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特表2024-525306複合電極を有するリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】複合電極を有するリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240705BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240705BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240705BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/133
H01M4/131
H01M4/525
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/36 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575609
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2021064225
(87)【国際公開番号】W WO2023277945
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/218,193
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タイスプ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ・シー・バルドワジ
(72)【発明者】
【氏名】レイ・カオ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥキョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ルオ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029DJ08
5H029DJ15
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ10
5H029HJ12
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB29
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA27
5H050FA16
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA12
(57)【要約】
アノードコレクタと複合アノード材料を有するアノードと、カソードコレクタと複合カソード材料を有するカソードと、アノードとカソードとの間に位置決めされたセパレータと、アノードおよびカソードに接触する電解質とを有する複合リチウムイオン電池が提供される。複合リチウムイオン電池の利点は、説明されている複合材料電極を備えていないリチウムイオン電池と比較して、DCインピーダンスが低いこと、充電時間が短いこと、リザーブキャパシティが3.0Vと2.5Vとの間で大きいこと、および体積エネルギー密度が高いことである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池であって、
アノードコレクタおよび複合アノード材料を含むアノードと、
カソードコレクタおよび複合カソード材料を含むカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に位置決めされたセパレータと、
前記アノードおよび前記カソードと接触する電解質とを含むリチウムイオン電池。
【請求項2】
前記複合アノード材料は、75wt%から95wt%のグラファイト、2wt%から20wt%のSiOx、および0.1wt%から10wt%のバインダーを含む請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記複合アノード材料は、0.1wt%から10wt%の導電性添加剤を含む請求項2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記複合アノード材料は、80wt%から90wt%のグラファイト、5wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記複合アノード材料は、86wt%から87wt%のグラファイト、9wt%から10wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1.5wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、約1:4の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記複合アノード材料は、86.7wt%のグラファイト、9.6wt%のSiOx、2.7wt%のバインダー、および1wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、0.5:2.2の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項5に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記複合アノード材料は、75wt%から85wt%のグラファイト、10wt%から20wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.5wt%から2.5wt%の導電性添加剤を含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記複合アノード材料は、79wt%から81wt%のグラファイト、14wt%から16wt%のSiOx、3wt%から4wt%のバインダー、および1wt%から2wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、約1:6の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記複合アノード材料は、80wt%のグラファイト、15wt%のSiOx、3.5wt%のバインダー、および1.5wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、0.5:3.0の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項8に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記複合アノード材料は、85wt%から95wt%のグラファイト、1wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記複合アノード材料は、91wt%から93wt%のグラファイト、4wt%から6wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、約1:3の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記複合アノード材料は、92wt%のグラファイト、5wt%のSiOx、2.3wt%のバインダー、および0.7wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、0.5:1.8の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項11に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記複合カソード材料は、90wt%から99wt%のLiCoO、0.1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記複合カソード材料は、0.1wt%から10wt%の導電性添加剤を含む請求項14に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
前記複合カソード材料は、95wt%から99wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から1wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
前記複合カソード材料は、97wt%から98wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.56wt%のグラフェンペースト、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項18】
前記複合カソード材料は、97.72wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、ならびに0.5wt%のグラフェンペーストおよびカーボンナノチューブを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、および0.5wt%のカーボンナノチューブを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項20】
前記複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、0.5wt%のカーボンナノチューブ、および0.005wt%のグラフェン.Iを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項21】
前記複合カソード材料は、97.94wt%のLiCoO、1.2wt%のPVDF、0.06wt%の単層カーボンナノチューブ、および0.5wt%のカーボンブラックを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項22】
前記電解質は、アジポニトリル(ADN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3-プロパンスルトン(PS)、および炭酸ビニレン(VC)のうちの1つまたは複数を含む六フッ化リン酸リチウム(LiPF)溶液中の、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジエチル(DC)、ポリプロピレン(PC)、およびポリプロピレン(PP)のうちの1または複数を含む液体有機溶媒ベースの電解質である請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項23】
