IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デルフォルトグループ、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-525295良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料
<>
  • 特表-良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料 図1
  • 特表-良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料 図2
  • 特表-良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料 図3
  • 特表-良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料 図4
  • 特表-良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】良好な膨張挙動を有する喫煙具用の水流絡合フィルタ材料
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20240705BHJP
   D21H 27/08 20060101ALI20240705BHJP
   D21H 13/08 20060101ALI20240705BHJP
   D04H 1/492 20120101ALI20240705BHJP
   D04H 1/4258 20120101ALI20240705BHJP
   D04H 1/26 20120101ALI20240705BHJP
   A24D 3/02 20060101ALI20240705BHJP
   A24D 3/10 20060101ALI20240705BHJP
   A24D 3/14 20060101ALI20240705BHJP
   A24D 3/16 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
D04H1/425
D21H27/08
D21H13/08
D04H1/492
D04H1/4258
D04H1/26
A24D3/02
A24D3/10
A24D3/14
A24D3/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574740
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2021066102
(87)【国際公開番号】W WO2022262955
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512252548
【氏名又は名称】デルフォルトグループ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DELFORTGROUP AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー、フォルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、バッハマン
【テーマコード(参考)】
4B045
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4B045BA02
4B045BA07
4B045BB10
4B045BC07
4L047AA08
4L047AA10
4L047AA12
4L047AA28
4L047AA29
4L047AB06
4L047BA04
4L047CA19
4L047CB01
4L055AA02
4L055AA03
4L055AA05
4L055AA07
4L055AA08
4L055AF09
4L055AF10
4L055AG10
4L055AG34
4L055AG40
4L055AG41
4L055AG42
4L055AG44
4L055AG46
4L055AG47
4L055AG48
4L055AG51
4L055AG64
4L055AH01
4L055AH17
4L055AH50
4L055BD01
4L055BE20
4L055CD03
4L055CE48
4L055CE51
4L055EA03
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA19
4L055EA26
4L055FA22
4L055GA31
(57)【要約】
喫煙具用のセグメントを製造するための水流絡合不織布が示される。前記水流絡合不織布は、ウェブ状であるとともに、前記水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、前記水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有し、前記水流絡合不織布は、機械方向と、これに直交するとともに前記水流絡合不織布の前記ウェブの平面内にある横方向と、を有し、前記水流絡合不織布は、前記横方向において特徴的な塑性変形性を有し、前記特徴的な塑性変形は、ISO1924‐2:2008に準拠した前記横方向における引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙具用のセグメントを製造するための水流絡合不織布において、
前記水流絡合不織布は、ウェブ状であるとともに、前記水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、
前記水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有し、
前記水流絡合不織布は、機械方向と、これに直交するとともに前記水流絡合不織布の前記ウェブの平面内にある横方向と、を有し、
前記水流絡合不織布は、前記横方向において特徴的な塑性変形性を有し、
前記特徴的な塑性変形は、ISO1924‐2:2008に準拠した前記横方向における引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とする、
水流絡合不織布。
【請求項2】
前記水流絡合不織布中のセルロース繊維の割合は、前記水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも60%~最大で100%、好適には少なくとも70%~最大で95%である、
請求項1に記載の水流絡合不織布。
【請求項3】
前記セルロース繊維は、パルプ繊維、再生セルロース製繊維、またはこれらの混合物により形成される、
請求項1または2に記載の水流絡合不織布。
【請求項4】
前記パルプ繊維は、単数の針葉樹材または複数の針葉樹材、単数の落葉樹材または複数の落葉樹材、または特に麻、亜麻、ジュート、ラミー、ケナフ、カポック、ココナッツ、アバカ、サイザル麻、竹、綿である他の植物、またはエスパルト草、またはこれら種々の調達源のパルプ繊維の混合物から調達される、
請求項3に記載の水流絡合不織布。
【請求項5】
再生セルロース製繊維の割合が、前記水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも5%~最大で50%、好適には少なくとも10%~最大で45%、特に好適には少なくとも15%~最大で40%である、
請求項3または4に記載の水流絡合不織布。
【請求項6】
前記再生セルロース製繊維は、少なくとも部分的に、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル(R)繊維、テンセル(R)繊維、またはこれらの混合物により形成される、
請求項3~5の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項7】
少なくとも18g/m~最大で55g/m、好適には少なくとも20g/m~最大で50g/mの坪量を有する、
請求項1~6の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項8】
前記水流絡合不織布は、前記横方向において特徴的な塑性変形性を有し、
前記特徴的な塑性変形性は、ISO1924‐2:2008に準拠した前記横方向における前記引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも15%~最大で40%、好適には少なくとも15%~最大で35%、特に少なくとも18%~最大で32%であることを特徴とする、
請求項1~7の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項9】
アルキルケテンダイマー(AKD)、特にアルケニルコハク酸無水物(ASA)である酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または特に有機もしくは無機の酸もしくは塩基であるpHを調整する物質、またはこれらの添加剤の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、
請求項1~8の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項10】
特にクエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウムであるクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、特に酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムである酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、またはこれらの添加剤の2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、
請求項1~9の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項11】
トリアセチン、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセローラ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、およびクエン酸トリエチルからなる群から選択される少なくとも1つの物質、またはこれらの物質の2つ以上の混合物を含む、
請求項1~10の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項12】
前記セルロース繊維の少なくとも一部が充填材を含み、
前記充填材は、好適には鉱物粒子、特に炭酸カルシウム粒子により形成される、
請求項1~11の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項13】
ISO534:2011に準拠して測定した前記水流絡合不織布の1つの層の厚さが、少なくとも25μm~最大で1000μm、好適には少なくとも30μm~最大で800μm、特に好適には少なくとも35μm~最大で600μmである、
請求項1~12の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項14】
ISO1924‐2:2008に準拠して測定した前記横方向における前記水流絡合不織布の幅に対する引張強さが、なくとも0.05kN/m~最大で5kN/m、好適には少なくとも0.07kN/m~最大で4kN/mである、
請求項1~13の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項15】
ISO1924‐2:2008に準拠して測定した前記横方向における前記水流絡合不織布の破断伸びは、少なくとも0.5%~最大で50%、好適には少なくとも0.8%~最大で40%である、
請求項1~14の一項に記載の水流絡合不織布。
【請求項16】
横方向にギャザーを寄せた水流絡合不織布と包装材料とを備える喫煙具用のセグメントにおいて、
前記水流絡合不織布は、前記水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、
前記水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有し、
前記水流絡合不織布は横方向を有し、前記横方向において、前記水流絡合不織布にギャザーが寄せられ、
ギャザーを寄せていない状態において、前記水流絡合不織布は、前記横方向において特徴的な塑性変形性を有し、
前記特徴的な塑性変形性は、ISO1924‐2:2008に準拠した前記横方向における引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とする、
セグメント。
【請求項17】
前記水流絡合不織布は、請求項2~15に規定された特徴のうちの1つ以上を有する、
請求項16に記載のセグメント。
【請求項18】
前記セグメントは、少なくとも3mm~最大で10mm、好適には少なくとも4mm~最大で9mm、特に好適には少なくとも5mm~最大で8mmの直径を有する円筒形である、および/または、
前記セグメントは、少なくとも4mm~最大で40mm、好適には少なくとも6mm~最大で35mm、特に好適には少なくとも10mm~最大で28mmの長さを有する、
請求項16または17の一項に記載のセグメント。
【請求項19】
ISO6565:2015に準拠した前記セグメントの単位長さ当たりの前記セグメントの吸引抵抗が、少なくとも1mmWG/mm~最大で12mmWG/mm、好適には少なくとも2mmWG/mm~最大で10mmWG/mmである、
請求項16~18のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項20】
前記包装材料は、紙またはフィルムにより形成される、
請求項16~19の一項に記載のセグメント。
【請求項21】
前記包装材料は、少なくとも20g/m~最大で150g/m、好適には少なくとも30g/m~最大で130g/mのISO536:2019に準拠した坪量を有する、
請求項16~20の一項に記載のセグメント。
【請求項22】
請求項1~15の一項に記載の前記水流絡合不織布を、クリンプ加工またはプリーツ加工し、
クリンプ加工またはプリーツ加工した水流絡合不織布から作製された好適に連続するトウを形成し、
クリンプ加工またはプリーツ加工した前記トウを包装材料で巻き、
巻いた前記トウを、所定長さの個々のロッドに切断する、
請求項16~21の一項に記載のセグメントを製造するためのプロセス。
【請求項23】
エアロゾル形成材料を含むセグメントと請求項16~21の一項に記載のセグメントとを備える喫煙具において、
請求項16~21の一項に記載の前記セグメントは、好適には、口端部に最も近く位置する前記喫煙具の前記セグメントである、
喫煙具。
【請求項24】
前記喫煙具は、フィルタ付きたばこであり、
前記エアロゾル形成材料は、タバコである、またはこれを含む、
請求項23に記載の喫煙具。
【請求項25】
前記喫煙具は、その意図された使用中に、前記エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない喫煙具であり、
前記エアロゾル形成材料は、好適には、タバコ、再構成タバコ、ニコチン、グリセローラ、プロピレングリコール、またはこれらの混合物からなる群から選択される材料を備える、
請求項23に記載の喫煙具。
【請求項26】
前記エアロゾル形成材料は、液体の形態で存在するとともに、前記喫煙具内の対応する容器に配置される、
請求項25に記載の喫煙具。
【請求項27】
A1‐セルロース繊維を備える繊維ウェブを提供するステップであって、前記繊維ウェブは、機械方向と、これに直交するとともに前記ウェブ平面内にある横方向と、を有するステップと、
A2‐前記繊維ウェブに向けた水ジェットにより前記繊維ウェブを水流絡合させて、水流絡合繊維ウェブを作製するステップと、
A3‐前記水流絡合繊維ウェブを乾燥させるステップと、
を備える水流絡合不織布を製造するためのプロセスにおいて、
ステップA1において、前記繊維ウェブ中のセルロース繊維の割合を、ステップA3における乾燥後に、前記水流絡合不織布の質量に対して前記水流絡合不織布が少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含むように選択し、
ステップA1およびステップA2を、前記水流絡合不織布に前記横方向において特徴的な塑性変形性が提供されるように実施し、前記特徴的な塑性変形性は、前記横方向においてISO1924‐2:2008に準拠して前記水流絡合不織布にステップA3における乾燥後に実施される引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とし、
ステップA3における乾燥後に、前記水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有する、
プロセス。
【請求項28】
複数の水ジェットを、ステップA2の水流絡合を実施するように使用し、
前記水ジェットを、前記繊維ウェブの前記機械方向を横断するように少なくとも1列に配置する、
請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップA2における水流絡合を、少なくとも2列の水ジェットにより実施し、
好適には、少なくとも1列の前記水ジェットは、前記繊維ウェブの2つの側面の各々に作用する、
請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップA3における乾燥を、少なくとも部分的に、熱風との接触により、赤外線放射により、またはマイクロ波放射により実施する、
請求項27~29の一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記プロセスにより製造される前記水流絡合不織布は、請求項1~15に一項に記載の水流絡合不織布である、
請求項27~30の一項に記載のプロセス。
【請求項32】
繊維ウェブを提供するための前記ステップA1は、
B1‐セルロース繊維を備える水性懸濁液を作製するステップと、
B2‐ステップB1からの前記懸濁液を走行ワイヤに塗布するステップと、
B3‐前記懸濁液を前記走行ワイヤを通して脱水し、前記繊維ウェブを形成するステップと、
を備え、
ステップB1において、前記繊維ウェブ中のセルロース繊維の量または割合を、ステップA3における乾燥後に、前記水流絡合不織布の質量に対して前記水流絡合不織布が少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含むように選択し、
