(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】錯化剤及び還元剤としてロジウム/白金及びタンニン酸を使用する改善されたTWC活性
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20240705BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20240705BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20240705BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240705BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240705BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240705BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B01J37/02 301C
B01J35/45 ZAB
B01J23/46 311A
B01J23/63 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562975
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 GB2022051430
(87)【国際公開番号】W WO2022258961
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ル、ジン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、チンヘ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FB09
4G169FB15
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC07
(57)【要約】
触媒物品を製造する方法であって、ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、PGMが、ロジウム及び/又は白金を含み、ポリフェノールが、エステル官能基を含む、提供することと、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、前記ポリフェノールが、エステル官能基を含み、前記PGMが、ロジウム及び/又は白金を含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリフェノールが、タンニン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリフェノールが、500~4,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリフェノールが、1,000~2,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PGMが、ロジウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PGMが、白金を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PGMが、ロジウム及び白金を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記担体材料が、酸化物、好ましくはAl
2O
3、SiO
2、TiO
2、CeO
2、ZrO
2、CeO
2-ZrO
2、V
2O
5、La
2O
3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア中に存在する、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記担体材料が、0.1~25μm、好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ポリフェノールとPGMとの前記錯体を提供することが、前記スラリー中で前記錯体をその場で合成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーが、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの前記錯体を形成することであって、前記PGM塩が、ロジウム及び/又は白金を含む、形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記担持が、ウォッシュコーティングを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記スラリーが、10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記スラリーが、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含み、前記スラリーが、アルミナを更に含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、前記更なるスラリーが、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、前記更なるスラリーを前記基材上に配置することが、前記担体材料を前記基材上に配置する前に、及び/又は前記担持済み担体材料を加熱して前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成した後に行われる、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択的に、
前記基材に真空を適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させることを含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記乾燥が、
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記加熱が、焼成を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノ粒子が、0.1nm~10nm、好ましくは0.2~5nm、より好ましくは0.2~4nmのD50を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項34】
三元触媒作用のための、請求項33に記載の触媒物品。
【請求項35】
1g/in
3~3g/in
3のウォッシュコート担持量を有する、請求項33又は請求項34に記載の触媒物品。
【請求項36】
前記基材が、ウォールフローフィルタ基材を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項37】
前記基材が、フロースルー基材を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項38】
ロジウムを上に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項33~37のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項39】
