(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】複数のポリマー成分のための水性分離プロセス
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574668
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022033940
(87)【国際公開番号】W WO2022271539
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ゴリン、クレイグ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】マッテウッチ、スコット ティ.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ジル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、エン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA17
4F401AA24
4F401AA26
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4F401FA01Z
4F401FA02Y
4F401FA07Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
複数のポリマー成分の溶融物から少なくとも1つのポリマー成分を分離及び回収するためのプロセスであって、(A)加圧水溶液の存在下でマルチポリマー成分溶融物を剪断するステップであって、マルチポリマー成分溶融物が、少なくとも第1のポリマー成分と、少なくとも第2のポリマー成分とのブレンドを含み、マルチポリマー成分溶融物が、少なくとも2つの溶融温度、少なくとも2つのガラス転移温度、又はこれらの組み合わせを有し、加圧水溶液が、(i)水と、(ii)少なくとも1つの分散剤との水性液体混合物を含み、加圧水溶液と接触しているマルチポリマー成分溶融物の剪断が、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子、又はストランドを形成する、剪断するステップと、(B)ステップ(A)の剪断後に、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子、又はストランドを、加圧水溶液中のマルチポリマー成分溶融物の混合物中に存在する水、少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの第2のポリマー成分、及び任意の残りの熱可塑性ポリマー樹脂から分離することによって、マルチポリマー成分溶融物の他のポリマー成分から少なくとも第1のポリマー成分を単離するステップと、を含む、プロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリマー成分の溶融物から少なくとも1つのポリマー成分を分離及び回収するためのプロセスであって、
(A)加圧水溶液の存在下でマルチポリマー成分溶融物を剪断するステップであって、前記マルチポリマー成分溶融物が、少なくとも第1のポリマー成分と、少なくとも第2のポリマー成分とのブレンドを含み、前記マルチポリマー成分溶融物が、少なくとも2つの溶融温度、少なくとも2つのガラス転移温度、又はこれらの組み合わせを有し、前記加圧水溶液が、
(i)水と、
(ii)少なくとも1つの分散剤と、の水性液体混合物を含み、
前記加圧水溶液と接触している前記マルチポリマー成分溶融物の前記剪断が、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する前記少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子、又はストランドを形成する、剪断するステップと、
(B)ステップ(A)の前記剪断後に、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する前記少なくとも1つの第1のポリマー成分の前記分散体、粒子、又はストランドを、前記水、前記少なくとも1つの分散剤、前記少なくとも第2のポリマー成分、及び任意の残りの熱可塑性ポリマーから分離することによって、前記マルチポリマー成分溶融物の他のポリマー成分から前記少なくとも第1のポリマー成分を単離するステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記加圧水溶液と接触しているステップ(A)の前記マルチポリマー成分溶融物の前記剪断が、濃縮された第2のポリマー成分濃度を有する前記少なくとも1つの第2のポリマー成分の分散体、粒子、又はストランドを更に形成し、ステップ(A)の前記剪断後に、ステップ(B)において、濃縮された第2のポリマー成分濃度を有する前記少なくとも1つの第2のポリマー成分の前記分散体、粒子、又はストランドを、前記水、前記少なくとも1つの分散剤、前記少なくとも第1のポリマー成分、及び任意の残りの熱可塑性ポリマーから分離することによって、前記少なくとも第2のポリマー成分を溶融されたマルチポリマー成分熱可塑性物品の他のポリマー成分から単離するステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
複数のポリマー成分の溶融物から少なくとも1つのポリマー成分を分離及び回収するためのプロセスであって、
(a)少なくとも第1のポリマー成分と、少なくとも第2のポリマー成分とを有するマルチポリマー成分熱可塑性物品を提供するステップと、
(b)前記マルチポリマー成分熱可塑性物品を溶融して、前記マルチポリマー成分熱可塑性物品の溶融物を形成するステップであって、前記溶融物が、少なくとも第1のポリマー成分溶融物流と、少なくとも第2のポリマー成分溶融物流とを含み、前記マルチポリマー成分溶融物が、少なくとも2つの溶融温度、少なくとも2つのガラス転移温度、又はこれらの組み合わせを有する、形成するステップと、
(c)
(i)水と、
(ii)少なくとも1つの分散剤と、の水性液体混合物を含む加圧水溶液を提供するステップと、
(d)ステップ(b)の前記溶融物を、ステップ(c)の前記加圧水溶液に添加するステップと、
(e)ステップ(b)の前記マルチポリマー成分溶融物を、ステップ(c)の前記加圧水溶液の存在下で剪断するステップであって、前記加圧水溶液と接触している前記マルチポリマー成分溶融物の前記剪断が、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの前記第1のポリマー成分流の分散体、粒子、又はストランドを形成する、剪断するステップと、
(f)ステップ(e)の前記剪断の後、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する前記少なくとも1つの第1のポリマー成分流の前記分散体、粒子又はストランドを、前記マルチポリマー成分溶融物と加圧水溶液との混合物中の前記水、前記少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの前記第2のポリマー成分、及び任意の残りの成分から分離するステップと、
(g)ステップ(f)の分離された前記分散体、粒子又はストランドを回収するステップと、を含む、プロセス。
【請求項4】
前記加圧水溶液が、前記加圧水溶液中の前記成分の総重量に基づいて、50重量パーセント~99.9重量パーセントの成分(i)の前記水と、0.5重量パーセント~35重量パーセントの成分(ii)の前記分散剤と、を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記溶融物の前記第1のポリマー成分が、ポリオレフィン、アクリル、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリアミド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性シリコーン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶融物の前記第1のポリマー成分が、ポリオレフィンであり、前記ポリオレフィン成分が、1未満の密度、0.5グラム/10分~80グラム/10分のメルトインデックス、及び60℃~150℃の溶融温度を有する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記剪断ステップ(e)中の圧力が、水性液体溶液を使用温度で液相に維持するのに十分であるか、又は水性液体混合物中に存在する水を前記剪断ステップ(e)中の前記プロセスの温度で前記水の沸点未満に保つのに十分である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(e)の前記剪断が、少なくとも1つの押出機で起こる、請求項3に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(e)の剪断中に付与される比機械エネルギーが、少なくとも0.01キロワット時/キログラムである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(c)の前記加圧水溶液が、第2の分散剤、分散剤、相溶化剤、洗浄剤、中和剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項11】
前記剪断ステップ(e)が、バッチプロセス又は連続プロセスである、請求項3に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポリマー成分の混合物を有する溶融混合ポリマー流から、少なくとも1つの分離した別個の単一ポリマー成分流を分離するための水性プロセスに関する。水性プロセスは、溶融混合ポリマー流から分離される少なくとも1つの分離した別個の単一ポリマー成分流をリサイクルすることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
環境で発生したプラスチック廃棄物の量を減少させようとする努力では、例えば、一般に単回使用用途に適用され、その後処分される多層包装及びフィルムを含む使用後使い捨てプラスチック製品などのプラスチック物品を再使用(リサイクル)することが望ましい。使い捨て製品は、通常は、非相溶性ポリマー成分の異なる種類の組み合わせを含む材料から製造されるので、典型的には、非相溶性ポリマー成分の混合物が、使い捨て製品中に存在する。非相溶性ポリマー成分は、例えば、異なるポリマー成分を一緒に配合して、成分のブレンドを形成することによって、又は、異なるポリマー成分の2つ以上の層を一緒に組み合わせて(例えば、積層して)、多層系を形成することによって、一緒に組み合わされる。
