(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】高含有量の天然起源の成分を有する水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20240705BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240705BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240705BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240705BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240705BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/73
A61Q1/00
A61K8/39
A61K8/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577555
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2022051442
(87)【国際公開番号】W WO2023002123
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175600
【氏名又は名称】ラボラトワール クラランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー・フーコー
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・ベルナドゥ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC842
4C083AC902
4C083AD191
4C083AD221
4C083AD302
4C083AD352
4C083BB41
4C083BB44
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
本発明は、水性相中に分散された少なくとも1つの脂肪相を含む水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物であって、a)少なくとも1種の糖脂肪酸エステルと、 b)少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、c)少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルと、d)少なくとも1種のキサンタンガムと、e)少なくとも1種のゲランガムと、を含む、組成物に関する。本発明はまた、美容スキンケアのための、特に、皮膚の保湿、保護、処置及び/又は皮膚老化の徴候の低減のための、上記組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性相中に分散された少なくとも1つの脂肪相を含む水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
a)少なくとも1種の糖脂肪酸エステルと、
b)少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、
c)少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルと、
d)少なくとも1種のキサンタンガムと、
e)少なくとも1種のゲランガムと、
を含む、化粧品組成物。
【請求項2】
前記糖脂肪酸エステルが、ヤシ脂肪酸スクロースである、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
前記ソルビタン脂肪酸エステルが、ステアリン酸ソルビタンである、請求項1又は2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
少なくとも2種のポリグリセロール脂肪酸エステルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルが、6グリセロール単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルが、ステアリン酸ポリグリセリル-6、ベヘン酸ポリグリセリル-6、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
ポリグリセロール脂肪酸エステルの質量含有率が、化粧品組成物の総質量に対して、少なくとも0.5%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
キサンタンガム及びゲランガムの質量含有率の合計が、化粧品組成物の総質量に対して、少なくとも0.3%、好ましくは、少なくとも0.5%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
植物起源のバターを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記脂肪相が、脂肪アルコールから選択される少なくとも1種の脂肪相増粘剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
シリコーン化合物を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項12】
水性合成増粘剤を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
美容スキンケアのための、好ましくは、皮膚の保湿、保護、処置及び/又は皮膚老化の徴候の低減のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含有量の天然起源の成分を有する水中油型(Oil-in-Water、O/W)エマルジョンタイプの化粧品組成物であって、特にスキンケア専用の組成物、例えば、皮膚老化の徴候を保湿、処置及び/又は低減するための組成物の分野に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明による化粧品組成物の皮膚への適用を含む非治療用美容ケア方法、及び皮膚ケアのための本化粧品組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
スキンケア化粧品組成物は、長年にわたって発展しており、例えば、皮膚の外観を保湿し、処置し、改善し、及び/又は皮膚老化の徴候を低減するために、消費者からの非常に強い要求が存在し続けている。
【0004】
消費者によるそれらの使用中に様々な質感及び/又は快適さを提供するために、様々な医薬品種が市販されている。それらは、例えば、所与の用途に望まれる質感、流動性、又は粘度に応じて、油、クリーム、香膏、マスク、ゲル、ワックス、又はセラムの形態であってもよい。水中油型エマルジョン(又は「局所」エマルジョン)の形態の組成物は、油中水型エマルジョンよりも良好な感覚的特性、例えば、適用時に、より軽く、より油性でなく、より粘着性でなく、より新鮮な感覚などを提供するので、化粧品の分野においてより特に評判がよい。これらのエマルジョンは、乳化剤又は界面活性剤を使用して安定化され、例えば、香膏などのいくつかの濃厚な質感は、水性相ゲル化剤又は増粘剤の添加を必要とする。
【0005】
今日、これまで以上に、より環境に優しい成分を有する組成物が消費者の関心の中心にあり、消費者はまた、ますます情報に強くなり、要求が厳しくなっている。したがって、天然及び/又はエコデザインされた製品、すなわち、その設計及び開発が環境への影響(原料及びそれらの製造プロセス、天然成分の持続可能な管理、製品の物流及び流通、包装、生分解性等)を考慮に入れている製品に対する需要が強い。より具体的には、消費者は、高含有量の天然成分及び/又は天然起源を有する化粧品を求めている。
【0006】
規制はまた、製品中の天然起源の成分の程度をより良好に定量化するために、これらの方針に沿って展開してきた。特に、それらの開発及び製造された成分の天然起源の程度を決定するために、製造業者は、生物学的成分及び/又は天然起源の成分の様々なカテゴリを定義し、それらの最終原材料中の天然起源の成分の割合を計算するためのガイドライン及び化粧品成分への天然起源指数の割り当てを提供する、NF ISO16128規格を使用している。
【0007】
更に、任意のその他の従来の化粧品組成物と同様に、エコデザイン及び/又は天然化粧品組成物もまた、性能及び使用基準(均質性、安定性、適用性、安全性、保存性)を満たさなければならない。
【0008】
