(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-11
(54)【発明の名称】エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20240704BHJP
G06N 3/0442 20230101ALI20240704BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01S3/10
G06N3/0442
G03F7/20 502
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553674
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2021112947
(87)【国際公開番号】W WO2022183690
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110224539.5
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516281137
【氏名又は名称】北京科益虹源光電技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】馮 沢斌
(72)【発明者】
【氏名】梁 賽
(72)【発明者】
【氏名】徐 向宇
(72)【発明者】
【氏名】江 鋭
(72)【発明者】
【氏名】劉 広義
(72)【発明者】
【氏名】劉 斌
(72)【発明者】
【氏名】曹 沛
【テーマコード(参考)】
2H197
5F172
【Fターム(参考)】
2H197CA08
2H197DA02
2H197DA03
2H197DB05
2H197DB33
2H197HA03
5F172AD06
5F172EE22
5F172NN22
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法および装置を開示する。この方法は、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築するステップ、複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集するステップ、および前記訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得るステップを含む。本発明によって提供される方法を使用すると、認識されたエキシマレーザ・エネルギーモデルによって生成されたパルス・エネルギーと実際のパルス・エネルギーとの間の最大誤差が1.5%以下になり、エキシマレーザのエネルギー特性制御のシミュレーション要件を満たすことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法であって、
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築するステップS1、
複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集するステップS2、および
前記訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得るステップS3を含むことを特徴とするエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項2】
前記ゲートループ・ネットワークは、複数の時系列に対応するゲートループ・ユニットを備え、
各前記ゲートループ・ユニットは、入力層、隠れ層および出力層を備え、
前記入力層は前記隠れ層に接続され、前記隠れ層は前記出力層に接続され、また、隣接する前記ゲートループ・ユニットの隠れ層が接続されることを特徴とする請求項1に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項3】
前記エネルギー収集条件は、単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値であり、単一の前記レーザパルスの時間間隔は、前のレーザパルスから現在のレーザパルスまでの時間間隔であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項4】
各ゲートループ・ユニットの隠れ層は、リセットゲート
br(t)、更新ゲート
bz(t)および隠れ層状態の候補
【数1】
(
bh(バー)(t)と記す。)を備え(下付きbに続くアルファベットは太字である。以下同様。)、
前記更新ゲート
bz(t)は、前の瞬間の状態によってこの瞬間にもたらされた情報量を表し、次の式で示され、
【数2】
上式において、σはシグモイド(sigmoid)関数である活性化関数を表し、
bW
zは前記更新ゲートの入力重み行列を表し、
bx(t)は現在のゲートループ・ネットワークの入力変数を表し、
bU
zは前記更新ゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、
bh(t-1)は前の瞬間の隠れ層状態を表し、
前記リセットゲート
br(t)は、現在の状態が前の瞬間の状態を無視する度合いを表し、次の式で示され、
【数3】
上式において、
bW
rは前記リセットゲートの入力重み行列を表し、
bU
rは前記リセットゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、
前記隠れ層状態の候補
bh(バー)(t)は、隠れ層状態
bh(t)の計算を補助するために用いられ、次の式で示され、
【数4】
上式において、
bWは前記隠れ層状態の候補の入力重み行列を表し、
bUは前の瞬間の隠れ層状態に対する、前記隠れ層状態の候補の伝達行列を表し、
【数5】
はアダマール積を表し、
現在の瞬間の隠れ層状態
bh(t)は、次のように示されることを特徴する請求項1に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【数6】
【請求項5】
前記ゲートループ・ユニットの出力層は、以下の式に基づいて、現在の瞬間のエキシマレーザのパルス・エネルギーE(t)を取得し、
【数7】
上式において、y(t)は現在の瞬間のパルス・エネルギーのエネルギー因子を表し、
bW
yは隠れ層状態から出力層への重み行列を表し、W
Eは出力スケールの変換係数を表すことを特徴とする請求項4に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項6】
前記訓練データセットは、各放電高電圧下で、対応する各レーザバーストモードにおける同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値であり、
