(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】水素を輸送または貯蔵するための多層構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240705BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20240705BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20240705BHJP
C08K 7/28 20060101ALI20240705BHJP
C08K 7/24 20060101ALI20240705BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20240705BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B32B27/34
B29C70/32
B29C70/06
C08K7/28
C08K7/24
C08L77/02
C08L63/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575842
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 FR2022051248
(87)【国際公開番号】W WO2023275465
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュフォール, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マーコート, マージョリー
(72)【発明者】
【氏名】プレンヴィール, トマ
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AC06C
4F100AD11C
4F100AG00C
4F100AK01C
4F100AK17D
4F100AK19D
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4J002FA046
4J002FD016
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
水素の輸送、分配および貯蔵用に意図された多層構造体であって、内側から外側に向かって、少なくとも1つの防漏層(1)および少なくとも1つの複合補強層(2)を含み、
前記最内複合補強層が、前記最外隣接防漏層(1)の周りに巻き付けられ、
前記防漏層が、
少なくとも1つの脂肪族ポリアミド熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは半結晶性防漏層の数であり、そのTmは、ISO11357-3:2013に従って測定して、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を除いて200℃より大きく、
前記ポリアミド熱可塑性ポリマーは、窒素原子当たりの平均炭素原子数が7~9であるポリアミドである)、
組成物の総重量に対して最大30重量%の衝撃修飾剤、
組成物の総重量に対して最大1.5重量%の可塑剤、を主に含む組成物からなり、
前記組成物が、核形成剤を欠いており、
各防漏層の前記少なくとも1つのポリアミド熱可塑性ポリマーが、同一であるかまたは異なることが可能であり、
前記複合補強層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのポリマーP2jを主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、
前記構造体が、ポリアミドポリマーで作製された層を欠いており、前記ポリアミドポリマーで作製された層が、最外であり、複合補強材の最外層に隣接している、多層構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の輸送、分配および貯蔵用に意図された多層構造体であって、内側から外側に向かって、少なくとも1つの防漏層(1)および少なくとも1つの複合補強層(2)を含み、
前記最内複合補強層が、前記最外隣接防漏層(1)の周りに巻き付けられ、
前記防漏層が、
少なくとも1つの脂肪族ポリアミド熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは半結晶性防漏層の数であり、そのTmは、ISO11357-3:2013に従って測定して、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を除いて200℃より大きく、
前記ポリアミド熱可塑性ポリマーは、窒素原子当たりの平均炭素原子数が7~9であるポリアミドである)、
組成物の総重量に対して最大30重量%の衝撃修飾剤、特に最大15重量%未満の衝撃修飾剤、特に最大9重量%の衝撃修飾剤、
組成物の総重量に対して最大1.5重量%の可塑剤、を主に含む組成物からなり、
前記組成物が、核形成剤を欠いており、
各防漏層の前記少なくとも1つのポリアミド熱可塑性ポリマーが、同一であるかまたは異なることが可能であり、
前記複合補強層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのポリマーP2j(j=1~m、mは補強層の数である)、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、
前記構造体が、ポリアミドポリマーで作製された層を欠いており、前記ポリアミドポリマーで作製された層が、最外であり、複合補強材の最外層に隣接している、多層構造体。
【請求項2】
エチレンとα-オレフィンとの共重合体が、衝撃修飾剤から除外されることを特徴とする、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
各補強層が、同じタイプのポリマー、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層構造体。
【請求項4】
ただ1つの防漏層およびただ1つの補強層を呈することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記ポリマーP1iが、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から、特にPA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記ポリマーP2jが、エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記多層構造体が、ただ1つの補強層およびただ1つの防漏層からなり、この層において前記ポリマーP1iが、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から、特にPA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、
前記ポリマーP2jが、エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂である、請求項5または6に記載の多層構造体。
【請求項8】
複合補強層の繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩もしくは塩基系繊維、またはこれらの混合物、特に炭素繊維から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記構造体が、透明な非晶質ポリマーを含浸させた連続ガラス繊維で作製された繊維材料からなる少なくとも1つの外層をさらに含み、前記層が、前記多層構造体の最外層であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項10】
前記防漏層が、内側から外側に向かって、
請求項1に記載の組成物からなる層(a)、
任意選択で、結合層、
特にフルオロポリマーで作製された、特にPVDFで作製された、またはEVOHで作製された、好ましくはEVOHで作製された、水素に対するバリア層、
任意選択で、結合層、
請求項1に記載の組成物からなる層(b)、を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項11】
押出ブロー成形、回転成形、射出成形または押出による防漏層の調製段階を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の多層構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の防漏層の周りに請求項1に記載の補強層をフィラメントワインディングする段階を含むことを特徴とする、請求項11に記載の多層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、水素の輸送、分配または貯蔵、特に水素の分配または貯蔵のための複合多層構造体、およびそれらの製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
