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特表2024-525347自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法
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  • 特表-自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20240705BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20240705BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240705BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W50/04
B60W60/00
B60W40/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577592
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022063251
(87)【国際公開番号】W WO2022263080
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021003154.7
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルトマン フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ラーブ マルクス
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BA26
3D241BA29
3D241BA63
3D241BB01
3D241BB06
3D241BB27
3D241BB72
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD23
3D241CE01
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241CE09
3D241DA54Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB32Z
3D241DC34Z
3D241DC37Z
3D241DC50Z
(57)【要約】
本発明は、自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法に関し、この方法では、車両は、自動運転動作の通常動作モードにおいては、メイン制御装置を用いて目標位置まで自動的に誘導され、自動運転動作の緊急動作モードにおいては、サブ制御装置を用いて安全な停止位置へと自動的に移動される。本発明によれば、メイン制御装置を用いて、サブ制御装置の機能スタンバイ状態が継続的に検査され、検査された機能スタンバイ状態に依存して、自動運転動作のイネーブルが許可されるべきか、又は取り消されるべきかが判定され、自動運転動作は、イネーブルが許可された場合にのみ有効化され、イネーブルが取り消された場合には無効化される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法であって、
前記車両は、前記自動運転動作の通常動作モードにおいては、メイン制御装置を用いて目標位置まで自動的に誘導され、前記自動運転動作の緊急動作モードにおいては、サブ制御装置を用いて安全な停止位置へと自動的に移動される、方法において、
-前記メイン制御装置を用いて、前記サブ制御装置の機能スタンバイ状態が継続的に検査され、
-検査された前記機能スタンバイ状態に依存して、前記自動運転動作のイネーブルが許可されるべきか、又は取り消されるべきかかが判定され、
-前記自動運転動作は、前記イネーブルが許可された場合にのみ有効化され、前記イネーブルが取り消された場合には無効化される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記サブ制御装置の前記機能スタンバイ状態を検査するために、前記車両の誘導時の位置特定のために前記サブ制御装置によって使用されるデータが所定の品質要件を満たしているか否かが検査される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メイン制御装置を用いて、複合ナビゲーションデータと、求められたカメラ車線データとが、前記所定の品質要件について検査される