各放電高電圧下で、対応する各レーザバーストモードにおけるすべての実際のレーザパルス・エネルギーは、前記単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定した後、プリセットされた時間内に収集した実際のレーザパルス・エネルギーであることを特徴とする請求項1に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項7】
前記ゲートループ・ネットワークの損失関数は、
【数8】
であり、
上式において、E
t(t)は、現在の瞬間の訓練サンプルの、放電高電圧下でのレーザバーストモードにおける同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値を表し、E(t)は、前記ゲートループ・ネットワークから出力されるエキシマレーザのパルス・エネルギー系列を表し、nは具体的な瞬間を表すことを特徴とする請求項1に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項8】
前記訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練するステップは、
訓練データセットから訓練サンプルをランダムに選択し、この訓練サンプルにおけるすべての実際のレーザパルス・エネルギーの平均値に対応するエネルギー収集条件を、ゲートループ・ネットワークに1つずつ入力することによって、ゲートループ・ネットワークが設定バーストモード下でパルス・エネルギーの系列を得るように訓練するステップS31、
現在の選択された訓練サンプルに対応するゲートループ・ネットワークの損失関数を計算し、前記損失関数に基づいて、前記ゲートループ・ネットワークの訓練パラメータを更新するステップS32、
前記ゲートループ・ネットワークの現在出力されるバーストモード下でのパルス・エネルギー系列と現在の訓練サンプルとの間の誤差を計算するステップS33、および
訓練終了条件に達するまでステップS31~S33を循環して実行した後、訓練を終了し、前記エキシマレーザのエネルギーモデルを得るステップS34を含むことを特徴とする請求項1に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項9】
前記ゲートループ・ネットワークの訓練終了条件は、所定の訓練回数、またはステップS31~S33を循環して実行する所定回数であり、ゲートループ・ネットワークが各回に出力するバーストモードのパルス・エネルギー系列における各パルス・エネルギーと訓練サンプル中の同じ位置にあるパルス・エネルギーとの間の最大誤差が0.15mJ以下であることを特徴とする請求項8に記載のエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法。
【請求項10】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置であって、
プロセッサおよびメモリを備え、前記プロセッサは、前記メモリ内のコンピュータ・プログラムまたは命令を読み取り、以下の動作、
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築し、その入力変数を決定する動作、
複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルスの方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集する動作、および
前記訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得る動作を実行することを特徴とするエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ技術分野に属し、レーザエネルギーモデルを識別する方法、特に、ゲートループ・ネットワークに基づくエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法に関し、同時に、対応するエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ技術の急速な発展に伴い、レーザ技術は様々な分野で広く利用されている。その中で、エキシマレーザは、その短波長、高出力、狭い線幅の特性により、産業、医療、科学研究等の分野で広く使用されている。特に、希ガスハライド・エキシマレーザは、その出力レーザのピークパワーが高いこと、単一パルス・エネルギーが大きいこと、波長が紫外域にあること等の特徴から、現在の半導体リソグラフィー業界では最も主要なレーザ光源となっている。エキシマレーザのエネルギー特性は、リソグラフィー用エキシマレーザの3つの重要な指標(エネルギー、線幅、波長)の1つであり、半導体リソグラフィー装置の加工精度、収率および主要寸法を直接決定する。したがって、エキシマレーザのエネルギーモデル(すなわち、エキシマレーザ出光エネルギーモデル)の構築は、レーザエネルギー特性の研究・制御の基礎となっている。
【0003】
エキシマレーザの出光エネルギーの研究においては、使用するエキシマレーザのエネルギーモデルが、実際の出光エネルギー法則に近いほど研究に有利である。しかし、エキシマレーザのエネルギーモデルは複雑な非線形モデルであり、理論的な導出から正確なモデルを得ることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする第1の技術的課題は、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識する方法を提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0007】
本発明の実施形態の第1の態様により、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法は、
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築するステップS1、
複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集するステップS2、および
前記訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得るステップS3を含む。
【0008】
好ましくは、前記ゲートループ・ネットワークは、複数の時系列に対応するゲートループ・ユニットを備える。各前記ゲートループ・ユニットは、入力層、隠れ層および出力層を備える。前記入力層は前記隠れ層に接続され、前記隠れ層は前記出力層に接続され、また、隣接する前記ゲートループ・ユニットの隠れ層が接続される。
【0009】
好ましくは、前記エネルギー収集条件は、単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値であり、単一の前記レーザパルスの時間間隔は、前のレーザパルスから現在のレーザパルスまでの時間間隔である。
【0010】
好ましくは、各ゲートループ・ユニットの隠れ層は、リセットゲート
【0011】
【数1】
(以下、太字であることをアルファベットの前に「
