(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ソラナム・リコペルシコン果実(トマト)の皮抽出物の美容的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240703BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240703BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240703BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240703BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240703BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240703BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240703BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240703BHJP
A61K 36/81 20060101ALI20240703BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20240703BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20240703BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20240703BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240703BHJP
A61K 47/44 20170101ALN20240703BHJP
A61Q 1/04 20060101ALN20240703BHJP
A61Q 5/02 20060101ALN20240703BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q17/00
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/63
A61Q19/00
A61Q19/08
A61P17/06
A61P17/10
A61P17/00
A61P37/08
A61P37/04
A61P17/16
A61K36/81
A61K31/01
A61K31/045
A61K31/575
A23L33/105
A61K47/44
A61Q1/04
A61Q5/02
A61K131:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580607
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022068203
(87)【国際公開番号】W WO2023275329
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523487966
【氏名又は名称】イナチュラルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レイラ・ファルカオ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・イサリー
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LE02
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4C083AA111
4C083AA112
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4C206ZA89
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4C206ZB13
(57)【要約】
本発明は、皮膚若しくは粘膜の自然防御を維持する、回復させる及び/又はバランスさせる、又は強化するための、アミリンを少なくとも5質量%、ステロールを少なくとも1.5質量%、及びリコピンを最大0.5質量%含む親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚若しくは粘膜の自然防御を維持する、バランスさせる、又は強化するための、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.5質量%、アミリン類を少なくとも5質量%及びステロールを少なくとも1.5質量%含む、親油性ソラナム・リコペルシコン(Solanum lycopersicum)果実のピール抽出物の美容的使用。
【請求項2】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、皮膚のバリア機能を強化するために、及び/又は外部侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲に対する皮膚の抵抗力若しくは耐性を維持する若しくは増加させるために、及び/又は外部侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲によって引き起こされる皮膚の非病理学的変化を予防する若しくは処置するために用いられる、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項3】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、特に、皮膚の快適性を改善させる若しくは回復させるため、並びに/又は健常な皮膚マイクロバイオームを回復させる及び/若しくは維持するための、無痛化剤として用いられる、請求項1又は2に記載の美容的使用。
【請求項4】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、抗菌ペプチド(AMP)の発現を誘導する、請求項1から3のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項5】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、植物油又は鉱油、好ましくは、植物油、例えば、ソラナム・リコペルシコン種子油と組み合わせて用いられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項6】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の植物油又は鉱油に対する質量比が、1:2~1:70である、請求項5に記載の美容的使用。
【請求項7】
植物油及び親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、トマト副産物の同時抽出又は別々の抽出により、例えば、超臨界CO2抽出によって得られる、請求項5又は6に記載の美容的使用。
【請求項8】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.3質量%、好ましくは最大0.1質量%含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項9】
アミリン類が、α-アミリン、β-アミリン及び/又はδ-アミリンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項10】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、抽出物の総質量に対して、α-アミリンを少なくとも1.5質量%、β-アミリンを少なくとも1質量%及びδ-アミリンを少なくとも2.5質量%含む、請求項9に記載の美容的使用。
【請求項11】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、抽出物の総質量に対して、β-シトステロール及びスチグマステロールを少なくとも1質量%含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項12】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、組成物の総質量に対して、0.01%~30%、特に0.1%~5%の質量含量で局所投与のための化粧用組成物中に存在し、前記組成物が、化粧品として許容される少なくとも1種の賦形剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項13】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物及び植物油の組合せ、或いは化粧用組成物が、敏感肌、乾燥肌、老化肌、そばかす傾向の肌(blemish-prone skin)、ニキビができやすい肌、アトピー傾向の肌、又は外部侵襲若しくはストレスによって弱った肌を有する健常な対象に局所適用又は経口投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項14】
そばかす傾向の肌、ニキビができやすい肌、及び/又はアトピー傾向の肌の処置及び/又は予防における使用のための、有効成分として、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.3質量%、アミリン類を少なくとも5質量%、及びステロールを少なくとも1.5質量%含む、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を含む、経口又は局所用組成物。
【請求項15】
好ましくは、湿疹、乾癬、酒さ、ニキビ、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び刺激性皮膚から選択される、自然免疫応答の変化又は不均衡を特徴とする皮膚疾患の処置における使用のための、有効成分として、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.5質量%、アミリン類を少なくとも5質量%、及びステロールを少なくとも1.5質量%を含む、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を含む、経口又は局所用組成物。
【請求項16】
- 抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.3質量%、好ましくは最大0.1質量%;
- 抽出物の総質量に対して、アミリン類、特にα-アミリン、β-アミリン及び/又はδ-アミリンを少なくとも5質量%;
- 抽出物の総質量に対して、ステロールを少なくとも1.5質量%;及び好ましくは、抽出物の総質量に対して、β-シトステロール及びスチグマステロールを少なくとも1質量%
含む、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物。
【請求項17】
好ましくは、組成物の総質量に対して、0.01%~30%の質量含量の、請求項16に記載の親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物及び化粧品として許容される少なくとも1種の賦形剤を含む、化粧用組成物。
【請求項18】
皮膚及び/又は粘膜の状態及び/又は外観を改善する観点からの、皮膚及び/又は粘膜のための美容ケア方法であって、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を対象に局所適用又は経口投与する工程を含み、前記抽出物が、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.5質量%、アミリン類を少なくとも5質量%及びステロールを少なくとも1.5質量%含む、美容ケア方法。
【請求項19】