前記繊維ウェブの前記機械方向が、ステップB3における前記ワイヤの走行方向により規定されるとともに、前記横方向が、これに対して直交するとともに前記繊維ウェブの平面内にある前記方向により規定され、
ステップB2において、前記懸濁液を、前記走行ワイヤの速度よりも遅い速度で前記走行ワイヤに塗布する、
請求項27~31の一項に記載のプロセス。
【請求項33】
ステップB1における前記水性懸濁液は、最大で3.0%、特に好適には最大で1.0%、より特に好適には最大で0.2%、特に最大で0.05%の固形分含量を有する、
請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
ステップB2およびステップB3の前記走行ワイヤは、水平方向に対して前記繊維ウェブの前記機械方向において上方に少なくとも3°~最大で40°の角度で、好適には少なくとも5°~最大で30°の角度で、特に好適には少なくとも15°~最大で25°の角度でそれぞれ傾斜する、
請求項32または33の一項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記プロセスは、前記走行ワイヤの2つの前記側面間の圧力差を生成してステップB3における前記懸濁液の脱水を支援するステップをさらに備え、
前記圧力差を、特に好適には、真空ボックスまたは適切な形状を有するホイルにより生成する、
請求項32~34の一項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記プロセスは、1つ以上の添加剤を前記繊維ウェブに塗布するさらなるステップを備え、
前記1つ以上の添加剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)、特にアルケニルコハク酸無水物(ASA)である酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または特に有機もしくは無機の酸もしくは塩基であるpHを調整する物質、およびこれらの混合物からなる群から選択される、
請求項27~35の一項に記載のプロセス。
【請求項37】
前記プロセスは、1つ以上の添加剤を前記繊維ウェブに塗布するさらなるステップを備え、
1つ以上の前記添加剤は、特にクエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウムであるクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、特に酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムである酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、
請求項27~36の一項に記載のプロセス。
【請求項38】
1つ以上の前記添加剤を、ステップA2とステップA3との間に、またはステップA3の後に塗布し、その後前記繊維ウェブを乾燥させるさらなるステップが続く、
請求項36および37の一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙具のセグメントを製造するのに適したフィルタ材料に関する。フィルタ材料は横方向に有利な塑性変形性を有するため、喫煙具用のセグメントをこれから効率的に製造することができる。また、本発明は、このフィルタ材料から製造される喫煙具用のセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙具は、典型的には、互いに並んで配置された少なくとも2つのロッド状のセグメントから構成されるロッド状の物品である。1つのセグメントは、加熱時にエアロゾルを形成することができる材料を含み、少なくとも1つのさらなるセグメントは、エアロゾルの特性に影響を与える役割を果たす。
【0003】
喫煙具は、フィルタ付きたばことすることができる。ここで、第1セグメントがエアロゾル形成材料、特にタバコを含み、さらなるセグメントがフィルタとして設計されるとともにエアロゾルをフィルタリングするように作用する。ここで、エアロゾルは、エアロゾル形成材料の燃焼により発生し、フィルタは、エアロゾルをフィルタリングするとともに、フィルタ付きたばこに所定の吸引抵抗を与える役割を主として果たす。
【0004】
しかしながら、喫煙具は、加熱式たばこ製品として知られるものでもあり得る。この場合、エアロゾル形成材料を加熱するだけで燃焼させない。これは、エアロゾル中の健康を害する物質の数および量が減少することを意味する。このような喫煙具も、少なくとも2つ、より多くの場合、特に4つのセグメントから構成される。1つのセグメントが、典型的にはタバコ、再構成タバコ、または他のプロセスで調製されたタバコを備えるエアロゾル形成材料を含む。さらに、加熱式たばこ製品の任意のセグメントは、エアロゾルを移送する、エアロゾルを冷却する、またはエアロゾルをフィルタリングする役割を果たす。
【0005】
セグメントは、通常、包装材料で巻かれている。紙が包装材料として使用されることが非常に多い。
【0006】
以下で明示的に記載されるか文脈から直接的に明瞭でない限り、「セグメント」とは、エアロゾル形成材料を含まない喫煙具のセグメントであって、例えばエアロゾルを移送する、冷却する、またはフィルタリングする役割を果たすセグメントを指すと理解すべきである。
【0007】
先行技術において、酢酸セルロースやポリラクチド等のポリマーからこのようなセグメントを形成することが知られている。喫煙具の消費後、喫煙具は適切に廃棄されなくてはならない。しかしながら、多くの場合、消費者は、単に使用済みの喫煙具を環境中に排気している。そして、情報や罰金によりこの行動を制限しようとする試みはほとんど成功していない。
【0008】
酢酸セルロースやポリラクチドは、環境中での生分解が非常に遅いため、喫煙具のセグメントをより良好に生分解する他の材料から製造することに、業界の関心がある。さらに、例えば欧州連合(EU)では、非天然ポリマーを使用することを実質的に削減または禁止する規制が議論されている。このため、市販の喫煙具に代替的なセグメントを用いることにも関心が持たれている。
【0009】
先行技術において、喫煙具用のセグメント、特にフィルタセグメントを紙から製造することが知られている。このようなセグメントは、一般に容易に生分解するが、欠点もある。一例として、紙製のフィルタセグメントは、一般にフィルタリング効率が高いため、乾燥したエアロゾルになることにより、従来の酢酸セルロース製のフィルタセグメントを有するタバコに比較して、エアロゾルの風味が低下する。さらに、フェノールに対するフィルタリング効率が、酢酸セルロースよりも低いことが多い。
【0010】
紙製のフィルタセグメントがまだ広く使用されていない本質的な理由は、その光学的外観にもある。喫煙具の口端部では、口端部に位置するセグメントの切断面が見える。酢酸セルロースから作製される通常のセグメントから、消費者は、個々の切断繊維がほとんど見えない白色の均質な表面に慣れている。しかしながら、紙製セグメントは、消費者に低品質の印象を与える粗い構造を有している。したがって、紙から作製されるセグメントは、消費者から切断面が見えないように、複数のセグメントから構成されるフィルタのセグメントの一部としてのみ使用されることが多い。そして、口端部に位置するセグメントは、依然として酢酸セルロースから作製されることが多い。このような光学的欠点を理由として、紙製セグメントの生分解性に関する利点を十分に生かすことができていない。
【0011】
先行技術において、不織布から喫煙具のセグメントを製造することも知られている。例えば、EP2515689では、不織布製のフィルタ材料が記載されているが、これは主にポリビニルアルコール、ポリ乳酸または他の非天然ポリマー製の繊維を含むため、生分解性に関する要件を完全に満たしていない。さらに、記載された不織布は薄すぎるため、これから製造されたセグメントの切断面は、光学的に許容可能な外観を有することができない。
【0012】
また、当技術分野において、生分解しやすい繊維製の紙から喫煙具用のフィルタ材料を製造することも知られている。US2015/0374030には、このようなフィルタ材料が記載されているが、これは麻、亜麻、アバカ、サイザル麻または綿製のパルプ繊維によりかなりの程度が構成されている。これらの繊維は、高価であるととともに、木材製のパルプ繊維に比較して成長期間が短いため、品質にばらつきが大きい。しかし、US2015/0374030の教示によれば、十分な多孔性を有する構造および十分に高い強度を同時に達成するためには、これらが必要である。木材パルプの使用は、緻密で圧縮した紙構造が作製されるため、推奨されない。実際に、木材パルプの割合は、常に50重量%未満であるべきであり、工業的に実施されている実施形態においては5重量%未満である。また、このようなフィルタの光学的外観は、採用される作製プロセスを理由として、消費者を十分に魅了するものではない。
【0013】
