(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】電気モータのための振動を低減する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 23/04 20060101AFI20240705BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H02P23/04
G10K11/16 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576075
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2022055851
(87)【国際公開番号】W WO2023281339
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347203
【氏名又は名称】トゥラ イーテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アルバニティス,アナスタシオス
【テーマコード(参考)】
5D061
5H505
【Fターム(参考)】
5D061GG10
5H505AA16
5H505BB04
5H505EE49
5H505GG06
5H505JJ03
5H505KK06
5H505LL38
(57)【要約】
電気モータを制御する方法が、電気モータをパルス駆動し、変調周波数を位相シフトすることを含む。電気モータを変調周波数でパルス駆動することは、電気モータの効率を増大させるよう乗り物を推進する。変調周波数を位相シフトすることは、乗り物内に誘起される振動を低減するために0度と180度との間で位相シフトすることを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータを制御する方法において、前記方法が、
前記電気モータのデューティサイクルを低減し、前記電気モータの効率を増大させるために、前記電気モータを変調周波数でパルス駆動することと、
被駆動機器内に誘起される振動を低減するために前記変調周波数を0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シフトすることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記位相シフトすることが、前記変調周波数が前記被駆動機器の共振範囲内にあるときに行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記共振範囲が前記被駆動機器の共振周波数の10ヘルツ(Hz)以内に規定されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記電気モータをパルス駆動することが、パルストルク未満の目標トルクを供給するために前記電気モータを前記パルストルクにおいてパルス駆動することを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記電気モータを前記パルストルクにおいてパルス駆動することが、前記パルストルクが前記電気モータの最適効率点であることを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、目標トルクを発生するために前記変調周波数を変更することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記変調周波数を位相シフトすることが、前記変調周波数が100Hz未満であるときに行われることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、位相シフトすることが、前記変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記変調周波数を位相シフトすることが、前記シフティング周波数が前記変調周波数よりも大きいことを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、トルク供給を均一化するために、前記位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトすることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記電気モータを変調周波数でパルス駆動することが乗り物を推進し、これにより、前記被駆動機器が前記乗り物の駆動シャフトであることを特徴とする方法。
【請求項12】
命令が記憶された非一時的コンピュータ可読媒体において、前記命令が、コントローラによって実行されたとき、前記コントローラに、
目標トルクを供給するべく電気モータのデューティサイクルを低減し、前記電気モータの効率を増大させるために、前記電気モータを変調周波数でパルス駆動することと、
前記電気モータをパルス駆動する結果生じる振動を低減するために前記変調周波数を0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シフトすることと、