皮膚若しくは粘膜の自然防御を維持する、バランスさせる、又は強化するための;特に、皮膚のバリア機能を強化するための、及び/又は外部侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲又は情動ストレスに対する皮膚の抵抗力若しくは耐性を維持する又は増加させるための、及び/又は外部侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲又は情動ストレスによって引き起こされる皮膚の非病理学的変化を予防する若しくは処置するための;並びに/又は皮膚の快適性を改善させる若しくは回復させるための、並びに/又は健常な皮膚マイクロバイオームを回復させる若しくは維持するための、請求項18に記載の美容ケア方法。
【請求項20】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、請求項4から16のいずれか一項に規定される通りである、請求項18又は19に記載の美容ケア方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚若しくは粘膜の自然防御を維持する、回復させる及び/又はバランスさせる、又は強化するための有効成分としてのソラナム・リコペルシコン(Solanum lycopersicum)果実(トマト)のピール抽出物の美容的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のバリアは、物理的バリア及び化学的バリアで構成され、いずれも皮膚の自然防御システムに関与している。
【0003】
皮膚の最上部の上皮層である表皮は、ケラチノサイトで構成され、ケラチノサイトは、増殖及び分化の過程を経て、皮膚の上層を絶えず更新している。表皮ケラチノサイトは、多様な環境因子に対するバリアとして重要な役割を果たしている。詳細には、ケラチノサイトの分化プログラムによって、皮膚の最上層に死細胞(角質細胞)が形成される。角化した皮膚層は、弾力性、安定性、保湿性、及び機械的抵抗性の増加を含めた、顔及び組織に多くの利点をもたらす。
【0004】
広範囲の専門化した細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、組織常在性白血球(樹状細胞)及び抗菌ペプチド(AMP)、又は脂質メディエーター(サイトカイン)のような可溶性メディエーターは、表皮バリアに寄与している。
【0005】
皮膚は、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、及び毒素に対する第1のバリアである。病原体に対する自然免疫防御は、物理的バリア、好中球、NK細胞、及びマクロファージ等の細胞の動員により、並びに抗菌ペプチドの分泌により行われる。3種類の表皮細胞は、免疫応答:ケラチノサイト、メラノサイト、及びランゲルハンス細胞に関与している。これらの細胞は、皮膚にのみ見出され、自然系及び適応系において最重要な役割を果たしている。特に、ケラチノサイトは、白血球の動員及び活性化(自然免疫応答)のためにケモカインを産生し、獲得免疫系の活性化をもたらす抗原提示細胞である。表皮の最上層において見出されるランゲルハンス細胞は、異質な要素を検知し、他の細胞に警告を発して免疫機能を活性化させる。
【0006】
任意の細胞の枯渇、免疫調節不良又は機能障害は、皮膚の視覚的側面及び/又は機械的特性の非病理学的変化、皮膚不快感、皮膚病理学的障害、及び微生物侵襲に対する過敏性等の所見の出現に有利に働く可能性がある。皮膚免疫障害は、加齢と共に現れる正常な生理現象であるが、微生物感染(ウイルスや細菌)、物理的若しくは化学的ストレス、自然老化、紫外線、都市部の生活環境等によって加速されるおそれがある。ストレス、質の悪い食事、日光、汚染、乾燥若しくは熱を含めた環境的、化学的又は物理的な侵襲物(aggressor)等の要因の蓄積によって、これらの保護細胞の能力が減弱する可能性がある。
【0007】
抗菌ペプチド(AMP)は、宿主防御ペプチド(HDP)とも呼ばれ、生物のすべてのクラスの中で見出される自然免疫応答の一部である。ソリアシン(S100A7)、ケブネリシン(S100A7A)、ラクトトランスフェリン(LTF)、カルシウム結合タンパク質(S100B)、ヒトβ-デフェンシン(HBD)及びカテリシジン(LL-37)を含めて、ケラチノサイトにおいて数多くのAMPが同定されている。抗菌作用に加えて、顆粒球、樹状細胞、及びTリンパ球の遊走並びに自然免疫応答及び獲得免疫応答の活性化においてある役割を果たしている。
【0008】
ケラチノサイトにおける抗菌ペプチドを刺激することによって、健常な皮膚若しくは病気の皮膚における自然防御能を増強する、及び/又は回復させることが可能になるはずである。したがって、この刺激によって、角質層(角質細胞+細胞間セメント)により構成される皮膚の受動的防御系を有利に補充し、新生児、小児、成人、及び高齢者において、健康であるか否かにかかわらず、適応免疫応答を準備することが可能になる。
【0009】
これらのAMPの産生に作用する有効成分は、皮膚の自然防御を増強し、特に、物理的、化学的及び微生物侵襲と戦うための典型的な皮膚の自然免疫応答を増強する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Oliveira FAら、Planta Med 2004年;70巻:780~782頁
【非特許文献2】Oliveira FAら、J Ethnopharmacol 2005年;98巻:103~108頁
【非特許文献3】CTFA(Cosmetic Ingredient Handbook)、第16版(2016年))
【非特許文献4】Gleize, B.、M. Steib、M. Andre、and E. Reboul.2012年.Simple and fast HPLC method for simultaneous determination of retinol, tocopherols, coenzyme Q10 and carotenoids in complex samples.Food Chemistry134巻:2560~2564
【非特許文献5】Bauer, S.、E.Schulte、and H.-P.Thier.2004年.Composition of the surface wax from tomatoes:I. Identification of the components by GC/MS. European Food Research and Technology 219
【非特許文献6】Johannes Karl Finkの書籍《Reactive Polymers Fundamentals and Applications (第2版)」(Plastics Design Library:2013年)のp.303~315の第12章「Terpene Resins」, 535p.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ケラチノサイトにおける抗菌ペプチド産生を刺激する新規な有効成分の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、皮膚若しくは粘膜の自然防御を維持する、バランスさせる、又は強化するためのソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的使用に関する。
【0013】
一部の実施形態では、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、リコピンが枯渇している。
【0014】
本発明の美容的使用は、好ましくは、皮膚バリア機能を強化するため、及び/又は外部侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲等に対する皮膚の抵抗力若しくは耐性を維持する又は増加させるため、及び/又は侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲等によって引き起こされる皮膚の非病理学的変化を予防する若しくは処置するためである。
【0015】
一部の実施形態では、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、特に、皮膚の快適性を改善させる若しくは回復させるため、並びに/又は健常な皮膚マイクロバイオームを回復させる及び/若しくは維持するための、無痛化剤として用いられる。
【0016】
特定の実施形態では、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、植物油又は鉱油、好ましくは、植物油と組み合わせて、好ましくは用いられる。親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の植物油又は鉱油に対する質量比は、好ましくは、1:2~1:70である。植物油及び親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、トマト副産物の同時抽出又は別々の抽出により、例えば、超臨界CO2抽出によって得ることができる。
【0017】
本発明によれば、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、有利には、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.5質量%、好ましくは最大0.3質量%、好ましくは最大0.2質量%、好ましくは最大0.1質量%含む。
【0018】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、好ましくは、抽出物の総質量に対して、アミリン類、特にα-アミリン、β-アミリン及び/又はδ-アミリンを少なくとも5質量%含み、より好ましくは、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、抽出物の総質量に対して、α-アミリンを少なくとも1.5質量%、β-アミリンを少なくとも1質量%及びδ-アミリンを少なくとも2.5質量%含む。
【0019】
親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、有利には、抽出物の総質量に対して、ステロールを少なくとも1.5質量%、好ましくは、抽出物の総質量に対して、β-シトステロール及びスチグマステロールを少なくとも1質量%更に含む。
【0020】
一部の実施形態では、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、組成物の総質量に対して、0.01%~30%、特に0.1%~5%の質量含量で局所投与のための化粧用組成物中に存在し、前記組成物は、化粧品として許容される少なくとも1種の賦形剤を含む。
【0021】
一部の実施形態では、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物及び植物油の組合せ、或いは化粧用組成物は、敏感肌、乾燥肌、老化肌、そばかす傾向の肌、ニキビができやすい肌、アトピー傾向の肌、又は外部侵襲若しくはストレスによって弱った肌を有する健常な対象に局所適用又は経口投与される。
【0022】
本発明はまた、ニキビができやすい肌、そばかす傾向の肌及び/又はアトピー傾向の肌の処置における使用のための、好ましくは、上記で定義した通り、リコピンが枯渇している親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を有効成分として含む、経口又は局所用組成物に関する。
【0023】
本発明はまた、好ましくは、湿疹、乾癬、酒さ、ニキビ、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び刺激性皮膚から選択される、自然免疫応答の変化又は不均衡を特徴とする皮膚疾患の処置における使用のための、好ましくは、上記で定義した通り、リコピンが枯渇している親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を有効成分として含む、経口又は局所用組成物に関する。
【0024】
本発明はまた、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物に関する:
- 抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.3質量%、好ましくは最大0.2質量%、好ましくは最大0.1質量%;