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の品質要件が満たされているかに応じて、前記イネーブルの許可又は前記イネーブルの取り消しが判定される
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
判定基準は、前記車両の瞬時走行速度に対する制限速度に依存して設定される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
制限速度を下回っている際の前記通常動作モードは、前記複合ナビゲーションデータ又は前記カメラ車線データが前記所定の品質要件を満たす場合に前記自動運転動作が前記イネーブルとされる
ことを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
制限速度を超過している際の前記通常動作モードは、前記複合ナビゲーションデータも前記カメラ車線データも前記所定の品質要件を満たす場合に前記自動運転動作が前記イネーブルとされる
ことを特徴とする、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されている、自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102015003124号明細書には、自動運転時に車両を動作させるための方法が記載されている。自動運転動作の標準機能中に、緊急動作目標軌道が継続的に求められて記憶される。この緊急動作目標軌道は、少なくとも1つのエラーイベントの発生後に、車両の自動軌道制御の基礎として使用されるべきものである。少なくとも1つのエラーイベントの発生が検出されると、緊急動作モードが有効化される。この緊急動作モードでは、車両のドライバが車両の運転を引き継がない場合には、その引き継ぎが行われない限り、車両の自動軌道制御が開始されて、少なくとも1つの所定のエラーイベントの発生前に記憶された緊急動作目標軌道にしたがって、所定の期間にわたり、及び/又は、車両が停止するまで、実施される。
【0003】
更に、独国特許出願公開第102017011808号明細書からは、自動運転動作時に車両の移動を制御するための方法、及びその方法を実施するための装置が公知である。この方法では、自動運転動作が、車両を所定の目標位置まで自動的に誘導する通常動作モードから、車両を緊急停止位置まで自動的に誘導する緊急動作モードに切り替え可能である。通常動作モードにおける制御は、メイン制御装置を用いて実施され、また緊急動作モードにおける制御は、サブ制御装置を用いて実施される。自動運転動作は、通常動作モードにおいてメイン制御装置の機能障害が確認されると、通常動作モードから緊急動作モードに切り替えられる。通常動作モードにおける制御は、通常動作モードにおいてメイン制御装置によって継続的に求められる、目標位置まで誘導する通常の目標軌道に基づいて実施される。緊急動作モードにおける制御は、サブ制御装置に記憶されている、緊急停止位置へと誘導する緊急動作目標軌道に基づいて実施される。この緊急動作目標軌道は、非常動作モードへと動作モードが切り替えられる前の通常動作モードにおいて、メイン制御装置によって求められ、サブ制御装置に供給されて記憶されたものである。通常動作モードでは、緊急動作目標軌道の他に、車両が走行する車線の、緊急動作目標軌道に属する車線経過も求められ、サブ制御装置に供給されて記憶される。更に、緊急動作目標軌道と、所属の車線経過とが、メイン制御装置の車両固定座標系において求められる。緊急動作モードでは、車両が走行する車線の車線経過が、サブ制御装置の車両固定座標系において求められ、また緊急動作モードでは、サブ制御装置に記憶されている車線の車線経過と、サブ制御装置によって求められた車線の車線経過とに基づいて、メイン制御装置の座標系と、サブ制御装置の座標系との偏差が補償される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自動運転動作において車両を動作させるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明に基づき、請求項1に示されている特徴を有する方法によって達成される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法では、車両は、自動運転動作の通常動作モードにおいては、メイン制御装置を用いて目標位置まで自動的に誘導され、緊急動作モードにおいては、サブ制御装置を用いて安全な停止位置へと自動的に移動される。本発明によれば、メイン制御装置を用いて、サブ制御装置の機能スタンバイ状態が継続的に検査され、検査された機能スタンバイ状態に依存して、自動運転動作のイネーブルが許可されるべきか、又は取り消されるべきかが判定され、その際、自動運転動作は、イネーブルが許可された場合にのみ有効化され、イネーブルが取り消された場合には無効化される。
