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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】燃料タンク通気システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/035 20060101AFI20240705BHJP
   F16K 17/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B60K15/035 B ZHV
B60K15/035 C
F16K17/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575457
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065315
(87)【国際公開番号】W WO2022258565
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178064.8
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】500411
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・オプ・デ・べーク
(72)【発明者】
【氏名】ジュール-ジョゼフ・ヴァン・シャフティンゲン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・デューズ
【テーマコード(参考)】
3D038
3H059
【Fターム(参考)】
3D038CA15
3D038CA25
3D038CA27
3D038CC02
3D038CC03
3H059BB22
3H059BB35
3H059FF05
3H059FF06
3H059FF13
3H059FF16
(57)【要約】
本発明は、自動車用の燃料タンク通気システム(10)に関し、
- 蒸発ドームを備える燃料タンク (1)、
- 給油パイプ (2)、
- 入口導管(4)によって燃料タンク(1)に接続される燃料蒸気トラップ(3)であって、入口導管(4)は常時開いている少なくとも1つのオリフィス(5)を介して燃料タンク(1)に接続され、オリフィスは静止状態で燃料タンク (1) の蒸発ドーム内に配置されており、
- 大気と連通し、出口導管(7)によって燃料蒸気トラップ(3)に接続されている常閉シャッタ装置(CVS)(6)であって、常閉シャッタ装置(6)は電気作動バルブを備え、電気作動バルブの通電が遮断されるとバルブは閉じられる、常閉シャッタ装置を備え、
常閉シャッタ装置(6)は、車両の給油プロセス中は開き、燃料タンク(1)内の燃料が所定の充填レベルに達し車両が通常動作しているときは閉じるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の燃料タンク通気システム(10)であって、
蒸気ドームを備える燃料タンク(1)と、
給油パイプ(2)と、
入口導管(4)によって前記燃料タンク(1)に接続された燃料蒸気トラップ(3)であって、前記入口導管(4)は、常時開いている少なくとも1つのオリフィス(5)を介して前記燃料タンク(1)に接続され、前記オリフィスは、静止状態において、前記燃料タンク(1)の前記蒸気ドームに配置され、好ましくは前記燃料タンク(1)の壁に配置され、より好ましくは前記燃料タンク(1)の上壁(11)に配置される、燃料蒸気トラップ(3)と、
を備え、
前記燃料タンク通気システム(10)は、
大気と連通し、出口導管(7)によって前記燃料蒸気トラップ(3)に接続された常閉シャッタ装置(6)であって、電気作動バルブが通電していない場合に閉じている電気作動バルブを備える常閉シャッタ装置(6)を備え、
前記常閉シャッタ装置(6)は、車両の給油プロセス中に開き、前記燃料タンク(1)内の燃料が所定の充填レベルに達する場合、および前記車両が通常動作状態の場合に閉じるように構成されていることを特徴とする、燃料タンク通気システム(10)。
【請求項2】
前記入口導管(4)が、静止状態において前記燃料蒸気トラップ(3)および前記燃料タンク(1)間の持続的な蒸気連通を維持するよう構成されている、請求項1に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項3】
前記常閉シャッタ装置(6)は、車両の給油プロセス中または前記燃料タンク(1)内の圧力が所定の圧力レベルに達する場合にのみ開く、請求項1または2に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項4】