b」を付加して示し、
br(t)のように記すものとする。)、更新ゲート
bz(t)および隠れ層状態の候補
【0012】
【数2】
(以下、適宜、
bh(バー)(t)と記す。)を備える。
【0013】
前記更新ゲートbz(t)は、前の瞬間の状態によってこの瞬間にもたらされた情報量を表し、次の式で示される。
【0014】
【0015】
上式において、σはシグモイド(sigmoid)関数である活性化関数を示し、bWZは前記更新ゲートの入力重み行列を表し、bx(t)は現在のゲートループ・ネットワークの入力変数を表し、bUZは前記更新ゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、bh(t-1)は前の瞬間の隠れ層状態を表す。
【0016】
前記リセットゲートbr(t)は、現在の状態が前の瞬間状態を無視する度合いを表し、次の式で示される。
【0017】
【0018】
上式において、bWrは前記リセットゲートの入力重み行列を表し、bUrは前記リセットゲートの隠れ層状態の伝達行列を表す。
【0019】
前記隠れ層状態の候補bh(バー)(t)は、隠れ層状態bh(t)の計算を補助するために用いられ、次の式で示される。
【0020】
【0021】
上式において、bWは前記隠れ層状態の候補の入力重み行列を表し、bUは前の瞬間の隠れ層状態に対する、前記隠れ層状態の候補の伝達行列を表し、
【0022】
【0023】
現在の瞬間の隠れ層状態bh(t)は、次のように示される。
【0024】
【0025】
好ましくは、前記ゲートループ・ユニットの出力層は、以下の式に基づいて、現在の瞬間のエキシマレーザのパルス・エネルギーE(t)を取得する。
【0026】
【0027】
上式において、y(t)は、現在の瞬間のパルス・エネルギーのエネルギー因子を表し、bWyは隠れ層状態から出力層への重み行列を表し、WEは出力スケールの変換係数を表す。
【0028】
好ましくは、前記訓練データセットは、各放電高電圧下で、対応する各レーザバーストモードにおける同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値である。
【0029】
ここで、各放電高電圧下で、対応する各レーザバーストモードにおけるすべての実際のレーザパルス・エネルギーは、前記単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定した後、プリセットされた時間内に収集した実際のレーザパルス・エネルギーである。
【0030】
好ましくは、前記ゲートループ・ネットワークの損失関数は、
【0031】
【0032】
上式において、Et(t)は、現在の瞬間の訓練サンプルの、放電高電圧下でのレーザバーストモードにおける同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値を表し、E(t)は、前記ゲートループ・ネットワークから出力されるエキシマレーザのパルス・エネルギー系列を表し、nは具体的な瞬間を表す。
【0033】
好ましくは、構築されたゲートループ・ネットワークは、前記訓練データセットを用いて訓練し、次のステップを含む。
【0034】
ステップS31:訓練データセットから訓練サンプルをランダムに選択し、この訓練サンプルにおけるすべての実際のレーザパルス・エネルギーの平均値に対応するエネルギー収集条件を、ゲートループ・ネットワークに1つずつ入力することによって、ゲートループ・ネットワークが設定バーストモード下でパルス・エネルギーの系列を得るように訓練する。
【0035】
ステップS32:現在の選択された訓練サンプルに対応するゲートループ・ネットワークの損失関数を計算し、前記損失関数に基づいて、前記ゲートループ・ネットワークの訓練パラメータを更新する。
【0036】
ステップS33:前記ゲートループ・ネットワークの現在出力されるバーストモード下でのパルス・エネルギー系列と訓練サンプルとの間の誤差を計算する。
【0037】
ステップS34:訓練終了条件に達するまでステップS31~S33を循環して実行した後、訓練を終了し、前記エキシマレーザのエネルギーモデルを得る。
【0038】
好ましくは、前記ゲートループ・ネットワークの訓練終了条件は、所定の訓練回数、またはステップS31~S33を循環して実行する所定回数であり、ゲートループ・ネットワークが各回に出力するバーストモードのパルス・エネルギー系列における各パルス・エネルギーと、訓練サンプル中の同じ位置にあるパルス・エネルギーとの間の最大誤差が0.15mJ以下である。
【0039】
本発明の実施形態の第2の態様により、プロセッサおよびメモリを備えるエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置を提供する。前記プロセッサは、前記メモリ内のコンピュータ・プログラムまたは命令を読み取り、以下の動作を実行する。
【0040】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築し、その入力変数を決定する。
【0041】
複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルスの方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集する。
【0042】
前記訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得る。
【発明の効果】
【0043】
本発明によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法及び装置は、ゲートループ・ネットワークを通じて、比較的正確にエキシマレーザのエネルギーモデルを識別することができる。このエキシマレーザのエネルギーモデルは、レーザのエネルギー特性制御のシミュレーション要件を満たすために、実際のパルス・エネルギーとの間の最大誤差は1.5%未満のパルス・エネルギーの生成を検証することができる。このエキシマレーザのエネルギーモデルは、エキシマレーザのエネルギー制御方法のシミュレーション研究と解析を容易にし、実験時間を短縮することによって、エキシマレーザーのエネルギー安定性制御と線量精度の制御の改善に大きな意義がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、ゲートループ・ネットワークの隠れ層のネットワーク構造図である。
【
図3】定放電高電圧動作モードにおけるエキシマレーザの単一パルス・エネルギー変化規則を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、各放電電圧下でエキシマレーザ・エネルギーモデルから得られたパルス・エネルギーと実際のパルス・エネルギーとの間の最大誤差を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、ゲートループ・ネットワークの訓練過程における最大パルス・エネルギー誤差の変化を示す曲線図である。