【0008】
本方法を適用することによって、比較的僅かな技術的な手間でもって、車両のフォールバックパス機能の最大限に高い可用性、即ち緊急動作モードの可用性を達成することができる。従って、自動運転動作の可用性は制限されないか、又は認識されない程度にしか制限されない。
【0009】
フォールバックパス機能に関しては、複合ナビゲーションデータ及びカメラ車線データが必要とされるので、緊急動作モード及び通常動作モードのために冗長的なセンサ系、特に周囲センサ系は必要ない。
【0010】
この方法によって、自動運転動作に関する所望の品質又は可用性を調整することが可能になる。つまり、自動運転動作の通常動作モードは、フォールバックパス機能、即ち車両を安全な停止位置へと移動させるための緊急動作モードが利用可能である場合にのみ有効化することができる。
【0011】
本方法の一実施形態では、サブ制御装置の機能スタンバイ状態を検査するために、車両の誘導時の位置特定のためにサブ制御装置によって使用されるデータが所定の品質要件を満たしているか否かが検査される。
【0012】
ここで、品質要件は、特に車線検出、即ち車両の車線の車線標示の検出に関するものであり、それによって、車両を安全な停止機能に移行させることができる。データが所定の品質要件に対応していない場合、車両は、安全な停止位置までの移動時に、通常よりも強く減速されるので、車両は比較的短時間で、即ち急速に停止状態に移行される。これによって、車両が、その車両の周囲の別の道路利用者に危険を及ぼすことを十分に回避することができる。
【0013】
1つの発展形態では、メイン制御装置を用いて、複合ナビゲーションデータと、求められたカメラ車線データとが、所定の品質要件に関して検査される。カメラ車線データに基づいて、識別された車線が実際の車線と一致するかが求められ、車両を安全な停止位置に移動させることが可能な確率が決定される。ここで、一致に関する確率を求める際に、例えば、画像内の特徴、例えば車線特徴の一義性、検出履歴、及び/又は独立した車線識別アルゴリズムの結果との一致を考慮することができる。
【0014】
複合ナビゲーションデータ(推測航法データ)は、例えば、いわゆる複合ナビゲーションシステム(Coupled Navigation System)に由来するデータである。統計的な方法を用いて、衛星基準の位置決定ユニットの位置データが、車両の慣性センサデータ、例えば加速度、例えば車両の長手方向軸線、横断方向軸線及び/又は高さ方向軸線周りの回転速度、並びに車輪回転情報及び車輪角度のような別の走行状態データ、即ち、前車輪軸の操舵角、また場合によっては後車輪軸の操舵角と組み合わされ、それによって、車両の最大限に正確で信頼性の高い位置特定が達成される。
【0015】
本方法の別の一実施形態では、所定の品質要件が満たされているかに応じて、イネーブルの許可又はイネーブルの取り消しが判定される。特に、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータに依存して、フォールバックパス機能の可用性が求められ、通常動作モードにおける車両の自動運転動作が可能であるか否かが判定される。
【0016】
制限速度に依存する判定基準は、車両の瞬時走行速度に関して設定される。車両の比較的低い走行速度において、即ち制限速度を下回る速度において、所定の品質要件を満たす複合ナビゲーションデータ又はカメラ車線データを使用できる場合には、自動運転動作についてのイネーブルが許可される。即ち、制限速度を下回っている際の自動運転動作は、複合ナビゲーションデータ又はカメラ車線データが所定の品質要求を満たす場合にイネーブルされる。
【0017】
考えられる一発展形態では、制限速度を超過している際の自動運転動作は、複合ナビゲーションデータもカメラ車線データも所定の品質要求を満たす場合にイネーブルされる。
【0018】
以下では、本発明の例示的な実施形態を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】自動運転動作の有効化を判定するための方法のフローを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
唯一の図には、詳細には図示していない車両における自動運転動作の有効化を判定するための方法のフローが示されている。
【0021】
自動運転動作のための、特に高度自動運転動作のための車両側のアシストシステムは、その車両の車線内において車両を比較的安全に制御するために、多数の情報源に接続されている。
【0022】
