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特表2024-525221アルツハイマー病を治療するためのSORLAミニ受容体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アルツハイマー病を治療するためのSORLAミニ受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240703BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240703BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20240703BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240703BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240703BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/705
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N5/079
A61P25/28
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K38/16
A61K35/76
A61K35/12
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579846
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022068235
(87)【国際公開番号】W WO2023275350
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21183382.7
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,オラフ ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ジゼル ジェンセン,アンヌ メッテ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA22
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZB211
4C084ZB212
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087NA13
4C087ZA16
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、SORLAのミニ受容体をコードするポリヌクレオチドコンストラクトに関するものである。本発明はさらに、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含むベクター、細胞及び/または組成物に関するものである。本発明はさらに、SORLAのミニ受容体を表すポリペプチドに関するものである。本発明はさらに、医薬で使用するために、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含む前記ベクター、前記細胞及び/または前記組成物に関するものである。本発明はさらに、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和する際に使用するために、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含む前記ベクター、前記細胞及び/または前記組成物に関するものである。本発明はさらに、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療する方法に関するものである。本発明はさらに、細胞内のsAPPαを増加させる方法に関するものである。本発明はさらに、細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させる方法に関するものである。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現時に、ポリペプチドPをコードするポリヌクレオチドコンストラクトであって、前記ポリヌクレオチドが、
a.発現時に、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、または配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、あるいはその配列からなる第1のポリペプチドQ1をコードする第1のポリヌクレオチドと、
b.発現時に、配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2をコードする第2のポリヌクレオチドと、
c.発現時に、配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3をコードする第3のポリヌクレオチドと、
を含むか、あるいはそれらからなり、
前記ポリペプチドPが、700アミノ酸以下を含む前記ポリヌクレオチドコンストラクト。
【請求項2】
Pが、
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を含むか、もしくはその配列からなる、SorLAのFnIIIカセット、あるいは
FnIII-1、FnIII-2、FnIII-3、FnIII-4、FnIII-5もしくはFnIII-6から選択したFnIIIドメインであって、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16のアミノ酸配列に対応する前記FnIIIドメイン、またはこれらのいずれかの組み合わせと、
b.配列番号17のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの膜貫通ドメインと、
c.配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの細胞質尾部ドメインと、
を含むか、あるいはそれらからなる、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項3】
Pが、685アミノ酸以下である、先行請求項のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項4】
Pが、配列番号21のアミノ酸配列をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項5】
Pが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、先行請求項のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項6】
Pが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号21のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、先行請求項のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項7】
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、または配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、あるいはその配列からなる第1のポリペプチドQ1と、
b.配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2と、
c.配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3と、
を含むか、あるいはそれらからなるポリペプチドPであって、
700アミノ酸以下を含む前記ポリペプチドP。
【請求項8】
ポリペプチドQ1、ポリペプチドQ2及びポリペプチドQ3の融合タンパク質である、請求項7に記載のポリペプチドP。
【請求項9】
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を含むか、もしくはその配列からなる、SorLAのFnIIIカセット、あるいは
FnIII-1、FnIII-2、FnIII-3、FnIII-4、FnIII-5もしくはFnIII-6から選択したFnIIIドメインであって、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16のアミノ酸配列に対応する前記FnIIIドメイン、またはこれらのいずれかの組み合わせと、
b.配列番号17のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの膜貫通ドメインと、
c.配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの細胞質尾部ドメインと、
を含むか、あるいはそれらからなる、請求項7~8のいずれか1項に記載のポリペプチドP。
【請求項10】
685アミノ酸以下である、請求項7~9のいずれか1項に記載のポリペプチドP。
【請求項11】
配列番号21のアミノ酸配列をさらに含む、請求項7~10のいずれか1項に記載のポリペプチドP。
【請求項12】
配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、請求項7~11のいずれか1項に記載のポリペプチドP。
【請求項13】
配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号21のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、請求項7~12のいずれか1項に記載のポリペプチドP。
【請求項14】
請求項1~6のいずれかに記載のポリヌクレオチドコンストラクトを含むか、及び/または請求項7~13のいずれかに記載のポリペプチドPをコードするベクター。
【請求項15】
ウイルスベクター、プラスミド、コスミド及び人工染色体からなる群から選択されたものである、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
プラスミドベクターである、請求項14に記載のベクター。
【請求項17】
ウイルスベクターである、請求項14に記載のベクター。
【請求項18】
パッケージング能力が、1~40kb、例えば1~30kb、例えば1~20kb、例えば1~15kb、例えば1~10、例えば1~8kb、例えば2~7kb、例えば3~6kb、例えば4~5kbである、請求項14~17のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項19】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターからなる群から選択されたものである、請求項14~18のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項20】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ベクター(AAV)である、請求項14~19のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項21】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP及び/または請求項14~20のいずれか1項に記載のベクターを含む細胞。
【請求項22】
真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは霊長類動物細胞、より好ましくはヒト細胞からなる群から選択されたものである、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
哺乳動物細胞である、請求項21~22のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項24】
神経細胞である、請求項21~23のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項25】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター及び/または請求項21~24のいずれか1項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項26】
医薬組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項25~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
医薬で使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター、請求項21~24のいずれか1項に記載の細胞、及び/または請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和する際に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター、請求項21~24のいずれか1項に記載の細胞及び/または請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記アルツハイマー病が、早発型アルツハイマー病、晩期発症型アルツハイマー病及び家族性アルツハイマー病からなる群から選択した型のものである、請求項29に従って使用するためのコンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物。
【請求項31】
アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療する方法であって、それを必要とする個体に、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター、請求項21~24のいずれか1項に記載の細胞及び/または請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む前記方法。
【請求項32】
アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和するための医薬を製造するために、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター、請求項21~24のいずれか1項に記載の細胞、及び/または請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物を使用すること。
【請求項33】
細胞内のsAPPαを増加させる方法であって、細胞に、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドコンストラクト、請求項7~13いずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター、及び/または請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物を導入することで、前記細胞内のsAPPαを増加させることを含む前記方法。
【請求項34】
細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させる方法であって、細胞に、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドコンストラクト、請求項7~13のいずれか1項に記載のポリペプチドP、請求項14~20のいずれか1項に記載のベクター、及び/または請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物を導入することで、前記細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させることを含む前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質SORLA(A型リピートを有するソルチリン関連受容体)のFnIIIカセットドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関するものである。このベクターは、アルツハイマー病(AD)の治療、予防及び/または緩和における遺伝子療法に使用できる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質SORLA(A型リピートを有するソルチリン関連受容体)は、アルツハイマー病(AD)と関連することがよく知られている。このタンパク質は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)をエンドソーム外に輸送するために重要であり、このエンドソームでは、APPが、アミロイド形成性のプロセシングにより、病原性断片(すなわち、アミロイドβ-ペプチド(Aβ))となる。SORLAの補助によるこのAPP輸送により、β-セクレターゼによってAPPが切断されるのを確実に低減することによって、アミロイドβ(Aβ)ペプチドの生成が減少する。
【0003】
ADでは、脳内でAβが蓄積して、脳を損傷させるアミロイド斑が形成される。
【0004】
SORLAが、エンドソームによるリサイクルに関与する能力は、その細胞質尾部内のモチーフ(すなわち、FANSHYモチーフ)に関連付けられており、そのモチーフは、レトロマー複合体との相互作用のために重要であり(Fjorback et al.2012)、カーゴをエンドソーム外に輸送するのを助ける。
【0005】
SORLAをコードするSORL1遺伝子は、ADとの関連性が大きく、機能喪失型の遺伝子バリアントは、AD発現の原因とみなされている(Scheltens et al.2021)。さらに、SORLAは、エンドソームの適切なリサイクルのために重要である。AD患者は概して、SORL1遺伝子の状態とは無関係に、エンドソームに異常をきたしている。しかしながら、SORL1遺伝子のサイズが大きいために、SORLAを利用した治療アプローチは、現実的ではない。
【0006】
その代わりに、最新の薬理学的な方策は、一部では、レトロマー複合体を安定化する小分子を用いることによって、レトロマーの機能を増大させることを目指している(Mecozzi et al.2014)。レトロマーの安定性、すなわち活性の増大は、アミロイド形成性のAPP切断を低減するとともに、それに付随して、非アミロイド形成性の生成物である可溶性APPα(sAPPα)の生成を増大させることが示されている(Mecozzi et al.2014)。
【0007】
しかしながら、ADの実現可能な治療法は、現時点では存在せず、ADは依然として、患者及び医療システムの負担が非常に大きい。
【発明の概要】
【0008】
SORLAは、エンドソームのプロセスに関与するため、SORLAの発現増加は、AD患者及びAD発現リスクのある個体にとって有益であろう。しかしながら、SORL1遺伝子はサイズが大きいため、そのタンパク質の発現増加は、現在利用できる実現可能な遺伝子療法アプローチによって、例えば、パッケージング能力が限られるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて導入することは全くできない。
【0009】
本発明の発明者は驚くべきことに、ADを治療するための遺伝子療法アプローチに、トランケート型のSORLAを使用できることを発見した。完全長SORLAは、遺伝子療法アプローチには適さない。完全長SORLAをコードする遺伝子(SORL1)は、大きすぎて、遺伝子療法に適するベクターに挿入できないからである。
【0010】
本発明の発明者は、ウイルス遺伝子療法と適合するSORLAミニ受容体をコードするSORLAミニ遺伝子を作製することに成功した。前記SORLAミニ受容体の発現に必要とされる遺伝子配列の長さは、遺伝子療法に適するベクターに挿入するのに十分に短く、SORLAミニ遺伝子と称することができる。最も重要なことに、SORLAミニ受容体は同時に、ADの治療に有益な機能、例えば、エンドソームによるリサイクルへの関与、及びアミロイド形成性のAPPプロセシングを低減する能力を保持している。
