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特表2024-525334活性エネルギー線硬化性水性インクジェットインク及びプリントヘッド
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  • 特表-活性エネルギー線硬化性水性インクジェットインク及びプリントヘッド 図1A
  • 特表-活性エネルギー線硬化性水性インクジェットインク及びプリントヘッド 図1B
  • 特表-活性エネルギー線硬化性水性インクジェットインク及びプリントヘッド 図2A
  • 特表-活性エネルギー線硬化性水性インクジェットインク及びプリントヘッド 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性水性インクジェットインク及びプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20240705BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240705BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B41J2/01 123
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577177
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066301
(87)【国際公開番号】W WO2022263509
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21179896.2
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】チャンピーニ, ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ボッジョ, パオロ
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EC14
2C056EC28
2C056EE17
2C056FA03
2C056FC01
2C056HA44
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA07
2H186FB03
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB35
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB55
4J039AD21
4J039AE11
4J039BC31
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE27
4J039CA06
4J039EA46
4J039FA01
4J039FA02
4J039FA04
4J039GA24
(57)【要約】
本出願は、水、ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマー、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物、式(I):


(式中、XはNa又はLi、好ましくはNaである)の光開始剤、及び1種又は複数種の共開始剤を含む、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクに関する。本出願は、硬化インク層からなる印刷フィーチャー、前記印刷フィーチャーを含む文書、前記インクを含むサーマルインクジェットプリントヘッド及び前記インクで作られたフィーチャーを基材上に印刷する方法にも関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも55wt%の水
ii)約2wt%~約20wt%の、分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートであるラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマー;
iii)約1wt%~約15wt%の、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
iv)約1wt%~約5wt%の式(I):
【化1】

(式中、XはNa又はLi、好ましくはNaである)の光開始剤
v)約0.1wt%~約2wt%の、N-[3-(ジメチルアミン)プロピル]メタクリルアミド及び/又はポリ(メチルヒドロシロキサン)からなる群から選択される1種又は複数種の共開始剤;
を含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項2】
分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである前記ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーが、約300~約600g/モルに含まれる分子量を有する、請求項1に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項3】
約1.0wt%~約15wt%の着色剤をさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項4】
約0.05wt%~約2wt%の、非イオン性フッ素化界面活性剤、好ましくは非イオン性ポリマー性エトキシレートフッ素化界面活性剤及び/又は非イオン性ポリマー性アクリルフッ素化界面活性剤をさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項5】
iii)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートモノマー、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルである4-ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートモノマー、より好ましくは4-ヒドロキシブチルモノ(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項6】
約0.1wt%~約3wt%の第2の光開始剤をさらに含み、重量パーセントは活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものであり、前記第2の光開始剤は400g/モル未満の分子量を有する1種又は複数種のチオキサントン化合物、好ましくは2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-クロロ-4-イソプロポキシチオキサントン及びそれらの混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項7】
25℃で約0.5~約10cポアズの範囲の粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクから作られた硬化インク層からなる印刷フィーチャー。
【請求項9】
基材及び請求項8に記載の1つ又は複数の印刷フィーチャーを含む、物品又は文書。
【請求項10】
前記基材が、紙含有材料、ポリマー系材料、複合材料、金属、ガラス、セラミック又はそれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載の物品又は文書。
【請求項11】
プリントヘッド基板;ノズル層を通って形成された複数のノズルを含む、ノズル層;複数のノズルに対応した複数のインク吐出チャンバー;プリントヘッド基板に形成され、複数のインク吐出チャンバーに対応する複数のヒーター抵抗器であって、それぞれのノズルを通るインク滴の吐出が、対応するインク吐出チャンバーに位置するヒーター抵抗器のうちの1つを加熱することによって引き起こされるように、それぞれのヒーター抵抗器はインク吐出チャンバーの異なる1つに位置する、ヒーター抵抗器;及び請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを含む、サーマルインクジェットプリントヘッド。
【請求項12】
サーマルインクジェット印刷プロセスによって基材上にフィーチャーを印刷する方法であって、