【0003】
一般に、物品は、複数の異なるポリマー成分から作製され、物品は特定の用途要件を満たすことができる。しかしながら、複数のポリマー成分から作製された物品及び使い捨て製品に関する問題点は、そのような多成分ポリマー物品/製品が、異なる非相溶性ポリマー成分の混合流を生成し、それにより、新規用途で再使用することが困難になるため、そのような多成分ポリマー物品/製品は、通常は、リサイクルに望ましくない。また、非相溶性混合ポリマー成分流から所望の単一ポリマー成分流を分離することは困難である。例えば、異なるポリマーのブレンド又は混合物を使用して、多層包装又は多層フィルムなどの異なるポリマーの混合物を組み込んでいる物品を二次加工する場合、このような物品は、典型的には、物品を構成する異なるポリマーの非相溶性のために直接リサイクルすることができない。異なるポリマー成分のブレンドから作製された物品(例えば、多層包装/フィルム)の再利用を達成する有効なリサイクル方法を用いるために、物品のポリマー成分のブレンドは、1つ以上の分離した単一ポリマー成分流に分離されるべきであり、次いで、所望の単一ポリマー成分流を、流れ中のポリマー成分の他の望ましくないブレンドから分離することができる。所望の単一ポリマー成分流が混合ポリマー流から分離されると、所望の単一ポリマー成分流は、再使用(リサイクリング)のために回収することができる。
【0004】
非相溶性ポリマー成分から作製された使い捨て物品又は製品(例えば、包装又はフィルム)を取り出し、非相溶性ポリマー成分を分離して、分離した別個の単一成分ポリマー流にして、リサイクルのために所望の単一成分ポリマー流の回収をより容易にすることができることは、リサイクル産業にとって有利であろう。したがって、複数の異なる非相溶性ポリマー成分(例えば、1つ以上の熱可塑性ポリマー物品から供給される)の混合物(ブレンド)の溶融流動性液体組成物を剪断して、異なるポリマー成分の混合物又はブレンドを、分離した単一成分ポリマー流に分離し、次いで、異なるポリマー成分のブレンドから、濃縮された単一ポリマー成分を有する所望の分離された単一ポリマー成分流を回収するステップと、回収され濃縮された単一ポリマー成分流を、新規用途において再使用することを可能にするステップと、を含む、効果的な分離及び回収プロセスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明のプロセスは、混合ポリマー成分の組成物から、PE流などの所望のポリマー成分流の単離を可能にすることによって、従来技術のプロセスの問題に対する解決策を提供する。したがって、本明細書に開示される本発明は、少なくとも2つ以上の異なる非相溶性ポリマー成分流の溶融混合物を含む融解材料(又は溶融物)から、1つ以上の分離した別個の単一ポリマー成分流を分離及び回収するための新規で効果的なプロセスに関する。溶融物は、熱可塑性源を加工することから生成される。例えば、熱可塑性源は、熱可塑性物品又は複数の熱可塑性物品(例えば、積層体、複合材、フィルム又は包装材料)であることができ、熱可塑性源は、複数の(例えば、2つ以上の)ポリマー成分(本明細書では「マルチポリマー成分」と呼ぶか、又は「マルチPC」と略される)の混合物、ブレンド又は組み合わせを含み、熱可塑性源のマルチPCは、典型的には非相溶性である。
【0006】
熱可塑性源を加熱/溶融して、マルチPCの溶融物を形成し、次いで、そのマルチPC溶融物を、上記の新規なプロセスに供して、回収及びその後の使用のための少なくとも1つの分離した単一ポリマー成分流を発生させる。したがって、従来技術のプロセスを使用して遭遇する不相溶性の問題を解決するための一実施形態では、例えば、水溶液を液体形態に維持するために加圧されている分離流体水溶液などの分離流体の存在下でマルチPC溶融物を剪断するステップを含む上記の新規な分離/回収プロセスが使用される。(I)少なくともマルチPC溶融物と、(II)少なくとも水溶液(本明細書では「MAS混合物」と略す)と、のブレンド、混和物、組み合わせ、又は混合物の配合物又は組成物を剪断することにより、マルチPC溶融物中に存在する他のポリマー成分から容易に分離され得る少なくとも1つの所望の分離した単一ポリマー成分流が形成される。
【0007】
一実施形態では、複数の異なるポリマー成分の混合物を有するマルチPC溶融物(上記したように、1つ以上の熱可塑性物品から供給された)から少なくとも1つの単一ポリマー成分を分離及び回収するためのプロセスは、(A)MAS混合物を剪断する(すなわち、マルチPC溶融物及び水溶液を含む混合物を剪断する)ステップであって、そのマルチPC溶融物は、少なくとも1つの第1のポリマー成分及び少なくとも1つの第2のポリマー成分を含み、そのマルチPC溶融物は、2つ以上の熱溶融温度(Tm)、2つ以上のガラス転移(Tg)温度、又はこれらの組み合わせを有し、加圧水溶液は、(i)水と、(ii)少なくとも1つの分散剤と、の水性液体混合物を含み、MAS混合物の剪断により、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子、又はストランドが形成される、剪断するステップと、
(B)ステップ(A)の剪断後に、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子、又はストランドを、溶融物の他の成分(例えば、水、少なくとも1つの分散剤、少なくとも第2のポリマー成分、並びに任意の残りの熱可塑性ポリマー樹脂成分及び/又は任意選択の成分)から分離するステップと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、複数(例えば、2つ以上)の異なるポリマー成分の混合物を有するマルチPC溶融物流から、ポリマー濃縮濃度の単一ポリマー成分を有する少なくとも1つの単一ポリマー成分流を分離及び回収するためのプロセスは、(a)少なくとも第1のポリマー成分及び少なくとも第2のポリマー成分を含む少なくとも1つのマルチPC熱可塑性物品又は2つ以上の熱可塑性物品の組み合わせを提供するステップと、(b)そのマルチPC熱可塑性物品、又は2つ以上の熱可塑性物品の組み合わせを溶融して、流動性液体マルチPC溶融物流を形成するステップであって、そのマルチPC溶融物流は、少なくとも1つの第1のポリマー成分溶融物流と、少なくとも1つの第2のポリマー成分溶融物流と、のブレンド又は混合物を含み、そのマルチPC溶融物流は、示差走査熱量測定を使用すると、マルチPC溶融物流の第2の熱サイクルにおいて2つ以上のピークを示す、形成するステップと、(c)加圧水溶液を提供するステップであって、その水溶液は、(i)水と、(ii)少なくとも1つの分散剤と、の水性液体流体溶液混合物(例えば、エチレンオキシド(ethylene oxide、EO)/プロピレンオキシド(propylene oxide、PO)ブレンド又はエチレンコポリマー)を含み、その水溶液への圧力は、その水溶液を使用温度で液相に維持するのに十分である、提供するステップと、(d)ステップ(c)の加圧水溶液をステップ(b)のマルチPC溶融物と混ぜて、MAS混合物を形成するステップと、(e)ステップ(d)のMAS混合物(すなわち、ステップ(c)の加圧水溶液(II)と接触しているステップ(b)のマルチPC溶融物(I)の混合物)を剪断するステップであって、そのMAS混合物を剪断することにより、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分流の分散体、粒子、又はストランドが形成される、剪断するステップと、(f)ステップ(e)の剪断後に、濃縮された第1のポリマー濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子又はストランドを、MAS混合物中に存在する他の成分(例えば、水、少なくとも1つの分散剤、少なくとも第2のポリマー成分、マルチPC溶融物の任意の残りの熱可塑性ポリマー樹脂成分、及び/又はいずれかの任意選択の成分)から(例えば、機械的又は物理的手段によって)分離するステップと、(g)ステップ(f)の分離された分散体、粒子又はストランドを回収するステップと、を含む。
【0009】
目的は、マルチPC溶融物中に存在する複数のポリマー成分から少なくとも1つの分離した単一ポリマー成分を分離し、分離された単一ポリマー成分を回収して、回収され分離された単一ポリマー成分を効果的にリサイクルすることができる新規で効果的な分離/回収プロセスを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のプロセスの一実施形態を示している概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では「室温(room temperature、RT)」及び「周囲温度」は、別途指定しない限り、20摂氏度(℃)~26℃の温度を意味する。
【0012】
ポリマー樹脂に関する「溶融された(melted)」、「溶融した(melt)」、及び「融解した(molten)」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0013】
ポリマー樹脂に関する「熱転移」という用語は、本明細書では、溶融した温度又は溶融している温度(Tm)及び/又はガラス転移温度(Tg)を意味する。
【0014】
本明細書における「第2の熱サイクル」という用語は、第1の熱サイクル後のDSCの加熱操作を指し、試料は、周囲条件から、試料がその溶融状態にある温度を超える温度まで加熱され、次いで、試料は、その熱転移を下回る温度まで冷却される。
【0015】
本発明のプロセスの広範な実施形態は、熱可塑性物品又は2つ以上の熱可塑性物品の組み合わせを加工することを含み、物品の各々は、複数の(例えば、少なくとも2つ以上)の熱可塑性ポリマー成分から構成され得る。本プロセスは、熱可塑性ポリマー成分のうちの少なくとも1つを、熱可塑性物品のうちの1つ以上に存在する複数の熱可塑性ポリマー成分から分離及び回収することを含む。
【0016】