【0011】
本発明は、SORLAの細胞質尾部、膜貫通ドメイン、及び内腔領域の一部、すなわちFNIIIカセットドメインを含むSORLAミニ受容体を開示する。
【0012】
本発明の発明者は、開発したこのミニ受容体が、エンドソームエンハンサーの特徴を模することを認識している。換言すると、SORLAは、エンドソームエンハンサーとみなすことができ、本発明者は、本明細書に開示されているミニ受容体も同様に、エンドソームエンハンサーとみなすことができると認識している。最も重要なことに、その完全長受容体と比べて、いくつかの利点が、そのミニ受容体と関連付けられている。第1に、そのミニ受容体は、sAPPαを減少させないが、sAPPαは、非アミロイド形成性の生成物であるので、これは有益な特性である(実施例2を参照されたい)。第2に、そのミニ受容体のヌクレオチド配列(すなわちミニ遺伝子)は、遺伝子療法用の実現可能なベクター、例えばAAVベクターにパッケージングするのに十分に小さい。
【0013】
第3に、レトロマー増強化合物の作用は、SORLA活性によるものと推測されるので、SORLAミニ受容体を遺伝子療法に使用することは、レトロマー増強化合物の広範な用途よりも特異的であろう。おそらくは、小分子療法のような他の療法と組み合わせて、レトロマーによる遺伝子療法と、SORL1による遺伝子療法、例えば、本明細書に開示されているSORLAミニ受容体の両方の用途を組み合わせるのも実現可能であろう。
【0014】
一態様では、本発明は、発現時に、ポリペプチドPをコードするポリヌクレオチドコンストラクトであって、そのポリヌクレオチドが、
a.発現時に、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、または配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、あるいはその配列からなる第1のポリペプチドQ1をコードする第1のポリヌクレオチドと、
b.発現時に、配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2をコードする第2のポリヌクレオチドと、
c.発現時に、配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3をコードする第3のポリヌクレオチドと、
を含むか、あるいはそれらからなり、
そのポリペプチドPが、700アミノ酸以下を含むポリヌクレオチドコンストラクトに関するものである。
【0015】
別の態様では、本発明は、
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、または配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、あるいはその配列からなる第1のポリペプチドQ1と、
b.配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2と、
c.配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3と、
を含むか、あるいはそれらからなるポリペプチドPであって、
700アミノ酸以下を含むポリペプチドPに関するものである。
【0016】
別の態様では、本発明は、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含むか、及び/または前記ポリペプチドPをコードするベクターに関するものである。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、前記コンストラクト及び/または前記ポリペプチドP及び/またはベクターを含む細胞に関するものである。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター及び/または細胞を含む組成物に関するものである。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、医薬で使用するための前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物に関するものである。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和する際に使用するための前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物に関するものである。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療する方法であって、それを必要とする個体に、前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物を投与することを含む方法に関するものである。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和するための医薬を製造するために、前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物を使用することに関するものである。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、細胞内のsAPPαを増加させる方法であって、細胞に、本発明のポリヌクレオチドコンストラクト、本発明のベクター、本発明のポリペプチドP及び/または本発明の組成物を導入することで、前記細胞内のsAPPαを増加させることを含む方法に関するものである。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させる方法であって、細胞に、本発明のポリヌクレオチドコンストラクト、本発明のベクター、本発明のポリペプチドP及び/または本発明の組成物を導入することで、前記細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させることを含む方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】SORLAミニ受容体 SORL1-wtから発現する完全長SORLA(SORLA-wt)、及びSORL1-3Fn(「ミニ遺伝子」)から発現するSorLAミニ受容体(「3Fnミニ受容体」またはSORLA-3Fn)の概略図であり、両方のコンストラクトのドメイン構成が示されている(wt=野生型)。このミニ受容体は、SORLAのFnIIIドメインを1つ、2つ以上もしくはすべて含むポリペプチドQ1と、SORLAの膜貫通ドメインを含むか、もしくはそのドメインからなるポリペプチドQ2と、SORLAの細胞質尾部ドメインを含むか、もしくはそのドメインからなるポリペプチドQ3を含むか、またはそれらからなり、これらのドメインをポリペプチドPと総称する場合もある。 任意に、そのミニ受容体は、タグ、例えばFLAGタグを含んでよい。
図2】ベクターマップ そのベクターコンストラクトの概略図である。
図3A】SORLAにおける6個の3Fnドメインの二次構造ベースでの予想アラインメント 3Fnドメインの二次構造であり、溶液構造である。
図3B】フォールディングトポロジーの概略的な構造と、保存されたアミノ酸である。
図3C】SORLAの6個の3Fnドメインの二次構造ベースでの予想アラインメントである。矢印(a~b)は、β-ストランドと予測されるものであり、太字のアミノ酸は、3Fnドメインにわたり保存されているものである。様々な3Fnドメインの間で厳密に保存されているアミノ酸は、ほんのわずかであり、配列多様性が強いことが示されている。パネル(C)でのアラインメントは、パネル(D)及びさらにはパネル(E)に続いており、SORLAの6個の3Fnドメインのアラインメントが一緒に示されている。 保存位置(太字の文字)の下の文字は、それらのドメインの5~6個で保存されている所定のアミノ酸(大文字が使われている)またはそれよりも低い頻度で保存されているアミノ酸(小文字が使われている)位置においては、p/P(=Pro)、W(=Trp)、Y(=Tyr)、N(=Asn)、T(=Thr)、L(=Leu)及びg(=Gly)に対応する。Φという符号は、それらのドメイン配列の所定の位置において、疎水性側鎖を有するアミノ酸を表す目的で使用されている(L/Leu、V/Val、A/Ala、I/Ile、M/Met、F/Phe)。
図3D】SORLAの6個の3Fnドメインの二次構造ベースでの予想アラインメントである。矢印(c~c’)は、β-ストランドと予測されるものであり、太字のアミノ酸は、3Fnドメインにわたり保存されているものである。様々な3Fnドメインの間で厳密に保存されているアミノ酸は、ほんのわずかであり、配列多様性が強いことが示されている。パネル(C)でのアラインメントは、パネル(D)及びさらにはパネル(E)に続いており、SORLAの6個の3Fnドメインのアラインメントが一緒に示されている。 保存位置(太字の文字)の下の文字は、それらのドメインの5~6個で保存されている所定のアミノ酸(大文字が使われている)またはそれよりも低い頻度で保存されているアミノ酸(小文字が使われている)位置においては、p/P(=Pro)、W(=Trp)、Y(=Tyr)、N(=Asn)、T(=Thr)、L(=Leu)及びg(=Gly)に対応する。Φという符号は、それらのドメイン配列の所定の位置において、疎水性側鎖を有するアミノ酸を表す目的で使用されている(L/Leu、V/Val、A/Ala、I/Ile、M/Met、F/Phe)。
図3E】SORLAの6個の3Fnドメインの二次構造ベースでの予想アラインメントである。矢印(e~g)は、β-ストランドと予測されるものであり、太字のアミノ酸は、3Fnドメインにわたり保存されているものである。様々な3Fnドメインの間で厳密に保存されているアミノ酸は、ほんのわずかであり、配列多様性が強いことが示されている。パネル(C)でのアラインメントは、パネル(D)及びさらにはパネル(E)に続いており、SORLAの6個の3Fnドメインのアラインメントが一緒に示されている。 保存位置(太字の文字)の下の文字は、それらのドメインの5~6個で保存されている所定のアミノ酸(大文字が使われている)またはそれよりも低い頻度で保存されているアミノ酸(小文字が使われている)位置においては、p/P(=Pro)、W(=Trp)、Y(=Tyr)、N(=Asn)、T(=Thr)、L(=Leu)及びg(=Gly)に対応する。Φという符号は、それらのドメイン配列の所定の位置において、疎水性側鎖を有するアミノ酸を表す目的で使用されている(L/Leu、V/Val、A/Ala、I/Ile、M/Met、F/Phe)。
図4A】N2a細胞から回収した溶解液のウエスタンブロット解析結果 SORLAの非存在下(APP+pcDNA)、SORLA-wtの存在下(APP+SORLA-wt、APP+SORL1-wtから転写)またはSORLA-3Fnの存在下(APP+SORLA-3Fn、APP+SORL1-3Fnから転写)で、APPをトランスフェクションしたN2a細胞から得た細胞溶解液の代表的なウエスタンブロット(WB)解析結果である。細胞溶解液のタンパク質をSDS-PAGEにより分離して得たブロットは、SORLAに対する抗体(SORL1-3Fn領域を含むSORL1-WTのそれぞれのタンパク質産物を標的とする抗体、例えば、完全長SORLA及び本発明のミニ受容体の両方を標的とする抗体)、APPに対する抗体(APP上のmycタグに対する抗myc抗体によって認識する)、及びβ-アクチンに対する抗体でプロービングした。
図4B】N2a細胞から回収した培地のウエスタンブロット解析 SORLAの非存在下(APP+pcDNA)、SORLA-wtの存在下(APP+SORLA-wt、APP+SORL1-wtから転写)またはSORLA-3Fnの存在下(APP+SORLA-3Fn、APP+SORL1-3Fnから転写)で、APPをトランスフェクションしたN2a細胞から得た馴化培地の代表的なウエスタンブロット(WB)解析結果である。それぞれの条件は、duplicateで、少なくとも5回の独立した実験で試験した。馴化培地試料でのWBは、sAPPαに対する抗体でプロービングした。 SORLA-wt及び本発明のミニ受容体が、sAPPαのレベルに影響を及ぼした程度にかなり差があったことに留意されたい(*)。本発明のミニ受容体は、APPを切断させる点、すなわち、sAPPαを増加させるとともに、sAPPαを減少させないという点で、SORLA-wtよりも優れている。これは、AD患者にとって有益である。sAPPαは、栄養因子であるので、ニューロンの生存のために重要であることが報告されているからである。
図5】WB膜の密度計による走査結果 図4におけるウエスタンブロットに関して、SORL1-WTをトランスフェクションした細胞(SORLA-wtを発現)におけるsAPPα産生を定量したところ、外因性SORLA-wtを含まない細胞(=ブランク)と比べて、sAPPαレベルの有意な低下が見られたのに対して、(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)SORLA-3Fnでは、sAPPα産生に対する影響は見られなかった(N=4、n=8)。
図6】MSDイムノアッセイを用いた、sAPPαレベル及びsAPPβレベルの定量結果 Mesoscale Discovery(MSD)イムノアッセイを用いて、sAPPα(A)及びsAPPβ(B)を定量し、野生型SORLAの存在(SORL1-WTのトランスフェクションによる)によって、sAPPαは減少するが、ミニ受容体の存在(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)によっては、sAPPαは影響を受けず、むしろ増加する(A)のに対して、sAPPβレベルは、野生型SORLAの存在下(SORL1-WTのトランスフェクションによる)でも、ミニ受容体SORLA-3Fnの存在下(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)でも低下することがさらに検証された。
図7】Aβ40 ELISAアッセイを用いた、Aβ40レベルの定量結果 5つの試料から得た馴化培地で、3回の独立した実験から得たAβ40のELISAアッセイ結果である。SORLA-wt(SORL1-wtのトランスフェクションによる)及びミニ受容体SORLA-3Fn(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)の両方とも、いずれの外因性SORLAタンパク質もトランスフェクションしなかった細胞と比べて、Aβ40のレベルが有意に低下した。
図8A】MSDイムノアッセイを用いた、Aβ38のレベルの定量結果 Meso Scale Discovery(MSD)イムノアッセイを用いた、馴化培地のAβ38の定量結果である。3つすべてのAβ形態のAβ産生量は、SORLA-wt(SORL1-wtのトランスフェクションによる)及びミニ受容体SORLA-3Fn(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)のいずれの存在下でも、外因性SORLAを含まない試料(ブランク)と比べて有意に減少した。
図8B】MSDイムノアッセイを用いた、Aβ40のレベルの定量結果 Meso Scale Discovery(MSD)イムノアッセイを用いた、馴化培地のAβ40の定量結果である。3つすべてのAβ形態のAβ産生量は、SORLA-wt(SORL1-wtのトランスフェクションによる)及びミニ受容体SORLA-3Fn(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)のいずれの存在下でも、外因性SORLAを含まない試料(ブランク)と比べて有意に減少した。
図8C】MSDイムノアッセイを用いた、Aβ42のレベルの定量結果 Meso Scale Discovery(MSD)イムノアッセイを用いた、馴化培地のAβ42の定量結果である。3つすべてのAβ形態のAβ産生量は、SORLA-wt(SORL1-wtのトランスフェクションによる)及びミニ受容体SORLA-3Fn(SORL1-3Fnのトランスフェクションによる)のいずれの存在下でも、外因性SORLAを含まない試料(ブランク)と比べて有意に減少した。
図9】本発明のミニ受容体によるレトロマー複合体の安定化 A)最上部のVPS29サブユニットによって二量体化するアーチを形成するコアレトロマーユニットの概略図であり、最下部でも、2つのVPS26サブユニットが密接している。 B)二量体化しているSORLAミニ受容体は、レトロマー複合体を安定させる。
図10A】SORLAミニ受容体の生物学的動態は、そのレトロマー結合部位に依存する FANSHYモチーフがアラニン残基によって置換されたミニ受容体変異体バリアント、すなわち、レトロマー結合部位を欠損したバリアント(FLAG-mini-FANSHY)を作製した。ミニ受容体の変異バリアント(FLAG-mini-FANSHY)及び非変異バリアント(FLAG-mini-WT=SORLA-3Fn)を用いて、細胞にトランスフェクションを行い、前記変異がどの程度、細胞内局在を低下させるかを示した。FLAG-mini-FANSHYは、FLAG-mini-WTよりも、細胞表面に有意に多く見られ、FLAG-mini-WTよりも、細胞培地に分泌された。ミニ受容体(変異バリアントと非変異バリアントの比較)では、細胞局在に差が見られたので、これにより、レトロマーも、ミニ受容体のエンドソーム輸送において、役割を果たすことが示唆されている。 FLAG-mini-WTまたはFLAG-mini-FANSHYをトランスフェクションした細胞から得た溶解液のウエスタンブロット解析により、両方のバリアントの発現レベルが同程度であることが示された(5回の独立した実験の定量から得た代表的なブロット及び棒グラフ)。
図10B】これに対して、FLAG-mini-WTまたはFLAG-mini-FANSHYをトランスフェクションした細胞から得た溶解液のウエスタンブロット解析により、FLAG-mini-FANSHYが、FLAG-mini-WT(レーン3及び4)に比べて、培地に有意に多く分泌される(レーン5及び6)ことが示された(5回の独立した実験の定量から得た代表的なブロット及び棒グラフ)。ミニ受容体コンストラクトをいずれも含まない空のベクター(pcDNA)をネガティブコントロールとして含めた。
図10C】B)のウエスタンブロットの定量結果である。
図10D】トランスフェクション細胞におけるFLAG-mini-WT及びFLAG-mini-FANSHYの細胞表面分布を比較したFACS解析である。例えば、陽性細胞の数は、抗体シグナルが所定の閾値に達した細胞と定義したところ、FLAG-mini-WTの場合、2回の実験において321(上パネル)であったが、この数は、FLAG-mini-FANSHYをトランスフェクションした細胞では、592(下パネル)まで増加した。さらに、そのシグナルは、FLAG-mini-FANSHY(平均シグナル5.286.295、下パネル)の場合と比べて、FLAG-mini-WTを発現した細胞の方が低かった(平均シグナル4.635.522、上パネル)。
図10E】トランスフェクション細胞におけるFLAG-mini-WT及びFLAG-mini-FANSHYの細胞表面分布を比較したFACS解析である。例えば、陽性細胞の数は、抗体シグナルが所定の閾値に達した細胞と定義したところ、FLAG-mini-WTの場合、2回の実験において347であった(上パネル)が、この数は、FLAG-mini-FANSHYをトランスフェクションした細胞では、509まで増加した(下パネル)。さらに、そのシグナルは、FLAG-mini-FANSHY(平均シグナル5.285.501、下パネル)の場合と比べて、FLAG-mini-WTを発現した細胞の方が低かった(平均シグナル4.736.355、上パネル)。
図10F】トランスフェクション細胞の細胞表面(洗浄剤/TritonX-100の非存在下で染色した)のFLAG-mini-WT及びFLAG-mini-FANSHYを免疫細胞化学によって検出したものである。 明らかに、細胞表面でのFLAG-mini-FANSHYの蓄積は、FLAG-mini-WTと比べて多かった(矢印)。
