(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】低ヘイズかつUVを遮断する取り外し可能なレンズ積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240705BHJP
A61F 9/04 20060101ALI20240705BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20240705BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20240705BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G02B5/22
A61F9/04 315
A41D13/11 Z
G02C7/10
G02B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575632
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022031823
(87)【国際公開番号】W WO2022260910
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519053108
【氏名又は名称】レーシング オプティクス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】RACING OPTICS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、バート イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スティーブン エス.
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
3B211
【Fターム(参考)】
2H006BE05
2H148CA04
2H148CA05
2H148CA13
2H148CA20
2H148CA27
3B211CA01
(57)【要約】
保護レンズ積層体は、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層と、ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層とを備える。取り外し可能なレンズ層の各々は、PETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された第1の接着剤とを備えてよい。ベース層及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層の屈折率が0.2以内で一致してよい。ベース層と、取り外し可能なレンズ層の各々とを備える、保護レンズ積層体の各層は、0.5%未満のヘイズを有していてよい。保護レンズ積層体は、フェイスシールドとして使用されるか、UV遮断添加剤を含有しているPETフィルムの底面に配置された第2の接着剤を使用して表面装着可能であってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護レンズ積層体であって、
UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層と、
前記ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層であって、前記取り外し可能なレンズ層の各々が、PETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された第1の接着剤とを備える、1つ以上の取り外し可能なレンズ層と、を備え、
前記ベース層及び前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の屈折率が、0.2以内で一致している、保護レンズ積層体。
【請求項2】
320nm-380nmの波長における前記保護レンズ積層体の透過率が、5%未満である、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項3】
前記UV遮断添加剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含む、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項4】
前記UV遮断添加剤は、UV吸収剤を含む、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項5】
前記UV吸収剤は、カーボンブラック、ルチル型酸化チタン、ヒドロキシベンゾフェノン、及びベンゾフェノンからなる群から選択される、請求項4に記載の保護レンズ積層体。
【請求項6】
前記UV遮断添加剤は消光剤を含む、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項7】