【
図6a】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、放電電圧が1550Vである場合、エキシマレーザ・エネルギーモデルによって生成された、単一パルス・エネルギーと実際の単一パルス・エネルギーとの比較図である。
【
図6b】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、放電電圧が1550Vである場合、エキシマレーザ・エネルギーモデルによって生成された、単一パルス・エネルギーと実際の単一パルス・エネルギーとの比較図である。
【
図6c】本発明の実施形態によって提供される、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、放電電圧が1550Vである場合、エキシマレーザ・エネルギーモデルによって生成された、単一パルス・エネルギーと実際の単一パルス・エネルギーとの比較図である。
【
図7a】本発明の実施形態によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、定放電高電圧が1500Vの動作条件ある場合、再周波数が1KHz~4KHzであるレーザの実際のパルス・エネルギーと、モデルによって生成されたパルス・エネルギーとの比較図である。
【
図7b】本発明の実施形態によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、定放電高電圧が1500Vの動作条件ある場合、再周波数が1KHz~4KHzであるレーザの実際のパルス・エネルギーと、モデルによって生成されたパルス・エネルギーとの比較図である。
【
図8】本発明の実施形態によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法において、定放電高電圧が1500Vの動作条件である場合、再周波数が1KHz~4KHzであるレーザの実際のパルス・エネルギーと、モデルによって生成されたパルス・エネルギーとの最大誤差を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の技術内容について、添付図面と具体的な実施形態とを組合わせて更に詳細に説明する。
【0046】
従来のエキシマレーザのエネルギーモデルによって生成された、パルス・エネルギー系列と実際のエキシマレーザ出光エネルギー系列との間に、大きな差がある問題を解決するために、
図1に示すように、本発明の実施形態では、主に以下のステップを含む、エキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法をまず提供する。
【0047】
ステップS1:エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築する。
【0048】
本発明の実施形態において、ゲートループ・ネットワーク認識を用いて、エキシマレーザエネルギーモデルが得られる。このゲートループ・ネットワークは、複数の時系列に対応するゲートループ・ユニットを含み、各ゲートループ・ユニットは入力層、隠れ層および出力層を備える。入力層は隠れ層に接続され、隠れ層は出力層に接続され、また、隣接するゲートループ・ユニットの隠れ層が接続される。
【0049】
ここで、現在の時系列に対応するゲートループ・ユニットの入力層は、現在の瞬間の入力変数を受信し、この入力変数を前記ゲートループ・ユニットの隠れ層に入力する。この隠れ層は、受信された前の瞬間の隠れ層状態および入力変数に基づいて、現在の瞬間の隠れ層状態を取得し、この隠れ層状態は、一方ではこのゲートループ・ユニットの出力層に入力され、現在の瞬間のエキシマレーザのパルス・エネルギーを取得し、他方では、次の時系列に対応するゲートループ・ユニットの隠れ層に入力され、入力として使用される。ここで、各瞬間は、1つの時系列に対応する。
【0050】
具体的には、エキシマレーザの出光エネルギーの特性分析を通じて、エキシマレーザの出光エネルギーに直接影響する条件変数は、単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値であることが分かる。ここで、単一のレーザパルスの時間間隔は、前のレーザパルスから現在のレーザパルスまでの時間間隔である。したがって、ゲートループ・ネットワークの入力変数は、式(1)に示すように、単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値を選択する。
【0051】
【0052】
上式において、bx(t)は瞬間tにおけるゲートループ・ネットワークの入力変数を表し、HV(t)は瞬間tにおけるエキシマレーザのレーザパルスの放電高電圧値を表し、Δt(t)は瞬間tにおけるエキシマレーザのレーザパルスの時間間隔を表し、bWinは入力スケールの変換行列を表す。
【0053】
図2に示すように、各ゲートループ・ユニットの隠れ層は、リセットゲート
br(t)、更新ゲート
bz(t)および隠れ層状態の候補
bh(バー)(t)を備える。隠れ層は、前の瞬間の隠れ層状態
bh(t-1)と現在の瞬間の入力変数
bx(t)を入力とし、現在の瞬間の隠れ層状態
bh(t)は、前の瞬間の隠れ層状態を利用する場合、前の瞬間の隠れ層状態を処理することによって取得する。
【0054】
ここで、更新ゲートbz(t)は前の瞬間の状態によってこの瞬間にもたらされた情報量を表し、時系列の長期的な依頼関係を捉まえるために用いられ、その表現式は、式(2)に示すとおりである。
【0055】
【0056】
上式において、σはシグモイド関数である活性化関数を表し、bWzは更新ゲートの入力重み行列を表し、bx(t)は現在の瞬間のゲートループ・ネットワークの入力変数を表し、bUzは更新ゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、bh(t-1)は前の瞬間の隠れ層状態を表す。
【0057】
リセットゲートbr(t)は、現在の状態が前の瞬間の状態を無視する度合いを表し、時系列における短期的な依存関係を捕捉するために用いられ、リセットゲートbr(t)の活性化関数はシグモイド(sigmoid)関数を選択して使用し、σと表示し、その表現式は、式(3)に示すとおりである。
【0058】
【0059】
上式において、bWrはリセットゲートの入力重み行列を表し、bx(t)は現在の瞬間のゲートループ・ネットワークの入力変数を表し、bUrはリセットゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、bh(t-1)は前の瞬間の隠れ層状態を表す。
【0060】
隠れ層状態の候補bh(バー)(t)は、隠れ層状態bh(t)の計算を補助するために用いられ、隠れ層状態の候補の活性化関数は、tanh関数を選択して使用し、その表現式は、式(4)に示すとおりである。
【0061】
【0062】
上式において、bWは隠れ層状態の候補の入力重み行列を表し、bx(t)は現在の瞬間のゲートループ・ネットワークの入力変数を表し、bUは前の瞬間の隠れ層状態に対する、隠れ層状態の候補の伝達行列を表し、