を行わせることを特徴とする非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記位相シフトすることが、前記変調周波数が、前記電気モータが搭載された構造物、又は前記電気モータによって駆動される構成要素の共振範囲内にあるときに行われることを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記電気モータをパルス駆動することが、パルストルク未満の目標トルクを供給するために前記電気モータを前記パルストルクにおいてパルス駆動することを含むことを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記電気モータを前記パルストルクにおいてパルス駆動することが、前記パルストルクが前記電気モータの最適効率点であることを含むことを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記命令が、さらに、前記コントローラに、目標トルクを発生するために前記デューティサイクルを変更させることを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記変調周波数を位相シフトすることが、前記変調周波数が100Hz未満であるときに行われることを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、位相シフトすることが、前記変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含むことを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
請求項18に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記変調周波数を位相シフトすることが、前記シフティング周波数が前記変調周波数よりも大きいことを含むことを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、前記命令が、さらに、前記コントローラに、トルク供給を均一化するために、前記位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトさせることを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
被駆動構成要素を回転させるよう電気モータを動作させるためのコントローラにおいて、前記コントローラが、
プロセッサと、
プログラムを含むメモリと、を備え、前記プログラムが、前記プロセッサに、
目標トルクを前記被駆動構成要素に供給するべく、デューティサイクルを低減し、前記電気モータの効率を増大させるために、前記電気モータを変調周波数でパルス駆動することと、
前記変調周波数をシフティング周波数で0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シフトすることと、
を行わせることを特徴とするコントローラ。
【請求項22】
請求項21に記載のコントローラにおいて、前記位相シフトすることが行われ、前記変調周波数が共振範囲内にあり、前記共振範囲が前記コントローラの前記メモリ内に記憶されることを特徴とするコントローラ。
【請求項23】
請求項21に記載のコントローラにおいて、前記電気モータをパルス駆動することが、パルストルク未満の目標トルクを供給するために前記電気モータを前記パルストルクにおいてパルス駆動することを含むことを特徴とするコントローラ。
【請求項24】
請求項21に記載のコントローラにおいて、前記プログラムが、さらに、前記プロセッサに、目標トルクを発生するために前記変調周波数を変更させることを特徴とするコントローラ。
【請求項25】
請求項21に記載のコントローラにおいて、位相シフトすることが、前記変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含むことを特徴とするコントローラ。
【請求項26】
請求項21に記載のコントローラにおいて、前記プログラムが、さらに、前記プロセッサに、トルク供給を均一化するために、前記位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトさせることを特徴とするコントローラ。
【請求項27】
駆動システムにおいて、
少なくとも1つの共振周波数を有する構造物と、
被駆動構成要素と、
前記被駆動構成要素を回転させるために前記構造物に固定された電気モータと、
請求項21に記載のコントローラと、
を備えることを特徴とする駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気モータのための振動を低減する方法に関し、より詳細には、電気モータのパルスを位相シフトすることによってパルス駆動電気モータの振動を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、連続トルクを被駆動機器に提供することに有効であることが知られている。電気モータのトルク供給は、通例、内燃エンジンに付随する脈動を生じず、連続的である。概して、電気モータは、電気モータの最大トルクに対するトルクの中低~中高範囲内に最適効率点を有する。例えば、電気モータの最大効率は電気モータの最大トルクの30%~80%の範囲内にあり得る。
【0003】
