(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-11
(54)【発明の名称】患者固有のイメージング・スキャンから植え込み可能なデバイスのジオメトリを再構成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20240704BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20240704BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240704BHJP
G06T 19/20 20110101ALI20240704BHJP
【FI】
A61B34/10
A61F2/24
A61B6/03 577
A61B6/03 560G
G06T19/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570182
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022072250
(87)【国際公開番号】W WO2022241431
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519460867
【氏名又は名称】オハイオ ステート イノベーション ファンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダシ、ラクシュミー プラサド
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホアン
(72)【発明者】
【氏名】エスマイリー、ファテマ
(72)【発明者】
【氏名】サマエー、ミラド
(72)【発明者】
【氏名】シバクマール、スリ、クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】イェイツ、ブランダン、アンドレ、バトラー
【テーマコード(参考)】
4C093
4C097
5B050
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA25
4C093FF12
4C093FF13
4C093FF37
4C093FF42
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB10
4C097SB01
5B050AA02
5B050BA09
5B050CA07
5B050CA08
5B050EA26
5B050FA02
(57)【要約】
患者に植え込まれたイン・ビボ心臓弁デバイスのモデルは、植え込み前心臓弁デバイスの知られているモデルを提供することと、植え込み心臓弁デバイスを有する患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように知られているモデルを変形させて、構成された患者固有の弁モデルを取得することと、有限要素解析によって構成された患者固有の弁モデルに対して弁尖及びスカートをシミュレートすることとを行うことによって生成される。構成された患者固有の弁モデルが、植え込み心臓弁デバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で植え込み心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に植え込まれたイン・ビボ心臓弁デバイスのモデルであって、
植え込み前心臓弁デバイスの知られているモデルを提供することと、
植え込み心臓弁デバイスを有する前記患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、
前記少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように前記知られているモデルを変形させて、構成された患者固有の弁モデルを取得することと、
有限要素解析によって前記構成された患者固有の弁モデルに対して弁尖及びスカートをシミュレートすることと
を行うことによって生成され、
前記構成された患者固有の弁モデルが、前記植え込み心臓弁デバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で前記植え込み心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す、モデル。
【請求項2】
前記構成された患者固有の弁モデルが、前記植え込み心臓弁デバイスの前記ジオメトリを、0.1mm未満の誤差で前記植え込み心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す、請求項1に記載のモデル。
【請求項3】
前記植え込み前心臓弁デバイスの前記知られているモデルが、前記植え込み前弁のマイクロCTスキャンから再構成される、請求項1に記載のモデル。
【請求項4】
前記心臓弁デバイスが、経カテーテル大動脈弁(TAV)、経カテーテル僧帽弁(TMV)、生体外科用弁(SAV)、金属製又は放射線不透過性のインプラントである、請求項1に記載のモデル。
【請求項5】
前記構成された患者固有の弁モデルが、患者固有の術後評価及び評定のためのモデルをさらに含む、請求項1に記載のモデル。
【請求項6】
前記構成された患者固有の弁モデルが、心臓弁デバイス置換又は再構成に必要な高忠実度の術前評価又は介入的処置前計画のモデル化をさらに含む、請求項1に記載のモデル。
【請求項7】
前記高忠実度の術前評価が、バルブ・イン・バルブ(ViV)における境界条件を開発することを含む、請求項6に記載のモデル。
【請求項8】
前記イメージング・スキャンが、CTスキャン又はMRIスキャンである、請求項1に記載のモデル。
【請求項9】
前記イメージング・スキャンから12個以下の患者固有のランドマークが取得される、請求項1に記載のモデル。
【請求項10】
前記少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように前記知られているモデルを変形させて、構成された患者固有の弁モデルを取得することが、マルチパス照合フレームワークを用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
患者に植え込まれたイン・ビボ・デバイスのモデルであって、
植え込み前デバイスの知られているモデルを提供することと、
植え込みデバイスを有する前記患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、
前記少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように前記知られているモデルを変形させて、構成された患者固有のモデルを取得することと
を行うことによって生成され、
前記構成された患者固有のモデルが、前記植え込みデバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で前記植え込みデバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す、モデル。
【請求項12】
前記構成された患者固有のモデルが、前記植え込みデバイスの前記ジオメトリを、0.1mm未満の誤差で前記植え込みデバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す、請求項11に記載のモデル。
【請求項13】
患者固有の心臓弁デバイス・モデルを生成する方法であって、
植え込み前心臓弁デバイスの知られているモデルを提供することと、
植え込み心臓弁デバイスを有する患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、