パラジウムを上に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項33~37のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項40】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項38又は39に記載の触媒物品。
【請求項41】
2g/ft
3~15g/ft
3のロジウム、好ましくは5g/ft
3~10g/ft
3のロジウムを含む、請求項33~40のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項42】
50g/ft
3~200g/ft
3のパラジウム、好ましくは80g/ft
3~150g/ft
3のパラジウムを含む、請求項38~41のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項43】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項33~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含み、前記スラリーが、アルミナを更に含む、請求項33~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項45】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項33~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
請求項33~45のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項47】
ガソリンエンジンのための、請求項46に記載の排出処理システム。
【請求項48】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項47に記載の排出処理システム。
【請求項49】
排気ガスを処理する方法であって、
請求項33~45のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項50】
前記排気ガスが、ガソリンエンジンからのものである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項50に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒物品を製造する方法、この方法によって得ることができる触媒物品、排出処理システム、及び排気ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、化学量論的空燃比において、ガソリンエンジンの排出ガスからのCO、HC及びNOxを無害な化合物へと同時に転化(約98%)することを可能にする。具体的には、CO及びHCのCO2及び水蒸気(H2O)への酸化は、主にPdによって触媒され、一方、NOxのN2への還元は、主にRhによって触媒される。現代のTWCは、単層、二層又は多層状担体上に堆積された担持白金族金属(以下、「platinum group metal、PGM」)触媒(Pd、Rh、Ptなど)を使用し、担体材料は、高比表面積を有する金属酸化物、主に安定化ガンマアルミナ、及びセリア含有酸素吸蔵材料からなる。担持触媒は、セラミックモノリス基材上にウォッシュコートされる。
【0003】
TWCウォッシュコートスラリーの従来の調製は、一般に、無機PGM前駆体、例えば硝酸塩、酢酸塩、又は塩化物塩の溶液を使用して、初期湿潤(incipient wetness)又は湿式含浸によってPGM元素を酸化物担体上に堆積させることを含む。TWC性能を高めるために、ウォッシュコート配合物に助触媒塩が添加されることも多い。モノリス基材が、調製されたままの状態のスラリーでウォッシュコートされると、続いて、乾燥工程及び焼成工程が行われて、無機塩を分解し、PGM及び助触媒元素を担体材料上に固定させる。担持金属触媒の性能は、金属ナノ粒子の構造及び組成、並びに担体の性質に依存することが知られている。上記の方法を使用して調製された従来のTWCは、多くの場合、触媒活性種の構造(すなわち、平均PGM粒径及び組成、活性成分の位置、並びに金属-担体相互作用)に対して限定的な制御しか提供しない。これは主として、高温焼成プロセス中の金属移動及び粒子成長が原因である。
【0004】
ますます厳しくなる環境規制に伴い、より高い排出削減効率を有するTWCが必要とされている。一方、PGMコストの増加に伴い、TWC性能を備えることなくPGM担持量を低減することが緊急に必要とされている。PGMの粒径及び金属-担体相互作用のより良好な制御は、TWC性能を最適化するのに不可欠である。更に、均一化されたPGM粒径分布は、燃費向上のために使用されるエンジン戦略である燃料遮断プロセス中にしばしば生じるような、オストワルド熟成による金属焼結の程度の低減に寄与し得る。
【0005】
触媒着火は、触媒反応を開始するのに必要な最低温度である。具体的には、着火温度は、転化率が50%に達する温度である。着火温度の低い触媒物品が必要とされている。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号は、自動車用途のための担持金属触媒のポリマー支援合成について記載している。実施例で使用されるポリマーとしては、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、及びポリ(エチレンイミン)が挙げられる。記載された合成手順では、最初に担体(アルミナ粉末)にポリマー含有水溶液を含浸させる。次いで、含浸した担体は、濾過工程及び乾燥工程によって上記溶液から分離される。初期湿潤含浸によって、乾燥された含浸担体にPGM前駆体溶液を更に含浸させる。記載されたプロセスは、特許請求の範囲に記載された担持金属触媒の形成のための複数の工程を含み、これは、商業規模の製造のためのコスト及び困難性を増加させる。米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号は、本技術を応用するために、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンなどの希薄燃焼エンジンが好ましくは使用されることを示している。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、触媒物品を製造する方法に関し、この方法は、ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、ポリフェノールが、エステル官能基を含み、PGMが、ロジウム及び/又は白金を含む、提供することと、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、第1の態様における方法によって得られる触媒物品に関する。
【0009】
本発明はまた、第2の態様における触媒物品を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
STEM Rh元素マッピング像及びRh粒径分布
【
図1a】参照未使用Rh/アルミナ(参照例1)のSTEM Rh元素マッピング像を示す。
【
図1b】タンニン酸変性有りの未使用Rh/アルミナ(実施例1)のSTEM Rh元素マッピング像を示す。
【
図2】参照未使用Rh/アルミナ(参照例1)、及びタンニン酸変性有りの未使用Rh/アルミナ(実施例1)のRh粒径分布を示す。