電気モータが、例えば、最大トルクの20%未満の、電気モータの最大トルクの低い範囲内の連続トルクを提供するときには、電気モータの効率は、通例、低い。電気モータを最適効率点においてパルス駆動することによって電気モータのデューティサイクルを低減することで、電気モータから連続トルクを提供するよりも高い効率で電気モータの低い範囲内で目標トルクを提供することができることが見出された。最適効率点における電気モータのパルス駆動は、パルスを変調周波数で供給することを含む。
【0004】
変調周波数での電気モータのパルス駆動は、電気モータによって駆動される機器内に振動を誘起し得る。例えば、電気モータが乗り物を駆動している時、電気モータのパルス駆動は乗り物の構造物内に振動を生み出し得る。変調周波数が乗り物構造物の固有周波数共振に近いとき、これらの振動は増幅され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、概して、電気モータのパルス駆動の結果生じる振動を低減又は除去するために電気モータの変調周波数を変更する方法に関する。本方法は、電気モータのパルス駆動の結果生じる振動を低減又は除去するために変調周波数を位相シフトし、及び/又は時間シフトすることを含み得る。
【0006】
本開示の一実施形態では、電気モータを制御する方法が、電気モータをパルス駆動し、変調周波数を位相シフトすることを含む。電気モータを変調周波数でパルス駆動することは、電気モータの効率を増大させるために電気モータのデューティサイクルを低減する。変調周波数を位相シフトすることは、被駆動機器内に誘起される振動を低減するために0度と180度との間で位相シフトすることを含む。
【0007】
諸実施形態では、位相シフトすることは、変調周波数が被駆動機器の共振範囲内にあるときに行われる。共振範囲は被駆動機器の共振周波数の10ヘルツ(Hz)以内に規定され得る。
【0008】
実施形態によっては、電気モータをパルス駆動することは、パルストルク未満の目標トルクを供給するために電気モータをパルストルクにおいてパルス駆動することをインキュードし得る(incude)。モータをパルストルクにおいてパルス駆動することは、パルストルクが電気モータの最適効率点であることを含み得る。
【0009】
特定の実施形態では、本方法は、目標トルクを発生するために変調周波数を変更することを含む。周波数を位相シフトすることは、変調周波数が100Hz未満であるときに行われる。位相シフトすることは、変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含み得る。変調周波数を位相シフトすることは、シフティング周波数が変調周波数よりも大きいことを含み得る。
【0010】
特定の実施形態では、本方法は、電気モータのトルク供給を均一化するために、位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトすることを含み得る。電気モータを変調周波数でパルス駆動することは乗り物を推進し得、これにより、被駆動機器は乗り物の駆動シャフトである。
【0011】
本開示の別の実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体が、コントローラによって実行されたとき、コントローラに、目標トルクを供給するべく電気モータのデューティサイクルを低減し、電気モータの効率を増大させるために、電気モータを変調周波数でパルス駆動することと、電気モータをパルス駆動する結果生じる振動を低減するために変調周波数を0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シフトすることと、を行わせる命令が記憶されている。
【0012】
諸実施形態では、位相シフトすることは、変調周波数が、電気モータが搭載された構造物、又は電気モータによって駆動される構成要素の共振範囲内にあるときに行われる。電気モータをパルス駆動することは、パルストルク未満の目標トルクを供給するために電気モータをパルストルクにおいてパルス駆動することを含み得る。モータをパルストルクにおいてパルス駆動することは、パルストルクが電気モータの最適効率点であることを含み得る。
【0013】
実施形態によっては、命令は、さらに、コントローラに、目標トルクを発生するためにデューティサイクルを変更させる。周波数を位相シフトすることは、変調周波数が100Hz未満であるときに行われ得る。
【0014】
特定の実施形態では、位相シフトすることは、変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含む。シフティング周波数は変調周波数よりも大きいものであり得る。
【0015】
特定の実施形態では、命令は、さらに、コントローラに、電気モータのトルク供給を均一化するために、位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトさせる。
【0016】
本開示の別の実施形態では、被駆動構成要素を回転させるよう電気モータを動作させるためのコントローラが、プロセッサと、プログラムを含むメモリと、を備え、プログラムは、プロセッサに、目標トルクを被駆動構成要素に供給するべく、デューティサイクルを低減し、電気モータの効率を増大させるために、電気モータを変調周波数でパルス駆動することと、変調周波数をシフティング周波数で0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シュリフトすること(shrift)と、を行わせる。
