(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】モータ過負荷保護方法、モータコントローラ、自動車及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H02P 29/02 20160101AFI20240705BHJP
【FI】
H02P29/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571808
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2022099001
(87)【国際公開番号】W WO2023050892
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111152401.5
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100216150
【氏名又は名称】香山 良樹
(72)【発明者】
【氏名】王春生
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼伯良
(72)【発明者】
【氏名】熊▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】秦涛
(72)【発明者】
【氏名】曹安
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB08
5H501GG03
5H501GG05
5H501HA09
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501JJ22
5H501JJ25
5H501LL22
5H501MM04
(57)【要約】
モータ過負荷保護方法、モータコントローラ、自動車及び記憶媒体を開示し、方法は、モータの現在相電流の実効値を収集するステップ(S101)と、現在相電流の実効値を時間積分して、第1積分値を取得するステップ(S102)と、第1閾値を取得するステップ(S103)と、第1閾値及び第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップ(S104)と、過負荷が存在すると、モータの動作の目標制限電流を決定し、目標制限電流に基づいてモータの動作を制御するステップ(S105)と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの現在相電流の実効値を収集するステップと、
前記現在相電流の実効値を時間積分して、第1積分値を取得するステップと、
第1閾値を取得するステップと、
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップと、
過負荷が存在すると、前記モータの動作の目標制限電流を決定し、前記目標制限電流に基づいてモータの動作を制御するステップと、
を含む、
モータ過負荷保護方法。
【請求項2】
第1閾値を取得するステップは、
現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップと、
現在電流周波数を取得し、前記現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較するステップと、
前記現在電流周波数が前記電流周波数閾値よりも小さいと、目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を補正して、前記第1閾値を取得するステップと、
前記現在電流周波数が前記電流周波数閾値以上であると、前記第2閾値を前記第1閾値として決定するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項3】
目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を補正して、前記第1閾値を取得するステップは、閾値補正式を用いて、前記目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を処理して、前記第1閾値を取得するステップを含み、
前記閾値補正式は、V1=K*V2であり、V1が第1閾値であり、V2が第2閾値であり、Kが目標補正係数である、
請求項2に記載のモータ過負荷保護止方法。
【請求項4】
第1閾値を取得するステップは、
前記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップと、
現在モータ回転速度を取得し、前記現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較するステップと、
前記現在モータ回転速度が前記過負荷回転速度閾値よりも小さいと、過負荷積分ゲイン閾値を取得し、前記第2閾値及び前記過負荷積分ゲイン閾値に基づいて、第1閾値を取得するステップと、
前記現在モータ回転速度が前記過負荷回転速度閾値以下であると、前記第2閾値を第1閾値として決定するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項5】
前記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップの前に、
試験出力電流及び前記試験出力電流に対応する目標動作時間を取得するステップと、
所定の定数及び前記目標動作時間に基づいて、前記試験出力電流に対応する定格パラメータを決定するステップと、
前記定格パラメータを時間積分して、前記試験出力電流に対応する定格閾値を取得するステップと、
前記試験出力電流、前記目標動作時間、前記定格パラメータ及び前記定格閾値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルを形成するステップと、
をさらに含む、
請求項2又は4に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項6】
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップは、
前記第1積分値と第1閾値とを比較するステップと、
前記第1積分値が前記第1閾値よりも大きいと、過負荷が存在すると認定するステップと、
前記第1積分値が前記第1閾値以下であると、過負荷が存在しないと認定するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項7】
前記モータの動作の目標制限電流を決定するステップは、
現在過負荷係数を取得するステップと、
前記現在過負荷係数を用いて前記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項8】
前記現在過負荷係数を用いて前記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップは、制限電流計算式を用いて、現在過負荷係数及び前記現在相電流の実効値に基づいて計算して、目標制限電流を取得するステップを含み、
前記制限電流計算式は、It=(Ic*Kco)/Rであり、式中、Itが前記目標制限電流であり、Icが前記現在相電流の実効値であり、Kcoが現在過負荷係数であり、Rが定数である、
請求項7に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項9】
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップの後、
現在過負荷係数を取得するステップと、
過負荷が存在すると、過負荷係数減少ステップ幅を取得し、過負荷保護周期ごとに、前記過負荷係数減少ステップ幅を用いて前記現在過負荷係数を減少させて、更新過負荷係数を取得するステップと、
過負荷が存在しないと、過負荷係数増加ステップ幅を取得し、過負荷回復周期ごとに、前記過負荷係数増加ステップ幅を用いて前記現在過負荷係数を増加させて、更新過負荷係数を取得するステップと、
前記更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップと、
をさらに含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項10】
過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップは、減少ステップ幅計算式を用いて、前記現在相電流の実効値を処理して、過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップを含み、
前記減少ステップ幅計算式は、Kmin=A*(Ic/Ip)+Bであり、式中、Kminが過負荷係数減少ステップ幅であり、Icが前記現在相電流の実効値であり、Ipが定格出力電流であり、A及びBが定数である、
請求項9に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項11】
前記更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップは、
過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値を取得するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数下限値よりも小さいと、前記過負荷係数下限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数上限値よりも大きいと、前記過負荷係数上限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数下限値以上であり、かつ前記更新過負荷係数が前記過負荷係数上限値以下であると、前記更新過負荷係数を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