両方が前記燃料タンク(1)の外側の通気パイプ(13)によって前記入口導管に接続されている少なくとも2つのオリフィス(5,5’)を備え、前記オリフィス(5,5’)は、好ましくは前記燃料タンク(1)の前記上壁(11)の異なる領域に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項5】
前記燃料タンク(1)の内側の通気パイプ(13’)を備え、前記通気パイプ(13’)が前記オリフィス(5)に接続され、常時開口している少なくとも1つの二次オリフィス(51)を呈している、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項6】
前記オリフィス(5,5’)が前記入口導管(4)を前記燃料タンク(1)に接続することができる通気接続部、例えば通気ニップルによって支持され、前記通気接続部は、好ましくはタンク壁に固定されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項7】
前記入口導管(4)に気液分離器(8)を備え、前記気液分離器(8)は、前記燃料蒸気トラップ(3)および前記オリフィス(5)間に、好ましくは、前記燃料タンク(1)の最大燃料レベルより上に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項8】
前記気液分離器(8)は、前記気液分離器(8)内に、かつ前記気液分離器(8)の前記最大燃料レベルより上に配置された少なくとも1つのロールオーバーバルブ(9)を備える、請求項7に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項9】
前記気液分離器(8)は、前記気液分離器(8)内に、かつ前記気液分離器(8)の前記最大燃料レベルより上に配置された少なくとも1つのロールオーバーバルブ(9)を備える、請求項8に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項10】
前記気液分離器(8)および前記給油パイプ(2)のヘッドに接続された再循環ライン(12)を備える、請求項7~9のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項11】
前記燃料が所定のレベルに達した場合に信号を送ることができるレベルセンサを前記燃料タンク(1)の内部に備え、前記信号は、前記常閉シャッタ装置(6)の遮断に関連する、請求項1~10のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項12】
前記常閉シャッタ装置(6)が過圧レリーフ(OPR)バルブおよび過少圧力レリーフ(UPR)バルブを備える一対のバルブ、または複合圧力/真空/リリーフバルブ(P/VRV)を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の燃料タンク通気システム(10)を備える自動車車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の燃料タンク通気システムおよびそのようなシステムを備えた自動車に関する。より正確には、本発明は、自動車、特にハイブリッド自動車の車載給油蒸気回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料蒸気回収システムは、燃料蒸気を捕捉する燃料蒸気トラップまたはキャニスタ、給油バルブ、および燃料タンク内の燃料蒸気を処理するために燃料タンクの上部に配置された1つまたは複数の通気バルブを備えている。
【0003】
先行技術文献の中で、特許文献1は、作動流体コンテナシステム用のバルブモジュールを開示し、特許文献2は、車両蒸発ガス制御システム用の蒸気キャニスタを開示し、特許文献3は、蒸発ガス制御システムを含む燃料タンクシステムを開示し、特許文献4は、燃料タンク蒸発ガス制御および診断システムを開示している。
【0004】
たとえば、ロールオーバーバルブ(ROV)は、車両の事故による横転が発生した場合に燃料システムを閉じるために使用され、タンクの過充填を防ぐために充填制限通気バルブ(FLVV)が使用される。しかし、これらのバルブを使用すると、燃料タンクシステムが非常に高価になり、製造が複雑になる。また、バルブは燃料系、特に燃料タンク内で多くの場所を占めるため、タンクの容量が不足する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 2020/0198462 A1
【特許文献2】GB 2588778 A
【特許文献3】US 2018/0087475 A1
【特許文献4】US 2016/0298576 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より安価で、より簡単で、特に燃料タンク内のスペースを節約する燃料タンク通気システムを提供することによって、既知の通気システムの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、以下を含む自動車用の燃料タンク通気システムを提供する。
