(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-11
(54)【発明の名称】動的デッドタイムを有するハーフブリッジ電源
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240704BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P27/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573415
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022072959
(87)【国際公開番号】W WO2022266638
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515301041
【氏名又は名称】アティエヴァ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビスカップ、リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ミアオセン
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB02
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE49
5H505HA05
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505MM12
5H770AA02
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5H770EA01
5H770EA25
5H770GA19
5H770HA02X
5H770JA10X
5H770LB02
(57)【要約】
ハーフブリッジ電源は:エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第1のスイッチ;エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第2のスイッチ;及び、第1のスイッチ及び第2のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、ハーフブリッジ電源に動的デッドタイムを提供するように構成された回路構成、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフブリッジ電源であって:
エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第1のスイッチ;
前記エネルギー源及び前記負荷に電気的に接続された第2のスイッチ;及び
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、前記ハーフブリッジ電源に動的デッドタイムを提供するように構成された回路構成
を備える、ハーフブリッジ電源。
【請求項2】
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの少なくとも1つは、炭化ケイ素MOSFETを備える、請求項1に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項3】
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの少なくとも1つは、IGBTを備える、請求項1に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項4】
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの少なくとも1つは、ケイ素MOSFETを備える、請求項1に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項5】
前記ハーフブリッジ電源は、インバータを備える、請求項1に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項6】
前記回路構成に電気的に接続されたコントローラを更に備え、前記コントローラは第1のプロセッサを有する、請求項1に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項7】
前記回路構成は、前記コントローラに電気的に接続された論理回路を備える、請求項6に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項8】
前記論理回路は、フィールドプログラマブルゲートアレイを備える、請求項7に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項9】
前記回路構成は、ソフトウェアを実行する第2のプロセッサを備え、前記ソフトウェアは、前記動的デッドタイムを定義する、請求項6に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項10】
前記第2のプロセッサは、前記第1のプロセッサである、請求項9に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項11】
前記回路構成は、ルックアップテーブルから前記動的デッドタイムを取得するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項12】
前記ルックアップテーブルは、それぞれの電圧及び電流に関連付けられた異なる動的デッドタイムを含む、請求項11に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項13】
前記回路構成は、少なくとも電流に基づく多項式を用いて前記動的デッドタイムを取得するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項14】
前記回路構成は、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチについてのパルス幅変調方式を制御することにより、前記動的デッドタイムを提供するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項15】
前記回路構成は、オフになっている前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの1つが逆電流を有することに基づき、前記ハーフブリッジ電源に固定のデッドタイムを提供するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のハーフブリッジ電源。