前記少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように前記知られているモデルを変形させて、構成された患者固有の弁モデルを取得することと、
有限要素解析によって前記構成された患者固有の弁モデルに対して弁尖及びスカートをシミュレートすることと
を含み、
前記構成された患者固有の弁モデルが、前記患者固有の心臓弁デバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で前記患者固有の心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す、方法。
【請求項14】
前記構成された患者固有の弁モデルが、前記患者固有の心臓弁デバイスの前記ジオメトリを、0.1mm未満の誤差で前記患者固有の心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記植え込み前心臓弁デバイスの前記知られているモデルが、前記植え込み前弁のマイクロCTスキャンから再構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記心臓弁デバイスが、経カテーテル大動脈弁(TAV)、経カテーテル僧帽弁(TMV)、生体外科用弁(SAV)、金属製又は放射線不透過性のインプラントである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記構成された患者固有の弁モデルが、患者固有の術後評価及び評定のためのモデルをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記構成された患者固有の弁モデルが、心臓弁デバイス置換又は再構成に必要な高忠実度の術前評価又は介入的処置前計画のモデル化をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記高忠実度の術前評価が、バルブ・イン・バルブ(ViV)における境界条件を開発することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イメージング・スキャンが、CTスキャン又はMRIスキャンである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月11日に出願された米国仮特許出願第63/187,057号の優先権を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生体弁尖の不可避的な構造的劣化に起因して、外科的大動脈弁置換術(SAVR:surgical aortic valve replacement)又は経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR:transcatheter aortic valve replacement)を受けた患者が、第2の介入を必要とする場合がある。例えば、この問題に対する最小侵襲の解決策として、劣化したSAV又はTAVにおけるTAV植え込みの成功例が、報告されている。TAVRの適用が、中リスク集団、さらには低リスク集団にさえ拡大するにつれて、より多くの患者が、第2の又は場合により第3のTAVRを必要とするようになる。ViV処置に関連する合併症を回避するために、既存弁に関連付けられる弁アンカ固定、弁傍漏出、及び冠動脈閉塞に対処するための徹底した処置前計画を実行する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高度な処置前計画は、通常、有限要素解析(FEA:finite element analyses)を使用して弁展開をモデル化することや、数値流体力学(CFD:computational fluid dynamics)シミュレーションを使用して血液動態を評定することを伴う。高忠実度の術前シミュレーションのために既存弁のジオメトリを正確に決定することは有益である。しかし、金属製ステントによって引き起こされるブルーミング・アーティファクトにより、患者のCTスキャンからセグメント化された弁ステントは、数倍厚く見える。さらに、組織の信号強度が低いことにより、CTスキャンから生体弁尖をセグメント化することは、困難であり、弁尖による冠動脈閉塞の予測を難しくしている。この問題に対処するための1つの方法は、患者のTAVR前の解剖学構造において弁を展開するPEAベースのシミュレーションを使用して、最終的な弁ジオメトリの捕捉を試みることである。ただし、本方法に関連付けられる誤差は、通常2~4mmの範囲内に入る。クリーンなステント・フレームを再構成する試みが実行されてきたが、従来技術の方法は、複雑且つ弁固有であったり、モデルに弁尖やスカートを含んでいなかったりした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(例えば、ブルーミング・アーティファクトが排除された)患者固有のCTスキャンから植え込みデバイスのジオメトリ(例えば、植え込みTAV又はSAVのジオメトリ)を正確に復元するための画像ベースの照合フレームワークを使用する例示的な方法及びシステムが開示される。例示的な方法及びシステムは、既知の弁モデルを利用することによって、また、画像ベースの照合フレームワークを採用することによってCTスキャンから患者固有の弁ジオメトリを正確に再構成するように構成される。
【0005】
いくつかの態様では、例示的なシステム及び方法は、デバイスの製造業者から、又はマイクロCTスキャンからのリバース・エンジニアリングにより、植え込みデバイス(例えば、SAV/TAV)のクリーンなモデルを取得することによって開始する。次いで、この参照モデル(例えば、弁モデル)と患者固有の植え込みモデル(患者固有のステント)との間の数個の対応するランドマークが位置合わせの初期パスとして使用される。続いて、強度ベースの非剛体Bスプライン照合が実行されてもよく、患者のCTスキャンにおけるものと正確に一致するようにクリーンなステント・モデルが改変されてもよい。最後に、患者固有の弁モデルを生成するために、弁の弁尖及びスカートに変換が適用され得る。
【0006】
数個のランドマークを手動で選択するだけで、例えば、0.5mm未満の誤差で高度に正確である、復元された患者固有の植え込みモデル(例えば、患者固有の弁モデル)を生成することができる。
【0007】
本モデルは、術後評価のために、又は処置前計画(例えば、ViV処置前計画)において使用されてもよい。本モデルはまた、TAVR後の評定及び高忠実度の術前ViV評価のために使用され得る。これはまた、患者固有の弁展開シミュレーションを検証するためのグランド・トゥルースとして使用され得る。
【0008】
一態様では、患者に植え込まれたイン・ビボ心臓弁デバイスのモデルは、植え込み前心臓弁デバイスの知られているモデルを提供することと、植え込み心臓弁デバイスを有する患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように知られているモデルを変形させて、構成された患者固有の弁モデルを取得することと、有限要素解析によって構成された患者固有の弁モデルに対して弁尖及びスカートをシミュレートすることとを行うことによって生成される。構成された患者固有の弁モデルは、植え込み心臓弁デバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で植え込み心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す。
【0009】
