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特表2024-525299IPベースネットワーク上の音声コンテンツの受信中のジッタ補償の方法並びにそのための受信器、並びにジッタ補償を有する音声コンテンツを送受信するための方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】IPベースネットワーク上の音声コンテンツの受信中のジッタ補償の方法並びにそのための受信器、並びにジッタ補償を有する音声コンテンツを送受信するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/00 20240101AFI20240705BHJP
【FI】
H04M3/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023574861
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022069098
(87)【国際公開番号】W WO2023281068
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021117762.6
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523455002
【氏名又は名称】ディーエフエス ドイチェ フルークジッヒャルンク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ポティカ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201AA01
5K201CA02
5K201CC01
5K201EE06
5K201EE17
5K201FA02
(57)【要約】
ヘッダ(H)及びペイロード(PL)を有する音声パケット(110、120;210)内の音声コンテンツ(1、2、3、4)のIPベースネットワークを介した受信中のジッタ補償が説明され、ここでは、送信器の送信器時刻の1つの時間情報(前記音声パケット(110、120;210)の送信時刻(ts)を指示する)が音声パケット(110、120;210)内に含まれる。以下のことが提供される:受信器は初期パケット内の時間情報による送信器時刻を使用することにより受信器クロックを初期化することと、受信器は受信器クロックの初期化後の最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)を判断し、最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)に応じて受信器時刻を調節し、音声コンテンツを有する第1の音声パケット(111)の受信中に、この音声パケットの実際の受信時刻を判断し、そして実際の受信時刻に応じてバッファ(DJB)を判断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPベースネットワークを介し音声コンテンツ(1、2、3、4)を受信する際の音声パケット(110、120;210)の受信時刻(te)間のランダムな時間的変動のジッタ(ジッタ(JIT)と称する)補償の方法において、音声コンテンツ(1、2、3、4)を有する又は有しない一系列のデジタル音声パケット(110、120;210)が、前記音声パケット(110、120;210)内に含まれる音声コンテンツ(1、2、3、4)を処理するための受信器により受信される、方法であって、
音声コンテンツを有する音声パケット(110;210)は、通信制御のためのデータを有するセクション(ヘッダ(H)と呼ばれる)と、前記音声コンテンツ(1、2、3、4)の一部からのデジタル音声データを有するセクション(ペイロード(PL)と呼ばれる)とを有し、
音声コンテンツを有しない音声パケット(120)は前記ペイロードを有しない前記ヘッダ(H)を有し、
送信器の送信器時刻の少なくとも1つの時間情報(前記音声パケット(110、120;210)の送信時刻(ts)を指示する)は前記音声パケット(110、120;210)内に含まれ、
前記受信器は、音声コンテンツ(1、2、3、4)を有する第1の音声パケット(111)を受信した後に待ち時間(バッファ(DJB)と呼ばれる)の間前記音声コンテンツ(1、2、3、4)を処理することを待つ、方法において、
前記音声パケット(110、120;210)の伝送チャネル(10、20)上の接続期間(30)中の第1の音声パケット(110、120;210)(初期パケットと呼ばれる)の受信後、前記受信器は、前記受信器時刻が前記音声パケット(110、120;210)を送出する際の前記送信器時刻と相関するように前記初期パケット内の前記時間情報による送信器時刻を使用することにより受信器時計を初期化することと、
前記受信器は前記受信器クロックが初期化された後に最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)を判断することであって、後続音声パケット(110、120;210)の受信中、いずれのケースも、
●前記受信器時刻は、前記音声パケットが送出された時の前記送信器時刻に、前記時間情報(前記後続音声パケット(110、120;210)の前記ヘッダ(H)内に含まれる)と比較され、及び相対的パケット伝送継続期間(デルタ)が前記受信器時刻に対して判断され、
●結果の最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)が一時的に格納され、
●前記一時的に格納された前記最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)に依存する前記受信器時刻は、前記受信器時刻が、前記最小相対的パケット伝送継続期間を有する前記音声パケット(110、120;210)を送出する際の前記送信器時刻と相関するようなやり方で調節される、判断することと、
音声コンテンツを有しない少なくとも1つの音声パケット(120)後の音声コンテンツを有する第1の音声パケット(111)を受信する際、前記受信器は、前記受信音声パケット(111)内の前記時間情報と受信時の前記受信器時刻とを比較すること(deltaJB)によりこの音声パケットの実際の受信時間を判断し及び前記実際の受信時刻に応じて前記バッファ(DJB)を判断することと、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記受信器クロックの前記初期化中及び前記相対的パケット伝送継続期間(デルタ)の前記判断中に、音声コンテンツを有する音声パケット(110;210)と音声コンテンツを有しない音声パケット(120)との長さの差が考慮される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最小パケット伝送継続期間(デルタ)の前記判断は前記接続期間(30)中の複数インターバルにおいて発生する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)に応じた前記受信器時刻の前記調節は、より短いパケット伝送時間を有する前記音声パケット(110、120;210)が受信されたということを指示すれば前記受信器時刻は前記最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)だけ進められるようなやり方で発生する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)に応じた前記受信器時刻の前記調節は、前記受信器時刻は前記一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)が「より長いパケット伝送継続期間を有する音声パケットだけが受信された」ということを指示すれば戻されるようなやり方で発生することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法であって、前記受信器時刻は規定又は規定可能継続期間だけ戻される、方法。
【請求項6】
前記最小相対的パケット伝送継続期間(デルタ)の前記判断は、音声コンテンツを有しない音声パケット(120)及び音声コンテンツを有する音声パケット(110;210)に関し発生する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
最大バッファから始まる前記バッファ(DJB)は、音声コンテンツを有する前記第1の音声パケット(111)内の前記時間情報と前記第1の音声パケット(111)が受信されたときの前記受信器時刻との比較とから生じる受信に対する遅延(deltaJB)に基づいて考慮される最大ジッタを調節する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
同一音声コンテンツを有する前記音声パケット(110;210)は複数の様々な伝送チャネル(10、20)を介し前記受信器により受信されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法であって、前記様々な伝送チャネルを介する同一音声コンテンツを有する前記音声パケット(110、210)の前記遅延(DDC)の補正は前記受信器により適用される、方法。
【請求項9】
IPベースネットワークを介しデジタル音声パケット(110、120;210)を受信するための及び前記音声パケット(110;210)内に含まれる音声コンテンツ(1、2、3、4)を処理するための受信器であって、前記受信器は、
前記IPベースネットワークへ接続され得る受信ユニットであって、前記IPベースネットワークを介し伝送された音声パケット(110、120;210)を受信するようにセットアップされる受信ユニットを有し、及び
受信器クロックを有する演算論理ユニットであって、前記受信音声パケット(110、120;210)を処理するようにセットアップされた演算論理ユニットを有する、受信器において、
前記演算論理ユニットは、前記音声コンテンツ(1、2、3、4)を受信し処理する際に請求項1乃至8のいずれか一項に記載のジッタ補償の方法を実行するようにセットアップされる、ことを特徴とする受信器。
【請求項10】
前記受信器は複数の様々な伝送チャネル(10、20)を介し前記同一音声コンテンツを有する前記音声パケット(110;210)を受信するように、及び前記受信処理において請求項8に記載の方法を適用するようにセットアップされる、ことを特徴とする請求項9に記載の受信器であって、前記演算論理ユニットは複数の前記様々な伝送チャネル(10、20)からの前記同一音声コンテンツを有する前記受信音声パケット(110、120)、(110、120;210)からの前記音声コンテンツ(1、2、3、4)を処理するようにセットアップされる、受信器。
【請求項11】
音声コンテンツを送受信する方法において、
送信器は、音声コンテンツ(1、2、3、4)を音声コンテンツを有する又は有しない一系列のデジタル音声パケット(110、120;210)へ変換し、音声コンテンツを有する音声パケット(110;210)は、通信制御のためのデータを有するセクション(ヘッダ(H)と呼ばれる)と、前記音声コンテンツ(1、2、3、4)の一部からデジタル化された音声データを有するセクション(ペイロード(PL)と呼ばれる)とを有し、音声コンテンツを有しない音声パケット(120)は前記ペイロードを有しない前記ヘッダ(H)を有し、各音声パケット(110、120;210)(特に前記音声パケット(110、120;210)の前記ヘッダ(H))は、送信器時刻の少なくとも1つの時間情報(前記音声パケット(110、120;210)の前記送信時刻(ts)を指示する)を含み、前記送信器は、IPベースネットワークの少なくとも1つの伝送チャネル(10、20)を介し前記音声パケット(110、120;210)の前記系列を送出し、
受信器は、音声コンテンツを有する又は有しないデジタル音声パケット(110、120;210)の前記系列を受信し、及び前記音声コンテンツ(1、2、3、4)を処理する、方法において、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法が前記受信器において適用される、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
恒久的通信接続が少なくとも1つの通信チャネル(10、20)を介し前記送信器と記受信器との間の接続期間(30)の間に記IPベースネットワーク内にセットアップされることを特徴とする請求項11に記載の方法において、
前記接続期間(30)中に、いかなる音声コンテンツ(1、2、3、4)も送信されるべきでない時に、音声コンテンツを有しない音声パケット(120)が、前記送信器と前記受信器との間の前記接続を維持するために交換され、
前記音声コンテンツ(1、2、3、4)が送信されるべきときの前記接続期間(30)中に時々、前記音声コンテンツを有するデジタル音声パケット(110;210)の前記系列が前記送信器から前記受信器へ送信される、方法。
【請求項13】
前記送信器は複数の様々な伝送チャネル(10、20)を介し音声パケット(110、120;210)を送出し、前記受信器は様々な伝送チャネル(10、20)を介し送出された前記音声パケット(110、120;210)を受信する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は複数の様々な伝送チャネル(10、20)が音声コンテンツ(1、2、3、4)として無線メッセージを送信するために使用される無線通信において使用される(特に、CLIMAXオペレーションにおける運用可能地対空通信の伝送のために)、ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
