにより産生されるヘテロ多量体の場合には宿主細胞において見出されるタンパク質と通常付随または相互作用している構成要素を実質的または本質的に含まない可能性がある、特定の態様において、細胞物質を実質的に含まない、本明細書に記載する構築物、またはその変種をいい、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満(乾燥重量で)の夾雑タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。
【0084】
パーセント「同一性」という用語は、2つまたはそれ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈において、以下に記載する配列比較アルゴリズムの1つを用いて(例えば、BLAST、BLASTP、BLASTN、BLAST-2、ALIGN、MEGALIGN (DNASTAR)、CLUSTALW、CLUSTAL OMEGAもしくはMUSCLEソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズムを用いて)または目視検査によって測定された場合、最大の一致が得られるように比較され整列されると、同じものであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の割合を有する2つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information) (ncbi.nlm.nih.gov)を通じて公的に利用可能である。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。用途に依って、パーセント「同一性」は、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在することができ、あるいは、比較される2つの配列の全長にわたって存在することもできる。
【0085】
配列比較の場合、通常、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0086】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)により、または目視検査(一般にAusubel et al., 以下を参照のこと)により行うことができる。
【0087】
本明細書において列挙される範囲は、列挙される端点を含めて、範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。
【0088】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。
【0089】
抗フィブリン抗体
抗体構造
本出願は、フィブリンタンパク質に結合する抗体および抗体を含む組成物を提供する。
【0090】
認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。抗体または免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプをいう。抗体には5つの主要なクラス: IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられうる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0091】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、各対が1本の「軽鎖」(約25 kD)および1本の「重鎖」(約50~70 kD)を有する2対のポリペプチド鎖で構成される。各鎖のN末端ドメインは、抗原認識に主に関与する約100から110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖ドメインをいう。IgG1重鎖は、N末端からC末端の方向にそれぞれVH、CH1、CH2およびCH3ドメインで構成される。軽鎖は、N末端からC末端の方向にVLおよびCLドメインで構成される。IgG1重鎖は、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のヒンジを含む。特定の態様において、免疫グロブリン構築物は、治療用ポリペプチドに接続されたIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEからの少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体中に見出される免疫グロブリンドメインは、ダイアボディ、またはナノボディなどの免疫グロブリンに基づく構築物からであり、またはそれに由来する。特定の態様において、本明細書に記載する免疫グロブリン構築物は、ラクダ抗体などの重鎖抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。特定の態様において、本明細書において提供される免疫グロブリン構築物は、ウシ抗体、ヒト抗体、ラクダ科抗体、マウス抗体または任意のキメラ抗体などの哺乳動物抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は重鎖を含む。1つの態様において、重鎖はIgAである。1つの態様において、重鎖はIgDである。1つの態様において、重鎖はIgEである。1つの態様において、重鎖はIgGである。1つの態様において、重鎖はIgMである。1つの態様において、重鎖はIgG1である。1つの態様において、重鎖はIgG2である。1つの態様において、重鎖はIgG3である。1つの態様において、重鎖はIgG4である。1つの態様において、重鎖はIgA1である。1つの態様において、重鎖はIgA2である。
【0093】
いくつかの態様において、抗体はIgG1抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG3抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG2抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG4抗体である。
【0094】
一般に、ネイティブな4本鎖抗体は6つのHVR; VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは一般に、超可変ループおよび/または相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は配列可変性が最も高く、および/または抗原認識に関与する。VHにおけるCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は「相補性決定領域」(CDR)ともいわれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の部分に関して本明細書において互換的に用いられる。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, Sequences of Proteins of Immunological Interest (1983)により、およびChothia et al., J Mol Biol 196:901-917 (1987)により記載されており、ここでこの定義には、相互に比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体またはその変種のCDRをいうためにいずれかの定義を適用することは、本明細書において定義され使用される用語の範囲内であることが意図される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列およびサイズに依って変化するであろう。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考えると、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【0095】
CDRのアミノ酸配列境界は、Kabat et al., 前記(「Kabat」付番スキーム); Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948 (「Chothia」付番スキーム); MacCallum et al., 1996, J. Mol. Biol. 262:732-745 (「Contact」付番スキーム); Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol., 2003, 27:55-77 (「IMGT」付番スキーム); およびHonegge and Pluckthun, J. Mol. Biol., 2001, 309:657-70 (「AHo」付番スキーム)により記載されているものを含めて、いくつかの公知の付番スキームのいずれかを用いて当業者により決定されうる; これらはそれぞれ参照によりその全体が組み入れられる。
【0096】
表Aは、KabatおよびChothiaスキームによって同定されたCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3の位置を示す。CDR-H1の場合、KabatおよびChothia付番スキームの両方を用いて残基付番を提供している。
【0097】
CDRは、例えば、www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で利用可能な、および参照により全体が組み入れられるAbhinandan and Martin, Immunology, 2008, 45:3832-3839に記載されている、Abnumなどの、抗体付番ソフトウェアを用いて割り当てられうる。
【0098】
(表A)KabatおよびChothia付番スキームによるCDR中の残基。
CDR-H1のC末端は、Kabat付番の慣例を用いて付番すると、CDRの長さに依り、H32からH34の間で変化する。
【0099】
「EU付番スキーム」は一般に、抗体重鎖定常領域内の残基をいう場合に用いられる(例えば、Kabat et al., 前記に報告されている通り)。特に明記しない限り、EU付番スキームは、本明細書に記載する抗体重鎖定常領域中の残基をいうように用いられる。
【0100】
抗原結合ドメインの一例は、抗体のVH-VL二量体によって形成される抗原結合ドメインである。抗原結合ドメインの別の例は、アドネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型ドメインからの特定のループの多様化によって形成される抗原結合ドメインである。抗原結合ドメインは重鎖からのCDR 1、2および3をその順序で; ならびに軽鎖からのCDR 1、2および3をその順序で含むことができる。
【0101】
エピトープは、表面にアクセス可能なアミノ酸残基および/または糖側鎖からなることが多く、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有しうる。立体構造エピトープおよび非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合は失われうるが後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含みうる。抗体が結合するエピトープは、例えば、異なる点突然変異を有するフィブリン変種、またはキメラフィブリン変種に対する抗体の結合を試験するような、エピトープ決定のための公知の技法を用いて決定することができる。
【0102】
関心対象の抗体が結合する標的抗原(例えば、フィブリン)上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されているものなどの、日常的な交差ブロッキングアッセイを実施することができる。あるいは、またはさらに、エピトープマッピングは、当技術分野において公知の方法により実施することができる。
【0103】
キメラ抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残部分が異なる供給源または種に由来する。
【0104】
ヒト抗体は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する(例えば、ヒト供給源から得られた、もしくは新たに設計された)抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体である。ヒト抗体は特にヒト化抗体を除外する。
【0105】
ヒト化抗体は、ヒト対象に投与された場合、非ヒト種抗体と比較して、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性が低い、および/またはあまり重篤でない免疫応答を誘導するような、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって非ヒト種に由来する抗体の配列とは異なる配列を有する。1つの態様において、ヒト化抗体を産生するために、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメインにおけるある種のアミノ酸が変異される。別の態様において、ヒト抗体からの定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合される。別の態様において、非ヒト抗体の1つまたは複数のCDR配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基は、ヒト対象に投与される場合に、非ヒト抗体の免疫原性の可能性を低減させるために変えられ、変えられたアミノ酸残基は、抗体のその抗原への免疫特異的結合にとって重要ではないか、または行われるアミノ酸配列に対する変化は保存的変化であり、その結果、抗原へのヒト化抗体の結合は抗原への非ヒト抗体の結合よりも有意に悪くならないかのいずれかである。ヒト化抗体を作製する方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号において見出すことができる。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 1986, 321:522-525; Riechmann et al., Nature, 1988, 332:323-329; およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992, 2:593-596を参照されたく、これらはそれぞれ参照によりその全体が組み入れられる。
【0106】
2つまたはそれ以上の異なるエピトープは、同じ抗原(例えば、細胞によって発現される単一のフィブリン分子)上のエピトープであってもよく、または異なる抗原(例えば、同じ細胞によって発現される異なるフィブリン分子、もしくはフィブリン分子および非フィブリン分子)上のエピトープであってもよい。いくつかの局面において、多重特異性抗体は2つの異なるエピトープに結合する(すなわち「二重特異性抗体」)。いくつかの局面において、多重特異性抗体は3つの異なるエピトープに結合する(すなわち「三重特異性抗体」)。
【0107】
抗フィブリン抗体は図面および/または表に記載されたクローンなどの本明細書に記載するものを含むことができる。いくつかの態様において、抗体は代替の足場を含む。いくつかの態様において、抗体は代替の足場からなる。いくつかの態様において、抗体は代替の足場から本質的になる。いくつかの態様において、抗体は抗体断片を含む。いくつかの態様において、抗体は抗体断片からなる。いくつかの態様において、抗体は抗体断片から本質的になる。
【0108】
いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0109】
いくつかの態様において、抗体はポリクローナル抗体である。
【0110】
いくつかの態様において、抗体はハイブリドーマによって産生される。他の態様において、抗体は、所望の可変ドメインおよび定常ドメインを発現するように操作された組み換え細胞によって産生される。
【0111】
いくつかの態様において、抗体は、単鎖抗体もしくは抗原特異性および下部ヒンジ領域を保持している他の抗体誘導体またはその変種でありうる。
【0112】
いくつかの態様において、抗体は多機能抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、それらの断片または変種でありうる。特定の態様において、抗体断片またはその誘導体はFab断片、Fab'2断片、CDRおよびScFvから選択される。
【0113】
いくつかの態様において、抗体は免疫複合体を形成することができる。例えば、免疫複合体は、抗体で覆われた腫瘍細胞であることができる。
【0114】
配列比較の場合、通常、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0115】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)により、または目視検査(一般にAusubel et al., 以下を参照のこと)により行うことができる。
【0116】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information) (www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。
【0117】
フィブリン抗体の配列
V H ドメイン
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 8のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 9のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 10のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 11のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 12のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 13のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 14のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 15のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 16のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 17のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 18のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 19のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 20のVH配列を含む。