前記ベース層の前記PETフィルムは、約0.10mm(4mil)~約0.508mm(20mil)の厚さを有する、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項8】
前記ベース層の前記PETフィルムの前記厚さは、約0.18mm(7mil)~約0.20mm(8mil)である、請求項7に記載の保護レンズ積層体。
【請求項9】
前記ベース層の前記PETフィルムの前記厚さは、約0.19mm(7.5mil)である、請求項8に記載の保護レンズ積層体。
【請求項10】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の前記PETフィルムは、約0.025mm(1mil)~約0.10mm(4mil)の厚さを有する、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項11】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の前記PETフィルムの前記厚さは、約0.051mm(2mil)である、請求項10に記載の保護レンズ積層体。
【請求項12】
前記ベース層は、前記UV遮断添加剤を含有している前記PETフィルムの底面に配置された第2の接着剤をさらに備え、前記第2の接着剤は、前記第1の接着剤の引張強さよりも大きな引張強さを有する、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項13】
前記ベース層の前記PETフィルムは、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)の厚さを有する、請求項12に記載の保護レンズ積層体。
【請求項14】
前記ベース層の前記PETフィルムの前記厚さは、約0.076mm(3mil)~約0.10mm(4mil)である、請求項13に記載の保護レンズ積層体。
【請求項15】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の前記PETフィルムは、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)の厚さを有する、請求項12に記載の保護レンズ積層体。
【請求項16】
前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々の前記PETフィルムの前記厚さは、約0.076mm(3mil)~約0.10mm(4mil)である、請求項15に記載の保護レンズ積層体。
【請求項17】
前記保護レンズ積層体の全ヘイズが1%である、請求項1に記載の保護レンズ積層体。
【請求項18】
前記保護レンズ積層体の可視光透過率(VLT)が87%以上である、請求項17に記載の保護レンズ積層体。
【請求項19】
フェイスシールドであって、
約0.10mm(4mil)~約0.508mm(20mil)の厚さを有し、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層と、前記ベース層の上に積層された1つ以上の除去可能なレンズ層であって、前記除去可能なレンズ層の各々が、約0.025mm(1mil)~約0.10mm(4mil)の厚さを有するPETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された接着剤とを備える1つ以上の除去可能なレンズ層と、を備え、前記ベース層及び前記1つ以上の除去可能なレンズ層の屈折率が0.2以内で一致している、フェイスシールド。
【請求項20】
表面装着可能な保護レンズ積層体であって、
約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)の厚さを有し、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層と、
前記ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層であって、前記取り外し可能なレンズ層の各々は、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)の厚さを有するPETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置されている第1の接着剤と、を備える1つ以上の取り外し可能なレンズ層と、を備え、
前記ベース層は、前記UV遮断添加剤を含有している前記PETフィルムの底面に配置された第2の接着剤をさらに備え、前記第2の接着剤は、前記第1の接着剤の引張強さよりも大きな引張強さを有し、前記ベース層及び前記1つ以上の取り外し可能なレンズ層の屈折率が、0.2以内で一致している、表面装着可能な保護レンズ積層体。
【請求項21】
保護レンズ積層体であって、
UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層であって、0.5%未満のヘイズを有するベース層と、