これらの情報ソースは、センサ、特にカメラ、ステレオカメラ、ライダベースのセンサ、レーダベースのセンサ、超音波ベースのセンサ、長距離レーダセンサ、マルチモードレーダセンサ、パノラマビューシステム、ディジタルマップ、慣性センサ、走行状態センサ、衛星基準の位置決定ユニット、リアビューカメラ等である。
【0023】
アシストシステムは、メイン制御装置及びサブ制御装置を含む。メイン制御装置は、目標軌道を継続的に求める。車両は、この目標軌道に沿って、自動運転動作の通常動作モードにおいて、目標位置まで誘導される。更に、メイン制御装置を用いて、緊急動作目標軌道が継続的に求められる。車両は、この緊急動作目標軌道に沿って、自動運転動作の緊急動作モードにおいて、安全な停止位置まで移動される。緊急動作目標軌道は、通常動作モード中に求められ、代替制御装置とも称されるサブ制御装置に記憶される。目標位置までの車両の誘導は、メイン制御装置を用いた軌道制御によって行われ、また安全な停止位置までの車両の誘導は、サブ制御装置を用いた軌道制御によって行われる。
【0024】
つまり、メイン制御装置は、サブ制御装置に走行設定を送信し、それによってサブ制御装置は、メイン制御装置の故障時に、車両に関する走行タスクを引き継ぎ、車両を、走行設定に応じて、即ち緊急動作目標軌道に応じて制御する。サブ制御装置は、車両の走行ダイナミクス制御の制御装置であってもよい。
【0025】
サブ制御装置は、走行設定を実施するために、車線識別部を備えたカメラ及び複合ナビゲーション用のセンサデータ、特に複合ナビゲーションデータのみを使用する。以下では、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータに基づいて、比較的高い可用性のフォールバックパス機能、即ち比較的高い品質の緊急動作モードをどのように達成できるかについての方法を説明する。
【0026】
カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータが存在する場合にのみフォールバックパス機能を利用できるケースでは、そのカメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータの検出が継続的に中断される可能性があるので、自動運転動作の可用性が比較的強く制限されて、持続的に無効化されるおそれがある。
【0027】
フォールバックパス機能は、自動運転動作におけるフォールバックソリューションを表す。この理由から、フォールバックパス機能、即ち緊急動作モードがスタンバイ状態にあり、相応に利用可能である場合にのみ、車両の自動運転動作を有効化することができる。フォールバックパス機能のスタンバイは、自動運転動作についてのイネーブルでもって、メイン制御装置に許可される。
【0028】
動作条件が変化した場合、フォールバックパス機能は、自動運転動作についてのイネーブルを取り消してもよい。フォールバックパス機能の可用性の評価は、フォールバックパス機能がサブ制御装置において実現されているにもかかわらず、メイン制御装置において行われる。サブ制御装置及び別の所要コンポーネントの機能スタンバイ状態を評価するための信号がメイン制御装置にも存在することによって、メイン制御装置による評価が実現される。
【0029】
フォールバックパス機能は、車両の位置特定のために、複合ナビゲーション又はカメラ車線データを利用する。車両の緊急動作モードが有効化されており、またサブ制御装置が、複合ナビゲーションデータもカメラ車線データも使用できない場合、車両を可能な限り迅速に静止状態に移行させ、特に安全な停止位置に移動させるために、車両は比較的大きく減速される。
【0030】
車両のカメラ、特にステレオマルチパーパスカメラ(Stereo Multi Purpose Camera)の形態のカメラは、車両の中心軸線から、車両の車線を画定する左右の車線標示までの、継続的に検出された距離を提供する。更に、検出されたカメラ車線データに基づいて、検出された車線構造のような情報が求められる。車線構造は、例えば、自車線、隣接車線の車線標示、車線縁部又は隆起した車線画定部、例えばガードレールのような、識別された構造を表す。この車線構造は、仮想の車線としてコーディングされ、サブ制御装置に供給される。
【0031】
更に、カメラは、そのカメラ車線データを用いて、品質信号、検出された車線の幅、検出状態、特に検出された車線又は時間的に外挿された車線に関する検出状態を提供する。
【0032】
自動運転動作、特に緊急動作モードにおける車両の誘導は、検出された車線標示に基づいて、又は理想的なケースでは、両側で検出された車線標示に基づいて行われてもよい。
【0033】