先行技術の教示に対して、本発明者らは、本願において、パルプ繊維の割合が高いフィルタ材料が、水流絡合不織布の形態において、不織布の構造が緻密すぎたり圧縮されすぎたりすることなく製造できることを見出した。本発明の出発点とみなすことができる対応するフィルタ材料が、公開前の国際出願PCT/EP2019/085125に記載されている。この公開前の出願には、プリーツ加工またはクリンプ加工されたフィルタ材料の連続的なトウを形成するためのフィルタ材料のプリーツ加工またはクリンプ加工についても記載されている。その後、連続的なトウ(短い糸の詰めもの)は、包装紙で巻かれて、所定長さの個々のロッドに切断されて前記セグメントが形成される。
【0014】
一例として、セグメントを製造する際、セルロース系不織布を連続的なトウに形成して包装材料で巻く前に、これを最初に縦方向にクリンプ加工することができる。そして、連続的なトウをさらなる加工に適する断片に切断することができる。
【0015】
ウェブのクリンプ加工中に、ウェブをパターンが設けられた2つのローラを通過させ得る。これらのローラが、当該パターンをウェブにエンボス加工する。一例として、このパターンは、ウェブの機械方向に配向されたラインパターンであり得る。エンボス加工されたラインは、ウェブを機械方向に直交する方向である横方向に引き伸ばして変形させる。このため、ウェブに横方向にギャザーを寄せることにより、連続的なトウをより容易に形成することができる。
【0016】
しかしながら、記載のタイプのクリンプ加工中に、ウェブが横方向に断裂することがある。したがって、このような欠点のないフィルタ材料、またはその程度が低いだけでそれ以外は他の好適なフィルタ材料、特に上述の公開前の国際出願PCT/EP2019/085125に記載のものと可能な限り同一であるフィルタ材料に対するニーズが存在している。
【0017】
本発明の目的は、高い生産性で喫煙具のセグメントに加工できる喫煙具用のウェブ状フィルタ材料であって、それ以外では好適なフィルタ材料と性質が可能な限り類似しているウェブ状フィルタ材料を提供することである。
【0018】
この目的は、請求項1に記載の水流絡合(水で絡まった(hydrogentangled))不織布、請求項16に記載の喫煙具用のセグメント、および請求項23に記載の喫煙具、ならびに請求項22に記載のセグメントを製造するためのプロセス、および請求項27に記載の本発明による水流絡合不織布を製造するためのプロセスにより達成される。有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0019】
本発明者らは、この目的が、喫煙具用のセグメントを製造するための以下のフィルタ材料により達成され得ることを見出した。フィルタ材料は、ウェブ状の水流絡合不織布である。「水流絡合」という用語は、第1に基礎的製造プロセスを指すが、水流絡合不織布は、特徴的な構造特性を有しており、この構造特性により、水流絡合不織布は他の不織布から区別されるとともに、本発明者らの知る限り、この構造特性は、他の製造プロセスにより同一の態様で得ることができないことに留意すべきである。例えば、強度が水素結合に起因する紙であって、繊維が主として紙の平面内に配向されている紙以外では、水流絡合不織布の強度は、繊維の絡合により達成される。水流絡合不織布は、特に多孔質構造を有することにより、喫煙具のセグメント用のフィルタ材料として特に適している。
【0020】
本発明によれば、前記水流絡合不織布は、前記水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含み、前記水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有する。ここで、前記水流絡合不織布は、機械方向と、これに直交するとともに前記水流絡合不織布の前記ウェブの平面内にある横方向と、を有する。さらに前記水流絡合不織布は、前記横方向において特徴的な塑性変形性を有し、前記特徴的な塑性変形は、ISO1924‐2:2008に準拠した前記横方向における引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とする。この特徴的な塑性変形性は、一般的なフィルタ材料の場合よりも顕著である。
【0021】
水流絡合不織布の製造および加工に際して、水流絡合不織布は、いわゆる機械方向である方向において走行して機械を通る。水流絡合不織布は、機械方向に直交するとともに水流絡合不織布のウェブの平面内にある方向、すなわち横方向を有する。
【0022】
フィルタ材料を加工して喫煙具用のセグメントを形成する際、水流絡合不織布を、好適にはクリンプ加工する。この目的のために、水流絡合不織布を、例えば、パターンが設けられた2つのローラを通過させ、これらがウェブにこのパターンをエンボス加工する。好適には、このパターンは、ウェブの機械方向に配向されたラインパターンである。エンボス加工されたラインは、水流絡合不織布を、機械方向に直交する方向、すなわち横方向に引き伸ばして変形させる。このように変形させたフィルタ材料では、横方向により容易にギャザーを寄せることができるため、セグメントを製造するための連続的なトウが作製され得る。
【0023】
このプロセスの問題点は、水流絡合不織布に所望の変形を生じさせるために、2つのローラはウェブに横方向に高い伸びを生成するため、水流絡合不織布が横方向に断裂し得る危険があることである。当業者であれば、横方向における水流絡合不織布の破断伸びを大きくすることで、水流絡合不織布が断裂することなくより大きな変形に耐え得るようにしようと考えるであろう。しかしながら、本発明者は、横方向における永久変形を達成するためには、伸びをさらに大きくしなければならず、横方向における破壊強度を超える惧れがさらに増大するため、これでは問題を解決できないことを見出した。
【0024】
本発明者らの知見によれば、水流絡合不織布がクリンプ加工中に受ける横方向の伸びにおいて、弾性変形ではなく永久的な塑性変形が生じることが重要である。このような塑性変形がクリンプ中にローラがより離間した状態で達成されるのであれば、加工中に水流絡合不織布が横方向に断裂する危険は減少する。一般に、水流絡合不織布を横方向にその破断伸びの約半分まで引き伸ばせば十分であろう。
【0025】
本発明者らは、適切なプロセスを使用することにより、水流絡合不織布に横方向における良好な塑性変形性を可能にすることでクリンプ加工を単純にする構造を与えられることを見出した。これに適したプロセスを以下にさらに説明する。
【0026】
横方向におけるこの塑性変形性は、ISO1924‐2:2008に準拠した引張試験により特徴付けられる。この引張試験において、15mmの幅を有するストリップをサンプルから横方向に切り出し、20mm/分の速度でこれが破断するまで引き伸ばす。このとき、伸びεおよび加えられた力Fを記録することで、力‐伸び曲線F(ε)が得られる。同様に、破断伸びεおよび引張強さF(ε)も記録される。水流絡合不織布が破断伸びの半分ε/2まで吸収する変形エネルギーは、以下のようになる。
【0027】
【数1】
ここで、実際には、積分は数値的に計算される。
【0028】
この変形エネルギーは、弾性部分と塑性部分とからなる。弾性変形エネルギーは、荷重を除くと解除されるため、クリンプ加工の結果には寄与しない。これに対して、塑性変形は不可逆的であるため、2つのローラにおける伸びが小さくても、全変形エネルギーに対する塑性変形エネルギーの部分が先行技術の同等なフィルタ材料よりも高ければ、良好なクリンプ加工結果が期待できる。
【0029】
一般に、弾性変形は、伸びと力との比例関係に関連している。水流絡合不織布が破断伸びの半分まで理想的に弾性変形するという架空の仮定の下で、破断伸びの半分までの変形エネルギーElinは次式で計算される。
【0030】
【数2】
【0031】
そして、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーのうち、直線変形エネルギーを超える非線形部分Enlは、以下のようになる。
【0032】
【数3】
【0033】
本発明者らの知見によれば、横方向の破断伸びの半分まで吸収される変形エネルギーの非線形部分が、横方向の破断伸びの半分まで吸収される全変形エネルギーの少なくとも10%であれば、すなわち次式であれば、クリンプ加工時に非常に良好な結果が達成され得る。
【0034】
【数4】
【0035】
塑性挙動を定量化するためのこのような考察は、ISO1924‐2:2008に準拠して引張試験を実施したときに得られる図1に示す表により説明することができる。x軸10に伸びεが示され、y軸11にこの伸びを生じさせるために加えられた力F(ε)が示されている。圧力を加えていない状態12を始点として、伸びεを20mm/分の速度で増加させながら、同時に力F(ε)を測定する。こうして、力‐伸び曲線13を生成する。これにより、伸びをサンプルが状態14で断裂するまで増加させて、ここから破断伸びεおよび引張強さF(ε)を決定する。
【0036】
水流絡合不織布からセグメントを製造する際、水流絡合不織布に、ある位置で、例えば破断伸びの約半分ε/2であるポイント15まで、対応する力F(ε/2)で負荷をかけることで、状態16に至る。
【0037】