水素タンクは、特に自動車分野において、多数の製造業者側で現在大きな関心を集めている主題である。追求される目的のうちの1つは、汚染の少ない車両を提供することである。したがって、バッテリを備える電気自動車またはハイブリッド自動車が、ガソリン自動車またはディーゼル自動車などの熱自動車に徐々に取って代わることを目的としている。実際には、バッテリは車両の比較的複雑な構成要素であることが判明している。車両内のバッテリの位置に応じて、極端な温度および可変湿度であり得る衝撃および外部環境からバッテリを保護することが必要な場合がある。また、いかなる火炎のリスクも回避する必要がある。
【0003】
さらに、バッテリのセルを損傷せず、その寿命を守るために、その動作温度が55℃を超えないことが重要である。逆に、例えば冬には、その動作を最適化するためにバッテリの温度を上昇させることが必要な場合がある。
【0004】
さらに、電気自動車は、今日でも、いくつかの問題、すなわち、バッテリの範囲、資源が枯渇しない希土類金属のこれらのバッテリでの使用、タンクを充填するための期間よりもはるかに長い充電時間、およびバッテリを再充電可能にするための様々な国における電力生産の問題にも依然として悩まされている。
【0005】
したがって、水素は、燃料電池によって電気に変換することができ、したがって電気自動車に動力を供給することができるので、水素は電気バッテリの代替物である。
【0006】
水素タンクは、一般に、水素の透過を防止しなければならない金属ライナー(または防漏性層)からなる。想定されるタイプのタンクのうちの1つは、タイプIVと呼ばれ、その周りに複合材が巻き付けられる熱可塑性ライナーに基づく。
【0007】
それらの基本原理は、それらを互いに独立して管理するために、防漏性および機械的強度という2つの本質的な機能を分離することである。このタイプのタンクでは、熱可塑性樹脂で作製されたライナー(または防漏被覆)が、強化被覆材または層としても知られている繊維(ガラス、アラミド、炭素)からなる強化構造と組み合わされ、これにより、重量を低減しながら、かつ重度の外部からの攻撃が発生した場合の爆発的破壊のリスクを回避しながら、はるかに高い圧力で動作することが可能になる。
【0008】
ライナーは、以下のある特定の基本特性を呈さなければならない:
押出ブロー成形、回転成形、射出成形または押出成形によって変形される可能性、
低い水素透過率(これは、ライナーの透過率がタンクの水素損失を制限する重要な要因であるためである)、
低温(-40~-70℃)での良好な機械的(疲労)性質、
120℃における耐熱性。
【0009】
これは、水素タンクの充填速度を増加させる必要があるためであり、これは、熱機関用のガソリンタンクの充填速度(約3~5分)とほぼ同等でなければならないが、この速度の増加は、タンクのより大きな加熱をもたらし、次いで約100℃の温度に達する。
【0010】
水素タンクの性能品質および安全性の評価は、Galassiら(World Hydrogen Energy Conference 2012,Onboard Compressed Hydrogen Storage:Fast Filling Experiments and Simulations,Energy Procedia,29,(2012)192-200)に記載されているように、欧州の基準研究室(GasTeF:水素タンク試験施設)で決定することができる。
【0011】
タイプIVの第1世代のタンクは、高密度ポリエチレン(HDPE)に基づくライナーを使用した。
【0012】
しかしながら、HDPEは、過度に低い融点および高い水素透過率を有するという欠点を呈し、これは、熱抵抗に関する最新の要件の問題を表し、タンクの充填速度を増加させることを可能にしない。
【0013】
数年間にわたって、ポリアミドPA6またはPA66に基づくライナーが開発されてきた。
【0014】
それにもかかわらず、PA6およびPA66は、耐寒性が低く、吸水率が高いという欠点を呈する。
【0015】
良好な衝撃強度を呈するPA12で作製されたライナーも開発されているが、PA12は、過度に高い水素透過率を有するという欠点を呈する。
【0016】
欧州特許出願公開第3112421号明細書は、高圧水素用に意図された成形品のためのポリアミド樹脂組成物を記載しており、組成物は、
ポリアミド6樹脂(A)と、DSCによって決定されるポリアミド6樹脂(A)の融点+20℃以下である融点、およびDSCによって決定されるポリアミド6樹脂(A)の冷却結晶化点より高い冷却結晶化点を有するポリアミド樹脂(B)とを含む。
【0017】
仏国特許出願公開第2923575号明細書は、軸線に沿った端部のそれぞれに、端部金属キャップ、前記キャップを取り囲むライナー、前記ライナーを取り囲む熱硬化性樹脂を含浸させた繊維で作製された構造層を備える、高圧下で流体を貯蔵するためのタンクについて記載している。
【0018】
欧州特許出願公開第3222668号明細書は、高圧水素用に意図された成形品のためのポリアミド樹脂組成物について記載しており、組成物は、ヘキサメチレンジアミンから誘導される単位および8~12個の炭素原子の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含むポリアミド樹脂(A)と、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体のうちの1つで変性されたエチレン/α-オレフィン共重合体(B)とを含む。
【0019】
米国特許出願公開第2014/008373号明細書は、高圧に圧縮されたガス用の光貯蔵シリンダについて記載しており、シリンダは、応力層によって囲まれたライナーを有し、ライナーは、
ガスと接触している衝撃修飾されたポリアミド(PA)の第1の内層、
応力層と接触する外側熱可塑性樹脂層、および
衝撃修飾されたPAの第1の内層と外側熱可塑性樹脂層との間の接着結合層、を含む。
【0020】
国際公開第1855491号パンフレットは、3層構造を呈する水素の輸送のための構成要素について記載しており、その内層は、PA11、15%~50%の衝撃修飾剤および1%~3%の可塑剤または可塑剤を欠いている組成物からなり、水素に対するバリアの性質、良好な可撓性および低温耐久性を呈する。しかしながら、この構造は、水素の輸送のためのパイプには適しているが、水素の貯蔵のためのパイプには適していない。
【0021】
したがって、依然として、一方では複合材のマトリックスを、その高温機械的強度を最適化するように最適化し、他方では防漏被覆を構成する材料を、その処理温度を最適化するように最適化している。したがって、作製される防漏被覆を構成する材料の組成物の可能な変更は、今日実施されているものと比較して、このライナーの製造温度(押出ブロー成形、射出成形、回転成形など)の著しい上昇によって反映されてはならない。
【0022】
さらに、防漏被覆を構成する材料の衝撃強度、吸水率および水素透過率も最適化されるべきである。
【0023】
これらの異なる問題は、水素の輸送、分配または貯蔵用に意図された本発明の多層構造体を提供することによって解決される。
【0024】
本明細書を通して、「ライナー」および「防漏被覆」という用語は、同じ意味を有する。
【0025】
したがって、本発明は、水素の輸送、分配および貯蔵用に意図された多層構造体であって、内側から外側に向かって、少なくとも1つの防漏層(1)および少なくとも1つの複合補強層(2)を含み、
前記最内複合補強層が、前記最外隣接防漏層(1)の周りに巻き付けられ、
前記防漏層が、
少なくとも1つの脂肪族ポリアミド熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは半結晶性防漏層の数であり、そのTmは、ISO11357-3:2013に従って測定して、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を除いて200℃より大きく、
前記ポリアミド熱可塑性ポリマーは、窒素原子当たりの平均炭素原子数が7~9であるポリアミドである)、
組成物の総重量に対して最大30重量%の衝撃修飾剤、特に最大15重量%未満の衝撃修飾剤、特に最大9重量%の衝撃修飾剤、
組成物の総重量に対して最大1.5重量%の可塑剤、を主に含む組成物からなり、
前記組成物が、核形成剤を欠いており、
各防漏層の前記少なくとも1つのポリアミド熱可塑性ポリマーが、同一であるかまたは異なることが可能であり、
前記複合補強層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのポリマーP2j(j=1~m、mは補強層の数である)、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を主に含む組成物が含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、