- 蒸気ドームを備えた燃料タンク、
- 給油パイプ、
- 入口導管によって燃料タンクに接続された燃料蒸気トラップであって、入口導管は、常時開いている少なくとも1つのオリフィスを介して燃料タンクに接続されており、オリフィスは、静止状態では燃料タンクの蒸気ドーム内に配置され、オリフィスは、燃料タンクの壁に、より好ましくは燃料タンクの上壁に配置されている。
- 大気と連通し、出口導管によって燃料蒸気トラップに接続される常閉シャッタ装置であって、電気作動バルブの通電が遮断されると閉じる電気作動バルブを備える常閉シャッタ装置、
常閉シャッタ装置は、車両の給油プロセス中は開き、燃料タンク内の燃料が所定の充填レベルに達し、車両が通常動作の場合は閉じるように構成される。通常動作とは、充填動作および過剰な過圧または過小圧力の場合を除くすべての状況を意味する。
【0008】
好ましくは、常閉シャッタ装置と燃料蒸気トラップとの間に圧力リリーフバルブが配置され、前記バルブは、常閉シャッタ装置と並列に配置される。
【0009】
したがって、給油後および車両の通常動作中は燃料システム全体が閉じられており、これが閉鎖環境下での燃料タンク内の圧力の上昇に寄与する。燃料タンク内の圧力が上昇すると燃料の揮発性が低下することが知られている。その結果、閉鎖型燃料タンクシステムでは、燃料蒸気トラップに蒸発燃料が入らず、燃料蒸気トラップに何も積載されない。
【0010】
燃料タンクの通気システムは、ハイブリッド自動車においてCO排出量を削減するのに特に有利である。実際、ハイブリッド自動車は、車両モデルに応じて電気モーターのみ、エンジンのみ、あるいは両方を併用して走行する。特定の動作原理は次のとおりである。
静止状態(車両が動いていないとき)では、エンジンと電気モーターは両方とも停止する。
発進時には、電気モーターが車を高速まで動かす。
より速い速度に達すると、内燃機関が引き継ぐ。
急加速の場合には、内燃エンジンと電気モーターの両方が同時に動作することが観察され、同じ出力のエンジンと同等の加速、あるいはそれ以上の加速を実現することができる。
車両モデルに応じて、減速とブレーキの段階で運動エネルギーが最終的にバッテリーの充電に使用される。
【0011】
実際、燃料蒸気トラップのパージ中、エンジン負荷が低いときに発生するエンジン吸気負圧によって蒸気が燃料蒸気トラップから吸引される。したがって、内燃機関は、非効率的な動作モードで動作する。エンジンが電気モーターを備えている場合、その目的は、エンジンが非効率的な動作モードで動作することを避けることである。実際、例えば世界統一軽自動車テストサイクル(WLTC)の際、ハイブリッドエンジンが低負荷(非効率)モードで動作しないと、より多くの燃料が節約され、CO排出量が削減されることが判明した。一部のプラグインハイブリッド車は、COを排出せず純粋にEV(電気自動車)モードで走行するために、可能な限り内燃機関を完全に停止する。後者の特定のケースでは、エンジンによるパージが必要となり、燃料蒸気トラップのパージのためだけにエンジンをオンにする必要があり、不必要なCO排出につながるため、燃料蒸気トラップが満載状態になるのを避けることが重要である。
【0012】
上記を考慮すると、特許請求の範囲に記載の燃料タンク通気システムは、燃料タンク内の圧力を高めるのに役立つ閉鎖型燃料タンクシステムを可能にし、燃料蒸気トラップの負荷を軽減し、CO排出量を削減することができる。
【0013】
さらに、一方では、従来技術に通常存在するROV、OPV(過圧バルブ)またはFLVVなどのバルブが、特許請求の範囲に記載された燃料タンク通気システムの少なくとも1つのオリフィスによって置き換えられ、燃料のためにより多くの空間を解放することができる。これにより、燃料タンクの容量が向上する。一方で、精密バルブを廃止することにより、燃料タンクの通気システムがよりシンプルかつ安価になる。
【0014】
請求項に記載の少なくとも1つのオリフィスまたは通気は、液体およびガスの通過を可能にする通気ニップルなどの燃料タンクと入口導管との間の簡単な接続によって実装できることが理解できるだろう。燃料タンクと入口導管間の連通を制御するためのオリフィスには可動部品が配置されていない。燃料タンクの壁には可動部分がないことが望ましい。少なくとも1つのオリフィスが永久に浸水しないように構成されていることを理解されたい。
【0015】
入口導管は、静止状態において燃料蒸気トラップと燃料タンクとの間の永続的な蒸気連通を維持するように構成されていることも理解されるだろう。静止状態とは、車両が動いておらず、燃料も給油されていない状態を意味する。
【0016】