同時に、消費者は、製品の感覚的品質及び性能に関して、非常に要求が厳しい。特に、それらは、軽く、手触りが心地よく、良好な感覚的特性を有する質感、例えば、皮膚に容易に適用される、柔らかく、脂っぽくなく、べたつかない感触を有する質感を、常に求めている。
【0009】
しかしながら、天然起源の成分の使用は、化粧品の感覚性だけでなく、その安定性及びその均質性にも著しい影響を及ぼす。例えば、天然成分の有意な含有量及び/又は天然起源の有意な含有量を有する配合物は、「ペースト状」として知覚される物理的形態を有する場合が多いが、これは、適用に対する障害を構成する場合がある。
【0010】
脂肪アルコールなどの特定の天然乳化剤は、適用時に石鹸作用(又は適用時にホワイトニング効果)を生じるという欠点を有する。この問題を克服するために、配合物中にシリコーンを導入して、エマルジョンの適用時の石鹸作用を排除することが周知である。しかし、これらのシリコーン材料は天然起源ではなく、これは環境に影響を及ぼす。
【0011】
天然ゲル化剤に関しては、それらは、合成ゲル化剤とは異なり、低い割合ではあまり有効でないゲル化力及び/又は乳化安定化力を有する。より高い割合の天然ゲル化剤の使用によって、安定性の促進が可能になるが、感覚性に対して悪影響を有し、一般的に、粘着性、水っぽい、及び/又は流れやすい作用を有する。更に、天然ゲル化剤は、適用された場合にパイルを形成する製品をもたらすという欠点を伴う。
【0012】
更に、所望の用量に応じて、バター、脂肪アルコール又は脂肪酸グリセリドなどの(天然起源の)親油性成分もまた、製品に粘稠性を提供するために必要である。しかしながら、合成ゲル化剤が存在しない場合、これらの成分は、制御不能に結晶化する傾向があり、質感において、目に見える粒を作り出す。したがって、更なる問題は、これらの結晶化現象の制御である。
【0013】
したがって、高含有量の天然起源の成分を含み、かつ安定性及び/又は感覚的特性に関して満足のいく性能を有する化粧品エマルジョンを製剤化するには、技術的困難が多い。
【0014】
天然性の高い組成物が知られている。例えば、国際公開第2020/254420号に記載されている組成物を挙げることができる。しかし、これらの組成物は、合成ゲル化剤を使用して、十分な安定性、粘稠性及び感覚性を得ることによって困難性を回避している。しかし、特に水路及び海洋において蓄積及び存続する合成ポリマーに関連する汚染は、我々の時代の主要な課題のままである。
【0015】
したがって、天然成分の高含有量及び/又は天然起源成分の高含有量を有し、特に合成ポリマーを含まない化粧品組成物を配合することが、常に必要とされている。
【0016】
特に、より多くの消費者によって望まれる基準である、例えば、少なくとも95%の天然起源の成分を含む、高程度の自然性を有する、特にスキンケアのための化粧品組成物が必要とされている。
【0017】
また、高含有量の天然起源の成分(化粧製品の全体的な自然性割合)を含み、かつ感覚性(皮膚への適用の容易さ、抵抗感なし、非粘着性、非ピリング性、非石鹸性、皮膚への油脂感なし又は厚膜感なし、心地よく柔軟な感触等)に関して満足のいく性能を有する、十分な粘稠性の化粧品エマルジョンを配合する必要がある。
同時に、(エマルジョンの放出、結晶化、又は破壊がない)経時的に良好な安定性及び均一性を有する化粧品組成物、特にエンドユーザが開封してから数か月にわたる製品の貯蔵期間を通して安定である化粧品組成物が必要とされている。
【0018】
本出願人は、驚くべきことに、また、予期せぬことに、これらの問題の全てが、本発明による組成物によって解決され得ることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
一態様によれば、本発明は、水性相中に分散された少なくとも1つの脂肪相を含む、水中油型エマルジョンの形態の化粧品組成物であって、
a)少なくとも1種の糖脂肪酸エステルと、
b)少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、
c)少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルと、
d)少なくとも1種のキサンタンガムと、
e)少なくとも1種のゲランガムと、
を含む、化粧品組成物に関する。
【0021】
実際、多くの調査研究の後、本発明者らは、十分な粘稠性を有し、天然起源の成分の含有量が高く、石油化学起源の成分から構成されるエマルジョンの感覚的特性及び物理的安定性/化学的安定性をも有する、水中油型エマルジョンの形態の組成物を提供することが可能であることを実証した。換言すれば、本発明者らは、高程度の天然起源のエマルジョンの利点、低い環境的影響(生態毒性、生分解性)の利点、並びに石油化学成分から構成されるエマルジョンの感覚的品質及び安定性性能の利点を組み合わせることが可能である組成物を、開発した。
【0022】
特に、本発明による組成物は、驚くべきことに、魅力的な外観(滑らかで塊にならない)、十分な粘稠性、及び同時に軽い質感、「ペースト状」ではない、皮膚への適用の容易さ(硬性ではない)、非粘着性、適用時にほとんど存在しない「石鹸」作用、並びに低い許容可能な「ピリング」作用などの所望の特性の全てを兼ね備えている。本発明による組合せは、特に、組成物を、例えば、クリームの質感、又は香膏の質感の形態で瓶に詰めるのに十分な粘度を得ることを可能にする。
【0023】
更に、本発明による組合せによって、実施例において実証されるように、経時的に非常に良好な安定性を有する組成物を得ることが可能になる。
【0024】
有利には、本発明による組成物は、少なくとも95%の天然起源の成分、好ましくは、少なくとも99%の天然起源の成分を含有する。ここで、天然起源の成分の割合は、NF ISO16128規格の原理に従って計算される。驚くべきことに、本発明者らによって実証された成分の特定の組合せによって、石油化学起源の成分を用いて得られた組成物の感覚的特性及び安定性を維持しながら、非常に高程度の天然起源を有する組成物を得ることが可能になる。
【0025】
有利には、本発明による組成物は、合成系又は石油化学系であるシリコーン化合物及び/又はゲル化剤を含まない。実際、本発明は、このような化合物の添加を必要とせずに、安定かつ感覚的な水中油型エマルジョンを提供するという利点を有する。
【0026】
本発明による組成物は、皮膚、特に、健康な皮膚への局所適用に好適である。本組成物は、特に、皮膚のための美容ケア及び/又はメイクアップのために使用され得る。例えば、それは、例えば、皮膚を保湿し、保護し、処置する、及び/又は皮膚老化の徴候を低減するために、皮膚のための美容ケア製品として使用され得る。それは、例えば、顔、目の輪郭、手、又は身体のために使用されてもよい。
【0027】
したがって、本発明は、好ましくは、皮膚を保湿し、保護し、処置する、及び/又は皮膚老化の徴候を低減するための、美容ケア製品としての、上で定義された化粧品組成物の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用される一般的な用語を、以下に定義する。
【0029】
「少なくとも1つ(at least one)」という表現は、「1つ以上(one or more)」という表現と同等である。
【0030】
「含む(comprising)」という表現は、「からなる(consisting of)」という表現を包含する。
【0031】
「から(from...to...)」という表現は、包括的なものとして理解されなければならない。
【0032】
本発明の目的のために、「化粧品組成物(cosmetic composition)」という用語は、外用局所適用に好適な組成物を指す。化粧品組成物は、皮膚(身体、顔、目の輪郭、まぶた)と適合性のある支持体である、化粧品として許容される支持体を含む。化粧品組成物は、ケア製品及び/又はメイクアップ製品、好ましくは、スキンケア製品であってもよい。
【0033】
「水中油型エマルジョン(Oil-in-water emulsion)」(O/Wと表される)は、肉眼で巨視的に均質な混合物が観察されるように、不連続脂肪相が特に液滴の形態で分散されている連続水性相からなる組成物を意味する。
【0034】
本発明の目的のために、「乳化剤(emulsifier)」とは、エマルジョンの動的安定性を増加させることが可能な、任意の化合物又は化合物の混合物を意味する。本発明の意味の範囲内で、本用語は、両親媒性化合物、すなわち、親水性(極性)部分及び親油性(無極性)部分の両方を有する化合物を示す。
【0035】