図11A】SORL1の3Fnドメインによる、SORL1の二量体化 SORLAの天然ドメインのすべて(VPS10p、YWTD、CRドメイン、FnIIIドメイン)を有するSORLA-WTタンパク質、異なるタグを有する3Fnミニ受容体バリアント(それぞれ、mini-myc及びFLAG-mini)、ならびに実施例8で用いた可溶性3Fnミニ受容体のドメイン構成を示す概略図である。 Vps10pは、液胞タンパク質ソーティング10タンパク質、YWTDは、チロシントリプトファントレオニンアスパラギン酸、CRは、補体型リピート、3Fnは、フィブロネクチンIII型ドメイン、TMは、膜貫通部、10CCは、10個の保存されたシステイン、EGFは、上皮細胞成長因子である。
図11B】FLAGタグ付きのミニ受容体及びSORL1-WTを一過性にトランスフェクションしたHEK293細胞から得た溶解液の、FLAG抗体を用いた免疫共沈降結果である。ポリクローナルSORL1抗体(sol-SORLA)を用いて、溶離液に存在するタンパク質をWBによって解析した。
図11C】FLAGタグ付きのミニ受容体及びMycタグ付きのミニ受容体を一過性にトランスフェクションしたHEK293細胞から得た溶解液の免疫共沈降解析結果である。FLAG抗体を用いて、タンパク質を沈降させ、myc抗体を用いて、WBによって検出した。
図11D】0%または5%の(+β-メルカプトエタノール)還元剤のいずれかで処置した可溶性3Fnミニ受容体(膜貫通ドメインまたは尾部ドメインを含まない)を一過性にトランスフェクションしたCHO細胞から得た溶解液及び培地のWB解析結果である。N末端に3×FLAGタグを含む可溶性3Fnミニ受容体コンストラクトの検出に、抗FLAG抗体を用いる。
図12A】エンドソーム内でのSORLA二量体化の細胞解析 近接ライゲーションアッセイ(PLA)の背後にある原理を示す概略図である。C末端にFLAGタグ(SORL1-FLAG)またはGFPタグ(SORL1-GFP)を有する2つのSORL1コンストラクトが、相互作用する(すなわち二量体化する)と、相当数の工程で、赤色のPLAシグナルが発色する。
図12B】SORL1-GFP(*)及びSORL1-FLAGを一過性にコトランスフェクションしたHEK293細胞の代表的な共焦点顕微鏡画像である。FLAG抗体を用いて、細胞をSorLAに対して免疫染色し(矢印)、核をDAPIで対比染色した(青色)。スケールバーは5μmである。我々は、ダブルトランスフェクションしたHEK293細胞を用いて、これらの2つの異なるタグが、タグ付きの受容体形態の局在に影響を及ぼすかを試験し、共局在の程度を求めた。この実験から、それらのタグでは、強い重複が見られ、Manders係数は0.71であったので、それらのタグにより、細胞局在に差が示されなかったことを我々は観察した。
図12C】次に、我々は、抗FLAGを除外したPLA設定のコントロール実験を行い、いずれの設定でも、PLAシグナルの形成が消失した。
図12D】次に、我々は、抗GFPをいずれかを除外したPLA設定のコントロール実験を行い、いずれの設定でも、PLAシグナルの形成が消失した。
図12E】一過性にトランスフェクションしたHEK293細胞において、SORL1-GFP(*)とSORL1-FLAGとの相互作用のPLA解析から得た代表的な画像である。PLAシグナルは、ドットによって表されている(矢印を参照されたい)。スケールバーは5μmである。Manders相関係数を用いた、GFP(*)とPLA(矢印)シグナルとの共在の定量結果である。 我々は、両方の抗体の存在下で、強力なPLAシグナルを観察したことから、2つの完全長SORLAタンパク質が細胞内で二量体を形成できることが確認された。しかしながら、我々が、PLAシグナル(SORLA二量体を表す)とSORLA-GFP(単量体及び二量体の両方を表す)の共局在の程度を求めたところ、いくつかのPLAシグナルについては、共局在が明らかに見られないことに我々は気づき、Manders係数により、重複がわずか0.35であることが確認され、二量体として存在するのは、SORLAタンパク質の細胞プールのごく一部であることが示唆された。
図12F】二量体を表すPLAシグナルと、レトロマーコアのVPS35サブユニットの共染により、共局在の程度が大きいことが示され、Manders係数は0.70であったことから、大半のSORLA二量体が、レトロマーと一緒に位置することが確認された。
図13A】SORL1二量体の細胞内局在は、エンドソーム内である。 Venus蛍光タンパク質のN末端断片(SORL1-V1)またはC末端断片(SORL1-V2)のいずれかのC末端融合体を含むSORL1コンストラクトの概略図である。2つのSORL1分子が相互作用すると、Venus断片が近接して、蛍光βバレル構造を形成可能となる。
図13B】レトロマーは、SORL1二量体と特異的に相互作用する。HEK293細胞に、空のベクターSORL1-GFP、SORL1-V1、SORL1-V2、SORL1-V1及びSORL1-V2の両方(各種のSORLAバリアントを発現する)、またはSORL1-WTをトランスフェクションしてから、GFPトラップによる免疫沈降を行った。SORLA及びVPS26Bの検出のために、示されている抗体を用いたWBによって、その溶離液中のタンパク質を解析した。
図13C】SORL1-V1(上段)、SORL1-V2(中断)のいずれかを一過性にトランスフェクションしたHEK293細胞、またはSORL1-V1及びSORL1-V2の両方をコトランスフェクションしたHEK293細胞(下段)から得たBiFCシグナル(*)の代表的な免疫蛍光画像である。それらの細胞は、SORL1抗体で対比免疫染色し(矢印)、核は、DAPIで染色した。スケールバーは5μmである。
図13D】Manders相関係数を用いて、Venusシグナルと全SORL1との共在の定量したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「a」、「an」及び「the」が付された単数形には、複数の言及物が含まれる。
【0027】
「いくつかの実施形態」という用語は、1つまたは2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0028】
「a」または「an」という語の使用は、この文章全体を通じて、あるいは請求項及び/または本明細書における「含む」という用語と併せて用いられている場合、「1つ」を意味することもあるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。すなわち、例えば、「ミニ受容体」という場合には、そのようなミニ受容体が複数、例えば1つ以上のミニ受容体、少なくとも1つのミニ受容体または2つ以上のミニ受容体が含まれる。
【0029】
「コンストラクト」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、下記の実施例または請求項に記載されているようなポリヌクレオチドコンストラクトを指す。例えば、このコンストラクトは、本発明のSORLAミニ受容体をコードするSORL1ミニ遺伝子を指す。
【0030】
「sorLA」という用語は、本明細書で使用する場合は、SORLA、ソルチリン関連受容体、ソルチリン関連受容体1、11個のリガンド結合リピートを有する低密度リポタンパク質受容体類似体、11個のリガンド結合リピートを有するLDLR類似体、LR11、SorLA-1、LDLRクラスAリピートを含むソーティングタンパク質関連受容体及びgp250という用語と同義である。ヒトsorLAは、UniProtにおいて、Q92673というアクセッション番号でアノテーションされている。
【0031】
「野生型」(WT)という用語は概して、修飾が導入されたタンパク質またはタンパク質断片と比べて、修飾されていないタンパク質またはタンパク質断片として理解する。
【0032】
例えば、実施例1及び2で用いられている「野生型」(WT)という用語は、天然のタンパク質、すなわち天然のsorLAを説明するものと理解し、完全長sorLAとして理解してよい。
【0033】
実施例8のいくつかの事例で用いられているような「野生型」(WT)という用語は、FANSHYモチーフがアラニン残基で置換されたミニ受容体変異バリアント(FLAG-mini-FANSHY)と比べて、変異されていないミニ受容体バリアント(FLAG-mini-WT=SORLA-3Fnミニ受容体)を説明するものと理解する。
【0034】
「野生型」という用語の理解は、下記の実施例1~8のそれぞれにおいて、さらに明確となる。
【0035】
SORL1によってコードされるタンパク質は、SORLAといい、ソルチリン関連受容体、ソルチリン関連受容体1、11個のリガンド結合リピートを有する低密度リポタンパク質受容体類似体、11個のリガンド結合リピートを有するLDLR類似体、LR11、SorLA-1、LDLRクラスAリピートを含むソーティングタンパク質関連受容体、gp250としても知られる。ヒトSORLAは例えば、UniProtのデータベースにおいて、アクセッション番号Q92673でアノテーションされている(UniProtKB-Q92673、SORL_ヒト)。SORLAは、例えば、ニューロンで発現する1型膜タンパク質である。SORLAは、エンドサイトーシス及びソーティングにおいて役割を果たすことが知られている。
【0036】
SORL1によってコードされるタンパク質SORLAは、
-シグナルペプチド(そのタンパク質の成熟中に切り離される。エクソン1によってコードされる)、
-プロペプチド(そのタンパク質の成熟中に、タンパク質分解によってプロセシングされることができる。エクソン1によってコードされる)、
-Vps10pドメイン(Vps10p-β-プロペラともいう(エクソン2~13によってコードされる)、
-10CCドメイン(エクソン14~16によってコードされる)、
-YWTDドメイン(YWTD-β-プロペラともいう(エクソン17~21によってコードされる)、
-上皮細胞成長因子(EGF)ドメイン(エクソン22によってコードされる、
-CRクラスタードメイン(エクソン23~33によってコードされる)、
-3Fnクラスター(3Fnカセット、3Fnリピート、3Fnドメインともいう)(エクソン34~46によってコードされる)(6個のフィブロネクチンIII型(FNIIIまたはFN3)リピートともいう)、
-膜貫通ドメイン及び細胞質尾部ドメイン(エクソン47~48によってコードされる)、
を含む。
【0037】
本開示全体を通じて、3Fnという用語は、FNIIIまたはFN3(Fn=フィブロネクチン)と表されていることもある。
【0038】
ポリヌクレオチド(またはポリペプチド)に関しては、相同性、同一性及び類似性という用語は、本明細書で定義する場合、同義的に用いられており、相同性は、それらの配列をアラインメントし、必要な場合にギャップを導入して、同一性/類似性のパーセントを最大とした後に、候補配列内の核酸(またはアミノ酸)のうち、対応する天然型核酸(またはアミノ酸)の残基と相同である核酸(またはアミノ酸)のパーセンテージを指し、同一性は、対応する天然型核酸(またはアミノ酸)の残基と同一である核酸(またはアミノ酸)のパーセンテージを指し、類似性は、対応する天然型核酸(またはアミノ酸)の残基と類似している核酸(またはアミノ酸)のパーセンテージを指し、保存的置換はいずれも、NCIUBの規則(hftp://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/misc/naseq.html、NC-IUB、Eur J Biochem(1985))に従って、配列同一性の一部とみなす。特に、類似性のパーセンテージは、類似の生理化学的な特性を有する保存された残基のパーセンテージを指す。5’もしくは3’において伸長もしくは挿入されていても(核酸の場合)、またはN’もしくはC’において伸長もしくは挿入されていても(ポリペプチドの場合)、同一性または類似性は低下しない。アラインメントを行うための方法及びコンピュータープログラムは、当該技術分野において周知である。概して、2つの配列間の類似性が所与であることにより、これらの配列間の同一性が、類似性と少なくとも等しく、例えば、2つの配列が、互いに80%類似している場合には、それらの配列の同一性は、80%以上のはずであるうえに、その同一性は、90%である場合もあることが暗示される。
【0039】
本明細書で定義する場合、「相同性、類似性または同一性が少なくとも70%」という用語は、本開示全体を通じて、相同性、類似性または同一性が少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%であることを意味する。
【0040】
「同一性」及び「相同性」という用語は、本明細書では、同義と理解してよい。
【0041】
SORLAミニ受容体
本明細書に記載されているSORLAミニ受容体は、SORLAの細胞質尾部、膜貫通領域、及び内腔領域の一部、すなわちFNIIIカセットドメインを含む。
【0042】
図1に示されているように、そのミニ受容体は、SORLAの1つ以上のFnIIIドメイン(例えば、6個すべてのFnIIドメイン)を含むポリペプチドQ1、SORLAの膜貫通ドメインを含むか、もしくはそのドメインからなるポリペプチドQ2、及びSORLAの細胞質尾部ドメインを含むか、もしくはそのドメインからなるポリペプチドQ3を含むか、またはそれらからなり、これらのポリペプチドは、ポリペプチドPと総称する場合もある。
【0043】
任意に、そのミニ受容体は、タグ、例えばFLAGタグを含んでよい。
【0044】
内腔領域にあり、他の内腔タンパク質と相互作用するFNIIIカセットは、そのSORLAミニ受容体の機能特性にとって重要である。すなわち、そのSORLAミニ受容体は、例えば実施例1~6におけるように、SORLA-3Fnミニ受容体という場合もある(3FNは、FNIIIカセットの略称である)。そのSORLAミニ受容体を発現する対応のヌクレオチド配列は、SORL1-3Fnという場合もあり、SORL1ミニ遺伝子という場合もある。さらに、この文章全体を通じて、かつ本開示に関しては、SORLAミニ受容体は、単にミニ受容体という場合もある。実施例1~6では、SORL1-WTまたはSorLA-wtという呼称は、完全長SORL1のヌクレオチド配列または完全長SorLAのタンパク質を指す。すなわち、本発明のミニ受容体またはミニ遺伝子は、完全長の受容体または遺伝子と比較されている。
【0045】
あるいは、上記のSORLAミニ受容体は、本開示では、例えば実施例7~8におけるように、FLAG-mini-WTという場合もある。実施例7~8では、樹立したミニ受容体またはミニ受容体(FLAG-mini-WT)は、変異させたミニ受容体バリアント(FLAG-mini-FANSHYという)と比較されており、その変異は、細胞質尾部内のFANSHYモチーフに導入されている。
【0046】
一態様では、本発明は、発現時に、ポリペプチドPをコードするポリヌクレオチドコンストラクトであって、そのポリヌクレオチドが、
a.発現時に、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、または配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、あるいはその配列からなる第1のポリペプチドQ1をコードする第1のポリヌクレオチドと、
b.発現時に、配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2をコードする第2のポリヌクレオチドと、
c.発現時に、配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3をコードする第3のポリヌクレオチドと、
を含むか、あるいはそれらからなり、
そのポリペプチドPが、700アミノ酸以下を含むポリヌクレオチドコンストラクトに関するものである。
【0047】
相当数のヌクレオチドを、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド及び/または第3のヌクレオチドの上流及び/または下流(ポリヌクレオチドの5’末端及び/またはポリヌクレオチドの3’末端)に付加してよいことは当業者には明らかであろう。この付加は、そのコンストラクトを最適化するために、例えば、コードされるポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチドP)の転写及び/または翻訳、パッケージング効率、あるいは特性を最適化するために行うことができる。本発明のポリペプチドPは、700アミノ酸以下を含むので、そのポリヌクレオチドコンストラクト内の追加のヌクレオチドの量は、総数2100ヌクレオチドに限られる。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態では、その第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド及び/または第3のポリヌクレオチドは、3’末端及び/または5’末端に、さらなるヌクレオチド、例えば1個のさらなるヌクレオチド、例えば2個のさらなるヌクレオチド、例えば3個のさらなるヌクレオチド、例えば4個のさらなるヌクレオチド、例えば5個のさらなるヌクレオチド、例えば6個のさらなるヌクレオチド、例えば7個のさらなるヌクレオチド、例えば8個のさらなるヌクレオチド、例えば9個のさらなるヌクレオチド、例えば10個のさらなるヌクレオチド、例えば11個のさらなるヌクレオチド、例えば12個のさらなるヌクレオチド、例えば13個のさらなるヌクレオチド、例えば14個のさらなるヌクレオチド、例えば15個のさらなるヌクレオチド、例えば16個のさらなるヌクレオチド、例えば17個のさらなるヌクレオチド、例えば18個のさらなるヌクレオチド、例えば19個のさらなるヌクレオチド、例えば20個のさらなるヌクレオチド、例えば21個のさらなるヌクレオチド、例えば22個のさらなるヌクレオチド、例えば23個のさらなるヌクレオチド、例えば24個のさらなるヌクレオチド、例えば25個のさらなるヌクレオチド、例えば26個のさらなるヌクレオチド、例えば27個のさらなるヌクレオチド、例えば28個のさらなるヌクレオチド、例えば29個のさらなるヌクレオチド、例えば30個のさらなるヌクレオチド、例えば31個のさらなるヌクレオチド、例えば32個のさらなるヌクレオチド、例えば33個のさらなるヌクレオチドを含む。
【0049】
その1つ以上のさらなるヌクレオチドは、いずれかの既知の種類のヌクレオチドであってよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドコンストラクトは、発現時に、第1のポリペプチドQ1、第2のポリペプチドQ2及び第3のポリペプチドQ3を含む融合タンパク質をコードする。
【0051】
代替的な態様では、本発明は、
a.発現時に、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、もしくは配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、またはその配列からなる第1のポリペプチドQ1を含むか、あるいはそのポリペプチドQ1からなるポリペプチドPをコードする第1のポリヌクレオチドと、
b.発現時に、配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2をコードする第2のポリヌクレオチドと、
c.発現時に、配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3をコードする第3のポリヌクレオチドと、
を含むポリヌクレオチドコンストラクトに関するものであり、
そのポリペプチドPは、700アミノ酸以下を含む。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態では、Pは、
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を含むか、もしくはその配列からなる、SorLAのFnIIIカセット、あるいは
FnIII-1、FnIII-2、FnIII-3、FnIII-4、FnIII-5もしくはFnIII-6から選択したFnIIIドメインであって、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16のアミノ酸配列に対応する前記FnIIIドメイン、またはこれらのいずれかの組み合わせと、
b.配列番号17のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの膜貫通ドメインと、
c.配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの細胞質尾部ドメインと、