【0118】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供される例示的なVH配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供されるVH配列を含む。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0119】
V L ドメイン
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21から選択されるVL配列を含む。
【0120】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21において提供される例示的なVL配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 21において提供されるVL配列を含む。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0121】
VH-VLの組み合わせ
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVH配列; ならびにSEQ ID NO: 21から選択されるVL配列を含む。
【0122】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 8のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 9のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 10のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 11のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 12のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 13のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 14のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 15のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 16のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 17のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 18のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 19のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 20のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。
【0123】
特定の局面において、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20のいずれかをSEQ ID NO: 21のいずれかと組み合わせることができる。
【0124】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供される例示的なVH配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVH配列; ならびにSEQ ID NO: 21において提供される例示的なVL配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供されるVH配列、ならびに最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21において提供されるVL配列を含む。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0125】
CDR
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 37、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの3個のCDRを含む。いくつかの局面において、CDRはExemplary CDRである。いくつかの局面において、CDRはKabat CDRである。いくつかの局面において、CDRはChothia CDRである。いくつかの局面において、CDRはAbM CDRである。いくつかの局面において、CDRはContact CDRである。いくつかの局面において、CDRはIMGT CDRである。
【0126】
いくつかの態様において、CDRは、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20のCDR-H1、CDR-H2、またはCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するCDRである。いくつかの態様において、CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインのCDR-H1である。いくつかの態様において、CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインのCDR-H2である。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインのCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0127】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21のVLドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21のVLドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21のVLドメインの3個のCDRを含む。いくつかの局面において、CDRはExemplary CDRである。いくつかの局面において、CDRはKabat CDRである。いくつかの局面において、CDRはChothia CDRである。いくつかの局面において、CDRはAbM CDRである。いくつかの局面において、CDRはContact CDRである。いくつかの局面において、CDRはIMGT CDRである。
【0128】
いくつかの態様において、CDRは、SEQ ID NO: 21のCDR-L1、CDR-L2、またはCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するCDRである。いくつかの態様において、CDR-L1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21のVLドメインのCDR-L1である。いくつかの態様において、CDR-L2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21のVLドメインのCDR-L2である。いくつかの態様において、CDR-L3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21のVLドメインのCDR-L3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0129】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの1~3個のCDRならびにSEQ ID NO: 21のVLドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの2~3個のCDRならびにSEQ ID NO: 21のVLドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの3個のCDRならびにSEQ ID NO: 21のVLドメインの3個のCDRを含む。いくつかの局面において、CDRはExemplary CDRである。いくつかの局面において、CDRはKabat CDRである。いくつかの局面において、CDRはChothia CDRである。いくつかの局面において、CDRはAbM CDRである。いくつかの局面において、CDRはContact CDRである。いくつかの局面において、CDRはIMGT CDRである。
【0130】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24、25、26、27、28、29および30の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24、25、26、27、28、29および30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24、25、26、27、28、29および30の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0131】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0132】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 25の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0133】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 26の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0134】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 27の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0135】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 28の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 29の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0137】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 30の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 3の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 3のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 3の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0139】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの局面において、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H1は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0140】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 2の選択されるCDR-H2を含む。いくつかの局面において、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2の選択されるCDR-H2である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0141】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0142】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 25のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0143】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 26のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0144】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 27のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0145】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 28のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0146】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 29のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0147】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 30のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0148】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。いくつかの局面において、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0149】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2を含む。いくつかの局面において、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0150】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの局面において、CDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L1は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0151】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3およびSEQ ID NO: 5のCDR-L2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0152】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0153】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 25のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0154】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 26のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0155】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 27のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0156】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 28のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0157】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 29のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0158】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 30のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0159】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 24のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0160】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0161】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 26のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0162】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 27のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0163】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 28のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0164】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 29のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0165】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 30のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0166】
エピトープ
特定の態様において、本明細書に記載するのは、アミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421のいずれか1つの位置でヒトフィブリンに結合する、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体である。特定の態様において、抗体はアミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または全10個の位置でヒトフィブリンに結合する。特定の態様において、単離された抗体はアミノ酸残基Lys 411、Ile 412、Ile 413、Phe 415、Asn 416、Arg 417、Leu 418、Thr 419、Ile 420、およびGly 421の位置でヒトフィブリンに結合する。特定の態様において、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインエピトープのアミノ酸残基は、抗体のパラトープに5オングストロームもしくはそれ以下、4オングストロームもしくはそれ以下、3オングストロームもしくはそれ以下、または2オングストロームもしくはそれ以下に満たない距離で結合する。