前記電解質は、1つまたは複数の有機ケイ素添加剤を含む請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項24】
前記電解質は、0vol%から20vol%のFEC、0vol%から20vol%のPC、0vol%から40vol%のEC、0vol%から40vol%のDEC、および0vol%から50vol%のPPを含む請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項25】
前記LiPF溶液は、0.1Mから5M、0.5Mから1.5M、または約1Mの範囲内の濃度を有する請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項26】
前記LiPF溶液は、0.1wt%から5wt%、0.1wt%から4wt%、0.1wt%から3wt%の、ADN、SN、PS、VC、およびOS3のうちの1つまたは複数を含む請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項27】
前記電解質は、ADN、SN、PS、VC、およびOS3を含むLiPF溶液中のFEC、PC、DC、PC、およびPPを含む請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項28】
前記電解質は、1vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、15vol%から25vol%のDEC、および30vol%から45vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項29】
前記電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、20vol%から30vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項30】
前記電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、15vol%から20vol%のEC、25vol%から30vol%のDEC、および35vol%から40vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項31】
前記電解質は、6vol%から8vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、18vol%から20vol%のEC、27vol%から29vol%のDEC、および36vol%から38vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項32】
前記電解質は、7vol%のFEC、9vol%のPC、19vol%のEC、28vol%のDEC、および37vol%のPPを含む請求項31に記載のリチウムイオン電池。
【請求項33】
前記電解質は、10vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、25vol%から35vol%のDEC、および35vol%から45vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項34】
前記電解質は、14vol%から16vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、9vol%から11vol%のEC、28vol%から30vol%のDEC、および36vol%から38vol%を含む請求項33に記載のリチウムイオン電池。
【請求項35】
前記電解質は、15vol%のFEC、9vol%のPC、10vol%のEC、29vol%のDEC、および37vol%のPPを含む請求項34に記載のリチウムイオン電池。
【請求項36】
前記電解質は、1vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、25vol%から35vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項37】
前記電解質は、1vol%から5vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、20vol%から25vol%のEC、25vol%から30vol%のDEC、および35vol%から40vol%のPPを含む請求項36に記載のリチウムイオン電池。
【請求項38】
前記電解質は、3vol%のFEC、9vol%のPC、22vol%のEC、29vol%のDEC、および37vol%のPPを含む請求項37に記載のリチウムイオン電池。
【請求項39】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から5wt%のADN、0.1wt%から5wt%のSN、0.1wt%から5wt%のPS、0.1wt%から5wt%のVC、および0.1wt%から5wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項26に記載のリチウムイオン電池。
【請求項40】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.5wt%から1.5wt%のADN、0.5wt%から1.5wt%のSN、1wt%から3wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項39に記載のリチウムイオン電池。
【請求項41】
前記LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、1wt%のADN、1wt%のSN、2wt%のPS、1wt%のVC、および2wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項40に記載のリチウムイオン電池。
【請求項42】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、1wt%から3wt%のADN、1wt%から3wt%のSN、2wt%から4wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項26に記載のリチウムイオン電池。
【請求項43】
前記LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、2wt%のADN、2wt%のSN、3wt%のPS、2wt%のVC、および3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項42に記載のリチウムイオン電池。
【請求項44】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から1wt%のADN、0.1wt%から1wt%のSN、0.5wt%から1.5wt%のPS、0.1wt%から1wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項26に記載のリチウムイオン電池。
【請求項45】
前記LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、0.5wt%のADN、0.5wt%のSN、1wt%のPS、0.5wt%のVC、および1wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項44に記載のリチウムイオン電池。
【請求項46】
請求項1から45のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池を備えるウェアラブル製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2021年7月2日に出願した米国特許出願第63/218,193号、名称「LITHIUM ION BATTERY WITH COMPOSITE ELECTRODES」の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、複合アノード(composite anode)、複合カソード(composite cathode)、および有機溶媒ベース電解質(organic solvent based electrolyte)を有するリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、アノード102およびカソード104を有するリチウムイオン電池100を示している。アノード102およびカソード104は、セパレータ106によって分離されている。アノード102は、アノードコレクタ108と、アノードコレクタと接触するアノード材料110とを含む。カソード104は、カソードコレクタ112と、カソードコレクタと接触するカソード材料114とを含む。電解質116は、アノード材料110およびカソード材料114と接触している。アノードコレクタ108およびカソードコレクタ112は、閉じた外部回路118を介して電気的に結合される。アノード材料110およびカソード材料114は、リチウムイオン120が移動して中に入り、そこから出て来ることができる材料である。挿入(またはインターカレーション)の間、リチウムイオンは、電極(アノードまたはカソード)材料中に移動する。逆のプロセスである、抽出(またはデインターカレーション)では、リチウムイオンは、電極(アノードまたはカソード)材料から外へ移動する。電気化学的デバイスが放電しているときに、リチウムイオンは、アノード材料から抽出され、カソード材料中に挿入される。セルが充電しているときに、リチウムイオンは、カソード材料から抽出され、アノード材料中に挿入される。図1の矢印は、充電中および放電中のセパレータ106を通るリチウムイオンの動きを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、一般的に、複合材料から作製された電極を含むリチウムイオン電池に関する。複合アノード材料は、グラファイト、SiOx、およびバインダーを含む。複合カソード材料は、LiCoO、グラフェンおよびカーボンナノ構造(たとえば、カーボンナノチューブ)の一方または両方、およびバインダーを含む。
【0005】
開示されている発明概念は付属の請求項において定義されたものを含むが、発明概念は、次の実施形態に従って定義され得ることも理解されるべきである。
【0006】
付属の請求項の実施形態および上で説明されている実施形態に加えて、次の番号付けされた実施形態も新規性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態1は、リチウムイオン電池であって、
