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特表2024-525263排気ガス処理用途のためのアニオン性PGMカルボキシレート支援PGMナノ粒子合成
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  • 特表-排気ガス処理用途のためのアニオン性PGMカルボキシレート支援PGMナノ粒子合成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】排気ガス処理用途のためのアニオン性PGMカルボキシレート支援PGMナノ粒子合成
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20240705BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240705BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20240705BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240705BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B01J37/02 101Z
B01J37/02 301C
B01J37/08 ZAB
B01J23/63 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/28 Z
F01N3/28 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560890
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 GB2022051783
(87)【国際公開番号】W WO2023285794
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110782230.8
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】63/203,400
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】520176441
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ (シャンハイ) ケミカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルム、ヨヘム アレックス
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シアオ-ラン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ハイ-イン
(72)【発明者】
【氏名】コリス、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエルソン、ジェニファー マーロン
(72)【発明者】
【氏名】モックスハム、ゲンマ ルイサ
(72)【発明者】
【氏名】ムレサン、ニコレタ
(72)【発明者】
【氏名】チアオ、ドンシェン
(72)【発明者】
【氏名】スコフィールド、エマ
(72)【発明者】
【氏名】トムプセット、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヤピン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA39
3G091GB01X
3G091GB06X
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3G091GB10X
4D148AA06
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4G169FB23
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC09
(57)【要約】
触媒物品を製造する方法であって、PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供することと、担体材料を提供することと、アニオン性錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、
PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
前記アニオン性錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記カルボキシレートイオンが、2つ以上のカルボキシル官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カルボキシレートイオンが、2~6個の炭素原子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルボキシレートイオンが、ヒドロキシル基、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸官能基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボキシレートイオンが、シトレート、マレート、マロネート、スクシネート、タルトレート、グルタレート、タルトロネート、オキサレート、ラクテート及びグリコレートのうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボキシレートイオンが、シトレート及び/又はマロネートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PGMが、ロジウム、パラジウム、白金及びルテニウムのうちの1つ以上から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PGMが、ロジウム、パラジウム、白金又はこれらの組み合わせ、好ましくはロジウム及び/又はパラジウムを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アニオン性錯体が、マロン酸Pt(IV)、コハク酸Pt(IV)、シュウ酸Pt(II、IV)、クエン酸Pd(II)、乳酸Pd(II)、シュウ酸Pd(II)、グリコール酸Pd(II)、リンゴ酸Pd(II)、クエン酸Rh(II)、クエン酸Rh(III)、乳酸Rh(II)、乳酸Rh(III)及びシュウ酸Ru(III)のうちの1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アニオン性錯体が、前記アニオン性錯体を含む水溶液の形態で提供され、好ましくは、前記水溶液が、pH8以下、より好ましくはpH7以下を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液が、硝酸PGMを含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アニオン性錯体が、対イオンを有し、前記対イオンが、H、H及びNH のうちの1つ以上を含み、好ましくはH及び/又はHからなる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液が、元素状無機カチオンを含まない、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アニオン性錯体が、水、OH、酢酸イオン及び架橋O原子から選択される1つ以上の更なる配位子を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アニオン性錯体が、2つ以上のPGM中心を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体材料が、酸化物、好ましくはAl、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、プラセオジム及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア中に存在する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記担体材料が、ゼオライトを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記担体材料が、0.1~25μm、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~15μmのD90を有する粉末の形態である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記アニオン性錯体を提供することが、
水酸化PGM及び/又は水不溶性PGM塩、好ましくは酢酸PGMを提供することと、
前記水酸化PGM及び/又は前記水不溶性PGM塩をカルボン酸水溶液と接触させることと、任意選択的に、
前記アニオン性錯体を、前記アニオン性錯体を含む水溶液の形態で回収することと、を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記水酸化PGMの前記PGMが、ロジウム及び/若しくは白金であり、かつ/又は前記水不溶性PGM塩、好ましくは酢酸PGMの前記PGMが、パラジウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アニオン性錯体を前記担体材料に適用することが、前記担体材料を、前記アニオン性錯体を含む水溶液と接触させることを含み、好ましくは、前記担体材料を前記水溶液と接触させることが、pH8以下、より好ましくはpH7以下で行われる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置され、好ましくは、前記スラリーが、pH8以下、より好ましくはpH7以下を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記スラリーが、