【0167】
パラトープ
特定の態様において、本明細書に記載する抗体は、パラトープがアミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Leu 50、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Ser 95、Lys 96またはAsp 96、Pro 97またはAla 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103のいずれか1つを含む、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合するパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Leu 50、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Ser 95、Lys 96またはAsp 96、Pro 97またはAla 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、または全17個を含むパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Trp 33、His 35、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ser 94、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Trp 33、His 35、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ala 93、Ser 94、Lys 96、Pro 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基Ser 31、Tyr 32、 Trp 33、His 35、Trp 47、Asp 52、Asp 54、Tyr 56、Ser 94、Ser 95、Asp 96、Ala 97、Gly 101、Gly102、およびTrp 103を含むパラトープを含むVH領域を含む。
【0168】
特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91 or Asn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96のいずれか1つを含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91またはAsn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または全10個を含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Gln 50、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Gln 50、Asn 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む。特定の態様において、抗体は、アミノ酸残基His 27、Tyr 32、Tyr 36、Leu 46、Tyr 49、Gln 50、Ala 91、Leu 92、Leu 94、およびLeu 96を含むパラトープを含むVL領域を含む。
【0169】
特定の態様において、抗体のパラトープは、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインエピトープのアミノ酸残基に5オングストロームもしくはそれ以下、4オングストロームもしくはそれ以下、3オングストロームもしくはそれ以下、または2オングストロームもしくはそれ以下に満たない距離で結合する。
【0170】
Fc領域
さまざまな免疫グロブリンのFc領域の構造、およびそこに含まれるグリコシル化部位は当技術分野において公知である。Schroeder and Cavacini, J. Allergy Clin. Immunol., 2010, 125:S41-52を参照されたく、これは参照によりその全体が組み入れられる。Fc領域は、天然に存在するFc領域、または当技術分野においてもしくは本開示の他の箇所に記載するように改変されたFc領域でありうる。
【0171】
本明細書において特別の定めのない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれる、EU付番システムによるものである。本明細書において用いられる二量体Fcの「Fcポリペプチド」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定な自己会合が可能な免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドをいう。例えば、二量体IgG FcのFcポリペプチドは、IgG CH2およびIgG CH3定常ドメイン配列を含む。FcはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスのものであってもよく、これらのうちのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられてもよい。
【0172】
「Fc受容体」および「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために用いられる。例えば、FcRは天然配列のヒトFcRであることができる。一般的に、FcRは、IgG抗体と結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体の対立遺伝子変種およびオルタナティブスプライシング型を含めて、含む。FcγRII受容体はFcγRIIA (「活性化受容体」)およびFcγRIIB (「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。他のアイソタイプの免疫グロブリンも、ある種のFcRによって結合されうる(例えば、Janeway et al., Immuno Biology: the immune system in health and disease, (Elsevier Science Ltd., NY) (4th ed., 1999)を参照されたい)。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif; ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif; ITIM)を含む(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)に概説されている)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)に概説されている。他のFcRは、将来に同定されるものを含め、本明細書において「FcR」という用語に包含される。この用語は、母親由来IgGの胎児への移行に関与する新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976); およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0173】
CH2ドメインの修飾はFcRのFcへの結合に影響を与えうる。異なるFcガンマ受容体に対するFcの親和性を選択的に改変するための、Fc領域におけるいくつかのアミノ酸修飾が当技術分野において公知である。いくつかの局面において、Fcは、Fc-ガンマ受容体の選択的結合を促進するために1つまたは複数の修飾を含む。
【0174】
FcRのFcへの結合を変化させる例示的な変異を以下に列挙する:
S298A/E333A/K334A、S298A/E333A/K334A/K326A (Lu Y, Vernes JM, Chiang N, et al. J Immunol Methods. 2011 Feb 28;365(1-2):132-41);
F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L、F243L/R292P/Y300L/L235V/P396L
(Stavenhagen JB, Gorlatov S, Tuaillon N, et al. Cancer Res. 2007 Sep 15;67(18):8882-90; Nordstrom JL, Gorlatov S, Zhang W, et al. Breast Cancer Res. 2011 Nov 30;13(6):R123);
F243L (Stewart R, Thom G, Levens M, et al. Protein Eng Des Sel. 2011 Sep;24(9):671-8.)、S298A/E333A/K334A (Shields RL, Namenuk AK, Hong K, et al. J Biol Chem. 2001 Mar 2;276(9):6591-604);
S239D/I332E/A330L、S239D/I332E (Lazar GA, Dang W, Karki S, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Mar 14;103(11):4005-10);
S239D/S267E、S267E/L328F (Chu SY, Vostiar I, Karki S, et al. Mol Immunol. 2008 Sep;45(15):3926-33);
S239D/D265S/S298A/I332E、S239E/S298A/K326A/A327H、G237F/S298A/A330L/I332E、S239D/I332E/S298A、S239D/K326E/A330L/I332E/S298A、G236A/S239D/D270L/I332E、S239E/S267E/H268D、L234F/S267E/N325L、G237F/V266L/S267D、ならびに参照により本明細書に組み入れられるWO2011/120134およびWO2011/120135に列挙されている他の変異。Therapeutic Antibody Engineering (William R. Strohl and Lila M. Strohl, Woodhead Publishing series in Biomedicine No 11, ISBN 1 907568 37 9, Oct 2012による)には、283頁に変異が列挙されている。
【0175】
いくつかの態様において、本明細書に記載する抗体は、エフェクタ機能を媒介するその能力を改善するための修飾を含む。そのような修飾は当技術分野において公知であり、脱フコシル化、または活性化受容体に対する、主に、ADCCの場合FCGR3a、およびCDCの場合C1qに対するFcの親和性の操作を含む。以下の表Bは、エフェクタ機能操作に関する文献に報告されているさまざまな設計を要約したものである。
【0176】
アミノ酸配列を改変することなく、Fcグリコシル化部位(Asn 297 EU付番)にフコースをほとんどまたは全く有しない抗体を産生する方法は、当技術分野において周知である。GlymaX (登録商標)技術(ProBioGen AG)は、抗体産生のために用いられる細胞へのフコース生合成の細胞経路を偏向させる酵素の遺伝子の導入に基づく。これは、抗体産生細胞によるN-結合型抗体糖鎖部分への糖「フコース」の付加を抑止する。(von Horsten et al. (2010) Glycobiology. 2010 Dec; 20 (12):1607-18。フコシル化のレベルが低下した抗体を得るための別の手法は、米国特許第8,409,572号において見出すことができ、これには抗体産生用の細胞株を、より低レベルの抗体フコシル化をもたらすその能力について選択することが教示されており、抗体は完全に脱フコシル化することができ(検出可能なフコースが含まれていないことを意味する)、またはそれらは部分的に脱フコシル化することができ、これは単離された抗体が哺乳動物発現系により産生された類似の抗体について通常検出されるフコースの量の95%未満、85%未満、75%未満、65%未満、55%未満、45%未満、35%未満、25%未満、15%未満または5%未満を含有することを意味する。
【0177】
したがって、1つの態様において、本明細書に記載する抗体は、改善されたエフェクタ機能を付与する表Bに記載されるような1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む二量体Fcを含むことができる。別の態様において、抗体は、エフェクタ機能を改善するために脱フコシル化することができる。
【0178】
(表B)CH2ドメインおよびエフェクタ機能操作
【0179】
FcgRおよび/または補体結合および/またはエフェクタ機能を低減するFc修飾は、当技術分野において公知である。最近の刊行物には、エフェクタ活性が低減またはサイレンシングされた抗体を操作するために使用された戦略が記載されている(Strohl, WR (2009), Curr Opin Biotech 20:685-691、およびStrohl, WR and Strohl LM, “Antibody Fc engineering for optimal antibody performance” In Therapeutic Antibody Engineering, Cambridge: Woodhead Publishing (2012), pp 225-249を参照のこと)。これらの戦略には、グリコシル化の修飾によるエフェクタ機能の低減、IgG2/IgG4足場の使用、またはFcのヒンジ領域もしくはCH2領域における変異の導入が含まれる。例えば、米国特許出願公開第2011/0212087号(Strohl)、国際特許出願公開第WO 2006/105338号(Xencor)、米国特許出願公開第2012/0225058号(Xencor)、米国特許出願公開第2012/0251531号(Genentech)、およびStrop et al ((2012) J. Mol. Biol. 420: 204-219)には、FcへのFcgRまたは補体の結合を低減する特異的修飾が記載されている。
【0180】
FcへのFcgRまたは補体の結合を低減する公知のアミノ酸修飾の具体的な非限定的例としては、以下の表Cにおいて同定されるものが挙げられる。
【0181】
(表C)FcへのFcgRまたは補体の結合を低減する修飾
【0182】
アミノ酸配列を改変することなく、Fcグリコシル化部位(Asn 297 EU付番)にフコースをほとんどまたは全く有しない抗体を産生する方法は、当技術分野において周知である。GlymaxX (登録商標)技術(ProBioGen AG)は、抗体産生のために用いられる細胞へのフコース生合成の細胞経路を偏向させる酵素の遺伝子の導入に基づく。これは、抗体産生細胞によるN-結合型抗体糖鎖部分への糖「フコース」の付加を抑止する。(von Horsten et al. (2010) Glycobiology. 2010 Dec; 20 (12):1607-18.) 脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例としては、細菌オキシドレダクターゼGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキシロースレダクターゼ(RMD)の安定的な過剰発現を有するCHO-DG44 (Henning von Horsten et al., Glycobiol 2010, 20:1607-1618を参照のこと)またはタンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys., 1986, 249:533-545; 米国特許出願公開第2003/0157108号; WO 2004/056312を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)、およびアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子またはFUT8ノックアウトCHO細胞などの、ノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng., 2004, 87: 614-622; Kanda et al., Biotechnol. Bioeng., 2006, 94:680-688; およびWO 2003/085107を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)が挙げられる。フコシル化のレベルが低下した抗体を得るための別の手法は、米国特許第8,409,572号において見出すことができ、これには抗体産生用の細胞株を、より低レベルの抗体フコシル化をもたらすその能力について選択することが教示されている。
【0183】
脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例としては、細菌オキシドレダクターゼGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキシロースレダクターゼ(RMD)の安定的な過剰発現を有するCHO-DG44 (Henning von Horsten et al., Glycobiol 2010, 20:1607-1618を参照のこと)またはタンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys., 1986, 249:533-545; 米国特許出願公開第2003/0157108号; WO 2004/056312を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)、およびアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子またはFUT8ノックアウトCHO細胞などの、ノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng., 2004, 87: 614-622; Kanda et al., Biotechnol. Bioeng., 2006, 94:680-688; およびWO 2003/085107を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)が挙げられる。
【0184】