- 抽出物の総質量に対して、アミリン類、特にα-アミリン、β-アミリン及び/又はδ-アミリンを少なくとも5質量%;
- 抽出物の総質量に対して、ステロールを少なくとも1.5質量%;好ましくは、抽出物の総質量に対して、β-シトステロール及びスチグマステロールを少なくとも1質量%含む。
【0025】
本発明はまた、好ましくは、組成物の総質量に対して、0.01%~30%の質量含量の、上記で定義した親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物及び化粧品として許容される少なくとも1種の賦形剤を含む、化粧用組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】被験生成物:プラセボ組成物又は1%若しくは2%の本発明の抽出物に依存する、経時的な紅斑レベルの変化を示すグラフである。
【
図2】被験生成物:プラセボ組成物又は1%(
図2A)若しくは0.5%(
図2B)の本発明の抽出物に依存する、経時的な水和の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を用いて、皮膚の自然防御、特に、皮膚の自然免疫を、例えば、抗菌ペプチド産生を通じて増強することができることを見出した。
【0028】
実験セクションで証明された通り、本発明に従って用いられる親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、転写調節を提供し、例えば、ex vivoヒト皮膚外植片において遺伝子発現プロファイルを調節する。
【0029】
注目すべきことに、本発明の親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソリアシン(S100A7)、ケブネリシン(koebnerisin)(S100A7A)、ラクトトランスフェリン(LTF)、及びカルシウム結合タンパク質(S100B)等の抗菌ペプチド(AMP)をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする。AMP遺伝子のこのようなアップレギュレーションは、基本条件下及び刺激された酸化条件下(すなわち、ホルボール12-ミリステート13-アセテートの存在下)の両方で観察された。
【0030】
したがって、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、in vivoで、皮膚における自然免疫を刺激し、結果として皮膚の保護バリアを強化することが期待される。実験セクションで用いたソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、一般的にリコピンが枯渇しているが、かなりの量のアミリン類、特に、かなりの量のδ-アミリン及びステロールを含有する。
【0031】
注目すべきことに、アミリン類は、植物界において遍在的に分布する五環式トリテルペンのあるクラスである。α-アミリン(ウルサン骨格)、β-アミリン(オレアナン骨格)及びδ-アミリンは、トリテルペンの3つの密接に関連した天然化合物である。ABAM(α及びβ-アミリン)は、様々な薬理活性、例えば、胃保護作用(Oliveira FAら、Planta Med 2004年;70巻:780~782頁)、及び肝保護作用(Oliveira FAら、J Ethnopharmacol 2005年;98巻:103~108頁)等を示すことが示されている。一方、δ-アミリンは、植物の中で遍在的に分布しない。
【0032】
本発明者らの知る限りでは、アミリン類に富み、リコピンが枯渇しているソラナム・リコペルシコン果実抽出物が、特に、AMPの発現を誘導することにより、皮膚の自然免疫を促進することは、従来技術に記載されていない。
【0033】
したがって、本発明は、皮膚若しくは粘膜の自然防御を維持する、バランスさせる、又は強化するための、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的、非治療的な使用に関する。
【0034】
本発明の文脈において、「ソラナム・リコペルシコン果実」又は「トマト」とは、トマト植物として一般に知られる、植物ソラナム・リコペルシコンの食用液果を指す。用語「トマト」及び「ソラナム・リコペルシコン果実」は、同義的に用いることができる。
【0035】
本発明の文脈において、用語「ソラナム・リコペルシコン果実のピール」とは、トマトの外側の保護層を指す。ソラナム・リコペルシコン果実のピールは、クチクラ(クチクラ膜)で覆われた表皮及び多層の下皮を含む。用語「ソラナム・リコペルシコン果皮」、「ソラナム・リコペルシコン果実ピール」、「トマト果実ピール」及び「トマト果皮」は、同義的に用いることができる。したがって、用語「トマトのピール抽出物」又は「ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物」とは、本明細書で定義されるトマトのピールの親油性抽出物を指す。
【0036】
本発明の文脈において、用語「皮膚」とは、人体の皮膚の任意の部分、特に、唇及び眼瞼を含めた顔、頸部、頭皮の皮膚、並びに手の皮膚を指す。用語「皮膚」とは、毛髪及び爪等の皮膚付属器をも包含し得る。
【0037】
皮膚の自然防御システムは、化学的、物理的若しくは微生物侵襲から皮膚を保護し、2つの主な目的、すなわち、侵襲を阻止すること及び残りの免疫系に侵襲を警告することである。皮膚又は粘膜の自然防御を維持する、バランスさせる(又は正常化する)又は強化することにより、皮膚及び皮膚マイクロバイオームは、良好な健康状態に保たれる。したがって、皮膚は、その視覚的側面及びその機械的特性を維持しながら、化学的、物理的又は微生物侵襲に対して十分に防御することが可能である。
【0038】
本発明の文脈において、用語「侵襲」又は「ストレス」とは、皮膚の免疫応答を変化させ得る、又は誘発し得る外的条件への皮膚の任意の曝露を指す。これらの用語はまた、皮膚の免疫応答を変化させ得る、又は誘発し得る、内的ストレス又は情動ストレスを指すこともある。
【0039】
本発明の文脈において、化学的侵襲には、アレルゲン、汚染物質(例えば、排気ガス、微粒子、揮発性有機化合物)、タバコ、刺激剤、例えば、有機溶媒、乾燥剤、酸性若しくは塩基性溶液等、及び、ある種の治療剤、例えば、消毒剤、含水アルコール溶液又はゲル、抗ニキビ剤による侵襲が含まれる。
【0040】
本発明の文脈において、物理的侵襲には、熱的侵襲、機械的侵襲(例えば、ピーリング、皮膚切除術(dermo-abrasion)、シェービング、脱毛、レーザー)及び電気的侵襲が含まれる。特定の実施形態では、物理的侵襲とは、気象条件、例えば、風、寒冷、又は熱等を指す。
【0041】
本発明の文脈において、微生物侵襲には、細菌、真菌、ウイルス及び他の病原体(pathogen agent)等による侵襲が含まれる。
【0042】
ある特定の実施形態では、侵襲は、更に、生活様式、例えば、タバコの消費、アルコールの消費、高脂肪食又は質の悪い食事、超加工食品の消費、情動ストレス等によって引き起こされるストレスを包含する。
【0043】
特定の実施形態では、侵襲は、UV照射による侵襲を包含しない。
【0044】
特に、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、皮膚のケラチノサイトによる抗菌ペプチドの産生を増強し、したがって、皮膚の自然免疫応答を増強する。
【0045】
したがって、本発明は、皮膚若しくは粘膜の自然免疫応答を維持する、バランスさせる、又は強化するための、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的使用に関連し得る。本発明はまた、免疫系、特に、皮膚免疫系の正常な機能に寄与するため、及び/又は皮膚の自然免疫をブーストするための、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的使用にも関連し得る。ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的使用は、皮膚の免疫不均衡を回復させるためでもあり得る。
【0046】
したがって、特定の実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、美容分野において、皮膚のバリア機能を強化するため、及び/又は外部侵襲若しくはストレス、例えば、化学的、物理的若しくは微生物侵襲等に対する皮膚の抵抗力若しくは耐性を維持する又は増加させるために用いられる。
【0047】
本発明の美容的使用の文脈において、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、皮膚の健常な領域に局所的に適用することができる、又は健常な皮膚を有する対象に経口投与することができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「健常な皮膚」又は「健常な皮膚領域」とは、任意の皮膚疾患又は創傷を患っていない皮膚を指す。しかし、用語「健常な皮膚」とは、更に以下に記載される通り、外部侵襲又はストレスに対する非病理学的な、変化した、免疫応答を示す皮膚、及び/又は皮膚の視覚的側面又は機械的特性の非病理学的な変化を示す皮膚をやはり包含する。
【0049】
一部の実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、敏感肌、乾燥肌、老化肌、そばかす傾向の肌、ニキビができやすい肌、アトピー傾向の肌、又は化学的、物理的若しくは微生物侵襲等の外部侵襲若しくはストレスによって弱った肌を有する対象に投与される。
【0050】
外部侵襲に対する皮膚の抵抗力を高めることにより、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、外部侵襲への曝露によって引き起こされる皮膚の非病理学的変化を予防する又は緩和することができる。
【0051】
したがって、本発明はまた、例えば、上記に記載した通り、侵襲又はストレスによって引き起こされる皮膚の非病理学的変化を予防する又は処置するためのソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の使用に関する。
【0052】
本明細書で使用される場合、皮膚の非病理学的変化とは、皮膚の外観又は機械的特性の非病理学的変更を指す。皮膚の非病理学的変化には、それだけに限らないが、皮膚、特に、表皮の菲薄化、皮膚の輝きの喪失、くま、顔のくすみ、皮膚の弾力性の喪失、皮膚の滑らかさの変化、赤みがある肌荒れの増加、乾燥等を包含する。
【0053】
本発明の範囲内で、「非病理学的変化を予防する」とは、前記皮膚の変化の発生を防止する、鈍化させる、又は遅延させるという事実を意味する。
【0054】
「非病理学的変化を処置する」とは、皮膚の変化を修正する、減弱させる、減少させる、目立たなくし、外観を縮小し、又は更には消失させることを意味する。
【0055】
さらなる実施形態では、本発明は、皮膚マイクロバイオータを維持する、回復させる又はバランスさせるための、好ましくはリコピンが枯渇しているソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容的使用に関する。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「皮膚マイクロバイオータ」、「皮膚マイクロバイオーム」又は「皮膚細菌叢」とは、皮膚、典型的にはヒトの皮膚に存在する微生物を指し、細菌、マイコバクテリア、ウイルス、真菌及び寄生細菌を包含する。ほとんどは、表皮の浅層と毛包の上部において見出される。皮膚細菌叢は通常、非病原性、及び共生又は相利共生のいずれかである。かかる微生物が与え得る利点には、栄養を奪い合うか、病原性微生物に対して化学物質を分泌する、又は皮膚の免疫システムを刺激することにより、一過性の病原性微生物が皮膚表面に定着するのを防ぐことが含まれる。
【0057】
皮膚マイクロバイオータを「回復させる」又は「バランスさせる」又は「正常化する」とは、皮膚の健康を促進する、及び/又は健常な皮膚に対応する微生物分布のバランスを得るように、微生物の多様性を回復させることを意味する。例えば、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、そばかす又はニキビに関与し得る菌種、例えば、ある種のC.アクネス(C.acnes)株の存在量を減少させることが可能であり得る。そのような状況を考慮して、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ニキビができやすい肌又はそばかす傾向の肌を有する対象において典型的に用いることができる。