請求項27に記載の方法に従って、前記アニオン性錯体を前記担体材料に適用することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記担持が、ウォッシュコーティングを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記アニオン性錯体を前記担体材料に適用する工程、前記担持済み担体材料を前記基材上に配置する工程、及び前記担持済み担体材料を加熱する工程の各々が、pH8以下、好ましくはpH7以下で行われる、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記スラリーが、10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記スラリーが、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、前記更なるスラリーが、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、前記更なるスラリーを前記基材上に配置することが、前記担持済み担体材料を前記基材上に配置する前に、及び/又は前記担持済み担体材料を加熱して前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成した後に行われる、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、前記更なるスラリーが、PGM及びカルボキシレートイオンを含む更なるアニオン性錯体、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、前記更なるスラリーを前記基材上に配置することが、前記担体材料を前記基材上に配置した後に、及び前記担持済み担体材料を加熱して前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成する前に行われる、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択的に、
前記基材に真空を適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させることを含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記乾燥が、
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記加熱が、焼成を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ナノ粒子が、0.1nm~25nm、好ましくは0.2~10nm、より好ましくは0.2~5nmのD50を有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項44】
三元触媒作用のための、請求項43に記載の触媒物品。
【請求項45】
ディーゼル酸化触媒作用のための、請求項43に記載の触媒物品。
【請求項46】
NOトラップ触媒作用のための、請求項43に記載の触媒物品。
【請求項47】
0.5g/in~8g/inのウォッシュコート担持量を有する、請求項43~46のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項48】
前記基材が、ウォールフローフィルタ基材を含む、請求項43~47のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項49】
前記基材が、フロースルー基材を含む、請求項43~47のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項50】
前記触媒物品が、第1のPGM成分を含む第1の触媒領域を含み、任意選択的に、第2のPGM成分を含む第2の触媒領域を更に含む、請求項43~49のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項51】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項50に記載の触媒物品。
【請求項52】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項50に記載の触媒物品。
【請求項53】
前記第1のPGM成分及び/又は前記第2のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらのうちの2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項50~52のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項54】
前記第1のPGM成分及び前記第2のPGM成分が、異なる、請求項53に記載の触媒物品。
【請求項55】
前記第1のPGM成分が、パラジウムであり、前記第2のPGM成分が、ロジウムである、請求項54に記載の触媒物品。
【請求項56】
0.1g/ft~50g/ftのロジウム、好ましくは0.5g/ft~25g/ftのロジウムを含む、請求項43~55のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項57】
1g/ft~300g/ftのパラジウム、好ましくは10g/ft~100g/ftのパラジウムを含む、請求項43~56のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項58】
1g/ft~300g/ftのパラジウム、好ましくは10g/ft~100g/ftの白金を含む、請求項43~57のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項59】
請求項43~58のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項60】
ガソリンエンジンのための、請求項59に記載の排出処理システム。
【請求項61】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項60に記載の排出処理システム。
【請求項62】
排気ガスを処理する方法であって、
請求項43~58のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項63】
前記排気ガスが、ガソリンエンジンからのものである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒物品を製造する方法、この方法によって得ることができる触媒物品、排出処理システム、及び排気ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金族金属(platinum group metal、PGM)は、排気ガス触媒、例えば、三元触媒(three-way catalyst、TWC)、ディーゼル酸化触媒(diesel oxidation catalyst、DOC)及びNOトラップ触媒における重要な成分である。効率を最大化するために、PGMを目標担体材料上に選択的に及び/又は確実に位置付けることが望ましい。従来の触媒物品調製方法は、PGM源として単純なPGM塩、典型的には、硝酸PGMを使用する。しかしながら、そのような従来の方法を使用して、PGMを特定の担体材料上に位置付けることは困難である。これは、ウォッシュコートを調製する際に、担体材料とPGMとの間の相互作用が弱いためである。この問題を克服するために、含浸とそれに続く焼成、噴霧乾燥、及び還元析出によってPGMを目標担体材料上に予備固定することを含む方法が検討されてきた。しかしながら、これらのアプローチは全て、複数の/追加の処理工程を必要とする。更に、PGMを担体材料に固定するための焼成中に、ニトレートの分解が、有害なNO副生成物の放出を引き起こす可能性がある。
【0003】
硝酸PGM前駆体を使用する場合、PGMと担体材料との間の強い相互作用がないため、金属移動が起こる可能性があり、これは、触媒物品内の特定の別個の層配置が混合し得ることを意味し、例えば、層が特定の異なる目的のために含まれる場合、層の不活性化を引き起こし得る。更に、そのような触媒物品は、ウォッシュコートの更なる湿式塗布へ曝露されると、特にパラジウムを使用する場合、担持されたPGM触媒の基材を通した過剰なウィッキングの影響を受けやすい可能性がある。
【0004】
したがって、担体材料上に担持されたPGMを含む触媒物品を製造する改善された方法、具体的には、移動及び/又はウィッキングを回避するためにPGMを担体材料により確実に結合させることができ、製造中に放出される有害な副生成物がより少なく、製造を単純化し、製造コストを低減するための所要工程の少ない方法を提供する必要がある。
【0005】
国際公開第96/31275号は、触媒物品の製造用の前駆体として使用するための、PGMカルボキシレート、特に乳酸PGMに関する。しかしながら、アニオン性PGM錯体は記載されていない。
【0006】
「Free rhodium(II)citrate and rhodium(II)citrate magnetic carriers as potential strategies for breast cancer therapy」Carneiro et al.,Journal of Nanobiotechnology,2011,9:11、「Carboxylates of Palladium,Platinum,and Rhodium,and their Adducts」Stephenson et al.,Journal of the Chemical Society,1965,667,3632-3640、及び「Preparation and Properties of Anhydrous Rhodium(II)acetate and Some Adducts Thereof」Johnson et al.,Inorganic Chemistry,1963,2,5,960-962はそれぞれ、PGMカルボキシレート錯体を記載している。しかしながら、これらの刊行物のいずれも、排気ガスの処理などの用途のための触媒物品を調製する分野ではない。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、触媒物品を製造する方法に関し、この方法は、PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供することと、担体材料を提供することと、アニオン性錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、第1の態様における方法によって得られる触媒物品に関する。