【
図3】実施例1及び実施例2に記載される、参照触媒及びTA変性触媒のCO化学吸着によって測定されたRh分散を示す。
【
図4a】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のNO転化率の結果を示す図である。
【
図4b】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のCO転化率の結果を示す図である。
【
図4c】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のTHC転化率の結果を示す図である。
【
図5a】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のNO転化率の結果を示す図である。
【
図5b】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のCO転化率の結果を示す図である。
【
図5c】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のTHC転化率の結果を示す図である。
【
図6a】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のNO転化率の結果を示す図である。
【
図6b】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のCO転化率の結果を示す図である。
【
図6c】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験のTHC転化率の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0012】
第1の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法を提供し、この方法は、
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、ポリフェノールが、エステル官能基を含み、PGMが、ロジウム及び/又は白金を含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
担持済み担体材料を基材上に配置することと、
担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0013】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0014】
驚くべきことに、排出処理システムにおいて使用される場合、本発明の方法によって製造された触媒物品は、好ましい触媒活性、特に好ましい三元触媒活性を示し得る。例えば、本触媒物品は、化学量論的ガソリンエンジンの三元触媒排出削減中に、好ましい着火性能、特にNO、CO及び全炭化水素の転化を示し得る。そのような好ましい触媒活性及び着火性能は、同じ/類似のPGM種、担持量、担体、及び構成を有する従来の触媒物品によって示されるものよりも優れている可能性がある。本触媒物品は、従来の触媒物品と比較して、より耐久性があり得る。言い換えれば、そのような好ましい触媒活性は、エージング後であっても示され得る。
【0015】
有利なことに、そのような優れた性能は、従来の触媒物品と比較してより低い担持量のPGMを、触媒性能を損なうことなく使用することを容易にすることができる。これは、そのような金属、特にロジウムの高いコストを考慮すると有益であり得る。更に、そのような優れた性能は、触媒性能を損なうことなく、高コストのPGMをより低コストのPGM又は他の遷移金属で部分的/完全に置換することを容易にすることができる。
【0016】
理論に束縛されるものではないが、そのような優れた性能は、担体材料上のPGMナノ粒子の好ましい粒径分布によって提供され得ることが仮定される。PGM-ポリフェノール錯体形成の間、PGMのイオンはエステル官能基と反応することができ、同じ予測可能な量のPGMイオンが各ポリマー単位構造によって「取り込まれる」。「取り込まれる」PGMの総量は、ポリマーの分子構造/サイズ及びPGM-ポリフェノール配位比によって決定される。次いで、各錯体は、表面官能基(例えば、ヒドロキシル基)又は表面電荷と反応/相互作用して、PGM-ポリフェノール錯体が担体材料表面上に「しっかり固定する」のを可能にすることができる。「しっかり固定された」PGM-ポリフェノール錯体は、ポリマーの立体効果及び担体材料の表面官能基/電荷の利用可能な量に起因して分離され得る。錯体と担体材料官能基との間の相互作用により、従来の方法によって調製された触媒と比較して、担体によるPGM取り込みが増加し得る。理論に束縛されるものではないが、そのような均一な分離は、加熱(焼成)時にPGMナノ粒子のより狭い粒径分布(より均一化された粒径)をもたらすことができ、これは更に、エージング及び/又は燃料カット事象中のPGM粒子の過剰な凝集及び/又は焼結の低減をもたらすことも仮定される。換言すれば、従来の触媒と比べると、本発明の方法を使用することによって、より耐焼結性の高い触媒物品を得ることができる。
【0017】
米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号の方法と比較して、本発明の方法は、より単純でより効率的な「ワンポット」法である。本発明の方法は、担体材料上にポリマー分子を堆積させるための別個の含浸、濾過、及び乾燥工程を必要としない。本発明の方法を使用することによって、添加された各ポリマー分子が相互作用のために利用されるので、ポリマーと担体との相互作用及びPGMとポリマーとの相互作用の発生が増加し得る。対照的に、米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号では、限られた量のポリマーのみが、濾過及び洗浄工程後に担体上に留まることができる。更に、本発明の方法によって調製された触媒物品は、特に、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒として使用され得る。対照的に、米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号の方法によって製造された触媒物品は、希薄燃焼ディーゼル又はガソリンエンジンにおいて特定の用途を有する。
【0018】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態をとり得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムにおいて使用するためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用において使用するためのものであり得る。
【0019】
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することは、典型的には、溶液、例えば、水溶液又はアルコール溶液中で錯体を提供することを含む。ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することは、典型的には、純粋な形態又は溶液の形態の無機PGM前駆体とポリフェノールとを水性媒体中で混合すること、例えば、硝酸PGMとポリフェノールとを水中で混合することを含む。
【0020】