【0058】
本発明者らは、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物が、基本条件及び刺激された条件下の両方において、炎症及び酸化ストレスに関与する遺伝子の発現を調節することを更に示した。
【0059】
実際、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、炎症に関与する遺伝子(主に、CXCL8、IL6、CXCL2、CXCL3、CCL20、TNFAIP3、TNFAIP6)、酸化ストレスに関与する遺伝子(PTGS2、GPX3、HMOX1)、及び末端ケラチノサイト分化に関与する遺伝子(KRT17、SPRR1A、TGM1、いくつかのLCE、EREG、CDSN、及びIVL)の強力なダウンレギュレーションを誘導した。
【0060】
かかるダウンレギュレーションは、例えば、外部侵襲又はストレスに対する皮膚の過剰反応を防ぐことにより、正常な皮膚バリア機能の維持及び強化にも寄与し得る。
【0061】
更に、本発明によるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、皮膚が酸化ストレス下にあり、活性酸素種が産生される場合、炎症を抑えるために更に用いることができる。より一般的には、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、例えば、酸化ストレスの抑制及び抗炎症効果を介して、鎮静作用を示すことができる。
【0062】
したがって、さらなる実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、特に、皮膚の快適性を改善させる又は回復させるための、並びに皮膚不快感を予防する又は緩和するための無痛化剤として用いられる。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「皮膚不快感」とは、病態に関連しない一連の不快な感覚、例えば、つっぱり感、ヒリヒリ感、かゆみ、又は熱感(heating)、皮膚の乾燥感又は脱水感、及び一過性の発赤等を指す。これらの感覚は、病態と関連せず、ある種の外的要因(例えば、日光、風又は寒冷への長期の曝露)、ある種の美容処置によって(例えば、石灰水又は含水アルコール溶液で頻繁に洗浄しすぎることによって、積極的な美容処置、例えば、ピーリング、シェービング、角質除去、脱毛、カラーリング、パーマネント等によって)誘発され得、又はいわゆる敏感肌、過敏肌、反応する肌、不耐性の肌、或いはアトピー傾向の肌に関連し得る。
【0064】
例えば、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、敏感肌、反応する肌又は不耐性の肌を緩和する、より一般的には、それらを管理するために用いることができる。
【0065】
用語「敏感肌、反応する肌、又は不耐性の肌」とは、皮膚に不快感を与える、外的要因に不釣り合いな反応を特徴とする皮膚を指す。反応性のこうした増加は、皮膚のバリア機能、より一般的には皮膚の自然免疫システムの、非病理学的な変化から生じることができ、外部刺激に対する皮膚の耐性閾値を低下させる。
【0066】
より詳細には、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、酸化ストレスに対する皮膚応答を制御することによって、及び/又は炎症性皮膚応答を制御することによって、皮膚における無痛化剤としても用いることができる。
【0067】
より一般的な態様では、本発明はまた、敏感肌、乾燥肌、脱水肌、不耐性の肌、老化肌、そばかす傾向の肌、ニキビができやすい肌、アトピー傾向の肌、外部侵襲又はストレス、例えば、化学的、物理的又は微生物侵襲等によって弱った肌、非病理学的な免疫学的不均衡又は非病理学的な発赤を呈する肌の美容処置のための方法であって、本明細書で定義されるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を皮膚及び/若しくは粘膜に適用する、又は経口投与することを含むことを特徴とする方法にも関連し得る。
【0068】
本発明はまた、皮膚及び/又は粘膜の状態及び/又は外観を改善する観点から、本明細書で定義されるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を対象に局所適用又は経口投与する工程からなる、皮膚及び/又は粘膜の美容ケア方法にも関連し得る。
【0069】
本発明の文脈において、用語「皮膚の状態及び/又は外観を改善する」とは、以下が含まれる。
- 肌色を統一すること;
- 肌色をバランスさせ、並びに/又は、より輝く及び/若しくはより明るく及び/又はより透明感のある肌色を回復させること;
- 表皮、特に顔の皮膚をバランスさせ、及び/又は肌のハリを回復させ、及び/又は表皮の引き締め及びアンチエイジングを促進すること;
- 肌、特に顔の皮膚のバランス能力及び/又は保湿能力;
- くすんだ肌色及び/又はぼやけた肌色を予防する又は処置すること;
- 外部侵襲又はストレスによって誘発された色素沈着斑を含む、肌の色むらを予防する又は処置すること;
- 皮膚、特に、顔の肌を若々しく輝かせること;
- 肌の外観を和らげること。
- 特に、顔の表皮の回復を促進する又は加速させること;
- 特に、顔の肌を再活性化すること;
- 表皮の厚みを増すこと;
- 健康的な肌色をバランスさせる及び/又は促進すること、及び/又は
- 皮膚のバリア機能を予防する、処置する又は回復させること。
【0070】
さらなる実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、酸化ストレスに対する皮膚応答を制御し、皮膚ケラチノサイトによる抗菌ペプチド産生を増強することにより、肌の免疫ブースト剤(immunity skin boost agent)及び/又は皮膚保護剤として用いられる。
【0071】
上記に記載した美容方法及び使用において、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、化粧用薬剤として、すなわち、美容効果を有する有効な薬剤として好ましくは用いられる。「美容効果を有する活性剤」とは、皮膚に対して少なくとも1種の美容効果をもたらす皮膚に対する作用を有する化合物を意味する。「美容効果」とは、皮膚又は粘膜の側面、機械的特性若しくは感触を変更する及び/若しくは改善すること、並びに/又は外部侵襲によって引き起こされる皮膚の非病理学的変更からそれらを保護することを目的とする、任意の非治療効果を意味する。
【0072】
本発明はまた、ニキビができやすい肌、そばかす傾向の肌及び/又はアトピー傾向の肌の処置における使用のための、好ましくは、上記で定義した通り、リコピンが枯渇している親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を有効成分として含む、経口又は局所用組成物に関する。
【0073】
本発明は更に、湿疹、乾癬、酒さ、ニキビ、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び刺激性皮膚から好ましくは選択される、自然免疫系の変化又は不均衡を特徴とする皮膚疾患の処置の使用のための、好ましくは本明細書で定義される通り、有利にはリコピンが枯渇しているソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を有効成分として含む、経口又は局所用組成物に関する。
【0074】
本発明は更に、湿疹、乾癬、酒さ、ニキビ、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び刺激性皮膚から好ましくは選択される、自然免疫系の変化又は不均衡を特徴とする皮膚疾患を処置するための医薬組成物又は皮膚科学的組成物を生成するための、好ましくは本明細書で定義される通り、有利にはリコピンが枯渇しているソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の使用に関する。
【0075】
本発明は更に、湿疹、乾癬、酒さ、ニキビ、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び刺激性皮膚から好ましくは選択される、自然免疫系の変化又は不均衡を特徴とする皮膚疾患を処置するための方法であって、好ましくは本明細書で定義される通り、有利にはリコピンが枯渇しているソラナム・リコペルシコン果実の皮抽出物の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程、特に局所投与又は経口投与する工程を含む、方法に関する。
【0076】
さらなる実施形態では、本明細書で定義されるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、未成熟、正常、又は成熟/老齢のいずれであっても、皮膚及び/又は粘膜の障害若しくは疾患を予防する又は処置するための使用のためでもよい。
【0077】
さらなる実施形態では、本発明は、未熟、正常、又は成熟/老齢のいずれであっても、皮膚及び/又は粘膜の障害若しくは疾患を予防する又は処置するための医薬組成物又は皮膚科学的組成物を生成するための、本明細書で定義されるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の使用に関し得る。
【0078】
さらなる実施形態では、本発明は、未熟、正常、又は成熟/老齢のいずれであっても、皮膚及び/又は粘膜の障害若しくは疾患を予防する又は処置するための方法であって、好ましくは本明細書で定義される通り、有利にはリコピンが枯渇しているソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程、特に局所投与又は経口投与する工程を含む、方法に関し得る。
【0079】
上記の実施形態において、皮膚及び/又は粘膜の障害若しくは疾患は、炎症性疾患、酸化性疾患、しみ、化学汚染又は大気汚染に関連する、及び/又はUV若しくはIR放射線への曝露に関連するラジカル攻撃に関する障害、バリア又はホメオスタシス障害、老化、特に自然老化及び/又は光線性老化(actinic aging)、及び/又は物理的、化学的若しくは微生物侵襲因子、より有利には炎症性疾患及び刺激性疾患、又はバリア若しくはホメオスタシス障害からなる群から選択することができる。
【0080】
有利には、皮膚の炎症性疾患若しくは刺激性疾患、又は皮膚のバリア障害若しくはホメオスタシス障害は、ニキビ、酒さ又はエリスロクロウペローズ(erythrocouperose)、血管障害、特にしみ、シート皮膚炎(seat dermatitis)、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(乳痂)、乾皮症、皮膚紅斑、老齢の又は光老化した皮膚、光過敏性皮膚、色素沈着した皮膚(肝斑、炎症後色素沈着等)、ストレッチマークを有する皮膚、日焼け、化学的、物理的、細菌学的及び真菌的原因物質による刺激、化学汚染又は大気汚染及び/又はUV若しくはIR放射線への曝露に関連したラジカル攻撃による障害である。
【0081】
ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物及び植物油の組合せ
本発明の有利な実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、親油性ビヒクル、好ましくは、植物油又は鉱油、より好ましくは、植物油と組み合わせて用いられる。特に、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、植物油に希釈される。
【0082】
本発明者らは、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を、親油性ビヒクル、例えば、植物油等と組み合わせることにより、アミリン類及びステロール類を含めた、本発明による使用に特に関心のある化合物が、より高いバイオアクセシビリティを有することを見出した。したがって、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の美容活性、皮膚科学活性又は医薬活性は、前記抽出物が親油性ビヒクル、例えば、植物油等に希釈される場合、増強される。