【請求項16】
ハーフブリッジ電源であって:
エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第1のスイッチ;
前記エネルギー源及び前記負荷に電気的に接続された第2のスイッチ;及び
オフになっている前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、前記ハーフブリッジ電源に動的デッドタイムを提供するための手段
を備える、ハーフブリッジ電源。
【請求項17】
エネルギー源;
モータ;及び
第1のハーフブリッジ
を備え、前記第1のハーフブリッジは、
前記エネルギー源及び前記モータに電気的に接続された第1のスイッチ;
前記エネルギー源及び前記モータに電気的に接続された第2のスイッチ;及び
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、前記第1のハーフブリッジに動的デッドタイムを提供するように構成された第1の回路構成
を有する、システム。
【請求項18】
前記モータは、第1の相の巻線、第2の相の巻線、及び第3の相の巻線を有し、前記第1のハーフブリッジは、前記第1の相の巻線に電気的に接続され、前記システムは:
第2のハーフブリッジであって、前記第2の相の巻線に電気的に接続され:
前記エネルギー源及び前記モータに電気的に接続された第3のスイッチ;
前記エネルギー源及び前記モータに電気的に接続された第4のスイッチ;及び
前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、前記第2のハーフブリッジに動的デッドタイムを提供するように構成された第2の回路構成
を有する第2のハーフブリッジ;及び
第3のハーフブリッジであって、前記第3の相の巻線に電気的に接続され:
前記エネルギー源及び前記モータに電気的に接続された第5のスイッチ;
前記エネルギー源及び前記モータに電気的に接続された第6のスイッチ;及び
前記第5のスイッチ及び前記第6のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている前記第5のスイッチ及び前記第6のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、前記第3のハーフブリッジに動的デッドタイムを提供するように構成された第3の回路構成
を有する第3のハーフブリッジ
を更に備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1の回路構成、前記第2の回路構成、及び前記第3の回路構成は、共通の論理回路に含まれる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の回路構成、前記第2の回路構成、及び前記第3の回路構成は、ソフトウェアを実行するプロセッサによって形成される、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年6月15日に出願された、「動的デッドタイムを有するハーフブリッジ電源(HALF-BRIDGE POWER SUPPLY WITH DYNAMIC DEAD TIME)」と題する米国特許出願第17/304,149号に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本書は、動的デッドタイムを有するハーフブリッジ電源に関する。
【背景技術】
【0003】
ハーフブリッジコンバータは、通常、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)方式によって制御される2つのスイッチを有する。先行手法においては、固定のオフタイム(デッドタイムとしても知られる)が2つのスイッチ位置に適用されていた。この値は実験的に判定されたものであり、信頼性及び電力損失の間の妥協点である。固定のデッドタイムがあまりに短く設定された場合、ハーフブリッジは、両方のスイッチの導通状態が重なる、シュートスルーとして知られる効果を経験することになる。これは、電力損失を増加させ、出力段を破壊し得る。固定のデッドタイムがあまりに長く設定された場合、電力損失が増加し、所望の出力電圧の低下又は歪みが生じることになる。
【0004】
幾つかの先行する手法は、ゲートドライバを用いてハードウェア内でPWM方式を完全に制御することによって、電力損失を低減するよう試みてきた。そのような試みにおいて、出力回路は、デッドタイムを設定するために電圧が遷移するのを監視する。しかしながら、これらの手法は実装するためのコストが高い場合があり、潜在的な最大の電力損失低減を実現しない場合がある。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、ハーフブリッジ電源は:エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第1のスイッチ;エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第2のスイッチ;及び、第1のスイッチ及び第2のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、ハーフブリッジ電源に動的デッドタイムを提供するように構成された回路構成、を備える。
【0006】
実装形態は、以下の特徴のうちのいずれか又は全てを含み得る。第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの少なくとも1つは、炭化ケイ素MOSFETを備える。第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの少なくとも1つは、IGBTを備える。第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの少なくとも1つは、ケイ素MOSFETを備える。ハーフブリッジ電源は、インバータを備える。ハーフブリッジ電源は、回路構成に電気的に接続されたコントローラを更に備え、コントローラは第1のプロセッサを有する。回路構成は、コントローラに電気的に接続された論理回路を備える。論理回路は、フィールドプログラマブルゲートアレイを有する。回路構成は、ソフトウェアを実行する第2のプロセッサを備え、ソフトウェアは、動的デッドタイムを定義する。第2のプロセッサは、第1のプロセッサである。回路構成は、ルックアップテーブルから動的デッドタイムを取得するように構成されている。ルックアップテーブルは、それぞれの電圧及び電流に関連付けられた異なる動的デッドタイムを含む。回路構成は、少なくとも電流に基づく多項式を用いて動的デッドタイムを取得するように構成されている。回路構成は、第1のスイッチ及び第2のスイッチについてのパルス幅変調方式を制御することにより、動的デッドタイムを提供するように構成されている。回路構成は、オフになっている第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの1つが逆電流を有することに基づき、ハーフブリッジ電源に固定のデッドタイムを提供するように構成されている。