前記構造体が、ポリアミドポリマーで作製された層を欠いており、前記ポリアミドポリマーで作製された層が、最外であり、複合補強材の最外層に隣接している、多層構造体に関する。
【0026】
したがって、本発明者らは、予想外にも、防漏層のための限られた割合の衝撃修飾剤および可塑剤を含む、窒素原子当たりの平均炭素原子数が7~9であるポリアミド熱可塑性ポリマーを、複合材のマトリックスのための異なるポリマー、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂と使用し、前記複合材を防漏層上に巻き付けることにより、窒素原子当たりの平均炭素原子数が7未満かつ9超であるポリアミド熱可塑性ポリマーと比較して、特に衝撃強度、水素透過率および吸水率に関して妥協点を得ることが可能になり、したがって、水素の輸送、分配または貯蔵、特に最大120℃の範囲であり得る使用最高温度の上昇に適した構造を得ることが可能になり、したがって、タンクの充填速度の増加が可能になることを見出した。
【0027】
「多層構造体」という用語は、いくつかの層、すなわちいくつかの防漏層およびいくつかの補強層、または1つの防漏層およびいくつかの補強層、またはいくつかの防漏層および1つの補強層、または1つの防漏層および1つの補強層を含むか、またはそれらからなるタンクを意味すると理解されるべきである。
【0028】
したがって、多層構造体は、パイプまたはチューブを除外すると理解される。
【0029】
一実施形態では、PA6およびPA66は、前記防漏層の組成物から除外される。
【0030】
一実施形態では、前記多層構造体は、防漏層および補強層の2つの層からなる。
【0031】
防漏層は、最外層である複合補強層に対して最内層である。
【0032】
タンクは、水素の移動式貯蔵のためのタンク、すなわち、水素の輸送のためのトラック上、水素を輸送し、例えば燃料電池の水素を供給するための車上、水素を供給するための列車上または水素を供給するためのドローン上であり得るが、車両に水素を分配するために、現場で水素を固定貯蔵するためのタンクでもあり得る。
【0033】
有利には、防漏層(1)は、23℃で水素に対して防漏性であり、すなわち、23℃での水素透過率は、23℃、0%相対湿度(RH)下で100cc.mm/m2.24h.atm未満である。
【0034】
透過率は、(cc.mm/m2.24h.Pa)で表すこともできる。
【0035】
その場合、透過率は、101325倍されなければならない。
【0036】
一実施形態では、エチレンとα-オレフィンとの共重合体は、前記防漏層の組成物の衝撃修飾剤から除外される。
【0037】
別の実施形態では、前記防漏層は、
少なくとも1つの脂肪族ポリアミド熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは半結晶性防漏層の数であり、そのTmは、ISO11357-3:2013に従って測定して、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を除いて200℃より大きい)を主に含む組成物からなり、
前記ポリアミド熱可塑性ポリマーは、PA610を除いて、7~9の窒素原子当たりの平均炭素原子数を呈するポリアミドである。
【0038】
さらに別の実施形態では、前記防漏層は、
少なくとも1つの脂肪族ポリアミド熱可塑性ポリマーP1i(i=1~n、nは半結晶性防漏層の数であり、そのTmは、ISO11357-3:2013に従って測定して、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を除いて200℃より大きい)を主に含む組成物からなり、
前記ポリアミド熱可塑性ポリマーは、PA610を除いて、7~9の窒素原子当たりの平均炭素原子数を呈するポリアミドであり、
エチレンとα-オレフィンとの共重合体は、衝撃修飾剤から除外される。
【0039】
複合補強層は、例えばフィラメントワインディングによって堆積されたポリマーを含浸させた繊維のストリップ(またはテープまたはロービング)によって、防漏層の周りに巻き付けられる。
【0040】
いくつかの層が存在する場合、ポリマーは異なる。
【0041】
補強層のポリマーが同一である場合、いくつかの層が存在してもよいが、有利には、ただ1つの補強層が存在し、次いで、これは、防漏層の周りに少なくとも1つの完全な巻き付けを呈する。
【0042】
当業者に周知であるこの完全に自動化されたプロセスは、最終構造に内圧負荷に耐える能力を与える巻き付け角度を層ごとに選択することを可能にする。
【0043】
いくつかの防漏層が存在する場合、防漏層の最内層のみが水素と直接接触する。
【0044】
1つの防漏層および1つの複合補強層のみが存在し、したがって2層の多層構造体をもたらす場合、そのとき、これらの2つの層は、特に防漏層の上の複合補強層の巻き付けに起因して、互いに直接接触して互いに接着し得る。
【0045】
いくつかの防漏層および/またはいくつかの複合補強層が存在する場合、そのとき、前記防漏層の最外層、したがって水素と接触する層の反対側は、前記複合補強の最内層に接着していてもよく、または接着していなくてもよい。
【0046】
他の複合補強層は、互いに接着していてもよく、または接着していなくてもよい。
【0047】
他の防漏層は、互いに接着していてもよく、または接着していなくてもよい。
【0048】
有利には、1つの防漏層および1つの補強層のみが存在し、互いに接着しない。
【0049】
有利には、1つの防漏層および1つの補強層のみが存在し、互いに接着せず、補強層は、少なくとも1つのポリマーP2j、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂、またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を主に含む組成物で含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなる。
【0050】
一実施形態では、1つの防漏層および1つの補強層のみが存在し、互いに接着せず、補強層は、エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂であるポリマーP2jを主に含む組成物で含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなる。
【0051】
「エポキシ系」という表現は、本明細書全体を通して、エポキシドがマトリックスの少なくとも50重量%を占めることを意味する。
【0052】
防漏層および熱可塑性ポリマーP1iについて
1つ以上の防漏層が存在してもよい。
【0053】
前記層の各々は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーP1iを主に含む組成物からなり、iは、存在する層の数に対応する。iは、1~10、特に1~5、特に1~3であり、優先的にはi=1である。
【0054】
「主に」という用語は、前記少なくとも1つのポリマーが、組成物の総重量に対して50重量%超で存在することを意味する。
【0055】
有利には、前記少なくとも1つの主なポリマーは、組成物の総重量に対して60重量%超、特に70重量%超、特に80重量%超、より詳細には90重量%以上で存在する。
【0056】
前記組成物はまた、組成物の総重量に対して最大30重量%の衝撃修飾剤および/または可塑剤および/または添加剤を含むことができる。
【0057】
添加剤は、核形成剤を除いて、別のポリマー、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、着色剤、カーボンブラックおよび炭素系ナノ充填剤から選択することができ、特に、添加剤は、核形成剤を除いて、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、着色剤、カーボンブラックおよび炭素系ナノ充填剤から選択される。
【0058】
前記他のポリマーは、別の半結晶性熱可塑性ポリマーまたは異なるポリマー、特にEVOH(エチレン/ビニルアルコール)であり得る。
【0059】
有利には、前記組成物は、前記熱可塑性ポリマーP1iを主に、0重量%~30重量%の衝撃修飾剤、特に0%~15%未満の衝撃修飾剤、特に0%~9%の衝撃修飾剤、0%~1.5%の可塑剤および0重量%~5重量%の添加剤を含み、組成物の成分の合計は、100%に等しい。
【0060】
有利には、前記組成物は、前記熱可塑性ポリマーP1iを主に、0重量%~30重量%の衝撃修飾剤、特に0%~15%未満の衝撃修飾剤、特に0%~9%の衝撃修飾剤、0%~1.5%の可塑剤および0重量%~5重量%の添加剤からなり、組成物の成分の合計は、100%に等しい。
【0061】
各層の前記少なくとも1つの主なポリマーは、同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
一実施形態では、ただ1つの主なポリマーは、少なくとも複合補強層に接着しない防漏層に存在する。
【0063】