本発明の選択的な特徴は、常閉シャッタ装置が、車両の給油プロセス中、または燃料タンク内の圧力が所定の圧力レベルに達した場合にのみ開くことである。したがって、燃料タンク通気システムは、燃料タンク内の圧力を高め、燃料蒸気トラップ負荷を低減し、CO排出量を削減することを可能にする一方で、燃料タンクの抵抗を超え、燃料タンクを損傷する可能性のある燃料タンク内の圧力を回避する、すなわち、タンクの安全性を保証し、その内部圧力が極端になりすぎることを回避する、閉鎖型燃料タンクシステムを可能にする。このように、所定圧力レベルは、車両が通常動作ではないときの圧力レベルとして予め定められている。
【0017】
本発明の別の選択的な特徴は、電気作動バルブが車両の給油プロセス中にのみ開くことである。したがって、電気作動バルブが通電される常閉シャッタ装置の能動作動は、車両の給油処理中にのみ実行される。
【0018】
本発明の別の選択的な特徴は、常閉シャッタ装置が単一の電気作動バルブを備えることである。したがって、特に燃料タンク通気システムの制御が簡素化されるという事実により、燃料タンク通気システムはより安価でより簡単になる。
【0019】
本発明の別の選択的な特徴は、燃料タンク通気システムが、両方とも燃料タンクの外側の通気パイプによって入口導管に接続された少なくとも2つのオリフィスを備え、好ましくはオリフィスが燃料タンクの上壁の異なる領域に配置されることである。
【0020】
したがって、大型および/または複雑なタンクの場合、車両の傾斜によって液面が1つまたは複数のオリフィスに到達し、問題のオリフィスが燃料に浸かる可能性がある。燃料タンクの上壁の異なる領域に配置されたオリフィスにより、燃料タンクが傾いているときでも少なくとも 1つまたはいくつかのオリフィスが確実に機能し、燃料蒸気ドームと燃料蒸気トラップの間の永続的な蒸気連通を確保することができる。通気パイプが燃料タンクの外側にあるため、燃料タンク内のスペースが広くなる。また、通気パイプとタンクの組立も非常に簡単になる。また、燃料タンク通気システムのコストも削減できる。
【0021】
本発明の別の選択的な特徴は、燃料タンク通気システムが燃料タンク内部に通気パイプを備え、通気パイプがオリフィスに接続され、燃料タンクと入口導管との間の連通を可能にする常時開いた少なくとも1つの二次オリフィスを提示することである。
【0022】
したがって、燃料蒸気の透過性要件によって制限されない、燃料タンクが傾いた場合の一部のオリフィスの浸水リスクを解決するための代替解決策が提供される。通気パイプがタンク内にあるため、車両への燃料タンク通気システムの組み付けが簡素化され、燃料蒸気の透過も少なくなる。
【0023】
燃料蒸気用の通気パイプの入口は、有利には蒸気ドーム内に配置されるべきであることが理解されよう。したがって、通気パイプが燃料タンク内にあり、少なくとも部分的に液体と接触している場合、入口オリフィスは、燃料タンク内の最大液体レベルより上、つまり燃料タンク蒸気ドーム内に配置される必要がある。
【0024】
本発明のさらに別の選択的な特徴は、燃料タンク通気システムが入口導管内に気液分離器を備え、気液分離器が燃料蒸気トラップとオリフィスとの間、好ましくは燃料タンク内の最大燃料レベルより上に配置されることである。気液分離器は、たとえ傾斜地であっても、燃料タンク内の液面より上にあることが望ましい。そのためには、気液分離器をできるだけ高い位置に設置することが望ましい。
【0025】
好ましい実施形態では、気液分離器は、気液分離器の最大燃料レベル内およびそれより上に配置された少なくとも1つのロールオーバーバルブを備える。ロールオーバーバルブ(ROV)は、ラインの破損や横転が発生した場合に、燃料タンクと燃料蒸気トラップの間の連通を遮断するように構成されている。ROVでは、燃料は燃料システム内に保持され、大気中に放出されない。
【0026】
給油条件や温度や大気圧が異なる特定の運転条件など、あらゆる条件で蒸気の流れに対応できる高流量ロールオーバーバルブを使用することが好ましい。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、燃料蒸気トラップは、車両がどの方向に、少なくとも12%、好ましくは最大15%、さらに好ましくは最大30%傾いても、燃料蒸気トラップが常に燃料から遠ざかるように、燃料タンクの幾何学的形状に従って構成される通気ゾーンに配置される。たとえば、燃料蒸気トラップは、車両が平らな場所にある場合、燃料タンクの上の十分高い位置に配置される。また、燃料蒸気トラップは、燃料タンクがどの方向に傾いても浸水しないように、燃料タンクと横方向に隙間を設ける必要がある。
【0028】
本発明の別の選択的な特徴は、燃料タンクの通気システムが、気液分離器と給油パイプのヘッドとを接続する再循環ラインを備えることであり、タンク内の蒸気の発生を減少させ、燃料蒸気トラップの負荷を減らし、CO排出を削減することができる。
【0029】
本発明のさらに別の選択的な特徴は、燃料タンク通気システムが、燃料が所定のレベルに達したときに信号を送信することができるレベルセンサを燃料タンク内に備えることであり、信号は、常閉シャッタ装置の停止に関連する。
【0030】