を含む、
請求項9に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項12】
メモリと、
プロセッサと、
前記メモリに記憶され、かつ前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、を含み、
前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する場合に請求項1~11のいずれか一項に記載のモータ過負荷保護方法を実現する、
モータコントローラ。
【請求項13】
モータと、
請求項12に記載のモータコントローラと、
を含む、
自動車。
【請求項14】
プロセッサにより実行されると、請求項1~11のいずれか一項に記載のモータ過負荷保護方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されている、
不揮発性コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、出願番号202111152401.5、出願日2021年9月29日の中国特許出願に基づくものであり、かつその優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、モータ過負荷保護方法、モータコントローラ、自動車及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の自動車のモータ駆動システムのモータ過負荷保護手段は、一般的に、モータ駆動システムの実際の温度が温度限界に達するか否かを検出して、過負荷保護を行う必要があるか否かを決定するという第1種の手段と、モータに流れる電力を監視して、電力に基づいて過負荷保護を実現するという第2種の手段とがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、モータ過負荷保護方法、モータコントローラ、自動車及び記憶媒体を提供する。
【0005】
モータ過負荷保護方法は、
モータの現在相電流の実効値を収集するステップと、
前記現在相電流の実効値を時間積分して、第1積分値を取得するステップと、
第1閾値を取得するステップと、
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップと、
過負荷が存在すると、前記モータの動作の目標制限電流を決定し、前記目標制限電流に基づいてモータの動作を制御するステップと、を含む。
【0006】
本開示の一実施例において、第1閾値を取得するステップは、
現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップと、
現在電流周波数を取得し、前記現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較するステップと、
前記現在電流周波数が前記電流周波数閾値よりも小さいと、目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を補正して、前記第1閾値を取得するステップと、
前記現在電流周波数が前記電流周波数閾値以上であると、前記第2閾値を前記第1閾値として決定するステップと、を含む。
【0007】
本開示の一実施例において、目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を補正して、前記第1閾値を取得するステップは、
閾値補正式を用いて、前記目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を処理して、前記第1閾値を取得するステップを含み、
前記閾値補正式は、V1=K*V2であり、V1が第1閾値であり、V2が第2閾値であり、Kが目標補正係数である。
【0008】
本開示の一実施例において、第1閾値を取得するステップは、
前記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップと、
現在モータ回転速度を取得し、前記現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較するステップと、
前記現在モータ回転速度が前記過負荷回転速度閾値よりも小さいと、過負荷積分ゲイン閾値を取得し、前記第2閾値と前記過負荷積分ゲイン閾値に基づいて、第1閾値を取得するステップと、
前記現在モータ回転速度が前記過負荷回転速度閾値以下であると、前記第2閾値を第1閾値として決定するステップと、を含む。
【0009】
本開示の一実施例において、前記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップの前に、前記モータ過負荷保護方法は、
試験出力電流及び前記試験出力電流に対応する目標動作時間を取得するステップと、
所定の定数及び前記目標動作時間に基づいて、前記試験出力電流に対応する定格パラメータを決定するステップと、
前記定格パラメータを時間積分して、前記試験出力電流に対応する定格閾値を取得するステップと、
前記試験出力電流、前記目標動作時間、前記定格パラメータ及び前記定格閾値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルを形成するステップと、をさらに含む。
【0010】
本開示の一実施例において、前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップは、
前記第1積分値と第1閾値とを比較するステップと、
前記第1積分値が前記第1閾値よりも大きいと、過負荷が存在すると認定するステップと、
前記第1積分値が前記第1閾値以下であると、過負荷が存在しないと認定するステップと、を含む。
【0011】
本開示の一実施例において、前記モータの動作の目標制限電流を決定するステップは、
現在過負荷係数を取得するステップと、
前記現在過負荷係数を用いて前記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップと、を含む。
【0012】
本開示の一実施例において、前記現在過負荷係数を用いて前記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップは、
制限電流計算式を用いて、現在過負荷係数及び前記現在相電流の実効値に基づいて計算して、目標制限電流を取得するステップを含み、
前記制限電流計算式は、It=(Ic*Kco)/Rであり、式中、Itが前記目標制限電流であり、Icが前記現在相電流の実効値であり、Kcoが現在過負荷係数であり、Rが定数である。
【0013】
本開示の一実施例において、前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップの後、前記モータ過負荷保護方法は、
現在過負荷係数を取得するステップと、
過負荷が存在すると、過負荷係数減少ステップ幅を取得し、過負荷保護周期ごとに、前記過負荷係数減少ステップ幅を用いて前記現在過負荷係数を減少させて、更新過負荷係数を取得するステップと、
過負荷が存在しないと、過負荷係数増加ステップ幅を取得し、過負荷回復周期ごとに、前記過負荷係数増加ステップ幅を用いて前記現在過負荷係数を増加させて、更新過負荷係数を取得するステップと、
前記更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップと、をさらに含む。
【0014】
本開示の一実施例において、過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップは、
減少ステップ幅計算式を用いて、前記現在相電流の実効値を処理して、過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップを含み、
前記減少ステップ幅計算式は、Kmin=A*(Ic/Ip)+Bであり、式中、Kminが過負荷係数減少ステップ幅であり、Icが前記現在相電流の実効値であり、Ipが定格出力電流であり、A及びBが定数である。
【0015】
本開示の一実施例において、前記更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップは、
過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値を取得するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数下限値よりも小さいと、前記過負荷係数下限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数上限値よりも大きいと、前記過負荷係数上限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数下限値以上であり、かつ前記更新過負荷係数が前記過負荷係数上限値以下であると、前記更新過負荷係数を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、を含む。
【0016】
モータコントローラは、メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶され、かつ前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、を含み、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する場合に上記モータ過負荷保護方法を実現する。