一実施形態では、前記組成物は、組成物の総重量に対して0.1重量%~30重量%、特に0.1重量%~15重量%未満、特に0.1重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含む。
【0064】
別の実施形態では、前記組成物は、組成物の総重量に対して1重量%~30重量%、特に1重量%~15重量%未満、特に1重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含む。
【0065】
特に、前記組成物は、組成物の総重量に対して2重量%~30重量%、特に2重量%~15重量%未満、特に2重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含む。
【0066】
特に、前記組成物は、組成物の総重量に対して3重量%~30重量%、特に3重量%~15重量%未満、特に3重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含む。
【0067】
特に、前記組成物は、組成物の総重量に対して4重量%~30重量%、特に4重量%~15重量%未満、特に4重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含む。
【0068】
特に、前記組成物は、組成物の総重量に対して5重量%~30重量%、特に5重量%~15重量%未満、特に5重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含む。
【0069】
一実施形態では、前記組成物は、可塑剤を欠いている。
【0070】
別の実施形態では、前記組成物は、組成物の総重量に対して0.1重量%~30重量%、特に0.1重量%~15重量%未満、特に0.1重量%~9重量%の衝撃修飾剤を含み、前記組成物は、可塑剤を欠いている。
【0071】
さらに別の実施形態では、前記組成物は、組成物の総重量に対して0.1重量%~30重量%、特に0.1重量%~15重量%未満、特に0.1重量%~9重量%の衝撃修飾剤、および0.1重量%~1.5重量%の可塑剤を含む。
【0072】
熱可塑性ポリマーP1i
半結晶性熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性樹脂は、常温で一般に固体であり、温度上昇中、特にそのガラス転移温度(Tg)を通過した後に軟化し、その「融点」(Tm)を通過すると明らかな溶融を呈し、その結晶化点未満の温度低下中に再び固体になる材料を意味すると理解される。
【0073】
Tg、TcおよびTmは、それぞれ規格11357-2:2013および11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0074】
前記半結晶性ポリアミド熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10000~85000、特に10000~60000、優先的には10000~50000、より優先的にはさらに12000~50000の範囲内である。これらのMn値は、規格ISO 307:2007に従ってm-クレゾール中で決定されるが、溶媒を変化させる(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)0.8以上の固有粘度に対応することができる。
【0075】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、規格ISO 1874-1:2011「プラスチック-ポリアミド(PA)成形および押出材料-パート1:名称」、特に3ページ(表1および2)に記載されており、当業者に周知である。
【0076】
ポリアミドは、ホモポリアミドもしくはコポリアミドまたはこれらの混合物であり得る。
【0077】
有利には、前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドである。
【0078】
一実施形態では、前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドである。
【0079】
有利には、各防漏層は、同じタイプのポリアミドを含む組成物からなる。
【0080】
溶接が必要な場合、ポリアミド熱可塑性ポリマーで作製された要素を溶接することを可能にする様々な方法が存在する。したがって、接触、超音波、赤外線、振動の印加、一方の要素を他方に対して溶接するための回転、またはレーザ溶接の有無にかかわらず、加熱ブレードが使用され得る。
【0081】
衝撃修飾剤について
衝撃修飾剤は、亀裂エネルギーを散逸させるように、マトリックスとの良好な接着性を呈する、樹脂の弾性率よりも低い弾性率を有するポリマーであれば、任意の衝撃修飾剤であり得る。
【0082】
衝撃修飾剤は、有利には、規格ISO178に従って測定して100MPa未満の曲げ弾性率を呈し、0℃未満のTg(DSCサーモグラムの変曲点で規格11357-2に従って測定)を有するポリマー、特にポリオレフィンからなる。
【0083】
一実施形態では、PEBAは、衝撃修飾剤の定義から除外される。
【0084】
衝撃修飾剤のポリオレフィンは、官能化されていても官能化されていなくてもよく、または官能化された少なくとも1つおよび/または官能化されていない少なくとも1つの混合物であってもよい。簡単にするために、ポリオレフィンを(B)で示し、官能化ポリオレフィン(B1)および非官能化ポリオレフィン(B2)を以下に記載した。
【0085】
非官能化ポリオレフィン(B2)は、従来、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンまたはブタジエンなどのα-オレフィンまたはジオレフィンのホモポリマーまたは共重合体である。例として、以下が挙げられ得る:
-ポリエチレンホモポリマーおよび共重合体、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)およびメタロセンポリエチレン、
-プロピレンホモポリマーまたは共重合体、
-エチレン/α-オレフィン、例えばエチレン/プロピレン、EPR(エチレン/プロピレンゴムの略称)およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)、共重合体、
-スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)またはスチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体、
-エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルアクリレート)などの不飽和カルボン酸の塩もしくはエステル、または酢酸ビニル(EVA)などの飽和カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1つの生成物との共重合体であって、コモノマーの割合が40重量%に達することが可能である、共重合体。
【0086】
官能化ポリオレフィン(B1)は、反応性単位(官能基)を有するα-オレフィンのポリマーであり得、そのような反応性単位は、酸、無水物またはエポキシ官能基である。例として、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシド、または(メタ)アクリル酸(後者を例えばZnなどの金属によって完全にもしくは部分的に中和することが可能である)などのカルボン酸または対応する塩もしくはエステル、または無水マレイン酸などのカルボン酸無水物とグラフト化もしくは共重合化もしくは三重合化された前述のポリオレフィン(B2)が挙げられ得る。官能化ポリオレフィンは、例えばPE/EPR混合物であり、その重量比は、広い範囲内で、例えば40/60~90/10で変動し得、前記混合物は、グラフト化の程度に応じて、例えば0.01重量%~5重量%の無水物、特に無水マレイン酸と共グラフト化されている。
【0087】
官能化ポリオレフィン(B1)は、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートでグラフト化された以下の(共)重合体から選択することができ、グラフト化の程度は、例えば、0.01重量%~5重量%である:
-PE、PP、エチレンのプロピレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテンとの共重合体であって、例えば、35重量%~80重量%のエチレンを含有する、共重合体、
-エチレン/α-オレフィン、例えばエチレン/プロピレン、EPR(エチレン/プロピレンゴムの略称)およびエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)、共重合体、
-スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)またはスチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体、
-最大40重量%の酢酸ビニルを含有する、エチレンと酢酸ビニル(EVA)との共重合体、