一実施形態では、熱可塑性物品は、複数の(例えば、2つ以上の)ポリマー成分(本明細書では、「マルチポリマー成分」と称されるか、又は上記したように「マルチPC」と略される)のブレンド、組み合わせ、複合材、又は混合物を含む。典型的には、物品のマルチPCは、非相溶性である。少なくとも2つ以上の熱可塑性ポリマー成分から作製された物品又は2つ以上の物品の組み合わせを溶融して、マルチPC溶融物を形成する。次いで、マルチPC溶融物を、(i)水と、(ii)少なくとも1つの分散剤と、の混合物を含む分離流体(例えば、水性分離液体溶液)と接触させて処理する。次いで、水溶液の存在下でのマルチPC溶融物を剪断して、物品の複数のポリマー成分を、分離した単一ポリマー成分流に分離し、次いで、所望の分離された1つ以上の単一ポリマー成分流を、上記の剪断プロセス中に作出された全ての他のポリマー成分流から回収する。いくつかの実施形態では、そのプロセスは、回収された所望の分離された単一ポリマー成分流のリサイクルを可能にする。
【0017】
好ましい一実施形態では、複数のポリマー成分から構成された物品から少なくとも1つの単一ポリマー成分を分離及び回収するためのプロセスは、(a)少なくとも1つの第1のポリマー成分及び少なくとも1つの第2のポリマー成分を有する少なくとも1つのマルチPC熱可塑性物品を提供するステップと、(b)少なくとも1つのマルチPC熱可塑性物品を溶融して、溶融又は溶解されたマルチPC物品(本明細書では「マルチPC溶融物」と称する)を形成するステップであって、少なくとも1つのマルチPC物品から供給された得られたマルチPC溶融物は、少なくとも1つの第1のポリマー成分溶融流と、少なくとも1つの第2のポリマー成分溶融流と、のブレンドを含み、そのマルチPC溶融物が、示差走査熱量測定を使用すると、溶融物の第2の熱サイクルにおいて2つ以上のピークを示す、形成するステップと、(c)所定の圧力下で、(i)水と、(ii)少なくとも1つの分散剤と、の加圧水性液体混合物を含む水溶液を提供するステップと、(d)ステップ(b)のマルチPC溶融物を、ステップ(c)の加圧水性液体溶液に添加して、(I)水溶液と、(II)マルチPC溶融物と、の配合物又は組成物混合物(すなわち、「MAS混合物」)を形成するステップと、(e)そのMAS混合物を剪断して、MAS混合物中に、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分流の分散体、粒子、又はストランドを形成するステップと、(f)ステップ(e)の剪断の後、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分流の分散体、粒子又はストランドを、MAS混合物中に存在する他の成分(例えば、水、少なくとも1つの分散剤、少なくとも第2のポリマー成分、マルチPC溶融物の任意の残りの熱可塑性ポリマー樹脂成分、及び/又はMAS混合物中のいずれかの任意選択の成分)から分離するステップと、(g)ステップ(f)の分離された分散体、粒子又はストランドを回収するステップと、を含む。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、プロセスは、例えば、105℃~300℃の温度で起こるステップ(e)の剪断、少なくとも100キロパスカル(kPa)のゲージ圧において起こるステップ(e)の剪断、及び20分(min)未満の時間起こるステップ(e)の剪断を含む。
【0019】
プロセスの好ましい一実施形態では、ステップ(f)の分離は、浮遊プロセス、濾過プロセス、又は凝集プロセスを含むことができる。
【0020】
プロセスの好ましい一実施形態では、溶融物の第1のポリマー成分は、ポリオレフィン成分であり、ポリオレフィン成分は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンコポリマー、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
図1を参照すると、番号11~16によって示されたフロー流を含む本発明プロセスの一実施形態の、全体が参照番号10によって示されたフロー図が示されている。例えば、
図1に示したプロセスの第1のステップは、全体が参照番号20によって示され、プロセスにかけられる1つ以上の熱可塑性ポリマー物品21の群又は組み合わせを含むことができる熱可塑性材料から始まる。物品21は、物品21の構造中に複数のポリマー成分のブレンド又は混合物を含み、構成されている。物品21は、硬質物品、可撓性物品、及びこれらの混合物であることができる。
【0022】
物品21は、流れ11を介して、全体が参照番号30によって示された高密度化ステップに回される。高密度化ステップ30は、物品21を複数の小片31に変換するための任意の従来の装置を使用して行うことができ、すなわち、小片31は、熱可塑性材料の元の供給源(例えば、物品21)のサイズと比較して小さい。例えば、高密度化ステップ30は、物品21を粉砕(図示せず)して、フレーク31を形成することによって、小片31を形成することができる。高密度化ステップ30の他の実施形態は、例えば、物品21を細断(図示せず)して、細断片(図示せず)を形成することと、物品21をペレット化(図示せず)してペレット(図示せず)を形成することと、及び/又は物品21を粉砕(図示せず)して、粉末(図示せず)を形成することと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、フレーク31のサイズは、例えば、200ミクロン(μm)未満であることができる。
【0023】
再び、
図1に示したように、フレーク31は、流れ12を介して、押出機41及び供給ホッパー42を含む全体が参照番号40によって示された押出ステップに回される。押出機41は、二軸スクリュー押出機41であるが、押出機41は、一軸スクリュー押出機又は他のタイプの押出機を含むことができる。
図1には示されていないが、装置の様々な要素及び付属部品を押出操作40に含めることができ、例えば、押出機41は、1つ以上の加熱/冷却要素、1つ以上の供給ポート、1つ以上のポンプ、及び押出に関する当業者に公知の他の従来の装置を含むことができる。固体形態のフレーク31は、流れ12を介して、押出機41の供給ホッパー42に回され、次いで、固体フレーク31は、スクリュー43によって押出機41の内側の加熱ゾーンを通過する。フレーク31は、フレーク31を溶融するための加熱ゾーンを通過して、流動性液体溶融物(図示せず)を形成し、押出機の出口ポート44から出る。
【0024】
プロセスを継続するために、
図1に示したように、融解流(又は溶融物)の形態の溶融物(1つ以上の溶融される物品21を溶融することによって供給される)が、押出機41における加熱ゾーン(図示せず)において形成される。水溶液(すなわち、水性分離流体液体溶液)の流れ13を押出機41の中に導入し、所定の圧力下に維持し、押出機41において溶融フレーク流と混合して、押出機41の出口ポート44からの流れ14として押出機41を出るMAS混合物を形成する。水溶液流13は、フレーク流12の前又は先行して、(
図1に示したように)フレーク流12の後又は続いて、フレーク流12と同時に、及び/又は融解フレーク流が押出機41の加熱ゾーンで形成される前又は後に、供給口(図示せず)を通して押出機41の中に導入することができる。
【0025】
MAS混合物(すなわち、水溶液とマルチPC溶融物とを組み合わせた)は、流れ14を介して、全体が参照番号50によって示された分離ステップに回される。分離ステップ50は、例えば、これらに限定されないが、浮遊プロセス、濾過プロセス、凝集、又はこれらの組み合わせを含む、当業者に公知の様々な従来の機械的分離プロセスを含むことができる。
図1には、MAS混合物流14が容器51において浮遊によって分離される浮遊プロセス50を含むが、これに限定されない分離プロセス50の一実施形態が示されている。浮遊分離ステップ50では、ポリマー成分流としてMAS混合物中に存在するマルチPC溶融物中のポリマー成分の複数のタイプの混合物は、マルチPC溶融物中に存在するポリマーのタイプの各々の別個のポリマー成分流である少なくとも1つ以上の単一ポリマー成分流に分離される。
【0026】
図1は、流れ14からのMAS混合物(全体が参照番号52によって示されている)が、容器51において2つの別個の層(所望の複数の固体層53及び望ましくない液体層54)に分離したことを示している。所望の固体層53は、MAS混合物中の他の成分から分離され除去される複数の浮遊性固体成分の所望の層を含む。例えば、所望の固体層は、粒子の分散体、複数のミクロンサイズの粒子、フレーク又はペレット、又は、MAS混合物中の他の成分から分離する少なくとも1つの単一ポリマー成分の複数のストランドを含み得る。望ましくない液体層54は、浮遊性ではなく望ましくない固体も含有し得る。一実施形態では、例えば、固体層53を形成する固体(例えば、PE粒子)は、液体溶液層54の上部に浮遊して、所望の複数の固体(例えば、複数の粒子)層53を形成する。
【0027】
分離ステップ50の後、粒子層53は、回収され、粒子53を、流れ15を介してリサイクルシステム(図示せず)に回すことによってリサイクル(再使用)されて、新しい製品55を形成することができる。いくつかの実施形態では、新しい製品55は、例えば、元の物品21と同様の物品(例えば、ボトル容器、フィルム又は包装物品)であることができ、又は新しい製品は、物品21とは異なる何らかの他の物品であることができる。代替的に、粒子層53は、粒子53が使用される前に、乾燥ステップなどの異なる処理ステップに送ることができる。液体溶液層54は、剪断ステップ(e)の間に、溶融物を水性液体溶液で処理した後のマルチPC溶融物の残留物又は尾鉱を含み得る。分離ステップ50の後、液体層54を回収し、流れ16を介して、液相54中の他の成分を回収するための回収ステップなどの別の処理ステップ56に送ることができるか、又は所望であれば液体54を廃棄することができる。
【0028】
本発明のプロセスを説明するために、それによって限定されるものではないが、一実施形態では、例えば、物品若しくは物品の混合物、例えば、プラスチックボトル容器又は異なる物品の混合物、例えば、ポリプロピレン(polypropylene、PP)及びポリエチレン(polyethylene、PE)ブレンドなどの複数のポリマー成分から作製された、プラスチック硬質ボトル容器及びプラスチック可撓性バッグ(物品21を参照)を、分離プロセス50を使用して、PP流及びPE流に分離することができる。他の実施形態では、分離プロセス50を使用して、流れ中に単一ポリマー成分の濃縮された濃度を有する単一ポリマー成分の少なくとも1つの流れ(例えば、流れ14)を生成する。好ましい実施形態では、例えば、流れ中に濃縮された濃度のPEを有するPEポリマー成分流(層53)を、(例えば、
図1の流れ15を介して)リサイクルシステムに回して、このような単一ポリマー濃縮成分流のリサイクル(再使用)を可能にすることができる。