を含むか、あるいはそれらからなる。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態では、Pは、685アミノ酸以下である。
【0054】
場合によっては、タグを含む、本発明のミニ受容体コンストラクトを発現させるのが有益であることもある。当業者は、最も適切なタグを選択するとともに、そのタグの位置を定めることができるであろう。タグは、例えば、FLAGタグ(例えば、実施例7~8では、FLAG-miniという)、mycタグ(例えば、実施例7~8では、mini-mycという)、GFPタグ、またはVenus蛍光タンパク質タグ(例えば、実施例8で使用した)であってよい。
【0055】
そのタグは例えば、そのコンストラクトのN末端またはC末端の位置に定めてよい。いくつかの事例では、そのコンストラクトのN末端にタグの位置を定めて、C末端を非修飾のままにすることで、そのコンストラクトのC末端領域に結合している他の分子、例えば、その細胞質尾部に結合しているレトロマーとの結合のいずれにも、影響が及ぶ可能性がないようにするのが有益なことがある。
【0056】
タグの利用は、そのコンストラクトをin vitroまたはin vivoで追跡して、そのコンストラクトの局在を確認する際に有益であることがある。他の事例、例えば臨床現場では、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)の媒介により、そのコンストラクトを患者の細胞にトランスフェクションするときに、免疫原性応答を誘発する可能性がある不必要なタンパク質部分がいずれも導入されないように、いずれのタグも省くのが有益なことがある。
【0057】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、そのミニ受容体は、いずれのタグも含まない。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態では、Pは、配列番号21のアミノ酸配列をさらに含む。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態では、Pは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態では、Pは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号21のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態では、完全長SORLAタンパク質とは対照的に、そのコンストラクトは、CRクラスタードメイン、YWTDドメイン、Vps10pドメイン及び/またはプロペプチドを含まない。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態では、完全長SORLAタンパク質とは対照的に、そのコンストラクトは、CRクラスタードメインを含まない。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態では、完全長SORLAタンパク質とは対照的に、そのコンストラクトは、YWTDドメインを含まない。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態では、完全長SORLAタンパク質とは対照的に、そのコンストラクトは、Vps10pドメインを含まない。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態では、完全長SORLAタンパク質とは対照的に、そのコンストラクトは、プロペプチドを含まない。
【0066】
別の態様では、本発明は、
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択した1つ以上のアミノ酸配列、または配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16の前記アミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一であるその生物学的に活性な配列バリアントを含むか、あるいはその配列からなる第1のポリペプチドQ1と、
b.配列番号17のアミノ酸配列、もしくは配列番号17と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第2のポリペプチドQ2と、
c.配列番号18のアミノ酸配列、もしくは配列番号18と少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である配列を含むか、またはその配列からなる第3のポリペプチドQ3と、
を含むか、あるいはそれらからなるポリペプチドPであって、
700アミノ酸以下を含むポリペプチドPに関するものである。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態では、その第1のポリペプチドQ1、第2のポリペプチドQ2及び/または第3のポリペプチドQ3は、さらなるアミノ酸、例えば1個のさらなるアミノ酸、例えば2個のさらなるアミノ酸、例えば3個のさらなるアミノ酸、例えば4個のさらなるアミノ酸、例えば5個のさらなるアミノ酸、例えば6個のさらなるアミノ酸、例えば7個のさらなるアミノ酸、例えば8個のさらなるアミノ酸、例えば9個のさらなるアミノ酸、例えば10個のさらなるアミノ酸、例えば11個のさらなるアミノ酸、例えば12個のさらなるアミノ酸、例えば13個のさらなるアミノ酸、例えば14個のさらなるアミノ酸、例えば15個のさらなるアミノ酸、例えば16個のさらなるアミノ酸、例えば17個のさらなるアミノ酸、例えば18個のさらなるアミノ酸、例えば19個のさらなるアミノ酸、例えば20個のさらなるアミノ酸、例えば21個のさらなるアミノ酸、例えば22個のさらなるアミノ酸、例えば23個のさらなるアミノ酸、例えば24個のさらなるアミノ酸、例えば25個のさらなるアミノ酸、例えば26個のさらなるアミノ酸、例えば27個のさらなるアミノ酸、例えば28個のさらなるアミノ酸、例えば29個のさらなるアミノ酸、例えば30個のさらなるアミノ酸、例えば31個のさらなるアミノ酸、例えば32個のさらなるアミノ酸、例えば33個のさらなるアミノ酸を含む。
【0068】
この1つ以上のさらなるアミノ酸は、いずれかの既知の種類のアミノ酸であってよい。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態では、そのポリペプチドPは、ポリペプチドQ1、Q2及び/またはQ3の融合タンパク質である。
【0070】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリペプチドQ1、ポリペプチドQ2及びポリペプチドQ3の間に、さらなるアミノ酸からなるリンカーが存在する。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリペプチドPは、
a.配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を含むか、もしくはその配列からなる、SorLAのFnIIIカセット、または
b.FnIII-1、FnIII-2、FnIII-3、FnIII-4、FnIII-5もしくはFnIII-6から選択したFnIIIドメインであって、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15もしくは配列番号16のアミノ酸配列に対応する前記FnIIIドメイン、またはこれらのいずれかの組み合わせと、
c.配列番号17のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの膜貫通ドメインと、
d.配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列からなる、SorLAの細胞質尾部ドメインと、
を含むか、あるいはそれらからなる。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態では、Pは、685アミノ酸以下である。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリペプチドPは、配列番号21のアミノ酸配列をさらに含む。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリペプチドPは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列を含むか、またはその配列を含む。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリペプチドPは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号21のアミノ酸配列を含むか、またはその配列を含む。
【0076】
別の態様では、本発明は、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含むか、及び/または前記ポリペプチドPをコードするベクターに関するものである。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、そのベクターは、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド及び人工染色体からなる群から選択したものである。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態では、そのベクターは、プラスミドベクターである。
【0079】
本開示のいくつかの実施形態では、そのベクターは、ウイルスベクターである。
【0080】
本開示のいくつかの実施形態では、そのベクターは、パッケージング能力が1~40kb、例えば1~30kb、例えば1~20kb、例えば1~15kb、例えば1~10、例えば1~8kb、例えば2~7kb、例えば3~6kb、例えば4~5kbである。
【0081】
本開示のいくつかの実施形態では、そのウイルスベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクターからなる群から選択したものである。
【0082】
本開示のいくつかの実施形態では、そのウイルスベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である。
【0083】
本開示のいくつかの実施形態では、そのウイルスベクターは、AAV9ベクターである。
【0084】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、そのウイルスベクターは、AAV9ベクターである。
【0085】
本開示のいくつかの実施形態では、そのベクターは、パッケージング能力が4.7kbであるアデノ随伴ベクター(AAV)である。
【0086】
本開示のいくつかの実施形態では、そのベクターは、パッケージング能力が5kb未満であるアデノ随伴ベクター(AAV)である。
【0087】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、パッケージング能力が限られていることは当業者には明らかであろう。パッケージング過剰は、例えば、発現に有害であるか、または発現の成功が限定され、ウイルス力価及びin vivoトランスダクションの両方を低減させる可能性がある。AAVベクターのパッケージングを最適化する努力がなされているが、本明細書に開示されている発明は、SORL1ミニ遺伝子を確立することによって、その問題に対する解決策を提供し、このミニ遺伝子は、6000ヌクレオチド長を超える完全長SORL1遺伝子の代わりに、AAVベクターにパッケージングできる。AAVベクターは概して、パッケージング能力が4700ヌクレオチド~5000ヌクレオチド前後であるとされている。加えて、SORL1ミニ遺伝子から転写されるSORLAミニ受容体はさらに、本発明に含まれる下記の実施例に記載されているような有益な特性を有する。
【0088】
ヒトSORLAは、UniProtにおいて、Q92673というアクセッション番号で、2214アミノ酸のタンパク質としてアノテーションされている。このタンパク質は、そのタンパク質を発現/コードする6642以上のヌクレオチドに対応する。発現には、さらに上流または下流の配列が必要となることもある。すなわち、完全長SORL1は、AAVベクターにパッケージングするには長すぎる。本発明のミニ遺伝子は、この問題を解決する。
【0089】
代替的な態様では、本発明は、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含むAAVベクターに関するものである。
【0090】
さらに代替的な態様では、本発明は、前記ポリヌクレオチドコンストラクトを含むAAV9ベクターに関するものである。
【0091】
さらなる態様では、本発明は、前記コンストラクト及び/または前記ポリペプチドP及び/またはベクターを含む細胞に関するものである。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態では、その細胞は、真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは霊長類動物細胞、より好ましくはヒト細胞からなる群から選択したものである。
【0093】
本開示のいくつかの実施形態では、その細胞は、哺乳動物細胞である。
【0094】
本開示のいくつかの実施形態では、その細胞は、神経細胞である。
【0095】
さらなる態様では、本発明は、前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター及び/または細胞を含む組成物に関するものである。
【0096】
本開示のいくつかの実施形態では、その組成物は、医薬組成物である。
【0097】
本開示のいくつかの実施形態では、その組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0098】
さらなる態様では、本発明は、医薬で使用するための前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物に関するものである。
【0099】
さらなる態様では、本発明は、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和する際に使用するための前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物に関するものである。
【0100】
本開示のいくつかの実施形態では、そのアルツハイマー病は、早発型アルツハイマー病、晩期発症型アルツハイマー病及び家族性アルツハイマー病からなる群から選択した種類のものである。
【0101】
ADを発現するリスクがある個体の治療で、本発明を使用できることは当業者には明らかであろう。例えば、ADを発現するリスクがある個体は、ADであると診断または認識された血縁者がいる個体であってよい。
【0102】
代替的な態様では、本発明は、アルツハイマー病を発現するリスクがある個体において、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療及び/または予防する際に使用するための前記コンストラクト、ポリペプチド、ベクター、細胞及び/または組成物に関するものである。
【0103】
本明細書に開示されている発明を用いて、AD患者において、ADを予防したり、及び/またはADを治療したり、及び/またはADの症状を緩和したりできることは当業者には明らかであろう。ADは、構造レベルで脳に影響を及ぼす重篤な疾患である。したがって、早期、例えば、症状発現の前もしくはAD初期に、または脳構造の実質的なリモデリング前に、本発明のSORL1ミニ遺伝子を供給する(例えばAAVベクターを介して、本発明のSORLAミニ受容体を発現させる)のが有益であることがある。例えば、本明細書に開示されているアプローチは、AD患者の家族を疾患発現前に治療するのに適用可能であろう。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、ADの症状発現前の個体に投与する。
【0105】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、ADの症状発現前の個体に投与する。
【0106】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、家族がADと診断された個体に投与する。
【0107】
あるいは、本明細書に開示されている発明は、初期症状がある患者を治療するのに適用可能であろう。
【0108】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、ADの初期症状がある個体に投与する。
【0109】
あるいは、本明細書に開示されている発明は、様々な病期のADである患者を治療するのに適用可能であろう。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、ADの様々な程度の症状がある個体に投与する。
【0111】
さらに、本明細書に開示されている発明は、SORLAの生理機能を回復させるその性質から、AD後期の患者を治療するのに適用可能である。
【0112】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、AD後期の患者に投与する。
【0113】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、その個体の血縁者がアルツハイマー病と診断されたときに、前記個体に投与する。
【0114】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、その個体の血縁者が、アルツハイマー病に罹患しているか、または罹患したことがあると分かったときに、前記個体に投与する。
【0115】
例えば、その個体の血縁者が臨床医の診断を受けたときに、前記血縁者がADに罹患していると分かることがある。あるいは、例えば、他の情報源、例えば、家族の記録または記憶から情報を得ることによって、前記個体の血縁者がアルツハイマー病に罹患しているか、または罹患したことがあると分かることがある。
【0116】
個体の血縁者は、その個体の家族として理解してよい。
【0117】
個体の血縁者は、前記個体と遺伝物質を共有している者として理解してよい。
【0118】
例えば、個体の血縁者は、曽祖母である。
【0119】
例えば、個体の血縁者は、曽祖父である。
【0120】
例えば、個体の血縁者は、祖母である。
【0121】
例えば、個体の血縁者は、祖父である。
【0122】
例えば、個体の血縁者は、母親である。
【0123】
例えば、個体の血縁者は、父親である。
【0124】
例えば、個体の血縁者は、同胞である。
【0125】
例えば、個体の血縁者は、兄弟である。
【0126】
例えば、個体の血縁者は、娘である。
【0127】
例えば、個体の血縁者は、息子である。
【0128】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、その個体の家族の1人以上がアルツハイマー病に罹患していることが確定したら、前記個体に投与する。
【0129】
本開示のいくつかの実施形態では、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物は、その個体の家族の1人以上がアルツハイマー病に罹患していることが確定したら、前記個体に投与する。
【0130】
ADを発現するリスクは、遺伝する可能性があることは、当業者には明らかであろう。ADを発現するリスクがある個体、例えば、血縁者がADと診断されたときにリスクがある個体に、前記コンストラクト、ベクター、細胞及び/または組成物を投与すると、例えば、疾患発現の前に、ADが予防されたり、ADの症状が低減されたりする可能性が得られることは、当業者には明らかであろう。
【0131】
さらなる態様では、本発明は、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療する方法であって、それを必要とする個体に、前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物を投与することを含む方法に関するものである。