一態様では、患者に植え込まれたイン・ビボ・デバイスのモデルは、植え込み前デバイスの知られているモデルを提供することと、植え込みデバイスを有する患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように知られているモデルを変形させて、構成された患者固有のモデルを取得することとを行うことによって生成される。構成された患者固有のモデルは、植え込みデバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で植え込みデバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す。
【0010】
一態様では、患者固有の心臓弁デバイス・モデルを生成する方法は、植え込み前心臓弁デバイスの知られているモデルを提供することと、植え込み心臓弁デバイスを有する患者にイメージング・スキャンを実行して、少なくとも1つの患者固有のランドマークを取得することと、少なくとも1つの患者固有のランドマークに適合するように知られているモデルを変形させて、構成された患者固有の弁モデルを取得することと、有限要素解析によって構成された患者固有の弁モデルに対して弁尖及びスカートをシミュレートすることとを含む。構成された患者固有の弁モデルは、患者固有の心臓弁デバイスのジオメトリを、0.5mm未満の誤差で患者固有の心臓弁デバイスの現在のイン・ビボ形態において正確に表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】患者固有のCTスキャンからTAV/SAVジオメトリを再構成するための画像照合ベースの方法のフローチャートである。
【
図2A】マイクロCTスキャンをリバース・エンジニアリングすることによって取得されるTAVRのクリーンなCADモデルを示す図である。
【
図2B】ボクセル化されたモデル及び選択されたランドマークの断面図である。
【
図2C】ボクセル化されたモデル及び選択されたランドマークの断面図である。
【
図2D】閾値処理によってセグメント化された患者固有の弁を示す図である。
【
図2E】
図2Bに対応するロケーション及びランドマークを有する、患者のCTスキャンの断面図である。
【
図2F】
図2Dに対応するロケーション及びランドマークを有する、患者のCTスキャンの断面図である。
【
図3A】提供されたランドマークを使用する初期剛体位置合わせ後を示す、照合プロセスのステップ中におけるステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を示す図である。
【
図3B】ランドマークベースの非剛体位置合わせ後を示す、照合プロセスのステップ中におけるステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を示す図である。
【
図3C】最終的な強度ベースのBスプライン変形可能照合後を示す、照合プロセスのステップ中におけるステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を示す図である。
【
図4A】サンプルの注釈付きスライスを示す、照合されたステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を示す断面図である。
【
図4B】様々なロケーションにおけるスライスを示す、照合されたステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を示す様々な断面図である。
【
図5A】本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(自己拡張型)弁モデルを示す側面図である。
【
図5B】本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(自己拡張型)弁モデルを示す上面図である。
【
図5C】本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(自己拡張型)弁モデルを示す底面図である。
【
図6A】マイクロCTスキャンから取得された元のモデルを示す、本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(バルーン拡張型)弁モデルを示す図である。
【
図6B】照合されたステントと患者のCTスキャンからセグメント化されたモデルとの間の比較を示す、本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(バルーン拡張型)弁モデルを示す図である。
【
図6C】最終的な照合された弁モデルを示す、本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(バルーン拡張型)弁モデルを示す図である。
【
図6D】最終的な照合された弁モデルを示す、本発明の方法を使用して取得されたサンプルの患者固有の(バルーン拡張型)弁モデルを示す図である。
【
図7A】合成誤差評定を示す、展開後の知られているステント(グランド・トゥルース)を示す図である。
【
図7B】合成誤差評定を示す、ブルーミング・アーティファクトを模倣するガウシアンぼかしアルゴリズムを適用した後のステントを示す図である。
【
図7C】合成誤差評定を示す、照合されたステントとグランド・トゥルースとの間の比較を示す図である。照合されたステントは、より暗いグレイで示されている。
【
図7D】合成誤差評定を示す、ノード間の偏差の分布を(mm単位で)示すヒストグラムである。
【
図8A】合成誤差評定及び感度解析を示す、平均誤差(10個のケース)及び計算時間(1つのEvolutのケースのみ)に対するグリッド・サイズの影響を示す図である。
【
図8B】合成誤差評定及び感度解析を示す、1つのEvolutのケースについての照合精度及び計算時間に対する選択されたランドマークの数の影響を示す図である。
【
図9】FEAシミュレーションを使用した、復元された弁尖ジオメトリ及び応力分布を示す図である。
図4B及び
図4Cと比較した際の違いに注目されたい。スケールは、MPaにおける応力分布を示す。
【
図10A】ステントにおける応力分布を推定するためのFEAシミュレーションを示し、無変形のバウンディング・ボックスを有するステントを示す図である。スケールは、MPaにおける応力分布を示す。
【
図10B】ステントにおける応力分布を推定するためのFEAシミュレーションを示し、バウンディング・ボックスによって圧着されたステントを示す図である。スケールは、MPaにおける応力分布を示す。
【
図10C】ステントにおける応力分布を推定するためのFEAシミュレーションを示し、
図10D(グランド・トゥルース)と比較される推定された応力分布を示す図である。スケールは、MPaにおける応力分布を示す。
【
図10D】ステントにおける応力分布を推定するためのFEAシミュレーションを示し、グランド・トゥルースを示す図である。スケールは、MPaにおける応力分布を示す。
【
図11】本明細書で説明される例示的な方法の出力を使用することができるソフトウェア・コンポーネントを実行可能なコンピュータ・システムの例示的なコンピュータ・アーキテクチャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
CTスキャンから患者固有の弁ジオメトリを再構成するためのシステム及び高速且つ正確な方法である。本アプローチは、既知の弁トポロジを利用する。数個の手動で選択されたランドマークによってガイドされ、知られている弁モデルは、画像照合ベースのフレームワークを使用して強度空間における患者固有のデータに適合するように変形される。結果は、構成された患者固有の弁モデルが、高度に正確であり、平均誤差が0.1mm前後となり、心臓CTスキャンの典型的な解像度よりも低いことを示している。変形された弁尖の形状及び応力分布は、変形ステントから導出された境界条件を使用してFEAシミュレーションで復元することができる。また、簡易的な圧着法を使用してステントにおける応力分布を合理的に推定することも可能である。再構成されたモデルは、高忠実度の術前ViV計画又はTAVR後の評定に使用することができる。これはまた、患者固有の弁展開シミュレーションを検証するためのグランド・トゥルースとして機能し得る。本方法はまた、CTから他のステント付き医療デバイスのジオメトリを再構成するために使用することもできる。