本発明の目的のために、「天然(natural)」成分とは、天然に存在する(植物、動物、微生物又は鉱物から得られる)、形質転換されていない、又は物理的プロセスのみから得られる成分(又は物質)を指す。例えば、本成分は、機械的手段又は重力手段によって、水への溶解によって、浸軟によって、水抽出によって、蒸留によって、粉砕によって、圧力によって、浮選によって、沈降によって、濾過によって等、抽出及び/又は処理され得る。規格NF ISO16128に従って決定される天然成分の天然起源指数は、1(天然起源の成分100%)である。天然成分として、例えば、水、使用される溶媒が天然である植物抽出物(水又はその他の天然溶媒)、植物又は種子の一部、植物油、ミネラル成分等が挙げられてもよい。
【0036】
本発明の目的のために、「天然誘導体成分(natural derivative ingredient)」という用語は、小振幅及び限られた数の化学変換を受けた、化学的に抽出及び/又は処理された天然成分を指す。これらの変換及び化学的プロセスは、(石油誘導体を含む石油化学プロセスとは対照的に)グリーンケミストリーの原理に従って実行され得る、例えば、規格NF ISO16128に列挙されている。NF ISO16128規格に従って計算された「誘導天然(derived natural)」成分の天然起源指数は、0.5超である(すなわち、天然起源の分子質量の50%超の割合を含有する)。
【0037】
「天然起源の(of natural origin)」成分という用語は、本明細書では、上で定義された「天然(natural)」成分及び「誘導天然(derived natural)」成分を包含する。NF ISO16128規格に従って計算される、天然起源の成分の天然起源指数は、0.5超、1以下である。対照的に、合成であるか又は主に化石燃料に由来する成分は、0の天然起源指数を有する。
【0038】
「INCI」という名称は、化粧品原料国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)による化粧品成分の名称を指す。
【0039】
「含まない(free)」という用語は、本発明の意味の範囲内で、組成物の総質量に対して0.1%以下、好ましくは、0.05%以下の成分(又は物質)の質量を意味すると理解される。
【0040】
特に言及しない限り、「脂肪酸(fatty acid)」という用語は、本発明の意味において、8~24個の炭素原子を含むカルボン酸を意味するものと理解される。脂肪酸は、好ましくは、モノカルボン酸である。それらは、飽和又は不飽和、直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。
【0041】
糖脂肪酸エステル:
本発明による組成物は、少なくとも1種の糖脂肪酸エステル(「糖エステル」とも呼ばれる)を含む。
【0042】
この種類の成分は、非イオン性エマルジョン安定剤として周知である。
【0043】
それは、1種(又はそれ以上)の脂肪酸(複数可)と糖、好ましくは、スクロースとの反応から得られるエステルである。したがって、それは、脂肪酸及びスクロースのモノエステル又はポリエステルであってもよい。糖脂肪酸エステルは、任意選択で、同じ脂肪酸のモノエステル及びポリエステルの混合物の形態であってもよい。糖脂肪酸エステルは、好ましくは、低いエステル化程度を有し、例えば、糖脂肪酸モノエステル、ジエステル及びトリエステルなどである。好ましくは、糖脂肪酸エステルは、スクロース脂肪酸のモノエステル及びジエステルから選択される。
【0044】
脂肪酸は、カルボン酸、好ましくは、モノカルボン酸であり、飽和又は不飽和、直鎖状又は分岐鎖状である。好ましくは、脂肪酸は、直鎖状の飽和モノカルボン酸である。
【0045】
好ましくは、糖エステルの脂肪酸は、10~24個の炭素原子、好ましくは、12~20個の炭素原子を含む。
【0046】
脂肪酸の非限定的な例として、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられてもよい。
【0047】
本発明による組成物において使用され得るスクロースの脂肪酸エステル(又はスクロエステル)の非限定的な例は、ヤシ脂肪酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、ポリステアリン酸スクロース、及びこれらの混合物を含む。
【0048】
本発明による組成物は、任意選択で、異なる脂肪酸の2種以上のスクロースエステルの混合物を含んでもよい。
【0049】
糖脂肪酸エステル又は少なくとも1種の糖脂肪酸エステルを含む混合物の非限定的な例として、以下の名称で販売されている製品が挙げられてもよい。
- クローダ社製のArlacel 2121(INCI名:ステアリン酸ソルビタン&ヤシ脂肪酸スクロース)
- EVONIK GOLDSCHMIDT社製のTegosoft PSE 141G(INCI名:ステアリン酸スクロース)
- 三菱ケミカルフーズ社によって製造されたSurfhope SE COSME C-1816(INCI名:ステアリン酸スクロース)
- 三菱ケミカルフーズ社によって製造されたSurfhope SE COSME C-1416(INCI名:ミリスチン酸スクロース)
- 三菱ケミカルフーズ社によって製造されたSurfhope SE COSME C-1216(INCI名:ラウリン酸スクロース)
- 三菱ケミカルフーズ社によって製造されたSurfhope SE COSME C-1215L(INCI名:ラウリン酸スクロース)
- 三菱ケミカルフーズ社によって製造されたSurfhope SE COSME C-1616(INCI名:パルミチン酸スクロース)。
【0050】
有利には、糖脂肪酸エステルは、ヤシ脂肪酸スクロースである。
【0051】
本発明による組成物中の糖脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して少なくとも0.2%、好ましくは、少なくとも0.3%であってもよい。
【0052】
更に、本発明による組成物中の糖脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して最大0.8%、好ましくは、最大0.55%であってもよい。
【0053】
好ましくは、本発明による組成物中の糖脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して0.2%~0.8%、好ましくは、0.2%~0.6%、好ましくは、0.3%~0.55%である。これらの好ましい割合により、組成物のより良好な安定性と感覚性とを組み合わせることが可能になる。
【0054】
ソルビタン脂肪酸エステル:
本発明による組成物は、少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルを含む。
【0055】
ソルビタン脂肪酸エステルは、非イオン性エマルジョン界面活性剤であることが周知である。したがって、それらは、ソルビタン脂肪酸のモノエステル又はポリエステルであってもよい。それらが一般的に製造される方法に起因して、ソルビタンエステルは、同じ脂肪酸のモノ-、ジ-、トリ-又はポリエステルの混合物を含んでもよい。好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸のモノエステル及びジエステルから選択される。
【0056】
脂肪酸は、カルボン酸、好ましくは、モノカルボン酸であり、飽和又は不飽和、直鎖状又は分岐鎖状である。好ましくは、脂肪酸は、直鎖状の飽和モノカルボン酸である。
【0057】
好ましくは、ソルビタンエステルの脂肪酸は、10~24個の炭素原子、好ましくは、12~20個の炭素原子を含む。
【0058】
例えば、脂肪酸として、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられてもよい。
【0059】
本発明による組成物において使用され得るソルビタン脂肪酸エステルの非限定的な例は、ソルビタンラウリン酸モノエステル、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ミリスチン酸ソルビタン、及びこれらの混合物を含む。
【0060】
ソルビタン脂肪酸エステル又は少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルを含む混合物の非限定的な例として、以下の名称で販売されている製品が挙げられてもよい。
- クローダ社製のArlacel 2121(INCI名:ステアリン酸ソルビタン&ヤシ脂肪酸スクロース)
- クローダ社製のSpan 60(INCI名:ステアリン酸ソルビタン)
- クローダ社製のSpan 120(INCI名:イソステアリン酸ソルビタン)
- クローダ社製のSpan 65(INCI名:ステアリン酸ソルビタン)
- クローダ社製のSpan 80(INCI名:オレイン酸ソルビタン)
【0061】
有利には、ソルビタン脂肪酸エステルは、ステアリン酸ソルビタンである。
【0062】