本明細書で使用される「ポリフェノール」という用語は、芳香環上にいくつかのヒドロキシル基を含有するポリマーを包含する。ポリフェノールは、一般に、中程度に水溶性の化合物である。ポリフェノールは、天然又は合成であってもよいが、本発明では、本方法をより環境に優しいものにするために、好ましくは天然に存在するものである。本明細書で使用される「ポリフェノール」という用語は、500~4,000g/molの重量平均分子量、13個以上のヒドロキシル基、及び1,000g/mol当たり5~7個の芳香環を有するポリマーを包含し得る。ポリフェノールは、例えば、フェノール酸(例えば、タンニン酸、コーヒー酸)、フラボノイド(例えば、フラボン、フラボノール、フラバノール、フラバノン、イソフラボン)、スチルベン又はリグニン(亜麻仁及び他の穀類に含まれているフェニルアラニンに由来するポリフェノール)であってもよい。
【0021】
ポリフェノールは、エステル官能基、典型的には、カルボン酸エステル官能基を含む。ポリフェノールは、好ましくは、2つ以上のエステル官能基及び/又はカルボン酸エステル官能基を含む。「エステル官能基」「カルボン酸エステル官能基」という用語は、OR基に結合したカルボキシル基を含む官能基を包含し得る。
【0022】
【0023】
PGMは、ロジウム及び/又は白金を含む。そのような金属は、三元触媒作用を行うのに特に適し得る。加えて、そのような金属は高価であり、このことは、同じ量の金属に対して同様のレベルの触媒活性を提供できることが有利であることを意味する。更に、本発明の方法におけるそのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。PGMは、合金の形態であってもよい。ロジウム及び/又は白金に加えて、PGMは、例えば、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムのうちの1つ以上などの他のPGMを含んでもよい。
【0024】
錯体は、2:1~1:10、好ましくは1:1~1:8、より好ましくは1:2~1:5のPGM原子対エステル基比を有し得る。錯体は、2:1~1:10、好ましくは1:1~1:8、より好ましくは1:2~1:5のロジウム原子対エステル基比を有し得る。錯体は、2:1~1:10、好ましくは1:1~1:8、より好ましくは1:2~1:5の白金原子対エステル基比を有し得る。錯体は、2:1~1:10、好ましくは1:1~1:8、より好ましくは1:2~1:5のロジウム原子と白金原子対エステル基比を有し得る。
【0025】
担体材料は、その上に又はその中に複合体及びナノ粒子を支持することができる任意の材料であってよい。担体材料は、任意の形態をとることができるが、典型的には粉末、より典型的には高表面積粉末の形態である。本発明の方法が、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEMを使用して測定して、例えば、0.1~25μm、より典型的には0.5~5μmのD50を有する粉末の形態となる。そのような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を促進することができる。担体材料はウォッシュコートとして機能してもよい。担体材料は、ウォッシュコートであってもよく、又はウォッシュコートの一部であってもよい。
【0026】
担体材料はまた、三元触媒転化を促進するために、燃料希薄条件及び燃料豊富条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する酸素貯蔵材料として機能してもよい。
【0027】
担体材料への錯体の適用は、典型的には、スラリーを生成するように、溶媒(典型的には水)の存在下で錯体と担体材料とを接触させることを含む。本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶性内容物、例えば、未反応ポリフェノールポリマー、無機PGM及び助触媒前駆体、並びにPGM-ポリマー錯体(担体の外側)、及び(3)不溶性内容物、例えば、ポリマー及び金属前駆体と相互作用するか又は相互作用しない担体粒子、を含んでもよい。スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間、撹拌される。接触時間及び/又は撹拌時間を増加させることにより、担体材料上に担持される錯体の量を増加させることができる。
【0028】
本明細書で使用される「担持済み担体材料」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)担持された及び/又はその中に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)担持されたPGM-ポリフェノール錯体を有する担体材料を包含し得る。錯体は、典型的には、例えば、静電力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって担体に固定される。例えば、酸化物の場合、ポリフェノール中のエステル官能基例えば、カルボン酸エステル官能基)と担体上の表面ヒドロキシル基とは、静電力又は水素結合形成を介して相互作用し得る。
【0029】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えばウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含んでもよい。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なっていてもよい。好適な基材は、当該技術分野において周知である。
【0030】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、当該技術分野で既知の技術を使用して行うことができる。典型的には、担持済み担体材料は、担持済み担体材料のスラリーを特定の成形ツールを使用して基材の入口に所定の量で注ぐことによって基材上に配置される。以下でより詳細に考察されるように、後続の真空及び乾燥工程が、配置工程中に用いられてもよい。担体がフィルタブロックである場合、担持された担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0031】
担持済み担体材料の加熱は、典型的にはオーブン又は炉、より典型的にはベルト又は静電オーブン(static oven)又は炉中で、典型的には一方向からの特定の流れの熱風中で行われる。加熱は、焼成を含み得る。加熱は、乾燥も含み得る。乾燥及び焼成工程は、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了したら、1つの連続的な加熱プログラムを使用して乾燥及び焼成され得る。加熱中、錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。言い換えれば、錯体の配位子、すなわちポリフェノールは、PGMから少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去される。次いで、そのように分離されたPGMの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始めることができる。加熱(焼成)の結果として、基材は、典型的にはポリフェノールを実質的に含まず、より典型的にはポリフェノールを完全に含まない。
【0032】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、TEMによって測定される0.01nm~100nmの直径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート、立方体、円筒形、六角形、又はロッドであってよいが、典型的には球形である。ナノ粒子の最大寸法(すなわち、ナノ粒子が球状である場合には直径)は、TEMによって測定して、典型的には0.5~10nm、より典型的には1~5nmである。