a)請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを、インク層を形成するようにサーマルインクジェット印刷によって適用するステップと、
b)前記インク層を少なくとも150mJ/cmの線量で活性エネルギー線に曝露して、活性エネルギー線源で前記インク層を硬化させるステップと
を含む方法。
【請求項13】
ステップa)が、請求項11に記載のサーマルインクジェットプリントヘッドを用いて実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)が、前記インク層を約380nm~約420nmの1つ又は複数の波長に曝露することからなる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクで作られた前記インク層が透明であり、前記インクが、印刷フィーチャー上の1つ又は複数のしるしの形態で少なくとも部分的に適用される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本出願は、インクジェットのインク及びプリントヘッドの分野にある。本出願は、一般に、活性エネルギー線硬化性水性インクジェット印刷用インクに関する。本出願は、さらに前記インクを含むサーマルインクジェットプリントヘッドにも関する。
【0002】
[発明の背景]
活性エネルギー線ラジカル硬化性インクは、活性エネルギー線、特にUV光の作用によりフリーラジカルを遊離することができる1種又は複数種の光開始剤の活性化からなるフリーラジカル機構によって硬化され、次に重合を開始して硬化層を形成する。
【0003】
UVエネルギーは、通常水銀ランプ、特に中圧水銀ランプによって提供される。水銀ランプは大量のエネルギーを必要とし、効率的で費用のかかる放熱システムが必要であり、オゾンを形成しやすく、寿命が限られる。
【0004】
最近、インク及びコーティングを硬化させるために、UV-LEDに基づくランプ及びシステムが開発された。電磁スペクトルのUV-A、UV-B及びUV-C領域に発光帯を有する中圧水銀ランプとは対照的に、UV-LEDランプは、UV-A領域の放射線を発する。さらに、現行のUV-LEDランプは準単色放射線を発する、すなわち、365nm、385nm、395nm又は405nmなどの1つの波長でのみ発する。
【0005】
従来より、活性エネルギー線インクは溶媒系インクであり;これは、すべての原材料は溶媒可溶性であり、当該技術分野で周知のすべての技術的な結果は、溶媒システムの使用に関連することを意味する。
【0006】
インクジェット分野での溶媒系インクは、通常いくつかの重大な問題:インクジェットプリントヘッドの比較的低い信頼性、可燃性及び健康リスク、プリントヘッド材料への化学的適合性、不快な臭気に悩まされている。
【0007】
溶媒系インクを使用する場合、包装を通して化学種が移行する可能性がある。これは、インクの化学成分が食品と接触して汚し、消費者に有害な成分を摂取させるおそれがある。これらの問題は、ヒトの健康及び環境のために考慮されねばならない。
【0008】
従って、溶媒系インクの代替物への需要が当該技術分野にある。溶媒系インクによってもたらされる問題を解決するために、水性活性エネルギー線硬化性インクが開発された。
【0009】
米国特許出願公開第2009136680号に記述されたものなどの水性インクが、開発された。
【0010】
前述の問題を解決することは重要であるが、水性インクは、印刷され架橋された際に、少なくとも溶媒系活性エネルギー線インクと同じ化学的、機械的及び技術的性能を示さなければならない。より正確には、開発されたインクは、
単色プリントヘッド又は複数インクのプリントヘッドの、サーマルインクジェットプリントヘッドによる良好な吐出性(ejectability)、
独自のサーマルインクジェットプリントヘッドに装填されたインクの高い信頼性、
プリントヘッドの組み立てに一般に使用される様々なタイプの材料(油圧接着剤、スポンジ、繊維、プラスチックリザーバ、フォトポリマーなど)とインクの高い適合性、
インクの良好なデキャップタイム(decap time)、
印刷されたメディアへのインクの短い乾燥時間、
高い光学濃度、
様々な基材(プラスチック、金属、紙…)で硬化された際の良好な接着性、
放射線照射後の高い架橋密度及び変換度、
(多孔質及び/又は非多孔質メディアでの)有利な耐久性又は耐薬品性、
良好なヒトの健康及び環境の持続可能性をサポートするために、(例えば食品包装又は医薬品包装に)化学物質の移行がない又は限定的に存在すること、
印刷ツールの他の部分と適合した時間/温度硬化条件
を保証しなければならない。
【0011】
発明者らは、先に示したすべての基準に達した水性インクを配合するのに成功した。すべての適用分野でこれらの配合物を用いるためには、特定の要件を備える原材料が必要である。
【0012】
本発明の第1の目的は、水性の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクである。
【0013】
記述されたインク及び前記インクを含むプリントヘッドは、最終仕様用途のすべての要件を達成するために、成分を微調整した結果である。
【0014】
本発明は、活性エネルギー線ランプ、例えばLEDランプで照射した後に、基材への良好な接着性を保証する水性インクを導入する。ランプによるエネルギーの正確な発光によって、インク配合表に含まれる反応性部分の効率的な網状化(reticulation)が可能になる。その結果、基材に関係なく、耐久性の高い印刷されたインクが得られる。
【0015】
本発明の革新的な態様は、開発された配合物が架橋された際に、耐水性及び耐溶媒性を達成できることである。さらに、着色インク配合物に適切な顔料分散系を使用すると、水及びエタノールのような溶媒との接触による変色が回避される。
【0016】
本発明の第2の目的は、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクから作られた硬化インク層からなる印刷フィーチャーである。
【0017】
さらに、本発明は、プリントヘッド基板、及び本発明の第2の目的による1つ又は複数の印刷フィーチャーを含む物品又は文書に関する。
【0018】
本発明の別の目的は、本発明による活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを含む、サーマルインクジェットプリントヘッドである。
【0019】
最後に、本発明は、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを適用するステップを含む、サーマルインクジェット印刷によってフィーチャーを基材上に印刷する方法にも関する。
【0020】
[発明の概要]
従って、従来技術の欠点を克服することが本発明の目的である。これは、
i)少なくとも55wt%の水、
ii)約2wt%~約20wt%の、分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートであるラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマー;
iii)約1wt%~約15wt%の、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
iv)約1wt%~約5wt%の式(I):
【化1】

(式中、XはNa又はLi、好ましくはNaである)の光開始剤
v)約0.1wt%~約2wt%の、N-[3-(ジメチルアミン)プロピル]メタクリルアミド及び/又はポリ(メチルヒドロシロキサン)からなる群から選択される1種又は複数種の共開始剤、
を含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの提供によって達成される。
【0021】
さらに本明細書に記述されているのは、本明細書に記述される活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクから作られた硬化インク層からなる印刷フィーチャー、並びに基材及び本明細書に記述される1つ又は複数の印刷フィーチャーを含む物品又は文書である。
【0022】
さらに本明細書に記述されているのは、プリントヘッド基板;ノズル層を通って形成された複数のノズルを含む、ノズル層;複数のノズルに対応した複数のインク吐出チャンバー;プリントヘッド基板に形成され、複数のインク吐出チャンバーに対応する複数のヒーター抵抗器であって、それぞれのノズルを通るインク滴の吐出が、対応するインク吐出チャンバーに位置するヒーター抵抗器のうちの1つを加熱することによって引き起こされるように、それぞれのヒーター抵抗器はインク吐出チャンバーの異なる1つに位置する、ヒーター抵抗器;及び本明細書に記述される活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを含む、サーマルインクジェットプリントヘッドである。