音声パケット(110;210)内に含まれる音声コンテンツ(1、2、3、4)を有するデジタル音声パケット(110、120;210)をIPベースネットワークを介し送受信するためのデバイスであって、送信器及び受信器を有するデバイスにおいて、
前記送信器は、前記音声コンテンツ(1、2、3、4)を記録するための音声記録ユニット、及び送信器クロックを有する演算論理ユニットであって請求項11乃至14のいずれか一項に記載の方法に従って前記音声コンテンツ(1、2、3、4)を処理するようにセットアップされた演算論理ユニットを含み、
前記受信器は請求項9又は10に記載のフィーチャに従って構築される、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPベースネットワークを介し音声コンテンツを受信する際の音声パケットの受信器時刻間のランダムな時間的変動(ジッタと称する)のジッタ補償のための方法(即ち、特に、音声コンテンツ(アナログ音声コンテンツの場合は音声データとしてデジタル化される)をデジタルパケットで送信する(電話又は無線接続などの場合の)方法(ボイスオーバーIP(Voice over IP)又はVoIPとも称する)における使用のための方法)と;本方法を実行するようにセットアップされた受信器とに関する。加えて、本発明は、音声コンテンツを送受信するための方法及びデバイス(ここでは説明されたジッタ補償が使用される)に関する。
【背景技術】
【0002】
本方法では、VoIPの場合における常として、音声コンテンツを有する又は有しない一系列のデジタル音声パケットは音声パケット内に含まれる音声コンテンツを処理するための受信器(特に、出力のために、無線リンクを介し又は音声データの他の使用を介し送信するための受信器)により受信される。音声コンテンツを有するデジタル音声パケットは、通信制御(例えば通信プロトコル又は通信標準規格に対応する)のためのデータを有するヘッダと呼ばれるセクションとペイロードと呼ばれるセクションとを有する。音声パケットのペイロードはデジタル音声データの形式の(全)音声コンテンツの一部から成る。従って、(全)音声コンテンツの送信は、連続デジタル音声データ(ペイロードPL)を有する一系列の音声パケットへ分割される:即ち、連続音声パケット内に(直接的又は間接的に)含まれるデジタル音声データは互いに結合されると(全)音声コンテンツを表わす。
【0003】
音声コンテンツを有しない音声パケットは、ペイロードを有しないヘッダを有し、従って、通常は、それに応じてより短い。しかし「音声データを有しない音声パケットがまた、零データを有するペイロードを有し、そしてデータコンテンツ(音声データ)を有する音声パケットと全く同じ長さである」ということもあり得る。零データは、任意コンテンツ又はランダムコンテンツを有するデータである:即ち役立つ音声コンテンツとは相関が無い。
【0004】
ペイロードはこの場合はいかなる情報も含まないので、このような音声パケットは本出願の文脈ではペイロード無し音声パケットとも呼ばれる。しかし、原理的に、音声コンテンツを有しない音声パケットがより短くそしてペイロードセクションはそれを零データにより満たす代わりに単に無しで済まされれば有利である。しかし、通信標準規格に依存して、すべての音声パケットが音声データの有無にかかわらず同じ長さでなければならないということも要求され得る。音声コンテンツを有しない音声パケットは例えば送信器と受信器との間の既存通信接続が監視され得るように既存通信接続を長期に維持するために使用される。ボイスオーバーIPのこのような使用の一例は、航空交通における(無線接続を介したいくつかのセクションにおける)運用可能地対空通信の伝送であり得る。これは本発明の特に好ましい応用を表わす。
【0005】
各音声パケット(特に音声パケットのヘッダ内の)は送信器の送信器時刻の少なくとも1つの時間情報(音声パケットの送信時刻を指示する)を含む。これは、音声パケットを有する音声パケット及び音声コンテンツを有しない音声パケットに当てはまる。
【0006】
音声コンテンツを有する第1の音声パケットを受信した後、受信器は、バッファ時間という意味でバッファ(ジッタバッファ)と呼ばれる待ち時間の間音声コンテンツを処理することを待つ。これは、後続音声パケットの受信間のジッタを補償するために、そしてジッタに起因する受信までの遅延のおかげで音声出力を中断することなく音声コンテンツの連続処理を実現するために、音声コンテンツを有する後続音声パケットをバッファ中に(即ち待ち時間中に)受信器が受信することを可能にする。この処理は、音声コンテンツを可聴スピーチ(即ちアナログ出力)として直接再生することであり得る。しかし、受信器はまた、受信された音声コンテンツを無線送信器を介し同報通信し得る。このとき、音声コンテンツの再生は無線受信器においてだけ発生する。この場合、受信器はデジタル音声パケットを間接的に再生するだけである(受信された音声パケットが処理されそして含まれる音声コンテンツが無線送信器により無線メッセージとして送出されるという意味で)。この場合、例えば航空交通管制(送信器としての)の生成された音声コンテンツ(無線メッセージ)はIPベースネットワークを介しボイスオーバーIP通信として地上局の無線送信器(受信器としての)へ送信される。次に、無線送信器は無線受信器により出力された無線メッセージ(航空交通管制から例えば航空機への通信のための)を送出する。逆方向における(例えば航空機から航空交通管制への)通信の場合、無線送信器は航空機内に在りそして無線受信器は地上局内に在る。従って無線受信器はこのときボイスオーバーIP通信の送信器である。本文における用語「送信器」及び「受信器」はIPベースネットワークを介した音声コンテンツの伝送を参照する。
【0007】
音声パケットの物理的伝送プロセスはボイスオーバーIP通信の背景を説明するために以下に簡潔に説明される。より詳細な説明は例示的実施形態の説明の文脈において発生する。
【0008】
音声パケットの全遅延(パケット伝送継続期間)は、送信器による送出時刻により始まり、そして伝送チャネル(音声パケット自体の長さがまた属する)を介した音声パケットの遅延(単に遅延とも称する)とジッタ(受信器時刻のランダム変動という意味の)との合計に由来する。更に、バッファ(ジッタバッファ)などの待ち時間が、音声パケット内に含まれる音声コンテンツの処理(例えば出力処理又は他の処理)までに生じる。
【0009】
従って、音声パケットを送出することから音声コンテンツを処理するまでの時間は、実際のパケット伝送継続期間(遅延及びジッタ)とバッファと(そして、適切ならば、音声パケットの受信後から音声コンテンツの出力までのさらなる追加待ち時間と)により与えられる。
【0010】
待ち時間が長くなれば長くなるほど後続音声パケットのより多くが受信されそして一時的に格納され得(バッファされ得)、その結果、先行音声パケットの音声コンテンツを処理した後、バッファされた音声パケットの音声コンテンツが初期に追加的に処理されるので、後続音声パケットのジッタが特に長くても後続音声パケットの音声コンテンツがさらなる処理のために既に利用可能となり、そして連続処理(例えば音声再生)が保証される。時間という意味で長いバッファはそれに応じて長い遅延に至り、これは、実時間通信のための高い要件を有するボイスオーバーIPアプリケーションに関して望ましくない。従って、時間という意味で短いバッファは、より高い通信速度に到るが、また音声パケット損失のより高いリスクに至り、これは音声コンテンツの連続処理を妨げ得る。
【0011】
バッファを有するこの周知の解決策の別の欠点は、パケット伝送継続期間と必要であれば追加待ち時間(バッファなどの)とからなる合計時間が音声パケットの伝送中のジッタのランダム期間に依然として依存し、従って正確に予測され得ないということである。これは、いくつかの通信アプリケーション(例えば複数並列伝送チャネル(例えば、様々な地上局のいくつかの無線送信器により無線メッセージを並列に送出すること)を有する無線アプリケーション)の場合における欠点に到り得、ここでは、様々な伝送チャネル上の様々な長さのジッタがエコーに至る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の目的は、ジッタ補償とこのようなジッタ補償を使用する音声伝送とを提案することであり、これは、音声コンテンツの連続処理(例えば無線送信又は出力)を保証する一方で、送信器による音声パケットの出力から送信器による音声情報の処理までの音声パケット(少なくとも所定期間内の)の伝送の場合の合計時間の継続期間の規定を可能にする。
【0013】
この目的は、請求項1、9、11及び15のフィーチャにより本発明に従って実現される。
【0014】
本発明に従って提案されたジッタ補償の文脈では、以下のことが特に提供される:伝送チャネルにおける接続期間(音声パケットの送信器へセットアップされる接続期間又は受信器と送信器との間に存在する接続期間)中に、初期パケットと呼ばれる第1の音声パケット(音声コンテンツ又は音声データを有する又は有しない)を受信した後、受信器は、受信器時刻が音声パケットを送出する際の送信器時刻と相関するように初期パケット内の時間情報による送信器時刻により受信器時計を初期化する。この結果、受信器クロックは、接続期間、伝送チャネルを介した音声パケットの遅延、及び時間的にランダムなジッタからの第1の音声パケットを送信時刻に依存する時間を表示する。本発明の一実施形態によると、受信器時刻と音声パケットからの時間情報とを同期させることは簡単である。ここでは、時間情報は、受信器時刻がデータコンテンツを有しない音声パケットの送信器時刻と現在送信されている音声パケットのランダムジッタとに対応するように、適用可能ならばパケットのペイロードのサンプル時間により補正される。従って、送信器時刻と受信器時刻との間に時間オフセット(全システム内で一定である絶対時間に対する)が存在し、この時間オフセットは接続期間内の第1の音声パケット(音声コンテンツを有しない)のパケット伝送時間に正確に対応する。
【0015】
接続期間(セッションとも称する)は、送信器と受信器との間の伝送チャネルのセットアップにより始まりそして伝送チャネルの中断により終わる(即ち実際の接続継続期間に対応する)。しかし、例えば固定期間を規定することにより及び/又は受信器及び/又は送信器における事象に依存して、実際の接続継続期間内のより短い接続期間を選択することも可能である。従って、接続期間は伝送チャネル内の物理的接続継続期間中の規定期間又は規定可能期間(即ち全接続期間の一部(しかし最大限でも全接続期間))に対応する。
【0016】
正確に同じジッタ(一定遅延を仮定する)を有する受信器において受信される後続音声パケットに関し、受信器時刻はパケットを送出する送信器の送信器時刻と相関する。従って、前に説明されたタイプの相関では送信器時刻及び受信器時刻はジッタが同じならば同一である。相関における偏差は様々なジッタにより引き起こされる。
【0017】
これは、受信器クロックが初期化された後の最小相対的パケット伝送継続期間を受信器が判断することを以下の点において可能にする:後続音声パケットの受信中、いずれのケースも、
●受信器時刻は音声パケットが送出された時の送信器時刻において後続音声パケットのヘッダ内に含まれる時間情報と比較され、相対的パケット伝送継続期間は受信器時刻と相対的に判断される。これは例えば前の差に関して送信器時刻と受信器時刻との差により行われ得る。受信器時刻と送信器時刻とが前の実施形態において説明されたように同期されれば、零の差「受信器時刻-送信器時刻」は、続いて送信された音声パケットがそれを基に受信器時刻が判断された音声パケット(初期化又は後続調節中の)と全く同じぐらい速かったということを意味する(以下にさらに説明される)。差が零未満であれば受信器時刻は送信器時刻より早い;即ち音声パケットはそれを基に受信器時刻が判断された音声パケットより速かった(比較的より短いパケット伝送継続期間)。対照的に、差が零より大きければ受信器時刻は送信器時刻より遅い;即ち音声パケットはそれを基に受信器時刻が判断された音声パケットより遅かった(比較的より長いパケット伝送継続期間)。
●接続期間内の結果最小相対的パケット伝送継続期間又は接続期間内のインターバルが一時的に格納される。次に、接続期間(又は照査のベースとして使用される接続期間内のインターバル)内に、相対的パケット伝送継続期間は、現在判断された相対的パケット伝送継続期間がこれまでの最小(及び一時的に格納された)相対的パケット伝送継続期間より短ければ最小相対的パケット伝送継続期間として新たに格納される。
●規定された評価時刻に(例えば接続期間内のインターバルの終わりに)一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間に依存する受信器時刻は、受信器時刻が最小相対的パケット伝送継続期間を有する音声パケットを送出する際の送信器時刻と相関する(特には、これと同期する)ようなやり方で調節される。一実施形態では、これは「評価時刻において格納された最小相対的パケット伝送継続期間の値が、本方法の残りの期間中の新しい受信器時刻を判断するために現在受信器時刻から減算される」という意味で発生し得る。この結果、受信器クロックと送信器クロックとの時間差はまた(例えば使用されるタイマのクロック差のおかげで)自動的に連続的に補正される。
【0018】
先の発明の概要において規定された実際の実施形態が説明のために使用される。本発明はこれらの実施形態に必ずしも限定されない。
【0019】
音声コンテンツを有する音声パケット(又は音声コンテンツを有する一系列の音声パケット)が音声コンテンツを有しない少なくとも1つの受信音声パケット後に受信される場合は常に、受信器は新しい音声コンテンツ(例えば接続期間内の新しい無線メッセージ)が送信されるべきであると想定する。新しい音声コンテンツの開始及び終了はまた(追加的に又は二者択一的に)、ヘッダ内の符号化により識別され得る。
【0020】