本発明による組成物中の糖脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して少なくとも1.8%、好ましくは、少なくとも2.7%であってもよい。
【0063】
更に、本発明による組成物中のソルビタン脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して最大5.4%、好ましくは、最大4.5%であってもよい。
【0064】
好ましくは、本発明による組成物中のソルビタン脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して1.8%~5.4%、好ましくは、2.7%~4.5%である。これにより、組成物のより良好な安定性と感覚性とを組み合わせることが可能になる。
【0065】
ポリグリセロール脂肪酸エステル:
本発明による組成物は、少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルを含む。
【0066】
本発明の目的のために、「ポリグリセロール脂肪酸エステル(polyglycerol fatty acid ester)」という用語は、ポリグリセロールと少なくとも1種の脂肪酸との反応から得られるエステルを示す。
【0067】
ここで、ポリグリセロールとは、少なくとも2つのグリセロール単位、好ましくは、3~10個のグリセロール単位、好ましくは、4~8個のグリセロール単位を含む、グリセロールホモポリマーを指す。より好ましくは、ポリグリセロールは、6個のグリセロール単位を含む。
【0068】
ポリグリセロール脂肪酸エステルは、モノ-、ジ-、トリ-、テトラエステル、ポリエステル及びこれらの混合物から選択され得る。好ましくは、低いエステル化度のエステル又はエステルの混合物、例えば、ポリグリセロール及び脂肪酸モノエステル、ジエステル又はトリエステルが使用される。
【0069】
脂肪酸は、上で定義されている。
【0070】
好ましくは、ポリグリセロールエステルの脂肪酸は、10~22個の炭素原子、好ましくは、14~22個の炭素原子を含む。
【0071】
それらは、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸、カプリン酸、カプリル酸、又はこれらの混合物から選択されてもよい。
【0072】
本発明による組成物において使用され得るポリグリセロール脂肪酸エステルの非限定的な例は、ポリグリセリル-4カプリン酸エステル(4つのグリセロール及びカプリン酸単位を含むポリグリセロール反応から得られるエステル)、ジステアリン酸ポリグリセリル-6(6つのグリセロール及びステアリン酸単位を含むポリグリセロール反応から得られるジエステル)、ステアリン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-6、ベヘン酸ポリグリセリル-6、カプリル酸ポリグリセリル-6、リシノール酸ポリグリセリル-6、ポリリシノール酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10及びこれらの混合物を含む。
【0073】
非限定的な例として、以下の名称で販売されている製品が挙げられてもよい。
- EVONIK NUTRITION&CARE GMBH社製のTEGOCARE PBS 6(INCI名:ステアリン酸ポリグリセリル-6&ベヘン酸ポリグリセリル-6、CAS登録番号9009-32-9及び64366-79-6)、
- EVONIK NUTRITION&CARE GMBH社製のTEO SOLVE 90(INCI名:ポリグリセリル-6カリレート&カプリン酸ポリグリセリル-4&水)、
- EVONIK NUTRITION&CARE GMBH社製のTEO SOLVE 61(INCI名:ポリグリセリル-6カリレート、ヤシ脂肪酸ポリグリセリル-3&カプリン酸ポリグリセリル-4&リシノール酸ポリグリセリル-6&水)
- ガテフォッセ社によって販売されているEMULIUM ILLUSTRO(INCI名:ポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-6&ポリリシノール酸ポリグリセリル-6)
- EVONIK NUTRITION&CARE GMBH社製のDERMOFEEL G10 LW 70 MB(INCI名:ポリグリセリル-10ラウリン酸&Aqua&Citric Acid)。
【0074】
好ましくは、少なくとも1種のポリグリセロール脂肪酸エステルは、ステアリン酸ポリグリセリル-6、ベヘン酸ポリグリセリル-6、及びこれらの混合物から選択される。
【0075】
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも2種のポリグリセロール脂肪酸エステルを含む。有利には、本発明による組成物は、ステアリン酸ポリグリセリル-6及びベヘン酸ポリグリセリル-6を含む。
【0076】
本発明による組成物中のポリグリセロール脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して少なくとも0.5%、好ましくは、少なくとも1%、より好ましくは、少なくとも2%であってもよい。
【0077】
更に、本発明による組成物中のポリグリセロール脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して最大6%、好ましくは、最大3%であってもよい。
【0078】
好ましくは、本発明による組成物中のポリグリセロール脂肪酸エステルの質量含有率は、組成物の総質量に対して0.5%~6%、好ましくは、1%~6%、好ましくは、2%~3%である。これにより、組成物のより良好な安定性と感覚性とを組み合わせることが可能になる。
【0079】
水性増粘剤:
本発明による組成物は、キサンタンガム及びゲランガムから選択される少なくとも2種の水性増粘剤を含む。
【0080】
本発明の文脈内の「増粘剤(thickener)」(本明細書では、ゲル化剤とも呼ばれる)という用語は、その存在により、それが導入される組成物の粘度を増加させることが可能になるポリマーを意味する。
【0081】
本発明の文脈内の「水性増粘剤(aqueous thickener)」という用語は、水溶性又は水分散性又は水膨潤性のポリマーを意味する。
【0082】
多くの調査研究の後、本発明者らは、キサンタンガム及びゲランガムといった2種の特定のゲル化剤の組合せによって、十分な粘度のクリーム質感及びより良好なエマルジョン安定化(脂肪相の油滴の安定化)の両方を得ることが可能になることを、実証した。更に、乳化剤の混合物に関連して、本発明による成分の特定の組合せによって、驚くべきことに、天然起源の親油性粘稠剤の結晶化の現象を制限することが可能になる(粒状又は塊状の外観がない)。
【0083】
有利には、本発明による組成物は、水性合成増粘剤を含まない。水性合成増粘剤の非限定的な例として、ポリアクリルアミド、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸のポリマー及びコポリマー(例えば、アクリロイルジメチルタウレートユニットコポリマー)、カルボキシビニルポリマー(例えば、カルボマー、アクリル酸の親水性合成ポリマー)又はポリウレタンが挙げられてもよい。
【0084】
本発明による化粧品組成物は、キサンタンガムを含む。
【0085】
キサンタンガムは、分枝鎖状の天然多糖類である。このポリオシドは、交互のグルコース残基上で、一般的にアセチル化されたマンノース残基、グルクロン酸残基及び末端マンノース残基を含有する三糖類側鎖によって置換されたセルロース骨格(D-グルコース残基の主鎖)からなる。更に、ピルビン酸残基は、特定の末端マンノース残基(一般的に、末端マンノース残基の30%~50%)によって、担持される。グルクロン酸残基及びピロビン酸はイオン化可能であり、したがって、キサンタンのアニオン性の原因である。それらは、市販製品において、Na+、K+又はCa2+などのカチオンで中和され得る。キサンタンガムは、細菌キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の発酵によって、エキソ多糖類として工業規模で生産される。ピルビン酸残基及び酢酸基の割合は、細菌株、発酵プロセス、発酵後の条件、及び精製工程に応じて、変化し得る。
【0086】
市販のキサンタンガムの非限定的な例として、CAS登録番号11138-66-2又はダニスコ社製のRhodicare XCの名称で販売されている製品、シーピー・ケルコ社製のKeltrol CG-SFT又はKeltrol CG-Vの名称で販売されている製品、カーギル社製のSatiaxaneファミリーからの製品(例えばSatiaxane VPC 930)の化合物が挙げられてもよい。
【0087】
本発明による組成物中のキサンタンガムの質量含有率は、組成物の総質量に対して少なくとも0.2%、好ましくは、少なくとも0.3%、より好ましくは、少なくとも0.5%であってもよい。
