(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-10
(54)【発明の名称】3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-B]ピリダジン-6-アミンおよびその塩の結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240703BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20240703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240703BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 CSP
A61K31/5025
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581011
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2021104090
(87)【国際公開番号】W WO2023272701
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524003035
【氏名又は名称】アンハート セラピューティクス(ハンチョウ)コーポレーション,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ファンガー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ドウ ダーガン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジンウェン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ジュン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示は、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミンおよびその塩の結晶形態、ならびにかかる結晶形態を調製および使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態Aであって、該結晶形態Aが正方晶系結晶系を有し、空間群がP41212であり、単位細胞パラメーターがa=b=9.63 (1) Å、c=61.14 (2) Å、α=β=γ=90°およびV=5666 (5) Å
3である、結晶形態A。
【請求項2】
請求項1記載の結晶形態A;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項3】
化合物1アジピン酸塩の非晶質形態と溶媒を混合する工程;および
逆溶媒を混合物に添加して、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを得る工程
を含む、請求項1記載の結晶形態Aを調製する方法。
【請求項4】
溶媒が、アルコール、スルホキシドまたはアミドであり、逆溶媒が、炭化水素、エーテル、ニトリル、ケトン、エステルまたは水である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
CuKα照射を用いて得られる5.2±0.2°、7.2±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態B。
【請求項6】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる17.3±0.2°、20.5±0.2°および22.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項5記載の結晶形態B。
【請求項7】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる14.5±0.2°、25.7±0.2°および26.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項6記載の結晶形態B。
【請求項8】
XRPDパターンが実質的に、
図5に示されるとおりである、請求項5記載の結晶形態B。
【請求項9】
請求項5~8いずれか記載の結晶形態B;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項10】
化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を、ジクロロメタンおよびメタノールを含む溶媒に溶解して溶液を形成する工程;ならびに
溶媒を蒸発させて化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bを得る工程
を含む、請求項5~8いずれか記載の結晶形態Bを調製する方法。
【請求項11】
CuKα照射を用いて得られる5.7±0.2°、21.0±0.2°および23.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態C。
【請求項12】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる5.4±0.2°、13.6±0.2°および29.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項11記載の結晶形態C。
【請求項13】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる18.4±0.2°、20.6±0.2°および21.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項12記載の結晶形態C。
【請求項14】
XRPDパターンが実質的に、
図9に示されるとおりである、請求項11記載の結晶形態C。
【請求項15】
請求項11~14いずれか記載の結晶形態C;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項16】
化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をエタノールに溶解して溶液を形成する工程;
アセトンを溶液に添加する工程;ならびに
蒸発によりエタノールおよびアセトンを除去して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cを得る工程
を含む、請求項11~14いずれか記載の結晶形態Cを調製する方法。
【請求項17】
CuKα照射を用いて得られる4.9±0.2°、19.4±0.2°および21.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態D。
【請求項18】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる13.5±0.2°、21.3±0.2°および24.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項17記載の結晶形態D。
【請求項19】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる10.3±0.2°、16.4±0.2°および20.5±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項18記載の結晶形態D。
【請求項20】
XRPDパターンが実質的に、
図13に示されるとおりである、請求項17記載の結晶形態D。
【請求項21】
請求項17~20いずれか記載の結晶形態D;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項22】
化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をジメチルアセトアミドに溶解して溶液を形成する工程;
アセトンを溶液に添加する工程;ならびに
蒸発によりジメチルアセトアミドおよびアセトンを除去して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dを得る工程
を含む、請求項17~20いずれか記載の結晶形態Dを調製する方法。
【請求項23】
CuKα照射を用いて得られる8.5±0.2°、12.7±0.2°および19.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態A。
【請求項24】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる16.9±0.2°、17.9±0.2°および20.0±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項23記載の結晶形態A。
【請求項25】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる21.3±0.2°、25.6±0.2°および34.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項24記載の結晶形態A。
【請求項26】
XRPDパターンが実質的に、
図17に示されるとおりである、請求項23記載の結晶形態A。
【請求項27】
請求項23~26いずれか記載の結晶形態A;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項28】
塩基と、水およびアルコール中に化合物1塩酸塩を含む溶液を混合して化合物1遊離塩基の結晶形態Aを得る工程
を含む、請求項23~26いずれか記載の結晶形態Aを調製する方法。
【請求項29】
塩基が水酸化ナトリウムである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
CuKα照射を用いて得られる6.1±0.2°、9.4±0.2°および21.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態B。
【請求項31】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる13.8±0.2°、18.8±0.2°および20.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項30記載の結晶形態B。
【請求項32】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる9.7±0.2°、11.0±0.2°および11.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項31記載の結晶形態B。
【請求項33】
XRPDパターンが実質的に、
図21に示されるとおりである、請求項30記載の結晶形態B。
【請求項34】
請求項30~33いずれか記載の結晶形態B;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項35】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aをジクロロメタンに分散して分散液を形成する工程;および
分散液を約45℃~約55℃の温度で撹拌して化合物1遊離塩基の結晶形態Bを得る工程
を含む、請求項30~33いずれか記載の結晶形態Bを調製する方法。
【請求項36】
CuKα照射を用いて得られる18.6±0.2°、20.2±0.2°および21.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態C。
【請求項37】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる8.8±0.2°、16.2±0.2°および20.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項36記載の結晶形態C。
【請求項38】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる15.6±0.2°、15.9±0.2°および25.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項37記載の結晶形態C。
【請求項39】
XRPDパターンが実質的に、
図25に示されるとおりである、請求項36記載の結晶形態C。
【請求項40】
請求項36~39いずれか記載の結晶形態C;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項41】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aをジクロロメタンに溶解して溶液を形成する工程;および
蒸発によりジクロロメタンを除去して化合物1遊離塩基の結晶形態Cを得る工程
を含む、請求項36~39いずれか記載の結晶形態Cを調製する方法。
【請求項42】
CuKα照射を用いて得られる8.6±0.2°、18.4±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物I)遊離塩基の結晶形態D。
【請求項43】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる15.5±0.2°、18.0±0.2°および20.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項42記載の結晶形態D。
【請求項44】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる11.3±0.2°、15.7±0.2°および16.0±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項43記載の結晶形態D。
【請求項45】
XRPDパターンが実質的に、
図29に示されるとおりである、請求項42記載の結晶形態D。
【請求項46】
請求項42~45いずれか記載の結晶形態D;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項47】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aをメタノールに溶解して溶液を形成する工程;
メチルtert-ブチルエーテルを溶液に添加する工程;ならびに
蒸発によりメタノールおよびメチルtert-ブチルエーテルを除去して化合物1遊離塩基の結晶形態Dを得る工程
を含む、請求項42~45いずれか記載の結晶形態Dを調製する方法。