抗体は完全に脱フコシル化することができ(検出可能なフコースが含まれていないことを意味する)、またはそれらは部分的に脱フコシル化することができ、これは単離された抗体が哺乳動物発現系により産生された類似の抗体について通常検出されるフコースの量の95%未満、85%未満、75%未満、65%未満、55%未満、45%未満、35%未満、25%未満、15%未満または5%未満を含有することを意味する。
【0185】
いくつかの局面において、本明細書において提供される抗体は、天然に存在するIgG1ドメインと比較してAsn 297位のフコース含量が低減したIgG1ドメインを含む。そのようなFcドメインは改善されたADCCを有することが知られている。Shields et al., J. Biol. Chem., 2002, 277:26733-26740を参照されたく、これは参照によりその全体が組み入れられる。いくつかの局面において、そのような抗体は、Asn 297位にフコースを含まない。フコースの量は、例えば、参照により全体が組み入れられるWO 2008/077546に記載されているような、任意の適当な方法を用いて決定されうる。
【0186】
特定の態様において、本明細書において提供される抗体は、Fc領域の位置番号298、333、および334のうちの1つまたは複数での置換のような、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、参照により全体が組み入れられるLazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2006,103:4005-4010に記載されているような、位置番号239、332、および330での1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。
【0187】
本明細書において提供される抗体に組み入れられうる他の例示的なグリコシル化変種は、例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号、同第2003/0157108号、同第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号; 国際特許出願公開第2000/61739号、同第2001/29246号、同第2003/085119号、同第2003/084570号、同第2005/035586号、同第2005/035778号; 同第2005/053742号、同第2002/031140号; Okazaki et al., J. Mol. Biol., 2004, 336:1239-1249; およびYamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng., 2004, 87: 614-622に記載されており; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0188】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Fc領域に結合したオリゴ糖中の少なくとも1つのガラクトース残基を有するFc領域を含む。そのような抗体変種は、改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体変種の例は、例えば、WO 1997/30087; WO 1998/58964; およびWO 1999/22764に記載されており; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0189】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、C1q結合および/またはCDCを改善または減弱する1つまたは複数の改変を含む。米国特許第6,194,551号; WO 99/51642; およびIdusogie et al., J. Immunol., 2000, 164:4178-4184を参照されたく; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0190】
結合
分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離平衡定数(KD)によって表すことができる。解離平衡定数に寄与する動力学的構成要素は、以下でさらに詳細に記載する。親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIACORE(登録商標))または生体層干渉法(例えば、FORTEBIO(登録商標))などの、本明細書に記載されているものを含めて、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。
【0191】
標的分子への抗体の結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープに「結合する」、「特異的に結合すること」、「特異的に結合する」、「対して特異的」、「選択的に結合する」、および「対して選択的」という用語は、非特異的または非選択的な相互作用(例えば、非標的分子との)とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子への結合を測定し、それを非標的分子への結合と比較することにより測定することができる。特異的結合は、標的分子上で認識されるエピトープを模倣した対照分子との競合により決定することもできる。その場合、標的分子への抗体の結合が対照分子によって競合的に阻害されれば、特異的結合が示唆される。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約50%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約40%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約30%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約20%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約10%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約1%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約0.1%未満である。
【0192】
2つまたはそれ以上の抗体という文脈の中で本明細書において用いられる場合、「と競合する」または「と交差競合する」という用語は、2つまたはそれ以上の抗体が抗原(例えば、フィブリン)への結合について競合することを示す。1つの例示的なアッセイでは、フィブリンは表面にコーティングされ、第1のフィブリン抗体と接触され、その後に第2のフィブリン抗体が添加される。別の例示的なアッセイでは、第1のフィブリン抗体が表面にコーティングされ、フィブリンと接触され、その後に第2のフィブリン抗体が添加される。いずれのアッセイにおいても、第1のフィブリン抗体の存在が第2のフィブリン抗体の結合を低減する場合、抗体は互いに競合する。「と競合する」という用語は、1つの抗体が別の抗体の結合を低減するが、抗体を逆の順序で添加される場合には競合が観察されない抗体の組み合わせも含む。しかしながら、いくつかの態様において、第1および第2の抗体は、添加される順序に関係なく、互いの結合を阻害する。いくつかの態様において、1つの抗体は競合結合アッセイにおいて測定された場合、その抗原への別の抗体の結合を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%だけ低減する。当業者は、フィブリンに対する抗体の親和性および抗体の価数に基づき競合アッセイにおいて用いられる抗体の濃度を選択することができる。この定義のなかで記載したアッセイは例示であり、当業者は、抗体が互いに競合するかどうかを決定するために任意の適当なアッセイを利用することができる。適当なアッセイは、例えば、Cox et al., “Immunoassay Methods,” in Assay Guidance Manual [Internet], Updated December 24, 2014 (ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/; accessed September 29, 2015); Silman et al., Cytometry, 2001, 44:30-37; およびFinco et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 2011, 54:351-358に記載されており; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0193】
過剰の試験抗体(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または100倍)が競合結合アッセイにおいて測定された場合、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%だけ参照抗体の結合を阻害または遮断するなら、試験抗体は参照抗体と競合する。競合アッセイにより同定される抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および立体障害が起こるために参照抗体によって結合されるエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体を含む。例えば、本明細書に記載する第1の抗体とフィブリンへの結合について競合する第2の競合抗体を同定することができる。ある場合には、第2の抗体は競合結合アッセイにおいて測定された場合、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%だけ第1の抗体の結合を遮断または阻害することができる。ある場合には、第2の抗体は50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%超だけ第1の抗体に取って代わることができる。
【0194】
いくつかの態様において、抗フィブリン抗体は、がん組織外に存在する骨髄系細胞に実質的に結合しない。いくつかの態様において、抗フィブリン抗体は、がん組織内に存在する刺激性骨髄系細胞に実質的に結合しない。
【0195】
いくつかの態様において、抗フィブリン抗体は、ヒトフィブリンのフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインの残基γ377~395 (SEQ ID NO: 31)に結合する。結合エピトープは、数値範囲内の残基(例えば、フィブリンの残基377~395)、各範囲の開始残基(例えば、ヒトフィブリンの残基377~394)および各範囲の終了残基(例えば、ヒトフィブリンの残基378~395)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0196】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、1.95、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10×10-6 M以下のKDで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体のKDは、Biacoreアッセイによって測定された場合、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.01~0.05、0.05~0.1、0.1~0.5、0.5~1、0.25~0.75、0.25~0.5、0.5~0.75、0.75~1、0.75~2、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9、1.9~2、1~2、1~5、2~7、3~8、3~5、4~6、5~7、6~8、7~9、7~10、または5~10×10-6 Mである。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、約1×10-5 M、1×10-6 M、1×10-7 M、1×10-8 M、または1×10-9 M以下のKDで、ヒトフィブリンに結合する。
【0197】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約10、9、8、7、6、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.98、1.95、1.9、1.85、1.8、1.75、1.7、1.65、1.6、1.55、1.50、1.45、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、もしくは0.0001×10-5 M以下、またはそれよりも小さいKDで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、5~3、4~2、3~1、1.9~1.8、1.8~1.7、1.7~1.6、1.6~1.5、1.9~1.5、1.5~1、1~0.8、1~0.5、0.9~0.6、0.7~0.4、0.6~0.2、0.5~0.3、0.3~0.2、0.2~0.1、0.1~0.01、0.01~0.001、または0.001~0.0001×10-5 MのKDで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約10、9.56、9.5、9.0、8.88、8.84、8.5、8、7.5、7.32、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、もしくは1×10-4 (1/s)以下、またはそれよりも小さいKdで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、7~10、7~8、8~9、9~10、7~7.5、7.5~8、8.~8.5、8.5~9、9~9,5、または9.5~10×10-4 (1/s)のKdでヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、45、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、7、8、9、もしくは10×105 (1/Ms)以上、またはそれよりも大きいKaで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、4~7、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、または6.5~7、7~8、8~9、または9~10×105 (1/Ms)のKaでヒトフィブリン(FIBRIN)に結合する。
【0198】
機能
「エフェクタ機能」は抗体のFc領域によって媒介される生物学的活性をいい、この活性は抗体アイソタイプに依って変わりうる。抗体のエフェクタ機能の例としては、受容体リガンドの遮断、受容体活性化作用、または拮抗作用、補体依存性細胞傷害(CDC)を活性化するためのC1q結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を活性化するためのFc受容体結合、および抗体依存性細胞食作用(ADCP)が挙げられる。いくつかの態様において、本明細書に記載するフィブリン抗体のエフェクタ機能は拮抗作用であり、フィブリンへのMac-1受容体結合を遮断する。
【0199】
薬学的組成物
本出願は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とともに本明細書に記載する抗体のいずれか1つまたは複数を含む薬学的組成物を含めて、抗体を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は無菌である。薬学的組成物は通常、有効量の抗体を含む。
【0200】
これらの組成物は、本明細書において開示される抗体の1つまたは複数に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤、または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるべきではない。担体または他の材料の的確な性質は、投与経路、例えば経口、静脈内、皮膚または皮下、鼻腔、筋肉内、腹腔内経路に依存しうる。
【0201】
経口投与用の薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤または液剤の形態とすることができる。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含むことができる。液体薬学的組成物は通常、水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理的食塩水、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含めることができる。
【0202】
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または罹患部位での注射のために、活性成分は、発熱性物質不含であり、適当なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性ビヒクルを用いて適当な溶液を十分に調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤を含めることができる。
【0203】
個体の投与のために与えられる抗フィブリン抗体は、好ましくは「治療的有効量」または「予防的有効量」(場合により、予防は治療と考えることもできるが)であり、これは個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および経過は、処置されるタンパク質凝集疾患の性質および重症度に依存するであろう。処置の処方、例えば投与量などの決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、通常、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および開業医に知られている他の要因が考慮される。上記の技法およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed), 1980において見出すことができる。
【0204】
組成物は、処置される状態に応じて、単独でまたは他の処置との組み合わせで、同時にまたは連続的に投与することができる。
【0205】
方法
調製方法