【0013】
例示的な方法を説明するフローチャートを
図1に示す。これは、以下の3つの主要部、すなわち、クリーンな弁モデル及びいくつかの容易に特定可能なランドマークを取得することと、患者のCTスキャンにおける対応するランドマークを決定することと、マルチパス照合アルゴリズムを適用することとから成る。
【0014】
図1は、患者固有のCTスキャンからインプラント・デバイスのジオメトリ(例えば、TAV/SAVデバイスのジオメトリ)を再構成するための画像照合ベースの方法のフローチャートを示す。
【0015】
図1では、例示的なシステム及び方法は、デバイスの製造業者から、又はマイクロCTスキャンからのリバース・エンジニアリングにより、植え込みデバイス(例えば、SAV/TAV)のクリーンなモデルを取得することによって開始する。次いで、この参照モデル(例えば、弁モデル)と患者固有の植え込みモデル(例えば、患者固有のステント)との間の数個の対応するランドマークが位置合わせの初期パスとして使用される。続いて、強度ベースの非剛体Bスプライン照合が実行されてもよく、患者のCTスキャンにおけるものと正確に一致するようにクリーンなステント・モデルが改変されてもよい。最後に、患者固有の弁モデルを生成するために、弁の弁尖及びスカートに変換が適用され得る。
【0016】
クリーンな弁モデル及びランドマーク
製造業者からCAD(コンピュータ支援設計(Computer-Aided Design))モデルが取得できない場合、弁のマイクロCTスキャンをリバース・エンジニアリングすることによって高品質の弁モデルを再構成することができる。そのようなスキャンの典型的な解像度は、50μmをはるかに下回る。造影剤を弁尖及びスカートに噴霧して、それらの信号強度を高めることができる。スキャンからセグメント化された弁モデルは、照合及びモデル化において容易に使用することができる。ただし、高いメッシュ品質が必要となる場合、クリーンなCADモデルが望ましい。そのようなモデルを取得するために、スキャンされたデータを欠陥のないCADモデルへとリバース・エンジニアリングするための種々のソフトウェアを使用することができる。実例として、
図2Aは、再構成されたEvolut弁モデルを示す。スキャンの解像度は、50μmであり、モデルを構築するためにSolidWorksを使用した。
【0017】
以下のステップは、弁モデルのいくつかの容易に特定可能なランドマークを決定するものである。例えば、
図2Aに示すEvolut弁は、ステントの上部に2つの突き出たフックを有し、これらは、圧着で使用される。これらの2つのフックによってガイドされて、1~15で時計回りにラベル付けされた、ステントの上部にある15個のストラット先端のすべてを迅速に特定できる(
図2A及び
図2Bにおける破線)。さらに、底部にある15個のストラット先端も容易に特定され得る(
図2C)。30個のランドマークの絶対座標をモデルの座標系に記録した。弁トポロジが変わらない限り、このステップは、1つのタイプの弁に対して1回だけ実行されればよい。ランドマークは臨床医によって精選され得るか、又は人工知能(A.I.:artificial intelligence)及び/若しくは機械学習アプローチによって取得され得る。ランドマークの数及びロケーションは、記載されているものに限定されない。
【0018】
患者の弁モデル及びランドマーク
患者の心臓CTスキャンからDICOMファイルを読み出し、弁の周囲でトリミングし、3Dアレイに再サンプリングしてもよい。次いで、ステントをセグメント化するために簡易な閾値処理アルゴリズムが適用されてもよい。
図2Dに示すように、患者のTAVR後のCTスキャンから1000HU(ハウンスフィールド単位(Hounsfield Unit))を使用してステント・モデルを取得した。ステント・ワイヤフレームは、
図2Aに示すクリーンなモデルよりも約5~10倍厚いことに留意されたい。同手順に従うと、この患者の弁モデルにおける対応する30個のランドマークすべてを見つけることができる(
図2E及び
図2F)。ランドマークの座標を3Dアレイの座標系に記録した。一般に、大抵のケースでは30個のランドマークすべてを使用する必要はない。以下の実例によって示すように、合計で10個のランドマーク(上部の5つ及び底部の5つ)が、非常にうまく機能する。ランドマークは臨床医によって精選され得るか、又はA.I.及び/若しくは機械学習アプローチによって取得され得る。ランドマークの数及びロケーションは、記載されているものに限定されない。
【0019】
マルチパス照合フレームワーク
例示的なマルチパス照合フレームワークは、オープンソースのInsight Toolkitプラットフォームに基づいてもよく、Python(Python Software Foundation、Wilmington、DE)に実装される。照合前、クリーンな弁モデルのステントは、ボクセル化され、3Dアレイに変換されてもよい。このアレイのサイズは、弁周囲の患者のトリミングされたアレイのサイズと一致し得る。
【0020】
実例では、0.35mmのボクセル間隔の133×182×134のアレイ・サイズを採用した。ボクセル化されたアレイの2つのサンプル・スライスを
図2B及び
図2Cに示す。開始するために、これらの2つのモデルを前述した10個のランドマークのみを使用して大まかに位置合わせした(上部:1、4、7、9、12、底部:1、4、7、10、13(
図2A~
図2F))。初期位置合わせは、スケーリング、剛体回転、及び並進から成った。
図3A~
図3Cは、
図1の方法の照合プロセスの様々なステップ中におけるステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を示す。
【0021】
クリーンなステントが患者のモデルと大まかに一致する、初期結果を
図3Aに示す。続いて、変形可能なBスプライン変換の第2のパスを使用して、初期位置合わせを改善した(
図3B)。本方法は、3D領域を、均一な間隔を有する制御点のメッシュに分割することによって機能する。対応するランドマークを一致させることによって、Bスプラインによって制御される変形場が計算され、3Dボリューム全体に適用される。本実例では、4×4×4のメッシュ・グリッドを使用した。
図3Bと比較すると、2つのモデルの位置合わせは既に良好であるが、依然として食い違いが存在する。最終的な強度ベースのBスプライン照合ステップが、すべての位置ずれを修正し、高度に正確な結果を生成した(
図3C)。本ステップでは、3D領域を6×6×6のメッシュ・グリッドに分割し、その変形を3次Bスプラインによって制御した。結合ヒストグラムの相互情報を類似性尺度として使用し、直線探索最急降下アルゴリズムをオプティマイザとして採用した。
【0022】
他の類似性尺度(相互相関)やオプティマイザを使用して、同様の結果を達成することもできる。初期位置合わせのための照合法は、ここで説明される方法に限定されず、パスの数及び実施の順序を改変することもできる。最終ステップのための照合法は、ここで説明されるBスプライン照合に限定されない。フレームワークを変更することなく他の非剛体照合法を使用することもできる。
【0023】
本方法の精度を検証するために、
図4A及び
図4Bでは、患者のCTデータからのスライスが照合されたステントに重ねられている。より暗いぼやけた斑点が、CTスキャンに現れたステントであり、明るいスポットが、ボクセル化されて照合されたクリーンなステントによるものである。