【請求項48】
癌の治療を必要とする被験体に、請求項2、9、15、21、27、34、40および46いずれか一項記載の組成物の治療有効量を投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項49】
癌がROS1融合突然変異を有する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
癌がNTRK1、NTRK2またはNTRK3において融合突然変異を有する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
癌が非小細胞肺癌である、請求項48~50いずれか記載の方法。
【請求項52】
癌が甲状腺癌である、請求項48~50いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミンおよびその塩の結晶形態、ならびにかかる結晶形態を調製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]-イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)は、公知のROS1受容体チロシンキナーゼ阻害剤および神経栄養チロシン受容体キナーゼ(NTRK)阻害剤であり、以下の化学構造:
【化1】
を有する。
【0003】
ROS1遺伝子は、トリ肉腫ウイルスUR2 (University of Rochester腫瘍ウイルス2)の癌遺伝子生成物v-rosのヒトオルソログとして発見された受容体チロシンキナーゼをコードする。ROS1遺伝子を含む染色体再配列およびその後のROS1遺伝子の別の遺伝子への融合により得られたROS1融合遺伝子は、グリア芽腫細胞株U118MGにおいて発見された。U118MG細胞において、ゴルジタンパク質FIG(グリア芽腫に融合される(fused in glioblastoma))をコードする遺伝子は、ROS1遺伝子と融合されて、FIG-ROS1融合タンパク質をコードする遺伝子を形成する。FIGとROS1の間の融合は、ROS1キナーゼ酵素活性を構成的に活性化する構造的変化を生じ、FIG-ROS1融合タンパク質は、STAT3、ERKおよびSHP2を含むROS1シグナル伝達経路の活性化により媒介される細胞トランスフォーメーション活性および腫瘍形成活性を有する。
【0004】
ROS1遺伝子の染色体転座も、非小細胞肺癌細胞株HCC78および肺癌の臨床検体において同定された。SLC34A2遺伝子とROS1遺伝子の融合遺伝子は、HCC78細胞において報告されており、CD74遺伝子およびROS1遺伝子の膜貫通タンパク質コーディングCD74-ROS1融合遺伝子は、非小細胞肺癌患者検体において報告されている。FIG遺伝子とROS1遺伝子の融合遺伝子は、胆管癌の23患者検体の内2つで発見された。
【0005】
FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)を使用した患者検体の大規模スクリーニングにより、SDC、CD74、EZR、SLC34A2、LRIG3またはTPM3を有するROS1遺伝子の融合遺伝子が同定された。ROS1融合遺伝子SDC-ROS1、CD74-ROS1、EZR-ROS1、SLC34A2-ROS1、LRIG3-ROS1およびTPM3-ROS1のいずれかは、1476の非小細胞肺癌患者検体のうちの13で検出された。
【0006】
同様に、FISHを使用した非小細胞肺癌患者検体の大規模スクリーニングにより、1073の症例のうち18でROS1融合遺伝子が発見された。また、患者検体を使用した分析により、ROS1遺伝子が脳腫瘍において高度に発現されることが示された。
【0007】
ROS1は、ROS1融合遺伝子を発現する癌(例えば非小細胞肺癌、胆管癌または脳腫瘍)において活性化されることが示されている。したがって、ROS1キナーゼ活性を阻害する薬物は、腫瘍成長および腫瘍細胞生存に貢献するROS1経路の下流、すなわちSTAT3、ERK、SHP2を遮断し得る。そのため、ROS1キナーゼ阻害剤は、癌のための治療薬として有用であると期待される。クリゾチニブ、TAE684、ピラゾール誘導体およびアミノピラジン誘導体などの化合物は、ROS1キナーゼ酵素活性に対する阻害効果を有すると報告されている。
【0008】
トロポミオシン関連キナーゼ(Trk)とも称される神経栄養チロシン受容体キナーゼは、ニューロトロフィン(NT)と称される可溶性成長因子により活性化される高親和性受容体である。NTRK受容体ファミリーは、3つのメンバー:NTRK1 (TrkAとも称される)、NTRK2 (TrkBとも称される)およびNTRK3 (TrkCとも称される)を有する。
【0009】
NTとしては、以下の複数のタンパク質:NTRK1を活性化する神経成長因子(NGF)、NTRK2を活性化する脳由来神経栄養因子(BDNF)およびNT-4/5、ならびにNTRK3を活性化するNT3が挙げられる。それぞれのNTRK受容体は、細胞外ドメイン(リガンド結合部位)、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメイン(キナーゼドメインを含む)を含む。リガンドへの結合の際に、それぞれのキナーゼは、自己リン酸化を触媒し、次いで下流のシグナル伝達経路を活性化する。
【0010】
NTRKは、それらの発生期間の際に神経組織において広く発現され、これらの細胞の維持および生存のために重要な役割を果たす。以前の試験により、NTRKは、神経系の発生および機能の両方において重要な役割を果たすことが示される。
【0011】
多くの参照文献には、NTRKシグナル伝達が癌に関連すると述べられる。例えば、NTRKは、成人のヒトの神経系以外の領域において低発現レベルで存在し、NTRKの発現は前立腺癌の後期病期で増加される。正常な前立腺組織および初期病期のアンドロゲン依存的前立腺腫瘍において、NTRK1は、低レベルまたは検出できないレベルのみで発現するが、NTRK2とNTRK3のいずれも発現されない。しかしながら、後期病期のアンドロゲン非依存的前立腺癌において、NTRK受容体の全てのアイソフォームおよびそれらのリガンドは過剰発現される。証拠により、これらの後期病期前立腺癌細胞がそれらの腫瘍生存のためにNTRKに依存することが示される。したがって、NTRK阻害剤は、アンドロゲン非依存的前立腺癌に対してアポトーシスを誘導し得る。また、最近の参照文献も、NTRKの過剰発現、活性化、増幅、融合遺伝子形成または突然変異が神経芽腫、分泌性乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、頭部頸部癌、膵臓癌および黒色腫に関連することを示す。
【0012】
CEP-751、CEP-701、インドロカルバゾール(indolocarbazole)化合物、オキシインドール化合物、ピラゾリル縮合環化合物、イソチアゾール化合物および他の種々の化合物を含む選択的NTRKチロシンキナーゼ阻害剤が報告されている。
【発明の概要】
【0013】
概要
本開示は、化合物1またはその塩の特定の結晶形態が、優れた物理的特性(例えば物理的および化学的安定性)を有するという予測されない発見に基づく。
【0014】
一局面において、本開示は、結晶形態Aが正方晶系結晶系を有し、空間群がP41212であり、単位細胞パラメーターがa=b=9.63 (1) Å、c=61.14 (2) Å、α=β=γ=90°およびV=5666 (5) Å3である3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態Aを特徴とする。
【0015】
別の局面において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1アジピン酸塩の非晶質形態と溶媒を混合する工程;および逆溶媒(anti-solvent)を混合物に添加して、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを得る工程を含む。
【0016】
別の局面において、本開示は、結晶形態Bが、CuKα照射を用いて得られる5.2±0.2°、7.2±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態Bを特徴とする。
【0017】
別の局面において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を、ジクロロメタンおよびメタノールを含む溶媒に溶解して溶液を形成する工程;ならびに溶媒を蒸発させて化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bを得る工程を含む。
【0018】
別の局面において、本開示は、結晶形態Cが、CuKα照射を用いて得られる5.7±0.2°、21.0±0.2°および23.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態Cを特徴とする。
【0019】
別の局面において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をエタノールに溶解して溶液を形成する工程;アセトンを溶液に添加する工程;ならびに蒸発によりエタノールおよびアセトンを除去して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cを得る工程を含む。
【0020】
別の局面において、本開示は、結晶形態Dが、CuKα照射を用いて得られる4.9±0.2°、19.4±0.2°および21.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態Dを特徴とする。
【0021】
別の局面において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をジメチルアセトアミドに溶解して溶液を形成する工程;アセトンを溶液に添加する工程;ならびに蒸発によりジメチルアセトアミドおよびアセトンを除去して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dを得る工程を含む。
【0022】
別の局面において、本開示は、結晶形態Aが、CuKα照射を用いて得られる8.5±0.2°、12.7±0.2°および19.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態Aを特徴とする。
【0023】
別の局面において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Aを調製する方法を特徴とする。該方法は、塩基と、水およびアルコール中の化合物1塩酸塩を含む溶液を混合して、化合物1遊離塩基の結晶形態Aを得る工程を含む。
【0024】
別の局面において、本開示は、結晶形態Bが、CuKα照射を用いて得られる6.1±0.2°、9.4±0.2°および21.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態Bを特徴とする。
【0025】
別の局面において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Bを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1遊離塩基の結晶形態Aをジクロロメタンに分散させて分散液を形成する工程;および分散液を約45℃~約55℃(例えば約50℃)°の温度で撹拌して化合物1遊離塩基の結晶形態Bを得る工程を含む。
【0026】
別の局面において、本開示は、結晶形態Cが、CuKα照射を用いて得られる18.6±0.2°、20.2±0.2°および21.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態Cを特徴とする。
【0027】
別の局面において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Cを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1遊離塩基の結晶形態Aをジクロロメタンに溶解して溶液を形成する工程;および蒸発によりジクロロメタンを除去して化合物1遊離塩基の結晶形態Cを得る工程を含む。
【0028】
別の局面において、本開示は、結晶形態Dが、CuKα照射を用いて得られる8.6±0.2°、18.4±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物I)遊離塩基の結晶形態Dを特徴とする。
【0029】
別の局面において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Dを調製する方法を特徴とする。該方法は、化合物1遊離塩基の結晶形態Aをメタノールに溶解して溶液を形成する工程;メチルtert-ブチルエーテルを溶液に添加する工程;ならびに蒸発によりメタノールおよびメチルtert-ブチルエーテルを除去して化合物1遊離塩基の結晶形態Dを得る工程を含む。
【0030】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載される少なくとも1つの結晶形態;および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を特徴とする。
【0031】
さらに別の局面において、本開示は、癌を治療する方法を特徴とする。該方法は、癌の治療を必要とする被験体に、本明細書に記載される医薬組成物の治療有効量を投与する工程を含む。
【0032】
本明細書に記載される態様は、以下の利点の1つ以上を有し得る。
【0033】
いくつかの態様において、本明細書に記載される特定の結晶形態は、比較的低い吸湿性を有する。例えば、80% RHでの化合物1アジピン酸塩の結晶形態AおよびDの重量増加は、それぞれ0.235%および0.34%である。別の例として、80% RHでの化合物1遊離塩基の結晶形態A、BおよびCの重量増加は、それぞれ0.1%、0.005%および0.107%である。吸湿性は、薬物物質の安定性、製剤化プロセスの間の流動性および均一性に影響を及ぼすので、薬物生成物の品質に影響を及ぼす。吸湿性はまた、薬物の調製、保存および後の処理に影響を及ぼす。低い吸湿性を有する結晶形態は、保存および品質管理のコストを低減する保存条件を必要としていない。
【0034】