【0083】
有利には、親油性ビヒクルは、植物油である。
【0084】
有利には、本発明に従って用いられる植物油は、トマト種子油、リンゴ種子油、西洋ナシ種子油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ココナツ油、グレープシード油、黒ガラシ油、ケシの実油、カリテバター(karite butter)油、スイートアーモンド油、ダイズ油、アボカド油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、カカオ豆油、ヒマシ油、ベヘン油、亜麻油(flax oil)、ナタネ油、アナトー油、小麦胚芽油、ベニバナ油、クルミ油、ヘーゼルナッツ油、及びカブ種子油からなる群において選択される油である。好ましくは、本発明に従って用いられる植物油は、植物種子油であり、より好ましくは、トマト種子油である。
【0085】
特定の実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の植物油又は鉱油、好ましくは植物油に対する質量比は、1:70~1:1、例えば、1:50~9:10、例えば、0.1~0.9、例えば、0.2~0.8又は0.3~0.6、例えば、1:2(0.5)である。
【0086】
例えば、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の親油性ビヒクルに対する質量比0.1~0.9の、例えば、約0.5の中間体組成物を得るように、親油性ビヒクル、好ましくはトマト種子油と組み合わせることができる。この中間体組成物は、化粧用組成物に好ましくは取り込まれて、皮膚に適用される。例えば、このような中間体組成物は、皮膚に適用される化粧用組成物の総質量の0.1質量%~10質量%を占め得る。
【0087】
別の例として、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の植物油又は鉱油に対する質量比1:75~1:20、特に1:60~1:30、好ましくは1:55~1:45、例えば、約1:49等によって、親油性ビヒクルに希釈することができる。このような実施形態では、組合せは、皮膚に直接適用してもよく、経口経路により投与してもよい。
【0088】
特定の実施形態では、本発明に従って用いられる植物油は、トマト種子油の全質量に対してリノール酸を少なくとも40質量%、特に45質量%~70質量%を好ましくは含む、トマト種子油である。本発明で用いられるトマト種子油は、トマト種子油の総質量に対してオレイン酸を少なくとも10質量%、特に10質量%~30質量%更に含むことができる。本発明で用いられるトマト種子油は、トマト種子油の総質量に対してオレイン酸を少なくとも5質量%、特に5質量%~15質量%更に含むことができる。例えば、植物油は、リノール酸を45質量%~55質量%、オレイン酸を15質量%~25質量%、パルミチン酸を5質量%~15質量%含むことができる。
【0089】
ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物又は前記抽出物の植物油との組合せを含む組成物
ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、通常、組成物の形態で局所投与又は経口投与される。
【0090】
本発明によれば、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、それ自体単独で、植物油若しくは鉱油と組み合わせて用いることができるか、又は化粧品、皮膚用化粧品、医薬品、若しくは栄養補助食品組成物、例えば、栄養補助食品等、好ましくは、化粧品、皮膚用化粧品、若しくは栄養補助食品組成物中に有効成分として存在することができる。ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を植物油又は鉱油と組み合わせる場合、その組合せはまた、化粧品、皮膚用化粧品、医薬品、又は栄養補助食品組成物、例えば、栄養補助食品等、好ましくは、化粧品、皮膚用化粧品、又は栄養補助食品組成物中に存在することもできる。
【0091】
本発明による組成物は、好ましくは、局所投与用又は経口投与用、特に局所投与用に製剤化される。
【0092】
有利には、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、組成物の全質量に対して0.001%~20%、0.01%~10%、特に0.1%~5%の質量含量で組成物中に存在し、前記組成物は、少なくとも1種の賦形剤を含む。
【0093】
そのタイプ(化粧品、医薬又は皮膚科学)に応じて、本発明による組成物は、化粧品として許容される、薬学的に許容される、栄養補助食品として許容される又は皮膚科学的に許容される、少なくとも1種の賦形剤を更に含む。特に、本発明による組成物は、界面活性剤及び/又は乳化剤、増粘剤、保存剤、ケミカルフィルター(chemical filter)又はミネラルフィルター、水和剤(hydrating agent)、緩衝剤、キレート化剤、変性剤、不透明化剤、pH調整剤、還元剤、安定化剤、熱水、ゲル化剤、皮膜形成ポリマー、充填剤、つや消し剤(mattifying agent)、光沢剤、顔料、染料、香料、及びこれらの混合物の中から選択される、当業者に、化粧学的、薬学的、栄養学的又は皮膚科学的に知られている少なくとも1種の賦形剤を更に含むことができる。当業者は、その一般的な知識を用いることにより、本発明による組成物の製剤化を適合させる方法を知っている。CTFA(Cosmetic Ingredient Handbook、第16版(2016年))にも、本発明における使用に適した様々な化粧品用賦形剤が記載されている。
【0094】
本発明による組成物は、局所投与に適合した異なる製剤の形態で製剤化することができ、これには、クリーム剤、乳剤、マイクロエマルション剤、ナノエマルション剤、セラム剤、石鹸、ゲル剤、ミルク、軟膏剤、ローション剤、オイル、水溶液、アルコール溶液又はグリコール溶液、粉末、パッチ剤、噴霧剤、シャンプー、ワニス、発泡体又は外用のための任意の他の製品が含まれる。
【0095】
実際、本発明による組成物は、例えば、任意のタイプの化粧料、例えば、美容ケア製品、メークアップ製品又は身体衛生製品等の形態であり得る。
【0096】
本発明による組成物はまた、経口投与に適合した異なる製剤の形態で製剤化することもでき、これには、錠剤、カプセル剤、コーティング錠、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、ペレット剤、乳剤、ミクロスフェア又はナノ球体の懸濁液、脂質小胞懸濁液又は様々なポリマーベースの小胞が含まれる。
【0097】
有利には、組成物は、局所用化粧用組成物である。
【0098】
化粧用組成物はまた、他の化粧品有効成分を含むこともできる。多くの化粧品有効成分は、皮膚の健康及び/又は物理的外観を改善することが当業者に公知である。他方で、本発明に記載された化合物は、互いに組み合わせる場合、相乗効果を有し得る。これらの組合せも、本発明の対象となる。CTFA Cosmetic Ingredient Handbook、第16版(2016年)は、化粧品及び医薬品業界において一般的に用いられている様々な化粧品及び医薬品成分を記載しており、これらは、特に局所使用に適している。成分のこれらのクラスの例には、それだけに限らないが、次の成分、すなわち、研磨剤、吸収剤、化粧品用化合物、例えば、香料、顔料、染料等、エッセンシャルオイル、収斂剤、例えば、オリーブ油、チョウジ、メントール、樟脳、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、ウィッチヘーゼル留出物、抗ニキビ剤、抗凝集剤、消泡剤、抗菌剤(例えば、ヨードプロピルブチルカルバメート)、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加物、緩衝剤、発泡剤、キレート化剤、添加物、殺生物剤(biocidal agent)、変性剤、増粘剤、及びビタミン、並びにそれらの誘導体又は相当物、皮膜形成材料、ポリマー、不透明化剤、pH調整剤、還元剤、脱色剤又は光沢剤(例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルグルコサミン(ascorbyl glucosamine))、コンディショニング剤(例えば、保湿剤等)が含まれる。
【0099】
有利には、単独で又は親油性ビヒクル、例えば、植物油若しくは鉱油等と組み合わせて、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、組成物の単独の有効成分である。
【0100】
特定の実施形態では、本発明に従って用いられる組成物を、
- ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物を0.001%~20%、特に0.01%~10%、より特に0.1%~5%;
- 少なくとも1種の賦形剤を60%~99.999%;及び
- 追加有効成分を0%~20%含むことができる(組成物の総質量に対する質量含量で表される)。
【0101】
本発明による投与量及び最適なガレヌス製剤は、患者又は動物に適した薬理学的、皮膚科学的、栄養補助食品的又は美容処置を処方する場合、通常考慮される基準、例えば、患者又は動物の年齢及び体重、一般的な状態の重症度、処置の耐性、観察される副作用、皮膚のタイプに従って確立することができる。
【0102】
ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物及びそれを得るための方法
本発明によるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール、特に産業廃棄物又は食品廃棄物由来のトマト副生成物のソラナム・リコペルシコン果実のピールの抽出物から得られた親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物である。抽出物が得られるトマト副生成物は、通常、食品産業からのトマトの搾りかすである。トマト副生成物がトマトの皮及び種子を含む場合、種子及び皮を、例えば、スクリーニングによって分離することができ、皮を回収する。
【0103】
本発明によるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、親油性ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物である。本発明のソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、脂質媒体、例えば、植物油と比較して、水に難溶解性である。本発明のソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、好ましくは、ソラナム・リコペルシコン果実のピールワックスであり、ソラナム・リコペルシコン果実(トマト)皮ワックスとも呼ばれる。本発明のソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、好ましくはリコピンが枯渇しており、好ましくはアミリン類及びステロール類を含む。
【0104】
本発明の好ましい実施態様では、用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、リコピンが枯渇している。有利には、抽出物は、抽出物の総質量に対して、リコピンを最大0.5質量%、好ましくは最大0.3質量%、好ましくは最大0.2質量%、好ましくは最大0.1質量%、より好ましくは最大0.05質量%含む。特に、用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、抽出物の総質量に対して、リコピンを0質量%~0.1質量%、好ましくは0質量%~0.05質量%含む。
【0105】