【0017】
自動車は、モータと、上記モータコントローラと、を含む。
【0018】
コンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサにより実行されると、上記モータ過負荷保護方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されている。
【0019】
本願の1つ以上の実施例の詳細は、以下の図面及び説明において示される。本願の他の特徴及び利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の実施例の技術手段をより明確に説明するために、以下、本開示の実施例の説明に必要な図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明される図面は、本開示のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働をしない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0021】
【
図1】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法のフローチャートである。
【
図2】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法の別のフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法の次に別のフローチャートである。
【
図4】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法のまた別のフローチャートである。
【
図5】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法のさらに別のフローチャートである。
【
図6】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法のさらにまた別のフローチャートである。
【
図7】本開示の一実施例におけるモータ過負荷保護方法の次にさらにまた別のフローチャートである。
【
図8】本開示の一実施例におけるモータコントローラの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
背景技術における第1種の手段では、過負荷保護を行う場合にモータコントローラの電流又は電力などの要因を考慮せず、温度限界のみを考慮するため、モータ駆動システムは、大きい電力で長期間動作したり、電流が安定しない動作状況及び他のハードウェアの異常により電流が大きくなる動作状況で動作したりしやすく、モータコントローラの内部のIGBTモジュール又は他のモジュールの損傷を引き起こす。第2種の手段では、過負荷保護を行う場合に電力のみを考慮するため、車両の加速又は回転の段階において、回転速度が激しく変動することにより、電力計算に偏差が生じて誤判定して、過負荷保護をトリガーして動力遮断を引き起こし、運転安全上のリスクが大きく、ひいては運転者の生命を脅かす。
【0023】
以下、本開示の実施例における図面を参照しながら、本開示の実施例における技術手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、本開示の実施例の一部であり、全てではない。本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる他の全ての実施例は、いずれも本開示の保護範囲に属するものである。
【0024】
本開示の実施例に係るモータ過負荷保護方法は、自動車のモータコントローラに適用可能であり、モータの動作プロセスに収集された実際の電流に基づいて過負荷保護を行って、モータ駆動システムの効果的な保護を実現することができ、モータコントローラの内部デバイスの損傷を回避するだけでなく、過負荷の誤判定により過負荷保護をトリガーして、自動車の正常走行に影響を与えることを効果的に防止することができる。
【0025】
一実施例に係るモータ過負荷保護方法は、
図1に示すように、モータコントローラに適用されることを例として説明すると、
モータの現在相電流の実効値を収集するステップS101と、
現在相電流の実効値を時間積分して、第1積分値を取得するステップS102と、
第1閾値を取得するステップS103と、
第1閾値及び第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップS104と、
過負荷が存在すると、上記モータの動作の目標制限電流を決定し、目標制限電流に基づいてモータの動作を制御するステップS105と、を含む。
【0026】
現在相電流の実効値は、リアルタイムに収集して計算された相電流の実効値である。
【0027】
一例として、ステップS101では、モータコントローラは、モータに対応する3つのモータ三相電流をリアルタイムに収集して、3つのモータ三相電流に平均値計算を行って、現在相電流の実効値を取得してもよい。該モータ三相電流は、3本の導線を流れ、各本の導線を他の2本の回路として、3つの成分の位相差を順に周期の1/3にするか又は位相角を120°にする電流である。モータコントローラは、モータ電流ピーク値をリアルタイムに収集し、モータ電流ピーク値に基づいて現在相電流の実効値を計算して決定してもよく、例えば、モータ電流ピーク値を
【数1】
で、除算する。
【0028】
一例として、ステップS102では、モータコントローラは、システムの現在時刻に対応する現在相電流の実効値を取得した後、システムの現在時間の前の特定の時間範囲の全ての現在相電流の実効値を時間積分して、第1積分値を取得してもよい。該第1積分値は、システムの現在時刻にリアルタイムに計算された電流時間積分値である。例えば、システムの現在時刻がT1であり、特定の時間範囲がΔTである場合、[T1-ΔT,T1]という特定の時間範囲内で収集された全ての現在相電流の実効値を時間積分して処理し、第1積分値をリアルタイムに計算し、該第1積分値は、モータの特定の時間範囲内の過負荷の程度を効果的に反映することができる。
【0029】
第1閾値は、予め設定された、過負荷判定条件を満たすと認定された値に達するか否かを評価するための閾値である。
【0030】
一例として、ステップS103では、モータコントローラは、第1積分値を取得した後、該現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、電流時間積分閾値テーブルから、現在相電流の実効値にマッチングする第2閾値を取得し、第2閾値を過負荷検出用の第1閾値として直接決定してもよく、車両の実際の走行状況に応じて、第2閾値に補正処理を行って、第1閾値を取得してもよい。
【0031】
電流時間積分閾値テーブルは、予め記憶された、異なる出力電流と特定の閾値との対応関係を反映するデータテーブルである。第2閾値は、現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして直接決定されたものである。第1閾値は、第2閾値に基づいて直接決定されるか又は補正して決定されたものである。理解できるように、電流時間積分閾値テーブルが車載メモリに予め記憶されたデータテーブルであるため、現在相電流の実効値に基づいて、テーブルルックアップ操作を行って、第1閾値を迅速に決定することができる。
【0032】
一例として、ステップS104では、モータコントローラは、第1積分値及び第1閾値を取得した後、過負荷判定条件に基づいて形成された過負荷検出プログラムを呼び出し、第1積分値及び第1閾値を過負荷検出プログラムの入力パラメータとして、該過負荷検出プログラムを実行し、第1積分値及び第1閾値が過負荷判定条件を満たすか否かを判断して、第1積分値及び第1閾値に基づく過負荷検出を実現する。該過負荷判定条件は、予め設定された、モータが過負荷であるか否かを評価するための判定条件である。過負荷検出プログラムは、該過負荷判定条件に基づいて作成されたコンピュータプログラムである。過負荷検出結果は、第1積分値及び第1閾値が過負荷判定条件を満たすか否かを検出するための検出結果である。本例において、該過負荷検出結果は、過負荷が存在することと過負荷が存在しないこととの2種があり、ここで、過負荷が存在することは、第1積分値及び第1閾値に基づいて導出した、モータに過負荷現象が存在するという検出結果であり、それに応じて、過負荷が存在しないことは、第1積分値及び第1閾値に基づいて導出した、モータに過負荷現象が存在しないという検出結果である。
【0033】
理解できるように、ベンチテストにより決定された電流時間積分閾値テーブルをルックアップし計算することにより、第1閾値を迅速かつ正確に決定することができ、該第1閾値は、ベンチテストにより決定されたモータの過負荷能力に基づいて決定された値であり、該第1閾値を用いて第1積分値に過負荷検出を行うと、過負荷検出の正確性を保証することに役立ち、過負荷検出の誤判定を効果的に防止することにより、誤判定に起因する動力遮断による運転安全上のリスクを回避することができる。
【0034】
目標制限電流は、現在相電流の実効値よりも小さいが、モータの正常動作を維持できる電流である。
【0035】