いくつかの態様において、本明細書に記載される特定の結晶形態は、優れた物理的安定性を有する。例えば、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、40℃/75%RHの条件下の空気中で保存した場合、少なくとも2週間、結晶的に変化しないままである。優れた物理的安定性は、創薬に非常に重要である。薬物生成物の製造の間に、(保存、輸送および製剤化プロセスを含む)多くのプロセスがある。これらのプロセスはしばしば、保存および輸送における薬物物質の衝突、薬物作製における湿った粒状化プロセス、季節および地方の気候の違いならびに天候要因により引き起こされ得るストレス条件下にある。高温および高湿度は、最も一般的なストレス条件である。これらのプロセスの間の結晶形態変質は、薬物の吸収における変化を引き起こし得るか、または毒性および副作用を生じ得る。化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、薬物物質および薬物生成物の一定した制御可能な品質を確実にし、結晶変質により引き起こされる毒性を最小化し、薬物の治療効果を確実にする優れた物理的安定性を有する。
【0035】
いくつかの態様において、本明細書に記載される特定の結晶形態は、優れた化学的安定性を有する。例えば、40℃/75%RHの条件下、空気中で2週間保存される場合、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの純度は本質的に変化しない。化学的純度は、薬物有効性および安全性を確実にするため、ならびに有害効果の発生を防ぐために非常に重大である。薬物が限度よりも高い不純物を含む場合、薬物の物理化学的特性および薬物の外観は変化し得、安定性が影響を受けることがある。不純物の増加はまた、有効成分含有量の低下、薬物活性の低減および/または薬物生成物の毒性および副作用の増加をもたらす。化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、保存後に純度の変化をほとんど有さず、非分解性であり、これは薬物純度の低減、薬物有効性の低減および毒性の増加の潜在的なリスクを有効に最小化する。
【0036】
いくつかの態様において、本明細書に記載される特定の結晶形態(例えば化合物1アジピン酸塩の結晶形態A~Cおよび化合物1遊離塩基の結晶形態A~C)は、残存の有機溶媒をほとんど有さない。一般に、化合物中の残存有機溶媒が関連のある基準を超える場合、多くの有機溶媒はヒトおよび環境に対して有害であるので、化合物は、薬物物質として使用され得ない。そのため、薬物安全性および生成物品質を確実にするために、薬物物質の残存有機溶媒を最小にする必要がある。
【0037】
他の特徴、目的および利点は、明細書および特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面の説明
【
図1】
図1は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【
図2】
図2は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのTGA曲線を示す。
【
図3】
図3は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのDSC曲線を示す。
【
図4】
図4は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのDVS曲線を示す。
【
図5】
図5は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのXRPDパターンを示す。
【
図6】
図6は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのTGA曲線を示す。
【
図7】
図7は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのDSC曲線を示す。
【
図8】
図8は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのDVS曲線を示す。
【
図9】
図9は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのXRPDパターンを示す。
【
図10】
図10は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのTGA曲線を示す。
【
図11】
図11は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのDSC曲線を示す。
【
図12】
図12は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのDVS曲線を示す。
【
図13】
図13は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのXRPDパターンを示す。
【
図14】
図14は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのTGA曲線を示す。
【
図15】
図15は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのDSC曲線を示す。
【
図16】
図16は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのDVS曲線を示す。
【
図17】
図17は、化合物1遊離塩基の結晶形態AのXRPDパターンを示す。
【
図18】
図18は、化合物1遊離塩基の結晶形態AのTGA曲線を示す。
【
図19】
図19は、化合物1遊離塩基の結晶形態AのDSC曲線を示す。
【
図20】
図20は、化合物1遊離塩基の結晶形態AのDVS曲線を示す。
【
図21】
図21は、化合物1遊離塩基の結晶形態BのXRPDパターンを示す。
【
図22】
図22は、化合物1遊離塩基の結晶形態BのTGA曲線を示す。
【
図23】
図23は、化合物1遊離塩基の結晶形態BのDSC曲線を示す。
【
図24】
図24は、化合物1遊離塩基の結晶形態BのDVS曲線を示す。
【
図25】
図25は、化合物1遊離塩基の結晶形態CのXRPDパターンを示す。
【
図26】
図26は、化合物1遊離塩基の結晶形態CのTGA曲線を示す。
【
図27】
図27は、化合物1遊離塩基の結晶形態CのDSC曲線を示す。
【
図28】
図28は、化合物1遊離塩基の結晶形態CのDVS曲線を示す。
【
図29】
図29は、化合物1遊離塩基の結晶形態DのXRPDパターンを示す。
【
図30】
図30は、化合物1遊離塩基の結晶形態DのTGA曲線を示す。
【
図31】
図31は、化合物1遊離塩基の結晶形態DのDSC曲線を示す。
【
図32】
図32は、化合物1遊離塩基の結晶形態DのDVS曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
種々の図面中の同様の参照記号は同様の要素を示す。
【0040】
詳細な説明
本開示は一般的に、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1) およびその塩の結晶形態、ならびにかかる結晶形態を調製および使用する方法に関する。
【0041】
結晶形態および調製方法
化合物1アジピン酸塩の結晶形態A
いくつかの態様において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを特徴とする。一般に、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、関連のある結晶系および関連のある単位細胞パラメーターにより特徴付けられ得る。いくつかの態様において、結晶形態Aは、正方晶系結晶系を有し、空間群はP41212であり、単位細胞パラメーターは、a=b=9.63 (1) Å、c=61.14 (2) Å、α=β=γ=90°およびV=5666 (5) Å3である。化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは無水物であると考えられる。
【0042】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、CuKα照射を用いて得られる5.8±0.2°、21.1±0.2°および23.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる18.5±0.2°、19.4±0.2°および29.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる11.7±0.2°、13.7±0.2°および20.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのXRPDパターンは、以下の表3における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態AのXRPDパターンは、実質的に
図1に示されるとおりである。
【0043】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、1.0のpHを有する水性バッファ溶液または疑似胃液(SGF)中で比較的高い溶解性を有し得、該結晶形態は胃中の胃液に容易に溶解し得ることが示唆される。例えば、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、1.0のpHを有する水性バッファ溶液またはSGFにおいて、少なくとも約10mg/mL(例えば少なくとも約12mg/mL、少なくとも約14mg/mLまたは少なくとも約15mg/mL)~多くとも約25mg/mL(例えば多くとも約24mg/mL、多くとも約22mg/mLまたは多くとも約20mg/mL)の溶解性を有し得る。
【0044】
一般に、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、優れた物理的および/または化学的安定性を有する(例えば40℃などの高温で、少なくとも60% RHなどの比較的高い湿度を有する環境中、および/または光への曝露下)。例えば、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、密封容器中で少なくとも36ヶ月間、室温で安定であり得る。
【0045】
一般に、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは優れた溶解性を有する。例えば、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、疑似胃液または1のpHを有するバッファ溶液中で、少なくとも約15mg/mL(例えば少なくとも約17mg/mL)の溶解性を有し得る。一般に、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、非常に低い吸湿性を有するかまたは吸湿性がほぼない。
【0046】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、以下の工程:(1)化合物1アジピン酸塩の非晶質形態と溶媒を混合する工程;および(2)逆溶媒を混合物に添加して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを得る工程を含む方法により調製され得る。一般に、逆溶媒の混合物への添加の際、約5分~約12時間に白色の結晶が見られる。いくつかの態様において、逆溶媒の混合物への添加の際に結晶が見られない場合、溶媒および逆溶媒を蒸発により(例えばブロー乾燥により)除去して、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aが得られ得る。
【0047】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの調製に適した溶媒としては、アルコール(例えばエタノールまたはイソプロパノール)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))またはアミド(例えばジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAc))が挙げられ得る。
【0048】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの調製に適した溶媒としては、炭化水素(例えばヘプタンまたはトルエン)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン(THF)またはメチルtert-ブチルエーテル)、ニトリル(例えばアセトニトリル)、ケトン(例えばアセトン)、エステル(例えば酢酸エチル)または水が挙げられ得る。
【0049】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態B
いくつかの態様において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、CuKα照射を用いて得られる5.2±0.2°、7.2±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる17.3±0.2°、20.5±0.2°および22.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる14.5±0.2°、25.7±0.2°および26.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのXRPDパターンは、以下の表6における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態BのXRPDパターンは、実質的に
図5に示されるとおりである。化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、水和物であり、1モーラーの化合物1アジピン酸塩当たり約3.6モーラーの水を含むと考えられる。
【0050】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、以下の工程:(1)化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をジクロロメタンおよびメタノールを含む溶媒に溶解して溶液を形成する工程;ならびに(2)溶媒を蒸発して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、工程(1)に使用される溶媒中のジクロロメタンおよびメタノールの体積比は、約2:1~約1:2の範囲(例えば約1:1)であり得る。いくつかの態様において、工程(2)における蒸発は、(例えば加熱することまたは回転式蒸発を使用することなく)溶液を室温下で空気に曝露することにより実施され得る。
【0051】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態C