アノードコレクタおよび複合アノード材料を含むアノードと、
カソードコレクタおよび複合カソード材料を含むカソードと、
アノードとカソードとの間に位置決めされたセパレータと、
アノードおよびカソードと接触する電解質とを含むリチウムイオン電池である。
【0008】
実施形態2は、実施形態1のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、75wt%から95wt%のグラファイト、2wt%から20wt%のSiOx、および0.1wt%から10wt%のバインダーを含む。
【0009】
実施形態3は、実施形態2のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、0.1wt%から10wt%の導電性添加剤を含む。
【0010】
実施形態4は、実施形態3のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、80wt%から90wt%のグラファイト、5wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む。
【0011】
実施形態5は、実施形態3または4のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、86wt%から87wt%のグラファイト、9wt%から10wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1.5wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、約1:4の重量比のCMCとPAAとの混合物である。
【0012】
実施形態6は、実施形態5のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、86.7wt%のグラファイト、9.6wt%のSiOx、2.7wt%のバインダー、および1wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、0.5:2.2の重量比のCMCとPAAとの混合物である。
【0013】
実施形態7は、実施形態3から6のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、75wt%から85wt%のグラファイト、10wt%から20wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.5wt%から2.5wt%の導電性添加剤を含む。
【0014】
実施形態8は、実施形態7のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、79wt%から81wt%のグラファイト、14wt%から16wt%のSiOx、3wt%から4wt%のバインダー、および1wt%から2wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、約1:6の重量比のCMCとPAAとの混合物である。
【0015】
実施形態9は、実施形態8のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、80wt%のグラファイト、15wt%のSiOx、3.5wt%のバインダー、および1.5wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、0.5:3.0の重量比のCMCとPAAとの混合物である。
【0016】
実施形態10は、実施形態3から9のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、85wt%から95wt%のグラファイト、1wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む。
【0017】
実施形態11は、実施形態10のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、91wt%から93wt%のグラファイト、4wt%から6wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、約1:3の重量比のCMCとPAAとの混合物である。
【0018】
実施形態12は、実施形態11のリチウムイオン電池であり、複合アノード材料は、92wt%のグラファイト、5wt%のSiOx、2.3wt%のバインダー、および0.7wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、0.5:1.8の重量比のCMCとPAAとの混合物である。
【0019】
実施形態13は、実施形態3から12のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、90wt%から99wt%のLiCoO、0.1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む。
【0020】
実施形態14は、実施形態13のリチウムイオン電池であり、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む。
【0021】
実施形態15は、実施形態14のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、0.1wt%から10wt%の導電性添加剤を含む。
【0022】
実施形態16は、実施形態13から15のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、95wt%から99wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から1wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む。
【0023】
実施形態17は、実施形態16のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、97wt%から98wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.56wt%のグラフェンペースト、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む。
【0024】
実施形態18は、実施形態16または17のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、97.72wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、ならびに0.5wt%のグラフェンペーストおよびカーボンナノチューブを含む。
【0025】
実施形態19は、実施形態16から18のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、および0.5wt%のカーボンナノチューブを含む。
【0026】
実施形態20は、実施形態16から19のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、0.5wt%のカーボンナノチューブ、および0.005wt%のグラフェン.Iを含む。
【0027】
実施形態21は、実施形態16から20のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、複合カソード材料は、97.94wt%のLiCoO、1.2wt%のPVDF、0.06wt%の単層カーボンナノチューブ、および0.5wt%のカーボンブラックを含む。
【0028】
実施形態22は、実施形態13から21のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、アジポニトリル(ADN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3-プロパンスルトン(PS)、および炭酸ビニレン(VC)のうちの1つまたは複数を含む六フッ化リン酸リチウム(LiPF)溶液中の、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジエチル(DC)、ポリプロピレン(PC)、およびポリプロピレン(PP)のうちの1または複数を含む液体有機溶媒ベースの電解質である。
【0029】
実施形態23は、実施形態22のリチウムイオン電池であり、電解質は、1つまたは複数の有機ケイ素添加剤を含む。
【0030】
実施形態24は、実施形態13から23のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、0vol%から20vol%のFEC、0vol%から20vol%のPC、0vol%から40vol%のEC、0vol%から40vol%のDEC、および0vol%から50vol%のPPを含む。
【0031】
実施形態25は、実施形態22から24のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、0.1Mから5M、0.5Mから1.5M、または約1Mの範囲内の濃度を有する。
【0032】
実施形態26は、実施形態22から25のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、0.1wt%から5wt%、0.1wt%から4wt%、0.1wt%から3wt%の、ADN、SN、PS、VC、およびOS3のうちの1つまたは複数を含む。
【0033】
実施形態27は、実施形態22から26のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、ADN、SN、PS、VC、およびOS3を含むLiPF溶液中のFEC、PC、DC、PC、およびPPを含む。
【0034】
実施形態28は、実施形態27のリチウムイオン電池であり、電解質は、1vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、15vol%から25vol%のDEC、および30vol%から45vol%のPPを含む。
【0035】
実施形態29は、実施形態27または28のリチウムイオン電池であり、電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、20vol%から30vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む。
【0036】
実施形態30は、実施形態27から29のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、15vol%から20vol%のEC、25vol%から30vol%のDEC、および35vol%から40vol%のPPを含む。