【0023】
さらに本明細書に記述されているのは、サーマルインクジェット印刷プロセスによって基材上にフィーチャーを印刷する方法、及びそれから得られるフィーチャーであって、
a)本明細書に記述される活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを、インク層を形成するようにサーマルインクジェット印刷によって適用するステップであって、好ましくは、前記ステップa)が本明細書に記述されるサーマルインクジェットプリントヘッドを用いて実行されるステップと、
b)インク層を少なくとも150mJ/cmの線量で活性エネルギー線に曝露して、活性エネルギー線源で前記インク層を硬化させるステップと、
を含む、方法及びフィーチャーである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1A及び1Bは、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクと適合した、プリントヘッドカートリッジの略図である。
図1B図1A及び1Bは、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクと適合した、プリントヘッドカートリッジの略図である。
図2A図2A及び2Bは、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクと適合した、複数インクのプリントヘッドカートリッジの略図である。
図2B図2A及び2Bは、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクと適合した、複数インクのプリントヘッドカートリッジの略図である。
【0025】
[詳細な記述]
以下の定義は、明細書で議論され、特許請求の範囲で列挙される用語の意味を解釈するために使用されるべきである。
【0026】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、問題の量又は値が、指定された特定の値又はその近傍の他の値であり得ることを意味する。一般に、ある特定の値を表示する「約」という用語は、値の±10%以内の範囲を表示することを意図している。一例として、「約100」という表現は、100±10の範囲、すなわち90~110の範囲を表示する。一般に、「約」という用語が使用される場合、本発明による類似した結果又は効果が、表示値の105%の範囲内で得られることを期待することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「及び/又は」という用語は、前述の群のすべて又は単に1つの要素が存在してもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「単にA、若しくは単にB、又はA及びBの両方」を意味するものとする。「単にA」の場合は、この用語はBは不在である、すなわち「単にAであり、Bはない」という可能性にも及ぶ。
【0028】
本明細書で使用する「含む」という用語は、非排他的かつ無制限であることを意図している。従って、例えば化合物Aを含むコーティング組成物は、Aに加えて他の化合物を含んでもよい。しかし、「含む」という用語は、その特別の実施形態として、「から本質的になる」及び「からなる」のより限定的な意味にも及び、そのため例えば「A、B及び任意選択でCを含む湿し水(fountain solution)」は、さらにA及びBから(本質的に)なってもよい、又はA、B及びCから(本質的に)なってもよい。
【0029】
「活性エネルギー線」という用語は、照射された物体の電子軌道に影響し、それによってラジカル、カチオン、若しくはアニオン又はこれに類する重合反応の引き金として作用する、電子線、紫外線及び赤外線などのエネルギー線に関係する。「活性エネルギー線硬化性インク」は、これらのタイプの活性エネルギー線を照射すると硬化膜を形成するインクを記述している。
【0030】
本明細書で使用する「UV」(紫外線)という用語は、電磁スペクトルのUV部分における波長成分;典型的には200nm~420nm、を有する照射を意味するという意図である。
【0031】
本発明の文脈での「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及び対応するメタクリレートを指す。同様に、「ジ(メタ)アクリレート」はジアクリレート及び対応するジメタクリレートを指す。
【0032】
本明細書が「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせも、「好ましい」実施形態/特徴のこの組み合わせに技術的意味がある限り、開示されたものと考えるべきである。
【0033】
本明細書に記述されるラジカル硬化性インクは、フリーラジカルを遊離して次にフリーラジカルが重合を開始させる、1種又は複数種の光開始剤のエネルギーによる活性化からなる、フリーラジカル機構によって硬化される。
【0034】
インク中に多量の水があると、溶媒系システムでは典型的なノズルからの強力な蒸発を妨げ、溶媒系インクの信頼性をなくさせる。
【0035】
本発明の一実施形態では、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、UVラジカル硬化性インクジェット印刷用インクである。
【0036】
本発明の一実施形態では、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、LEDラジカル硬化性インクジェット印刷用インクである。
【0037】
より好ましくは、本発明の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、UV-LEDラジカル硬化性インクジェット印刷用インク、すなわち、以下「UV-LEDランプ」と呼ぶ紫外線を発するLEDランプによる照射で、硬化膜を形成するインクである。
【0038】
良好な性質を有する印刷エレメントを製造するために、モノマー当たり多数の反応性官能基を使用することは当該技術分野で公知であるが、記述されたジアクリレートは、
i)良好な吐出性のためにある特定の臨界値以下の粘度を維持し、高品質の印刷エレメントを製造できるようにすること;
ii)蒸発が多いほど粘度は増加し、寿命中のプリントヘッドチャンバーにおけるインクの蒸発を制限すること
を可能にする。
【0039】
分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有する、記述されたジ(メタ)アクリレートモノマーによって、最終用途に不適切な、インク成分の沈澱を回避することができる。
【0040】
本明細書に記述されるラジカル硬化性インクは、約2wt%~約20wt%、好ましくは約4wt%~約15wt%、最も好ましくは約5wt%~約12wt%の、分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む。
【0041】
好ましくは、ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーは、分子当たり7個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0042】
より好ましくは、ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーは、分子当たり10個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0043】
好ましい実施形態では、前記ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーは、約300~約600g/モルに含まれる分子量を有する。
【0044】
本発明の文脈では、最良のラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーは、例示したジアクリレート(エトキシ化数10を有するPEGジアクリレート)である。このラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーは、ベース粘度をあまり増加させることなく、水の蒸発時に粘性化する(viscosize)能力をインクに与える。