【0009】
本発明はまた、第2の態様における触媒物品を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0010】
本発明はまた、排気ガスを処理する方法も包含し、この方法は、第2の態様の触媒物品を提供することと、触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】EPMA法によるクエン酸パラジウム被覆コア上のパラジウム分布を示す(実施例6)。
図2】EPMA法による硝酸パラジウム被覆コア上のパラジウム分布を示す(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0013】
第1の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法を提供し、この方法は、
PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
アニオン性錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
基材担持済み担体材料を上に配置することと、
担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【0014】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0015】
驚くべきことに、排出処理システムにおいて使用される場合、本発明の方法によって製造された触媒物品は、従来の方法によって調製された触媒物品と比較して、基材を通した若しくは基材中へのウォッシュコート層のウィッキング及び/又はウォッシュコート層の混合が著しく少ないことを示し得る。言い換えれば、本発明の方法によって製造された触媒物品は、従来の方法によって製造された触媒物品と比較して、担体材料へのPGMのより強い/より確実な固定を示し得る。したがって、本発明の方法によって製造された触媒物品は、そのような触媒物品における美観の改善と同様に、改善された触媒活性を示し得る。これは、少なくとも、触媒物品中の任意の別個のウォッシュコート層間の触媒活性PGMの混合を低減することができ、それによって、ウォッシュコート層のいずれかが不活性化される可能性を低減することができるためである。これは、次に、触媒物品全体の触媒活性を、触媒物品が未使用であるとき、及びエージング後に、意図したように高く維持するのに役立ち得る。任意の別個のウォッシュコート層のPGMを、意図したそれぞれの層内に保つことは、それぞれの意図した触媒目的(例えば、酸化又は還元のいずれか)を維持するために重要であり得る。例えば、PdとRhとの間の直接的な相互作用は、個々の成分の触媒活性、特にRh成分の触媒機能を低下させ得ることが知られている。
【0016】
理論によって拘束されることを望まないが、本発明の方法によって製造された触媒物品によって示されたこれらの驚くべき有利な特性は、担体材料とアニオン性錯体との間の強い静電相互作用により達成され得ると考えられる。相互作用は、本方法が低pH、例えば、pH8以下で実施される場合に特に強くなり得る。本発明のアニオン性錯体は、一般に、溶液中で(わずかな)正電荷を有し得る担体材料に静電的に引き付けられ得る。したがって、アニオン性錯体は、そのような静電相互作用により、担持済み担体材料から離れにくくなり得る。更に、ウォッシュコート溶液を調製する際に、アニオン性錯体は担体材料に引き付けられ得、それによって、溶液中で活発に集まり担持済み担体材料を形成する。したがって、このことは、担体材料上に実際に担持されている(supported)(すなわち、「固定されている」又は「担持されている(loaded)」)より高い割合のPGMをもたらし得る。このことは、例えば、中性の硝酸PGM及び/又はPGMカチオンが溶液中で「遊離」している、すなわち、担体材料に対して大きな静電気引力を有しない、硝酸PGM前駆体を使用する従来のウォッシュコーティング方法とは対照的である。アニオン性錯体と担体材料との間のそのようなより強い相互作用に起因して、担体材料上に担持されたPGMのより均一な分散が、触媒物品全体にわたって得られ得るとも考えられる。
【0017】
有利なことに、担持済み担体材料を加熱及び/又は焼成して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成する際、アニオン性錯体、すなわち、カルボキシレートイオン配位子の組成により、例えば、硝酸PGM前駆体を使用する従来の方法と比較して、NOなどの有害な副生成物がより少なく放出され得る。理論によって拘束されることを望まないが、これは、ニトレートが加熱時にNOに分解し得る一方で、本発明のカルボキシレートイオン配位子が、例えば単に二酸化炭素及び水のみなどの、害が少ない、つまり「より清浄な」副生成物に分解し得るためであると考えられる。言い換えれば、加熱時に、本発明のアニオン性錯体は、PGM金属(又は、金属酸化物/水酸化物)、CO及びHOのみに分解/還元されると考えられる。更に、本発明のアニオン性錯体は、加熱時にPGM中心を自己還元することが見出されている。言い換えれば、加熱時に、配位子は、活性形態の、すなわち、担持されたPGM金属(ナノ粒子)を有する触媒を生成するために、化学的還元又は気相還元などのいかなる追加の方法工程も必要とせずに、PGMを分解してPGM金属に還元することができる。
【0018】
有利なことに、本発明のアニオン性錯体はまた、高い水溶解度も有し得る。これは、従来の水性ウォッシュコーティング技術を大幅に変更する必要なく、すなわち、前駆体の変更により、従来の水性ウォッシュコーティング技術を使用することを可能にするので、有益である。
【0019】
したがって、例えば、PGM前駆体がアニオン性錯体ではない国際公開第96/31275号と比較して、本発明の方法によって製造された触媒物品は、少なくともある程度は、PGM前駆体と担体材料との間の静電引力の増加に起因して、上記の有利な特性を示し得る。
【0020】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態をとり得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムにおいて使用するためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用において使用するためのもの、すなわち、三元触媒(TWC)として使用するためのものであってもよい。代替的に、触媒物品は、ディーゼルエンジン用の排出処理システムにおいて使用するためのものであってもよい。触媒物品は、ディーゼル酸化触媒作用において使用するためのもの、すなわち、ディーゼル酸化触媒(diesel oxidation catalyst、DOC)として使用するためのものであってもよい。触媒物品はまた、NOトラップ触媒作用において使用するためのもの、すなわち、NOトラップ触媒として使用するためのものであってもよい。
【0021】
PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供することは、典型的には、溶液、例えば、水溶液又はアルコール溶液、好ましくは水溶液中のアニオン性錯体を提供することを含む。
【0022】
本明細書で使用される「アニオン性錯体」という用語は、少なくとも1つの金属中心及び少なくとも1つの配位子を含む任意の錯体を包含し、少なくとも1つの金属中心及び少なくとも1つの配位子の全電荷はゼロ未満である。したがって、アニオン性錯体は、典型的には、正の対イオンに関連付けられている。考えられる正の対イオンは、以下に更に記載される。
【0023】
本明細書で使用される「PGM」という用語は「白金族金属」を意味し、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムのうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、PGMは、TWC、DOC又はNOトラップ触媒として使用するためなどの意図された用途に応じて、白金、パラジウム及びロジウムのうちの1つ以上を含む。アニオン性錯体は、1つ以上のPGM金属中心を含み得る。例えば、アニオン性錯体は、2つ又は3つの金属中心などの2つ以上の金属中心を含み得る。
【0024】
本明細書で使用される「カルボキシレートイオン」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味をとり、すなわち、一般式RCOOの分子であり、Rは任意の基、典型的には、任意の有機基である。したがって、典型的には、カルボキシレートイオンは、-COO基を介してPGM金属に配位する。しかしながら、カルボキシレートイオンは、代替的に及び/又は追加的に、別の-COO基などの別の官能基、又は-OH基などの異なる官能基を介して配位してもよい。アニオン性錯体は、例えば、カルボキシレートイオンの官能基のサイズ及び/又は数に応じて、1つ以上のカルボキシレートイオンを含み得る。Rは、好ましくは、C、H及びOからなる。このことは、有利なことに、PGM金属(又は、金属酸化物/水酸化物)、CO及びHOのみに分解するアニオン性錯体をもたらし得る。本発明で使用するのに好ましいカルボキシレートイオンについては、以下で更に考察する。
【0025】
担体材料は、その上に又はその中にアニオン性錯体及びナノ粒子を担持することができる任意の材料であってよい。担体材料は、任意の形態をとることができるが、典型的には粉末、より典型的には高表面積粉末の形態である。本発明の方法が、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEMを使用して測定して、例えば、0.1~25μm、より典型的には0.5~5μmのD50を有する粉末の形態となる。そのような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を促進することができる。担体材料はウォッシュコートとして機能してもよい。担体材料はウォッシュコートであってもよく、又はウォッシュコートの一部であってもよい。
【0026】
担体材料はまた、三元触媒転化又は他の触媒応用を促進するために、燃料希薄条件及び燃料豊富条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する酸素貯蔵材料として機能してもよい。
【0027】