【0132】
さらなる態様では、本発明は、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連する疾患もしくは障害を治療、予防及び/または緩和するための医薬を製造するために、前記コンストラクト、ポリペプチドP、ベクター、細胞及び/または組成物を使用することに関するものである。
【0133】
さらなる態様では、本発明は、細胞内のsAPPαを増加させる方法であって、細胞に、本発明のポリヌクレオチドコンストラクト、本発明のベクター、本発明のポリペプチドP及び/または本発明の組成物を導入することで、前記細胞内のsAPPαを増加させることを含む方法に関するものである。
【0134】
さらなる態様では、本発明は、細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させる方法であって、細胞に、本発明のポリヌクレオチドコンストラクト、本発明のベクター、本発明のポリペプチドP及び/または本発明の組成物を導入することで、前記細胞内のAβ38、Aβ40及び/またはAβ42を減少させることを含む方法に関するものである。
【0135】
当業者は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクト、本発明のベクター、本発明のポリペプチドP及び/または本発明の組成物を細胞に導入するのに利用可能な選択肢を選択できるであろう。例えば、ウイルストランスフェクションを使用してよい。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態では、前記細胞は、神経細胞である。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、in vivo法である。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、in vitro法である。
【実施例
【0139】
実施例1:SORLAミニ受容体の作製
目的
この実施例では、SORLA-3Fnミニ受容体の作製を例示する。
【0140】
材料及び方法
このミニ受容体コンストラクトは、1回のPCR反応(Herculase II Fusion)の後に、制限酵素による消化を行ってから、ライゲーションすることによって作製した。プライマー対(Fwd:5’-CAGGATCCGACTACAAGGACCACGACGGCGACTACAAGGACCACGACATCGACTACAAGGACGACGACGACAAGGAGTTGACTGTGTACAAAGTACAG-3’及びrev:5’-GTGAATTCTCAGGCTATCACCATGG-3’)を用いて、Glu1552の下流のヒトSORL1断片を終止コドンまで増幅した。すなわち、最終的なアンプリコンには、5’のBamHI制限部位と3’のEcoRI制限部位に挟まれた配列であって、FLAGタグ(3x)、(6個のフィブロネクチンIII型(FNIIIまたはFN3)リピートの3Fnカセット、膜貫通領域、及び細胞質尾部用の配列が含まれていた。最後に、そのミニ受容体のPCR産物をPsectag2B発現ベクター(Invitrogen)に、BamHI制限部位とEcoRI制限部位との間にクローニングして、マウスIgκ-鎖V-J2-Cシグナルペプチドとインフレームになるようにした。そのアンプリコンの発現産物(SORLAミニ受容体)は、完全長(野生型)SORLAと比較した形で、図1に示されている。そのベクターは、図2に示されている。
【0141】
次に、N2a細胞に、そのミニ受容体コードするベクターをトランスフェクションして、そのコンストラクトが正しく発現されることを確認した。続いて、そのトランスフェクションしたN2a細胞の溶解液を回収し、SORLAのエクトドメイン(細胞外ドメイン、SORL1-WTまたはSORL1-3Fnのそれぞれのタンパク質産物を標的とする)を認識する抗体、及びβ-アクチンを認識する抗体を用いたWBによって、タンパク質を解析した(図4)。
【0142】
加えて、いくつかのソフトウェア(PsiPred、SSpro Scratch及びYaspin)を用いて、個々のSORLA 3Fnモジュールのドメイン境界をin silicoで求めて、二次構造を予測した。その後、その6個の3Fnドメインのアラインメントを、それらの高度に保存された二次構造、及びほとんど保存されていないアミノ酸に基づいて行った(図3C)。図3Aには、3Fnドメインの二次構造が可視化されている。図3Bには、保存されたアミノ酸を有する概略的な構造が示されている。
【0143】
本明細書に記載されている例では、そのミニ受容体が、例えば、そのミニ受容体を、確立初期及び概念実証段階の際に利便的な方法で追跡できるFLAG-タグを含むように構築されていることに留意されたい。タグが不要であるかまたは望まれない状況で用いるために、例えば、そのミニ受容体を治療現場で使用するときに、例えば、ウイルスベクターを介して、患者の細胞内で発現させるときに、いずれのタグも使用せずに(または代わりのタグを用いて)、ミニ受容体を確立するための手法のうち、本明細書に記載されている手法を当業者は利用できるであろう。
【0144】
完全なミニ受容体コンストラクトのDNA配列:
BamHI+3×FLAGタグ+6×FN3+膜貫通ドメイン+細胞質尾部及び終止コドン+EcoRI
下線部分:制限部位
灰色でマーキングされたヌクレオチドは、各ドメインの最後のヌクレオチドである。
【化1】
【0145】
それぞれのドメインのDNA配列:
FnIII-1:
GAGTTGACTGTGTACAAAGTACAGAATCTTCAGTGGACAGCTGACTTCTCTGGGGATGTGACTTTGACCTGGATGAGGCCCAAAAAAATGCCCTCTGCTTCTTGTGTATATAATGTCTACTACAGGGTGGTTGGAGAGAGCATATGGAAGACTCTGGAGACCCACAGCAATAAGACAAACACTGTATTAAAAGTCTTGAAACCAGATACCACGTATCAGGTTAAAGTACAGGTTCAGTGTCTCAGCAAGGCACACAACACCAATGACTTTGTGACCCTGAGGACCCCAGAGGGA
【0146】
FnIII-2:
TTGCCAGATGCCCCTCGAAATCTCCAGCTGTCACTCCCCAGGGAAGCAGAAGGTGTGATTGTAGGCCACTGGGCTCCTCCCATCCACACCCATGGCCTCATCCGTGAGTACATTGTAGAATACAGCAGGAGTGGTTCCAAGATGTGGGCCTCCCAGAGGGCTGCTAGTAACTTTACAGAAATCAAGAACTTATTGGTCAACACTCTATACACCGTCAGAGTGGCTGCGGTGACTAGTCGTGGAATAGGAAACTGGAGCGATTCTAAATCCATTACCACCATAAAAGGAAAA
【0147】
FnIII-3:
GTGATCCCACCACCAGATATCCACATTGACAGCTATGGTGAAAATTATCTAAGCTTCACCCTGACCATGGAGAGTGATATCAAGGTGAATGGCTATGTGGTGAACCTTTTCTGGGCATTTGACACCCACAAGCAAGAGAGGAGAACTTTGAACTTCCGAGGAAGCATATTGTCACACAAAGTTGGCAATCTGACAGCTCATACATCCTATGAGATTTCTGCCTGGGCCAAGACTGACTTGGGGGATAGCCCTCTGGCATTTGAGCATGTTATGACCAGA
【0148】
FnIII-4:
GGGGTTCGCCCACCTGCACCTAGCCTCAAGGCCAAAGCCATCAACCAGACTGCAGTGGAATGTACCTGGACCGGCCCCCGGAATGTGGTTTATGGTATTTTCTATGCCACGTCCTTTCTTGACCTCTATCGCAACCCGAAGAGCTTGACTACTTCACTCCACAACAAGACGGTCATTGTCAGTAAGGATGAGCAGTATTTGTTTCTGGTCCGTGTAGTGGTACCCTACCAGGGGCCATCCTCTGACTACGTTGTAGTGAAGATGATCCCGGACAGC
【0149】
FnIII-5:
AGGCTTCCACCCCGTCACCTGCATGTGGTTCATACGGGCAAAACCTCCGTGGTCATCAAGTGGGAATCACCGTATGACTCTCCTGACCAGGACTTGTTGTATGCAATTGCAGTCAAAGATCTCATAAGAAAGACTGACAGGAGCTACAAAGTAAAATCCCGTAACAGCACTGTGGAATACACCCTTAACAAGTTGGAGCCTGGCGGGAAATACCACATCATTGTCCAACTGGGGAACATGAGCAAAGATTCCAGCATAAAAATTACCACAGTTTCATTA
【0150】
FnIII-6:
TCAGCACCTGATGCCTTAAAAATCATAACAGAAAATGATCATGTTCTTCTGTTTTGGAAAAGCCTGGCTTTAAAGGAAAAGCATTTTAATGAAAGCAGGGGCTATGAGATACACATGTTTGATAGTGCCATGAATATCACAGCTTACCTTGGGAATACTACTGACAATTTCTTTAAAATTTCCAACCTGAAGATGGGTCATAATTACACGTTCACCGTCCAAGCAAGATGCCTTTTTGGCAACCAGATCTGTGGGGAGCCTGCCATCCTGCTGTACGATGAGCTGGGGTCT
【0151】
膜貫通ドメイン:
GGTGCAGATGCATCTGCAACGCAGGCTGCCAGATCTACGGATGTTGCTGCTGTGGTGGTGCCCATCTTATTCCTGATACTGCTGAGCCTGGGGGTGGGGTTTGCCATCCTGTACACG
【0152】
細胞質尾部(終止コドンに下線が引かれている):
【化2】
【0153】
完全なミニ受容体コンストラクトのアミノ酸配列(FLAGタグを含む)
【化3】
灰色でハイライトされたアミノ酸は、各ドメインの最後のアミノ酸である。
【0154】
FnIIIミニ受容体:685アミノ酸(FLAGタグ、FNIIIカセット、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン)
【0155】
FLAG:DYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDK
【0156】
FnIII-1:1552~1649
ELTVYKVQNLQWTADFSGDVTLTWMRPKKMPSASCVYNVYYRVVGESIWKTLETHSNKTNTVLKVLKPDTTYQVKVQVQCLSKAHNTNDFVTLRTPEG
【0157】
FnIII-2:1650~1746
LPDAPRNLQLSLPREAEGVIVGHWAPPIHTHGLIREYIVEYSRSGSKMWASQRAASNFTEIKNLLVNTLYTVRVAAVTSRGIGNWSDSKSITTIKGK
【0158】
FnIII-3:1747~1839
VIPPPDIHIDSYGENYLSFTLTMESDIKVNGYVVNLFWAFDTHKQERRTLNFRGSILSHKVGNLTAHTSYEISAWAKTDLGDSPLAFEHVMTR
【0159】
FnIII-4:1840~1931
GVRPPAPSLKAKAINQTAVECTWTGPRNVVYGIFYATSFLDLYRNPKSLTTSLHNKTVIVSKDEQYLFLVRVVVPYQGPSSDYVVVKMIPDS
【0160】
FnIII-5:1932~2024
RLPPRHLHVVHTGKTSVVIKWESPYDSPDQDLLYAIAVKDLIRKTDRSYKVKSRNSTVEYTLNKLEPGGKYHIIVQLGNMSKDSSIKITTVSL
【0161】
FnIII-6:2025~2121
SAPDALKIITENDHVLLFWKSLALKEKHFNESRGYEIHMFDSAMNITAYLGNTTDNFFKISNLKMGHNYTFTVQARCLFGNQICGEPAILLYDELGS
【0162】
膜貫通ドメイン:2122~2160
GADASATQAARSTDVAAVVVPILFLILLSLGVGFAILYT
【0163】
細胞質尾部:2161~2214
【化4】
【0164】
数字は、ヒトSORLA完全長タンパク質のアミノ酸位置である。
【0165】
結果
このクローニング実験により、SORL1ミニ遺伝子の作製と、FLAGタグ(3×)、6個の3Fnモジュール、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部からなるSORLAミニ受容体の発現がうまくいったことが示されている。作製したミニ受容体の概略図は、SORLA-wt(SORL1-WTから転写)と比べた形で、図1に示されている。ミニ受容体(SORL1-3Fn)をSDS-PAGEゲルに移したところ、実際の分子サイズは100kDa前後で、これは、74kDaという理論上の質量よりも大きい(図4)。3Fnドメインは、糖鎖付加部位をいくつか含むので、サイズの差は、糖鎖付加に起因する可能性が高い。
【0166】
結論
要約すると、3Fnカセット、膜貫通領域及び細胞質尾部を含むSORLA-3Fnミニ受容体の作製及び発現に成功したことを我々は初めて示した。このミニ受容体を下記の実施例で使用して、本発明を機能的に特徴付ける。
【0167】
実施例2:SORLAミニ受容体は、アミロイド形成性産物のレベルを特異的に低下させる。
目的
この実施例は、SORLAミニ受容体が、アルツハイマー病に関与する重要なタンパク質及び経路にどのような影響を及ぼすか調べることを目的とした。完全長SORLAタンパク質がどのようにして、分泌経路においてAPPが輸送されるのを低減するとともに、エンドソームからAPPがリサイクルされるのを増加させて、その結果、sAPPa及びsAPPb/Abペプチド産物の両方が減少するのかを我々は以前に示した(Andersen et al.2005)。しかしながら、本発明のミニ受容体は、APPタンパク質の直接結合に必要とされるCRドメイン(Mehmedbasic et al.2015)も、アミロイド-β(Aβ)ペプチドに結合すると示唆されているVPS10p-ドメイン(Kitago et al.2015)も有さないので、そのミニ受容体を構成するSORLA残部が、APPの生物学的動態に影響を及ぼすのかは分かっていない。
【0168】
材料及び方法
これに対処するために、我々は、マウス神経芽腫2a細胞(N2a)細胞に、(インサートを含まないpcDNAプラスミドとともに)ヒトAPPタンパク質発現のためのヒトAPP-mycコンストラクトをトランスフェクションするか、または細胞に、SORLA-wtもしくはSORLA-3Fn(実施例1に記載されているようなSORLAミニ受容体、もしくは実施例8ではFLAG-ミニともいう)をコードするプラスミドとともに、APP-mycをコトランスフェクションするかし、ウエスタンブロットアプローチ、及びヒト配列APP断片に特異的なMesoscale Discovery(MSD)アッセイによる所定のAPP代謝産物の定量を用いて、APPのタンパク質分解を解析した(図4図6及び図8)。mycタグにより、抗myc抗体によってAPP-mycを容易に検出可能になる。トランスフェクションから48時間後、培地を無血清培地に変更し、さらに48時間、細胞で静置してから、その馴化培地を回収するとともに、細胞を回収した。SDS-PAGEを用いて、細胞溶解液及び培地中のタンパク質を分離し、ニトロセルロース膜にブロットした。細胞溶解液においては、APP-myc、SORLA及び(ローディングコントロールとしての)β-アクチンを検出するための抗体を用いて、または培地試料においては、sAPPαを検出するための抗体を用いて、Wb解析を行った(図4)。この実験を少なくとも5回繰り返し、細胞のトランスフェクションはduplicateにした。SORLA細胞外ドメイン全体(sol-SORLA)に対するポリクローナル抗体を用いたところ、完全長SORLAを表す250kDaに相当するバンドの強度と、ミニ受容体SORLAを表す100kDaに相当するバンドの強度が同程度であることが、明らかに視認可能であったことから、これらの2つのSORLAコンストラクトのトランスフェクション効率が同程度であることが示された。
【0169】
結果
以前に示されたように(Andersen et al.2005)、SORLA-wt(SORL1-WTから転写)は、APPがsAPPαに切断されるのを阻害し(レーン5及び6)、SORLA-wtをトランスフェクションした細胞から得た馴化培地において、sAPPαのシグナルを大きく低下させる(図4B)。
【0170】
しかしながら、ウエスタンブロット(Wb)の検証に基づくと(図4)、SORLA-3Fn(SORL1-3Fnから転写)をトランスフェクションした細胞では、馴化培地において、sAPPαレベルの明らかな低下はいずれも見られなかった(レーン7及び8)。
【0171】
結果として、SORLA-wt及びミニ受容体がsAPPαレベルに及ぼした作用には、かなり差があった。ミニ受容体は、APPを切断させる点、すなわち、sAPPαを増加させるとともに、sAPPαを減少させないという点で、SORLA-wtよりも優れている。このことは、AD患者にとって有益である。
【0172】
5枚すべてのWb膜のバンド強度の定量によって、これらの結果がさらに確認され、ミニ受容体をトランスフェクションした細胞において、sAPPαの減少を検出できなかったことが示された。sAPPαレベルは、コントロール細胞よりもかなり高かったほどである(図5)。
【0173】
さらに定量的なMSD解析によってsAPPαを測定することによって、この知見を検証した(図6A)。このアッセイでは、試料に由来するsAPPβの定量も可能であった。ミニ受容体の存在下では、sAPPαは増加したが、sAPPβのレベルは、コントロール細胞で観察されたレベルよりも低かったことから(図6B)、アミロイド形成性のAPPプロセシングを選択的に低減する、ミニ受容体の特有の機能が示唆された。換言すると、アミロイド形成性のAPPプロセシングには、sAPPβの生成が含まれる一方で、非アミロイド形成性のAPPプロセシングには、sAPPαの産生が含まれる。本明細書に示されているデータにより、ミニ受容体が、非アミロイド形成性のプロセシングを補佐することが示されている。
【0174】
したがって、ウイルスでの送達(すなわち遺伝子療法)を可能にする、ミニ受容体コンストラクトのサイズに加えて、アミロイド形成性のプロセシングが特異的に低減されるのは、有益な点である。非アミロイド形成性のsAPPα断片は、神経栄養作用/有益な作用があるとみなされているからである。
【0175】
したがって、我々は次に、標準的なELISAプロトコールを用いて、トランスフェクションしたN2a細胞から得た培地中のAβ40レベルを求めた(3回の独立した実験から選択した5個の試料)。以前に示されたように(Andersen et al.2005)、Aβ40レベルは、SORLA-wtの存在下で大きく低下する(図7)。しかしながら、SORLA-3Fnをトランスフェクションした細胞から得た培地中でsAPPβが減少した観察結果(図6Bを参照されたい)と一致して、Aβ40のレベルは、SORLA-3Fnの存在下でも、コントロール細胞と比べて低下した。
【0176】
この知見は、Aβ38、Aβ40及びAβ42という3つのアミロイドβ-ペプチド種の、MSDによる定量結果によって立証され、この定量では、3つのすべてのAβ形態が、SORLA-3Fnの存在下で、コントロール細胞と比べて、SORLA-wtをトランスフェクションした細胞で見られたレベルと同等の低レベルまで有意に減少したことを我々は見出した(図8A~C)。概して、Aβ38、Aβ40及びAβ42は、エンドソーム状態が不十分なこと/エンドソーム活性が低いことのレポーターとみなされている。したがって、我々は、これらのマーカーの減少により、エンドソーム活性の回復が示唆されると評価する。
【0177】
要約すると、以前の知見と一致して、sAPPa、sAPPb、ならびに38アミノ酸長、40アミノ酸長及び42アミノ酸長のAb-ペプチド(図8A~C)のレベルが有意に低下したことによって立証されたように、SORLA-wtの存在により、非アミロイド形成性及びアミロイド形成性のプロセシングの両方が低減する。それどころか、驚いたことに、我々は、FLAG-miniの存在下で、アミロイド形成性のAPPプロセシングが有意に低減したとともに、sAPPb及び3つのすべてのAbペプチド(Ab38/Ab40/Ab42)の産生が有意に低減したことも観察した。しかしながら、完全長SORLA-wtでは、sAPPaの産生も低下した一方で、FLAG-miniでは、この非アミロイド形成性の断片が有意に増加した(図6A)。