一例として、ステップS105では、モータコントローラは、過負荷検出結果が、過負荷が存在することである場合、モータの動作の目標制限電流を決定し、該目標制限電流に基づいてモータの動作を制御する必要があり、目標制限電流が、現在相電流の実効値よりも小さいが、モータの正常動作を維持できる電流であるため、モータコントローラは、該目標制限電流に基づいて電力を低下させて動作するようにモータを制御することができ、過負荷保護の目的を達成することができる一方で、モータの正常回転を維持する電流を提供することができ、自動車を正常に動作させることができ、過負荷保護のトリガーによる車両の動力遮断又は他の異常動作状況を回避して、車両運転の安全性を確保することができる。
【0036】
本例において、モータコントローラは、過負荷保護ポリシーを実行するプロセスにおいて少なくとも2つの過負荷保護周期を決定する必要があり、各過負荷保護周期が1つの目標制限電流に対応し、かつ少なくとも2つの過負荷保護周期に対応する目標制限電流が徐々に減少することにより、各過負荷保護周期内で、目標制限電流に基づいて動作するようにモータを駆動することを実現し、モータに過負荷が存在する場合、その目標制限電流を徐々に減少させることを実現し、過負荷保護を実現する前提の下で、車両の動力の瞬間遮断又は他の異常動作状況を回避し、さらに車両運転の安全性を保証し、そして、少なくとも2つの過負荷保護周期内でその目標制限電流を徐々に減少させて、モータの過負荷時の不感電力低下を実現し、車両の運転体験の向上に役立つ。過負荷保護周期は、予め設定された、過負荷保護を実現するための周期である。
【0037】
一例として、ステップS104の後に、すなわち、第1閾値を用いて第1積分値に過負荷検出を行って、過負荷検出結果を取得するステップの後、モータ過負荷保護方法は、過負荷検出結果が、過負荷が存在しないことであると、現在相電流の実効値に基づいてモータの動作を制御するステップをさらに含む。
【0038】
本例において、モータコントローラは、過負荷検出結果が、過負荷が存在しないことである場合、該現在相電流の実効値に基づいてモータの動作を制御し続けることにより、自動車が正常に走行でき、過負荷によるモータコントローラの内部デバイスの損傷がないことを確保する。
【0039】
本実施例において、現在相電流の実効値に基づいて、第1積分値を迅速かつ正確に決定し、該第1積分値は、モータの現在の過負荷程度を正確に反映することができ、そして、第1閾値を用いて第1積分値に過負荷検出を行って、モータの現在の過負荷程度から、過負荷が存在するか否かを決定することを実現し、過負荷検出の正確性及び決定効率を保証することに役立つ。過負荷検出により過負荷が存在すると認定した場合、モータコントローラは、電力を低下させてモータの動作を駆動することを実現するために、目標制限電流に基づいて動作する必要があり、これにより、過負荷によるデバイスの損傷を回避し、モータコントローラの耐用年数を延長する一方で、モータの正常回転を維持する電流を提供することにより、自動車が正常に走行して、運転の安全性を保証することができる。
【0040】
一実施例において、
図2に示すように、ステップS103、すなわち、第1閾値を取得するステップは、
現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップS201と、
現在電流周波数を取得し、現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較するステップS202と、
現在電流周波数が電流周波数閾値よりも小さいと、目標補正係数に基づいて、上記第2閾値を補正して、上記第1閾値を取得するステップS203と、
現在電流周波数が電流周波数閾値以上であると、第2閾値を第1閾値として決定するステップS204と、を含む。
【0041】
一例として、ステップS201では、モータコントローラは、現在相電流の実効値を取得した後、該現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、電流時間積分閾値テーブルから、現在相電流の実効値にマッチングする第2閾値を取得してもよく、該第2閾値は、テーブルルックアップにより直接決定された電流時間積分値であり、テーブルルックアップにより決定すると、第2閾値の取得効率の保証に役立つ。
【0042】
現在電流周波数は、システムの現在時刻の電流周波数、すなわち、システムの現在時刻の電磁場の変換周波数であり、つまり、1s内の交流電流の変換回数である。電流周波数閾値は、予め設定された、電流周波数が補正要件を満たすか否かを評価するための閾値である。一般的に、該電流周波数閾値は、予め設定された、電流周波数に関連する閾値であり、具体的には、予め試験により決定された、モータが拘束状況になりやすい場合の電流周波数に関連する閾値であり、それにより、その後に、現在電流周波数に基づいてモータが拘束状況にあるか否かを評価しやすい。
【0043】
一例として、ステップS202では、モータコントローラは、システムの現在時刻に収集された現在電流周波数を取得し、車載メモリをルックアップして、予め記憶された電流周波数閾値を取得し、現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較して、比較結果に基づいて、第2閾値を補正する必要があるか否かを決定してもよい。
【0044】
目標補正係数は、予め設定された補正係数である。
【0045】
一例として、ステップS203では、モータコントローラは、現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較し、現在電流周波数が電流周波数閾値よりも小さい場合、モータが拘束状況にある確率が大きいことを示し、このとき、モータの負荷能力は、モータの拘束状況での最大負荷能力であり、モータの非拘束状況での正常負荷能力よりもはるかに高いため、第2閾値を補正する必要があり、これにより、低い第2閾値に基づいて過負荷検出を行って、モータの最大負荷能力を十分に利用できないことを回避する。
【0046】
一実施例において、ステップS203、すなわち、目標補正係数に基づいて、上記第2閾値を補正して、上記第1閾値を取得するステップは、閾値補正式を用いて、上記目標補正係数に基づいて、上記第2閾値を処理して、上記第1閾値を取得するステップを含み、上記閾値補正式は、V1=K*V2であり、V1が第1閾値であり、V2が第2閾値であり、Kが目標補正係数であり、K>1である。
【0047】
本例において、モータコントローラは、予め設定された1よりも大きい目標補正係数を用いて、第2閾値を補正し、すなわち、第2閾値と目標補正係数との積を、第1閾値として決定することにより、第1閾値は、テーブルルックアップにより直接取得された第2閾値よりも大きく、モータの最大負荷能力をより十分に利用して過負荷保護を行って、モータが拘束状況にあるときに、モータの過負荷能力を十分に利用することができる。
【0048】
一例として、ステップS204では、モータコントローラは、現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較し、現在電流周波数が電流周波数閾値以上である場合、モータが拘束状況にある確率が小さいことを示し、このとき、モータの負荷能力は、非拘束状況での正常負荷能力であり、第2閾値を補正する必要がないため、第2閾値を第1閾値として直接決定することができる。
【0049】
本実施例において、収集された現在電流周波数が電流周波数閾値よりも小さい場合、1よりも大きい目標補正係数を用いて第2閾値を補正して、第1閾値を取得し、過負荷が存在すると認定された場合を低減し、モータの電流周波数が低い時の過負荷能力を十分に利用するとともに、現在電流周波数が電流周波数閾値よりも小さい拘束状況に対する過負荷保護を実現して、モータの損傷リスクを回避する。収集された現在電流周波数が電流周波数閾値以上である場合、第2閾値を第1閾値として直接決定することにより、第1閾値の取得効率の向上に役立つ。
【0050】
一実施例において、ステップS101の前に、すなわち、上記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップの前に、上記モータ過負荷保護方法は、
試験出力電流及び上記試験出力電流に対応する目標動作時間を取得するステップS001と、
所定の定数及び上記目標動作時間に基づいて、上記試験出力電流に対応する定格パラメータを決定するステップS002と、
上記定格パラメータを時間積分して、上記試験出力電流に対応する定格閾値を取得するステップS003と、
上記試験出力電流、上記目標動作時間、上記定格パラメータ及び上記定格閾値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルを形成するステップS004と、をさらに含む。
【0051】
一例として、ステップS001では、モータコントローラが過負荷保護制御を実行する前に、車両の熱管理冷却手段に基づいてベンチテスト又はシミュレーション試験をハードウェアにより予め行い、ベンチテスト又はシミュレーション試験ごとの、Isで表される試験出力電流を決定する必要がある。ここでの試験出力電流は、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおいて決定された出力電流である。例えば、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおいて、モータが正常動作状態にあると、その試験出力電流=定格出力電流、すなわち、Is=Ipとなる。該定格出力電流は、モータが定格電圧のもと定格電力で動作する時の電流であり、Ipで表される。また例えば、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおいて、モータが過負荷回復状態にあると、試験出力電流=定格出力電流-第1変化閾値、すなわち、Is=Ip-ΔI1となり、ここでの第1変化閾値ΔI1は、予め設定された、過負荷回復中に適用可能な閾値である。さらに例えば、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおいて、モータが過負荷保護状態にあると、試験出力電流=定格出力電流+第2変化閾値、すなわち、Is=Ip+ΔI2となり、ここでの第2変化閾値ΔI2は、予め設定された、過負荷保護中に適用可能な閾値である。