担体材料へのアニオン性錯体の適用は、典型的には、スラリーを生成するように、溶媒(典型的には水)の存在下でアニオン性錯体と担体材料とを接触させることを含む。本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶性内容物、例えば、「遊離」非錯体化カルボキシレートイオン又はカルボン酸分子、無機PGM及び助触媒前駆体、並びにアニオン性錯体(担体を除く、すなわち、非担持アニオン性錯体)、及び(3)不溶性内容物、例えば、アニオン性錯体及び金属前駆体と相互作用するか又は相互作用しない担体粒子、を含んでもよい。好ましくは、スラリーは、(1)、(2)及び(3)の総重量に基づいた、70重量%以上の(1)及び(3)など、80重量%以上の(1)及び(3)、又は更に90重量%以上の(1)及び(3)などの、(1)及び(3)を主に含む。スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間、撹拌される。接触時間及び/又は撹拌時間を増加させることにより、理論化された可能な静電相互作用によって達成されるものに加えて、担体材料上に担持されるアニオン性錯体の量を増加させ得る。
【0028】
本明細書で使用される「担持済み担体材料」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)担持された、及び/又はその中に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)担持されたアニオン性錯体を有する担体材料を包含し得る。アニオン性錯体は、典型的には、例えば、静電力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって担体に固定される。例えば、正電荷を有し得る酸化物の場合、強い静電力が、アニオン性錯体と担体材料との間に存在し得る。しかしながら、カルボン酸官能基、及び/又は担体上のヒドロキシル基と相互作用するヒドロキシル基などの他の官能基に起因する静電力又は水素結合形成などの、(カルボキシレートイオン)配位子の官能基に起因する他の相互作用も存在し得る。
【0029】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えばウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含んでもよい。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なっていてもよい。好適な基材は、当該技術分野において周知である。
【0030】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、当該技術分野で既知の技術を使用して行うことができる。典型的には、担持済み担体材料は、担持済み担体材料のスラリーを特定の成形ツールを使用して基材の入口に所定の量で注ぐことによって基材上に配置される。以下でより詳細に考察されるように、後続の真空及び乾燥工程が、配置工程中に用いられてもよい。担体がフィルタブロックである場合、担持済み担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0031】
担持済み担体材料の加熱は、典型的にはオーブン又は炉、より典型的にはベルト又は静電オーブン(static oven)又は炉中で、典型的には一方向からの特定の流れの熱風中で行われる。加熱は、焼成を含み得る。加熱は、乾燥も含み得る。乾燥及び焼成工程は、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了したら、1つの連続的な加熱プログラムを使用して乾燥及び焼成され得る。加熱中、アニオン性錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。言い換えれば、錯体の配位子、すなわちカルボキシレートイオンは、PGMから少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去される。次いで、そのように分離されたPGMの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始めることができる。加熱(焼成)の結果として、基材は、典型的にはカルボキシレートイオンを実質的に含まず、より典型的にはカルボキシレートイオンを完全に含まない。
【0032】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、TEMによって測定される0.01nm~100nmの直径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート、立方体、円筒形、六角形、又はロッドであってよいが、典型的には球形である。ナノ粒子の最大寸法(すなわち、ナノ粒子が球状である場合には直径)は、TEMによって測定して、典型的には0.5~10nm、より典型的には1~5nmである。
【0033】
加熱工程の後、基材は、典型的には冷却され、より典型的には室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には冷却剤を用いずに、空気中で行う。
【0034】
カルボキシレートイオンは、好ましくは、2つ以上のカルボキシル官能基、例えば、2~4個のカルボキシル官能基を含む。いくつかの好ましい実施形態では、カルボキシレートイオンは、2つのカルボキシル官能基を含む。他の好ましい実施形態では、カルボキシレートイオンは、3つのカルボキシル官能基を含む。カルボキシレートイオンが2つ以上のカルボキシル官能基を含む場合、例えば、カルボキシル官能基のうちの少なくとも1つは、アニオン性錯体の1つ以上の金属中心に配位してもよい。例えば、理論によって拘束されることを望まないが、いくつかの実施形態では、カルボキシル官能基のうちの2つ以上は、キレート配位子又は架橋配位子の形成などを行うために、アニオン性錯体の1つ以上の金属中心に配位してもよい。他の実施形態では、例えば、理論によって拘束されることを望まないが、カルボキシル官能基のうちの1つ以上は、例えば、(酸化物)担体材料上の任意の露出したヒドロキシル基との静電相互作用及び/又は水素結合の形成などを行うために、担体材料と相互作用し得ると考えられる。これらの相互作用は、カルボキシル官能基のうちの1つ以上の、アニオン性錯体の1つ以上の金属中心への配位に加えて存在し得る。理論によって拘束されることを望まないが、この場合、これらの追加の相互作用は、すなわち、アニオン性錯体であることによる上記のような任意の静電相互作用に加えて、本発明のアニオン性錯体の上記の有利な特性、例えば、担体材料との更に強い相互作用又は「結合」を提供することにも寄与し得ると考えられる。
【0035】
好ましい実施形態では、カルボキシレートイオンは、2個、3個、4個、5個又は6個の炭素原子などの2~6個の炭素原子を含む。カルボキシレートイオンの炭素原子数は、本発明を達成する上で特に限定されなくてもよい。しかしながら、理論によって拘束されることを望まないが、カルボキシレートイオンの炭素原子の数が多いほど、得られるアニオン性錯体の水溶解度が低くなると考えられる。アニオン性錯体が高い水溶解度を有することが望ましい場合がある。したがって、カルボキシレートイオン中の炭素原子の数は、例えば、6を超えないことが望ましい場合があると考えられる。少なくとも従来のウォッシュコーティング技術は水溶液中で実施されるので、アニオン性錯体が高い水溶解度を有することが望ましい場合がある。したがって、本発明のPGM前駆体、すなわち、アニオン性錯体を従来のウォッシュコーティング技術で使用するために、すなわち、従来の技術を実質的に適合させる必要がないように、アニオン性錯体が高い水溶解度を有することが望ましい場合がある。更に、したがって、本発明のアニオン性錯体において使用されるカルボキシレートイオンは、例えば、より少ない炭素原子を有することによるなどのよる高い水溶解度と、例えば、カルボキシル官能基又はヒドロキシル官能基などのより多くの官能基を有するカルボキシレートイオンに起因するなどの、アニオン性錯体上により多くの負電荷を有すること、及び/又は、担体材料との静電結合又は水素結合などのより多くの相互作用を有することなどによる、担体材料とのより強い相互作用又は「結合」を有すること、との間に良好なバランスを有することが望ましい場合がある。
【0036】
したがって、いくつかの好ましい実施形態では、カルボキシレートイオンは、ヒドロキシル基、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸官能基を含む。理論によって拘束されることを望まないが、そのような官能基は、アニオン性錯体と担体材料との間の引力又は相互作用の数及び/又は強度を増加させ得ると考えられる。
【0037】
好ましくは、カルボキシレートイオンは、シトレート、マレート、マロネート、スクシネート、タルトレート、グルタレート、タルトロネート、オキサレート、ラクテート及びグリコレートのうちの1つ以上を含み、より好ましくは、シトレート、マレート、マロネート、スクシネート、タルトレート、グルタレート、タルトロネート及びオキサレートのうちの1つ以上を含み、更により好ましくは、カルボキシレートイオンは、シトレート及び/又はマロネートを含む。そのようなカルボキシレートイオンは、本発明のアニオン性錯体において使用される場合、驚くべきことに、担体材料との強い相互作用を示し、したがって、本明細書に記載の有利な効果を特に良好に示すことが見出されている。
【0038】
好ましくは、PGMは、ロジウム、パラジウム、白金及びルテニウムのうちの1つ以上から選択される。より好ましくは、PGMは、ロジウム、パラジウム、白金又はこれらの組み合わせ、好ましくは、ロジウム及び/又はパラジウムを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。いくつかの好ましい実施形態では、PGMは、ロジウムを含むか、ロジウムから本質的になるか、又はロジウムからなる。いくつかの好ましい実施形態では、PGMは、白金を含むか、白金から本質的になるか、又は白金からなる。いくつかの好ましい実施形態では、PGMは、パラジウムを含むか、パラジウムから本質的になるか、又はパラジウムからなる。本発明で使用するための白金、パラジウム及び/又はロジウムの各々の選択は、触媒物品の特定の目的、すなわち、例えば、TWC用途又はDOC用途などの還元用であるか酸化用であるかに依存し得る。白金、パラジウム及び/又はロジウムの各々の異なる用途は、当業者に既知である。