いくつかの態様において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、CuKα照射を用いて得られる5.7±0.2°、21.0±0.2°および23.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる5.4±0.2°、13.6±0.2°および29.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる18.4±0.2°、20.6±0.2°および21.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのXRPDパターンは、以下の表7における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態CのXRPDパターンは実質的に、
図9に示されるとおりである。化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは水和物であり、1モーラーの化合物1アジピン酸塩当たり約13モーラーの水を含むと考えられる。一般に、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、低い吸湿性を有する。
【0052】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、以下の工程:(1)化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をエタノールに溶解して溶液を形成する工程;(2)アセトンを溶液に添加する工程;ならびに(3)エタノールおよびアセトンを蒸発により除去して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、上述の方法はさらに、工程(2)の後に延長された時間、例えば少なくとも1時間(例えば少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間)、溶液を撹拌する工程を含み得る。いくつかの態様において、工程(3)における蒸発は、(例えば加熱することまたは回転式蒸発を使用することなく)室温下で窒素を使用して溶液をブロー乾燥することにより実施され得る。
【0053】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態D
いくつかの態様において、本開示は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、CuKα照射を用いて得られる4.9±0.2°、19.4±0.2°および21.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる13.5±0.2°、21.3±0.2°および24.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる10.3±0.2°、16.4±0.2°および20.5±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのXRPDパターンは、以下の表8における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DのXRPDパターンは実質的に、
図13に示されるとおりである。化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、DMAc溶媒和物であり、1モーラーの化合物1アジピン酸塩当たり約1.3モーラーのDMAcを含むと考えられる。一般に、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、低い吸湿性を有する。
【0054】
いくつかの態様において、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、以下の工程:(1)化合物1アジピン酸塩の非晶質形態をジメチルアセトアミドに溶解して溶液を形成する工程;(2)アセトンを溶液に添加する工程;ならびに(3)ジメチルアセトアミドおよびアセトンを蒸発により除去して化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、上述の方法はさらに、工程(2)の後に延長された時間、例えば少なくとも1時間(例えば少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間)、溶液を撹拌する工程を含み得る。いくつかの態様において、工程(3)における蒸発は、(例えば加熱することまたは回転式蒸発を使用することなく)室温下で窒素を使用して溶液をブロー乾燥させることにより実施され得る。
【0055】
化合物1遊離塩基の結晶形態A
いくつかの態様において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Aを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、CuKα照射を用いて得られる8.5±0.2°、12.7±0.2°および19.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態AのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる16.9±0.2°、17.9±0.2°および20.0±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態AのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる21.3±0.2°、25.6±0.2°および34.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態AのXRPDパターンは、以下の表10における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態AのXRPDパターンは実質的に、
図17に示されるとおりである。化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、水和物であり、1モーラーの化合物1遊離塩基あたり約1モーラーの水を含むと考えられる。
【0056】
一般に、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、優れた物理的および/または化学的安定性を有する。例えば、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、密封容器中少なくとも36ヶ月間室温で安定であり得る。また、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、非常に低い吸湿性を有するかまたは吸湿性をほぼ有さない。
【0057】
いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、以下の工程:塩基(例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ)と、水およびアルコール(例えばエタノールまたはイソプロパノール)中に化合物1塩酸塩を含む溶液を混合して化合物1遊離塩基の結晶形態Aを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、混合する工程は、高温(例えば60~70℃)で実施され得る。いくつかの態様において、塩基と化合物1塩酸塩溶液を混合する後に結晶が形成されない場合、上述の方法はさらに、結晶核種を混合物に添加して結晶化を誘導する工程を含み得る。いくつかの態様において、該方法はさらに、混合する工程の後に混合物を適切な温度(例えば-5~5℃)に冷却して結晶化を容易にする工程を含み得る。
【0058】
化合物1遊離塩基の結晶形態B
いくつかの態様において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Bを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Bは、CuKα照射を用いて得られる6.1±0.2°、9.4±0.2°および21.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態BのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる13.8±0.2°、18.8±0.2°および20.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態BのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる9.7±0.2°、11.0±0.2°および11.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態BのXRPDパターンは、以下の表11における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態BのXRPDパターンは実質的に、
図21に示されるとおりである。化合物1遊離塩基の結晶形態Bは無水物であると考えられる。
【0059】
いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Bは、以下の工程:(1)化合物1遊離塩基の結晶形態Aをジクロロメタンに分散して分散液を形成する工程(すなわち結晶はジクロロメタン中に完全には溶解されない);および(2)分散液を約45℃~約55℃(例えば約50℃)の温度で撹拌して化合物1遊離塩基の結晶形態Bを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、撹拌する工程は、少なくとも3日間(例えば少なくとも7日間)および/または多くとも10日間実施され得る。いくつかの態様において、上記の方法はさらに、分散液を濾過して化合物1遊離塩基の結晶形態Bを得る工程を含み得る。
【0060】
化合物1遊離塩基の結晶形態C
いくつかの態様において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Cを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Cは、CuKα照射を用いて得られる18.6±0.2°、20.2±0.2°および21.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態CのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる8.8±0.2°、16.2±0.2°および20.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態CのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる15.6±0.2°、15.9±0.2°および25.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態CのXRPDパターンは、以下の表12における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態CのXRPDパターンは実質的に、
図25に示されるとおりである。化合物1遊離塩基の結晶形態Cは無水物であると考えられる。一般に、化合物1遊離塩基の結晶形態Cは、優れた物理的安定性を有する。
【0061】
いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Cは、以下の工程:(1)化合物1遊離塩基の結晶形態Aをジクロロメタン中に溶解して溶液を形成する工程(すなわち結晶は、ジクロロメタン中に完全に溶解される);および(2)蒸発によりジクロロメタンを除去して化合物1遊離塩基の結晶形態Cを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、蒸発は、約45℃~約55℃などの高温(例えば約50℃)で実施され得る。
【0062】
化合物1遊離塩基の結晶形態D
いくつかの態様において、本開示は、化合物1遊離塩基の結晶形態Dを特徴とする。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Dは、CuKα照射を用いて得られる8.6±0.2°、18.4±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含むXRPDパターンを示す。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態DのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる15.5±0.2°、18.0±0.2°および20.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態DのXRPDパターンはさらに、CuKα照射を用いて得られる11.3±0.2°、15.7±0.2°および16.0±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つ(例えば2または3)の回折ピークを含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態DのXRPDパターンは、以下の表13における回折ピークの少なくとも1つ(例えば2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15または全て)を含む。いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態DのXRPDパターンは実質的に、
図29に示されるとおりである。化合物1遊離塩基の結晶形態Dは、溶媒和物/水和物の混合物であると考えられる。
【0063】
いくつかの態様において、化合物1遊離塩基の結晶形態Dは、以下の工程:(1)化合物1遊離塩基の結晶形態Aをメタノールに溶解して溶液を形成する工程;(2)メチルtert-ブチルエーテルを溶液に添加する工程;ならびに(3)蒸発によりメタノールおよびメチルtert-ブチルエーテルを除去して化合物1遊離塩基の結晶形態Dを得る工程を含む方法により調製され得る。いくつかの態様において、蒸発は高温(例えば約40~45℃)で回転式エバポレーターを使用して実施され得る。
【0064】
医薬組成物