【0088】
更に、本発明による組成物中のキサンタンガムの質量含有率は、組成物の総質量に対して最大1.2%、好ましくは、最大0.7%であってもよい。
【0089】
好ましくは、本発明による組成物中のキサンタンガムの質量含有率は、組成物の総質量に対して0.2%~1.2%、好ましくは、0.5%~0.7%である。これにより、バター又は脂肪アルコールなどの親油性の剤による結晶化現象を回避しながら、組成物のより良好な安定性及び感覚性を組み合わせることが可能になる。
【0090】
本発明による化粧品組成物は、ゲランガムを含む。
【0091】
ゲランガムは、グルコース、ラムノース及びグルクロン酸残基を含む、直鎖状の天然多糖類である。グルクロン酸残基は、ゲランガムのアニオン性の原因であり、市販製品においてカチオンで中和され得る。ゲランガムは、細菌スフィンゴモナス・エロディア(Sphingomonas elodea)の発酵によって産生される、エキソ多糖類である。
【0092】
市販のゲランガムの非限定的な例として、CAS登録番号71010-52-1又はシーピー・ケルコ社製のKELCOGEL CG-HAの名称で販売されている製品、SIDERE社製のNutrier GL-L30C又はGL-H40Cの化合物が挙げられてもよい。
【0093】
本発明による組成物中のゲランガムの質量含有率は、組成物の総質量に対して少なくとも0.05%、好ましくは、少なくとも0.1%、より好ましくは、少なくとも0.2%であってもよい。
【0094】
更に、本発明による組成物中のゲランガムの質量含有率は、組成物の総質量に対して最大0.5%、好ましくは、最大0.3%であってもよい。
【0095】
好ましくは、本発明による組成物中のゲランガムの質量含有率は、組成物の総質量に対して0.05%~0.5%、好ましくは、0.1%~0.3%である。これにより、結晶化現象を回避しながら、組成物のより良好な安定性と感覚性とを組み合わせることが可能になる。
【0096】
好ましくは、本発明による組成物中のキサンタンガムとゲランガムとの質量含有率の合計は、組成物の総質量に対して少なくとも0.3%、好ましくは、少なくとも0.5%である。
【0097】
好ましくは、本発明による組成物中のキサンタンガムとゲランガムとの質量含有率の合計は、組成物の総質量に対して最大1.7%、好ましくは、最大1.2%である。
【0098】
好ましくは、本発明による組成物中のキサンタンガムとゲランガムとの質量含有率の合計は、組成物の総質量に対して0.3%~1.7%、好ましくは、0.5%~1.2%である。
【0099】
これにより、結晶化現象を回避しながら、組成物のより良好な安定性と感覚性とを組み合わせることが可能になる。
【0100】
脂肪相:
本発明による組成物は、水性相中に分散された少なくとも1つの脂肪相を含む。換言すれば、本発明による組成物は、不連続脂肪相を含む。脂肪相は、有機物であり、水に非混和性である。
【0101】
脂肪相(本明細書では油相とも呼ばれる)は、少なくとも1種の脂肪物質を含む。
【0102】
本発明の意味の範囲内での「脂肪物質(fatty substance)」という用語は、室温(25℃)及び大気圧(1.013・105Pa、760mmHg)で、水に不混和性である、有機化合物を意味する。より具体的には、これらの化合物の水溶性は、5質量%未満、好ましくは、1質量%未満、より好ましくは、0.1質量%未満である。この種類の化合物は、一般的に、その構造中に、少なくとも6個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有する。
【0103】
脂肪物質は、室温(25℃)及び大気圧(1.013.105Pa、760mmHg)で、液体であっても非液体であってもよい。
【0104】
本発明による組成物において、脂肪相は、少なくとも1種の油を含む。脂肪相は、本質的に、油又は1種以上の油の混合物から構成されてもよい。
【0105】
「油」は、室温(25℃)、及び大気圧(101 325Pa、760mmHg)で液体である「脂肪物質」を意味する。液体脂肪物質又は油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0106】
「揮発性油」という用語は、室温及び大気圧で、皮膚と接触して1時間未満で蒸発することが可能な油を意味する。揮発性油は、室温で液体であり、0.13Pa~40,000Pa(10-3~300mmHg)の範囲の蒸気圧を有してもよい。
【0107】
「不揮発性油」という用語は、室温及び大気圧で少なくとも数時間、皮膚上に残る油を意味する。これらは特に、0.13Pa未満(10-3mmHg未満)の蒸気圧を有する。
【0108】
本発明において関連して、炭化水素系脂肪物質、特に、天然起源のものが好ましく使用される。
【0109】
有利には、本発明による組成物は、シリコーン含有脂肪物質及びフッ素化脂肪物質を含まない。
【0110】
本発明の目的のために、「炭化水素(hydrocarbon)」とは、少なくとも1つの炭化水素基(すなわち、水素原子及び炭素原子を含有する基)、並びに任意選択で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び/又はリン原子を含有する化合物を指す。炭化水素化合物は、例えば、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン基及び/又はアミド基を含有してもよい。より具体的には、本発明の文脈において、炭化水素化合物は、ケイ素原子又はフッ素原子を含有しない。
【0111】
本発明の目的のために、「シリコーン(silicone)」とは、少なくとも1つのケイ素原子、特に、少なくとも1つのSi-O基を含む化合物、例えば、オルガノポリシロキサンを意味する。
【0112】
「フッ素化(fluorinated)」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含有する化合物を指す。
【0113】
本発明に関連して使用され得る脂肪物質として、例えば、6~16個の炭素原子を含む炭化水素、16個超の炭素原子を含む炭化水素系油、非シリコーン油、植物油(トリグリセリド、脂肪酸)、グリセリド、脂肪アルコール、トリグリセリドとは異なる脂肪酸及び/又は脂肪アルコールエステル、脂肪酸エーテル、並びにこれらの混合物が挙げられてもよい。
【0114】
C6~C16炭化水素は、好ましくは、植物起源である。それらは、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、好ましくは、アルカンである。例として、n-デカン(C10)、n-ウンデカン(C11)、n-ドデカン(C12)、n-トリデカン(C13)、n-テトラデカン(C14)、n-ペンタデカン(C15)、n-ヘキサデカン(C16)、アルカンの混合物(例えば、ウンデカン及びトリデカン)が挙げられてもよい。
【0115】
炭化水素油(又は16個超の炭素原子を含む炭化水素)は、好ましくは、植物起源である。これらは、直鎖状化合物又は分岐鎖状化合物であってもよい。炭化水素系油の例として、スクアランが挙げられてもよい。
【0116】
植物油は、好ましくは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドなどのトリグリセリドから選択される。植物油の非限定的な例としては、スイートアーモンド油、マカダミア油、ヘーゼルナッツ油、ピーナッツ油、ゴマ油、クルミ油、アルガン油、ホホバ油、カレンデュラ油、アプリコット油、ヒマワリ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、ヘンプ油、ナタネ油、綿実油、ヤシ油、パンプキンシード油、グレープシード油、アララ油(arara oil)、ヒマシ油、アボカド油、ミラベルプラム油、シアバター油及びこれらの混合物が挙げられる。
【0117】
グリセリドは、1つ(モノグリセリド)又はそれより多く(ジグリセリド及びトリグリセリド)の脂肪酸とのグリセロールエステルである。それらは、好ましくは、天然起源である。例えば、カプリン酸/カプリル酸のトリグリセリドが挙げられてもよい。
【0118】
本発明の実施に好適な脂肪アルコールは、より詳細には、6~30個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状アルコールから選択されてもよい。非限定的な例としては、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール及びこれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコール又はリノールアルコールが挙げられる。本発明の文脈において、脂肪物質として使用され得る脂肪アルコールは、好ましくは、天然起源のものである。