【0045】
本明細書に記述されるラジカル硬化性インクは、約1wt%~約15wt%、好ましくは約2wt%~約12wt%、最も好ましくは約3wt%~約9wt%の、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物をさらに含む。
【0046】
本明細書に記述されるラジカル硬化性インクは、約1wt%~約5wt%、好ましくは約1.5wt%~約4.5wt%、最も好ましくは約2.2wt%~約3.8wt%の、式(I)
【化2】

(式中、XはNa又はLi、好ましくはNaである)の光開始剤をさらに含む。
【0047】
前記光開始剤によって、過剰な量の活性光線エネルギー(active ray energy)を使用する必要なく、本発明のインクを正しく硬化させることができる。
【0048】
好ましい実施形態では、式(I)の光開始剤は、BAPO-ONaである。
【化3】
【0049】
式(I)の光開始剤は、従来技術の光開始剤より低い濃度で本発明による組成物に組み込むことができ、その結果、移行ポテンシャル(migration potential)が低い光開始剤が用いられる場合であっても、未結合の光開始剤又は光開始剤分解物の移行に伴うリスクが低減される。
【0050】
空気中におけるインクジェット組成物のUV硬化に関連する固有の問題である、酸素阻害の影響を克服するのに役立つためには、通常、比較的高い濃度の光開始剤が必要とされるので、これは、UVインクジェット組成物にとって特に有利である。所望のUV硬化反応を達成するために、8%w/w以上の光開始剤ブレンドを含有することは、UVインクジェット組成物にはごく一般的である。
【0051】
特に、本発明による組成物で使用されるいずれの光開始剤も、好ましくは10ppb未満の移行を示す。
【0052】
所与の光開始剤の移行ポテンシャルは、EFSAガイドライン-FCM評価のガイダンスに関するメモ2008.08.07に説明される方法によって、測定される。
【0053】
所与の光開始剤の移行ポテンシャルは、60℃で測定される。
【0054】
本明細書に記述されるラジカル硬化性インクは、約0.1wt%~約2wt、%好ましくは約0.2wt%~約1.5wt%、最も好ましくは約0.2wt%~約1.2wt%の、N-[3-(ジメチルアミン)プロピル]メタクリルアミド及び/又はポリ(メチルヒドロシロキサン)からなる群から選択される1種又は複数種の共開始剤をさらに含む。
【0055】
N-[3-(ジメチルアミン)プロピル]メタクリルアミド及び/又はポリ(メチルヒドロシロキサン)からなる群から選択される共開始剤は、インクに十分な架橋度を付与し、次に硬化したインクに十分な耐水性を与える。
【0056】
本発明の一実施形態では、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、約1.0wt%~約15wt%、好ましくは約2wt%~約12wt%、最も好ましくは約3wt%~約10wt%の着色剤をさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである。本明細書に記述される前記着色剤は、顔料及び/又は染料を含む。
【0057】
本明細書に記述される着色インク配合物(すなわち、1種又は複数種の着色剤、すなわち1種又は複数種の顔料及び/又は染料を含む)は、様々なタイプの材料に画像及び/又は着色したテキストを印刷するために使用してもよく、印刷された支持体での経時的に優れた耐久性を保証する。
【0058】
染料としては、限定されるものではないが、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、それらの組み合わせ等が挙げられる。有機顔料は、例えば、ピグメントイエローナンバー12、13、14、17、74、83、114、126、127、174、188;ピグメントレッドナンバー2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、202、266、269;ピグメントオレンジナンバー5、16、34、36;ピグメントブルーナンバー15、15:3、15:4;ピグメントバイオレットナンバー3、23、27;及び/又はピグメントグリーンナンバー7などの、1つの顔料又は顔料の組み合わせであってもよい。無機顔料は、以下の非限定的な顔料:酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、酸化鉄ブラック、ピグメントブラックナンバー7並びに/又はピグメントホワイトナンバー6及び7のうちの1つであってもよい。他の有機及び無機の顔料及び染料、さらに所望の色を達成する組み合わせも、用いることができる。
【0059】
前記着色剤は、インクに組み込む前に、好ましくは1種若しくは複数のモノ(メタ)アクリレートモノマー及び/又は1種若しくは複数のジ(メタ)アクリレートモノマー及び/又は1種若しくは複数のトリ(メタ)アクリレートモノマーを含む混合物中に分散させる。
【0060】
代わりに、着色剤のない活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、画像及び/又はテキストを印刷するために使用してもよく、着色インク又は黒色インクによって印刷された画像又はテキストを保護するためにカバーとして任意選択で使用することができる。
【0061】
一実施形態では、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、約0.05wt%~約2wt%、好ましくは約0.1wt%~約1.8wt%、最も好ましくは約0.15wt%~約1.5wt%の非イオン性フッ素化界面活性剤をさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである。
【0062】
前記非イオン性フッ素化界面活性剤の添加は、インクの表面張力を低減し、それによって次にインクは印刷される基材表面で正しく広がることができる。
【0063】
好ましくは、非イオン性フッ素化界面活性剤は、非イオン性ポリマー性エトキシレートフッ素化界面活性剤及び/又は非イオン性ポリマー性アクリル系フッ素化界面活性剤である。
【0064】
より好ましくは、非イオン性フッ素化界面活性剤は、Hexafor672(MAFLON)及びHexafor644-D(MAFLON)を含む群から選択される。
【0065】
一実施形態では、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、約1wt%~約5wt%、好ましくは約1.5wt%~約4.5wt%、最も好ましくは約2.2wt%~約3.8wt%の、少なくとも80g/モルの分子量を有する1種又は複数種のラジカル硬化性オリゴマーをさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである。
【0066】
少なくとも80g/モルの分子量を有する前記ラジカル硬化性オリゴマーは、インクの硬化及び耐性を高める。
【0067】
好ましくは、少なくとも80g/モルの分子量を有する前記ラジカル硬化性オリゴマーは、トリ(メタ)アクリレートオリゴマー、テトラ(メタ)アクリレートオリゴマー、ヘキサ(メタ)アクリレートオリゴマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
より好ましくは、少なくとも80g/モルの分子量を有する前記ラジカル硬化性オリゴマーは、少なくとも80g/モルの分子量を有する1種又は複数種のヘキサ(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0069】
さらにより好ましい実施形態では、少なくとも80g/モルの分子量を有するラジカル硬化性オリゴマーは、Photomer Aqua 6903(IGM)である。
【0070】
一実施形態では、iii)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートモノマー、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルである4-ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートモノマー、より好ましくは4-ヒドロキシブチルモノ(メタ)アクリレートモノマーである。
【0071】