前記ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層であって、前記取り外し可能なレンズ層の各々は、0.5%未満のヘイズを有し、PETフィルムと、前記PETフィルムの底面に配置された第1の接着剤とを備える、1つ以上の取り外し可能なレンズ層と、を備える保護レンズ積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低ヘイズかつUVを遮断する取り外し可能なレンズ積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
手術室環境では、低ヘイズ、取り外し可能な外層、紫外線(UV)遮断特性、及びガンマ線照射とエチレンオキシド(EO)滅菌との両方の滅菌プロセス中の安定を有する保護フェイスシールドが必要とされている。
【0003】
ヘイズは、反射と透過との両方で起こる光学的現象である。反射において、目は、グレア、散乱、およびハローを見る。透過において、可視光は、内部散乱によって減少する、すなわち、暗くなり、目には乳白色でありクリアではないものとして見える。職業及び教育用の個人用眼及び顔面保護装具の米国国家規格(ANSI Z87.1-2020)を満たし、保護フェイスシールドとして分類されるためには、最終製品は3%未満のヘイズしか有しないことが必要である。フェイスシールドのヘイズが3%を超えると、使用者にめまいを起こさせるか、気分を悪くさせることがある。理想的には、手術室で使用される保護フェイスシールドは、1%以下のヘイズしか有しない。
【0004】
取り外し可能な外層は、外科医又は施術者が、処置中に自身の視界を損なう飛散を受けるときに必要とされる。フェイスシールドの汚れを取ったり拭いたりする動きは、汚れを拡げることにつながり、また、フェイスシールド及びガウンを交換するために手術室における滅菌野を破壊すると時間がかかるため、患者を感染させる危険性が増す。
【0005】
いくつかの病院は、UV線を発生させることが可能である照明(すなわち石英、ハロゲン、タングステン又はキセノン)を使用するので、手術室では、施術者の顔及び目を保護するためにUV遮断が必要である。またいくつかの病院では、空中浮遊病原体の減少を補助するためにUVC光も使用される。
【0006】
滅菌中の安定性は、EOと、ガンマ線照射との両方による滅菌プロセスにとって重要である。手術中に使用される単回使用医療製品は無菌でなければならない。
プラスチックを滅菌する一般的な方法は、ガンマ線照射及びEOガスを含む。いずれか一方または両方のプロセスの後、ラミネートされた積層体には、生存微生物(ラミネートされた各層間における生存微生物を含む)が存在してはならない。これに加えて、光学的な積層体の性能および物理的特性(変色、ガス放出、光学的欠陥、又は層間剥離を含むがこれらに限定されない)は、変化することはない。
【0007】
現在の最先端の解決策は、ポリエステルフィルム(PET)製の屈折率が一致した取り外し可能な複数のレンズからなるラミネートされた積層体(スタック)である。光学品質PETは、超クリアでありヘイズが低く、光学的特性、引張強度又は色に悪影響を与えることなく、EO及びガンマ線を用いて滅菌することが可能である。例えば、ポリカーボネートは、ガンマ線滅菌下において茶色に変化し得る。しかしながら、PETは紫外線を透過する(すなわち、PETはUV線を着用者まで透過させる)。したがって、薄いUV遮断層がベース層PETに対して加えられる。一般的なUV遮断フィルムは、三菱ポリエステルフィルムグループ(Mitsubishi Polyester Film Group)製のHostaphan(登録商標)7333UVである。この用途に使用される最も一般的なゲージすなわち厚さは、約0.025mm(1mil)であるが、これはヘイズの量が最も少ないゲージだからである。三菱製の厚さ約0.025mm(1mil)のUV遮断PETフィルムは、1%のヘイズを有する。厚さ約0.18mm(7mil)のUV遮断PETフィルムは、4%のヘイズを有する。ベース層から始まるフェイスシールド構造の一例は、約0.18mm(7mil)のPET、永久接着剤、約0.025mm(1mil)のUV遮断PET、取り外し可能な接着剤、約0.051mm(2mil)のPET、取り外し可能な接着剤、約0.051mm(2mil)のPETである。
【0008】
ヘイズ及び可視光透過率に関する最も一般的な試験方法は、透明プラスチックのヘイズ及び視感透過率に関する標準試験方法(ASTM D1003)である。この試験方法では、ヘイズメーターおよび分光光度計を利用する。上記の最先端の保護フェイスシールドは、この標準に従うと、2.05%のヘイズ及び88.7%のVLTとの結果を与える。これは、保護フェイスシールドの仕様(ANSI Z87.1-2020)を満たすが、理想的な手術室フェイスシールドの2倍のヘイズを有する。光学積層体におけるヘイズが加算的であることを考慮すると、積層体における各層が0.5%未満のヘイズしか有しないことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態による保護レンズ積層体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、関連技術に付随する上記の欠点を克服するための様々な保護レンズ積層体及びフェイスシールドを想定する。本開示の実施形態の一態様は、保護レンズ積層体である。保護レンズ積層体は、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層を備えてよい。保護レンズ積層体は、ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層をさらに備えてよく、取り外し可能なレンズ層の各々は、PETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された第1の接着剤とを備える。ベース層及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層の屈折率は、0.2以内で一致してよい。