【0119】
「脂肪」エステルは、少なくとも6個の炭素原子、好ましくは、8~30個の炭素原子を含み、特に、1つ以上のヒドロキシル基によって任意選択で置換された、少なくとも1つの直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和炭化水素基を有する。それらは、任意選択でヒドロキシル化された、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールのエステルから選択され得る。前述のトリグリセリドとは異なるこれらのエステルは、特に、飽和又は不飽和、直鎖状又は分岐鎖状のC1~C26脂肪族モノ酸又はポリ酸のエステル、及び飽和又は不飽和、直鎖状又は分岐鎖状のC1~C26脂肪族モノアルコール又はポリアルコールのエステルから選択されてもよく、エステルの総炭素数は6以上である。脂肪酸及び/又は脂肪アルコールのエステルの非限定的な例としては、ベヘン酸オクチルドデシル、ベヘン酸イソセチル、リノレイルラクテート、ラウリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、イソノニルイソノナノエート、オクチルイソノナノエート、リシノール酸メチルアセチル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸イソプロピル又はイソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、イソステアリルラクテート、ジイソプロピルアジペート、ジオクチルマレート、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、カプリン酸/カプリル酸(又はオクチルカプリン酸/カプリル酸)エチル2-ヘキシル、イソステアリルネオペンタノエート、イソデシルネオペンタノエート、ヘプタノエート(例えばイソステアリルヘプタノエート)、オクタノエート(例えばセチルオクタノエート、セテアリルオクタノエート、トリデシルオクタノエート)が挙げられる。
【0120】
脂肪酸エーテルは、少なくとも6個の炭素原子、好ましくは、8~30個の炭素原子を含み、特に、1つ以上のヒドロキシル基によって任意選択で置換された、少なくとも1つの直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和炭化水素基を有する。それらは、より具体的には、6~24個の炭素原子を含むエーテルから選択されてもよい。それらは、好ましくは、例えば、ジカプリリルエーテルなどの植物起源のものである。
【0121】
好ましくは、脂肪相は、室温(25℃)及び大気圧(101 325Pa760mmHg)で液体ではない、少なくとも1種の脂肪物質を含む。
【0122】
「非液体脂肪物質(non-liquid fatty substance)」という用語は、25℃の温度及び1秒-1の剪断速度で、Rheomat RM 180(一般的に、1又は2のスピンドルを使用する)を用いて測定した場合に2Pa.s超の粘度を有する固体化合物又は化合物を意味するものと理解されたい。
【0123】
非液体脂肪物質としては、例えば、バター、ワックス、より一般的には、非液体脂肪アルコール(ミリスチンアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪酸及び/又は非液体脂肪アルコールエステル(オクチルドデシルベヘン酸、イソセチルベヘン酸、セチルラクテート、ステアリルオクタン酸、オクチルオクタン酸等)、非液体脂肪アミン及びエーテルが挙げられてもよい。
【0124】
有利には、本発明による組成物は、少なくとも1種の植物起源のバターを含む。植物性バターの存在は、一般的に、皮膚軟化だけではなく感覚的特性もまた提供する。これにより、特に、組成物に粘稠性を与えることが可能になる。1つの欠点は、それらの存在が、結晶化現象に起因して塊状の外観をもたらし得ることである。しかしながら、本発明者らは、本発明による特定の組合せにより、驚くべきことに、これらの結晶化現象を回避することが可能になることを実証した。
【0125】
本発明の目的のために、「バター(butter)」(又は「ペースト状脂肪物質(pasty fatty substance)」)とは、可逆的な固体/液体状態変化を有し、25℃の温度及び大気圧(760mmHg)で液体画分及び固体画分を含む、脂肪物質(したがって、親油性)を指す。換言すれば、ペースト状化合物の開始溶融温度は、25℃未満であってもよい。25℃で測定されるペースト状化合物(バター)の液体画分は、例えば、化合物の10~90質量%に相当し得る。
【0126】
好ましくは、バター(複数可)は、60℃未満の融点終了点を有する。
【0127】
本発明の意味において、融解終了点は、試料の95%が溶融した温度に相当する。溶融温度の測定及び溶融終了温度の決定は、PCT国際公開特許第2020/127383号に記載されているプロトコルに従って実行され得る。
【0128】
好ましくは、本発明による組成物中のバターの質量含有率は、組成物の総質量に対して2%~10%、好ましくは、5%~8%である。
【0129】
有利には、本発明による組成物は、好ましくは、天然起源の脂肪アルコールから選択される少なくとも1種の脂肪相増粘剤を含む。
【0130】
本発明の目的のために、「脂肪相増粘剤(fatty phase viscosifying agent)」とは、その存在に起因して、組成物に粘稠性を付与すること、すなわち、組成物の粘度を増加させることを可能にする、親油性化合物を指す。
【0131】
好ましくは、この粘稠剤は、12~22個の炭素原子を含む、脂肪アルコールである。使用可能な脂肪アルコールの非限定的な例として、ミリスチンアルコール若しくはミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール又はオレインアルコールが挙げられてもよい。特に、室温(25℃)で固体又はワックス状である、増粘剤としての脂肪アルコールの存在は、(摂取時及び適用時に)本発明による組成物に粘稠性を付与することを可能にする。驚くべきことに、本発明による特定の組合せは、シリコーン油の導入を必要とせずに、脂肪アルコールで一般的に観察される適用時の石鹸作用を回避することを可能にする。
【0132】
好ましくは、本発明による組成物中の増粘剤としての脂肪アルコールの質量含有率は、組成物の総質量に対して2%~6%、好ましくは、3%~5%である。これは、組成物の感覚性にとって好ましい。
【0133】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して少なくとも5%、好ましくは、少なくとも8%の脂肪物質の、総質量含有率を有してもよい。
【0134】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して最大25%、好ましくは、最大23%の脂肪物質の、総質量含有率を有してもよい。
【0135】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して5%~25%、好ましくは、8%~23%の脂肪物質の、総質量含有率を有してもよい。これは、組成物の安定性及び感覚性にとって好ましい。
【0136】
更に、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して少なくとも5%、好ましくは、少なくとも8%の油の、総質量含有率を有してもよい。
【0137】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して最大15%、好ましくは、最大10%の油の、総質量含有率を有してもよい。
【0138】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して5%~15%、好ましくは、8%~10%の油の、総質量含有率を有してもよい。これは、組成物の安定性及び感覚性にとって好ましい。
【0139】
脂肪相は、例えば、溶媒、配合剤及び/又は脂溶性活性剤などの油に可溶性又は混和性の追加の成分を、更に含んでもよい。
【0140】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、シリコーン化合物を含まない。
【0141】
水性相:
本発明による組成物は、連続水性相を含む。
【0142】
水性相は、水を含む。水性相は、例えば、水溶性溶媒、水溶性配合剤、及び/又は水溶性活性剤などの油に可溶性又は混和性の追加の成分を、更に含んでもよい。
【0143】