【0029】
マルチPC溶融物は、溶融された複数のポリマー成分の混合物又はブレンドを含み、その溶融物は、上記のプロセスの剪断ステップ(
図1の剪断操作40を参照)への供給流として有用である。マルチPC溶融物は、少なくとも2つ以上のポリマー成分の混合物、すなわち、少なくとも1つの第1のポリマー成分と、少なくとも1つの第2のポリマー成分と、の混合物であることができ、第1又は第2のポリマー成分のうちの少なくとも1つ(例えば、少なくとも1つの第1のポリマー成分)は、溶融され、新たな又は異なる物品に再形成することができる。好ましい実施形態では、第1及び第2のポリマー成分は、共結晶化しないポリマー成分であり、すなわち、所望のポリマー成分と、任意の他のポリマー成分と、の間で共結晶化が起こらない。ポリマーに関する、「結晶化する」、「結晶化」、「結晶化している」及び「共結晶化」という用語は、本明細書では、溶融相から固化する際に秩序ドメインを形成することを意味している。共結晶化は、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)を使用して測定することができ、共結晶化は、DSCを使用して、複数の溶融温度又はガラス転移温度事象が観察することができるか、又は観察することができない場合、容易に識別することができる。例えば、溶融材料について単一の溶融ピークが観察される場合、溶融材料は共結晶化されているとみなすことができる。別の例では、溶融材料について2つの溶融ピークが観察される場合、溶融材料は非共結晶化されているとみなすことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、プロセスの剪断ステップへのマルチPC溶融物供給流は、例えば、少なくとも1つの第1のポリマー成分を含み、好ましい一実施形態では、少なくとも1つの第1のポリマー成分は、溶融及び再形成することができるポリマー成分である。溶融物の第1のポリマー成分は、例えば、ポリオレフィン、アクリル、スチレン系ポリマー、スチレンコポリマー、ポリアミド、熱可塑性ウレタン、熱可塑性シリコーン、及びこれらの組み合わせを含む群から選択することができる。
【0031】
プロセスで有用なポリオレフィンの例としては、エチレンポリマー及びコポリマー、並びにプロピレンポリマー及びコポリマーが挙げられる。プロセスにおいて特に有用なものとしては、ポリオレフィン、例えば、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、超低密度ポリエチレン(ultra-low density polyethylene、ULDPE)、PP、エチレンと別のモノマーとのコポリマー、プロピレンと別のモノマーとのコポリマー、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」又は「高分岐ポリエチレン」とも称され、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500ポンド/平方インチ(pounds per square inch、psi)(100メガパスカル[MPa])超の圧力で、オートクレーブ又は管型反応器中で部分的又は完全にホモ重合又は共重合されることを意味していると定義される(例えば、米国特許第4,599,392号を参照)。LDPE樹脂は典型的には、0.916グラム/立法センチメートル(grams per cubic centimeter、g/cm3)~0.935g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0033】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系及びクロム系触媒系、並びにビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂を含み、また直鎖状、実質的に直鎖状又は不均質なポリエチレンコポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEほど長くはない鎖の分岐を含有し、例えば、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号に記載のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質に分岐したエチレンポリマー、及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号及び同第5,854,045号に開示されているものなど)を含有する。LLDPEは、当技術分野で既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0034】
「MDPE」という用語は、0.926g/cm3~0.935g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又はビス-メタロセン触媒及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され、MDPEは、典型的には、2.5を超える(>2.5)分子量分布(molecular weight distribution、「MWD」)を有する。
【0035】
「HDPE」という用語は、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて一般に調製される、0.935g/cm3超かつ最大0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0036】
「ULDPE」という用語は、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて一般に調製される、0.880g/cm3~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0037】
「PP」という用語は、プロピレンモノマーから誘導された50重量%を超える単位を含むポリプロピレンポリマーを意味する。このようなポリマーとしては、ポリプロピレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーから誘導された単位を意味している)が挙げられる。当技術分野で既知であるポリプロピレンの一般的な形態としては、ホモポリマーポリプロピレン(homopolymer polypropylene、hPP)、ランダムコポリマーポリプロピレン(random copolymer polypropylene、rcPP)、耐衝撃性コポリマーポリプロピレン(hPP+、少なくとも1つのエラストマー系耐衝撃性改質剤)(impact copolymer polypropylene、ICPP)又は高耐衝撃性ポリプロピレン(high impact polypropylene、HIPP)、高溶融強度ポリプロピレン(high melt strength polypropylene、HMS-PP)、アイソタクチックポリプロピレン(isotactic polypropylene、iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(syndiotactic polypropylene、sPP)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、マルチPC溶融物供給流中に存在する第1のポリマー成分は、ポリオレフィン又はポリオレフィンコポリマーである。他の好ましい実施形態では、ポリオレフィン成分は、HDPE、LDPE、LLDPE、エチレンコポリマー、又はこれらの混合物からなる群から選択される。更に他の好ましい実施形態では、プロセスにおける第1のポリマー成分として有用なポリマーは、0.5グラム/10分(g/10分)~80g/10分のメルトインデックス、及び60℃~150℃の溶融温度を有するポリマー材料である。
【0039】
他の実施形態では、マルチPC溶融物供給流中に存在する第1のポリマー成分としては、市販のポリオレフィン又はポリオレフィンコポリマー、例えば、VERSIFY(The Dow Chemical Companyから入手可能なランダムコポリマー)、INTUNE(これもThe Dow Chemical Companyから入手可能なブロックコポリマー)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、マルチPC溶融物供給流中に存在する第2のポリマー成分は、0.5g/10分~400g/10分のメルトインデックスと、第1のポリマー成分材料よりも高い溶融温度とを有する他のポリマーから選択することができる。例えば、第2のポリマー成分としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、金属化PETフィルム又は金属化PPフィルムなどの配向フィルムの金属化形態、PP、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
プロセスにおいてマルチPC溶融物供給流として使用される好ましい複数のポリマーブレンド又はポリマーの組み合わせは、例えば、ポリプロピレン//ポリエチレン(polypropylene//polyethylene、PP/PE)、ポリエチレンテレフタレート//ポリエチレン(polyethylene terephthalate//polyethylene、PET/PE)、配向金属化-ポリエチレンテレフタレートフィルム//ポリエチレン(metallized-polyethylene terephthalate film//polyethylene、m-PET/PE)、ポリアミド//ポリエチレン(polyamide//polyethylene、PA/PE)、及びこれらの混合物を含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、プロセスにおいてマルチPC溶融物供給流として使用される複数のポリマーブレンド又はポリマーの組み合わせは、使用済み製品又は工業後(post-industrial)リサイクル製品から供給することができる。
【0043】