【0011】
保護レンズ積層体の370nm透過率は、5%未満であってよい。320nm-380nmの波長における保護レンズ積層体の透過率は、5%未満であってよい。
UV遮断添加剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含んでよい。
【0012】
UV遮断添加剤は、UV吸収剤を含んでよい。UV吸収剤は、カーボンブラック、ルチル型酸化チタン、ヒドロキシベンゾフェノン、及びベンゾフェノンからなる群から選択されてよい。
【0013】
UV遮断添加剤は、消光剤を含んでよい。
ベース層のPETフィルムは、約0.10mm(4mil)~約0.508mm(20mil)、好ましくは約0.18mm(7mil)~約0.20mm(8mil)(例えば、約0.19mm(7.5mil))の厚さを有していてよい。
【0014】
1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々のPETフィルムは、約0.025mm(1mil)~約0.10mm(4mil)(好ましくは約0.051mm(2mil))の厚さを有していてよい。
【0015】
ベース層は、UV遮断添加剤を含有しているPETフィルムの底面に配置された第2の接着剤を備えてよく、第2の接着剤は、第1の接着剤の引張強さよりも大きな引張強さを有する。ベース層のPETフィルムは、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)、好ましくは約0.076mm(3mil)~約0.10mm(4mil)の厚さを有していてよい。1つ以上の取り外し可能なレンズ層の各々のPETフィルムは、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)、好ましくは約0.076mm(3mil)~約0.10mm(4mil)の厚さを有していてよい。
【0016】
保護レンズ積層体の全ヘイズは、2%以下(例えば、1%)であってよい。保護レンズ積層体の可視光透過率(VLT)は、87%以上(例えば、90%)であってよい。
本開示の実施形態の別の態様は、フェイスシールドである。フェイスシールドは、約0.10mm(4mil)~約0.508mm(20mil)の厚さを有し、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層を備えてよい。フェイスシールドは、ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層をさらに備えてよく、取り外し可能なレンズ層の各々は、約0.025mm(1mil)~約0.10mm(4mil)の厚さを有するPETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された接着剤とを備える。ベース層及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層の屈折率は、0.2以内で一致してよい。
【0017】
本開示の実施形態の別の態様は、表面装着可能な保護レンズ積層体である。表面装着可能な保護レンズ積層体は、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)の厚さを有し、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層を備えてよい。表面装着可能な保護レンズ積層体は、ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層をさらに備えてよく、取り外し可能なレンズ層の各々は、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)の厚さを有するPETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された第1の接着剤とを備える。ベース層は、UV遮断添加剤を含有しているPETフィルムの底面に配置された第2の接着剤をさらに備え、第2の接着剤は、第1の接着剤より大きな引張強さを有する。ベース層及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層の屈折率は、0.2以内で一致してよい。
【0018】