【0007】
第2の態様において、ハーフブリッジ電源は:エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第1のスイッチ;エネルギー源及び負荷に電気的に接続された第2のスイッチ;及び、オフになっている第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、ハーフブリッジ電源に動的デッドタイムを提供するための手段、を備える。
【0008】
第3の態様において、システムは:エネルギー源;モータ;及び、第1のハーフブリッジを備え、第1のハーフブリッジは、エネルギー源及びモータに電気的に接続された第1のスイッチ;エネルギー源及びモータに電気的に接続された第2のスイッチ;及び、第1のスイッチ及び第2のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている第1のスイッチ及び第2のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、第1のハーフブリッジに動的デッドタイムを提供するように構成された第1の回路構成、を有する。
【0009】
実装形態は、以下の特徴のうちのいずれか又は全てを含み得る。モータは、第1の相の巻線、第2の相の巻線、及び第3の相の巻線を有し、第1のハーフブリッジは、第1の相の巻線に電気的に接続され、システムは:第2のハーフブリッジであって、第2の相の巻線に電気的に接続され:エネルギー源及びモータに電気的に接続された第3のスイッチ;エネルギー源及びモータに電気的に接続された第4のスイッチ;及び、第3のスイッチ及び第4のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている第3のスイッチ及び第4のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、第2のハーフブリッジに動的デッドタイムを提供するように構成された第2の回路構成、を有する第2のハーフブリッジ;及び、第3のハーフブリッジであって、第3の相の巻線に電気的に接続され:エネルギー源及びモータに電気的に接続された第5のスイッチ;エネルギー源及びモータに電気的に接続された第6のスイッチ;及び、第5のスイッチ及び第6のスイッチに電気的に接続されており、オフになっている第5のスイッチ及び第6のスイッチのうちの1つが順電流を有することに基づき、第3のハーフブリッジに動的デッドタイムを提供するように構成された第3の回路構成、を有する第3のハーフブリッジ、を更に備える。第1の回路構成、第2の回路構成、及び第3の回路構成は、共通の論理回路に含まれる。第1の回路構成、第2の回路構成、及び第3の回路構成は、ソフトウェアを実行するプロセッサによって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】動的デッドタイムを使用し得る電力段を有するシステムの例を示す。
【0011】
【0012】
【
図3A】固定のデッドタイムを用いてハードスイッチングが実行され得るシナリオの例を示す。
【
図3B】固定のデッドタイムを用いてハードスイッチングが実行され得るシナリオの例を示す。
【0013】
【
図4A】動的デッドタイムを用いてソフトスイッチングが実行され得る例を示す。
【
図4B】動的デッドタイムを用いてソフトスイッチングが実行され得る例を示す。
【0014】
【
図5A】電力段にデッドタイムを提供するためのシステムの例を示す。
【
図5B】電力段にデッドタイムを提供するためのシステムの例を示す。
【0015】
様々な図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本書では、1つ又は複数のハーフブリッジ(例えば、電力コンバータ)を使用する電力段に動的デッドタイムを提供するためのシステム及び技法の例について説明する。そのような手法は、そうでなければハーフブリッジにおいて生じるであろう電力損失を低減し得る。幾つかの実装形態において、電力段は、電気車両(例えば、完全電気車両又はハイブリッド車両の電気モータ)の駆動ユニットを含むがこれに限定されない電気機械のインバータを形成し得る。例えば、スイッチング損失を低減することにより、本主題は、エネルギーストレージ(例えば、バッテリパック)のサイズを増大させることなく電気車両の利用可能な走行距離を増大させることができる。インバータは、連続する電力レベルの範囲で動作し得る。電流の方向は、動作中に定期的に変化する。インバータの動作波形のあらゆる点で、その性能を管理し、損失を低減するという観点から、最適な長さのデッドタイムが存在し得る。本主題は、動作波形の1つ又は複数の態様に対応する動的デッドタイムを適用し得る。
【0017】
本明細書で説明される技法は、電力段において実行されるかなりの数のスイッチング動作における損失を低減するように実装され得る。幾つかの実装形態において、動的デッドタイムは、オフになっているスイッチが順電流を有する実質的にあらゆる状況において、スイッチング方式に適用され得る。例えば、これには、電力段におけるスイッチング事象の約50パーセントが関与する。従って、電力損失の低減は、電力段によって実行される全ての動作の相当な割合のそれぞれにおいて実現され得る。
【0018】
動的に制御されないデッドタイムは、固定のデッドタイムであり得る。幾つかの実装形態において、ハードスイッチング事象は、本開示によって提供される動的デッドタイムを伴うことなく電力損失を最小限に抑えるために使用されるであろうものよりも短いデッドタイム(すなわち、より短い固定のデッドタイム)に設定され得る。例えば、最高の全体効率を得るために、固定のデッドタイムは、そうでなければある程度のソフトスイッチングを達成するために十分に長く設定された可能性があるが、但しスイッチのボディダイオードにおいてあまりに多くの損失を発生させるほど長くは設定されていない可能性がある。本明細書では、対照的に、システムが定常状態にない実質的に全てのスイッチング状況において動的デッドタイムを提供することを経て、ソフトスイッチングの発生が確実になり得る。