【0037】
実施形態31は、実施形態27から30のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、6vol%から8vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、18vol%から20vol%のEC、27vol%から29vol%のDEC、および36vol%から38vol%のPPを含む。
【0038】
実施形態32は、実施形態31のリチウムイオン電池であり、電解質は、7vol%のFEC、9vol%のPC、19vol%のEC、28vol%のDEC、および37vol%のPPを含む。
【0039】
実施形態33は、実施形態27から32のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、10vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、25vol%から35vol%のDEC、および35vol%から45vol%のPPを含む。
【0040】
実施形態34は、実施形態33のリチウムイオン電池であり、電解質は、14vol%から16vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、9vol%から11vol%のEC、28vol%から30vol%のDEC、および36vol%から38vol%を含む。
【0041】
実施形態35は、実施形態34のリチウムイオン電池であり、電解質は、15vol%のFEC、9vol%のPC、10vol%のEC、29vol%のDEC、および37vol%のPPを含む。
【0042】
実施形態36は、実施形態27から35のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、電解質は、1vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、25vol%から35vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む。
【0043】
実施形態37は、実施形態36のリチウムイオン電池であり、電解質は、1vol%から5vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、20vol%から25vol%のEC、25vol%から30vol%のDEC、および35vol%から40vol%のPPを含む。
【0044】
実施形態38は、実施形態37のリチウムイオン電池であり、電解質は、3vol%のFEC、9vol%のPC、22vol%のEC、29vol%のDEC、および37vol%のPPを含む。
【0045】
実施形態39は、実施形態26から38のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から5wt%のADN、0.1wt%から5wt%のSN、0.1wt%から5wt%のPS、0.1wt%から5wt%のVC、および0.1wt%から5wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0046】
実施形態40は、実施形態39のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.5wt%から1.5wt%のADN、0.5wt%から1.5wt%のSN、1wt%から3wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0047】
実施形態41は、実施形態40のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、1wt%のADN、1wt%のSN、2wt%のPS、1wt%のVC、および2wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0048】
実施形態42は、実施形態26から41のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、1wt%から3wt%のADN、1wt%から3wt%のSN、2wt%から4wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0049】
実施形態43は、実施形態42のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、2wt%のADN、2wt%のSN、3wt%のPS、2wt%のVC、および3wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0050】
実施形態44は、実施形態26から43のいずれか一項のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から1wt%のADN、0.1wt%から1wt%のSN、0.5wt%から1.5wt%のPS、0.1wt%から1wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0051】
実施形態45は、実施形態44のリチウムイオン電池であり、LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、0.5wt%のADN、0.5wt%のSN、1wt%のPS、0.5wt%のVC、および1wt%の有機ケイ素添加剤を含む。
【0052】
実施形態46は、実施形態1から45のいずれか一項のリチウムイオン電池を備えるウェアラブル製品である。
【0053】
開示されている複合リチウムイオン電池の利点は、説明されている複合材料電極を備えていないリチウムイオン電池と比較して、DCインピーダンスが低いこと、充電時間が短いこと、リザーブキャパシティが3.0Vと2.5Vとの間で大きいこと、および体積エネルギー密度が高いことである。
【0054】
本開示の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および以下の説明で述べられる。主題の他の特徴、態様、および利点は、説明、図面、および請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】リチウムイオン電池を示す図である。
図2】電極プロセスフローを示すフローチャートである。
図3】パウチプロセスフローを示すフローチャートである。
図4】複合電極電池と従来の電極電池に対する放電曲線を示す図である。
図5】複合電極電池と従来の電極電池に対する相対的体積エネルギー密度(VED)を示す図である。
図6】複合電極電池と従来の電極電池の直流内部抵抗(DCIR)を示す図である。
図7】複合電極電池および従来の電極電池の充電時間プロファイルを示す図である。
図8】25℃における複合電極電池のサイクル性能を示す図である。
図9】45℃における複合電極電池のサイクル性能を示す図である。
図10】25℃における複合電極電池および従来の4.45V Li-ion電池のセルサイクル性能を示す図である。
図11】45℃における複合電極電池および従来の4.45V Li-ion電池のセルサイクル性能を示す図である。
図12】複合電極電池と従来の電極電池に対する過放電電圧対時間を示す図である。
図13】高温(85℃)における複合電極電池の保持容量および回復容量を示す図である。
図14】時間の関数としての電池の短期持続性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本開示は、複合アノード材料を含むアノードと、複合カソード材料を含むカソードと、電解質とを有するリチウムイオン電池を説明する。複合アノード材料は、グラファイト、SiOx、およびバインダーを含む。複合カソード材料は、LiCoO、グラフェンおよびカーボンナノ構造(たとえば、カーボンナノチューブ)の一方または両方、およびバインダーを含む。電解質は、有機溶媒系電解質である。セパレータ(たとえば、ポリオレフィン系セパレータ)が、アノードとカソードとの間に位置決めされ、電解質は、アノードおよびカソードに接触している。アノード材料、カソード材料、および電解質は、1つまたは複数の添加剤(たとえば、導電性添加剤)を含むことができる。
【0057】
複合アノード材料は、典型的には、75wt%から95wt%のグラファイト、2wt%から20wt%のSiOx、および0.1wt%から10wt%のバインダーを含む。バインダーは、ポリアクリル酸(PAA)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)の一方または両方を含むことができる。いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、導電性添加剤(たとえば、カーボンブラック)などの、0.1wt%から10wt%の1つまたは複数の添加剤を含む。
【0058】
いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、80wt%から90wt%のグラファイト、5wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む。いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、86wt%から87wt%のグラファイト、9wt%から10wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1.5wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、約1:4の重量比のCMCとPAAとの混合物であり、導電性添加剤は、SUPER-Pカーボンブラック(TIMCAL社から入手可能)である。一例では、複合アノード材料は、86.7wt%のグラファイト、9.6wt%のSiOx、2.7wt%のバインダー、および1wt%の導電性添加剤を含む。バインダーは、重量比0.5:2.2のCMCとPAAの混合物であり、導電性添加剤はSUPER-Pカーボンブラックである。
【0059】
いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、75wt%から85wt%のグラファイト、10wt%から20wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.5wt%から2.5wt%の導電性添加剤を含む。いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、79wt%から81wt%のグラファイト、14wt%から16wt%のSiOx、3wt%から4wt%のバインダー、および1wt%から2wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、約1:6の重量比のCMCとPAAとの混合物であり、導電性添加剤は、SUPER-Pカーボンブラックである。一例では、複合アノード材料は、80wt%のグラファイト、15wt%のSiOx、3.5wt%のバインダー、および1.5wt%の導電性添加剤を含む。バインダーは、重量比0.5:3.0のCMCとPAAの混合物であり、導電性添加剤はSUPER-Pカーボンブラックである。