従って、音声コンテンツを有する第1の音声パケットを音声コンテンツを有しない少なくとも1つの音声パケット後に受信する際、受信器は、実際の受信時刻が特に受信器時刻と相対的に指示されるように受信音声パケット内の時間情報と受信時の受信器時刻とを比較することによりこの音声パケットの実際の受信時刻を判断する。従って、この実際の受信時刻は音声コンテンツを有する第1の音声パケットが受信された時の実際のジッタを指示する。次に、受信器は、音声コンテンツが実際の受信時刻に応じて/依存して(即ち音声コンテンツを有する第1の音声パケットが受信される際の実際のジッタに応じて)処理されるまでのバッファ(即ちバッファ時間又は待ち時間)を判断する。原理的に、バッファは、無ジッタ又は最小ジッタを有する音声パケットがデータコンテンツを有する第1の音声パケットとして受信される際に使用される所定最大バッファから実際のジッタを減算することにより形成され得る。実際のジッタが最小ジッタ又は無ジッタに対応すれば、所定最大バッファがバッファとして使用される。
【0021】
バッファを判断するための本発明による好ましい実施形態は、音声パケット内の時間情報と実際の受信時刻との差を形成することにその本質がある。このとき、この差は、音声コンテンツを有する第1の音声パケットとして本発明に従ってバッファを判断する現在の音声パケットのジッタを指示する。この差「音声パケット内の時間情報-実際の受信時刻」が零未満であれば差の(正)値が実際のジッタを指示する。次に、この実際のジッタは所定最大バッファから減算される。そうではなく差「音声パケット内の時間情報-実際の受信時刻」が零以上ならば最大バッファがバッファとして使用される。この単純な実施形態は「受信器時刻が、接続期間内の最短パケット伝送時間を有する音声コンテンツを有しない音声パケット内の時間情報(送信時刻)に等しければ」適用される。従って、接続期間の最短パケット伝送時間を有する音声コンテンツを有する音声パケットに関して、ペイロードの時間長は、同じ標準規格化を有するために補正として使用される。送信器時刻及び受信器時刻が、異なる依存性に従って相関すれば(即ち、これらが、最小パケット伝送時間を有する音声パケットと同期されていなければ)、この相関による依存性がそれに応じて使用される。
【0022】
従って、本発明によると、動的バッファ(ジッタバッファ)は、その時間長が音声パケットの実際のジッタの長さに応じて規定されるジッタ補償により判断され、音声パケットの受信後に判断される。これは、音声コンテンツを有しない少なくとも1つの音声パケット後の、音声コンテンツを有する第1の音声パケットである。バッファは好適には、「最大バッファが、実際のジッタを有しない又は最小の実際のジッタを有するパケット伝送時間を有する音声パケット(即ちできるだけ早い受信時刻を有する音声パケット)に関して使用される」ようなやり方で本発明に従って判断され、そして実際のジッタはこの最大バッファから減算される。従って、換言すれば、バッファは、実際のジッタ(動的バッファを判断するために使用される音声パケットの)と動的バッファとの合計が一定であるように、本発明に従って判断される。長さは好適には、「合計のこの一定値が、最大に異なるジッタを有する連続音声パケットが受信されても連続処理(例えば音声再生及び/又は無線送信)を保証するように」選択される。従って、実際のジッタと動的バッファとの合計のこの一定値は音声パケットの受信時に発生する最大差より少なくとも大きくあるべきである。より小さな一時的干渉もまた、さらなる安全範囲(例えば予測ジッタの2倍)を用いて捕えられ得る。
【0023】
この結果、様々な伝送チャネルが並列に使用されても又は絶対的伝送時間が他の理由のために知らされなければならなくても、音声コンテンツを有する音声パケットを送出することと音声コンテンツを処理すること(例えば隣接音声コンテンツを有する一系列の音声パケットの連続出力)との間の最短可能時間が実現されるだけでなく、音声コンテンツを有する音声パケットを送出することとその処理との間の時間も常に同じ長さである。
【0024】
本発明のさらなる好ましい実施形態は次のことを提供し得る:受信器クロックの初期化中及び相対的パケット伝送継続期間の判断中、音声コンテンツを有する音声パケットと音声コンテンツを有しない音声パケットとの長さの差が考慮され(特に「受信時刻が、音声コンテンツを有しない音声パケットの伝送に対して標準化される」という点で)、ここでは、データテレグラムのペイロードの追加及び既知の長さが、例えば受信時刻を処理する際に減算され得る。この結果、実効伝送継続期間(パケット伝送時間)は、いずれのケースも、データコンテンツを有さないより短い音声パケットに関し計算され得る。特に好ましい実施形態による本発明によると、受信器クロックは、音声パケット内の時間情報と、初期化中に同期され、音声コンテンツを有しない音声パケットに対して標準化され得る。従って、最短パケット伝送時間を有する(即ち、発生するジッタが無い、又は発生する最短ジッタを有する)音声パケットに関して、これは実際には伝送チャネル上の音声パケットの遅延に対応する。従って、音声パケット内の時間情報と受信器時刻との間の偏差(例えば差)が、現在考慮中の音声パケットを受信する際の現在のジッタを指示する。取り扱いはこれにより容易にされ、そして、本方法は、音声データを有する音声パケットと音声データを有さない音声パケットとの差無しに使用され得る(例えば受信器時刻を初期化及び/又は調節するために)。
【0025】
本発明による別の態様によると、最小パケット伝送継続期間の判断(本発明によるその結果が一時的格納最小パケット伝送継続期間に対する受信器時刻の調節である)は接続継続期間又は接続期間中に複数のインターバル(インターバル同士は好適には互いに直接追随する)において発生し得る。この結果、受信器時刻は接続継続期間中にすら伝送チャネル内のあり得る変化に対し連続的に調節される。これは好適にはいずれのケースもインターバルの終わりに発生する。音声コンテンツを有する連続受信音声パケットに対応するアナログ音声コンテンツの継続的出力は好適には受信器時刻の調節により影響されなくそして続けられる。受信器時刻の調節は、第1の音声コンテンツを有する音声パケットが音声コンテンツを有しない少なくとも1つの音声パケットが受信された後に(受信器時刻が調節された後に)再び受信されればバッファ(本発明に従って動的である)の判断にだけ影響する。
【0026】
インターバルの長さは、時間長(継続期間)により、又は音声コンテンツを有しない及び/又は音声コンテンツを有する規定数の受信音声パケットにより、規定され得る。
【0027】
本発明によると、送信器への受信器の(より一般的には送信器と受信器との間の)接続期間が最大接続継続期間へ制限されるということも提供され得る。送信器及び/又は受信器は「少なくとも、音声コンテンツが再び送信されるべきであれば」最大接続時間に到達した後の接続を妨げるようにセットアップされ得、接続が新たにセットアップされなければならないという結果を伴う。これは、受信器クロックの再初期化及び上記方法の繰り返しに至る。従って、伝送チャネル内の伝送条件の変化が自動的に考慮され得る。
【0028】
本発明の別の実際の実施形態では、一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間に応じた受信器時刻の調節は、(現在の受信器時刻に対し)より短いパケット伝送継続期間を有する音声パケットが受信されたということを指示すれば「受信器時刻が最小相対的パケット伝送継続期間だけ進められる」ようなやり方で発生し得る。受信器クロックを進めることにより、受信器クロックは最短ジッタ又は最短パケット伝送継続期間を有する音声パケットの送信時刻と同期される。
【0029】
更に、本発明によると以下のことが提供され得る:一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間に応じた受信器時刻の調節は、一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間が「現在の受信器時刻に対しより長いパケット伝送時間を有する音声パケットだけが受信された」ということを指示すれば受信器時刻が戻される(受信器時刻は規定又は規定可能継続期間だけ戻される)ようなやり方で発生し得る。受信器時刻を戻すことは、考慮中の期間中に(特に接続期間内のインターバル内に)、無受信の場合に、先行受信中のこれまで最短パケット伝送継続期間(即ちジッタの小さい値又は最短値)に再び到達したならば、すべての音声パケットのより長いパケット伝送継続期間を考慮し、そして非現実的に短いジッタの使用を補正する。これは、伝送条件が変化しているということを指示し得る。本発明の特に好ましい実施形態によると、規定可能期間は、特に音声パケットを受信する際の受信器時刻からの時間的偏差(加重係数により重み付けされた)として、受信器時刻に対する最小相対的パケット伝送継続期間により実現され得る。賢明な加重係数は、本発明によるこの実施形態がそれに制限されることなく例えば1/3であり得る。この結果、受信器クロックと送信器クロックとの時間差(例えば使用されるタイマのクロック差に起因する)もまた連続的に自動的に補正される。
【0030】
前に指示されたように、本発明の特に好ましい実施形態では、音声コンテンツを有しない音声パケットと音声コンテンツを有する音声パケットとに関する最小相対的パケット伝送継続期間の判断は音声コンテンツの出力又は処理中ですら同じやり方で(即ちそれに独立して)発生し得る。この場合、音声コンテンツを有しない音声パケットに対する前述の標準化が企てられ得る。代替的に、音声コンテンツを有する音声パケットに対する標準化もまた可能だろう。これは、最小相対的パケット伝送継続期間が接続期間中に連続的に判断されることを可能にする。
【0031】
本発明によると、バッファは、本発明の好ましい実施形態によると、音声コンテンツを有する第1の音声パケット内の時間情報とこの第1の音声パケットが受信されたときの受信器時刻との比較から生じる受信に対する遅延に基づいて(即ち実際のジッタに基づいて)考慮される最大ジッタを調節する最大バッファから開始し得る。考慮される最大ジッタは、受信器内の音声パケットの受信時刻のランダム変動に起因する受信に対する最大遅延として理解されるべきである。従って、最大バッファの調節はこの最大バッファを実際のジッタだけ短くすることにより発生するということが提供され得る。受信に対する負遅延が生じれば、即ち、音声コンテンツを有する受信された第1の音声パケットが、受信器時刻を調節するために前に使用された音声パケット(初期パケットを含む)より速ければ、本発明によると最大バッファの調節無しに済ますことも可能である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によると、同一音声コンテンツを有する音声パケットはいくつかの様々な伝送チャネルを介し受信器により受信され得、ここでは、様々な伝送チャネルを介する同一音声コンテンツを有する音声パケットの遅延の補正が受信器により適用され得る。これは例えば、音声パケットの遅延が様々な伝送チャネルの遅延補正により互いに比較されるように、そして各伝送チャネルの遅延補正が、最長伝送時間を有する伝送チャネルからの遅延の差により形成されるように、発生し得る。この遅延補正は動的遅延補償(DDC:Dynamic Delay Compensation)とも称する。遅延補正は、各伝送チャネルに関し既に知られ得、そして例えば伝送チャネルの物理的条件から導出され得る。当業者は、これに関係する物理法則だけでなくこのような遅延補正(動的遅延補償DDC)の基本手順も知っている。
【0033】
バッファ(ジッタバッファ)に加えて、このタイプの遅延補正はまた、音声パケットを受信することと音声パケットから音声コンテンツを処理することとの間のさらなる待ち時間を表わす。このような遅延補正が知られていれば又は送信器により既に判断され得れば、この遅延補正もまた、音声パケットで(例えば音声パケットのヘッダ内で)伝送され得る。この結果、特に本発明に従って提案されたジッタ補償に関して、以下のことが実現される:様々な伝送チャネル上の同一音声コンテンツを有する音声パケットを送出することから受信器による音声コンテンツの処理(無線により送出すること及び/又は出力すること)までの時間は、様々な伝送チャネル(IPベースネットワークを介する)内の同一音声コンテンツを有するこれらの音声パケットの様々な遅延の場合にすら、同じである。これは、例えばいくつかの受信器(ボイスオーバーIP通信の)が様々な地上局(空間的に分散されたやり方で配置された)において無線送信器として音声情報を同時に送出する航空交通における運用可能地対空通信のボイスオーバーIP伝送の特に好ましい使用の文脈における無線通信におけるエコーを回避する。これは「大きな空域が、制限された無線範囲の場合にすらカバーされ得る」ということを意味する。
【0034】
本発明によると、このような遅延補正はまた、ジッタ補償の方法を適用することにより本発明に従って受信器により判断され得、ここでは、受信器クロックが、接続期間中に伝送チャネル毎に別々に上述のやり方で初期化され、そして受信器クロックの初期化後、最小相対的パケット伝送継続期間が、上述のやり方で各伝送チャネルにおいて判断され、受信器クロックの上記調節により完了される。同一音声コンテンツを有する音声パケットが様々な伝送チャネル上でそれぞれ伝送されており、そして受信器クロックはそれぞれの伝送チャネル上の最小相対的パケット伝送継続期間を有する音声パケットを送出する際に送信器時刻とそれぞれ相関するので、様々な伝送チャネル上の遅延差は受信器時刻の比較から様々な伝送チャネルに関して導出され得、いずれの場合も、最小ジッタを有するパケット伝送継続期間と関連付けられ、そして遅延の対応補正(動的遅延補償DDC)が伝送チャネル毎に導出され得る。
【0035】