リコピンは、カロテノイドである。本発明の特定の実施形態では、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、カロテノイドが枯渇している。より詳細には、抽出物は、抽出物の総質量に対して、カロテノイドを最大0.6質量%、好ましくは最大0.3質量%、特に最大0.2質量%含む。本発明の文脈において、カロテノイド、特にリコピンの質量含量は、当業者に公知の方法、例えば、Gleizeら(Gleize, B.、M. Steib、M. Andre、and E. Reboul.2012年.Simple and fast HPLC method for simultaneous determination of retinol, tocopherols, coenzyme Q10 and carotenoids in complex samples.Food Chemistry134巻:2560~2564)により記載された方法に従ってHPLC-DADにより決定される。本発明の文脈において、「最大X%」は、0%~X%を意味する。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、アミリン類、特にδ-アミリンに富む。特に、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、アミリン類を少なくとも5質量%含む。有利には、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、アミリン類を5質量%~32質量%含む。例えば、本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、アミリン類を5質量%~25質量%、5質量%~20質量%、5質量%~15質量%、又は5質量%~10質量%含む。
【0107】
アミリン類は、次式(Iα)、(Iβ)、及び(Iδ)のα-アミリン、β-アミリン及びδ-アミリンの形態で見出され得るトリテルペン化合物である。
【0108】
【0109】
本発明によれば、用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、好ましくは、α-アミリン、β-アミリン及び/又はδ-アミリンを含み、より好ましくは、用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、α-アミリン、β-アミリン及びδ-アミリンを含み、特に、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、α-アミリンを少なくとも1.5質量%、特に1.5質量%~10質量%、β-アミリンを少なくとも1質量%、特に1質量%~7質量%、及びδ-アミリンを少なくとも2.5質量%、特に2.5質量%~17質量%含む。本発明の文脈において、アミリン類の質量含量は、当業者に公知の方法により、例えば、Bauerらにより記載された方法に従ってGC-MSにより決定される(Bauer, S.、E.Schulte、and H.-P.Thier.2004年.Composition of the surface wax from tomatoes:I. Identification of the components by GC/MS. European Food Research and Technology 219)。
【0110】
特定の実施形態では、δ-アミリンのα-アミリン及びβ-アミリンの合計に対する質量比は、0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1である。
【0111】
本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物はまた、ステロール、特にβ-シトステロール及びスチグマステロールを豊富に含み得る。好ましくは、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、ステロールを少なくとも1.5質量%、特に1.5質量%~12質量%更に含む。より好ましくは、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、β-シトステロール及びスチグマステロールを少なくとも1質量%、特に1質量%~3質量%含む。本発明の文脈において、ステロール、特にβ-シトステロール及びスチグマステロールの質量含量は、当業者に公知の方法、例えば、Bauerらにより記載された方法に従ってGC-MSにより決定される。
【0112】
本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物はまた、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、トリグリセリドを少なくとも10質量%、特に10質量%~60質量%含むこともできる。本発明の文脈において、トリグリセリドの質量含量は、当業者に公知の方法、例えば、UPLC-DAD-Mにより決定される。
【0113】
本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物はまた、ソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物の総質量に対して、アルカンを少なくとも10質量%、特に10質量%~30質量%含むこともできる。本発明によれば、アルカンタイプC31、C32及びC33の含有量の合計は、ソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物の全アルカン含有量に対して、少なくとも70質量%、特に70~90質量%である。本発明の文脈において、アルカンの質量含量は、当業者に公知の方法、例えば、Bauerらにより記載された方法に従ってGC-MSにより決定される。
【0114】
本発明に従って用いられるソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物はまた、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物の総質量に対して、アルカジエン、特にC33及びC35タイプのアルカジエンを少なくとも5質量%、特に5質量%~15質量%含むことができる。本発明の文脈において、アルカンの質量含量は、当業者に公知の方法、例えば、Bauerらにより記載された方法に従ってGC-MSにより決定される。
【0115】
本発明によれば、ソラナム・リコペルシコン果実のピール抽出物は、次の工程:
a)トマトのピール、特にトマトの搾りかすから得られたトマトのピールを選択する工程と、
b)場合によってトマト果実のピールを粉砕する工程と、
c)親油性抽出物を得るようにトマト果実のピールを抽出する工程と、
d)得られた抽出物を場合によってろ過し、親油性トマト果実のピール抽出物を回収する工程と
を含む、調製方法によって得ることができる。
【0116】
工程a)において、産業廃棄物又は食品廃棄物から得られるトマト搾りかすは、トマトのピール及び種子を含むことができる。したがって、トマトのピール及び種子を分離するさらなる工程は、当業者に公知の手段、例えば、(例えば、1μmのメッシュを通して)ふるい分けすることによって行うことができる。工程a)において選択されたトマトのピールは、残留水分が最大10%となるように乾燥させることもできる。乾燥方法は、当業者により一般的に公知であり、例えば、オーブン又は乾燥機で40℃~90℃の温度における加熱を含む。乾燥温度は、目的の化合物、例えば、アミリン類及びステロール類等の劣化を避けるために選択されるべきである。
【0117】
工程b)において、トマトのピールは、当業者に一般的に公知の方法で場合によって粉砕され、ナイフミル、カッティングミル又はハンマーミルによる粉砕が含まれる。
【0118】
トマトのピール抽出物の調製方法は、リコピン及び有利にはカロテノイドを枯渇させる工程を更に含むことができる。この工程は、抽出工程c)前、抽出工程c)中、又は抽出工程c)後に、当業者に一般的に公知の手段により行うことができる。特に、リコピンは、当業者により公知の物理的又は化学的方法、例えば、樹脂(すなわち、マクロポーラス吸着樹脂、タイプ充填カラムLX-68、HP20又は相当物)の使用による吸着/脱着、晶析、溶媒抽出、クロマトグラフィー、例えば、向流クロマトグラフィー(CCC)又は遠心分配クロマトグラフィー(CPC:Centrifugal Partition Chromatography)等、塩析(沈殿法)、ろ過法(透析ろ過、精密ろ過及び/又は限外ろ過又はそれらの組合せ)熱法、蒸留又はCO2超臨界抽出によって除去することができる。溶媒抽出法がリコピンを除去するために用いられる場合、用いられる溶媒は、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、及びテトラヒドロフラン、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)との混和物、水及びアルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム若しくは水酸化アンモニウム又はリン酸三ナトリウム、及びそれらの混合物から選択することができる。ヒルデブランド溶解度パラメータ(δ)値が12~36の間、特に14~19の間で知られている任意の他の溶媒は、用いることができる(それらのリストは、例えば、Johannes Karl Finkの書籍《Reactive Polymers Fundamentals and Applications (第2版)」(Plastics Design Library:2013年)のp.303~315の第12章「Terpene Resins」, 535p.において見出される)。加熱法を用いて、リコピンを除去する場合、トマト果実のピールは、リコピンが除去されるまで、60℃~110℃の温度で、例えば、1時間~10時間加熱することができる。
【0119】
工程c)において、トマトのピールの抽出は、物理的抽出(例えば、機械的プレス機での熱圧若しくは冷圧、又は二重スクリュー押出機でのプレス等)、有機溶媒(例えば、脂肪族アルカン、アルコール、塩素付加溶媒、フッ素化溶媒等)、好ましくは非極性溶媒による化学的抽出、又は二酸化炭素単独及び/又は植物油のような共溶媒との組合せによる超臨界媒体での抽出を含む、当業者に周知のいくつかの方法によって実施することができる。
【0120】
工程c)において、溶媒抽出法が用いられる場合、溶媒は、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、及びテトラヒドロフラン、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)との混和物、水、及びアルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム若しくは水酸化アンモニウム又はリン酸三ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。溶媒抽出中のトマトのピール抽出物/溶媒の質量比は、1:1~1:60、特に1:1~1:20であり得る。
【0121】
本発明の好ましい実施形態では、工程c)は超臨界抽出法を用いて実施される。超臨界抽出のプロセスは、超臨界流体タンク、圧縮機、抽出器、1つ又は複数の分離器、サーモスタティゼーションシステム及びいくつかの減圧弁からなる従来の超臨界抽出装置で実施される。超臨界抽出を行うために、トマトのピールを抽出器に導入し、超臨界流体、好ましくはCO2単独、又は共溶媒、例えば、エタノール等と組み合わせたもの、より好ましくはCO2単独を、CO2超臨界流体中で目的の化合物、特にアミリン類及びステロール類の可溶化を可能にする圧力と温度条件下で固体出発原料の床に通す。CO2超臨界流体が出発原料の床を横断するため、CO2超臨界流体は、可溶性の成分を抽出し、次いで、分離器へと移動し、所望の生成物が得られる。CO2超臨界流体は、減圧させ、その後、排出される。有利には、CO2超臨界抽出工程は、200bar~500bar、好ましくは200bar~400bar、より好ましくは200bar~350barの圧力、及び40℃~80℃、好ましくは50℃~80℃、より好ましくは60℃~80℃の温度で行われる。注目すべきことに、低温(例えば、60℃より低い温度)を用いる場合、より高い圧力(例えば、少なくとも150barの圧力)が必要とされ得る。同様に、低圧(例えば、150barより低い圧力)を用いる場合、高温(例えば、少なくとも55℃の温度)を用いるべきである。