【0019】
本主題は、比較的低コストで実装され得る。例えば、電力段に関する別の目的のために既に実装されている論理回路はまた、スイッチを制御するための動的デッドタイムを提供するために使用され得る。別の例として、電力段に関する別の目的のために既に実装されているコントローラ(例えば、1つ又は複数のプロセッサ)はまた、動的デッドタイムを提供するようにプログラミングされ得る。
【0020】
本明細書の例では、電力段に言及する。本明細書で使用される場合、電力段は、2つ又はそれより多くのスイッチを含み、1つ又は複数の形態のスイッチング事象を経て、入力電圧から出力電圧への電力変換を実行し得る。電力段は、電力段によって駆動される特定の負荷に調整された、ある形態から別の形態への電気エネルギーの変換を提供し得る。例えば、電力段は、直流電流(Direct Current:DC)から交流電流(Alternating Current:AC)への変換を実行し得る。別の例として、電力段は、DC-DC変換を実行し得る。幾つかの実装形態において、電力段は、降圧コンバータであり得る。幾つかの実装形態において、電力段は、インバータであり得る。幾つかの実装形態において、電力段は、電源として機能し得る。例えば、電源は、非一定出力電流を生成するために動作し得る。
【0021】
本明細書の例では、スイッチに言及する。本明細書で使用される場合、スイッチは、電気回路内の2つ又はそれより多くの導電経路を接続又は切断し得る電気部品である。例えば、スイッチは、スイッチの設定に基づき、電流を妨害し得る、又は電流が流れるのを可能にし得る。幾つかの実装形態において、スイッチは、1つ又は複数の半導体デバイスを含み得る。例えば、スイッチは、トランジスタを含み得る。幾つかの実装形態において、スイッチは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)を含む。例えば、スイッチは、炭化ケイ素MOSFETを含み得る。別の例として、スイッチは、ケイ素MOSFETを含み得る。幾つかの実装形態において、スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated-Gate Bipolar Transistor:IGBT)を含む。他のスイッチが使用され得る。
【0022】
本明細書の例では、ハーフブリッジ電源に動的デッドタイムを提供し得る回路構成に言及する。本明細書で使用される場合、回路構成は、1つ又は複数の動作を実行するように構成された1つ又は複数の電子回路を含む。幾つかの実装形態において、回路構成は、複数のデバイスの論理回路を含み得る。そのようなデバイスは、論理ゲート(例えば、論理的な否定(NOT)、論理積(AND)、論理和(OR)、否定論理積、(NOT-AND:NAND)否定論理和(NOT-OR:NOR)、又は排他的論理和(exclusive-OR:XOR)演算のうちの1つ又は複数を実装するゲート)、及び/又はフリップフロップを含み得るが、これらに限定されない。幾つかの実装形態において、回路構成は、ディスクリート回路を含み得る。幾つかの実装形態において、回路構成は、集積回路を含み得る。例えば、回路構成は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含み得る。回路は、ソフトウェアに記憶された命令を読み出して実行するように構成されたプロセッサ(例えば、汎用プロセッサ又は特定用途プロセッサ)を含み得る。本明細書で使用される場合、ソフトウェアは、ファームウェアを含むがこれらに限定されない。
【0023】
本明細書の例では、車両に言及する。車両は、搭乗者又は積荷、又はその両方を輸送する機械である。車両は、少なくとも1つタイプの燃料又は他のエネルギー源(例えば電気)を使用する1つ又は複数のモータを有し得る。車両の例は、自動車、トラック、及びバスを含むが、これらに限定されない。車輪の数は、車両のタイプ間で異なる場合があり、車輪のうちの1つ又は複数(例えば、全て)は、車両の推進のために使用され得る。
【0024】
図1は、動的デッドタイムを使用し得る電力段102を有するシステム100の例を示す。システム100及び/又は電力段102は、本明細書の他の箇所で説明される1つ又は複数の他の例と共に使用され得る。システムは、電力段102に電気的に結合されたコントローラ104を含む。システム100は、負荷106を含む。幾つかの実装形態において、負荷106は電気モータを含み、コントローラ104は、電力段102に電気モータを駆動させる。負荷106は、1つだけ例を挙げると、多相(例えば、三相)電気モータであり得る。
【0025】
コントローラ104は、電力段102の電流の方向に基づき、電力段102に動的デッドタイムを提供するように構成されている。幾つかの実装形態において、コントローラ104は、電力段102における電流の方向、及び、電流及び/又は電圧の大きさを検出するように構成され得る。例えば、コントローラ104は、動的デッドタイムを含め、電力段102を動作させるために使用されることになるPWM方式を定義し得る。別の例として、コントローラ104は、固定のデッドタイムを備えるPWM信号を受信し得、PWM信号を操作してスイッチング事象の少なくとも幾つかについて動的デッドタイムを生成し得る。コントローラ104は、2つだけ例を挙げると、ソフトウェアに記憶された命令を実行するプロセッサを含み得る、又は、論理回路(例えば、FPGA)を含み得る。
【0026】
本明細書において、電力段102は、DCリンク部分108、及び、ハーフブリッジ電力段110A、110B、及び110Cをそれぞれ含む。DCリンク部分108は、DC端子112A~112B(例えば、正端子(DC+)及び負端子(DC-)、及び、DC端子112A~112B間に電気的に接続されたコンデンサC1を含み得る。幾つかの実装形態において、DC端子112A~112Bは、エネルギー源(例えば、1つ又は複数のバッテリモジュールのバッテリパック)に電気的に接続されている。例えば、エネルギー源は、電気化学電池(例えば、リチウムイオン電池)を含み得る。
【0027】
ハーフブリッジ電力段110A~110Cのそれぞれは、スイッチ及び1つ又は複数の他の構成要素を含み得る。本明細書において、ハーフブリッジ電力段110Aは、スイッチQ1及びQ2をそれぞれ含む。スイッチQ1のドレインは、DC端子112Aに電気的に接続されている。スイッチQ1のソースは、スイッチQ2のドレインに電気的に接続されている。スイッチQ1のゲートは、ゲートドライバ114Aに電気的に接続されている。幾つかの実装形態において、ゲートドライバ114Aは、コントローラ104に電気的に接続され得る。例えば、コントローラ104は、ゲートドライバ114Aを介してスイッチQ1にPWM信号を提供する。スイッチQ1のドレイン、ソース、及びゲートは、スイッチQ1のチャネルを形成し得る。本明細書において、スイッチQ1は、スイッチQ1のドレイン及びソースに電気的に接続されたボディダイオードをも含む。