【0063】
【数14】
はアダマール積(Hadamard product)を表し、
bh(t-1)は前の瞬間の隠れ層状態を表す。
【0064】
現在の瞬間の隠れ層状態bh(t)の表現式は、式(5)に示すとおりである。
【0065】
【0066】
上式において、bz(t)は更新ゲートを表し、bh(t-1)は前の瞬間の隠れ層状態を表し、bh(バー)(t)は隠れ層状態の候補bh(バー)(t)を表し、
【0067】
【0068】
ゲートループ・ユニットの出力層は、現在の瞬間の隠れ層状態bh(t)に基づいて、現在の瞬間のエキシマレーザのパルス・エネルギーE(t)を取得するために用いられ、このパルス・エネルギーは、式(6)および式(7)に基づいて得られる。具体的には、式(6)により現在の瞬間のパルス・エネルギーのエネルギー因子y(t)を得、エネルギー因子y(t)の活性化関数は、シグモイド関数を選択して使用し、σと表示される。
【0069】
【0070】
上式において、bWyは隠れ層状態から出力層までの重み行列を表し、bh(t)は現在の瞬間の隠れ層状態を表す。
【0071】
現在の瞬間のパルス・エネルギーのエネルギー因子y(t)および式(7)に基づいて、現在の瞬間のエキシマレーザのパルス・エネルギー系列E(t)を得る。
【0072】
【0073】
上式において、WEは出力スケールの変換係数を表し、y(t)は現在の瞬間のパルス・エネルギーのエネルギー因子を表す。
【0074】
式(1)~(7)を組合わせることにより、本発明の実施形態では、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するゲートループ・ネットワークを構築する。
【0075】
ステップS2:複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集する。
【0076】
単一のパルスのエネルギーの収集条件は、単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値を意味する。すなわち、前のレーザパルスから現在のレーザパルスまでの時間間隔と、現在のレーザパルスに対応する放電高電圧である。
【0077】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するために用いられる訓練データセットは、各放電高電圧下で、各レーザのBurstモードに対応する同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値である。すなわち、1つの放電高電圧は、その各レーザのBurstモードの同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値に対応する。ここで、各放電高電圧下で、各レーザのBurstモードに対応するすべての実際のレーザパルス・エネルギーは、プリセットされた時間内に、単一のレーザパルス方式でエネルギー収集条件を設定した後、収集した実際のレーザパルス・エネルギーである。
【0078】
ここで、訓練データセットの各放電高電圧下で、各レーザのBurstモード対応する同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値は、Burstモードにおける実際のレーザパルス・エネルギーの平均値の系列を構成し、訓練データセットにおける訓練サンプルとして使用される。
【0079】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するために用いられるテストデータセットは、少なくとも1つの放電高電圧下で、各レーザのBurstモードに対応する同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値である。各放電高電圧下で、各レーザのBurstモードに対応するすべての実際のレーザパルス・エネルギー収集方法は、訓練データセットの収集方法と同じである。ここで、テストデータセットの各放電高電圧下で、各レーザのBurstモードに対応する同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値は、Burstモードにおける実際のレーザパルス・エネルギーの平均値系列を構成し、テストデータセットにおけるテストサンプルとして使用される。
【0080】
具体的には、半導体リソグラフィ用途では、エキシマレーザはBurstモードで動作するため、各瞬間を各時系列に対応させ、各時系列をBurstモードに対応させることができる。Burstモードで収集したエキシマレーザのパルス・エネルギー系列は、
図3に示すとおりである。図から、各Burstモードで収集したパルス・エネルギー系列において、最初のいくつかのパルス・エネルギー(例えば、
図3におけるE
m,1、E
m,2、E
m+1,1およびE
m+1,2)には、異なる大きさのオーバーシュートが現れると共に、Burstモードの後ろの安定領域でも、エネルギーの変動(例えば、
図3におけるE
m,iおよびE
m+1,j)があることが分かる。放電高電圧が一定である場合、エキシマレーザのパルス・エネルギーは、それがBurstモードで収集したパルス・エネルギー系列における位置と大きな関係があるため、エキシマレーザのエネルギーの特性を分析する場合、Burstモードで収集したパルス・エネルギー系列において、異なる位置にあるパルス・エネルギーを個別に分析する。
【0081】
Burstモードで収集したレーザパルス・エネルギー系列のパルス・エネルギーに含まれているノイズを除去するために、式(8)を用いて、各Burstモードで収集したレーザパルス・エネルギー系列において、異なる位置にあるパルス・エネルギーの平均値を取る。
【0082】
【0083】
ここで、
【0084】
【数20】
は各Burstモードで収集したレーザパルス・エネルギー系列において、i番めのレーザパルス・エネルギーの平均値を表し、E
m,iはm番めのBurstモードで収集したレーザパルス・エネルギー系列において、i番めのレーザパルスのエネルギーを表し、Nはプリセットされた時間内に収集したBurstモードにおけるレーザパルス・エネルギー系列の数を表す。