【0052】
本例において、異なる試験出力電流を決定した後、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおけるモータの動作状態に基づいて、ベンチテスト又はシミュレーション試験により、上記試験出力電流に対応する、T_Runで表される目標動作時間を決定する必要がある。例えば、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおいて、モータが過負荷回復状態にあると、上記試験出力電流に対応する目標動作時間は、試験出力電流から定格出力電流までのモータの動作時間である。また例えば、ベンチテスト又はシミュレーション試験プロセスにおいて、モータが正常動作状態又は過負荷回復状態にあると、上記試験出力電流に対応する目標動作時間は、定格出力電流から最大過負荷電流までのモータの動作時間である。該最大過負荷電流は、モータに負荷可能な最大電流であり、具体的には、モータのハードウェアにベンチテストを行い、モータの三相線及び電力モジュールなどのハードウェアパラメータを用いて、Imaxで表される最大過負荷電流を計算することができる。
【0053】
所定の定数は、予め設定された定数であり、例えば、K_OverCoefで表されてもよい。
【0054】
一例として、ステップ002では、各試験出力電流に対応する目標動作時間を決定した後、所定の定数K_OverCoef及び目標動作時間T_Runに基づいて、該試験出力電流に対応する定格パラメータを決定してもよく、具体的には、所定の定数K_OverCoefと目標動作時間T_Runとの除算値を計算することと、該除算値が0以下であると、該試験出力電流に対応する定格パラメータを0に設定することと、該除算値が0よりも大きいと、該除算値を試験出力電流に対応する定格パラメータとして設定することとを含む。
【0055】
一例として、ステップS003では、各試験出力電流に対応する定格パラメータを決定した後、該試験出力電流に対応する定格パラメータに時間積分処理を行って、上記試験出力電流に対応する定格閾値を決定してもよく、該定格閾値は、試験出力電流で、過負荷判定条件を満たすと認定された値に達するか否かを評価するための閾値であると理解されてもよい。
【0056】
一例として、ステップS004では、上記試験出力電流、上記目標動作時間及び上記定格パラメータに基づいて電流時間積分閾値テーブルを形成し、ソフトウェアを用いて電流時間積分閾値テーブルをモータコントローラに符号化することにより、モータコントローラは、過負荷保護を実行するプロセスにおいて、電流時間積分閾値テーブルに基づくテーブルルックアップにより、その対応する第2閾値を決定して、現在相電流の実効値に基づいて電流時間積分閾値テーブルをルックアップすることにより、第2閾値を迅速に取得することができると決定する。
【0057】
例えば、電流時間積分閾値テーブルを表1に示し、モータが過負荷回復状態にある場合、その試験出力電流Isが定格出力電流Ipよりも小さく、その目標動作時間が負の値であり、モータが正常動作状態又は過負荷保護状態にある場合、その試験出力電流Isが定格出力電流Ip以上であり、その目標動作時間が正の値であり、試験出力電流Isに対応する定格パラメータKpは、定格出力電流Ipであり、定格閾値は、定格パラメータKpの積分であり、積分計算式を用いて決定されてもよい。
【表1】
【0058】
一実施例において、
図3に示すように、第1閾値を取得するステップS103は、
現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップS301と、
現在モータ回転速度を取得し、現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較するステップS302と、
現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値よりも小さいと、過負荷積分ゲイン閾値を取得し、第2閾値及び過負荷積分ゲイン閾値に基づいて、第1閾値を取得するステップS303と、
現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値以下であると、第2閾値を第1閾値として決定するステップS304と、を含む。
【0059】
一例として、ステップS301では、モータコントローラは、現在相電流の実効値を取得した後、該現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、電流時間積分閾値テーブルから、現在相電流の実効値にマッチングする第2閾値を取得してもよく、該第2閾値は、テーブルルックアップにより直接決定された電流時間積分値であり、テーブルルックアップにより決定すると、第2閾値の取得効率の保証に役立つ。
【0060】
現在モータ回転速度は、システムの現在時刻のモータ回転速度である。過負荷回転速度閾値は、予め設定された、モータ回転速度が拘束状況にあると認定された回転速度に達するか否かを評価するための回転速度閾値である。一般的に、該過負荷回転速度閾値は、予め試験により決定された、拘束状況にあるモータのモータ回転速度に基づいて決定された閾値であり、それにより、その後に、現在モータ回転速度に基づいてモータが拘束状況にあるか否かを評価しやすい。
【0061】
一例として、ステップS302では、モータコントローラは、システムの現在時刻に収集された現在モータ回転速度を取得し、車載メモリをルックアップして、予め記憶された過負荷回転速度閾値を取得し、現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較して、比較結果に基づいて、第2閾値を第1閾値として直接決定するか否かを決定してもよい。
【0062】
過負荷積分ゲイン閾値は、予め設定された積分ゲインの閾値である。
【0063】
一例として、ステップS303では、モータコントローラは、現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較し、現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値よりも小さい場合、モータ回転速度が小さく、拘束状況にある確率が大きいことを示し、このとき、モータの負荷能力は、拘束状況での最大負荷能力であり、モータの非拘束状況での正常負荷能力よりもはるかに高く、電流時間積分閾値テーブルからテーブルルックアップにより取得された第2閾値を第1閾値として直接決定すると、その後に、低い第1閾値に基づいて過負荷検出を行って、モータの最大負荷能力を十分に利用できないことを引き起こす可能性がある。したがって、モータコントローラは、現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値よりも小さい場合、車載メモリをルックアップして、車載メモリから第2閾値及び過負荷積分ゲイン閾値を読み取ってから、第2閾値と過負荷積分ゲイン閾値との積を、第1閾値として決定することにより、モータの最大負荷能力をより十分に利用して過負荷保護を行って、モータが拘束状況にあるときに、モータの最大過負荷能力で動作することができる。理解できるように、該第2閾値及び過負荷積分ゲイン閾値は、モータが拘束状況になりやすい場合に、予め試験により決定された、モータの最大負荷能力で動作可能な閾値である。
【0064】
一例として、ステップS304では、モータコントローラは、現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較し、現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値以上である場合、モータ回転速度が大きく、モータが拘束状況にある確率が小さいことを示し、このとき、モータの負荷能力は、非拘束状況での正常負荷能力であり、該現在相電流の実効値に基づいて電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、電流時間積分閾値テーブルから、現在相電流の実効値にマッチングする第2閾値を取得してもよく、第2閾値を補正せずに第1閾値として直接決定することができる。
【0065】
本実施例において、現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値よりも小さい場合、第2閾値及び過負荷積分ゲイン閾値に基づいて、第1閾値を決定することにより、現在電流周波数が電流周波数閾値よりも小さい拘束状況に対する過負荷保護を実現し、モータの最大負荷能力をより十分に利用して過負荷保護を行うことができる。現在モータ回転速度が過負荷回転速度閾値よりも小さい場合、第2閾値を第1閾値として直接決定することにより、第1閾値の取得効率の向上に役立つ。
【0066】
一実施例において、
図4に示すように、ステップS103、すなわち、第1閾値を用いて第1積分値に過負荷検出を行って、過負荷検出結果を取得するステップは、
第1積分値と第1閾値とを比較するステップS401と、
第1積分値が第1閾値よりも大きいと、過負荷が存在すると認定するステップS402と、
第1積分値が第1閾値以下であると、過負荷が存在しないと認定するステップS403と、を含む。