図4A及び
図4Bは、照合されたステント・モデルと患者のCTスキャンとの間の比較を様々な断面図で示す。
【0024】
図4Aに示すスライスは、これら2つの間の優れた一致を示しており、推定誤差は、ステント幅の20%未満である。様々なスライスについてのさらなる比較を
図4Bに示しており、視覚的検査は、それらのすべてにおける良好な一致を示している。
【0025】
最終的な弁アセンブリ
最後のステップは、ステント照合プロセスから取得した変換関数を弁の元のジオメトリ・ファイルに適用するものである。ここでは、STLフォーマットをクリーンな弁モデルのために使用した。STLファイルは、頂点及び面(頂点の間の連結)から成る。個々の頂点に変換を適用し、それらの頂点を、それらの最終ロケーションにマッピングした。頂点の連結度は、変形中に変化しないため、マッピングされた頂点及びそれらの元の連結度マップを使用して新たなメッシュを生成することもできる。変換は、ステントだけでなく、弁尖やスカートにも適用可能であり、すべての変換された構成要素を組み立てることによって最終的な患者固有のクリーンな弁モデルを取得した(
図5A~
図5C)。
【0026】
図5A~
図5Cは、
図1の方法を使用して取得したサンプルの患者固有の(自己拡張型)弁モデルを示す。
【0027】
弁尖のエリアは、プロセス中に保持されなかったことに留意されたい。
図5A~
図5Cの実例に示すように、患者の弁は、その側部が湾曲しており、楕円形に見える。最後の一ステップは、患者のDICOMファイルからのメタデータを使用して、画像座標系からのモデルを患者の物理的な座標系に変換するものである。続いて、このモデルを使用してTAVR後の評価及びViV術前評定を実行することができる。
【0028】
さらに、弁尖の配向もプロセス中に復元したため、これまでは非常に困難なタスクであったViVシミュレーションにおける冠動脈閉塞のリスクを評価することが可能となる。
【0029】
例示的なアルゴリズムは他のタイプの弁に適用可能である。
図6Aは、マイクロCTスキャンをリバース・エンジニアリングすることによって生成されたバルーン拡張型のEdwards(登録商標)Sapien 3弁モデルを示す。同手順を適用し、最終結果を
図6Bで比較する。12個のランドマーク(上部の6つ及び底部の6つ)を使用し、ステント・モデルと患者のジオメトリとの間の一致は完璧である(
図6B)。ステント設計が、軸対称であるため、ランドマークを一致させることは、正しい弁尖の配向を保証しない。本方法は、患者のCTスキャンにおける弁尖の少なくとも1つの交連のポイントを弁モデルの交連と位置合わせすることを伴ってもよい。ステント、弁尖、及びスカートのジオメトリに変換を適用した後の最終的な変形された患者固有の弁モデルを
図6C及び
図6Dに示す。弁は、大きく変形されており、断面も楕円形になっている。
【0030】
誤差評定
視覚的検査が、照合された弁とグランド・トゥルースとの間の良好な一致を既に示していたが、合成CTデータを使用して定量的誤差評価を実行した。グランド・トゥルース、すなわち、事前に取得された変形された弁をボクセル化し、ぼかしアルゴリズムを適用して、CTスキャンにおけるブルーミング・アーティファクトを模倣した。次いで、画像照合ベースのプロセスを実行して、この合成CTデータからステント・ジオメトリを再構成した。最後に、結果をグランド・トゥルースと比較した。実例を、
図7A~
図7Dに示しており、
図7Aでは、変形されたステントを示す。ジオメトリを、元のCTスキャンと同じ解像度である、0.35mmのグリッド間隔で3D画像アレイに変換した(ボクセル化)。ぼかしアルゴリズムは、カーネル幅9ピクセル及び標準偏差1のガウシアン・フィルタであった。この合成CTデータからセグメント化されたステントを
図7Bに示す。ステントの幅は、1.5mmで測定されている(4~5ピクセル)。同じ12個のランドマーク(マルチパス照合フレームワークのセクションと同じ)を選び、63のBスプライン・グリッド・サイズを使用してプロセス全体を繰り返し、ステント・ジオメトリを復元した。結果を
図7Cで比較する。復元されたステントには、影が付けられている。2つのモデルは同一に見える。両モデルは、同じメッシュ(同じ頂点及び面)を有しており、同じ座標系に存在するため、対応する頂点間の距離を使用して誤差を定量化することが可能である。2つのモデルのノード間の平均距離は、0.106±0.091mmであり、0.45mmのステント幅の1/3未満である。誤差の分布を
図7Dに示す。誤差の95%は、0.29mm未満である。
【0031】
感度解析
使用されるランドマークの数、変形グリッド・サイズ及び人為的な入力バイアスの影響を同じ合成CTデータを使用して評価した。
【0032】
グリッド・サイズ:非剛体照合ステップにおけるグリッド・サイズに対する本方法の感度を
図8Aに示す。グリッド・サイズは、ゼロ(剛体)から23、43、63、及び83までの間で変動し、すべてのグリッド・サイズに対して同じ12個のランドマークを使用した。8個のEvolut及び2個のSapienを含む、10個の異なる患者固有の弁から平均誤差プロットを取得した。剛体照合のみのケースでは、平均誤差(0.80±0.32mm)は、ステントの幅をはるかに上回った。しかし、43グリッドを用いた非剛体Bスプライン照合によって0.2mm未満まで劇的に低下した。グリッド・サイズが43から83まで増加すると、平均誤差は、0.1mm前後まで低下し続けた。ただし、計算時間(8コアのデスクトップ・コンピュータ上で、
図5A~
図5Cに示すEvolutのケースのみで)は、23グリッドの10分未満から83グリッドの27分超まで急上昇した。この結果は、本方法が、中程度の細かいグリッド・サイズ(例えば、43)とともに使用すると、適正な計算コストでうまく機能することを示している。典型的なCTスキャンの解像度が、通常、0.3mmを超えるため、非常に細かいグリッドを使用しても結果はそれほど改善されない。
【0033】
使用されるランドマークの数:単一のEvolutのケースについて、照合プロセスにおいて使用されるランドマークの数の影響を
図8Bに示す。ベースラインとして30個のランドマークから開始し、16、12、8、6、及び4と数を減らしていった。それに続く非剛体照合をすべて63グリッドで実行した。平均誤差は、ベースラインのケースの0.102mmから4つのランドマークのみを使用したときの0.112mmまで、より少ないランドマークを使用した場合ではわずかしか増加しなかった(
図8B)。これは、本方法が、ランドマークの数に影響を受けないことを示している。ただし、計算時間は、より少ないランドマークの場合に増大し、与えられた初期情報が少ない場合、アルゴリズムが完璧な一致を見つけるのにより多くの時間がかかることを示唆している。結局、これらの結果は、10個より少ないランドマークでも、アルゴリズムが、適正な速さで正確な結果を生成できることを示している。
【0034】
入力バイアス:最後に、人為的な入力バイアスに対する感度を評価するため、すべてのランドマークの3つの座標に-1.5mmから1.5mmまでの範囲(9ボクセルの変動)のランダムな数を追加して、人為的な入力誤りを表した。同じ12個のランドマークを用いて、63のグリッド・サイズで、Evolutのケースについて15個の独立した試験を実行した。全15試験からの平均誤差は、0.146±0.017mmであった。これは、正しく選定されたランドマークを用いたケースよりも高かったが、照合誤差は、依然としてステント幅の1/3以内であった。
【0035】
弁尖変形及び応力算出
本発明の方法は、最終的な弁尖ジオメトリの推定を提供するが(
図5A~
図5C及び
図6A~