【0060】
いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、85wt%から95wt%のグラファイト、1wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む。いくつかの実装形態において、複合アノード材料は、91wt%から93wt%のグラファイト、4wt%から6wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1wt%の導電性添加剤を含み、バインダーは、約1:3の重量比のCMCとPAAとの混合物であり、導電性添加剤は、SUPER-Pカーボンブラックである。一例では、複合アノード材料は、92wt%のグラファイト、5wt%のSiOx、2.3wt%のバインダー、および0.7wt%の導電性添加剤を含む。バインダーは、重量比0.5:1.8のCMCとPAAの混合物であり、導電性添加剤はSUPER-Pカーボンブラックである。
【0061】
複合カソード材料は、典型的には、90wt%から99wt%のLiCoO、0.1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む。好適なバインダーの一例は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。いくつかの実装形態において、複合カソード材料は、導電性添加剤(たとえば、カーボンブラック)などの、0.1wt%から10wt%の1つまたは複数の添加剤を含む。
【0062】
いくつかの実装形態において、複合カソード材料は、95wt%から99wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から1wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実装形態において、複合カソード材料は、97wt%から98wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.56wt%のグラフェンペースト、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む。一例において、複合カソード材料は、97.72wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、ならびに0.5wt%のグラフェンペーストおよびカーボンナノチューブを含む。別の例において、複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、および0.5wt%のカーボンナノチューブを含む。別の例において、複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、0.5wt%のカーボンナノチューブ、および0.005wt%のグラフェンを含む。別の例では、複合カソード材料は、97.94wt%のLiCoO、1.2wt%のPVDF、0.06wt%の単層カーボンナノチューブ、および0.5wt%のSUPER-Pカーボンブラックを含む。
【0063】
電解質は、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジエチル(DC)、ポリプロピレン(PC)、ならびにアジポニトリル(ADN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3-プロパンスルトン(PS)、および炭酸ビニレン(VC)のうちの1つまたは複数を有する六フッ化リン酸リチウム(LiPF)溶液中のポリプロピレン(PP)を含む液体有機溶媒ベースの電解質である。いくつかの実装形態において、電解質は、OS3(SILATRONIX社から入手可能)などの、1つまたは複数の有機ケイ素添加剤を含む。電解質は、0vol%から20vol%のFEC、0vol%から20vol%のPC、0vol%から40vol%のEC、0vol%から40vol%のDEC、および0vol%から50vol%のPPを含むことができる。LiPF溶液は、0.1Mから5M、0.5Mから1.5M、または約1Mの範囲内の濃度を有することができる。LiPF溶液は、0.1wt%から5wt%、0.1wt%から4wt%、0.1wt%から3wt%の、ADN、SN、PS、VC、およびOS3のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0064】
いくつかの実装形態において、電解質は、ADN、SN、PS、VC、およびOS3を含むLiPF溶液中のFEC、PC、DC、PC、およびPPを含む。いくつかの実装形態において、電解質は、1vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、15vol%から25vol%のDEC、および30vol%から45vol%のPPを含む。
【0065】
いくつかの実装形態において、電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、20vol%から30vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む。いくつかの実装形態において、電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、15vol%から20vol%のEC、25vol%から30vol%のDEC、および35vol%から40vol%のPPを含む。いくつかの実装形態において、電解質は、6vol%から8vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、18vol%から20vol%のEC、27vol%から29vol%のDEC、および36vol%から38vol%のPPを含む。一例において、電解質は、7vol%のFEC、9vol%のPC、19vol%のEC、28vol%のDEC、および37vol%のPPを含む。
【0066】
いくつかの実装形態において、電解質は、10vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、25vol%から35vol%のDEC、および35vol%から45vol%のPPを含む。いくつかの実装形態において、電解質は、14vol%から16vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、9vol%から11vol%のEC、28vol%から30vol%のDEC、および36vol%から38vol%のPPを含む。一例において、電解質は、15vol%のFEC、9vol%のPC、10vol%のEC、29vol%のDEC、および37vol%のPPを含む。
【0067】
いくつかの実装形態において、電解質は、1vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、25vol%から35vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む。いくつかの実装形態において、電解質は、1vol%から5vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、20vol%から25vol%のEC、25vol%から30vol%のDEC、および30vol%から40vol%のPPを含む。一例において、電解質は、3vol%のFEC、9vol%のPC、22vol%のEC、29vol%のDEC、および37vol%のPPを含む。
【0068】
いくつかの実装形態において、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から5wt%のADN、0.1wt%から5wt%のSN、0.1wt%から5wt%のPS、0.1wt%から5wt%のVC、および0.1wt%から5wt%のOS3を含む。いくつかの実装形態において、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.5wt%から1.5wt%のADN、0.5wt%から1.5wt%のSN、1wt%から3wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%のOS3を含む。一例において、LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、1wt%のADN、1wt%のSN、2wt%のPS、1wt%のVC、および2wt%のOS3を含む。いくつかの実装形態において、LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、1wt%から3wt%のADN、1wt%から3wt%のSN、2wt%から4wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%のOS3を含む。一例において、LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、2wt%のADN、2wt%のSN、3wt%のPS、2wt%のVC、および3wt%のOS3を含む。いくつかの実装形態において、LiPF溶液は、0.1Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から1wt%のADN、0.1wt%から1wt%のSN、0.5wt%から1.5wt%のPS、0.1wt%から1wt%のVC、および1wt%から3wt%のOS3を含む。一例において、LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、0.5wt%のADN、0.5wt%のSN、1wt%のPS、0.5wt%のVC、および1wt%のOS3を含む。
【0069】
アノード材料は、高いエネルギー密度を達成するように選択され、カソード材料は、インピーダンスを下げて充放電を短時間で行えるように選択される。電解質は、高い温度安定性(たとえば、85℃まで)を提供する。リチウムイオン電池は、10%未満の膨潤で500サイクルを超えるサイクル能力を有する。3V未満のリザーブキャパシティは、長期保管の実施を可能にする。リチウムイオン電池は、アルミニウムラミネート複合パウチ、円筒形セル、角柱形セル、およびウェアラブル製品に使用するボタン型またはコイン型セルなど、様々な形状構成で組み立てることができる。