【0067】
一例として、ステップS401では、モータコントローラは、第1積分値及び第1閾値を取得した後、第1積分値と第1閾値とを比較して、過負荷判定条件を満たすか否かを決定し、過負荷検出結果を取得する。
【0068】
一例として、ステップS402では、モータコントローラは、第1積分値と第1閾値とを比較し、第1積分値が第1閾値よりも大きい場合、システムの現在時刻のモータ負荷が高く、モータコントローラの動作可能な正常負荷能力を超えたと認定するため、過負荷が存在すると認定する。
【0069】
一例として、ステップS403では、モータコントローラは、第1積分値と第1閾値とを比較し、第1積分値が第1閾値以下である場合、システムの現在時刻のモータ負荷が低く、過負荷判定条件を満たすと認定された標準に達せず、すなわち、モータコントローラの動作可能な正常負荷能力を超えていないと認定するため、過負荷が存在しないと認定する。
【0070】
本実施例において、テーブルルックアップにより取得された第1積分値と、予め記憶された第1閾値とを比較して、第1積分値が過負荷判定条件を満たすと認定された標準に達するか否かを決定し、過負荷が存在するか否かを決定することにより、過負荷検出プロセスは、簡単なテーブルルックアップ及び比較のみにより実現することができ、操作が簡単で便利であり、処理効率の向上に役立つ。
【0071】
一実施例において、
図5に示すように、ステップS105、すなわち、上記モータの動作の目標制限電流を決定するステップは、
現在過負荷係数を取得するステップS501と、
現在過負荷係数を用いて現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップS502と、を含む。
【0072】
現在過負荷係数は、システムの現在時刻に決定された、現在相電流の実効値を制限するための係数である。
【0073】
一例として、ステップS501では、モータコントローラは、現在過負荷係数の取得効率を保証するために、車載メモリに予め設定された現在過負荷係数を取得してもよい。或いは、モータコントローラは、現在過負荷係数の取得効率を保証するために、車両の実際の状況に応じて、現在過負荷係数をリアルタイムに計算して決定してもよく、例えば、現在相電流の実効値に基づいて現在過負荷係数を計算して決定してもよい。
【0074】
一例として、ステップS502では、モータコントローラは、過負荷が存在すると認定した場合、現在過負荷係数を用いて現在相電流の実効値を制限することにより、取得された目標制限電流が現在相電流の実効値よりも小さく、上記目標制限電流に基づいてモータの動作を制御するときに、過負荷保護を実現することができる。
【0075】
一実施例において、ステップS502、すなわち、上記現在過負荷係数を用いて上記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップは、制限電流計算式を用いて、現在過負荷係数及び上記現在相電流の実効値に基づいて計算して、目標制限電流を取得するステップを含み、上記制限電流計算式は、It=(Ic*Kco)/Rであり、式中、Itが上記目標制限電流であり、Icが上記現在相電流の実効値であり、Kcoが現在過負荷係数であり、Rが定数である。本例において、定数Rは、具体的には、過負荷係数上限値、例えば、1000であってもよい。
【0076】
本例において、ステップS501において、モータコントローラは、過負荷保護ポリシーを実行する場合、少なくとも2つの過負荷保護周期を決定し、各過負荷保護周期に対応する現在相電流の実効値及び現在過負荷係数を取得してもよく、少なくとも2つの過負荷保護周期に対応する現在過負荷係数は、徐々に減少する。少なくとも2つの過負荷保護周期に対応する現在過負荷係数が徐々に減少することは、次回の過負荷保護周期に対応する現在過負荷係数が、前回の過負荷保護周期に対応する現在過負荷係数よりも小さいことである。各過負荷保護周期に対応する目標制限電流は、システムのデフォルトの動作電流であってもよく、前回の過負荷保護周期に対応する目標制限電流であってもよいため、次回の過負荷保護周期に対応する現在相電流の実効値は、過負荷保護周期に対応する現在相電流の実効値以下である。以上より、次回の過負荷保護周期に対応する現在過負荷係数が前回の過負荷保護周期に対応する現在過負荷係数よりも小さく、かつ次回の過負荷保護周期に対応する現在相電流の実効値が過負荷保護周期に対応する現在相電流の実効値以下である場合、前回の過負荷保護周期に対応する目標制限電流が次回の過負荷保護周期に対応する目標制限電流よりも小さいと認定することにより、少なくとも2つの過負荷保護周期に対応する、徐々に減少する目標制限電流に基づいてモータの動作を駆動することを実現することができる。少なくとも2つの過負荷保護周期内でその目標制限電流を徐々に減少させることにより、過負荷保護を実現する前提の下で、車両の動力の瞬間遮断又は他の異常動作状況を回避することができ、車両の運転体験の向上に役立つ。
【0077】
本実施例において、モータコントローラは、現在過負荷係数を利用して、目標制限電流を取得してもよく、それにより、目標制限電流に基づいてモータの動作を駆動する場合、現在相電流の実効値に対する線形平滑化処理を実現することにより、モータ駆動システムの動力性能を最大限に発揮させることができ、一部の特別な動作状況(例えば、発進動作状況又は坂道走行状況)で、モータコントローラは、過負荷時に動作可能であり、その内部デバイスを損傷しないだけでなく、電力遮断による運転安全上のリスクを直接回避することができる。
【0078】
一実施例において、
図6に示すように、ステップS103の後、すなわち、上記第1閾値及び上記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップの後、モータ過負荷保護方法は、
現在過負荷係数を取得するステップS601と、
過負荷が存在すると、過負荷係数減少ステップ幅を取得し、過負荷保護周期ごとに、過負荷係数減少ステップ幅を用いて現在過負荷係数を減少させて、更新過負荷係数を取得するステップS602と、
過負荷が存在しないと、過負荷係数増加ステップ幅を取得し、過負荷回復周期ごとに、過負荷係数増加ステップ幅を用いて現在過負荷係数を増加させて、更新過負荷係数を取得するステップS603と、
更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップS604と、をさらに含む。
【0079】
現在過負荷係数Kcoは、システムの現在時刻に決定された過負荷係数である。
【0080】
一例として、ステップS601では、モータコントローラに対応する車載メモリには、リアルタイムに更新される現在過負荷係数Kcoが記憶されているため、モータコントローラは、過負荷検出結果が、過負荷が存在することである場合、該現在過負荷係数を用いて現在相電流の実効値を制限して、現在過負荷係数の取得効率を保証することができる。
【0081】
過負荷係数減少ステップ幅は、現在過負荷係数を減少させるためのステップ幅である。過負荷保護周期は、予め設定された、過負荷が存在する場合に現在過負荷係数を更新するための周期であり、つまり、過負荷保護周期ごとに、現在過負荷係数を1回更新する必要がある。
【0082】
一例として、ステップS602では、過負荷検出結果が、過負荷が存在することである場合、過負荷係数減少ステップ幅Kminを取得してから、過負荷保護周期T1ごとに、過負荷係数減少ステップ幅Kminを用いて現在過負荷係数Kcoを減少させて、更新過負荷係数Kco1を取得してもよく、すなわち、過負荷保護周期T1が経過するたびに、現在過負荷係数Kcoと過負荷係数減少ステップ幅Kminとの差を、更新過負荷係数Kco1として決定し、すなわち、Kco1=Kco-Kminであり、それにより、過負荷検出結果が、過負荷が存在することである場合、過負荷係数を徐々に減少させることを実現して、その後に、目標制限電流の平滑化減少を実現し、過負荷検出結果が、過負荷が存在することである場合に動力の即時遮断による運転安全上のリスクを回避する。本例において、過負荷保護周期ごとに現在過負荷係数を更新する場合、該更新済みの現在過負荷係数に基づいて、対応する過負荷保護周期に対応する目標制限電流を更新することにより、少なくとも2つの過負荷保護周期内でその目標制限電流を徐々に減少させて、モータの過負荷時の目標制限電流の段階的減少を実現し、車両の運転体験の向上に役立つ。
【0083】
具体的な実施形態において、モータコントローラが取得する過負荷係数減少ステップ幅Kminは、システムに予め設定された閾値であってもよく、現在相電流の実効値に基づいてリアルタイムに計算して得られた値であってもよく、これにより、過負荷係数減少ステップ幅Kminのリアルタイム性を保証し、最後に決定される現在過負荷係数のリアルタイム性及び正確性を確保することができる。
【0084】
一実施例において、ステップS602、すなわち、過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップは、減少ステップ幅計算式を用いて、現在相電流の実効値を処理して、過負荷係数減少ステップ幅Kminを取得するステップを含む。上記減少ステップ幅計算式は、Kmin=A*(Ic/Ip)+Bであり、式中、Kminが過負荷係数減少ステップ幅であり、Icが上記現在相電流の実効値であり、Ipが定格出力電流であり、A及びBが定数である。理解できるように、現在相電流の実効値に基づいて、過負荷係数減少ステップ幅Kminをリアルタイムに計算することにより、過負荷係数減少ステップ幅Kminのリアルタイム性を保証し、最後に決定される現在過負荷係数のリアルタイム性及び正確性を確保することができる。
【0085】