水溶性又は水混和性溶媒としては、例えば、短鎖モノアルコール、例えば、C1~C4(エタノール、イソプロパノールなど)、例えば3~8個の炭素原子を含む、例えば2~6個の-OH官能基を含む、直鎖状又は分枝鎖状のポリオール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセロール、ソルビトールなど)並びにこれらの混合物が挙げられてもよい。
【0144】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して少なくとも50%、好ましくは、少なくとも55%の水の、総質量含有率を有してもよい。これにより、組成物のより良好な感覚的特性及び安定性を得ることを可能にする。
【0145】
本発明による組成物は、組成物の総質量に対して最大90%、好ましくは、最大80%、好ましくは、最大70%の水の、総質量含有率を有してもよい。これは、組成物の実現可能性及び安定性にとって好ましい。
【0146】
追加の化合物:
本発明による組成物は、1つ以上の配合剤、特に従来の活性成分又は化粧品賦形剤を更に含んでもよい。
【0147】
これらの配合剤は、本発明の組成物の使用に応じて、適切に選択され得る。
【0148】
配合剤の非限定的な例としては、親水性又は親油性の有機溶媒(例えば、低級アルコール及びポリオール)、イオン性又は非イオン性の親水性又は親油性のレオロジー剤(増粘剤又はゲル化剤)、軟化剤、保湿剤、湿潤剤、安定剤、皮膚軟化剤、消泡剤、フィルム形成剤、乳化剤、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性)、充填剤(例えば、艶消し粉末、ソフトフォーカス活性タッチ粉末等)、UV遮断剤(又は光保護剤、有機及び/又は無機、UVA及び/又はUVBで活性)、着色剤、キレート化剤(キレート剤)、アルカリ化剤又は酸性化剤、pH調整剤、保存剤、香料又は化粧品分野及び/又は皮膚科学分野で通常使用される任意のその他の成分が挙げられる。これらの様々な化合物の量は、考慮中の分野において従来使用されている量である。これらの化合物は、それらの性質に応じて、脂肪相又は水性相に導入され得る。
【0149】
本発明による組成物は、少なくとも1種の活性成分を含んでもよい。活性成分としては、例えば、以下のものが挙げられてもよい:
- 抗汚染剤及び/又は抗ラジカル剤及び/又は抗酸化剤(補酵素Q10又はユビキノン)、
- 明色化剤、脱色素剤、着色促進剤及び/又は同色なめし剤、
- 老化防止剤、
- 植物タンパク質及びそれらの加水分解物(例えば、大豆タンパク質抽出物)などのテンショニング剤又は抗しわ剤、
- 保湿剤(ポリオール、例えばグリセリンなど)、
- 抗炎症剤(グリチルレチン酸及びその塩など)、
- 鎮静剤(アラントイン、ビサボロール、ヤグルマギク水)、
- 抗微生物剤又は抗菌剤(サリチル酸など)、
- テンショニング剤、
- 硬化剤、
- ビタミン(例えば、レチノール又はビタミンA、アスコルビン酸又はビタミンC、トコフェロール又はビタミンE、ナイアシンアミド又はビタミンPP又はB3、パンテノール又はビタミンB5、ビオチン又はビタミンB8、及びこれらの誘導体、例えばこれらのビタミンのエステルなど)、
- 精油。
【0150】
化粧品におけるそれらの知識によって、当業者は、本発明による組成物に関連する効果を実質的に変えることなく、所望の特性に応じて、本発明による組成物に添加される配合剤及びそれらの量を選択することができる。
【0151】
本発明による組成物は、様々なレオロジー特性を有してもよく、クリーム、ゲル、香膏の形態である。
【0152】
好ましくは、本発明による組成物は、濃厚な質感を有し、香膏の形態である。
【0153】
特に、組成物は、20℃及び大気圧(1.013.105Pa)、Rheomatにおけるスピンドル6、速度6、Brookfield RVで測定して、20,000~80,000Pa.s、特に、40,000~65,000Pa.sの範囲の粘度を有してもよい。
【0154】
有利には、本発明による組成物は、市場で入手可能な類似の組成物と比較して、合成乳化剤及び/又は増粘剤を用いて製剤化された組成物に相当する感覚性及び安定性の両方を示しながら、99%超の天然起源の成分であり得る、高い程度又は更に高い程度の天然起源を有する。本発明者らは、特に、成分の特定の組合せによって、滑らかで、灰色でなく、非粘着性の、抵抗感のない質感を得ることが可能になるが、これが、適用時にあまり丸まらないことを実証した。
【0155】
有利には、本発明による組成物によって、皮膚を滑らかにし、皮膚の保湿性、柔軟性、外観及び明るさを改善することも可能にする。
【0156】
したがって、本発明はまた、好ましくは、皮膚を保湿し、保護し、処置する、及び/又は皮膚老化の徴候を低減するための、ケア製品としての、上で定義された化粧品組成物の使用に関する。
【0157】
本発明はまた、上で定義した組成物を皮膚に適用する少なくとも1つの工程を含む、皮膚ケアの美容方法に関する。
【実施例】
【0158】
本発明は、以下に提示される非限定的な実施例によって、より詳細に示される。使用される化合物又は原料は、それらのINCI名によって命名される。別途に特定されない場合、示される割合は、質量割合である。略語「qs」は、組成物がその最終質量の100%に達するのに十分な量でなければならないことを意味する。
【0159】
実施例1:
組成物1~5は、以下の表1に示される%としての割合で、以下に記載される手順に従って調製される。様々な組成物はまた、それらの外観、それらの経時的安定性、及びそれらの適用特性に基づいて評価される。
【表1】
【0160】
上の表において:
- 「P」と題された左列は、化合物が存在する相を示す。
- 括弧内の参照(化合物のINCI名の次)は、これらの化合物を含む使用される原材料の商品名を示す。これらの原料の詳細を、以下に示す。
(a)EVONIK Nutrition&Care GmbH社によって販売されている、DERMOFEEL PA-12 INCI名:フィチン酸ナトリウム。
(b)SCHOLLKE FRANCE SARL社によって販売されている、SENSIVA SC 50(合成起源の成分、INCI名:エチルヘキシルグリセリン)。
(c)ダニスコ社によって販売されている、RHODICARE XC(INCI名:キサンタンガム(及び)水)。
(d)シーピー・ケルコ社によって販売されている、KELCOGEL CG-HA(INCI名:ゲランガム)。
(e)ユニペックス社によって販売されている、SATIARGINE VCG 171(INCI名:アルギン)。
(f)クローダ社によって販売されている、ARLACEL 2121(INCI名:ステアリン酸ソルビタン(及び)ヤシ脂肪酸スクロース)。
(g)EVONIK Nutrition & Care GmbH社によって販売されている、TEGO CARE PBS 6(INCI名:ポリグリセリル-6ステアリン酸(及び)ポリグリセリル-6ベヘン酸)、
(h)メルク社によって販売されている、粉末形態のクエン酸一水和物
(i)DuPont Tate & Lyle Bio Products社によって販売されている、ZEMEAプロパンジオール。
(j)ウィルマー社よって販売されている、Wilfarin EP997。
(k)アゼリス社によって販売されている、BRONTIDE BG。
(l)Amyis社製の、スクアランNeossance又はスクアランBiossance
(m)LABORATOIRES PROD’HYG社(フランス)によって販売されている、HYDROBASE 24/26(INCI名:ココヤシ油)
(n)BASF社によって販売されている、Cetiol SB 45(INCI名:Buyrosperum parkii)
(o)STEARINERIE DUBOIS社によって販売されている、98%のセチルアルコール
(p)テレオス社によって販売されている、アルコールSurfin96.2
(q)TAKASAGO社から販売されている、MUSKT
【0161】
手順:
相Aを、ビーカ中で、フィチン酸ナトリウムとクエン酸とが溶解するまで、解膠器を備えたRayneri撹拌下で、水にフィチン酸ナトリウムを、次にクエン酸を溶解することによって、調製する。
【0162】
プロパンジオールとエチルヘキシルグリセリンとを混合することによって、B相を予め調製しておく。次に、相Bを相Aに追加し、全体を、300rpmで5分間撹拌する。
【0163】
グリセリン及びブチレングリコールを混合し、次に、この相中に、多糖類水性増粘剤(複数可)(キサンタンガム及び、適切な場合、ゲランガム又はアルギン)を予備分散させることによって、相Cを調製する。次に、相Cを、解膠器を備えたRayneri撹拌下で、先の水性混合物に追加する。多糖類が展開されるまで、撹拌を維持する(1000rpmで約20分)。混合物を撹拌しながら、加熱プレートを使用して55℃に加熱する。
【0164】
次に、相D(糖エステル乳化剤とソルビタンエステル乳化剤との混合物)を、依然として55℃で、先の水性混合物に追加する。次に、全体を、解膠器を用いて75℃で撹拌しながら、15分間撹拌する。