【0039】
特に好ましいアニオン性錯体は、マロン酸Pt(IV)、コハク酸Pt(IV)、シュウ酸Pt(II、IV)、クエン酸Pd(II)、乳酸Pd(II)、シュウ酸Pd(II)、グリコール酸Pd(II)、リンゴ酸Pd(II)、クエン酸Rh(II)、クエン酸Rh(III)、乳酸Rh(II)、乳酸Rh(III)及びシュウ酸Ru(III)のうちの1つ以上、より好ましくは、例えば、マロン酸Pt(IV)、クエン酸Pd(II)、クエン酸Rh(II)及びクエン酸Rh(III)のうちの1つ以上を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、アニオン性錯体が、アニオン性錯体を含む水溶液の形態で提供され、好ましくは、水溶液が、pH8以下、より好ましくはpH7以下を有する。水溶液を用いることで、例えば、本発明のPGM前駆体、すなわち、アニオン性錯体を使用する際に既知の技術及び添加剤を大幅に変更する必要がないように、より従来のウォッシュコーティングプロセスに従った簡易で低コストのプロセスを提供することができる。したがって、このことは、触媒物品を製造する従来の方法の使用から、本発明の改善された方法への容易な移行を可能にし得る。本発明の方法で使用するためのアニオン性錯体を提供する方法の結果として、そのような水溶液は、「遊離」配位子又は非配位性配位子(例えば、カルボキシレートイオン又はカルボン酸)などの他の成分を含み得る。例えば、水溶液はまた、アニオン性錯体を提供する方法に起因して、追加の酢酸及び/又は酢酸イオンも含み得る。
【0041】
好ましくは、水溶液中に存在するPGMの少なくとも70重量%が、本明細書に記載のアニオン性錯体の形態で存在し、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは、水溶液中に存在するPGMの実質的に全て又は実に全てが、本明細書に記載のアニオン性錯体の形態で存在する。言い換えれば、好ましくは、他のPGM錯体は、水溶液中に存在せず、非錯体化PGM粒子、原子及び/又はイオンも存在しない。
【0042】
水溶液が、pH8以下、好ましくはpH7以下、より好ましくはpH6以下を有することが望ましい場合がある。理論によって拘束されることを望まないが、そのような低いpHは、アニオン性錯体と担体材料との間の静電引力を増大させるのに役立ち得ると考えられる。これは、担体材料が、例えば、水溶液中の関連付けられたHイオンに起因して、そのようなpHにおける正電荷のうちのより多くを獲得し、維持するためであり得る。このことは、例えば、担体材料が酸化物を含む場合に、特に明らかであり得る。しかしながら、水溶液のpHによるこの効果は、任意の好適な担体材料を使用する際に観察され得る。したがって、そのような低いpHを有する水溶液を用いることで、アニオン性錯体と担体材料との間の上記の静電引力の増大に寄与するのに役立ち得、それによって、アニオン性錯体と担体材料との間の引力の増大に関連する上記の有利な効果を達成するのに役立ち得る。言い換えれば、pH8以下などのより低いpHは、アニオン性錯体と担体材料との間の引力の更に一層の増大に寄与するのに役立ち得、それによって、本発明の方法によって達成される驚くべき結果の効果を増大させる。更に、そのような低いpHは、アニオン性錯体を提供するのに役立ち得、対イオンは、プロトン又はヒドロキソニウムイオンである。
【0043】
好ましくは、水溶液は硝酸PGMを含まない。これは、例えば、担体材料上にPGMを位置付けるためのより高い特異性、担体材料へのPGMのより強い固定、及びPGM前駆体の分解時の「害が少ない」副生成物の生成など、本発明が改善しようとする硝酸PGMに関連する上記の特性に少なくとも起因し得る。言い換えれば、本発明は、硝酸PGM前駆体を使用する触媒物品を製造する従来の方法を改善しようとするものであり、したがって、本発明の方法は、好ましくは、硝酸PGMの使用を含まない。
【0044】
アニオン性錯体が、アニオン性錯体を含む水溶液の形態で提供される場合、アニオン性錯体は、好ましくは対イオンを有し、対イオンは、好ましくは、H、H及びNH のうちの1つ以上を含み、好ましくは、H及び/又はHからなる。好ましくは、水溶液は元素状無機カチオンを含まない。例えば、対イオンは、好ましくは、元素状無機カチオンを含まない。これは、例えば、得られる触媒物品が、そのような無機元素で汚染されないようにするためであり得る。そのような水溶液はまた、加熱工程中に、アニオン性錯体の望ましい「清浄な」分解を達成するのにも役立ち得る。そのような元素状無機カチオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及び/又はカルシウム(完全に網羅しているわけではない)のうちの1つ以上のカチオンが挙げられ得る。
【0045】
アニオン性錯体は、例えば、水、OH、酢酸イオン及び架橋O原子から選択される1つ以上の更なる配位子を含んでもよい。好ましくは、アニオン性錯体の配位子は、使用される特定のカルボキシレートイオンに応じて、カルボキシレートイオン、水、OH及び架橋O原子のうちの1つ以上を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。好ましくは、アニオン性錯体は、リン含有配位子/又は窒素含有配位子を含まない。したがって、そのようなアニオン性錯体は、例えば、加熱時に、PGMナノ粒子、並びに放出されたCO及び水のみを形成するためなど、加熱時に所望の「環境に優しい」分解を達成するのに役立ち得る。これは、例えば、硝酸PGM前駆体を使用する従来の方法とは対照的である。
【0046】
いくつかの実施形態では、アニオン性錯体は、2つ以上のPGM中心、例えば、2つ又は3つのPGM中心を含む。したがって、そのようなアニオン性錯体は、2つ以上のカルボキシル官能基及び/又は追加のヒドロキシル基などの2つ以上の官能基を有し得る架橋O原子及び/又は架橋カルボキシレートイオンなどの架橋配位子を含有し得る。
【0047】
担体材料は、酸化物、好ましくはAl、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La及びゼオライトのうちの1つ以上を含む。酸化物は、金属酸化物であることが好ましい。担体材料は、より好ましくは、アルミナ、更により好ましくはガンマ-アルミナを含む。担体材料は、好ましくはセリア-ジルコニアを含む。担体材料は、好ましくはアルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアは、好ましくはドープされ、より好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、又はナトリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされ、更により好ましくは、ランタン、ネオジム、プラセオジム又はイットリウムの酸化物でドープされる。このようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に、0.001重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する。そのような担体材料は、アニオン性錯体が、アニオン性錯体を含む水溶液の形態で提供される場合の好ましい実施形態では、本発明の方法における使用に特に適し得、好ましくは、水溶液はpH8以下、より好ましくはpH7以下を有する。これは、上記のそのような担体材料が、そのような状況において正電荷を望ましく得ることができ、担体材料とアニオン性錯体との間に強い静電引力をもたらすためであり得る。
【0048】
特定の好ましい実施形態では、担体材料は、ゼオライトなどのモレキュラーシーブを含む。ゼオライト担体材料は、例えば、多孔質構造に起因して、PGM原子/カチオン、特にパラジウムの移動をより起こしやすい場合がある。移動は、例えば、基材の表面から基材内へのものであり得、これは、触媒物品の不活性化をもたらす場合がある。したがって、移動の可能性を低下させることは、より高濃度のPGMが、エージング後に基材の表面上又は表面付近に残り得、それによって、所望レベルの触媒活性がより長く維持され得ることを意味し得るので、有益であり得る。したがって、本発明の方法はまた、ゼオライト担体材料にも特に有益であり得る。これは、本発明の方法が、アニオン性錯体と担体材料との間の静電引力の増大に部分的に起因して、上記のようなPGM移動の可能性を低減し得るためである。低pHの水溶液では、例えば、ゼオライト担体材料もまた正電荷を得ることができ、カルボキシル官能基及び/又はヒドロキシル官能基などの任意の官能基もまたゼオライト骨格と相互作用することができ、これは、次に、PGMの移動の可能性を低減し得る。
【0049】
担体材料は、例えば、TEMによって測定された、0.1~25μm、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~15μmのD90を有する、好ましくは粉末の形態である。
【0050】
アニオン性錯体を提供することは、好ましくは、水酸化PGM及び/又は水不溶性PGM塩、好ましくは酢酸PGMを提供することと、水酸化PGM及び/又は水不溶性PGM塩をカルボン酸水溶液と接触させることと、任意選択的に、アニオン性錯体を、アニオン性錯体を含む水溶液の形態で回収することと、を含む。言い換えれば、アニオン性錯体は、本発明の方法においてその場で提供され得るか、代替的に、アニオン性錯体は、別個の時間に製造され得、かつ、予め形成された前駆体として使用するためなどの、本発明における使用の前に貯蔵され得る。本明細書で使用される「水不溶性PGM塩」という用語は、水中で実質的に解離しない、例えば、PGM塩の5重量%未満、3重量%未満又は1重量%未満が水中で解離するPGMの塩、及び/又は水溶解度が非常に低い(10mg/L未満など)塩を包含する。酢酸PGMが使用される場合、例えば、任意の残りの酢酸又は酢酸イオンが、溶液中に残留し得る。理論によって拘束されることを望まないが、溶液中に残留するそのような物質が、本発明の方法の効果に悪影響を及ぼすとは考えられない。好ましくは、アニオン性錯体を含む水溶液は、pH8以下、より好ましくはpH7以下を有する。好ましくは、アニオン性錯体の対イオンは、H及び/又はHである。好ましくは、水酸化PGMのPGMは、ロジウム及び/若しくは白金であり、かつ/又は水不溶性PGM塩、好ましくは酢酸PGMのPGMは、パラジウムである。そのような組み合わせは、本発明における使用に特に好適であり得ることが見出されている。