一例として、ステップS603では、過負荷検出結果が、過負荷が存在しないことである場合、過負荷係数増加ステップ幅Kaddを取得してから、過負荷回復周期T2ごとに、過負荷係数増加ステップ幅Kaddを用いて現在過負荷係数Kcoを増加させて、更新過負荷係数Kco1を取得し、すなわち、過負荷回復周期T2が経過するたびに、現在過負荷係数Kcoと過負荷係数増加ステップ幅Kaddとの和を、更新過負荷係数Kco1として決定し、すなわち、Kco1=Kco+Kaddであり、それにより、過負荷検出結果が、過負荷が存在しないことである場合、過負荷係数を徐々に増加させて、現在過負荷係数の迅速増加を回避する。
【0086】
一例として、ステップS604では、モータコントローラは、現在過負荷係数Kcoに減少処理又は増加処理を行って、その更新過負荷係数Kco1を決定した後、更新過負荷係数Kco1が予め設定された過負荷係数閾値の範囲にあるか否かを評価する必要があり、更新過負荷係数Kco1が過負荷係数閾値の範囲にあると、該更新過負荷係数Kco1を更新済みの現在過負荷係数として直接決定することができ、更新過負荷係数Kco1が過負荷係数閾値の範囲にないと、過負荷係数閾値の範囲に基づいて、更新済みの現在過負荷係数を決定することにより、更新済みの現在過負荷係数が制限範囲にあることを保証し、その後に、該現在過負荷係数を利用して現在相電流の実効値を制御する場合、過負荷保護を実現するだけでなく、過負荷保護プロセスにおいて動力遮断による運転安全上のリスクが存在することを回避することができることを確保する。
【0087】
一実施例において、
図7に示すように、ステップS604、すなわち、更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップは、
過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値を取得するステップS701と、
更新過負荷係数が過負荷係数下限値よりも小さいと、過負荷係数下限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップS702と、
更新過負荷係数が過負荷係数上限値よりも大きいと、過負荷係数上限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップS703と、
更新過負荷係数が過負荷係数下限値以上であり、かつ更新過負荷係数が過負荷係数上限値以下であると、更新過負荷係数を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップS704と、を含む。
【0088】
過負荷係数下限値は、予め設定された過負荷係数の最小値であり、例えば、0に設定されてもよい。過負荷係数上限値は、予め設定された過負荷係数の最大値であり、例えば、1000に設定されてもよい。該過負荷係数上限値は、各過負荷保護周期において、現在相電流の実効値から目標制限電流まで減少する電流減少値を決定して、電流減少幅の閾値を決定することができる。
【0089】
一例として、ステップS701では、モータコントローラは、車載メモリを読み取って過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値を取得することにより、過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値を利用して、リアルタイムに取得される更新過負荷係数に限界処理を行って、最後に取得される現在過負荷係数が合理的な範囲にあることを保証し、さらに、その後に該現在過負荷係数を利用して現在相電流の実効値を制限する場合、過負荷保護を実現するだけでなく、過負荷保護プロセスにおいて誤判定に起因する動力遮断による運転安全上のリスクが存在することを回避することができることを確保する。
【0090】
一例として、ステップS702では、モータコントローラは、更新過負荷係数と過負荷係数下限値とを比較して、更新過負荷係数が過負荷係数下限値よりも小さいと、更新過負荷係数が過負荷係数の許容最小値よりも小さくなったと認定し、このとき、該過負荷係数下限値を更新済みの現在過負荷係数として決定することができ、処理中に占有するリソースを節約するために、ステップS602を実行せず、すなわち、過負荷回復周期ごとに、過負荷係数増加ステップ幅を用いて現在過負荷係数を増加させて、更新過負荷係数を取得する処理操作を実行しない。
【0091】
一例として、ステップS703では、モータコントローラは、更新過負荷係数と過負荷係数上限値とを比較して、更新過負荷係数が過負荷係数上限値よりも大きいと、更新過負荷係数が過負荷係数の許容最大値よりも大きくなったと認定し、このとき、該過負荷係数上限値を更新済みの現在過負荷係数として決定することができ、処理中に占有するリソースを節約するために、ステップS603を実行せず、すなわち、過負荷回復周期ごとに、過負荷係数増加ステップ幅を用いて現在過負荷係数を増加させて、更新過負荷係数を取得する処理操作を実行しない。
【0092】
一例として、ステップS704では、モータコントローラは、更新過負荷係数と、過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値とを比較し、更新過負荷係数が過負荷係数下限値と過負荷係数上限値との間にあると、更新過負荷係数が予め設定された合理的な範囲にあると認定し、これにより、更新過負荷係数を更新済みの現在過負荷係数として直接決定して、その後に該更新済みの現在過負荷係数を利用して現在相電流の実効値を制限する場合、過負荷保護を実現するだけでなく、過負荷保護プロセスにおいて誤判定に起因する動力遮断による運転安全上のリスクが存在することを回避することができることを確保する。理解できるように、更新過負荷係数を更新済みの現在過負荷係数として決定した後、取得された更新過負荷係数が過負荷係数上限値又は過負荷係数下限値となるまで、依然として、ステップS602又はステップS603を実行し続ける必要がある。
【0093】
一実施例において、ステップS101の前、すなわち、モータ三相電流を収集するステップの前、モータ過負荷保護方法は、IGBTモジュールの現在状態を検出し、現在状態がオン状態にある場合、初期化設定を行って、過負荷係数上限値を現在過負荷係数として設定するステップをさらに含む。
【0094】
IGBTモジュールは、モータコントローラに設定された電力モジュールである。現在状態は、IGBTモジュールがオンになるか否かを反映するための状態であり、該現在状態は、オン状態及びオフ状態を含む。
【0095】
本例において、モータコントローラは、IGBTモジュールの現在状態をリアルタイムに検出し、現在状態がオン状態である場合、初期化設定を行って、過負荷係数上限値を現在過負荷係数として設定する必要があるため、IGBTモジュールがオンになった場合、すなわち、過負荷が存在する場合、過負荷保護を即時に行うことができる。理解できるように、初期化設定プロセスにおいて、過負荷保護周期及び過負荷回復周期をリセットして、IGBTモジュールがオンになる前にキャッシュされた情報が過負荷保護制御の精度に影響を与えることを回避する。
【0096】
上記実施例における各ステップの番号の大きさは、実行順序の前後を意味するものではなく、各プロセスの実行順序は、プロセスの機能及び内部ロジックに従って決定されるべきであり、本開示の実施例の実施プロセスに対する何らかの限定として解されるべきではないことを理解されたい。
【0097】
一実施例に係るモータコントローラは、
図8に示すように、メモリと、プロセッサと、メモリに記憶され、かつプロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、を含み、プロセッサは、コンピュータプログラムを実行する場合に上記実施例におけるモータ過負荷保護方法、例えば、
図1に示すS101~S105、又は
図2~
図7に示す方法を実現し、重複を避けるために、ここで説明を省略する。
【0098】
一実施例に係る自動車は、モータと、上記実施例におけるモータコントローラとを含み、重複を避けるために、ここで説明を省略する。
【0099】
一実施例に係る不揮発性コンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサにより実行されると、上記実施例におけるモータ過負荷保護方法、例えば、
図1に示すS101~S105又は
図2~
図7に示す方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されており、重複を避けるために、ここで説明を省略する。
【0100】
当業者であれば理解できるように、上記実施例の方法におけるフローの全部又は一部の実現は、コンピュータプログラムによって、関連するハードウェアを命令することにより完了することができ、上記コンピュータプログラムは、不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に記憶することができ、該コンピュータプログラムが実行されると、上記各方法の実施例のフローを含んでもよい。本開示に係る各実施例において使用される、メモリ、記憶、データベース又は他の媒体に対する任意の引用は、いずれも不揮発性メモリ及び/又は揮発性メモリを含んでもよい。不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、電気的プログラマブルROM(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)又はフラッシュメモリを含んでもよい。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は外部キャッシュメモリを含んでもよい。限定ではなく例示として、RAMは、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDRSDRAM)、エンハンスドSDRAM(ESDRAM)、シンクロナスリンク(Synchlink)DRAM(SLDRAM)、ラムバス(Rambus)ダイレクトRAM(RDRAM)、ダイレクトラムバスダイナミックRAM(DRDRAM)及びラムバスダイナミックRAM(RDRAM)などの様々な形態で入手可能である。