【0017】
諸実施形態では、位相シフトすることは、変調周波数が共振範囲内にあるときに行われ、共振範囲はコントローラのメモリ内に記憶され得る。電気モータをパルス駆動することは、パルストルク未満である目標トルクを供給するために電気モータをパルストルクにおいてパルス駆動することを含み得る。
【0018】
実施形態によっては、プログラムは、さらに、プロセッサに、目標トルクを発生するために変調周波数を変更させ得る。位相シフトすることは、変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含み得る。プログラムは、さらに、プロセッサに、電気モータのトルク供給を均一化するために、位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトさせ得る。
【0019】
本開示の別の実施形態では、駆動システムが、構造物と、被駆動構成要素と、被駆動構成要素を回転させるために構造物に固定された電気モータと、コントローラと、を開示する。コントローラは、被駆動構成要素を回転させるよう電気モータを動作させるように構成されている。コントローラは、プロセッサ、及びプログラムを含むメモリを含む。プログラムは、プロセッサに、目標トルクを被駆動構成要素に供給するために電気モータを変調周波数でパルス駆動することと、構造物内の振動を低減するために変調周波数をシフティング周波数で0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シフトすることと、を行わせる。
【0020】
さらに、矛盾のない範囲で、本明細書において説明される実施形態又は態様のうちの任意のものは、本明細書において説明される他の実施形態又は態様のうちの任意のもの又は全てと併せて用いられ得る。
【0021】
以下において、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、図面を参照して本開示の様々な態様が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、電気モータのトルク供給の振動への応答をモデル化するための乗り物の構造物に搭載された電気モータの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の乗り物の構造物の例示的な周波数応答を示すチャートである。
【
図3】
図3は、
図1の乗り物の構造物の固有共振周波数における本開示の一実施形態に従って提供される振動除去特徴を伴う場合と伴わない場合における乗り物の構造物の固有共振周波数における電気モータのパルス駆動トルク供給を考慮した
図1の乗り物のねじり応答のグラフである。
【
図4】
図4は、周波数の範囲にわたる本開示の一実施形態に従って提供される振動除去特徴を伴う場合と伴わない場合における乗り物の構造物の固有共振周波数における電気モータのパルス駆動トルク供給を考慮した
図1の乗り物のねじり応答のグラフである。
【
図5】
図5は、電気モータをパルス駆動するための未変更制御信号の上に与えられた本開示の一実施形態に従って提供される位相変更された制御信号のチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に従って提供される電気モータを制御する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、以下において図面を参照して本開示がその例示的な実施形態を参照してより完全に説明される。図面において、同様の参照符号はいくつかの図の各々における同一の要素又は対応する要素を指示する。これらの例示的な実施形態は、本開示が徹底的で完全になり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えることになるよう、説明されている。一実施形態又は態様からの特徴は任意の他の実施形態又は態様からの特徴と任意の適切な組み合わせで組み合わせられ得る。例えば、方法の態様又は実施形態の任意の個々の特徴又は集合的特徴は装置、製品、又は構成要素の態様又は実施形態に適用され得、その逆もしかりである。本開示は多くの異なる形態で具現され得、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されてはならない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、適用される法的要件を満たすことになるように提供される。本明細書及び添付の請求項で使用する時、単数形「a」、「an」、「the」、及び同様のものは、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。加えて、本明細書では、定量的測度、値、幾何学的関係、又は同様のものに言及されることがあるが、特に明記しない限り、これらのうちの、全てではなくとも、任意の1つ以上は、絶対的なものであるか、又は製作若しくは工学公差又は同様のものに起因するものなどの、発生し得る許容変動を考慮するために、近似的なものであり得る。
【0024】