好ましい実施形態によると、これは、例えばその受信器時刻を、(当該音声パケットの識別子及び受信器の識別子を有する)音声パケットを受信した後に送信器へ送り戻す(往復遅延)いくつかの伝送チャネルのうちの1つの伝送チャネルの各受信器により行われ得る。従って、送信器は、送信器とそれぞれの受信器との間の最小パケット伝送継続期間を判断し得る(前に説明した方法と似たやり方で)。これから、送信器は、各受信器の遅延のそれぞれの補正(動的遅延補償DDC)を判断し、そして、必要であれば、この補正をこの受信器へ送信し得る、又はそうでなければ、この補正を各音声パケットのヘッダ内に含まれる送信器時刻の時間情報内に含む。これにより、自動動的遅延補償DDCが行われ得る。
【0036】
本発明はまた、IPベースネットワークを介しデジタル音声パケットを受信するためのそして請求項9に記載の音声パケット内に含まれるアナログ音声コンテンツを処理するための受信器に関する。受信器は、IPベースネットワークへ接続され得る(接続されるように適応化される)受信ユニットであって、IPベースネットワークを介し伝送された音声パケットを受信するためセットアップ(適応化)される受信ユニットと、受信器クロックを有する演算論理ユニットであって受信音声パケットを処理するようにセットアップされる演算論理ユニットとを有し、例えば、音声パケットで送信されたデジタル音声データを有するペイロードはさらに音声パケットから抽出されそして処理される。さらなる処理は例えば、一系列の音声パケットから抽出された音声データを音声コンテンツへ変換すること、この音声データを無線により(例えば変調器によるデジタルHF変調により)送出すること、及び/又はこの音声データを音声出力ユニット(特にラウドスピーカ)により直接出力することにその本質がある。本発明によると、演算論理ユニットは、音声コンテンツを受信し出力する際に請求項1乃至8のいずれか一項に従ってジッタ補償又はその一部のための前述の方法を実行するようにセットアップ(適応化)される。
【0037】
好ましい実施形態によると、受信器は、同一音声コンテンツを有する音声パケットをいくつかの様々な伝送チャネルを介し受信するように、そして請求項8に記載の方法を適用するようにセットアップされ得、ここでは、演算論理ユニットは、いくつかの様々な伝送チャネルからの同一音声コンテンツを有する受信音声パケットからの音声コンテンツを処理するようにセットアップされる。特に、同一音声コンテンツは、様々な伝送チャネルを介し伝送された音声パケットのうちの複数の音声パケット(又はすべての音声パケットすら)からそれぞれ出力(例えば、無線により伝送)され得る。本発明による方法により、同一音声コンテンツを有する音声パケットの出力時刻は、様々な伝送チャネルを介する音声パケットの遅延の補正(動的遅延補償(DDC))及び受信時刻間のランダムな時間的変動(ジッタ)の補正の両方に関して様々な伝送チャネルにわたって同期される。地対空通信の好ましい使用ケースに関して、受信器は特に、様々な空間的に分離された地上局内にいくつかの無線送信器を含み、無線送信器は上記方法により時間同期されたやり方で無線により同じ音声情報を送出する。
【0038】
本発明はまた、請求項11のフィーチャに従って音声コンテンツを送受信する方法に関し、ここでは、送信器が、音声コンテンツを有する又は有しない一系列のデジタル又はデジタル音声パケットへ変換し、ここでは、音声コンテンツを有する音声パケットは、通信制御のためのデータを有するセクション(ヘッダと呼ばれる)と音声コンテンツの一部からデジタル化された音声データを有するセクション(ペイロードと呼ばれる)とを有する。音声コンテンツを有しない音声パケットはペイロードを有しないヘッダを有する。各音声パケット(特に音声パケットのヘッダ)は、送信器時刻に関する少なくとも1つの時間情報を含み、これは音声パケットの送信時刻を指示する。送信器は、IPベースネットワークの少なくとも1つの伝送チャネルを介し一系列の音声パケットを送出する。本方法では、受信器は音声コンテンツを有する又は有しない一系列のデジタル音声パケットを受信しそして音声コンテンツを処理し、ジッタ補償の前述の方法(特に請求項1乃至8のいずれか一項に記載の)は受信器において適用される。
【0039】
本方法の好ましい実施形態によると、恒久的通信接続が、少なくとも1つの通信チャネルを介した送信器と受信器との間の接続期間の間にIPベースネットワーク内でセットアップされ得、この接続期間中、いかなる音声コンテンツも伝送されるべきでない時には、音声コンテンツを有しない音声パケットは送信器と受信器との間の関係を維持するために(好適には規定通常伝送クロックレートで)交換され、音声コンテンツが伝送されるべき接続期間中の時には、音声コンテンツを有する一系列のデジタルパケット又はデジタル音声パケットが送信器から受信器へ送信される。
【0040】
この結果、本発明に従って提案されたジッタ補償の方法は、音声コンテンツが伝送される際に、動的に調節されたバッファが伝送チャネル内の現在の条件に従って任意の時に利用可能であるように、長期にわたり(連続的に)行われ得る。
【0041】
本発明によると、両通信パートナーが送信器及び受信器として機能する双方向音声接続の場合、送信器の機能及び受信器の機能がいずれの場合も1つのデバイス内で実現される合成送信器/受信器デバイスも使用され得る。この意味で、明瞭さのために送信器及び受信器に関してここでは別々に説明された機能はまた、合成送信器/受信器デバイスに関しそれぞれ適用される。これらのデバイスでは、適切ならば、いくつかの機能は送信器又は受信器へ一意的に割り当てられない。本発明はまた、機能及びフィーチャ(それらのうちのいくつかはまたオーバーラップする)を送信器又は受信器へ明確に割り当てること無く、説明されたフィーチャのすべてが、合成送信器/受信器デバイスへ割り当てられるような実施形態に関する。これは例えば、送信器及び受信器の両方により原則的に開始され得る恒久的通信接続のセットアップに関し適用される。通信セットアップの文脈では、特にIPベースネットワークのための共通通信技術において提供されるように、音声コンテンツの(純粋な)受信器もまた通信セットアップのための送信機能を有し得、そして音声コンテンツの(純粋な)送信器もまた通信セットアップの受信機能を有し得る。合成送信器/受信器デバイスの場合、両通信参加者は、例えば通信接続を維持するために、受信器として及び送信器として動作し得、そして音声コンテンツを有しない音声パケットを両通信方向に交換し得る。これは、両通信方向の共通伝送チャネルにおいて、又は両通信方向の各通信方向の1つの伝送チャネルにおいて、それぞれ行われ得る。同じことは1つの通信方向にいくつかの様々な伝送チャネルが存在すれば適用される。
【0042】
本発明を実施するために使用される限りでは、当業者に知られている通信技術もまた、本明細書において十分に説明されていなくてもこの専門知識が想定され得るので本発明の主題に属する。
【0043】
本発明の一実施形態によると、送信器はいくつかの様々な伝送チャネルを介し音声パケットを送出しそして受信器は様々な伝送チャネルを介し送出された音声パケットを受信するということが提供され得る。好適には、受信器は様々な伝送チャネルを介し伝送された音声チャネルを受信しそれらを同時に処理しこれにより例えば出力内のエコーが提案発明のおかげで回避され得るということが提供され得る。受信器は、音声メールを無線により同時に送出するいくつかの空間的に分散された無線送信器を含み得る。
【0044】
従って、本方法は特に好適には、いくつかの様々な無線チャネル(伝送チャネルとしての又はその意味での)が無線メッセージ(音声コンテンツとしての)を送信するために使用される特にCLIMAXオペレーションにおける運用可能地対空通信の伝送のための無線通信において本発明に従って使用され得る。
【0045】
この目的を達成するために、本発明はまた、音声コンテンツを含むデジタル音声パケット又はデジタル音声パケットをIPベースネットワークを介し送受信するためのデバイスであって送信器及び受信器を有するデバイスに関し、送信器は、アナログ音声コンテンツを記録するための音声記録ユニット(特にマイクロホン)と、送信器クロックを有する演算論理ユニットであって前述の方法又はその一部分に従って(特に請求項11乃至14のいずれか一項に記載の)記録音声コンテンツを処理するためにセットアップ(適応化)される演算論理ユニットとを有し、受信器は、「送信器及び受信器が、音声コンテンツ又はその一部を送受信するための(特に請求項11乃至14のいずれか一項に記載の)方法のフィーチャを適用するように全体としてセットアップ(適応化)されるように」、前に説明されたような(特に請求項9又は請求項10の一項に記載の)フィーチャに従って構築される。
【0046】
本発明の使用のためのさらなる利点、フィーチャ及び可能性はまた、例示的実施形態の以下の説明及び図面から生じる。すべての説明された及び/又は絵により示されたフィーチャは、説明されそして示される例示的実施形態における又は特許請求の範囲におけるそれらの要約と無関係であったとしても、一緒に、又は当業者にとって任意の賢明な組み合わせで、本発明の主題に属する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】IPベースネットワーク(ボイスオーバーIP:VoIP)を介するアナログ音声コンテンツの伝送のための時間系列を概略的に示す。
図2】遅延補正を有しない2つの異なる伝送チャネル上の同一音声コンテンツを有する音声パケットを送出するための時間系列を概略的に示す。
図3】遅延補正分だけ延長された図2に対応する2つの異なる伝送チャネル上の同一音声コンテンツを有する音声パケットを送出するための時間系列を概略的に示す。
図4】本発明による動的ジッタ補償を有する図3に対応する2つの異なる伝送チャネル上の同一音声コンテンツを有する音声パケットを送出するための時間系列を概略的に示す。
図5】本発明による動的ジッタ補償を有する図4に対応する2つの異なる伝送チャネル上の同一音声コンテンツを有する音声パケットを送出するための時間系列を概略的に示し;ここでは、いくつかの様々な音声コンテンツが様々な音声パケット系列で連続的に送信される。
図6】受信器により受信される音声情報を有する音声パケット及び音声情報を有しない音声パケットを有する送信器と受信器との間の接続期間を概略的に示す。
図7】受信器クロックの本発明による初期化のための及び最小相対的パケット伝送継続期間の本発明による判断のためのフローチャートを示す。
図8図8による方法の実行のためのログファイルの抜粋を示す。
図9】バッファの動的調節により無線メッセージの第1の音声パケットを遅らせるためのフローチャートを示す。
図10図9による方法の実行のためのログファイルの抜粋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実際の実施形態を説明する前に、IPベースネットワーク(ボイスオーバーIP又はVoIPアプリケーション)を介する既知の音声伝送の原理及び本文において使用される用語が説明されるべきである。
【0049】
図1は、従来技術において原理的に既に知られているようにそしてまた本発明による方法の文脈において原理的にも適用されるようにアナログ及び/又はデジタル音声コンテンツを送受信する方法の時間系列を概略的に示す。時間スケールは概略的に理解されるためだけのものであり従って実時間比に関するいかなる陳述もしないということに留意されたい。特に、音声パケットの実際の伝送時間はスケッチで概略的に示されているものより実質的に短い。
【0050】
IPベースネットワーク(ボイスオーバーIP/VoIP)を介し音声(例えばアナログ音声コンテンツ1)を送信する際、例えば記録された話し言葉は、音声コンテンツ1がデジタル音声データとしてデジタル化後の最新版で存在するように既知のやり方で(例えばパルスコード変調(PCM:pulse code modulation)により)デジタル化される。デジタル音声データは音声コンテンツ1とも称する。
【0051】
デジタル音声データはデータパケット(音声パケット110)内で組み合わされ、ここでは、音声コンテンツ1全体の一部だけが1つの音声パケット110に含まれる。これは音声コンテンツ1内の垂直線により明確にされる。デジタル音声パケット110の各々は音声サンプルとも称する。
【0052】
従って、音声コンテンツ1は通常、いくつかの連続音声パケット110で構成される系列119へ分割される。4つの音声パケットを有する系列119は図1の例により示される。
【0053】
各音声パケット110はデジタル音声データを含み、デジタル音声データは音声コンテンツ1の例えば数ミリ秒のセクション(即ち音声コンテンツ1の一部分)を含む。(デジタル又はデジタル化されたアナログ)音声データのこのようなセクション(音声パケット110内に含まれる)はペイロードPLとも称する。音声パケット110はまた、重要な構成要素として、通信制御のためのデータを含むヘッダHを含む。例えば、第1の音声サンプルのサンプリング時刻はタイムスタンプ(送信時刻tsを規定する時間情報という意味での)としてヘッダH内に入れられる。これは音声パケット110の送信時刻tsとして採用される。音声コンテンツ1のサンプリングは、サンプリング周波数(例えば8kHz)によりアナログ音声コンテンツ1をサンプリングすることを意味するものと理解され、このサンプリングの間にデジタル値が音声コンテンツ1へそれぞれ割り当てられる(即ち、音声コンテンツの音声データとしてのデジタル化とパケット(ペイロードPL)への分割とが発生する)。
【0054】