【0033】
加熱工程の後、基材は、典型的には冷却され、より典型的には室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には冷却剤を用いずに、空気中で行う。
【0034】
ポリフェノールは、好ましくはタンニン酸を含む。本明細書中で使用される「タンニン酸」という用語は、タンニン酸を抽出するために使用される植物源に応じて、一分子当たり2~12個の範囲のガロイル部分の数を有するポリガロイルグルコース又はポリガロイルキナ酸エステルの混合物を包含し得る。タンニン酸は、天然フェノール化合物であってもよく、とりわけオーク、ツガ、栗及びマングローブの樹皮、特定のウルシの葉;及び多くの植物の果実から抽出され得る。本明細書で使用される「タンニン酸」という用語は、以下の構造式によって示されるように、中心グルコース環及び10個のガロイル基からなる化合物、すなわち、デカガロイルグルコースを包含し得る。
【0035】
【0036】
そのような化合物は、IUPAC名1,2,3,4,6-ペンタ-O-{3,4-ジヒドロキシ-5-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゾイル}-D-グルコピラノース又は2,3-ジヒドロキシ-5-({[(2R,3R,4S,5R,6R)-3,4,5,6-テトラキス({3,4-ジヒドロキシ-5-[(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)カルボニルオキシ]フェニル}カルボニルオキシ)オキサン-2-イル]メトキシ}カルボニル)フェニル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートを有する。グルコース分子の5個のヒドロキシル基の各々は、ジ没食子酸の分子でエステル化される。
【0037】
タンニン酸は、水素結合又は共有結合を通して金属イオンと配位し得る。PGM-タンニン酸錯体は、ウォッシュコート中で担体、例えば金属酸化物担体上に固定されてもよく、タンニン酸配位子中のカルボン酸エステル官能基、及び担体上の表面ヒドロキシル基は、静電力又は水素結合形成を通して相互作用し得る。
【0038】
タンニン酸は天然に存在するので、PGM錯体を形成するためのタンニン酸の使用は、他の天然に存在しない配位子の使用と比較して、より環境に優しい可能性がある。タンニン酸は、好ましくは210~215℃の範囲の分解点を有する。それはまた、水溶性でもある(1gのタンニン酸が、標準温度及び圧力で0.35mlの水に溶解する)。タンニン酸の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0039】
ポリフェノールは、光散乱によって測定して、好ましくは500~4,000、より好ましくは1,000~2,000g/mol、更により好ましくは1,600~1,800g/molの重量平均分子量Mwを有する。重量平均分子量Mwは、次式:
【0040】
【数1】
(式中、N
iは、分子質量M
iの分子数である)によって決定される。そのような重量平均分子量の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。
【0041】
ポリフェノールは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される500~4,000g/molの数平均分子量Mnを有する。数平均分子量Mwは、次式:
【0042】
【数2】
(式中、先と同様に、N
iは、分子質量M
iの分子数である)によって決定される。そのような数平均分子量の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。
【0043】
PGMは、好ましくはロジウムを含むか、ロジウムから本質的になるか、又はロジウムからなる。ロジウムは特に高価なPGMであり、ポリフェノール、特にタンニン酸と特に好適な錯体を形成する。PGMは、好ましくは白金を含むか、白金から本質的になるか、又は白金からなる。白金は特に高価なPGMであり、ポリフェノール、特にタンニン酸と特に好適な錯体を形成する。
【0044】
好ましい実施形態では、PGMは、ロジウム及び白金を含むか、ロジウム及び白金から本質的になるか、又はロジウム及び白金からなる。本発明の方法におけるそのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。
【0045】
担体材料は、好ましくは酸化物、好ましくはAl2O3(酸化アルミニウム又はアルミナ)、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、V2O5、La2O3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む。酸化物は、金属酸化物であることが好ましい。担体材料は、より好ましくは、アルミナ、更により好ましくはガンマ-アルミナを含む。担体材料は、好ましくはセリア-ジルコニアを含む。担体材料は、好ましくはアルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアは、好ましくはドープされており、より好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、又はナトリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされており、更により好ましくは、ランタン、ネオジム又はイットリウムの酸化物でドープされている。そのようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に、0.001重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する。
【0046】
担体材料は、好ましくは0.1~25μm、より好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である。
【0047】
担持済み担体材料は、好ましくはスラリーの形態で基材上に配置される。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒変換中の圧力降下を最小化するために、特に有効である。
【0048】
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することは、好ましくは、スラリー中で錯体をその場で合成することを含む。
【0049】
スラリーは、好ましくは、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの錯体を形成することであって、PGM塩が、ロジウム及び/又は白金を含む、形成することと、
担体材料を水溶液と接触させることによって、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される。
【0050】
そのような「ワンポット」調製法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。この方法はまた、ポリマーの利用を最大化することができる。
【0051】