【0028】
スイッチQ2のソースは、DC端子112Bに電気的に接続されている。スイッチQ2のドレインは、スイッチQ1のソースに電気的に接続されている。スイッチQ2のゲートは、ゲートドライバ114Bに電気的に接続されている。幾つかの実装形態において、ゲートドライバ114Bは、コントローラ104に電気的に接続され得る。例えば、コントローラ104は、ゲートドライバ114Bを介してスイッチQ2にPWM信号を提供する。スイッチQ2のドレイン、ソース、及びゲートは、スイッチQ2のチャネルを形成し得る。本明細書において、スイッチQ2は、スイッチQ2のドレイン及びソースに電気的に接続されたボディダイオードをも含む。
【0029】
本明細書において、ハーフブリッジ電力段110Bは、スイッチQ3及びQ4をそれぞれ含む。スイッチQ3及びQ4は、それぞれスイッチQ1及びQ2と同様に電気的に接続され得る。例えば、スイッチQ3又はQ4のゲートドライバは、それぞれゲートドライバ114A~114Bとは異なるPWM方式を実装し得る。
【0030】
本明細書において、ハーフブリッジ電力段110Cは、スイッチQ5及びQ6をそれぞれ含む。スイッチQ5及びQ6は、それぞれスイッチQ1及びQ2と同様に電気的に接続され得る。例えば、スイッチQ5又はQ6のゲートドライバは、それぞれゲートドライバ114A~114Bとは異なるPWM方式を実装し得る。
【0031】
これらの例において、スイッチQ1~Q6は、例示のみを目的として、MOSFETとして示されている。
【0032】
ハーフブリッジ電力段110A~110Cは、負荷106のそれぞれの相に関連付けられ得る。幾つかの実装形態において、巻線116Aは、ハーフブリッジ電力段110A及び負荷106を互いに接続する。巻線116Aは、スイッチQ1のソース及びスイッチQ2のドレインに接続され得る。例えば、巻線116Aは、負荷106の相Aと称され得る。幾つかの実装形態において、巻線116Bは、ハーフブリッジ電力段110B及び負荷106を互いに接続する。巻線116Bは、スイッチQ3のソース及びスイッチQ4のドレインに接続され得る。例えば、巻線116Bは、負荷106の相Bと称され得る。幾つかの実装形態において、巻線116Cは、ハーフブリッジ電力段110C及び負荷106を互いに接続する。巻線116Cは、スイッチQ5のソース及びスイッチQ6のドレインに接続され得る。例えば、巻線116Cは、負荷106の相Cと称され得る。
【0033】
図2は、PWM方式200及び202の例を示す。PWM方式200及び202は、本明細書の他の箇所で説明される1つ又は複数の他の例と共に使用され得る。電力段102(
図1)を参照すると、PWM方式200は、スイッチQ1を制御するために使用され得る。例えば、PWM方式200は、ゲートドライバ114Aに適用され得る。PWM方式202は、スイッチQ2を制御するために使用され得る。例えば、PWM方式202は、ゲートドライバ114Bに適用され得る。
【0034】
PWM方式200及び202のそれぞれは、座標系に関して示される信号(例えば、波形)として図示されている。時間は、横軸を基準に示されている。PWM信号の電圧は、縦軸(例えば、ボルト単位)を基準に示されている。本明細書において、15V及び-5Vのそれぞれの電圧は、例示のみを目的として示されている。好適な電圧の範囲のいずれかが、スイッチQ1及びQ2をそれぞれ制御するために使用され得る。スイッチング閾値(Vth)は、例として図示されている。例えば、スイッチング閾値は、それぞれのオン及びオフ状態の間でスイッチが遷移する電圧を示し得る。
【0035】
PWM方式200及び202のそれぞれは、それぞれのスイッチのそれぞれのオン及びオフ状態を反映する一連の電圧遷移を含む。本明細書において、PWM方式200は、オフ状態200B(例えば、スイッチQ1がオフであるとき)が後に続くオン状態200A(例えば、スイッチQ1がオンであるとき)を含む。オン状態200Aからオフ状態200Bへの遷移は、本明細書において境界200Cでマークされる。本明細書において、PWM方式202は、オン状態202B(例えば、スイッチQ2がオンであるとき)が後に続くオフ状態202A(例えば、スイッチQ2がオフであるとき)を含む。オフ状態202Aからオン状態202Bへの遷移は、本明細書において境界202Cでマークされる。本明細書において、境界200C及び202Cは、スイッチQ1及びQ2の両方がオフであるときの1つの例を定義する。この時間における間隔は、本明細書において、デッドタイム204と称される。例えば、デッドタイム204は、スイッチQ1がオフになった後、及びスイッチQ2がオンになる前の時間に相当する。
【0036】
本明細書において、PWM方式200は、オン状態200D(例えば、スイッチQ1がオンであるとき)を含む。オフ状態200Bからオン状態200Dへの遷移は、本明細書において境界200Eでマークされる。本明細書において、PWM方式202は、オフ状態202D(例えば、スイッチQ2がオフであるとき)を含む。オン状態202Bからオフ状態202Dへの遷移は、本明細書において境界202Eでマークされる。本明細書において、境界200E及び202Eは、スイッチQ1及びQ2の両方がオフであるときの別の例を定義する。この時間における間隔は、本明細書において、デッドタイム206と称される。例えば、デッドタイム206は、スイッチQ2がオフになった後、及びスイッチQ1がオンになる前の時間に相当する。
【0037】
PWM方式200及び202は、複数の動的デッドタイム及び複数の固定のデッドタイムを形成し得る。幾つかの実装形態において、動的デッドタイムを提供するかどうかは、それぞれのスイッチに対する電流の流れの方向に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。以下では最初に、電流の流れの方向が、動的デッドタイムが提供されるべきでないことを示し;それに応じて、固定のデッドタイムが提供され得る例(
図3A~
図3B)について説明する。例えば、固定のデッドタイムは、シュートスルー事象を回避するのに十分である極小の継続時間であり得る。その後、電流の流れの方向が、動的デッドタイムが提供されるべきことを示す例(
図4A~
図4B)について説明する。例えば、動的デッドタイムは、電力段の電流及び/又は電圧に基づき判定される継続時間を有し得る。
【0038】
デッドタイム204及び206のそれぞれにおいて、電力段(例えば、