【0051】
アニオン性錯体を担体材料に適用することは、好ましくは、担体材料を、アニオン性錯体を含む水溶液と接触させることを含み、好ましくは、担体材料を水溶液と接触させることは、pH8以下、より好ましくはpH7以下で行われる。
【0052】
担持済み担体材料は、好ましくは、スラリーの形態で基材上に配置され、好ましくは、スラリーは、pH8以下、より好ましくはpH7以下を有する。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒変換中の圧力降下を最小化するために、特に有効である。スラリーは、好ましくは、上記の方法に従ってアニオン性錯体を担体材料に適用することと、任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される。
【0053】
このような「ワンポット」調製法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。この方法はまた、アニオン性錯体の利用を最大化することができる。
【0054】
言い換えれば、PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供する工程と、担体材料を提供する工程と、アニオン性錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置する工程とは、
水酸化PGM及び/又は水不溶性PGM塩、好ましくは酢酸PGMを提供することと、
水酸化PGM及び/又は水不溶性PGM塩をカルボン酸水溶液と接触させることと、
任意選択的に、アニオン性錯体を、アニオン性錯体を含む水溶液の形態で回収することと、
担体材料を、アニオン性錯体を含む水溶液と接触させてスラリーを形成することであって、好ましくは、担体材料を水溶液と接触させることが、pH8以下、より好ましくはpH7以下で行われる、接触させることと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を水溶液に添加することと、
スラリーを基材上に配置することと、を含んでもよい。
【0055】
担持はウォッシュコーティングを含んでもよい。従来のウォッシュコーティング技術は、当該技術分野で周知である。
【0056】
好ましくは、アニオン性錯体を担体材料に適用する工程、担持済み担体材料を基材上に配置する工程、及び担持済み担体材料を加熱する工程の各々は、pH8以下、好ましくはpH7以下で行われる。誤解を避けるために、アニオン性錯体がまだ分解していない全ての方法工程について、方法工程は、本明細書に記載の理由のためにpH8以下、好ましくはpH7以下で行われることが好ましい。
【0057】
スラリーは、好ましくは10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する。そのような固形物量は、担持済み担体材料を基材上に配置するのに好適なスラリーレオロジーを可能にし得る。例えば、基材がハニカムモノリスである場合、そのような固体内容物は、基材の内壁上へのウォッシュコートの薄層の堆積を可能にし得る。基材がウォールフローフィルタである場合、そのような固形物量は、スラリーがウォールフローフィルタのチャネルに入ることを可能にすることができ、スラリーがウォールフローフィルタの壁に入ることを可能にすることができる。
【0058】
好ましくは、スラリーは、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む。
【0059】
他の助触媒としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。助触媒塩は、そのような元素の塩であり得る。
【0060】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中において個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野で周知である。
【0061】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中の不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。それは、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的に役立つ。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート焼成中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、グラクトマナガム(galactomannan gum)、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0062】
本明細書に記載される「還元剤」という用語は、ウォッシュコート調製中にPGMカチオンをその金属状態の粒子にその場で還元することができる化合物を包含し得る。
【0063】
PGMの還元剤として作用しかつ/又は後の焼成工程中に還元環境を作り出す、更なる有機酸を添加することができる。しかしながら、上記のように、更なる有機酸は、アニオン性錯体の自己還元特性により必要でない場合があるので、好ましくは添加されない。好適な有機酸の例としては、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、アスコルビン酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0064】
本方法は、好ましくは、更なるスラリーを基材上に配置することを更に含み、更なるスラリーは、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、更なるスラリーを基材上に配置することは、担持済み担体材料を基材上に配置する前に、及び/又は担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成した後に行われる。言い換えれば、更なるスラリーは、基材上に別の触媒層又は触媒領域を形成することができ、それによって、例えば、ウォッシュコートの複数の層及び/又は領域を有する触媒物品をもたらす。本明細書に記載のアニオン性錯体の有利な特性のために、そのようなプロセスの間、担持されたPGMは、それらの意図された層及び/又は領域に留まる可能性がより高くなり得る。
【0065】
代替的に、本方法は、好ましくは、基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、更なるスラリーは、PGM及びカルボキシレートイオンを含む更なるアニオン性錯体、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、更なるスラリーを基材上に配置することは、担体材料を基材上に配置した後に、及び担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成する前に行われる。言い換えれば、本発明の方法では、各ウォッシュコート層の適用の間の更なる焼成工程の必要性を排除することが可能であり得る。
【0066】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること(例えば、スラリーを基材の入口に注入すること)、及び任意選択で、
基材に真空を適用すること、及び/又は
基材上のスラリーを乾燥させることを含む。
【0067】
これにより、基材上の担持済み担体材料の好ましい分布を得ることができる。
【0068】
乾燥は、好ましくは以下のように行われる:
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間。
【0069】
基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既にその上に担持された1つ又はウォッシュコートを有し得る。そのような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0070】
基材は、好ましくはコーディエライトを含む。コーディエライト基材は、触媒物品における使用に特に適している。
【0071】
基材は、好ましくは、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態である。
【0072】
加熱は、好ましくは以下のように行われる:
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる。
【0073】
より低い温度及び/又はより短い加熱時間は、アニオン性錯体の不十分な分解をもたらす場合があり、及び/又は高レベルのカルボキシレートイオンが基材中に残る場合がある。より高い温度及び/又はより長い加熱時間は、おそらく焼結に起因して、好ましくない大きな粒径を有するPGMの粒子をもたらす場合がある。より高い温度及びより長い加熱時間はまた、触媒物品への損傷をもたらす場合がある。
【0074】
加熱は、好ましくは焼成を含む。本明細書で使用される「焼成」という用語は、熱分解を引き起こすための空気又は酸素の非存在下又は限定された供給下での熱処理プロセスを包含し得る。
【0075】
好ましくは、ナノ粒子は、0.1nm~25nm、好ましくは0.2~10nm、より好ましくは0.2~5nmのD50を有する。D50は、TEMによって測定され得る。そのような粒径は、好ましいレベルの触媒活性をもたらすことができ、エージング後、すなわち、排気システムでの使用後に凝集及び焼結の影響を受けにくくすることができる。
【0076】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品を提供し、触媒物品は、排出処理システムにおいて使用するためのものである。従来の触媒物品と比較して、例えば、PGMは、任意の触媒層の間及び/又は触媒領域の間で移動を受ける可能性が低い場合があり、これは、少なくとも部分的には、担体材料へのPGMのより強力でより確実な固定に起因すると考えられる。したがって、触媒物品の各層及び/又は各領域は、所望のレベルの活性をより長く維持することができる。顕著なウィッキングも起こりにくい。
【0077】
触媒物品は、好ましくは、三元触媒作用のためのものである。
【0078】
触媒物品は、好ましくは、ディーゼル酸化触媒作用のためのものである。
【0079】
触媒物品は、好ましくは、NOトラップ触媒作用のためのものである。