車線の検出には、相応の構造特徴が存在し、且つその相応の構造特徴を、検出された周囲条件において、カメラの検出画像データに基づいて識別できることが要求される。車線上の車線標示が欠落していることに加えて、グレア及び/又は例えば視界の障害、例えば霧及び/又はカメラレンズの汚れが、カメラ車線データの検出時の障害となる可能性がある。
【0034】
カメラ車線データに関して、品質要件が設定されている。品質要件は、検出されたカメラ車線データと実際の車線との一致に関する確率を表す。確率を求める際に、例えば、検出された画像データにおける車線特徴の一意性、検出履歴、又は別の独立した車線識別アルゴリズムの結果との一致のような特徴が使用されてもよい。
【0035】
品質要件に関する信号は、車両中心軸線から車線標示までの、目下示されている側方の距離の、平方メートル単位での分散である。別の信号は、目下示されている車両のヨー角の分散、即ち車線標示接線に対する車両長手方向軸線のヨー角の角度の二乗した単位の分散を表す。この場合、これらの信号は、左右両側の車線標示それぞれに対して別個に求められる。通常の場合、分散は、カルマンフィルタの結果に基づいて導出される。
【0036】
複合ナビゲーションデータとは、例えば複合ナビゲーションシステム(Coupled Navigation System)に基づいて存在するデータである。統計的な方法、例えばカルマンフィルタを用いて、衛星基準の位置決定ユニットの位置データ、例えば経度、緯度、v-North、v-Eastを、慣性センサデータ及び別の走行状態データと統合させることで、車両の最大限に正確な位置特定が達成される。
【0037】
慣性センサデータとして、例えば車両の長手方向軸線、横断方向軸線、及び/又は高さ方向軸線周りの加速度及び回転速度が求められる。別の走行状態データとして、車輪回転情報及び車輪角度、特に前車軸、また場合によっては後車軸の操舵角に関する情報が求められる。
【0038】
有効化された緊急動作モードにおける車両制御のために提供される複合ナビゲーションデータを軌道制御のために、即ち走行設定のために使用するために、この複合ナビゲーションデータとして、例えば、車両長手方向速度及び車両横断方向速度、又は北方向及び東方向における車両移動、絶対位置又は相対位置、又は角度及び速度が使用されてもよい。
【0039】
複合ナビゲーションデータは、十分に多くの数の衛星、特に10個以上の衛星が検出され、補正データが存在する場合には最も正確となる。位置決定のために十分に多くの衛星が検出可能である場合、この状況は、標準モード動作(Normal-Mode-Operation)と称され、そうでない場合にはブリッジングモード(Bridging-Mode)と称される。
【0040】
標準モード動作についての条件が満たされていない場合には、信号が時間の経過と共に劣化し、また存在する衛星の数が少なくなるほど劣化はより大きくなる。物理的な状況に基づいて、複合ナビゲーションデータが統合された場合には、従って緊急動作モードにおいても、発生する偏差をより小さくすることができる。この偏差によって、時間と共に、特に車両の自車線における、車両の目標位置までの距離が大きくなる。
【0041】
カメラ及び衛星基準の位置決定ユニットのパラメータ、特にカメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータに基づいて、フォールバックパス・スタンバイ決定モジュールとしてのメイン制御装置におけるフォールバックパス機能の可用性及び非可用性が判定される。
【0042】
車両が所定の制限速度を下回る瞬時走行速度でもって走行している際に、既存のカメラ車線データ又は既存の複合ナビゲーションデータが、所定の品質要件に対応する場合には、自動運転動作のイネーブルが許可される。また、特別なパラメータの選択時には、カメラ車線データ又は複合ナビゲーションデータが存在する場合にのみイネーブルが許可されてもよい。制限速度を超過した場合、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータが所定の品質要件に対応していることが必要となる。
【0043】
フォールバックパス機能を有効化させるための状況が生じることは比較的稀であり、車線識別用のカメラの検出性能、並びに、特にブリッジングモードにおける複合ナビゲーションデータの精度及び可用性についての経験値に基づくので、判定基準は車両のサプライヤのコンポーネントに合わせて個別にパラメータ化可能である。
【0044】
パラメータとしての制限速度の規定又は設定は、センサデータの結合の品質が所定の制度を維持するように行われる。この所定の精度は、規定の期間にわたり維持されなければならないので、やはり実質的に、走行速度、停止距離、減速度と、標準モード又はブリッジングモードとの依存関係が生じる結果となる。
【0045】