レベル検出の信号は、常閉シャッタ装置の遮断を即座に、または時間遅延を伴ってトリガーすることができる。この動作を制御するために他の電子機器は必要ないため、コストが節約される。
【0031】
あるいは、システムはレベルセンサなしで動作することもでき、常閉シャッタ装置が時間制御され、タイマーは燃料タンクの容量と給油率によって計算される。
【0032】
本発明のさらに別の特徴は、常閉シャッタ装置が、過圧リリーフ(OPR)バルブと過小圧力リリーフ(UPR)バルブ、または複合圧力/真空リリーフバルブ(P/VRV)を備える一対のバルブを備えることであり、タンクの安全性を確保し、内部圧力が過度に高くなるのを防ぐ。
本発明はまた、上述の燃料タンク通気システムを備えた自動車を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、特定の好ましい変形例を示す添付の図1から図7によって非限定的に説明される。
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料タンク通気システムの概略図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る燃料タンクの通気システムの概略図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る燃料タンク通気システムの概略図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る燃料タンクの通気システムの概略図である。
図5】本発明の第5実施形態に係る燃料タンクの通気システムの概略図である。
図6】本発明の第6実施形態に係る燃料タンクの通気システムの概略図である。
図7】本発明の第7実施形態に係る燃料タンクの通気システムの概略図である。
図8】本発明の第8実施形態に係る燃料タンクの通気システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、本発明の第1実施形態による自動車の燃料タンク通気システム10は、燃料タンク1と、燃料キャップで密閉された給油パイプ2と、燃料蒸気トラップ3と、を備え、たとえば、活性炭、炭素、または燃料蒸気を吸収および脱着するその他の材料が入ったキャニスタである。このように、燃料蒸気トラップ3は、燃料タンク1から燃料蒸気を受け取って貯蔵し、次いで、これらの貯蔵された燃料蒸気を車両エンジン内での燃焼のために燃料充填装置に供給する。燃料蒸気トラップ3は、入口導管4によって燃料タンク1に接続されている。
【0035】
この実施形態では、入口導管4は、車両が静止状態にあるときに常時開いている1つのオリフィス5のみを介して燃料タンク1に接続されている。したがって、入口導管4は、静止状態において燃料蒸気トラップ3と燃料タンク1との間の永続的な蒸気連通を維持するように構成されている。オリフィス5は、燃料タンク1の上壁11に配置されており、オリフィス5は恒久的に液体に浸からないようになっている。オリフィス5は、入口導管4を燃料タンク1に接続できる通気接続部によって担持されることが好ましい。たとえば、通気接続部は、タンク壁に固定された通気ニップルとすることができる。
【0036】
また、燃料蒸気トラップ3には、大気と連通する常閉シャッタ装置6が接続されている。常閉シャッタ装置6は、出口導管7により燃料蒸気トラップ3に接続されている。常閉シャッタ装置6は、電気作動バルブ、特に、電気作動バルブの通電が遮断されると閉じる1つの単一の電気作動バルブ、例えばソレノイドバルブを備える。常閉シャッタ装置6は、車両の給油時には開状態となり、燃料タンク1内の燃料が所定の満タン量に達したとき及び車両の通常走行時には閉状態となるように構成されている。換言すれば、常閉シャッタ装置6は、車両の給油時のみ開状態となる。あるいは、常閉シャッタ装置6は、以下の場合にのみ開状態となる。1つ目のケースは、車両の給油時であり、2つ目のケースは、燃料タンク1内の圧力が所定圧力に達したときである。2つ目のケースでは、車両は、通常動作ではない。このような所定の圧力レベルは、例えば、周囲圧力と比較して過圧または低圧であり、例えば、燃料タンク1の耐圧に応じて決定される。過圧は、たとえば周囲圧力より0.3バールから1バール高い範囲で選択され、たとえば夏に日当たりの良い場所で車両が長時間停止したときに発生する可能性がある。低圧は、たとえば周囲圧力よりも低い、-0.1barから-0.3barの間で選択される。2つ目のケースで、つまり、燃料タンク1内の圧力が所定の圧力レベルに達する場合に常閉シャッタ装置6を開くには、常閉シャッタ装置6は、所定の圧力レベルに達すると受動的に開く受動バルブ、例えば機械作動バルブを備える。つまり、受動バルブは、周囲圧力と燃料タンク内の圧力との圧力差の影響で開き、それ以外の場合、つまり所定の圧力レベルに達していないか、または達しなくなった場合は受動的に閉じられる。例えば、電気作動バルブと受動バルブとが並列に配置され、それぞれが開いたときに出口導管7を大気と接続する。例えば、受動バルブとして、常閉シャッタ装置は、過圧リリーフ(OPR)バルブと過小圧力リリーフ(UPR)バルブを備える一対のバルブ、または複合圧力/真空リリーフバルブ(P/VRV)を備え、タンクの安全性を確保し、内部圧力が過度に高くなるのを防ぐ。いずれの場合も、電気作動バルブ6は、車両給油時のみ開く。したがって、電気作動バルブが通電される常閉シャッターバルブの能動作動は、車両の給油プロセス中にのみ実行される。