【0080】
触媒物品は、0.5g/in~8g/in又は1g/in~3g/inのウォッシュコート担持量を有し得る。そのような触媒物品は、従来の触媒物品と比較して同様の又はより高い触媒活性を示し得るが、使用されるPGMのレベルがより低いことを考慮すると、より低コストであり得る。
【0081】
基材は、好ましくは、ウォールフローフィルタ基材又はフロースルー基材を含む。
【0082】
好ましい実施形態では、触媒物品は、第1のPGM成分を含む第1の触媒領域を含み、任意選択的に、第2のPGM成分を含む第2の触媒領域を更に含む。好ましくは、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。好ましくは、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。好ましくは、第1のPGM成分及び/又は第2のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらのうちの2つ以上の混合物からなる群から選択される。好ましくは、第1のPGM成分及び第2のPGM成分は異なる。好ましくは、例えば、第1のPGM成分はパラジウムであり、第2のPGM成分はロジウムである。
【0083】
触媒物品は、好ましくは、2g/ft~15g/ftのロジウムなどの、0.1g/ft~50g/ftのロジウム、より好ましくは0.5g/ft~25g/ftのロジウム、更に好ましくは1g/ft~20g/ftのロジウムを含む。
【0084】
触媒物品は、好ましくは、10g/ft~100g/ftの白金などの、1g/ft~300g/ftの白金、より好ましくは2g/ft~200g/ftの白金、更に好ましくは5g/ft~150g/ftの白金を含む。
【0085】
触媒物品は、好ましくは、10g/ft~100g/ftのパラジウムなどの、1g/ft~300g/ftのパラジウム、より好ましくは2g/ft~200g/ftのパラジウム、更に好ましくは5g/ft~150g/ftのパラジウムを含む。
【0086】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、排出処理システムは、内燃機関用であり得る。排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0088】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0089】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法を提供し、この方法は、
本明細書に記載される触媒物品を提供すること、及び
触媒物品を排気ガスと接触させること、を含む、方法。
【0090】
いくつかの実施形態では、排出処理システムは、内燃機関用であり得る。排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからの排気ガスである。触媒物品は、そのような排気ガスを処理するのに特に好適である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0091】
定義
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上のエリアを指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上のエリア又は配列は、概して、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0092】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えて逸脱(例えば、最大長と最小長との間の差)しない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えて逸脱しない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えて逸脱しない長さを指す。
【0093】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域のある部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成は、領域の1つの部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が5%以下、通常は2.5%以下、最も通常的には1%以下である材料(例えば、領域)のものを指す。
【0094】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野において周知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば、微量不純物などの、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない、任意の他の材料又は工程を含むように、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0097】
「スラリー」とは、不溶性物質、例えば、不溶性粒子を含む液体を意味する。
【0098】
本明細書で使用される場合、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対するいかなる言及も、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0099】
本明細書で使用する場合、「担持量」という用語は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0100】
本明細書において「a」又は「an」に言及する場合、これは、単数形及び複数形を包含する。
【0101】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【実施例
【0102】
アニオン性錯体前駆体の製造
多数のアニオン性錯体前駆体を以下の実施例に従って調製した。
【0103】
実施例1:クエン酸Pd
固体の酢酸Pd(6.33g)を丸底フラスコに入れ、50mlの水に溶解した1.1当量のクエン酸(6.51g)を加えた。完全に溶解するまで、混合物を75℃で6時間加熱した。これにより、濃赤色溶液を得た。542濾紙を用いて溶液を濾過して、残存する固体不純物を除去した。UV/VISスペクトルは、388nmでピークを示した。誘導結合プラズマ分析(Inductively Coupled Plasma analysis、ICP)により、5.73重量%PdのPdアッセイが得られた。
【0104】
実施例2:クエン酸Rh(III)
RhCl溶液(46.46g、21.52%Rh)を水(150mL)で希釈し、溶液のpHが1.29から2.5に増加するまで(存在する遊離HClを中和するために)、KCO(5M溶液)を15分かけて滴下した。更に、5MのKCO溶液を、pHが7.5に達するまで滴下した。混合物を40℃で加熱した。この段階で、溶液は赤色に変化した。更に、KCO溶液を添加してpHを10.8に上昇させ、次いで、100℃で2時間加熱し、その間に黄茶色の沈殿物が生じた。固体を濾過し、導電率が60mSに達するまでDI水で洗浄した。水酸化物をクエン酸(40.84g)と混合し、100℃で加熱し、その間に水酸化物は4時間未満で溶解した。ICPにより、6.52重量%RhのRhアッセイ及び20ppm ClのClアッセイが得られた。
【0105】
実施例3:クエン酸Rh(III)(代替方法)
RhCl溶液(106.27g、19.29%Rh)を水(300mL)で希釈した。溶液のpHが1.29から2.5に増加するまで(存在する遊離HClを中和するために)、NaOH(5M溶液)を15分かけて滴下した。5MのNaOH溶液を、pHが7.5に達するまで滴下し続けた。混合物を40℃で加熱して、濁った赤色溶液を得た。pHが10に達するまでNaOH溶液を添加し続け、温度を40℃に維持しながら4時間撹拌し、それによりRh(OH)沈殿物が生じた。冷却後、沈殿物を濾過し、溶液の導電率が70mSに達するまでDI HOで洗浄した。クエン酸(83.72g)の水(400ml)溶液を調製した。これにRh(OH)沈殿物を加え、混合物を撹拌し、100℃で加熱した。水酸化物は3時間以内に溶解した。溶液を542フィルタで濾過し、蒸発により約8%Rh濃度まで濃縮した。ICPにより、8.01%RhのRhアッセイが得られた。
【0106】
触媒物品の製造及び試験
多数の触媒物品を以下の実施例に従って調製した。
【0107】
実施例4:従来の方法に対するPd取込の比較
表1は、アルミナ担持CeZrO混合酸化物(組成Al:CeO:ZrO=64:21:15のACZ)上のPd取込値をクエン酸パラジウム又は硝酸パラジウムをPd前駆体として使用して、比較する。実験は、2.3重量%のPd担持量を目標として、ACZ担体のスラリーにPd前駆体を添加することによって行った。90分間混合した後、混合物を遠心分離し、上清中のPd含有量を分析した。Pd取込値は、ACZ担体の表面上に吸着されたPdの割合によって計算した。結果は、硝酸Pdを使用した場合の60%のPd吸着と比較して、クエン酸PdがACZ担体上で90%のPd吸着をもたらしたことを示す。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例5:本発明の触媒物品と従来のPGM前駆体との性能比較
比較触媒A:
1つの触媒領域のみを有する単層PdRh TWCを調製した。触媒領域は、1つのスラリー中で混合され、CeZr混合酸化物、セリア-ジルコニウム-アルミナ、及び結合剤としてのアルミナゾルのウォッシュコート上に担持されたPd及びRhの両方からなり、Pd源としての硝酸Pd溶液は、ウォッシュコートスラリーの調製中に使用される。触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、48g/ftのPd担持量及び2g/ftのRh担持量で、約3.5g/inであった。
【0110】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、コーティングごとに基材長さの50%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の各面から、このウォッシュコートをコーティングし(400cpsi、壁厚6ミル、直径4.16インチ及び長さ4インチ)、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0111】