一実施形態では、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、約0.1wt%~約3wt%、好ましくは約0.15wt%~約2.25wt%、最も好ましくは約0.2wt%~約1.5wt%の第2の光開始剤をさらに含み、重量パーセントは活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである。
【0072】
第2の光開始剤の存在は、インクの硬化を高める。
【0073】
好ましくは、前記第2の光開始剤は、400g/モル未満の分子量を有する、1種又は複数種のチオキサントン化合物、好ましくは2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-クロロ-4-イソプロポキシチオキサントン及びそれらの混合物を含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである。
【0074】
より好ましくは、第2の光開始剤は、2-イソプロピルチオキサントンである。
【0075】
好ましくは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、25℃で約0.5~約10cポアズの範囲の粘度を有する。
【0076】
当業者は、流体の粘度を測定することができる方法に精通している。例として、こうした例に拘束されることは望まないが、RHEOLOGICA VISCOTECH-(RD312)を用い、製造者が示す指示に従ってインク粘度を測定してもよい。
【0077】
好ましくは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクは、25℃で測定して、約1~約9cポアズ、より好ましくは約2~8cポアズの範囲の粘度を有する。
【0078】
インクの粘度及び水の量は、寿命中の前記インクに、プリントヘッドの所望の信頼性を与え、これは、
インクの全シェルフライフ中に、プリントヘッドは著しいノズル故障を示さない、
プリントヘッドは、3分超えた印刷休止中でさえ、著しい「デキャップ障害」を有さない、
カード印刷、コーディング、マーキングなどの用途で通常必要な周波数において、プリントヘッドは適切に作動する
ことを意味する。
【0079】
配合物は、安定でありサーマルインクジェットプリントヘッドにより印刷可能であるためには、水溶性又は分散性原材料(モノマー、光開始剤、界面活性剤、共開始剤など)のみを含有しなければならない。
【0080】
本発明による組成物は、意図した目的を実行可能にする他の成分も含有してもよい。これらの成分としては、限定されるものではないが、安定剤、湿潤助剤、スリップ剤、アクリルポリマー、消泡剤、充填剤、レオロジー助剤、アミン相乗剤などの不活性樹脂が挙げられる。
【0081】
本明細書に記述されるラジカル硬化性インクは、基材の適切な濡れを保証し、インクの表面張力を低下させるために、1種又は複数種の追加の界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による組成物で使用されるいずれの成分も、好ましくは10ppb未満の移行を示す。
【0083】
所与の成分の移行ポテンシャルは、EFSAガイドライン-FCM評価のガイダンスに関するメモ2008.08.07に説明される方法によって、測定される。
【0084】
所与の成分の移行ポテンシャルは、60℃で測定される。
【0085】
本発明の別の態様は、上述の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクから作られた硬化インク層からなる印刷フィーチャーである。
【0086】
本発明は、基材及び上に列挙した1つ又は複数の印刷フィーチャーを含む、物品又は文書にも関する。
【0087】
基材の典型例としては、限定されないが、繊維系基材、好ましくは紙、紙含有材料などのセルロース系繊維に基づく基材、ポリマー系材料、複合材料(例えば、紙の層とポリマーフィルムのラミネーションによって得られる基材)、金属又は金属化材料(例えば、アルミニウム)、ケイ素、セラミック、ガラス、セラミックス及びそれらの組み合わせが挙げられる。ポリマー系基材の典型例は、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)などのエチレン又はプロピレン系ホモポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)並びにポリエチレンテレフタレート(PET)で作られた基材である。
【0088】
好ましくは、物品又は文書の基材は、紙含有材料、ポリマー系材料、複合材料、金属、ガラス、セラミック又はそれらの任意の組み合わせである。
【0089】
本発明の別の態様は、プリントヘッド基板;ノズル層を通って形成された複数のノズルを含む、ノズル層;複数のノズルに対応した複数のインク吐出チャンバー;プリントヘッド基板に形成され、複数のインク吐出チャンバーに対応する複数のヒーター抵抗器であって、それぞれのノズルを通るインク滴の吐出が、対応するインク吐出チャンバーに位置するヒーター抵抗器のうちの1つを加熱することによって引き起こされるように、それぞれのヒーター抵抗器はインク吐出チャンバーの異なる1つに位置する、ヒーター抵抗器;及び本発明による活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを含む、サーマルインクジェットプリントヘッドである。
【0090】
上述のプリントヘッド及び開発されたインクの化学的性質のおかげで、印刷可能な基材の数、印刷速度、印字可能領域の柔軟性及びシステムの信頼性という点で市場の要件にうまく適合することができる。
【0091】
さらに上述のように、記述したインク中に多量の水が存在し、溶媒系システムで典型的なノズルからの激しい蒸発を防ぐため、システムは本質的に高い信頼性を有する。
【0092】
システムの反応性は、インクの上述の化学的物理的性質、及び独自のプリントヘッドの特色とともに、市場の非常に厳しい印刷要件に応える完全なシステムを提供する。
【0093】
本発明は、サーマルインクジェット印刷プロセスによって基材上にフィーチャーを印刷する方法であって、
a)本発明による活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを、インク層を形成するようにサーマルインクジェット印刷によって適用するステップと、
b)インク層を少なくとも150mJ/cmの線量で活性エネルギー線に曝露して、活性エネルギー線源で前記インク層を硬化させるステップと
を含む、方法に関する。
【0094】
好ましくは、プロセスのステップa)は、上述のように列挙したサーマルインクジェットプリントヘッドを用いて実行される。
【0095】
好ましくは、ステップb)の活性エネルギー線源は、UV-LED源である。
【0096】
好ましくは、プロセスのステップb)は、インク層を約380nm~約420nmの1つ又は複数の波長に曝露することからなる。典型的には、市販のUV-LED源は、例えば365nm、385nm、395nm及び405nmなどの1つ又は複数の波長を使用する。
【0097】
好ましくは、プロセスの速度範囲は、約0~約60m/分に含まれる。
【0098】
速度範囲は室温で測定される。
【0099】
好ましくは、プロセスの乾燥時間範囲は、約0.02秒~約1秒、より好ましくは、約0.07秒~約0.44秒に含まれる。
【0100】
本発明の一実施形態では、印刷周波数は約7kHzより高い。好ましい実施形態では、印刷周波数は約8kHzより高い。より好ましくは、印刷周波数は約9kHzより高い。
【0101】
プロセスの一実施形態では、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクで作られたインク層は透明であり、前記インクは、印刷フィーチャー上の1つ又は複数のしるし(indicia)の形態で少なくとも部分的に適用される。
【0102】
本明細書に記述されるプロセスは、基材上の1つ又は複数の印刷フィーチャーを生成するのに特に好適であり、前記1つ又は複数の印刷フィーチャーは連続的又は不連続であってもよい。
【0103】
本発明のこれら及び他の目的、利点、及び特徴は、以下でより十分に記述する方法及び配合物の詳細を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【実施例
【0104】
本発明は、非限定的な実施例を参照して、これからより詳細に記述される。
【0105】
A.本発明によるインク
いくつかのインクを本発明の指示に従って配合した:これらのインクのE1~E5組成物を以下に開示する。
【表1】
【0106】