【0085】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集する場合、248nm波長を発生するKrFエキシマレーザを例とする。エキシマレーザの波長は、収集された実際のパルス・エネルギーデータにも影響を与えるため、実験過程において、フィードバック技術を用いて波長を248.327nmに制御する。エキシマレーザは1KHzの再周波数で動作し、各レーザパルスにその時間間隔と放電高電圧値を設定し、エネルギー検出器を用いて、それぞれ1400V、1450V、1550Vおよび1600Vの放電高電圧下でのレーザのパルスレーザ・エネルギーを各1分間収集する。エネルギー検出器は1分間で、エキシマレーザの各放電高電圧下での100個のBurstモードにおける実際のパルス・エネルギー系列を収集し、各Burstモードにおける実際のパルス・エネルギー系列は250個のパルス・エネルギーを含む。ここで、各Burstモードにおける実際のパルス・エネルギー系列において、各パルス・エネルギーに対応するパルスの間の時間間隔は再周波数の逆数であり、単位はmsであってもよい。各放電高電圧下での100個のBurstモードにおける実際のパルス・エネルギー系列に対して、式(8)に基づいて、各Burstモードにおける実際のパルス・エネルギー系列の最初のパルス・エネルギーから初めて、各放電高電圧下でのレーザのBurstモードにおける同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値をそれぞれ計算し、各放電高電圧に対応する1つのBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列を得る。任意の放電高電圧下でのレーザのBurstモードにおける最初の位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値を計算することを例とする。100個のBurstモードにおけるパルス・エネルギー系列の最初の実際のパルス・エネルギーを加算した後、100で割ればよい。
【0086】
したがって、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットは、1400V、1450V、1550Vおよび1600Vの放電高電圧に対応するBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列から構成される。すなわち、Burstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列は4個あり、各放電高電圧は、Burstモード下での実際のパルス・エネルギーの平均値系列に対応する。
【0087】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためにデータセットをテストする場合、同様に、248nm波長を生成するKrFエキシマレーザを例とする。エキシマレーザは1KHzの再周波数で動作し、各レーザパルスにその時間間隔と放電高電圧値を設定し、エネルギー検出器を用いて、1550Vの放電高電圧下でのレーザのパルスレーザ・エネルギーを1分間収集し、データセットの訓練と同じ方法で、この放電高電圧下でのレーザのBurstモードの同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値を計算し、この放電高電圧に対応する1つのBurstモードにおけるパルス・エネルギーの平均値系列を得る。実際の要件に応じて、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのテストデータセットは、単一の固定動作再周波数または異なる動作再周波数で、レーザパルスごとにその時間間隔と放電高電圧値を設定し、プリセットされた時間における複数の前処理を行った放電高電圧に対応するBurstモードでの実際のパルス・エネルギーの平均値系列を収集することを含むことができる。例えば、訓練データセットを取得するのと同じ方法を用いて、エキシマレーザ動作の再周波数がそれぞれ1KHz、2KHz、3KHzおよび4KHzである場合、1500Vの放電高電圧に対応するレーザのBurstモードにおける同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値を得ることができる。
【0088】
ステップS3:訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得る。
【0089】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するために構築されたゲートループ・ネットワークの各重み行列は、学習によって取得する必要がるため、ゲートループ・ネットワークを訓練する必要がある。実際の用途において、採用される訓練方法は、時間逆伝播アルゴリズム(BPTT)である。
【0090】
ゲートループ・ネットワークは、Burstモードを時系列として、ネットワーク全体の損失関数を式(9)に示すように定義することで、エキシマレーザのエネルギーモデルの認識に適用される。
【0091】
【0092】
上式において、Et(t)は現在の瞬間の訓練サンプルの放電高電圧下でのレーザのBurstモードの同じ位置にある実際のレーザパルス・エネルギーの平均値を表し、E(t)はゲートループ・ネットワークから出力されるエキシマレーザのパルス・エネルギー系列を表し、nは具体的な瞬間を表す。
【0093】
活性化関数の入力を
【0094】
【0095】
【0096】
【数24】
上式において、σ’(net
y(t))はσ(net
y(t))の微分係数を表す。
【0097】
t=nである場合、
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
式(12)~(16)で分かるように、t<nである場合、
【0102】
【0103】
【数29】
に関する再帰式なので、ゲートループ・ネットワークは、訓練する際、t=nから始めて
【0104】
【0105】
【0106】
活性化関数の入力を
【0107】
【0108】
【0109】
【数34】
があり、
上式において、diag(・)は対角行列を表し、net
zi(t)は
bnet
z(t)のi番めの成分を表す。
【0110】
活性化関数の入力を
【0111】
【0112】
【0113】
【数37】
があり、
上式において、tanh’(・)はtanh(・)の微分係数を表し、
【0114】
【0115】
【0116】
活性化関数の入力を
【0117】
【0118】
【0119】
【数42】
があり、
上式において、net
ri(t)は
bnet
r(t)のi番めの成分を表す。
【0120】
式(9)~(22)により、式(23)~(29)に示すようなゲートループ・ネットワークの訓練パラメータの更新方法を得ることができる。
【0121】
【0122】
上式において、bWy(i+1)は現在の隠れ層状態から出力層への重み行列を表し、bWy(i)は前回の隠れ層状態から出力層への重み行列を表す。bWz(i+1)は現在の更新ゲートの入力重み行列を表し、bW(i)は前回の更新ゲートの入力重み行列を表す。bUz(i+1)は現在の更新ゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、bUz(i)は前回の更新ゲートの隠れ層状態の伝達行列を表す。bW(i+1)は現在の隠れ層状態の候補の入力重み行列を表し、bW(i)は前回の隠れ層状態の候補の入力重み行列を表す。bU(i+1)は現在の隠れ層状態の候補の、その前の瞬間の隠れ層状態に対する伝達行列を表し、bU(i)は前回の隠れ層状態の候補の、その前回の瞬間の隠れ層状態に対する伝達行列を表す。bWr(i+1)は現在のリセットゲートの入力重み行列を表し、bWr(i)は前回のリセットゲートの入力重み行列を表す。bUr(i+1)は現在のリセットゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、bUr(i)は前回のリセットゲートの隠れ層状態の伝達行列を表し、λは学習ステップ長さを表す。