本明細書に記載する抗体は、例えば米国特許第4,816,567号に記載されているような、組み換え法および組成物を用いて産生することができる。1つの態様において、本明細書に記載する抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/もしくはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/もしくは重鎖)、または単一ドメイン抗体のVHHを含むアミノ酸配列をコードしうる。さらなる態様において、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。1つの態様において、核酸はマルチシストロン性ベクターにおいて提供される。さらなる態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような1つの態様において、宿主細胞は、(1) 抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗原結合ポリペプチド構築物のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2) 抗原結合ポリペプチド構築物のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターおよび抗原結合ポリペプチド構築物のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらのベクターで形質転換されている)。1つの態様において、宿主細胞は、真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト胚性腎臓(HEK)細胞、またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。1つの態様において、抗体を作製する方法が提供され、該方法は、抗体の発現に適した条件下で、上記のように抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する段階、および任意で宿主細胞(または宿主細胞培地)から抗体を回収する段階を含む。
【0206】
抗体の組み換え産生の場合、例えば、上記のような抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のための1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定されうる。
【0207】
ヘテロ多量体またはその変種が宿主細胞によって組み換え産生される場合、タンパク質は、特定の態様において、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%もしくは約1%、またはそれ未満で存在する。ヘテロ多量体またはその変種が宿主細胞によって組み換え産生される場合、タンパク質は、特定の態様において、細胞の乾燥重量の約5 g/L、約4 g/L、約3 g/L、約2 g/L、約1 g/L、約750 mg/L、約500 mg/L、約250 mg/L、約100 mg/L、約50 mg/L、約10 mg/L、もしくは約1 mg/L、またはそれ未満で培地中に存在する。特定の態様において、本明細書に記載する方法によって産生される「実質的に精製された」ヘテロ多量体は、SDS/PAGE分析、RP-HPLC、SEC、およびキャピラリー電気泳動などの適切な方法によって決定された場合、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度レベル、具体的には、少なくとも約75%、80%、85%の純度レベル、およびさらに具体的には、少なくとも約90%の純度レベル、少なくとも約95%の純度レベル、少なくとも約99%またはそれ以上の純度レベルを有する。
【0208】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載する原核細胞または真核細胞を含む。
【0209】
組み換え宿主細胞、または宿主細胞は、挿入のために用いられる方法、例えば、直接取り込み、形質導入、f-交配、または組み換え宿主細胞を作り出すための当技術分野において公知の他の方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞である。外来性ポリヌクレオチドは、例えば、プラスミドなどの非組み込みベクターとして維持されてもよく、あるいは宿主ゲノムに組み込まれてもよい。宿主細胞はCHO、CHOの派生株、NS0、Sp2O、CV-1、VERO-76、HeLa、HepG2、Per.C6、またはBHKを含むことができる。
【0210】
例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクタ機能が必要とされない場合、細菌中で産生されてもよい。細菌中での抗体断片およびポリペプチドの発現の場合、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、および同第5,840,523号を参照されたい。(大腸菌(E. coli)における抗体断片の発現について記載している、Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J., 2003), pp. 245-254も参照されたい。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性画分中に単離されてもよく、さらに精製することができる。
【0211】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母菌などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて、一部または完全にヒトグリコシル化パターンを持つ抗体の産生をもたらす真菌および酵母株を含む。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)、およびLi et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照されたい。
【0212】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞とともに、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために用いられうる多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0213】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載している)を参照されたい。
【0214】
脊椎動物細胞が宿主として用いられてもよい。例えば、浮遊状態で増殖するように適合される哺乳動物細胞株が有用でありうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7); ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載されているような293または293細胞); ベビーハムスター腎臓細胞(BHK); マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されているようなTM4細胞); サル腎臓細胞(CV1); アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76); ヒト子宮頸がん細胞(HELA); イヌ腎臓細胞(MDCK; バッファローラット肝細胞(BRL 3A); ヒト肺細胞(W138); ヒト肝細胞(Hep G2); マウス乳腺腫瘍(MMT 060562); 例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載されているようなTRI細胞; MRC 5細胞; およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)); ならびにY0、NS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)を参照されたい。
【0215】
1つの態様において、本明細書に記載する抗体は、所定の比率で、抗体をコードする核酸により少なくとも1つの安定な哺乳動物細胞をトランスフェクトする段階; および少なくとも1つの哺乳動物細胞において核酸を発現させる段階を含む方法により、安定な哺乳動物細胞において産生される。いくつかの態様において、核酸の所定の比率は、一過性トランスフェクション実験において、発現産物中の抗体の割合が最も高くなる入力核酸の相対比率を決定するために決定される。
【0216】
いくつかの態様において、本明細書に記載するような安定な哺乳動物細胞において抗体を産生する方法があり、ここで少なくとも1つの安定な哺乳動物細胞の発現産物は、単量体の重鎖もしくは軽鎖ポリペプチド、または他の抗体と比較して、より大きな割合の所望のグリコシル化抗体を含む。
【0217】
いくつかの態様において、本明細書に記載する安定な哺乳動物細胞においてグリコシル化抗体を産生する方法があり、該方法は、所望のグリコシル化抗体を同定および精製する段階を含む。いくつかの態様において、該同定は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析の一方または両方によるものである。
【0218】
必要に応じて、発現後に抗体を精製または単離することができる。タンパク質は、当業者に公知の種々の方法で単離または精製されうる。標準的な精製方法は、FPLCおよびHPLCなどのシステムを用いて大気圧または高圧で行われる、イオン交換、疎水性相互作用、アフィニティー、サイジングまたはゲルろ過、および逆相を含め、クロマトグラフィー技法を含む。精製方法は、電気泳動技法、免疫学的技法、沈殿技法、透析技法、およびクロマトフォーカシング技法も含む。タンパク質濃縮と組み合わせた限外ろ過および透析ろ過技法も有用である。当技術分野において周知のように、種々の天然タンパク質がFcおよび抗体に結合し、これらのタンパク質は抗体の精製のために本発明において用途を見つけることができる。例えば、細菌プロテインAおよびGはFc領域に結合する。同様に、細菌プロテインLはいくつかの抗体のFab領域に結合する。精製は、特定の融合パートナーによって可能になることが多い。例えば、GST融合体が利用される場合にはグルタチオン樹脂を用いて、Hisタグが利用される場合にはNi+2アフィニティークロマトグラフィーを用いて、またはflagタグが使用される場合には固定化抗flag抗体を用いて、抗体が精製されうる。適当な精製技法における一般的なガイダンスについては、例えば、参照により全体が組み入れられるProtein Purification: Principles and Practice, 3rd Ed., Scopes, Springer-Verlag, NY, 1994を参照されたい。必要な精製の程度は抗体の用途に依って変わる。ある場合には、精製が不要である。
【0219】
特定の態様において、抗体はQ-セファロース、DEAEセファロース、poros HQ、poros DEAF、Toyopearl Q、Toyopearl QAE、Toyopearl DEAE、Resource/Source QおよびDEAE、Fractogel QおよびDEAEカラムでのクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製される。
【0220】
特定の態様において、本明細書に記載するタンパク質は、SPセファロース、CMセファロース、poros HS、poros CM、Toyopearl SP、Toyopearl CM、Resource/Source SおよびCM、Fractogel SおよびCMカラム、ならびにそれらの等価物および同等物を含むが、これらに限定されない、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製される。
【0221】
さらに、本明細書に記載する抗体は、当技術分野において公知の技法を用いて化学的に合成することができる(例えば、Creighton, 1983, Proteins: Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman & Co., N.Y and Hunkapiller et al., Nature, 310:105-111 (1984)を参照のこと)。例えば、ポリペプチドの断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成機の使用により合成することができる。さらに、所望により、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体をポリペプチド配列に置換または付加として導入することができる。非古典的アミノ酸は、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4ジアミノ酪酸、アルファ-アミノイソ酪酸、4アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、g-Abu、e-Ahx、6アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えばメチルアミノ酸、C-メチルアミノ酸、N-メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体を一般に含むが、これらに限定されることはない。さらに、アミノ酸は、D (右旋性)またはL (左旋性)であることができる。
【0222】
使用方法
1つの局面において、本出願は、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害をもたらす、ヒト抗体またはヒト化抗体などの、抗フィブリン抗体とフィブリンを接触させる方法を提供する。
【0223】
1つの局面において、本出願は、神経系の変性障害の処置のために、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体を使用する方法を提供する。特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗フィブリン抗体または抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、本出願は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される神経系の変性障害を処置する方法を提供する。
【0224】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0225】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、ミクログリア活性化を阻害する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0226】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、本出願は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される神経系の変性障害を予防する方法を提供する。
【0227】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む、大腸炎を処置または予防する方法である。
【0228】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む、眼の炎症状態を処置または予防する方法である。特定の態様において、眼の炎症状態はブドウ膜炎である。
【0229】
投与方法
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、個体における変性神経系障害の処置に有用である。1つの態様において、個体はヒトであり、抗体は本明細書に記載するフィブリン抗体である。
【0230】
いくつかの態様において、抗体は静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所に、経口に、経皮に、腹腔内に、眼窩内に、硝子体内に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。抗フィブリン抗体の有効量は、がんの処置のために投与されうる。抗フィブリン抗体の適切な投与量は、処置されるがんの種類、抗フィブリン抗体の種類、がんの重症度および経過、個体の臨床状態、個体の臨床歴および処置に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定されうる。
【0231】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤とともに投与される。任意の適当な追加の治療剤または免疫療法剤は、本明細書において提供される抗体とともに投与されうる。追加の治療剤は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される神経系の変性障害を処置または予防するために用いられる薬剤を含む。
【0232】
追加の治療剤は、任意の適当な手段によって投与することができる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤は、同じ薬学的組成物に含まれる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤は、異なる薬学的組成物に含まれる。
【0233】
本明細書において提供される抗体および追加の治療剤が異なる薬学的組成物に含まれる態様において、抗体の投与は、追加の治療剤の投与の前に、追加の治療剤の投与と同時に、および/または追加の治療剤の投与の後に行うことができる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1週間以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1日以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約12時間以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1時間以内に行われる。
【0234】
キットおよび製造物品
本出願は、本明細書に記載する抗体組成物のいずれか1つまたは複数を含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、二次抗体、免疫組織化学分析用試薬、薬学的に許容される賦形剤および取扱説明書、ならびにそれらの任意の組み合わせのいずれかから選択される構成要素をさらに含む。1つの特定の態様において、キットは、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とともに、本明細書に記載する抗体組成物のいずれか1つまたは複数を含む薬学的組成物を含む。
【0235】
本出願は同様に、本明細書に記載する抗体組成物またはキットのいずれか1つを含む製造物品を提供する。製造品の例としては、バイアル(密封バイアルを含む)が挙げられる。
【実施例
【0236】
以下は、本発明を実行するための具体的な態様の例である。実施例は、例示のみを目的として供与されるものであり、本発明の範囲をいかなる形でも限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差はもちろん許容されるべきである。