図1の電力段102)は、デッドタイム204及び206のうちの特定の1つが生じようとするときに流れている電流の方向に依存して異なる挙動を呈し得る。従って、2つの異なる事例のうちのいずれかが、デッドタイム204及び206のうちのそれぞれ1つで生じることになる。デッドタイム204及び206のそれぞれにおける挙動は、以下の表1のように、それぞれの事例1及び2に区分され得る。
表1
【表1】
【0039】
すなわち、表1は、デッドタイム204が動的デッドタイム(電流がその時点で電力段から流れ出ている場合)、又は固定のデッドタイム(電流がその時点で電力段に流れ込んでいる場合)のいずれかになることを示す。スイッチQ1の場合、電流が電力段から流れ出ていることは、順電流に相当する。従って、デッドタイム204は、スイッチQ1がオフになっているときにスイッチQ1が順電流を有することに基づく動的デッドタイムとなる。
【0040】
同様に、表1は、デッドタイム206が固定のデッドタイム(電流がその時点で電力段から流れ出ている場合)、又は動的デッドタイム(電流がその時点で電力段に流れ込んでいる場合)のいずれかになることを示す。スイッチQ2の場合、電力段に電流が流れ込んでいることは、順電流に相当する。従って、デッドタイム206は、スイッチQ2がオフになっているときにスイッチQ2が順電流を有することに基づく動的デッドタイムとなる。
【0041】
動的デッドタイムを提供することは、そうでなければスイッチング事象の間に生じるであろうスイッチング損失を低減し得る。スイッチング損失が低減され得る方法を図示するために、上記4つのシナリオのうちの2つが使用される。すなわち、デッドタイム206についての事例1及び事例2は、システムがデッドタイムを判定するにあたりハーフブリッジ電力段における電流の流れにフォーカスし得る方法の例として以下で説明される。すなわち、
図3A~
図3Bは、デッドタイム206の事例1に対応しており、
図4A~
図4Bは、デッドタイム206の事例2に対応している。対称性により、4つのシナリオのうちの他の2つ-デッドタイム204についての事例1及び事例2-についてスイッチング事象の分析は同じであるため、以下では繰り返さない。
【0042】
図3A~
図3Bは、固定のデッドタイムを用いてハードスイッチングが実行され得るシナリオの例を示す。例は、回路300を参照して説明されており、これは、本明細書の他の箇所で説明される1つ又は複数の他の例と共に使用され得る。
図1と同じ参照番号を有する構成要素は、それらの構成要素と同様又は同一であり得る。これらの例は、例示のみを目的として、電気モータの文脈において説明される。
【0043】
回路300は、スイッチQ1及びQ2のそれぞれについての寄生出力キャパシタンスを示す。寄生キャパシタンスは、回路300の任意の構成要素の内部キャパシタンスに起因して、及び/又は構成要素の互いに対する近接性に起因して生じ得る。すなわち、スイッチQ1は、スイッチQ1のボディダイオードと並列に、スイッチQ1のドレイン及びソースに電気的に接続されているキャパシタンスCout_Q1を有する。スイッチQ2は、スイッチQ2のボディダイオードと並列に、スイッチQ2のドレイン及びソースに電気的に接続されているキャパシタンスCout_Q2を有する。回路300の動作中において、電力損失の一部は、例えば以下で説明されるように、キャパシタンスCout_Q1及びCout_Q2が充電及び放電される方法に依存する。
【0044】
図3Aは、スイッチQ1がオフである間、及びスイッチQ2がオフになる前の回路300の状態を示す。
図2を簡単に参照すると、これは、スイッチQ1のオフ状態200Bに、及び、スイッチQ2のオン状態202Bに相当し得る。矢印302は、モータ電流がDC端子112BからスイッチQ2のチャネルを通ってハーフブリッジを流れ出て、巻線116Aに流れ込むことを概略的に示す。この瞬間、キャパシタンスCout_Q2は完全に放電され、Cout_Q1はDCリンク電圧まで充電される。ゲートドライバ114Bの信号に起因してスイッチQ2がオフになる場合、モータのインダクタンスにより電流が強制的に継続される。
図3Bで矢印302'によって概略的に示されている通り、スイッチQ2が今やオフであるため、電流はスイッチQ2のチャネルを通って流れることに代えて、スイッチQ2のボディダイオードを通って流れることにシフトする。
【0045】
この時点で、システムは定常状態にあるが、スイッチQ2のボディダイオードはスイッチQ2のチャネルよりも大きい電圧降下を有するため、電力散逸はより大きくなる。基本的に、出力電圧全体、出力に対する電流は、同じ充電の状態に留まり得る。定常状態に起因して、極小デッドタイムを超えてデッドタイムを延長するいかなる利点も存在しない場合がある。
【0046】
次の事象は、スイッチQ1をオンにすることである。電力損失を最小限に抑えるために、スイッチQ2がスイッチQ2のボディダイオードに電流を遷移するとすぐに、スイッチQ1がオンになり得る。これは、シュートスルーを回避することと一貫して、固定の極小デッドタイムの後になされるべきである。スイッチQ1がオンになるとき、それは、スイッチQ2のキャパシタンスCout_Q2を充電することにより、及び、同時にその自身のキャパシタンスCout_Q1を放電することにより、及び、スイッチQ2のボディダイオードの逆回復に起因して電流を流すことにより、エネルギーを散逸させる。キャパシタンスCout_Q1及びCout_Q2は、回路300において事実上並列している。充電、放電、及び電流の流れに起因するこれらの損失は不可避であり、このスイッチング事象はハードスイッチング事象と称され得る。本主題においては、ハードスイッチング事象についてのデッドタイムが、そうでない場合に使用されるであろうものよりも短いデッドタイムに設定され得る。すなわち、以前の手法において、最高の全体効率を得るために、固定のデッドタイムは、ある程度のソフトスイッチングが達成されるように十分に長く設定された可能性があるが、スイッチQ1及びQ2のボディダイオードにおいてあまりに多くの損失が発生するほど長くは設定されてない可能性がある。従って、固定の極小デッドタイムは、デッドタイム206の事例1、すなわち、矢印302による電流が、オフになっているスイッチQ2にとっての逆電流である場合において適用され得る。
【0047】
図4A~
図4Bは、動的デッドタイムを用いてソフトスイッチングが実行され得る例を示す。例は回路300を参照して説明され、
図3A~
図3Bと同じ参照番号を有する構成要素は、それらの構成要素と同様又は同一であり得る。これらの例は、例示のみを目的として、電気モータの文脈において説明される。
【0048】
図4A~