【0070】
図2は、電極プロセスフロー200を説明している。202では、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、コバルト酸リチウム(LCO)またはグラファイト、およびナノカーボンが、計算された量の溶媒(たとえば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))中で組み合わされ、混合されてスラリーを形成する。好適なタイプのナノカーボンは、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンブラックを含む。204では、カソード用のアルミニウム箔およびアノード用の銅箔がスラリーでコーティングされ、溶媒は蒸発させられ、それによってコーティング済み箔を形成する。206では、コーティングされた箔は、2本のロールで挟んでプレスされる。208では、プレスされた箔は細長く切られて電極を形成する。
【0071】
図3は、パウチプロセスフロー300を説明している。破線は、乾燥室で実施されるプロセスフロー300の操作を示している。302では、電極は所望の形状(たとえば、長方形)に打ち抜かれ、304では、所望の数の電極が積層される。306または308では、タブが、それぞれ、乾燥室内または大気条件下で電極に溶接される。310では、大気条件下で加工された電極が巻かれる。312では、パウチが形成される。パウチは、乾燥室に移され、314で封止される。316および318では、パウチは、それぞれ、電解質を充填され、真空封止される。320で、充填されたパウチは、乾燥室から取り出され、改質され、322で、パウチは、乾燥室に戻され、脱気および再封止がなされる。パウチは、乾燥室から取り出される。324および326で、パウチは、それぞれ切断され折り畳まれ、328で、パウチは、ホットプレート上でプレスされる。330で、加工済みパウチの内部抵抗および開放電圧がテストされる。
【0072】
(実施例)
スラリー混合
カソードスラリー混合。ポリフッ化ビニリデン(PVdF)バインダー溶液が、PVdFをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に計算量で溶解することによって調製される。PVdFとNMPとの重量パーセント(wt%)は、コーティング要件に応じて調整される(≧5%)。導電性ペーストがバインダー溶液と組み合わされ、5の遊星毎分回転数と1500のディスパーRPMを使用して1時間かけて混合される。コバルト酸リチウム(LiCoまたはLCO)の第1の半分は、混合液と組み合わされ、5の遊星RPM、1500のディスパーRPMを使用して1時間かけて混合される。LCOの第2の半分は、その結果得られる混合液と組み合わされ、5の遊星RPM、1500のディスパーRPMを使用して1時間かけて混合され、スラリー形成する。スラリー粘度は、必要に応じて追加のNMPを加えて調整される。スラリーは、滑らかになるまで激しく混合され、次いで脱泡される。脱泡されたスラリーの粘度および細かさが評価される。カソードスラリーに対する推奨粘度は5000~10000センチポアズ(cps)である。スラリーの細かさはグラインドゲージによって分析される。粗大粒子または凝集塊のサイズは、好ましくは、粒子分布分析に基づく最大粒径(たとえば、約5ミクロンから約20ミクロン)未満である。
【0073】
アノードスラリー混合。1.2wt%のカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液が、適量のCMCを脱イオン(DI)水に溶解することによって作製される。Super-P(登録商標)(導電性カーボンブラック)がCMC溶液と組み合わされ、滑らかで均一になるまで混合される。グラファイトおよびSiOxは、低速で計算量だけ乾式混合される。Super-P(登録商標)CMC溶液が、乾燥グラファイトおよびSiOx混合物に加えられ、35の遊星RPMを使用して混合される。ポリアクリル酸(PAA)バインダーが、2または3バッチで加えられ、その結果得られたスラリーは、各バッチ添加後に1時間かけて20~35遊星RPMを使用して混合される。35~42wt%の固形分になるようにDI水がスラリーに添加される。このスラリーは、45の遊星RPMおよび2500のディスパーRPMを使用して滑らかになるまで混合され(1~2時間)、その後脱泡する。その結果得られた脱泡済みスラリーの品質は、粘度および細かさで評価される。カソードスラリーに対する推奨粘度は、2000~3000センチポアズ(cps)である。スラリーの細かさはグラインドゲージによって分析される。粗大粒子または凝集塊のサイズは、好ましくは最大粒径未満である。
【0074】
コーティングプロセス
コーティング機の準備。機械の電源を入れる。すべてのゴムおよびステンレスローラーが、エタノール、DI水、またはアセトンできれいに拭き取られ、空気ノズルを用いて乾かされる。コーティングが集電体の中心に配置されるようにスラリーダムおよびガードが取り付けられる。残渣ガードは、コンマロールに取り付けられる。コネクタロール(connector roll)がアンワインダーローラー(unwinder roller)に取り付けられる。ヒーターおよびIRランプ、吸込ファン(2500RPM)、排気ファン(1000RPM)がオンにされる。室は少なくとも1時間、ターゲット温度まで加熱されることが許容される。カソードについては、ターゲット温度範囲は、85℃から140℃である。実際の設定温度は、コーティング機のタイプ/構造、コーティング速度、エアフロー、スラリーに依存する。アノードについては、ターゲット温度範囲は、70℃から100℃である。
【0075】
スラリーを加える。遊星翼を5RPMで回転させ、必要ならば濾過しながらミキサーからスラリーが回収される。スラリーの粘度が評価され、ターゲット範囲内であれば、スラリーはダムに注がれる。
【0076】
コーティングを開始する。アンワインダーブレーキおよびリワインダークラッチがオンにされる。コーティング速度は、カソードに対して0.7m/分、アノードに対して0.5m/分に設定される。張力は、箔がぴんと張られるがカールしないように調整される。箔の移動が開始され、コンマロールおよびバッキングニップロール(backing nip roll)が係合される。バッキングロールは移動されて、コーティングロールに接触し、コーティングが開始する。
【0077】
コーティングをチェックする。コーティングは、乾燥室内に置かれる前に滑らかさについてチェックされる。乾燥室から取り出されたコーティングは目視検査され、乾燥状態を確認する。コーティングされた電極は、負荷レベルをチェックするために切り取られ、コンマロールとコーティングロールとの間のギャップが適宜調整される。コーティングチェックは、連続運転についてターゲット負荷レベルに達するまで繰り返される。温度、速度、または張力の設定が、電極が乾燥し、しわがないことを確実にするように調整される。ラインおよび凝集塊は、バッキングロールをコーティングロールから外し、連結し直すことによって取り出される。
【0078】
コーティングを終了する。コーティング、ライン移動、ファン、ヒーターがオフにされる。コンマロール、バッキングロール、およびバッキングニップが移動され出される。電源がオフにされ、装置がクリーニングされる。
【0079】
カレンダー加工プロセス
カレンダーの準備。カレンダーの電源を入れる。ヒーターがオンにされ、上側ロールおよび下側ロールの制御温度が110℃に達するようにする。
【0080】
電極を固定する。電極ロールは、アンワインダーに取り付けられる。電極は、2つのロールの間のギャップを通して摺動され、電極エッジと機械エッジとの間の距離がアンワインダーおよびリワインダーの両方で同じになるようにリワインダーに固定される。
【0081】
カレンダー加工を開始する。2つのホイールは、両側の2つのロールの間のギャップを調整するために使用される。110℃での典型的なギャップは、アノードについては300μm、カソードについては255μmである。アンワインダーおよびリワインダーの両方の張力は8%に設定され、コーティング速度は10%に設定される。カレンダー加工が開始される。コーディング速度は、アンワインダーおよびリワインダーの両方が回転を開始した後に、40%(0.8m/分)まで上げる。
【0082】
ノッチング加工プロセス
機械の電源を入れる。コーティングのラインは、両方の側で治具のラインに一致させられる。電極は、治具の上に置かれ、透明フィルムが電極の上に置かれる。プロセスが終了したら、電極は取り外される。最初に切断された電極のコーティングラインおよび電極長がチェックされる。
【0083】
積層プロセス
セパレータの整列が確認される。すべての電極が取り外される。セパレータの整列に許容可能である場合に、プロセスは続行される。セパレータの整列に許容可能でない場合、プロセスは、繰り返される。積層機がオンにされ、アノードは、第1の治具内に位置決めされ、カソードは、第2の治具内に位置決めされる。積層は、最初にアノードから始まる。所望のアノードの数が選択される。積層が完了した後、セパレータは切断される。ゼリーロールが形成され、セパレータは包まれる。シールテープは、ゼリーロールが剥がれないようにゼリーロールに取り付けられる。
【0084】
パウチ形成プロセス
電源が入れられ、パウチ形成が開始される。2つの形成深さバー(1.9mm)は、それぞれ、左側および右側の適所に置かれる。3つのガイダンスバーを整列するパウチ材料シートは、適所に置かれ(ポリプロピレン(PP)層が上を向く)、機械ドアが閉じられる。形成プロセスが開始される。形成プロセスが終了した後、ドアが開き、形成されたパウチが取り出される。余剰パウチ材料が切断され、パウチは折り畳まれる。
【0085】
パウチ封止プロセス
パウチタブ封止。ゼリーロールがパウチ内側に置かれ、パウチを折り畳んだ後にパウチの穴が合うことを確実にする。パウチは、ゼリーロールとともに正しい位置に置かれ、ゼリーロールの突起部が機械にフィットし、パウチの穴が機械内の2本のロッドにフィットするようにガイドする。カソードとアノードの順序が正しいかチェックされる。タブ封止中、ゼリーロールおよびパウチが正しい位置に留まることを確実にするためにプレスバーがパウチの上に置かれる。タブ封止プロセスが開始される。タブ封止プロセスが終了した後、ドライセルが取り出される。
【0086】
パウチサイド封止。ゼリーロールを入れたパウチは、パウチ内にゼリーロール突起部のガイドにより位置決めされる。サイド封止中、ゼリーロールおよびパウチが正しい位置に留まることを確実にするためにプレスバーがパウチの上に置かれる。2つの温度値が180℃±3℃に達すると、サイド封止プロセスが開始される。サイド封止プロセスが終了した後、ドライセルは取り外される。