-最大40重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含有する、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、
-最大40重量%のコモノマーを含有する、エチレンと酢酸ビニル(EVA)とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体。
【0088】
官能化ポリオレフィン(B1)はまた、プロピレン中で優勢なエチレン/プロピレン共重合体から選択することができ、無水マレイン酸でグラフト化され、次いでモノアミン化ポリアミド(またはポリアミドオリゴマー)と縮合される(欧州特許出願公開第0342066号明細書に記載の生成物)。
【0089】
官能化ポリオレフィン(B1)は、少なくとも以下の単位:(1)エチレン、(2)アルキル(メタ)アクリレートまたは飽和カルボン酸ビニルエステル、および(3)無水マレイン酸もしくは(メタ)アクリル酸無水物などの無水物、またはグリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシの共重合体またはターポリマーであり得る。
【0090】
後者のタイプの官能化ポリオレフィンの例として、以下の共重合体が挙げられ得、エチレンは、好ましくは、少なくとも60重量%を表し、ターモノマー(官能基)は、例えば、共重合体の0.1重量%~10重量%を表す:
-エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレート共重合体、
-エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレート共重合体、
-エチレン/酢酸ビニルまたはアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸または無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレート共重合体。
【0091】
先行する共重合体では、(メタ)アクリル酸をZnまたはLiで塩化することができる。
【0092】
(B1)または(B2)における「アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、C1~C8アルキルメタクリレートおよびアクリレートを示し、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートから選択することができる。
【0093】
さらに、上述のポリオレフィン(B1)はまた、任意の適切なプロセスまたは薬剤(ジエポキシ、二酸、過酸化物など)によって架橋することもでき、「官能化ポリオレフィン」という用語はまた、上述のポリオレフィンと、これらのポリオレフィンと反応することができる二酸、二無水物、ジエポキシなどの二官能性反応物、または互いに反応することができる少なくとも2つの官能化ポリオレフィンの混合物との混合物を含む。
【0094】
上述の共重合体(B1)および(B2)は、ランダムまたはブロック様式で共重合することができ、直鎖または分岐構造を呈する。
【0095】
これらのポリオレフィンの分子量、MFI指数および密度もまた、当業者によって認識されるであろう広い範囲内で変動し得る。MFIは、メルトフローインデックスの略称である。これは、規格ASTM 1238に従って測定される。
【0096】
非官能化ポリオレフィン(B2)は、有利には、ポリプロピレンのホモポリマーまたは共重合体、およびエチレンの任意のホモポリマーまたはエチレンとブテン、ヘキセン、オクテンもしくは4-メチル-1-ペンテンなどの高級α-オレフィン型のコモノマーとの共重合体から選択される。例えば、PP、高密度PE、中密度PE、線状低密度PE、低密度PEまたは超低密度PEが挙げられ得る。これらのポリエチレンは、「ラジカル」法に従って、「チーグラー」型の触媒作用に従って、またはより最近では「メタロセン」触媒作用に従って生成されるものとして当業者に公知である。
【0097】
官能化ポリオレフィン(B1)は、有利には、α-オレフィン単位、およびエポキシ、カルボン酸またはカルボン酸無水物官能基などの反応性極性官能基を有する単位を含む任意のポリマーから選択される。そのようなポリマーの例として、本出願人の会社のLotader(登録商標)製品などのエチレン、アルキルアクリレートおよび無水マレイン酸もしくはグリシジルメタクリレートのターポリマー、または本出願人の会社のOrevac(登録商標)製品などの無水マレイン酸でグラフト化されたポリオレフィン、ならびにエチレン、アルキルアクリレートおよび(メタ)アクリル酸のターポリマーも挙げられ得る。カルボン酸無水物でグラフト化され、次いでポリアミドまたはポリアミドのモノアミン化オリゴマーと縮合されたポリプロピレンホモポリマーまたは共重合体も挙げられ得る。
【0098】
有利には、前記防漏層の前記構成組成物は、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を欠いている。したがって、この実施形態では、PEBAは、衝撃修飾剤から除外される。
【0099】
有利には、前記透明組成物は、コア-シェル粒子またはコア-シェルポリマーを欠いている。
【0100】
「コア-シェル粒子」という用語は、その第1の層がコアを形成し、その第2の層または後続のすべての層がそれぞれのシェルを形成する粒子を意味すると理解されるべきである。
【0101】
コアシェル粒子は、少なくとも2段階を含む多段プロセスによって得ることができる。そのようなプロセスは、例えば、米国特許出願公開第2009/0149600号明細書または欧州特許第0722961号明細書に記載されている。
【0102】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィン共重合体は、衝撃修飾剤から除外される。
【0103】
可塑剤について
可塑剤は、ポリアミドに基づく組成物に一般的に使用される可塑剤であり得る。
【0104】
有利には、様々なポリマーの混合および得られた組成物の変形の段階中にヒュームが形成されないように、良好な熱安定性を呈する可塑剤が使用される。
【0105】
特に、この可塑剤は、以下から選択することができる:
ベンゼンスルホンアミド誘導体、例えば、n-ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)、エチルトルエンスルホンアミド(ETSA)のオルトおよびパラ異性体、N-シクロヘキシルトルエンスルホンアミドおよびN-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(HP-BSA)、
2-エチルヘキシルパラヒドロキシベンゾエート(EHPB)および2-ヘキシルデシルパラヒドロキシベンゾエート(HDPB)などのヒドロキシ安息香酸のエステル、
オリゴエチレンオキシ-テトラヒドロフルフリルアルコールなどのテトラヒドロフルフリルアルコールのエステルまたはエーテル、ならびに
クエン酸またはヒドロキシマロン酸のエステル、例えばオリゴエチレンオキシマロネート。
【0106】
好ましい可塑剤は、n-ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)である。
【0107】
別のより特に好ましい可塑剤は、N-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(HP-BSA)である。これは、後者が、押出による変形の段階中に押出スクリューおよび/またはダイでの堆積物の形成(「ダイドロール」)を防止するという利点を呈するためである。
【0108】
非常に明らかに、可塑剤の混合物が使用され得る。
【0109】
複合補強層およびポリマーP2jについて
ポリマーP2jは、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであり得る。
【0110】
1つ以上の複合補強層が存在してもよい。
【0111】
前記層の各々は、少なくとも1つの熱可塑性または熱硬化性ポリマーP2jを主に含む組成物で含浸された連続繊維の形態の繊維材料からなり、jは、存在する層の数に対応する。
【0112】
jは、1~10、特に1~5、特に1~3であり、優先的にはj=1である。
【0113】
「主に」という用語は、前記少なくとも1つのポリマーが、組成物および複合材のマトリックスの総重量に対して50重量%超で存在することを意味する。
【0114】
有利には、前記少なくとも1つの主なポリマーは、組成物の総重量に対して60重量%超、特に70重量%超、特に80重量%超、より詳細には90重量%以上で存在する。
【0115】
前記組成物はまた、衝撃修飾剤および/または添加剤を含むことができる。
【0116】
添加剤は、核形成剤を除いて、抗酸化剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、可塑剤および着色剤から選択することができる。
【0117】