換言すれば、ポリフェノールとPGMとの錯体を提供すること、担体材料を提供すること、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成すること、及び担持済み担体材料を基材上に配置することは、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの錯体を形成することであって、PGM塩が、ロジウム及び/又は白金を含む、形成することと、
担体材料を水溶液に添加して、担持済み担体材料のスラリーを形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、スラリーに添加することと、
スラリーを基材上に配置することと、を含んでもよい。
【0052】
担持は、ウォッシュコーティングを含んでもよい。
【0053】
スラリーは、好ましくは10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する。そのような固形物量は、担持された担体材料を基材上に配置するのに好適なスラリーレオロジーを可能にし得る。例えば、基材がハニカムモノリスである場合、そのような固体内容物は、基材の内壁上へのウォッシュコートの薄層の堆積を可能にし得る。基材がウォールフローフィルタである場合、そのような固形物量は、スラリーがウォールフローフィルタのチャネルに入ることを可能にすることができ、スラリーがウォールフローフィルタの壁に入ることを可能にすることができる。
【0054】
好ましくは、スラリーは、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む。
【0055】
他の助触媒としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。助触媒塩は、そのような元素の塩であり得る。
【0056】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中において個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野で周知である。
【0057】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中の不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。それは、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的に役立つ。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート焼成中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、グラクトマナガム(glactomanna gum)、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0058】
本明細書に記載される「還元剤」という用語は、ウォッシュコート調製中にPGMカチオンをその金属状態の粒子にその場で還元することができる化合物を包含し得る。
【0059】
PGMの還元剤として作用しかつ/又は後の焼成工程中に還元環境を作り出す有機酸を添加することができる。好適な有機酸の例としては、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、アスコルビン酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0060】
好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はアルミナを含み、スラリーはセリア-ジルコニアを更に含む。別の好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はセリア-ジルコニアを含み、スラリーはアルミナを更に含む。別の好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はアルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0061】
本方法は、好ましくは、更なるスラリーを基材上に配置することを更に含み、更なるスラリーは、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、更なるスラリーを基材上に配置することは、担体材料を基材上に配置する前に及び/又は担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成した後に行われる。これにより、異なるウォッシュコートの複数の層、例えば、とりわけアルミナ上に担持されたロジウムナノ粒子を含有する底部ウォッシュコート、及びとりわけアルミナ上に担持されたロジウムナノ粒子を含有する上部ウォッシュコートを有する触媒物品を得ることができる。そのような複数の層の更なる例については、以下でより詳細に論じられる。
【0062】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること(例えば、スラリーを基材の入口に注入すること)、及び任意選択で、
基材に真空を適用すること、及び/又は
基材上のスラリーを乾燥させることを含む。
【0063】
これにより、基材上の担持済み担体材料の好ましい分布を得ることができる。
【0064】
乾燥は、好ましくは以下のように行われる:
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間。
【0065】
基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既にその上に担持された1つ又はウォッシュコートを有し得る。そのような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0066】
基材は、好ましくはコーディエライトを含む。コーディエライト基材は、触媒物品における使用に特に適している。
【0067】
基材は、好ましくは、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態である。
【0068】
加熱は、好ましくは以下のように行われる:
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる。
【0069】
より低い温度及び/又はより短い加熱時間は、錯体の不十分な分解をもたらす場合がある、及び/又は高レベルのポリフェノールが基材中に残る場合がある。より高い温度及び/又はより長い加熱時間は、おそらく焼結に起因して、好ましくない大きな粒径を有するPGMの粒子をもたらす場合がある。より高い温度及びより長い加熱時間はまた、触媒物品への損傷をもたらす場合がある。
【0070】
加熱は、好ましくは焼成を含む。本明細書で使用される「焼成」という用語は、熱分解を引き起こすための空気又は酸素の非存在下又は限定された供給下での熱処理プロセスを包含し得る。
【0071】
ナノ粒子は、好ましくは0.1nm~10nm、より好ましくは0.2~5nm、更により好ましくは0.2~4nmのD50を有する。D50は、TEMによって測定され得る。そのような粒径は、好ましいレベルの触媒活性をもたらすことができる。
【0072】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品を提供し、触媒物品は、排出処理システムにおいて使用するためのものである。
【0073】