【0087】
パウチタブインピーダンスの検査。パウチ層と正タブ/負タブとの間のインピーダンスは、抵抗計によって測定される。このインピーダンスは、電解質充填の次のプロセスについては、典型的には、20Mオームより高い。
【0088】
ドライセルは、ドライルーム(露点<-40℃)内で一晩(>12時間、≦31、Hg単位で)80℃(176°F)の真空オーブンに入れられる。
【0089】
電解質注入プロセス
パウチタブインピーダンスの検査。パウチ層と正タブ/負タブとの間のインピーダンスは、抵抗計によって測定される。このインピーダンスは、電解質充填の次のステップについては、典型的には、20Mオームより高い。ドライセルは、未封止パウチの側面を上にして天秤棚に置かれ、ドライセルの重量が測定される。電解質は、ピペットまたはスポイトを使用して電解質ボトルから抜き取られ、電解質は、電解質重量が設計値に達するまでドライセル内に充填される。
【0090】
真空封止プロセス
ドライセルの底側の余分なパウチが切断され、ドライセルは、充填された電解質とともに固定具内に立てて置かれる。温度が180°±3℃に達したときに、封止プロセスが開始される。封止プロセスは、一連の真空ステップを経て、次いでドライセルが封止される。
【0091】
図4は、0.2Cの速度で3Vカットオフに達するまでの電池放電電圧を示している。SiOx+グラファイト複合電極を使用した電池(実線)は、グラファイトのみのアノードを使用した従来の4.45Vリチウムイオン電池(破線)よりも、平均電圧が低い(3.815V)が、3.4V未満では容量が大きい。
【0092】
図5は、SiOx+グラファイト複合電極電池の体積エネルギー密度(VED)を、グラファイトのみのアノードを使用した従来の4.45Vリチウムイオン電池と比較して示している。複合電極を使用した電池は、従来の電極を使用した電池と比較して7.7%から9.0%高いVED(1リットル当たりのワット時(Wh/L)で測定される)をもたらす。
【0093】
図6は、複合電極(3種類のコバルト酸リチウム(LCO)/グラフェン+SiOx/グラファイト組成物)および従来の電極(2種類のLCO+グラファイト組成物)を用いて加工された電池の、0.1秒の負荷時の直流内部抵抗(DCIR)を示す。複合電極電池は、従来の電極電池よりも低い、10%から100%までの充電状態(SOC)のDCIRを有する。
【0094】
図7は、LCO/グラフェン+SiOx/グラファイト複合電極電池とLCO+グラファイト非複合電極電池に対する充電時間プロフィールを示している。複合電極電池は、DCIRが低いことに起因してより速い充電速度を示す。
【0095】
図8は、25℃における複合電極電池のサイクル性能を示している。電池は、この温度で500サイクルの充放電を受け得る。
【0096】
図9は、45℃における複合電極電池のサイクル性能を示している。電池は、この温度で400サイクルの充放電を受け得る。
【0097】
図10は、25℃における複合電極電池および従来の4.45V Li-ion電池のセルサイクル性能を示している。従来の電池からのデータは、比較のためのベースラインを提供する。複合電極電池は、従来の電池と比較して500サイクルまで高いパーセントの容量を示す。点線は、複合電極のデータに基づく推定値を表している。
【0098】
図11は、45℃における複合電極電池および従来の4.45V Li-ion電池のセルサイクル性能を示している。従来の電池からのデータは、比較のためのベースラインを提供する。複合電極電池は、従来の電池と比較して400サイクルまで高いパーセントの容量を示す。点線は、複合電極のデータに基づく推定値を表している。
【0099】
図12は、複合電極電池と従来の電極電池に対する過放電電圧対時間を示している。従来の電池からのデータは、比較のためのベースラインを提供する。複合電極電池は、1.5Vまで最大7.5%以上のリザーブキャパシティを提供する。3V未満のこのリザーブキャパシティは、ウェアラブルデバイスに対してより長い蓄電時間をもたらす。
【0100】
図13は、高温(85℃)における3つの複合電極電池の保持容量および回復容量を示している。
【0101】
図14は、時間の関数としての3つの複合電極電池の短期持続性を示している。
【0102】
本開示は、多くの実施形態固有の詳細事項を含んでいるが、これらは、主題の範囲または請求内容の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有のものであると思われる特徴の説明として解釈されるべきである。別の実施形態の文脈において本開示で説明されているいくつかの特徴も、単一の実施形態において組合せで実装され得る。逆に、単一の実施形態の文脈において説明されている様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、または好適な部分的組合せで、実装され得る。さらに、前述の特徴は、いくつかの組合せで働くものとして説明され、初めにそのように請求されることさえあるが、請求される組合せからの1つまたは複数の特徴は、場合によってはその組合せから削除され得、請求される組合せは、部分組合せ、または部分組合せの変形形態を対象とし得る。
【0103】
主題の特定の実施形態が説明されている。説明されている実施形態の他の実施形態、変更形態、および置換形態は、当業者には明らかなように次の請求項の範囲内にある。動作は特定の順序で図面もしくは請求項に示されているが、そのような動作は、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序でもしくは順番に実行される必要がないことを、またはすべての例示されている動作が実行される必要があるとは限らない(いくつかの動作は任意選択であると考えてもよい)ことを、理解されたい。
【0104】
したがって、前述の例示的な実施形態は、本開示を定義することも制約することもしない。他の変更、置換、および改変も、本開示の精神および範囲から逸脱することなく可能である。
【符号の説明】
【0105】
100 リチウムイオン電池
102 アノード
104 カソード
106 セパレータ
108 アノードコレクタ
110 アノード材料
112 カソードコレクタ
114 カソード材料
116 電解質
118 閉じた外部回路
200 電極プロセスフロー
300 パウチプロセスフロー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池であって、
アノードコレクタおよび複合アノード材料を含むアノードと、
カソードコレクタおよび複合カソード材料を含むカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に位置決めされたセパレータと、
前記アノードおよび前記カソードと接触する電解質とを含むリチウムイオン電池。
【請求項2】
前記複合アノード材料は、75wt%から95wt%のグラファイト、2wt%から20wt%のSiOx、および0.1wt%から10wt%のバインダーを含む請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記複合アノード材料は、0.1wt%から10wt%の導電性添加剤を含む請求項2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記複合アノード材料は、80wt%から90wt%のグラファイト、5wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記複合アノード材料は、86wt%から87wt%のグラファイト、9wt%から10wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1.5wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、約1:4の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記複合アノード材料は、86.7wt%のグラファイト、9.6wt%のSiOx、2.7wt%のバインダー、および1wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、0.5:2.2の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項5に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記複合アノード材料は、75wt%から85wt%のグラファイト、10wt%から20wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.5wt%から2.5wt%の導電性添加剤を含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記複合アノード材料は、79wt%から81wt%のグラファイト、14wt%から16wt%のSiOx、3wt%から4wt%のバインダー、および1wt%から2wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、約1:6の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記複合アノード材料は、80wt%のグラファイト、15wt%のSiOx、3.5wt%のバインダー、および1.5wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、0.5:3.0の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項8に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記複合アノード材料は、85wt%から95wt%のグラファイト、1wt%から10wt%のSiOx、0.1wt%から5wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%の導電性添加剤を含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記複合アノード材料は、91wt%から93wt%のグラファイト、4wt%から6wt%のSiOx、2wt%から3wt%のバインダー、および0.5wt%から1wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、約1:3の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記複合アノード材料は、92wt%のグラファイト、5wt%のSiOx、2.3wt%のバインダー、および0.7wt%の導電性添加剤を含み、前記バインダーは、0.5:1.8の重量比のCMCとPAAとの混合物である請求項11に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記複合カソード材料は、90wt%から99wt%のLiCoO、0.1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から2wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む請求項3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記複合カソード材料は、0.1wt%から10wt%の導電性添加剤を含む請求項14に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