有利には、前記組成物は、前記熱可塑性ポリマーP2jを主に、0重量%~15重量%の衝撃修飾剤、特に0重量%~12重量%の衝撃修飾剤および0重量%~5重量%の添加剤からなり、組成物の成分の合計は、100重量%に等しい。
【0118】
各層の前記少なくとも1つの主なポリマーは、同一であっても異なっていてもよい。
【0119】
一実施形態では、ただ1つの主なポリマーが、少なくとも防漏層に接着していない複合補強層中に存在する。
【0120】
一実施形態では、各補強層は、同じタイプのポリマー、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂、またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を含む。
【0121】
ポリマーP2j
熱可塑性ポリマーP2j
「熱可塑性樹脂」または「熱可塑性ポリマー」という用語は、一般に、常温で固体であり、半結晶性または非晶質、特に半結晶性であり得、温度上昇中、特にそのガラス転移温度(Tg)を通過した後に軟化し、非晶質である場合はより高い温度で流動し、または半結晶性である場合は、その「融点」(Tm)を通過すると明らかな融点を呈することができ、その結晶化点Tc未満(半結晶性材料の場合)およびそのガラス転移温度未満(非晶質材料の場合)の温度低下中に再び固体になる材料を意味すると理解される。
【0122】
Tg、TcおよびTmは、それぞれ規格11357-2:2013および11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0123】
前記熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10000~40000、好ましくは10000~30000の範囲である。これらのMn値は、規格ISO 307:2007に従ってm-クレゾール中で決定されるが、溶媒を変化させる(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)0.8以上の固有粘度に対応することができる。
【0124】
本発明に適した半結晶性熱可塑性ポリマーの例として、以下が挙げられ得る。
共重合体、例えばポリアミド-ポリエーテルまたはポリエステル共重合体を含む、特に芳香族および/または脂環式構造を含むポリアミド、
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、
ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、
ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、
ポリイミド、特にポリエーテルイミド(PEI)またはポリアミド-イミド、
ポリスルホン(PSU)、特にポリアリールスルホン、例えばポリフェニルスルホン(PPSU)、
ポリエーテルスルホン(PES)。
【0125】
半結晶性ポリマーがより特に好ましく、特にポリアミドおよびそれらの半結晶性共重合体が好ましい。
【0126】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、規格ISO 1874-1:2011「プラスチック-ポリアミド(PA)成形および押出材料-パート1:名称」、特に3ページ(表1および2)に記載されており、当業者に周知である。
【0127】
ポリアミドは、ホモポリアミドもしくはコポリアミドまたはこれらの混合物であり得る。
【0128】
有利には、半結晶性ポリアミドは、半芳香族ポリアミド、特に欧州特許第1505099号明細書に記載されているような式X/YArの半芳香族ポリアミド、特にAがアミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位および式(Caジアミン).(Cb二酸)に対応する単位から選択される式A/XTの半芳香族ポリアミドであり、aは、ジアミンの炭素原子の数を表し、bは、二酸の炭素原子の数を表し、aおよびbはそれぞれ4~36、有利には9~18であり、(Caジアミン)単位は、直鎖または分岐脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され、(Cb二酸)単位は、直鎖または分岐脂肪族二酸、脂環式二酸および芳香族二酸から選択される。
XTは、Cxジアミンとテレフタル酸との重縮合から得られる単位を示し、xは、Cxジアミンの炭素原子の数を表し、xは5~36、有利には9~18であり、特に式A/5T、A/6T、A/9T、A/10TまたはA/11Tのポリアミドであり、Aは、上で定義された通りであり、特にPA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 5T/10T、PA 11/BACT、PA 11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/6T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/BACT/10T、PA 11/MXDT/10Tまたは11/5T/10Tから選択されるポリアミドであり、
Tは、テレフタル酸に対応し、MXDは、m-キシリレンジアミンに対応し、MPMDは、メチルペンタメチレンジアミンに対応し、BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。上で定義された前記半芳香族ポリアミドは、特に80℃以上のTgを呈する。
【0129】
熱硬化性ポリマーP2j
熱硬化性ポリマーは、エポキシもしくはエポキシ系樹脂、ポリエステル、ビニルエステル、ポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレート、
およびポリウレタン、またはこれらの混合物、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂から選択される。
【0130】
有利には、各複合補強層は、同じタイプのポリマー、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を含む組成物からなる。
【0131】
前記ポリマーP2jを含む前記組成物は、溶接に適した照射に対して透明であり得る。
【0132】
別の実施形態では、防漏層の周りの複合補強層の巻き付けは、いかなるその後の溶接もない状態で行われる。
【0133】
構造体について
したがって、前記多層構造体は、少なくとも1つの防漏層、および防漏層の周りに巻き付けられ、互いに接着していてもよく、または接着していなくてもよい少なくとも1つの複合補強層を含む。
【0134】
有利には、前記防漏層および補強層は、互いに接着せず、それぞれ異なるポリマーを含む組成物からなる。
【0135】
それにもかかわらず、前記異なるポリマーは、同じタイプであり得る。
【0136】
前記多層構造体は、異なる性質の最大10個の防漏層および最大10個の複合補強層を含むことができる。
【0137】
前記多層構造体は、必ずしも対称的ではなく、したがって複合層よりも多くの防漏層を含むことができ、またはその逆も可能であるが、層と補強層とが交互になり得ないことは非常に明白である。
【0138】
有利には、前記多層構造体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の防漏層、および1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の複合補強層を備える。
【0139】
有利には、前記多層構造体は、1、2、3、4または5つの防漏層、および1、2、3、4または5つの複合補強層を備える。
【0140】
有利には、前記多層構造体は、1、2または3つの防漏層、および1、2または3つの複合補強層を備える。
【0141】
有利には、それらは、それぞれ異なるポリマーを含む組成物からなる。
【0142】
有利には、それらは、ポリアミドP1iに対応するポリアミド、およびエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートP2jに基づく樹脂をそれぞれ含む組成物からなる。
【0143】
一実施形態では、前記多層構造体は、ただ1つの防漏層およびいくつかの補強層を含み、前記隣接する補強層は、前記防漏層の周りに巻き付けられ、他の補強層は、直接隣接する補強層の周りに巻き付けられている。
【0144】
別の実施形態では、前記多層構造体は、ただ1つの補強層およびいくつかの防漏層を含み、前記補強層は、前記隣接する防漏層に巻き付けられている。
【0145】
有利な一実施形態では、前記多層構造体は、ただ1つの防漏層およびただ1つの複合補強層を含み、前記補強層は、前記防漏層の周りに巻き付けられている。
【0146】
したがって、これらの2つの層のすべての組み合わせは、少なくとも前記最内複合補強層が前記最外隣接防漏層の周りに巻き付けられ、他の層は、互いに接着しているか、または接着していないことを条件として、本発明の範囲内である。
【0147】