音声パケット110は、送信器(技術的言語ではソース(音声パケットの)とも称する)により生成され、そして次に受信器(技術的言語ではデータシンク(音声パケットの)とも称する)へ送信される。送信器は、送信時刻tsをヘッダ内へ挿入しそして音声パケット110を送信する。音声コンテンツ1を有しない音声パケット120(図1には示されないが以下にさらに説明される)(その中ではペイロードPLが省略される)が送信されれば、送信時刻tsは、音声パケット120が送信された送出時刻taに対応する。音声コンテンツ1(図1に示す)を有する音声パケット110が送信されれば、送出時刻は音声パケット110のサンプリングだけ遅らされる。これは、期間TPSかかり、その結果、音声パケット110の実際の送出時刻(実際の送信時刻ta)は期間TPSだけシフトされる(即ちta=ts+TPS)。ペイロードPLをサンプリングするために必要とされるこの期間TPSはペイロードの長さとしても説明され、そして一定であると考えられ得る(このための補正は以下にさらに説明される)。音声パケット110を送出することは、タイムライン50を基準に示されており、そして送信器(音声パケットのソースという意味の)により発生する。
【0055】
図1に示すように、この送信後から音声パケット110が受信時刻teにおいて受信されるまでには一定の時間がある。原理的にペイロードPLの出力により開始することが可能だろう。これは、4つの音声パケット110のIPベースネットワークの伝送チャネル10において図1に示され、ここでは、各音声パケット110がタイムライン51を基準にして互いの下の行上に示されている。
【0056】
音声パケット110の遅延DEL及びネットワークのジッタJITは伝送チャネル10を介した音声パケット110の伝送中の2つの重要な影響変数を表わす。
【0057】
遅延DEL又は待ち時間は本質的に伝送チャネル上の(物理的)信号遅延の合計を指す。IPネットワークを介する音声伝送には、一時的格納とそして必要であればデータ低減、データの圧縮及び圧縮解除とに起因するさらなる遅延が伴う。これは、これらの遅延が短時間範囲にわたって一定であると考えられ得る(本発明のアプリケーションに関して想定され得るように)ので本明細書においてさらに考察されない。これらの一定遅延はまた本文の文脈では遅延DEL内に含まれるべきである。
【0058】
2つの音声パケット110の受信間のランダムな時間的変動(技術的に避けられない)はジッタJITと呼ばれる。このジッタJITは、同じ長さの音声パケット110が互いに対し正確に同じ時間インターバルで送信されるが異なる時間インターバルで受信器に到達するという結果を有する。これは、音声パケット110の各音声パケット110の異なる幅の箱JIT(そのうちの本発明のために必須であるペイロードPLだけが示されている)により図1に示され、そしてヘッダHは明確化のために省略された。
【0059】
図解内の個々の構成要素(H、PL、DEL、JIT、SBJ)の時間長は互いに対する構成要素の実際の持続時間も再生しないしまたその長さにわたって一様な期間を有するタイムラインも示さないということにもう一度留意されたい。図解は、一様な(絶対的又は相対的)タイムスケールを使用すること無く、本発明の文脈では本発明に従って説明される方法のシーケンスを理解するためだけに使用される。
【0060】
連続音声パケット110の受信間のこれらの様々な時間インターバルは、図1において音声出力90の第1の変形形態(受信音声データを処理する一例としての)に関し概説されたように、送信された音声情報1のさらなる処理(例えば再生又は使用)中に、個々の音声パケット110のペイロードPLを連続出力ストリームへ接続することが可能ではない場合があるという影響をもたらし得る。ここでは、音声情報の出力は、受信時刻te1に第1の音声パケット110のペイロードPLを受信した後に直ちに開始される。第2の音声パケットのペイロードPLは、第1の音声パケットのペイロードPLからの音声情報の処理(例えば再生)が完了される前の時刻te2に受信される。従って、第2の音声パケット110のペイロードPLは第1の音声パケット110のペイロードPLの処理が完了されるまで受信器内に一時的に格納される。従って、第2の音声パケット110のペイロードPLの処理は第1の音声パケット110のペイロードPLの処理に直接追随し得る。同じことが第3の音声パケット110のペイロードPLに当てはまり、その結果、例えばこの時点までに音声情報の連続出力(ペイロードPLの可能な処理という意味での)が可能である。
【0061】
しかし、特に長いジッタJITのおかげで、第4の音声パケット110のペイロードPLは、第3の音声パケット110のペイロードPLの処理が既に完了している受信時刻te4に受信されるだけである。
【0062】
従って、いかなる可能性のある所望再生(又は他の処理)も受信時刻te4まで待たなければならなく、これは音声出力(ペイロードを処理すること)における休止又は中断92に至る。従って連続処理は可能ではない。
【0063】
「バッファ」(ジッタバッファ)として知られているものは、連続音声パケット110を受信する際のこれらの様々な時間インターバル(ジッタJIT)を補償するためにそして連続的音声出力を可能にするために従来技術において使用される。従って、音声伝送に関して、規定時間(待ち時間)は、音声パケット110の系列119からの第1の音声パケット110のペイロードPLがさらなる処理又は音声出力の前の受信時刻te1に受信された後まで待たされる。これは図1の音声出力の第2の変形形態91に示され、ここでは、時刻te1におけるその受信後の時刻twに第1の音声パケット110のペイロードPLの音声情報の出力の前に、静的固定待ち時間((静的)バッファSJB(静的ジッタバッファ:static jitter buffer)と呼ばれる)の間の待機がある。従って、第1の音声パケット110の受信時刻te1後、音声メールの再生/処理が開始される前に固定バッファSJB(期間という意味の)の間の待機がある。バッファSJB中、後続音声パケット110は受信され続けそして一時的に格納される。これは「第1の音声パケット110からの音声情報(ペイロードPL)の再生後、後続音声パケット110のペイロード(PL)は、この後続音声パケットが第1の音声パケット110からのペイロードPLに直接追随して再生され得るように受信時刻te2に既に受信されており、そして一時的に格納される」ということを意味する。同じことは、更に追随する音声パケット110について当てはまり、その結果、送信された音声コンテンツ1全体の受信器による連続的再生が可能となる。用語「再生」は、本発明の意味では「処理」と同義であると理解されるべきであり、そして、可聴再生としての、音声パケット110からの受信ペイロードPLの他の処理も含むべきである。この例が以下に説明される。
【0064】
従って、(静的)バッファSJBは、音声データを同時発生的にその後出力するために処理(説明された例では:音声出力)の追加の意図的遅延を果たす。静的バッファSJBの遅延時間より遅れて到着する音声パケット110は出力データストリームへ最早取り込まれ得ない。バッファSJBのサイズが遅延DELへ加えられる。従って、バッファSJBのサイズはより多くの遅延(そしてより低いパケット損出率)又はより小さい遅延(そしてより高いパケット損出率)との選択を可能にする。後続音声パケット110が「先行音声パケットのペイロードPLの処理/出力後の処理/出力のためのそのペイロードPLがまだ存在していない」という意味で失われれば、連続処理/音声出力において中断がある。
【0065】
従って、以下の方法が従来技術から知られている。
【0066】
ペイロードPLとしての音声コンテンツ1全体(デジタル又はデジタル音声コンテンツ)の規定部を有する音声パケット110が送信器(データソース)において生成され(実際上、例えば10msのペイロード長で)そして同じ時間インターバルで(即ち同じ転送周波数で)送信される。これは送信の等距離時刻ts1~ts4によりタイムライン50に示される。音声パケット110は、伝送チャネル10上の遅延DEL及びジッタ(JIT)に起因して受信器(データシンク)に遅れて到着する。連続音声パケット110(例えばデジタル無線接続における無線メッセージ)の本発明の文脈において適用される伝送チャネル10上の遅延DELは、考慮中の短期間の間一定であると考えられるべきであり、一方、音声パケット110当たりのジッタJITは、異なり得、そして通常はまた一定ジッタ帯域幅内にある。これは、互いに対し一定時間インターバルでもって受信器に最早到着しない音声パケット110に至る。これは非等距離受信時刻teによりタイムライン51に示される。
【0067】
パケットのさらなる処理におけるこれらの時間的差を削除するために、音声出力(音声出力90)は、受信時刻te1における第1の音声パケット110の到着直後に発生しない。音声出力90は、時刻twに対するバッファSJB(ジッタバッファの時間)だけさらに追加的に遅らされる。
【0068】
これを行わず、その代わりに第1の音声パケットが到着すると直ちにさらなる処理により開始すれば、これは、第4の音声パケット110が第3の音声パケット110のペイロードPLの音声出力後にまだ到着していないであろうため、図1による上の例では連続する第3及び第4の音声パケット110間の音声間隙(音声出力中の中断92)に至るだろう。
【0069】
音声出力twの開始はいつ第1の音声パケット110が受信器(時刻te1)に到着するかとバッファSJBがどれだけ大きいかとに依存するということが図1から明確に分かり得る。従って、音声出力の開始は、遅延DEL、一系列の音声パケット110の第1の音声パケットのジッタJIT、及びバッファSJB(ジッタバッファ)の長さに依存する。遅延DEL及びバッファSJBは通常の音声伝送(例えば無線メッセージとしての)の文脈では一定であると考えられ得る。ジッタJITは可変影響変数のままである。
【0070】
例えば航空機と航空交通管制との間の運用可能地対空通信の伝送のボイスオーバーIPの使用に関して、音声パケットのジッタJIT及び遅延DELに直結する追加要因(エコー)が存在する。
【0071】
特定例に関係なく、これは、無線メッセージ(例えば航空交通管制からの)が例えば適切な空域を監視している航空交通管制から空域内で移動している航空機へ送信されれば、常に適用される。実際に影響される空域は、単一無線送信器による単一無線伝送ルートにより常にカバーされるとは限らない。むしろ、多くのケースでは、様々な場所から空域内の航空機へ無線メッセージを送出するいくつかの無線送信器は、航空機内の無線受信器が全空域内の無線メッセージを受信し得るように空間的に分散したやり方で設けられる(地上局として)。従って、安全関連通信が必要に応じて(例えば無線運用における地対空通信の場合に)実現され得る。
【0072】
航空機内の無線受信器への地上の無線送信器による無線伝送は本質的に光速度で発生する。本明細書における当該の無線リンクの場合、伝送中の遅延差は無視され得る。このとき、無線受信器により受信された無線メッセージ(伝送された音声コンテンツ1により形成される)は通常、無線受信器により直接出力される。これは、慣習であり、従って本発明の主題ではない。通常、無線送信器と無線受信器との間のこの無線リンクはまたボイスオーバーIP伝送として実現されない。本明細書において説明される地対空通信の特に好ましい実施形態に関して、本発明は、中央ソース(本文ではボイスオーバーIP伝送における送信器という意味で「送信器」と呼ばれる)から無線送信器(本文におけるボイスオーバーIP伝送における受信器という意味で「受信器」と呼ばれる)へ音声メールを送信するためのIPベースネットワークを介するジッタ補償に関係する。次に、いくつかの無線送信器は、航空機に搭載された無線受信器による受信のための音声メールを無線により空域内へ送信する。
【0073】
従って、無線送信器は、ボイスオーバーIP接続を介しデジタル音声パケット110を受信し、そして音声メール1を形成するためにそのペイロードPLを組み合わせ、次に音声メール1は従来の無線技術を使用する変調されたやり方で無線により送出される。これが、音声パケット内に含まれる音声コンテンツの「処理」によりそしてまた最終的に音声コンテンツの出力により意味するものである。
【0074】
また、同じ無線メッセージの様々な伝送の関連遅延変動(様々な無線送信器(CLIMAXオペレーション)を介する同じ無線メッセージの再生中のエコーに至る)が通常、無線送信器と無線受信器との間の実際の無線伝送中に発生しなければ、無線を介し無線メッセージを送出するための無線送信器である送信器(無線メッセージのソース)から受信器(ボイスオーバーIP伝送の無線メッセージのシンク)へのボイスオーバーIPによるIPベースネットワークを介する無線メッセージの遅延は異なる。これは、様々な無線送信器による同じ無線メッセージの様々な送出時刻に至り、そして受信器における無線メッセージの再生中のエコーを生成する。無線受信器による無線伝送の受信後の無線メッセージのソース(例えば航空交通管制)から再生までの無線メッセージの全伝送路は無線チャネルと呼ばれ、ここでは、エコーを通常引き起こす遅延差が、IPベースネットワークによるボイスオーバーIP伝送中に発生し、そしてエコーを引き起こす。この点に関し、本発明の意味での無線チャネルは一般的意味での伝送チャネルも常に意味する。連続的音声コンテンツ1の受信(及び送信)は説明された例では無線メッセージとも称する。従って、無線メッセージはまた一般的意味での音声コンテンツを常に意味する。
【0075】
同一音声コンテンツ1を有する音声パケット110が2つ以上の無線チャネルを介し送信器により成功裡に送信されれば、音声パケット110は、第1のチャネル10を介する音声パケット110としてそして第2の無線チャネル20を介する音声パケット210として送信器により送信される。従って、受信器はまた、同一音声コンテンツ1を有する第1の音声パケット110及び第2の音声パケット210をそれぞれの無線チャネル10及び20を介し受信する(図2)。音声パケット110、210の構造及び時間系列は音声パケット110を有する図1に関する前の説明に対応する。音声パケット110、210のペイロードは同一である。
【0076】
無線チャネル10上の及び無線チャネル20上の同一音声コンテンツ1を有する音声パケット110及び210(無線チャネル10、20を区別するために音声パケット110、210とも称する)のこのような伝送はCLIMAXオペレーションとも称する。これは、2つの無線チャネル10、20に限定されなく、むしろいくつかの無線チャネルに一般的に適用される。