前記複合カソード材料は、95wt%から99wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.1wt%から1wt%のグラフェン、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
前記複合カソード材料は、97wt%から98wt%のLiCoO、1wt%から2wt%のバインダー、および0.56wt%のグラフェンペースト、カーボンナノ構造、またはそれらの組合せを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項18】
前記複合カソード材料は、97.72wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、ならびに0.5wt%のグラフェンペーストおよびカーボンナノチューブを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、および0.5wt%のカーボンナノチューブを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項20】
前記複合カソード材料は、97.76wt%のLiCoO、1.5wt%のPVDF、0.5wt%のカーボンナノチューブ、および0.005wt%のグラフェンを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項21】
前記複合カソード材料は、97.94wt%のLiCoO、1.2wt%のPVDF、0.06wt%の単層カーボンナノチューブ、および0.5wt%のカーボンブラックを含む請求項16に記載のリチウムイオン電池。
【請求項22】
前記電解質は、アジポニトリル(ADN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3-プロパンスルトン(PS)、および炭酸ビニレン(VC)のうちの1つまたは複数を含む六フッ化リン酸リチウム(LiPF)溶液中の、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジエチル(DC)、炭酸エチレン(EC)、およびポリプロピレン(PP)のうちの1または複数を含む液体有機溶媒ベースの電解質である請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項23】
前記電解質は、1つまたは複数の有機ケイ素添加剤を含む請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項24】
前記電解質は、0vol%から20vol%のFEC、0vol%から20vol%のPC、0vol%から40vol%のEC、0vol%から40vol%のDC、および0vol%から50vol%のPPを含む請求項13に記載のリチウムイオン電池。
【請求項25】
前記LiPF溶液は、0.1Mから5Mの範囲内の濃度を有する請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項26】
前記LiPF溶液は、0.1wt%から5wt%の、ADN、SN、PS、VC、およびOS3のうちの1つまたは複数を含む請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項27】
前記電解質は、ADN、SN、PS、VC、およびOS3を含むLiPF溶液中のFEC、PC、DC、EC、およびPPを含む請求項22に記載のリチウムイオン電池。
【請求項28】
前記電解質は、1vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、15vol%から25vol%のDC、および30vol%から45vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項29】
前記電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、20vol%から30vol%のDC、および30vol%から40vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項30】
前記電解質は、5vol%から10vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、15vol%から20vol%のEC、25vol%から30vol%のDC、および35vol%から40vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項31】
前記電解質は、6vol%から8vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、18vol%から20vol%のEC、27vol%から29vol%のDC、および36vol%から38vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項32】
前記電解質は、7vol%のFEC、9vol%のPC、19vol%のEC、28vol%のDC、および37vol%のPPを含む請求項31に記載のリチウムイオン電池。
【請求項33】
前記電解質は、10vol%から20vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、5vol%から15vol%のEC、25vol%から35vol%のDC、および35vol%から45vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項34】
前記電解質は、14vol%から16vol%のFEC、8vol%から10vol%のPC、9vol%から11vol%のEC、28vol%から30vol%のDC、および36vol%から38vol%のPPを含む請求項33に記載のリチウムイオン電池。
【請求項35】
前記電解質は、15vol%のFEC、9vol%のPC、10vol%のEC、29vol%のDC、および37vol%のPPを含む請求項34に記載のリチウムイオン電池。
【請求項36】
前記電解質は、1vol%から10vol%のFEC、5vol%から15vol%のPC、15vol%から25vol%のEC、25vol%から35vol%のDC、および30vol%から40vol%のPPを含む請求項27に記載のリチウムイオン電池。
【請求項37】
前記電解質は、1vol%から5vol%のFEC、5vol%から10vol%のPC、20vol%から25vol%のEC、25vol%から30vol%のDC、および35vol%から40vol%のPPを含む請求項36に記載のリチウムイオン電池。
【請求項38】
前記電解質は、3vol%のFEC、9vol%のPC、22vol%のEC、29vol%のDC、および37vol%のPPを含む請求項37に記載のリチウムイオン電池。
【請求項39】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から5wt%のADN、0.1wt%から5wt%のSN、0.1wt%から5wt%のPS、0.1wt%から5wt%のVC、および0.1wt%から5wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項26に記載のリチウムイオン電池。
【請求項40】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.5wt%から1.5wt%のADN、0.5wt%から1.5wt%のSN、1wt%から3wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項39に記載のリチウムイオン電池。
【請求項41】
前記LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、1wt%のADN、1wt%のSN、2wt%のPS、1wt%のVC、および2wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項40に記載のリチウムイオン電池。
【請求項42】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、1wt%から3wt%のADN、1wt%から3wt%のSN、2wt%から4wt%のPS、0.5wt%から1.5wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項26に記載のリチウムイオン電池。
【請求項43】
前記LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、2wt%のADN、2wt%のSN、3wt%のPS、2wt%のVC、および3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項42に記載のリチウムイオン電池。
【請求項44】
前記LiPF溶液は、0.5Mから1.5Mの範囲の濃度を有し、0.1wt%から1wt%のADN、0.1wt%から1wt%のSN、0.5wt%から1.5wt%のPS、0.1wt%から1wt%のVC、および1wt%から3wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項26に記載のリチウムイオン電池。
【請求項45】
前記LiPF溶液は、1Mの濃度を有し、0.5wt%のADN、0.5wt%のSN、1wt%のPS、0.5wt%のVC、および1wt%の有機ケイ素添加剤を含む請求項44に記載のリチウムイオン電池。
【請求項46】
請求項1から45のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池を備えるウェアラブル製品。
【国際調査報告】