図6D)、正しい変形及び弁尖の上の残留応力分布は、流れの流体構造シミュレーションのための入力として重要である。そのような情報を取得するための1つの方法は、照合結果から導出された境界条件を用いて有限要素解析を実行することである。具体的には、元のステント・メッシュと照合後に変形されたものとの間で、個々の頂点の変位を算出することができる。その情報を用いて、FEAシミュレーションにおいて元のステントに変位条件を適用することによって変形されたステントを復元することができる。ステントにおける応力分布はここでは焦点ではないため、このシミュレーションにおける任意の材料モデルを使用することができる。ステント・メッシュと弁尖メッシュとの間にタイ制約を適用することによって、変位境界条件が適用されると、弁尖はステントとともに変形する。したがって、弁尖上のジオメトリ及び応力分布を正しく算出できる。実例として、(
図5A~
図5Cと同じ)Evolut弁のための変形された弁尖を、生体弁尖上の応力分布(単位はMPa)によって影を付けて、
図9に示す。弁尖間の交連線は、同モデルの
図5B及び
図5Cに示すものとは異なり、真っ直ぐではない。
【0036】
ステント応力推定
本開示では、自己拡張型ステントにおける残留応力を合理的に推定するための簡易な方法について説明する。
【0037】
復元されたモデルにおいて応力分布を推定するために、ここで、圧着ボックス法を導入する。圧着プロセス及び応力分布の比較を
図10A~
図10Dに示す。具体的には、ステントのバウンディング・ボックスを構成し、ハイパーメッシュにおけるクアッド・シェル要素を用いてメッシュ化した。このバウンディング・ボックス(
図10A)は、無変形のステントと全く同じ形状を有していたため、ステントと同じ変換を適用することによって、変形されたステントの形状と一致するはずである。したがって、ステントの頂点に対する変位を指定するのではなく、バウンディング・ボックスに変位を適用し、それを使用して弁モデルを「圧着して」その最終形状とした(
図10B)。Abaqusにおいて0.1の摩擦係数の「ハード」接触モデルを使用してボックスとステントとの間の接触特性を定義した。ステント材料は、同じ超弾性ニチノールであった。ニチノールの非線形挙動を考慮するために、若干の過圧着とそれに続く解放ステップを適用した。このようにして局所的誤差を低減し、応力分布における急上昇を回避した。復元されたステント及び応力分布(
図10C)を、
図10Dにおけるグランド・トゥルースと比較する。復元されたステント・ジオメトリは、1mm前後の差を有し、算出された応力分布は、グランド・トゥルースと比較するとわずかに高い(約60MPa又はピーク応力の15%)。全体として、この圧着法は、Gessatらによって説明されるプロセスと比較して最小の労力でグランド・トゥルースと同様のメッシュ及び応力分布を生成する。
【0038】
例示的な方法は、TAVRに限定されず、CTスキャンから外科用生体弁又は任意の知られているインプラントのジオメトリを復元するためにも適用され得る。本方法によって生成される患者固有の弁モデルのデータベースを用いて、深層学習モデルをトレーニングして、ステント・ジオメトリを高速復元することができる。
【0039】
本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく本開示において様々な修正及び変形を行うことができることが当業者には明らかとなろう。本開示の他の態様は、明細書の検討及び本明細書で開示される方法の実践から当業者に明らかとなろう。本明細書及び実例は、例示のみとして見なされることを意図しており、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0040】
上述した論理演算は、(1)コンピューティング・システム上で実行されるコンピュータ実施動作若しくはプログラム・モジュールのシーケンスとして、且つ/又は(2)コンピューティング・システム内の相互接続された機械論理回路若しくは回路モジュールとして実施され得ることを諒解されたい。この実施は、コンピューティング・システムの性能及び他の要件に依存する選定の問題である。したがって、本明細書で説明される論理演算は、状態演算、動作、又はモジュールとして様々に呼ばれる。これらの演算、動作及び/又はモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、専用デジタル論理、ハードウェア、及びこれらの任意の組合せにおいて実施され得る。また、図面で示され、本明細書で説明されるよりも多い又は少ない演算が実行され得ることを諒解されたい。これらの演算はまた、本明細書で説明されるのとは異なる順序で実行され得る。
【0041】
図11は、本明細書で説明される例示的な方法の出力を使用することができるソフトウェア・コンポーネントを実行可能なコンピュータ・システム200の例示のコンピュータ・アーキテクチャを示す。
図11に示すコンピュータ・アーキテクチャは、例示のコンピュータ・システム構成を示し、コンピュータ200は、それと通信状態にある解析システム又は任意のコンポーネント上で実行するものして説明される、本明細書で提示されるコンポーネント及び/又はモジュールの任意の態様を実行するために利用され得る。
【0042】
一態様では、コンピューティング・デバイス200は、タスクを実行するために協働する、互いに通信状態にある2つ以上のコンピュータを備えてもよい。例えば、限定はしないが、アプリケーションが、そのアプリケーションの命令の同時及び/又は並列処理を許容するような方法で分割されてもよい。代替として、アプリケーションによって処理されるデータが、2つ以上のコンピュータによって設定されたデータの異なる部分の同時及び/又は並列処理を許容するような方法で分割されてもよい。一態様では、コンピューティング・デバイス200におけるコンピュータの数に直接縛られない、多数のサーバの機能性を提供するように、コンピューティング・デバイス200によって仮想化ソフトウェアが採用されてもよい。例えば、仮想化ソフトウェアは、4つの物理的コンピュータ上で20個の仮想サーバを提供してもよい。一態様では、上で開示された機能性は、クラウド・コンピューティング環境における1つのアプリケーション及び/又は複数のアプリケーションを実行することによって提供されてもよい。クラウド・コンピューティングは、動的にスケーリング可能なコンピューティング・リソースを使用してネットワーク接続部を介してコンピューティング・サービスを提供することを含んでもよい。クラウド・コンピューティングは、仮想化ソフトウェアによって少なくとも部分的にサポートされてもよい。クラウド・コンピューティング環境は、企業によって確立されてもよく、且つ/又はサードパーティ・プロバイダから必要に応じて賃借してもよい。一部のクラウド・コンピューティング環境は、企業によって所有及び運営されるクラウド・コンピューティング・リソース、並びにサードパーティ・プロバイダから賃借及び/又はリースしたクラウド・コンピューティング・リソースを含む場合がある。
【0043】
その最も基本的な構成において、コンピューティング・デバイス200は、典型的には、少なくとも1つの処理ユニット220及びシステム・メモリ230を含む。コンピューティング・デバイスの厳密な構成及びタイプに応じて、システム・メモリ230は、揮発性(ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random-access memory)など)、不揮発性(読み出し専用メモリ(ROM:read-only memory)、フラッシュ・メモリ等)、又はこれら2つの何らかの組合せであってもよい。
【0044】
この最も基本的な構成は、