【0077】
CLIMAXオペレーション(独語で“Ueberdeckung”/英語で「オーバーラップ(overlap)」)は同じ周波数上のいくつかの送信場所(無線送信器)からの送信器による音声パケット110及び210の並列且つ基本的に同時送信(同報通信)を意味するものと理解される。従って、送信器(無線メッセージのソースとしての)は、様々な無線送信器により無線により送出された無線メッセージが(同じ)受信器において受信される限りでは音声コンテンツ同士が無線受信器においてオーバーラップするように、様々な場所においていくつかの様々な無線送信器(同じ無線周波数上で同じ音声パケット110及び210をできるだけ同時に送出する)を利用する。この使用ケースは本発明の特に好ましい応用である。
【0078】
従って、このタイプのCLIMAXオペレーションは、空間的に難しいカバレッジ(例えば山々により引き起こされる)を有する非常に大きな空域又は領域を1つの伝送周波数を使用することによりカバーするために、例えば地対空通信において使用される。無線メッセージ1(即ち伝送された音声コンテンツの)を受信すると、パイロットは、同じ音声コンテンツ1を有する音声パケット110及び210を2つ以上の無線送信器場所から受信する領域内に居り得る。
【0079】
従って、「無線メッセージの送出はパイロット用の無線メッセージのエコーの発生を防ぐためにすべての無線送信器においてできるだけ同時に(10ms内の規則ED-137に従って)発生する」ということが好適な技術的方法により保証されなければならない。
【0080】
図2は、中央送信器(無線メッセージのソースとしての)から始まる無線メッセージがいずれのケースもボイスオーバーIP接続を介し第1の無線チャネル10上で4つの音声パケット110をそして第2の無線チャネル20上で4つの音声パケット210を送出することにより送出される状況を実際に示す。ここでは4つの音声パケット110及び4つの音声パケット210は同一音声コンテンツ1を有する。音声パケットは受信器内で同時に処理されるべきである。本明細書において説明されるCLIMAXオペレーションの特に好ましい使用ケースでは、これは、それぞれが1つの無線送信器(1つの無線受信器による受信のためのボイスオーバーIP接続を介し無線により受信音声パケット110及び210を同報通信する)を有するいくつかの受信器が設けられるということを意味する。いかなるエコーも無線受信器において発生しないように、ボイスオーバーIP接続を介し受信される音声パケット110及び120は、様々な無線送信器場所において、各無線送信器(いずれのケースもボイスオーバーIP接続の1つの受信器に対応する)により同時に送出されるべきである。
【0081】
送信器から無線チャネル20上の受信器への遅延DELは無線チャネル10上の受信器への遅延より長いということがこの例では分かり得る。遅延の差は、無線チャネル10及び20(より一般的には伝送チャネル10及び20)内の様々な干渉又は特性のおかげで発生する。それぞれの無線チャネル10及び20内のこの(異なる)遅延DELは、無線メッセージの考慮中の所与の短期間の間一定であるものと理解されるべきであるので、遅延のこれらの差は静的遅延差と呼ばれ得る。原理的に、これらはまた例えば、それぞれの無線チャネル10、20上の送信器及び受信器の現在位置(様々な距離に起因する遅延差)から、又は干渉(例えば無線チャネル10及び20上の接続セットアップの文脈での)を判断することにより、判断され得る。
【0082】
従って、様々な無線チャネル10、20上の音声パケット110及び210の様々な遅延DELだけに起因して、様々な無線チャネル10、20を介した同じ音声パケット110及び210の伝送に起因する受信器における同一音声コンテンツ1の様々な出力時刻tw(即ち無線チャネル10上の出力時刻tw(10)及び無線チャネル20上の出力時刻tw(20))がある。
【0083】
好ましい使用ケースでは、受信器における出力時刻taは無線送信器による音声コンテンツの送出を意味する。このとき、音声コンテンツ1は無線受信器におけるアナログスピーチとしての単なる出力である。次に、無線を介し音声コンテンツを送出することは、無線受信器による音声情報の(アナログ)再生における望ましくないエコーに至る。従って、IPベースネットワーク接続(ボイスオーバーIP)を介する受信中及び受信後に音声パケットを処理するためのシステム全体は本発明の意味では受信器として理解され得る。従って、説明される例示的ケースでは、これは、ここでは無線を介し音声情報を送出することによりそして無線受信器により受信することにより無線送信器(ボイスオーバーIP接続を介する音声パケットの受信器としての)及びその出力(さらなる処理という意味の)で構成されるシステムであり、次に無線受信器は聴こえるやり方で音声コンテンツを出力する。受信器の下流側にある無線リンク(無線リンクの端における出力のための受信音声パケットのさらなる処理という意味での)は、実際上、様々な無線チャネル上の(新しい又はさらなる)遅延差に最早至らない。以下では、直接(アナログ)音声出力がボイスオーバーIP伝送の直後に又は無線送信器と無線受信器との間の後続無線伝送後だけに発生するかどうかに関係なく、IPベースネットワークを介するボイスオーバーIP伝送中の振る舞いだけが考察される。
【0084】
「動的遅延補償(DDC)」と称する機能が、様々な伝送又は無線チャネル10、20を介した送信器から受信器への静的な遅延差を補正するために標準規格ED-137に記載されている。ここで、追加遅延補正DDCによる様々なチャネル10及び20の遅延DELの様々な値は、「速い」無線チャネル10上で送出することが「遅い」無線チャネル20上の遅延DELに対応するまで遅延補正DDCにより遅らされるようなやり方で、調節される。遅延補正DDCに起因するこの遅延は動的遅延補償と呼ばれる。この遅延補正は、「より速い」無線チャネル10の送信器場所における(即ち送信器の領域内の)遅延された送出により、又は受信器による音声情報の処理中の待ち時間(バッファに似た)により、実現され得る。遅延差は、知らされ得る及び/又は計算可能であり得、そしてそれに応じて送信器又は受信器において適用される。遅延差はさらに、前に説明されたやり方で受信器により接続期間中に判断され適用され得る。
【0085】
遅延補正を適用した結果が図2によるケースに関して図3に示される。従って、その結果、音声パケット110及び210の実際の遅延の合計及び(存在すれば)遅延補正DDCは無線チャネル10、20毎に同じである。このとき、エコーの発生は様々な遅延DELに最早依存しない。
【0086】
しかし、図3は、ジッタJIT(即ち音声パケット110、210の到着時刻)が無線チャネル10、20(伝送チャネル)毎に変動するということすら明確にする。「無線チャネル10及び20のCLIMAXオペレーション中、遅延差のおかげで、異なるジッタJITだけに責任があるエコーを伴う問題も存在するだろう」ということを理解することは難しくない。これもまた、同一音声コンテンツ1の無線チャネル10を介する出力時刻tw(10)と無線チャネル20を介する出力時刻tw(20)との差に至る。
【0087】
前述のように、系列119からの第1の音声パケット110及び210の受信時刻te1(図1参照)が音声出力twの開始を決定する。第1の音声パケット210が音声パケット110に対し相対的に考えた場合に早い時刻に到着すれば(即ちこの音声パケット210の現在のジッタが小さければ)、音声再生はより早く始まる。第1の音声パケット110が相対的に考えた場合に遅い時刻に到着すれば(即ち、音声パケット110の現在のジッタが大きければ)音声再生はより遅れて始まり、ここで、「音声再生」又は「音声出力」もまた無線により再送出することを意味する。
【0088】
この問題は、いくつかの無線又は伝送チャネルを使用する際の遅延補正によりED-137標準規格では考慮されていない。
【0089】
しかし、この問題は、動的バッファによる動的ジッタ補償のための提案方法により克服される。無線メッセージ(又は音声パケット110及び210の系列119)の音声出力開始時刻twは音声パケットの系列119の第1の音声パケット110及び210のジッタに最早依存しないということが実現される。
【0090】
これは、実際の受信時刻(実際のジッタと同義)は音声メール(即ち音声情報1)を表す音声パケット110及び210の系列119の第1の音声パケット110、210に関し判断され、そしてバッファは実際の受信時刻(実際のジッタと同義)に応じた動的バッファDJBとして固定される(判断又は規定されるという意味で)という点で本発明に従って実現される。動的バッファの時間長は、ジッタJIT及び動的バッファDJBで構成される期間が一定であるようなやり方で、実際のジッタに依存するように固定される。
【0091】
これは図2及び3において説明された時間系列に関して図4に示される。図2又は3による固定バッファSJBの代わりに、本発明によると、無線メッセージ又は音声コンテンツ1の第1の音声パケット110及び210のジッタ(ジッタ値、実際の受信時刻)に動的に適応する動的バッファDJBが存在する。第1の音声パケット110及び210が相対的に考えた場合に早く(低ジッタ値で)来ればこれは時間的により長いバッファDJBに至る。従って、実際のジッタJIT(無ジッタ又は発生する最短ジッタに対しランダム受信時刻という意味のジッタ値)と動的バッファDJBとの合計は本発明によると一定である。ここでの受信はボイスオーバーIP伝送における受信を意味する。
【0092】
次に様々な無線チャネル10、20上のいくつかの無線メッセージ1、2、3、4を考慮すれば、各無線メッセージ1、2、3、4及び各無線チャネル10、20の実際のジッタJITが異なるということが図5において分かり得る。
【0093】
それにもかかわらず、音声出力の開始時刻twは、無線チャネル10、20内のすべての無線メッセージ1、2、3、4に関してそしてすべて無線チャネル10及び20上のすべての無線メッセージ1、2、3、4に関し同じである。従って、音声パケットのさらなる処理は、すべての無線メッセージに関しそして伝送チャネルのすべてに関して同時に発生する。
【0094】
音声パケット110及び210の系列119の第1の音声パケット111及び211(即ち、例えば無線メッセージ1、2、3、4のうちの1つ)が到着すると、本発明を実施する際の挑戦は、この第1の音声パケット111及び211の実際のジッタが実際にどれだけ高いかを検出すること、又は異なるやり方で表現すると、この第1の音声パケット111及び211の相対的パケット伝送期間が、IPベースネットワークを介した音声コンテンツの受信中に音声パケットの受信時刻間の合計発生ランダム時間的変動(ジッタ)に対しどれだけ大きいかを検出することにその本質がある。従って、バッファDJBの長さを固定する第1の音声パケット111、211が相対的に考えた場合に早く又は遅れて到着したかが定量的に判断されなければならない。
【0095】
この機能は「通常の」ボイスオーバーIPアプリケーションにおいて知られておらず、そしてまたED-137標準規格に記載されていない。ソース(送信器)とシンク(受信器)との間のボイスオーバーIP接続(IPベースネットワークを介するアナログ音声コンテンツ1、2、3、4の伝送という意味の)が、デジタル音声データ(ペイロードPL)を表す音声コンテンツを有する音声パケット110及び210の系列119が同報通信されるべきであるときに初めてセットアップされず、むしろ接続はいくつかの(別個)音声コンテンツ(無線メッセージ)1、2、3、4が伝送されるべきである一定接続期間にわたって存在する場合は常に音声パケット110及び210の系列119の第1の音声パケット111及び211の実際のジッタを判断することが可能である。これは、例えば接続が電話呼の期間中に(恒久的に)セットアップされればボイスオーバーIP接続による電話呼の場合には可能であるが、会話内の休止中に、音声コンテンツを有する音声パケット110、210ではなくむしろ接続を維持するために使用される音声コンテンツを有しない音声パケット120が伝送される。新しい音声コンテンツ1、2、3、4が送信されるとすぐに、本発明の意味での新しい動的バッファDJBが確立される。
【0096】
さらなる使用ケースは例えば、メッセージが高速に送信される必要があるので接続が恒久的に存在することが重要である地対空通信における無線接続である。各無線メッセージ1、2、3、4の新しい接続セットアップはあまりにも長くかかりそしてあまりにも多くのリスクを有するだろう。このタイプの無線接続は例えばED-137標準規格に従って開発され得る。このタイプのアプリケーションが以下に詳細に説明される。しかし、本発明は、これに限定されるのではなく、むしろ、音声通信の接続が比較的長い時間(恒久的に)にわたって存在するすべてアプリケーションにおいて使用され得る。
【0097】
ED-137標準規格による使用の文脈では、恒久的ボイスオーバーIP接続がIPベースネットワーク内に存在し、その間音声パケット110、120、210は、音声伝送及び接続維持両方のために使用される各無線チャネル10、20のRTPフォーマットで絶えず伝送される。これは接続期間30及び無線チャネル10に関して図6に示され、ここでは3つの無線メッセージ1、2、3(デジタル化形式の音声コンテンツ(即ち音声データ)を有する)が一例として示され、ここでは3つの点は、すべての無線メッセージ1、2、3、4及び音声パケット110、111、120が示されているわけではないということを指示する。無線メッセージ1、2、3はいずれの場合も、音声コンテンツを有する(即ちヘッダH及びペイロードPLを有する)音声パケット110を含み、そして音声パケットの系列119を形成する。同じことは別の無線チャネル20に関し類似的に適用される。
【0098】