(インクの調製)
この作業に使用した化合物はすべて市販されており、さらに精製処理することなく受け入れたまま使用した。
【0107】
磁気撹拌棒を含むガラス容器に、原材料を以下の順序:モノマー、水;界面活性剤、共開始剤、光開始剤、染料/顔料で、室温にて導入した。その後、そのように得られた混合物を、45~60分間室温で撹拌した。次いで溶液をろ過し、ろ液を真空度条件下でプリントヘッドの内部に導入した。ろ過は、0.3~3.0μmの孔径を有するVersaporeろ過器を使用して実行した。そのように得たインクは、インク装置(Xynertech半自動式充填システム)によってプリントヘッドに導入した。
【0108】
着色インクは、同じプロセスを使用して、以下の組成で同様に調製した。
【表2】
【0109】
B.比較インク
本発明のインクが、印刷されUV架橋された際に、溶媒系UVインクと同じ化学的、機械的及び技術的性能に少なくとも到達したか否かを評価するために、本発明のインクを、従来技術によって調製した以下のインクと比較した。
【表3】
【0110】
C.比較
市場要件に適合すると予想される必要条件を示すいくつかの基準について、インクを試験した。なかでも:
硬化プロセスの後に、到達した網状化度は高くなければならない。
インクの適切な吐出性を確実にするために、粘度は十分低くなければならない。
UV水性インク配合物は、膨大な数の印刷可能な材料への高い接着性をポリマーに与えるために研究された、成分を含有する。
UV水性インクの機械的耐久性も必須であり;印刷表面でのそれらの接着性能を評価するために、試験を実行した。
【表4】
【0111】
(印刷試験)
印刷試験中に使用するプリントヘッドタイプは、シングルインクプリントヘッド及び複数インクのプリントヘッドであった。印刷試験は、CardプリンターFARGO INK1000及びNeopostプリンターシステムを使用して行った。硬化は、(「動的」印刷試験、着色インクには)市販のUVランプPhosen FJ100(16W)を用いて、距離4mm、発光波長395nm、窓寸法2×7.5cm及びベルト速度60m/分で実行し、(「静的」印刷試験、透明インクには)内部で開発したUVランプによって実行した。照射によって与えられるエネルギー値は、UV-Design放射計UV-MC Microprocessor Integratorによって測定した。印刷及び照射後の配合物の架橋度は、Nicolet分光計FT-IR Nexusを使用したFTIR測定によって決定した。
【0112】
一般的な実験手順(「動的」印刷試験):
所望の配合物を含有するシングルインクプリントヘッドを、Neopostプリンターシステムに導入する。基材は、速度を調節できるコンベヤーベルトの一番上に配置する。基材は、プリントヘッドステーション(ここで印刷が行われる)及びUVランプ(ここで照射される)に到達する。最後に、印刷されたメディアは回収される。
【0113】
一般的な実験手順(「静的」印刷試験):
所望の配合物を含有する複数インクのプリントヘッドを、CardプリンターFARGO INK1000に導入する。カードを機械に装填し、所望の温度に温める。次いで、カードに印刷し、UVランプによって「静的」に照射する。照射処理の後、カードはプリンターから排出される。
【0114】
(架橋測定プロセス)
FTIR分光分析によって測定される、材料の変換度の評価。
【0115】
FTIR機器によって、典型的なモノマーシグナルが測定される。モノマーの反応は、UVエネルギー線量の関数として消失するアクリレート官能基に関連する、赤外線振動ピークを観察することによってモニタリングされる。
【0116】
(耐薬品性試験プロセス)
耐薬品性評価は、試料を水中に24時間浸漬することによって実行する。印刷インクが不変であれば、試験はOKである。浸漬の後、硬化インクが除去された場合、耐水性はOKである。硬化インクが水によって除去されないが、ともかく変更された場合、インクは不完全な耐水性を有すると見なされる。
【0117】
(粘度法プロセス)
インク粘度は、測定中のインクの正確な温度(25℃)を維持するための恒温槽を装備した、RHEOLOGICA VISCOTECH-(RD312)ツールを用いて測定する。
【0118】
粘度測定は、以下に報告するように実行した:
0.925mlのインク体積を、目盛り付きピペットを用いて、気泡が生じないように注意しながら温度制御された板の上に堆積させる
ソフトウェアを介して測定を開始:粘度計のヘッドが下がり、回転プレートがサーモスタット付きベースとの結合に到達すると、プレートは数秒間回転し始める
インクのクリープ抵抗測定、又は粘度が、mPa*s(Cポアズと同じ)で表現される。
【0119】
(表面張力法プロセス)
インクの表面張力は、測定中のインクの希望温度を維持ための恒温槽を装備した、KRUSS K12-(RD337)TENSIOMETERツールを用いて測定する。
【0120】
表面張力測定は、以下に報告するように行う:
37%塩酸次いで脱イオン水で白金プレートを洗浄する、
ブンゼン火炎を使用して、白金プレートを加熱する、
ガラスカップの3分の2までインクを充填する、
ガラスカップを適切なスロットに挿入し、インクの自動調温(thermostating)を可能にする
(適切なノブで)ガラスカップを白金プレートに十分に近づけて、インク表面がプレートの下限をかすめるようにする、
機器によって測定を開始する、
表面張力測定がツールディスプレイに報じられ、ダイン/cmで表現される。
【0121】
(テーバー試験)
テーバー試験の結果は、試験した各インクの停止点に到達するまでに必要な摩耗サイクルの数を指す。初期光学濃度測定の50%減少で、停止点に到達する(ANSI INCITS322-2008、カード耐久性試験方法)。
【0122】
試料調製:試料は、温度70℃、印刷モード16層(スマートシングリング印刷モード)でPVCカードを印刷し、印刷中にUV照射することによって調製される。
【0123】
摩擦試験及び耐摩耗性は、それぞれ着色インク及びクリアインクで行われる。クロックメーターツールは耐摩擦性を評価するために使用される:アルミニウムシート上の硬化されたインクを、1片の綿布地で、(腕に重さを加えることなく)100回こする。評価は比色座標の変化を測定して行われ、ΔE値によって表現される。
【0124】
表面に堆積した厚さは、所望の耐摩耗性に応じて1~50μmにすることができ、機械的プロフィルメーター(TENCOR)又は光学顕微鏡で測定することができる。
【0125】
D.着色インク
本発明の着色インク(E6~E8)を調製し、硬化能力を評価するために試験を実施した。
【0126】
3つの着色インクに70%以上の変換度を与えるために必要な最小のエネルギー線量は、少なくとも50mJ/cmである。
【0127】
追加の性質を、以下の表に報告する:
【表5】
【0128】
(スマッジ試験)
スマッジ試験の結果は、クロックメーターツールのアーム上で、500gの重量で100回こすった後の試料の比色変化を指し、ΔE値によって表現される。
【0129】
試料調製:試料は、印刷モード4層、70℃で、より多いインク量(スマートシングリングモードより18重量%多い)を使用し、印刷後にUVランプ下で4回通過させて調製される。
【0130】
E.追加試験
本発明によるインクと従来技術のものの比較を完結されるために、追加試験を行った。
【0131】
(他のホスフィンオキシド)
C5~C6はE3に基づくが、例外としてLFC3587の代わりにIRGACURE(登録商標)819(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)を使用した。正確な組成を、以下に示す。
【表6】
【0132】
次いで、E3をこれらのC5及びC6のインクに対して、UV光の下での架橋能力によって試験した。
【0133】
得られた比較インクは、非常に不十分な硬化性能を示した。
【表7】
【0134】
LFC3587の代わりにフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウムを使用して、試験を繰り返した。
【0135】
フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(「LAP」)は、以下の式を有する:
【化4】
【0136】
【表8】
【0137】
比較インクのUV照射後の架橋度は、全く満足できるものではない。インクを光架橋するのに使用されるUVエネルギー量が高い(1000mJ/cm)にもかかわらず、アクリレート官能基の変換度は50%未満である。
【0138】