【0123】
訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、以下のステップを含む。
【0124】
ステップS31:訓練データセットから訓練サンプルをランダムに選択し、この訓練サンプルにおけるすべての実際のレーザパルス・エネルギーの平均値に対応するエネルギー収集条件を、ゲートループ・ネットワークに1つずつ入力することによって、ゲートループ・ネットワークがバーストモード下でのパルス・エネルギーの系列を得るように訓練する。
【0125】
ゲートループ・ネットワークは、データを充分に活用するために、訓練ごとに、訓練データセットから訓練サンプルをランダムに選択し、例えば、放電高電圧1400V、1450V、1550Vおよび1600Vに対応するBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列から、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセット(4個のBurstモードにおける実際のパルス・エネルギー系列)を構成する。1600Vの放電高電圧のBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列をランダムに選択し、このBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列の中で、各実際のパルス・エネルギーの平均値に対応するエネルギー収集条件(単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値)は、ゲートループ・ネットワークに1つずつ入力され、ゲートループ・ネットワークの訓練を経た後、1つのバーストモードでのパルス・エネルギー系列を出力する。
【0126】
ステップS32:現在の選択された訓練サンプルに対応するゲートループ・ネットワークの損失関数を計算し、前記損失関数に基づいて、前記ゲートループ・ネットワークの訓練パラメータを更新する。
【0127】
1600Vの放電高電圧を取得するBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列と、ゲートループ・ネットワークを訓練した後に、出力される1600Vの放電高電圧に対応するバーストモード下でのパルス・エネルギー系列を式(9)に代入し、ゲートループ・ネットワークの損失関数を計算し、この損失関数に基づいて、式(23)~(29)を組合わせることにより、ゲートループ・ネットワークの訓練パラメータを更新することができる。
【0128】
ステップS33:ゲートループ・ネットワークの現在出力されるバーストモード下でのパルス・エネルギー系列と現在の訓練サンプルとの間の誤差を計算する。
【0129】
ゲートループ・ネットワークによって現在出力される1600Vの放電高電圧のバーストモードにおけるパルス・エネルギー系列中の各パルス・エネルギーと、訓練サンプル(1600Vの放電高電圧のBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列)中の同じ位置にあるパルス・エネルギーとを減算し、ゲートループ・ネットワークによって現在出力されるバーストモードにおけるパルス・エネルギー系列中の各パルス・エネルギーと訓練サンプル中の同じ位置にあるパルス・エネルギーとの間の誤差を得る。
【0130】
ステップS34:訓練終了条件に達するまでステップS31~S33を循環して実行した後、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを得る。
【0131】
ゲートループ・ネットワークの訓練終了条件は、所定の訓練回数(例えば、10万回)またはステップS31~S33を所定の回数で循環して実行することであってもよい。ゲートループ・ネットワークによって出力されるある放電高電圧下でのバーストモードのパルス・エネルギー系列における各パルス・エネルギーと、訓練サンプルの中で同じ位置にあるパルス・エネルギーとの間の最大誤差は、各回0.15mJ以下である(
図4に示すように、各放電高電圧におけるBrustモードのパルス・エネルギー誤差は、いずれも0.15mJ以下であり、エネルギー中心値が10mJであるため、相対誤差は1.5%以下である)。
【0132】
最終的なエキシマレーザのエネルギーモデルの訓練パラメータbWy,bWz,bUz,bW,bU,bWr,bUrは、ゲートループ・ネットワークを訓練することによって得ることができ、式(1)~(7)に基づいて、エキシマレーザのエネルギーモデルを生成する。
【0133】
ゲートループ・ネットワークを訓練する過程において、その出力するある放電高電圧下におけるBrustモードのパルス・エネルギーの最大誤差の変化は、
図5に示すとおりである。横座標のステップ長さはゲートループ・ネットワークを訓練する回数であり、縦座標はゲートループ・ネットワークから出力されるパルス・エネルギー誤差の絶対値である。
図5から分かるように、ゲートループ・ネットワークから出力されるパルス・エネルギーの最大誤差は、0.15mJ以下になるまで、徐々に減少する。これにより、本発明により構築され、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークは、訓練過程において収束することが証明された。
【0134】
ステップS4:テストデータセットを用いて、エキシマレーザのエネルギーモデルの精度を検証する。
【0135】
エキシマレーザエネルギーモデルの精度は、単一の固定動作周波数または異なる動作周波数で収集された複数の前処理後の放電高電圧に対応するBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列を用いて検証する。
【0136】
例えば、1550Vの放電高電圧のBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列を選択して、エキシマレーザのエネルギーモデルを検証する。このBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列において、各実際のパルス・エネルギーの平均値に対応するエネルギー収集条件(単一のレーザパルスの時間間隔と放電高電圧値)を、ゲートループ・ネットワークに1つずつ入力すると、エキシマレーザ・エネルギーモデルは、1つのバーストモードにおけるパルス・エネルギー系列を出力する。
【0137】