【0101】
当業者であれば明確に分かるように、容易かつ簡潔的に説明するために、上記各機能ユニット及びモジュールの区分で例を挙げて説明したが、実際の適用では、必要に応じて上記機能を割り当てて異なる機能ユニット、モジュールにより完了し、すなわち、上記装置の内部構造を異なる機能ユニット又はモジュールに区分して、以上で説明した全部又は一部の機能を完了することができる。
【0102】
以上の実施例は、本開示の技術手段を説明するためのものに過ぎず、限定するものではなく、前述の実施例を参照しながら、本開示を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術手段を修正するか、又はその技術的特徴の一部を同等置換することができ、これらの修正又は置換は、対応する技術手段の本質を本開示の各実施例の技術手段の精神及び範囲から逸脱させることはなく、いずれも本開示の保護範囲に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの現在相電流の実効値を収集するステップと、
前記現在相電流の実効値を時間積分して、第1積分値を取得するステップと、
第1閾値を取得するステップと、
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップと、
過負荷が存在すると、前記モータの動作の目標制限電流を決定し、前記目標制限電流に基づいてモータの動作を制御するステップと、
を含む、
モータ過負荷保護方法。
【請求項2】
第1閾値を取得するステップは、
現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップと、
現在電流周波数を取得し、前記現在電流周波数と電流周波数閾値とを比較するステップと、
前記現在電流周波数が前記電流周波数閾値よりも小さいと、目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を補正して、前記第1閾値を取得するステップと、
前記現在電流周波数が前記電流周波数閾値以上であると、前記第2閾値を前記第1閾値として決定するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項3】
目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を補正して、前記第1閾値を取得するステップは、閾値補正式を用いて、前記目標補正係数に基づいて、前記第2閾値を処理して、前記第1閾値を取得するステップを含み、
前記閾値補正式は、V1=K*V2であり、V1が第1閾値であり、V2が第2閾値であり、Kが目標補正係数である、
請求項2に記載のモータ過負荷保護止方法。
【請求項4】
第1閾値を取得するステップは、
前記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップと、
現在モータ回転速度を取得し、前記現在モータ回転速度と過負荷回転速度閾値とを比較するステップと、
前記現在モータ回転速度が前記過負荷回転速度閾値よりも小さいと、過負荷積分ゲイン閾値を取得し、前記第2閾値及び前記過負荷積分ゲイン閾値に基づいて、第1閾値を取得するステップと、
前記現在モータ回転速度が前記過負荷回転速度閾値
以上であると、前記第2閾値を第1閾値として決定するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項5】
前記現在相電流の実効値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルをルックアップして、第2閾値を取得するステップの前に、
試験出力電流及び前記試験出力電流に対応する目標動作時間を取得するステップと、
所定の定数及び前記目標動作時間に基づいて、前記試験出力電流に対応する定格パラメータを決定するステップと、
前記定格パラメータを時間積分して、前記試験出力電流に対応する定格閾値を取得するステップと、
前記試験出力電流、前記目標動作時間、前記定格パラメータ及び前記定格閾値に基づいて、電流時間積分閾値テーブルを形成するステップと、
をさらに含む、
請求項2又は4に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項6】
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップは、
前記第1積分値と第1閾値とを比較するステップと、
前記第1積分値が前記第1閾値よりも大きいと、過負荷が存在すると認定するステップと、
前記第1積分値が前記第1閾値以下であると、過負荷が存在しないと認定するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項7】
前記モータの動作の目標制限電流を決定するステップは、
現在過負荷係数を取得するステップと、
前記現在過負荷係数を用いて前記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップと、
を含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項8】
前記現在過負荷係数を用いて前記現在相電流の実効値を制限して、目標制限電流を取得するステップは、制限電流計算式を用いて、現在過負荷係数及び前記現在相電流の実効値に基づいて計算して、目標制限電流を取得するステップを含み、
前記制限電流計算式は、It=(Ic*Kco)/Rであり、式中、Itが前記目標制限電流であり、Icが前記現在相電流の実効値であり、Kcoが現在過負荷係数であり、Rが定数である、
請求項7に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項9】
前記第1閾値及び前記第1積分値に基づいて過負荷検出を行うステップの後、
現在過負荷係数を取得するステップと、
過負荷が存在すると、過負荷係数減少ステップ幅を取得し、過負荷保護周期ごとに、前記過負荷係数減少ステップ幅を用いて前記現在過負荷係数を減少させて、更新過負荷係数を取得するステップと、
過負荷が存在しないと、過負荷係数増加ステップ幅を取得し、過負荷回復周期ごとに、前記過負荷係数増加ステップ幅を用いて前記現在過負荷係数を増加させて、更新過負荷係数を取得するステップと、
前記更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップと、
をさらに含む、
請求項1に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項10】
過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップは、減少ステップ幅計算式を用いて、前記現在相電流の実効値を処理して、過負荷係数減少ステップ幅を取得するステップを含み、
前記減少ステップ幅計算式は、Kmin=A*(Ic/Ip)+Bであり、式中、Kminが過負荷係数減少ステップ幅であり、Icが前記現在相電流の実効値であり、Ipが定格出力電流であり、A及びBが定数である、
請求項9に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項11】
前記更新過負荷係数に対して限界処理を行って、更新済みの現在過負荷係数を取得するステップは、
過負荷係数下限値及び過負荷係数上限値を取得するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数下限値よりも小さいと、前記過負荷係数下限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数上限値よりも大きいと、前記過負荷係数上限値を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
前記更新過負荷係数が前記過負荷係数下限値以上であり、かつ前記更新過負荷係数が前記過負荷係数上限値以下であると、前記更新過負荷係数を更新済みの現在過負荷係数として決定するステップと、
を含む、
請求項9に記載のモータ過負荷保護方法。
【請求項12】
メモリと、
プロセッサと、
前記メモリに記憶され、かつ前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムと、を含み、
前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する場合に請求項
1~4,6~11のいずれか一項に記載のモータ過負荷保護方法を実現する、
モータコントローラ。
【請求項13】
モータと、
請求項12に記載のモータコントローラと、
を含む、
自動車。
【請求項14】
プロセッサにより実行されると、請求項
1~4,6~11のいずれか一項に記載のモータ過負荷保護方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されている、
不揮発性コンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】