図4Bは、デッドタイム206の事例2に対応する。回路の動作は、上記で説明された事例1におけるものとは異なる。本明細書において、電流は、スイッチQ2がオフになるように指令された時点で、矢印400によって概略的に示されている通り、ハーフブリッジに流れ込んでいる。このとき、スイッチQ2は、スイッチQ2のチャネルが切断され、スイッチQ2のボディダイオードが逆バイアスされるため、電流の流れを遮断する。モータのインダクタンスにおける電流は瞬時に変化し得ないため、電流はスイッチQ2のキャパシタンスCout_Q2を充電し、同時に、スイッチQ1のキャパシタンスCout_Q1を放電する。結果として、電圧は、それがDC端子112A(例えば、DC+)の値に到達するまで、巻線116A(例えば、相_Aノード)上で上昇する。この充電及び放電が完了した場合、
図4Bで矢印400'によって概略的に示されている通り、電流はスイッチQ1のボディダイオードを通って流れ始める。次に、スイッチQ1がオンになり、スイッチQ1のボディダイオードから電流を移動させて、スイッチQ1のチャネルを通じてそれを送り得る。キャパシタンスCout_Q2及びCout_Q1をそれぞれ充電及び放電するためのエネルギーは、インダクタ(例えば、モータ巻線)内に貯蔵されたエネルギーに由来する。これにより、この電流をスイッチチャネルの抵抗素子を通じて送る場合に比べてエネルギー損失がより低くなる結果がもたらされる。スイッチQ1両端の電圧は、それをオンにするときはゼロであり得、これは、ソフトスイッチング事象と称され得る。
【0049】
先ほど説明されたプロセスは、完了するのに時間を要する。正確な時間は、システム内のキャパシタンス(例えば、回路300内のキャパシタンスCout_Q2及びCout_Q1)の量、及びスイッチングの時点で流れている電流の大きさに依存する。例えば、システムのキャパシタンスは、システム電圧によっても異なり得る。従って、動的デッドタイムは、デッドタイム206の事例2、すなわち、矢印400による電流が、オフになっているスイッチQ2にとっての順電流である場合において適用され得る。
【0050】
幾つかの実装形態において、スイッチQ1及びQ2は、炭化ケイ素MOSFETであり得る。そもそも、炭化ケイ素MOSFETにおいて、システム損失は比較的低くなり得る。炭化ケイ素基板をベースにした半導体スイッチングデバイスは、オフになっているスイッチが順電流を有する場合に生じるもののようなスイッチング損失に対してより敏感であり得る。炭化ケイ素MOSFETを使用することで、電力段(例えば、インバータ)がより効率的になり得るが、軽い動作負荷において、電力段は電力損失でプラトーに達し得る。動的デッドタイムを提供することは、それらの、及び/又は他の状況において役立ち得る。例えば、軽負荷における損失は殆ど完全にスイッチング損失であり、本主題はスイッチング損失を低減し得る。幾つかの実装形態において、強力な電気機械(例えば、電気自動車)は、多くの場合、その出力容量のわずか10%又はそれ未満で動作する強力なインバータを有し得る。従って、そのような比較的軽負荷での性能は全体効率にとって重要であり得、本主題によって向上し得る。
【0051】
本明細書の幾つかの例では、炭化ケイ素MOSFETを有する三相インバータの使用について説明するが、他のタイプの電力段が使用され得る。幾つかの実装形態において、電力段は、IGBT又はケイ素MOSFETを用いてインバータを形成し得る。別の例として、電力段は、代わりに、コンバータ又は他の電源であり得る。
【0052】
図5A~
図5Bは、電力段にデッドタイムを提供するためのシステム500及び502の例を示す。システム500及び502は、本明細書の他の箇所で説明される1つ又は複数の他の例と共に使用され得る。システム500及び502は、電力損失を低減する方法でスイッチを制御するための幾つかの可能な手法を図示している。
【0053】
図5Aにおいて、システム500は、コントローラ504、論理回路506、及び電力段508を含む。例えば、コントローラ504及び論理回路506は、コントローラ104(
図1)を形成し得る。別の例として、電力段508は、ハーフブリッジ電力段110A~110C(
図1)のうちの1つであり得る。
【0054】
コントローラ504は、ソフトウェア512に記憶された機械可読命令にアクセスし、それに応じて動作を実行するように構成された、(マイクロプロセッサを含むがこれに限定されない)プロセッサ510を含み得る。幾つかの実装形態において、コントローラ504は、電気車両の駆動ユニット用のモータコントローラであり得る。動作にあたり、コントローラ504は、電力段508についての電流レベル、電圧レベル、及びそれに要求されるトルクを含むがこれらに限定されない、電力段508に関する態様をそれが監視することを可能にする入力を受信し得る。コントローラ504は、電力段508を制御するために好適なPWM信号をサイクルごとのベースで出力し得る。幾つかの実装形態において、コントローラ504によって生成されるPWM信号は、固定のデッドタイムを有し得る。
【0055】
論理回路506は、この例においてコントローラ504とは切り離されている。幾つかの実装形態において、論理回路506は、その機能を実行するように構成された論理ゲートの配列を含む。例えば、論理回路506はFPGAを含み得る。幾つかの実装形態において、論理回路506は、コントローラ504によって実行される機能又は動作の一部を補完するものとして使用され得る。例えば、論理回路506を用いて安全上の制限が評価され、実施され得る。別の例として、論理回路506は、スイッチQ2、Q4、及びQ6(
図1)が行っているべき事柄を合成し、スイッチ用のPWM信号にデッドタイムを挿入するように構成され得る。すなわち、論理回路506は、動的デッドタイムを判定し、動的デッドタイムを電力段508に適用し得る。論理回路506は、システム電流、電圧、及び電圧方向を監視し得る。その入力に基づき、論理回路506はスイッチング事象についての適切なデッドタイム(例えば、動的デッドタイム)を計算し、適用し得る。論理回路506を使用することで、コントローラ504の計算オーバーヘッドを削減することができる。例えば、複数のハーフブリッジ電源段のそれぞれについて、動的デッドタイム値がマイクロ秒のオーダーの間隔で計算される場合(例えば、インバータが数キロヘルツのオーダーの速度で動作する場合)、そのような計算オーバーヘッドは相当なものになり得る。
【0056】
論理回路506は、動的デッドタイムを判定するにあたりルックアップテーブルを使用し得る。幾つかの実装形態において、ルックアップテーブルは、電圧に電流を乗じた寸法を有し得る。例えば、当該テーブルは、m個の電流ビンに対してn個の電圧ビンをカバーし得、ここでn及びmは整数である。以下の表2は、5つの電圧ビン及び16の電流ビンを使用する、例示のみを目的としたルックアップテーブルの例である。