ポイント12と16とをつなぐライン17は、架空の線形弾性挙動を表す。線形変形エネルギーElinは、ポイント12、16、および15により形成される三角形の領域に対応する。これに対して、総変形エネルギーは、ポイント12からポイント15までのラインとポイント15からポイント16までのライン、およびポイント16からポイント12までのライン13に囲まれた領域に対応する。本発明の文脈において本発明による水流絡合不織布を特徴付けるために使用される変形エネルギーの非線形部分Enlは、ポイント12とポイント16との間に各々あるライン17およびライン13により規定される領域に対応する。力‐伸び曲線が上方に強く屈曲するほど、そして、架空の線形弾性挙動から逸脱するほど、塑性変形、ひいては不可逆的変形の可能性が大きくなる。
【0038】
本発明による水流絡合不織布からセグメントを製造するに際して、横方向の伸びは、クリンプ加工中に破断時の伸びの半分から当然に逸脱し得るが、破断時の伸びの半分までの変形エネルギーの非線形部分は、実際に適用された伸びおよび実際の弾性‐塑性挙動に依存せず、本発明による水流絡合不織布の構造を特徴付け、かつクリンプ加工中の水流絡合不織布の挙動を予測するのに適したパラメータであることが見出された。
【0039】
比較のために、図2に本発明によらない非常に一般的なフィルタ材料の挙動を示す。ここでも、ISO1924‐2:2008に準拠した引張試験をサンプルに対して横方向に実施する。x軸20に伸びεが示され、y軸21にこの伸びを生じさせるために加えられた力F(ε)が示されている。圧力を加えていない状態22を始点として、伸びεを20mm/分の速度で増加させながら、同時に力F(ε)を測定する。こうして、力‐伸び曲線23を生成する。これにより、伸びをサンプルが状態24で断裂するまで増加させて、ここから破断伸びεおよび引張強さF(ε)を決定する。
【0040】
水流絡合不織布からセグメントを製造する際、水流絡合不織布に、例えば破断伸びの約半分ε/2であるポイント25まで対応する力F(ε/2)で負荷をかけることで、状態26に至る。
【0041】
ポイント22と26とをつなぐライン17は、線形弾性挙動を表す。対応する変形エネルギーElinは、ポイント22、26、および25により形成される三角形の領域に対応する。これに対して、総変形エネルギーEは、ポイント22からポイント25までのライン、ポイント25からポイント26までのライン、およびポイント26からポイント22までのライン23に囲まれた領域に対応する。変形エネルギーの非線形部分Enlは、ポイント22とポイント26との間に各々あるライン27およびライン23により規定される領域に対応する。非常に類似した破断伸びにおいて、また、非常に類似した変形エネルギーのリニア部分に対して、非線形変形エネルギーの部分は実質的に小さいことが分かる。したがって、このような水流絡合不織布は、変形に対して主として弾性的に反応し、負荷の除去後は、本質的に変形全体を元に戻すであろう。図1に示す水流絡合不織布と同様の塑性変形エネルギーを導入するためには、ライン28で示すように、水流絡合不織布をポイント29まで引き伸ばす必要があろう。必要な伸びはかなり大きくなり、とりわけ、必要な力は横方向の引張強さに近づく。このため、機械のわずかな偏差や水流絡合不織布の品質のばらつきにより、水流絡合不織布は、横方向に断裂し得る。これに対して、本発明による図1からの水流絡合不織布は、小さな伸びでも横方向の永久変形を可能にする構造を有している。このため、喫煙具用のセグメントを、この水流絡合不織布からより確実に製造できる。
【0042】
本発明による水流絡合不織布は、セルロース繊維を含む。本発明者らの知見によれば、セルロース繊維は、セグメントに加工できるよう水流絡合不織布に十分な強度を与えるために必要である。本発明によれば、水流絡合不織布中のセルロース繊維の割合は、水流絡合不織布の質量の少なくとも50%~最大で100であるが、好適には水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも60%~最大で100%、特に好適には少なくとも70%~最大で95%である。
【0043】
セルロース繊維は、パルプ繊維、再生セルロース製繊維、またはこれらの混合物であり得る。
【0044】
パルプ繊維は、好適には、針葉樹材、落葉樹材、または麻、亜麻、ジュート、ラミー、ケナフ、カポック、ココナッツ、アバカ、サイザル麻、竹、綿等の他の植物、またはエスパルト草から調達される。種々の調達源のパルプ繊維の混合物も、水流絡合不織布を製造するために使用され得る。特に好適には、パルプ繊維は針葉樹材から調達される。なぜならば、このような繊維は、小さい割合でも水流絡合不織布に良好な強度を与えるからである。
【0045】
本発明による水流絡合不織布は、再生セルロース製繊維を含み得る。好適には、再生セルロース製繊維の割合は、水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも5%~最大で50%、特に好適には少なくとも10%~最大で45%、高度に特に好適には少なくとも15%~最大で40%である。
【0046】
再生セルロース製繊維は、好適には、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル(R)繊維、テンセル(R)繊維、またはこれらの混合物により少なくとも部分的に、特に70%を超えて形成される。これらの繊維は良好な生分解性を有し、水流絡合不織布の強度を最適化するとともにこれから製造した喫煙具用セグメントのフィルタリング効率を調整するように使用することができる。製造プロセスにより、これらの繊維は、天然源から調達されるパルプ繊維よりもばらつきが少ないため、水流絡合不織布から製造されるセグメントの特性が、パルプ繊維のみを使用した場合よりもばらつかないということに寄与する。しかしながら、その製造には手間がかかり、通常パルプ繊維よりも高価である。
【0047】
本発明によれば、水流絡合不織布の坪量は、少なくとも15g/m~最大で60g/m、好適には少なくとも18g/m~最大で55g/m、特に好適には少なくとも20g/m~最大で50g/mである。坪量は、水流絡合不織布の引張強さに影響を与える。一般に、坪量が高いほど引張強さが高くなる。坪量は高すぎてはならない。なぜならば、水流絡合不織布を喫煙具用のセグメントに高速で加工できなくなるかもしれないからである。値は、ISO536:2019に準拠して測定した坪量を指す。
【0048】
本発明による水流絡合不織布について、ISO1924‐2:2008に準拠した横方向における引張試験において、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%である。好適には、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも15%~最大で40%であり、特に好適には、非線形部分は、少なくとも15%~最大で35%、特に少なくとも18%~最大で50%である。好適な区間および特に好適な区間において、クリンプ加工時の良好な結果が適度な伸びでも達成され得るとともに、水流絡合不織布が横方向に断裂するリスクが非常に低い。
【0049】
特定の特性を得るために、本発明による水流絡合不織布は、アルキルケテンダイマー(AKD)、特にアルケニルコハク酸無水物(ASA)である酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または特に有機もしくは無機の酸もしくは塩基であるpHを調整する物質等の添加剤を含み得る。代替的または追加的に、本発明による水流絡合不織布は、クエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウム等のクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム等の酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含み得る。
【0050】
当業者であれば、経験からこのような添加剤の種類と量を判断することができる。
【0051】
本発明による水流絡合不織布は、水流絡合不織布のフィルタリング効率を酢酸セルロースのフィルタリング効率にもっと良好に一致させる別の物質をも備え得る。本発明による水流絡合不織布の好適な実施形態において、水流絡合不織布は、トリアセチン、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセローラ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、クエン酸トリエチル、またはこれらの混合物からなる群から選択される物質を備える。
【0052】
水流絡合不織布の好適な実施形態において、セルロース繊維の少なくとも一部が充填材を含み、充填材は、特に好適には鉱物粒子、特に炭酸カルシウム粒子により形成される。水流絡合不織布の構造は非常に多孔質であるため、充填材を保持するのに適していない。そこで、セルロース繊維に充填材を含ませることで、それを水流絡合不織布の構造内に保持することが有利である。充填材は、水流絡合不織布に特殊な特性を提供する役割を果たし得る。
【0053】
ISO534:2011に準拠して測定した水流絡合不織布の1つの層の厚さは、好適には少なくとも25μm~最大で1000μm、好適には少なくとも30μm~最大で800μm、特に好適には少なくとも35μm~最大で600μmである。厚さは、喫煙具のセグメントに充填され得る水流絡合不織布の量に、ひいてはセグメントの吸引抵抗およびフィルタリング効率に影響を及ぼすだけでなく、特に喫煙具のセグメントの製造に際して水流絡合不織布がクリンプ加工またはプリーツ加工される場合に、その加工性に影響を及ぼす。このような加工ステップでは、大きすぎる厚さは不利であり、好適な区間および特に好適な区間の厚さであれば、喫煙具のセグメントを形成するための本発明による水流絡合不織布の特に良好な加工性が得られる。