いかなる無線メッセージ1、2、3も現在伝送されていなければ、音声コンテンツを有しない「空の」音声パケット120(いかなる音声データ(ペイロードPL)も有しなくそしてヘッダHだけを有する)が伝送される。音声パケット110及び120の送出は所定送信クロック速度で発生することが好ましい。
【0099】
無線メッセージ1、2、3を形成する一系列の音声パケット110の第1の音声パケット111はいずれのケースも識別された音声パケット111であり、音声パケット111は、音声コンテンツを有する第1の音声パケット110であるという点で識別され、この音声コンテンツを有する第1の音声パケット110は、音声コンテンツを有しない1又は複数の音声パケット120に追随しそして従って新しい無線メッセージ1、2、3の開始を指示する。一系列の音声パケットの音声コンテンツを有するこの第1の音声パケット111に関して、この音声パケット111の実際の受信時刻(即ち実際のジッタ)は、受信された音声パケット111内の時間情報と受信時の受信器時刻とを比較することにより判断される。バッファDJB(動的バッファ/ジッタバッファ)は実際の受信時刻に応じて本発明に従って判断される。
【0100】
接続期間30中のこの恒久的接続の支援と、接続期間30中に交換される音声パケット110及び120とにより、最短パケット遅延(相対的に考えた場合の)を簡単なやり方で判断することと従って受信器内の実際のジッタを計算することとが可能である。音声パケット110の系列119の再生されるべき第1の音声パケット111が到着すれば、この第1の音声パケット111が有する実際のジッタ(ジッタ値)又は受信時刻が知られ、音声パケットの再生の開始までの遅延時間(即ち本発明によるバッファDJB)がそれに応じて動的に調節され得る。
【0101】
従って本発明による手順は以下の2つの機能的パートから成る。
●パートA:
IPベースネットワーク(ボイスオーバーIP)を介した伝送中の送信器(データソース)と受信器(データシンク)との間の最小パケット遅延を判断すること
●パートB:
バッファDJBを動的に調節する(バッファのサイズという意味で)ことにより無線メッセージ1、2、3(音声パケットの系列119)の第1の音声パケット111を遅らせること
【0102】
これらの2つのパートは互いに独立して動作しており、そして両方とも絶えず実行される。この手順は以下に詳細に提示される。
【0103】
パートA
音声パケット110及び120はED-137標準規格に従って送信器(データソース)により生成され、そしてRTPパケットとしてラベル付けされる。第1の音声サンプルのサンプリング時刻はタイムスタンプ(TRTP)としてRTPヘッダHへ入れられる。これは音声パケット110(またRTPパケット)の送信時刻tsとして採用される。音声コンテンツ1のサンプリングはアナログ音声コンテンツ1をサンプリング周波数(例えば8kHz)によりサンプリングすることを意味するものと理解され、この間にデジタル値が音声コンテンツ1へそれぞれ割り当てられる、即ち、音声コンテンツの音声データとしてのデジタル化及びパケット(ペイロードPL)への分割が発生する。
【0104】
サンプリング後、音声パケット110はボイスオーバーIPによりデータシンクへIPベースネットワークを介し伝送され、ここでは、ペイロードPLもまたヘッダHへ添付される。従って、送信器における音声パケット110の相対的又は実際の送出時刻はタイムスタンプTRTP(送信時刻ts)とペイロードPLの長さ又は継続期間(即ち、含まれる音声データの時間長又はサイズ)TPSとの合計により与えられる。RTPパケットに関して、ペイロードPLの長さ又は継続期間もまたRTPPLと呼ばれ得、そして実際には例えば10msであり得る。
【0105】
音声コンテンツを有しない音声パケット120(R2Sパケットとも称する)に関して、サンプリングの期間は省略される:即ちR2SパケットはペイロードPLの長さ又は継続期間TPS(RTPパケットのRTPPLと呼ばれる)だけより短い。従って、音声コンテンツを有しない音声パケット120では、タイムスタンプTRTPは送信時刻(送信時刻ta)に直接対応する。2つのタイプの音声パケット110及び120のこの差は実際には、受信器時刻が音声コンテンツを有しない音声パケット120に対して標準化される又はそれと相関付けられるという点と、予想受信時刻がそれに応じてペイロードの期間RTPPLにより補正されるという点とで考慮される。
【0106】
送信器のタイマ(データソースの送信器クロック)と同じ公称周波数を有するタイマ(受信器クロックTRECEIVER、以下ではTSINKと呼ばれる)が受信器(データシンク)内で動く。換言すれば、送信器及び受信器のクロック(タイマ)は無線メッセージのサイズの程度の本発明の文脈で考慮される期間の間同じ速度で動く。より長い時間にわたって、シンク及び受信器のタイマの設計介在偏差が生じるが本発明の好ましい実施形態に従って自動的に補正される。これは既に説明されたが、また、以下に説明される図7及び9によるアルゴリズムにおいてもう一度示される。
【0107】
セッションのセットアップ(接続期間30の間維持される送信器及び受信器の接続という意味の)後、タイマTSINKは、音声コンテンツを有する最初に到着した音声パケット110(RTPパケット)又は音声コンテンツを有しない最初に到着した音声パケット120(R2Sパケット)の時間値TRTP+RTPPLへ設定され、ここでRTPPL=0は音声コンテンツを有しない音声パケット120に適用する。従って、ペイロードPLの音声パケット110のサンプリングのために必要とされる時間(即ち継続期間RTPPL)が含まれる。これは実際には、音声コンテンツを有しない音声パケット120の遅延に関する送信器クロックに対する受信器クロックの標準化に対応する。
【0108】
従って、この結果、第1の音声パケット(初期パケットと呼ばれる)の受信後、音声パケットの伝送チャネル上の(受信器の)接続期間中、受信器クロックは、受信時刻が音声パケットを送出する際の送信時刻と相関するように初期パケット内の時間情報により送信器時刻を使用することにより初期化される。
【0109】
この時以来、到着するRTP及びR2Sパケットの時間(タイマ値)TRTP+RTPPL:即ち音声パケット110及び120のタイムスタンプTRTP(適切ならば、音声コンテンツを有する音声パケット110のペイロードの期間RTPPLにより補正された)は、最小相対的パケット伝送継続期間を判断するために音声パケットの受信時の受信器時刻(シンクのタイマのタイマ値)と比較される。
【0110】
アルゴリズム的には、これは以下のように実現され得る。
【0111】
図7に示すアルゴリズムの開始300が始まり;その後セッションのセットアップの確立301;第1の音声パケット110及び120の受信302;その後受信器時刻TSINK=TRTP+RTPPLのセットアップ303を伴うセッションのセットアップ。従って、受信器時刻TSINKは、音声パケット110、120の送信時刻tsにおける送信器時刻TSOURCEと相関付けされ、音声パケット110、120のヘッダHへ入れられる:即ち、時刻tsにおけるTSOURCEはTRTPである。音声コンテンツ1を有する音声パケット110のペイロードRTPPLの可能な継続期間が補正される。
【0112】
接続継続期間30中の調節可能インターバルT(例えば、imaxは100又は200個の音声パケットに等しい)内に、以下の処理が音声パケット110及び120(RTP又はR2Sパケット)のあらゆる受信304後に行われる。
【0113】
各インターバルTの開始時に、変数TMINが値MAXJITTER(例えば200)に設定される、ここで、MAXJITTERは、考慮されなければならない受信時刻の最大遅延を規定する。これは、発生する最大ジッタに対応する。この時刻は、この場合は測定単位を有しない値として規定される。例えば、測定単位は125μs(1/8kHz):即ちサンプリング時間であり得る。しかし、本発明はまた、いかなる所望の他のサンプリング時間でもっても機能する。
【0114】
第1の工程305:
インターバルT内に、受信器(シンク)における実際の受信時刻の偏差が次に各音声パケット110及び120(RTPパケット、R2Sパケット)に関して計算される。これは、実際の送信時刻の差デルタの形成により原理的に発生する(音声コンテンツを有しない音声パケット120に関して、R2Sパケット:タイムスタンプTRTP、RTPPL=0として;音声コンテンツを有しない音声パケット110に関して、RTPパケット:タイムスタンプTRTP+RTPPL)及び受信器時刻(タイマTSINK):
デルタ=TRTP+RTPPL-TSINK
ここでRTPPL=0は音声コンテンツを有しない音声パケット120(R2Sパケット)に適用される。
【0115】
これは以下の考えに基づく。受信器時刻の説明された初期化後、差デルタは、受信器時刻を初期化するための音声パケット110及び120の受信時のジッタと現在考慮される音声パケット110及び120の受信時のジッタとが等しければ、零に等しい。これは受信器時刻の相関が送信器時刻+遅延及びジッタに正確に対応するためである。
【0116】
デルタが零より大きければ、現在の音声パケット110及び120は、受信器時刻の初期化又は後調節のベースを形成したこれまで最も速い音声パケットより速かった。他方で、デルタが零未満であれば、現在の音声パケット110及び120は受信器時刻のベースを形成する音声パケットより遅かった。
【0117】
従って、この点に関し、受信器時刻(ここでは:TSINK)は、いずれのケースも後続音声パケット110、120のヘッダH内に含まれる音声パケット110、120を送出する際の送信器時刻(ここでは:TRTP+、適切ならば+RTPPL)の時間情報と比較され、そして、相対的パケット伝送継続期間は、値デルタに対応する受信器時刻に対して判断される。
【0118】
第2の工程306:
従って、接続期間30中の最も速い相対的音声パケット110及び120がその結果原理的に判断され得る。
【0119】
実際の実施形態によると、以下のことが追加的に提案される:当初、各インターバルTにおいて、最短相対的遅延を有する(即ち最も低い相対的ジッタを有する)音声パケット110及び120が、変数TMINとデルタとを比較することにより見出される。この目的を達成するために、絶対的に考えられ得る又は実際上到達されない最も高い相対的ジッタ値(TMIN=-MAXJITTER)へ各インターバルTの開始時に原理的に設定される変数TMINが、より短い相対的遅延を有する(即ちTMIN<デルタが適用される)音声パケット110及び120がインターバルTにおいて見出されれば、デルタの値に設定される。
【0120】
従って、測定インターバルTが終了すると、TMINは測定インターバルT内に発生した音声パケット110及び120の最短相対的遅延を規定する。
【0121】
結果の最小相対的パケット伝送継続期間がインターバルT終了までTMINとして一時的に格納される。
【0122】
第3の工程308:
各インターバルTが終了した(307)後、受信器時刻TSINKは、一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間TMINに応じたやり方(最小相対的パケット伝送継続期間を有する音声パケットを送出する際に受信器時刻TSINKが送信器時刻TSOURCEと相関する)で調節される。
【0123】
これは、下記工程を使用することによりアルゴリズム的に実現され得る。
【0124】
MINが零より大きければ(要求309)、これは「最終インターバルT内に、これまでより短いジッタJIT(即ちより短いパケット伝送時間、遅延)を有する少なくとも1つの音声パケット110及び120が到着した」ということを意味する。この場合、受信器時刻(データシンクのタイマ、TSINK)は次のように補正される(受信器時刻の補正312):TSINK=TSINK+TMIN
【0125】
従って、この結果、受信器時刻は値TMINだけ進められる。本明細書において説明される時間補正又はタイマ補正は、受信器クロック(シンクのタイマ)とインターバルT又は全接続期間30内の最も速い音声パケット110及び120とを同期させるために使用される:即ち、送信器時刻及び受信器時刻は、発生する最短ジッタJITを有する音声パケットの送信時刻及び受信時刻(即ち受信までの最短発生パケット伝送時間)に関して等しい。
【0126】
従って、提示された例では、一時的に格納される最小相対的パケット伝送継続期間に応じた受信器時刻の調節は、より短いパケット伝送時間を有する音声パケットが受信されたということを受信器時刻が指示すれば受信器時刻が最小相対的パケット伝送継続期間だけ戻されるようなやり方で発生する。これは本明細書において説明された実施形態を使用することにより簡単且つ信頼可能なやり方で発生する。しかし、例えば受信器時刻の補正が企てられる前に少なくとも一定数のより速いパケットが測定インターバル内に発生しなければならないという他の実装形態もまた考えられる。ランダム測定誤差がその結果補償され得る。
【0127】
MINが0に等しければ、これは「最終測定インターバルT内に、これまでと同じ(最短)ジッタJIT(即ち最短パケット伝送時間、遅延)を有する少なくとも1つの音声パケット110及び120が到達した」ということを意味する。この場合、受信器時刻(データシンクのタイマ、TSINK)は補正されなく、むしろ不変なままである。
【0128】
MINが0未満であれば(要求310)、これは「最終測定インターバルT内に、これまでのものより短い又それとは同じジッタ(パケット伝送時間、遅延)を有する音声パケットが接続期間30中に到達しなかった」ということを意味する。この場合、受信器時刻(データシンクのタイマ、TSINK)は次式のように補正される:TSINK=TSINK+(TMIN/G)、
ここでGは重み付け係数である。
【0129】