【0237】
本発明の実践には、別段の指示がない限り、当技術分野の技術の範囲内であるタンパク質化学、生化学、組み換えDNA技法および薬理学の従来の方法が利用される。そのような技法は文献のなかで十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0238】
材料および方法
PierceのEZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylationキットを用いて、抗原をビオチン化した。ヤギF(ab')2 抗ヒトκ-FITC (LC-FITC)、ExtrAvidin-PE (EA-PE)、およびストレプトアビジン-AF633 (SA-633)をそれぞれ、Southern Biotech, Sigma, and Molecular Probesから入手した。ヤギ抗ヒトIgG-PE (Human-PE)をSouthern Biotechから入手した。抗マウスAPCはJackson ImmunoResearchから入手した。
【0239】
実施例1: 抗フィブリン抗体のヒト化
ヒト化プロセスは非ヒト抗体の結合ドメインを修飾し、ヒト結合ドメインとの類似性を高める。典型的には、非ヒト抗体は、親である非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化される。一般的に、ヒト化抗体は、CDR (またはその部分)が非ヒト抗体に由来し、FR (またはその部分)がヒト抗体配列に由来する1つまたは複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体における一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性、親和性、安定性、または開発可能性プロファイルを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0240】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号; Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005) (特異性決定領域(SDR)移植について記載している); Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「再表面加工(resurfacing)」について記載している); Dall′Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャフリング」について記載している); ならびにOsbourn et al., Methods 36:61-68 (2005)およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャフリングに対する「誘導選択」アプローチについて記載している)にさらに記載されている。
【0241】
ヒト化のために用いられうるヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993)を参照のこと); 軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992); およびPresta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照のこと); ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照のこと); ならびにFRライブラリのスクリーニングから導出されたフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997)およびRosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照のこと)を含むが、これらに限定されることはない。
【0242】
5B8のヒト化
フィブリン抗体(5B8)のヒト化は、酵母において産生されたヒト化設計のパネルを特徴付けることによって行われた。手短に言えば、設計は、インシリコでオリジナルのマウスフレームワークと最も適合性が高いものと予測されたヒトフレームワーク配列にCDRマウス配列を移植することによって作り出された。以下の組み合わせを酵母において産生し、ヒトフィブリノゲンP2ペプチド抗原への結合について特徴付けた: 5B8に基づき、9種のヒト化VHおよび3種のヒト化Vκの組み合わせに相当する27種の抗体。
【0243】
抗体最適化
ヒト化抗体の最適化は、以下に記載するように重鎖および軽鎖可変領域に多様性を導入することによって実施された。
【0244】
ライブラリ作製: CDRH1、CDRH2、またはCDRH3のいずれか、およびCDRの両側の隣接領域を含むオリゴヌクレオチドをIDTから注文した。CDRオリゴに導入されたNNK多様性によって、CDR内のアミノ酸の位置が多様化された。HC (重鎖)可変領域のDNAを次いでDNase処理し、サイズが50~200 bpの断片を作り出した。その後、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3オリゴを重複伸長PCRによってDNase処理したHC可変領域と組み換え、CDR多様性オリゴをHC可変領域配列に組み入れた。その後、この多様化したHC可変配列および重鎖発現ベクターを、親の軽鎖プラスミドを既に含んでいる酵母に形質転換することによってライブラリを作製した。CDRL1、CDRL2、およびCDRL3に多様性を導入するために同様のプロセスを実施した。CDRL1、CDRL2、およびCDRL3の多様性を有するオリゴヌクレオチドをIDTから注文し、CDRH1、CDRH2、CDRH3ライブラリについて記載したように多様化した軽鎖(LC)可変領域に組み入れた。これらの多様化したLC可変領域および軽鎖発現ベクターを、親の重鎖プラスミドを既に含んでいる酵母に形質転換した。追加のライブラリのセットを、CDRH3内の多様性のみに焦点を当てて構築した。VH FR1~FR3とCDRH3の多様性を有するオリゴヌクレオチドとの重複伸長PCRにより、CDRH3にウォーキングシングレットの多様性を導入した。
【0245】
3ラウンドのFACS選別を用いることにより選択を実施した。およそ2×107個の酵母をペレット化し、洗浄緩衝液で3回洗浄し、ヒトフィブリノゲンP2ペプチド抗原を用いた親和性圧力、または多重特異性枯渇試薬(PSR)のいずれかとともに30℃でインキュベートして、選択からの非特異的抗体を除去した。この選択の場合、抗原を親IgGとともにプレインキュベートし、次いで予め複合体化されたその混合物を、選択が平衡に達するのに十分な時間、酵母ライブラリに適用することにより、親和性圧力をかけた。PSR枯渇の場合、ライブラリを既述のようにビオチン化PSR試薬の1:10希釈液とともにインキュベートした(Y. Xu et al, PEDS 26.10, 663-70 (2013)を参照のこと)。その後、酵母を洗浄緩衝液で2回洗浄し、LC-FITC (1:100希釈)およびSA-633 (1:500希釈)、EAPE (1:50希釈)、または抗マウスAPC (1:500希釈)のいずれかの二次試薬により4℃で15分間染色した。洗浄緩衝液で2回洗浄後、細胞ペレットを洗浄緩衝液0.3 mLに再懸濁し、ストレーナキャップ付き選別チューブに移した。FACS ARIA選別機(BD Biosciences)を用いて選別を実施し、選別ゲートを決定して、所望の特性を有する抗体を選択した。4選択ラウンドを完了した。最終選別ラウンドの後、酵母をプレーティングし、特徴付けのために個々のコロニーをピックした。図1は、1つの親抗体からの単一抗体ライブラリの選択の最初の3ラウンドの結果と、成熟の各ラウンド後のフィブリンP2ガンマペプチドに対する抗体の親和性の増加を示す。
【0246】
抗体産生および精製
酵母クローンを飽和まで増殖させ、その後、振とうしながら30℃で48時間誘導した。誘導後、酵母細胞をペレット化し、精製のために上清を収集した。プロテインAカラムを用いてIgGを精製し、酢酸、pH 3.5で溶出した。Fab断片をパパイン消化によって作り出し、CaptureSelect (Life Technologies)で精製した。
【0247】
実施例2: ヒト化抗体クローンの特徴付けおよび親和性成熟
選択のヒト化抗体クローンならびにフィブリンP2ペプチド(図2A)、フィブリノゲン(図2B)、およびフィブリン(図2C)を用いて酵素結合免疫測定法(ELISA)を実施した。A = クローン60143; B = クローン61278; C = クローン61278(二つ組); D = 親抗体。
【0248】
これらの結果は、親和性成熟したヒト化抗体クローンが親ヒト化抗体と比較して、改善された親和性でフィブリンP2ペプチドおよびフィブリンに結合することを確認するものである。
【0249】
親和性成熟した抗体クローンがフィブリン重合または溶解に影響を与えたかどうかを評価するために、変種ヒト化抗体の存在下でのサンプルの血餅溶解時間を示す血餅溶解アッセイを実施した(図3)。A = クローン56666; B = クローン56657; C = クローン60143; D = クローン60181; E = クローン60175; F = クローン60163; G = クローン60173; H = クローン60184; I = クローン60141; J = クローン60179; K = クローン60140; L = クローン60183。血餅溶解アッセイを、2つの混合物を調製することによって実施した: 133 nM抗体、2 uMフィブリノゲンを含む混合物1を96ウェルプレート中で調製し、55 rpmで遠心分離し、37℃で0.5時間インキュベートし、20 nMプラスミノゲン、0.1 Uトロンビン、4 mM CaCl2および1 nM tPAを含む混合物2を調製し、プレートに移した。混合液2をウェルに移した直後に、血餅溶解反応を開始した。反応の進行を350 nmで測定した。各プレートには4つの対照を含めた: トロンビン-tPA-CaCl2ミックスを有しない緩衝液ブランク、緩衝液ブランク、100 uM GPRP (重合阻害剤)、および10 uM EACA (溶解阻害剤)。
【0250】
試験した全ての抗体クローンの血餅溶解時間は、親ヒト化抗体またはアイソタイプ対照抗体と比較して有意に変化していなかった(図3)。
【0251】
これらの結果は、親和性成熟したヒト化抗体クローンがフィブリン重合またはフィブリン溶解に影響を与えないことを確認するものである。
【0252】
ForteBio K D 測定
ForteBio親和性測定を既述のように概してOctet RED384を用いて実施した(Estep et al, High throughput solution-based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning. Mabs 5(2), 270-278 (2013)を参照のこと)。手短に言えば、AHCセンサーにオンラインでIgGを負荷することによってForteBio親和性測定を実施した。センサーをアッセイ緩衝液中30分間オフラインで平衡化し、その後、ベースライン確立のために60秒間オンラインでモニターした。IgGを負荷したセンサーを100 nM抗原に3分間曝露し、その後、オフ速度測定のために3分間アッセイ緩衝液に移した。一価の親和性評価の場合、IgGの代わりにFabを用いた。この評価の場合、ビオチン化されていないFc融合抗原をオンラインでAHCまたはAMCセンサーに負荷した。センサーをアッセイ緩衝液中30分間オフラインで平衡化し、その後、ベースライン確立のために60秒間オンラインでモニターした。抗原を負荷したセンサーを100 nM Fabに3分間曝露し、その後、それらをオフ速度測定のために3分間アッセイ緩衝液に移した。1:1結合モデルを用いて全ての動態を分析した。
【0253】
図4は、溶液中のIgGにコンジュゲートされたN末端ビオチン化フィブリンP2ペプチド(100 nM)または溶液中のFAB (一価)にコンジュゲートされたN末端ビオチン化フィブリンP2ペプチド(100 nM)を用いたForteBio KD測定の結果を示す。図5は、N末端ビオチン化フィブリンP2ペプチドに結合するoctet Fab溶液(100 nM)の結果を示す。
【0254】
これらの結果は、親和性成熟したヒト化抗体クローンが親ヒト化抗体と比較して、フィブリンP2ガンマペプチドに対する結合親和性を向上させたことを示している。
【0255】
PSR結合アッセイ
PSRアッセイを既述のように行った(Xu Y, et al. (2013) Addressing polyspecificity of antibodies selected from an in vitro yeast presentation system: A FACS-based, high-throughput selection and analytical tool. Protein Eng Des Sel 26(10):663-670を参照のこと)。要するに、CHO細胞から可溶性膜タンパク質を調製した。NHS-LCBiotin (Pierce, Thermo Fisher)を用いて濃縮した膜画分をビオチン化した。この多重特異性試薬をIgG提示酵母とともにインキュベートし、続いて洗浄を行った。次に二次標識ミックス(Extravidin-R-PE, 抗ヒトLC-FITC、およびヨウ化プロピジウム)を混合物に添加した。HTSサンプルインジェクタを用いFACSCanto II分析機(BD Biosciences)でサンプルを分析した。フローサイトメトリーデータをR-PEチャネルの平均蛍光強度(MFI)について分析し、非特異的結合を評価した。MFI値を、低、中、および高PSR MFI値を示す3つの参照抗体に基づいて0から1に正規化した。
【0256】
示差走査蛍光定量法(Dynamic Scanning Fluorimetry)
20×Sypro Orange 10 uLを0.2~1 mg/mL mAbまたはFab溶液20 uLに添加する。RT-PCR機器(BioRad CFX96 RT PCR)を用いて、サンプルプレートの温度を40℃から95℃まで0.5℃刻みで上昇させ、各温度で2分間平衡化する。未加工データの一次微分の負の値を用いてTmを抽出する。
【0257】
AC-SINS
AC-SINSアッセイを既述のように実施した(Liu Y, et al. (2014) High-throughput screening for developability during early-stage antibody discovery using self-interaction nanoparticle spectroscopy. MAbs 6(2):483-492を参照のこと)。要するに、金ナノ粒子(Ted Pella Inc.)を80%捕捉抗ヒトヤギIgG Fc (Jackson ImmunoResearch)および20%ポリクローナルヤギ非特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)でコーティングした。その後、関心対象の抗体を粒子とともに2時間インキュベートし、SoftMax Pro6ソフトウェアを備えたMolecular Devices SpectraMax M2を用いて波長シフトを測定した。自己相互作用クローンは、PBS サンプルから離れるほど高い波長シフトを示す。
【0258】
HIC (疎水性相互作用クロマトグラフィー)
このアッセイの方法論は、以前に記載されている(Estep P, et al. (2015) An alternative assay to hydrophobic interaction chromatography for high-throughput characterization of monoclonal antibodies. MAbs 7(3):553-561を参照のこと)。手短に言えば、IgGサンプル(1 mg/mL) 5 μgを移動相A溶液(1.8 M硫酸アンモニウムおよび0.1 Mリン酸ナトリウム、pH 6.5)にスパイクインして、分析前に約1 Mの最終硫酸アンモニウム濃度を達成した。UV吸光度を280 nmでモニタリングしながら1 mL/分の流速で20分間かけて移動相Aおよび移動相B溶液(0.1 Mリン酸ナトリウム, pH 6.5)の直線勾配によりSepax Proteomix HICブチル-NP5カラムを用いた。
【0259】
実施例3: フィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)の治療的処置
次に、フィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)マウスモデルにおけるミクログリア活性化およびマクロファージ浸潤(図6)を治療的に阻害するヒト化抗フィブリン抗体の能力を評価した。FIEを誘発するために、マウスをアベルチンで麻酔し、定位固定装置に入れた。プラスミノゲンを含まないフィブリノゲンを、エンドトキシンを含まない蒸留水に溶解し、ACSF(人工脳脊髄液)で5 mg/mlに希釈した。フィブリノゲン(5 mg/mlの1 μl)をPaxinosおよびWatsonにしたがい、33ゲージの注射針に取り付けた10 μlのハミルトン注射器を用いて脳内の座標: 前後方向、-1.0 mm; 中外側、-0.7 mm; 背腹側、ブレグマから-1.325 mmの位置に、0.3 μl/分の速度で注入した。
【0260】
予防的脳室内(i.c.v.)注入の場合、フィブリノゲン注入30分前に、33ゲージの注射針に取り付けた10 μlの注射器を用いて抗体10 ugを脳室内(前後方向、-2.0 mm; 中外側、0 mm, 背腹側、-2.0 mm)に、0.3 μl/分の速度で送達した。予防的静脈内(i.v.)注入の場合、フィブリノゲン注入1時間前に0.3 mL 29 gインスリン注射器を用いて眼窩後方に抗体を注入した。
【0261】
脳脊髄炎を誘発するために脳梁に定位固定フィブリノゲンを注入した。合計78匹のマウスを13群に分け、次いで各群n = 6匹のマウスに、抗フィブリンヒト化抗体を、10 mg/kgまたは30 mg/kgのいずれかでi.v.注入した。脳組織の収集および調製を、注入3日後に実施した。サンプル除外: 5匹のマウス; 術後1日目 (C 10 mg/kg, n =1)および術後2日目(B 10 mg/kg, n =1; D 10 mg/kg, n = 1)に死亡しているのが発見された。間違った部位への注入(B 10 mg/kg, n = 1; D 10 mg/kg, n =1)。盲検化および定量化: 全てのFIE実験、画像収集および定量化は盲検化された方法で実施された。免疫組織化学(IHC)および定量化は以下のように実施した: 73匹のマウスのサンプルをIHCおよび定量化のために含めた。冠状切片(30 um)をクリオスタットで調製した。組織をIba-1 (ミクログリアマーカー、1:750希釈)およびMac-2 (マクロファージ浸潤マーカー、1:750希釈)で染色した。次いで、Iba-1 (Iba-1+ 領域)およびMac-2 (Mac-2+ 領域)の免疫反応性を計算した。10 mg/kgまたは30 mg/kgのいずれかの親和性成熟ヒト化抗フィブリン抗体クローンで処置したマウスの組織では、ミクログリアとマクロファージの両方の減少が検出された