電気モータの低いトルク範囲内で電気モータの効率を増大させるために、電気モータは、電気モータを変調周波数で最適効率点においてパルス駆動することによって、目標トルク又は要求トルクを、経時的に供給される平均トルクとして提供するべく電気モータのデューティサイクルを低減するために、パルス駆動され得る。電気モータのこのパルス駆動はトルク供給のためのパルス幅変調(PWM(Pulse Width Modulation))波形を有し得る。デューティサイクルは、電気モータを最適効率点においてパルス駆動しつつ、低い目標トルクを被駆動機器に提供するように選択される。変調周波数は、騒音、振動、及びハーシュネス(NVH(noise,vibration,and harshness))要件を満たし、遷移損失を低減するか、又は最小限に抑えるように選択され得る。特定の実施形態では、変調周波数は被駆動機器のねじり振動に基づいて選択される。例えば、電気モータは、40Nmの目標トルクを被駆動機器に示すために、20%のデューティサイクルを用いて200Nmの効率的トルクにおいてパルス駆動され得る。被駆動機器のNVH特性に応じて、200Nmのパルスは30Hzの変調周波数で供給され得る。例示的な電気モータでは、特定の動作条件において、目標トルクを供給するべくデューティサイクルを低下させるために電気モータをパルス駆動することは、電気モータが、連続トルク供給を通じて要求されるトルクを提供するよりも9%効率が高いことが示された。
【0025】
概して、電気モータは実質的に連続的なトルクを提供する。その結果、電気モータは、通例、構造物に直接搭載され得、被駆動機器に直接結合される。これは、通例、モータから構造物への振動の伝達を低減するために1つ以上の防振マウントによって構造物に搭載される内燃モータとは異なる。同様に、内燃モータは防振要素、例えば、フライホイールを含み得、これにより、内燃モータからのトルク供給における脈動は、被駆動機器へ伝達されないように隔離される。構造物及び被駆動機器に直接搭載される結果、電気モータを変調周波数でパルス駆動することは、望ましくない振動が構造物及び/又は被駆動機器へ伝えられる結果をもたらし得る。特に、電気モータをパルス駆動する結果生じるねじり振動は構造物及び/又は被駆動機器内に望ましくない振動をもたらし得る。実施形態によっては、電気モータは、電気モータからのいくらかの振動を隔離する柔軟マウントを用いて搭載され得る。
【0026】
図1~
図4を参照して、変調周波数が乗り物の構造物の固有共振周波数にある結果がモデル化される。
図1は、乗り物10がパルス駆動電気モータ20によって駆動される単純化されたモデルを示す。
図2は、2つの固有共振周波数32、34を含む周波数の範囲にわたる乗り物10の周波数応答の例示的なモデルを示す。乗り物10の構造物の固有共振は17Hz及び77Hzにおいてピーク又は固有共振周波数を有する。
【0027】
図3及び
図4は、電気モータ20が固有共振周波数のうちの1つ、例えば、77Hzにおいてパルス駆動されたときの乗り物10のモデル化されたねじり応答を示す。乗り物10のねじり応答は多大であり、電気モータ20の変調周波数に一致する。また、
図4に示されるように、乗り物10のねじり応答は77Hzの変調周波数に実質的に隔離されている。
【0028】
電気モータ、例えば、電気モータ20が、乗り物10を推進又は駆動するために用いられるとき、乗り物10のねじり応答におけるピークは、望ましくない振動が乗り物10の乗員によって感じられるという結果をもたらし得る。望ましくない振動はまた、乗り物10の構成要素の早期の摩耗又は故障も引き起こし得る。例えば、動力伝達系の構成要素における望ましくない振動はこれらの構成要素の早期の摩耗及び/又は故障をもたらし得る。それゆえ、乗り物10及び/又は動力伝達系の望ましくない振動の振幅を低減するか、或いは望ましくない振動を解消することが望まれる。
【0029】
以上において詳述されたように、電気モータ20のデューティサイクルを低減するために電気モータ20を変調周波数で最適効率点においてパルス駆動することは、目標トルクを電気モータ20から連続的に提供するよりも高い効率での最適効率点未満の目標トルクの供給を可能にする。低い目標トルクは電気モータ20の最適効率点の0パーセント~40パーセントの範囲内であり得る。電気モータ20によって供給される目標トルクは、電気モータ20がパルス駆動又は励磁される励磁トルクのデューティサイクルを増大又は減少させることによって制御することができる。励磁トルクは、電気モータ20のための最適効率点になるように選択され得、電気モータ20の最大トルクの50パーセント~80パーセントの範囲内、例えば、60パーセントであり得る。
【0030】
励磁トルクが電気モータ20の最適効率点に固定された状態で、電気モータ20によって供給されるトルクは、電気モータ20のデューティサイクルを調整することによって制御することができる。例えば、供給されるトルクを増大させるには、デューティサイクルを増大させることができ、供給されるトルクを低下させるには、デューティサイクルを減少させことができる。変調周波数は、被駆動機器のNVH特性に基づいてデューティサイクルが変化するのに従って増大又は減少させることができる。実施形態によっては、より低い変調周波数は、電気モータ20がパルス駆動される際の電気モータ20の遷移損失を低減し得る。
【0031】
電気モータ20は、目標トルクが電気モータ20の最適効率点に近いとき、例えば、目標トルクが最適効率点の20%以内であるときには、連続トルクを提供し得る。目標トルクが最適効率点を20%超下回るときには、電気モータ20のコントローラは、目標トルクを提供するために電気モータ20を最適効率点においてパルス駆動することによって電気モータ20のデューティサイクルを低減し得る。コントローラは、供給されるトルクを目標トルクに減少させるようデューティサイクルを低減し得る。