有利には、前記多層構造体では、各防漏層は、同じタイプのポリマーP1i、特にポリアミドを含む組成物からなる。
【0148】
「同じタイプのポリマー」という表現は、例えば、層に応じて同一または異なるポリアミドであり得るポリアミドを意味すると理解されるべきである。
【0149】
有利には、前記ポリマーP1iは、ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂である。
【0150】
有利には、ポリアミドP1iは、すべての防漏層について同一である。
【0151】
有利には、前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドである。
【0152】
一実施形態では、前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドである。
【0153】
有利には、前記多層構造体では、各補強層は、同じタイプのポリマーP2j、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を含む組成物からなる。
【0154】
有利には、ポリアミドP2jは、すべての補強層について同一である。
【0155】
有利には、前記多層構造体では、各防漏層は、同じタイプのポリマーP1i、特にポリアミドを含む組成物からなり、各補強層は、同じタイプのポリマーP2j、特にエポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂を含む組成物からなる。
【0156】
有利には、前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、特にPA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/6T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/BACT/10Tおよび PA 11/MXDT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである。
【0157】
一実施形態では、前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、特にPA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/6T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/BACT/10Tおよび PA 11/MXDT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである。
【0158】
一実施形態では、前記多層構造体は、ただ1つの補強層およびただ1つの防漏層からなり、この層において前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、特にPA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/6T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/BACT/10Tおよび PA 11/MXDT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである。
【0159】
一実施形態では、前記多層構造体は、ただ1つの補強層およびただ1つの防漏層からなり、この層において前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、特にPA MPMDT/6T、PA11/10T、PA 11/BACT、PA 5T/10T、PA 11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA 11/BACT/6T、PA 11/MPMDT/6T、PA 11/MPMDT/10T、PA 11/BACT/10Tおよび PA 11/MXDT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである。
【0160】
さらに別の実施形態では、多層構造体は、ただ1つの補強層およびただ1つの防漏層からなり、この層において前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512、PA610およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂である。
【0161】
別の実施形態では、多層構造体は、ただ1つの補強層およびただ1つの防漏層からなり、この層において前記ポリマーP1iは、PA410、PA412、PA510、PA512およびPA612から選択される脂肪族ポリアミドであり、前記ポリマーP2jは、エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂である。
【0162】
有利には、前記多層構造体は、透明非晶質ポリマーが含浸された連続ガラス繊維からなる繊維材料からなる少なくとも1つの外層をさらに含み、前記層は、前記多層構造体の最外層である。
【0163】
前記外層は、構造上に刻印を入れることを可能にする第2の補強層であるが透明層である。
【0164】
一実施形態では、前記防漏層は、内側から外側に向かって、
上で定義された組成物からなる層(a)、
任意選択で、結合層、
特にフルオロポリマーで作製された、特にPVDFで作製された、またはEVOHで作製された、好ましくはEVOHで作製された水素に対するバリア層、
任意選択で、結合層、
上で定義された組成物からなる層(b)、を含む。
【0165】
バリア層について
「バリア層」という表現は、低透過率および良好な水素耐性の特性を有する層、すなわち、バリア層が構造の他の層への、またはさらには構造の外側への水素の通過を遅くすることを示す。したがって、バリア層は、第一に、拡散によって過度に多くの水素を大気中に失わないことを可能にし、それによって爆発および発火の問題を回避することを可能にする層である。
【0166】
これらのバリア材料は、低炭素含有量を有するポリアミド、すなわち、窒素原子(N)に対する平均炭素原子数(C)が9未満であるポリアミドであり得、これらは、好ましくは半結晶性で高融点を有する、ポリフタルアミド、および/またはさらに非ポリアミドバリア材料、例えば高結晶性ポリマー、例えばエチレンとビニルアルコールとの共重合体(以下、EVOHと示す)、実際には官能化フッ化材料、例えば官能化ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、エチレンとテトラフルオロエチレンとの官能化共重合体(ETFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの官能化共重合体(EFEP)、官能化ポリフェニレンスルフィド(PPS)または官能化ポリブチレンナフタレート(PBN)である。これらのポリマーが官能化されていない場合、MLT構造内の良好な接着を確実にするためにバインダーの中間層を添加することが可能である。
【0167】
これらのバリア材料の中で、EVOH、特にビニルアルコールコモノマーが最も豊富なもの、および衝撃修飾されたものは、より強い構造を生成することを可能にするので、特に有利である。
【0168】
「バリア層」という表現は、言い換えれば、前記バリア層が水素に対して実質的に不透過性であることを意味し、特に、23℃、0%相対湿度(RH)下、23℃での水素透過率は、100cc.mm/m2.24h.atm未満、特に75cc.mm/m2.24h.atm未満である。
【0169】
透過率は、(cc.mm/m2.24h.Pa)で表すこともできる。
【0170】
その場合、透過率は、101325倍されなければならない。
【0171】
繊維材料について
前記繊維材料の構成繊維に関して、これらは、特に無機、有機または植物由来の繊維である。
【0172】
有利には、前記繊維材料は、サイズ決めされてもされなくてもよい。
【0173】
したがって、前記繊維材料は、サイズと呼ばれる最大3.5重量%の有機性の材料(熱硬化性または熱可塑性樹脂タイプ)を含むことができる。
【0174】