【0262】
これらの結果は、本明細書に記載するヒト化抗体変種が、FIEを有するマウスのミクログリアおよびマクロファージ浸潤を治療的に低減できることを示している。
【0263】
実施例4: 再発寛解型実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の予防的処置
プロテオリピドタンパク質(PLP)のアミノ酸番号139~151のエピトープによって誘導される再発寛解型EAE (「PLP139-151 EAE」)を予防的に処置するヒト化抗フィブリン抗体の能力を評価した。熱不活化結核菌H37Ra 400 ugを補充した完全フロイントアジュバント中15 ugのPLP139-151を用いた皮下免疫により、8~9週齢雌性SJL/JマウスにおいてEAEを誘導した(0日目)。免疫2日後に、マウスにIP投与を介して百日咳毒素5 ngを注入する。抗体は、0日目から始めて週に2回、0.2、1、または5 mg/kgで予防的にIP投与した。陽性対照としてデキサメタゾン(0.5 mg/kg)を毎日IP投与した。実験デザイン: 6群: 各群n = 10匹のマウス、合計60匹のマウス。用量計画: デキサメタゾン(5 mg/kg、毎日)、ヒト化抗フィブリン抗体(A、B、C、D_5 mg/kg、3日ごと)。EAE障害スコアを試験終了まで毎日モニターした。試験をピークEAE 3日後に試験14~16日目あたりで終結し、組織病理学的分析のために脊髄を採取した。
【0264】
サンプル除外: 3匹のマウス; 12日目(抗体B, n = 1)、15日目(抗体C, n = 1)、または16日目(抗体A, n = 1)に死亡しているのが発見された。盲検化および定量化: 全てのEAE実験(抗体処置および臨床スコア)は盲検化された方法で実施された。組織処理のために57個の脊髄サンプルを調製した。
【0265】
抗体(3日ごとに5 mg/kg i.p.)を予防的に注入したマウスにおいてPLP EAEの臨床スコアを評価した(図7)。抗フィブリンヒト化抗体を注入したマウスの臨床スコアは、PBSまたはIgG1のみを注入した対照マウスと比べて低減された。疾患の発症までの時間も評価した(図8)。25%~50%超のマウスに麻痺があったPBS、IgG1、またはデキサメタゾンのみを注入した対照マウスと比較して、抗フィブリンヒト化抗体を注入したマウスには麻痺がなかった(図8)。図9は、PBSのみ、デキサメタゾン、抗体クローン6043 (左)または対照抗体ヒトIgG1 (右)の予防的注入に供されたマウスの臨床スコアを示す。図10は、PBSのみ、デキサメタゾン(dexa)、抗体クローン6043 (表示濃度; 5 = 5 mg/kg、1 = 1 mg/kgおよび0.2 = 0.2 mg/kgで)または対照抗体ヒトIgG1 (5 mg/kg)の予防的注入に供された麻痺マウス(完全麻痺- 左)または(後肢部分麻痺- 右)の割合を示す。
【0266】
これらの結果は、抗フィブリンヒト化抗体が脳脊髄炎の予防的処置に有効であることを示す。
【0267】
実施例5: ヒト化抗フィブリン抗体はBMDM細胞におけるフィブリン誘導性のIL-12発現を低減する
骨髄由来マクロファージ(BMDM)細胞株におけるインターロイキン(IL)-12bの遺伝子発現を変化させる親和性成熟したヒト化抗フィブリン抗体の能力を評価した(図11~13)。BMDM細胞をプレーティングする前に、フィブリンでコーティングされたウェルを有する細胞培養プレートをヒト化抗フィブリン抗体とともに2時間プレインキュベートした。細胞をヒト化抗フィブリン抗体またはアイソタイプ対照、フィブリノゲン、トロンビンおよびCaCl2とともに6時間インキュベートし、その後、細胞を収集し、遺伝子発現分析のためにRNAを単離した(図11)。50 ug/mLのアイソタイプ対照とともにインキュベートした細胞は、IL-12b発現の30倍を超える増加を示したが、50 ug/mLの濃度の抗体クローン60143および61278とともにインキュベートした細胞は、IL-12b発現の15~20倍の増加を示した(図10)。別の実験では、10 ug/mLのアイソタイプ対照とともにインキュベートした細胞はIL-12b発現の約55倍の増加を示したが、10 ug/mLの濃度の抗体クローン60143および61278とともにインキュベートした細胞はIL-12b発現の約20~45倍の増加を示した(図12)。抗体クローン60143および61278の濃度が増加するにつれて、IL-2b発現の倍変化も低減した(図13)。
【0268】
これらの結果は、フィブリン誘導性のIL-12b発現が骨髄由来マクロファージにおける抗フィブリン抗体の遮断により低減することを確認するものである。
【0269】
実施例6: 神経変性疾患の処置
本明細書に記載する精製されたヒト化抗体変種は、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症またはアルツハイマー病)の処置のために患者に投与される薬学的組成物に製剤化される。本明細書に記載するヒト化抗体変種を含む薬学的組成物は、神経変性疾患の症状を効果的に軽減するのに十分な用量で投与される。薬学的組成物は耐容性良好であり、患者において重大な有害副作用を誘発しない。
【0270】
実施例7: 大腸炎の処置のためのヒト化抗体変種
ヒト化抗体変種が大腸炎のマウスモデルにおいて大腸炎を処置する能力を調べた(図14)。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎処置を開始するために、8~10週齢雌性C57BL/6マウスを少なくとも4日間動物施設に馴化させ、体重を測定し、体重に基づいて処置群に無作為に割り付けた。急性(7日間)と慢性(28日間)の2種類の試験を行った。
【0271】
2.5% DSSを飲料水に7日間添加することによって急性DSS試験を実施する。抗体を10および30 mg/kgで2日ごと(Q2D)にIP投与した。マウスを7日目にイソフルラン麻酔、失血、続いて頚椎脱臼により安楽死させた。結腸を摘出し、病理組織診断のために分析した。
【0272】
慢性DSS試験は、2.0% DSSを飲料水に1週間添加し、その後1週間通常の飲料水に置き換え、さらに1週間2% DSSを添加し、その後さらに1週間通常の飲料水で終了することによって実施した。本明細書に記載するヒト化抗体変種を、0日目から開始して週2回、30および5 mg/kgで予防的にIV投与した。マウスを28日後にイソフルラン麻酔、失血、続いて頚椎脱臼により安楽死させた。結腸を摘出し、病理組織診断のために分析した。
【0273】
これらの結果は、本明細書に記載するヒト化抗体変種が大腸炎の処置に有効であることを確認するものである。
【0274】
実施例8: 選択された抗フィブリン抗体の薬物動態およびエクスビボ生体内分布
材料および方法
[125I]SIB-60143および[125I]SIB-61278標識プロトコル
いずれの場合にも10 μL (35 MBq I-125)を利用して、4回の125I-SIB生成を実施した。より小さなバッチを標識して、全体の効率および再現性を高めた。2反応の2ペアを合わせ、HPLCによって精製した。いずれの場合にも乾燥125I-SIBの収量は25 MBqであった。
【0275】
2 M HEPESを用いて、60143および61278原液(各0.5 mL)のpHを8.5から8.0に下げた。次いで、pH調整した溶液をそれぞれ、乾燥した125I-SIBに添加し、室温で1時間インキュベートした。標識効率をiTLCによって測定し、60143および61278についてそれぞれ59%および77%であることが分かった。次いで、反応混合物をNAP-5カラムで精製し、PBSで溶出した。
【0276】
画分4~8を合わせて、それぞれ1.25 mL中に12.6 MBqの[125I]SIB-60143および18.0 MBqの[125I]SIB-61278を得た。放射化学的純度をiTLCおよびSEC-HPLCによって測定した。
【0277】
I-125標識タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈して、低線量ストックでは1.33 mg/mLおよび高線量ストックでは3.75 mg/mLに達した。
【0278】
動物モデル
72匹の雌性C57BL/6マウスをCharles River UKから受け取った。
【0279】
インビボ高用量パイロット安全性試験
2匹の雌性C57BL/6マウスに30 mg/kgの60143を静脈内注射し、2匹に30 mg/kgの61278を静脈内注射した。動物を注射後最初の一時間枠(注射後0~1時間)および第4の一時間枠(注射後4~5時間)で継続的にモニタリングした。注射後1日および2日の時点でマウスに副作用がないか毎日検査し、その時点でマウスを安楽死させた。
【0280】
インビボ試験
薬物動態分析のために、68匹の雌性C57BL/6マウス(19.0 ± 1.3 g)に、10または30 mg/kgの[125I]SIB-60143または[125I]SIB-61278を注射し、さまざまな時点(5分、30分、1時間、4時間、1日、3日、7日、および14日; 時点ごとにn=2)で殺処理した。血液、血漿、タンパク質不含血漿、およびタンパク質の放射能をガンマ線計数機により計数した。試験設計に関するさらなる詳細を下記表1に示す。
【0281】
これらの動物(18.6 ± 1.3 g)のうち32匹も生体内分布試験に含めた。全てのマウスに10または30 mg/kgの[125I]SIB-60143または[125I]SIB-61278を注射し、さまざまな時点(1日、3日、7日、および14日; 時点ごとにn=2)で殺処理した。試験設計に関するさらなる詳細を下記表2に示す。
【0282】
(表1)PK分析の試験設計概要
【0283】
(表2)生体内分布試験設計の概要
【0284】
第1群および第2群の全ての動物に1日目に覚醒状態で注射した。第3群および第4群の生体分布動物(1日、3日、7日、および14日)にも1日目に覚醒状態で注射した。第3群および第4群のPKのみの動物(5分、30分、1時間、4時間)には2日目に覚醒状態で注射した。異なる注射日に同じ製造の試験品製剤を用いた。
【0285】
用量投与
用量投与日に各動物の体重を測定した。動物の体重は16.4~22.5 gであった。単回静脈内(IV)用量を、0.5 mL注射器を用いることにより投与して、第1群および第2群の場合10 mg/kgならびに第3群および第4群の場合30 mg/kgの適切な投与量を与えた。投薬注射器は、各対象に投与された量を決定するため、注射前と注射後に重量を測定した。
【0286】
エクスビボサンプル調製
動物を、臓器切除の前に、心臓穿刺とその後の放血によって殺処理した。ガンマ線計数のために以下の臓器: 脳、心臓、肝臓、腎臓、筋肉、尾、胃、大腸、小腸、盲腸、および脾臓を採取した。
【0287】
分析
注入線量パーセント(%ID)および1グラムあたりの注入線量パーセント(%ID/g)の単位で結果を提示する。これらの単位の定義は、下記式において見出すことができる:
エクスビボガンマ線計数データからの各分析領域の%IDは、式1に記載のように定義することができる:
式中、取り込み = 特定のガンマ線計数サンプル中の放射能(MBq)を、注入時に減衰補正したもの。注入線量 = 対象に注入された放射能(MBq)。
【0288】
エクスビボガンマ線計数データからの各分析領域の%ID/gは、式2に記載のように定義することができる:
式中、取り込み = 特定のガンマ線計数サンプル中の放射能(MBq)を、注入時に減衰補正したもの。注入線量 = 対象に注入された放射能(MBq)。重量 = g単位の、ガンマ線計数された組織のサンプル重量。
【0289】
μg/mL単位の濃度値は、式3にしたがってエクスビボガンマ線計数データに対して定義することができる:
式中、注入線量 = 対象に注入された抗体質量(μg)。仮定: 組織密度1 g/mL。
【0290】
生体内分布のためのガンマ線計数分析
採取した各組織の放射能を計数毎分(CPM)の単位で測定した。計数を注入物質の質量(g/CPM)に換算するための係数を計算するために、放射性トレーサーの三つ組のアリコートもガンマ線計数機においてアッセイした。値をバックグラウンド放射線について補正し、注入線量パーセント(%ID)および1グラムあたりの注入線量パーセント(%ID/g)に換算した。
【0291】
PK試験のためのガンマ線計数分析
採取した各組織の放射能を計数毎分(CPM)の単位で測定した。計数を注入物質の質量(g/CPM)に換算するための係数を計算するために、放射性トレーサーの三つ組のアリコートもガンマ線計数機においてアッセイした。その後、値をバックグラウンド放射線について補正し、注入線量パーセント(%ID)および1 グラムあたりの注入線量パーセント(%ID/g)に換算した。
【0292】
PK分析の場合、マウス2匹から血液サブサンプルのガンマ線計数による血液中の放射性トレーサーの濃度(%ID/g)をプールし、以下のように計算した:
【0293】
サブサンプリングした血液および血漿の%ID値も、それぞれ総(全身)血液および血漿の値に外挿した。外挿のために、血液量/体重の比 = 0.072 mL/kgを用いた(Diehl et al., 2001)。全血漿の計算には、ヘマトクリット値0.387を用いた。
【0294】
ノンコンパートメント分析
%ID/mLの値は、ノンコンパートメント分析の前に以下の式を用いてμg/mLの単位に換算した:
【0295】
末端クリアランス速度λzを決定するために、Phoenix WinNonlin (Certara)規則を用いPythonによりμg/mL値に対して回帰を実施した。PKパラメータを以下のように計算した。
【0296】
結果
PK分析
放射性標識抗体[125I]SIB-60143および[125I]SIB-61278について、10 mg/kgおよび30 mg/kgでPKパラメータの範囲を計算した(図15A図15B、および表3)。放射能の95%超がタンパク質と結合しており、インビボでの不安定性の徴候はなかった(図15Aおよび15B)。両抗体とも両用量レベルで注入24時間後に試験品の約50~70%が血液および血漿から除去された。両用量での血中および血漿中の[125I]SIB-60143の排出半減期は275~375時間の範囲であった。[125I]SIB-61278の排出半減期は、両用量レベルで他の抗体よりも長かった; 血漿中では550~600時間および血液中では775~825時間であった。血液および血漿中の各抗体の2つの用量レベルを独立して比較した場合、クリアランス値は同様であった。
【0297】
(表3)10 mg/kgおよび30 mg/kgでの[125I]SIB-60143および[125I]SIB-61278のNCA分析結果
【0298】
生体内分布
両抗体のエクスビボ生体内分布を注入後24、72、168、および336時間の時点で決定した。図16Aは、マウスにおける10 mg/kgでの[125I]SIB-60143を経時的に示す。図16Bは、マウスにおける30 mg/kgでの[125I]SIB-60143を経時的に示す。図16Cは、マウスにおける10 mg/kgでの[125I]SIB-61278を経時的に示す。図16Dは、マウスにおける30 mg/kgでの[125I]SIB-61278を経時的に示す。分布パターンは両抗体とも両用量で同様であり、脳内濃度は低く(0.39 ± <0.01~0.91 ± 0.51 %ID/g)、取り込みは心臓(3.50 ± 0.03~10.69 ± 2.02 %ID/g)、腎臓(3.28 ± 0.01~8.40 ± 1.37 %ID/g)、肝臓(1.85 ± 0.01~5.12 ± 0.85 %ID/g)および脾臓(1.77 ± 0.05~5.27 ± 0.55 %ID/g)であった。用量を増加しても濃度の違いは観察されなかった。14日時点の61278の取り込みは、全ての臓器において60143よりも高く、排出半減期が長いことと一致していた。
【0299】
両抗体とも両用量レベルで注入24時間後に血液および血漿から試験品の50~70%が除去された。全ての用量範囲での血液および血漿中の[125I]SIB-60143の排出半減期は、275~375時間の範囲であった。[125I]SIB-61278の排出半減期は、両用量レベルで他の抗体よりも長かった; 血漿中では550~600時間および血液中では775~825時間であった。生体内分布データは、両用量レベルにおいて両抗体間で同等であった。14日時点の[125I]SIB-61278の取り込みは、全ての臓器において[125I]SIB-60143よりも高く、排出半減期が長いことと一致していた。
【0300】
実施例9: 抗体クローン60143のFabの結晶構造
フィブリノゲンガンマペプチドP2と複合体を形成した、重鎖および軽鎖可変ドメインを含む抗体クローンABI-60143のFabのX線結晶構造を、1.5 Åの分解能で解明した。記載されている結晶は、0.1 Mカコジル酸ナトリウムpH 5.5および25% PEG 4000を含む沈殿剤溶液を用い、96ウェルプレート内で蒸気拡散のハンギングドロップ法を使って成長させた。結晶は追加の凍結保護剤なしに、成長滴から直接ループに捕獲し、液体窒素に注入することにより凍結冷却された。データセットをスイス光源(SLS)のビームラインX06DA (PXIII)で収集した。
【0301】
MOSFLM (Battye et al., 2011) (CCP4)およびAIMLESS (Evans & Murshudov, 2013) (CCP4)でのデータ処理により、最も可能性の高い空間群はP212121であり、単位格子寸法a = 67.9 Å、b = 73.3 Å、c = 93.6 Åおよびα = β = γ = 90.0°であり、465741.4 Å3の総格子体積をもたらすことが示された。マシューズ係数(2.3 Å3/Daおよび溶媒含量46.6%)の計算により、非対称単位あたりほぼ確実に1つの完全なFab-ABI-60143-P2複合体があることが示された。分子置換法(MR)で用いるためのモデルは、PDBに対してFab重鎖および軽鎖の配列を検索するBLASTによって選択された。最も高い配列同一性を有するモデルは、6ani (Fab重鎖)および3pp3 (Fab軽鎖)であった。PDBにある多数のFab結晶構造から、可変ドメインと定常ドメインの間に存在する肘角度に大きなばらつきがあることが明らかになった。この肘角度のばらつきにより、それ以外には相同性の高い2つのFab断片の全体的な三次構造が大きく異なり、MRを失敗させる原因となりうる。この理由から、重鎖と軽鎖の可変ドメインと定常ドメインの間のヒンジ領域を取り除いた。4つの別個のMR検索アンサンブル(VH、CH、VLおよびCLドメイン)を作り出した。COOTにおける目視検査後にアミノ酸残基を重鎖および軽鎖可変ドメインモデルのCDRからトリミングして、MRを失敗させる原因となる可能性のあるP2との界面での潜在的な衝突を防いだ。完全なFabを構築するために必要であるインプット検索アンサンブルのうち4つ全てを、PHASER (McCoy et al., 2007) (CCP4)を用いてMRにより正しく位置付けた。MRアウトプットモデルには、REFMAC5 (Vagin et al., 2004) (CCP4)を用いる30サイクルのゼリーボディ精密化を与えた。CHAINSAW (Stein, 2008) (CCP4)を用いて、タンパク質配列をFabのものに対応するように変異させた。電子密度マップにおいて視認されたタンパク質の順序付けられた領域の全てが完成するまで、モデル構築および精密化の連続サイクルによってFab ABI-60143モデルを繰り返し改善した。COOTにおいてP2ペプチド鎖を手作業でモデルに付加し、完全な複合体モデルをREFMAC5で精密化した。最終的なタンパク質モデルには、鎖A (ペプチドP2)からの残基410~421、鎖H (Fab重鎖)からの残基1~127および134~214ならびに鎖L (Fab軽鎖)からの残基1~213が含まれていた。最終Rwork = 16.8%、Rfree = 20.5%。