【0054】
水流絡合不織布の機械的特性は、本発明による水流絡合不織布を喫煙具のセグメントに加工するために重要である。ISO1924‐2:2008に準拠して測定した横方向における幅に対する水流絡合不織布の引張強さは、好適には少なくとも0.05kN/m~最大で5kN/m、特に好適には少なくとも0.07kN/m~最大で4kN/mである。
【0055】
したがって、ISO1924‐2:2008に準拠して測定した横方向における水流絡合不織布の破断伸びは、好適には少なくとも0.5%~最大50%、特に好適には少なくとも0.8%~最大で40%である。破断伸びは、主として繊維の長さによって決定される。繊維が長いほど、破断伸びが高くなる。このため、破断伸びを、水流絡合不織布に固有の要件に合わせて広い範囲で調整することができる。
【0056】
喫煙具用の本発明によるセグメントを、当技術分野において既知のプロセスに従って、本発明による水流絡合不織布から製造することができる。これらのプロセスは、例えば、水流絡合不織布をクリンプ加工するステップと、クリンプ加工した水流絡合不織布から連続的なトウを形成するステップと、連続的なトウを包装材料で巻くステップと、巻かれたトウを所定長さの個々のロッドに切断するステップと、を備える。多くの場合、このようなロッドの長さは、本発明による喫煙具において後に使用されるセグメントの長さの整数倍であるため、ロッドは、喫煙具の製造前または製造中に、所望の長さのセグメントに切断される。
【0057】
喫煙具用の本発明によるセグメントは、本発明による水流絡合不織布と包装材料とを備える。
【0058】
具体的には、セグメントは、横方向にギャザーを寄せた水流絡合不織布と包装材料とを備える。水流絡合不織布は、水流絡合不織布の質量に対して各々少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含む。ここで、水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有する。坪量を求めるには、水流絡合不織布の面積が、それが広がっている(すなわちもうギャザーを寄せられていない)かのように使用される。水流絡合不織布は横方向を有し、横方向において水流絡合不織布はギャザーを寄せられる。水流絡合不織布にギャザーを寄せるステップを容易にするように、水流絡合不織布をクリンプ加工またはプリーツ加工により予め形成することができる。「ギャザー」という用語は広く解釈されるべきであり、「ギャザーを寄せる」という動詞は、「ギャザーが寄せられた」状態を達成する特定の機械的方法を示唆するものではない。また、「プリーツ加工された」状態は、横方向にプリーツ加工や短縮加工を達成する機械的方法に関係なく、例えば本開示の文脈において「ギャザーを寄せた」状態である。さらに、ギャザーを寄せていない状態において、水流絡合不織布は、横方向における特徴的な塑性変形性を有する。特徴的な塑性変形性は、ISO1924‐2:2008に準拠した横方向における引張試験において、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とする。
【0059】
本発明によるセグメントの好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも3mm~最大で10mm、特に好適には少なくとも4mm~最大で9mm、より特に好適には少なくとも5mm~最大で8mmの直径を有する円筒形である。これらの直径は、本発明によるセグメントを喫煙具に使用するのに有利である。
【0060】
本発明によるセグメントの好適な実施形態において、セグメントは、少なくとも4mm~最大で40mm、特に好適には少なくとも6mm~最大で35mm、より特に好適には少なくとも10mm~最大で28mmの長さを有する。
【0061】
セグメントの吸引抵抗は、とりわけ、喫煙具を通過する一定の体積流を生成するために、喫煙具の使用中に消費者がどの程度の圧力差を加える必要があるかを決定するため、消費者による喫煙具の受容に本質的に影響する。セグメントの吸引抵抗は、ISO6565:2015に準拠して測定され得るとともに、mmウォーターゲージ(mmWG)で与えられる。セグメントの吸引抵抗はセグメントの長さに非常に近似的に比例するため、吸引抵抗の測定は、セグメントと長さのみが異なるロッドにおいても実施することができる。セグメントの吸引抵抗を、これから簡単に計算することができる。
【0062】
前記セグメントの単位長さ当たりの前記セグメントの吸引抵抗は、好適には少なくとも1mmWG/mm~最大で12mmWG/mm、特に好適には少なくとも2mmWG/mm~最大で10mmWG/mmである。
【0063】
本発明による包装材料は、好適には紙またはフィルムである。
【0064】
本発明によるセグメントの包装材料は、好適には、少なくとも20g/m~最大で150g/m、特に好適には少なくとも30g/m~最大で130g/mのISO536:2019に準拠した坪量を有する。この好適な坪量または特に好適な坪量を有する包装材料は、これで巻かれた本発明によるセグメントに特に有利な硬度を提供する。
【0065】
本発明による喫煙具は、本発明によるセグメントから、当該技術分野において知られたプロセスに従って製造され得る。
【0066】
本発明による喫煙具は、エアロゾル形成材料を含むセグメントと、本発明による水流絡合不織布および包装材料を備えるセグメントと、を備える。
【0067】
本発明によるセグメントの切断面は、酢酸セルロース製セグメントのものと光学的に非常に類似しているため、好適な実施形態において、喫煙具の口端部の隣に位置するセグメントは、本発明によるセグメントである。
【0068】
好適な実施形態において、喫煙具はフィルタ付きたばこであり、エアロゾル形成材料はタバコを含む。
【0069】
好適な実施形態において、喫煙具は、その意図された使用中に、前記エアロゾル形成材料を加熱するのみで燃焼させない喫煙具であり、エアロゾル形成材料は、好適には、タバコ、再構成タバコ、ニコチン、グリセローラ、プロピレングリコール、またはこれらの混合物からなる群から選択される材料を備える。ここで、エアロゾル形成材料は、液体の形態で存在し得るとともに、喫煙具内の対応する容器に配置され得る。
【0070】
本発明者らの知見によれば、本発明による変形エネルギーの非線形部分は、水流絡合不織布中の繊維を水流絡合不織布の機械方向においてより強度に配向することにより達成され得る。これは、以下に説明する本発明によるプロセスより達成され得る。
【0071】
本発明による水流絡合不織布は、ステップA1~A3を備えるプロセスに従って製造され得る。すなわち、プロセスは、
A1‐セルロース繊維を備える繊維ウェブを提供するステップであって、前記繊維ウェブは、機械方向と、これに直交するとともに前記ウェブの平面内にある横方向と、を有するステップと、
A2‐前記繊維ウェブに向けた水ジェットにより前記繊維ウェブを水流絡合させて、水流絡合繊維ウェブを作製するステップと、
A3‐前記水流絡合繊維ウェブを乾燥させるステップと、
を備え、
ステップA1において、前記繊維ウェブ中のセルロース繊維の割合を、ステップA3における乾燥後に、前記水流絡合不織布の質量に対して前記水流絡合不織布が少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含むように選択し、
ステップA1およびステップA2を、前記水流絡合不織布に前記横方向において特徴的な塑性変形性が提供されるように実施し、前記特徴的な塑性変形性は、前記横方向においてISO1924‐2:2008に準拠して前記水流絡合不織布にステップA3における乾燥後に実施される引張試験において、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する変形エネルギーの非線形部分が、前記水流絡合不織布が破断伸びの半分まで吸収する全変形エネルギーの少なくとも10%~最大で50%であることを特徴とし、
ステップA3における乾燥後に、前記水流絡合不織布は、少なくとも15g/m~最大で60g/mの坪量を有する。
【0072】
ここで、ステップA1およびステップA2を、完成した水流絡合不織布中のセルロース繊維が、横方向よりも機械方向に配向される傾向があるように実施することができる。
【0073】
ステップA2において繊維ウェブに向ける水ジェットにより、セルロース繊維の絡合が生じ、横方向における有利な塑性挙動を導く構造が生成される。「水ジェットの圧力」の下で、当業者は、例えば圧力チャンバにおいて水ジェットを生成するために加えられる圧力をここで理解するであろう。本発明者らの知見によれば、水流絡合不織布の有利な塑性挙動を達成するためには、水流絡合不織布中の横方向に配向された繊維の割合が低く、繊維は機械方向および厚さ方向においてより多く配向されることが重要である。水流絡合不織布において本発明によるこの構造を作り出すために、水ジェットを、横方向において互いに近接して配置すべきである。繊維ウェブに同時にヒットする水ジェットが近接していることにより、水は横方向よりも機械方向において広がり、繊維を当該方向に対応して配向する。