【0122】
工程d)において、工程c)の後に得られた抽出物は場合によって、当業者に一般的に公知の手段によって、例えば、フィルター(例えば、45μmの多孔性フィルターr)を通してふるい分けすることによって、ろ過に供する。本工程によって、不純物が取り除かれる。次いで、トマトのピール抽出物を回収する。
【0123】
一部の実施形態では、本発明による抽出物を調製するための方法は、上記の工程に、1つ又は複数の追加の工程を含むことができる。これらの工程には、例えば、出発植物材料を洗浄、凍結及び/又は解凍に供することが含まれる。
【0124】
本方法はまた、工程c)又はd)の後に好ましくは実施され、蒸留工程、例えば、分子蒸留又は分別蒸留、沈殿工程、工程ろ過、抽出工程、特に適切な水溶液による液-液抽出、除去される化合物を捕捉することが可能である固体支持体上での固-液から好ましくは選択される、1つ又は複数の追加の精製工程を含むこともできる。
【0125】
一部の実施形態では、工程c)又はd)の後に得られた親油性抽出物は、アミリン類及び/又はステロール類中の抽出物を濃縮し、かつ/又は美容効果の低い特定の化合物、例えば、アルカジエン及び/又はアルカン等を除去するための精製工程に場合によってかけられる。精製工程は、クロマトグラフィー、特に、遠心分配クロマトグラフィー(CPC)及び/又は分子蒸留を含めた、当業者に一般的に公知の手段によって実施することができる。
【0126】
本発明の特定の実施形態では、トマトのピール抽出物を本明細書で定義する植物油と組み合わせる場合、植物油及びトマトのピール抽出物は、同時又は別々の抽出、例えば、物理的抽出、化学的抽出、又はCO2超臨界抽出によって得ることができる。より詳細には、トマトのピール抽出物がトマト種子油と組み合わされる場合、前記抽出物及び前記油は、トマト副産物の同時又は別々の抽出、例えば、物理的抽出、化学的抽出又はCO2超臨界抽出、好ましくはCO2超臨界抽出によって得ることができる。
【0127】
本発明に従って用いられる植物油は、当業者により一般的に公知の手段によって得ることができる。本発明に従ってトマト種子油を用いる場合、前記油の調製の方法は、トマトのピール抽出物について記載したものと同様である。特定の実施形態では、トマト種子油が本発明に従って用いられる場合、油は、CO2超臨界抽出によって次の条件、すなわち、圧力200bar~450bar、好ましくは200bar~400bar、より好ましくは200bar~300bar、及び温度50℃~80℃、好ましくは50℃~70℃により得ることができる。
【0128】
本発明は、次の例に照らしてより良く理解され、これらは、例示的な目的にのみ示される。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
本発明によるトマトのピール抽出物の調製 - トリテルペン及びカロテノイドの同定及び定量
本発明によるトマトのピール抽出物(トマトのピールワックス)を、次の通り調製した。
a)トマトの搾りかすからトマトのピールを選択し;
b)トマトのピールを、湿度が10%より低くなるように加熱処理、及びリコピンの除去(リコピンの除去はHPLC-DAD分析によりモニターする)にかけ;
c)工程b)において得られた乾燥した塊(dry mass)を、カッティングミルを用いて粉砕し;
d)260~300bar、及び60~80℃の超臨界CO2ガスを用いることによりトマトのピール画分を抽出し;
e)得られた抽出物を45μmのペーパーフィルターでろ過して、不純物を除去する。
【0130】
得られたトマトのピール抽出物の目的化合物の定量を、表1にまとめて示す。
【0131】
【0132】
(実施例2)
トマトのピール抽出物及びトマト種子油の組合せの調製
トマト種子油を、次の通り調製した。
a)産業廃棄物からトマトの種子を選択し;
b)トマト種子を、湿度が12%より低くなるまで、温度60℃~110℃で、乾燥させ;
c)工程b)において得られた乾燥した塊を粉砕し;
d)超臨界CO2ガスを用いることによりトマト種子画分を抽出し、すなわち、
- 所期のトマト種子油が得られるように、予め選択された条件下:200~300bar、及び50~70℃で分離を操作し;
- 次いで、二酸化炭素を圧縮機に送り;
e)得られた油を45μmのペーパーフィルターでろ過して、不純物を除去する。
【0133】
次いで、トマト種子油を、トマトのピール抽出物/トマト種子油の質量比1/49で、実施例1において調製したトマトのピール抽出物で合わせた。
【0134】
(実施例3)
基本条件下でのex vivoヒト皮膚外植片における遺伝子発現に対するトマトのピール抽出物の効果
本研究では、実施例1において得られた抽出物、トマト種子油、及び実施例2において得られた組合せ(以下、それぞれトマトのピール抽出物、トマト種子油、及び組合せ1/49と命名)の転写効果(遺伝子発現の調節)を、基本条件下又はホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)刺激条件下で、ex vivoヒト皮膚外植片について評価した。異なるトランスクリプトームプロファイルの比較解析を、Affymetrix GeneAtlasプラットフォーム、並びに36,000の転写物及びバリアントを含む、ヒト「完全トランスクリプトーム」U219チップを用いて行った。
【0135】
材料及び方法
生物学的モデル
- モデル:E2002腹部形成手術ドナーの皮膚外植片(2cm×2cm)(44歳女性)
- 培養条件:37℃、CO25%
【0136】
試験試料及び組合せ(表2)
【0137】
【0138】
培養及び処置
腹部生検を行った後、脂肪組織を除去し、皮膚外植片を2cm×2cmに切断し、培地中でインキュベートした。次いで、試験試料を皮膚外植片の表面に局所的に適用(5mg/cm2)し、又は適用せず(基礎対照)、皮膚外植片を24時間プレインキュベートした。プレインキュベーション後:
- 基本条件
培地を除去し、新鮮な培地と交換し、局所処置を更新した。
- 刺激条件
【0139】
培地を除去し、0.3μg/mlの誘導剤PMAを含む新鮮な培地と交換し、局所処置を更新した。
【0140】
次いで、皮膚外植片を48時間インキュベートした。
【0141】
インキュベーション終了後、外植片をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で洗浄し、各外植片においてパンチ(直径4mm)を3回行い、直ちに-80℃で凍結した。
【0142】
すべての実験条件を、n=3で行った。
【0143】
差次的発現変動解析
試料を、Precellys/cryolysを用いて、自動的にホモジナイズし、複製をプールした。供給業者の指示に従ってNucleoSpin(登録商標)RNAキット(Macherey-Nagel社)(登録商標)を用いて、全RNAを各試料から抽出した。
【0144】
キャピラリー電気泳動(Bioanalyzer 2100、Agilent technologies社)を用いて、全RNAの量及び質を、全試料について評価した。各RNAから、標識及び増幅したアンチセンスRNA(aRNA)を、GeneChip 3'IVT PLUSキット(Affymetrix社)を用いて得た。各標識及び増幅されたaRNA試料について、キャピラリー電気泳動(Bioanalyzer 2100、Agilent technologies社)を用いて断片化前後にプロファイルを評価した。
【0145】
Affymetrix(登録商標)U219チップ(36,000転写物及びバリアント)への断片化されたaRNAのハイブリダイゼーションを、GeneAtlas(商標)流体工学Affymetrix(登録商標)ハイブリダイゼーションステーションにおいて45℃で20時間行った。
【0146】
U219チップを、GeneAtlas(商標)イメージングステーション(Affymetrix(登録商標)社- 解像度2μm)を用いて分析し、蛍光強度データを生成した。
【0147】
結果
正規化されたデータに関して、倍率変化の観点に関する検出閾値を定義し適用し、有益な解釈のために、閾値を次の通り定義した:
【0148】
【0149】
更に、プローブの変調は、そのp値が≦0.05である場合、有意であると考えられる。
【0150】
【0151】
【0152】
トマト種子油中に1/49(w/v)の割合で希釈した被験トマトのピール抽出物は、遺伝子発現プロファイルに有意な変調を誘導した。
【0153】
基本条件下で、希釈剤であるトマト種子油と比較した場合、1/49(w/v)の割合で試験したトマトのピール抽出物は、炎症(主にCXCL8、IL6、CXCL2)、酸化ストレス(PTGS2、GPX3、HMOX1)、及び末端ケラチノサイト分化(KRT17、SPRR1A、TGM1、いくつかのLCE、EREG、CDSN)に関与する遺伝子の強い阻害を誘導した。並行して、トマトのピール抽出物は、抗菌ペプチド(LTF、S100A7、S100A7A、S100B)並びにKRT6C及びCOL3A1マーカーのアップレギュレーションを誘導した。
【0154】
刺激された条件下で、トマト種子油中に1/49(w/v)の割合で希釈した被験トマトのピール抽出物は、遺伝子発現プロファイルに有意な変調を誘導した。免疫応答に関与する遺伝子(CCL22、SERPINB9、CD83、IDO1、IL20、LIF)及びマトリックス分解に関与する遺伝子(MMP10及びMMP7)の軽微な阻害が、刺激条件下で観察された。トマトのピール抽出物はまた、末端ケラチノサイト分化に関与するマーカー(SPRR2B、CASP14、LCE3D、及びLCE3E)の増加、並びに自然免疫に関与するマーカー(PI3、S100A7、S100B)の軽微なアップレギュレーションを誘導した。希釈剤であるトマト種子油と比較する場合、トマトのピール抽出物は、炎症反応に関与する遺伝子(主に、CXCL8、IL6、CXCL2、CXCL3、SAA1、IL20、TNFAIP3、及びTNFAIP6)の阻害を誘導した。並行して、トマトのピール抽出物は、抗菌ペプチド(S100A7A)及び末端ケラチノサイト分化に関与するマーカー(SPRR2B、KRT6C、SPRR2A)のアップレギュレーションを誘導した。
【0155】
結論
本研究の実験条件下では、トマト種子油中に1/49(w/v)の割合で希釈した被験トマトのピール抽出物は、ex vivo皮膚の本モデルにおいて明らかな鎮静作用(酸化ストレスの抑制)を示した。この抽出物はまた、抗菌ペプチドのアップレギュレーションを通じて、ex vivo皮膚の自然免疫を明らかに促進した。
【0156】
(実施例4)
復元されたヒト表皮におけるS100A7発現に対する、本発明によるトマトのピール抽出物及びトマト種子油の組合せの効果
本研究では、トマトのピール抽出物及びトマト種子油(実施例2において調製した通り)の組合せの効果を、in situ免疫標識及び画像解析を用いて、S100A7発現を評価することにより、復元されたヒト表皮(RHE)モデルにおいて調査した。
【0157】
略語
AU 任意単位
GAM ヤギアンチマウス
PBS リン酸緩衝食塩水
PI ヨウ化プロピジウム
PMA ホルボールミリステートアセテート
RHE 復元されたヒト表皮
Sd 標準偏差
sem 平均の標準誤差
【0158】
材料及び方法
生物学的モデル
- 表皮:復元されたヒト表皮(RHE)、10日齢
- 培養条件:37℃、CO25%
- アッセイ培地:維持培地
【0159】
試験試料及び組合せ(表4)
【0160】
【0161】
培養及び処置
10日目に、RHEを12穴プレート中、アッセイ培地中に入れた。RHEを、プラセボ対照として鉱油(2.5μl/RHE、ref M5904 Sigma Aldrich社/Merck社、CAS番号8042-47-5)又は被験試料の組合せ(2.5μl/RHE)で局所処理した。すべての実験条件を、n=3で行った。
【0162】
パラフィン包埋及び切片化
RHEを、ホルムアルデヒド溶液で固定した。固定組織を、濃度の高いエタノールで複数の槽で脱水し、次いで、パラフィンに包埋した。横断切片をミクロトームで作製し(厚さ5μm、1RHEにつき1スライド)、免疫組織標識まで室温に保った。
【0163】
in situ免疫蛍光標識