例えば、車線の中央の走行、回避、カーブ走行及び/又は比較的大きい減速、及び例えば衛星受信無しでの20秒間にわたるブリッジングモードのようなあらゆるシナリオに対して0.2メートルの所望の横断方向精度がシグマで維持される場合、40km/hの制限速度が選択される。これらのパラメータは、理想的には、いわゆるSCNパラメータとして、メイン制御装置において調整することができる。
【0046】
また、車線についての個々のパラメータが省略されてもよいし、カメラ解像度に応じて、パラメータが拡張されてもよい。
【0047】
フォールバックパス機能が有効化されている際に、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータを使用できる場合、カメラ車線データに基づいて、軌道制御が行われる。カメラ車線データを使用できない場合、複合ナビゲーションデータに基づいて軌道制御が実施される。
【0048】
カメラ車線データに関して、結果の絶対的な精度は、時間にわたり実質的に変化せず、即ち、ドリフトが発生せず、また車線は、人間にとっても、車両位置決めのための配向を表す。
【0049】
自動運転動作のためのエラーのないシステムでは、センサが情報源として使用される。特にいわゆるバックアップ搭載電源網を介する電圧供給及びセンサのバスネットワーク化は、主搭載電源網の故障時にも、それらのコンポーネントをフォールバックパス機能に対して、また特にサブ制御装置に対して利用できるように実施されている。メイン制御装置は、車両の別のセンサと共に、主搭載電源網に接続されている。
【0050】
それとは逆のケースでは、バックアップ用搭載電源網の故障時に、メイン制御装置は、車両の十分な数のセンサ、特に周囲センサが存在するので、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータ無しでも、走行タスクに関するドライバの引き継ぎが行われるまで、走行設定を満たすことができる。
【0051】
本方法の一実施形態では、車両は、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータ無しで緊急動作モードが有効化されている場合、より強く減速され、最終的に検出された、車両の操舵の車輪角度が維持される。従って、目下存在する状況に基づいて、将来の走行経過に関して妥協が達成され、またドライバによってもたらされた操舵トルクに基づいて、ドライバ介入識別が維持される。
【0052】
上述したように、フォールバックパス機能は、サブ制御装置において実現することができ、この場合、サブ制御装置は、車両の走行ダイナミクス制御の制御装置であってもよいし、別の制御装置であってもよい。走行ダイナミクス制御の制御装置は、特にサブ制御装置として適している。何故ならば、その種の解決手段は廉価であり、付加的なコンポーネントは必要とされず、制動機能は既に制御装置において実現されているからである。
【0053】
フォールバックパス機能・スタンバイ状態決定モジュールの構成では、ディジタルマップに情報が格納されている限りでは、そのディジタルマップに由来する、ある区間において車線の両側又は片側において車線標示が欠落している情報に基づいて、自動運転動作、特に通常動作モードがこの区間に対しては無効化される。更に、ディジタルマップに基づき、車線識別が不足している際に、車線識別が新たに実現できるようになることで、それらの情報をフォールバックパス機能・スタンバイ決定モジュールによって考慮できるようになるまで、車両がどの区間を走行しなければならないかが分かる。この種の情報は、メイン制御装置に存在するので、フォールバックパス・スタンバイ決定のメイン制御装置への割当てが有意義である。区間に関する車線識別のためのカメラの機能スタンバイ状態は、カメラを備えた各車両によってトレーニングして学習させることができ、このことは、車両とデータ技術的に結合されている計算ユニットのサービスに提供することができる。これによって、ディジタルマップを継続的に更新することができる。
【0054】
図1に図示した本方法のフローでは、自動運転動作のイネーブルにも、このイネーブルの取り消しにも該当し、この場合、これらの条件のパラメータは異なる。これらのパラメータは、固定の所定値である。
【0055】
この方法は、スタートSから始まり、車両の走行速度に依存してイネーブルが許可される。制限速度を下回る瞬時走行速度では、カメラ車線データ及び複合ナビゲーションデータの可用性は、制限速度が瞬時走行速度を超過する場合とは異なるように求められる。この場合、可用性は、検出された信号の所定の品質要件、特に特性に対応する。
【0056】
瞬時走行速度が制限速度を下回る場合、第1の方法ステップV1では、カメラ車線データが所定の品質要件を満たしているか否かが検査される。更に、第2の方法ステップV2では、複合ナビゲーションデータが所定の品質要件に対応するか否かが検査される。