【0074】
したがって、水ジェットの圧力を、一般に使用される圧力に比較して低減させることができる。水ジェットの距離および圧力は、水ジェットが流出する開口のサイズ、そしてとりわけ繊維ウェブの速度にも依存するため、当業者は、特定の実施形態を考慮して簡単な実験により、経験に従って特定の値を選択することができる。
【0075】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、複数の水ジェットを、ステップA2の水流絡合を実施するように使用し、前記水ジェットを、前記繊維ウェブの前記機械方向を横断するように少なくとも1列に配置する。
【0076】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップA2における水流絡合を、前記繊維ウェブに向けた少なくとも2列の水ジェットにより実施し、特に好適には、少なくとも1列の前記水ジェットは、前記繊維ウェブの2つの側面の各々に作用する。
【0077】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、ステップA3における乾燥を、少なくとも部分的に、熱風との接触により、赤外線放射により、またはマイクロ波放射によりする。加熱表面との直接的な接触による乾燥も可能ではあるが、フィルタ材料の厚さがこれにより減少する可能性があるため、あまり好適ではない。
【0078】
このプロセスに従って製造した水流絡合不織布は、喫煙具用のセグメントでの使用に適していなければならない。これは、特に水流絡合不織布が、水流絡合不織布について前記した、かつ水流絡合不織布に関する従属請求項に規定されたすべての特徴を単独で、または組み合わせて特に有し得ることを意味する。
【0079】
有利な実施形態において、繊維ウェブを提供する前記ステップA1は、以下のステップB1~B3を備える。すなわち、ステップA1は、
B1‐セルロース繊維を備える水性懸濁液を作製するステップと、
B2‐ステップB1からの前記懸濁液を走行ワイヤに塗布するステップと、
B3‐前記懸濁液を前記走行ワイヤを通して脱水し、前記繊維ウェブを形成するステップと、
を備え、
ステップB1において、前記繊維ウェブ中のセルロース繊維の量または割合を、ステップA3における乾燥後に、前記水流絡合不織布の質量に対して前記水流絡合不織布が少なくとも50%~最大で100%のセルロース繊維を含むように選択し、
ステップB3において、前記繊維ウェブの前記機械方向が、前記ワイヤの走行方向により規定されるとともに、横方向が、これに対して直交するとともに前記繊維ウェブの平面内にある方向により規定され、
ステップB2において、前記懸濁液を、前記走行ワイヤの速度よりも遅い速度で前記走行ワイヤに塗布する。
ここで、走行ワイヤと懸濁液の速度は、同一の基準フレームを指すと理解すべきであり、速度を変えることは、本プロセスのこの実施形態において利用される懸濁液と走行ワイヤとの相対速度をもたらす。
【0080】
本プロセスのこの実施形態において、ステップB2において懸濁液が走行ワイヤを流れる速度とステップB2における走行ワイヤの速度とが互いに対して適切に調節されるため、繊維ウェブは所望の構造を少なくとも部分的に得る。特に、本発明者らの知見によれば、ステップB2において懸濁液が走行ワイヤを流れる速度は、走行ワイヤの速度よりも遅くなくてはならない。速度差により、懸濁液はワイヤとともに運ばれ、懸濁液中に剪断力が生じる。剪断力は、セルロース繊維を機械方向に配向するため、本発明による横方向における塑性変形性をもたらす水流絡合不織布の構造に寄与する。当業者は、自分の経験に従って例示的実施形態を考慮しつつ、または簡単な実験により速度差の大きさを選択することができる。本発明者らの経験によれば、ステップB2において懸濁液を走行ワイヤに、走行ワイヤの速度の約90%でしかない速度、例えば走行ワイヤの速度の88%~93%の速度で塗布すれば、多くの場合横方向における所望の塑性変形性を有する構造を得ることができる。この値は、単に基準点としてのみのものである。速度差に関する適切な数値は、少なくとも部分的に残りのプロセスパラメータに依存するため、実際には、当業者が実験的に決定し得る。ガイド原理や最終的に決定的な基準は、これにより製造した水流絡合不織布の横方向において得られる特徴的な塑性変形性であり、これは、上述のように、ISO1924‐2:2008に準拠した横方向における引張試験を参照して特徴付けられる。
【0081】
好適な実施形態において、ステップB1における前記水性懸濁液は、最大で3.0%、特に好適には最大で1.0%、より特に好適には最大で0.2%、特に最大で0.05%の固形分含量を有する。懸濁液の特に低い固形分含量により、ステップB3において繊維ウェブを低密度で形成することができるため、これから製造されるフィルタリング効率に有利である。
【0082】
好適な実施形態において、ステップB2およびステップB3の前記走行ワイヤは、水平方向に対して前記繊維ウェブの前記機械方向において上方に少なくとも3°~最大で40°の角度で、好適には少なくとも5°~最大で30°の角度で、特に好適には少なくとも15°~最大で25°の角度でそれぞれ傾斜する。
【0083】
好適な実施形態において、前記プロセスは、圧力差を前記走行ワイヤの2つの前記側面間に適用してステップB3における前記懸濁液の脱水を支援するステップをさらに備え、特に好適には、前記圧力差を、真空ボックスまたは適切な形状を有するホイルにより生成する。
【0084】
好適な実施形態において、前記プロセスは、1つ以上の添加剤を前記繊維ウェブに塗布するさらなるステップを備える。前記添加剤は、好適には、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)等の酸無水物、ポリビニルアルコール、ワックス、脂肪酸、デンプン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、湿潤強度剤、または有機もしくは無機の酸もしくは塩基等のpHを調整する物質、およびこれらの混合物からなる群から選択される。代替的または追加的に、クエン酸三ナトリウムまたはクエン酸三カリウム等のクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム等の酢酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、α‐ヒドロキシカプリル酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、塩化物、および炭酸水素塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加剤が、塗布され得る。
【0085】
好適な実施形態において、1つの添加剤または複数の添加剤の塗布を、本発明によるプロセスのステップA2とステップA3との間に、またはステップA3の後に実施し、その後繊維ウェブを乾燥させるさらなるステップが続く。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、一例として、本発明による水流絡合不織布の力‐伸び図を示す。
図2図2は、一例として、本発明によらない水流絡合不織布の力‐伸び図を示す。
図3図3は、本発明による水流絡合不織布を製造するための本発明によるプロセスが実施され得る装置を示す。
図4図4は、本発明による実施形態A、BおよびCの横方向において測定した力‐伸び曲線を示す。
図5図5は、本発明によらない比較例Zの横方向において測定した力‐伸び曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
水流絡合不織布、水流絡合不織布を製造するためのプロセス、喫煙具用のセグメント、および喫煙具のいくつかの好適な実施形態について以下に説明する。さらに、本発明によらない比較例について説明する。
【0088】
例示的実施形態A、BおよびC
図3に示す装置を使用して、本発明による実施形態A、BおよびCを製造した。
【0089】
パルプ繊維および再生セルロース製繊維の懸濁液31を、貯蔵タンク32に供給した(ステップB1)。そこから懸濁液31を水平方向に対して上方に傾斜した走行ワイヤ33に圧送し(ステップB2)、真空ボックス39により脱水した(ステップB3)。これにより、繊維ウェブ34がワイヤ上に形成された。その全体移動方向を、矢印310で示す。ステップB~B3は、(セルロース繊維を備える繊維ウェブを提供する)全体的なプロセスステップA1の特定のサブステップであることに留意すべきである。ここで、繊維を主として機械方向に配向させるように、ワイヤ33が移動する速度を、貯蔵タンク32から流出する懸濁液31の速度よりも約10%速くなるように選択した。繊維ウェブ34をワイヤ33から外し、同じく走行している走行支持ワイヤ35に移送した(ステップC4)。ここで、装置36から、繊維ウェブ34の機械方向に対して横断する方向に複数列に配置された水ジェット311を繊維ウェブ34に向けて、繊維を絡合させるとともに繊維ウェブ34を固めて不織布にした(ステップA2)。ステップA2に続き、同様に水ジェット312をさらなる装置37により繊維ウェブ34の他側に向けた。そして、まだ湿っている不織布を乾燥ユニット38を通過させてここで乾燥させて(ステップA3)、水流絡合不織布を得た。
【0090】