無機起源の繊維の中でも、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩または塩基系繊維、シリカ繊維または炭化ケイ素繊維が挙げられ得る。有機起源の繊維の中でも、例えば、半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維またはポリオレフィン繊維などの熱可塑性または熱硬化性ポリマーに基づく繊維が挙げられ得る。好ましくは、それらは、非晶質熱可塑性ポリマーに基づき、ポリマーもしくはブレンドが非晶質である場合、予備含浸マトリックスの構成熱可塑性ポリマーもしくはポリマーブレンドのTgより高い、またはポリマーもしくはブレンドが半結晶性である場合、予備含浸マトリックスの構成熱可塑性ポリマーもしくはポリマーブレンドのTmより高いガラス転移温度Tgを呈する。有利には、それらは、半結晶性熱可塑性ポリマーに基づき、ポリマーもしくはブレンドが非晶質である場合、予備含浸マトリックスの構成熱可塑性ポリマーもしくはポリマーブレンドのTgより高い、またはポリマーもしくはブレンドが半結晶性である場合、予備含浸マトリックスの構成熱可塑性ポリマーもしくはポリマーブレンドのTmより高い融点Tmを呈する。したがって、最終複合材の熱可塑性マトリックスによる含浸中に繊維材料の構成有機繊維が溶融するリスクはない。植物起源の繊維の中でも、亜麻、麻、リグニン、竹、絹、特にクモ糸、サイザルおよび他のセルロース繊維、特にビスコース繊維に基づく天然繊維が挙げられ得る。これらの植物起源の繊維は、熱可塑性ポリマーマトリックスの接着および含浸を促進する目的で、純粋なもの、処理されたもの、またはコーティング層でコーティングされたものを使用することができる。
【0175】
繊維材料はまた、繊維で編まれたまたは織られた布地であり得る。
【0176】
また、支持糸を有する繊維に対応することもできる。
【0177】
これらの構成繊維は、単独でまたは混合物として使用することができる。したがって、熱可塑性ポリマー粉末を予備含浸し、予備含浸繊維材料を形成するために、有機繊維を無機繊維と混合することができる。
【0178】
有機繊維のロービングは、いくつかの坪量を有することができる。加えて、それらは、いくつかの形状を呈することができる。繊維材料の構成繊維は、さらに、様々な形状のこれらの強化繊維の混合物の形態であり得る。繊維は、連続繊維である。
【0179】
好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩もしくは玄武岩系繊維、またはこれらの混合物、特に炭素繊維から選択される。
【0180】
それは、ロービングまたはいくつかのロービングの形態で使用される。
【0181】
別の態様によれば、本発明は、押出ブロー成形、回転成形、射出成形または押出による防漏層の調製段階を含むことを特徴とする、上で定義された多層構造体の製造方法に関する。
【0182】
一実施形態では、多層構造体の前記製造方法は、上で定義された防漏層の周りに上で定義された補強層のフィラメントワインディングの段階を含む。
【0183】
上で詳細に説明したすべての特性は、プロセスにも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【
図1】ISO 179-1:2010による23℃および-40℃で、左から右へ、PA12、PA612、PA610、PA6およびPA66(各ライナー:左ヒストグラム:23℃、右ヒストグラム:-40℃)の5つのライナーのノッチ付きシャルピー衝撃(kJ/m
2)を呈する図である。
【
図2】左から右へ、PA12、PA6、PA610およびPA612のライナーの23℃での水素透過率(cc.mm/m
2.d.atm)を呈する図である。
【
図3】異なる割合の衝撃修飾剤(Lotader(登録商標)4700(50%)+Lotader(登録商標)AX8900(25%)+Lucalene(登録商標)3110(25%)混合物)を含むPA610:左から右へ:衝撃修飾剤を含まないPA610、8%の衝撃修飾剤を含むPA610、12%の衝撃修飾剤を含むPA610および15%の衝撃修飾剤を含むPA610のライナーの23℃での水素透過率(cc.mm/m
2.d.atm)を呈する図である。
【
図4】23℃および相対湿度100%での吸水率を呈する図である。
【実施例】
【0185】
すべての実施例において、タンクは、使用される熱可塑性樹脂の性質に適した温度での防漏層(ライナー)の回転成形によって得られる。
【0186】
エポキシもしくはエポキシ系樹脂またはポリイソシアネート、特にポリイソシアヌレートに基づく樹脂で作製された複合補強材の場合、その後、液体エポキシ浴または液体エポキシ系浴で予め予備含浸された繊維をライナーの周りに巻き付けることからなる湿式フィラメント巻き付けプロセスが使用される。その後、タンクをオーブン内で2時間重合する。
【0187】
他のすべての場合において、熱可塑性樹脂(テープ)で予備含浸された繊維材料がその後使用される。このテープは、12m/分の速度で1500Wの出力のレーザ加熱を含むロボットによってフィラメントワインディングによって堆積され、重合段階は存在しない。
【0188】
実施例1:ISO 179-1:2010による-40℃でのノッチ付きシャルピー衝撃
窒素原子当たりの炭素数が9を超えるライナー(PA12)、窒素原子当たりの炭素数が7未満の2つのライナー(PA6およびPA66)、窒素原子当たりの炭素数が7~9の2つのライナー(PA610およびPA612)を上記のように回転成形により調製した。
【0189】
これらの5つのライナーを、-40℃でのノッチ付きシャルピー衝撃で試験し、結果を
図1に示す。
【0190】
PA610およびPA612ライナーの耐衝撃性は、PA6およびPA66の耐衝撃性と比較して良好である。
【0191】
実施例2:
衝撃修飾剤を含まないPA12、PA612、PA610およびPA6ライナーの透過率
窒素原子当たりの炭素数が9を超えるライナー(PA12)、窒素原子当たりの炭素数が7未満のライナー(PA6)および窒素原子当たりの炭素数が7~9の2つのライナー(PA610およびPA612)を回転成形により調製し、23℃での水素透過率を試験した。
【0192】
これは、フィルムの上面を試験ガス(水素)で掃引すること、およびキャリアガス:窒素によって掃引された下部のフィルムを通って拡散する流れをガスクロマトグラフィーによって測定することからなる。
【0193】
【0194】
結果を
図2に示し、PA610およびPA612で作製されたライナーは両方とも、PA12で作製されたライナーよりもはるかに低い水素透過率を呈することを示す。
【0195】
図3は、PA610ライナーの水素透過率に対する衝撃修飾剤の影響を示す。
【0196】
実施例3:吸水率
PA6、PA66、PA610、PA612およびPA12の標本を23℃の脱塩水に浸漬する。毎日(週末を除く)、試料を水から取り出し、拭き取り、秤量し、水に再導入する。質量が安定化する(プラトーに達する)と、値をグラフに移す。この値は、これらの生成物が23℃で吸収することができる水の最大質量に対応する。
【0197】
図4は、PA612およびPA610の吸水率がPA6およびPA66の吸水率よりもはるかに低いことを示す。
【0198】
PA6、PA610、PA612およびPA12で作製されたライナーを複合ケーシングで覆った;後者は、エポキシ樹脂を含浸させたT700SC31E炭素繊維(Toray製)を巻き付けることにより生産される。組立体を110℃で5時間加熱して、エポキシ樹脂の硬化を確実にする。その後、タンクを切断して分析する。PA6ライナーは、外面(複合構造と接触する面)に気泡を呈する。PA610、PA612、PA12で作製されたライナーは、いかなる欠陥も呈さない。
【0199】
実施例4
タイプIVの水素貯蔵タンクは、エポキシ(Tg120℃)/T700SC31E炭素繊維(Toray製)複合材で作製された補強材およびPA612で作製された防漏層で構成されていた。
【0200】
-40℃での圧力サイクル試験をタンクに対して行う。グリコールまたはシリコーン油を介して圧力を印加し、20~875barのサイクルを、100サイクルまたはタンクの破損(45000サイクルを必要とする規制EC79に対する逸脱)に達するまで、規則(EC)No.79/2009に従って印加する。
【0201】
これらのサイクルに続いて、タンクを空にし、浸漬されたタンクに対して水素加圧試験を行う。漏れは観察されない。タンクの内部を観察しても、亀裂は確認できなかった。
【0202】
実施例5(反例):
タイプIVの水素貯蔵タンクは、エポキシ(Tg120℃)/T700SC31E炭素繊維(Toray製)複合材で作製された補強材およびPA12で作製された防漏層で構成されていた。
同じ試験を行って同じ結果を伴う:亀裂なし
【0203】
実施例6:タイプIVの水素貯蔵タンクは、エポキシ(Tg120℃)/T700SC31E炭素繊維(Toray製)複合材で作製された補強材およびPA6で作製された防漏層で構成されていた。
【0204】
同じ圧力サイクル試験を2サイクルのみ行う。2サイクル後、タンクを空にし、浸漬されたタンクに対して水素加圧試験を行う。気泡の流れ、タンクの破損の兆候が観察される。タンクの内部を観察すると、この破損が確認される。
【0205】
これらの試験は、PA6で作製されたライナーがPA612またはPA12で作製されたライナーよりもはるかに耐性が低いことを示している。
【0206】
4つの
図1~4は、PA610およびPA612が、PA12、PA6およびPA66と比較して、衝撃強度、透過率および吸水率に関して最良の妥協点を呈することを示している。
【0207】
したがって、PA610またはPA612で作製されたライナーは、吸水率を低減しながら、機械的強度と水素に対するバリア性質に対するとの間の良好な妥協点を提示することを可能にする。
【国際調査報告】