【0302】
Fab ADI-60143およびペプチドP2は非対称単位あたり各1コピーであった。Fab ABI-60143 CDRの正準構造をPyIgClassifyデータベース(Adolf-Bryfogle et al., 2014)にしたがって分析した。重鎖CDRは以下のように分類された: H1-13-1 (CDR-長さ-クラスタ)およびH2-10-1。CDR H3は分類されなかった。軽鎖CDRは以下のように分類された: L1-16-1、L2-8-1およびL3-9-cys7-1。
【0303】
各P2ペプチドは単一のFabに結合した。この折り畳みはPDB ID: 1fzcなどの、公表されているフィブリノゲンガンマ鎖結晶構造に見られるものと類似していたが、同じではなかった。
【0304】
(表4)Fab ADI-60143およびペプチドP2界面分析
【0305】
(表5)Fab ADI-60143関与界面残基
【0306】
(表6)データ収集、処理、および精密化の統計
【0307】
実施例10: 抗体クローンADI-61278のFabの結晶構造
フィブリノゲンガンマペプチドP2と複合体を形成した、重鎖および軽鎖可変ドメインを含むFab抗体クローンADI61278のX線結晶構造を、1.8 Åの分解能で解明した。記載されている結晶は、1% (w/v)トリプトン、0.001 Mアジ化ナトリウム、0.05 M HEPESナトリウム pH 7.0および20% PEG 3350を含む沈殿剤溶液を用い、96ウェルプレート内で蒸気拡散のハンギングドロップ法を使って成長させた。結晶は、4部の沈殿剤溶液および1部の100% (v/v)グリセロールを含有する溶液に短時間移すことによって凍結冷却し、その後、ループに捕獲し、液体窒素に注入した。データセットをダイヤモンド光源(DLS)のビームラインi03で収集した。
【0308】
MOSFLM (Battye et al., 2011) (CCP4)およびAIMLESS (Evans & Murshudov, 2013) (CCP4)でのデータ処理により、最も可能性の高い空間群はP21221であり、単位格子寸法a = 47.0 Å、b = 79.0 Å、c = 144.3 Åおよびα = β = γ = 90.0°であり、534840.2 Å3の総格子体積をもたらすことが示された。マシューズ係数(2.8 Å3/Daおよび溶媒含量55.8%)の計算により、非対称単位あたりほぼ確実に1つの完全なFab-ADI61278-P2複合体があることが示された。Fab-ADI61278モデルを分子置換法(MR)で用いるために選択した。PDBにある多数のFab結晶構造から、可変ドメインと定常ドメインの間に存在する肘角度に大きなばらつきがあることが明らかになった。この肘角度のばらつきにより、それ以外には相同性の高い2つのFab断片の全体的な三次構造が大きく異なり、MRを失敗させる原因となりうる。この理由から、重鎖と軽鎖の可変ドメインと定常ドメインの間のヒンジ領域を取り除いた。2つの別個のMR検索アンサンブル(VH-VLヘテロ二量体およびCH-CLヘテロ二量体)を作り出した。完全なFabを構築するために必要であるインプット検索アンサンブルの両方を、PHASER (McCoy et al., 2007) (CCP4)を用いてMRにより正しく位置付けた。MRアウトプットモデルには、REFMAC5 (Vagin et al., 2004) (CCP4)を用いる30サイクルのゼリーボディ精密化を与えた。CHAINSAW (Stein, 2008) (CCP4)を用いて、タンパク質配列をFab-ADI61278のものに対応するように変異させた。電子密度マップにおいて視認されたタンパク質の順序付けられた領域の全てが完成するまで、モデル構築および精密化の連続サイクルによってFab ADI61278モデルを繰り返し改善した。COOTにおいてP2ペプチド鎖を手作業でモデルに付加し、完全な複合体モデルをREFMAC5で精密化した。最終的なタンパク質モデルには、鎖A (ペプチドP2)からの残基410~421、鎖H (Fab重鎖)からの残基1~126および133~214ならびに鎖L (Fab軽鎖)からの残基1~213が含まれていた。最終Rwork = 19.1%、Rfree = 24.0%。
【0309】
Fab ADI61278およびペプチドP2は非対称単位あたり各1コピーであった。Fab ADI61278 CDRの正準構造をPyIgClassifyデータベース(Adolf-Bryfogle et al., 2014)にしたがって分析した。重鎖CDRは以下のように分類された: H1-13-1 (CDR-長さ-クラスタ)、H2-10-1およびH3-8-1。軽鎖CDRは以下のように分類された: L1-16-1、L2-8-1、およびL3-9-cys7-1。各P2ペプチドは単一のFabに結合した。この折り畳みはPDB ID: 1fzcなどの、公表されているフィブリノゲンガンマ鎖結晶構造に見られるものと類似しているが、同じではない。
【0310】
(表7)Fab ADI-61278およびペプチドP2界面分析
【0311】
(表8)関与界面残基の一覧
【0312】
(表9)データ収集、処理統計、および精密化統計
【0313】
実施例11: ADI-60143およびADI-61278-FabはともにP2-ペプチドのC末端の位置で結合し、CDR-3領域において最も大きな違いを示す
上述の抗体クローンADI-60143およびADI-61278のFABの結晶構造を重ね合わせ、P2ペプチド結合部位を図17および18に示すように比較した。これらの結果は、ADI-60143およびADI-61278-FabはともにP2ペプチドのC末端の位置で結合することを示し、ほとんどの違いが2つのFabのCDR-3領域に位置することも示している。
【0314】
P2ペプチドへのADI-60143およびADI-61278 Fabの結合を、Octet RED384を用いて実施例2に記載のように決定した(図19)。CDR1およびCDR3におけるアミノ酸の変異は、P2-ペプチドと相互作用するADI-60143とADI-61278-Fabとの間の結合オン速度およびオフ速度の差異を説明する。
【0315】
ADI-60143 Fabおよび全長ADI-60143 IgGのラット、マウスまたはヒトP2ペプチドおよび伸長P2ペプチドへの結合もELISAによって測定した(図20および21)。異なる種からの3つのP2ペプチドについても同様の結合プロファイルが観察された。しかしながら、3種の伸長P2ペプチドは、ADI-60143 IgGに十分に結合しなかった(図21)。
【0316】
実施例12: ADI-60143による治療的処置は、フィブリン誘発脳炎(FIE) PDモデルにおけるミクログリア活性化およびマクロファージ動員を阻害する
神経変性疾患および炎症の処置におけるミクログリア活性化およびマクロファージ動員の阻害に対する親和性成熟抗体クローンの効力を試験するために、フィブリン誘発脳炎(FIE)のマウスモデルを用いた。1群6匹、合計78匹のマウスに、脳梁への定位注射によりフィブリノゲンを投与した。抗体を静脈内(I.V.)注射によって投与した。フィブリノゲン注射4時間後、マウスに親和性成熟抗フィブリンヒト化抗体(10 mg/kgまたは30 mg/kg)をI.V.注射した。注射後3日の時点で脳組織を調製した。免疫組織化学および定量化のために73匹のマウスのサンプルを含めた。冠状切片(30 um)をクリオスタット上で調製した。切片を抗Iba-1抗体(ミクログリアマーカー、1:750)とともにインキュベートしてミクログリア活性化および抗Mac-2抗体(マクロファージ浸潤マーカー、1:750)を検出した。次に、Iba-1 (Iba-1+ 領域)およびMac-2 (Mac-2+ 領域)の免疫反応性を計算し、画像の収集および定量化を盲検法で実施した。
【0317】
図22に示されるように、30 mg/kgのADI-60143を注射したマウスでは、ミクログリア活性化とマクロファージ動員の両方の有意な低減がみられた。この低減は、親和性成熟を受けていない親ヒト化5B8抗体(THN227)を注射したマウスで測定されたものよりも大きかった。これらの結果は、親和性成熟抗体クローン60143が、神経変性の疾患もしくは状態および/または神経炎症の処置に向けたミクログリア活性化およびマクロファージ動員の阻害に治療的に有効であることを確認するものである。
【0318】
実施例13: 抗体クローンADI-60143は多発性硬化症の前臨床モデルにおいて有効である
多発性硬化症(MS)の処置に対する親和性成熟抗体クローンの治療効力を試験するために、MSの前臨床モデルマウスである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いた。EAEは、0日目にPLP139~151/CFA (Hooke Kit(商標) PLP139~151/ CPA Emulsion, カタログ番号EK-0120, Hooke Laboratories, Lawrence MA)の免疫によって誘導した。EAEマウスにPBSのみ、アイソタイプ対照-ヒトIgG1 (huIgG)のみ、抗体クローン60143 (ABI-60143)、またはデキサメタゾンを、週2回、5 mg/kgの腹腔内注射によって、デキサメタゾンの場合は2日目に始めて44日目まで、他の全群の場合は33日目まで続けて、治療的に注射した。マウスの脊髄組織を、最大疾患時のEAEを有するマウスまたは健常マウスから採取し、脊髄組織の免疫組織化学(IHC)染色を実施して、脊髄組織への抗体薬物の分布と脱髄を判定した。
【0319】
IHC染色の場合、新たに採取した非固定組織をクライオモールド内のOCTコンパウンドに入れた。凍結させるためにドライアイスと混合したイソペンタンにクライオモールドを入れ、凍結組織を-80℃に保った。組織切片をクライオスタット内で厚さ10 μmに切断し、スライドにマウントした。スライドをPBS中4%の氷冷パラホルムアルデヒド中、4℃で10分間直ちに固定することにより染色した。スライドをブロッキング緩衝液(PBS中3%のウシ血清アルブミン; Millipore Sigma, A9576)中、25℃で30分間インキュベートすることにより、組織への一次抗体の非特異的結合をブロックした。切片作製前に組織に注入したビオチン化抗体を検出するために、Cy3結合ストレプトアビジン(1:100; SA1010, Thermo Fischer Scientific)をPBS中で希釈し、組織切片に塗布し、25℃で30分間インキュベートした。フィブリン染色の場合、PBS中で希釈した抗体(1:2000, ウサギポリクローナル抗フィブリノゲン)を組織切片に加え、25℃で60分間インキュベートした。次いで、FITCロバ抗ウサギIgG (PBS中1:500, Jackson ImmunoResearch)を各切片に加え、25℃で30分間インキュベートした。
【0320】
図24に示されるように、親和性成熟抗体(ABI-60143)は、最大疾患時のEAEを有するマウスの脊髄に局在していた。これは、親和性成熟した抗体が罹患した脊髄組織に十分に分布していることを確認するものである。
【0321】
組織切片の脱髄パーセントは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の染色が欠けている領域のパーセントの決定によって定量化された。図24Aに示されるように、抗体クローン60143を投与したマウスでは、脱髄パーセントが用量依存的に有意に低減した。
【0322】
マウスを後肢麻痺および臨床スコアについても評価した。図24Bに示されるように、親和性成熟した抗体クローン60143を投与したEAEマウスでは、脱髄および完全な後肢麻痺の用量依存的な減少があった。
【0323】
EAE臨床スコアを下記表に示した基準により評価した。
【0324】
陰性対照群(ビヒクルおよびアイソタイプ対照群)はいずれも、このモデルで予想されるようにEAEを発症した。EAEの第1波の平均最大重症度(MMS)は、ビヒクルおよびアイソタイプ対照群でそれぞれ2.4および2.5であった。再発率はビヒクル群およびアイソタイプ対照群で、それぞれ73%および60%であった。再発期間のMMSはビヒクル群およびアイソタイプ対照群で、それぞれ2.3および1.9であった。これらの群の疾患は、このモデルに典型的な経過および重症度を有していた。図25に示されるように、ABI-60143-LALA IgG (Fc安定化LALA変異を含む抗体クローン60143)を投与したマウスは、有意に低減された平均EAE臨床スコアによって実証されるように、疾患の発症が低減し、免疫後17日の時点で検出可能な疾患はなかった。
【0325】
親和性成熟抗体が炎症を軽減したことを確認するために、脊髄の頸部、胸部、および腰部領域からのセグメント(3セグメント)を調製し、H&E、および抗CD4/抗CD11b (二重標識)抗体で染色した。各H&E染色切片でおよそ20個の細胞の炎症巣を数えた。炎症性浸潤が20個を超える細胞からなっていた場合、20個の細胞の病巣がいくつ存在するかを推定した。図26Aに示されるように、アイソタイプ対照と比較して、抗体クローンABI-60143 IgGまたはABI-60143-LALA IgGを投与したEAEマウスの組織切片では炎症巣数の有意な低減があった。アイソタイプ対照と比較して、抗体クローンABI-60143 IgGまたはABI-60143-LALA IgGを投与したEAEマウスの組織切片では炎症促進性マーカーCD11bの有意な低減もあった(図26B)。これらの結果は、親和性成熟抗体ABI-60143 IgGおよびABI-60143-LALA IgGが多発性硬化症の前臨床モデルにおいて炎症を軽減できることを確認するものである。
【0326】
総合すると、これらの結果は、親和性成熟ヒト化抗フィブリン抗体が多発性硬化症の前臨床モデルにおいて治療的に有効であることを確認するものである。
【0327】
実施例14: 抗フィブリンP2処置はブドウ膜炎モデルにおいて炎症を減らす
実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)は、神経網膜を標的とする臓器特異的な自己免疫疾患である。この自己免疫応答は、動物が網膜抗原(この場合は光受容体間レチノイド結合タンパク質[IRBP])で免疫化されると誘発される。炎症性の眼状態または疾患における抗フィブリン処置の治療的役割を確認するために、抗フィブリン抗体の硝子体内投与後、ラット実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)モデルにおいて抗フィブリン親和性成熟抗体の効力を試験した。
【0328】
本研究では、52匹のLewisラットを6群、すなわちPBS (群1)、アイソタイプ対照(群2)、ABI-60143低用量(群3)、ABI-60143高用量(群4)、FTY-720陽性対照(群5)、およびナイーブ(群6)に分けた。群6を除く、全群の動物を、0日目にIRBPの完全フロイントアジュバント(CFA)乳濁液で免疫した。同様に、群1~4の動物には0日目にスポンサー試験品の単回硝子体内注射を行った。群5の動物には陽性対照FTY-720の1日1回経口投与を行った。8~10日後、免疫した動物は各眼にブドウ膜炎を発症した。発症した疾患の程度を追跡するために、ベースライン時、4日目、7日目、11日目、および14日目に全ての動物に対して臨床評価を実施した。臨床観察を以下のように実施した:
頻度: 各試験日に1回
手順: 検査官を盲検にしておくため、評価前に群を無作為に割り付けた。動物を解剖顕微鏡下で観察し、その前部臨床疾患に基づき0~4のスケールでスコアを付けた。臨床評価時に前房の写真を撮影した。
臨床観察スコアリング:
0~0.5: 疾患なし; 眼球は半透明である。虹彩の一部の血管が拡張することがある。
1: 虹彩の血管の充血; 瞳孔の異常収縮(または拡張)。
2: 前房にわずかなかすみ。
3: 中等度に不透明な前房、しかし瞳孔はまだ見える。
4: 不透明な前房および不明瞭な瞳孔。
【0329】
全ての動物を14日目に安楽死させ、安楽死直後に全眼(OU)を採取した。死亡を確認したら、各動物の両眼を注意深く摘出した。片眼は組織学的分析用に採取し、もう片眼はサイトカイン分析用に採取した。サイトカイン分析用の眼は半切除し、網膜を採取した。各眼をワックス包埋前に、顕微鏡検査に最適なように慎重に方向付けた。切片(5 μm)を切り出し、組織学的検査のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、下記に要約した以下のスケールにしたがい、Caspi, et al. (2012)によって記載されたようにスコアを付けた。組織学的分析は検査官には盲検とされた。臨床スコアリング/ブドウ膜炎の等級を以下のように決定した:
0: 疾患なし、正常な網膜構造。
0.5: 微量。1/4未満の網膜への軽度の炎症性細胞浸潤、光受容体損傷を伴うかまたは伴わない。
1: 1/4以上の軽度の炎症および/または光受容体外節損傷。
2: 1/4以上の軽度から中等度の炎症および/または外核層にまで及ぶ病変。
3: 1/4以上の中等度から顕著な炎症およびまたは内核層にまで及ぶ病変。
4: 1/4以上の重度の炎症および/または全層網膜損傷。
【0330】
図27に示されるように、低用量または高用量のマウス化ADI-60143 - LALA Fc安定化抗体クローンを投与したラットは、試験14日目に有意に低減された臨床ブドウ膜炎スコアを示した。これらの結果は、親和性成熟した抗フィブリン抗体が、ブドウ膜炎を有する対象において炎症を減少させ、ブドウ膜炎などの、眼の血管障害に関連する眼状態の前臨床モデルにおいて治療的に有効であることを確認するものである。
【0331】
本発明を、好ましい態様およびさまざまな代替の態様を参照して特に示し説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細のさまざまな変更をその中で加えることができると当業者には理解されるであろう。
【0332】
本明細書の本文内で引用される全ての参考文献、発行済み特許および特許出願はあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0333】
非公式な配列表
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A-1】
図4A-2】
図4B-1】
図4B-2】
図4C
図4D-1】
図4D-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024525188000001.app
【国際調査報告】