マルチPC溶融物からポリマー成分を分離及び回収するためのプロセスは、水溶液を液体形態に維持するのに十分な圧力で加圧することができる水性分離流体溶液(本明細書では「水溶液」と略す)を提供するステップを含む。一実施形態では、水溶液は、(i)水と、(ii)少なくとも1つの分散剤と、(iii)いずれかの他の任意選択の所望の添加剤又は成分と、の水性液体混合物を含む。任意選択の所望の添加剤は、水溶液中で、PEなどの少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子又はストランドの形成をより容易に可能にすることができる添加剤であり、得られる第1のポリマー成分流は、濃縮された第1のポリマー成分(例えば、PE)濃度を有する。
【0044】
好ましい一実施形態では、プロセスの水溶液において使用される水は、例えば、脱イオン水を含む任意の供給源からの水であることができる。水は、水溶液中で希釈剤として作用する。
【0045】
水溶液を形成するために使用される水の量は、1つの一般的な実施形態では50重量%~99.9重量%、別の実施形態では65重量%~99.5重量%、更に別の実施形態では85重量%~97.5重量%である。
【0046】
一実施形態では、水溶液は、少なくとも1つの分散剤(界面活性剤とも称され得る)、成分(ii)を含む。分散剤としては、例えば、エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)ブレンド、エチレンコポリマー、当技術分野で知られている他の従来の分散剤、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
プロセスにおいて有用な分散剤は、ポリマー分散体のために当技術分野で使用される従来の分散剤であることができる。例えば、分散剤は、少なくとも1つのカルボン酸、少なくとも1つのカルボン酸の塩、又はカルボン酸エステル若しくはカルボン酸エステルの塩を含むことができる。カルボン酸、カルボン酸の塩、又はカルボン酸エステル若しくはそのようなエステルの塩のカルボン酸部分は、最大60個の炭素原子(C)、又は最大50個、又は最大40個、又は最大30個、又は最大25個の炭素原子を有し得る。カルボン酸、カルボン酸の塩、又はカルボン酸エステル若しくはそのようなエステルの塩のカルボン酸部分は、少なくとも12個、少なくとも若しくは少なくとも15個、又は少なくとも20個、又は少なくとも25個の炭素原子を有することができる。塩形態である場合、分散剤は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又はアンモニウム若しくはアルキルアンモニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンを含む。分散剤は、エチレンアクリル酸コポリマー若しくはエチレンメタクリル酸コポリマーなどのオレフィン(例えば、エチレン)カルボン酸ポリマー、又はその塩であることができる。代替的に、分散剤は、アルキルエーテルカルボキシレート、石油スルホネート、スルホン化ポリオキシエチレン化アルコール、硫酸化又はリン酸化ポリオキシエチレン化アルコール、ポリマーエチレンオキシド/プロピレンオキシド分散剤、一級及び二級アルコールエトキシレート、アルキルグリコシド、及びアルキルグリセリドから選択することができる。上記分散剤の組み合わせも使用することができる。
【0048】
水溶液を形成するために使用される分散剤(又は2つ以上の分散剤の組み合わせ)の量は、一般的な一実施形態では0.1重量%~35重量%、別の実施形態では0.5重量%~25重量%、更に別の実施形態では、3重量%~10重量%である。
【0049】
分散剤(又は2つ以上の分散剤の組み合わせ)は、任意の汚染された熱可塑性樹脂、分散剤及びいずれかの任意選択の成分の総重量(すなわち、水を除く組み合わせの重量)に基づいて、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%から、最大35重量%まで、又は最大30重量%まで、又は最大20重量%まで、又は最大10重量%までの量で使用される。
【0050】
1つの一般的な実施形態では、水溶液は、2つの成分(i)及び(ii)を含むが、水溶液は、水溶液の優れた利益/特性/性能を維持しながら、特定の機能の性能を可能にするために、多種多様な任意選択の添加剤と配合され得る。成分(iii)である任意選択の成分は、水溶液の成分(i)に添加され得るか、又は任意選択の成分は、水溶液の成分(ii)に添加され得るか、又は任意選択の成分は、水溶液の成分(i)及び(ii)の両方に添加され得る。例えば、一実施形態では、水溶液中で有用な任意選択の添加剤である成分(iii)としては、酵素、触媒、上記したものとは異なる他の界面活性剤又は分散剤、pH調整剤、相溶化剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
例えば、一実施形態では、プロセスで使用することができる任意選択の他の界面活性剤は、カチオン性、非イオン性、アニオン性、及びこれらの混合物を含む、当技術分野で知られている任意の従来の界面活性剤であることができる。任意選択の界面活性剤の濃度は、1つの一般的な実施形態では0重量%~30重量%、別の実施形態では0.05重量%~30重量%であることができる。好ましい実施形態では、任意選択の界面活性剤の濃度は、所望の製造された製品の最終的な機械的特性への更なる影響を防止するために、一般的な濃度範囲の下限近くであることができる。
【0052】
分散剤に加えて、相溶化剤を使用することができる。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーなどの非イオン性分散剤が使用されるとき、追加の相溶化剤が特に望ましい場合がある。相溶化剤はまた、アニオン性又はカチオン性の分散剤と組み合わせて使用することができる。
【0053】
相溶化剤は、分散剤と熱可塑性物質との間の相溶性を改善することができる。相溶化剤は、例えば、酸官能化ワックスであり得る。相溶化剤は、概して、分散剤よりも少ない量の酸官能基を有するか、又は換言すれば、より高い酸当量を有することになる。相溶化剤は、10~70の酸価を有し得る。「酸価」は、材料(この場合、相溶化剤)の1グラム中に存在する遊離酸の中和に必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。相溶化剤は、190℃及び2.16キログラム(kg)荷重で500g/10分~5,000,000g/10分のメルトインデックスを有することができる。相溶化剤の非限定的な例としては、酸官能性変性ポリオレフィンワックス、無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーワックス、無水マレイン酸変性ポリエチレンワックス、無水マレイン酸変性ポリプロピレンワックス、及びこれらの混合物が挙げられる。相溶化剤の市販例としては、Clariant Corporationから入手可能なLICOCENE(商標)431安定化無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンワックス(MA-g-PEと称されることもある)が挙げられる。任意選択の相溶化剤の量は、汚染された熱可塑性物質、分散剤、及び相溶化剤、並びにいずれかの他の任意選択の成分の総重量(すなわち、水を除く組み合わせの重量)に基づいて、0重量%、又は0.5重量%から、最大15重量%まで、又は最大10重量%までであることができる。
【0054】
一定の分散剤又は相溶化剤の場合、分散剤の有効性を改善するために中和剤を含むことが望ましい場合がある。例えば、金属水酸化物(例えば、KOH)などの塩基を添加することができる。中和剤又は塩基の量は、分散剤及び任意の相溶化剤の累積的な酸価に基づいて、60パーセント(%)~120%であることができる。
【0055】
一般的な実施形態では、水溶液に添加するのに有用な成分(iii)である他の任意選択の添加剤の量は、加圧水溶液中の成分の総重量に基づいて、一実施形態では0重量%~5重量%、別の実施形態では0.01重量%~2.5重量%、更に別の実施形態では1重量%~1.5重量%の範囲であることができる。
【0056】
プロセスで使用される水性液体溶液は、プロセスで使用される熱可塑性ポリマーを処理するために使用される場合、いくつかの有利な特性及び利益を有する。例えば、水性液体溶液は、ポリマー相と、水相と、の界面張力を低下させて分散を可能にする。
【0057】
プロセスは、マルチPC溶融物を水溶液と組み合わせる前に、かつ剪断及び分離ステップの前に、少なくとも1つのマルチPC熱可塑性物品をプロセス条件下で溶融させて、溶融又は融解されたマルチPC物品(「マルチPC溶融物」として上記した)を形成するための溶融ステップを含む。いくつかの実施形態では、使用される温度は、例えば、マルチPC熱可塑性物品を溶融物に変換するのに十分な温度である。他の実施形態では、例えば、マルチPC溶融物を形成するために使用される温度は、第1のポリマー成分に応じて、マルチPC溶融物の少なくとも第1のポリマー成分の溶融温度を超える温度から最大280℃までであることができる。好ましい実施形態では、溶融温度は、マルチPC溶融物の分解が起こり得る温度より低く維持されるべきである。例えば、マルチPC溶融物供給流中の第1のポリマー成分の融点(melting point、MP)温度は、最大300℃の温度であることができる。いくつかの実施形態では、第1のポリマー成分のMP温度は、一実施形態では40℃~250℃、別の実施形態では90℃~190℃、更に別の実施形態では110℃~140℃の範囲であることができる。したがって、いくつかの実施形態では、プロセスで使用される溶融温度は、例えば、少なくとも105℃、又は少なくとも110℃、又は少なくとも130℃、又は少なくとも150℃、又は少なくとも160℃から、最大300℃まで、又は最大280℃まで、又は最大250℃まで、又は最大240℃まで、又は最大230℃まで、又は最大220℃まで、又は最大210℃まで、又は最大200℃までであることができる。
【0058】
プロセスは、添加ステップ、例えば、上記のプロセスのステップ(d)を含む。添加ステップでは、水性液体溶液は、(I)少なくとも水溶液と、(II)少なくともマルチPC溶融物(すなわち、上記の「MAS混合物」)と、の配合物又は組成物混合物を形成するのに十分な濃度及びプロセス条件下で、マルチPC溶融物に添加することができる。添加ステップは、剪断ステップ及び分離ステップの前に行ってもよい。また、いくつかの実施形態では、水溶液は、MAS混合物を流動性液体形態に維持するためのプロセス条件下で、マルチPC溶融物に添加される。添加ステップの温度は、上記の溶融温度と同じであることができる。したがって、いくつかの実施形態では、添加ステップ中に使用される温度は、例えば、少なくとも105℃、又は少なくとも110℃、又は少なくとも130℃、又は少なくとも150℃、又は少なくとも160℃から、最大300℃まで、又は最大280℃まで、又は最大250℃まで、又は最大240℃まで、又は最大230℃まで、又は最大220℃まで、又は最大210℃まで、又は最大200℃までであることができる。