触媒B:
触媒Bは、触媒領域におけるウォッシュコートスラリーの調製中にPd源としてクエン酸Pd溶液を使用したことを除いて、比較触媒Aと同様の手順に従って調製した。比較触媒A及び触媒Bは両方とも同一の組成であったが、異なるパラジウム前駆体を使用した。
【0112】
触媒B及び比較触媒Aを、密結合レンガの平均温度875℃で100時間ベンチエージングした。3.5LのGTDIエンジン及びターボチャージャーを装備した1台の商用車で、連邦試験手順(Federal Testing Procedure、FTP)の下で、床下位置に設置された触媒レンガを共通の密結合(Close coupled、CC)触媒レンガと対にして、車両排気を行った。FTP試験サイクル下での全システムのNO/NMHC/CO排出量を表2にまとめる。クエン酸Pdを有するシステムは、硝酸Pdを有するシステムと比較して、(NO+NMHC)で5mg/マイル、及びCOで65mg/マイルの更なる排出低減を示す。
【0113】
【表2】
【0114】
実施例6:本発明の触媒物品と従来のPGM前駆体との性能比較(ゼオライト担体材料を使用する場合)
異なるPd前駆体を使用することを除いて同一の成分を有する比較触媒C及び触媒Dを、触媒A及び触媒Bに記載されたものと同じウォッシュコートスラリーを使用することによって調製し、モノリシック押出ゼオライト基材(4.16インチ×4インチ、400/11、55%ベータゼオライト)上にコーティングした。11/16インチ×1インチのコアを、実験室用パルセータ上で50時間、740℃~840℃の範囲の温度で4モードサイクルでエージングした。エージングしたコア上のPd分布を、電子プローブ微小部分析(Electron Probe MicroAnalysis、EPMA)法によって特徴付けた。図1のクエン酸Pdによって作製されたコアは、図2の硝酸Pdと比較して、基材内部で比較的低いPd濃度を有し、Pd移動の程度がより低いことを証明している。
【0115】
フルサイズの触媒をシステム内の底部位置に設置し、各システムを密結合レンガの平均温度875℃で100時間エージングした。エージングしたUB触媒を、その後、共通の密結合触媒と対(0:78:2)にして新しいシステムを形成し、3.5LのGTDIエンジン及びターボチャージャーを備えたFord Flex車両で試験した。FTP試験サイクル下での全システムのNO/NMHC/CO排出量を表3にまとめる。クエン酸Pdを有するシステムは、硝酸Pdを有するシステムと比較して、(NO+NMHC)で4mg/マイル、及びCOで104mg/マイルの更なる排出低減を示す。
【0116】
結果は、クエン酸Pdの使用がゼオライト基材へのPd移動を最小限にすることができ、改善された性能を有する触媒をもたらすことを明確に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例7:合成触媒活性試験におけるライトオフ性能及びOSC試験
比較触媒E:
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物、La安定化アルミナ及びBa助触媒のウォッシュコート上に担持されたPdからなり、ウォッシュコートスラリーの調製中にPd源として硝酸Pd溶液を使用した。第1の触媒領域のウォッシュコート担持量は、24g/ftのPd担持量で、約1.8g/inであった。
【0119】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの80%を目標のコーティング深度として、セラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし(400cpsi、壁厚4.3ミル、直径4.66インチ及び長さ4.5インチ)、100℃で乾燥させた。
【0120】
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物及びLa安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート担持量は、約1.3g/inであり、Rh担持量は、4g/ftであった。
【0121】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材の長さの80%を目標とするコーティングの深さで、上記第1の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、この第2のウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0122】
触媒F:
触媒Fは、第1の触媒領域において、第1の触媒領域におけるウォッシュコートスラリーの調製中にPd源としてクエン酸Pd溶液を適用されたことを除いて、比較触媒Eと同様の手順に従って調製した。
【0123】
触媒F及び比較触媒Eを、合成触媒活性試験(Synthetic Catalyst Activity Test、SCAT)デバイスで、別々に試験した。ライトオフ性能は、10体積%のHO+14体積%のCO+333ppmのC+167ppmのC+1.5体積%のCO+0.5体積%のHO+1.15体積%のO+1000ppmのNO(Nによるバランス)のガスフロー中で試験され(空間速度は60000h-1であった)、温度勾配は30℃/分である。THC、CO、及びNOの変換は、供給ガスの濃度と、触媒の出口でのガスの濃度とを比較することから計算された。OSCは、10体積%のHO+14体積%のCO+333ppmのC+167ppmのC+0.5体積%のCO+0.5体積%のHO+0.5体積%のO+1000ppmのNO(Nによるバランス)のガスフロー中で(空間速度は60000h-1であった)、450℃で試験された。比較触媒E及び触媒Fは、2体積%のO+10体積%のHO(Nによるバランス)の5L/分の流量で、980℃で4時間水熱エージングした。
【0124】
エージングした触媒F及び比較触媒EのHC、CO、及びNOのT50のライトオフ温度及びOSCを、表4に示す。データは、驚くべきことに、本発明の触媒Fが、比較触媒Eと比較して、CO、HC、及びNOについて、それぞれ約23℃、約22.5℃、及び約17.5℃低いT50(T50は、変換率が50%に達したときの温度である)という、著しく改善されたライトオフ性能をもたらすことを示している。一方、触媒FのOSCは、比較触媒Eのものよりも約30%高い。
【0125】
【表4】
【0126】
実施例8:車両試験の手順及び結果
触媒F及び比較触媒Eを、4モードのエージングサイクルで100時間、980℃のピーク温度で、ベンチエージングした。車両排気は、1.6Lターボを装備した商用車に対して、国際調和排出ガス・燃費試験法(Worldwide Light Duty Testing Procedure、WLTP)の下で、レンガをCC位置に設置して行われた。触媒の前後で排出量を測定した。車両上のテールパイプからの希釈バッグ排出データを表5に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
試験車両Aのテールパイプからのバッグデータを表5に示す。本発明の触媒Fは、比較触媒Eと比較して、THC、NMHC、CO及びNOのより低い排出量を明瞭に提示する(それぞれ、19%、20%、29%、及び17%の低減)。
【0129】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、
PGM及びカルボキシレートイオンを含むアニオン性錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
前記アニオン性錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記カルボキシレートイオンが、2つ以上のカルボキシル官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カルボキシレートイオンが、2~6個の炭素原子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルボキシレートイオンが、ヒドロキシル基、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸官能基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボキシレートイオンが、シトレート、マレート、マロネート、スクシネート、タルトレート、グルタレート、タルトロネート、オキサレート、ラクテート及びグリコレートのうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボキシレートイオンが、シトレート及び/又はマロネートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PGMが、ロジウム、パラジウム、白金及びルテニウムのうちの1つ以上から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アニオン性錯体が、前記アニオン性錯体を含む水溶液の形態で提供され、好ましくは、前記水溶液が、pH8以下、より好ましくはpH7以下を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液が、硝酸PGMを含まない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、酸化物、好ましくはAl、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アニオン性錯体を提供することが、
水酸化PGM及び/又は水不溶性PGM塩、好ましくは酢酸PGMを提供することと、
前記水酸化PGM及び/又は前記水不溶性PGM塩をカルボン酸水溶液と接触させることと、任意選択的に、
前記アニオン性錯体を、前記アニオン性錯体を含む水溶液の形態で回収することと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項13】
三元触媒作用のための、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項15】
排気ガスを処理する方法であって、
請求項12又は13に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【国際調査報告】