(特許請求された共開始剤の代わりにトリエタノールアミン)
本発明の水性配合物におけるトリエタノールアミンの性能を評価するために、新しいインク(C8)を調製した。このインクはE5に類似しているが、ポリメチルヒドロシロキサン(E5で同じ割合で使用)の代わりにトリエタノールアミンを含有している。
【表9】
【0139】
(他のチオキサントン)
1.0wt%Omnirad ITXの代わりに、0.5wt%のOmnipol TX(ポリマー性チオキサントン光開始剤)を使用する以外は、E6~E8と類似したインクを使用した。得られた比較インクは、非常に不十分な硬化性能を示した。
【0140】
(エチレンオキシド基の数が5より少ないアクリレート)
5より小さいn値を有するジアクリレートを使用する可能性を評価するために、MW=258g/モル(n=3)を有するジアクリレートを含有する、3つの着色インクを調製した。
【表10】
【0141】
インクをガラスジャーの中へ入れて室温で2日間保管した後、成分が沈澱していないかチェックした。沈澱は、C9(シアン)では特によく目視可能、C10(マゼンタ)C10ではかなりよく目視可能、C11(イエロー)ではわずかに目視可能である。沈澱は、透明な配合物C12でも起こる。
【0142】
(移行試験実験)
移行実験の目的は、欧州規格に従って、分子ITX(分子量の観点から低分子でである)が印刷基材を通して移行しないかどうか評価することである。
【0143】
ITX分子は、タイプII光開始剤に典型的な化学的挙動のため、UV照射後に光開裂したりポリマー性高分子(polymeric macromolecule)へ化学結合することなく分子構造を維持し、硬化層の外へ移行しやすくなる。
【0144】
このため、ITXの移行値を評価するために組成が深く研究されてきた。
【0145】
これらの基材の移行は、硬化試料を、模擬流体としての95%エタノール及び10%エタノールと接して60℃で10日間保管した後、セットオフ条件で評価した。
【0146】
実験は、EFSAガイドライン(EFSAガイドライン-FCM評価のガイダンスに関するメモ2008.08.07)に従って実行される。
【0147】
(分析方法)
この分析方法では、U-HPLC技術を使用することにより、模擬流体での確認と定量化をすることができる。
【0148】
検出限界は、模擬流体中に検出された光開始剤の全検出量であり、ppbで表現される。Omnirad ITXの検出限界は10ppbである。
【0149】
以下は、UVランプPhoseon FJ-100を使用して調製された印刷基材である:
【表11】
【0150】
(移行試験条件)
光開始剤の特異的な移行は、間接接触(セットオフ)で測定する。間接接触での試験のために、各硬化試料の表面を印刷されていない基材上に、20kg(196N)で、室温で10日間押しつける。
【0151】
セットオフの後、基材を以下の寸法で切断した。
全表面=2.54cm×2.54cm=6.45cm
【0152】
各試料は、異なる被覆箔からカッターで切断される。
【0153】
表面/体積の比:0.6cm/ml(0.5~2である表面/体積の比を要求するEFSAガイドラインによる)。
【0154】
各試料は、10mlを正確に測定した模擬流体:エタノール95%及びエタノール10%と接して、バイアル(20ml)に入れられる。
【0155】
試料を完全に覆い、水恒温槽中に60℃で10日間、暗条件で保管した。
【0156】
各バイアルは模擬流体の蒸発を回避するためにしっかりと閉じられ、適切にラベルが貼られている。
【0157】
保管の後、各バイアルは室温で冷却され、ろ過後の模擬流体は、清浄なバイアル(20ml)へ移される。
【0158】
さらに、標準基材(印刷されていない)は同じ条件で模擬流体に接したままにし、ブランク溶液を得る。
【0159】
すべての移行試験は2回繰り返して行う。
【0160】
模擬流体の各試料は、UVダイオードアレー及びMSシングルクワッド検出器を備えるUHPLCによって分析される。
【0161】
結果は、模擬流体のppbとして表現される。
【0162】
各試料の分析は3回繰り返して行う。
【0163】
(ブランク試料の結果)
試料の識別とともに、分析結果(3つの試料の平均値)の要約を以下の表12に報告する。結果は、両方の模擬流体のppb含有量で表現される。
【表12】

【表13】

【表14】
【0164】
結論として、ITXが10ppbの許容限度未満の移行値を有することが見出された。
【0165】
さらに、LFC3587は、使用した分析機器の検出限界より高い値では検出されていない。これは、このタイプI光開始剤の化学的挙動のため、より予測可能であり、タイプI光開始剤はUVが照射されると光開裂を起こし、開始剤である化学的副生成物は、高分子に化学的に結合したままである。
【0166】
例示的な黒色インク配合物(E3及びE5)は、それらが欧州規格による移行試験に合格しているので、いずれも、製薬及びコーディング/マーキングの用途、並びに食品及び飲料分野に好適である。
【0167】
硬化インクは耐湿性も示し、-15℃及び4℃で保管した後、並びにこれらの2つの温度と室温の間の熱サイクルの後でも印刷画像が判読可能である。
【0168】
硬化インクは、3年間の直射日光曝露に相当する、高い耐光性(キセノンランプを備える陽光試験機器XXL+を用いて実行された戸外試験)も示した。
【0169】
陽光試験方法:
反射濃度計(ANSI STATUS I):GretagMacbeth DensyEye700を用いて、試料の光学濃度を測定する。
窓フィルターなしで試料をキセノンランプに12日間曝露する(照明強度:340nmのカード表面で0.35ワット/m、試験室温度:50℃±5℃)。最終光学濃度測定:最終評価は、光学濃度のパーセント損失を測定して行われる。屋外曝露最終評価は、以下の範囲の光学濃度の%損失を考慮して行われる。
【表15】
【0170】
着色インクの陽光試験結果はすべて良好であり、ODの損失%は15%以下である。
【0171】
黒インクの陽光試験結果も良好であり、ODの損失%は0%~10%である。
【0172】
前に示した試験を考慮すると、ランプで硬化された開発配合物が以下の要件:
高い架橋密度、
高い変換度(共有結合形成の%)、
印刷表面(紙、プラスチック、金属)への高い接着性、
水及びエタノールへの高い耐薬品性、
高い耐摩擦性及び耐摩耗性、
高い陽光試験耐性
を保証することは、当業者には容易に明らかであろう。
【0173】
従って、開発された配合物は、溶媒系UVインクの性能に到達する。
【0174】
例示的な配合物(黒色及び着色)は上述の要件を満たし、特に黒インク配合物は、食品及び飲料用途とも適合性がある。
【0175】
F.本発明によるプリントヘッド
本発明は、上で記述したインクとともに使用するように構成された、プリントヘッドカートリッジにも関する。図1Aに示すこうしたプリントヘッドカートリッジは、フレキシブルプリント回路3に結合されたプリントヘッドチップ2によって構成される、プリントヘッド吐出アセンブリ1で作られている。このチップは、様々な噴出部位へインクを向け、要求に応じてエネルギーを与え、印刷用のインク小滴を生成するための、電気コンポーネント及び油圧コンポーネントを収容している。ノズルプレートはチップの上面に付けられ、インク吐出用のノズルを提供する。次に吐出アセンブリ全体は、蓋5によって閉じられたインクリザーバを含むカートリッジ4に結合される。好適なインクスロット6は図1Bに示されるカートリッジ本体7に設けられ、これによりインクはプリントヘッドチップに到達し、プリントヘッドのレイアウトに応じて、チップに機械加工されたスロット8を通って又はチップの端から、マイクロ流体回路に到達できるようになる。
【0176】
図2Aに示す複数インクのプリントヘッドカートリッジには、当然複数のインクリザーバ及びプリントヘッドに向けた複数のインクパスがある。インクが混合するのを防ぐために、それらは油圧で互いに隔離されている。カートリッジは様々な部品及び材料を集めて作られるので、部品間の接合部は、良好な結合だけでなく、インクと接している領域での完全で永続的なインクのシールを確実にしなければならない。様々な材料を接着する多くの方法があり:結合領域に正確に分配することができれば、好適な接着剤の使用は多くの利点を有する。例えば、本体の流れパス6のまわりの平面上に好適な接着剤を分配して、確実にチップと結合させ、さらにチップのスロット8の下面まわりを良好にシールすることもできる。こうした方法で、インクは混合又は漏出することなく、リザーバからチップに向けて流れることができる。
【0177】