【0059】
好ましい実施形態では、水溶液を加圧して、水溶液を液体形態に維持する。いくつかの実施形態では、例えば、添加ステップ中に水溶液に適用される圧力は、少なくとも15ポンド/平方インチ(psig)、又は少なくとも20psig、又は少なくとも50psig、又は少なくとも80psig、又は少なくとも100psig、又は少なくとも150psig、又は少なくとも200psigから、最大1000psigまで、又は最大600psigまで、又は最大500psigまで、又は最大450psigまで、又は最大400psigまで、又は最大350psigまで、又は最大300psigまでであることができる。代替的に、圧力は、少なくとも100kPa、又は少なくとも150kPa、又は少なくとも200kPa、又は少なくとも500kPa、又は少なくとも1,000kPaから、最大7MPaまで、又は最大4MPaまで、又は最大3.5MPaまで、又は最大3MPaまでであることができる。
【0060】
水溶液がマルチPC溶融物と組み合わされるか又は混合されてMAS混合物を形成する上記添加ステップの後、プロセスは、マルチPC溶融物の少なくとも1つの第1のポリマー成分の溶融温度を超える温度でMAS混合物を剪断ステップにかけることを含む。したがって、MAS混合物は、マルチPC溶融物中の少なくとも第1のポリマー成分の溶融温度を超える高温で、かつMAS混合物が剪断されているときに水溶液又はMAS混合物中に存在する水及びいずれかの他の任意選択の液体添加剤を流動性液体形態に保つために高圧で、剪断される。
【0061】
いくつかの実施形態では、例えば、剪断ステップ中にMAS混合物(すなわち、マルチPC溶融物と、水性液体溶液と、の組成物混合物)に適用される温度は、上記の溶融ステップ及び添加ステップの温度と同じであることができる。例えば、水性液体溶液の存在下でのマルチPC溶融物の剪断ステップは、第1のポリマー成分に応じて、複数の溶融温度ピーク、ガラス転移温度ピーク又はこれらの組み合わせを有する少なくとも2つ以上のポリマー成分からなるマルチPC溶融物の少なくとも1つのポリマー成分(例えば、少なくとも第1のポリマー成分)の溶融温度を超える温度、及び最大280℃までの温度で、行うことができる。したがって、いくつかの実施形態では、剪断ステップ中に使用される温度は、例えば、1つの一般的な実施形態では60℃~280℃、別の実施形態では90℃~190℃、更に別の実施形態では140℃~170℃であることができる。他の実施形態では、剪断ステップ温度は、少なくとも105℃、又は少なくとも110℃、又は少なくとも130℃、又は少なくとも150℃、又は少なくとも160℃から、最大280℃まで、又は最大250℃まで、又は最大240℃まで、又は最大230℃まで、又は最大220℃まで、又は最大210℃まで、又は最大200℃までであることができる。
【0062】
また、いくつかの実施形態では、例えば、剪断ステップ中にMAS混合物に適用される圧力は、溶融ステップ及び添加ステップの圧力と同じであることができる。したがって、いくつかの実施形態では、剪断ステップ中に使用される圧力は、例えば、少なくとも15psig、又は少なくとも20psig、又は少なくとも50psig、又は少なくとも80psig、又は少なくとも100psig、又は少なくとも150psig、又は少なくとも200psigから、最大1000psigまで、又は最大600psigまで、又は最大500psigまで、又は最大450psigまで、又は最大400psigまで、又は最大350psigまで、又は最大300psigまでであることができる。代替的に、圧力は、少なくとも100kPa、又は少なくとも150kPa、又は少なくとも200kPa、又は少なくとも500kPa、又は少なくとも1,000kPaから、最大7MPaまで、又は最大4MPaまで、又は最大3.5MPaまで、又は最大3MPaまでであることができる。
【0063】
MAS混合物の剪断は、溶融形態のマルチPC溶融物で起こる。剪断の量は、マルチPC溶融物中の複数のポリマー成分を水溶液の存在下で小さな粒子に破壊するのに十分であるべきである。例えば、MAS混合物への比機械エネルギー入力は、少なくとも0.01キロワット時/キログラム(kilowatt hours per kilogram、kWh/KG)、又は少なくとも0.05kWh/KG、又は少なくとも0.08kWh/KGであることができる。比機械エネルギーは、最大0.5kWh/KG、又は最大0.4kWh/KG、又は最大0.3kWh/KGであることができる。好ましい実施形態では、押出機システムが、剪断ステップを行うために使用されるとき(例えば、
図1の番号41として示した押出機を参照)、押出機の比機械エネルギーは、以下の数式を使用して計算することができる:
{(キロワット単位のモータの定格出力)×[(実際に適用されたトルク)/(押出機の最大トルク)]×[(スクリュー速度)/(押出機の最大スクリュー速度)]×押出機システムの効率}/[押出機における材料スループットの量(kg/h)]。
【0064】
押出機システムの効率とは、モータエネルギーをマルチPC溶融物に伝達する効率である。例えば、一定のエネルギー損失が、例えば、ギアボックス又は他の機械的特徴部内で生じ得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、MAS混合物流は、1つの一般的な実施形態では20分未満(<20分)、別の実施形態では<10分、更に別の実施形態では<6分の時間、剪断に曝露される。他の実施形態では、MAS混合物流の剪断は、1つの一般的な実施形態では1分~30分、別の実施形態では2分~12分、更に別の実施形態では4分~10分の時間にわたって行うことができる。
【0066】
MAS混合物(すなわち、加圧水溶液と接触しているマルチPC溶融物)を剪断するステップの間に、マルチPC溶融物中の少なくとも1つのポリマー成分(例えば、少なくとも1つの第1のポリマー成分)の分散体、粒子、又はストランドが、濃縮されたポリマー濃度で形成される。
【0067】
剪断ステップ中、水溶液は、1つの一般的な実施形態では1重量%~50重量%、別の実施形態では2.5重量%~35重量%、更に別の実施形態では5重量%~25重量%の濃度でMAS混合物中に存在する。
【0068】
一実施形態では、プロセスのステップのいずれか又は全てを、従来のバッチ装置を使用してバッチプロセスとして行うことができるか、又は、別の実施形態では、プロセスを、従来の連続装置を使用して連続プロセスとして行うことができる。好ましい実施形態では、剪断ステップは、連続ベースで押出機を使用して行う。
【0069】
高温及び高圧でのMAS混合物(すなわち、いずれかの他の任意選択の配合成分を含む、マルチPC溶融物と水溶液とを含む混合物)の剪断は、剪断、圧力制御及び温度制御を提供することができる任意のデバイスにおいて、生じ得る。デバイスは、例えば、剪断ゾーン及び抽出ゾーンを有する押出機などの従来の押出機システムであることができる。押出の当業者に知られている他の従来の補助装置としては、例えば、背圧調整器、溶融ポンプ、又はギアポンプに連結された押出機を挙げることができる。
【0070】
一実施形態では、再び
図1を参照すると、例えば、本発明のプロセスの溶融、剪断及び抽出ステップを行うための単一二軸スクリュー押出機を含む押出機システム40が示されている。しかしながら、押出機システムは、溶融、剪断及び抽出ステップを提供するために1つ以上の押出機を含むことができる。一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、及びこれらの組み合わせなどの異なるタイプの押出機を使用することができる。好ましい実施形態では、
図1に示したプロセスを行うために単一二軸スクリュー押出機を使用する。
【0071】
いくつかの実施形態では、マルチPC熱可塑性物品又は材料を溶融してマルチPC溶融物を形成することによって供給されるマルチPC溶融物を作り出すために押出機を使用する前に、マルチPC熱可塑性物品又は材料は、物品又は材料を粉砕、細断、又はペレット化などする高密度化プロセスによってマルチPC熱可塑性物品又は材料を加工することによって、固体(すなわち、非溶融)ペレット、粉末、又はフレークの形態などの固体形態で提供される。次いで、固体ペレット、粉末、又はフレークを、例えば、供給ホッパーから押出機の供給入口に供給することができる。追加の固体配合成分、例えば、任意選択の固体界面活性剤、任意選択の固体相溶化剤、又は他の所望の任意選択の固体材料を、押出機の供給入口で、又は別個の異なる押出機入口を介して押出機の供給入口付近で、ペレット、粉末、又はフレークで添加することもできる。例えば、他の固体配合成分を、固体ペレット、粉末、又はフレークと配合又は組み合わせることができ、その組み合わせた材料を、押出機の供給入口に加えることができるか、又は他の固体配合成分は、分離した異なる押出機入口を通して、固体ペレット、粉末、又はフレークとは別個に押出機に添加することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、マルチPC熱可塑性物品又は材料は、押出機の第1の部分(溶融ゾーン)において溶融されてマルチPC溶融物を形成し、水溶液及び任意の他の所望の配合成分は、実質的に同時に押出機に供給されてマルチPC溶融物と接触することができる。代替的に、最初に、マルチPC溶融物を別個に調製し、他の所望の配合成分を押出機に供給して、マルチPC溶融物が形成される前又は後に、マルチPC溶融物と接触させることができる。別の実施形態では、例えば、少なくとも2つの押出機を使用して、第1の押出機及び第2の押出機を含むプロセスを行うことができる。例えば、マルチPC溶融物を第1の押出機で形成することができ、次いで、そのマルチPC溶融物を、第1の押出機と連結された別の異なる第2の押出機に供給することができる。水溶液及び任意の他の所望の配合成分は、実質的に同時に又は別々に、マルチPC溶融物と一緒に第2の押出機に供給することができる。次いで、マルチPC溶融物(添加された任意の他の所望の配合成分を有する)を、例えば、2台の押出機が使用される場合は、第2の押出機の剪断ゾーン及び抽出ゾーンに送達することができるか、又は単一の押出機の剪断ゾーン部分及び抽出ゾーン部分に送達することができる。
【0073】