MINの重み付け(311)に起因して、受信器時刻は、一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間が「より長いパケット伝送継続期間を有する音声パケットだけが受信された」ということを指示すれば、戻されるようなやり方で、一時的に格納された最小相対的パケット伝送継続期間TMINに応じて補正され、ここで、受信器時刻は規定又は規定可能継続期間だけ戻される。本明細書において説明される受信器時刻又はタイマ補正は、受信器クロックがより速い音声パケット110及び102(より短いジッタJITを有する)の方向に排他的に補正されないように使用される。補正はまた、反対方向に敏感である(より遅い音声パケット110及び102だけが比較的長時間にわたって受信される)。従って、例えば、ソース及びシンクにおけるクロックは正確に同じ速度で動いていない(特に比較的長い接続期間30の場合に)という事実が考慮され得る。
【0130】
また、伝送ルートの変化(即ち特に伝送チャネル10の変化)に起因してすべての音声パケット110及び120は遅れて到着し、従って最も速い音声パケット110及び120(最短ジッタJITを有する)の既に実現された値は最早有効ではないということが自動的に考慮される。
【0131】
本明細書において説明される補正法は、「より遅い」パケットが測定インターバル内に排他的に発生すれば受信器時刻が重み付け係数により補正される(例えば、重み付け係数3が設定される)ということを考慮する。他の実装変形形態(例えば固定値又は異なる重み付け係数(好適には1~10の範囲内のであるがまた必要であればこの範囲を越えた)による補正)も考えられ得そして可能である。
【0132】
最小相対的パケット伝送継続期間のこの判断は、音声コンテンツを有しない音声パケット及び音声コンテンツを有する音声パケットに関して発生し、ここでは、様々な音声パケットの様々な長さが本発明に従って補正されることが好ましい。
【0133】
これらの先行工程が行われた後、測定インターバルT及びTMIN=-MAXJITTERのカウンタ「i」がインターバルTの再初期化313において戻される。
【0134】
上記方法及びアルゴリズムを使用することにより、受信器時刻TSINKにより音声パケットの相対的最小パケット遅延を判断することが可能である。これは受信器において完全に行われ得る。
【0135】
様々な以前に説明された工程はまた、図7による受信器クロックの初期化のフローチャート及び最小相対的パケット伝送継続期間の判断に基づいて読まれ得る。上記方法手順の個々の工程はその抜粋が図8に示される例示的ログファイルに基づいて理解され得る。明確化のために、このログファイルのインターバルTは、10個の音声パケットを有するが、実際には著しくより大きくなり(例えば100又は200個の音声パケット)、そして好適なやり方で当業者により固定され得る。ログファイルの第2の部分において一例として適用された重み付け係数は3だった。図8による「測定インターバル」は以前に説明されたインターバルTと同義である。
【0136】
パートB
図7による音声コンテンツを有する及び音声コンテンツを有しない受信音声パケット110及び120を評価することによる送信器と受信器との間の接続のセットアップ後の送信器(データソース)及び受信器(データシンク)との間の最小パケット遅延を判断することによる受信器時刻の初期化及び調節(好適には接続期間30中に連続的に発生する)後、音声パケット110及び120は送信器と受信器との間の接続が終了するまでED-137標準規格に従って恒久的に交換される。
【0137】
その開始400もまたセッション401のセットアップと共に発生しそして本発明に従って図7に示す方法と原理的に並列に実行する図9に説明された方法によると、本発明に従って提案されたバッファDJBは音声パケットの実際の受信時刻に応じた動的ジッタバッファとして判断される。
【0138】
通常、接続期間30中、音声コンテンツを有する音声パケット110は、無線メッセージ1、2、3、4が送出されるべきであれば送信される。音声コンテンツを有しない音声パケット120は、接続期間30中にいかなる能動的無線伝送も発生しない(図6参照)時間の間に無線チャネル10、20の回線監視のために使用される。音声パケット110、120のタイプを指示するフィールドPT(ペイロードタイプ)は、ED-137標準規格においてヘッダ拡張として規定されるように、音声コンテンツを有する音声パケット110(RTPパケット)及び音声コンテンツを有しない音声パケット120(R2Sパケット)のヘッダH内に在る。別のPTTタイプフィールドは、音声コンテンツが航空無線送信器を介し同報通信されるべきかどうかを判断する。これがPTT≠0に設定されれば、受信器は、音声コンテンツがこの音声パケット110と共に送信されるということを通知される。対照的に、PTTタイプフィールドがPTT=0に設定されれば、受信器は、この音声パケット120が音声コンテンツ無しに伝送されるということを通知される。従って、通常動作中、音声コンテンツを有しない音声パケット120はPTToff(PTT=0)と共に送信され、そして音声コンテンツを有する音声パケット110はPTTon(PTT≠0)と共に送信される。従って、PTToffからPTTonへの変化が無線メッセージ1、2、3、4の開始を指示する。従って、PTTonからPTToffへの変化は無線メッセージ1、2、3、4の終了を指示する。
【0139】
このような変化を検出するために、図9によると、2つの連続音声パケット110及び120のPTTタイプフィールドがいずれのケースも評価され、ここでは、変数PTToldは、どのPPTタイプを先行音声パケット110及び120が有したかを指示し、そして変数PTTはどのPTT(換言すれば先行音声パケットに続いく音声パケット)を現在の音声パケット110及び120が有するかを示す。
【0140】
従って、PTToffを有する音声パケット120が当初受信されそしてPTTonを有する音声パケット110が同時に受信されれば、この音声パケットは新しい無線メッセージ1、2、3、4の第1の音声パケット111である。次に、この音声パケット111は、受信器が音声コンテンツ1、2、3、4(又は無線メッセージ)を再生することを開始するまで、音声パケット111を送出するための音声パケット111のヘッダH内の時間情報に対する受信時の受信器時刻による受信の相対時間に応じて動的バッファDJBだけ遅らされる。
【0141】
開始400後そしてセットアップセッション401の場合、最初に、変数PTToldの値PTTold=PTToffへの初期化402が発生する。本発明によると、受信器は、各音声パケット110及び120の受信時に変数PTTの値をPTToff又はPTTonとして判断する(403)。変数PTTold及びPTTを問い合わせること(404)により、音声パケットが、音声コンテンツを有しない少なくとも1つの音声パケット120後の音声コンテンツを有する第1の音声パケット111であるかどうか例えば問合せPTT=PPTon && PTTold=PPToffにより判断される。そうでなければ、変数PTToldの値は変数PTTの値に設定され(工程410)、そして新しい音声パケット110及び120の受信が期待される。
【0142】
これが実際に、音声コンテンツを有しない先行音声パケット120後の音声コンテンツを有する第1の音声パケット111であれば、この第1の音声パケット111の受信時刻は、受信音声パケット111内の時間情報と受信時の受信器時刻とを比較することにより判断される。その後、本発明による(動的)バッファDJBが実際の受信時刻に応じて判断される。
【0143】
好ましい実施形態によると、これは例えば以下に説明される手順を使用することにより機能する。
【0144】
音声パケット111の場合、受信器時刻TSINKからの実際の受信時刻TRTP+RTPPLの差deltaJBが判断され(405)、これは、発生したこれまでの最短ジッタを有する音声コンテンツを有する音声パケット110の受信の期待時間:deltaJB=TRTP+RTPPL-TSINKを示す。
【0145】
この方法工程において決して発生すべきではない音声コンテンツを有しない音声パケット120の場合、ペイロードの期間はRTPPL=0だろう。
【0146】
これは、図7に従う差デルタによる相対的パケット伝送継続期間305の判断に従う。
【0147】
その後、差deltaJBの問い合わせ406が発生する。deltaJBが零より大きければ(deltaJB>0;問い合わせ406「j」)、これは音声パケット111が、パートAによる受信器時刻の調節中にこれまで見出されたものより短い相対的パケット伝送時間を有する(即ちより低いジッタを有する)ということを意味する。次に、音声コンテンツ1、2、3、4(無線メッセージ)の再生は、最短可能ジッタJITを有する音声パケットに関して当業者によリ好適なやり方で前もって固定された所定最大バッファの全長(Defaultjitterbuffersize;例えば160)だけ遅延されるべきである(バッファDJBを最大サイズMAX=Defaultjitterbuffersizeへ設定すること407):
DJB=MAX
DJBは、この場合、バッファ(即ちバッファのサイズ又は時間長)を記述する。
【0148】
deltaJBが0未満(即ち、deltaJB<0;問い合わせ406「n」)であれば、これは、音声パケット111が、パートAによる受信器時刻の調節中にこれまで見出されたものより長い相対的パケット伝送時間を有する(即ちより高いジッタを有する)ということを意味する。次に、音声コンテンツ1、2、3、4(無線メッセージ)の再生は所定最大バッファの全長(Defaultjitterbuffersize=MAX)だけ遅延されるべきでない。本発明による動的バッファDJBは最短遅延から偏差だけ低減される(即ちdeltaJB:低減サイズREDへのバッファDJBの設定408):
DJB=Defaultjitterbuffersize-|deltaJB|、
|deltaJB|は本明細書では本質的に負の変数deltaJBの(正)値を記述する。
【0149】
バッファDJBのサイズが零未満であれば、JBSIZE=0が設定される(バッファDJBを零にする409)。
【0150】
また、この後、変数PTTold=PPTの値は変数PTTの値に設定され(工程410)、そして新しい音声パケット110及び120の受信が期待される。
【0151】
様々な前に説明された工程もまた、図9に従ってバッファDJBを動的に調節することにより無線メッセージ1、2、3、4の第1の音声パケット111(音声パケットの系列119)を遅らせるためのフローチャートに基づいて読まれ得る。上記方法手順の個々の工程はその抜粋が図10に示される例示的ログファイルから理解され得る。示された第3の音声パケットは音声コンテンツ(PTTon=1)を有する第1の音声パケット110である。このパケットは7つの時間単位(相対的に考えて(deltaJB=デルタ=-7))だけ遅過ぎるので、所定最大バッファ(Defaultjitterbuffersize=160)は計算160-7=153に従って153まで低減される。
【符号の説明】
【0152】
1 音声コンテンツ、無線メッセージ
2 音声コンテンツ、無線メッセージ
3 音声コンテンツ、無線メッセージ
4 音声コンテンツ、無線メッセージ
10 IPベースネットワークの第1の伝送チャネル
20 IPベースネットワークの第2の伝送チャネル
30 接続期間
50 送信中のタイムライン
51 伝送チャネル上のタイムライン
90 音声出力の第2の変形形態
91 音声出力の第1の変形形態
92 音声出力中の中断
110 第1の伝送チャネル上の音声コンテンツを有する音声パケット
111 第1の音声コンテンツを有する音声パケット
119 一系列の音声パケット
120 音声コンテンツを有しない音声パケット
210 第2の伝送チャネル上の音声コンテンツを有する音声パケット
211 第1の音声コンテンツを有する音声パケット
230 パケット伝送時間又は継続期間
300 最小パケット遅延を判断するためのアルゴリズムの開始
301 セッションのセットアップ
302 セッションのセットアップ後の第1の音声パケットの受信
303 受信器時刻を設定すること
304 音声パケットの受信
305 第1の工程:相対的パケット伝送継続期間を判断すること
306 第2の工程:最小相対的パケット伝送継続期間を有する音声パケットを判断すること
307 インターバルの終了を照査すること
308 第3の工程:受信器時刻の調節
309 TMINが零より大きいかどうかを問い合わせる
310 TMINが零未満かどうかを問い合わせる
311 TMINの重み付け
312 受信器時刻の補正
313 インターバルの再初期化
400 動的バッファを固定するためのアルゴリズムの開始
401 セッションのセットアップ
402 変数PTToldを初期化すること
403 音声パケットの受信
404 変数PTTold及びPTTを問い合わせること
407 バッファDJBを最大サイズに設定すること
408 バッファDJBを低減サイズに設定すること
409 バッファDJBを零にすること
H 音声パケット(通信制御)のヘッダ
PL ペイロード(デジタル音声データとしての音声コンテンツ)
DEL 伝送チャネル上の音声パケットの遅延(遅延)
JIT ジッタ(音声パケットの受信時刻間のランダムな時間的変動)
SJB 静的バッファ(ジッタバッファ)(従来技術)
DJB 動的バッファ(ジッタバッファ)(本発明)
TPS ペイロードの長さ(ペイロードを送出する継続期間)
DDC 様々な伝送チャネルの追加遅延補正
TWD 第1の音声パケットを送出することから処理の開始までの期間
PPT 現在の音声パケットのPTTフィールド
PPTOLD 先行音声パケットのPPT
SINK 受信器時刻
SOURCE 送信器時刻
デルタ 実際の受信時刻と受信器時刻との差
deltaJB 実際の受信時刻と受信器時刻との差
ts 音声パケットの送信時刻
ta 実際の送信時刻(送出時刻)
te 音声パケットの受信時刻
tw 音声出力の開始(出力時刻又は処理時刻)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】