従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載される方法によって得ることができる触媒物品は、有利に小さい粒径及び好ましい粒径分布(例えば、0.2~4nmのD50)を有するPGM粒子を含有することができる。更に、従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品は、基材全体にわたってPGM粒子のより均一な分散を示すことができる。
【0074】
排出処理システムにおいて使用される場合、触媒物品は、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒転化中に、特にNO、CO及び全炭化水素に対して好ましい着火性能を示すことができる。
【0075】
触媒は、好ましくは、三元触媒のためのものである。
【0076】
触媒物品は、1g/in3~3g/in3のウォッシュコート担持量を有し得る。そのような触媒物品は、従来の触媒物品と比較して同様の又はより高い触媒活性を示し得るが、使用されるPGMのレベルがより低いことを考慮すると、より低コストであり得る。
【0077】
基材は、好ましくは、ウォールフローフィルタ基材又はフロースルー基材を含む。
【0078】
好ましい実施形態では、触媒物品は、ロジウムをその上に有する担体材料の最下層と、パラジウムをその上に有する担体材料の最上層とを含む。別の好ましい実施形態では、触媒物品は、パラジウムをその上に有する担体材料の最下層と、ロジウムをその上に有する担体材料の最上層とを含む。本明細書で使用される「最下層」という用語は、基材(すなわち、基材壁)に最も近いか又はそれと接触している層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得る。本明細書で使用される「最上層」という用語は、最下層よりも基材(すなわち、基材壁)からより離れた層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得、最下層の上に位置し得る。
【0079】
そのような好ましい実施形態では、担体材料は、好ましくは、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0080】
触媒物品は、特にそのような好ましい実施形態では、好ましくは2g/ft3~15g/ft3のロジウム、より好ましくは5g/ft3~10g/ft3のロジウムを含む。有利なことに、そのようなロジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0081】
触媒物品は、特にそのような好ましい実施形態では、好ましくは50g/ft3~200g/ft3のパラジウム、より好ましくは80g/ft3~150g/ft3のパラジウムを含む。有利なことに、そのようなパラジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0082】
好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、アルミナを含み、スラリーは、セリア-ジルコニアを更に含む。別の好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、セリア-ジルコニアを含み、スラリーは、アルミナを更に含む。別の好ましい実施形態では、担持担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0083】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0084】
排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0085】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0086】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法を提供し、この方法は、
本明細書に記載される触媒物品を提供することと、
触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む。
【0087】
排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからの排気ガスである。触媒物品は、そのような排気ガスを処理するのに特に好適である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0088】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0089】
触媒物品の製造
多数の触媒物品を以下の実施例に従って調製した。
【0090】
参照例1:0.3%Rh/ガンマアルミナ(硝酸Rhを含む)ウォッシュコート触媒
1.必要量のRhN(5.2g/ft3)及び水を加えて溶解し、1時間混合する。
2.粉砕されたガンマアルミナ(1g/in3)スラリーを添加し、1時間混合する。
3.DI水を添加して固形分を約20%に調整する。
4.水中の活性化4重量%増粘剤を添加して、バッチ固形分を30%に調整する。均質なゲルが形成されるまで、VWRボルテックスミキサーで激しく混合する。
5.真空引き下で入口から1.2インチの用量(does)を目標として1×3インチのコアをコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
6.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0091】
実施例1:0.3%Rh/ガンマアルミナ(タンニン酸によって変性されたRhを有する)ウォッシュコート触媒
1.必要量のRhN(5.2g/ft3)及び水を加えて溶解し、1時間混合する。
2.TA:Rh質量比2.1を目標として、必要量のタンニン酸(Sigma Aldrich社製品#403040)を添加する。1時間混合する。
3.粉砕したガンマアルミナスラリーを加え、1時間混合する。
4.DI水を添加して固形分を約20%に調整する。
5.水中の活性化4重量%増粘剤(1g/in3)を添加して、バッチ固形分を30%に調整する。均質なゲルが形成されるまで、VWRボルテックスミキサーで激しく混合する。
6.真空引き下で入口から1.2インチの用量(does)を目標として1×3インチのコアをコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
7.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0092】
参照例2:Rh-TWC(硝酸Rhを含む)ウォッシュコート触媒
1.粉砕されたガンマアルミナ担体のスラリーを調製する(0.6g/in3)。
2.適切な量の硝酸ロジウム溶液を添加し(Rh担持量4.8g/ft3)、均質になるまで混合する。
3.pH7.0~7.5に達するまで水酸化アンモニウム溶液を滴下する。ウォッシュコートはアンモニウムを添加すると増粘する。
4.ロジウムがウォッシュコート全体にわたって沈殿するように、15~20分間混合する。
5.セリア-ジルコニア担体((0.65g/in3)を添加し、均質になるまで30分間混合する。
6.結合剤材料(0.03g/in3)を加え、30分間混合する。
7.DI水を添加して固形分を約23%に調整する。
8.水ベースで約1.0~1.2重量%を目標として増粘剤を添加する。少なくとも6時間混合する。
9.コーディエライト基材を、真空引き下で入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