【0057】
第3の方法ステップV3では、検出されたカメラ車線データ又は複合ナビゲーションデータが品質要件を満たすことが求められた場合、第4の方法ステップV4では、制限速度を下回る瞬時走行速度での自動運転動作に対してフォールバックパス機能を利用できるため、所定の制限速度を下回る走行速度に対して、車両の自動運転動作についてのイネーブルが許可される。
【0058】
渋滞時には車線標示が他の車両によって覆われることが頻繁に起こり得るので、品質要件を考慮した複合ナビゲーションデータの可用性のみが問い合わされることも考えられる。これは、パラメータを用いて調整することができる。
【0059】
車両が例えば40km/hの制限速度を超過する瞬時走行速度でもって走行する場合、第5の方法ステップV5では、カメラ車線データが存在し、所定の品質要件を満たしているか否かが求められる。制限速度は40km/hであってもよい。但し、制限速度は、複合ナビゲーションデータの精度に応じて、比較的に大きく下方又は上方に偏差する可能性がある。
【0060】
続く第6の方法ステップV6では、複合ナビゲーションデータが存在しているか否か、且つ所定の品質要件を満たしているか否かが検査される。
【0061】
続いて、第7の方法ステップV7では、カメラ車線データも複合ナビゲーションデータも所定の品質要件に応じているかが求められると、方法は、第4の方法ステップV4に進み、所定の制限速度を超過する走行速度について自動運転動作がイネーブルされる。
【0062】
第8の方法ステップV8では、フォールバックパス機能の条件が満たされていることから、又は満たされていないことから、車両の自動運転動作についてのイネーブルが許可されるか、又は取り消される。
【0063】
自動運転動作のイネーブルの取り消しについても、同様の手順が行われる。
【0064】
本方法ではまた、車両の瞬時走行速度に依存して、自動運転動作がイネーブルされるか、又は終了される。
【0065】
特に、瞬時走行速度が所定の制限速度を超過している場合には、左側の車線標示及び右側の車線標示が、相互に独立して検出されることで、左側の車線標示及び右側の車線標示についての条件が個別に検査される。この際、それらの条件は、カメラ車線データに関して検査される。
【0066】
特定の所定のパラメータ、特に上述の品質信号が満たされている場合には、車線標示について部分的なイネーブルが行われる。この場合、例えば片側に対してだけであっても、品質信号がその条件に関して満たされていれば、イネーブルが許可される。
【0067】
特定の品質信号は、カメラ車線データの特定の特性についての尺度を表す。特に、上述したように、構造特徴が求められる。ここで、構造特徴は、識別された構造、例えば、指定された側の自車線の車線標示、又は反対側の車線若しくは隣接車線から導出された車線標示、又は車線縁部若しくは隆起した車線画定部、例えばガードレールを表す。例えば、右側の車線標示は、左側の車線標示から導出されてもよい。
【0068】
変数の値は、車両までの車線標示の距離と共に増大し、従って、情報の品質は低下する。自車線の車線標示が、対応する側において識別されてシグナリングされると、自動運転動作についてのイネーブルが許可されてもよい。イネーブルの取り消しは、例えば、隣接車線又はより上位の車線画定部しか識別されない場合に行われる。
【0069】
品質信号は、車線識別の状態を表し、識別されていない状態、目下識別されている状態、即ち車線が検出されている状態、及び予測状態、即ち最後の車線識別の結果が車線情報を表す状態を区別する。これらの変数の値が検出を示す場合、自動運転動作のイネーブルが許可されてもよい。車線が識別されない場合、イネーブルは取り消される。
【0070】
別の品質信号は、検出された車線の幅、従って検出された車線標示を表し、車線標示が検出された車両前方の距離を特定する。この値が大きくなればなるほど、識別がより良好になり、ひいては結果の信頼性及び精度がより高くなる。例えば、距離が50メートルを超える場合、自動運転動作のイネーブルが許可されてもよい。値が10メートルを下回る場合、イネーブルは取り消され、相応に、引き継ぎ要求が出力される。
【0071】
特に、車両の車線を画定する片側又は両側の車線標示に関する品質信号の内の1つが、例えば7秒の所定の期間にわたり、又は例えば200メートルの所定の距離にわたり満たされない場合、イネーブルの取り消しが行われる。
【0072】
区間に関する遅延としての、例えば7秒の所定の期間又は所定の距離によるイネーブルの取り消しの遅延は、カメラ車線データ及び/又は複合ナビゲーションデータが、通常は比較的短い中断後に再び検出されるという事実による。ドライバが走行タスクを引き継ぐことによって自動運転動作が終了するまで、状況によっては、より長い時間が掛かってもよい。