【0178】
結論
SORLA-wtでは、アミロイド形成性及び非アミロイド形成性のAPPプロセシングの両方が低減する一方で、ミニ受容体SORLA-3Fnでは、(sAPPαは変化しないので、)非アミロイド形成性のプロセシングには影響が及ばない。しかしながら、ミニ受容体は、アミロイド形成性の産物(sAPPβ及びAβ)のレベルを特異的に低下させることができる。この特徴は、レトロマー増強薬で処理した細胞で観察された状況(Mecozzi et al.2014)と同様である。レトロマーの機能は、アミロイド形成性のプロセシングの主要な細胞部位であるエンドソームから、カーゴ(すなわちAPP)を輸送することに関連するからである(Haass 2012)。本発明のミニ受容体は、SORLA-wtと同じ細胞質ドメインを有するので、そのミニ受容体は、SORLA-wtと同様に、レトロマー依存性のエンドソームリサイクルにも関与する可能性が高い(Fjorback et al.2012)。APPがsAPPαに非アミロイド形成性にプロセシングされるのが、SORLA依存性に低下するのは、分泌経路において、SORLA-wt(CRクラスターを含む)の活性に依存している(Mehmedbasic et al.2015)。勘案すると、これにより、これらの2つのプロセシング経路において、SORLAの独立した役割を示唆するモデルが得られる。sAPPαは、神経栄養機能/有益な機能があると推測されるので、これは、最適な薬物プロファイルであり、したがって、薬理学的な介入を最適に設計して、このAPP断片の生成に影響が及ばないようにすることになる。
【0179】
以前の研究により、その11個のCRドメインが欠失しているが、インタクトな3Fn領域を有するSORLAが、APPとも、そのプロセシングともいかに相互作用しなかったか示されたので(Mehmedbasic et al.2015)、ミニ受容体SORLA-3Fnが、(sAPPβの減少を介して、)アミロイド形成性のAPPプロセシングを低減できることは、驚くべきかつ予想外の利点である。本明細書で示されているデータにより、本発明のミニ受容体をAD患者の脳に送達する治療効果が有望であることが裏付けられている。
【0180】
SORLA-wtについて以前に説明されたように(Spoelgen et al.2006)、我々は、そのミニ受容体が、APP及びBACE1との複合体を形成すると推測し、我々は、SORLAの細胞質ドメインが、この三量体複合体の形成を低減できることも見出した。
【0181】
実施例3:ミニ受容体コンストラクトのFANSHYモチーフに変異を導入して、レトロマー依存性の輸送特性が改善した第2世代のミニ受容体を作製
目的
我々は、FANSHY配列におけるいくつかの変異が、レトロマーとの複合体形成を増大させることができるとともに、このような変異を加えたコンストラクトは、エンドソーム輸送を行う能力と、アミロイド形成性のAPPプロセシングをさらに低減させる能力が改善されるという概念実証を示す。
【0182】
材料及び方法
我々は、FANSHYモチーフを含むペプチドのパネルを使用する。そのペプチドは、野生型FANSHY配列、または1つのアミノ酸(複数可)の置換(複数可)のうち、in silico解析に基づき、レトロマーに対する親和性を向上させると予測される置換のいずれかを有する。
【0183】
このようなペプチドにおいて、等温滴定熱測定を用いて、レトロマーとの相互作用を試験する。
【0184】
ペプチドとレトロマーとの結合を増大させる変異をSORLA-3Fnのコンストラクトに導入し、その後、培養(N2a)細胞及び/または初代マウスニューロン養液において、APPプロセシングに対する影響を試験する。
【0185】
結果:
我々は、上記の修飾(すなわち置換)を有さないミニ受容体よりも、レトロマーに強力に結合するとともに、アミロイド形成性のAPPプロセシングをかなり低減する1つのミニ受容体バリアントまたはいくつかのミニ受容体バリアントが特定されると予想する。
【0186】
結論:
第2世代のミニ受容体(複数可)では、上記の修飾(すなわち置換)を有さないミニ受容体と比べて、エンドソームによるリサイクルがさらに増大し、Aβレベルがかなり大きく低下するので、トランスレーション値が改善される。
【0187】
実施例4:初代マウスニューロン及びヒトiPSC由来ニューロンの培養液に、SORLA-3Fnをウイルス送達する方法
目的
培養細胞株におけるように、ニューロン培養液において、ミニ受容体のウイルス送達により、アミロイド形成性のプロセシングが低減されるエビデンスを提供すること。
【0188】
材料及び方法
まず、我々は、SORLA-3Fnインサートを含む、AAV9ベースのウイルスベクター(いずれかのタグの有無にかかわらない)を調製する。次に、我々は、初代皮質(または海馬)ニューロンを野生型マウスから単離し、感染ニューロンと非感染ニューロンにおいて、ウエスタンブロッティング及びMesoscale Discoveryアッセイを用いて、内因性のマウスAPP断片について、APPプロセシングを比較する。
【0189】
結果:
感染ニューロンのAβ分泌量は、非感染ニューロンと比べて減少が見られるが、sAPPαのレベルは同程度であると我々は予想する。SORLA細胞外ドメインに対する抗体を用いた、細胞溶解液のウエスタンブロットによって、SORLA-3Fnの初代ニューロンへの送達の成功が示されるであろう。
【0190】
結論:
ミニ受容体を用いて、初代ニューロンにおいて、Aβレベルを低下させることができることが示されると我々は予想する。
【0191】
実施例5:エンドソーム肥大化のレスキュー
目的
レトロマー増強化合物に関する以前の知見(Jessica Young、非公開)と同様に、SORLAミニ受容体が、SORL1欠損ニューロン培養液で観察されるエンドソーム肥大化を低減できることを示すため。
【0192】
材料及び方法
(Knupp et al,2020に公開されているように)SORL1がノックアウトされたiPSC由来ニューロンを用いて、ミニ受容体での処置によって、エンドソーム肥大化がレスキューされるかを我々は調査する。レスキューされる場合には、我々は次に、APP及び/またはPSEN1について、疾患アレルを有するiPSC由来ニューロンであって、エンドソームサイズの増大(すなわち病原性)も示すニューロン(Kwart et al.2019)に、同様の「レスキュー実験」を適用する。
【0193】
SORL1が標的欠失されたiPSC株が樹立されている(Knupp et al.2020)(8)。我々は、SORLA-3Fnミニ受容体に感染させたSORL1欠損ニューロンにおいて、Rab5による免疫細胞化学を用いて、エンドソームサイズを求め、非感染ニューロンと比較する。その後、他のAD関連変異を有するiPSC由来ニューロンを、SORLA-3Fnミニ受容体に感染させる。
【0194】
結果:
SORLA-3Fnは、SORL1が欠損したiPSC由来ニューロンのエンドソームのサイズを、野生型iPSC由来ニューロンと同程度のサイズまで縮小させる(すなわちレスキューする)ことが見出されると我々は予想する。APPまたはPSEN1の遺伝子に、原因となるバリアントを有するiPSC由来ニューロンでは、同様に、SORLA-3Fnへの感染により、正常なエンドソームサイズに回復する。
【0195】
結論:
原因となるバリアントと遺伝的に似ているニューロン、すなわち、SORL1が欠損しているか、またはAPP及びPSEN1に変異を有するニューロンにおいて、SORLAミニ受容体の遺伝子の送達により、エンドソームの病的な肥大化を低減できることが見出されると我々は予想する。
【0196】
実施例6:ミニ受容体による、レトロマー複合体の安定化
目的:
ミニ受容体のさらなる開発
【0197】
背景:
エンドソームの小管膜でアセンブルされるレトロマー複合体の構造であって、cryoEMによって解明した構造により、その細胞質部位で、レトロマーのコートが特定されており、そのコートでは、2つのコアレトロマーユニットが、最上部のVPS29サブユニットによって二量体化するアーチを形成し、最下部でも、2つのVPS26サブユニットが密接している(図9A)。これにより、そのコート構造の基本的なユニットが形成される。以前の研究により、SORLAの細胞質尾部がVPS26と相互作用することが特定されている(Fjorback 2012)。今回、我々は、SORLA(及びミニ受容体)の3Fnドメインが、二量体化できることを特定した(図9B)。したがって、ミニ受容体は、細胞内で発現すると、エンドソーム膜において二量体を形成し、その2つの細胞質尾部が、レトロマー複合体の隣接する2つのVPS26サブユニットと相互作用すると推定するのは合理的である。ミニ受容体は、二量体化を誘導するので、そのミニ受容体が存在すると、レトロマーのコート及びエンドソーム小管の活性が安定化する。その結果、ミニ受容体は、レトロマー複合体を安定化する。レトロマー安定性の増大、すなわち活性の増大は、アミロイド形成性のAPP切断を低減するとともに、それに付随して、非アミロイド形成性の産物である可溶性APPα(sAPPα)の生成が増大することが示されている(Mecozzi et al.2014)。
【0198】
材料及び方法
ミニ受容体の二量体化を増大させる方法において、ADに対するその保護活性を向上させる能力を試験する。ある1つの設定では、ミニ受容体を用いた遺伝子療法を目的として、その二量体の強度を上昇させる操作変異を有する型のミニ受容体を樹立する。この型は、未操作のミニ受容体と比べて、活性に優れる。このような変異は、そのミニ受容体の二量体複合体の構造に基づき特定し得る。
【0199】
エンドサイトーシスによる取り込みによって、エンドソームの内腔に進入するとともに、SORLA 3Fn二量体の相互作用を増大できる化合物(小分子シャペロンまたは抗体)は、ミニ受容体二量体の強度をさらに上昇させる可能性がある。これについて試験する。
【0200】
結果:
我々は、ミニ受容体をさらに最適化する。
【0201】
結論:
微調整された様々な特性を有する様々な型のミニ受容体を樹立する。
【0202】
実施例7:SORL1ミニ受容体のFANSHYモチーフ依存性細胞内輸送
目的:
レトロマーへの結合に関与することが以前に示された、SORLAの細胞質尾部におけるFANSHYモチーフが、SORLAミニ受容体の細胞内輸送にとっても重要であることを示すため。
【0203】
材料及び方法
FLAG-mini-WT(実施例1及び2では、SORLA-3Fnミニ受容体ともいう。N末端FLAGタグを含む。WTは、実施例7においては、ミニ受容体の非変異バリアントを示す野生型である)のコンストラクトを、部位特異的変異誘発の鋳型として使用して、6アミノ酸のFANSHYモチーフが、標準的な方法及びプライマーを用いて、アラニン残基によって置換された変異体コンストラクト(FLAG-mini-FANSHY)を作製した。
【0204】
FuGene及び下記の標準的なプロトコールを用いて、N2a細胞に、これらの2つのコンストラクトをトランスフェクションし、トランスフェクションから48時間後に、溶解液及び培地を回収し、SDS-PAGE、及び完全長SORLAの細胞外断片を認識するポリクローナル抗体、すなわち、ミニ受容体の細胞外部分にも結合できるポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット(Wb)実験によって解析した(図10A及び10B)。Prism6.0というソフトウェアを用いて、5回の独立した実験から得たシグナルの定量値をプロットした(図10C)。
【0205】
細胞染色のために、標準的なプロトコールと、ウエスタンブロット解析で用いた抗体と同じ初代ポリクローナルSORLA抗体と、蛍光色素488に結合した蛍光標識抗ウサギ二次抗体とを用いて、トランスフェクション細胞のFACS解析を行った(図10D及び図10E)。
【0206】
ポリクローナル抗SORLA抗体を用いて、トランスフェクション細胞の細胞表面発現も、免疫細胞化学によって検出した。抗体が細胞膜を透過しないように、インキュベート及び洗浄のために、すべての溶液から洗浄剤を除外してある。すなわち、その抗体は、その細胞表面にある受容体分子に結合するのみであると予想される(図10F)。
【0207】
結果:
我々は、以前に説明されたように(Fjorback,2012)、FANSHYモチーフがアラニン残基に置き換えられているために、レトロマーに結合できないミニ受容体変異体FLAG-mini-FANSHYを作製した。我々は、FLAG-mini-WT(尾部領域に変異をいずれも有さないミニ受容体。実施例1及び2でSORLA-3Fnミニ受容体と称したものに相当する)またはFLAG-mini-FANSHY(尾部領域に変異を有するミニ受容体)のいずれかをトランスフェクションした細胞から得た溶解液及び馴化培地を使用して、レトロマー結合の欠損により、細胞表面からのシェディングがどの程度影響を受けたのかを求めた。これらの2つのミニ受容体バリアントの間では、細胞での発現については、いずれの違いも我々には観察されなかったが(図10A)、ミニ受容体の変異バリアントの分泌は、非変異バリアントと比べて有意に増加した(図10B)ことを我々は見出し、これは、完全長SORLAタンパク質で観察されるプロセスと似ているが、そのプロセスが増強されたプロセスにおいて、TACEによって、タンパク質分解によって切断されることによる、細胞表面でのシェディングが増大した結果である可能性が高い。これにより、その変異バリアントにおけるレトロマー結合部位の欠失により、そのミニ受容体が、細胞内、すなわちエンドソーム構造内に局在する能力が低減され、その結果、細胞表面での局在が増大したことが示唆されている。これにより、ミニ受容体がエンドソームを安定化させるという仮説がさらに裏付けられる。
【0208】
細胞分布の変化の裏付けを得るために、我々は、蛍光活性化細胞選別(FACS)解析を適用して、FLAG-mini-WT及びFLAG-mini-FANSHYの細胞表面での発現を求めた。この方法を用いて、我々は、トランスフェクション細胞の2つの試料について、細胞表面での発現を解析し、細胞表面に変異体コンストラクトを有する細胞の方が多く(WTは321/347に対して、FANSHYは592/509)、変異ミニ受容体の方が、シグナルも強い(WTは4.63E6/4.73E6に対して、FANSHYは5.29E6/5.29E6)ことを見出した(図10D)。概括的には、すなわち、変異体バリアントFLAG-mini-FANSHYをトランスフェクションした細胞と、非変異体バリアントFLAG-mini-WTをトランスフェクションした細胞とを比べると、約50%以上の細胞は、そのミニ受容体を細胞表面に有する。さらに、そのレトロマー結合部位を欠失したミニ受容体(すなわちFLAG-mini-FANSHY)では、そのミニ受容体の発現レベルも20%前後上昇した。
【0209】
FLAG-mini-FANSHYの発現が細胞表面で、FLAG-mini-WTと比べて強いことを可視化するために、我々は、トランスフェクション細胞の、免疫細胞化学による解析も行い、洗浄剤の非存在下で、SORLAに対する一次抗体で染色した細胞の共焦点顕微鏡画像を得ることによって、細胞表面での局在も定め、細胞表面のミニ受容体のみを特定可能にした。代表的な画像により、変異バリアントFLAG-mini-FANSHYの細胞表面シグナルが、非変異バリアントFLAG-mini-WTの場合よりもどの程度強いかが示されており(図10E)、これは、FACSの結果と一致している。
【0210】
結論:
FLAG-ミニ受容体のレトロマー結合部位の欠失により、そのコンストラクトの細胞内での局在が低減され、細胞表面でのその発現が増加するというエビデンスを我々は提供している。これにより、ミニ受容体コンストラクト(例えば、実施例1及び2に記載されているようなコンストラクト)が、レトロマーと相互作用する能力、及び生理的なエンドソームプロセシングが行われるようにするのに必要である重要な機能を果たす能力がさらに確認される。したがって、そのミニ受容体は、機能的であると予想されるとともに、治療現場において、例えば、アルツハイマー病患者へのウイルスの移入を介して有益であると予想される。
【0211】
実施例8:3Fnの媒介による、SorLAまたはSorLAミニ受容体の二量体化は、それとレトロマーとの相互作用であって、エンドソーム輸送を調節する相互作用に必須である
目的:
SorLA及びSorLAミニ受容体の結合及び二量体化の能力をさらに調査するため
【0212】
材料及び方法:
クローニング
いくつかのオンラインソフトウェア(PsiPred、SSpro、Scratch及びYaspin)を用いて、SORL1 3Fnカセットのドメイン境界をin silicoで求めて、アミノ酸配列において二次構造を予測した。その後、高度に保存された二次構造パターンと、ほとんど保存されていないアミノ酸に基づき、その6個のSORL1 3Fnドメインのアラインメントを行った。
【0213】
プライマー対(fwd:5’-CAGGATCCGACTACAAGGACCACGACGGCGACTACAAGGACCACGACATCGACTACAAGGACGACGACGACAAGGAGTTGACTGTGTACAAAGTACAG-3’及びrev:5’-GTGAATTCTCAGGCTATCACCATGG-3’)を用いた一段階PCR反応(Herculase II Fusion)であって、ヒトSORL1断片をGlu1552(3Fnカセットの開始点と予測されている)の下流から終止コドンまで増幅する反応によって、FLAG 3Fnミニ受容体を作製した。加えて、そのフォワードプライマーにより、3×FLAGタグをコードする配列がアンプリコンの5’末端にが付加される。BamHI制限酵素及びEcoRI制限酵素を用いて、発現を駆動するためのマウスIgκ鎖V-J2-Cシグナルペプチドを利用して、そのPCR産物をPsectag2B発現ベクター(Invitrogen)にクローニングした。
【0214】
プライマー対(fwd:5’-CAGGATCCGAGTTGACTGTGTACAAAGTAC-3’及びrev:5’-GTGAATTCTCACAGATCCTCTTCTGAGATGAGTTTTTGTTCGGCTATCACCATGGG-3’)を用いることによって、myc 3Fnミニ受容体を同様に作製し、mycタグは、そのC末端に付加した。
【0215】
部位特異的変異誘発
3Fnカセットの推定C末端に終止コドンを導入する部位特異的変異誘発によって、FLAGタグを有する可溶性の3Fnミニ受容体を作製した。プライマーをメーカーからの指示に従って設計した(fwd:5’-CCTGCTGTACGATGAGTGAGGGTCTGGTGCAGATGC-3’、rev:5’-GCATCTGCACCAGACCCTCACTCATCGTACAGCAGG-3’)。psectag2Bベクター内のヒトcDNA(3Fnミニ受容体)で、Quickchange XLという部位特異的変異誘発キット(Agilent)を用いて、部位特異的変異誘発を行った。
【0216】
細胞培養
10%ウシ胎児血清(FBS)及び5%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Lonza)中で、HEK293細胞、N2a細胞及びHeLa細胞を5%COの加湿インキュベーターにおいて、37℃で培養した。
【0217】
10%FBS及び5%P/Sを添加したHyclone(Sigma)培地中で、CHO細胞を5%COの加湿インキュベーターにおいて、37℃で成長させた。
【0218】
Fugene 6 Transfection Reagentというキット(Promega)、及びDNA鋳型1μgまたは3μgのいずれかを用いて、細胞に、異なるSORL1コンストラクト及びミニ受容体コンストラクトを一過性にトランスフェクションした。
【0219】
APPの代謝
6ウェルプレートにおいて、1ウェル当たりにおよそ5×10個のN2a細胞を播種し、24時間成長させた。続いて、細胞に、APP-mycとともに、SORL1-WT、3Fnミニ受容体をコードするプラスミド、または空のpcDNA3.1ベクターのいずれかを一過性にコトランスフェクションした。48時間後、その培地を無血清培地(SFM)に変更し、さらに48時間インキュベートしてから、細胞溶解液及び馴化培地を回収した。
【0220】