本開示はまた、有効成分として化合物1またはその塩(例えばその薬学的に許容され得る塩)の結晶形態の少なくとも1つ(例えば2つ以上)の治療有効量および少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体(例えばアジュバントまたは希釈剤)を含む医薬組成物を特徴とする。薬学的に許容され得る塩の例としては、酸付加塩、例えば化合物1と、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸または臭化水素酸)、無機酸(例えば硫酸、リン酸および硝酸)、および脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式のスルホン酸またはカルボン酸(例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、アジピン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ハロベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸)との間の反応により形成される塩が挙げられる。
【0065】
医薬組成物中の担体は、それが組成物の有効成分と適合性であり(および好ましくは有効成分を安定化し得る)、治療される被験体に対して有害でないという意味において「許容可能」でなければならない。1つ以上の可溶化剤は、本明細書に記載される化合物1またはその塩の結晶形態の送達のための医薬担体として使用され得る。他の担体の例としては、コロイド酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびD&C Yellow#10が挙げられる。
【0066】
本明細書に記載される医薬組成物は任意に、崩壊剤、結着剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤およびそれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つのさらなる添加剤を含み得る。かかる添加剤および他の添加剤の例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」; Ed. A.H. Kibbe, 3rd Ed., American Pharmaceutical Association, USA and Pharmaceutical Press UK, 2000に見られ得る。
【0067】
本明細書に記載される医薬組成物は、非経口、経口、局所、鼻腔、直腸、頬内もしくは舌下の投与または気道を介した投与に、例えばエーロゾルもしくは空気懸濁微粉末の形態で適合され得る。用語「非経口」は、本明細書で使用する場合、皮下、皮内、静脈内、筋内、関節内、動脈内、滑液胞内、胸骨内、鞘内、病変内、腹腔内、眼内、耳内または頭蓋内の注射および任意の適切な注入技術をいう。いくつかの態様において、組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、微粒子、顆粒剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤、鼻腔スプレー、経皮パッチ、注射用溶液または坐剤の形態であり得る。
【0068】
滅菌注射用組成物は、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。使用され得る許容され得るビヒクルおよび溶媒は、マンニトール、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。また、固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用される(例えば合成モノ-またはジグリセリド)。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンなどの天然の薬学的に許容され得る油であるように、注射剤の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、カルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤を含み得る。他の一般的に使用されるTweenもしくはSpanなどの界面活性剤または薬学的に許容され得る固体、液体もしくは他の剤型の製造に一般的に使用される他の同様の乳化剤もしくはバイオアベイラビリティエンハンサーも、製剤化の目的で使用され得る。
【0069】
経口投与のための組成物は、カプセル剤、錠剤、エマルジョンおよび水性懸濁液、分散剤および溶液などの任意の経口的に許容され得る剤型であり得る。錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与について、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液またはエマルジョンが経口投与される場合、有効成分は、乳化剤または懸濁剤と合わされた油相中に懸濁または溶解され得る。所望の場合、特定の甘味剤、矯味矯臭剤または着色剤が添加され得る。
【0070】
鼻孔エーロゾルまたは吸入組成物は、医薬製剤化の分野で周知の技術に従って調製され得る。例えば、かかる組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または当該技術分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の溶液として調製され得る。
【0071】
1つ以上の化合物1またはその塩の結晶形態を有する組成物はまた、直腸投与のために坐剤の形態で投与され得る。
【0072】
治療方法
また、本開示は、癌を治療するためまたはかかる治療のための医薬の製造のために上に概略を述べられる化合物1またはその塩の結晶形態を使用する方法を特徴とする。該方法は、癌(例えば固形腫瘍)の治療を必要とする被験体(例えば患者)に、癌(例えば固形腫瘍)を治療するための治療的に有効な量の本明細書に記載される医薬組成物を投与する工程を含み得る。いくつかの態様において、癌は、ROS1融合突然変異(例えばROS1陽性癌中)またはNTRK融合突然変異、例えばNTRK1、NTRK2および/またはNTRK3中(例えばNTRK陽性癌中)の融合突然変異を有し得る。いくつかの態様において、癌は、ROS1遺伝子の発現レベルの検出可能な増加および/またはNTRK遺伝子の発現レベルの検出可能な増加を有し得る。いくつかの態様において、癌は、ROS1融合遺伝子の検出可能な発現および/またはNTRK融合遺伝子の検出可能な発現を有し得る。いくつかの態様において、癌は、ROS1キナーゼ酵素活性の阻害および/またはNTRKキナーゼ酵素活性の阻害により治療可能であり得る。かかる癌(例えば悪性癌)の具体例としては、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、甲状腺癌、結腸直腸癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、胃癌、虫垂癌、肛門癌、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、消化管間質腫瘍、肝臓癌、中皮腫、腎臓癌、前立腺癌、神経内分泌腫瘍、黒色腫、乳癌、子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌、骨肉腫、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、筋肉腫、膀胱癌、または精巣癌、グリア芽腫、および非ホジキンリンパ腫(例えば未分化大細胞リンパ腫)が挙げられる。いくつかの態様において、本明細書に記載される結晶形態により治療され得る癌は、全身性の癌、再発した癌または治療抵抗性の癌であり得る。「治療有効量」は、治療される被験体に治療効果を付与するために必要な医薬組成物の量をいう。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」および「治療すること(treating)」は、本明細書に記載されるように、癌または1つ以上のその症状の開始を逆転、緩和、遅延するかまたはその進行を阻害することをいう。いくつかの態様において、治療は、1つ以上の症状が発症した後に施され得る。他の態様において、治療は、症状の非存在下で施され得る。例えば、治療は、(例えば症状の病歴に照らしておよび/または遺伝的もしくは他の罹病性の要因に照らして)症状の開始前に罹患しやすい個体に施され得る。治療はまた、症状が解消された後に、例えばそれらの再発を予防または遅延するために継続され得る。
【0074】
本明細書に記載される化合物1またはその塩の結晶形態の典型的な用量は、広い範囲内で変化し得、治療される疾患の種類、それぞれの患者の個々の必要性、投与経路、賦形剤用法および他の治療的処置の共使用の可能性などの種々の要因に依存する。例示的な日用量は、化合物1またはその塩の結晶形態の少なくとも約0.1mg(例えば少なくとも約0.5mg、少なくとも約1mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、少なくとも約15mg、少なくとも約20mg、少なくとも約50mgまたは少なくとも約100mg)および/または多くとも約800mg(例えば多くとも約700mg、多くとも約600mg、多くとも約500mg、多くとも約400mg、多くとも約300mg、多くとも約200mg、多くとも約100mg、多くとも約75mg、多くとも約50mg、多くとも約20mgまたは多くとも約15mg)であり得る。当業者または医師は、手近な状況に配慮するためにこの用量範囲および実際の実行についての関連のあるバリエーションを考慮し得る。
【0075】
いくつかの態様において、本明細書に記載される医薬組成物は、1日に1回投与され得る。いくつかの態様において、医薬組成物は、1日に1回より多く(例えば1日に2回、1日に3回または1日に4回)投与され得る。
【0076】
本開示はまた、(例えば患者身体中または患者から得られた組織試料中の)細胞中のROS1および/またはNTRKキナーゼ酵素活性を阻害する方法を特徴とする。該方法は、細胞と、本明細書に記載される化合物1またはその塩の結晶形態を、細胞中のROS1および/またはNTRKキナーゼ酵素活性を阻害するのに十分な量で接触させる工程を含む。
【0077】
本明細書に引用される全ての刊行物(例えば特許、特許出願公開および論文)の内容は、それらの全体において参照により本明細書に援用される。
【0078】
以下の実施例は例示的であり、限定することを意図しない。
【実施例】
【0079】
実施例
器具および分析方法
以下の器具および測定方法を、以下に記載される実施例において使用した:
【0080】
X線粉末回折
X線粉末回折(XRPD)パターンは、40kVの電圧および40mAの電流で、1.54056ÅでCuKα照射を使用して、Bruker D8 Focus X線粉末回折計を使用することにより得られた。XRPD分析は、それぞれの工程について0.02°の走査工程および0.2秒のスキャン時間を用いて、3°~42°の走査範囲において、角度2θでの測定により実行した。測定の間に、適切な量の試料を、回折計のサンプルプレートに置き、スパチュラまたはスライドガラスを使用して平らにした。
【0081】
熱重量分析
熱重量分析(TGA)は、TA Instruments TGA Discovery 550を使用して行った。試料をアルミニウムパンに置いて、器具により計量した。所定の温度まで10℃/分の線形熱傾斜を使用することにより、N2 (50ml/分)下で試料を評価した。
【0082】
示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)は、TA Instruments Discovery DSC 25を使用して行った。試料を計量してカバー付きのアルミニウムパンに置いた。所定の温度まで10℃/分の線形熱傾斜を使用することにより、N2 (50ml/分)下で試料を評価した。
【0083】
動的水蒸気吸着
動的水蒸気吸着(DVS)は、DVS (Surface Measurement Systems, UK)を使用して行った。試料を、20~30mgの量で計量して、試料チャンバーに入れた。試料チャンバーの温度が25±1℃で維持される場合に、DMDTモードで測定を行った。
【0084】
偏光顕微鏡検査
偏光顕微鏡検査(PLM)は、DM750P偏光顕微鏡を使用して行った。試料の形態および微小構造を得るように倍率範囲を調整した。
【0085】
高圧液体クロマトグラフィー
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)は、表1に要約される器具およびパラメーターを使用して行った。
【表1】
【0086】
実施例1:化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの調製および特徴付け
適切な量の化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を0.5mLの溶媒に溶解して溶液を形成した。そのように得られた溶液に逆溶媒を添加して固体を得、これが化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aであることを確認した。逆溶媒の添加後に固体が形成されなかった場合、ブロー乾燥により溶媒および逆溶媒を除去して固体を得た。いくつかの溶媒および逆溶媒を上述の実験において使用して、以下の表2に要約する。
【表2】
【0087】
表2に示されるように、特定の溶媒/逆溶媒の組合せが非晶質形態または化合物1アジピン酸塩の結晶形態CもしくはDを形成した以外は、ほとんどの溶媒/逆溶媒の組合せは、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを形成した。
【0088】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態AについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.13-1.14(d, J=5.0 Hz, 3H), 1.47-1.48(d, J=5.0 Hz, 7H), 2.15-2.18(t, J=5.0 Hz, J=10.0 Hz, 4H), 3.25-3.29(m, 1H), 3.79-3.83(m, 2H), 4.80-4.85(m, 1H), 6.76-6.77(d, J=5.0 Hz, 1H), 6.92-6.94(d, J=10.0 Hz, 2H), 7.01-7.05(t, J=10.0 Hz, 1H), 7.23-7.28(m, 2H), 7.37-7.42(m, 1H), 7.64-7.65(d, J=5.0 Hz, 1H), 7.72-7.76(t, J=10.0 Hz, 4H).