【0032】
次に
図3~
図5を参照して、電気モータをパルス駆動することによる振動を除去する方法が本開示に従って詳述される。振動を除去する方法は、振動緩和ハードウェア、例えば、防振エンジンマウント又はフライホイールを必要とすることなく、電気モータ20のコントローラにおいて実行され得る。本方法は、電気モータ20をその変調周波数でパルス駆動することによって誘起される振動が低減されるか、又は完全に除去されるよう、変調周波数をシフティング周波数で位相シフトすることを含む。シフティング周波数は電気モータ20の変調周波数と相互作用し、より低い周波数成分を生じさせ得、これにより、シフティング周波数の選択は、インバータの限度内で動作し、電気モータ20をパルス駆動することによる効率向上を維持しつつ、被駆動機器の全体的なねじり振動応答が定常的位相脈動と比べて最小限に抑えられるような仕方で行われる。以下の例では、変調周波数はシフティング周波数で0度(0ラジアン)と180度(πラジアン)との間で位相シフトされる。実施形態によっては、変調周波数は異なる位相の間で位相シフトされるか、又は2つを超える周波数の間で位相シフトされ得る。変調周波数を位相シフトするために、電気モータのコントローラは電気モータの電流スイッチングのタイミングを制御することができる。振動を除去する方法は、コントローラが電気モータをパルス駆動するときは必ず活動状態になり得るか、又は電気モータ20をパルス駆動することが被駆動機器の容認できないNVHをもたらすであろうというときにのみ活動状態になり得る。
【0033】
特に
図5を参照すると、位相シフトされた変調信号140が元の変調信号130に対して示されており、変調周波数は77Hzであり、シフティング周波数は100Hzである。図示のように、位相シフトされた変調信号140は元の変調信号130と同様のトルクを提供する。位相シフトされた変調信号140は、元の変調信号130のピーク132、134とそろったいくつかのピーク155、149、及び元の変調信号130のピーク132と正反対にあるいくつかのピーク158を有する。元の変調信号130のピークに一致すること、又はそれらの反対にあることに加えて、位相シフトされた変調信号は、元の変調信号130のピークの間にある追加のピーク、例えば、ピーク142、144、146、148、152、154、158を有する。
【0034】
図3及び
図4を再び追加的に参照すると、たとえ、乗り物の共振周波数であっても、電気モータ20をパルス駆動することによって誘起される振動が、元の変調信号130と比べたとき、大幅に低減されるよう、位相シフトされた変調信号140によって表されるように元の変調信号130を位相シフトする。
図3に示されるように、位相シフトされた変調信号140に対する乗り物10のねじり応答50の振幅又は大きさは、元の変調信号130に対する乗り物10のねじり応答40と比べたとき、4分の1~3分の1である。同様に明らかなことは、
図4の位相シフトされた変調信号140に対するピークねじり応答50の振幅又は大きさは、元の変調信号130に対する乗り物のねじり応答40のピークからおよそ75%減少していることである。
【0035】
特に
図5を参照すると、位相シフトされた変調信号140は、不均一なトルク供給をもたらす小康域(lull)又は平坦域を有し得る。この不均一なトルク供給は、トルク供給が望ましいNVH特性から外れるよう、トルク供給における顕著な躍度又は遅れをもたらし得る。本方法は、トルク供給における任意の顕著な躍度又は遅れを解消するようトルク供給をより一貫したものにするべくトルク供給を均一化するために、位相シフトの部分を時間シフトすることを含み得る。
【0036】
図5に示されるように、位相遅延信号は正弦波である。それいくつかの実施形態、位相シフトは、遷移傾斜を有するPWM波形などの台形形状を有し得る。位相遅延の周波数f
pは次式によってモデル化され得る:
ここで、位相遅延の周波数f
pは元の変調周波数f
mに基づき、位相シフトの間のサイクル数は「a」として表され、位相シフト遷移速度は「r」によって表される。本明細書では正弦及びPWM波形が説明されているが、他の波形も本開示の範囲から逸脱することなく企図される。
【0037】
次に
図6を参照すると、本開示に係る電気モータを制御する方法が開示され、全体的に方法200として参照される。方法200は、目標トルクを駆動構成要素に供給するための信号を電気モータに提供するコントローラ上で実行される。方法200は
図1の電気モータ20及び乗り物10のモデルに従って説明される。しかし、駆動構成要素は乗り物のドライブシャフト又はアクスルであり得るか、或いは1つの機器を回転させるためのドライブシャフトであり得る。
【0038】
方法200は、電気モータ20のコントローラが、電気モータ20からの目標トルクを要求する入力信号を受信することを含み得る(ステップ210)。コントローラは、要求された目標トルクを分析し、目標トルクが電気モータ20の連続動作範囲内にあるかどうかを決定する(ステップ220)。連続動作範囲は、電気モータ20の最適効率点にあるか、又はそれを上回るトルクの範囲であり得る。連続動作範囲は、電気モータ20の最適効率点を下回るトルクの範囲を含み得る。例えば、電気モータ20の最適効率点が電気モータ20の最大トルクの60%であるとき、連続動作範囲は電気モータ20の最大トルクの40%~100%であり得る。