水流絡合不織布を製造するために、針葉樹材から製造したパルプ繊維とリヨセル(R)繊維の混合物を使用した。繊維の量は、完成した水流絡合不織布が65%のパルプ繊維と35%のリヨセル(R)繊維からなるように選択した。完成した水流絡合不織布は、55g/mのISO536:2019に準拠した坪量を有した。
【0091】
製造プロセスのステップA2において、最初に、図3において3列の水ジェット311を繊維ウェブ34の第1側に向け、そして、図3において1列の水ジェット312を繊維ウェブ34の第2側に向けた。ここで、本発明による異なる水流絡合不織布A、BおよびCを得るように、水ジェットの圧力を約2MPaから約40MPaの間で三段階(低、中、高)に変化させた。水ジェットが流出する開口の直径を、列間で異ならせ、80μm~120μmになるように選択した。開口部の中心から中心までの距離は、0.3mmであった。
【0092】
これらの水流絡合不織布からサンプルを横方向に採取して、ISO1924‐2:2008に準拠した引張試験における力‐伸び図を記録した。結果を図4に示す。x軸40に伸び(%)を示し、y軸41に力(N)を示す。A、BおよびCで示す3つのラインは、本発明による3つの水流絡合不織布A、BおよびCの力‐伸び図を示す。一例として、水流絡合不織布Cに関して、破断伸びの半分まで吸収される総変形エネルギーに対する破断伸びの半分まで吸収される変形エネルギーの非線形部分の規定について説明する。
【0093】
破断伸びの半分ε/2において、対応する力F(ε/2)を求め、これから変形エネルギーの線形部分Elinを次式により計算することができる。
【0094】
【数5】
【0095】
破断伸びの半分まで吸収される総変形エネルギーは、ε=0からε=ε/2までのx軸40と曲線Cのなす領域に相当し、数値積分の方法により十分な精度で問題なく求めることができる。変形エネルギーの線形部分Elinをここから差し引くと、変形エネルギーの非線形部分Enlに相当するハッチング領域が残る。
【0096】
破断伸びの半分までの変形エネルギーの測定を、すべての水流絡合不織布A、BおよびCについて実施した。結果を表1に示す。ここで、Eは総変形エネルギー、Elinは変形エネルギーの線形部分、Enlは変形エネルギーの非線形部分であり、各々は破断伸びの半分までの横方向におけるものである。変形エネルギーは、力‐伸び曲線から数値的に求めたため、正式にはN・%という単位を有する。通常の単位であるJ/mを得るには、サンプルの形状を考慮する必要がある。ここでは、互いに対する比率のみが重要であり、サンプルの形状は同一であるため、考慮しなかった。破断伸びεおよび破断伸びの半分の力F(ε/2)も示されている。
【0097】
【表1】
【0098】
表1の値から、本発明による実施形態A、BおよびCでは、変形エネルギーの非線形部分が約20%から約30%であることが分かる。また、水ジェットの圧力が高くなるにつれて、破断伸びが低下することも注目される。この理由により、水ジェットに対して低い圧力を選択することは有利であり得る。なぜならば、良好な塑性伸び挙動の他に、クリンプ加工中の大きな永久変形が可能になるからである。
【0099】
比較例D
比較例Dは、ステップB1~B3およびステップA3のみを備え、繊維ウェブを水流絡合するステップを備えないプロセスにおけるフィルタ材料の製造に関する。したがって、比較例Dからのフィルタ材料は、水流絡合不織布でないため、本発明によるものではない。比較例Dは、(ステップA1の好適な実施形態のサブステップとして)ステップB1~B3を実施することが、ステップB2において懸濁液を減速した速度で走行ワイヤに塗布する場合、横方向における所望の特徴的な塑性変形性をもたらす構造に寄与することに実際に適していることを本質的に証明するのに役立つ。
【0100】
フィルタ材料を製造するために、針葉樹材から製造したパルプ繊維とリヨセル(R)繊維の混合物を使用した。繊維の量は、完成したフィルタ材料が80%のパルプ繊維と20%のリヨセル(R)繊維からなるように選択した。完成したフィルタ材料は、15g/mのISO536:2019に準拠した坪量を有した。
【0101】
プロセスのステップB2において、流出する懸濁液の速度を、走行ワイヤの速度よりも10%遅くなるように選択した。
【0102】
このようにして得られたフィルタ材料Dから4つのサンプルを横方向に採取して、ISO1924‐2:2008に準拠した引張試験における力‐伸び図を記録した。力‐伸び図の評価は、実施形態A、BおよびCと同様に実施した。4つの測定物の結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2の値から、このようにして作製されたフィルタ材料Dは、約30%の変形エネルギーの非線形部分を有すること、および同一のサンプル材料で繰り返し測定してもばらつきが小さいことが分かる。これは、懸濁液がステップB2において走行ワイヤに低下した速度で塗布された場合、ステップB1~B3が、横方向における所望の塑性変形性に実際に寄与していることを示す。
【0105】
例示的実施例E
一方で、水流絡合不織布において本発明による横方向における特徴的な塑性変形性を得るために、実施形態A、BおよびCにおいて用いられるステップA1(ステップB2における懸濁液の塗布速度の低下を伴う)の特別な実行は必要ない。これは、以下の実施形態Eから分かる。
【0106】
例示的実施形態Eにおける水流絡合不織布を製造するため、針葉樹材製のパルプ繊維とリヨセル(R)繊維との混合物を使用した。繊維の量は、完成した水流絡合不織布が80%のパルプ繊維と20%のリヨセル(R)繊維からなるように選択した。ステップA1を、ステップB2の実行により繊維ウェブ中のパルプ繊維に機械方向を横断する所望の方向を最初に与えることなく実施した。完成した水流絡合不織布は、15g/mのISO536:2019に準拠した坪量を有した。
水流絡合のためのステップA2を、例示的実施形態BのステップA2のように実施した。
【0107】
このようにして得られた水流絡合不織布Eから2つのサンプルを横方向に採取して、ISO1924‐2:2008に準拠した引張試験における力‐伸び図を記録した。力‐伸び図の評価は、実施形態A~Cと同様に実施した。2つの測定物の結果を表3に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3の値から、このように製造された水流絡合不織布Eは、約17%の非線形変形エネルギーの割合を有することが分かる。ステップA2における適切な水流絡合の実施とステップB2における低下した塗布速度による繊維ウェブの事前構造化との組み合わせにより製造された例示的実施形態A~Cとの比較から、この組み合わせにより、約22%~約28%の非線形変形エネルギーのより大きな割合が得られるため、クリンプ加工時のより良好な動作がもたらされ得ることが分かる。当然ながら、プロセスを組み合わせる支出は、例示的実施形態Eのように、本発明による横方向における特徴的な塑性変形性がステップA2における水流絡合の適切な実施のみにより得られる場合よりわずかに高い。例示的実施形態Eは、これが実際に可能であることを示す。
【0110】
比較例Z
本発明によらないフィルタ材料を製造するために、例示的実施形態Dと同一の繊維混合物を使用した。坪量は依然として15g/mであったが、フィルタ紙の製造に共通する機械設定のみを使用した。
【0111】
変形例Zのフィルタ材料から3つのサンプルを横方向に採取して、ISO1924‐2:2008に準拠した引張試験における力‐伸び図を記録した。力‐伸び図の評価は、実施形態A~Cと同様に実施した。3つの測定物の結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
比較例Zの力‐伸び曲線を図5に示す。定量的な分析をしないでも、この挙動が実質的に線形弾性挙動に近いことが既に明らかである。このため、荷重除去時の変形は、本質的に逆転し、永久変形を達成するにははるかに大きな伸びおよび力が必要である。これは、横方向における引張強さまたは破断伸びを容易に超えることを意味する。
【0114】
セグメントおよび喫煙具の製造
長さ100mm、直径7.85mmの紙で巻いたフィルタロッドを、例示的実施形態A~Eの各水流絡合不織布および比較例Zのフィルタ材料から製造した。水流絡合不織布の幅およびフィルタ製造時の機械設定は、450±10mmWGの吸引抵抗が生じるように選択した。
【0115】
フィルタロッドを、例示的実施形態A~CおよびEの水流絡合不織布、ならびに比較例Zのフィルタ材料から製造することができた。しかし、製造中に、例示的実施形態A~CおよびEの水流絡合不織布について、クリンプ加工プロセスが、機械設定の変化、特にクリンプ加工時のローラ間の距離の設定に対して、比較例Zよりも敏感に反応しないことが判明した。
【0116】
フィルタ付きたばこを、先行技術から一般的なプロセスに従って、例示的実施形態A~CおよびE、ならびに比較例Zのセグメントから製造した。この製造プロセスに何ら問題はなかった。
【0117】
したがって、本発明による水流絡合不織布から、セグメントおよび喫煙具を一般的な水流絡合不織布や紙よりも確実かつ容易に製造することができること、および有利な塑性伸び挙動を理由としてクリンプ加工時により良好な結果を得られることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】