【0089】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態AについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 1701, 1628, 1612, 1586, 1463, 1333, 1246, 1110, 829, 821.
【0090】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aから得られた代表的なXRPDパターンを
図1に示し、XRPDデータを以下の表3に列挙する。
【表3】
【0091】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aから得られたTGA曲線を
図2に示す。
図2に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、150℃まで加熱した場合に0.072%の重量損失を示した。
【0092】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aから得られたDSC曲線を
図3に示す。
図3に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、181.41℃で吸熱ピークを示した。
【0093】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aから得られたDVS曲線を
図4に示す。
図4に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、80%RHで0.235%の重量増加を示し、これは低い吸湿性を示した。また、XRPDは、DVS試験の前および後に試料の結晶形態が変化しなかったことを示す。
【0094】
上記の結果は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aが無水物であることを示唆する。
【0095】
溶解性
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの溶解性は、以下の手順を使用して評価した。具体的に、50mgの化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを、2mLの以下の媒体:(1)1.0のpHを有するKCl/HClバッファ溶液、(2)3.0のpHを有するフタル酸水素カリウムバッファ溶液、(3)4.5のpHを有する酢酸ナトリウム三水和物バッファ溶液、(4)6.0のpHを有するリン酸二水素カリウムバッファ溶液、(5)7.5のpHを有するリン酸二水素カリウムバッファ溶液、(6) SGF(疑似胃液)、(7) FaSSIF(絶食状態疑似腸液、pH=6.5)、(8) FeSSIF(給餌状態疑似腸液、pH=5.0)および(9)水と混合した。次いで、それぞれの混合物を水槽中37℃で撹拌した。2時間および24時間の平衡化後、混合物中の結晶の濃度(mg/mL)をHPLCで測定して、溶解しなかった固体をXRPDにより評価した。結果を以下の表4に要約する。
【表4】
【0096】
表4に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、1.0のpHを有するバッファおよびSGFにおいて優れた溶解性を示した。
【0097】
安定性
所定の量の化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aを、以下の条件下:(1)空気に対して開放、25℃/60%RH下で1または2週間、(2)空気に対して開放、40℃/75%RH下で1または2週間、(3)空気に対して開放、80℃下で1日および(4)光に曝露、10日間で保存した。結晶形態および化学不純物をXRPDおよびHPLCのそれぞれでチェックした。結果を表5に要約する。
【表5】
【0098】
表5において、試料番号1は、いずれかの試験の前の結晶形態A開始材料であり;試料番号2および3は上述の条件(1)に供し;試料番号4および5は上述の条件(2)に供し;試料番号6は上述の条件(3)に供し;試料番号7および8は上述の条件(4)に供し、ここで試料番号7は覆われず、試料番号8は、比較としてスズホイルで完全に覆った。表5に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、ストレス条件下で優れた物理的および化学的安定性を示した。
【0099】
試料を40℃ ± 2℃/75 ± 5% RHで6ヶ月間保存して、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの加速された安定性試験を行った。結果を以下の表6に要約する。
【表6-1】
【表6-2】
【0100】
表6に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、上の加速された試験条件下で優れた安定性を示した。
【0101】
試料を25℃±2℃/60±5% RHで3年間保存することにより、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aの長期間安定性試験を行った。結果を以下の表7に要約する。
【表7】
【0102】
表7に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Aは、上の長期間試験条件下で優れた安定性を示した。
【0103】
実施例2:化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bの調製および特徴付け
12mgの化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を30mLのビーカーに入れた。1:1の体積比の1mLのジクロロメタンおよびメタノールの混合物をビーカーに添加して、化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を溶解した。室温で溶媒をゆっくり蒸発させた。溶媒が完全に蒸発した後、固体を得て、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bであることを確認した。
【0104】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態BについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.15(br, 3H), 1.48(br, 7H), 2.17(br, 4H), 3.28(br, 1H), 3.85(br, 2H), 4.823(br, 1H), 6.77(br, 1H), 6.94(br, 2H), 7.03(br, 1H), 7.26(br, 2H), 7.40(br, 1H), 7.65(br, 1H), 7.74(br, 4H).
【0105】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態BについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 3274, 3058, 2972, 2937, 2868, 1700, 1612, 1574, 1333, 1245, 1111, 829, 821.
【0106】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bから得られた代表的なXRPDパターンを
図5に示し、XRPDデータを以下の表8に列挙する。
【表8】
【0107】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bから得られたTGA曲線を
図6に示す。
図6に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、150℃に加熱した場合に約9.7%の重量損失を示した。
【0108】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bから得られたDSC曲線を
図7に示す。
図7に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、178.20℃で吸熱ピークを示した。
【0109】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bから得られたDVS曲線を
図8に示す。
図8に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、80%RHで約8.2%の重量増加を示し、これは該結晶形態が吸湿性を有することを示唆する。
【0110】
試料を150℃に加熱した後、そのXRPDは、試料の結晶形態が変化したことを示す。
【0111】
上述の結果は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bが水和物であることを示唆する。また、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Bは、1モーラーの化合物1アジピン酸塩当たり約3.6モーラーの水を含むと考えられる。
【0112】
実施例3:化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cの調製および特徴付け
10mgの化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を30mLビーカーに入れた。0.5mLのエタノールをビーカーに添加して化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を溶解した。5mLのアセトンをビーカーに添加した後、溶液を室温で1日間撹拌した。次いで溶液に窒素を吹き付けることにより溶媒を除去して固体を得、これが化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cであることを確認した。
【0113】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態CについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.13-1.14(d, J=5.0 Hz, 3H), 1.47-1.48(d, J=5.0 Hz, 7H), 2.14-2.18(t, J=5.0 Hz, J=10.0 Hz, 4H), 3.25-3.29(m, 1H), 3.81-3.88(m, 2H), 4.81-4.86(m, 1H), 6.76-6.78(d, J=10.0 Hz, 1H), 6.93-6.94(d, J=5.0 Hz, 2H), 7.01-7.05(t, J=10.0 Hz, 1H), 7.23-7.28(m, 2H), 7.37-7.42(m, 1H), 7.64-7.65(d, J=5.0 Hz, 1H), 7.72-7.76(t, J=10.0 Hz, 4H).
【0114】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態CについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 3275, 3057, 2974, 2939, 2868, 1700, 1612, 1583, 1333, 1245, 1110, 829, 821.