抗原-抗体相互作用を最適化するために、切片を脱パラフィンし、92℃、pH6で検索用標的溶液中でインキュベートした。これらの切片を、同じ溶液で室温まで冷却した。その後、PBS-Tween-5%ミルクで飽和させた後、切片を適切な一次抗体(抗S100A7)で1時間インキュベートした。数回の洗浄後、一次抗体によって認識された結合部位が二次蛍光適切抗体(GAM Alexa-488)で明らかになり、細胞核をヨウ化プロピジウム(PI)溶液で染色した。切片をPBS-Tweenで洗浄し、蛍光マウンティング培地でマウントした。
【0164】
顕微鏡観察
切片を、ニコン社製カメラを装備したNIKON顕微鏡(対物レンズ40倍)を用いて観察した。画像を、NIS-Elementsソフトウェアで処理した。画像を、複写物当たり5枚取り込んだ。
【0165】
蛍光強度を、ImageJソフトウェアを用いて取り込んだ画像上で測定した。
【0166】
蛍光強度の値を、表皮面積に対して正規化した。
【0167】
データ管理
生データを、Microsoft Excel(登録商標)を用いて分析した。
【0168】
群間比較を、ノンパラメトリック検定であるクラスカル・ウォリス、その後、多重比較ダン検定によって行った。
【0169】
平均の標準誤差:sem=Sd/√n。平均の標準誤差(sem)は、試料の平均が真の母集団の平均からどの程度離れている可能性が高いかの測度である。semは、sdを試料サイズの平方根で除したものとして算出される。
【0170】
結果
得られた結果を、表5にまとめて示す。
【0171】
【0172】
基本条件下で、S100A7シグナルは弱く、表皮の顆粒層に局在した。
【0173】
アッセイの実験条件下で、2.5μl/RHEで試験した、本発明によるトマトのピール抽出物及び有機種子油の組合せ(1/49)並びに本発明によるトマトのピール抽出物及び有機種子油及び鉱油の組合せ(1/2/47)は、S100A7発現の有意な刺激を誘発した(それぞれ、3190% - 対照のダン検定p<0.001、-及び1009% - 対照のダン検定p<0.05)。
【0174】
結論
本発明によるトマトのピール抽出物及び有機種子油の組合せ(1/49)、並びに本発明によるトマトのピール抽出物、有機種子油、及び鉱油の組合せ(1/2/47)によって、S100A7タンパク質の発現が増加したため、実施例3において以前に観察された抗菌ペプチド(S100A7A)をコードする遺伝子のアップレギュレーションが確認された。本発明者らは、また、本発明によるトマトのピール抽出物及び有機種子油の組合せ(1/49)では、本発明によるトマトのピール抽出物及び有機種子油及び鉱油の組合せ(1/2/47)よりも良好な結果が観察された。
【0175】
(実施例5)
in vivoでの抗刺激性評価
目標
ボランティア20名において120分間のカプサイシン誘発皮膚刺激後、トマトのピール抽出物及びトマト種子油(実施例2において調製した通り)の組合せの鎮静作用を評価すること。
【0176】
方法論
乾燥肌及び敏感肌の徴候が目に見える45~65歳の間のボランティア20名(女性)が本研究において含まれた。独立した4つの実験領域を、アッセイに含まれる各ボランティアの前腕において定義した。カプサイシン閉塞型パッチへの1時間の曝露により、各実験領域に軽度の皮膚刺激を誘発した。本閉塞型パッチが準備され、研究者により、前腕の4つの独立した実験領域に貼付された。パッチを除去した後、研究者により、対応する実験領域に試験生成物を適用した(3~4mg/cm2)。処置開始前(T0)、カプサイシン閉塞型パッチで軽度の皮膚刺激を誘発した直後(紅斑誘発後T1)、並びに最初の貼付の10分後(T2)、30分後(T3)、90分後(T4)、及び120分後(T5)の異なる5つの時点で、Mexameter(登録商標)を用いて皮膚の紅斑レベルを定量化した。各時点における紅斑レベルの変化は、刺激を誘発した後のT1時の状態に対して正規化した。全データを統計的に分析した。皮膚科学的なサーベイランスも本試験において含まれる。
【0177】
試料:
被験生成物は、以下の通りであった。
1 - プラセボセラム配合物(水98%+フェノキシエタノール+ステアロイルグルタミン酸ナトリウム+サクシノグリカン・クロルフェネシン)
2 - プラセボセラム配合物への濃度1%(試験1%)の本発明による抽出物
3 - プラセボセラム配合物への濃度2%(試験2%)の本発明による抽出物
【0178】
結果
結果を
図1に示す。結果では、カプサイシン閉塞型パッチで1時間処置すると、4つの実験領域における紅斑レベルが有意に上昇することが示され、したがって、皮膚刺激が効果的に誘発されたことが示された。
【0179】
刺激を誘発した後、生成物を無処置対照と比較した場合、結果として、「試験2%」では、処置の30分後に62.11%まで、90分後に49.55%まで、120分後に56.53%まで紅斑レベルが減少し、一方、「試験1%」では、処置の30分後に59.52%まで、90分後に52.55%まで、120分後に75.47%まで紅斑レベルが減少したことが示された。
【0180】
更に、「試験2%」は、「プラセボ」と比較して皮膚刺激が減少し、30分後の紅斑が58.61%まで減少したことにより証明され、同様に、「試験1%」は、「プラセボ」と比較して紅斑が56.01%まで減少したことが証明された。
【0181】
試験された時点のいずれにおいても、「プラセボ」と無処置の間で紅斑レベルに有意差を観察しなかったことは注目に値する。
【0182】
皮膚適合性及び受容性に関して、いかなるボランティアも皮膚受容性の問題を示さず、処置中に皮膚反応を示さなかった。
【0183】
結論として、本臨床試験では、生成物「試験1%」及び「試験2%」は、皮膚刺激に対して効率的な鎮静作用を有し、したがって、皮膚刺激を軽減することが示される。
【0184】
(実施例6)
in vivo保湿及びバリア機能評価
目標
前腕に局所適用後の、3つの処置法(0.5%及び1%における試験生成物、並びにプラセボ)の保湿及びバリア機能のin vivo評価。測定の速度論を、次の通り確立した:T0(処置前)、適用の30分後、90分後、120分後及び24時間後。
【0185】
適用領域:前腕。
プラットフォーム:
ボランティア30名(40~70歳の間の乾燥肌及び敏感肌状態の女性)。敏感肌ボランティアの条件選択についての組入れ基準は、以下の通りである。
- 女性、40歳~70歳。
- 皮膚のフォトタイプ(フィッツパトリック):II、III及びIV。
- 対象の自己申告によれば、全般的な健康が良好な状態(単に病気/不健康でないだけでなく、身体的、精神的及び社会的に幸福)。
- 乾燥肌及び敏感肌の徴候が目に見える対象(質問票及び乳酸テストが陽性である、敏感肌と診断された対象)。質問票は、対象が、皮膚不快の機能的総体症状の最近及び反復の病歴を反映する場合、陽性とし、鼻唇溝における乳酸テストは、10%乳酸水溶液1mLを適用してから3分後、鼻唇溝においてかゆみが検出される場合、陽性である)。
- 乾燥肌及び敏感肌の目に見える徴候を有する対象。
【0186】
一方、除外基準は以下の通りである。
- 本生成物の成分の一部、又は被験生成物と類似のカテゴリーに属する生成物に対するアレルギー又は反応性。
- 測定を妨げ得る、実験領域における関連した皮膚跡(瘢痕、日焼け等)。
- 使用中の関連する薬理学的又はホルモン処置。
- 皮膚疾患又は黒色腫の存在。
【0187】
試料
被験生成物は、以下の通りであった。
1)プラセボセラム配合物(=水98%+フェノキシエタノール+ステアロイルグルタミン酸ナトリウム+サクシノグリカン・クロルフェネシン)(P.2328)
2)プラセボセラム配合物への濃度1%の本発明による抽出物(P2330 1%)
3)プラセボセラム配合物への濃度0.5%の本発明による抽出物(P2329 0.5%)
【0188】
方法論:
前腕の4つの独立した実験領域に、研究者が天然軽石を用いて20回こすることによってびらんにすることにより、各実験領域に軽度の皮膚刺激が誘発された。処置を開始する前に、本発明者らは、Tewameter(登録商標)を用いてTEWLが2倍に増加しているか否かを測定することにより、皮膚バリアへの損傷を確認する。この効果が得られた後、研究者が、対応する実験領域に被験生成物を適用した。
【0189】
Corneometer(登録商標)を用いて、5つの異なる時点で皮膚の水和を定量化した:天然軽石による軽度の皮膚刺激を誘発した後(皮膚刺激後T0)、及び最初の適用から30分後(T1)、90分後(T2)、120分後(T3)及び24h後(T4)。データの正規分布を確認後、二重の対応のある二元配置ANOVA統計検定を適用して、結果を統計的に分析した。
【0190】
結果
化粧品の水和効果に関する結果を、
図2A及び
図2B中に示す(P2330 1%については
図2A、P2329 0.5%については
図2B)。本発明者らは、本発明による抽出物を濃度0.5%及び1%でプラセボセラム配合物に適用した後、皮膚の水和(hydratation)の有意な増加を観察することができる。このような増加は、プラセボ配合物適用後に観察されない。
【0191】
TEWLレベルの定量化及び測定をやはり、Tewameter(登録商標)を用いて行った。予備的な結果では、P2330 1%及びP2329 0.5%を適用した90分後に、TEWLレベルの有意な低下を示した。
【0192】
(実施例7)
化粧品と栄養補助食品
(実施例7a)
敏感肌用皮膚免疫刺激クリーム
皮膚免疫刺激クリーム(敏感肌用)は、次の表6に記載される成分を組み合わせることにより調製することができ、クリームは、ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた、本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含む。
【0193】
【0194】
(実施例7b)
高機能クレンジングバーム
高機能クレンジングバームは、次の表7に記載される成分を組み合わせることにより調製することができ、バームは、ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた、本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含む。
【0195】
【0196】
(実施例7c)
アトピー性皮膚障害の予防又は処置用クリーム
アトピー性皮膚障害の予防又は処置用クリームは、次の表8に記載される成分を組み合わせることにより調製することができ、クリームは、ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた、本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含む。
【0197】
【0198】
(実施例7d)
洗顔用クレンジングフォーム
ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含むアトピー肌用クレンジング剤(洗顔用クレンジングフォーム)を、次の表9に記載される成分を組み合わせることにより製剤化する。
【0199】
【0200】
(実施例7e)
敏感肌用免疫ブーストアフターサンセラム
本発明によるソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含む免疫ブーストセラム(脂性肌用)を、次の表10に記載される成分を組み合わせることにより製剤化する。
【0201】
【0202】
(実施例7f)
トマトの免疫口紅用配合物:
ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含むトマトの免疫口紅用配合物を、次の表11に記載される成分を組み合わせることにより製剤化する。
【0203】
【0204】
(実施例7g)
免疫をブーストするための、食品サプリメント又はニュートリコスメティクサプリメント用の経口摂取カプセル剤:
ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含む経口摂取カプセル剤を、次の表12に記載される成分を組み合わせることにより製剤化する。
【0205】
【0206】
(実施例7h)
フケ予防又は処置用シャンプー(敏感な頭皮用)
ソラナム・リコペルシコン(トマト)皮ワックスと名付けられた本発明のソラナム・リコペルシコン果実(トマト)のピール抽出物を含むフケ防止又は処置用シャンプー配合物を、次の表13に記載される成分を組み合わせることにより製剤化する。
【0207】
【国際調査報告】