押出機の第1の部分(溶融ゾーン)のための(又は第2の押出機の剪断及び抽出ゾーンに供給する従来の第1の押出機供給のための)温度設定は、高密度化マルチPC熱可塑性物品又は材料を溶融物に変換するのに十分である。例えば、その温度は、少なくとも105℃、又は少なくとも110℃、又は少なくとも130℃、又は少なくとも150℃、又は少なくとも160℃から、最大300℃まで、又は最大280℃まで、又は最大250℃まで、又は最大240℃まで、又は最大230℃まで、又は最大220℃まで、又は最大210℃まで、又は最大200℃までであることができる。
【0074】
剪断及び抽出ゾーンにおける温度設定は、押出機の第1の部分における温度設定におけるものと同じであってもよく、又はより低くてもよいが、依然として溶融温度を上回る。小規模押出機については、温度は、押出機の初期部分及び剪断/抽出ゾーンを通して実質的に同じであることができる。押出機システムの温度プロファイルは、押出機の始めにおいて供給材料を加熱するための任意の数の加熱ゾーンと、剪断及び抽出ゾーンの後に供給材料を冷却するための任意の数の冷却ゾーンとを含むことができる。例えば、1つ以上の初期ゾーンは、25℃~100℃の温度であってよく、所望の溶融並びに/又は剪断及び抽出温度に達するまで、段階的に上昇する。同様に、任意選択の冷却ゾーンは、所望に応じて段階的に約100~25℃であり得る。剪断された混合物は、冷却及び/又は希釈のための押出機のゾーンの後の任意選択の最終ゾーンにおいて任意選択のリザーバから任意選択の押出機入口を介して添加される追加の水又は他の配合成分で更に希釈することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、剪断ステップ中に(押出機の剪断ゾーンにおいて)MAS混合物に適用される圧力は、少なくとも15psig、又は少なくとも20psig、又は少なくとも50psig、又は少なくとも80psig、又は少なくとも100psig、又は少なくとも150psig、又は少なくとも200psigから、最大1,000psigまで、又は最大600psigまで、又は最大500psigまで、又は最大450psigまで、又は最大400psigまで、又は最大350psigまで、又は最大300psigまでであることができる。代替的に、圧力は、少なくとも100kPa、又は少なくとも150kPa、又は少なくとも200kPa、又は少なくとも500kPa、又は少なくとも1,000kPaから、最大7MPaまで、又は最大4MPaまで、又は最大3.5MPaまで、又は最大3MPaまでであることができる。
【0076】
他の実施形態では、液体又は固体形態の追加の配合成分を、1つ以上の供給ホッパー又はポンプを介して、1つ以上のリザーバから、1つ以上の押出機入口を通して押出機に入れることができる。押出機の入口は、剪断及び抽出ゾーンの始めに存在することができるが、任意選択で、例えば、マルチPC熱可塑性物品又は材料が溶融されてマルチPC溶融物を形成した後に、押出機の一部にある剪断及び抽出ゾーンから上流のリザーバから水溶液を添加することができる。他の実施形態では、水溶液の液体配合成分、及びいずれかの所望の任意選択の成分、例えば、任意選択の相溶化剤、任意選択の洗浄剤、任意選択の塩基を、別個のポンプを通して別個の貯蔵容器から供給することもできる。任意の好適なポンプを使用することができる。例えば、240バール(24MPa)の圧力で約150立方センチメートル/分(cc/分)の流れを提供するポンプを使用して、配合成分を押出機に提供することができる。別の例として、液体注入ポンプは、200バール(20MPa)で300cc/分、又は133バール(13.3MPa)で600cc/分の流れを提供する。別の実施形態では、液体配合成分は、任意選択で、予熱器内で予熱することができる。
【0077】
概して、剪断及び抽出ゾーン内の圧力を維持するために、押出機からの通気はない。しかしながら、直列の2つの押出機、1つ目は、汚染されたマルチPC熱可塑性物品又は材料を溶融物に変換する押出機、2つ目は、MAS混合物(すなわち、マルチPC溶融物及びいずれかの任意選択の成分)の組み合わせを剪断する押出機を有するシステムでは、又は熱可塑性物質が溶融物に変換されるシステムの部分で通気することができる長い押出機システムでは、熱可塑性ポリマーブレンド樹脂が溶融物に変換されるシステムの部分で通気が発生する可能性がある。加えて、長いシステムでは、例えば、組み合わせたものをある程度脱水するために、冷却するための最終ゾーンの端部に向かって通気することができる。
【0078】
プロセスの剪断ステップ及びMAS混合物中の分散体、粒子又はストランドの形成後、プロセスにおいて分離ステップを使用して、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子又はストランドを、例えば、水、少なくとも1つの分散剤、少なくとも第2のポリマー成分、任意の残りの熱可塑性ポリマー樹脂成分、及び/又は任意の残りの任意選択の成分を含むMAS混合物中の他の成分から分離する。例えば、ポリマー(例えば、PE)分散体、粒子又はストランドは、MAS混合物から物理的に分離される。好ましい実施形態では、分離ステップは、浮遊プロセス、遠心分離プロセス、濾過プロセス、又は凝集プロセスなどの従来のプロセスを介して行うことができる。
【0079】
MAS混合物を剪断した後に形成されたマルチPC溶融物の第1のポリマー成分、すなわち剪断後に形成されてMAS混合物中に存在する濃縮された第1のポリマー成分流は、MAS混合物中に存在する他の成分から分離することができ、続いて濃縮されたポリマー成分流を捕集/回収することができる。MAS混合物中に存在する他の成分としては、水、第2のポリマー成分、及び他の残りの樹脂成分を挙げることができる。所望の濃縮されたポリマー成分流を分離及び捕集するための方法は、例えば、(1)最初に所望の濃縮されたポリマー成分流をMAS混合物の上部に浮遊させるプロセスであって、所望の濃縮されたポリマー成分流は、一般に固体材料であり、大きな粒子の形態であり、次いで、MAS混合物の上部から上部材料層をすくい取るか、又はMAS混合物から上部材料層を濾過することによって、材料を捕集する、プロセス、(2)その材料をまず最初に濾過して材料の小粒子を捕集し、次いで小粒子を凝集させて濾過プロセスを使用して捕集することができるより大きな粒子(凝集体)を形成するプロセス、(3)連続式又はバッチ式のいずれかにおいて、遠心力によって材料を分離するための遠心分離プロセス、及び/又は(4)押出機中の材料から、水又は他の液体を迂回させることによって、押出機中で材料を分離するための押出機プロセス、を含む。分離された濃縮ポリマー成分流(例えば、濃縮された第1のポリマー濃度を有する第1のポリマー成分流)は、乾燥されて粉末を形成することができるか、又はペレタイザーを通して処理して複数のペレットを形成することができる。粉末を更にふるい分けして、より大きい若しくはより小さいサイズの汚染物質又は交互ポリマー(alternate polymer)を除去することができる。
【0080】
一般に、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分散体、粒子又はストランドを、MAS混合物中の他の成分から分離するための、いくつかの実施形態における分離ステップは、短い時間、例えば、1つの一般的な実施形態では<20分、別の実施形態では<10分、更に別の実施形態では<6分の時間にわたって行うことができる。他の実施形態では、分離ステップは、1つの一般的な実施形態では1分~30分、別の実施形態では2分~12分、更に別の実施形態では4~10分の時間にわたって行うことができる。
【0081】
プロセスは、プロセスの剪断ステップで形成され、プロセスの分離ステップで分離された、濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分の分離された分散体、粒子又はストランドを回収するステップを含む。例えば、一実施形態では、プロセスで形成された、得られた分離された分散体、粒子又はストランドを、乾燥ステップに供して、分散体、粒子又はストランド中に存在する余分な水を除去し、また、その乾燥された分散体、粒子又はストランドを、更に処理することを容易にする、例えば、リサイクルプロセスに供することを容易にする。
【0082】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ステップ(g)の回収流を、乾燥、ペレット化、脱揮押出、蒸気ストリッピング、共ストリッピング、リサイクル、又はこれらの組み合わせに供するステップ(h)などの1つ以上の更なる処理ステップを含み得る。
【0083】
本発明のプロセスの利点のうちの1つは、本プロセスの接触ステップが、当技術分野で知られている従来のプロセス及び装置によって行うことができる点である。加えて、プロセスの別の利点は、プロセスを使用して分離ステップを行う前に、剥離プロセス又は剥離ステップが必要とされない点である。したがって、プロセスは、剥離プロセス又は溶解プロセスよりも複雑ではない。
【0084】
分離/回収プロセスの他の利点のいくつかとしては、例えば、以下の点が挙げられる:(1)プロセスは、所望の単一ポリマー成分流を濃縮することができ、(2)プロセスは、溶融物中に残っている他の成分から所望の濃縮された単一ポリマー成分流を分離することができ、(3)所望の分離された濃縮単一ポリマー成分流は、更なる処理機能を通過することができ、(4)所望の分離された濃縮単一ポリマー成分流は、リサイクルすることができ、(5)プロセスは、所望の分離された単一ポリマー成分流を、例えば、未使用樹脂、臭気スカベンジャー添加剤、酸化防止剤、UV安定剤、無機充填剤、スリップ剤、粘着防止剤などを含む他の成分とブレンドするなどの追加の任意選択の配合ステップを提供し、(6)マルチPC溶融物を処理するためのプロセスにおいて使用される水性液体溶液混合物は、溶媒性(solvent-borne)配合物とは対照的に水性(waterborne)配合物(すなわち、溶媒を含まない)であり、プロセスの水性配合物は、環境影響の懸念を有益に低減し、(7)プロセスは、分離を可能にするために、例えば、最大数時間(例えば、1時間~15時間)かかる場合のあるバッチ拡散ベースのプロセスなどの他のタイプのプロセスと比較して、より短い時間スケール(例えば、1分~1時間[hr]未満)で分離を可能にするという利点を有する連続押出機ベースのプロセスを使用する選択肢を提供する。
【0085】