【0037】
燃料タンク通気システムは、燃料が所定のレベルに達したときに信号を送信することができるレベルセンサを燃料タンク1内に備えることができ、その信号は常閉シャッタ装置6の停止に関連する。
【0038】
図2を参照すると、本発明の第2の実施形態が開示されている。第1の実施形態で既に説明した特徴に加えて、燃料タンク通気システムは、入口導管4内に気液分離器(LVS)8を備え、気液分離器8は、燃料蒸気トラップ3とオリフィス5との間に配置されている。本実施形態では、気液分離器8は、燃料タンク1内の最大燃料液面よりも上方に配置されている。
【0039】
LVSには主に2つのタイプがある:「パッシブ」と呼ばれるものは、例えば本出願人の名による欧州特許EP1020670から知られており、液体の重さの影響で開く単純なバルブをベースに備えている。そして、「アクティブ」と呼ばれるものは、例えば米国特許第6,698,475号から知られており、アクティブ装置(ポンプ、例えばジェットポンプ)によって排出される。
【0040】
図3を参照すると、本発明の第3の実施形態が開示されている。第2の実施形態で既に説明した特徴に加えて、燃料タンク通気システムは、気液分離器8内に配置されたロールオーバーバルブ9を備える。ロールオーバーバルブ9は、燃料タンク1が転倒し始めると自動的に燃料タンク1を閉じる機能を有する。例えば、ロールオーバーバルブは、ケージ内に置かれた高密度ボール装置で構成されており、その底部は、円錐形をしており、ボールが移動すると、燃料蒸気トラップ3につながる入口導管4を遮断できるバルブを上方に押す。本実施形態では、ロールオーバーバルブ9が気液分離器8の最大燃料レベルよりも上方に配置されている。
【0041】
図4は、本発明の第4の実施形態を示しており、再循環ライン12を使用して気液分離器8と給油パイプ2のヘッドとを接続し、燃料タンク1内の蒸気の発生を減少させる。
【0042】
図5は、大型および/または複雑な燃料タンクの使用のために第4の実施形態を改良した本発明の第5の実施形態を示す。この実施形態では、燃料タンク1は、第2のオリフィス5’を備える。2つのオリフィス5、5’は、燃料タンク1の上壁11の異なる領域に配置されており、両方のオリフィス5、5’は、通気パイプ13によって入口導管4に接続されている。本実施形態では、オリフィス5、5’およびLVS8に連通する通気パイプ13が燃料タンク1の外部に配置されている。
【0043】
第5の実施形態の代替例が図6に示されており、燃料タンク通気システムは、燃料タンク1の内部に通気パイプ13’を備える。通気パイプ13’は、燃料タンク1の上壁11に設けられたオリフィス5に接続されている。さらに、通気パイプ13’は、常時開いている1つの二次オリフィス51を備える。したがって、オリフィス5と二次オリフィス51の両方が通気パイプ13’を介して入口導管4に連通する。
【0044】
好ましくは、燃料蒸気トラップ3は、車両がどの方向に、少なくとも12%、好ましくは15%まで、さらに好ましくは30%まで傾いても燃料蒸気トラップ3が常に燃料から遠ざかるように、燃料タンク1の形状に従って構成される通気ゾーンに配置される。上記実施形態では、LVS8は、燃料タンク1内の液面よりも高い位置に配置されている。ただし、オリフィスと二次オリフィスが蒸気ドーム内に配置されていれば、入口導管4を燃料タンク内に液体と接触させて配置することができる。この場合、図7に示すように、LVS8および燃料蒸気トラップ3は、燃料タンク1の下方、液面よりも低い位置に配置することができる。あるいは、燃料蒸気トラップ3をより良く保護するために、入口導管4は、図8に示すようにU字形であってもよく、入口導管は、液体燃料が燃料トラップに進入しないように構成された高点を有する形状を有する。このようにして、液体が燃料蒸気トラップ3に入ることができなくなり、液体燃料による燃料蒸気トラップ3の汚染が回避される。
【符号の説明】
【0045】
1 燃料タンク
2 給油パイプ
3 燃料蒸気トラップ
4 入口導管
5、5’ オリフィス
6 常閉シャッタ装置
7 出口導管
8 気液分離器
9 ロールオーバーバルブ
10 燃料タンク通気システム
11 上壁
12 再循環ライン
13、13’ 通気パイプ
51 二次オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】