【0165】
ポリグリセロールエステルを脂肪物質(スクアラン、ヤシ油、シアバター及び脂肪アルコール)と混合することによって、相Eを調製する。次に、この相Eを、75℃に加熱する。
【0166】
次に、得られた混合物(相A、相B、相C及び相D)中に、相EをRayneri解膠撹拌機中で追加することによって、乳化を実行する。75℃~70℃で15分間、1200rpmで撹拌を維持する。スパチュラをその場で保持するような、滑らかで光沢のある白色の濃厚なエマルジョンが得られる。
【0167】
次に、混合物を30℃に冷却した後、相F(アルコールとエチレンブラシレートとの混合物)を、Rayneri解膠撹拌機に追加する。得られた混合物を10分間撹拌し、次に、28℃に冷却する(次に、pHは約5.9である)。
【0168】
次に、pHを、解膠撹拌下で、先の相G(水中のクエン酸)を混合物に追加することによって調整する(次に、pHは5に近い)。
【0169】
このようにして、水中油型エマルジョンが得られる。
【0170】
評価方法:
粘度測定:
組成物(O/Wエマルジョン)を得た後、20℃のオーブン中で組成物を24時間貯蔵した後に、粘度を測定する。
【0171】
ブルックフィールド粘度計、RVTモデル(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.)を使用して、約20℃の周囲温度で粘度を測定する。本装置は、所与の速度「V」で、試験される流体中に浸漬された所与のサイズのスピンドル「M」(製造業者の標準作業勧告に従って選択される)を回転させるのに必要なトルクを測定する。ここで、スピンドルRV S06を用いて、6rpm(毎分回転数)の速度で粘度を測定する。測定値は、cP(センチポアズ又はPa.s)で表される。
【0172】
結果を、以下の表2にまとめる。
【0173】
安定性の評価:
上の組成物の安定性を、調製した後、及び/又は50℃で1ヶ月間の加速条件下(サーモスタット制御オーブン中)に保存した後に、試験した。
【0174】
組成物を、官能分析(外観、色及び臭気)によって評価した。色、表面と、放出、相分離、沈降又は凝集の可能性のある事象、並びに沈殿物、結晶粒、相シフト又は渦巻き(volute)の存在の可能性を調べるために、全体的な外観及び色を、肉眼及び顕微鏡(Olympus BH2 10×10倍倍率顕微鏡)を用いて評価する。臭気を、2種の対照組成物(一方は20℃で暗所に保ち、他方は冷蔵庫内で4℃に保った)と比較する。
【0175】
結果を、以下の表2にまとめる。組成物1~5は、多少の粘度を有する。全ての組成物は、初期状態において非常にわずかに灰色の外観を有する組成物3を除いて、滑らかな初期外観を有する。加速条件下での貯蔵後の安定性試験は、2種の増粘剤キサンタンガム及びゲランガムの組合せを含まない組成物1及び組成物2が、安定状態でないことを示す。この理由は、エマルジョンが破壊されるため、又は結晶化現象が結晶粒の出現と共に生じるため、のいずれかである。ポリグリセロールエステルを含まない組成物3については、エマルジョンの安定性は許容可能であるが、その外観は、50℃での貯蔵後にわずかに灰色ワックス状になる。組成物1~組成物3とは異なり、本発明による組成物5は、安定で、白色で滑らかであり、濃厚なクリームの質感(香膏の質感、40,000Pa.s超の粘度)を保持している。
【0176】
官能評価:
十分な安定性を有する組成物3~組成物5は、滑らかな初期外観を有し、柔らかい質感を有し、非粘着性であり、「ペースト状」ではないが、組成物3については、わずかに塊状の外観を有する。これらの組成物の感覚的特性を、6人の専門家のパネルで評価し、石鹸作用、ピリング作用及び抵抗作用を、以下の手順に従って評価する。これらの手順のそれぞれについて、組成物を、ピペットを使用して、予め水及び液体石鹸で清浄にし、ティッシュペーパーを使用して拭かれた皮膚上に、付着させる。結果を、以下の表2にまとめる。
【0177】
石鹸作用の評価:
各組成物について、0.5mLの製品を、前腕に適用する。製品が浸透するまで、手で円運動を実行する(1秒当たり1回転)。製品が最も石鹸様である瞬間を記録し、この潜在的な石鹸様を0(石鹸作用なし)~4(実質的に皮膚全体を覆う白色適用領域)の尺度で評価する。表2では、6人の専門家パネリストの平均を示す。
【0178】
結果は、低い石鹸作用を有する本発明による組成物5の適用中に観察されるものとは対照的に、糖エステル乳化剤とソルビタンエステル乳化剤との組合せを含有しない組成物4が、非常に大きな石鹸作用を有することを示す。
【0179】
ピリング作用の評価:
各組成物について、0.5mLの製品を、前腕に適用する。手による15回の円運動(15秒間に15回転)があり、次に、15秒間待った後に、別の15回の円運動が15秒間実行され、次に、15分間静置した後に、別の15回の円運動が15秒間実行される。製品が最もピリングした瞬間を記録し、このピリング潜在性を0(ピリングなし)~4(非常に重度のピリング)の尺度で評価する。表2では、6人の専門家パネリストの平均を示す。
【0180】
結果は、ポリグリセロールエステルを含有しない組成物3が、本発明による組成物5とは対照的に、皮膚への適用中に重度にピル化することを示す。
【0181】
制動又は滑り効果の評価:
各組成物について、0.5mLの製品を、前腕に適用する。15回の円運動を、手で行う(15秒間に15回転)。抵抗作用、すなわち、適用中に製品が皮膚に付着する可能性とは対照的に、適用時の「滑りやすさ」、すなわち、製品の適用の容易さ及び所定の領域を覆うその能力を評価する。抵抗作用を、0(付着効果なし、非常に滑りやすい)~4(製品が適用中に皮膚に強く付着する)の尺度で評価する。表2では、6人の専門家パネリストの平均を示す。
【0182】
本発明による組成物5は、良好な滑りやすさで非常に塗布しやすいが、比較組成物3及び4は、より抵抗があり、塗布しにくい。
【0183】
【0184】
上記の表において、略語「NA」は、効果が評価されなかった(Not Applicable)ことを意味する。
【0185】
結論として、増粘剤と乳化剤との特定の組合せを含む本発明による組成物5によって、石鹸作用及びピリング作用があまり存在しない状態で、安定性、粘稠性及び感覚性などの所望の特性の全てと、並びに皮膚上での製品の良好な滑りやすさを伴う適用の容易さとを調和させることが可能になる。更に、本発明による組成物5は、滑らかでクリーム状であり、塊のない外観を有し、これによって結晶化現象の回避が可能になる。最後に、本発明による組成物5は、柔らかく、非粘着性で、非脂肪性の質感を有し、重い感じを与えない。
【0186】
したがって、本発明による成分の特定の組合せによって、必要とされる感覚的特性及び安定性特性を示しながら、高度の天然起源を有する組成物を得ることが可能になる。
【0187】
実施例2:
本発明による別の代表的な組成物は、以下の表3に示される%単位の組成を有する組成物6として提供される。
【表3】
【0188】
組成物6は、上述の手順に従って相A~相Eを混合する(滑らかなエマルジョンを得る)ことによって調製される。
【0189】
次に、混合物を30℃に冷却した後、相F(フェニルエチルアルコールを含有する)を、Rayneri解膠撹拌機に追加する。得られた混合物を、10分間撹拌する。
【0190】
次に、相G(アルコール)を、Rayneri解膠撹拌機に追加する。
【0191】
次に、pHを、解膠撹拌下で、先の相H(水中のクエン酸)を混合物に追加することによって調整する(次に、pHは5に近い)。白色の半濃厚白色水中油型エマルジョンが、このようにして得られる。
【0192】
組成物6はまた、その外観、経時的安定性及びその適用特性(石鹸作用、抵抗作用及びピリング作用)についても評価される。
【0193】
本発明による組成物6は、瓶に詰められるのに、十分に粘稠性である。本組成物は、5.09のpH(D=24時間で)及び38667cPの粘度(J=24時間で)を有する。
【0194】
組成物6はまた、いかなる再結晶化現象もなく、経時的に安定である、滑らかで、クリーム状の、塊のない外観を有する。その粘稠性もまた、経時的に保存される。
【0195】
なお、組成物6は、組成物5のものに相当する所望の感覚的特性と、あまり存在しない石鹸作用及びピリング作用と、皮膚上での製品の良好な滑りやすさと共に適用するのを容易にする効果とを組み合わせて有する。
【0196】
最後に、組成物6は、本発明による組成物5のものよりもわずかに少ない脂肪分を有し、柔らかく、非粘着性の質感を有する。
【0197】
結論として、本発明による成分の組合せによって、石鹸作用及びピリング作用を制限しながらも、良好な滑りやすさを有する容易な適用と完全に満足のいく感覚性との両方を組み合わせつつ、天然の、安定し均質な水中油型組成物を得ることが可能になる。
【国際調査報告】