【0073】
車両の瞬時走行速度が所定の制限速度を超過する場合、複合ナビゲーションデータに関する車両の自動運転動作について、イネーブルのための条件又はイネーブルを取り消すための条件は、実質的に、制限速度を超過する場合の上述の条件に対応する。
【0074】
特に、自車線が車線標示に基づいて対応する側において検出された場合には、イネーブルが許可される。
【0075】
変数及びパラメータの上述の値はいずれも例示的に選択されたものであって、既存のセンサ系に適合させることができる。
【0076】
複合ナビゲーションデータに関して、品質信号が所定の状態、特に上述の標準モードを示す場合には、イネーブルが許可される。十分に多くの衛星、特に10個以上の衛星が検出され、補正データが存在する場合に、この状態は存在する。少数の衛星しか検出されない場合、この状態は、上述のようにブリッジングモードと称される。
【0077】
標準モードの状態が、比較的長い期間、例えば15秒間示されない場合、イネーブルが取り消される。この期間に関するパラメータ値は、例えばブリッジングモードが3秒間経過した後の複合精度に基づいて、続いて、制御された有効なフォールバックパス機能の結果に基づいて導出されてもよい。このパラメータ値を用いて、長手方向及び横断方向において必要とされる複合精度が依然として達成されるべきである。
【0078】
所定の制限速度を下回る瞬時走行速度でもって車両が走行している場合、制限速度を超過する場合と同じ条件が存在し、この場合、時間パラメータのみが異なる。
【0079】
カメラ車線データ及び/又は複合ナビゲーションデータに関してエラーケースが発生した場合には、イネーブルが取り消されるか、又はもはや許可されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015003124号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102017011808号明細書
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転動作のために設計されている車両を動作させるための方法であって、
前記車両は、前記自動運転動作の通常動作モードにおいては、メイン制御装置を用いて目標位置まで自動的に誘導され、前記自動運転動作の緊急動作モードにおいては、サブ制御装置を用いて安全な停止位置へと自動的に移動される、方法において、
-前記メイン制御装置を用いて、前記サブ制御装置の機能スタンバイ状態が継続的に検査され、
-検査された前記機能スタンバイ状態に依存して、前記自動運転動作のイネーブルが許可されるべきか、又は取り消されるべきかかが判定され、
-前記自動運転動作は、前記イネーブルが許可された場合にのみ有効化され、前記イネーブルが取り消された場合には無効化され
前記判定の際の判定基準は、前記車両の瞬時走行速度に対する制限速度に依存して設定され、前記瞬時走行速度が前記制限速度を下回る場合には、前記イネーブルが許可され
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記サブ制御装置の前記機能スタンバイ状態を検査するために、前記車両の誘導時の位置特定のために前記サブ制御装置によって使用されるデータが所定の品質要件を満たしているか否かが検査される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メイン制御装置を用いて、複合ナビゲーションデータと、求められたカメラ車線データとが、前記所定の品質要件について検査される
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の品質要件が満たされているかに応じて、前記イネーブルの許可又は前記イネーブルの取り消しが判定される
ことを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項5】
前記制限速度を下回っている際の前記通常動作モードは、前記複合ナビゲーションデータ又は前記カメラ車線データが前記所定の品質要件を満たす場合に前記自動運転動作が前記イネーブルとされる
ことを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制限速度を超過している際の前記通常動作モードは、前記複合ナビゲーションデータも前記カメラ車線データも前記所定の品質要件を満たす場合に前記自動運転動作が前記イネーブルとされる
ことを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】