プロセスの剪断ステップ中に形成され、かつプロセスの回収ステップで回収される第1のポリマー成分の分散体、粒子又はストランドの形態のマルチPC溶融物の分離、捕集及び回収された第1のポリマー成分は、所望の第1のポリマー成分が濃縮され、かつリサイクルプロセスによる第1のポリマー成分の処理などの更なる処理のために回収される、第1のポリマー成分流を含む。「濃縮された」、「濃縮」又は「濃縮する」とは、少なくとも1つの第1のポリマー成分の濃度が、第1のレベルの濃度から、第1のレベルの濃度よりも高い第2のレベルの濃度に増加されていることを意味している。例えば、マルチPC溶融物の少なくとも1つの第1のポリマー成分の濃度は、マルチPC溶融物がプロセスを通過する前には、第1のレベルであり、次いで、第1のレベルの濃度は、マルチPC溶融物がプロセスを通過した後には第2のレベルの濃度に増加する。
【0086】
一般に、マルチPC熱可塑性ポリマーブレンドの分散体、粒子又はストランドの形態で第1のポリマー成分流を生成するために本明細書に記載したように処理されていない第1のポリマー成分は、一実施形態では少なくとも1重量%、別の実施形態では少なくとも10重量%の量で濃縮される。濃縮された第1のポリマー成分流は、一実施形態では50重量%~100重量%、別の実施形態では90重量%~99重量%、なお別の実施形態では50重量%~90重量%であることができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、回収及び捕集された濃縮された第1のポリマー成分の平均粒径は、分散体又は粒子から捕集される場合、少なくとも0.1μm、少なくとも1μm、少なくとも5μm又は少なくとも10μmであることができる。平均粒径は、最大600μm、最大400μm、最大200μm、又は最大150μmであることができる。粒径は、Beckman Coulter粒径分析器などの標準的な粒径測定器具を使用することによって測定することができる。濃縮された第1のポリマー成分のストランドが捕集される場合、ストランドのサイズは、L/Dの比としてストランドの長さ(L)及び直径(D)を測定するための当業者に知られている他の従来のサイズ測定装置によって容易に測定することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、プロセスの回収ステップ(g)の後、ステップ(f)の濃縮された第1のポリマー成分濃度を有する少なくとも1つの第1のポリマー成分流の回収された分離された分散体、粒子又はストランドは、未使用樹脂、臭気スカベンジャー添加剤、酸化防止剤、UV安定剤、無機充填剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分と任意選択で配合又はブレンドすることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、プロセスの回収ステップ(g)の後、プロセスは、更なる処理ステップ(h)を任意選択で含み得る。例えば、ステップ(g)の回収流を、乾燥、ペレット化、脱揮押出、蒸気ストリッピング、共ストリッピング、リサイクル、又はこれらの組み合わせを含む1つ以上の更なるステップにかけることができる。好ましい一実施形態では、上記のマルチPC溶融物の分散体、粒子又はストランドの形態の濃縮された第1のポリマー成分流は、マルチPC溶融物の濃縮されていない第2のポリマーから分離及び回収された後、リサイクルシステムに回され、有利にはリサイクルプロセスにかけられる。例えば、上記プロセスのステップ(g)において捕集及び回収された所望の分離されたポリマー成分流の分散体、粒子又はストランドは、リサイクルシステムに供給されて、分散体、粒子又はストランドからリサイクル材料(リサイクレート)を供給することができる。次いで、分散体、粒子、又はストランドから生成された再生材料を使用して、リサイクル材料、すなわち、リサイクレート材料から、別の新しく異なる物品を製造することができる。例えば、異なる熱可塑性ポリマーの層から作製された多層包装、フィルム、又は物品は、プロセスによって処理することができ、次いで、プロセスに従って作製された分散体、粒子又はストランドを使用して、単層又は多層の新しい製品を含むことができる新しい異なる包装、フィルム又は物品を製造することができる。一般に、分散体、粒子又はストランドを再利用又はリサイクルするためのプロセスは、リサイクルの当業者に知られている従来のプロセスである。上記のリサイクルプロセスは、環境保護の利益のためにプラスチック廃棄物の量を低減するのに有用であり、望ましい。
【実施例】
【0090】
以下の本発明の実施例(本発明の実施例)及び比較例(比較例)(まとめて「実施例」とする)は、本発明のプロセスの特徴を更に詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして明示的にも黙示的にも解釈されることを意図しない。本発明の実施例は、アラビア数字によって識別され、比較例は、アルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。特に指示しない限り、全ての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0091】
実施例で使用した原料を、表Iに記載する。
【表1】
【0092】
以下のポリマー及びポリマーブレンドを、実施例で使用する:(1)ペットフードを包装するために使用されたPA/PEと標識された包装材料:25.8%のLDPE、60%のLLDPE、7.8%のPA、及び6.4%のLLDPEタイ層からなる5層PE/PAフィルム、(2)PET/PEと標識されたパウチ包装材料:例えば、23.7%のLDPE、55.3%のLLDPE、及び21%のPETを含むPET PEフィルム構造、(3)例えば、90%のDOWLEX(商標)2035G及び10%のSilver Dura-Larを含む、金属化されたポリエステルPE標識されたm-PET/PE、(4)例えば、それぞれHDPE 8940及びHDPE 8907と標識されたHDPE DMDA-8940-NT-7及びHDPE DMDA-8907-NT-7の50/50ブレンド、(5)PPと標識されたBraskem PP 6D43と、HDPE 8940と標識されたHDPE DMDA 8940-NT-7標識との50/50ブレンド、及び(6)Engage 8411と、HDPE 8940と標識されたHDPE DMDA 8940-NT-7標識との50/50ブレンド。
【0093】
ブレンドは、開示した剪断プロセスに供給する前に、標準的な処理技術を用いて二軸スクリュー押出機においてペレットへと配合される。
【0094】
以下の分散剤が、実施例で使用されている:(1)PRIMACOR(商標)5980i(エチレンアクリル酸コポリマー、20重量%コモノマー、密度=0.958g/cm3、メルトフローインデックス=300g/10分、融点=77.2℃、SK Global製)、(2)Pluronic(商標)F-108(エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、60℃の融点、数平均分子量(Mn)=14,600、BASF製)。
【0095】
塩基も実施例で使用され、一般に任意の塩基材料であることができる。例えば、実施例では、水酸化カリウム(水中30%)塩基が使用されている。
【0096】
相溶化剤は、実施例で使用され、一般に、任意の相溶化剤材料であることができる。例えば、実施例では、相溶化剤、Licocene 431(Clariantから市販されている)を使用する。
【0097】
試験を行うための一般的手順
実施例のために完了した試験は、12ゾーン25ミリメートル(mm)のBerstorff二軸スクリュー押出機で実施する。マルチPC組成物供給物は、大型Schenkフィーダーを通して押出機の供給口に投下されるペレット又はフレークとしてシステムに送達される。分散剤又は任意選択の添加剤などの他の固体は、KQX K-tronフィーダーを使用してペレット又は粉末として送達され、これも押出機の供給口に投下される。水又は他の液体成分は、注入器に通し、500D ISCOポンプによって送達される。追加の水を、注入器を通って押出機の更に下流へと、大型Hydracellポンプによって押出機に送達する。
【0098】
実施例で使用される、得られたポリマー分散体の組成物(分散体番号、1~5、「分散体1~5」と略し、本明細書において発明例を構成し、比較分散体A及びBは、「比較
分散体A~B」と略す)を、表IIに記載する。比機械エネルギーは、分散体実施例では、0.09kWh/KG~0.17kWh/KGであった
測定のための一般的な手順
出発材料及び濃縮されたポリマー材料のΔH比及びTm値は、Q100 DSC(TA Instruments,Inc.,New Castle,DEから入手可能な示差走査熱量計)を使用して測定される。測定条件は、10摂氏度/分(℃/分)加熱速度で-90℃~250℃であり、2サイクル実行する。結果は、2回目のサイクルから報告する。
【0099】
分離方法のための一般的手順
剪断後に形成された分散体、粒子又はストランドを分離するために実施例において使用される分離方法としては、例えば、以下に記載した(1)浮遊法又は(2)濾過法が挙げられる。
【0100】
(1)浮遊法
浮遊法では、押出機を出る得られた材料を容器に捕集し、次いで、その材料を、冷却し、容器中で24時間静置する。材料が冷却される間、粒子は、容器の上部に向かって浮遊し、材料の表面上で静止する。材料の上部に浮遊している粒子は、スクープを使用して捕集される。次いで、捕集した材料を、真空濾過を使用してブフナー漏斗上で水で洗浄する。次いで、洗浄した材料を、24時間空気乾燥させ、その後、乾燥材料の特性を更に評価する。
【0101】
(2)濾過法
濾過法では、押出機を出る得られた材料を最初に容器に捕集する。次いで、その材料を混合し、その混合物をメッシュフィルターバッグ(800μmのメッシュサイズ)に注ぎ、分散体又は小粒子を、大きなポリマーストランドから単離する。大きなポリマーストランドはフィルターバッグに残る。フィルターバッグ中の残りの材料を、乾燥材料の特性を更に評価する前に72時間空気乾燥させる。
【0102】
前述のように、表IIには、様々なポリマーブレンドに使用した分散プロセスを記載している。得られた材料、すなわち、押出機を出る分散体、粒子又はストランドを、分離して回収し、次いで、得られた材料の特性を測定する。
【0103】
表IIIには、実施例で調製された分散体試料の濃縮PEの特性評価を記載している。
【表2】
【表3】
【0104】
上記実施例のデータから得られる重要な結果は、観察された2つの溶融温度ピーク、及び濃縮を示すDSCΔH面積の増加である。
【国際調査報告】