イムノブロッティング
細胞上清を回収し、プロテアーゼ阻害剤Complete(商標)(Roche)を添加した溶解緩衝液(1MのTris HCl(pH8.1)、0.5MのEDTA、1%のTriton-X-100、1%のNP40)中で、細胞ペレットを氷上で1時間溶解した。BCAアッセイキット(Sigma)を用いて、その溶解液中の総タンパク質含有量を測定した。
【0221】
溶解液及び培地の試料をSDS及び5%β-メルカプトエタノール(別段に記載のない限り)と混合してから、95で5分加熱した。4→12%のBis-Trisプレキャストグラジエントゲル(Invitrogen)を用いて、SDS-PAGEゲル電気泳動によってタンパク質を分離し、ニトロセルロース膜(Amersham)に転写した。その膜を1時間、室温で、ブロッキング緩衝液(Tris-Base 0.25M、NaCl 2.5M、脱脂粉乳2%、Tween-20 2%)中でブロックしてから、一次抗体において一晩、4℃でインキュベートした。膜をHRPコンジュゲート二次抗体(1:1500)において、1時間、室温でインキュベートし、最後に、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermofisher)を用いて、Las-4000 Image Reader(Fujifilm)で、そのタンパク質を検出した。
【0222】
抗体:抗FLAG(M2、Sigma)、抗sAPPα(WO2)(MABN10、Merck)、抗myc(R951-25、Invitrogen)、抗LR11(BD Transduction Laboratories)、SORLAタンパク質の細胞外部分全体を認識するために作製した抗SORLA(5387、自家作製、Aarhus University)、抗VPS26b、抗APP及び抗-βアクチン(A5441、Sigma)
【0223】
sAPPα/sAPPβイムノアッセイ(Mesoscale)
sAPPα/sAPPβデュプレックスアッセイキット(Mesoscale Discovery)を用いて、トランスフェクションしたN2a細胞から得た上清におけるsAPPα及びsAPPβのシェディングレベルを測定した。
【0224】
sAPPα及びsAPPβのキャリブレーターの段階希釈液をメーカーの指示に従って調製した。プレコートしたプレートであって、スポットが4カ所のプレートを室温で、3%のブロッカーA溶液において1時間、振とうしながらインキュベートしてから、洗浄緩衝液のTrisにおいて、3回洗浄した。キャリブレーター及び未希釈の細胞上清(25μl)をそのプレートに加え、1時間、室温で振とうしながらインキュベートした後、そのプレートを3回洗浄した。最後に、そのウェルを1×Read Buffer Tにおいて、10分、室温でインキュベートした後、SECTOR(登録商標)Imager(Mesoscale Discovery)を用いて、その試料からの電気化学発光シグナルを検出した。Microsoft Excelで、キャリブレーターから作成した標準曲線にフィッティングすることによって、sAPPα及びsAPPβの濃度を計算した。
【0225】
Aβペプチドパネル1のイムノアッセイ(Mesoscale)
Aβパネル1のV-plexアッセイキット(Mesoscale Discovery)によって、トランスフェクションしたN2a細胞から得た細胞上清において分泌されたAβ38、Aβ40及びAβ42を定量した。
【0226】
Aβ38、Aβ40及びAβ42のキャリブレーターを混合し、メーカーから指示されたとおり、4倍段階希釈で希釈した。複数スポットのプレートの、プレコートしたウェルを室温で、Diluent 35において1時間、室温でブロックし、3回、1×PBS+0.05%Tween-20において洗浄した。そのプレートに、検出抗体及びキャリブレーター/未希釈の細胞上清を同時に加え、2時間、室温で振とうしながらインキュベートした。最後に、それらのウェルを3回洗浄し、SECTOR(登録商標)Imagerで電気化学発光シグナルを直ちに解析するために、2×Read Buffer Tを加えた。Microsoft Excelによって、その試料を標準的曲線にフィッティングすることによって、Aβ38、Aβ40及びAβ42の濃度を計算した。
【0227】
免疫共沈降
HEK293細胞に、一過性にトランスフェクションしてから、48時間インキュベートした後、細胞溶解液を回収した。Gammabind Gセファロースビーズ/ダイナビーズに、2,5μgの抗FLAG抗体(F1804、Sigma)を2時間、転倒回転させながら室温でコートした。ビーズを3回洗浄し、トランスフェクションしたHEK293細胞から得た全タンパク質70μgにおいて、一晩、4℃で転倒回転させながらインキュベートした。次に、ビーズを5回洗浄し、5%のβ-メルカプトエタノールを添加したSDS試料緩衝液を用いて、結合したタンパク質をそのビーズから溶離させた。すべての洗浄工程は、PBS+0,05%のTween-20において行った。
【0228】
免疫細胞化学及び共焦点顕微鏡
ポリ-L-リジン0,1%(Sigma)をコートしたガラスカバースリップで、およそ5×10個のHEK293細胞を播種してから、24時間インキュベートした後、トランスフェクションした。細胞には、トランスフェクション試薬Fugene(Promega)を用いて、SORL1-FLAG及びSORL1-GFPをトランスフェクションした。さらに24時間後、細胞を4%のPFAで10分、室温で固定した後、PBSにおいて洗浄した。0,1%のTriton-x-100を含むPBSにおいて、カバースリップを洗浄し、10%のFBSを添加したPBSにおいて、30分、室温でブロックした。ブロックした後、その細胞を一晩、4℃で、FLAGタグに対する一次抗体(F1804 Sigma、1:1000)及びGFP-タグに対する一次抗体(ab6556 Abcam、1:2000)とともにインキュベートした。次に、0,1%のTriton-x-100を含むPBSにおいて、細胞を洗浄し、二次抗体Alexa fluor(Invitrogen、1:500)において、1時間、室温でインキュベートした。続いて、細胞をPBSにおいて洗浄し、核をHoechst(Abcam、1:50000)で10分、室温で対比染色した。最後に、そのカバースリップをスライドガラスにDAKO蛍光封入剤(Agilent)でマウントし、乾燥後、Zeiss LSM780という共焦点顕微鏡を用いて、染色した細胞をイメージングした。
【0229】
二分子蛍光補完法(BiFC)
ポリ-L-リジン0,1%をコートしたガラスカバースリップで、およそ5×10個のHEK293細胞を播種し、24時間成長させてから、Fugene(Promega)を用いてトランスフェクションした。細胞には、SORL1-V1、SORL1-V2、SORL1-GFP、またはSORL1-V1及びSORL1-V2の両方のいずれかを500ngトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞をさらに24時間インキュベートし、4%のPFAで10分固定してから、PBSにおいて洗浄した。ICCについて上記したように、1:100に希釈したSORLA抗体(sol-SORLA、5367)及びDAPIで対比染色を行った。DAKO封入剤(Agilent)を用いて、そのカバースリップをスライドガラスにマウントし、細胞を共焦点顕微鏡Zeiss LSM780で可視化した。
【0230】
in situ近接ライゲーションアッセイ(PLA)
0,1%のポリ-L-リジンをコートしたガラスカバースリップで、HEK293細胞を播種し、24時間インキュベートしてから、Fugene(Promega)を用いてトランスフェクションした。その細胞に、SORL1-FLAGまたはSORL1-GFPのいずれかをコードするプラスミド500ngをコトランスフェクションし、24時間インキュベートした。トランスフェクションしたその細胞を4%のPFAにおいて10分固定し、PBSにおいて洗浄してから、一次抗体においてインキュベートした。細胞を一晩、4℃で、抗FLAG抗体(F1804 M2、Sigma)もしくは抗GFP抗体(ab5665ウサギ、Abcam)のいずれか、または1:1000に希釈した抗FLAG抗体及び1:2000に希釈した抗GFP抗体の両方においてインキュベートした。続いて、0,1%のTriton-x-100を含むPBSにおいて、その細胞を洗浄し、PLAプローブ(Sigma)において1時間、37℃でインキュベートした。次に、細胞を洗浄緩衝液Aにおいて洗浄し、リガーゼ(Sigma)において30分、37℃でインキュベートした。続いて、そのカバースリップを緩衝液Aにおいて洗浄してから、ポリメラーゼ(Sigma)において100分、37℃でインキュベートした。その後、その細胞の1回目の洗浄を洗浄緩衝液Bにおいて行ってから、0,01×洗浄緩衝液Bで1分洗浄した。最後に、DAPIを含むDuolink(登録商標)In Situ Mouting Medium(Sigma)で、カバースリップをスライドガラスにマウントし、共焦点顕微鏡(LSM780、Zeiss)によってイメージングした。
【0231】
GFPトラップによる免疫沈降
メーカーの指示に従い、GFP-Trap Magnetic Particles(M-270,Chromotek)を用いて、C末端とVenus断片との相互作用によって形成されたSORL1二量体(及びコントロールとしてのSORL1-GFP)を免疫沈降させた。トランスフェクションしたHEK293/HeLa細胞から得た全溶解液500ngを磁気ビーズスラリー25μlと1時間、4℃で転倒回転させながらインキュベートした。その後、ビーズを5回、洗浄緩衝液(10mMのTris/HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、0.05%のNonidet-P40、0.5mMのEDTA)において洗浄し、SDS試料緩衝液を用いて溶離した。
【0232】
結果:
SORLAは、in vitroにおいて、3Fnドメインによって二量体を形成する
我々は、SORLAの二量体の能力をさらに明らかにするために、6個の3Fnドメイン、膜貫通領域及び細胞質尾部を、N末端FLAGタグ(実施例1及び2にも記載されているようなもの)またはC末端mycタグ(実施例8ではFLAG-mini、図11Aではmini-mycと称されている)のいずれかとともに含む2つのSORLAミニ受容体コンストラクトを作製した。我々は、これらの膜結合ミニ受容体とは別に、2個、4個及び6個の3Fnドメイン(それぞれ、s3Fn1-2、s3Fn1-4及びs3Fn1-6)を含むが、細胞質尾部及び膜貫通領域を含まない可溶性形態のミニ受容体も作製した。
【0233】
まず、我々は、FLAG-mini及びmini-mycをトランスフェクションした細胞の免疫共沈降解析を用いて、これらの2つの膜結合ミニ受容体が、複合体を形成する能力を試験した。我々は、両方のミニ受容体を共発現させた時に、抗FLAG抗体を用いて、mini-mycを明らかに沈降させることができた一方で、mini-mycのみをトランスフェクションしたが、FLAG-miniを発現させなかった細胞では、mini-mycの沈降は見られなかった(図11B)。これにより、これらの2つのミニ受容体は、複合体を形成するが、大きい方の細胞質複合体の一部であることができる細胞質尾部が、これを媒介する可能性が排除されないことが示されている。
【0234】
s3Fn1-6コンストラクトの発現を試験した第2の実験設定では、我々は、6個のドメインを有する可溶性SORLA断片をトランスフェクションした細胞から得た溶解液及び培地の両方から、タンパク質を通常どおりにSDS-PAGE分離した後、WB解析において、二量体に対応する明らかなシグナルを観察した(図1C)。
【0235】
この二量体形成は、第1の3Fnドメイン及び第6の3Fnドメインに存在するドメイン内ジスルフィド結合を還元するb-メルカプトエタノール(β-ME)によって試料を処置した時に影響を受けやすかったことから、この二量体形成が、正しくフォールディングされた3Fnドメインの構造的一体性に左右されること、及びこれが、SORLAのTMドメイン及び尾部ドメインでは無関係であることが示されている。
【0236】
最後に、我々は、ミニ受容体が、完全長形態のSORLAと相互作用して、ヘテロ二量体を形成できるかも試験した。我々は、HEK293細胞に、FLAG-miniと完全長SORLAをコトランスフェクションし、細胞溶解液を調製し、抗FLAG抗体を用いて、タンパク質を沈降させた。SORLAの細胞外断片に対するポリクローナル血清による検出を用いたWB解析により、細胞において、FLAG-miniが、完全長SORLAも沈降させることが明らかに示された(図1D)。FLAG-mini及び空のベクターをコトランスフェクションしたHEK293細胞、または並行して処置したが、IPにおいて抗FLAG抗体を除外したダブルトランスフェクション細胞から得た溶解液をネガティブコントロール実験とした。
【0237】
エンドソームにおけるSORLA二量体化の細胞解析
次に、我々は、SORLA二量体の形成の細胞局在を調べることに目を向けた。我々は、C末端にFLAGタグまたはGFPタグを有する完全長SORLAタンパク質のコンストラクトを調製し(図12A)、近接ライゲーションアッセイ(PLA)を適用して、細胞内で、SORLAが二量体を形成する場所を調べた。
【0238】
2つの標的分子が近接すると(すなわち二量体化すると)ハイブリダイズでき、ローリングサークル増幅を可能にする短いオリゴヌクレオチドのタグを付加した二次抗体を用いて、免疫染色を行った。共焦点顕微鏡による可視化のために、蛍光標識されたオリゴが、そのアンプリコン上の相補的な配列に結合し、それが赤色ドットによって表される。FLAG抗体及びGFP抗体の両方で同時に染色したところ、強力なPLAシグナルが顕微鏡によって検出され、これらの2つのSORLA分子間での二量体化が示された。
【0239】
まず、我々は、ダブルトランスフェクションしたHEK293細胞を用いて、これらの2つの異なるタグが、これらのタグ付きの受容体形態の局在に影響を及ぼすかを試験し、共局在の程度を求めた。この実験から、それらのタグでは、強い重複が見られ、Manders係数は0.71であったので、それらのタグにより、細胞局在に差が示されなかったことを我々は観察した(図12B)。次に、我々は、抗FLAG(図12C)または抗GFP(図12D)のいずれかを除外したPLA設定のコントロール実験を行い、いずれの設定でも、PLAシグナルの形成が消失した。しかしながら、両方の抗体の存在下では、強力なPLAシグナルを我々は観察し(図12E)、2つの完全長SORLAタンパク質が、細胞内で、二量体を形成できることが確認された。しかしながら、我々が、PLAシグナル(SORLA二量体を表す)とSORLA-GFP(単量体及び二量体の両方を表す)の共局在の程度を求めたところ、いくつかのPLAシグナルについては、共局在が明らかに見られないことに我々は気づき、Manders係数により、重複がわずか0.35であることが確認され(図12E)、二量体として存在するのは、SORLAタンパク質の細胞プールのごく一部であることが示唆された。
【0240】
我々及び他の研究者は、エンドソーム内で、SORLAがいかにレトロマーと結合するかを以前に示し(Fjorback et al.2012)、関連する受容体ソルチリンが、特異的に酸性コンパートメントにおいて、二量体をいかに形成するかを示した(Jauliene et al.2017)。したがって、我々は、SORLA二量体も主としてエンドソーム内で形成されるという仮説を立てた。二量体を表すPLAシグナルと、レトロマーコアのVPS35サブユニットの共染により、共局在の程度が大きいことが示され、Manders係数は0.70であったことから、大半のSORLA二量体が、レトロマーと一緒に位置することが確認された(図12F)。
【0241】
エンドソームのレトロマーのSORLA二量体への結合
次に、我々は、二分子蛍光補完(BiFC)アッセイを独立したアプローチとして用いて、細胞のSORLAが、単量体と二量体との間で平衡状態で存在することを確認したいと考えた。
【0242】
この技法は、スプリット蛍光タンパク質(GFPなど)の断片であって、ベイトタンパク質に融合した非蛍光性のN末端断片と、プレイタンパク質に融合した非蛍光性のC末端断片との構造的相補性に基づいている。ベイトタンパク質とプレイタンパク質が相互作用すると、スプリットドメインが近接して、それらのドメインをリフォールディングさせて、フルオロフォアを含む機能的なβバレル構造にする(図13A)。それにより、2つのタンパク質、我々の事例ではSORLAが二量体化すると、蛍光顕微鏡によって可視化できる蛍光タンパク質の形成が誘導される。
【0243】
したがって、2つのSORLAコンストラクトを操作して、蛍光タンパク質Venus(GFPの誘導体)のN末端断片(Met~Gln157)またはC末端断片(Lys158~Lys238)のいずれかからなるC末端融合体を含むようにした。これらの2つのSORLAコンストラクトは、蛍光タンパク質VenusのN末端部分を含むSORLA-V1及び蛍光タンパク質VenusのC末端部分を含むSORLA-V2と称した。
【0244】
HEK293T細胞に、2つのSORLA BiFCコンストラクトのそれぞれを個別にトランスフェクションしても、緑色の蛍光シグナルは少しも生成されなかった(図13C、上段及び中段のVenus)。これに対して、両方のコンストラクトをコトランスフェクションしたところ、特異的な緑色の細胞質シグナルが現れ、SORLAが二量体化したことが示された(図13C、下段、*)。SORLA抗体で同時染色したところ、SORLAが主に、HEK293細胞の核周囲領域に局在することを示された以前の研究(Herskowitz et al.2012)と一致して、SORLA分子が著しく核周囲に局在したこと(矢印)が示された。SORLA二量体に特異的な緑色のVenusシグナルと、抗SORLAによる染色によって特定された全SORLAのプールとの重複の定量により、ごく一部のSORLAが二量体として存在することが確認された(Manders係数は0.37)(図13D)。
【0245】
次に、我々は、レトロマーが、SORLA単量体またはSORLA二量体に優先的に結合するか試験したいと考えた。この目的のために、我々は、フォールディングされた状態で、Venusタンパク質(ならびにGFP)と相互作用するナノボディに依存するGFPトラップ技法を適用した。しかしながら、そのGFPトラップに用いたナノボディは、V1ともV2とも、Venusタンパク質のこれらの単離部分を沈降させるほど十分な親和性では結合しない。
【0246】
我々は、細胞に、タグなしで、SORLA-GFP、SORLA-V1、SORLA-V2、SORLA-V1とSORLA-V2との組み合わせ、ならびに完全長SORLAをトランスフェクションし、SORLAが、GFPトラップで沈降できる二量体を形成することを確認した(図13B)。予想どおり、GFPトラップを用いると、SORLA-GFPも沈降し、これは、単量体及び二量体のSORLAの両方を表す一方で、再構成されたVenusタンパク質から得られる沈降物は、SORLA二量体部分のみを含むことになる。その膜を、レトロマーのVPS26bサブユニットに対する抗体でリプロービングすることによって、エンドソームのSORLA二量体部分が実際に、レトロマーとの複合体で存在することを我々は示すことができた(図13B)。このツールにより、SORLA単量体及びSORLA二量体のインタラクトームのさらなる解析が可能になるが、このために、SORLAがエンドソーム内で二量体を形成し、そのエンドソームにおいて、SORLAがレトロマーと複合体を形成することが確認されている。
【0247】
結論:
勘案すると、我々のデータは、SORLAが、その3Fnドメインによって二量体を形成することの初めてのエビデンスを提供する。さらに、そのデータにより、ミニ受容体が、レトロマーと相互作用するのに十分であり、さらには、特定の部分においては(例えば、非アミロイド形成性及びアミロイド形成性のプロセシングに対する作用という部分においては)、完全長SorLAよりも優れることがさらに裏付けられている。
【0248】
配列
配列番号1
完全なミニ受容体コンストラクトのDNA配列
BamHI + 3X-FLAG-TAG + 6xFN3 +膜貫通ドメイン+ 細胞質尾部+ 終止コドン+ EcoRI