図11に破線210で示されている。処理ユニット220は、コンピューティング・デバイス200の動作に必要な算術及び論理演算を実行する標準的なプログラム可能なプロセッサであってもよい。1つの処理ユニット220が示されているが、複数のプロセッサが存在する場合もある。本明細書で使用される場合、処理ユニット及びプロセッサは、例えば、限定しないが、マイクロプロセッサ(MCU:microprocessor)、マイクロコントローラ、グラフィック処理ユニット(GPU:graphical processing unit)、及び特定用途向け回路(ASIC:application specific circuit)を含む、入力に対して機能を実行して、出力を作成するための符号化された命令を実行する物理的なハードウェア・デバイスを指す。したがって、命令は、1つのプロセッサによって実行されるものとして説明されることがあるが、命令は、同時に、逐次的に、又は別法で1つ又は複数のプロセッサによって実行されてもよい。コンピューティング・デバイス200はまた、コンピューティング・デバイス200の様々なコンポーネントの間で情報を通信するためのバス又は他の通信機構を含んでもよい。
【0045】
コンピューティング・デバイス200は、追加の特徴/機能性を有してもよい。例えば、コンピューティング・デバイス200は、限定はしないが、磁気又は光ディスク又はテープを含む、リムーバル・ストレージ240及びノンリムーバブル・ストレージ250などの追加のストレージを含んでもよい。
【0046】
コンピューティング・デバイス200はまた、例えば本明細書で説明される通信経路を介して、デバイスが他のデバイスと通信することを可能にするネットワーク接続部280を含んでもよい。ネットワーク接続部280は、モデム、モデム・バンク、イーサネット(登録商標)・カード、ユニバーサル・シリアル・バス(USB:universal serial bus)インタフェース・カード、シリアル・インタフェース、トークン・リング・カード、光ファイバ分散データ・インタフェース(FDDI:fiber distributed data interface)カード、ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN:wireless local area network)カード、符号分割多元接続(CDMA:code division multiple access)、汎欧州デジタル移動体通信システム(GSM:global system for mobile communications)、ロングターム・エボリューション(LTE:long-term evolution)、ワールドワイド・インターオペラビリティ・フォー・マイクロウェーブ・アクセス(WiMAX:worldwide interoperability for microwave access)及び/又は他のエア・インタフェース・プロトコルの無線トランシーバ・カードなどの無線トランシーバ・カード、並びに他のよく知られているネットワーク・デバイスの形態を取り得る。コンピューティング・デバイス200は、キーボード、キーパッド、スイッチ、ダイアル、マウス、トラック・ボール、タッチ・スクリーン、音声認識装置、カード・リーダ、ペーパー・テープ・リーダ、又は他のよく知られている入力デバイスなどの入力デバイス270を有してもよい。また、プリンタ、ビデオ・モニタ、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)、タッチ・スクリーン・ディスプレイ、ディスプレイ、スピーカ等の出力デバイス260が含まれてもよい。コンピューティング・デバイス200のコンポーネント間のデータの通信を容易にするために、追加のデバイスをバスに接続してもよい。これらのデバイスのすべてが、当技術分野でよく知られており、ここで詳しく説明する必要はない。
【0047】
処理ユニット220は、有形のコンピュータ可読媒体において符号化されたプログラム・コードを実行するように構成されてもよい。有形のコンピュータ可読媒体は、コンピューティング・デバイス200(すなわち、機械)を特定の方法で動作させるデータを提供することが可能な任意の媒体を指す。様々なコンピュータ可読媒体を利用して、処理ユニット220に実行のための命令を提供してもよい。例示の有形のコンピュータ可読媒体は、限定しないが、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール又は他のデータなどの情報の記憶のために任意の方法又は技術において実装される揮発性媒体、不揮発性媒体、リムーバブル媒体及びノンリムーバブル媒体を含んでもよい。システム・メモリ230、リムーバブル・ストレージ240、及びノンリムーバブル・ストレージ250は、すべて有形のコンピュータ記憶媒体の実例である。例示の有形のコンピュータ可読記録媒体は、限定はしないが、集積回路(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、又は特定用途向けIC)、ハード・ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)・ディスク、磁気テープ、ホログラフィック記憶媒体、ソリッドステート・デバイス、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム読み出し専用メモリ(EEPROM:electrically erasable program read-only memory)、フラッシュ・メモリ又は他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disk)又は他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージ又は他の磁気記憶デバイスを含む。
【0048】
上記に鑑みて、本明細書で提示されるソフトウェア・コンポーネントを記憶及び実行するために、コンピュータ・アーキテクチャ200において、多くのタイプの物理的変換が行われることを諒解されたい。また、コンピュータ・アーキテクチャ200は、ハンドヘルド・コンピュータ、組み込み型コンピュータ・システム、携帯情報端末、及び当業者に知られている他のタイプのコンピューティング・デバイスを含む、他のタイプのコンピューティング・デバイスも含み得ることを諒解されたい。また、コンピュータ・アーキテクチャ200は、
図11に示すコンポーネントのすべてを含まなくてもよく、図に明示的に示していない他のコンポーネントを含んでもよいし、
図11に示すものとは異なるアーキテクチャを利用してもよいことが企図される。
【0049】
例示の実施態様では、処理ユニット220は、システム・メモリ230に記憶されたプログラム・コードを実行してもよい。例えば、バスは、システム・メモリ230にデータを搬送してもよく、このシステム・メモリ230から、処理ユニット220は、命令を受信し、それを実行する。システム・メモリ230によって受信されるデータは、任意選択で、処理ユニット220の実行の前又は後に、リムーバブル・ストレージ240又はノンリムーバブル・ストレージ250上に記憶されてもよい。
【0050】