10.ウォッシュコートされたレンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成する。
【0093】
実施例2:Rh-TWC(タンニン酸によって変性されたRhを有する)ウォッシュコート触媒。
1.硝酸ロジウムのスラリーを調製する(Rh担持量4.8g/ft3)。
2.TA:Rh質量比2.1を目標として、必要量のタンニン酸(Sigma Aldrich社製品#403040)を添加する。1時間混合する。
3.粉砕されたガンマアルミナ担体(0.6g/in3)スラリーを添加し、1時間混合する。
4.セリア-ジルコニア担体(0.65g/in3)を添加し、30分間混合する。
5.結合剤材料を加え(0.03g/in3)、30分間混合する。
6.DI水を添加して固形分を約23%に調整する。
7.水ベースで約1.0~1.2重量%を目標として増粘剤を添加する。少なくとも6時間混合する。
8.コーディエライト基材を、真空引き下で入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
9.ウォッシュコートされたレンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成する。
【0094】
参照例3:Rh-Pt二元金属(硝酸Ptを含む)TWCウォッシュコート触媒。
1.セリア-ジルコニア担体(1.1g/in3)を調製し、予定した水の少なくとも50%を添加する。
2.硝酸Rh(Rh担持量3.6g/ft3)を上記セリア-ジルコニアスラリーに添加し、少なくとも15分間混合する。
3.水酸化アンモニウムを添加してpHを6超に調整し、少なくとも1時間混合する。
4.ガンマアルミナ(0.4g/in3)スラリー及び硝酸白金(Pt担持量1.8g/ft3)を加え、少なくとも15分間混合する。
5.アンモニアでpHを5.8超に調整する。少なくとも30分間混合する。
6.結合剤を添加し(0.03g/in3)、少なくとも30分間混合する。
7.ウォッシュコートを目標固体%(約25%を提案)に調整し、増粘剤(約0.8~1.0%を提案)を添加する。一晩混合する。
8.真空下で入口から50~55%をコーティングし、空気硬化で乾燥させ、次いで出口から50~55%のDLをコーティングする。
9.静電オーブン中で500℃/30分でレンガを焼成する。
【0095】
実施例3:Rh-Pt二元金属TWC(タンニン酸によって変性されたPtを有する)ウォッシュコート触媒
1.Rh及びPtの両方と錯体を形成するのに必要な、必要量のタンニン酸(Sigma Aldrich社製品#403040)を含む溶液を調製する。TA:Rh質量比2.1を目標とする。TA:Pt質量比0.7を目標とする。
2.硝酸Rh(Rh担持量3.8g/ft3)を添加し、1時間混合する。
3.セリア-ジルコニア担体(1.1g/in3)スラリーを添加し、1時間混合する。
4.ガンマアルミナ(0.4g/in3)スラリー及び硝酸白金(Pt担持量1.8g/ft3)を加え、1時間混合する。
5.結合剤を添加し(0.03g/in3)、少なくとも30分間混合する。
6.ウォッシュコートを目標固体%(約25%を提案)に調整し、増粘剤(約0.8~1.0%を提案)を添加する。一晩混合する。
7.真空下で入口から50~55%をコーティングし、空気硬化で乾燥させ、次いで出口から50~55%のDLをコーティングする。
8.静電オーブン中で500℃/30分でレンガを焼成する。
【0096】
STEM Rh元素マッピング像及びRh粒径分布
図1a及び
図1bは、参照未使用Rh/アルミナ(参照例1)、及びタンニン酸変性有りの未使用Rh/アルミナ(実施例1)のSTEM Rh元素マッピング像を示す。
図2は、参照未使用Rh/アルミナ(参照例1)、及びタンニン酸変性有りの未使用Rh/アルミナ(実施例1)のRh粒径分布を示す。参照試料と比較して、タンニン酸変性試料は、より狭い分布のより小さいRh粒径を示す。
【0097】
CO化学吸着
図3は、実施例1及び実施例2に記載される、参照触媒及びTA変性触媒のCO化学吸着によって測定されたRh分散を示す。両方の実施例では、TA変性は、参照触媒よりも高い未使用Rh分散をもたらした。
【0098】
摂動着火性能
エージング後、実施例1及び参照例1の触媒物品を、模擬ガソリン排気条件下で、TWC転化率に対する摂動着火性能について試験した。(エージング条件:1000℃/レドックス/40時間。反応条件:リッチ前処理、150~700℃、λ=0.96~1.04、GHSV=200,000時間
-1。)NO、CO、及びTHC転化についての結果を
図4a~4cに示す。各場合において、TWC活性は、参照例1よりも実施例1の方が大きかった。実施例1のNO
x、CO及びTHCの最大T
50低減は、それぞれ19℃、26℃及び40℃であった。
【0099】
エージング後、実施例2及び参照例2の触媒物品を、TWC転化率に対する摂動着火性能について試験した。(エージング条件:1000℃/レドックス/40時間。反応条件:リッチ前処理、150~700℃、λ=0.96~1.04、GHSV=200,000時間
-1。)NO、CO、及びTHC転化についての結果を
図5a~5cに示す。TWC活性は、参照例2よりも実施例2の方が大きかった。実施例2のNOx、CO及びTHCの最大T
50低減は、それぞれ10℃、14℃及び15℃であった。
【0100】
エージング後、実施例3及び参照例3の触媒物品を、TWC転化率に対する摂動着火性能について試験した。(エージング条件:1050℃/空気中10% H
2O/4時間。反応条件:リッチ前処理、150~700℃、λ=0.96~1.04、GHSV=200,000時間
-1。)NO、CO、及びTHC転化についての結果を
図6a~6cに示す。TWC活性は、参照例3よりも実施例3の方が大きかった。実施例3のNO
x、CO及びTHCの最大T
90低減は、それぞれ22℃、12℃及び45℃であった。
【0101】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、前記ポリフェノールが、エステル官能基を含み、前記PGMが、ロジウム及び/又は白金を含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリフェノールが、タンニン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PGMが、ロジウムを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記PGMが、白金を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリーが、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの前記錯体を形成することであって、前記PGM塩が、ロジウム及び/又は白金を含む、形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択的に、
前記基材に真空を適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させることを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項15】
ロジウムを上に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
パラジウムを上に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【国際調査報告】