本開示の実施形態の別の態様は、保護レンズ積層体である。保護レンズ積層体は、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを備えるベース層を備えてよく、ベース層は、0.5%未満のヘイズを有する。保護レンズ積層体は、ベース層の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層をさらに備えてよく、取り外し可能なレンズ層の各々は、0.5%未満のヘイズを有し、PETフィルムと、該PETフィルムの底面に配置された第1の接着剤とを備える。
【0019】
本明細書に開示される様々な実施形態のこれら及び他の特徴並びに利点は、以下の説明及び図面に関してより良く理解され得る。図面において、同様の番号は、全体を通して同様の部分を指す。
【0020】
本開示は、保護フェイスシールドとして使用するための、又は(例えば、手術室で着用される手術用ヘルメット、フード、又はガウンの)窓に付けるための、低ヘイズの一体化されたUV吸収性パッケージングを有するラミネートされた取り外し可能な複数の保護レンズからなる光学積層体の様々な実施形態を包含する。添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、現在想定されるいくつかの実施形態の説明として意図され、開示される発明が展開又は利用され得る唯一の形態を表すようには意図されていない。本説明は、図示された実施形態に関連して機能及び特徴を記載する。しかしながら、同じ又は同等な機能が、本開示の範囲内に包含されるように意図もされる異なる実施形態によって達成され得ることが理解されてよい。第1及び第2などの関係語は、1つのエンティティを別のエンティティから区別するためだけに、そうしたエンティティ間の順序における任意の実際のそうした関係を必ずしも要求または意味することなく使用されることがさらに理解される。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態による保護レンズ積層体100の断面図である。保護レンズ積層体100は、示されるように表面10に対して付けられてもよく、例えば、その周縁においてフレームに対して取り付けられ、フェイスシールドとして独立していてもよい。表面10は、手術室において手術チームメンバーによって着用され得るような手術用ヘルメット、フード、又はガウンの透明な窓であってよい。表面10に装着されることなく独立型フェイスシールドとして使用される保護レンズ積層体100の場合、フェイスシールドは、顔の前に着用され、顔を部分的にのみ囲む開放型であってよい。あるいは、フェイスシールドは、ヘルメットのバイザーや着用者の顔及び頭部を完全に囲む他の物品など、閉鎖型であってよい。
【0022】
いずれの場合でも、保護レンズ積層体100は、1つ以上の取り外し可能なレンズ層が汚れたときに着用者によって引き剥がされることが可能な1つ以上の取り外し可能なレンズ層を提供しながらも、低ヘイズ、UV遮断、及び複数の滅菌プロセス下における安定性を組み合わせることが可能である。この目的のために、保護レンズ積層体100は、UV遮断添加剤を含有しているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム112を備えるベース層110と、ベース層110の上に積層された1つ以上の取り外し可能なレンズ層120とを備えてよい。UV遮断添加剤をベース層110のPETフィルム112に組み込むことによって、別個のUV遮断フィルム又は永久接着剤層をその間に備える必要なく、所望のUV遮断能力を達成することが可能である。これらの2つの層を排除することによって、保護レンズ積層体100の全ヘイズを1%低減することが可能であり、従来の構造に対して透明度が50%増加する。ベース層110と、取り外し可能なレンズ層120の各々とを備える、得られた保護レンズ積層体100の各層は、0.5%未満のヘイズを有していてよい。
【0023】
取り外し可能なレンズ層120の各々は、PETフィルム122と、PETフィルム122の底面に配置された接着剤124とを備えてよい。取り外し可能なレンズ層120のPETフィルム122は、取り外し可能なレンズ層120が汚れたときに取り外すことが可能な犠牲層として意図されているので、UV遮断添加剤を含む必要はない。接着剤124は、「Adhesive Mountable Stack of Removable Layers」と題された米国特許第9,295,297号明細書に記載されているようなポリメタクリル酸メチル(PMMA)接着剤などのドライ・マウント接着剤であるか、「Touch Screen Shield」と題された米国特許第9,128,545号に記載されているようなウェット・マウント接着剤であるか、「Tear-off Optical Stack Having Peripheral Seal Mount」と題された米国特許第6,536,045号明細書に記載されているような接着剤であってよく、これらの各々の全内容を、参照により本明細書に援用する。接着剤124は、感圧接着剤(PSA)であってよい。
【0024】