さらに、複数インクのプリントヘッドのカートリッジ本体は、特殊な製造工程を必要とし:例えば、並列のノズル配列を備える3個のインクカートリッジでは、鋳造技術によって単一の成形工程で一度に部品を得ることはできず:より詳細には、図2Bで示すように、カートリッジ本体7は3つのインクリザーバ9を有し、壁10で分割されている。異なる色ノズル配列の間の横方向の距離が小さいため、必要な油圧特性及び好適な構造の頑健性を維持しながら、3つの別個の直線的インクパスを製造することは不可能である。可能性のある解決策は、(欧州特許第189622号に記述されているように)2つの追加の並列スライドインサートを使用して、カートリッジ本体の内部に所望の流体構造を生成することである。鋳造工程が完了すると、2つのスライドインサートを抜き取ることによって、カートリッジの側面12に2つの窓11が残り:これらの窓は、簡便にカートリッジに結合された好適なプラグ13により閉じられなければならない。図の下向き垂直軸yは、プリントヘッドのインク吐出方向に一致する。プラグを結合するための可能性のある方法は、窓の境界の平坦でくぼんだ表面14に沿って分配された、接着剤を使用することである。これによって、インクをリザーバから漏れさせることなく、開口部は確実にきつくシールされる。プラグの前面フランジ及び対応するカートリッジ本体のくぼみのために、UV硬化性接着剤はシールする目的には適切ではない。接着剤は紫外線によって効率的に照らされず、重合度は不十分であり、結合性能及びシール性は低い。
【0178】
電気制御に関しては、プリントヘッドはC-MOSテクノロジーによって制御されている。このテクノロジーは従来から使用されているテクノロジーより高価であるが、より強力である。特定のツールは、プリントヘッドの論理制御(logic control)に改善を与え、エネルギーを大幅に節約しながら操縦することができる。C-MOSテクノロジーは大幅な設計の自由度を可能にし、チップ上でのより複雑な電子集積を可能にし、空間及びエネルギー消費量を低減する。
【0179】
現代は、システムの反応性、インクの上述の化学的-物理的性質、及び独自のプリントヘッドの特色のおかげで、完全なシステムは非常に厳しい印刷要件に応えている。
【0180】
いずれにせよ、他の実施形態が存在する可能性があるので、本発明は、この文書に具体的に記述された実施形態に限定することはできず、限定すべきではない。本発明は、任意の等価な手段及び技術的に動作する手段の組み合わせに広げられる。
図1A
図1B
図2A
図2B
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも55wt%の水
ii)2wt%~20wt%の、分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートであるラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマー;
iii)1wt%~15wt%の、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物;
iv)1wt%~5wt%の式(I):
【化1】

(式中、XはNa又はLi、好ましくはNaである)の光開始剤
)0.1wt%~2wt%の、N-[3-(ジメチルアミン)プロピル]メタクリルアミド及び/又はポリ(メチルヒドロシロキサン)からなる群から選択される1種又は複数種の共開始剤;
を含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項2】
分子当たり5個以上のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである前記ラジカル硬化性ジ(メタ)アクリレートモノマーが、300~600g/モルに含まれる分子量を有する、請求項1に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項3】
.0wt%~15wt%の着色剤をさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項4】
.05wt%~2wt%の、非イオン性フッ素化界面活性剤、好ましくは非イオン性ポリマー性エトキシレートフッ素化界面活性剤及び/又は非イオン性ポリマー性アクリルフッ素化界面活性剤をさらに含み、重量パーセントは、活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項5】
iii)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルであるヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートモノマー、好ましくはアルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル又はイソブチルである4-ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートモノマー、より好ましくは4-ヒドロキシブチルモノ(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項6】
.1wt%~3wt%の第2の光開始剤をさらに含み、重量パーセントは活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクの全重量に対するものであり、前記第2の光開始剤は400g/モル未満の分子量を有する1種又は複数種のチオキサントン化合物、好ましくは2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-クロロ-4-イソプロポキシチオキサントン及びそれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項7】
25℃で0.5~10cポアズの範囲の粘度を有する、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インク。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクから作られた硬化インク層からなる印刷フィーチャー。
【請求項9】
基材及び請求項8に記載の1つ又は複数の印刷フィーチャーを含む、物品又は文書。
【請求項10】
前記基材が、紙含有材料、ポリマー系材料、複合材料、金属、ガラス、セラミック又はそれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載の物品又は文書。
【請求項11】
プリントヘッド基板;ノズル層を通って形成された複数のノズルを含む、ノズル層;複数のノズルに対応した複数のインク吐出チャンバー;プリントヘッド基板に形成され、複数のインク吐出チャンバーに対応する複数のヒーター抵抗器であって、それぞれのノズルを通るインク滴の吐出が、対応するインク吐出チャンバーに位置するヒーター抵抗器のうちの1つを加熱することによって引き起こされるように、それぞれのヒーター抵抗器はインク吐出チャンバーの異なる1つに位置する、ヒーター抵抗器;及び請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを含む、サーマルインクジェットプリントヘッド。
【請求項12】
サーマルインクジェット印刷プロセスによって基材上にフィーチャーを印刷する方法であって、
a)請求項1又は2に記載の活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクを、インク層を形成するようにサーマルインクジェット印刷によって適用するステップと、
b)前記インク層を少なくとも150mJ/cmの線量で活性エネルギー線に曝露して、活性エネルギー線源で前記インク層を硬化させるステップと
を含む方法。
【請求項13】
ステップa)が、請求項11に記載のサーマルインクジェットプリントヘッドを用いて実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)が、前記インク層を380nm~420nmの1つ又は複数の波長に曝露することからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
活性エネルギー線ラジカル硬化性インクジェット印刷用インクで作られた前記インク層が透明であり、前記インクが、印刷フィーチャー上の1つ又は複数のしるしの形態で少なくとも部分的に適用される、請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】