【0115】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cから得られた代表的なXRPDパターンを
図9に示し、XRPDデータを以下の表9に列挙する。
【表9】
【0116】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cから得られたTGA曲線を
図10に示す。
図10に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、150℃まで加熱した場合に約38.1%の重量損失を示した。
【0117】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cから得られたDSC曲線を
図11に示す。
図11に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、179.67℃で吸熱ピークを示した。
【0118】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cから得られたDVS曲線を
図12に示す。
図12に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、80%RHで約1%の重量増加を示し、これは該結晶形態が低い吸湿性を有することを示唆する。
【0119】
試料を160℃まで加熱した後、そのXRPDは、試料の結晶形態が変化したことを示す。
【0120】
上記の結果は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cが水和物であることを示唆する。また、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Cは、1モーラーの化合物1アジピン酸塩当たり約13モーラーの水を含むと考えられる。
【0121】
実施例4:化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dの調製および特徴付け
30mgの化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を30mLビーカーに入れた。0.5mLのジメチルアセトアミド(DMAc)をビーカーに添加して化合物1アジピン酸塩の非晶質形態を溶解した。5mLのアセトンをビーカーに添加した後、溶液を室温で1日間撹拌した。次いで溶液に窒素を吹きかけることにより溶媒を除去して固体を得、これが化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dであることを確認した。
【0122】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態DについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.10-1.12(d, J=10.0 Hz, 3H), 1.47-1.49(d, J=10.0 Hz, 7H), 1.96(s, 3H), 2.17-2.20(t, J=5.0 Hz, J=10.0 Hz, 4H), 2.78(s, 3H) , 2.94(s, 3H), 3.21-3.24(m, 1H), 3.83-3.86(m, 2H), 4.82-4.85(m, 1H), 6.76-6.78(d, J=10.0 Hz, 1H), 6.93-6.94(d, J=5.0 Hz, 2H), 7.01-7.05(t, J=10.0 Hz, 1H), 7.23-7.28(m, 2H), 7.37-7.42(m, 1H), 7.63-7.64(d, J=5.0 Hz, 1H), 7.72-7.76(t, J=10.0 Hz, 4H).
【0123】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態DについてのIRデータは以下のとおりであるIR (cm-1): 2937, 2873, 1628, 1613, 1583, 1457, 1333, 1242, 1110, 829, 821.
【0124】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dから得られた代表的なXRPDパターンを
図13に示し、XRPDデータを以下の表10に列挙する。
【表10】
【0125】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dから得られたTGA曲線を
図14に示す。
図14に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、150℃まで加熱した場合に約14%の重量損失を示した。
【0126】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dから得られたDSC曲線を
図15に示す。
図15に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、86.57℃、96.33℃および175.11℃で3つの吸熱ピークを示した。
【0127】
化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dから得られたDVS曲線を
図16に示す。
図16に示されるように、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、80%RHで約0.34%の重量増加を示し、これは該結晶形態が低い吸湿性を有することを示唆する。
【0128】
上記の結果は、化合物1アジピン酸塩の結晶形態DがDMAc溶媒和物であることを示唆する。また、化合物1アジピン酸塩の結晶形態Dは、1モーラーの化合物1アジピン酸塩当たり約1.3モーラーのDMAcを含むと考えられる。
【0129】
実施例5:化合物1遊離塩基の結晶形態Aの調製および特徴付け
化合物1 HCl (75.5g)(例えば米国出願公開第2020/0062765号の実施例5に記載される方法を使用して得られる)を50℃でエタノール(604mL)に溶解した。水酸化ナトリウム(68.1g)を上記の溶液に添加した。混合物を、1.5時間で1℃まで冷却し、18.5時間撹拌した。次いで混合物を濾過して、そのように得られた固体をエタノール(151mL)および水(151mL)の冷却した混合物で洗浄して乾燥させた。そのように得られた固体が、化合物1遊離塩基の結晶形態Aであることを確認した。
【0130】
化合物1遊離塩基の結晶形態AについてのNMRデータは以下のとおりである1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.09-1.10(d, J=5.0 Hz, 3H), 1.48-1.49(d, J=5.0 Hz, 3H), 3.16-3.20(m, 1H), 3.75-3.79(m, 2H), 4.82-4.86(m, 1H), 6.76-6.78(d, J=10.0 Hz, 1H), 6.92-6.94(m, 2H), 7.01-7.05(m, 1H), 7.23-7.28(m, 2H), 7.37-7.42(m, 1H), 7.62-7.63(d, J=5.0 Hz, 1H), 7.72-7.75(m, 4H).
【0131】
化合物1遊離塩基の結晶形態AについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 3350, 3247, 3055, 2961, 2923, 2864, 1611, 1586, 1349, 829, 819.
【0132】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aから得られた代表的なXRPDパターンを
図17に示し、XRPDデータを以下の表11に列挙する。
【表11】
【0133】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aから得られたTGA曲線を
図18に示す。
図18に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、150℃まで加熱した場合に約4%の重量損失を示した。
【0134】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aから得られたDSC曲線を
図19に示す。
図19に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、117.32℃、168.67℃および178.29℃で3つの吸熱ピークを示した。
【0135】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aから得られたDVS曲線を
図20に示す。
図20に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Aは、80%RHで約0.1%の重量増加を示し、これは該結晶形態が吸湿性をほとんど有さないことを示唆する。
【0136】
XRPDは、DVS試験の前および後に試料の結晶形態は変化しなかったことを示す。一方で、試料を155℃まで加熱した後、そのXRPDは、結晶形態が変化したことを示す。
【0137】
上記の結果は、化合物1遊離塩基の結晶形態Aが水和物であることを示す。また、化合物1遊離塩基の結晶形態Aが、1モーラーの化合物1遊離塩基当たり約1モーラーの水を含むと考えられる。
【0138】
実施例6:化合物1遊離塩基の結晶形態Bの調製および特徴付け
約50mgの化合物1遊離塩基の結晶形態Aを1mLのジクロロメタン中で混合して分散液を形成した。このように得られた分散液を、50℃で3または7日間撹拌して固体を得、これが化合物1遊離塩基の結晶形態Bであることを確認した。
【0139】
化合物1遊離塩基の結晶形態BについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.25-1.26(d, J=4.0 Hz, 3H), 1.47-1.49(d, J=8.0 Hz, 3H), 3.49-3.57(m, 1H), 3.93-3.98(m, 1H), 4.06-4.09(m, 1H), 4.81-4.88(m, 1H), 6.76-6.78(d, J=8.0 Hz, 1H), 6.96-6.99(m, 2H), 7.01-7.06(m, 1H), 7.22-7.28(m, 2H), 7.36-7.42(m, 1H), 7.65-7.67(d, J=8.0 Hz, 1H), 7.74-7.80(m, 4H).
【0140】
化合物1遊離塩基の結晶形態BについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 2960, 2910, 2846, 1624, 1611, 1586, 1335, 829.
【0141】
化合物1遊離塩基の結晶形態Bから得られた代表的なXRPDパターンを
図21に示し、XRPDデータを以下の表12に列挙する。
【表12】
【0142】
残存の溶媒を除去した後の化合物1遊離塩基の結晶形態Bから得られたTGA曲線を
図22に示す。
図22に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Bは、150℃まで加熱した場合に0.005%の重量損失を示した(すなわち実質的に重量損失はない)。
【0143】
化合物1遊離塩基の結晶形態Bから得られたDSC曲線を
図23に示す。
図23に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Bは、143.10℃の初期融点および184.68℃で結晶遷移ピークを示した。
【0144】
化合物1遊離塩基の結晶形態Bから得られたDVS曲線を
図24に示す。
図24に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Bは、80%RHで9.29%の重量増加を示し、これは該結晶形態が、吸湿性を有することを示唆する。
【0145】
XRPDは、残存の溶媒の除去の前および後に試料の結晶形態が変化しなかったことを示す。一方で、XRPDは、DVS試験の前および後に試料の結晶形態が変化したことを示す。
【0146】
上記の結果は、化合物1遊離塩基の結晶形態Bが無水物であることを示唆する。
【0147】
実施例7:化合物1遊離塩基の結晶形態Cの調製および特徴付け
約50mgの化合物1遊離塩基の結晶形態Aを2mLのジクロロメタンと混合した。固体が完全に溶解するまで、混合物を50℃に加熱した。50℃で溶媒を蒸発させて固体を得、これが、化合物1遊離塩基の結晶形態Cであることを確認した。
【0148】
化合物1遊離塩基の結晶形態CについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.08-1.09(d, J=5.0 Hz, 3H), 1.47-1.48(d, J=5.0 Hz, 3H), 3.16-3.20(m, 1H), 3.75-3.80(m, 2H), 4.81-4.85(m, 1H), 6.75-6.77(d, J=10.0 Hz, 1H), 6.91-6.93(m, 2H), 7.01-7.05(m, 1H), 7.23-7.28(m, 2H), 7.37-7.42(m, 1H), 7.63-7.64(d, J=5.0 Hz, 1H), 7.72-7.76(m, 4H).
【0149】
化合物1遊離塩基の結晶形態CについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 1624, 1610, 1570, 1448, 1457, 1347, 829.