図1の例では、2つの取り外し可能なレンズ層120、すなわち、ベース層110の上に積層された第1の取り外し可能なレンズ層120と、第1の取り外し可能なレンズ層120の上に積層された第2の取り外し可能なレンズ層120とが示されている。第1の取り外し可能なレンズ層120の接着剤124は、第1の取り外し可能なレンズ層120のPETフィルム122をベース層110のPETフィルム112に接着する。第2の取り外し可能なレンズ層120の接着剤124は、第2の取り外し可能なレンズ層120のPETフィルム122を第1の取り外し可能なレンズ層120のPETフィルム122に接着する。このようにして、複数の取り外し可能なレンズ層120からなる積層体が組み立てられてよく、第1の取り外し可能なレンズ層の後の各取り外し可能なレンズ層は、それに先立つ取り外し可能なレンズ層120のPETフィルム122に接着される。
【0025】
最も外側のPETフィルム122が(例えば、手術室環境において血液で)汚れると、保護レンズ積層体100の着用者は、最も外側の取り外し可能なレンズ層120を単に引き剥がして、下にあるクリアなレンズ層120又はベース層110を露出させることが可能である。各取り外し可能なレンズ層120の接着剤124は、層120が取り外されるときに、同じ取り外し可能なレンズ層120のPETフィルム122と共にあってよい。すなわち、接着剤124は、有意な量の残留物を残すことなく(例えば、接着剤移動が1%以下で)、先立つレンズ層120のPETフィルム122から取り外し可能であってよい。取り外し可能なレンズ層120を引き剥がすことがより容易になるように、各取り外し可能なPETフィルム122は、接着剤124が塗布されていないその周縁において接着剤のない領域123、すなわち、「ドライレーン(dry lane)」を有していてよい。例えば、約25.4cm(10inch)幅の保護レンズ積層体100(1つ以上の約25.4cm(10inch)幅の取り外し可能なPETフィルム122を有する)の場合、各取り外し可能なPETフィルム122の接着剤のない領域123は、PETフィルム122の幅の1/3未満(例えば、約8.13cm(3.2inch))であってよい。図示された例では、接着剤のない領域123は、PETフィルム122の片側のみにあるが、接着剤のない領域123は、取り外し可能なレンズ層120を引き剥がすための好ましい技術(例えば、左手のみ、右手のみ、またはいずれの手でも)に応じて両側に提供されてよいことが想定される。
【0026】
保護レンズ積層体100を通した高い視力を確保するために、保護レンズ積層体100内の内部反射は、各層110,120の屈折率を一致させることによって最小化されてよい。この点に関して、層110,120を構成しているPETフィルム112,122及び接着剤層124は、米国特許第9,295,297号明細書に記載されているものと同じ又は非常に類似した屈折率を有するように製造又は選択されてよく、それを参照により本明細書に援用する。特に、ベース層110及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層120の屈折率は、0.2以内で一致してよい。
【0027】
ベース層110のPETフィルム112に組み込まれるUV遮断添加剤は、様々な形態をとってよい。最も好ましくは、UV遮断添加剤は、プラスチックの光酸化中に形成されるフリーラジカルを捕捉する長期熱安定剤であるヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含んでよい。HALSは、光学的にクリアであってよく、PETフィルム112に対して一致された屈折率であるように、又は一般に、HALSを含有しているベース層110及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層120の屈折率が0.2以内であるように、製造又は選択されてよい。
【0028】
HALSの代わりに又はHALSと組み合わせてベース層110のPETフィルム112に組み込まれ得るUV遮断添加剤の他の例は、UV吸収剤及び消光剤である。UV吸収剤は、例えば、カーボンブラック、ルチル型酸化チタン、ヒドロキシベンゾフェノン、及びベンゾフェノン類が含まれてよい。しかしながら、カーボンブラックは、ヘイズを加えるという悪影響を有する場合があり、一方、他のUV吸収剤は、薄いPETフィルムに対して最適化されていないか、UV線を十分に遮断しない(例えば、ルチル型酸化チタンは、315nm未満のUVBを遮断し得ない)。重金属を含有している消光剤は、PETフィルム112に限定されたUV遮断能力を提供することが可能である(HALSほど有効ではない)が、得られた保護レンズ積層体100に望ましくない色を加えるという負の特性を有する。いずれの場合も、UV遮断添加剤の屈折率は、PETフィルム112及び保護レンズ積層体100の残りの部分の屈折率と一致してよい(例えば、0.2以内)。
【0029】
UV遮断添加剤(HALS、UV吸収剤、及び/又は消光剤)をベース層110のPETフィルム112に組み込むことにより、UV線を保護レンズ積層体100によって遮断することが可能である。特に、保護レンズ積層体の得られた370nm透過率は、5%未満であってよい。より好ましくは、320nm-380nmの波長における保護レンズ積層体100の得られた透過率は、5%未満であってよい。さらに、UV遮断添加剤は、PETフィルム112においてポリマー結合されているので、ガンマ線照射及びエチレンオキシド(EO)滅菌等の滅菌プロセス中にPETフィルム112から遊離することが不可能である。したがって、保護レンズ積層体100は、手術室環境で使用され、劣化することなく、典型的な滅菌プロセスを受けることが可能である。