CAGGATCCGACTACAAGGACCACGACGGCGACTACAAGGACCACGACATCGACTACAAGGACGACGACGACAAGGAGTTGACTGTGTACAAAGTACAGAATCTTCAGTGGACAGCTGACTTCTCTGGGGATGTGACTTTGACCTGGATGAGGCCCAAAAAAATGCCCTCTGCTTCTTGTGTATATAATGTCTACTACAGGGTGGTTGGAGAGAGCATATGGAAGACTCTGGAGACCCACAGCAATAAGACAAACACTGTATTAAAAGTCTTGAAACCAGATACCACGTATCAGGTTAAAGTACAGGTTCAGTGTCTCAGCAAGGCACACAACACCAATGACTTTGTGACCCTGAGGACCCCAGAGGGATTGCCAGATGCCCCTCGAAATCTCCAGCTGTCACTCCCCAGGGAAGCAGAAGGTGTGATTGTAGGCCACTGGGCTCCTCCCATCCACACCCATGGCCTCATCCGTGAGTACATTGTAGAATACAGCAGGAGTGGTTCCAAGATGTGGGCCTCCCAGAGGGCTGCTAGTAACTTTACAGAAATCAAGAACTTATTGGTCAACACTCTATACACCGTCAGAGTGGCTGCGGTGACTAGTCGTGGAATAGGAAACTGGAGCGATTCTAAATCCATTACCACCATAAAAGGAAAAGTGATCCCACCACCAGATATCCACATTGACAGCTATGGTGAAAATTATCTAAGCTTCACCCTGACCATGGAGAGTGATATCAAGGTGAATGGCTATGTGGTGAACCTTTTCTGGGCATTTGACACCCACAAGCAAGAGAGGAGAACTTTGAACTTCCGAGGAAGCATATTGTCACACAAAGTTGGCAATCTGACAGCTCATACATCCTATGAGATTTCTGCCTGGGCCAAGACTGACTTGGGGGATAGCCCTCTGGCATTTGAGCATGTTATGACCAGAGGGGTTCGCCCACCTGCACCTAGCCTCAAGGCCAAAGCCATCAACCAGACTGCAGTGGAATGTACCTGGACCGGCCCCCGGAATGTGGTTTATGGTATTTTCTATGCCACGTCCTTTCTTGACCTCTATCGCAACCCGAAGAGCTTGACTACTTCACTCCACAACAAGACGGTCATTGTCAGTAAGGATGAGCAGTATTTGTTTCTGGTCCGTGTAGTGGTACCCTACCAGGGGCCATCCTCTGACTACGTTGTAGTGAAGATGATCCCGGACAGCAGGCTTCCACCCCGTCACCTGCATGTGGTTCATACGGGCAAAACCTCCGTGGTCATCAAGTGGGAATCACCGTATGACTCTCCTGACCAGGACTTGTTGTATGCAATTGCAGTCAAAGATCTCATAAGAAAGACTGACAGGAGCTACAAAGTAAAATCCCGTAACAGCACTGTGGAATACACCCTTAACAAGTTGGAGCCTGGCGGGAAATACCACATCATTGTCCAACTGGGGAACATGAGCAAAGATTCCAGCATAAAAATTACCACAGTTTCATTATCAGCACCTGATGCCTTAAAAATCATAACAGAAAATGATCATGTTCTTCTGTTTTGGAAAAGCCTGGCTTTAAAGGAAAAGCATTTTAATGAAAGCAGGGGCTATGAGATACACATGTTTGATAGTGCCATGAATATCACAGCTTACCTTGGGAATACTACTGACAATTTCTTTAAAATTTCCAACCTGAAGATGGGTCATAATTACACGTTCACCGTCCAAGCAAGATGCCTTTTTGGCAACCAGATCTGTGGGGAGCCTGCCATCCTGCTGTACGATGAGCTGGGGTCTGGTGCAGATGCATCTGCAACGCAGGCTGCCAGATCTACGGATGTTGCTGCTGTGGTGGTGCCCATCTTATTCCTGATACTGCTGAGCCTGGGGGTGGGGTTTGCCATCCTGTACACGAAGCACCGGAGGCTGCAGAGCAGCTTCACCGCCTTCGCCAACAGCCACTACAGCTCCAGGCTGGGGTCCGCAATCTTCTCCTCTGGGGATGACCTGGGGGAAGATGATGAAGATGCCCCTATGATAACTGGATTTTCAGATGACGTCCCCATGGTGATAGCCTGAGAATTCGT
【0249】
配列番号2
FnIII-1ドメインのDNA配列
GAGTTGACTGTGTACAAAGTACAGAATCTTCAGTGGACAGCTGACTTCTCTGGGGATGTGACTTTGACCTGGATGAGGCCCAAAAAAATGCCCTCTGCTTCTTGTGTATATAATGTCTACTACAGGGTGGTTGGAGAGAGCATATGGAAGACTCTGGAGACCCACAGCAATAAGACAAACACTGTATTAAAAGTCTTGAAACCAGATACCACGTATCAGGTTAAAGTACAGGTTCAGTGTCTCAGCAAGGCACACAACACCAATGACTTTGTGACCCTGAGGACCCCAGAGGGA
【0250】
配列番号3
FnIII-2ドメインのDNA配列
TTGCCAGATGCCCCTCGAAATCTCCAGCTGTCACTCCCCAGGGAAGCAGAAGGTGTGATTGTAGGCCACTGGGCTCCTCCCATCCACACCCATGGCCTCATCCGTGAGTACATTGTAGAATACAGCAGGAGTGGTTCCAAGATGTGGGCCTCCCAGAGGGCTGCTAGTAACTTTACAGAAATCAAGAACTTATTGGTCAACACTCTATACACCGTCAGAGTGGCTGCGGTGACTAGTCGTGGAATAGGAAACTGGAGCGATTCTAAATCCATTACCACCATAAAAGGAAAA
【0251】
配列番号4
FnIII-3ドメインのDNA配列
GTGATCCCACCACCAGATATCCACATTGACAGCTATGGTGAAAATTATCTAAGCTTCACCCTGACCATGGAGAGTGATATCAAGGTGAATGGCTATGTGGTGAACCTTTTCTGGGCATTTGACACCCACAAGCAAGAGAGGAGAACTTTGAACTTCCGAGGAAGCATATTGTCACACAAAGTTGGCAATCTGACAGCTCATACATCCTATGAGATTTCTGCCTGGGCCAAGACTGACTTGGGGGATAGCCCTCTGGCATTTGAGCATGTTATGACCAGA
【0252】
配列番号5
FnIII-4ドメインのDNA配列
GGGGTTCGCCCACCTGCACCTAGCCTCAAGGCCAAAGCCATCAACCAGACTGCAGTGGAATGTACCTGGACCGGCCCCCGGAATGTGGTTTATGGTATTTTCTATGCCACGTCCTTTCTTGACCTCTATCGCAACCCGAAGAGCTTGACTACTTCACTCCACAACAAGACGGTCATTGTCAGTAAGGATGAGCAGTATTTGTTTCTGGTCCGTGTAGTGGTACCCTACCAGGGGCCATCCTCTGACTACGTTGTAGTGAAGATGATCCCGGACAGC
【0253】
配列番号6
FnIII-5ドメインのDNA配列
AGGCTTCCACCCCGTCACCTGCATGTGGTTCATACGGGCAAAACCTCCGTGGTCATCAAGTGGGAATCACCGTATGACTCTCCTGACCAGGACTTGTTGTATGCAATTGCAGTCAAAGATCTCATAAGAAAGACTGACAGGAGCTACAAAGTAAAATCCCGTAACAGCACTGTGGAATACACCCTTAACAAGTTGGAGCCTGGCGGGAAATACCACATCATTGTCCAACTGGGGAACATGAGCAAAGATTCCAGCATAAAAATTACCACAGTTTCATTA
【0254】
配列番号7
FnIII-6ドメインのDNA配列
TCAGCACCTGATGCCTTAAAAATCATAACAGAAAATGATCATGTTCTTCTGTTTTGGAAAAGCCTGGCTTTAAAGGAAAAGCATTTTAATGAAAGCAGGGGCTATGAGATACACATGTTTGATAGTGCCATGAATATCACAGCTTACCTTGGGAATACTACTGACAATTTCTTTAAAATTTCCAACCTGAAGATGGGTCATAATTACACGTTCACCGTCCAAGCAAGATGCCTTTTTGGCAACCAGATCTGTGGGGAGCCTGCCATCCTGCTGTACGATGAGCTGGGGTCT
【0255】
配列番号8
膜貫通ドメインのDNA配列
GGTGCAGATGCATCTGCAACGCAGGCTGCCAGATCTACGGATGTTGCTGCTGTGGTGGTGCCCATCTTATTCCTGATACTGCTGAGCCTGGGGGTGGGGTTTGCCATCCTGTACACG
【0256】
配列番号9
細胞質尾部のDNA配列
AAGCACCGGAGGCTGCAGAGCAGCTTCACCGCCTTCGCCAACAGCCACTACAGCTCCAGGCTGGGGTCCGCAATCTTCTCCTCTGGGGATGACCTGGGGGAAGATGATGAAGATGCCCCTATGATAACTGGATTTTCAGATGACGTCCCCATGGTGATAGCCTGA
【0257】
配列番号10
(FLAGタグを有する)完全なミニ受容体コンストラクトのアミノ酸配列
DYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDKELTVYKVQNLQWTADFSGDVTLTWMRPKKMPSASCVYNVYYRVVGESIWKTLETHSNKTNTVLKVLKPDTTYQVKVQVQCLSKAHNTNDFVTLRTPEGLPDAPRNLQLSLPREAEGVIVGHWAPPIHTHGLIREYIVEYSRSGSKMWASQRAASNFTEIKNLLVNTLYTVRVAAVTSRGIGNWSDSKSITTIKGKVIPPPDIHIDSYGENYLSFTLTMESDIKVNGYVVNLFWAFDTHKQERRTLNFRGSILSHKVGNLTAHTSYEISAWAKTDLGDSPLAFEHVMTRGVRPPAPSLKAKAINQTAVECTWTGPRNVVYGIFYATSFLDLYRNPKSLTTSLHNKTVIVSKDEQYLFLVRVVVPYQGPSSDYVVVKMIPDSRLPPRHLHVVHTGKTSVVIKWESPYDSPDQDLLYAIAVKDLIRKTDRSYKVKSRNSTVEYTLNKLEPGGKYHIIVQLGNMSKDSSIKITTVSLSAPDALKIITENDHVLLFWKSLALKEKHFNESRGYEIHMFDSAMNITAYLGNTTDNFFKISNLKMGHNYTFTVQARCLFGNQICGEPAILLYDELGSGADASATQAARSTDVAAVVVPILFLILLSLGVGFAILYTKHRRLQSSFTAFANSHYSSRLGSAIFSSGDDLGEDDEDAPMITGFSDDVPMVIA
【0258】
配列番号11
FnIII-1ドメインのアミノ酸配列
ELTVYKVQNLQWTADFSGDVTLTWMRPKKMPSASCVYNVYYRVVGESIWKTLETHSNKTNTVLKVLKPDTTYQVKVQVQCLSKAHNTNDFVTLRTPEG
【0259】
配列番号12
FnIII-2ドメインのアミノ酸配列
LPDAPRNLQLSLPREAEGVIVGHWAPPIHTHGLIREYIVEYSRSGSKMWASQRAASNFTEIKNLLVNTLYTVRVAAVTSRGIGNWSDSKSITTIKGK
【0260】
配列番号13
FnIII-3ドメインのアミノ酸配列
VIPPPDIHIDSYGENYLSFTLTMESDIKVNGYVVNLFWAFDTHKQERRTLNFRGSILSHKVGNLTAHTSYEISAWAKTDLGDSPLAFEHVMTR
【0261】
配列番号14
FnIII-4ドメインのアミノ酸配列
GVRPPAPSLKAKAINQTAVECTWTGPRNVVYGIFYATSFLDLYRNPKSLTTSLHNKTVIVSKDEQYLFLVRVVVPYQGPSSDYVVVKMIPDS
【0262】
配列番号15
FnIII-5ドメインのアミノ酸配列
RLPPRHLHVVHTGKTSVVIKWESPYDSPDQDLLYAIAVKDLIRKTDRSYKVKSRNSTVEYTLNKLEPGGKYHIIVQLGNMSKDSSIKITTVSL
【0263】
配列番号16
FnIII-6ドメインのアミノ酸配列
SAPDALKIITENDHVLLFWKSLALKEKHFNESRGYEIHMFDSAMNITAYLGNTTDNFFKISNLKMGHNYTFTVQARCLFGNQICGEPAILLYDELGS
【0264】
配列番号17
膜貫通ドメインのアミノ酸配列
GADASATQAARSTDVAAVVVPILFLILLSLGVGFAILYT
【0265】
配列番号18
細胞質尾部のアミノ酸配列
KHRRLQSSFTAFANSHYSSRLGSAIFSSGDDLGEDDEDAPMITGFSDDVPMVIA
【0266】
配列番号19
フォワードプライマー
CAGGATCCGACTACAAGGACCACGACGGCGACTACAAGGACCACGACATCGACTACAAGGACGACGACGACAAGGAGTTGACTGTGTACAAAGTACAG
【0267】
配列番号20
リバースプライマー
GTGAATTCTCAGGCTATCACCATGG
【0268】
配列番号21
Flagタグ
DYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDK
【0269】
配列番号22
(FLAGタグを含まない)完全なミニ受容体コンストラクトのアミノ酸配列
ELTVYKVQNLQWTADFSGDVTLTWMRPKKMPSASCVYNVYYRVVGESIWKTLETHSNKTNTVLKVLKPDTTYQVKVQVQCLSKAHNTNDFVTLRTPEGLPDAPRNLQLSLPREAEGVIVGHWAPPIHTHGLIREYIVEYSRSGSKMWASQRAASNFTEIKNLLVNTLYTVRVAAVTSRGIGNWSDSKSITTIKGKVIPPPDIHIDSYGENYLSFTLTMESDIKVNGYVVNLFWAFDTHKQERRTLNFRGSILSHKVGNLTAHTSYEISAWAKTDLGDSPLAFEHVMTRGVRPPAPSLKAKAINQTAVECTWTGPRNVVYGIFYATSFLDLYRNPKSLTTSLHNKTVIVSKDEQYLFLVRVVVPYQGPSSDYVVVKMIPDSRLPPRHLHVVHTGKTSVVIKWESPYDSPDQDLLYAIAVKDLIRKTDRSYKVKSRNSTVEYTLNKLEPGGKYHIIVQLGNMSKDSSIKITTVSLSAPDALKIITENDHVLLFWKSLALKEKHFNESRGYEIHMFDSAMNITAYLGNTTDNFFKISNLKMGHNYTFTVQARCLFGNQICGEPAILLYDELGSGADASATQAARSTDVAAVVVPILFLILLSLGVGFAILYTKHRRLQSSFTAFANSHYSSRLGSAIFSSGDDLGEDDEDAPMITGFSDDVPMVIA
【0270】
参照文献
Andersen OM,Reiche R,Schmidt V,Gotthardt M,Spoelgen R,Behlke J,et al.SorLA/LR11,a neuronal sorting receptor that regulates processing of the amyloid precursor protein.Proc Natl Acad Sci U S A.2005;102(38):13461-6.
【0271】
Fjorback AW,Seaman M,Gustafsen C,Mehmedbasic A,Gokool S,Wu C,et al.Retromer binds the FANSHY sorting motif in sorLA to regulate amyloid precursor protein sorting and processing.J Neurosci.2012;32(4):1467-80.
【0272】
Haass C,Kaether C,Thinakaran G,Sisodia S.Trafficking and proteolytic processing of APP.Cold Spring Harb Perspect Med.2012;2(5):a006270.
【0273】
Herskowitz JH,Offe K,Deshpande A,Kahn RA,Levey AI,Lah JJ,GGA1-mediated endocytic traffic of LR11/SorLA alters APP intracellular distribution and amyloid-β production,Mol Biol Cell.2012 Jul;23(14):2645-57.Epub 2012 May 23.
【0274】
Januliene D,Andersen JL,Nielsen JA,Quistgaard EM,Hansen M,Strandbygaard D,Moeller A,Petersen CM,Madsen P,Thirup SS,Acidic Environment Induces Dimerization and Ligand Binding Site Collapse in the Vps10p Domain of Sortilin,2017 Dec 5;25(12):1809-1819.e3.
【0275】
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【0276】
Knupp A,Mishra S,Martinez R,Braggin JE,Szabo M,Kinoshita C,et al.Depletion of the AD Risk Gene SORL1 Selectively Impairs Neuronal Endosomal Traffic Independent of Amyloidogenic APP Processing.Cell Rep.2020;31(9):107719.
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Kwart D,Gregg A,Scheckel C,Murphy EA,Paquet D,Duffield M,et al.A Large Panel of Isogenic APP and PSEN1 Mutant Human iPSC Neurons Reveals Shared Endosomal Abnormalities Mediated by APP beta-CTFs,Not Abeta.Neuron.2019;104(2):256-70 e5.
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【0279】
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【0280】
Scheltens P,De Strooper B,Kivipelto M,Holstege H,Chetelat G,Teunissen CE,et al.Alzheimer’s disease.Lancet.2021.
【0281】
Spoelgen R,von Arnim CA,Thomas AV,Peltan ID,Koker M,Deng A,et al.Interaction of the cytosolic domains of sorLA/LR11 with the amyloid precursor protein (APP) and b-secretase b-site APP-cleaving enzyme.J Neurosci.2006;26(2):418-28.
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13A
図13B
図13C
図13D
【配列表】
2024525221000001.xml
【国際調査報告】