本明細書で説明される様々な技法は、ハードウェア若しくはソフトウェア、又は適切な場合にはそれらの組合せとの関連で実施され得ることを理解されたい。したがって、現在開示されている主題の方法及び装置、又はそれらの特定の態様若しくは部分は、フロッピー(登録商標)・ディスケット、CD-ROM、ハード・ドライブ、又は任意の他の機械可読記憶媒体などの有形媒体において具現化されたプログラム・コード(すなわち、命令)の形態を取ってもよく、プログラム・コードが、コンピューティング・デバイスなどの機械にロードされ、それによって実行されると、機械は、現在開示されている主題を実践するための装置となる。プログラム可能なコンピュータ上のプログラム・コードの実行の場合、コンピューティング・デバイスは、一般に、プロセッサと、プロセッサによって読み出し可能な記憶媒体(揮発性及び不揮発性のメモリ及び/又は記憶素子を含む)と、少なくとも1つの入力デバイスと、少なくとも1つの出力デバイスとを含む。1つ又は複数のプログラムは、例えば、アプリケーション・プログラミング・インタフェース(API:application programming interface)、再利用可能なコントロール等を通して、現在開示されている主題に関連して説明されたプロセスを実施又は利用してもよい。そのようなプログラムは、コンピュータ・システムと通信するために、高レベルの手続き型又はオブジェクト指向プログラミング言語において実装されてもよい。ただし、プログラムは、所望の場合、アセンブリ言語又は機械語において実装され得る。いずれの場合も、言語は、コンパイル型又はインタプリタ型言語であってもよく、ハードウェア実装と組み合わされてもよい。
【0051】
さらに、種々のコンポーネントは、無線及び/若しくは有線、又は他の望ましい利用可能な通信手段、システム、及びハードウェアを介して通信状態にあってもよい。さらに、種々のコンポーネント及びモジュールは、同様の機能を提供する他のモジュール又はコンポーネントによって置き換えられてもよい。
【0052】
コンピュータ・アーキテクチャ200は、本開示で開示されたモデル化、シミュレーション及び方法の機能を可能にするために必要なソフトウェア及び/又はハードウェア・コンポーネント及びモジュールを含む。いくつかの態様では、コンピュータ・アーキテクチャ200は、(例えば、システム・メモリ230、リムーバブル・ストレージ240、ノンリムーバブル・ストレージ250、及び/又はクラウド・データベースに記憶される)人工知能(A.I.:artificial intelligence)モジュール若しくはアルゴリズム及び/又は機械学習(M.L.:machine learning)モジュール若しくはアルゴリズムを含んでもよい。A.I.及び/又はM.L.モジュール/アルゴリズムは、本開示で開示されるモデル、シミュレーション、及び/又は方法の予測力を高め得る。例えば、患者情報及び計算モデルへの任意の関連する入力データを含む、深層学習、A.I.及び/又はM.L.のモデル・トレーニングを使用することによって、計算モデルの予測力が大幅に向上し得る。A.I.及び/又はM.I.モジュール/アルゴリズムはまた、データベースが大きくなるにつれて、予測の感度及び特異性を改善するのに役立つ。いくつかの態様では、コンピュータ・アーキテクチャ200は、出力デバイス260及び/又は入力デバイス270の一部として、仮想現実(VR:virtual reality)、拡張現実(AR:augmented reality)、及び/又は複合現実ディスプレイ、ヘッドセット、グラス、又は任意の他の好適なディスプレイ・デバイスを含んでもよい。いくつかの態様では、ディスプレイ・デバイスは、ユーザが、ARあり若しくはなし、VRあり若しくはなし、又は臨床医が対話を行い、意思決定をするのに役立つリアルタイムの臨床イメージングとの融合を含む選択肢から選択することを可能にするように対話式であってもよい。
【0053】
本開示の例示の態様は、本明細書でいくつかの事例において詳細に説明されるが、他の態様も企図されることを理解されたい。したがって、本開示は、以下の詳細な説明に記載されるか又は図面において例示される構成要素の構成及び配置の詳細にその範囲が限定されることは意図されていない。本開示は、他の態様も可能であり、様々な方法で実践又は実行され得る。
【0054】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形は、複数の指示対象を含む。範囲は、「約」若しくは「およそ」1つの特定の値から、且つ/又は「約」若しくは「およそ」別の特定の値までのように本明細書で表され得る。そのような範囲が表されるとき、他の例示的な態様は、その1つの特定の値から、且つ/又はその別の特定の値までを含む。
【0055】
「備える(comprising)」、「含む(containing)」又は「含む(including)」とは、名前を挙げられた化合物、元素、粒子、又は方法ステップが、組成物、物品、又は方法内に存在するが、他の化合物、材料、粒子、方法ステップが名前を挙げられたものと同じ機能を有する場合であっても、他のそのような化合物、材料、粒子、方法ステップの存在を排除しないことを意味する。
【0056】
例示の態様を説明する際、技術用語は、明確にするために使用される。各用語は、当業者によって理解される最も広い意味を企図しており、同様の目的を達成するために同様の方法で動作するすべての技術的均等物を含むことが意図される。また、方法の1つ又は複数のステップの言及は、明示的に特定されるこれらのステップの間の追加の方法ステップ又は介在的方法ステップの存在を排除しないことを理解されたい。方法のステップは、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明されるのとは異なる順序で実行されてもよい。同様に、デバイス又はシステムにおける1つ又は複数のコンポーネントの言及は、明示的に特定されるこれらのコンポーネントの間の追加のコンポーネント又は介在的コンポーネントの存在を排除しないことも理解されたい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「対象」は、任意の適用可能なヒト、動物、又は他の有機体、生きているもの又は死んでいるもの、或いは他の生物学的若しくは分子的構造又は化学的環境であってもよく、対象の特定の構成要素、例えば、対象の特定の組織又は流体(例えば、生きている対象の身体の特定のエリアにおける人体組織)に関連していてもよく、これは、本明細書において、「関心のあるエリア」又は「関心のある領域」と呼ばれる対象の特定のロケーションであり得る。
【0058】
本明細書で説明される場合、対象は、ヒト又は任意の動物であってもよいことを諒解されたい。動物は、限定しないが、哺乳動物、獣医用動物、家畜動物又はペット・タイプの動物等を含む、多種多様な任意の適用可能なタイプであり得ることを諒解されたい。実例として、動物は、ヒトと同様の特定の特徴を持つように具体的に選択された実験室用動物(例えば、ラット、犬、豚、サル)等であってもよい。例えば、対象は、任意の適用可能なヒト患者であってもよいことを諒解されたい。
【0059】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、およそ、ほぼ、大まかに、又は前後を意味する。「約」という用語が、数値範囲と併せて使用されるとき、記載される数値の上下に境界を拡張することによって範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、10%のばらつきで述べられた値の上下の数値を修飾するために使用される。一態様では、「約」という用語は、それが使用される数の数値のプラス又はマイナス10%を意味する。したがって、約50%とは、45%~55%の範囲内を意味する。端点によって本明細書に記載される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数及び小数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、4.24、及び5を含む)。
【0060】
同様に、端点によって本明細書に記載される数値範囲は、その範囲内に包含される部分範囲を含む(例えば、1~5は、1~1.5、1.5~2、2~2.75、2.75~3、3~3.90、3.90~4、4~4.24、4.24~5、2~5、3~5、1~4、及び2~4を含む)。また、そのすべての数及び小数は用語「約」による修飾が想定されることを理解されたい。
【国際調査報告】