表2
【表2】
【0057】
表2における値は、適用可能なスイッチング事象のそれぞれにおいてソフトスイッチングを提供し得る。上記の表2における値以外の動的デッドタイムが使用され得る。動的デッドタイムの値は、スイッチ(例えば、MOSFET)のサイズ、電力段(例えば、インバータ)の電力、及び使用される電圧を含むがこれらに限定されない複数の要因のいずれか又は全てに依存し得る。
【0058】
論理回路506は、電流の方向を評価して、動的デッドタイムが適用されるべきかどうかを判定し得る。オフになっているスイッチが逆電流を有する場合、論理回路506は、極小の固定のデッドタイムが適用されるべきであると判定し得る。例えば、これは、コントローラ504から受信されたPWM信号におけるデッドタイムの長さであり得、この場合、論理回路506は、PWM信号を修正する必要がない可能性がある。他方、オフになっているスイッチが順電流を有する場合、論理回路506は、動的デッドタイムが適用されるべきであると判定し得る。論理回路506は次に、電流及び電圧の現在のレベルに基づき、ルックアップテーブル(例えば、上記の表2)にアクセスし得る。論理回路506は、PWM信号を修正し、ルックアップテーブルに応じた長さの動的デッドタイムを提供し得る。この修正されたPWM信号は、電力段508に提供される。
【0059】
論理回路506(例えば、FPGA)は、シャント(レジスタ)の両端の電圧を測定するチップを用いて、(例えば、それが行うようにプログラミングされた別のタスクを実行するために)電流を監視し得る。例えば、この手法は、論理回路506の一部であり得るデジタルフィルタを必要とし得る。幾つかの実装形態において、コントローラ504に(例えば、プロセッサ510に直接的に)信号を出力するホール効果電流センサを含むがこれに限定されない別の電流センサが使用され得る。
【0060】
先ほど説明された例においては、PWM信号を修正して動的デッドタイムを提供するために論理デバイス(例えば、FPGA)を使用したが、他の手法が使用され得る。十分な計算能力を有するプロセッサにより、動的デッドタイムを提供する機能がソフトウェアによって制御され得る。
図5Bにおいて、システム502は、コントローラ504、コントローラ514、及び電力段508を含む。コントローラ514は、ソフトウェア518に記憶された機械可読命令にアクセスし、それに応じて動作を実行するように構成された、(マイクロプロセッサを含むがこれに限定されない)プロセッサ516を含み得る。コントローラ504及び514は、コントローラ104(
図1)を集合的に形成し得る。幾つかの実装形態において、コントローラ504及び514は、(例えば、電気車両内の駆動ユニットのモータコントローラとして機能する)単一のコントローラとして実装され得る。本明細書において、コントローラ504及び514は、簡潔にするために別個のデバイスとして示されている。
【0061】
ソフトウェア518は、複数の手法のうちのいずれかを用いて動的デッドタイムを制御し得る。幾つかの実装形態において、ソフトウェア518は、オフになっているスイッチが逆電流を有するかどうかを確認するための命令を含み得、そうである場合、ソフトウェア518は、ルックアップテーブルにアクセスして、適用されるべき適用可能な動的デッドタイムを読み出す。例えば、上記の表2が使用され得る。
【0062】
幾つかの実装形態において、ルックアップテーブルを用いる代わりに、ソフトウェア518が多項式を計算して、適用可能な動的デッドタイムを判定し得る。これは、動的デッドタイムを提供するためのスムーズな機能の実装を容易にし得る。概して、動的デッドタイムについての多項式Tは、以下の通り表現され得る:
【数1】
ここでIは電流であり、Vは電圧であり、an(n=0、1、2、…)は、特定の実装形態の特性に基づき選択され得る係数である。多項式Tは、I及び/又はVに関与する項を必要に応じて多く又は少なく含み得る。
他の手法が使用され得る。
【0063】
本明細書の全体を通して使用される用語「実質的に」及び「約」は、処理時のばらつきに起因するものなどの小さい変動を説明及び釈明するために使用される。例えば、それらは、±5%未満又はそれに等しい、例えば±2%未満又はそれに等しい、例えば±1%未満又はそれに等しい、例えば±0.5%未満又はそれに等しい、例えば±0.2%未満又はそれに等しい、例えば±0.1%未満又はそれに等しい、例えば±0.05%未満又はそれに等しいことを指すことができる。また、本明細書で使用されるとき、「a」又は「an」などの不定冠詞は「少なくとも1つ」を意味する。
【0064】
上記の複数のコンセプト、及び以下でより詳細に論述される追加の複数のコンセプトの全ての組み合わせが(そのような複数のコンセプトが相互に矛盾しない限り)、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると企図されていることを理解されたい。特に、本開示の最後に現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であることが企図されている。
【0065】
複数の実装形態について説明してきた。それにもかかわらず、本明細書の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正が加えられ得ることを理解されたい。
【0066】
加えて、図に示されている論理の流れは、望ましい結果を達成するために、示されている特定の順序、又は連続した順序を必要としない。加えて、他のプロセスが提供されてよく、又は説明された流れからプロセスが排除されてよく、説明されたシステムに他の構成要素が追加又は削除されてよい。従って、他の実装形態が以下の特許請求の範囲に記載の範囲内に属する。
【0067】
説明された実装形態の特定の特徴が本明細書で説明された通りに示されてきたが、今や多くの修正、置換、変更、及び均等物が当業者に想起されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、実装形態の範囲内に属する全てのそのような修正及び変更を包含することを意図していることが理解されるべきである。それらは限定ではなく単なる例としてのみ提示されており、形態及び詳細に様々な変更が加えられてよいことを理解されたい。相互に排他的な組み合わせを除き、本明細書で説明された装置及び/又は方法の任意の部分が任意の組み合わせで組み合わせられてよい。本明細書で説明された実装形態は、説明された異なる実装形態の機能、構成要素、及び/又は特徴の様々な組み合わせ及び/又は副次的組み合わせを含み得る。
【国際調査報告】