エキシマレーザのエネルギーモデルから出力される放電高電圧1550Vのバーストモードにおけるパルス・エネルギー系列中の各パルス・エネルギーと、この放電高電圧1550VのBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列中の同じ位置にあるパルス・エネルギーとを減算することによって、エキシマレーザのエネルギーモデルから出力されるバーストモードにおけるパルス・エネルギー系列の各パルス・エネルギーと実際のパルス・エネルギーとの間の誤差を得る。
図6a~6cに示すように、ここで、
図6bは、放電高電圧1550VのBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの変化を示し、
図6cは、エキシマレーザのエネルギーモデルから出力される放電高電圧1550VのBurstモードにおけるパルス・エネルギーの変化を示し、
図6aは、エキシマレーザのエネルギーモデルから出力される放電高電圧1550VのBurstモードにおけるパルス・エネルギー変化と、その実際のパルス・エネルギーの変化との重なりを示す。図から、エキシマレーザのエネルギーモデルによって得られたパルス・エネルギー変化は、実際のパルス・エネルギー変化とよく重なっていることが分かる。
【0138】
別の例として、
図7aおよび
図7bに示すように、1500Vの放電高電圧下での1KHz~4KHzのBurstモードにおける実際のパルス・エネルギーの平均値系列をそれぞれ選択して、エキシマレーザのエネルギーモデルを検証する。ここで、
図7aは、放電高電圧1500Vで1KHz~4KHzのBurstモードにおける実際のパルス・エネルギー変化を示し、
図7bは、エキシマレーザのエネルギーモデルから出力される1500Vの放電高電圧下で1KHz~4KHzのBurstモードにおけるパルス・エネルギー変化を示す。
図7aと
図7bを比較すると、異なる再周波数でエキシマレーザのエネルギーモデルによって得られたパルス・エネルギーは、Burstモードにおけるレーザ・エネルギー変化が実際に測定して得られたレーザのエネルギーの傾向と一致していることが分かる。その最大誤差は
図8に示すように、図を見ると分かるように、異なる再周波数で最大誤差は0.13mJ以下、すなわち1.5%以下である。
【0139】
線量精度とエネルギー安定性の関係に基づいて、リソグラフィ用の線量精度0.5%を満たす場合、エネルギー安定性の最大誤差は2.74%であり、本発明によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルによって生成されるパルス・エネルギーの誤差は、エネルギー安定性の制御精度の誤差よりも小さいため、このモデルは、レーザ・エネルギー特性制御のためのシミュレーション要件を満たすと結論づけることができる。
【0140】
また、
図9に示すように、本発明の実施形態では、プロセッサ32およびメモリ31を備え、実際の必要に応じて通信コンポネント、センサコンポーネント、電源コンポーネント、マルチメディア・コンポーネント及び入力/出力インターフェースをさらに備えることができる、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置をさらに提供する。ここで、通信コンポーネント、センサコンポーネント、電源コンポーネント、マルチメディア・コンポーネントおよび入力/出力インターフェースは、いずれも前記プロセッサ32に接続される。前述したように、メモリ31は、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、読み取り専用メモリ(ROM)、磁気メモリ、フラッシュメモリなどであってもよい。プロセッサ32は、中央処理装置(CPU)、グラフィックス・プロセッサ(GPU)、フィールドプログラマブル・ロジックゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理(DSP)チップなどであってもよい。その他の通信コンポーネント、センサーコンポーネント、電源コンポーネント、マルチメディア・コンポーネントなどは、いずれも従来のスマートフォンに搭載されている一般的な部品を用いて実装することが可能であり、本明細書では特に説明しない。
【0141】
また、本発明の実施形態では、プロセッサ32とメモリ31とを備えるエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する装置を提供する。プロセッサ32は、以下の動作を実行するために、前記メモリ31内のコンピュータ・プログラムまたは命令を読み取る。
【0142】
エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するためのゲートループ・ネットワークを構築する。
【0143】
複数のプリセットされた時間内に、単一のレーザパルスの方式でエネルギー収集条件を設定し、エキシマレーザのエネルギーモデルを認識するための訓練データセットを収集する。
【0144】
訓練データセットを用いて、構築されたゲートループ・ネットワークを訓練し、訓練終了条件に達すると、訓練を終了し、エキシマレーザのエネルギーモデルを取得する。
【0145】
また、本発明の実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。前記読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータ上で実行された際、前記コンピュータに、前記
図1に記載されたようなエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する方法を実行させる命令がその上に記憶されており、その具体的な実施態様については、本明細書で繰り返さない。
【0146】
また、本発明の実施形態では、コンピュータ上で実行されると、前記コンピュータに、前記
図1に記載されたようなエキシマレーザのエネルギーモデルを認識する方法を実行させる命令が含まれている、コンピュータプログラム製品をさらに提供するが、その具体的な実施態様については、本明細書で繰り返さない。
【0147】
本発明の実施形態によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法および装置は、ゲートループ・ネットワークによって、比較的正確にエキシマレーザのエネルギーモデルを識別することができる。このエキシマレーザのエネルギーモデルは、レーザのエネルギー特性制御のシミュレーション要件を満たすために、実際のパルス・エネルギーとの間の最大誤差は1.5%未満のパルス・エネルギーの生成を検証することができる。このエキシマレーザのエネルギーモデルは、エキシマレーザのエネルギー制御方法のシミュレーション研究と解析を容易にし、実験時間を短縮することによって、エキシマレーザーのエネルギー安定性制御と線量精度の制御の改善に大きな意義がある。
【0148】
以上、本発明によって提供されるエキシマレーザのエネルギーモデルを識別する方法および装置について、詳細に説明した。当業者にとっては、本発明の実質的な内容から逸脱することなく、本発明に対して行われるいかなる明白な変更は、いずれも本発明の特許権の保護範囲に属する。
【国際調査報告】