【0150】
化合物1遊離塩基の結晶形態Cから得られた代表的なXRPDパターンを
図25に示し、XRPDデータを以下の表13に列挙する。
【表13】
【0151】
化合物1遊離塩基の結晶形態Cから得られたTGA曲線を
図26に示す。
図26に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Cは、150℃まで加熱した場合に0.107%の重量損失を示した。
【0152】
化合物1遊離塩基の結晶形態Cから得られたDSC曲線を
図27に示す。
図27に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Cは、167.45℃で吸熱ピークを示した。
【0153】
化合物1遊離塩基の結晶形態Cから得られたDVS曲線を
図28に示す。
図28に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Cは、80%RHで5.468%の重量増加を示し、これは該結晶形態が吸湿性を有することを示唆する。
【0154】
DVS試験の前および後に試料のXRPDを測定した。結果は、結晶形態の変化がないことを示す。
【0155】
上記の結果は、化合物1遊離塩基の結晶形態Cが無水物であることを示唆する。
【0156】
実施例8:化合物1遊離塩基の結晶形態Dの調製および特徴付け
100mgの化合物1遊離塩基の結晶形態Aを1mLのメタノールと混合して、固体を完全に溶解した。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE) (10mL)を上記の溶液に添加した。そのように得られた溶液中の溶媒を、40℃での回転式蒸発により除去して固体を得、これが、化合物1遊離塩基の結晶形態Dであることを確認した。
【0157】
化合物1遊離塩基の結晶形態DについてのNMRデータは以下のとおりである:1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 1.08-1.10(d, J=8.0 Hz, 3H), 1.47-1.49(d, J=8.0 Hz, 3H), 3.13-3.21(m, 1H), 3.76-3.79(m, 2H), 4.81-4.88(m, 1H), 6.75-6.78(d, J=12.0 Hz, 1H), 6.91-6.94(m, 2H), 7.00-7.05(m, 1H), 7.22-7.28(m, 2H), 7.37-7.42(m, 1H), 7.60-7.61(d, J=4.0 Hz, 1H), 7.71-7.75(m, 4H).
【0158】
化合物1遊離塩基の結晶形態DについてのIRデータは以下のとおりである:IR (cm-1): 1628, 1617, 1570, 1468, 1465, 1348, 1257, 1166, 830.
【0159】
化合物1遊離塩基の結晶形態Dから得られた代表的なXRPDパターンを
図29に示し、XRPDデータを以下の表14に列挙する。
【表14】
【0160】
化合物1遊離塩基の結晶形態Dから得られたTGA曲線を
図30に示す。
図30に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Dは、150℃まで加熱した場合に1.263%の重量損失を示した。
【0161】
化合物1遊離塩基の結晶形態Dから得られたDSC曲線を
図31に示す。
図31に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Dは、177.64℃で吸熱ピークを示した。
【0162】
化合物1遊離塩基の結晶形態Dから得られたDVS曲線を
図32に示す。
図32に示されるように、化合物1遊離塩基の結晶形態Dは、80%RHで2.896%の重量増加を示し、これは該結晶形態がいくらかの吸湿性を有することを示唆する。
【0163】
XRPDは、残存の溶媒の除去の前および後に試料の結晶形態が変化したことを示す。一方で、XRPDは、DVS試験の前および後に試料の結晶形態が変化しなかったことを示す。
【0164】
上記の結果は、化合物1遊離塩基の結晶形態Dが溶媒和物/水和物混合物であることを示唆する。
【0165】
他の態様は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα照射を用いて得られる8.5±0.2°、12.7±0.2°および19.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態A
の物。
【請求項2】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる16.9±0.2°、17.9±0.2°および20.0±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
1記載の結晶形態A
の物。
【請求項3】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる21.3±0.2°、25.6±0.2°および34.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
2記載の結晶形態A
の物。
【請求項4】
XRPDパターンが、CuKα照射を用いて得られる8.5±0.2°、12.7±0.2°、19.1±0.2°、16.9±0.2°、17.9±0.2°、20.0±0.2°、21.3±0.2°、25.6±0.2°および34.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する3つ以上の回折ピークを含む、請求項1記載の結晶形態Aの物。
【請求項5】
XRPDパターンが実質的に、
図17に示されるとおりである、請求項
1記載の結晶形態A
の物。
【請求項6】
化合物1遊離塩基の結晶形態Aの物が水和物である、請求項1記載の結晶形態Aの物。
【請求項7】
請求項
1~
6いずれか記載の結晶形態A
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項8】
CuKα照射を用いて得られる18.6±0.2°、20.2±0.2°および21.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態C
の物。
【請求項9】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる8.8±0.2°、16.2±0.2°および20.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
8記載の結晶形態C
の物。
【請求項10】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる15.6±0.2°、15.9±0.2°および25.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
9記載の結晶形態C
の物。
【請求項11】
XRPDパターンが、CuKα照射を用いて得られる8.8±0.2°、15.6±0.2°、15.9±0.2°、16.2±0.2°、18.6±0.2°、20.2±0.2°、20.6±0.2°、21.1±0.2°および25.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する3つ以上の回折ピークを含む、請求項8記載の結晶形態Cの物。
【請求項12】
XRPDパターンが実質的に、
図25に示されるとおりである、請求項
8記載の結晶形態C
の物。
【請求項13】
化合物1遊離塩基の結晶形態Cの物が無水物である、請求項8記載の結晶形態Cの物。
【請求項14】
請求項
8~
13いずれか記載の結晶形態C
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項15】
CuKα照射を用いて得られる5.2±0.2°、7.2±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態B
の物。
【請求項16】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる17.3±0.2°、20.5±0.2°および22.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
15記載の結晶形態B
の物。
【請求項17】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる14.5±0.2°、25.7±0.2°および26.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
16記載の結晶形態B
の物。
【請求項18】
XRPDパターンが実質的に、
図5に示されるとおりである、請求項
15記載の結晶形態B
の物。
【請求項19】
請求項
15~
18いずれか記載の結晶形態B
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項20】
CuKα照射を用いて得られる5.7±0.2°、21.0±0.2°および23.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態C
の物。
【請求項21】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる5.4±0.2°、13.6±0.2°および29.2±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
20記載の結晶形態C
の物。
【請求項22】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる18.4±0.2°、20.6±0.2°および21.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
21記載の結晶形態C
の物。
【請求項23】
XRPDパターンが実質的に、
図9に示されるとおりである、請求項
20記載の結晶形態C
の物。
【請求項24】
請求項
20~
23いずれか記載の結晶形態C
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項25】
CuKα照射を用いて得られる4.9±0.2°、19.4±0.2°および21.6±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)アジピン酸塩の結晶形態D
の物。
【請求項26】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる13.5±0.2°、21.3±0.2°および24.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
25記載の結晶形態D
の物。
【請求項27】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる10.3±0.2°、16.4±0.2°および20.5±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
26記載の結晶形態D
の物。
【請求項28】
XRPDパターンが実質的に、
図13に示されるとおりである、請求項
25記載の結晶形態D
の物。
【請求項29】
請求項
25~
28いずれか記載の結晶形態D
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項30】
CuKα照射を用いて得られる6.1±0.2°、9.4±0.2°および21.3±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物1)遊離塩基の結晶形態B
の物。
【請求項31】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる13.8±0.2°、18.8±0.2°および20.7±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項30記載の結晶形態B
の物。
【請求項32】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる9.7±0.2°、11.0±0.2°および11.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項31記載の結晶形態B
の物。
【請求項33】
XRPDパターンが実質的に、
図21に示されるとおりである、請求項30記載の結晶形態B
の物。
【請求項34】
請求項30~33いずれか記載の結晶形態B
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項35】
CuKα照射を用いて得られる8.6±0.2°、18.4±0.2°および20.9±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを示す、3-{4-[(2R)-2-アミノプロポキシ]フェニル}-N-[(1R)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-アミン(化合物I)遊離塩基の結晶形態D
の物。
【請求項36】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる15.5±0.2°、18.0±0.2°および20.1±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
35記載の結晶形態D
の物。
【請求項37】
XRPDパターンがさらに、CuKα照射を用いて得られる11.3±0.2°、15.7±0.2°および16.0±0.2°からなる群より選択される回折角2θを有する少なくとも1つの回折ピークを含む、請求項
36記載の結晶形態D
の物。
【請求項38】
XRPDパターンが実質的に、
図29に示されるとおりである、請求項
35記載の結晶形態D
の物。
【請求項39】
請求項
35~
38いずれか記載の結晶形態D
の物;および
薬学的に許容され得る担体
を含む、医薬組成物。
【請求項40】
癌の治療
のための、請求項
7、14、19、24、29、34および
39いずれか一項記載の
医薬組成
物。
【請求項41】
癌がROS1融合突然変異を有する、請求項
40記載の
医薬組成物。
【請求項42】
癌がNTRK1、NTRK2またはNTRK3において融合突然変異を有する、請求項
40記載の
医薬組成物。
【請求項43】
癌が非小細胞肺癌である、請求項
40~
42いずれか記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】