【0039】
要求された目標トルクが連続動作範囲内にあるとき、コントローラは、目標トルクを連続トルクとして供給するように電気モータ20を動作させる(ステップ230)。
【0040】
要求された目標トルクが連続動作範囲を下回るとき、コントローラは、目標トルクを供給するべく電気モータ20をパルス駆動するために変調周波数を選択する(ステップ240)。以上において詳述されたように、変調周波数は、電気モータ20が、目標トルクを供給するために最適効率点においてパルス駆動され得るように選択される。デューティサイクルは、電気モータ20を変調周波数でパルス駆動する間に電気モータ20から供給されるトルクを目標トルクに設定するように調整される。例えば、電気モータ20から供給されるトルクを増大させるために、デューティサイクルは増大させられ、電気モータ20から供給されるトルクを減少させるために、デューティサイクルは減少させられる。デューティサイクルが増大又は減少させられるのに伴い、変調周波数は被駆動機器、例えば、乗り物のNVH特性に基づいて増大又は減少させられ得る。
【0041】
変調周波数が選択されると、コントローラは、電気モータ20が搭載された構造物の共振周波数、並びに被駆動機器、例えば、乗り物の構造物及び/又は乗り物の被駆動構成要素の共振周波数に照らして変調周波数を分析し、変調周波数が共振範囲内にあるかどうかを決定する(ステップ250)。共振範囲は、電気モータ20を支持する構造物、又は電気モータ20によって駆動される機器の共振又はその近くの周波数の1つ以上の範囲であり得る。共振範囲は任意の周波数であり得るか、或いは構造物又は被駆動機器の共振の既定の周波数以内と規定され得る。17Hz及び77Hzにおける共振を有する上述の例を用いると、共振範囲は共振の10Hz以内であり得、これにより、共振範囲は7Hz~27Hz及び67Hz~87Hzであり得る。場合によっては、共振範囲は共振の周波数と共に変化し得る。例えば、17Hz及び77Hzの同じ共振を用いると、共振範囲は7Hz~27Hz及び57Hz~97Hzであり得る。共振範囲は共振周波数の各々の割合として変化し得る。実施形態によっては、共振範囲は、変調周波数が閾値周波数を下回るときとして規定され得る。例えば、共振範囲の閾値周波数は100Hzであり得、これにより、変調周波数が100Hzであるか、又はそれを下回るとき、変調周波数は変更又は位相シフトされる。変調周波数が共振範囲外にあるとき、コントローラは変調周波数を変更することなく電気モータ20を変調周波数で動作させ得る(ステップ260)。
【0042】
変調周波数が共振範囲内にあるとき、コントローラは電気モータ20を、変更又は位相シフトされた変調周波数で動作させる(ステップ280)。変調周波数を変更するために、コントローラは、変調周波数を位相シフトするための振動制御プログラム又はアルゴリズムを活動化する(ステップ270)。振動制御プログラム又はアルゴリズムは、コントローラが、変調周波数をシフティング周波数で位相シフトするために電気モータ20の電流スイッチングのタイミングを調整することを含む。上述されたように、シフティング周波数は変調周波数よりも大きいものであり得るか、変調周波数よりも小さいものであり得るか、又は変調周波数と同じであり得る。実施形態によっては、シフティング周波数は一定であり得るか、又は変調周波数が変化するのに伴って変化し得る。変調周波数の位相シフトは、
図5に示されるように電気モータ20をパルス駆動する結果、構造物又は被駆動機器における振動の振幅を減少させるか、又は振動を防止し得る。特定の実施形態では、変調周波数を位相シフトすることは、位相シフトされた変調周波数における不均一なトルク供給を生み出し得る。コントローラは、トルクをより一貫して供給し、トルク供給における遅れの任意の顕著な躍度を解消するために、位相シフトされた変調周波数のピークを時間シフトする時間シフトアルゴリズムを含み得る(ステップ275)。
【0043】
以上において詳述されたコントローラは独立したコントローラであり得るか、又は別のコントローラの部分であり得る。コントローラはプロセッサ及びメモリを含む。コントローラはまた、所望のトルクなどの入力を受信するための入力を含み得る。コントローラは、目標トルクを提供するよう電気モータを動作させるために電気モータと信号通信するモータ出力を含む。以上において詳述された方法は、コントローラのプロセッサ上で実行されたとき、コントローラに、方法200を含む以上において詳述された方法を実行させる非一時的コンピュータ可読媒体としてコントローラのメモリ内に記憶され得る。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態が図面において示されたが、本開示は、当技術分野が許す限り範囲が広く、本明細書も同様に読まれることが意図されるため、本開示がそれらに限定されることは意図されない。上述の実施形態の任意の組み合わせも想定され、添付の請求項の範囲に含まれる。したがって、上述の説明は限定として解釈されてはならず、単に特定の実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付された請求項の範囲内で他の変更を想定するであろう。
【国際調査報告】