【0030】
UV遮断添加剤を含有しているPETフィルム112の特性は、以下のテーブル1に示す範囲内であってよい。
テーブル1
【0031】
【0032】
独立型フェイスシールドとして(すなわち、表面10に対して装着されることなく)使用される場合、保護レンズ積層体100は、以下の仕様を有していてよい。ベース層110のPETフィルム112は、約0.10mm(4mil)~約0.508mm(20mil)、好ましくは約0.18mm(7mil)~約0.20mm(8mil)(例えば約0.19mm(7.5mil))の厚さを有していてよい。1つ以上の取り外し可能なレンズ層120の各々のPETフィルム122は、約0.025mm(1mil)~約0.10mm(4mil)(例えば、約0.051mm(2mil))の厚さを有していてよい。一構成例では、約0.051mm(2mil)のPETフィルム122と、接着剤124とを各々備えている2つの取り外し可能なレンズ層120を、ベース層110として機能する約0.19mm(7.5mil)の屈折率が一致したUV遮断PETフィルム112の上に積層してよい。得られた保護レンズ100において、ヘイズは1%であってよく、可視光透過率(VLT)は90%であってよい。ベース層110及び2つの取り外し可能なレンズ層120は各々、0.5%未満のヘイズを有していてよい。
【0033】
保護レンズ積層体100が(例えば、
図1に示す表面10に対して)表面装着可能である場合、ベース層110は、PETフィルム112の底面に配置された接着剤114をさらに備えてよい。接着剤114は、取り外し可能なレンズ層120の接着剤124の引張強さよりも大きな引張強さを有していてよい。したがって、保護レンズ積層体100の着用者は、表面10から保護レンズ積層体100全体を誤って取り外すことなく、取り外し可能なレンズ層120のうちの1つを容易に取り外すことが可能である。そうした接着剤114の例は、米国特許第9,295,297号明細書及び米国特許第6,536,045号明細書において見出されてよく、それらを参照により上記に援用する。接着剤114は、ベース層110及び1つ以上の取り外し可能なレンズ層120の屈折率が0.2以内で一致したままであるように製造又は選択されてよい。
【0034】
上述したように、表面10は、手術用ヘルメット、フード、又はガウンの既存の窓であってよい。また、表面10は、より一般的には、任意の種類の窓であってよいことが想定される。特に、保護レンズ積層体100が付けられる表面10は、自動車又は他の車両のフロントガラスであってよく、フロントガラスが泥および他のデブリで汚れると、取り外し可能なレンズ層120が剥がされることが可能である。この点に関して、保護レンズ積層体100は、「Thermoform Windshield Stack with Integrated Formable Mold」と題する出願人の米国特許出願公開第2020/0247102号明細書、及び2020年5月4日出願の「Protective Barrier for Safety Glazing」と題する米国特許出願第16/866,392号明細書に記載されているシステム及び方法と共に使用されてよく、これらの各々の内容全体を参照によって本明細書に明示的に援用する。フロントガラス上において使用されるようなその表面装着可能形態では、保護レンズ積層体100は、以下の仕様を有していてよい。すなわち、ベース層110のPETフィルム112は、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)、好ましくは約0.076mm(3mil)~約0.10mm(4mil)の厚さを有していてよい。1つ以上の取り外し可能なレンズ層120の各々のPETフィルム122は、約0.051mm(2mil)~約0.18mm(7mil)(例えば、約0.076mm(3mil)~約0.10mm(4mil))の厚さを有していてよい。得られた保護レンズ100において、ヘイズは2%であってよく、可視光透過率(VLT)は70%であってよい。
【0035】
図示した例では、ベース層110に加えて2つの取り外し可能なレンズ層120を有する3プライの保護レンズ積層体100が示されている。しかしながら、なお、本開示は、この点に関して限定されることを意図するものではなく、追加の取り外し可能なレンズ層120の包含、又は代替的に単一の取り外し可能なレンズ層120のみを有する構成も想定される。
【0036】
上記の説明は、限定ではなく例として与えられている。上記の開示を前提として、当業者は、本明細書に開示される本発明の範囲及び趣旨内にある変形形態を考案することが可能である。さらに、本明細書に開示される実施形態の様々な特徴を、単独で、又は互いに組み合わせを変化させて使用することが可能であり、本明細書に記載される特定の組み合わせに限定されることを意図しない。したがって、特許請求の範囲は、図示された実施形態によって限定されるべきではない。
【国際調査報告】